イナズマイレブン3 世界への挑戦!! ジ・オーガ前→
五条「ククク… ここが学園都市ですか」その10最初から→
五条「ククク… ここが学園都市ですか」149 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /02(木) 23:45:36.45
ID:QHKzse28O ──────『影が薄い奴だ』
色々な人間から、そう称されて生きてきた。
生まれてこの方、父と呼ばれる存在と対面をした事が無かった。
会話の端々で母が、
『あなたのお父さんは、凄く立派なひとなのよ、勝』
といっていたのを、憶えている。
初めて自分の存在が誰かに認知され辛いのだと知ったのは、幼稚園の時。
自分を幼稚園に預けた母が、なかなか迎えに来ない事が多かった。
次々と帰宅していく級友達を尻目に迎えに来ない母を待ち侘び、自分が母にとって不要な存在なのではないかと、子どもながらに悲しい気持ちになったのを、今でも時々思い出す。
そんな母も、園の職員が自宅に電話をするとすっ飛んできて、いつも一人園に残っていた自分を抱きしめながら、わあわあと泣き喚いてひたすら謝罪の言葉を繰り返していた。
『ごめんね勝、母さん、なんでこんなに忘れっぽいんだろうね。寂しい思いさせてごめんね、勝』
153 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /02(木) 23:53:22.39
ID:QHKzse28O 抱きしめられながら考える事は、自分は母にとって不要な存在ではなかったのだという安堵感と、何故悪くない母がこんなに涙を流して謝罪をしなければならないのかという、一抹の憤りの感情だった。
小学校に入る頃に、家庭の事情が一変した。
今となっては病名もわからないが、母が病に倒れ徐々に衰弱していく様を、学校と病院と、預けられた母方の祖父の家を行ったり来たりしている生活の中で目にし続けていた。
病院に見舞いに行く度に、次第に自分の事を認識出来なくなっていく母を見続けるのが辛かった。
『……あら、勝、今日の学校はどうだった?』
『……あら……勝、何か困っている事は無い?』
『勝……勝よね?少し見ないうちに、どんどん大きくなっていくわね』
『……?どうかしましたか……?って……勝……だったわよね、あらやだ、母さんボケちゃったのかしら?』
『……?どうしましたか?……何だか、あなたとはどこかで会った様な気がするわね』
『……?』
158 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 00:01:46.51
ID:b+UzxjoxO 最期には、自分と眼を合わせても何の反応も示さなくなった母を見て、あれだけ優しかった母が、遅れても必ず幼稚園に迎えに来てくれた母が、自分の事すら判らなくなってしまうのかと、深く悲しむと同時に、病気とはこんなに怖いものなのかと肝を冷やしていた。
──────今にして思えば、病気など、なんら関係は無かったのだが。
────────────
小学校に入学したばかりの頃に自分にも、それなりに友人たちが居た。
関わりを断ってから久しいので、もうその名前を思い出す事も出来ないのだが。
いや、思い出したくないだけなのかも知れない。
仲がよかった友人が居た事も。
そんな友人たちから、ある日一斉に無視をされ始めた事も。
最初は非常に戸惑ったものだ。
皆から無視をされるなんて、一体自分は何をしたんだろう。
自分が何か悪い事をしたのならば、友人たちに謝罪をしなければならない。
『ねえ、○○君、ぼく何か悪いことした?』
『悪いことしたなら謝るよ、ごめんね。だから仲直りしよう?』
一体何度謝罪の言葉を連ねただろう。
自分に憶えの無い罪に怯えて、どれ程の時間を思慮に割いただろう。
結局自分の声は、彼らに届く事はなかった。
163 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 00:10:30.33
ID:b+UzxjoxO 謝れど、泣けど、自分の存在が彼らの目に止まる事は無い。
まるで、透明人間にでもなったかの様な気がした。
それ以来、ぽつりぽつりとクラスメイトと会話を交わす事はあれど、誰かと積極的に関わる事を避ける様になった。
いつしか、自分が誰とも関わる事は無く、自分一人で生活を送る事に、何の疑問も持たなくなっていた。
一人黙々と教室の隅で読書に耽っている時間だけが、自身にとって唯一救われる時間。
そんな毎日を送る内に読書をし過ぎて視力が低下し、眼鏡をかけ始めたのはこの頃だ。
ある日、突然の転機が訪れた。
小学校も高学年に入ったばかりの頃。
体育の授業で、サッカーが行なわれた。
サッカーと言っても、クラスの男子を半分半分にわけて行なう、八対八の模擬的なものだったのだが。
この時のサッカーの授業を境に、これまでの生活が一変する事となる。
────────────
いつの間にか浴槽から企鵝達の姿が消え、真面目な表情の上条が黙って話を聞き入っていた。
五条「……ククク……退屈な話でしょう?」
こちらを向いた上条と、目線がぶつかる。
167 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 00:18:32.92
ID:b+UzxjoxO 上条「……退屈なワケがあるか。今までの話だって、充分人に聞かせるのに覚悟がいるもんだってわかるよ。お前が覚悟を決めて話をしてくれてるってのに、退屈だなんて思う程、オレは落ちぶれちゃいませんよ」
浴場の壁に掛けられている時計に目線を送ると、つられて上条の目線も時計へと向かうのがわかった。
五条「……随分時間が経ってしまいましたね」
午後九時の少し前。
九時丁度に銭湯の前でインデックスと待ち合わせをしているので、このまま話こんでいては彼女を待たせる事となってしまう。
上条「……上がるか。今日まだ時間あるか?」
五条「……構いませんが……」
上条「よし。んじゃあ、最後まで聞かせてくれ」
言い終え、浴槽から立ち上がり洗面所へと向かう上条。
五条「……酔狂な方ですね……ヒヒヒ……」
────────────
市外からは少し外れた所にある公園のベンチへ、一人で腰掛けていた。
何となく視線が流れた先の街灯は、緑の多い公園だからだろうか、その明かりに誘われた羽虫たちが集まっており、夏の夜だという季節感を一層濃いものへと演出してくれていた。
171 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 00:27:50.44
ID:b+UzxjoxO 不意に頭上を仰ぎ見る。
見上げた夜空は、街の明かりを反射して紫色に染まった雲が一面を覆い尽くし、いつその涙を流されてもおかしくない様な状況だ。
そんな様子を眺めていると、現在の天気予報が気になったので携帯電話を開き、お天気情報のページへアクセスしてみる。
降水確率80%。
これから来る男が雨具を持っているかいないかで、きっと天気が決定される。
何となくそんな予感がした矢先、こつこつと足音が響き、公園の入り口にウニ頭のシルエットが浮かび上がった。
『悪い、待たせちゃいましたかねぇ?』
五条「……ククク……構いませんよ……」
影に向かって、座ったまま傍らの缶コーヒーを放る。
『お、ありがとな』
街灯に照らされ、手ぶらの男の姿がくっきりと浮かび上がった。
五条(……降りますかね……)
黙ってベンチを立ち、少し離れた場所にあるアーケードのある箇所のベンチへと移動して、再度腰を据える。
五条「……さて、どこまで話したでしょうか……」
────────────
その日に行なわれたサッカーの授業は、周囲の目線を集めるには充分過ぎる程の結果となった。
181 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 00:36:50.25
ID:b+UzxjoxO 十八対零。
小学校の授業としてはあり得ないスコア差となったその試合で自分が挙げた得点は、十七点にも登った。
自分がボールを持って攻めあがると、誰もが動きを読めず、ブロックに入れない。
自分がボールをカットしようとすると、誰もが気付かない内にボールをカットされている。
そして試合後に周囲から次々と浴びせられる歓声。
『すっげー!』
『五条!お前どうやったんだよ!』
初めて、自分を活かせる場にめぐり合えたその時の感動は、今でもハッキリと思い出せる。
賞賛を送る面子の中には、以前に自分を無視していた友人達の姿もあり、複雑な気持ちを抱いていたのだが。
その後サッカーの楽しさに目覚めた自分は、地元のサッカークラブに所属し、ひたすらに努力を重ね続けていた。
相手がいる時は、クラブの誰かとボールを蹴りあい、また誰も居ない時には壁に向かいボールを蹴り続け。
思えば、よく飽きもせずに毎日毎日そんな事を繰り返していたものだ。
学校が終って、日が暮れるまでサッカーボールを追って過ごす。
その頃は、サッカーをすることがひたすらに楽しかった。
186 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 00:45:02.30
ID:b+UzxjoxO 何よりも、皆がサッカーをしている自分を見て賞賛を送ってくれる事が、嬉しくてたまらなかった。
自分の所属するそのサッカークラブはめきめきと頭角を現して行き、六年生へと進学した時には、地区大会の常連チームにまで成り上がっていた。
そして地区大会に優勝したある日、一人の身なりの良い男が話しかけて来た。
その男が以前からちらほらクラブの監督と話をしていたのは目撃していたが、直接自分が話しかけられるとは思ってもいなかったので、当時の自分は随分と驚愕していたものだ。
『五条……勝君だね』
「……はい、そうですが……」
『今よりももっともっと、君のその才能を活かせる場所があるんだ』
────────────
男は、帝国学園のスカウトだと名乗った。
──────帝国学園。
おおよそサッカーに携わる小中学生ならば、必ず一度は耳にした事があるその名前。
中学サッカーチームの全国最強を決める大会、フットボールフロンティアで40年間無敗を誇る、知る人ぞ知るサッカーの超名門校。
そんな場所から自分にスカウトが来た。
それ程の場所が、自分を必要としてくれている。
188 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 00:53:06.62
ID:b+UzxjoxO この時ほど、サッカーをやっていて良かったと思えた事はなかった。
自分の好きなサッカーに打ちこむ事ができ、祖父に経済的な負担を掛けないでも済む。
男の言葉に、二つ返事で返答したのは、当たり前のことだろう。
当時同居をしていた母方の祖父も、まるで自分の事の様に喜んでくれた。
クラブの仲間達も口々に祝福や賛辞を送ってくれ、やっと自身が胸を張って認められる存在になれたんだ。
五条「……その時は、そう思えていたのですが……」
────────────
ぽつぽつと、プラスチックのアーケードを雨粒が叩き始めた。
隣のベンチに腰掛ける男が手ぶらで来たのを見て覚悟はしていたが、本格的に降り始めたらどうしようか、少々頭を捻る。
上条「……」
上条当麻は真剣な表情で、缶コーヒーを片手に中空を見据えていた。
五条「……ククク……雨具は持参していますか……?」
止めるならココで止めても良いぞというニュアンスを含み、皮肉っぽく問いかけてみる。
189 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 01:00:06.16
ID:b+UzxjoxO 上条「そう見えますか?……構わないから続けてくれ」
五条「……わかりました……ヒヒヒ……」
上条の言葉に、昔語りを続ける。
五条「……そして帝国学園への入学を間近に控えた、クラブのお別れ大会での事です……」
────────────
入団して以来、苦楽を共にしたクラブの仲間と行なう最後の試合。
相手は、同じ地区のクラブチーム。
その試合の最中の事だった。
相手のチームが蹴ったボールが自陣のゴールポストに当たり、跳ね返ったボールをクリアしようと駆け寄った途端、相手チームのFWと衝突し、眼鏡が割れてしまった。
心配して寄ってくるチームメイト達に特に怪我は無い旨を伝え、割れてしまった眼鏡を観戦に来ていた祖父に渡し、裸眼で試合を続ける。
多少見づらくはなっているものの、問題なくプレーは可能だった。
相手チームがファウルを取られ、自チームボールのフリーキックで試合が再開される。
DFのフリーキックを友人が受け取り駆け出すのを見て、それに併走した。
隣を走る友人の一人が、自分に微笑みかけてパスを出してくる。
ボールを受け取りドリブルをしながら自陣を駆け上がり、パスを出す友人を見定めようと周囲を見回す。
194 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 01:06:29.11
ID:b+UzxjoxO と、飛び込んでくる視線。視線。視線。
相手チームは元より、先の瞬間まで笑みを交わしながらプレーしていた友人までもが、
得体の知れない"何か"に対する恐怖を宿した眼差しを、自分に向けてくる。
五条『え……?』
視線。深く突き刺さる視線。
チームで最も信を置いていた、鋭い目をした友人が怪訝な視線のまま言葉を吐いた。
『……なぁ……おまえ誰だ……?』
五条「……?何を言ってるんですか、俺です、五条勝です」
言葉を返した友人の視線が中空を舞い、何事も無かったかの様にプレーが再開される。
ふと気がつくと、自身に向けられていた視線は、既に反らされており、それ以後試合終了まで自分にボールが回ることもなく、最後の試合は幕を閉じた。
先刻まで、共にプレーをしていた友人達が手を取り合い、互いの健闘を称え合い、そのクラブチームでの最後の幕引きを惜しんでいる。
五条「…お疲れ様でした!皆さん!」
その輪に混ざり声を張り上げてみるも、誰も自身に眼を向ける事はない。
自身だけが、世界から取り残されるこの感覚。
以前にも嫌というほど味わったこの孤独感。
201 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 01:13:30.26
ID:b+UzxjoxO まるで、あの、読書を始める前の自分に戻ったかの様な──────!
────────────
五条「……そこで、オレは思ったんです。"メガネを外して視たものが、自身を認識しなくなるのではないか"と」
五条「……当然最初は疑いもしました。そんな非現実的な事が起こるはずが無いと」
五条「……しかし何度か悪戯で同級生相手にこの眼を試してみて、この眼の能力を認識させられました……」
ごくり、と上条が唾を飲み込む音が聞こえた。
五条「……自分でも心底驚きはしましたが……メガネさえ外さなければ、誰かにこの能力をぶつける事さえなければ、きっと大丈夫だろうと……」
五条「……ところが、オレの能力が度を過ぎている事を知るハメになったのが、卒業式とその後での事です……」
ふう……と深くため息をつく。
上条「……?何があったんだ?まさか卒業出来なかったとか?」
五条「……いえ、あくまで義務教育なので卒業はできましたし、証書も無事に受け取る事が出来ました。しかし……」
上条「……?」
202 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /03(金) 01:15:01.98 ID:P+jcv2S+0
過去が謎に包まれている、という簡素な設定から
よくここまで広げたなぁと感心する一方、是非とも幸せにしてあげてくれと言いたくなるわ203 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /03(金) 01:19:37.20 ID:ptcIT1dYO
おいおい、まだ悲劇は続くのかよ…204 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 01:20:22.27
ID:b+UzxjoxO 五条「学校内では常にメガネをかけて生活していたにも関わらず……卒業式を終える頃には、誰一人、俺の事を憶えている人間が居なかったのです……」
驚きなのだろうか。上条の目が大きく開かれる。
五条「……唯一頼れる身内であった祖父ですら、家を出て寮に移る頃には、私の事を忘れ、認識しなくなっていました……ククク……皮肉なものです……祖父の為でもある門出すら、認識されないとは……」
ぽつぽつと、雨粒が当たっては弾けていくアーケードを見上げる。
五条「……どうやら、メガネを掛けていてもオレの存在自体が、まるで水の止まらなくなった壊れた蛇口の様に、無意識に少しずつ周囲の記憶や認識を阻害しているのではないか……」
五条「……そんな疑問を持ち始めたのは、その頃の事でした……」
────────────
『五条勝……学籍こそ確かに存在はしているが、過去の経歴は一切不明か』
以前話をしていたスカウトの人間が、まるで自分を初めて見る人間であるかの様に話しかけてくる。
五条「……ククク……お役には立てるかと思いますよ……」
『……まぁ、実力さえ伴えば一向に構わない』
入学した帝国学園での数ヶ月間はあっという間に過ぎていった。
208 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 01:25:21.74
ID:b+UzxjoxO 入学したての頃にこそ、サッカー部の模擬試合や対外戦で活躍は出来ていたのだが、順調かに思えた部活動にも次第に影が落ち始める。
小学生の頃は、数年間何も無かったのだからと完全に油断し切っていた。
入学当初より、多少少なく感じたパスの回数だったが、ある日を境に試合中に完全にチームメイトからパスが回されなくなる。
これは自身でボールに喰らいついて行けばどうにか回避出来る難点だったので、暫くは周囲の圧力を感じる事も無かった。
試合が終わりチームメイト達と顔を合わせた際も、彼らは自分を『仲間』として扱ってくれていて、ただの杞憂なのだろうと胸をなでおろしたりもしていた。
思えばこの頃から、もうこの能力は制御しきれない程に膨らんでいたのかも知れない。
そんなある日、自分のとったプレーが、完全に周囲から無かったことになっているのに気がついた。
誰かにパスを出しても、何もない場所から唐突にボールが飛んできたかの様に受け損ねられ。
自分が決めたゴールは、まるで何事もなく、突風でボールがゴールに運ばれたかの様に処理され。
この頃には、試合を終えたチームメイト達も、完全に自分を認識しなくなっていた。
214 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 01:30:23.40
ID:b+UzxjoxO そんな自分がレギュラーの座に座り続ける事が出来るほど、帝国学園という場所は甘くは無かった。
数値上だけ見ても、何の役にも立っていなかった自分がレギュラーから外され、今後自分を待っているであろう灰色の生活に嫌気がさし始めた時、唐突に帝国学園の学長から呼び出しを喰らう。
五条(……いよいよ、お役御免ですかね……)
覚悟を決めて学長室のドアをノックする。
『……入りたまえ』
威厳を感じる声が響き渡り、そのドアを開く。
視界に入った学長が、こちらに背を向けたまま言葉を発した。
『……どうも、君には超能力の素質があるようだ』
────────────
五条「……とまあ、これがオレが学園都市に来る事となった経歴なのですが……」
飲み終えた空き缶を中空に放り、近くにあるゴミ箱へと軽く蹴った。
かこん、と小気味の良い音が響く。
五条「……ここまで話せば、もうオレの能力はおわかりですね……?」
上条「認識の阻害と、記憶の消去…か?」
215 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 01:35:32.08
ID:b+UzxjoxO 言いながら、上条が飲み終えた空き缶を手渡してきた。
五条「……ククク……前者は正解ですが後者は能力ではなく、能力の影響が生んだ結果ですかね……」
再び空き缶を放り、ゴミ箱へと蹴り上げる。
かこん、雨に濡れた公園に、再度小気味の良い音が木霊する。
五条「……学園都市に来て、多少能力の制御方法は身に付いたのですが……ここ最近で能力を使い過ぎたせいでしょうか……どうにも人から忘れられ易い体質は改善出来ていない様です……もう既に、"一部の方に影響が出始めている"……」
(「五条さん……で間違いございませんわよね?」)
(「あらあらあら五条さん!いらしてましたの!?」)
はぁ、とため息をつく。
五条「……まぁ、人というのは誰かと関わりを持った以上、いずれ別れ、そして互いに忘れられるものだというのは理解出来るのですが……」
五条「……少し、寂しいですかね……ヒヒヒ……」
自嘲を交えた微笑みで上条を見る。
彼は俯いたまま、何も言おうとはしない。
五条「……暗い話になってs『五条勝。』
唐突に上条が顔を上げる。
その目じりから、一筋の線が地面へと落ちるのが見えた。
上条「……辛かったな」
221 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 01:41:01.29
ID:b+UzxjoxO それきり上条は黙り込む。
五条「ッ……!」
上条に背を向け、アーケードを仰ぎ見る。
視界の隅に入った街灯の頼りない明かりが、ゆらゆらと水面に漂う様に揺らぐのがわかる。
その様子を見ても、背後の上条は何も言おうとはしない。
五条「……オマエに……オマエに話せて良かったッ!!」
昂ぶる感情を抑えきれず、語尾を強めて叫び、眼を閉じる。
自分の中で抱えていた重圧が、音を立てて氷解していくのが判った。
次いで、解けたソレに押される様に、目じりから頬へと熱い液体が流下する。
ああ、きっとこのアーケードには欠陥がある。
こんな所に雨漏りを起している箇所があるじゃないか。
五条「……ご静聴、ありがとうございました……明日がありますので……オレはこれで……」
振り返らずに声を投げ、そのまま雨の中へと足を踏み出した。
五条「……また連絡しますね……ヒヒヒ……」
右手を高く掲げ、雨の中を一歩一歩踏みしめて歩く。
公園をでた所で、メガネを外し空を仰いだ。
大粒の雨が、一つ、二つと頬を濡らす。
──────今夜が雨になってくれて、本当に良かった。
──────fin――――――
222 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /03(金) 01:41:31.56 ID:wqKqcOkg0
唯一覚えていられるのは上条さんだけなんだろうな
インデックスは覚えていられるかな?
225 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /03(金) 01:43:03.43 ID:qtFfhOE00
乙
そして頑張れ五条さん
234 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /03(金) 01:48:44.45
ID:b+UzxjoxO 以上、本日投下分となります
支援&保守を頂きました皆様
並びに関係各位の皆様
本日もありがとうございました
散々ご指摘頂きましたが、類似設定多数の暗い話です
書いてて少し滅入りました
気分直しにお嬢に一票入れます
さて、方向性を変えて行こうと思う次回ですが、異常が無ければ明日の22時過ぎから投下を開始させて頂こうかと思います
お時間がございましたら、またお付き合い頂ければ幸いです
226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /03(金) 01:43:38.68 ID:mOc4Km+aO
羽を消せたのはどういうことなんだ?228 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /03(金) 01:45:01.03 ID:yFnj/k3j0
乙。
>>226
"存在を消す"類の能力なんじゃね?237 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /03(金) 01:55:27.56 ID:wqKqcOkg0
>>226
今見なおしたけど
神の認識を阻害して羽を消してた
それより俺的にはGod knowsが気になるところ240 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /03(金) 02:03:16.97 ID:ISgfTRih0
つまり観測対象を観測する観測者が居なければそれは「存在しない」ということか
『認識』は確率・存在に密接だし、そういう意味では五条さんは一人でフィアンマやエイワスに匹敵するんだな245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /03(金) 02:24:40.56 ID:wqKqcOkg0
結局スキルアウトの腕は認識を阻害して使えなくしたんだよな?
って一生麻痺状態になるのか・・・
恐ろしい能力だ・・243 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /03(金) 02:12:55.15 ID:Ed2I/UrF0
イナイレの必殺技は全て五条さんによるものだったのか……次→
五条「ククク… ここが学園都市ですか」その12
いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか (ちくま学芸文庫)「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学 (ちくま新書)イナズマイレブン 2011年 カレンダーメタルギア ソリッド ピースウォーカーメタルギア ソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット PLAYSTATION 3 the Best
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