【デレマス時代劇】島村卯月「忍耐剣 櫛風」

2017-06-23 (金) 15:01  アイドルマスターSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:37:31.47 ID:qLrgdK/x0

2: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:38:26.70 ID:qLrgdK/x0

×××藩には、かつて鬼がいた。

藩主の×××氏。

美しい女を攫って斬り殺し、

子どもを捕らえて熊に食わせる。

人々は彼女を恐れた。




3: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:40:49.76 ID:qLrgdK/x0

島村卯月は、忍耐の人であった。

戦国では足軽として戦い、

そこで小さいながらも功を立てた。

武士の位を与えられたあとも驕らず、

よく学び、よく藩民に尽くした。

他人に世話を焼き面倒を見るのが、

生来の気性なのか、

人の髪剃りなどもよくした。

それが結構に上手で、

島村は城付きの髪剃り師として

殿に仕えるようになった。





4: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:41:16.59 ID:qLrgdK/x0


しかし島村は、

未だに殿の顔を見たことがなかった。

家臣達によると、塞ぎがちな性格で、

信用した人間以外寄せ付けないという。




5: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:42:01.69 ID:qLrgdK/x0

殿は、×××一族の中では末席で、

本来であれば藩主になるはずではなかった。

幼い頃の殿はそれを悔しがるでもなく、

むしろ悠々自適、のびのびと育ったという。

しかし一族に相次いで不幸があって、彼女が担ぎ出された。

昨日までは自由に野山を駆けていたのに、

書院に閉じ込められ、

“藩主のなんたるか”を叩き込まれた。

それも、かつて自分を侮蔑していた人間達から。




6: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:42:35.98 ID:qLrgdK/x0

だが、島村はとしては殿に同情する気にはなれぬ。

彼女は抑圧の反動から、

女色に走り、藩の女を攫う。

そして飽くまで味わうと、

あっけなく殺してしまう。

子どもなどが町を駆けていると、

それが気にくわないらしく、

捕まえて、飼っている熊の餌にしてしまう。

領民にとっては、まさに恐怖の対象である。




7: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:43:03.11 ID:qLrgdK/x0

誰かが殿を止めなければならない。

しかし、誰も諫言することはできぬ。

かつでできた者は皆死んだ。

無論、島村にとっても無理なことである。




8: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:43:34.81 ID:qLrgdK/x0

殿が女を殺した次の日、

また新しいものがやってきた。

名前は美穂という。

閨に入る彼女の身なりを整えるのは、島村の仕事であった。




9: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:44:09.79 ID:qLrgdK/x0

島村はまず、

美穂の着物をしゅるしゅると脱がした。

殿は、髪以外の体毛を著しく嫌う。

なので、それらを残さず剃るのが

島村の責務である。

美穂はかすかに震えていた。

無理もない。

これから彼女は、人食い鬼と一夜を共にするのだから。




10: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:44:42.09 ID:qLrgdK/x0

島村は、美穂のうなじを見た。

かすかにうぶ毛が生えている。

さわるとふわりと、心地よい。

しかし全て剃らねばならぬ。

島村は美穂の首をつかんで、動きを止めた。

そしてうなじに剃刀を当てる。

しょりしょりと微かな音を立てて、うぶ毛が落ちる。





11: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:45:15.35 ID:qLrgdK/x0

剃った跡は、美穂の白くしっとりとした肌に、

ほのかに赤みが挿していた。

島村がそこにふれると、

じんわりと熱を帯びていた。

ここにくちづけをしてみたい。

島村はそんな衝動を覚えた。

しかしできぬ。





12: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:45:44.01 ID:qLrgdK/x0

殿の相手をする女である。

我慢、我慢とこらえていると、今度は剃刀を

持つ手が震えた。

美穂はそれほどに、美しい少女だった。





13: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:46:27.06 ID:qLrgdK/x0

美穂は1日目の夜を生き延びた。

だが町に戻されるはずはなく、

城で囚われの身になった。

そして島村が、彼女の世話をすることになった。

美穂は、自分は城下の富商の娘だと言った。

その富商が殿に、彼女を差し出したそうだ。

見返りは、城で賄われる物品取引の独占。

娘1人と引き換えなら、安いとでも思ったのだろうか。

島村は美穂を哀れんだ。





14: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:47:02.65 ID:qLrgdK/x0

2人はよく話すようになった。

すると島村は、美穂が

純真で朗らかな性格をしていることがわかった。

城にきたばかりは流石に沈んでいたが、会話を重ねるうち、

美穂は島村に心を許したようだ。




15: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:47:35.31 ID:qLrgdK/x0

島村の方も、いけないと思いつつ、

美穂に心を寄せた。

美穂は完璧な少女だった。

てらてらと輝く、緑の黒髪。

好奇心がかすかに残る、大きくて綺麗な瞳。

小生意気さと愛らしさで、ぴんと立った鼻。

にっこり笑顔が似合う口。




16: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:48:01.72 ID:qLrgdK/x0

言葉を交わすたび、準備のために服を脱がすたび、

島村は美穂のすべてに溺れたくなる。

唇を吸いたい。

白く、きめの細かなうなじにも

狂ったように口付けをしたい。

自分だけのものにしたい。





17: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:48:30.05 ID:qLrgdK/x0

しかし殿への忠義と恐怖が、島村を抑えていた。

耐えねばなるまい。

いままでもずっと、そうしてきたのだから。





18: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:49:03.64 ID:qLrgdK/x0

閨から出てくると、島村が整えた“少女の美穂”は、

やつれた女になって帰ってくる。

時には、ひどい暴力を受けて

顔が腫れ上がっていることもあった。

なんとむごいことを。

島村は彼女の手当をしながら、共に涙を流した。




19: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:49:50.03 ID:qLrgdK/x0

それでも美穂は、

いままでの女の中では最も長生きであった。

ひょっとすれば、殿は美穂を

人生で最も気に入っているのかもしれぬ。

島村もそうだ。

彼女より美しい少女はいないと思っている。




20: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:51:01.33 ID:qLrgdK/x0

だからつらい。

一息では殺されず、毎夜毎夜じわじわ嬲られ、

ぼろぼろになっていく美穂を見るのが。

「私の人生って、なんなんだろうね」

そうぽつりと言って、寂しそうに笑う彼女を

抱き止められないのが。

耐えねばなるまい。何度もそう思った。

そう思っていた。




21: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:51:29.47 ID:qLrgdK/x0

閨に運ばれる、童子切安綱を見るまでは。




22: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:52:03.50 ID:qLrgdK/x0

美穂は今夜斬られる。

島村は悟った。

大業物安綱は、殿の刀である。

それが閨に運ばれるとは、そういうことだ。




23: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:52:30.12 ID:qLrgdK/x0

島村は丹念に美穂の身なりを整えた。

彼女から以前の美しさは失われつつあったが、

今夜の出来栄えは最高だった。

本当に、殿に渡すのが惜しくなってしまうほどに。

「じゃあね」

閨に入る前、美穂は島村にそう言った。

胸がしめつけられるような笑顔だった。





24: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:53:00.77 ID:qLrgdK/x0

島村は部屋の外で、ありえないと思いつつ

美穂が出てくるのを待った。

待ち続けた。

すると部屋からかすかに、血の匂いがした。





25: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:53:28.24 ID:qLrgdK/x0

それをかいだ時、島村の箍がひとつ外れた。

美穂ちゃん……美穂ちゃん!

島村は、無礼を覚悟で閨に入った。




26: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:56:51.44 ID:qLrgdK/x0

果たして美穂はいた。

美穂1人だけが、そこにいた。

「卯月ちゃん…助けにきてくれたんですね ♪」

彼女は“童子切安綱”で、自分の手首を切っていた。





27: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:57:20.57 ID:qLrgdK/x0

「これは、一体…」

島村は尋ねた。

しかしすでに察していた。

美穂は、いや“藩主の小日向美穂”は、

毎晩1人で閨に入っていたのだ。




28: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:57:51.54 ID:qLrgdK/x0


「それとも、私に抱かれにきたんですか?」

魂さえも奪われそうな微笑みで、美穂が言った。

島村の心はざわめいた。

へその下あたりが、ぞくぞくした。





29: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:58:20.17 ID:qLrgdK/x0

美穂ちゃんはもう、どこへも行かない。

いや、私が行かせない。

島村はにっこりと美穂に微笑み返して、剃刀を抜いた。





30: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:58:47.41 ID:qLrgdK/x0

「そんなもので、私をどうしようっていうの?」

太刀を持って、美穂はじりじりと島村に近づいた。

その表情は、先ほどとまったく変わらない笑顔。

「もとの美穂ちゃんに戻ってほしくて」

島村は、美穂を優しく見つめながら、答える。





31: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 11:59:49.00 ID:qLrgdK/x0

「あぁ…それは、素敵だね!」

美穂が斬りかかる。しかし、遅い。

真剣勝負の経験もなく、

殺めてきたのは腰の立たない女ばかり。

いまの彼女の剣術は、まさに児戯である。

それをゆったりかわしながら、島村は指で宙を掻いた。

どこを切ろうかしら、そう考えているような動きだった。





32: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 12:00:41.75 ID:qLrgdK/x0

美穂の攻撃は全く当たらない。

当然だ。

島村卯月は、狂った戦国を生き抜いた女なのだから。

とうとう美穂は、ぺたりと座り込んだ。

「疲れちゃった」

彼女はそう言った。




33: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 12:01:12.40 ID:qLrgdK/x0

「そうだね」

島村は剃刀を振るった。

すると、美穂の首から顔、

頭、うなじにかけての皮膚が、

するりときれいに剥けた。

まるで、覆面のように。




34: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 12:01:40.89 ID:qLrgdK/x0

美穂の身体が、どさりと倒れた。

島村は、それには目もくれず、

出来上がったばかりの

肉の面を、自分の頭に被せた。





35: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 12:02:19.31 ID:qLrgdK/x0

美穂の香り。

美穂の脂が、肌にあたって心地いい。

美穂の皮が、美穂の目蓋が、

美穂の鼻が、美穂の唇が、

美穂の雪のように白いうなじが、

島村のそれを重なる。





36: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 12:02:56.55 ID:qLrgdK/x0

指でふれるよりも、ずっと近い距離。

「美穂ちゃん…」

島村はうっとりと呟きながら、

自分を激しく慰めた。




37: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 12:03:51.08 ID:qLrgdK/x0

小日向藩には鬼がいる。

かつては島村卯月という人間で、

今は“櫛風”と呼ばれる。

それは可憐な少女を斬り殺して、その血を飲み干す。

血が失くなった後は、顔の皮を剥いで服を作るという。




38: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 12:04:17.97 ID:qLrgdK/x0

人々は、“それ”を恐れる。



39: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 12:05:04.90 ID:qLrgdK/x0

おしまい。



43: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 18:14:44.18 ID:HoIFR8evo

結局殿様は美穂で、卯月は殿様のお手入れを毎回してたってことか?
もう一方の部屋で美穂の相手をする女が準備されていて、毎回美穂に
殺されて熊のエサになっていた。たまに美穂がケガするのは女が暴れるから?
でも美穂は毎回一人で部屋に入ってたとか書いてるし、よくわからん




45: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2017/06/07(水) 20:00:43.41 ID:qLrgdK/x0

>>43

前の女が殺されてから、ですね。
描写が不足しておりまして、申し訳ありません。




元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1462447899/

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