キャラクターメールブロックコレクション3.2 とある魔術の禁書目録II 御坂美琴前→
インデックス「ご飯くれるとうれしいな」一方通行「あァ?」まとめ→
一方禁書 悪条の人のSS一覧 (◆QKyDtVSKJoDf さん)1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:03:51.17
ID:9AxN34Cz0 一方通行「テメエの指でもしゃぶってろ」
インデックス「どーしてそんな冷たいことを言うの!?」
一方通行「半日で冷蔵庫カラにしといてそンなセリフ吐きやがるヤロォにどうやって優しくしろっつンだ? オイ」
インデックス「あくせられーたはもっと広い心を持つべきなんだよ!」
一方通行「テメエの胃袋並みにか? そりゃあ無理だ。聖母マリアだって匙投げンぜ実際」
インデックス「うう~……結局コーヒーでお腹を誤魔化すしかないんだよ……」ンゴクッゴクッゴクッゴク プハァー
一方通行「人のコーヒーを何勝手に飲ンでやがンだしかもそれ最後の一本じゃねェかコラァァァア!!!!!!」
インデックス「じゃあお買い物にいこ? コーヒー無いとあくせられーたも困るよね?」
一方通行「…こンのクソガキ……!」イライライラ…
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:16:52.85
ID:9AxN34Cz0 インデックス「ごっはん♪ ごっはん♪」
一方通行「目障りだからハシャイでンじゃねェよクソガキ。メシを恵ンでもらうンならそれ相応に頭垂れてろ」
インデックス「む」
あまりにもぞんざいな一方通行の態度にインデックスが口をへの字に曲げる。
唇の隙間からギラリと覗く牙に、一方通行の顔が青ざめた。
一方通行「…言っとくがソレやったら絶対メシ食わせねェからな」
学園都市第一位の能力者である(らしい、一方通行自身はそのことを覚えていない)一方通行。
あらゆる力の『向き』をコントロールする力、その力でもって自分に害をなすあらゆる『力』を反射できる彼がこれほど顔色を変えるのには理由がある。
インデックス「……」ムッス~
むくれた顔で一方通行の隣を歩く少女、インデックス。
彼女の纏う修道服――『歩く教会』により、一方通行の『反射』はどういうわけか無効化されてしまうのである。
※インデックスは上条さんと出会っていないため、『歩く教会』が健在です
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:20:35.29 ID:ew7F3MFy0
動く教会パネェ12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:21:03.13 ID:ZdfvyUYVP
おおおおお続きか!13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:24:11.63
ID:9AxN34Cz0 ふと、一方通行は足を止める。
一方通行「おい」
インデックス「なに?」
一方通行「チッと野暮用が出来た。先に行ってろ。いつものファミレスだ」
インデックス「どうしたの? 何かあった?」
一方通行「便所だ便所」
インデックス「……もう少しでお店につくのに?」
一方通行「漏れそうなンだよ。だからサッサと消えろクソガキ。それとも俺の脱糞ショーを見てェかよ?」
インデックス「だ、だっぷ…!! うう、さ、先に行ってるからね!!」タタタタ…!
一方通行「……」
インデックスが離れていくのを確認すると、一方通行は大通りを外れ、人気の無い路地へと消えていく。
一方通行はカエルに良く似た顔の医者が言った言葉を思い出していた。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:31:01.12
ID:9AxN34Cz0 『さて、君はこれから自分が一体どういう人間なのか、どういった人生を送ってきたのか手探りで探していくことになると思うけど』
『なに、慌てることはない。君はのんびり日々を過ごしているといい』
『三日もたたないうちにわかるよ。君がどういう人間だったのか』
『そうだね。ちょっと仰々しい言い方をするならこうなるかな?』
――世界は、そんなに長く君を放っておいてはくれないよ?
一方通行「ハ」
口を歪めて一方通行は笑う。
完全に人通りの切れたその場所で、学園都市に数多存在する影の一つで。
一方通行は6人の男達に囲まれていた。
一方通行「成程、わっかりやすいねェ。随分恨みを買うよォな人間だったワケだ」
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:40:40.75
ID:9AxN34Cz0 ニヤニヤ笑いながら自分を見る男達に、一方通行は少しだけ眉をひそめた。
一方通行(随分と見下してくれンじゃねェか。俺ァ学園都市最強の超能力者(LEVEL5)で通ってンじゃなかったンかよ)
だが、一方通行の小さな疑念は男達の言葉でアッサリと氷解した。
男1「へへ! てめえがどういうわけかひでえ怪我して入院したって聞いた時には耳を疑ったがよぉ!」
男2「まさか、カワイイオンナノコとデートするような腑抜けだったとはな!!」
男3「そりゃどこぞの誰かにボッコボコにやられちまってもしょうがないっすよ『最強』さんよぉ!」
男1~6「「「ギャッハッハッハッハ!!!!」」」
一方通行(あァ、そういうことか)
一方通行は男達に対して腹を立てたりはしなかった。
ただ、ほんの少し。本当にほんの少しだけ哀れに思っただけだった。
確かにオンナノコに振り回される『最強』などお笑い種かもしれないが。
それでも、『最強』であることに何ら変わりは無いというのに。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:47:56.81
ID:9AxN34Cz0 一方通行「…ン? 終わったか?」
まるで他人事のように一方通行は口にする。
事実、彼は男達に対してまったく手を出さなかった。
男4「う…がぁぁ……!」
男1「いてぇ…! 手が…足がぁぁ…!!」
にもかかわらず、男達は一人残らずうめき声を上げ、地面に転がっている。
繰り返すが、一方通行は何もしていない。
それこそ息を吸って吐くような自然さで、男達の攻撃を『反射』しただけだった。
闘いにすらなっていない。最強はやはり最強だった。
男5「すいません…俺たちが調子に乗ってましたぁ…! 勘弁してくださいぃぃ……!!」
迫る死の恐怖に男達は口々に、無様に命乞いをする。
だが、当の一方通行本人はあっさりとその場所から姿を消していた。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:51:26.75
ID:9AxN34Cz0 一方通行「……」
インデックス「あ、遅かったねあくせられーた!」
とあるファミリーレストランで、目の前の光景に一方通行は頭を抱えていた。
インデックス「あまりにも遅かったから、さきにいただいちゃってるんだよ!!」
一方通行「…あァ……」
まったくもって、恐れ入る。
インデックスは大量のカレーをガツガツと口に運んでいた。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:54:27.72 ID:znBFDK/m0
脱糞聞いといてよく平然と食えるな・・23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:56:49.98 ID:lJITt7VF0
しかもカレーな24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 01:58:18.97 ID:O4dJRU4xO
インデックスさんの守備範囲だからしょうがないんです25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 02:02:27.55
ID:9AxN34Cz0 一方通行「ったく、たまンねェな、実際」
一方通行は頭をガシガシと掻きながら当て所なく街を歩く。
どうしてこんな風に街をブラブラしているかというと、部屋に居るとテレビに大ハシャギの居候がうざったくてしょうがなかったからだ。
とはいえ、流石にそれだけでアッサリと部屋の占有権をインデックスに引き渡す一方通行ではない。
街を適当にぶらつくには、それとは別にもうひとつ理由がある。
一方通行は記憶喪失だ。
自分がどんな人間であったかを知るためには、先ほどの男達のような『イベント』が起こったほうが都合がいい。
一方通行(ン…? もし、さっきみてェな連中が、俺の留守中に俺の部屋に乗り込ンできたりしたら…)
一方通行の脳裏にインデックスの顔が浮かぶ。
その姿は目に涙を浮かべて体を震わせ、非常に庇護欲をそそられるものだったがしかし、一瞬後にはそのイメージは『歩く教会』を盾に一方通行に牙を突きたてる獣の姿へと一変した。
一方通行(…心配なンぞいらねェか。俺にどうこうできねェヤツが、この街の誰かにどうこうされるなンて考えられねェしな)
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 02:10:24.20
ID:9AxN34Cz0 一歩通行は街を歩く。
歩いて、歩いて、歩いて―――意図的に街から外れた、廃工場が立ち並ぶ区画へと入っていく。
一方通行(ったく、完全に釣りしてる気分だな。テメエの体を餌にしといてボウズだってンじゃ笑えねェぞ)
既に夕暮れに赤く染まり始めた空を見て、一方通行はため息をつく。
そして――
???「『実験』を開始いたしますが、準備は出来ていますか? とミサカは奇襲をしかけることなく確認を取ります」
一方通行「あァ?」
魚は釣れた。
記憶をなくした一方通行には知る由も無かったが――
――釣れたのは『一方通行』という人間の根幹にも関わる―――大物だった。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 02:19:32.15
ID:9AxN34Cz0 一方通行は声のしたほうを振り返る。
そこにいたのは『まったく見覚えの無い少女だった』。
一方通行(あの制服は…確か常盤台のモンだったか?)
一方通行は『知識』として残っていた部分を総動員して現状の把握に努めようとする。
だが、ダメだ。
どうしても答えが出せない。
名門女子中学生とごっついガトリング・ガンという組み合わせが何を示しているのか想像もつかない。
???「ミサカの検体番号は10020号です、とミサカは申告します。実験の準備は整っていますか? とミサカは返事をしないあなたに苛立ちつつ再度確認を取ります」
一方通行「…ハ、ワケわかンねェことをベラベラと……」
現状の把握は出来ぬまま、しかし一方通行は学園都市第一位に相応しい不敵な笑みを浮かべていった。
一方通行「イイから来いよ。心配しなくても俺はいつだってギンッギンだぜェ?」
ミサカ10020号「それでは実験を開始します、とミサカは引き金に指をかけつつ告げました」
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 02:29:22.51
ID:9AxN34Cz0 ドルルルルル!!!! と連続して爆裂音が響く。
毎分200発という連射性能を誇るガトリング・ガンが惜しげもなくそのスペックを発揮し、次々と弾丸を吐き出していく。
一方通行「ギャッハハハハハハ!!!!」
だがその弾丸は一発として一方通行の体には届かない。
一方通行の体に触れた弾丸は、その皮膚をすべる様に『右へ左へ方向を変えていく』。
絶え間なく弾丸を撃ち出していた銃口は、しかしその全てを吐ききる前に動きを止めた。
ミサカ10020号「どういうつもりですか? とミサカはあなたに問いかけます」
一方通行「あァ?」
ミサカ10020号「どうして弾丸を『反射』せずわざわざ『コントロール』して受け流しているのです? とミサカは矢継ぎ早に疑問を呈します」
一方通行「はァ?」
何言ってるンだこの女? 一方通行はそう思った。
そのまま『反射』なんかしたら、テメエが死ぬだろォが。
一方通行は何の疑問も抱かず、そう思った。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 02:37:32.72
ID:9AxN34Cz0 一方通行は『実験』というキーワードから、今の状況にある程度当たりをつけていた。
一方通行(学園都市で次々発明される新兵器の実験台ってトコかァ? ったく、随分体張って生活費稼いでたモンだな俺ァ)
一方通行はその体に触れた弾丸の『力』を、あらゆる方面から分析できる。
人を殺すためにはもっとこうしたほうがいい、という改良点を見つけ出すことなんて朝飯前だろう。
一方通行(ンで、くっだらねェレポート出して実験終了ってトコかァ?)
もし『実験』が自分の想像していた通りの内容だとしたら、もう十分にデータは集まっている。
一方通行がそう思って気を抜いたその時―――
再び、山のような弾丸が一方通行の体に降り注ぎ。
一方通行の左腕が吹き飛んだ。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 02:42:50.00 ID:kFtGwKr90
一通さんがやさしい36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 02:41:27.25 ID:FcyN5YqA0
右じゃなくてよかったな37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 02:42:29.37
ID:9AxN34Cz0 一方通行「…チッ」
ミサカ10020号「……!!」
その『まさかの出来事』に驚いていたのは、吹き飛ばされた一方通行よりも吹き飛ばした少女のほうだった。
無敵の防御力を誇る一方通行に何故こうも簡単に弾丸が通ったのか。
合点がいかない。
ミサカ10020号を名乗った少女は目を皿のようにして一方通行を注視する。
そして、気付く。
吹き飛んだ左腕から血が出ていない。
ミサカ10020号「義手――!?」
一方通行「正解。ったく、クッソ高ェンだぞコレよォ」
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 02:48:07.45
ID:9AxN34Cz0 そう、今の一方通行に左腕は無い。
一方通行が記憶を失くしたその時、同時に彼は左腕も失った。
一方通行「『反射』はあくまで『俺の体を覆うように』出来てっからよォ、ただの物質であるコレには適用されねェわけだ」
ミサカ10020号「…成程、つまりあなたの反射を初めて打ち破れたミサカの喜びはぬか喜びだったわけですね、とミサカはがっくり肩を落とします」
一方通行「ま、そォいうこった。残念だったなァ」
ひらひらと手を振って一方通行は少女に背を向ける。
――三度、弾丸が一方通行の背中に降り注いだ。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 02:57:15.90
ID:9AxN34Cz0 一方通行「オイオイ」
一方通行は振り返る。
少女の右肩。制服が破れ、血が流れ出している。
突然のことに『コントロール』が効かなかった。
ただ単純に『反射』された弾丸の一部が少女の肩を掠めたらしい。
少女の扱っていた武器がガトリング・ガンだったのが幸いだった。
本来反射によって真っ直ぐ銃口に帰るはずだった弾丸は、次に発射される弾丸に相殺され、一部『ブレ』によって弾道がずれたものだけが少女を襲ったらしかった。
ミサカ10020号「く…」
一方通行「まだ続けンのかよ? つーか、一体どうなったらこの『実験』は終わるンだ?」
一方通行はため息をつきながらガシガシと頭を掻く。
ミサカ10020号「…その結末をミサカ自身に言わせようとするあなたに空恐ろしさを覚えつつ、ミサカはあえてあなたの問いに答えます」
10020番目のミサカを名乗った少女は平坦な声で言った。
ミサカ10020号「あなたによってミサカが殺されたときです、とミサカは断言します」
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 03:08:24.30
ID:9AxN34Cz0 一方通行の動きが止まる。
一方通行「なン…だと…?」
ミサカ10020号「かつてあなたが5463番目のミサカの首を刎ね飛ばしたように、かつてあなたが10000番目のミサカを13の肉片に解体したように」
少女は極めて事務的に、提出されたレポートを読み上げるように続けた。
ミサカ10020号「あなたがこのミサカの心臓を止めたとき、晴れて今回の実験は終了になります。とミサカは――」
少女の声は途中から聞こえていなかった。
一方通行は考えていた。
『実験』。『検体番号』。『10020番目のミサカ』。
一方通行「よォ…ついでだ。もうひとつ復習させてくれよ」
ミサカ10020号「なんでしょう? とミサカはとことん答える覚悟で聞き返します」
一方通行「この『実験』の目的はなンだったっけか?」
一方通行の問いに、少女は何だそんなことか、と呆れた顔をした。
ミサカ10020号「学園都市第一位の能力者である『一方通行』をLVEL6に到達させるための『実験』――『妹達(シスターズ)』と呼ばれる二万人のミサカを二万通りの方法で虐殺することでそこに至るという試み」
ミサカ10020号「今回は、その10020回目の実験になります」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 03:14:35.89
ID:9AxN34Cz0 一方通行「ハ…」
一方通行は理解した。
その歪んだ口からこぼれる笑みは、果たしてどのような意味を含むのか。
一方通行「…ク…クククク……!!」
まずい。あァ、まずい。
一方通行「イイねェイイねェ」
どうしたって口が笑ってしまう。楽しくって仕方が無い。
知っていた。知ってはいたのだ。
だってそれだけは覚えていた。
自分がクソッタレの悪党だってことは覚えていたのだ。
一方通行は笑う。
楽しくて仕方が無いと、嬉しくて仕方が無いと、一方通行は嘲笑う。
一方通行「イイねェ…想像以上にクソッタレじゃねェか、一方通行(アクセラレータ)ちゃんよォ!!!!」
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 03:19:46.23
ID:9AxN34Cz0 ミサカ10020号「それでは実験を再開します、とミサカはあなたに告げます」
一方通行「ハ、それにしてもかたくなに実験進めようとすンのな」
ミサカ10020号「それがミサカの存在理由(レゾンテートル)です」
一方通行「あ、そォ。つまりオマエはそんなに死にたいワケ?」
ミサカ10020号「……」
一方通行「俺に殺されンのがオマエの願いだと、そォ言うわけだ」
ミサカ10020号「はい、とミサカは肯定します」
一方通行「オッケェオッケェ。じゃあ話は簡単だ」
一方通行「俺はテメエを殺さねェ」
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 03:26:54.76
ID:9AxN34Cz0 一方通行「改めて自覚したぜ。俺ァ悪党だ。世界中の全ての人間に唾吐きかけられても文句を言えねェようなクソッタレだ」
まァ実際唾を吐きかけられたらそいつァ殺すけどよ、と一方通行は笑う。
一方通行「人のことなンてどォでもいい、他人がどォなろうが知ったこっちゃねェ。悪党ってのはそォいうモンだ。どこまでも我がままに自己中に。そォだろォ?」
ミサカ10020号「…?」
ミサカ10020号は答えない。答えられない。一方通行の意図が掴めない。
構わず一方通行は口を開く。
一方通行「そンな『世にはばかる大悪党』であるこの俺がよォ」
一方通行「テメエみてェな小娘の願いなンて聞き届けるわきゃねェだろォが」
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 03:31:01.68
ID:9AxN34Cz0 ミサカ10020号「な…」
一方通行「ンじゃ、あばよ。どうしても死にたきゃ石抱いて川に飛び込みな。『俺は知らねェ』」
一方通行はミサカ10020号に背を向けて、今度こそ悠々と歩き出す。
その無防備な背にミサカ10020号は銃口を向けたが、引き金は引けなかった。
引き金は――引けなかった。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 03:41:11.61
ID:9AxN34Cz0 カッチコッチと音が鳴る。
ブツン、とようやく扱いを覚えたリモコンでテレビを消して、インデックスは時計に目を向けた。
インデックス「……帰ってこない」
ソファーにちょこんと腰掛けたまま、入り口のドアに目を向ける。
やっぱりドアが開く気配はない。
インデックス「人がてれびに夢中になってる間に行き先も告げずにコソっと出て行くなんて卑怯なんだよ、まったくもう」
軽口を叩きながらも、その顔は決して明るくはない。
インデックスは何となく知っているからだ。記憶を失う前の彼は、この街のかなりきな臭い領域と関わりがあったことを。
インデックス「……きめた!」
インデックスはいつまでも開かないドアを自分からこじ開けて外に飛び出した。
あたりは既に漆黒の闇。白い修道服のインデックスはどこまでも異質だった。
まるで、そこだけが闇に飲まれず輝いているようだった。
インデックス「あくせられーたを探しに行く!」
だって、彼のことが心配だし、それに―――
インデックス「一刻も早く見つける必要があるんだよ!!」グゥ~キュウルルル~!
また、お腹も減ってきたし。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 03:50:11.77
ID:9AxN34Cz0 インデックスは夜の街を当て所なく駆け回っていた。
何しろ、インデックスはこの学園都市の地理はまださっぱりだし、一方通行の行きそうなところにもまったく心当たりはない。
インデックス「うう…いくらなんでも勢いに任せすぎたかも……」
元気よく駆けていた足は次第にとぼとぼ歩きになり、インデックスはちょっぴり後悔しそうになった。
インデックス「う、ううん! どのみちあのまま部屋でじっとしていることなんて出来なかったんだから私は間違ってない! …かも」
ぶんぶんと頭を振って気持ちを振り立たせる。
そうして彼女がとった行動は。
インデックス「あ、あの、あくせられーたを知りませんか?」
通行人「え?」
聞き込み調査という地道なものだった。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 03:57:32.58
ID:9AxN34Cz0 聞き込みの成果は散々なものだった。
『一方通行(アクセラレータ)』の名を聞いて、ある者は口をつぐみ、ある者は敵意の眼差しを向け、ある者は唾を吐き捨てた。
わかったのは、『一方通行』がこの街でどのように思われているかというだけだった。
インデックス(あくせられーたを知っている人たちは、みんないやな顔をした)
その嫌悪の表情が、完全記憶能力を持つインデックスには克明に思い出される。
見つけてあげたい。インデックスはそう思った。
インデックス「すいません、あくせられーたを知りませんか?」
インデックスは聞き込みを再開する。
その姿は売れないマッチを何とかして売ろうとする少女のようにも見えた。
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 04:03:47.85
ID:9AxN34Cz0 それは本当に突然だった。
インデックス「きゃあ!!」
聞き込みを続け、街をさ迷っていたインデックスは突然『誰か』に押し倒された。
インデックス「なに? なになに?」
インデックスは混乱したまま自分を押し倒した人物を見る。
それは薄汚れた男だった。
きちんとオールバックにして纏められていたのだろう緑色の髪は乱れ、純白のスーツは地べたを這いずり回ったのかひどく薄汚れている。
???「う、あ…ああ…」
そして男は――ひどく怯えていた。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 04:09:51.56
ID:9AxN34Cz0 ???「い…いんで…いんで…っくす…!!」
インデックス「…!?」
名前を、呼ばれた気がした。
でも、わからない。
『インデックスはこの男のことなど何も覚えていない』。
???「うぁ…うあぁ…!!」
男は耐え難い恐怖から逃げ出すようにインデックスの胸に縋りつく。
インデックス「……何か、怖いことがあったの?」
インデックスは優しく男に声をかける。
男は声もなく何度も首を縦に振った。
インデックス「…いいよ……怖いのがなくなるまで、一緒に居てあげる」
???「あ…あぁ……」
慈しむように男の頭を撫でるインデックス。その様は紛れもなく迷い子を救うシスターの姿だった。
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 04:05:17.39 ID:pZemHy5QO
アウレオルス…63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 04:18:07.30
ID:9AxN34Cz0 どれ程そうしていたのか。
気付けば、男はすっかり落ち着きを取り戻していた。
???「…依然。優しいな、君は」
呟くように言って、男は名残惜しそうにインデックスの体から顔を離す。
インデックス「落ち着いた?」
???「無論、この上なくな。感謝しよう、『名も知らぬシスター』」
男は立ち上がる。その姿に先ほどまでの無様さはどこにも無かった。
インデックス「ねえ…もしかして、私、あなたと会ったことがある?」
???「いいや」
男はその顔に微笑を浮かべて言った。
???「私は君のことなど知らないし、君も私のことなど知るまい? つまりはそういう事だ。『名も知らぬシスター』」
男はインデックスに背を向けて両腕を上げる。
インデックスは不思議に思ってその彼の歩む先を覗き込んでみた。
そこには、見覚えのある赤髪の魔術師と、見たことの無い黒いツンツン頭の少年が立っていた。
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 04:22:27.68
ID:9AxN34Cz0 ???「幾久しく健やかに、インデックス」
緑髪の男は最後にそう言い残して去っていった。
インデックスはわけがわからない、と首を傾げる。
でも、それはとても簡単な話。
少女のあずかり知らぬところで男は独り夢を見て。
少女のためだけを思って見たその夢は、けれども少女に一切伝わることなく終わりを告げた。
―――ただ、それだけの話だった。
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 09:45:07.81
ID:9AxN34Cz0 夜が明け、既に日も高く上ったころ。
一方通行は学園都市を一望できる高台の公園にいた。
結局、あの後も部屋に戻る気は起きず、昨夜は適当に屋根のある倉庫で眠った。
自分が一万余の人間を殺した悪党だと知った今、どうしてかあの大食い少女とは会いたくなかった。
一方通行「…チッ。気分わりィぜ、ったく」ズズ…
一方通行は缶コーヒーをすすりながら愚痴を吐く。
自分が何故こんなに腹を立てているのかわからない。
原因がわからないことが彼をさらに苛立たせていた。
いや、と彼は思い直す。
原因のひとつははっきりしていた。
一方通行「…ンで、テメエはいつまで俺に付き纏う気なンだ? オイ」
ミサカ10020号「チチチチ…」
猫「にゃー」タタッ!
ミサカ10020号「あ…」
ミサカ10020号「あなたのせいで猫が逃げました、とミサカは謝罪と賠償を要求します」
一方通行「ざけンな。あの猫ハナっからテメエに怯えてただろが」
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 09:51:20.84
ID:9AxN34Cz0 ミサカ10020号「ミサカたちの体から発せられる微弱な電波に反応していたんです、とミサカはあなたの言葉を否定します。決して、ミサカという存在そのものに怯えていたわけでは…」
一方通行「そォか。消えろ」
ミサカ10020号「ミサカは電球じゃねーんだからついたり消えたりできねーよ、とミサカは子供のやり口で切り返しました」
一方通行「そンじゃ、俺の力で消してやろォかオイ」
ミサカ10020号「それこそミサカの本懐です、とミサカは目を閉じてその時を待ちます」
一方通行「…クソッタレが」
一方通行は苛立たしげにわしゃわしゃと髪を掻き毟った。
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 09:55:58.51
ID:9AxN34Cz0 ミサカ10020号「真面目な話をすれば」
一方通行「あァ?」
ミサカ10020号「ここ数日あなたが『実験』を欠席していたため、かなりスケジュールに遅れがでています」
ミサカ10020号「故に、ミサカは研究所から『殺されるまで戻ってくるな』と厳命を受けています、とミサカはミサカの抱える事情を吐露します」
一方通行「…気持ちイイくらい矛盾してンなあオイ」
一方通行は右手に持った缶コーヒーをすする。
何もかもが最悪の気分だったが、新発売とうたわれていたソレが存外旨かったことだけが救いだった。
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 10:02:47.50
ID:9AxN34Cz0 ミサカ10020号「以上の事情でもってミサカは実験の再開を求めます」
だというのに、コレだ。
自分の命をなんとも思わぬ少女の発言。
気持ち悪ィ、と一方通行は断じた。
こんな気分では旨いコーヒーも台無しである。
一方通行「そンで、俺にはコーヒーすすりながらアンニュイな午後を過ごす暇もねェってか?」
ミサカ10020号「それが研究所の意向です、とミサカは…」
一方通行「もォいい。つまりアレだな?」
グシャ、と鈍い音が鳴る。
一方通行の右手でまだ中身が残っていた缶コーヒーがぐしゃぐしゃに潰されていた。
一方通行「『絶対能力進化計画(テメエら)』この一方通行(アクセラレータ)にケンカ売ってンだな?」
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 10:09:26.92
ID:9AxN34Cz0 ミサカ10020号「え?」
一方通行「結構結構。実は最近暇してたンでなァ。そのケンカ、俺の全能力(全財産)で買ってやるよ」
ミサカ10020号「? ? ? とミサカはいくつもの疑問符を頭に浮かべて大混乱しています」
一方通行「良かったじゃねェかオイ。泣いて喜べ」
ミサカ10020号「意味が分かりません、とミサカはあなたに説明を求めます」
一方通行「馬鹿な実験計画者のおかげで結果的には命拾いだ。俺ァ俺の気分を害した奴ァ許さねェ。よって潰す。完膚なきまでに、塵ひとつ残さずな」
ミサカ10020号「な……!」
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 10:18:05.72
ID:9AxN34Cz0 ミサカ10020号「本気ですか? とミサカは確認を取ります」
一方通行「ったくよォ、折角命拾いしたってのに何だその顔は。もっと小躍りして喜ンだらどうだ」
ミサカ10020号「ミ、ミサカ達は実験動物(モルモット)ですから、突然実験が中止になると言われても、その、どうしたらいいか」
一方通行「オイオイ頼むぜ」
太陽が彼の体を照らしている。
真っ白な光に包まれて、真っ白な少年が歪に笑う。
一方通行「俺ァ一万もの人間を殺してきた悪党だ。狂った虐殺者だ。でもよォ…」
一方通行「あいにく、『人形』の手足もいでケタケタ笑う性癖はねェんだわ」
一方通行「いいか? 俺は人形遊びで喜ぶ変態になンぞ死ンでもなりたかねェからよォ」
一方通行「テメエはあくまで『人間』でいてくれよ」
ミサカ10020号「……!!」
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 10:25:05.95
ID:9AxN34Cz0 一方通行「…なンて顔してンだオマエ。さっきまでのポーカーフェイスはどォした」
ミサカ10020号「…つい、先ほどのことです」
一方通行「あン?」
ミサカ10020号「このミサカの12番目の妹に当たるミサカも、似たようなことを一人の少年から言われました。もっとも、言葉に込められた意図はまったくの正反対だったでしょうが」
一方通行「…細かくメールのやり取りでもしてンの? オマエら」
ミサカ10020号「ミサカネットワーク。ミサカ達『妹達(シスターズ)』は欠陥電気(レディオノイズ)の能力で脳波をリンクさせ、記憶を共有することが出来るのです、とミサカは補足説明をします」
ミサカ10020号「このことは、当然あなたも知っていることだと思いますが?」
一方通行「…興味ねェことはすぐ忘れンだよ俺ァ」
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 10:30:53.58
ID:9AxN34Cz0 ミサカ10020号「ほぼ同時刻に同じ事を頼まれては、さすがのミサカも無碍には出来ません。ミサカは『あなた達』の願いを聞き届けることにしましょう」
一方通行「ちょっと待てコラ。何で上から目線入ってンだテメエ」
ミサカ10020号「…名前」
一方通行「あァ?」
ミサカ10020号「人間には名前があるものです。ミサカを識別する『ミサカ10020号』はあくまで検体番号に過ぎません」
一方通行「ほォ、で? 何でテメエは物欲しそうな顔で俺を見てンだオイ」
ミサカ10020号「……ミサカはあなたに名前をつけてほしい、と甘酸っぱい心中を隠さず吐露します」
一方通行「あァァ!?」
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 10:38:02.03
ID:9AxN34Cz0 一方通行「オイオイオイオイ正気かテメエ? 何で俺がそこまで懇切丁寧にテメエの世話しなきゃなンねェンだ?」
ミサカ10020号「じ~~~~」
一方通行「指くわえてこっち見てンじゃねェ!!」
ミサカ10020号「じ~~~~、とミサカは粘つく視線であなたにおねだりを続けます」
一方通行「いい加減にしろ。知らねェぞ俺ァ」
ミサカ10020号「じ~~~~~~~~~~~~~~」
一方通行「………」
ミサカ10020号「……どうあっても名づけてはくれませんか? とミサカは縋るような思いで再度確認を取ります」
一方通行「………」
ミサカ10020号「わかりました。ミサカはあなたへの2割ほどのリスペクトと8割ほどの嫌がらせでもって今後『一方通子(いっぽうつうこ)』と名乗ります、とミサカは一大決心しました」
一方通行「待て待て待て待て」
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 10:42:34.62
ID:9AxN34Cz0 一方通子(仮)「なんでしょう? とミサカは首を傾げます」
一方通行「やめろ。わかった。考えてやる。やるからそれはマジでやめろ」
ミサカ10020号「わかりました。ならばミサカは座してその時を待ちます」
一方通行「……」
ミサカ10020号「……」
一方通行「…………」
ミサカ10020号「…………」
一方通行(……ヤベエ。マジで死ぬほどどーでもいい。何で俺はこンなクソくだらねェことで頭悩ませてンだァ?)
ミサカ10020号「……」ワクワクテカテカ
一方通行(……めんどくせェ)
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 10:52:29.01
ID:9AxN34Cz0 一方通行「……ミサカでいいだろ」
ミサカ10020号「え?」
一方通行「検体番号が気にいらねェんならそれを抜け。そンでいいだろもう」
疲れたような一方通行の声は、もう勘弁してくれという響きを含んでいた。
ミサカ10020号「何て投げやりな…とミサカは失望を隠さずため息をつきます」
一方通行「どォせ名前変えても一人称変わンねえだろォがテメエ」
ミサカ10020号「あ」
ミサカ10020号改め『ミサカ』はそれで納得したようだった。
ミサカ「しかし成程、この名前には『妹達(シスターズ)』の中でも唯一無二のミサカとなれ、という意味が込められているのですね、とミサカはあなたの深謀遠慮に感動を覚えつつ……」
一方通行「なにやらひたってっとこ悪ィがよ」
ぶつぶつと呟くミサカに一方通行は声をかける。
一方通行「近頃物忘れが激しくってなァ。研究所に俺を連れて行け」
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 10:58:44.85
ID:9AxN34Cz0 ミサカ「研究所をひとつ潰してもまた別の研究所にデータが移されるだけですが」
一方通行「そりゃハンパにやるからだ。やるなら徹底的に、研究に関わった学者さンを皆殺しにする勢いでいかなきゃよォ」
ミサカ「…まあ、確かに実験の要であるあなたがそのように動けば、実験はたちどころに中止でしょうが、とミサカは自ら自分の問いに答えます」
一方通行「なンでもいい。とにかく連れて行け」
ミサカ「了解しました、とミサカは従順に首を縦に振ります」
一方通行「あァその前にまずは病院だ」
ミサカ「病院?」
一方通行「俺の左手吹き飛ばしたンはテメエだろうがよ」
ミサカ「ついでにミサカの肩の傷も治療しろ、というあなたなりの優しさですね、わかります。とミサカはわかりました」
一方通行「おめでてェ脳ミソだなァオイ。勝手に言ってろボケ」
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 11:07:35.45
ID:9AxN34Cz0 一夜が明けて、インデックスはフラフラだった。
インデックス「うぅ~、あくせられーたは見つからないし、お腹はすくし、寝不足だし、もう散々なんだよ」
グゥ~キュルル~、と3m離れていても聞こえるような音を鳴らしながらインデックスは歩く。
インデックス「ごはん…あくせられーた…ごはん…あくせられーた……」ブツブツ…
ぼんやりしていたのが良くなかった。
ドン、と誰かにぶつかった。慎ましい胸にインデックスの顔が埋もれる。
インデックス「わっぷ! ご、ごめんなさい」
???「構いません、今のはコチラも不注意でした、とミサカは気遣いの言葉をかけます」
インデックス「あ、あの…ごはん…じゃなかった、あくせられーたを知りませんか?」
???「…! 知っています、とミサカは即答します」
インデックス「や、やった! ようやく報われるときがきたんだよ!!」
???「知っている、というどころではなく、実はミサカは今彼の元に向かっている真っ最中です」
インデックス「ほ、ほんと!?」
ミサカ10032号「一緒に来ますか? とミサカはあなたに問いかけます」
インデックス「うん!!」
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 11:16:28.23
ID:9AxN34Cz0 小高い丘に立ちながら一方通行は眼下の研究所を睨みつける。
ミサカ「現在実験データの分析は主に二つの研究所が担っています。あそこに見えるのがそのひとつです」
ミサカ「何か作戦はあるのですか? とミサカは確認を取ります」
一方通行「オイオイ、誰に向かってクチ聞いてンだ?」
ミサカ「学園都市第一位であり最強の能力者、一方通行に対してです」
一方通行「よォくわかってンじゃねェか。なら黙って成り行きを見守ってな」
一方通行が地を蹴る。その体が宙を舞う。
その白い髪をたなびかせて、酷薄な悪魔が舞い降りる。
一方通行「果たして何分持つかなァ」
本当に楽しそうに一方通行は笑った。
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 11:32:25.18
ID:9AxN34Cz0 研究所は恐慌状態だった。
その研究所は一方通行に嬲られ、蹂躙された場所とはまた別の場所。
『欠陥電気(レディオノイズ)』計画発案者、天井亜雄(アマイアオ)が勤めるソコは、まさに『実験』の中核と言える場所だった。
天井「くそ! 何故、何でこんなことに!!」
一方通行が反乱を起こした。その知らせを受けたのはつい十分前だった。
だというのに、その三分後には壊滅したとの連絡が入って、その五分後には彼がここに現れたという情報が入った。
まさにそれは悪夢としか言いようがなかった。
天井「くそ、くそ、くそ!! おい、何を落ち着いているんだ!! お前もデータ持ち出しを手伝え!!」
天井亜雄が怒声を飛ばす。
くたびれたジーンズに白いTシャツ、その上から白衣を羽織るというシンプルな服装のその女の名は芳川桔梗(ヨシカワキキョウ)。
芳川は天井とは対照的にひどく落ち着いた様子だった。
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 11:33:57.38
ID:9AxN34Cz0 芳川「いつか、こんな日がくるんじゃないかとは思っていたわ。あの子は私と違って『優しい』子だったから」
天井「優しい? ふざけたことを言うな!! 今まさにあの悪魔はここを襲撃している真っ最中だろうが!!」
芳川「知ってる? あの子ね、自分から人を殺したことはなかったの」
天井「…若年性痴呆にでもかかったか?」
芳川「失礼ね。私の脳は健在よ」
そう、芳川桔梗は知っていた。彼女はその『甘さ』でもって実験対象の過去を調べずにはいられなかった。
そして知った。
彼は、襲い来る脅威を、ただ迎え撃っていただけだった。
その彼が初めて自らその武器を振るったそのワケは―――
芳川「これが優しさじゃなくて、何なのかしらね?」
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 11:39:18.77
ID:9AxN34Cz0 「うあぁーー!!!!」
「く、くるなーーーー!!!!」
悲鳴が聞こえた。近い。
悪魔は、もうすぐそこまで迫っている。
天井「ひ、ひいぃ!!」
天井は実験データを諦めた。
彼はただ自分の命を優先した。
死にたくない。いやだ。
どうすれば、どうすれば、助かる?
――賭けるしかない。芳川桔梗の戯言に。
もし、あの悪魔が『そんな理由』でここに来たというならば。
とるべき道は、ひとつしかない。
天井「うああああ!!!!」
絶叫と共に彼は駆け出した。
彼の切り札が眠る、その部屋へ。
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 11:47:57.23
ID:9AxN34Cz0 一方通行「こォ~ンにィ~ちわァ~~」
バゴン、と扉が弾けて一方通行が顔を覗かせた。
芳川「久しぶりね、一方通行」
一方通行「ハ、悪ィな。最近物忘れがひどくってよォ、どうでもイイやろォの顔なんて覚えてねェんだわ」
芳川「冷たいわね。それで、私も殺すのかしら?」
ミサカ「勘違いしないでください」
芳川の言葉を訂正したのは遅れて部屋に入ってきたミサカだった。
ミサカ「この人は未だ誰一人殺してはいません、とミサカはあなたの言葉を否定します」
芳川「そうなの?」キョトン
一方通行「…チッ、だから何だっつーンだオイ」
芳川「優しくなったわね、一方通行。本当に…優しくなった」
一方通行「ナニ愉快な戯言ぬかしてンだコラ。クチ開けねェように顔面グシャグシャにしてやろォかァ?」
芳川「あら、だったら早く逃げなきゃね。優しい悪魔の気が変わる前に」
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 11:55:29.13
ID:9AxN34Cz0 一方通行「…ホントに舌ねじ切るぞテメエ」
芳川「一方通行、あなたにコレを渡しておくわ」
一方通行「聞いちゃいねェな。トコトン人を舐め腐りやがって。で? こりゃナニよ」
芳川「『ある女の子』人格プログラムよ。『甘い』私にはあの男を止められなかった。もしかしたら、これが必要になるときがきてしまうかもしれない」
データを受け取って目を通してから、一方通行は気付く。
芳川の白いシャツが一部赤く染まっている。
じわじわと広がる赤い染みは、もはや芳川の手で覆い隠せる範囲ではなくなっていた。
――『甘い』私では彼を止めることが出来なかった、とっは、成程そォいうことか。
一方通行は納得する。
一方通行「……悪党の分際で、ここぞという時ばっか偽善者ヅラすンじゃねェよ。胸糞悪ィ」
それは、果たして誰に対しての言葉だったのか。
芽生えた疑念を一方通行は頭を振って振り払った。
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:01:04.26
ID:9AxN34Cz0 一方通行は歩みだす。
傷ついた芳川になど目も向けない。
ただ、彼の『敵』の居場所だけを聞き出して、彼は進む。
一方通行「サッサと消えろ。5分でここは消し飛ぶぜ」
それでも、たった一言。
気遣いなど何もない。
『威圧』のためだけの言葉を彼は残した。
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:09:45.93
ID:9AxN34Cz0 そこは、その研究所の最深部にあった。
人目をはばかるように建てられた研究所のさらに奥、何重ものセキュリティをかけられたその先に『彼女』は居た。
天井「く、くく…遅かったな一方通行」
カプセルの中で浮かぶ『彼女』の傍で、天井亜雄が笑っている。
狂った笑みを浮かべている。
天井「にわかには信じ難かったが…実験動物(モルモット)と仲良く並んでいるところを見ると、本当に『そう』らしいな一方通行」
一方通行「はァ? 何がよ」
天井「10019人も殺しておいて、今さら救おうというのか? ふざけたことをぬかすなよ快楽殺人者」
一方通行「オイオイ、テメエこそ腹がよじれそォな捏造はやめてくれよ。いいか、テメエがここで死ぬのは、たったひとつのシンプルな理由なンだぜェ? いいかオイ…」
一方通行「『テメェ等は俺を怒らせた』。それだけが理由だ。よォく頭に叩き込んで来世まで持っていけ」
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:14:53.56 ID:5fKMm7x70
承太郎www125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:19:12.20
ID:9AxN34Cz0 天井「ふん…真実はすぐにわかるさ。さて、それでは『彼女』の紹介をさせてもらおう」
天井亜雄は傍らのカプセルに浮かぶ少女を指した。
天井「彼女の名は『打ち止め(ラストオーダー)』。検体番号は20001。『妹達(シスターズ)』を統括する上位個体だ」
目を瞑ってフワフワと水中を漂う少女の顔は、確かに隣にいるミサカに良く似ていた。
だが、明確に違う点がひとつ。
幼い。
『打ち止め』と呼ばれた少女はおおよそ10歳ほどの体格だ。
天井「『上位個体』…その意味がわかるか?」
天井の言葉にミサカの顔色が変わる。
ミサカ「駄目!! 早く!!」
天井「もう遅い!! 命令(コマンド)は入力済みだ!! 『妹達(シスターズ)』、一方通行を殲滅せよ!!!!」
天井の指がコンソール上のスイッチを―――押した。
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:25:29.81
ID:9AxN34Cz0 『打ち止め(ラストオーダー)』と呼ばれた少女がゆっくりと目を開く。
ミサカ「はやく逃げて! とミサカは――!!」
天井「はははは!! 貴様の馬鹿げた反乱が、モルモットのためではないとしたら、その手で薙ぎ払ってみせろ!! 一方通行!!!!」
一方通行「…くっだらねェ真似しやがって!!」
天井「さあやれ! 『反射』を許すな!! 爆弾を抱いて突っ込むくらいのことはやってみせろ!!」
打ち止め「やだ」
天井「…はぁ?」
その場の空気が止まった。
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:32:15.94
ID:9AxN34Cz0 カプセルの中で、打ち止めと呼ばれた少女が拳を握る。
天井「待て、オイ、何をしている。私はそんな命令(コマンド)入力していない!!!!」
打ち止め「やぁーーーー!!!!」
バリン! とガラスの割れる音がした。
バシャバシャとカプセルを満たしていた液体が盛大にあふれ出す。
少女は飛び散ったガラスの破片を器用に避けて着地した。
打ち止め「おぉ! いちかばちかだったけどこの上なくうまくいったよ! ってミサカはミサカは自画自賛してみる!!」
天井「ふざけるな! 私の命令に従え!! このモルモットが!!!!」
打ち止め「実験動物(モルモット)じゃない!!」
打ち止めは真っ直ぐに天井亜雄の目を見つめる。
打ち止め「ミサカは、ミサカ達は『人間』だもん!! ってミサカはミサカの革命宣言!!!!」
完全無欠に素っ裸のまま、打ち止めはぐん、と胸を張った。
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:32:42.65 ID:8YL3zxTA0
裸と聞いて132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:34:27.80 ID:7meW/Ejn0
セロリさんおっ立てんなよ133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:35:06.02 ID:o1DvK0kf0
シュールだな135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:38:07.10
ID:9AxN34Cz0 一方通行「…ありゃなンの冗談だ?」
ミサカ「残念ながらこの上なく本人は真剣です、とミサカは頭を抱えます。それと、一つだけ弁明させていただきますが」
一方通行「あァ?」
ミサカ「今のミサカは『あれ』よりはまだ育っています、とミサカはなけなしのプライドを振りかざします」
一方通行「心底どォでもいい情報をありがとよ」
打ち止め「うぎゃーー!! ミサカ裸じゃん!! とミサカはミサカは今さらながら気付いてみたりっていやいやそんな舐めまわすように見ないで誰か助けてーーー!!!!」
一方通行「…『上位』個体なんだよな?」
ミサカ「認めたくないことですが」
打ち止め「おお! 何故かこんなところに毛布発見!! この子を当面の相棒に決定!! ってミサカはミサカは運命の出会いに感謝してみる!!」
一方通行「…なンかどっとやる気失せたなァオイ」
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:44:14.54
ID:9AxN34Cz0 一方通行「ま、そォも言ってられねェか」
天井「あ、あう…う……!!」
一方通行「さァて、舐めた真似かましてくれた天井君とやらよォ。どうしたい? どうして欲しい?」
ニタニタ笑いながら一方通行が近づいてくる。
一方通行「Aコース! 全身の骨バッキバキのマリオネット状態!! Bコース! 脳天から皮をひン剥いていく『バナナの気持ち実感コース』!! えェと、それからァ…」
天井「は…はあぁ…!」
カプセルから溢れてきた液体に、別の液体が混じりだす。
一方通行は本当に嬉しそうだった。
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:47:24.59 ID:8YL3zxTA0
ひっでえコースだなwwwwwwww139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:47:13.10 ID:VIqUqDTqO
バナナの気持ち…
ゴクリ…141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:49:22.66
ID:9AxN34Cz0 打ち止め「うわぁ、あの人真性のSなんだねってミサカはミサカはちょっと引いてみたり」
ミサカ「もしかすると極度の被虐主義の裏返しなのかもしれません、とミサカは一般論を振りかざします」
打ち止め「そうなのかな? ちょっとそれは想像できないなってミサカはミサカは自分の想像力の貧困さにがっくりしてみる」
ミサカ「まあ、どちらだとしてもミサカは対応してみせますが」
打ち止め「えっ?」
ミサカ「えっ?」
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:51:51.00 ID:rn9M8IZNO
なにそれこわい145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/14(日) 12:58:53.02
ID:9AxN34Cz0 轟音と共に、そんな軽口を叩きあっていた二人の体が吹き飛んだ。
一方通行は振り返る。
轟音の正体は爆発だった。
自分達が入ってきた入り口が、もくもくと煙を上げている。
打ち止め「う…」
ミサカ「うぅ……」
爆風に吹き飛ばされた二人の口からか細いうめき声が響く。
チリ…と一方通行のうなじが逆立った。
いる。煙の奥に、誰かが立っている。
その男は白衣を羽織っていた。
その顔には研究者なのに刺青が入っていた。
男の両手には、奇妙なグローブがついていた。
一方通行「…で、誰よテメエ」
???「ハ! 研究所を襲い始めたって連絡受けたときは気持ち悪ぃ正義感に目覚めちまったかと心配しちまったがよぉ」
男は一方通行を恐れていない。相手が一方通行と知りながら、その顔には微塵の怯えも見えない。
木原「変わらぬムカツキっぷりで嬉しいぜぇ!! アクセラレータぁ!!」
男は――学園都市の暗部『猟犬(ハウンドドック)』リーダー、木原数多(きはらあまた)は笑った。
次→
インデックス「お腹がすいたんだよ」一方通行「そォか」【後編】
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