上条「バイトでもしようかな……」

2011-04-18 (月) 18:12  禁書目録SS   2コメント  
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:16:53.21 ID:QmEd5G950

原作15巻を基にしています。
『もし上条さんがアイテムに入ったら』
というので書きます。

文章書くのが下手なのでそこんとこはすいません。

では始めます




8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:19:52.14 ID:QmEd5G950

――――――

「まったくこいつらときたら人使いが荒すぎて『クズども』が足りないじゃないっ」

この女が言う『クズども』とは暗部組織の下部組織である。
下部組織の役割は、『暗部』の雑用などである。
装備品の開発・整備、人員の輸送、証拠隠滅などをこなすために膨大な人員がいる。
しかしその膨大な人員も使い方が荒かったら人員不足にも陥る。
なぜたくさんの人数がいるのになぜ足りなくなるのか。



12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:22:36.95 ID:QmEd5G950

下部組織はいわば使い捨てのようなものである。
たとえば、一箱に200組という大量のティッシュが入っているとしよう。
普通に使えば3~4週間は使えるが、
一度に大量のティッシュを無駄に使うような荒い使い方では、
すぐに200という数字は0になる。
しかし0になればすぐに新しいものを補充すればいい。
つまりこれと同じで人が死んだら死んだで補充すればいい。
人を使い捨てにしていて、下部組織の人間などティッシュのようなものである。

この女が担当している暗部組織『アイテム』の下部組織は、
使い方が荒すぎて底をついたティッシュである。



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:25:24.69 ID:QmEd5G950

「誰かいい人材はいないかしら!?」

女はガサゴソと机に広がる資料をあさる。
そしてある一枚の生徒のデータの載っている紙を手にとった。
その紙に書かれている生徒の名前は……

「『上条当麻』……か」

――――――



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:28:10.03 ID:QmEd5G950

――――――

10月8日。
今は、ちょうど皆が家で夕食を食べているか、食べ終えているくらいの時間帯である。
とある寮に住んでいる『上条当麻』は、自分の部屋で溜め息をつきながら、

上条「不幸だ……」

上条は通帳に書かれている残高830という数字と、
財布から出てきた100円玉3枚と10円玉5枚、1円玉9枚を見てそう呟いた。
次の奨学金が振り込まれるのはまだ先である。
そのまだ来ない日までこの全額1189円で生き延びなければならない。



16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:30:29.50 ID:QmEd5G950

なぜ上条がこのような状況に陥ったのかというと……

禁書「と~ま、おなかすいた~」

この食欲旺盛な同居人のおかげである。

少女の名前はインデックスと言って、
記憶喪失の上条には知らないとある出来事がきっかけで、
上条と一緒に住んでいるらしい。



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:32:52.18 ID:QmEd5G950

上条「さっき晩飯食ったばっかだろ!」

禁書「あんなもやし炒めともやしの味噌汁じゃ全然足りないんだよ!」

少女は、空になった食器を指さして文句を言う。

上条「上条さんが精一杯作った、低価格もやしフルコースですよ!?」

禁書「足りないっていたら足りないんだよ」

上条「だー、もうわかったから。何か作ってやるから騒ぐんじゃねぇ!」

このようなやりとりがほぼ毎日続けば自然とこうなるだろう。
まして上条は無能力者(レベル0)である。



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:35:34.97 ID:QmEd5G950

奨学金は一人で生活するだけの分の金額はあるが、
二人暮らし、まして大食いシスターと一緒に住んでいれば自然と奨学金は底をつく。

上条「(はぁ、バイトでもすっかな……?)」

上条はそんなことを思って求人票を手にとった。
求人票に載っている職は、

コンビニの店員、ファストフードの店員、ファミレスの店員、

など、どれもバイト代は一括払いであり即日払いではない。
この窮地を乗り切るにはどうしても今お金が欲しい。
しかし、そう簡単に即日払いのバイトは見つからない。

上条「はぁ、不幸だ……」

上条はなかば諦めた感じでぼやいた。
そしてあるチラシが目に入った。
そこにはこう書いていた。



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:38:25.01 ID:QmEd5G950

―――――――――――――――――――――――――――――

女の子たちの仕事のサポートやりませんか!?

◎仕事内容
・おもに雑用
・ちょっと汚い仕事かも……

◎日給20000円 即日払い

身体に自信があるそこの君→ TEL△△△―×××―□□□

―――――――――――――――――――――――――――――



20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:40:43.87 ID:QmEd5G950

上条は飛び付いた。
あくまで仕事内容ではなくそのバイト代でにある。
日給二万円という普通にありえない金額。
そしてなにより即日払いという文字にである。

上条(この状況で20000円という大金はのどから手が出るほど欲しいんですが……なんか危ない仕事臭がプンプンするんですけど。仕事内容は雑用か、ええい背に腹は代えられん)

上条はそう思って携帯電話に手を出し、書いてある番号を打ち込んだ。
そのチラシを見つけたこと自体が不幸だとは知らずに。

――――――



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:42:51.55 ID:QmEd5G950

――――――

10月9日昼ごろ。ここは、第7学区とあるファミレスである。
今日は学園都市の独立記念日であるので、学園都市内部のみは祝日である。
休日の昼ごろなので、ファミレス内部は昼食をとろうとしている学生でにぎわっている。

浜面(やりたい放題だな……)

浜面仕上は思った。

ここはファミレスである、のにもかかわらず、

外から買ってきたコンビニ弁当を堂々と食べているやつもいれば、
サバの缶詰を開けようとしているやつ、
映画のパンフレット広げているやつに、
さらに食事も手に着けず、だらけているやつもいる。



23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:45:05.89 ID:QmEd5G950

麦野「あれ? 今日のシャケ弁と昨日のシャケ弁はなんか違う気がするけど……あれ~?」

浜面(変わんねえよ!)

浜面はそう心で突っ込んだ。

この秋物らしい明るい色の半袖コートを着込んでいるふわふわした茶髪が特徴の、
シャケ弁を見て首をかしげている女は『麦野沈利』という。



25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:47:16.92 ID:QmEd5G950

フレンダ「結局さ、サバ缶がキてる訳よ! カレーね、カレーが最高」

麦野の隣で缶詰をいじくり回している金髪碧眼の女子高生は『フレンダ』。
缶切りがうまく使えないのか、ビニールテープのようなものを巻き付けて、
電気信管を取り付けて爆薬で焼き切っていた。
本来はこういうために使うものではなかったはずだ。



26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:49:54.57 ID:QmEd5G950

絹旗「香港赤龍電影カンパニーが送るC級ウルトラ問題作……
さまざまな意味で手に汗握りそうで、逆に超気になります。要チェック、と……
滝壺さんはどう思いますか?」

ふわふわしたニットのワンピースを着た、
12歳ぐらいの映画のパンフレットを広げている少女は『絹旗最愛』である。



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:52:18.52 ID:QmEd5G950

滝壺「……南南西から信号がきている……」

話を振られたのに独りで訳のわからんことを言っている、
絹旗の隣にいる脱力系の少女は『滝壺理后』。
ソファ状の席でだらっと手足を投げ出したまま、
どことも取れない所に視線をさまよわせている。



28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:55:41.23 ID:QmEd5G950

―――彼女たちは『アイテム』。
学園都市の非公式組織で、主な業務は統括理事会を含む『上層部』暴走の阻止である。
浜面仕上は『アイテム』の正規メンバーではない。
その下部組織の所属で雑用や運転手などを任されている。

浜面「(……にしても、女ばっかりの中に一人だけ男がいるってのは、何とも居心地が悪いもんだな)」

浜面はここに配属されてから常々そんなことを悩んでいた。

六人がけのテーブルに浜面は一番通路に近い所に座らされていた。
なぜかというと、彼にはドリンクバーを往復するという仕事を彼女たちに押しつけられていたからである。



29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 22:58:23.04 ID:QmEd5G950

麦野「そういえば」

シャケ弁を一通り食べ終えた麦野が話を切り出した。

麦野「あの女から下っ端の補充が来るって連絡が来たわ」

あの女とは、いつも『アイテム』に電話などで指令を与える、つまり上司である。
声だけしか聞いたことがなく、名前もどんな顔なのかもわからないので、
彼女たちの間で通称『電話の女』である。

絹旗「また浜面みたいなのが増えるんですか?」

フレンダ「浜面これ以上増えたら今までプラスだったのが一気にマイナスに急降下するって訳よ」

浜面「なっ!? 待て、俺の存在自体マイナスか!? 俺がいないほうがプラスなのか!?」

滝壺「大丈夫だよ、はまづら。私はそんなマイナスなはまづらを応援してる」

麦野「はいはい、静粛に」

彼女たちによる、浜面への集中砲火が収まらず、話が進みそうにないので、
麦野はそう言ってこの場を鎮めた。



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:00:23.83 ID:QmEd5G950

そんな麦野は『アイテム』のリーダーである。

麦野「とりあえずその下っ端が使えれば使うし、
使えなければ切り捨てればいいわ」

フレンダ「結局、その下っ端しだいって訳よ」

浜面はそんな会話を聞いて、

なら自分は使える人間なのだろうか?と思っていて少しいい気になっていた。

絹旗「浜面、にやけてて超きもいです」

浜面「なっ!?」

どうやらその思っていることがそのまま顔に出たらしい。

麦野「まあキモい浜面は置いといて、
   統括理事会の一人、親船最中が狙撃されかけた事件について、
   そろそろこっちも動きたいわけなんだけど……」

ここにいる女子たちによる、ガールズトークとはまた程遠い物騒な会話が始まった。

――――――



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:04:06.57 ID:QmEd5G950

――――――

10月9日同時刻、第7学区にあるとあるファミレス周辺を上条当麻は走っていた。
なぜこんなに急いでいるのかというと、
大量の昼食を要求する同居人のために大量の料理を作ってきたからである。

上条「(昼ぐらいまでには来いって話だったけど……間に合うか?)」

ファミレスまであと2キロ強。
上条は普段から不幸でスキルアウトから追われることが多々あるので、
それなりに体力はある。

上条「(頼むから間に合わなかったとかいう不幸は起きないでくれよ~)」

全速力で走ること約12、3分。
ついに目的地であるファミレスに辿り着いた。
上条は「ぜぇ、ぜぇ」と息を切らしながらファミレスのドアに手をかけた。



32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:06:09.76 ID:QmEd5G950

上条(たしか女の子が4人、男の子が1人とか言ってたっけ?)

上条は店に入り、「何名様ですか?」とウェイトレスに聞かれ、
「待ち合わせてる人がいます」と言い大勢の客がいるテーブル群に足を踏み出した

――――――



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:08:11.14 ID:QmEd5G950

――――――

『アイテム』御一行の話は一段落ついたようだ。
なぜかというと麦野が下っ端である浜面に、

「車を準備しろ」

という命令が下ったからである。

浜面「くそっ、俺は百人以上のスキルアウトを束ねていた組織のリーダーなんだぞ……」

浜面は思わず独り言のように言葉が漏れた。

麦野「そうね、だから何?」

浜面「(……ちくしょう)」

今度こそ心の中でそうつぶやいた。



34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:10:17.06 ID:QmEd5G950

そんなやりとりをして浜面は席を立とうとしながら出入口の方向を見た。
浜面はこちらの席にツンツン頭の見覚えのある少年がこちらに歩いてくるのを確認した。
そしてその少年は立ち止まり

「あの~、『アイテム』の集会場ってここであってますか?」

席に座っている皆の目線が自然とそこに向く。
一番近くにいたフレンダが何者か? と尋ねようとしたその瞬間、

ドンッ!!

とテーブルをたたき、急に浜面が立ち上がり怒鳴った。

浜面「なんでテメェがこんなところにいるんだよ!!」

「てっ、テメェはあのときのスキルアウト!?」

『アイテム』のメンバーが「なに言ってんのコイツ?」的な視線を一斉に向ける。



35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:12:22.93 ID:QmEd5G950

なぜ浜面がこの少年にこう言ったのかというと、

以前、浜面はスキルアウトのリーダーだった頃。
とある女性を暗殺するように依頼を受け実行しようとした時に、
とある少年に出会い、阻止された過去をもつ。

そう、そのとある少年こそが

麦野「アンタ、名前はなんていうの?」

上条「あ、上条です。『アイテム』の雑用のバイトとしてここに来ました」

浜面は唖然とした、
以前、女のピンチを救った『ヒーロー』が、
俺みたいな下っ端と同じ仕事をしようとしていることについて。

麦野「浜面、とっとと車用意してくれる? 時間ないんだけど」

麦野の命令はようしゃなく浜面へくだされた。

浜面「わっ、わかったよ」

浜面はしぶしぶ納得のいかないような顔で駆け足で店を出た。

――――――



38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:17:01.49 ID:QmEd5G950

――――――

第7学区 路地裏

ピー、ピー、ピーと路地裏に電子音が鳴り響いていた。
音源は麦野のポケットの中の携帯端末からである。

浜面「おい、それ出なくていいのか?」

麦野「良いって良いって。私らがやらなくても別の誰かが対処してるでしょ」



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:19:18.93 ID:QmEd5G950

とは言っても端末からの音はその後も止む気配もなく、
あまりのしつこさにああ言った麦野もイライラし、
ついには端末をすごい勢いでつかみ取って噛みつくように怒鳴りあげた。

麦野「ピーピーピーピーやかましいんだよクソ馬鹿!! 
応答する気も無いことぐらい分かんないの? 嫌がらせかっ!?」

電話の女『こいつときたら! こっちだって連絡したくてやってるわけじゃないんだっつうの!!』

どうやら新たな仕事の連絡らしい。
なぜかというと、例の『電話の女』からの電話だからである。

会話を聞くなり麦野はその仕事を断るようだ。

電話の女『……ウイルス保管センターは他の部署に頼んでおくから、
とにかく狙撃未遂に関して報告書ちょうだい。せめてそっちは大至急ね』

麦野「悪いそれ無理だわ」

電話の女『何よそれどーなってんのよっ!?」

麦野「何故ならこれからその『スクール』のクソ野郎どもを皆殺しに行ってくるから」



40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:21:43.34 ID:QmEd5G950

……いきなりの静寂だった。
あれだけ騒いでいた電話の主がめっきり黙ってしまったのだ。
そしてしばらくの沈黙の後、電話の女がまた声を出した。

電話の女『ええと、追加で良い? 最低でも一人に10発は鉛玉をブチ込んであげて?』

浜面「あの~、つかぬことをお聞きしますが」

女の声の後、浜面が二人の会話に割り込んだ。

浜面「管理人のあなた様は止めるべき場面ですよ?」

電話の女『騒ぐな下っ端。『スクール』の連中は前から嫌いだったのよ。
     この私の頭を悩ませるものはすべて地球から消えてしまえばいいのだ~! 
     がはははははは!!』

そんな笑い声とともに通話が切れる。



41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:23:48.38 ID:QmEd5G950

ほんとにあれが組織のまとめ役で良いのか?
そんな表情で麦野は携帯端末をポケットに戻して、軽くあちこち見回した。

麦野「ところで浜面。本当にアシは手に入るの?」

浜面「軽く流しやがった……ま、その辺はなんとかするけどよ」

と浜面は言いつつ路上駐車してある、
六人くらいは乗れるボックスカーに近づいた。

浜面「今回は上条がいるからこれくらいのやつでいいか?」

麦野「動けばなんでもいいから早くして」

浜面「へいへい……」

上条「……浜面、これお前の車なのか?」

浜面「そんわけねえじゃん。これから盗むんだよ」

上条はとても驚いた顔をしている。



42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:26:03.60 ID:QmEd5G950

なんか説得の声が聞こえたが浜面は無視をし、
ロック解除用のツールを取り出し見事な手際でロックを外した。

麦野「はー、便利なスキルだね」

そういって麦野は助手席に乗り込んだ。
それに続いて後部座席に絹旗、フレンダ、滝壺の三人が乗り込んだ。
上条はあまりにも自分がいた世界ではまったく見たことのない光景を見て、
唖然と立ち尽くしていた。

それに見かねた浜面が、

浜面「早く乗れよ! 置いて行っちまうぞ?」

上条「これに乗ったら傍観者から共犯者にランクアップしそうなんですが……あれデジャヴ?」

浜面「くだらねえこと言ってねえで早く乗れよ……」

上条(くっ、これもバイト代のためか……)

上条はあきらめて傍観者から共犯者へランクアップした。



43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:28:11.68 ID:QmEd5G950

浜面「行き先は?」

麦野「第18学区・霧ヶ丘女学院。近くに素粒子工学研究所があるの。
   親船の騒ぎに乗って私設警備の人間が緊急招集されたり機材が運ばれたりって混乱があったのはあそこだけ。
   それに合わせてガードもかなり手薄になってる。分かりやすい計画犯罪だよね」

浜面「一ヶ所だけって、ずいぶんと簡単な構図だな」

麦野「失礼、言い忘れた。数ある中で有益なポイントは一ヶ所でしたって話」

浜面「そーかい」

そういって浜面は適当に返した。
そして浜面はふと思いついた疑問を口に出した。

浜面「それにしても、素粒子工学? 仮にそこが本当にターゲットだったとして、『スクール』は何を狙っているんだ?」

麦野「さあね。親船最中の命よりも重要な要件なんじゃない?」

そう返答した後、麦野はやる気のなさそうな声で、

麦野「というわけで、クソ野郎どもの尻拭いツアーにしゅっぱ~つ」

そういった瞬間、浜面はエンジンを始動させる。
ふと後部座席から滝壺が声をかけた。



45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:30:12.47 ID:QmEd5G950

滝壺「はまづら。免許持ってたの?」

浜面「必要なのはカードじゃない。技術だ」

上条「っておいそれ違反じゃねえか!?」

浜面「うるせえなあ。お前なにしに来たんだよ?」

そんなやりとりをしながらもオートマ車は発進し、路地裏から消えていった。

――――――



46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:32:45.00 ID:QmEd5G950

――――――

車の中では、ファミレスの中で行われなかった自己紹介の質問タイムである。

普通質問タイムは、
『好きな食べ物は?』とか、『得意な教科は?』とか、
そういうベタ質問を転校生にするものだが。

この車内ではそんな普通の質問は一言も発されなかった。
なぜならここは学校ではなく、上条は転校生でもないからである。



47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:35:21.54 ID:QmEd5G950

絹旗「上条は能力者なんですか? まあこんなところにこんなバイトに来るんだから質問しなくても超分かりますけど」

上条「うっ、わかってんなら聞くなよ。 おっしゃる通り上条さんは無能力者(レベル0)ですよ」

フレンダ「結局、浜面と同レベルの人材だったって訳よ」

滝壺「大丈夫。そんなかみじょうをわたしは応援する」

浜面「滝壺。さりげなくそれは俺にダメージが――」

絹旗「じゃあなにか戦いに使えるスキルとかあるんですか?」

浜面の言葉も絹旗の声にかき消された



48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:37:25.28 ID:QmEd5G950

絹旗「たとえば銃を使うのが得意とか? それなら浜面よりは使えますね」

上条「生憎ですが上条さんはそんな銃を使う環境で生活しているわけでもないので」

フレンダ「このままじゃ本当に浜面と同レベルって訳よ」

上条「あっ、でも俺の右手にはあらゆる――」

麦野「はいはい、質問タイムは終了~」

上条が何か言いかけたが、
麦野はそう言い、これからどうするのかという議題で話し始めた。



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:39:32.98 ID:QmEd5G950

麦野「とりあえず私ら四人が『スクール』をブッ潰しに行くから、
   浜面と上条二人は霧ヶ丘女学院の近くで待機してて」

上条「ちょっとまて。女だけでケンカにでも行く気かよ」

麦野「は? なに言ってんの? ケンカなんか行くわけないじゃん」

上条「そうですよね~」

麦野「もちろんクソ野郎どもをブチ殺しに行くのよ☆」

上条「」

上条は思った。
ああバイト先を間違えたな、と

上条(不幸だ~!!!!)

上条は定番のセリフを心の中で叫んだ。
そんなことをしているうちに今は第一八学区だ。

――――――



51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:41:38.30 ID:QmEd5G950

――――――

第一八学区、霧ヶ丘女学院付近。

浜面「暇だ……」

麦野に待機と言われここで待機してる浜面と上条。
今頃麦野たちは、100メートルほど先には素粒子工学研究所の中で、
強襲する『スクール』の迎撃を行っているだろう。

まあ『アイテム』には超能力者(レベル5)の麦野、
残りのメンバーで大能力者(レベル4)の滝壺と絹旗、
爆発物のスペシャリストのフレンダ、という少数精鋭組織である。

そうそう負けることはないだろと浜面は思っていた。
そんな浜面にとってはどうでもいいことから違う事に思考がシフトし、口を開いた。



52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:42:32.47 ID:XhwFJgMz0

なんだこのスレ
糞スレともなんか違う・・・なんだこの奇妙な感じ



54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:43:58.98 ID:jpMdAwBnO

それは期待という感情だよ



53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:43:39.23 ID:QmEd5G950

浜面「なあ上条。なんでこんなバイト始めたんだ?」

上条「うっ、上条さんにもいろいろと事情があるんですよ」

浜面「レベル0でもそれなりの奨学金は貰えるだろうに……いったい何に金使ってんだ?」

上条「……食費」

浜面「どんだけ食うんだよおまえ!」

上条「違う! 俺じゃねえ。全部インデックスのやつが……あ」

浜面「いんでっくす……? テメェ、もしかして家に外国の女の子を入れてるとかいう、
   素敵イベントに巻き込まれてんじゃねえよな?」

上条「……」

浜面「なぜそこで目をそむける。オイこっち見ろよ!! そして否定しろよ!!」

上条「……」

浜面「チクショウっ! リア充爆発しろっ!!!」

ドカーン!!!!

二人「「!?」」



57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:46:35.15 ID:QmEd5G950

浜面が叫んだ瞬間、研究所がすさまじい爆発を起こした。
上条が冷や汗を垂らしながら、

上条「……あいつらってどういうやつらなの?」

浜面「ああ、あいつら全員化け物だぜ。麦野にいたっては超能力者(レベル5)、しかも第四位ときたもんだ」

上条「へえ、超能力者(レベル5)か、御坂と同じか……」

そんな会話を一気にとぎらせた事態がおこった。

ガシャン!!! 

という音がしたと思ったら一台のステーションワゴンが、
ものすごいスピードで通りすぎて行くのが視界に入った。

浜面と上条はポカンとしていると、
次に片手で滝壺の首根っこを掴んでいる麦野が走ってこっちにやってきた。



58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:48:50.11 ID:QmEd5G950

麦野「浜面!! 早く車を発進させろ! あのワゴンを追うぞ」

そういって麦野は勢いよく車内に飛び乗る。
浜面は麦野に急かされアクセルを踏もうとする。

上条「ちょっと待て! 残りの二人がいないぞ!」

麦野「あいつらはあの程度じゃ死なない。今はあのステーションワゴンが先!」

上条「ふざけんな!! 仲間見捨てんかよ!?」

麦野「うっさいわねえ。ならアンタが捜しに行って後から合流しなさいよ!」

上条「……わかった。浜面、先に行っててくれ。必ず連れ戻して来るからな」

浜面「死ぬなよ。上条」

麦野「浜面ァ、早く追いなさいよー」

浜面「分かったからそう急かすんじゃねえよ」



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:50:52.19 ID:QmEd5G950

上条がボックスカーから降りると、即座にそのボックスカーが発進し、
彼の視界からすぐに消え去った。

上条「さてと……まずはあそこから探すか」

上条の視線の先には、半壊した素粒子工学研究所の建物があった。

――――――



60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:52:04.18 ID:GXqmEeDV0

上条△



61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:52:59.13 ID:QmEd5G950

――――――

フレンダは路地裏にいた。
先ほどの戦いで『アイテム』のほかのメンバーとバラバラになってしまった。
麦野や滝壺とはぐれてしまい、
さらに、さっきまで一緒にいた絹旗も、

絹旗「ここは二手に超分かれましょう!」

とか言って、どこかに行ってしまった。
今、フレンダは一人である。



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:55:01.13 ID:QmEd5G950

現在フレンダは『スクール』の追手に追われている。
追手といっても所詮下部組織のザコ共なのでフレンダの敵ではなかったが、

フレンダ「ハア、ハア。そろそろ残弾が尽きそうな訳よ」

フレンダの耳にはいまだに複数の足音が聞こえる。
おそらく『スクール』のヤツらだろう。

フレンダの主武器は『爆弾』である。
本来フレンダは、地形を利用して、罠を仕掛け、待ち構えて戦う戦法を得意としている。
複雑に入り組んだ地形に、的確に大量の爆弾を仕掛けて、
徐々に相手を追い詰めていく戦法である。

『スクール』と粒子工学研究所で戦ったときに、武器をほとんど使ってしまい、
今、手持ちにある武器は驚くほどに少ない。
しかも、今は逃走中なのであらかじめ仕掛けている爆弾もない。

なので、総合的に今フレンダは絶望的な状況と言えるだろう。



64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/26(土) 23:58:59.52 ID:QmEd5G950

フレンダ(今、銃火器持ちと出会ったら絶望的なのよね)

最初に言ったようにフレンダは路地裏にいる。
学園都市の路地裏はとても入り組んでいる。
さらに路地裏なのでとても狭い。

もし、いくら無能力者(レベル0)の下部組織の敵に出会って、
さらに、そいつらがマシンガンのような火器を持っていたら、
場所が狭いので、銃の扱いがうまい下手関係なく速攻ハチの巣にされてしまう。

フレンダ「足音。せいぜい2~3人ぐらい……」

フレンダは路地の十字路付近にあるレストランのゴミ箱に『ぬいぐるみ』を置く。
もちらんただの『ぬいぐるみ』ではない。中に爆弾入りの特製の『ぬいぐるみ』である。

こういう場所ではいかに早く敵を殺すかである。
十字路にいかにもな男たちが2人現れた。
フレンダはそいつらを確認した瞬間、手元のスイッチを押した。

ドカン!!

という音と共にその男たちは吹き飛び、ただの肉塊となった。



65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:01:02.50 ID:3dn63S2i0

フレンダ「いっちょ上がりってわけよ!」

フレンダはもう足音が聞こえなくなったのを確認し、路地裏から出た。
そこには小さな公園があった。

フレンダ「いったんここで、休憩するかな」

この公園は子供一人とおらず、ブランコが風でギコギコ揺れていた。
見回してみると自動販売機が目に入った。

フレンダは自動販売機に小銭を入れる。

フレンダ「げ、この自販機まともな飲み物ないじゃない!」

学園都市にある飲み物は、実験品として出されているものがある。
なので、いろいろと奇妙な飲み物がコンビニや自動販売機に並んでたりする。
フレンダが小銭を入れた自動販売機はすべて実験品という奇妙なものだった。

フレンダ「何でこの町は変な飲み物ばかりあるのよ――!」

ふとフレンダが、公園の入り口に人がいるのが見えた。

「よお。テメェはたしか、『アイテム』の中にいた外人の……たしかフレンダってやつでいいんだよな?」



66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:03:16.91 ID:3dn63S2i0

フレンダはゾッと寒気がした。

フレンダ「垣根……帝督……!!」

垣根「ちょっと、教えて欲しいことがあるんだけどいいか?」

フレンダは一番のはずれを引いてしまったようだ。
超能力者(レベル5)という、化け物を。

――――――



68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:05:39.41 ID:3dn63S2i0

――――――

上条は町の中を走り回った。
『アイテム』のメンバーである絹旗とフレンダを探すためにだ。

さっき素粒子工学研究所にいたのだが、
その中はいかにもな怪しい人たちがたくさんいた。
研究所の後片付けみたいなことをしていたようだ。
ただ片付けをしているだけの人ならいいのだが、
その人たちは、背中に銃火器を背負っていた。
おそらく『スクール』ってところの下っ端だろう。

飛び出していけば必ず自分は殺される、ということが直感的にわかった。
後片づけをしているということは二人はそこにいない確率が高い。
なので上条は今、研究所周辺の町を探しまわっている。



70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:07:44.98 ID:3dn63S2i0

上条(チクショウ! 一体どこに行きやがった!)

今は昼過ぎぐらいの時間で、しかも今日は休日なので、
町には休日を楽しんでいる学生で溢れている。
その中で特定の人物を探すのは困難なことである。

「ねえ。何やってんのよアンタ?」

上条「!? 何だ御坂か……」

美琴「何だって何よ、何なんだって!」



71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:09:46.23 ID:3dn63S2i0

御坂美琴。
肩まである茶色い髪で、上条より7センチほど背丈の低い少女。
ベージュ色のブレザーに紺系チェック柄のプリーツスカートをはいている。
休日なのに制服を着こんでいるのは、校則で義務付けられているからである。
彼女は常盤台中学の生徒で、学園都市第三位の超能力者(レベル5)であり、、
『超電磁砲(レールガン)』の異名を持つ高位能力者である。


上条「悪い御坂、俺今急いでんだ」

美琴「だから何やってんの、って聞いてるんじゃない?」

上条「人捜してんだよ」

美琴「こんな休日にご苦労なこったねえ」

上条「そうだ。御坂、ニットのワンピース着た小さい女の子か、
   帽子かぶった、金髪の外国人の女の子見てないか?」

美琴「……」



72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:12:29.96 ID:3dn63S2i0

上条「あれ? 御坂さん、何をそんなに怒っていられるのでせうか?」

美琴「また女か!? またなのかァああああ!?」

美琴の額から電撃の槍が飛びかかってくる。
あれ一つで10億ボルトという、即死レベルの危険物である。

上条「ギャー!! 何を言っておられるのですか!? 御坂さーん!!」

上条は必死にその場から全速力で離脱する。

上条「不幸だァああああ!!!」

今日もいつも通りのやりとりである。

美琴(あ~。またやっちゃった~、もう!!)

美琴は溜め息を吐いて、消えていった上条の方を見る。

美琴「……あのこと……聞けなかったな」

後悔しても、上条はもう目の前にはいない。

――――――



73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:14:56.18 ID:3dn63S2i0

――――――

フレンダはうずくまっていた。
垣根がおこなった正体不明の攻撃により。

垣根「いい加減教えてくれよ。お前ら『アイテム』の情報をよお」

フレンダ(ハア、ハア。結局、勝てるわけないって訳よ)

フレンダの周りには、武器にしているドアなどを焼き切るツールや、
内部に爆弾を仕込んでいるぬいぐるみが散乱している。

フレンダ(あいつは、超能力者(レベル5)の麦野でも勝てなかった超能力者(レベル5)。
     麦野でも勝てなかったヤツに、私が勝てる訳がない)

垣根は溜め息を吐き、めんどくさそうにこう言った。

垣根「強情だな。もう一発攻撃食らっとくか?」

はっきり言って。
フレンダは、垣根がどういう風に攻撃してきているのかわからなかった。
視えない打撃。それを食らってフレンダの体は痣だらけだった。



74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:18:00.69 ID:meiSLMDA0

あかん・・・上条さんが・・・
全レベル5を殴ってまう・・・



75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:18:15.67 ID:3dn63S2i0

フレンダ「がっ――ッ!?」

フレンダは大量の血を地面に吐き出した。
蓄積してゆくダメージにもうフレンダに限界が近かった。

垣根「いいから、教えてくれよ。そしたら、見逃してやるから」

フレンダ(も、もう無理。教えてしまおうか。結局、自分の命が惜しい訳よ)

フレンダはかすれた声で、垣根にこう言った。

フレンダ「わ、わかった。は、話すから……」

垣根「ったく。やっとか。手間かけさせんなよ。」

情報をバラすことにより自分は助かるだろう。
しかしバラすことにより、フレンダは『アイテム』におそらく居られなくなる。
最悪、自分を殺すため麦野(リーダー)が地の果てまで追ってくるだろう。
しかし、フレンダはとにかく今自分の命が惜しかったのだ。



76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:21:15.71 ID:3dn63S2i0

フレンダが『アイテム』の情報について口を開きかける。
だが、その口から情報が吐かれることはなかった。
とある少年の叫び声が邪魔をして。

「やめろ!! フレンダ!!!」

自分の命が惜しくなって、
明らかに裏切ろうとしていたフレンダに。

『ヒーロー』が駆け付けた。

――――――



78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:24:10.20 ID:3dn63S2i0

――――――

上条は激怒していた。
あきらかに戦力差があるのに、
自分の目的のために、一方的に攻撃する超能力者(レベル5)に対して。

上条「テメェ。フレンダから離れろよ」

垣根「ああ? 何だテメェ? こいつの仲間か?」

垣根はアリでも見ているような目でそう言った。

垣根「こっちは取引が成立してんだよ。ジャマすんじゃねえよ、ザコが!!」

フレンダ「上条!! 逃げ―――」

フレンダが上条に言葉を伝える前に、垣根が腕を振るう。

ゴウン!!

という音の発生源が、空気を切りながら上条に向かっていく。
上条は防御するために右手を構えた。



80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:26:29.81 ID:3dn63S2i0

バギン!!
 
という音が、周りに響き渡った。
その音と共に垣根の放った何かが消え去った。

垣根「はあ?」

垣根の目が大きく見開く。
超能力者(レベル5)である垣根にも、
その状況については理解できなかったようだ。

それはフレンダも同じだった。

フレンダ(えっ? 何をやったの!? たしかあのときは無能力者(レベル0)って言ってたのに……)

上条の右手には、『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』というチカラが宿っている。
どんな能力でも異能ならば、右手で触れればあらゆるものを打ち消す。
ちなみに、上条が不幸なのは右手が幸運や神のご加護などを打ち消すからである。



82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:28:50.94 ID:3dn63S2i0

上条「大丈夫か!? フレンダ!!」

上条は驚いている垣根を無視してフレンダのもとへ駆け寄った。

フレンダ「上条。なんでこんなところに!?」

上条「お前を探しに来たんだよ」

麦野はこういう命令はしない。
つまり、上条は独断で自分を探しに来たのだと、フレンダは勝手に予想した。

フレンダ「助けに来てくれたのはありがたいんだけど、今すぐ逃げた方が良い訳よ」

上条「はあ? なんで!?」

フレンダ「あいつは超能力者(レベル5)。しかも麦野より上の、第二位。
     無能力者(レベル0)の上条じゃあ、歯が立たない訳よ!!」

確かに助けに来てくれたのはうれしい。
しかしフレンダには耐えられなかった。
自分なんかのために目の前にいる少年を殺してしまうかもしれないから。



83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:31:22.74 ID:3dn63S2i0

上条「……うるせえよ。」

フレンダ「!?」

上条「俺がてめえを守ってやるって言ってんだよ。だったらおとなしく守られてろよ!!」

初めだった。そんなセリフを言われたことが。

フレンダは、『暗部』に落ちて長い。
自分のことは自分でやる。他人のことなど考えるな。
そういう状況の中生活してきたフレンダにとって、こういうセリフを言われるなど思わなかった。

垣根「かっこいーじゃねえか。俺が悪者で、お前がヒーローか……」

垣根は笑いながらそう言った。

垣根「ガキの頃あこがれたなー。弱いものを守る、正義のヒーロー。それが今としちゃあ……ムカつくなあテメェ!!」

垣根の右腕が、真横に振るわれる。
それと同時に見えない衝撃波が上条に向かって飛んでいく。
それを上条は身構えて、

上条「じゃまだッ!!」

右手で薙ぎ払う。
さっきまで音を鳴らしながら進んでいた衝撃波は、ただの空気へと戻される。



84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:33:55.99 ID:3dn63S2i0

上条は垣根に向かって走り出す。
垣根との距離が詰る。

垣根は「チィッ!」と舌打ちをした。
垣根の周りに何かが渦巻いた気がする。
次の瞬間、

ゴァ!!

と上条の目の前の地面に正体不明の爆発が起こる。

上条「ぐぅッ!?」

上条は吹き飛ばされそうになりながらも、その爆発の中心と思われる場所を右手で触れる。
爆発は収まり、上条を邪魔していたものは消え去る。

垣根(……どうなってやがる。俺の『未元物質(ダークマター)』が機能してねえのか?) 

上条「うォおおおおおおお!!」

距離は2メートル弱。一歩で拳が届く距離。
上条は右手を引き、垣根の顔面に狙いをつける。



86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:37:33.54 ID:3dn63S2i0

垣根(俺の『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』に何か起こっているのか?)

拳が振るわれる。
しかし、その拳は当たらなかった。
垣根が一歩後ろにステップして、上条のパンチを回避したからである。

垣根「気に入らねえ展開だな!!」

垣根は今、上空10メートルくらいに滞空している。
どういう原理かわからないが、とりあえず垣根は空にいる。

垣根「いったんここは、退かせもらうぜ!」

上条「テメェ!! 待ちやがれホスト野郎ッ!!」

垣根「安心しな。あとで絶対テメェを殺してやるからよ」

そう言って、垣根はどこかに消え去った。
残っていたのは、一本の白い羽根だった。
上条が右手で触れると、それは元々何もなかったかのように消え去った。

上条「あれが第二位……か」



87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:40:11.34 ID:3dn63S2i0

フレンダ「上条……」

上条「無事か? フレンダ」

倒れているフレンダがいる方向に顔を向ける上条。
そして、その場所へ速足で駆けつける。

フレンダ「まあ、立てないほどじゃないって訳……ごほっ、ごほっ!!」

やはり垣根からの攻撃によるダメージが蓄積して、
限界を迎えているので立つのも難しい身体となっている。

上条「全然大丈夫じゃねえじゃねえか」

そう言って上条はフレンダ目の前に行き、背を向けてその場で屈んだ。

上条「乗れよ」

フレンダ「へっ!?」



89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:43:13.70 ID:3dn63S2i0

思わず声が裏返る。
いきなり上条がおこなった、よくわからない行動のために。

上条「おぶってやるから、乗れよ」

フレンダ「いやいやいやいやいや! いいってそこまでひどくは」

上条「嘘つけって。いいから乗れって」

ここで断り続けても、おそらく上条は絶対あきらめないであろう。
そんなやりとりを続けて日が暮れたら困るので、

フレンダ「……ここは、お言葉に甘えるって訳よ」

あきれめて上条の言うことを聞くことにする。
頬を赤らめながら、フレンダは全体重を上条の大きな背中に任せる。



93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:45:25.33 ID:3dn63S2i0

上条「……よっと。じゃ、病院にでも行きますか」

フレンダ「いや、病院じゃなくて、『アイテム』の隠れ家に連れて行ってほしいんだけど」

上条「いや、お前怪我してんじゃん」

上条は意外そうな顔をしている。
どうやら上条の中にはなぜか、ケガをする→病院へGO、という考え方になっているようだ。
まあ常識的に考えてそれが普通なのだが、ここではそんな常識は通用しない。

フレンダ「この程度でどうこう言えるほど『暗部』は甘くないって訳よ」

上条「ふーん。本当にいいのか?」

フレンダ「しつこい男は嫌われるって訳よ!!」

そういうもんなのか、と上条は思い、
『アイテム』の隠れ家に向かって足を踏み出す。
と思ったが、

上条「そういや絹旗の事すっかり忘れてた」

ふと思い出した中学生くらいの少女。
見た目からしてフレンダより一人にするのが危険な気がする。

フレンダ「絹旗なら多分大丈夫じゃないかな?」

上条「そ、そうか。ならいいんだが……」



94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:47:28.95 ID:3dn63S2i0

おそらく長い付き合いであろうフレンダがそう言うのからいいのだろう。
そう思う上条は再び足を踏み出そうとしたが、

上条「そういや、隠れ家ってどこだ? 俺知らねえんだけど」

フレンダ「…………」

フレンダはうんざりした顔でこう思った。
こいつ浜面より使えねえかも、と

――――――



96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:49:32.94 ID:3dn63S2i0

――――――

垣根(おかしい?)

垣根は目の前にあるディスプレイに映っているデータを見てそう思う。

ここは『スクール』の隠れ家である。
現在、垣根は自分の『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』の検査を終えた後だ。

先の上条当麻との戦闘で、自分の攻撃がことごとく消え去っていくという事態が起こった。
自分の能力の不発が『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が狂っていると垣根は推測し
そう思って検査を行ったのだ。

しかし、
その検査用の装置のディスプレイには『異常なし』と出ている。

垣根(いったいどうなってんだ? ムカつくぜ、あのクソ野郎)

などと心の中で文句を言っていると背後から少女の声が聞こえた。

「検査は終わったの?」



99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:51:50.73 ID:3dn63S2i0

垣根は振り返る。

そこには、派手なドレスを着た一四歳くらいの少女が缶コーヒー片手につっ立っていた。
彼女は『スクール』のメンバーで、『心理定規(メジャーハート)』という能力を持つ大能力者(レベル4)である。

垣根「ああ。でもおかしいんだよな。異常が全く見られねえ……」

心理定規「単純にあなたの演算ミスじゃないの?」

垣根はムッっとして、

垣根「殺すぞ」

こう一言だけ放った。

心理定規「ところで、『ピンセット』を使った解析は進んでるの?」

と垣根の言葉を流して別の話題に転換する。



101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:53:57.56 ID:3dn63S2i0

垣根の右手には機械製のグローブがつけられていて、
人差し指と中指の二本には透明な爪が装着されている。
それが『ピンセット』である。
肉眼では確認できないが、爪の中には大気中から採取されたシリコンの塊が収まっているはずだった。
もっとも、塊と言っても70ナノメートル、電子顕微鏡を使わないと確認できないようなものである。

この『ピンセット』が彼ら『スクール』が粒子工学研究所を襲った目的である。

垣根「いつも疑問に思ってた」

垣根は爪をカキカキ鳴らしながら呟いた。

垣根「アレイスターのクソ野郎は、俺たちの動向を知り過ぎているってな。
   防犯カメラや警備ロボット、衛星か何かの監視だけじゃねえ。
   いったいどうやって情報を集めてるのか不思議なもんだったが」

心理定規「…………」

垣根「正体はなんてことはない。
   町中に見えない機械を5000万ほどバラまいて情報収集してたんだ。
   そりゃあ隅々まで知り尽くしてても当然だな」



103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:55:58.76 ID:3dn63S2i0

『滞空回線(アンダーライン)』。
その形状は球体上のボディの側面から針金状の繊毛が左右に三対六本飛び出しているものだ。
移動方法は地上を歩くのではなく空気中を漂うといった感覚に近いだろう。
この極小の機械は空気の対流を受けて自家発電を行い、半永久的に情報を収集して、
体内で生産した量子信号を直進型電子ビームを使って『滞空回線(アンダーライン)』間でやり取りし、一種のネットワークを形成している。
『滞空回線(アンダーライン)』は『窓のないビル』と直結する唯一の情報玄関口であり、当然ながら、この中には世界を揺るがすほどの『最暗部』の情報がいくつも隠されているはずである。

垣根「ただ、『滞空回線(アンダーライン)』の存在を知ったところで、電子顕微鏡サイズの機械を見つけることは困難だし、仮に捕まえられたとしても情報を取り出す手段がないんだよな。何しろナノサイズの機体をこじ開けて、端子にコードを接続しなくちゃならないからな」

さらに『滞空回線(アンダーライン)』体内に収められた量子信号は、
外部から不用意に『観察』されるとその情報を変質させてしまうという問題もあった。

そこで必要とされたのが『ピンセット』というわけである。



105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 00:58:10.88 ID:3dn63S2i0

ナノデバイスがどれだけ小さかろうが、
素粒子そのものを掴むために開発された『ピンセット』なら問題はない。
これなら『滞空回線(アンダーライン)』から情報を抜きとることも十分に可能となる。

ドレスの少女は垣根を見ながらこう言った。

心理定規「解析結果の方は?」

垣根は溜め息をつき、諦めたような顔をして、

垣根「予想通りだよ。ダメだな。
   たしかに『滞空回線(アンダーライン)』荷は結構なデータが収められているが、
   これだけでアレイスターと対等にやりあえる立場に立てると思えねえ。
   このデータにプラスしてもうひと押しする必要がある」

心理定規「なら、やっぱりやるのね」

垣根「……ああ。学園都市の第一位、『一方通行(アクセラレータ)』を殺す」



107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:00:28.97 ID:3dn63S2i0

学園都市第一位の『一方通行(アクセラレータ)』はアレイスターから見て、
『第一候補(メインプラン)』の核になっていて、
第二位の垣根帝督は、『第二候補(サブプラン)』となっている。
なので第一位を殺すことによって、自分が『第一候補(メインプラン)』になることが、
直接交渉権を得るのに近道であると垣根はみている。

垣根「『一方通行』か……」

垣根帝督は『ピンセット』を眺めながら、ゆったりと笑った。

――――――



109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:02:38.61 ID:3dn63S2i0

――――――

上条たちはアイテムの隠れ家に到着していた。

麦野「遅いよー二人とも」

麦野沈利がのんびりした調子で言った。

フレンダ「ご、ごめん麦野」

ボロボロのフレンダが返答する。

ここは第三学区にある高層ビルの一角である。
スポーツジムやプールなど、屋内レジャーだけを集めた施設であって、利用者のグレードはかなり高い。

建物に入るだけで会員証の提示を求められ、
そこから各施設を利用する際、会員証のランクを調べられたりする。
いわゆる上級階級と呼ばれる人々が、ステータスとしてまず手に入れたいものがここの会員証らしい。



110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:04:40.48 ID:3dn63S2i0

上条たちが今いるのはVIP用のサロンである。

年間契約貸し切り個室で、
『二つ星』以上の会員証ランクがなければ借りる資格さえ与えられないという。
まさに最高級な感じの部屋であって、上条には一生縁がないと思ってもいい場所である。
個室と言っても3LDKを超える広さの空間で、麦野はソファに身を沈めていた。
上条がある少女を見て、声を出した。

上条「絹旗。よかった、無事だったのか。」

絹旗「はい。フレンダが『スクール』の主力を超引きつけてくれたおかげで、比較的楽に逃げ切れました。」

フレンダ「まったく、おかげで『スクール』の超能力者(レベル5)に殺されかけたんだから」

フレンダは軽く起こりながら言う。
擬音で言うなら、プンスカだろうか。

麦野「はいはい、わかったから。いい加減そのムカつく第二位をブチ殺しに行きたいんだけど?」

麦野は軽い感じでそう言い滝壺の方を向く。

麦野「滝壺。お願い。」



112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:06:44.95 ID:3dn63S2i0

麦野がそう言うと滝壺は無言でうなずき、ポケットから透明なケースを取り出す。
絹旗は不思議そうな目で透明なケースを見ている。

絹旗「滝壺さんも超難儀していますよね。『体晶』がないと能力を発動できないなんて」

滝壺「別に。私にとっては、こっちの方が普通だったから」

そう答え、そして麦野の方へ向く。

滝壺「検索対象は『未元物質(ダークマター)』でいい?」

麦野「いいから、とっととやっちゃいなさい」

滝壺は白い粉末をほんの少しだけ舐めた。彼女の目が光る。
まるでそちらの方が正常であるかのように、背筋を伸ばして滝壺理后はたたずんでいる。

滝壺理后は、『能力追跡(AIMストーカー)』のという能力を持つ、大能力者(レベル4)である。
一度記憶したAIM拡散力場の持ち主を補足し、たとえ太陽系の外まで逃れても居場所を探知できる能力である。

滝壺「AIM拡散力場による検索を開始。
   近似・類似するAIM拡散力場のピックアップは中止。
   該当する単一のAIM拡散力場のみを結果報告するものとする。
   検索終了まで五秒」

機械のように放たれる声。
そして、正確な答えはやってきた。



113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:09:28.48 ID:3dn63S2i0

滝壺「結果。『未元物質(ダークマター)』は、第七学区にいる」

浜面「第七学区って、結構広いぜ?」

滝壺「大体この位置は喫茶店や、オープンカフェが並ぶところ。
   今も絶えず、移動を繰り返している」

麦野「よし、だいたいわかったわ。」

ソファから立ち上がった麦野は軽く背伸びしてから、

麦野「『アイテム』、『スクール』のクソどもをブチ殺しに行くわよ。
   浜面。先に行って、車ですぐ出られるようにしてて」

わかった、と軽く返事をし、浜面は入口から出て行った。

麦野「じゃ、頼むわよ。絹旗」

絹旗「了解です」

そう言うと、絹旗は上条の背後に回る。
「なんだよ?」と聞く前に上条の首元に手刀を食らわせる。

ガッ!!

上条「なっ――!?」

上条は地べたに倒れこんでしまう。
意識が遠のき、だんだんと視界がぼやけていく。



114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:11:43.78 ID:3dn63S2i0

麦野「悪いけどここでお別れね。あんたはこれ以上『暗部』にかかわらない方が良いわ」

フレンド「ど、どういう事なの麦野?」

フレンダは心底あせっているのが見て分かる。

麦野「言葉の通りだよ。この『善人』をこれ以上、この道に踏み込ませる訳にはいかないよ」

上条「ふ……ざけん……」

麦野「ああ大丈夫よ。バイト代ならここ置いとくから」

麦野は茶色い封筒をガラステーブルの上に置いた。
おそらくこの中に一万円札が二枚入っているのだろう。

麦野「あんたはこれ以上。ここにはかかわらない方が良いわ」

上条はここまで聞いて、意識が消え去ってしまった。

麦野「フレンダ。あんたもここにいても良いんだよ? 
   身体もボロボロだし、武器の残りも少ないんでしょ?」

フレンダ「結局、心配ご無用な訳よ! 腐っても『アイテム』だし」

麦野「せいぜい死なないことね」



115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:14:05.69 ID:3dn63S2i0

軽く笑って返答する麦野。
そんな会話をしつつ『アイテム』は、『スクール』のリーダー、
超能力者(レベル5)第二位、垣根帝督の下へ向かう。

『アイテム』と『スクール』の最終決戦の火蓋が切って落とされる。

――――――



116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:14:41.88 ID:ZrQydJV00

むぎのんが優しいだと



120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:19:03.73 ID:jiW9j5440

ぺろぺろ



117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:16:11.51 ID:3dn63S2i0

――――――

第七学区のとあるオープンカフェの席に、二人の少女が座っていた。

頭に花の髪飾りをしている彼女は『初春飾利』という。彼女は『風紀委員(ジャッジメント)』である。その証拠に風紀委員の証である腕章をつけている。

その目の前で机に突っ伏している、肩まである茶色い髪に、同色の瞳。
空色のキャミソールの上から男物のワイシャツに腕を通して羽織っている、
見た目10歳前後の少女は『打ち止め(ラストオーダー)』という。

なぜこの二人が一緒にいるのかと言うと、
「迷子を捜す!」と息巻いている打ち止めに初春が付き合うかたちで一緒に行動していた。
そして歩きまわっているうちに、歩き疲れたから休もうと言ってこの状況にある。
ちなみに現在初春は大型甘味パフェに挑戦中だ。



118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:18:17.65 ID:3dn63S2i0

初春「ところで迷子はどうなったんですか? 
   アホ毛のビビっと反応はもう無くなっちゃったんですか?」

打ち止め「……ミサカはアホ毛じゃないもん、ってミサカはミサカは萎れながら答えてみたり」

しかしそうは言っても10歳前後の少女の頭頂部から一部だけ飛び出した髪の毛が、
秋の風を受けてそよそよと左右に揺れている。どこに出しても恥ずかしくない天下無敵のアホ毛だ。

打ち止め「うーん……さっきまで確かにこの辺りをウロウロしていると感じたんだけど、
     何だかいつの間にかどっか言っちゃったみたい、ってミサカはミサカはあまりの徒労っぷりにげんなりしてみる。」

と、グニャグニャしていた打ち止めがいきなり顔をあげた。
迷子が見つかったのかな? と初春が思ったのだが、どうも違うらしい。
打ち止めは通りすがりの女子高生たちが持っていた、
チェーン系の喫茶店のセットについてくるキーホルダーを凝視している。



121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 01:20:23.37 ID:3dn63S2i0

打ち止め「み、ミサカもあれが欲しい、ってミサカはミサカはお財布を持ってないので、
     初春のお姉ちゃんの方にキラキラした瞳を向けてみたり!!」

初春「あーもう、迷子を捜すんじゃなかったんですか?」

打ち止め「むむっ! あっちの喫茶店から迷子の反応をミサカは感じ――ッ!!」

初春「真顔で嘘をついちゃダメですよ。
   大体、私の大型甘味パフェはまだ序章の生クリームゾーンを終えたばかりであって、
   ここで席を立つことなんてありえないんです」

打ち止め「何でそんなのんびりしてるのーっ! ってミサカはミサカはテーブルをバンバン叩いて駄々をこねてみたり!!」

初春「……そういえば、タクシーのお釣りを一杯もらってませんでしたっけ?」

打ち止め「ハッ!! 言われてみれば、ってミサカはミサカはポケットに突っ込んで札を握りしめて手近な喫茶店にダッシュしてみたり!!」

言い終える前に走り出す打ち止め。初春はハンカチを振りながら、

初春「ちゃんと戻ってくるんですよー」

とひとまず忠告だけはしておく。
よし、ここからが本番だ、と意気込んで。
大型甘味パフェのアイスクリームゾーンへ突入した初春だったが、

「失礼、お嬢さん」

不意に横からそんなことを言われた。



167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 06:37:34.40 ID:3dn63S2i0

アイスクリームをすくおうとした小さなスプーンの動きを止めてそちらを見ると、
何だかガラの悪そうな少年が立っていた。右手には、機械で出来た怪しげな装飾をつけている。

初春「はぁ。どちら様ですが」

「垣根帝督。人を捜しているんだけど」

言いながら、垣根と名乗った少年は一枚の写真を取り出す。

垣根「こう言う子がどこへ行ったか、知らないかな。『最終信号(ラストオーダー)』って呼ばれているんだけど」

初春「……」

初春は数秒間、じっと写真の中の少女に注目した。
垣根と写真を何度か交互に見比べ、それから首を横に振った。

初春「いいえ。残念ですけど、見ていないですね」

垣根「そうか」

初春「どうしても見つけられないなら『警備員(アンチスキル)』の
   詰めどころに届け出を出した方が良いと思いますけど」

垣根「そうだね。その前にもう少し自分で捜してみる。ありがとう」



168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 06:39:49.26 ID:3dn63S2i0

にっこりと垣根は言って、そこから立ち去った。
初春は細いスプーンを大型甘味パフェに突き刺して、
再びアイスクリームゾーンへ突入しようとしかけたが、

垣根「ああそうだ、お嬢さん。言い忘れていたことがあるけど」

初春「はい?」

初春が顔をあげようとする前に次の言葉が出た。

垣根「テメェが『最終信号(ラストオーダー)』と一緒にいたことは分かってんだよ、クソボケ」

殴られた、と気づく前にすでに初春は椅子から転げ落ちてしまった。
ろくに食べていない大型甘味パフェが地面に落ち、あちこちに散らばった。

周囲から通行人の悲鳴が響く。
何が起きたか初春はわからなかった。とにかく起き上がろうとするが、
仰向けに倒れている初春の右肩に、垣根は靴底を思い切り踏みつけた。

垣根「だから俺はこう尋ねたんだぜ。『こう言う子を知りませんか』じゃなくて、
   『こういう子がどこへ行ったかわかりませんか?』ってな」

垣根は足に体重をかける。少女の右肩を砕くために。



169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 06:41:56.08 ID:3dn63S2i0

ダゴギッ!!

という鈍い音と共に、骨と骨をこすりあうわせるような激痛が走り抜けた。関節が外れてしまったのだ。
初春は、あまりの痛みにのたうち回りたくなるが、垣根の鉄柱のように動かない足がそうはさせてくれない。

初春の絶叫が響いたが、垣根の表情は少しも変わらなかった。

垣根「テメェが俺の動きに気付いて『最終信号(ラストオーダー)』を
   『逃した』ってわけじゃねえことは予想できる。
   俺は外道のクソ野郎だが、それでも極力一般人を巻き込むつもりはねえんだよ。
   だから協力してくれりゃ、暴力を振るおうと思わねえ」

周囲にはたくさんの人々が往来している。
しかし、彼らは一斉にその場から距離を取っただけで、
初春のもとへ駆けつけようとする人は一人もいなかった。



170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 06:44:04.71 ID:3dn63S2i0

無理もない。
初春は、風紀委員の腕章をつけている。
実際に風紀委員は校内の揉め事に対処する組織である。

しかし、その風紀委員の中にもエリートや落ちこぼれがいるのだが、
何も事情を知らない一般の人々から見たら、
『腕章をつけている人は治安維持の人間だ』
ぐらいにしか思えない。
その治安維持を行う人が、いとも簡単にねじ伏せられているのを見て、
それを助けようとなどと考えることはないだろう。

孤立無援の中、垣根の靴底が関節の外れた肩にさらに押し込まれる。

垣根「……ただな、俺は自分の敵には決して容赦はしねえ。
   何も知らずに『最終信号(ラストオーダー)』に付き合わされてたのならともかく、
   テメェの意思で『最終信号(ラストオーダー)』を庇うってのなら話は別だ」

垣根の足にさらに力が加わっていく。

垣根「頼むぜーお嬢さん。この俺に殺させるんじゃねえよ」



171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 06:46:49.90 ID:3dn63S2i0

グギギガギゴギガリ!!

鈍い音と強烈な痛みが連続する。堪えようと思ったがすでに初春の瞳から涙があふれていた。
負の感情がグチャグチャに混ざり合い、巨大な重圧となって初春の人格を内側から圧迫する。

垣根「『最終信号(ラストオーダー)』はどこだ? 
   それだけを教えれば、テメェを解放してやる」

提示された、たった一つの逃げ道。
どこを見回してもゴールが見えない出口に、たった一つ設けられたゴール。
『痛みから解放される』というゴール。

初春の唇がゆっくりと動く。
涙を流しながら、その口が動く。
自分の無様さに歯噛みしながら、初春は最後の言葉を告げる。

初春「――すよ……」

垣根「……なに……?」



172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 06:53:12.34 ID:3dn63S2i0

初春「聞こえなかったんですか? 
『あの子は、あなたが絶対に見つからない場所にいる』って言ったんですよ。
嘘をついた覚えは……ありません」

できるだけ垣根を馬鹿にしたように舌まで出して彼女は言った。

垣根帝督はしばらく無言だった。

垣根「……いいだろう」

溜め息をして初春の方から足をどけた。
しかし、その足は地面には戻らず今度は初春の頭を狙ってピッタリと止まった。

垣根「俺は一般人には手を出さねえが、自分の敵には容赦しねえって言ったはずだぜ。
   それを理解したうえで、協力を拒むってんなら、それはもう仕方ねえよな」

垣根は振りあげた足に力を込める。
まるで、空き缶を潰す要領で足を動かす。

垣根「だからここでお別れだ」

ブオ!!

という風圧に初春は涙をためた目をつぶった。
今の彼女にはそれくらいしかできなかった。



173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 06:55:15.78 ID:3dn63S2i0

「待ってください!!」

垣根の足がピタリと止まる。声がした方へ垣根は首だけ向ける。

そこにはセミロングの黒髪に白梅の花を模した髪飾りをつけた少女がいた。
下にいる風紀委員と一緒の制服なので、友達かなんかかと垣根は思う。

「う、初春を放してください!!」

その少女は声を震わせながらも、悪者である垣根に叫びかける。

初春「だ、ダメです佐天さん!! 逃げてください!!」

初春は残り少ない体力を使って声を出す。
なぜこんなところにいたのか知らないが、
とりあえずこの親友に、この男の毒牙が向かないように。



175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 06:57:16.66 ID:3dn63S2i0

佐天「で、でも初春……」

初春「いいから早く!!」

戸惑う佐天を早く逃がそうと一生懸命声を荒げる初春。
そんな二人を見て垣根は、

垣根「はあ。泣けてくるねー。親友のために危険を冒してまで助けに来る……」

垣根は足を地面につけ、佐天の方向に身体を向ける。
そして鋭い眼光が、佐天を睨みつける。

垣根「ならテメェも俺の敵ってことだ。なら容赦はしねえよ。

初春「に、逃げてっ!!」

佐天「ひっ!!」

垣根の周りにまがまがしい何かを感じる。
周りの人たちは思っただろう。彼女たちは死んだな、と。



176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 06:59:16.82 ID:3dn63S2i0

垣根が何かをおこなおうとした瞬間、彼の体が店内に吹っ飛んだ。

「なあに一般人とじゃれてんのよ第二位。私と遊んでちょうだいよ♪」

垣根はゆっくり立ち上がり、その声主の方へ視線を向ける。
そしてダルそうな声で、

垣根「またお前か第四位、麦野沈利さんよお。
見逃してやったのにわざわざ死にに来てんじゃねえよ」

麦野「ほざけ第二位が。今すぐその不似合いな順位から引きずりおろしてやるわよ」

第二位と第四位。
『未元物質(ダークマター)』と『原子崩し(メルトダウナー)』
超能力者(レベル5)という二人の化け物が再び相見える。

――――――



177:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 07:01:24.31 ID:3dn63S2i0

――――――

携帯電話の着信音が鳴り響く。

ここは第七学区のとあるコンビニである。
現代的な杖をついている白い超能力者(レベル5)『一方通行(アクセラレータ)』は、
仕事を終えてすることもないので、適当なコンビニに入って、
左手に持つ籠の中に大量のコーヒーを放り込んでいる最中である。

籠を地面に置いた後、ポケットの中にある携帯電話を取り出して、
ディスプレイに表示されている『登録3』という文字を見る。
実際に電話に出ると、彼が思っていた人物とは別の人物の声がした。

『お疲れ様です、一方通行。ひとまず『ブロック』による
統括理事長暗殺未遂事件は終結しました。これも全てあなたがた『グループ』おかげですよ』

この電話の声に対して一方通行は不機嫌そうな声で、

一方通行「オマエか」

と答える。



178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 07:03:35.70 ID:3dn63S2i0

先ほどの電話の声から出た、『ブロック』と『グループ』というのは、
『アイテム』や『スクール』らと同等の機密で扱われる暗部組織である。

『有能な部下を持って私も幸せです……』

一方通行「よっぽど殺して欲しいようだなァ」

『いえいえ。私も今回は本当に感謝しているんですよ。
ところで現在『アイテム』と『スクール』が交戦しているのはご存知ですか?』



179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 07:05:36.64 ID:3dn63S2i0

一方通行は溜め息をつく。呆れながら一方通行は、

一方通行「仕事の感謝の言葉を並べた途端次の仕事の話か?」

『仕事ではありませんが……この情報を聞いてどうするかはあなた次第ですけど……』

一方通行「情報だァ?」

『感謝の気持ちみたいなものですよ。通常の規定報酬のほかに、個人的な謝礼として有用な情報ををお持ちいたしました』

一方通行「……言ってみろ」

『はい。検体番号(シリアルナンバー)20001号『最終信号(ラストオーダー)』の命の危機に関する情報です

――――――



180:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 07:08:14.22 ID:3dn63S2i0

――――――

麦野は一度、粒子工学研究所で垣根と戦っている。
今でも彼の能力を理解することはできない。
しかし、どうせ殺してしまえば一緒だろうと麦野は深くは考えてはいなかった。

麦野「おい、クソガキ共!! 邪魔だからとっととどきなさい!!」

麦野は、明らかに邪魔くさい初春たちを睨みながら怒鳴る。

佐天が初春を連れて行くために、彼女の所へ近づく。

佐天「大丈夫? 初春」

初春「だ、大丈夫です……あいたた!!」

右肩を押さえながら初春は立ち上がろうとする。
それを心配そうに見る佐天の後ろに垣根が立っていた。



181:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 07:10:16.24 ID:3dn63S2i0

初春「さ、佐天さん後ろ!!」

佐天「へっ!?」

初春の声はむなしく、垣根はすでに攻撃の準備を終えていた。

垣根「とりあえず死んどけよ」

麦野「チッ!!」

麦野は電子線を初春たちのいる付近の地面に発射する。
着弾した地面が爆発を起こし、初春たちが10メートルほど転がってゆく。



182:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 07:12:30.98 ID:3dn63S2i0

垣根「へー。ずいぶんと甘くなったもんだな第四位」

麦野「なんのことやら」

その言葉と同時に複数の電子線を垣根に向かって飛ばす。

麦野の能力は『原子崩し(メルトダウナー)』。正式名称粒機波形高速砲。
波も粒子も使わずに電子を操る麦野が発射する電子線は、
どんな障害物も無視し、そのまま貫く強力な能力だ。

しかし、垣根は避けようともしない。
直撃したように見えたが、当たる直前に電子線が消え去っていた。



184:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 07:14:32.08 ID:3dn63S2i0

麦野(ここまであのときと一緒ね……さてどうしたもんか)

第四位の脳をフル回転させる麦野。考えをまとめる暇もなく、

垣根「どうした、もうお終いか? 次はこっちから行くぞ」

そう言って垣根は左腕を振りかざす。その動作と同時に衝撃波が発生して麦野を襲う。

麦野は舌打ちをし、目の前に電子線で出来た障壁を張る。
その障壁は敵の衝撃波を払いのける。

垣根「ほうやるな。だがこれならどうだ?」

再度左腕を横に振る垣根。先ほどと変わりない衝撃波が発生する。

麦野(あァ? なに考えてやが――)



185:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 07:16:37.16 ID:3dn63S2i0

考え終わる前に麦野の体が真後ろに吹っ飛んだ。

麦野「がッ!?」

なぜ? と麦野は思う。目の前には先ほどから障壁が張られていた。
別に障壁をよけて、側面から来たわけではない。
そもそもその場合は体の側面に衝撃が来るはずだ。
それ以前に障壁は直径2,3メートルくらいの巨大なものである。

しかしその衝撃波は正面から堂々と障壁を超えて飛んできた。

麦野「テメェ、いったい何をしやがった?」

垣根「簡単なことだ」

垣根はそう答えた後、突然背中に白い翼が生えた。



187:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 07:18:49.06 ID:3dn63S2i0

垣根「俺の『未元物質(ダークマター)』に常識は通用しねえ。ただそれだけだ」

そう不気味な笑みを浮かべながら宙に浮く垣根。
その姿はまるで天使のようだった。

麦野「チッ!! 似合わねんだよクソメルヘン野郎が」

垣根「心配するな。自覚はある」

早くも超能力者(レベル5)同士の戦いに、差が見え始めてきた。
第二位と第四位という、膨大な差が。

――――――



189:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 07:20:51.98 ID:3dn63S2i0

――――――

麦野以外の『アイテム』のメンバーは、付近に停めてあるボックスカーに乗っていた。
麦野に『私一人で決着つけてくるからあんたら待機ね』
と言われたので四人は待機していた。

待機と言うのは、垣根以外の『スクール』のメンバーが現れたときに、
麦野の邪魔をさせないために対応するという事である。

浜面「ところで麦野は大丈夫なのだろうか……?」

おそらく麦野たちの戦いを眺めてる野次馬の群れを、
フロントガラス越しに見て浜面はそう言った。



197:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 07:52:41.68 ID:qKxpT/Un0

時間軸がごちゃ混ぜすぎてわからん



201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 08:24:30.49 ID:ZQfTIOCti

>>197
15巻のパラレルっぽいから、15巻読んどかないとわかりにくいのかも。



203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 08:26:38.86 ID:4aZxrpz+0

只々期待



205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 08:28:04.90 ID:3dn63S2i0

絹旗「今はそんなこと超気にするときではありません。私たちは麦野の邪魔をするヤツが来ないように見張るときです」

そうはいいながらも絹旗も麦野が気になるのか、ちらちら野次馬の方へ目を向けていた。

フレンダ「結局、麦野なら大丈夫って訳よ……たぶん」

浜面「でも相手は第二位だろ。俺はどんなやつか見たことないけど、やっぱ強いんだろ?」

皆がだまる。正直第二位『垣根帝督』は強い。おそらく麦野以上だろう。
それをわかっていて麦野を止められなかった。

しばらく沈黙が続いた。やはり沈黙は心地いいものではなかった。
そこで、沈黙を破るようにジャージを着た少女は声を出す。



207:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 08:33:37.19 ID:3dn63S2i0

滝壺「大丈夫。もしむぎのがやられそうになったって、私たちで助けよう。もちろんむぎのに恨まれるかもしれない。だけど……」

滝壺の瞳は、『体晶』を使っていないのにもかかわらず輝いているように見えた。

滝壺「私たちは『アイテム』。一人でも欠けたらダメ。もちろん浜面もだよ。
   だから麦野が死ぬくらいなら恨まれた方がマシだよ」

浜面はおどろいた。滝壺がこんなに饒舌になっていることと、
下部組織である浜面にも欠けてはならない言ったこと。



209:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 08:41:18.81 ID:3dn63S2i0

絹旗「そうですね。浜面は超どうでもいいですけど」

フレンダ「結局、そういうことになるって訳よ。浜面はどうでもいいけど」

浜面「お前らそんなに俺が嫌いか!? 
   俺はあの超能力者(化け物)どもの戦場に特攻かけてくればいいのか!? 
   そうなのか!?」

顔を紅潮させ、そう叫ぶ浜面。
そんな浜面を見てあきれた様子で、

絹旗「冗談ですよ浜面」

フレンダ「まったく。浜面は冗談も通じないアホって訳よ」

浜面「…………」

滝壺「大丈夫。私はそんな冗談の通じないはまづらを応援する」



212:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 08:47:59.56 ID:3dn63S2i0

浜面「……とにかくやることは決まったんだよな?」

今でもハートブレイクしそうな浜面だが、声を出す力は残っているようだ。
皆は目を合わせる。皆の考えていることは一緒だろう。

麦野(リーダー)を助ける。たとえ恨まれたとしても。

そして野次馬がいる方向を見ると、たまたま目に入ったものがあった。
血だらけの麦野がしゃがみ込んでいる。
それを見て彼女たちの決心が固まる。

――――――



215:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 08:55:07.46 ID:3dn63S2i0

――――――

麦野の消えそうな意識の中、自分は今どんな格好だろうと考えていた。
攻撃を受ける度に血が噴き出し、視界を真っ赤にする。
自分の周りには大量の血だまりができていた。

麦野「クソッ……たれが……」

垣根「まだ意識あんのかよ。タフだな第四位」

余裕な笑みを見せながら宙に浮く垣根。
右手に着けているピンセットをカチャカチャして遊んでいる。



217:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 09:00:49.15 ID:3dn63S2i0

垣根「いい加減『最終信号(ラストオーダー)』を捜して、あの第一位(クソ野郎)をおびき出さねえといけねんだ。とっとと出血多量で死にやがれよゴミが」

麦野「生憎だけど……そんなに簡単に死ぬわけにはいかねえんだよ」

麦野は震える足で立ち上がる。おそらく麦野はもう限界であろう。
しかし、ここで倒れるのは彼女のプライドが許さない。



219:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 09:07:32.81 ID:3dn63S2i0

垣根「しかたがねえ。時間の無駄だが自分でとどめを刺すか……」

垣根は左手を構える。
あれが振られることがあれば、あの衝撃波が飛んでくるだろう。
あれを防ごうと電子線の障壁を張る体力も無い。

垣根「さて、とっと楽に―――」

左手を振ろうとする垣根の体に衝撃が走る。
なぜなら、垣根の側頭部には喫茶店で使われているようなテーブルが激突していた。



220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 09:13:50.50 ID:3dn63S2i0

垣根「痛ってえなあオイ」

垣根はそのテーブルが飛んできた方向を睨みつける。

12歳くらいの少女が、
絹旗最愛が大量のテーブルや椅子を持って立っていた。

絹旗「麦野は超やらせません!!」

そういうと次々と持っているものを垣根に向かって投げ飛ばす。



224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 09:20:14.23 ID:3dn63S2i0

絹旗最愛は怪力ではない。
『窒素装甲(オフェンスアーマー)』という窒素を自由に操る能力者なのだ。
その力は極めて強大で、圧縮した窒素の塊を制御することで、
自動車を持ちあげ、弾丸を受け止めることすらできる。
しかし、その効果範囲は狭く、手のひらから数センチの位置が限界。
だから、見た目では『手で持ち上げているように』見えてしまうのだ。

しかし垣根にそんなものは通用しない。
垣根が左腕を振りかざす。
それだけで垣根に向かってくるテーブルや椅子を蹴散らしてゆく。
そして、そのままその射線上にいた絹旗を吹き飛ばす。



225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 09:26:09.11 ID:3dn63S2i0

麦野は最初なにが起こっているのかわからなかった。
しかし、数秒たった後すぐさまに理解した。

麦野「何やってんのあのバカは―――」

そう言おうとした途端、視界の中に見覚えのあるボックスカーが停まった。

浜面「大丈夫か、麦野!?」

ボックスカーの運転席の窓から顔を出す浜面。

麦野「浜面……あんたたち何してんの!? ジャマするなって命令したはずよ」 

滝壺「ダメだよむぎの」

ボックスカーから滝壺が下りてくる。
滝壺の顔がいつもと違う気がした。



229:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 09:33:04.65 ID:3dn63S2i0

滝壺「私たちは、みんなで『アイテム』。どんな仕事もみんなでやる。だからそんな命令は聞けないよ」

フレンダ「結局、麦野は無理し過ぎなのよ。少しくらい私たちに頼ってもいいって訳よ」

次に、軽快にボックスカーから降りてきたフレンダがそう言った。
いつもの軽い口調だが彼女の顔は真剣そのものだった。

浜面「生き残ろうぜ麦野。こんなとこで死ぬお前じゃねえだろうしな」

最後にボックスカーから降り、レディース用のピストルを手に持つ浜面がそう言う。

麦野「……」

なにをバカなこと言ってんだこいつらは? と麦野は思う。
しかし彼女は不思議と怒りなどの負の感情はわかなかった。
そして麦野から険しい表情から、いつもの麦野の表情に変わる。



231:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 09:38:36.86 ID:3dn63S2i0

麦野「浜面く~ん。いつからそんなことを言えるくらい偉くなったのかにゃーん?」

浜面「うっ! 今はそんなこと言ってる場合じゃねえだろ」

麦野「さあて。今度こそ行くわよ。絹旗が心配だわ」

麦野は立ち上がり、圧倒的な超能力者(レベル5)のもとへ足を進める。
『アイテム』という仲間と共に。



232:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 09:44:46.07 ID:3dn63S2i0

垣根はうっとおしそうに周りを見る。
目の前には吹き飛ばしたはずの少女が立っている。
視界を90度左に傾けると、
さっきボロボロにしたはずの麦野の周りに『アイテム』のメンバーが集まっていた。

垣根「お前らホントめんどくせえなあ! 勝てねえと分かって何で立ち向かってくるかなあ?」

麦野「あァ!? はなっから勝てねえと思って戦うバカがどこにいるんだよ」

垣根「はあ? まさか俺に勝てると思ってんのか? まったく、脳みそ湧いてんじゃねえのか?」



235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 09:50:54.77 ID:3dn63S2i0

垣根の目の前にいた少女は、麦野たちと合流する。

浜面「大丈夫か絹旗?」

絹旗「超大丈夫です。この程度でやられる私じゃありませんし」


フレンダ「さて、これで『アイテム』が全員そろった訳よ」

全員、各々の武器を構える。
麦野は粒機波形高速砲の発射準備をした右手。
絹旗は握りしめた窒素をまとった拳。
フレンダは2,3個のぬいぐるみ型爆弾。
浜面は拳銃。
そして、滝壺はポケットから透明なケースを出す。



237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 09:57:17.22 ID:3dn63S2i0

麦野「滝壺。あんたそろそろ『限界』なんじゃないの?」

滝壺「大丈夫。仲間のためなら」

浜面「おいどういうことだよ『限界』って?」

滝壺「大丈夫、大丈夫だから」

そういうと滝壺は透明なケースの中にある『体晶』を少し舐めた。
その瞬間、滝壺の目に輝きが生まれた。



239:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 10:03:02.80 ID:3dn63S2i0

垣根「おいおい。そんなものを使ってまでなにになるってんだよ」

垣根は滝壺の行動を、頭がイカれた人を見るように見る。
まるで滝壺がどうなっていくのかがわかっているように。

滝壺「あなたには関係ない」

垣根を睨みつける滝壺。
そして、それを見た麦野が声を出す。

麦野「さあて。垣根帝督。とりあえずあんたは……」

勝てるかわからない。そんな相手に麦野は、
勝ちを確信したような笑顔を見せつけ、

「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね!!」

その言葉と同時に『アイテム』は動きだす。
それぞれの役割を果たすために。



次→上条「バイトでもしようかな……」【後編】

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コメント一覧
6149. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/04/21(木) 16:34 ▼このコメントに返信する
金のために暗部に入る上条さん・・・
あれ?これ、綺麗だけど実はゲス条さんじゃね
18112. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/02/15(水) 18:02 ▼このコメントに返信する
登場人物が全員頭が悪すぎる
ギャグパートでアホの子扱いじゃなくてシリアスでこの頭の悪さだと歯痒い
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