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キョン「それで、お前も来ちまったのか?」友崎文也「あ、はい。友崎文也と申します」

2021-10-20 (水) 00:07  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/09/07(火) 23:21:01.06 ID:Ib9lUiBFO

人は心が愉快であれば終日歩んでも嫌になることはないが、心に憂いがあればわずか一里でも嫌になる。
人生の行路もこれと同様で、人は常に明るく愉快な心をもって人生の行路を歩まねばならぬ。

-ウィリアム・シェイクスピア-




キョン「やっぱり佐々木は天才だよ」佐々木「キミには負けるよ、キョン」

2021-08-30 (月) 12:01  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/08/13(金) 00:05:02.00 ID:ibjZ0HLOO

「なあ、佐々木」
「なんだい、キョン」

隣の席の女子に気安く話しかけられる幸運を中学時代の俺が正しく理解していたかどうかは、進学先の北高の席順の都合により今となっては定かではないとしか言えないのだが、それでも後ろの席に鎮座する涼宮ハルヒに話しかけるよりはよっぽどハードルが低かったように記憶している。

「どうして髪を伸ばさないんだ?」

そんな俺であるが女子の髪型についてあれこれ詮索することに忌避感は覚えていなかったようで、ズケズケと図々しく年中ミディアムボブの佐々木に対してそんなことを訊ねた。

すると佐々木は困ったように眉尻を下げて。

「キョン。僕はキミとそれなりに親しいつもりだし、同じようにキミが思ってくれているからこそ、そんな風に軽々しく女の子の髪型について言及したのだということはむしろ喜ばしく思うけれど、それでも、もう少し言葉を選んで欲しかったと思わざるを得ないよ」

中学の頃の俺の語彙力など今にも増して壊滅的なことは言うまでもなく、だから言葉を選んで欲しいと言われてもそもそも選択肢すらないのだから選びようがないとしか言えん。




長門有希「離さない」

2021-07-20 (火) 12:01  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/07/11(日) 21:31:43.75 ID:0j9uV3lDO

昼休みを告げる鐘が鳴り、いつもならば谷口や国木田と昼食を共にするところではあるが、その日早弁を済ませていた俺は教室から出て真っ直ぐに元文芸部室へと向かった。

どうして普段と違う行動をしたのかについて明確な理由はなく、あえて説明するならば毎日毎日男友達と弁当をつつきあっている自分を客観視した際に絶望的なみじめさを覚えたからである。

別に男同士の友情を軽視しているわけではないが、ほどほどにしておかないとこの短い高校生活を棒に振りかねないと危惧していた。

幸いなことに狭い交友関係の中でも女子の知り合いが俺には居て、中でもハードルが高い先輩である朝比奈さんや鶴屋さんの教室に向かうことは身の程知らずもいいところなので、だからこそ元文芸部員の少女を訪ねようと、そう思い至ったわけである。

「長門、入るぞ」
「どうぞ」

常日頃の慣習に則りノックしてから声をかけると、中から長門の声が返ってきて、それだけで一段階テンションが上がったことを自覚しつつ、俺は元文芸部室の扉を開けた。




キョン「なんのつもりだ?」ハルヒ「……行かないで」

2021-07-19 (月) 06:27  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/07/07(水) 22:35:51.84 ID:rcCzl30NO

世間一般のイメージとは裏腹に、涼宮ハルヒは常時"ハレ晴レユカイ"というわけではなく、出会った当初などはいつも不機嫌そうな雰囲気を醸していて、例えるならば"ジメジメ不快"とでも表現するのが適切であった。

「蒸し暑いわね……」

季節は梅雨真っ盛り。
朝から晩まで曇天で、雨は振ったりやんだりを繰り返し、気温の上昇に伴い不快指数は止まることを知らず鰻登りであると言えよう。

「私のことも煽ぎなさいよ」
「嫌だね」

パタパタと下敷きを団扇代わりにして少しでも肌の表面温度を下げようと風を送り続ける俺に向かって、どこかの王侯貴族が如く、扇げと催促するハルヒをあしらいながら、この団扇で扇ぐという行為は得られる風とそのために消費する労力は果たして釣り合いが取れているのだろうかと考えを巡らせていると。

「だから人に煽がせる意味があるんでしょ」

などと、身も蓋もないことを抜かすハルヒにちらと視線を送ると、心底うんざりしたような表情と、汗で頬に張り付く髪の毛がなんだか風情があるような気がして、そこに一定の価値を見出した俺はその対価として下敷きで煽いでやった。やれやれ。我ながら甘いな。

「涼しいか?」
「全然」

そうかいと嘆息しつつハルヒの頬に張り付く髪の毛を無性に取ってやりたくなる衝動を堪えながら、俺はなんとなしに既視感を覚えて記憶を探り、中学時代の一幕を思い出した。




佐々木「これがシュタインズ・ゲートの選択だよ」

2021-05-18 (火) 00:07  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/03/28(日) 20:57:24.15 ID:gYxSR/SRO

もしも佐々木にファンが存在するのだとしたら、その持ち前の聡明さや常識に則った言動、そして如何なる時でも発揮される沈着冷静ぶりを気に入ったのだろうということは想像に難くないが、とはいえ、女子の癖に自分のことを僕と言う佐々木が果たして常識に則った言動をしているかと問われれば、疑問が生じるのもまた事実である。

たしかに中学時代、それなりに親しくしていた俺の目から見ても佐々木は常識人のように映ったが、それはあくまでも主観的な話であり、客観的に見れば女子が男子に対して男のように振る舞い、そしてそいつに男友達と同じように接する俺の態度は甚だ奇異に映っていたに違いない。

しかしながらこちらとしては今更友人に対する態度を変えるつもりはなく、どれだけそれが周りから見て不自然な光景だろうと構いやしないのさと、お互い歯牙にも掛けずに俺と佐々木は帰り道を共にしていた。




キョン「別に。どうもなってないぜ」涼宮ハルヒ「嘘つき」

2021-04-19 (月) 12:01  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/02/27(土) 22:09:07.55 ID:72mPFGvRO

涼宮ハルヒにキスされた翌日と言うとなんだか後日談のようだが、では当日がどんな1日だったかと言えば何の変哲もない日常だった。

いつものように登校し、いつものように授業を聞き流し、そして放課後いつものように変人集団がたむろする元文芸部室へと向かう前に、ここ最近日課になりつつある勉強をしていた。

頼みもしないのに俺の専属講師となった涼宮教諭の指導は、時に身も蓋もないことを言われる以外、特に不満はなく、概ね良好だ。

わざわざ作ってくれたハルヒ謹製の問題集を解き、間違ったらシャーペンでチクチク刺されることすらも特筆するに値しない日常である。

そんな穏やかな勉強風景に茶の間が凍るようなおかしなシーンが訪れたのは、ハルヒが出題した図形問題について不明な点があったのでそれについて尋ねている時のことだ。

隣に来て問題の図形を覗き込むハルヒと俺の顔面の距離はかなり接近しており、なんとなく落ち着かない気持ちになっていたことを悟らせまいと平静を装っていたところで事件は起きた。

ぷちゅっと。

頬にこれまで経験したことがない柔らかな感触を覚えた俺が驚いて隣を見ると、まるで鏡のように目を丸くしたハルヒがこちらを向いていて、暫しの沈黙の後、奴はこう呟いた。

「別に。ただなんとなく」

なんとなくってなんだよ、と返すと、ハルヒはそれっきり黙り込み勉強道具を片付けて部活にも行かずにそのまま直帰してしまった。




キョン「よう」長門有希「……やっほー」

2021-03-21 (日) 00:07  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/02/08(月) 23:14:52.32 ID:QpWAPgXRO

涼宮ハルヒが物憂げな表情を浮かべている時は大抵何かしらの面倒ごとを引き起こすと相場は決まっているものだが、ならば反対にやたらと上機嫌な場合はより一層の危機感を抱かざるを得なくなるなんてことは、今更忠告するまでもないことだろう。

とはいえ、そうした経験則に基づいてこちらが身構えられるという点においては、わかりやすいことはそう悪いことではないのかも知れない。

前置きが長くなってしまったが今から俺が語る話題に涼宮ハルヒは一切登場せず、まるで話のダシに使ってしまったようで僅かながらも申し訳なさを覚えるが、ダシとしてこれ以上ないくらい良い働きをしてくれた団長様に感謝しつつ、我がSOS団の無口キャラについて語らせて貰おうと思う。

それが誰か、などと今更説明は要るまい。

静かなる元文芸部員、長門有希の秘話だ。




キョン「9マイルは遠すぎる」

2021-01-18 (月) 00:07  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: ◆copBIXhjP6 2020/12/06(日) 15:38:11.38 ID:/JAVxUrS0

それはどんよりとした雲が立ち込め、降りしきる雨が今にも雪になりそうな寒い冬の日。
定期テストが午前中に終わり、谷口と虚しく慰め合いながら迎えた放課後。
普段のように旧校舎の片隅へ特に目的もなくやって来た俺が、普段のように古泉の玉将に詰めろを掛けた瞬間だった。

ハルヒ「キョン、ちょっと電器屋行ってきて」

キョン「.........は?」

虚を突かれて将棋盤から顔を上げると、そこに広がっていたのは普段通りの部室。
長門は定位置のパイプ椅子に座って人間を撲殺できそうな分厚いハードカバーに目を落としているし、
お茶くみを終えたメイド服の天使は微笑みを浮かべながら何か編み物をしている。朝比奈さん、今日も変わらず素敵です。
悪びれもせず人に指図するこの女――――涼宮ハルヒについても、いつもと変わった様子はなかった。

ハルヒ「だから電器屋に行ってこいって言ってるのよ」

キョン「いや、唐突すぎて訳がわからないぞ。どこへ?どうして?」

ハルヒ「映画でCM打ってもらったところからこの前ストーブを貰ってきたでしょ?えーっと......」

キョン「大森電器のことか?」

ハルヒ「そうそう。そのストーブの調子が最近悪いのよねぇ」ガンガン

誰かさんがその熱源を独り占めするせいで俺たち廊下側はその恩恵に全くあずかれていないわけだが、それは一旦置いておこう。
曲がりなりにも貰い物であるストーブをハルヒが叩きつけるが、確かに動作していないようだ。

ハルヒ「だから、そのなんちゃら電器で直してもらってきなさい」

キョン「なんで俺が?!お前しか使ってないんだからお前が行けばいいだろ」

キョン「第一この雨の中そんなもん持ったら傘がさせねーだろうが」

ハルヒ「却下。雑用としての責務はちゃんと果たしなさいよ」

キョン「あそこじゃないとダメなのか?そんなに遠出しなくても、修理してくれる店くらい近場にもあるぜ」

ハルヒ「だーめ。スポンサーとは良好な関係を築いておかなくちゃね」

キョン「はぁ」




キョン「少し席を外すぞ」涼宮ハルヒ「あんたは私を楽しませてくれないの?」

2021-01-05 (火) 12:01  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/23(月) 18:49:00.81 ID:A+4cVPJUO

「お前はいつも憂鬱そうだな」
「ほっといてよ」

あれはまだ俺が涼宮ハルヒと知り合って間もなかった頃の話だ。
振り返るとそこにいたどえらい美人はいつもしかめ面で現状を憂いているように見え、それが俺には勿体ないと思えてならなかった。

「少しは笑ってみたらどうだ? せっかくの整った顔立ちが台無しだぜ」
「ふん。意味もなくケラケラ笑うほど私は暇じゃないし頭からっぽでもないのよ」

恐らくこの時、ハルヒはどうすればこの退屈な世の中を変えられるかを暗中模索していたのだろう。それにしても愛想のない女だ。

「いいか、涼宮。頭からっぽの方が夢や希望を詰め込めるという利点があってだな……」
「じゃあ、頭からっぽのあんたの頭蓋骨の中にはどんな夢や希望が詰まってるわけ?」
「それは……」
「ふん。どうせ、いやらしいことでいっぱいに決まってるわ。わざわざ外科手術するまでもなく丸わかりよ。手の施しようもないわ」

人間とは理性ある獣である。
高度な知性によって律している本能の中には当然、三大欲求のひとつである『性欲』も含まれており、つまり脳内の3分の1がピンク色だとしても何らおかしな話ではないわけで。

「うるさいわね。ロボトミー手術でそのピンク色の部分を切除すればいいじゃないの」
「恐ろしいことを言うなよ」
「晴れて改造人間になれたら少しは見直してあげるわ。だってその方が断然、今の平凡なあんたよりも夢や希望があるもの」

このように涼宮ハルヒとの会話は果てしなく不毛であり、到底建設的なものとは言えなかったが、それでもわりと俺は楽しんでいた。




佐々木「君は優しいね」キョン「炭治郎には敵わないさ」

2020-12-09 (水) 18:37  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/01(日) 19:56:53.71 ID:eKWbNwFOO

「やぁ、キョン」

過ごしやすい秋の休日は惰眠を貪るのに最適な環境であるが、そんな日に限って来客が訪れるのがこの世の常であり、その日、寝ぼけ眼を擦りながら呼鈴に応じて玄関の扉を開けた俺は、清々しい秋晴れを背景に佇む友の姿に違和感を覚えた。

「なんだ、佐々木か」
「なんだとは随分なご挨拶だね」
「気持ちよく寝ているところを起こされたら誰だって文句のひとつくらい口にするさ」
「やれやれ。どうせそんなことだろうとは思っていたが、顔ぐらい洗ってから出迎えて欲しかったものだよ。あと、その寝癖もね」

いつものように男みたいな口調で俺に接する佐々木であったが、その装いは近頃めっきり涼しくなってきた気候に合わせて、柔らかなアイボリーの色合いの少し丈の長いワンピースの上に、茶色いカシミヤのカーディガンを羽織っていて、なんだか大人びて見えた。

「とりあえず、上がれよ」
「おっと。その前に、今日の僕を見て何か思うところはないかい? よく観察したまえ」

立ち話もなんだから家に上がるように促すと待ったがかかった。たしかに違和感はあった。
大人びた私服は常日頃の落ち着いた佐々木のイメージとマッチしている。では、なんだ。

「うーむ……さっぱりわからん」
「まったく、君は本当に女泣かせだね」

そう言う佐々木であったがさほど傷ついた様子が見受けられなかったので別に聞き流しても良かったのだが、一応、こう返しておく。

「前髪上げて丸見えのおでこが、見ていてとても寒そうだ。風邪を引いちまうぜ?」

すると佐々木は上げた前髪の髪留めを弄りつつ、くつくつと喉の奥を鳴らして嬉しそうに笑った。やれやれ。嬉しそうでなによりだ。




キョン「一緒に風呂でも入るか?」長門「……入る」

2020-10-15 (木) 00:07  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/09/24(木) 22:38:32.43 ID:wccLzonZO

長門有希に対して特別な感情を抱いているかと問われれば、答えは特に考えるまでもなく"YES"である。

とはいえ、それだけだと多大な語弊や誤解を招きかねないので、少々補足しておこう。

もはや今更言うまでもないが、俺にとって長門は恩人であり、それもただの恩人ではなく命の恩人である。

命の恩人。
そんな大層な存在がそんじょそこらに転がっている筈もなく、事実、俺は頭のイかれた優等生の朝倉涼子の凶刃から命を救われた。

つまり、長門は狂人の凶刃から身を呈して守ってくれたわけで、そう書けばなんだか笑い話や駄洒落のように聞こえるかも知れないが、当事者にとっては笑い話などでは済まされず、当然、洒落になっていなかった。

命の危機なんてものは普通に暮らしていればまず感じることはなく、無論、俺も生まれてこの方経験がなかったため、そんな絶対絶命の窮地を打破する術など持ち合わせてはいなかった。

そんな中、颯爽と現れた長門に救われた。
長門が居なかったら、俺はお陀仏だった。
今の俺がこうして呑気に息を吸い、そして吐いているのはひとえに、長門のおかげだ。

「頼みとやらを聞かせてくれ」

そんな恩人に頼まれ事をされたならば、ひと肌と言わずふた肌だって脱いでやりたいと思うのは人として当然の帰結だと、俺は思う。




キョン「俺だって嫌われたくないさ」佐々木「へ? じゃあ、キミは僕のことが……」

2020-09-25 (金) 12:01  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/09/04(金) 21:30:03.41 ID:PmfM16hRO

約9年半ぶりの新刊、『涼宮ハルヒの直感』の発売決定、誠におめでとうございます!

本作品はその嬉しいニュースとは全く関連性がなく、主に平成ガメラ・シリーズの3作品ついての考察がメインであり、落語家の林家しん平が自主制作した『ガメラ 4 真実』並びに、角川が2015年に制作した全編フルCGで構成された『GAMERA』の内容は含まれておりませんので、その点をどうかご理解頂ければ有り難いです。

それでは以下、本編です。




佐々木「今度、洗いっこしようか?」キョン「は?」

2020-08-12 (水) 00:07  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/26(日) 20:49:49.78 ID:I1wck53cO

「やぁ、キョン」

午前の授業を終えて、お袋謹製の弁当を食いながら窓の外を眺めていた俺の元に、既に自前の昼食を食べ終えたと思しき佐々木が寄って来て尋ねた。

「何を眺めているんだい?」

教室の窓から見える風景はいつもと変わらず、別段空に未確認飛行物体が浮いているわけでもましてや超人が飛翔しているわけでもなく、ただひたすらに雨が降り注いでいる。

「ああ、雨を見ていたのか。不思議だよね」

はて、雨が不思議とはどういう意味だろう。
この地球上において降雨など珍しいことではなくありきたりな自然現象に過ぎないのに。

「地上、または海上で蒸発して気化した水分が上空で冷やされて雲となり、再び液化して雨となって降り注ぐ。そんな風に科学的に説明すれば簡単に感じられるかも知れないけれど、それらのサイクルは極めて絶妙なバランスの上に成り立っている。だから僕は、自分が生まれた惑星がたまたまそのような仕組みを備えていることを不思議に思うのさ」

長々と解説ご苦労さん。流石は薀蓄博士だ。
一介の中坊に過ぎない俺はその仕組みとやらについて専門的な知識など持ち合わせてはいないが、この惑星に生きるひとつの生命体として本能的にこれだけはわかる。必然だ。

「俺たちが生きてるんだから当たり前だろ」

俺たちが今この惑星で生存していること。
それこそが不思議を解明するに足る根拠。
雨が降るからこそ、俺たちは生きている。




ハルヒ「異世界転生って知ってる?」キョン「知らん」

2020-07-08 (水) 12:05  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/11(木) 22:17:06.54 ID:gyrJ90gBO

「ねえ、キョン」
「なんだよ」
「異世界転生って知ってる?」

あっという間に春が過ぎ去り、憂鬱な梅雨入りが間近といった今日この頃。

湿度の増加に伴い、不快指数が加速度的に上昇中の現実世界から逃避したいと考えていたのはどうも俺だけではないらしく、後ろの席でパタパタと下敷きを扇いでいた涼宮ハルヒがそんな物騒なことを尋ねてきた。

「知らん」
「あんたってほんと無知よね」
「ほっとけ」

シラを切ると当然のように罵倒されたので、思わず前言を撤回して持ち得る限りの異世界転生知識を披露したくなる衝動に駆られたが、ぐっと堪えてこの危険人物に余計なことを言わぬよう口にチャックした。

「いい? 異世界転生ってのはね、あらゆるファンタジーの始まりにして頂点に君臨するそれはそれはありがたい設定なのよ」

それはいくらなんでも言い過ぎだろう。
指輪物語もハリーポッターも誰ひとりとして異世界なんぞに転生してはいないのだから。

とはいえ、たしかにファンタジーにはありがちな設定であり、特に昨今の流行ではある。




長門「私と居ると、退屈?」キョン「いいや。そんなことはないさ」

2020-06-21 (日) 19:19  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/23(土) 22:25:41.44 ID:1JdiF+qJO

「待った?」
「え? あー……いま来たところだ」

不覚というのはこのことだろう。
振り返るとそこには長門有希が佇んでおり。
そしてなんと、私服姿であった。

「長門、その服……」
「変?」
「いや、意外だと思ってさ」
「昨日、朝倉さんが選んでくれた」

朝倉の差し金と聞いて、納得する。
やはりあいつは俺の命を狙ってやがる。
グレーを基調としたコーディネートは所謂ガーリー系で構成されており、ビスチェ風のブラウスと膝丈スカートの組み合わせはまるでひと昔前の良家のお嬢様然としており、素朴な長門の魅力を存分に引き立てていた。

「似合わない?」

いかに口下手な俺とて、似合っているか似合わないかの二択ならばすんなり解を出せる。

「似合ってる……と、言えなくもないな」
「良かった」

土壇場になってチキった自分の後頭部をぶん殴りたい衝動に駆られるが、平常心を保つ。
畜生。朝倉。良い仕事しやがる。完敗だぜ。




ハルヒ「私が精神病なんて……最悪」キョン「俺と同じだな」

2020-04-27 (月) 18:01  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/04/14(火) 22:01:23.63 ID:BhaT1rS2O

「今日、白だから」
「そうか」

よく晴れた日の昼下がり。すっかり春だ。
お袋手製の弁当をありがたく頂いていると、いつものようにハルヒが現れて耳打ちする。
そしてキッとこちらをひと睨みして去った。

「今日は白、か……」

肩を怒らせて歩き去るハルヒの後ろ姿というか尻を眺めつつ、ぼんやりとそらんじる。
視線を気取られまた睨まれた。やれやれ。

さて、それでは果たしてその色の意味とは。
察しの良い読者諸君ならば既になんとなく気づいているだろうが敢えて言わせて頂こう。

今日の涼宮ハルヒの下着は白であると。

白はいい。
やはり、下着は白に限る。
なんたって清潔感がある。

ま、別に黒でも青でも柄物でもいいけどさ。

なにはともあれ。
本日のハルヒの下着は白である。
それをあいつはわざわざ教えてくれた。
そのことに意味があり、それが一番重要だ。

「なにを考えてんだか……」

今日に限らず、ここ最近毎日の日課だった。




キョン「ほらよ」佐々木「ん? なんだい、この小包は?」

2020-02-26 (水) 00:07  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/11(火) 20:59:57.10 ID:IEJuNBz7O

「バレンタインデーなんて、くだらない」

俺がまだ中坊だった頃の話だ。
2月14日のバレンタインデーが近づき、教室内に甘ったるいチョコレートの香りが漂っているのではないかと思うほど浮ついた学友達を睨み、前の座席の女生徒は忌々しげに吐き捨てた。

「キョン、キミもそう思うだろう?」

まるでそれが世間一般の見解であるかのように同意を求めてくるが、凡庸たる俺には世の中の空気や流れに叛逆する気概など持ち合わせてはおらず、当たり障りのない返答で茶を濁した。

「そう邪険にしなくてもいいだろう。楽しんでいる奴らが居ることには違いないわけだしさ」
「おや。キミもそのひとりと言うわけかい? やれやれ、よもやキミが僕を裏切るとはね」

大仰な物言いで露骨に失望を露わにしてきた。
僕なんて一人称と、男みたいな口調であるが、こいつは歴とした女であり、女子中 学生だ。
もう少し、この華やかなイベントを楽しんだとしてもバチは当たらないと思うがね。

「ふん。いいかい、キョン。少なくともこの日本においてはバレンタインデーなど菓子メーカーの企業戦略に過ぎないんだよ。クリスマスプレゼントと同様に、と言えばキミにもわかるかい? 僕の記憶が間違っていなければ、確かキミはサンタの存在を信じていなかったよね?」

たしかに俺はガキの頃からクリスマスにプレゼントを配る赤服のじいさんの存在をこれっぽっちも信じちゃいなかったが、それと聖ウァレンティヌス伝説はなんら関係ない。




鶴屋さん「もっかい!」

2020-02-06 (木) 12:01  涼宮ハルヒのSS   2コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/17(金) 02:19:45.50 ID:zkz27ckRO

「やあやあ、キョンくん。奇遇だねっ!」

唐突ではあるが、SOS団の名誉顧問。
鶴屋さんについて、語らせて貰おう。
とはいえ紹介する前に彼女は颯爽と出現した。

「ん? なんだい? そんな見つめちゃってさっ! あたしの顔になんかついてるにょろ?」

この語尾がやたらにょろにょろしている鶴屋氏は、朝比奈さんと同学年の二年生であり、俺との関係は先輩後輩の間柄である。実に光栄だ。

「あっはっはっ! あたしの方こそ光栄さっ!」

快活な笑顔が眩しい。
自分もこんな風に笑えたらとつくづく思う。
チャームポイントである八重歯が輝いている。

「んー? おやおや、なんだい、キョンくん。あたしの八重歯っちが気になるのかいっ?」

八重歯っち……だと。
破壊力が留まるところを知らない。
防御力が底をつき、完全に無防備な俺に。

「そんなに気になるならキスしよっか?」

言葉を失うとは、まさにこのことだと思った。




キョン「好きだ」佐々木「えっ?」

2020-02-04 (火) 01:48  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/11(土) 21:36:33.06 ID:tYd/KiKIO

「キョン……僕の話を聞いてるのかい?」
「んあ?」
「どうやら全く聞いてなかったようだね」

あれはまだ、俺が中坊だった頃。
同じクラスに佐々木という変わった奴が居て、同じ学習塾に通ったこともあり親しくなった。
変わっていると言っても、どこぞの団長様のように毎日髪型を変えたり校庭に地上絵を描いたりすることはないのだが、何故か男子相手に限定で、まるで男のように振る舞う奴だった。

「すまん、なんだって?」

季節は冬であり、まるで強いられているかの如く、狂ったように温風を吐き出す教室内に設置された暖房の熱気にやられて、授業の後、ぼうっとしていて聞きそびれた俺に、佐々木はやれやれと嘆息して、こんなことを尋ねてきた。

「だから、もしキミが貰うならマフラーと手袋だったらどちらが必要かと聞いているんだ」

なんだ、何かと思えばそんな話か。
マフラーと手袋。究極の選択である。
守るべきは手か首か。悩みどころだ。
急所という意味ではまず真っ先に首を守るべきだろうとは思うが果たしてそれが正解なのか。

すぐに返事が出来ない優柔不断な俺を見て、佐々木はまたしてもやれやれと首を振り、くつくつと喉の奥を鳴らして笑った。

「そんなに悩むことかい?」
「若いんだから、悩ませろよ」
「それは若者の台詞ではないと思うよ」

それもそうだなと思い、俺は結論を出した。




古泉「どうしても名前が思い出せないらしいんです」キョン「名前?」

2020-01-23 (木) 18:01  涼宮ハルヒのSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/02(木) 13:58:46.51 ID:yJm2b4iho

古泉「はい。昨日、涼宮さんから一つ頼まれ事をされまして」

キョン「またか。で、その頼まれ事ってのは?」

古泉「ある人の名前がどうしても思い出せなくて困っているそうです。それで特徴を言うから、今日の団活までに調べておいてと」

キョン「いつも通り傍若無人な頼み事だな。それでお前も困ってるって訳か」

古泉「ええ。涼宮さんが言うには、僕やあなたも絶対に会った事がある人物だそうなんですが、どれだけその人の特徴を聞いても誰かわからないんですね。このままだと、また涼宮さんの機嫌が悪くなりそうで正直まいっています」

キョン「仕方ない、俺も一緒に考えてやるから、ハルヒが来る前に誰か突き止めとこう。それで、一体、どんな特徴をハルヒは言ってたんだ?」

古泉「はい。『女の子で、背は低い方で、無口で、ショートカット』だそうです」

キョン「長門じゃないか」

古泉「え?」