魔王「我輩と一緒に世界を救ってくれ」から始まった長編SSの続編です。前回→
魔王娘「さあ行こう、学者様!」 歴史学者「その呼び方はやめてよ姉さん」186 :
アナウンス :2010/07/17(土) 21:56:24.59
ID:b9Xd4qk0 ・これから投下いたしますssは、魔術士オーフェン・後日談のネタバレを含んでおります。BOXを購入しつつもまだ読んでいない方はご注意ください。
では、数分後に
188 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/17(土) 22:01:05.28
ID:b9Xd4qk0 ~プロローグ~
189 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/07/17(土) 22:08:55.14
ID:b9Xd4qk0 静かだった。耳が痛くなるほどに。静寂があたりをしんしんと冷やしている。原初の静寂にも似ていなくもない。いや、だが違う。風の音がしている。ひそやかに、軽やかに。何かを語りかけるようなそれはしかし、誰に何を告げるわけでもなかった。
その風が地面の砂をかすかに撫でる。元は背の低い草が一面に生えていたその場所は、今は見るも無残に焦げた土肌をさらしていた。あたりは、見渡す限り荒れてしまっている。まるでいくつもの爆風にさらされたように。
彼はその中に立っていた。からからに乾いた風が肌を撫ぜ、急速に水分を奪って去っていくが、彼にはどうでもいいことだった。それは取り返しのつかないものではない。
(取り返しのつかないもの……)
たとえば死。それはあらゆる信念を無に帰す。緩んだ生の中に厳然と存在するそれは、人間に強い渇望を与えてしまうほどに強い引力を持っていて――いや。
それでもまだ足りない。これから起こるであろうことの重大さに比べればまだ。