絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」その11

2012-01-14 (土) 10:02  禁書目録SS   4コメント  
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599: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:17:12.04 ID:RkzLvHgvo

絹旗 「あ、そのブーツじゃおかしいんで。この靴つかってください」

黒夜 「これまた光沢があるな」ハキハキ

絹旗 「サイズ大丈夫ですか?」

黒夜 「な、なんだよこの靴。歩きづらい……」ヨテヨテ

絹旗 「超歩きづらいですよね。私も2回ぐらい履いて、その後はしまいっぱなしです」

黒夜 「なんでそんな靴出してきやがったぁぁぁ!」

絹旗 「その服に合うと思いまして」

婚后 「確かに、見る分にはバランスはいいですわね」

黒夜 「おまいら人を着せ替え人形かなんかと勘違いしてんだろ。絶対そうだ」

婚后 「そんなとんでもない」

絹旗 「今の私たちは、いわばシンデレラに登場する魔女ですよ」

黒夜 「……なんだ。私は灰でも被ってるっていうのか」

絹旗 「被ります?」

黒夜 「いい。……で、絹旗ちゃんはそのままで大丈夫なの?」

絹旗 「どうなんでしょ」



600: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:18:24.09 ID:RkzLvHgvo

婚后 「大丈夫でしょう。学生の身分なら制服は正装だと言い張れますから」

黒夜 「えー、私だけこんな目に合うのは納得できない」

絹旗 「そりゃ私だって。超いい雰囲気のお店にいくなら、それなりに着飾りたい願望はありますよ」

黒夜 「だったら」

絹旗 「でも、でもですよ。そんな服装をして、夜7時とか8時に帰ってきたらどうなります?」

黒夜 「どうなんの?」

絹旗 「寮監に超捕まります。そして私は、明日の朝日を拝めません」

黒夜 「……」

婚后 「約束された未来のようなものですわね」

絹旗 「だから私は制服で超ガマンします……」

黒夜 「まあ……あの寮監相手じゃしょうがないよな」

絹旗 (ちょろいです)

黒夜 「じゃ、もう行くの?」

婚后 「ええ。そろそろ出て、ちょうどいいぐらいでしょうか」

絹旗 「ユリコ、留守番を超お願いしますね」

ユリコ 「( ・ω・)ノ」シュタッ



601: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:19:50.71 ID:RkzLvHgvo

~同日 第5学区 とある大通り~


黒夜 「まだ5時半だってのに空は真っ暗だな」トテトテ

絹旗 「もう12月も半ばですからね」トテトテ

婚后 「最近はすっかり冷え込んでまいりましたしね」

絹旗 「ところで、次はどんなところですか」

婚后 「昼間が創作和食のコースでしたので、今度は西洋料理になります」

黒夜 「こんな服装を要求されるってことは、それなりに格式高い店なんだろうな……」

絹旗 「格式が高けりゃ値段も超高いでしょうね」

婚后 「そんなまさか。最初に申し上げた通り、リーズナブルな店を選んでおりますので」

絹旗 「婚后さんのリーズナブルの基準が超わからないですよ」

黒夜 (ていうか、雰囲気からお嬢って呼んでたけど、本物のお嬢だったんだな)

婚后 「貴女方だって、そこそこの奨学金は得ているでしょうに」

絹旗 「だからって、普段の食事にあそこまでかけないです」

黒夜 「腹に入っちゃえば同じだしな」



602: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:21:09.41 ID:RkzLvHgvo

婚后 「普段から通ってる訳でもありませんわ。たまーーにの外食だとかで利用しているだけで」

黒夜 「私にとっての外食は二郎なんだけどな」

絹旗 「前について行きましたけど、超エライ目にあいました」

黒夜 「残しちゃうんだもんなー。食べ物と店長に謝れよ」

絹旗 「"小"であんなのが出てくると思わないじゃないですか。食べても食べても減らないですし」

婚后 「凄絶でしたのね……」

絹旗 「帰ってから、なんか内蔵が超グルングルンして気持ち悪かったんですからね」

婚后 (いったい何を食べたらそうなるのでしょうか)

絹旗 「超呻く私を見かねた白井さんが、背中とかお腹をナデナデしてくれたぐらいです」

黒夜 (……絹旗ちゃん、モテなさ過ぎて同性に走ったか)

婚后 (白井さん、報われない恋の果てに暴走を……)

絹旗 「……なんか二人とも、超失礼なこと考えてませんか?」

黒夜 「別に。仲いいなーって嫉妬してただけだよ」プイ

婚后 「お二人はルームメイトでありパートナーですもの」クスクス

絹旗 「?」



603: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:22:45.71 ID:RkzLvHgvo

~とある商業ビル~


黒夜 「レストランて何階なの?」

婚后 「18階ですわね」


<チーン


絹旗 「お、18階に到着したみたいですよ」

婚后 「目的のお店は……ああ、こちらですわね」

受付 「いらっしゃいませ」ペコリ

黒夜 「」ブーッ

絹旗 「……なんかどっかで見たような」

黒夜 「」コソコソ

絹旗 「ちょ、なんですか。なんで私の後ろに隠れてんですか」

婚后 「本日18時で予約をさせて頂いた者……あら?」

受付 「……おや、君たちはたしか黒夜の」



604: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:24:39.80 ID:RkzLvHgvo

婚后 「もしや、あの時のカマキリロボの方ですか」

絹旗 「あ、言われてみれば。髪型が違うんで一瞬気づきませんでした」

婚后 「今日は黒夜さんもお借りしておりますわ。ほら」グイ

黒夜 「わ、ちょっ」

受付 「なんだ、お前もいたのか」

黒夜 「うっせ……ていうか、なんでいるんだよ」

受付 「生活のためのバイトだ。以前のような収入はもう見込めないのだからな」

黒夜 「駆動鎧道楽をやめりゃどんだけ余裕があるか……」ブツブツ

受付 「おっと、今はバイト中だ。TPOに反した行為をとるところだった」

婚后 「では、案内をお願いできますかしら」

受付 「ご予約のお客様ですね。お席にご案内致します。こちらへどうぞ」

 :
 :
 :

黒夜 「……」

絹旗 「どうしたんですか、一体」



605: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:25:52.17 ID:RkzLvHgvo

黒夜 「いや……この服装をイジられるのもムカつくけど、スルーされるのもムカつくなって」

絹旗 「女子か」

黒夜 「女子だよ!」

婚后 「複雑な乙女心の表れですわね」クスクス

絹旗 「あー、つまり褒めてほしいんですか」

黒夜 「…………んなワケあるか」

婚后 「はいはい、お二人とも。まもなく料理がきます。そこから後半戦開始ですわ」

絹旗 「西洋料理ならまだなんとかなりそうです」

黒夜 「やべ、緊張してきた」ドキドキ

店員 「お待たせいたしました。こちら、パンと」コトッ

絹旗 (わ、超おいしそう)

店員 「前菜のスモークサーモンのサラダになります」コトッ

絹旗黒夜 「「鮭……」」

婚后 「?」

店員 「失礼致します」ペコリ



607: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:27:19.24 ID:RkzLvHgvo

婚后 「さ、どうぞ」

絹旗黒夜 「「いただきまーす」」

絹旗 「お、超おいしい」パリパリ

黒夜 「鮭はこういう使い方もあるのか……」

絹旗 「ところで、この後は何がくるんですか?」

婚后 「さあ? わたくしはディナーコースとしか注文しておりませんので」

黒夜 「決まってないの?」

婚后 「この後はパスタ・メイン・ドルチェ・お茶の順番なのは確定です」

絹旗 「昼間よりもメンバー少ないんですね」

黒夜 「その方が正直助かる」パリパリ

絹旗 「お、パンも超おいしいです。これパン屋に出しても売れますよ」ハモハモ

黒夜 「そりゃそうだろ」カチャ...

婚后 「……」

黒夜 「食べないの?」

婚后 「ええ、頂くといたしましょう」



608: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:29:19.13 ID:RkzLvHgvo

~しばらくして~


店員 「こちら、シチリアのトマトを使用した冷製スパゲティになります」コトッ

婚后 「はい、どうも」

店員 「失礼致しました」ペコリ

黒夜 「冷たいスパゲティ……この時期に?」

絹旗 「結構美味しいですよ」クルクル

黒夜 「あまり馴染みがないな」クルクル

婚后 「サラダ等にも使われるではないですか」

黒夜 「ああ、そういう感じか」カチャ

絹旗 「あ、超甘い。酸っぱいと思ったのに」

黒夜 「おー、なんか新鮮な感覚……」

婚后 「……」

黒夜 「素麺みたいなものか」

絹旗 「いや、超違うでしょう」



609: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:30:58.10 ID:RkzLvHgvo

黒夜 「家でもできるかな」

婚后 「レシピと材料さえあれば、そう難しくないかと」

黒夜 「簡単そうで良さげだなぁと思って」

絹旗 「鮭を焼く以外に何もできない人間が何を言ってんですか」

黒夜 「な、なんだよ。あれから私だって料理の練習してるんだからな」

絹旗 「はいはい」

黒夜 「まっ、負け惜しみは程々にな」フン

絹旗 「なっ……ぐぬぬ……」

婚后 「はいはい、そこまでそこまで。いがみ合っていては味覚も濁りますわよ」

絹旗黒夜 「「はーい」」

 :
 :
 :

店員 「こちら、鴨胸肉のローストになります」コトッ

絹旗 「おぉ」

店員 「失礼致しました」ペコリ



610: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:32:21.88 ID:RkzLvHgvo

黒夜 「鴨って美味しいの?」

絹旗 「寮の食堂で出たことありますけど、美味しいですよ」

黒夜 「じゃ、さっそく」スチャ

絹旗 「あ、超柔らかいです」

黒夜 「……おいひい」

婚后 「この柔らかさは見事ですわね。臭みも抑えられておりますし」

黒夜 「え? 鴨って変な匂いするの?」

絹旗 「クセは強いらしいですよ」

黒夜 「この肉、全然そんな感じしないじゃん」パク

婚后 「家で料理してもこうはなりませんのに……コツを教えてほしいですわね」

黒夜 「家にいるときに鴨なんて使うんだ……」

婚后 「ええ、うどんに入れたりとか」

絹旗 「ネギは超欠かせませんよね」

黒夜 「あ、もしかしてカモネギってそういう意味?」

婚后 「鴨とネギの相性が良いということですわね」



611: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:33:38.45 ID:RkzLvHgvo

黒夜 「なるほどな。だからネギが鴨しょってくるのか」

絹旗 「逆です、逆」



~食後~


黒夜 「……いい紅茶だ」ズズ...

絹旗 「ドルチェ、でしたっけ? あのチョコレートムース超おいしかったです」ハゥ

婚后 「さて……落ち着いたところで、総評と参りましょう」

絹旗 「☆3つ」

黒夜 「頂きました、☆3つです」

婚后 「このお店ではなく、貴女方のです」

絹旗 「あ、やっぱりそっちですか」

黒夜 「いよいよ結果が出るのか……」

婚后 「」ウーン

絹旗 「どうしました?」

婚后 「いえ、どこからどこまで申し上げたものかな、と」



612: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:34:31.28 ID:RkzLvHgvo

絹旗 「別にビブラートに包む必要も超ないかと」

黒夜 「ビブラートに包んでどうすんだよ」

婚后 「そうですわね。ではご本人のためにも、はっきりと申し上げましょう」

婚后 「まず、黒夜さん。昼食のときですが、箸の持ち方がまるでなっておりません」

黒夜 「」

婚后 「加えて刺し箸、探り箸、涙箸、回し箸……ええ、正直申し上げて溜息を抑えるのに必死でした」

黒夜 「そ、そこまでかよ……」

絹旗 「超仕方ないですよ。黒夜は普段手づかみで食べてるんですから」

黒夜 「食べてねぇ!」

婚后 「さらに」

黒夜 「まだあんの!?」

婚后 「魚の焼物が出てたと思いますが、もう少し綺麗に食べた方が良いかと」

黒夜 「……だって、骨とるの苦手なんだもん」

婚后 「悪いところだけではアレですので良いところも挙げておきますと。
    お二人とも、お米を一粒も残さず食べたのには感心いたしました」

黒夜 「だって勿体ないじゃん」

絹旗 「前に浜面にすっごい怒られたので」



613: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:35:41.02 ID:RkzLvHgvo

婚后 「昼食に関してはこれぐらいでしょう。次に、この夕食」

婚后 「まず、絹旗さん。パンは丸かじりで食べてはいけません」

絹旗 「えっ」

婚后 「こういう席では、ちぎって食べるものです」

絹旗 「は、はい……」

婚后 「それと、これはお二人に言えるのですが」

絹旗黒夜 「「」」ゴクリ

婚后 「ナイフで肉を切るとき、往復させてはダメです。ノコギリではないのですから」

黒夜 「え……ダメなの?」

婚后 「ナイフで切るときは、引く動作のみで切るのが正解ですわね」

絹旗 「そういえばこれは授業でも言われました……」

婚后 「以上が、主に気になったところですわね」

黒夜 「主に、なのか」

婚后 「本っ当に細かいところまで突いたら、まだまだございますが」

絹旗 「いっ、いいですよ。もう許してくださいよ」



614: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:37:18.19 ID:RkzLvHgvo

婚后 「さて、ここまでを鑑みて。お二人に優劣をつけるならば」

絹旗黒夜 「「……」」

婚后 「勝者は絹旗さんでしょう」

絹旗 「いえす!」

黒夜 「……うん、これはなんかもう予感できてたわ」ゲンナリ

婚后 「やはり黒夜さん、箸の持ち方が大きなマイナスになりましたわね」

黒夜 「ちくせぅ……」

婚后 「お二人も、これからこういう席に出ることも増えるでしょうから。覚えるに越したことはございませんわよ」

絹旗 「こういう席といいますと?」

婚后 「そうですわね、身近な例えですと結婚式だとか」

黒夜 「それフラグ? だれか結婚するってこと?」

絹旗 「超最有力候補は浜面と滝壺さんでしょう」

婚后 「結婚式ではなくとも、例えば素敵な殿方に誘われたりとか」

黒夜 「喪女一直線の私たちには関係ないな」

絹旗 「なんで私まで超一直線なんですか!」



615: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:38:27.90 ID:RkzLvHgvo

婚后 「さて、お二人ともこの後お時間はお有りですか?」

黒夜 「全然平気」

絹旗 「門限まではまだちょっとありますね」

婚后 「ならばもう一店付き合って頂きましょう」

黒夜 「え、まだマナー講習があるのかよ」

婚后 「いえ。昼も夜もこういったお店では肩が凝りますから。最後に気楽なお店でお茶でも飲みましょう」

絹旗 「お、いいですね」

黒夜 「お嬢の基準で気楽ってどんなだよ」

婚后 「ミサワさんのお店を想像してください。ちょうどああいった感じですわ」

黒夜 「あ、だったら大丈夫かな」

絹旗 「じゃ、行くとしましょうか」

黒夜 「あ、待って。だったら先に着替えたいんだけど」

絹旗 「え? 黒夜の服なんか全部寮に超置いてきちゃいましたよ」

黒夜 「うそ!?」

絹旗 「だから今日はその服で帰っていいですよ」



616: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:39:30.12 ID:RkzLvHgvo

黒夜 「」

婚后 「あ、すみません。お会計を」ノシ

店員 「はい、少々お待ちください」

黒夜 「」

絹旗 「おぉ、超嬉しさのあまりバグっちゃいましたか」

婚后 「女子ですもの。お洒落して浮かれてしまうのもムリはございませんわ」クスクス

受付 「失礼致します。こちら本日の伝票になります」

婚后 「一括でお願い致します」つ【カード】

受付 「畏まりました。……おい、どうしたんだ」

黒夜 「」

絹旗 「そっとしておいてあげてください。喜びを超かみしめてるんですよ」ニヨニヨ

受付 「そうか……ずっとぼっちだったからな。友人と食事を取るだけでも嬉しいのだろう」

黒夜 「」



 ☆ここまでの戦績☆

  絹旗 2―1 黒夜



617: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/26(土) 21:40:14.68 ID:RkzLvHgvo

といったところで、今回はここまでです。
絹旗2連勝で一歩リード、どうなるのでしょうか。

次回投下は3日以内に。
お付き合い頂き、ありがとうございました。



619:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空):2011/11/26(土) 21:45:38.84 ID:Uqsmrprr0

ディナーはいくらだったんだろう・・・
昼よりは高いんだろうが、それをカードで一括て・・・ww



623:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/11/27(日) 00:24:24.61 ID:DLanrg3f0

今日も乙なんだよ。



625:名無しNIPPER:2011/11/27(日) 08:29:31.63 ID:xpWyeBUDO

乙ですー
今回も面白かったです


もう少しTPOさん絡むかと思ったけどそうでもなかったな黒夜かわいい



620:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/11/26(土) 22:11:36.97 ID:1tz4m/Lpo

引き切り用って、日本向けの食卓ナイフ?
西洋は包丁や鋸など刃物全般を押して切る文化だから、食卓ナイフも押し切るように刃付けされてるはずだけど……

まぁ、押し引き両方やるのはマナー違反ではあるんだろうけど



622:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/11/26(土) 22:32:24.95 ID:uAOkskaKo

引く云々ってのは親父に言われたことがある



628: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:38:36.22 ID:9gH47bQuo

>>620
ググってみました。引いて切るナイフって日本だけなんですね。
無知でお恥ずかしい限りです。


それでは、始めさせて頂きます。
折り返しの第4回戦です。



629: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:39:42.61 ID:9gH47bQuo

~翌日 第7学区 とある路地~


黒夜 「絹旗ちゃん、服返すの洗濯してからでいい?」

絹旗 「いいですよ、いつでも。どうせすぐには着ないですから」

黒夜 「あ、絹旗ちゃんが洗濯しないでそのままの方がいいって言うなら」

絹旗 「超さっさと洗ってきやがれです」

黒夜 「じゃそうさせてもらうわ。……んで、今日はなんなの?」

絹旗 「さあ……超相変わらず時間と場所しか教えてもらってませんから」

黒夜 「ここが待ち合わせポイントだよな」

絹旗 「ええ。それで今日の当番の方がいるハズで」

黒夜 「誰だろうな」

浜面 「俺だぁ!」

絹旗黒夜 「「……」」

絹旗 「もっと超力強く!」

浜面 「俺だぁぁぁぁ!!」



630: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:40:35.70 ID:9gH47bQuo

黒夜 「愛を訴えるように!」

浜面 「滝壺、俺だぁぁ!」

絹旗 「歌舞伎風に」

浜面 「あ、この俺様よぉ!」

黒夜 「ワンピ風に」

浜面 「俺だぁ!」ドドン

浜面 「って何やらしてんだ、お前らは!」ペシッ ペシッ

絹旗 「いたっ」

黒夜 「ふぎゃ」

浜面 「という訳で、俺だ」

絹旗 「浜面、また運転手ですか。超ご苦労です」

黒夜 「で、車はどこ? さっさと乗っちゃいたいんだけど」

浜面 「違うから! 今日の審判はなんと俺だから!」

絹旗 「えー、なんで浜面なんですか」



631: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:42:20.25 ID:9gH47bQuo

浜面 「いや、俺も場違いじゃないかと思ったけどよ……滝壺から」


  ――はまづらが入ったら丁度7人だから。


浜面 「って言われてな」

黒夜 「つまり数合わせか」

絹旗 「やっぱり浜面は超浜面です」

浜面 「俺すげぇ。始まってから5分も経ってないのにこの言われ様だよ」

絹旗 「私、不戦敗でいいんで今日は帰りますね」

浜面 「おいおい」

黒夜 「絹旗ちゃんが帰ってどうすんだよ。だったら私が帰るよ」

絹旗 「いや、私が」

黒夜 「いやいや、私が」

浜面 「あ、だったら俺が」

絹旗黒夜 「「どうぞどうぞ」」

浜面 「お前ら息ピッタリだな! 実は二卵性双生児だろ!」



632: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:43:21.82 ID:9gH47bQuo

~同日 第7学区 とある廃ビルの一室~


絹旗 「なんだかんだ言って来ちゃったワケですけど」

浜面 「ま、絹旗は口では色々言うけど身内や仲間にゃ甘いからな」

絹旗 「」ポカポカ

浜面 「痛い痛い」

黒夜 「で、ここはなんなの? ボロビルにしか見えないけど」

浜面 「あー、お前らさ。俺が元々スキルアウトの一員だったのは知ってるか?」

絹旗 「知ってますよ。いつも"俺はボスだったんだYO"って超自慢してたじゃないですか」

黒夜 「へえ、そうなんだ」

浜面 「俺、自慢してたか……? ま、ともかく、ここはその頃使ってたアジトの一つだ」

絹旗 「随分ホコリ溜まってますけど」ツー...

浜面 「今となっちゃ近づく人間もいないだろ」

黒夜 「ま、ここがどういうとこなのかは分かったけど。こんなところで何やんの?」

浜面 「詳しいところはこれから説明する。その前にだ」

絹旗黒夜 「「?」」



633: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:44:24.19 ID:9gH47bQuo

浜面 「お前ら、今日の持ち物全部、ここに置いていってくれ」

黒夜 「はあ? なんで?」

浜面 「勝負の公平性を保つために預かるだけだ。帰るときにそのままお返しする」

絹旗 「携帯もですか?」

浜面 「むしろ携帯を持たれてたら困るな」

黒夜 「まあ、分かったよ」

絹旗 「ちゃんと後で返してくださいよ」

浜面 「なくなってるモンがあったら殴るなり弁償させるなりすればいいさ。全面的に応じるぜ」

黒夜 「つっても財布と携帯とハンカチぐらいしかないな」

絹旗 「カバンと……超ほとんどこの中です。あとはパスケースぐらいですね」

浜面 「じゃ、本当に出したかどうか身体検査を」

絹旗黒夜 「「殴るぞ」」

浜面 「ハイ、スミマセン」

黒夜 「そんで次は?」

浜面 「じゃ、絹旗。とりあえずこの部屋で待機しててくれ」



634: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:45:14.31 ID:9gH47bQuo

絹旗 「このドアですか」ガチャ

浜面 「あ、そうそう。今日のルールでな、能力使ってなんかしたら即失格だからな」

絹旗 「……分かりました」

黒夜 「何が始まるってんだ」

絹旗 「超普通の部屋ですけど」


<バタン


絹旗 「え?」トテテテ

絹旗 「あ、あれ? 開かない? え?」ガチャガチャ

絹旗 「浜面! これはどういうつもりですか!」

絹旗 「浜面ー!」ドンドン



<開けてくださいー!
<ドンドン


黒夜 「いいのか?」



635: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:46:20.99 ID:9gH47bQuo

浜面 「今はいいんだ。で、黒夜。お前はこっちの部屋」

黒夜 「私も監禁されんの?」

浜面 「ま、そんなところか?」

黒夜 「誰かーーー! 誰か助けてーーーー!!」

浜面 「」

黒夜 「スキルアウトに監禁されてあんなことこんなことされちゃうーーー!!」

浜面 「しねぇっての!」ガシッ

黒夜 「モゴッ」

浜面 「なんもしないから、入って待ってろ」ポイッ


<バタン


黒夜 「……」

黒夜 「」ガチャガチャ

黒夜 「開かない……よな。やっぱり」

黒夜 「こんなドアなら簡単にブチ破れるけど……能力使ったら失格だもんな」



636: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:47:33.07 ID:9gH47bQuo

絹旗 「なんだっていうんですか、いったい」

絹旗 「…………早く開けてくださいよ」


<あ、あー、マイクのテスト中。


絹旗 「?」


<よし、お前ら!今日のルールを説明するぞ!
<この先生き残るためには何が必要か?
<俺は洞察力、行動力、判断力、そして咄嗟の閃きと考える。


絹旗 「……」

絹旗 「多いでしょ」


<それが備わっているかどうか、が今回の勝負のキモだ。
<お前らは、能力以外の全てを総動員してその部屋から脱出してもらいたい。
<つまり、今回の勝負は密室脱出ゲームだ!


絹旗 「先に脱出した方が勝ちってことですか」

絹旗 「だから持ち物没収ですか……超なるほどです」



637: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:48:51.22 ID:9gH47bQuo

<制限時間は日没まで、つまりあと6時間強ってところだな。


黒夜 「なるほどねぇ。そういうことか」

黒夜 (やることなくてネットの脱出ゲームやりまくってた私有利♪)


<さあ、勝負はもう始まってるぞ。
<おい絹旗、いつまで壁の角っこで体育座りしてんだ。


黒夜 「」ブフッ

黒夜 「……やべ、想像したら萌えた」

黒夜 「よしよし、始めるか」

黒夜 (こういうのはまず、難しいことは考えず虱潰しに調べまくるのが定石なんだよな)

黒夜 「目立つもんは机、ベッド、冷蔵庫……そんぐらいか」

黒夜 「元々はスキルアウトのアジトだしな。隠し扉とかあるかもしれないな」

黒夜 「……ん?」

黒夜 (天井に何かあるな……ありゃなんだ?)



638: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:50:20.48 ID:9gH47bQuo

~その頃~


絹旗 「さて、何からしましょうか……」

絹旗 「とりあえず出口ですね。入ってきたドアを超調べてみましょうか」トテテテ

絹旗 「……」

絹旗 「」ガチャガチャ

絹旗 「開かない……」

絹旗 「」ペタペタ

絹旗 「上下左右、紙一枚差し込む隙間も超ないですね……」

絹旗 「んー……あ」

絹旗 「鍵穴……?」ツンツン

絹旗 (鍵穴があるということは、鍵もどこかにある……?)

絹旗 (どの道、今の段階でドアはどうにもならないですね)

絹旗 「部屋の中を超探索してみましょうか……とりあえず気になるのは」

絹旗 「机の上に、これ見よがしにあるノートPCですね」



639: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:51:22.85 ID:9gH47bQuo

 :
 :
 :

浜面 「」←モニター中

浜面 「ふふふ、二人とも頑張っておるな」

浜面 「だが、一筋縄ではいかんぜ」

浜面 「ネタ集めのために古今東西の脱出ゲームをプレイし」

浜面 「時間をかけて準備したこの"密室"、そう簡単には破れんよ」

浜面 「しかも、しかもだ」

浜面 「他の連中、揃いも揃ってLEVEL4の頭脳を持つ奴らがアイディアを出し合ってくれた!」

浜面 「これはそう簡単には解けまいて」

浜面 「さて」ガサガサ

浜面 「俺は昼食をとりつつ、高みの見物とさせてもらおう」

浜面 「おう……さすが滝壺弁当、俺の好物ばっかりだ」

浜面 「いただきまーす♪」



640: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:52:44.64 ID:9gH47bQuo

~1時間後~


<1時間経過だ!調子はどうだ?頑張れ!


絹旗 「」orz

絹旗 「あぅぅ……」


  【ログインパスワードを入力してください】


絹旗 「思いつく限りのものは試しましたけど……ダメですか」

絹旗 (ヒントもなしってのは超あんまりです)

絹旗 (あ、もしかしてパスワードのヒントになるものがどこかに?)

絹旗 「パソコンは超置いといて、ほかの場所を調べてみましょうか」

絹旗 「んー」キョロキョロ

絹旗 「ベッド、ですね」ポムポム

絹旗 「……あ!」

絹旗 「ベッドの下になにか落ちてる……」ググ...



641: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:54:27.68 ID:9gH47bQuo

絹旗 「……届かない」

絹旗 「も、もうちょいなんですけど……」ググ...

絹旗 「ぐぬー……」グググ...



浜面 (絹旗、あのポーズでもスカートの中見えないのか……角度が計算されてんだな)フム



絹旗 「あーもー!」

絹旗 「能力OKならベッド持ち上げちゃうんですけどねー……」

絹旗 「マジックハンドとかないんですか?」キョロキョロ

絹旗 「ないですよね。はーあ……」


  ボキッ


絹旗 「ふぎゃっ!」ドテッ

絹旗 「な、なんですかこのパイプベッドは! 人が腰かけたぐらいで超ポッキリと!」プンスコ

絹旗 (……ん、これ使えば)



642: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:55:33.99 ID:9gH47bQuo

絹旗 「長さは超大丈夫そうですね」


  折れたパイプを手に入れた


絹旗 「さっきのベッドの下の……よっ……」

絹旗 「あっ、このまま……んしょ……」


  USBメモリを手に入れた


絹旗 「……」

絹旗 「もしかして、これをさっきのPCに超接続すれば!」トテテテ

絹旗 「」カシュ


  【ログインパスワードを入力してください】


絹旗 「」orz

絹旗 「なんなんですか、もーー!!」



643: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:56:53.85 ID:9gH47bQuo

~その頃~


<ナンナンデスカモー


黒夜 (絹旗ちゃんは苦戦中か)

黒夜 「さて……部屋中探して出てきたのは」


  - 緑文字で2と書かれたメモ
  - 赤文字で六と書かれたメモ
  - ズゴック


黒夜 「んー……」ガシガシ

黒夜 「なんで冷蔵庫にズゴックが入ってたんだ? しかもシャア専用」

黒夜 (意味のないダミーか、それとも深い意味が……?)

黒夜 「それに、天井にくっついてるアレも気になるな」

黒夜 (手が届かなくて取れないけどさ!)ケッ



644: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:58:22.45 ID:9gH47bQuo

黒夜 「せめて踏み台になるものはないのか」トテトテ

黒夜 「……垂直跳びで届く高さじゃないな」

黒夜 「んー」ペタペタ

黒夜 「壁のここ、なんか切れ目が」

黒夜 「?」ツンツン


  クルン


黒夜 「お、引っくり返って取っ手になった」

黒夜 (これ引っ張ったら……もしかして)ドキドキ

黒夜 「世界崩壊のトリガーが」

黒夜 「なーんてな」グイ


  ガララッ


黒夜 「お、隠し梯子? 横スライド式になってたのか」

黒夜 (これ登れば余裕で届くな)カンカン



645: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/27(日) 23:59:34.61 ID:9gH47bQuo

黒夜 「天井のコレを、よっと」スポッ

黒夜 「これは」


  アイスピックを手に入れた


黒夜 「色々使えそうだな」

黒夜 「」<グゥー

黒夜 「そういやハラ減ったな……昼食ってないもんな」

 :
 :
 :

浜面 「そろそろ2時間が経つ頃か」

浜面 「何の役にもたたないダミーアイテムを紛れ込ませたけど」

浜面 「見抜くことはできるかな?」

浜面 「」【マイクON】ポチッ

浜面 「あー、2時間経過だ! 適度に休みつつ頑張れ!」

浜面 「」【マイクOFF】ポチッ

浜面 「さて、先に出てくるのはどっちかねぇ」



646: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/28(月) 00:00:04.33 ID:Dy0g78jEo

といったところで、今回はここまでです。
密室脱出対決、その先に待つのは希望か、絶望か。

次回投下は3日以内に。
お付き合い頂き、ありがとうございました。



648:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/11/28(月) 00:02:11.65 ID:PdGaS4YIO

ゴンとキルアがG.I入る前に別室で修行してたのを思い出した。



649:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/11/28(月) 00:09:25.13 ID:6j/FrL4DO

シャアズゴはええモンじゃけぇのぉ



657:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/11/28(月) 01:36:38.69 ID:i72RFz7k0

古今東西の脱出ゲームやりまくりってwww

そのやる気を試験に出せ



658:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州・沖縄):2011/11/28(月) 02:01:03.00 ID:4lmGYSsAO

>>657
お前掃除の時に積んである漫画読破したこと無いのか?
それが今の浜面だ
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763131206/horiz-22/



662: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 21:36:07.58 ID:P78F8Kjao

絹旗 「……」ウーン

絹旗 「目的は脱出……考えてみたら、手段は問われてませんよね」

絹旗 「」トテトテ

絹旗 「浜面ー」コンコン

絹旗 「ねぇー、浜面ぁー、ちょっと着替えを手伝ってほしいんですけどぉ☆」


<何言ってんだ?お前着替えなんか持ってなかったろ。


絹旗 「……」

絹旗 「作戦超失敗です」チッ


<さて、そろそろスタートしてから2時間半ほどか。
<俺から1つアドバイスだ。部屋の中は隅々の隅々まで探索したほうがいいぞ。


絹旗 「今更、何を超当然なことを」

絹旗 「……あ、そういえば冷蔵庫はまだ見てませんでしたね」

絹旗 「あれ?」



663: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 21:38:17.92 ID:P78F8Kjao

絹旗 (マグネットでメモ用紙が)ペリッ


  メモを手に入れた


絹旗 「んーと」


  AWEDXZ gyujnb ftyhbv HUIKMN


絹旗 「……」

絹旗 「?」

絹旗 (なんですか、コレは……)

絹旗 「ま、まあ、コレは超置いといて。冷蔵庫の中は、と」ガチャ

絹旗 「あ、なんか色々入ってる」


  金属製のボトルを手に入れた
  木のブロックを手に入れた
  バターナイフを手に入れた


絹旗 (ちょっと手持ちのアイテムを見なおしてみましょうか。机もあることですし)



664: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 21:40:48.37 ID:P78F8Kjao

絹旗 「このボトル、なんでしょうね。超冷たいですけど」

絹旗 「」カパッ

絹旗 「水……?」

絹旗 「」スンスン

絹旗 「匂いもしないですね……なんだろ」

絹旗 「飲めるかどうかもわかりませんし、とりあえず蓋閉めて置いておきましょうか」パチン


  金属製のボトル→謎の液体


絹旗 「次に……この木材はなんでしょうか」

絹旗 (手にすっぽり収まる大きさの立方体。でも継ぎ目も蓋もない。この形で超切り出した感じですね)

絹旗 (振っても、中に何か入ってる感じしませんし)フリフリ

絹旗 「よく分からないので超放置ですね」

絹旗 「バターナイフは、まあ。となると、あとはコレですか」


  AWEDXZ gyujnb ftyhbv HUIKMN


絹旗 「なんでしょうねー……」ウーム



665: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 21:44:13.71 ID:P78F8Kjao

絹旗 「パソコンのパスワードにしちゃ超長すぎる気が」

絹旗 「大体、こんなたくさんキーボードで打とうとすると間違え」カチャカチャカチャカチャ

絹旗 「!?」

絹旗 (も、もしかして!?)

絹旗 「S、h、g、J……Enter、と」カチャカチャ タン


  【ようこそ】テレンテレン


絹旗 「きたぁぁ!」ピャー

絹旗 「ふん、所詮バカ面が作った暗号なんて超こんなもんですよ」フンス

絹旗 「……でも、デスクトップにはゴミ箱しか……あ!」

絹旗 「USBメモリ!」カチカチ

絹旗 「テキストファイルが1つ……?」カチカチ


  賽を砕き頭を垂れよ。さすれば氷の鍵が手に入らん。


絹旗 「……」

絹旗 「?」



666: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 21:46:49.97 ID:P78F8Kjao

~その頃~


黒夜 「行き詰ったな……」

黒夜 「」ガサガサ


  - 緑文字で2と書かれたメモ
  - 赤文字で六と書かれたメモ


黒夜 「これは確実に何かを解除するためのヒントだよな」

黒夜 「んー」ガシガシ

黒夜 (そういえば、なんで緑とか赤のペンで書いてんだ?)

黒夜 (色にも何か意味が?)

黒夜 「あー、わかんねー」ノビー

黒夜 「……お?」

黒夜 (さっきはスルーしちゃったけど、壁にカレンダーがあるな)

黒夜 「」トテトテ



667: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 21:50:01.48 ID:P78F8Kjao

黒夜 「何の変哲もない、今年の今月のカレンダーか」

黒夜 「……ん」

黒夜 (7日のところが丸がついてる……誰かの誕生日か?)

黒夜 「黄色で丸…………黄色?」

黒夜 「他のメモは緑の2と赤の六……そういうことか」

黒夜 (色は並び順を表してるとしたら。つまり276が何かを解除するキーだ)

黒夜 「」ピラッ

黒夜 「見つけた」

黒夜 「カレンダーの裏に壁埋め込み式の金庫……3列のダイヤル式ロック」

黒夜 「ははぁ、これの番号ってワケだな」

黒夜 「2……7……6、と」チキチキチキチキ

黒夜 「残念だったな、絹旗ちゃん。この勝負は頂いたぜ」

黒夜 「オープン!」ガチャガチャ

黒夜 「」ガチャガチャ

黒夜 「あれ?」



668: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 21:53:51.81 ID:P78F8Kjao

黒夜 「くそ、なんでだよ!」ガチャガチャ

黒夜 (なんか間違ったか……?)

黒夜 「」ガサガサ

黒夜 (緑の2、黄色の7、赤の六……ん?)

黒夜 (そういやなんで6だけ漢数字なんだ?)

黒夜 「……あーーもーーー、わっかんねーー!」ガシガシ

黒夜 「はー、上手くいかないな……」ポスン

黒夜 (ここ入ってからどれぐらい時間経ったんだ? 絹旗ちゃんはもう出てたりしてな……)ゴロン

黒夜 (まさか私、ずっとここから出られないのかな……うぅ、そんなのヤダ)

黒夜 「……?」

黒夜 「ベッドの横の壁、なんかここだけ色違くないか?」ペタペタ

黒夜 「」コンコン

黒夜 (向こう側に空間がある!)

黒夜 「でもこれ、どうやって……あ、これならいけるかな」【アイスピック】スチャ

黒夜 「」ゴリゴリ

黒夜 (やった! これなら剥がせる!)ゴリゴリ



669: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 21:57:20.22 ID:P78F8Kjao

~開始から3時間経過~


浜面 「」ズズ...

浜面 「……うまい」

浜面 「そろそろ3時間か……」

浜面 「時計も窓も無い、自由意思で出入りも出来ない密室にこれだけの時間、一人でいるとなると……」

浜面 「本人が自覚してる以上に、体力と精神力を消耗してるもんだ」

浜面 「頭も使ってるしな。あいつらもそろそろ疲れ始めてくる頃だろ」

浜面 「さあ、正念場だぜ」

浜面 「ここからは自分との戦いだ」

浜面 「二人とも、ゴールには着実に近づいてるんだからな」

浜面 「頑張ってくれよ」

浜面 「」サクサク

浜面 「……やっぱ滝壺とフレメアの作るクッキーは絶品だな」ウン



670: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 22:01:16.02 ID:P78F8Kjao

絹旗 「……意味分かりません」


  賽を砕き頭を垂れよ。さすれば氷の鍵が手に入らん。


絹旗 「とりあえず、超最初から順番に考えてみましょうか」

絹旗 (賽を砕き。賽って、サイコロですよね)

絹旗 (サイコロって……まさかさっきの木材ですか?)

絹旗 (でも他に該当しそうなものも……よし)

絹旗 「床に置けば超確実でしょうね」【木のブロック】コトッ

絹旗 「」【折れたパイプ】スチャ

絹旗 「絹旗流……乱れ雪月花ッ!!」ブンッ


  パカーーーン  コロンコロン...


絹旗 「お、超きれいに真っ二つ」

絹旗 「……え? 中に鍵が!?」


  小さなカギを手に入れた


絹旗 (なんで……確かに切ったり接着したりした跡とかなかったのに)



671: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 22:04:09.07 ID:P78F8Kjao

絹旗 (……あー、そういえばこういう芸当が超できる人がいますね。二人ぐらい)

絹旗 「あれ? 割れたもう片方のサイコロは」キョロキョロ

絹旗 (げ、机の下に超吹っ飛んじゃいましたか)

絹旗 (一応回収しときますか、なんもないでしょうけど)モゾモゾ

絹旗 「……む?」

絹旗 (机の下の……こんなところの床に鍵穴?)

絹旗 (なんか超怪しいですね)ツンツン

絹旗 「あ」

絹旗 「頭を垂れよ……机の下に潜れってことだとしたら」

絹旗 「さっきのカギを、ここに」【小さなカギ】


  カチリ


絹旗 「開いた!」パカッ


  白い箱を入手した


絹旗 「……なんだこりゃ」



672: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 22:07:16.74 ID:P78F8Kjao

絹旗 「と、とりあえず机の下からでましょうか……あ、スカート超めくれてた」モゾモゾ

絹旗 「発泡スチロールの小箱?」パコン

絹旗 「あ、これも真っ二つ。……お?」

絹旗 (中が超くりぬいてあって……鍵の形?)

絹旗 「!」


  さすれば氷の鍵が手に入らん。


絹旗 (も、もしかして……)

絹旗 「さっきの謎水を型に、零さないようにそーーーっと……」【謎の液体】+【白い箱】

絹旗 「あれ? なんか超濁ってきた……ま、いいや」

絹旗 「あとは、こいつを冷凍庫に」バタム

絹旗 (……でも、これが超正解だって保障もないですね)

絹旗 「とにかく、早く凍ってください……超お願いです」

 :
 :
 :



673: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 22:10:23.10 ID:P78F8Kjao

~その頃~


黒夜 「」ゴリゴリ

黒夜 「よし、剥がれた」

黒夜 「隠し棚とは、やってくれるねぇ」

黒夜 「……なにかあるな」


  金属片Bを手に入れた


黒夜 「……コレ、カギだよな?」

黒夜 (でも短すぎね? こんなの鍵穴に入れたらすっぽり入り込んじゃうぞ)

黒夜 「コイツをどうにかして使えるようにすれば……」

黒夜 「……」ウーン

黒夜 (色々考えたけど、やっぱり)

黒夜 (あの壁の金庫は空けとかないと、すっきりしないよな)



674: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 22:13:10.85 ID:P78F8Kjao

黒夜 「2、7、6」チキチキチキチキ

黒夜 「」ガチャガチャ

黒夜 「やっぱダメか……」

黒夜 (この部屋で入手した3つの数字)

黒夜 (それを使うのはほぼ確定なんだよ)

黒夜 (……もう一度、先入観抜きで考え直そう)

黒夜 「さっきのメモは机の上に広げてたよな」

黒夜 「さて……」ギシ

黒夜 「一つ目は緑の2、二つ目は赤の六、三つ目は黄の7」ペラッ

黒夜 (……この色を見て信号の並びを連想したけど、それが違うのか?)

黒夜 (それと、最初は気にならなかったけど赤だけ漢数字ってのもなんか引っかかる)

黒夜 「やっぱり赤の六、あっ」トンッ


  ガシャン


黒夜 「やべ、ズゴックさん落としちゃった」

黒夜 「あーぁ、見るも無残なズゴ/ックに……あれ!?」



675: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 22:16:44.81 ID:P78F8Kjao

黒夜 (上半身と下半身の結合面に……数字の4!?)

黒夜 (シャア専用ズゴックって、おいおい、まさかまさか)

黒夜 「」トテテテ

黒夜 「2、7、4」チキチキチキチキ


  ガチャッ


黒夜 「空いた……」ヘナヘナ

黒夜 「そうか、漢数字は一つだけ、仲間ハズレ……だから使わない」

黒夜 「一杯食わされた、クソッ! それで、中には」


  金属片Aを手に入れた


黒夜 「これか!」ゴソゴソ

黒夜 「こいつとこいつを……やっぱりピッタリだ」【金属片A】+【金属片B】カシャン


  ドアのカギを手に入れた


黒夜 「これで!」ガチャガチャ

黒夜 「開いたぁぁ!」バーン



676: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 22:20:03.45 ID:P78F8Kjao

絹旗 「浜面ー、早くお茶持ってきてくださいよ」サクサク

浜面 「へいへい、ただいま」

黒夜 「」ズコー

絹旗 「あ、黒夜。やっと出てきましたか。超待ちくたびれましたよ」

黒夜 「な、あ……」ペタン

浜面 「何言ってんだ。お前だってついさっき出てきたばっかだろうが」

絹旗 「」テヘ

黒夜 「何分差……?」

浜面 「正確には分からんが、5分もないだろうな」

絹旗 「というワケで、今回は私の超勝利です」フンス

黒夜 「いや、うん……脱出の達成感が大きくて、今は勝敗とかどうでもいい気分だ」

絹旗 「超分かります。私も脱出した直後はそうでしたから」

浜面 「そういやお前、なんで出てくるなり俺にタックルかましてきたんだよ。びっくりしたぞ」

絹旗 「いや、まあ……それは、なんかつい抱き着い……」ゴニョゴニョ

黒夜 「」ポケー



677: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 22:21:57.88 ID:P78F8Kjao

絹旗 「く、黒夜はいつまで床に座りこんでるんですか」

黒夜 「なんか、気が一気に抜けちゃって」

浜面 「で、お前ら。この浜面様が腕によりをかけて準備した密室、どうだったよ」

黒夜 「そうだ! てめぇ、よくもブービートラップみたいなマネしやがったな! なんだよあのメモ!」

浜面 「お、引っかかっちゃった? はは、そうでないとな!」

黒夜 「アレがなけりゃ私が勝ってたんだ……!」

絹旗 「あの氷のカギは超驚きましたね。数分で凍っちゃったんですから」

浜面 「あー、アレはな、水に仕込みをしといたんだよ。やりようによっちゃ冷凍庫に入れなくても凍るぜ?」

絹旗 「え? マジですか? 何か混ぜたとか?」

浜面 「いや、何の変哲も無い普通の水だ」

絹旗 「?」

浜面 「とにかく、楽しんでもらえたようで結構! さて、お前ら腹空いてないか?」

絹旗黒夜 「「」」<グゥー

浜面 「昼メシ抜きだったもんな。これから遅めの昼食と洒落込もうじゃないの」

絹旗 「あ、浜面。食事は立会人が超奢ってくれるルールなんですけど」



678: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 22:23:41.27 ID:P78F8Kjao

浜面 「なにぃ!? 初耳だぞ!?」

絹旗 「ここまでの人も奢ってくれましたよ。婚后さんにいたっては超高級コース料理を昼と夜ですよ」

浜面 「リアルお嬢とヒモを比較するな!」

黒夜 「とうとう自分でヒモって言い出したよ、こいつ」

絹旗 「ねー、たまにはいいじゃないですかぁ。私、今日は超頑張ったんですよ?」ヒシッ

浜面 「おい、腕にひっ、ひっつくな!」

黒夜 「……」ヒシッ

浜面 「左腕にはお前かい!」

黒夜 「なー、ハラ減ったよ。ドロッドロに濃いラーメンとか食べたいー」

絹旗 「いきなり一人で閉じ込められて、超心細かったんですよ? 嘘ですけど」

黒夜 「もう出られないかもと思って、すごい不安だったんだぞ? 嘘だけどさ」

浜面 「嘘か! 嘘なのか! 最後の5文字さえなけりゃ可愛げもあるのに!」

絹旗 「ねー、浜面ー」スリスリ

黒夜 「頑張った私たちへのご褒美だと思ってさぁ」ベタベタ

浜面 「あーもう、わかったよ! その代わり、一人1000円までだからな!」



679: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 22:25:57.69 ID:P78F8Kjao

絹旗黒夜 「「ゴチになりまーす♪」」

浜面 「はー、くそ。これでしばらく昼メシは水っ腹でございますよ」

絹旗 「そうと決まれば超さっさと行きましょうよ」

黒夜 「こんなホコリっぽいところに長居することもないよな」

浜面 「へいへい、分かりましたよ……で、そろそろ腕離せよ。歩きづらいっての」

絹旗 「……超お断りです。逃げられたらたまったもんじゃないですから」ヒシッ

黒夜 「……逃走防止のためだよな。仕方ない」ヒシッ

浜面 「俺を確保された容疑者かなんかと勘違いしてんだろ、まったく」ハァ


<さて、何か食いたいもんはあるか?
<化学調味料を過積載した濃い~ラーメン。
<えー、私もうちょっと超サッパリしてるものがいいです。



 ☆ここまでの戦績☆

  絹旗 3―1 黒夜



680: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/29(火) 22:26:41.05 ID:P78F8Kjao

といったところで、今回はここまでです。
絹旗怒涛の3連勝で王手をかけました。
次回、絹旗が引導を渡すのか、黒夜が逆襲をかけるのか。

次回投下は3日以内の予定です。
お付き合い頂き、ありがとうございました。



682:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/11/29(火) 22:27:47.90 ID:1TJPirlE0

>>1乙!!
水は過冷却?だったかをしたのか



688:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/11/29(火) 23:22:16.99 ID:MR47UdUDO

帝凍庫「俺が凍らせました」



686:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/11/29(火) 22:51:36.71 ID:5cDztjHz0

両手に窒素姉妹

爆ぜろ浜面



695:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/11/30(水) 01:16:50.12 ID:35G3SiPg0

え?何?皆暗号の意味わかったの?
わかんないの俺だけ?



697:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/11/30(水) 04:30:52.73 ID:FTIm76Lo0

>>695
メモに書いてあるアルファベットのキーに指置いてみて



698:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2011/11/30(水) 09:25:42.63 ID:kBAOZYBU0

マジレスする場面でないととしりつつ、ごめん
過冷却にしてたなら、机にコトっておいたりしただけで固まっちゃうし、普通の冷凍庫だとモーターの微細な振動で過冷却はおこらないよ
>>1



701:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/11/30(水) 13:53:39.20 ID:0sjVvqYHo

>>698
実は容器がすごくて衝撃完全除去の上に冷却機能付きなんだよ、流石学園都市製の実験器具だ



707: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:09:08.75 ID:CYbFiIhzo

>>698
まったくご指摘の通りです。
水をさっさと凍らせる手段を考えたとき、過冷却水以外の方法が
思いつかなかったので、苦しいかなと思いつつ採用した次第です。



769:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/03(土) 01:36:21.28 ID:r/koGL5i0

乙乙

>>707 過冷却水は、冷蔵庫で簡単にできるよ。



704:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陰):2011/11/30(水) 16:26:44.57 ID:KtEQmGD1o

過冷却前提ならもしモアイが水を飲んでいたら・・・・・・・



707: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:09:08.75 ID:CYbFiIhzo

>>704
そういえば、過冷却水ってぐいと飲んだらどうなるんでしょうね。
手に入れたら飲んで試してみたいもんです。


それでは、始めさせて頂きます。
絹黒シリーズ後半戦に突入です。



705:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/11/30(水) 16:53:54.05 ID:31hRo6t5o

絹旗「はまふら、ふぁつほてひーぷきふひへほかひてくあはい」
訳「罰としてディープキスして融けるまでベロチューしやがれ」

こうですかわかりません



708: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:10:16.68 ID:CYbFiIhzo

~数日後 第7学区 学舎の園付近~


黒夜 「……遅いな」

黒夜 「……」トントン

黒夜 「暇だな……あ、iPod nanoの電池やばい」シャカシャカ

黒夜 「」シャカシャカ

黒夜 「いつも いつも あなたのそばで」タンタン タンッ♪

黒夜 「愛を つーよーく 抱きしめたいよ」タンタッ タッ♪

黒夜 「めぐり逢い」クルッ♪

絹旗白井 「「」」ジー...

黒夜 「」ビクッ

絹旗 「ダンスパフォーマンスなら駅前でやってくださいよ」

白井 「優雅でお見事なステップでしたの」

黒夜 「お、おぉぉ、おっ、遅かったじゃないか!」

絹旗 「いやー、すいません。ホームルームが超少し長引きまして」



709: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:11:37.77 ID:CYbFiIhzo

白井 「お二人は待ち合わせを?」

絹旗 「ええ。今日この後、第5回戦なんですよ」

白井 「まあ、第5回戦ということは……なるほど、今日の立会人はあのお方ですのね」

黒夜 「たしかマスターだな」

絹旗 「ええ。だからこれからミサワさんのお店ですね」

白井 「黒夜さん、後がございませんし。ここが正念場ですわね」クスクス

黒夜 「え、そこまでダダ漏れなの?」

絹旗 「もう超筒抜けですよ。どっちがどうなって、どっちが勝ったとかは」

黒夜 「なんでそんな情報交換が密なんだよ……」

白井 「ご心配なく。それを以てどちらかに有利になるよう働きかけるということは決してございませんので」

黒夜 「白井ちゃんは何やんのよ」

白井 「それは、乙女のヒ・ミ・ツ……ですの」クスッ

絹旗 「ま、白井さんがせっかく準備してくれてても今日で超終了なんですけどね」

黒夜 「はっ、いつまでその口が続くかねぇ」

白井 「ほらほら、お二人とも。ゴングが鳴る前から場外戦は無粋ですの」



710: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:12:32.47 ID:CYbFiIhzo

絹旗 「とりあえず移動しましょうか。黒夜のお通夜会場に」

黒夜 「くそ……今に見てろよ」

白井 「ではわたくしは風紀委員の支部に向かいますので。ごきげんよう」

絹旗 「お勤め超ご苦労さまです」


  ヒュンッ


黒夜 「……いつも思うんだけど、テレポって便利だよなぁ」

絹旗 「白井さんとか結標さんがたまに超羨ましくなりますよね」



~同日 第7学区 隠れ家的喫茶店~


絹旗 「でも、何やるんでしょうね」

黒夜 「店に呼ぶってことは、店にあるもんを利用するんじゃないか?」

絹旗 「てことはコーヒーに纏わる何か、とか」

黒夜 「あれ?」

絹旗 「?」



711: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:14:02.16 ID:CYbFiIhzo

黒夜 「CLOSED、ってなってるぞ」

絹旗 「ありゃ? ホントだ。中にも誰もいないですね」

黒夜 「なんだよ、呼んでおいて」

絹旗 「……あ、でも鍵開いてますよ」ガチャ

黒夜 「とりあえず入ってみようか」トテトテ

絹旗 「超お邪魔しまーす」

黒夜 「やっぱり誰もいないな。電気も消えてるし」

絹旗 「超おっかしいですね。ここに来るように、とのことだったんですが」

黒夜 「いったい何をどうしろって言うんだよ」

番外個体 「説明しよう!」ヒョコッ

絹旗黒夜 「「わっ!」」ビクッ

絹旗 「え、ずっとカウンターの裏にしゃがんでたんですか?」

番外個体 「その通り。もーホント待ちくたびれたよ」

ショチトル 「ちなみに私もいる」ヒョコッ

黒夜 「よかった、場所はあってたのか……で、今日はどうするの?」



712: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:15:13.79 ID:CYbFiIhzo

番外個体 「……集まってもらったのは他でもない」

絹旗黒夜 「「」」ドキドキ

番外個体 「って一回言ってみたかったんだよね」

絹旗黒夜 「「」」

ショチトル 「マスター、続けてくれ」

番外個体 「うん、今日の勝負の内容は……」

番外個体 「コーヒー、銘柄当てクーイズ!」

絹旗 「銘柄……」

ショチトル 「二人にはこれからコーヒーを飲んでもらう。その上で、銘柄を当ててもらいたい」

黒夜 「なるほどね。利きコーヒーってことか」

番外個体 「ま、そういうこと」

絹旗 「やることは単純ですけど、難易度超高くないですか?」

ショチトル 「なんとかなる」

絹旗 「いや、ならないかと」

番外個体 「案ずるより産むが易し、ってね。まずはやってみよっか」



713: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:16:43.73 ID:CYbFiIhzo

ショチトル 「では準備に取り掛かるとしよう」バチン

番外個体 「さーて、クロちゃん今日は頑張らないとねぇ」ニヨニヨ

黒夜 「みんなそう言うんだよな……」

絹旗 「今日決めちゃたいとこですけど、現段階だと超ちょっと自信ないですね……」

番外個体 「記念すべき第一問はどれにしよっかなー♪」ガサガサ

絹旗 「あの、なるべくメジャーなのでお願いします」

番外個体 「大丈夫。初っ端からそんなマニアックなのは出さないよ」

ショチトル 「マスター、沸いたぞ」

番外個体 「うん、ありがと」

黒夜 「おぉ、この段階ですでにコーヒーの匂いが」

番外個体 「コーヒーの匂いと言えばさ」

絹旗 「?」

番外個体 「この間、寝室でいい雰囲気になってるときに"オマエ、口がコーヒーくせェンだけど"って言われて萎えたなー」コポコポ

ショチトル 「マスターは最早職業病だろう」

黒夜 「誰に言われたの?」

絹旗 「ミサワさんが超いい雰囲気になる相手は一方通行しかいないでしょう」



714: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:18:11.52 ID:CYbFiIhzo

番外個体 「でーきた。はい、第一問!」コトッ コトッ

黒夜 「お点前、頂戴致します」

絹旗 「ええと、頂きます」

番外個体 「制限時間はないよ。ゆーっくり考えてね」

黒夜 「」スンスン

絹旗 「」ズズ...

黒夜 (……匂いだけで分かる訳もないか)

絹旗 (やべ、超さっぱり分からない)

ショチトル 「答えが分かったら、手元のホワイトボードに書いてくれ」

黒夜 (苦味も酸味も、強いほうじゃないな)ズズ...

絹旗 (考えてみたら、私が知ってる銘柄なんてエメマンとモカぐらいですよ……)

黒夜 「」カキカキ

絹旗 (こうなりゃ勘です)カキカキ

ショチトル 「二人ともいいか? では、解答オープン」

黒夜 (自信ねぇけど)【キリマンジャロ】コトッ

絹旗 「……」【エメラルドマウンテン】コトッ



715: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:20:03.05 ID:CYbFiIhzo

番外個体 「なるほどなるほど、そうきたか。じゃショチトル、正解を」

ショチトル 「」【BOSS 無糖BLACK】コトッ

絹旗黒夜 「「」」ズコー

番外個体 「残念! 二人ともハーズレー♪」

絹旗 「いやいやいや! 超おかしいですよ!」

黒夜 「銘柄っていうからさぁ! 豆の種類とかだと思うじゃん!」

絹旗 「お湯沸かしてまで何を淹れてたんですか!」

ショチトル 「私は"お湯を"沸かしたと言った覚えはない」

黒夜 「え……じゃ、そのドリップポットは?」

ショチトル 「缶の中身を移しかえた」

絹旗 (なんかやり方がミサワさんに超似てきましたね……)

番外個体 「まあまあ、ひっかけ問題みたいなもんだよ♪」

絹旗 「一問目からひっかけないでくださいよ」

番外個体 「盛り上がってきたところで、第二問目を作るかね」カチャカチャ

黒夜 「今度は普通のにしてくれよ」



716: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:21:37.27 ID:CYbFiIhzo

ショチトル 「出来るまでの間、これで口の中をすすいでおくといい」コトッ コトッ

絹旗 「いただきます」

黒夜 「あ、どうも」

番外個体 「」ゴリゴリゴリゴリゴリ

黒夜 「ミルの音がするってことは缶じゃないな」

番外個体 「しくったよ。二人分淹れるにはちょっと足りなかった」ゴリゴリゴリゴリゴリ

絹旗 「」ウズウズ

番外個体 「」ゴリゴリゴリ...

絹旗 「あの、それやらせてください。一回超やってみたかったんです」

番外個体 「え? もう終わっちゃった」パッパッ

絹旗 「…………ちぇっ」

番外個体 「粉が足りなくなったら、その時に頼むよ」

黒夜 「ウチに来ればあるぞ」

絹旗 「マジですか!?」キラキラ

黒夜 (あ、コレは絹旗ちゃんをお持ち帰りするいい口実になるかもしんない)



717: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:22:40.32 ID:CYbFiIhzo

番外個体 「はい、第2問!」コトッ コトッ

絹旗 「」ズズ...

絹旗 (わ、なんですかコレ! 超素人の私でも、さっきの缶とは全然違うって分かります!)

黒夜 (うぉ、酸っぱい! すげぇ!)

絹旗 (あ、でも違いが分かっても銘柄までは……)

黒夜 (酸味、酸味が強い……あー、なんか聞いたことあるようなないような)

絹旗 「」カキカキ

黒夜 (これ、かな?)カキカキ

ショチトル 「よさそうだな。では解答オープン」

絹旗 「」【ヨーロピアン】コトッ

黒夜 「ヨーロピアンなんて銘柄あったっけ?」【ブラジル】コトッ

絹旗 「え? ないんですか?」

番外個体 「そういう名前の缶コーヒーならあるけど。銘柄としてだと、私は聞いたことないな」

絹旗 「」

番外個体 「じゃ、正解を発表」

ショチトル 「」【ハワイコナ】コトッ



718: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:24:03.09 ID:CYbFiIhzo

黒夜 「あー! あー、なんか聞いたことある!」

絹旗 「超わからないです……」

番外個体 「ふふ、まだこれからこれから。じゃ、第三問の準備をするとしようか」カチャカチャ

ショチトル 「では、その間に。水だ」コトッ コトッ

絹旗 「あ、頂きます」

黒夜 「どうもどうも」

絹旗 「にしても、これは超難しい……」

黒夜 「普段から相当飲み慣れてないとできないだろ」

ショチトル 「だろうな」

番外個体 「ごめーん、ローストからするからちょっと時間かかる」

絹旗黒夜 「「はいはーい」」」

番外個体 「」ザラザラザラ

黒夜 「ローストの仕方ってさ、なんか種類あるんだよね」

番外個体 「お、よくご存知で」

絹旗 「へー、そうなんですか?」



719: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:25:15.13 ID:CYbFiIhzo

ショチトル 「ああ。たしか、炒り具合で名前が違うハズだ」

番外個体 「ちょっと火を通しただけのから、もう半分コゲてるヤツまでね」

絹旗 「半分コゲてるって……そうすると、超苦いんですか」

番外個体 「うん、超苦い」

ショチトル 「白い人は、苦味が強い豆をさらにイタリアンローストにしたものを好んでるな」

黒夜 「白い人って……ああ、一方通行か」

番外個体 「ありゃ私も好きだけど、人を選ぶと思うよ」

絹旗 「イタリアン?」

番外個体 「もう黒くなるまで炒った状態」

絹旗 「うはぁ、超苦そうです」

黒夜 「超甘党の絹旗ちゃんにゃムリだな」ケラケラ

絹旗 「いいじゃないですか、ほっといてくださいよ」

ショチトル 「たしか炒り方が浅ければ酸味が、深ければ苦味が強くなるのだったか」

番外個体 「うん。あ、そうそう。今日あなたたちに出してるのは全部中間の炒り方だからね」



720: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:26:16.22 ID:CYbFiIhzo

黒夜 「炒り方で別もんにされる心配はないってことか」

絹旗 「まあ、そのほうが超公平ですね」

番外個体 「よし、絹旗さん。挽いてみる?」

絹旗 「是非!」

番外個体「じゃお願いね」

絹旗 「……おお、超楽しいです♪」ゴリゴリゴリゴリ

 :
 :
 :

絹旗 「」【ブレンド】コトッ

黒夜 「」【マンデリン】コトッ

ショチトル 「正解はこれだ」【エメラルドマウンテン】

 :
 :
 :

絹旗 「」【ジョージア】コトッ

黒夜 「」【グアマテラ】コトッ



721: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:27:41.26 ID:CYbFiIhzo

ショチトル 「ん、惜しかったな」【グアテマラ】

黒夜 「グアテマラァァァァ!!」orz

 :
 :
 :

絹旗 「」【キリマンジャロ】コトッ

黒夜 「」【モカ】コトッ

ショチトル 「」【ミサワブレンド試作品27号】

絹旗黒夜 「「分かるかぁぁぁぁ!!」」

 :
 :
 :

番外個体 「さて、次の問題に」

絹旗 「ちょ、ちょーっと超待ってください」

番外個体 「どした?」

絹旗 「もう、超お腹いっぱいで飲めないです……」

黒夜 「同じく……」



722: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:29:26.04 ID:CYbFiIhzo

番外個体 「ここまで……7問か。短い間隔で7杯も飲めばね。ショチトル、ここまでの正解数は?」

ショチトル 「双方ともにゼロだ」

番外個体 「はあ……あのさぁ、やる気あんの? バカなの? 死ぬの? 死ぬの? 死ぬの。そっか。残念」

ショチトル 「マスター、少し言い過ぎだぞ」

絹旗 「そんなこと言ったって、超しょうがないじゃないですか……」

黒夜 「飲んで分かるほど、通でもないっての……」

番外個体 「んー、このままじゃねぇ……じゃ、ちょっとやり方を変えてみよっか」

絹旗 「…………あ、そっ、その前に! お手洗い貸してください!」

黒夜 「待て! 私が先だ!」

絹旗 「いやいや、私が!!」

黒夜 「ホント頼むから!! もう限界、限界なんだよ!!」

絹旗 「そんなの私だって超同じですよ!!」

ショチトル 「……マスター。もしものときに掃除するのは私なのか?」

番外個体 「んにゃ、いいよ。もしものときには本人にやらせるから」



723: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:31:07.25 ID:CYbFiIhzo

~しばらくして~


絹旗 「はー、間に合った」スッキリ

黒夜 「人生に汚点を残すところだった……」スッキリ

番外個体 「もっと見てたかったなー、二人がガマンするところ」

黒夜 「マスターは見た目通りのドSだよな」

ショチトル 「……そうだろうか。私には、マスターは尽くすタイプに見えるが」

絹旗 「まあ、口ではあれこれ言いつつも、相手をほっとかないタイプではありますよね」

ショチトル 「特に、白い人の前では」

番外個体 「ちょっと黙ろうか」ナデナデ

ショチトル 「ひっ……ご、ゴメンなさい」ガクブル

絹旗 (いっ、今一瞬、超とてつもない威圧感が……)

黒夜 (やっぱ第一位の嫁になるぐらいの人なんだな……)

番外個体 「で」

絹旗黒夜 「「はいっ!」」



724: ◆8GNB4AEvC.:2011/11/30(水) 23:32:21.62 ID:CYbFiIhzo

番外個体 「このままじゃ勝負つかないから、仕切り直そ」

絹旗 「と、いいますと?」

黒夜 「何やんの?」

番外個体 「今度は飲む側じゃなくて、作る側にまわってもらおうかなと思うんだけど」

ショチトル 「なるほど、よりおいしく作った方が勝ちということか」

絹旗 「その方が超わかりやすくていいですね」

黒夜 「最初からそっちでよかったんじゃ……」

番外個体 「いや、どっちか迷ったんだよ?」

ショチトル 「飲む勝負か作る勝負か、早い段階で候補には挙がっていた」

番外個体 「でもここまでグダるとは思ってなかったんだもん」

絹旗 「うぬ……」

黒夜 「しょうがないじゃん……」

番外個体 「よし、新ルール説明! この店にある設備と材料を使ってコーヒーを作る!
       おいしかったら勝ち! 以上、質問は?」

絹旗黒夜 「「ないであります!」」

番外個体 「よし。じゃ改めて勝負開始といこう」



752: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 00:58:52.02 ID:r8KKTvJ8o

黒夜 「で、どっちからやる?」

絹旗 「どうやって決めましょうか」

番外個体 「月並みだけど、こいつで決めたらどうかな」

黒夜 「ゲーセンのコイン?」

絹旗 「私は超かまいませんよ」

番外個体 「じゃ、こいつが地面に着いた瞬間に抜き撃ちってことで」

ショチトル 「マスター、それはガンマンの決闘だ」

番外個体 「冗談冗談♪ 表なら絹旗さん、裏なら黒夜さん。いいね?」

絹旗黒夜 「「おk」」

番外個体 「」コイーン

絹旗 「」ドキドキ

黒夜 「」ワクワク

番外個体 「」パシッ

番外個体 「……表だね」

絹旗 「私からですか」



753: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:00:29.37 ID:r8KKTvJ8o

黒夜 「ま、お手並み拝見といこうか」

ショチトル 「では早速始めてくれ。器具や材料の場所が分からなければ、探すなり尋ねるすればいい」

絹旗 「いや、尋ねますってば」カチャカチャ

番外個体 「絹旗さん、コーヒー作ったことは?」

絹旗 「前に一緒に住んでたとき、ミサワさんの粉を超こっそりもらって作ったりはしてましたけど」

番外個体 「」

ショチトル 「マスター?」

番外個体 「あれオマエだったのかぁぁぁ! 減り方がおかしいから変だと思ってたんだよぉ!!」

絹旗 「」テヘ

番外個体 「勝者、黒夜さん」

黒夜 「え?」

絹旗 「ちょ、ちょっと! 超私怨で勝敗を決めるのはフェアじゃないですよ!」

ショチトル 「マスター、流石に大人気ないと思う」

番外個体 「……もー、わかったよ。時効だよ、時効」

絹旗 「あの、ミサワさん。それで、コーヒーの粉ってどこですか?」



754: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:01:53.93 ID:r8KKTvJ8o

番外個体 「は? 何言ってんの?」

絹旗 「え?」

番外個体 「コーヒー豆を選んで、ローストするところから始めるんだよ」

絹旗 「」ポカン

黒夜 「お、本格的だなぁ」

絹旗 (そ、そんなのやったことないですよ)ダラダラ

ショチトル 「コーヒー豆はそこの棚に種別に入っている」

絹旗 「ええと……ここですか」ガラッ

絹旗 (……よく分からないから一番右のでいいや)

番外個体 「……二人とも、ここから先、ツッコミは不要だよ。本人がやりたいようにやらせてあげて」

ショチトル 「了解だ」

黒夜 「おkおk」

絹旗 「あの、ミサワさん」

番外個体 「ん?」

絹旗 「三人分ってどれぐらいですか?」



755: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:03:13.92 ID:r8KKTvJ8o

ショチトル 「きっちり三人分ではなくとも。少し多いぐらいでいいのでは?」

番外個体 「そうだねぇ……じゃ、80グラム」

絹旗 「超了解です」ザラザラザラ

絹旗 「……もうちょいか」ザラザラ

絹旗 (次は煎る段階……たしかミサワさんがさっきやってたときは)

絹旗 (この網フライパン使ってましたよね)スチャ

絹旗 「入りまーす」ザラザラザラザラザラ

番外個体 「……」

絹旗 (超着火!)バチン

黒夜 「お、始まった始まった」

ショチトル (……これはいけないな)

絹旗 (振ってないとコゲちゃいますかね)ザッザッ



~10分後~


黒夜 「いかにもコーヒーって匂いがしてきたな」



756: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:04:19.98 ID:r8KKTvJ8o

番外個体 「……うん、そろそろ始まるんじゃないかな」

絹旗 「? 始まるって」


  パチッ パチパチパチッ


絹旗 「お?」

ショチトル 「爆ぜ始めたか」

絹旗 (なんか、ここで超一気に仕上げるっぽいです)

黒夜 (……んー、気のせいか? マスターがやってるのとはなんか違う気がする)

絹旗 (火を少し強めてみましょうか)カチッ


  バチンバチンバチンバチン


絹旗 「おお。たまにカウンターの死角から超聞こえてくる音はこれだったんですか」

番外個体 「うん」

絹旗 (気のせいか、豆が大きくなってるよな)

絹旗 (……お、あ、あれ? 一気に超黒くなってきた!?)



757: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:05:29.58 ID:r8KKTvJ8o

絹旗 (もうやめたほうがいいんでしょうか……あぁ、でも)

絹旗 (やめどきが超分かりません……!)

番外個体 「……」

絹旗 (こ、この辺でやめときましょう)

絹旗 「あとは、今の内にお湯を超沸かしておいて……」

絹旗 (ていうか、さっきからミサワさんの目が超怖いんですが……)ダラダラ

絹旗 「」ゴリゴリゴリゴリゴリ

絹旗 「とりあえず粉末までは来ましたね」

絹旗 「これでお湯が沸いたら完成です」

 :
 :
 :

絹旗 「超できました。どうぞ」カチャカチャ

黒夜 「見た目は普通だな。香りは……ちょっと濃いぐらいか?」

ショチトル 「では、一口」ズズ...

ショチトル 「ぅげほっ」



758: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:06:25.18 ID:r8KKTvJ8o

絹旗 「?」

ショチトル 「こ、これはなんだ!? 木炭エキスか!?」

絹旗 「え、いや……コーヒーですけど」

黒夜 「にがっ!? にっがぁぁぁ!? なんじゃこりゃぁぁぁ!?」

絹旗 「そ、そこまでですか!?」

番外個体 「」スンスン

黒夜 「うぇ、口の中が、うぇっ……マ、マスター的にどうよ?」

番外個体 「」ズズ...

番外個体 「……うん」

絹旗 「そ、それだけですか」

番外個体 「諸々言いたいことは最後に言うよ。黒夜さんへのヒントになっちゃうからね」

黒夜 「あ、ああ、それもそっか……」

絹旗 (反応は芳しくないですね……)

ショチトル 「絹旗さん、自分でも一口飲んでみるといい」コトッ

絹旗 「あ、はい」



759: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:07:42.02 ID:r8KKTvJ8o

絹旗 「……」ゴク...

ショチトル 「……」

絹旗 「ぬわああああああああああ!?!?」

番外個体 「じゃ、黒夜さん。いってみよっか」

黒夜 「よし。さて、銘柄はどれにすっかな」

黒夜 (奇を衒って失敗してもしょうがない。ここは無難なチョイスで)ザラザラ

黒夜 (で、次はローストか。ある種、ここが勝負の分かれ目だよな)

黒夜 (よーく思い出せ。私はいつもマスターが作るの観察してんだろ。家でやってみたいと思って)

黒夜 「……」

絹旗 「くっ、口が! 口の中がぁぁぁぁぁ!?」ジタバタ

黒夜 「オイ、うるせェぞ!!」

番外個体 「絹旗さん、ウチは静かに飲む店だよ?」クスクス

絹旗 「ちょ、超失礼しました」

黒夜 「……あ、そうだ」

黒夜 (マスターはいつも火から少し離してる……なんでかは分からないけど)

黒夜 (よし、火に近づけすぎないように、じっくりじっくり)ザッザッ



760: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:09:05.08 ID:r8KKTvJ8o

番外個体 「……ふぅん」

絹旗 (あんなに火から離してて超生焼けにならないんでしょうか)



~15分後~


黒夜 (腕が疲れないのはこの体の利点だよなぁ)ザッザッ


 パチッ パチッ


黒夜 「おっ、始まった」

絹旗 「これ、音が鳴るのは正解なんですよね?」

番外個体 「うん。それ自体は問題ない」

黒夜 (1回目……いいんだよな? これでいいんだよな?)

ショチトル 「……」

黒夜 (よしこのままこのまま……)

絹旗 「コーヒーの香りが超すごいですね」

番外個体 「うん、一番匂いするのってここかもね」

黒夜 「……」

黒夜 (そうだ、この音がしたら、マスターはいつもこうやって……)



761: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:10:18.14 ID:r8KKTvJ8o

番外個体 「へぇ……」

絹旗 (あれ? そういえばさっきみたいな大きい音してないですね……まさか失敗?)

黒夜 (いいんだよな? あってるよな?)


  バンッバンッバンッ


絹旗 「お」

黒夜 「きた!」

ショチトル 「2回目か……そろそろ頃合いだな」

番外個体 「」チョンチョン

ショチトル 「あっ……なんでもない」

黒夜 (よし、こんぐらいにしとこ)

黒夜 「あ、マスター。フィルターってどこ?」

番外個体 「そこのコンロの右の引き出しだよ」

黒夜 「ここか」ガラッ

黒夜 (よし、最後の最後でミスらないようにしないとな)



762: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:11:12.73 ID:r8KKTvJ8o

 :
 :
 :

黒夜 「でーきた。さあさあ、飲んでくれ」コトッ

番外個体 「……」

絹旗「じゃ、頂きます」

ショチトル 「」ズズ...

黒夜 「どうかな」

ショチトル 「普通にアリだな」

絹旗 「……超悔しいですが、これは」

黒夜 「」フンス

番外個体 「……ふーん」

黒夜 (あれ? なにこのリアクション)

番外個体 「うん」

黒夜 (え? え? なんかマズかった?)オロオロ

番外個体 「うん、ごちそうさま」

黒夜 (でも飲み干した? あれ、これはどっち?)



763: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:12:18.40 ID:r8KKTvJ8o

ショチトル 「さて、これで二人分出揃ったな」

番外個体 「じゃ、結果発表といこっか」

絹旗 「あの、考える時間とかは」

番外個体 「いらない」カキカキ

ショチトル 「まあ……そうだろうな」

番外個体 「第五回戦! 今回のウィナーは……」

絹旗黒夜 「「」」ドキドキ

番外個体 「こっち!」【くろよる】バン!

黒夜 「ウオシャァァァァ!」

絹旗 「…………ですよねー」orz

黒夜 「いや、でもちょっとドキドキした。マスターのリアクション薄かったんだもん」

番外個体 「アレはわざと。展開を読まれないためにね。名演技だったっしょ?」ニヨニヨ

ショチトル 「絹旗さんは自分で飲んでみて、正直負けを確信しただろう」

絹旗 「はい……」

番外個体 「んー、缶コーヒー」



764: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:13:40.50 ID:r8KKTvJ8o

他3人 「「「?」」」

番外個体 「絹旗さんのは缶コーヒー買った方がマシなレベル、黒夜さんのは缶コーヒーよりおいしいレベル」

黒夜 「うまかったでしょ? 惚れちゃうっしょ?」

ショチトル 「中々なのではないか? 惚れはしないが」

番外個体 「さて。総評に入ろっか。まず絹旗さん」

絹旗 「うぅ……なんでしょうか……」

番外個体 「まずローストの仕方がよくない。火に近づけすぎ」

ショチトル 「直接火にあたっていたからな」

番外個体 「それと、なんで終盤火を強くした」

絹旗 「ダメだったんですか?」

番外個体 「あのね、コーヒー豆は火が通ると表面に油が浮いてくるの」

絹旗 「……あっ」

番外個体 「そこで火力を上げちゃったもんだから、一気にコゲちゃったんだよ」

黒夜 「ああ、だからマスターは終盤手を高くして火から遠ざけてたのか?」

ショチトル 「知らずにやっていたのか?」

黒夜 「うん。あれマスターのマネ」



765: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:15:26.76 ID:r8KKTvJ8o

番外個体 「ともかく、絹旗さんのはコゲ旗になっちゃった、と。それでね」

絹旗 「?」

番外個体 「絹旗さんの、銘柄は多分マンデリンだと思うけど」

絹旗 「ええ、そう書いてありましたね」

ショチトル 「ああ、だから余計に、なのか……」

絹旗 「?」

番外個体 「マンデリンは強い苦味を特徴に持つんだよ。それを、イタリアンローストを
       超えるコゲ旗ローストにしちゃったもんだから」

黒夜 「苦味の圧縮装甲になっちゃったってワケか」

番外個体 「ていうかアレ、コーヒーの苦味じゃないよね。コゲだよ、炭だよ」

絹旗 「あぅぅ……」

番外個体 「それと一応聞いておくけど」

絹旗 「な、なんでしょう」

番外個体 「ミルで粉にした後、どんな手順踏んだ?」

絹旗 「ええと、カップにスプーンで1杯半入れて、お湯を注いで超溶かして」

黒夜 「……絹旗ちゃん、それインスタントコーヒーの作り方だ」



766: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:17:14.81 ID:r8KKTvJ8o

番外個体 「それで溶けきらずに、コゲと一緒に表面に浮いてきちゃったんじゃないかな」

ショチトル 「だからあそこまで苦かったのか……」

番外個体 「黒夜さんのは全体的によく出来てたんじゃない? ちゃんとフィルターも使ってたし」

黒夜 「それぐらいは私だって分かるさ。でさ、マスター。豆は何使ったと思う?」

番外個体 「ブルーマウンテン」

黒夜 「……即答で正解かよ」

ショチトル 「逆に言えば、即答できる程度には風味は保てていたということだ」

絹旗 「超悔しいですぅ……」

黒夜 「ざーんねーんだったなー、コゲ旗ちゃーん」ニヤニヤ

絹旗 「うぅぅ……だって超しょうがないじゃないですか……本格的に作ったことなんてないですもん」

番外個体 「さて。二人とも、夕食は食べていくでしょ?」

黒夜 「あ、いいの?」

ショチトル 「別に構わない。ご注文は?」

絹旗 「ツナサンドで」

黒夜 「立ち直るの早いな……あ、レタスドッグで」

番外個体 「はいはーい」

ショチトル 「む……レタスドッグの中身は茹でないとないか」



767: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:19:16.57 ID:r8KKTvJ8o

番外個体 「今日は休業日だったからねー」トントン

ショチトル 「仕方がないな」バチン

番外個体 「二人とも、これは参加賞」

絹旗 「なんですか、この小瓶」

番外個体 「さっき二人が作ったコーヒー。それで3杯は作れるでしょ」

黒夜 「お、帰ったら頂こう」

絹旗 「……私はどうすれば」

番外個体 「あ、あのさ……すっごく言い辛いんだけど」

絹旗黒夜 「「?」」

番外個体 「小瓶に移し替える段階でどっちかどっちか分かんなくなっちゃんだよね」ニャハハ

絹旗黒夜 「「」」

ショチトル 「飲んでみるまでのお楽しみということか」グツグツ

番外個体 「ロシアンルーレッティー、ということで」

黒夜 「ロシアンティーは紅茶だろぉぉ!!」

絹旗 (最初の一杯は白井さんに飲んでもらいましょ)



 ☆ここまでの戦績☆

  絹旗 3―2 黒夜



768: ◆8GNB4AEvC.:2011/12/03(土) 01:19:51.27 ID:r8KKTvJ8o

といったところで、今回はここまでです。
コーヒー豆の炒り方については、黒夜がやったのは一例で
器具や環境によって正解が違ったりするから厄介で奥が深いですよね。

次回投下は3日以内に。
お付き合い頂き、ありがとうございました。



772:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東):2011/12/03(土) 12:08:02.64 ID:EOg7nx1AO

黒子wwwwwwwwww



775:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県):2011/12/03(土) 21:23:13.46 ID:XGtz77t20

黒子「あら、意外といけますわ」

絹旗「」



776:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2011/12/03(土) 23:07:08.87 ID:3NbpcijZ0

シルクロ「黒夜が作ったコーヒーか、......ぅげほっ!ゴホゴホっ!!.........が、頑張ったな」

って言いながら3杯完飲してるシルクロさんを想像した



777:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県):2011/12/04(日) 00:09:44.26 ID:72iA0cL70

>>776
泣いた



次→絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」その12

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禁書目録SS   コメント:4   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
16672. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/01/15(日) 01:46 ▼このコメントに返信する
浜面のくだりはぷっすまを思い出した
16677. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/01/15(日) 07:57 ▼このコメントに返信する
俺もぷっすまだったわwwww
16696. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/01/15(日) 16:00 ▼このコメントに返信する
だめだ解決方法聞いても暗号がわからない・・・
16710. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/01/15(日) 22:22 ▼このコメントに返信する
絹旗のはキーボード見ながらメモに書かれているアルファベットがどういう形してるか見てみなよ
そんなことではこの先生きのこることはできないぜ?
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