前→
上条「バイトでもしようかな……」
241:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 10:09:08.09 ID:3dn63S2i0
麦野は粒機波形高速砲を垣根に飛ばす。やはり垣根には届かない。
なんらかのチカラを使い、電子線を無効にしているのだろう。
電子線を防いだ次の瞬間、垣根は懐に気配を感じる。
そこには、いつの間にか距離を詰めていた絹旗がこちらに飛んで来ていた。
絹旗は、垣根の腹にジャンプした勢いを使いアッパーをした。
垣根の腹に拳が突き刺さる。
垣根「なるほど。窒素か……」
そう呟いたのが絹旗に聞こえた。そして絹旗は気づく。
なぜか手ごたえがない。
243:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 10:15:27.57 ID:3dn63S2i0
そう気づいたら瞬間、絹旗は吹き飛ばされた。
『窒素装甲(オフェンスアーマー)』による窒素の鎧を無視し、
絹旗の体に直接ダメージを与える。
絹旗「がッ!!?」
そのまま吹き飛ばされた絹旗をなんとか体を張って浜面が受けとめた。
その勢いに負けたのか浜面はそのまま尻もちをつく。
浜面「い、生きてるか?」
絹旗「な、なんとか……」
絹旗の口から血がダラリと流れていた。それだけ強力な攻撃を受けたことがわかる。
それを見た浜面は歯を食いしばりながら拳銃を構える。
浜面「クソッたれが!!」
拳銃を2発発射する。
もともと総弾数が少ない拳銃なので、過度に連射するわけにはいかないとみたのだ。
246:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 10:22:05.22 ID:3dn63S2i0
垣根「お呼びじゃねんだよ。下っ端が!!」
垣根に向かう2つの銃弾が、一瞬ですべて薙ぎ払われる。
そして浜面に向かって衝撃波を飛ばそうとする。
だが突然足元でおこった爆発に気を取られ、それができなかった。
フレンダ「文字通り、足元が御留守って訳よ」
手元には、爆弾を爆発させるためのスイッチのようなものを持っている。
おそらくさっき持っていたぬいぐるみが爆発したのだろう。
しかし垣根にはそのようなものは効くはずもない。
垣根「お前、あれだけボロボロにしたのに懲りてねえな」
フレンダ「実の事を言うと、今でもすっごい逃げ出したいんだよね」
麦野「ならとっとと逃げだしなさいよ!!」
粒機波形高速砲を連射する麦野がそう言った。
だが、その粒機波形高速砲は全部垣根に届かない。
250:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 10:28:38.78 ID:3dn63S2i0
フレンダ「何を御冗談を。逃げるつもりなら最初っからここには立ってない訳よ」
懐から2つの手榴弾を取り出すフレンダ。
それを垣根に投げつける。やはり垣根にはそのような普通の兵器は通用しない。
そんな戦いを繰り広げている中、つっ立ってジーと垣根を見つめている少女が、
ブツブツ呟いた後に大声を上げる。
滝壺「『未元物質(ダークマター)』の『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』のパターン分析完了。AIM拡散力場の干渉可能。……麦野!!」
麦野「了解、滝壺。テメェら時間稼ぎは終了だ!!」
そういうと今まで垣根に近づいていたメンバーは、全員、離れていく。
垣根(ああ? どういうことだ。あれだけムカつくくらいちょっかいかけてきて、今さら撤退だ?)
252:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 10:35:57.27 ID:3dn63S2i0
すると、垣根は何かプレッシャーのようなものを感じた。
そして、そのプレッシャーの発信元を特定した。
滝壺理后だ。
なにをしようとしているのかわからないが、
滝壺はこちらを見たままつっ立っていることを確認した。
垣根(何つっ立ってんだあいつ―――)
そう考えた途端、垣根は何か大事なものを奪われた気がした。
その瞬間、垣根の能力が『暴走』し、左腕が吹っ飛んだ。
256:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 10:42:18.83 ID:3dn63S2i0
垣根「があァアアアアアアアアアアアアアア!!」
今まで空に浮いていた垣根だが、暴走によりそれが維持ができなくなり地に落ちた。
それと同時に滝壺も、体中から嫌な汗を流しながら道端に倒れた。
浜面「滝壺ッ!?」
浜面はそう叫び、すぐさまに滝壺のもとへ向かった。
滝壺に触れるととても熱く、身体が異常なことがわかった。
滝壺「ごめん……むぎの。能力の『暴走』が……限界だった」
麦野「十分よ滝壺。後はゆっくり休みなさい」
そう言われると、うん、と言って滝壺はダラッと座り込む。
260:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 10:48:57.64 ID:3dn63S2i0
『能力追跡(AIMストーカー)』は、対象のAIM拡散力場を記録し、
その対象をどこまでも追い続け、検索、補足する能力だが、
これを応用することによって、相手のAIM拡散力場に干渉し、
『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を乱すことで、
能力を暴走させたり、能力を乗っ取ることもできる。
浜面「どういうことなんだよ。これ!」
焦りを見せる浜面。それに対して絹旗がその状況について説明する。
263:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 10:55:51.89 ID:3dn63S2i0
絹旗「これは滝壺さんが使っている『体晶』の副作用ですよ」
浜面「そもそも『体晶』ってなんだよ!? 能力を使うためのものじゃないのかよ!?」
絹旗「元々『体晶』っていうのは、厳密には意図的に拒絶反応を起こして、
能力を暴走させるものなんです。たいていの場合はデメリットしかないはずなんですけど、
ごく稀に『暴走状態の方がいい結果を出せる』っていう人がいるんですけど……それが滝壺さんなんです」
浜面「それがヤバそうなものってのは分かるけど、それが何であんなになってんだよ!?」
絹旗「それも『体晶』の影響です。『体晶』はそれだけ身体に負担が大きいんですよ」
浜面「そ、そんな。そんなことしてまで滝壺は……」
浜面は唖然する。あのいつもボーとしているような少女が、
そんなヤバいものを使って能力を使っていたという事実に。
268:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 10:59:50.90 ID:3dn63S2i0
フレンダ「今はガッカリして時じゃないって。とっととこの戦い終わらせて、医療班のところに直行って訳よ」
浜面「……わかってる。あの垣根のクソ野郎をぶったおして、滝壺を病院に連れていく」
麦野「とは言っても、滝壺のおかげで垣根の能力は『暴走』してくれてるし。これはもう勝ったようなもんね」
そう言いながら麦野は無様な垣根を見つめていた。
垣根は左腕があった場所を押さえ、痛みにこらえているように見えた。
垣根が血眼になりながらもこちらを睨みつける。
おそらく滝壺を睨みつけているのだろう。
271:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 11:05:52.18 ID:3dn63S2i0
垣根「クソがァあああ……『暴走』なんてふざけんじゃねえよ!!」
垣根は『未元物質(ダークマター)』の制御に躍起になっている。
しかし、制御しようとすればするほど能力が自分を攻撃しているような気分になる。
麦野「どうやらここまでのようね」
麦野が垣根に近づき見下ろしながら言う。
麦野「もうあんたはまともに能力を使うことはできない。それは能力者にとってかなり致命的なんじゃなーい?」
挑発的に喋る麦野に垣根の怒りのボルテージが最高潮になっている。
しかし、能力で目の前の女を殺そうとするがやはり身体にダメージが来るだけだった。
274:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 11:12:39.55 ID:3dn63S2i0
垣根「がァあああああ!!!!」
麦野「もうそんなみすぼらしい姿をこれ以上晒させないように今すぐブチ殺してあげるわ」
そういうと麦野は手をかざし、垣根へ粒機波形高速砲を発射する準備をする。
ここでとどめを刺すためにだ。
垣根はその光景を見て何を思ったのだろうか?
ザコの集まりに追い詰められてムカつく?
格下の第四位に殺される自分がムカつく?
能力を使うことができないのがムカつく?
違う、複雑なことではない。いたって単純なことである。
275:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 11:18:23.36 ID:3dn63S2i0
垣根(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス)
278:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 11:26:36.75 ID:3dn63S2i0
麦野の粒機波形高速砲が発射された。
ここにいる誰もが垣根の死は確定したと確信した。
しかし、そんな常識は次の瞬間、跡形もなく消え去ることを誰が予想したか。
垣根「がァァアアアアァアあアアアアァァアアアあアアァアアあア!!!!!!!!!」
282:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 11:32:53.90 ID:3dn63S2i0
垣根が咆哮する。それだけではない。
背中に生えている数メートルほどの彼に不似合いな翼が、
何十メートルと言う巨大な翼に変貌する。
麦野が発射した粒機波形高速砲ごと、周囲20メートル内にあるすべてのものを吹き飛ばした。
――――――
390:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 20:42:23.01 ID:3dn63S2i0
――――――
浜面が目を開けた。
はっきり言ってなにが起こったかは、彼の脳では情報が処理しきれなかったが、
この光景を見てすべて理解した。
浜面「あ……んな化け物……に勝て……る……わけがねえ……」
そこは地獄絵図だった。
周りにいた野次馬たちは垣根の攻撃に巻き込まれたのか、
辺りに人がバタバタと倒れていた。
はっきり言って、人間か肉塊か解らなかった。
周りのアスファルトは割れ、えぐれ、吹き飛ばされて、
道路がただの荒野となっていた。
ふと周りを見てみると、倒れている同僚たちが見えた。
392:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 20:48:10.02 ID:3dn63S2i0
絹旗の下には滝壺がいた。
絹旗が守っていたおかげでこれと言って目立ったケガはなかったが、
『体晶』の影響で、深刻なダメージを受けた身体だったうえで、
さっきの衝撃を受けてしまったようで、動かず気絶していた。
そして、一番垣根の近くにいた麦野は、
身体中が服ごと引き裂かれ、ダラダラと血が流れ、
もはや服か身体か分からない状態になってた。
それだけならまだいい。
それだけならまだいい、というのはおかしいのだろうが。
396:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 20:57:02.97 ID:3dn63S2i0
麦野の左腕が見当たらなかった。
垣根の攻撃により跡形もなく消え去ったのか、
今もどこかに落ちているのか。
いろいろ予想はできるがとにかく麦野の左腕がなかった。
それと、気がかりなことが一つあった。
なぜ自分は意識があるのかである。
あれだけの爆発に巻き込まれ、
能力者の彼女たちは大けがを負っているのに、
無能力者(レベル0)の自分にはとくに重症と言うほどのケガはしてなかった。
せいぜいかすり傷程度である。
運が良かったのか? と浜面は考えた。
400:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 21:05:58.20 ID:3dn63S2i0
とりあえず、何か行動しないとと思い、浜面は立ち上がった。
しかしその瞬間とてつもないプレッシャーに浜面は身体を震わさせる。
周りの砂煙が晴れてきた。
黒い人影が見えた。
完全に砂煙が晴れたとき、
そこには垣根かどうかわからない超能力者(化け物)が立っていたのが見えた。
背中には数十メートルもの大きさの神秘的な白い翼が、3対に空に広げられていた。
漫画やゲームなんかでみたことがある。
そう、まるで、
浜面「……天……使?」
402:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 21:11:19.06 ID:3dn63S2i0
垣根がこちらに気付いたようで、浜面がいる方向に目を向ける。
ビクッ!!っと身体が震える。
さっきまでの戦いが怖くなかった、と言えばウソとなるが、
今まさしく、本当の恐怖が自分を襲っている。
垣根「ああ、テメェ生きてたのか……」
よくよく垣根の姿を見てみると、
さっきまで消え去っていた左腕はいつのまにかもとに戻っていた。
おそらく能力かなんかで腕を新しく生やしたのだろう。
浜面「テメェ。いったい何をしやがったんだ」
震える身体を押さえながら、垣根に問いかける。
404:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 21:16:57.53 ID:3dn63S2i0
垣根「あ? ああ。これは俺も予想外だ」
浜面「は? ふざけんな!! テメェは滝壺に能力が暴走させられて、能力がまともに使えなかったんじゃなかったのかよ!?」
垣根「ああそうだな」
軽かった。あまりにもあっさりとした返答だった。
垣根「その滝壺とかいうやつに代わりに礼を言っといてくれよ。
『お前のおかげで俺は、第一位になった』ってな。こりゃ一方通行なんて余裕だな。
オイオイこれってもしかして俺、『絶対能力者(レベル6)』になっちまったんじゃねえのか?」
407:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 21:22:53.19 ID:3dn63S2i0
聞いたことのない単語を聞いた。
『絶対能力者(レベル6)』。
学園都市は、
無能力者(レベル0)、低能力者(レベル1)、異能力者(レベル2)、
強能力者(レベル3)、大能力者(レベル4)、そして超能力者(レベル5)。
これらの6段階で査定されるはずだ。
そんな常識浜面でも知っている。
能力者の頂上である超能力者(レベル5)。
その上に立つ『絶対能力者(レベル6)』。
そんなものが本当にあるのだろうか?
410:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 21:28:09.20 ID:3dn63S2i0
浜面「……ふざけんなよ。常識的に考えて『絶対能力者(レベル6)』なんてもんあるかよ!!」
垣根「おいおい。言わなかったけなあ……いや、そのときお前はいなかったか?」
垣根はやれやれ、と額に手を当てる動作をして、
不気味な笑顔を浮かべながら口を開けた。
垣根「俺の『未元物質(ダークマター)』に常識は通用しねえんだよ!!」
浜面は全身の力が抜けたのか、尻もちをつき腕をダラッと下げた。
これは安心して気が抜けたのではない。
もう全てがどうでもよくなったのだ。
「ふ……ざけんじゃ……ないわ……よ……」
どこからか声が聞こえた。
413:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 21:34:33.36 ID:3dn63S2i0
その声の持ち主は左腕を失った麦野である。
血だらけの身体を震わせながら、
麦野は垣根を睨みつける。
垣根「よお第四位。いい夢見れたか?」
麦野「テメェなんかが……『絶対能力者(レベル6)』なん……かが、なれるわけ……ねえだろうが」
垣根「まあそうだろうな。こう簡単に『絶対能力者(レベル6)』になれれば苦労はねえよな。まあひとつだけわかったことがある」
垣根は麦野に近づきながらそう喋る。
そして麦野の目の前に立ち、目を大きく見開いた。
垣根「超能力者(テメェら)はもうクズってことがな!!」
415:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 21:41:44.00 ID:3dn63S2i0
垣根は麦野の頭を軽く蹴り飛ばす。
それだけで麦野の身体は5メートルほど浮いた。
麦野「が……は……」
頭を無視して脳みそに直接衝撃を与えられている、そんなようなダメージだった。
意識が飛びそうだった。しかしかろうじて意識はある。
麦「……クソ……が……」
浜面「麦野ッ!!」
垣根「すっげえなおい。軽く蹴飛ばしてこれかよ」
垣根は浜面を無視して歩いていく。
もはや浜面などなんとも思っていないのだろう。
420:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 21:49:33.39 ID:3dn63S2i0
ピピピピピピピ
いきなり何かの音が鳴った。
その瞬間垣根の足元が爆発した。
垣根は足元が爆破したにもかかわらず、
どうでもよさそうに足元を見ている。
「結局、逃がしは……しないって訳よ」
その足元にあったものを操作していたのは、
頭から血が流れているフレンダだった。
浜面「フレンダ!! よかった生きてたのか」
「私も超無事ですよ」
浜面「絹旗、お前もか」
二人はボロボロの体にムチを打って立ったのだろう。
しかし、この状況で立つことは間違いだろうと、浜面は思っていた。
423:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 21:55:19.52 ID:3dn63S2i0
垣根「あーなんつうか。テメェらそんなに殺して欲しいの?」
垣根の表情は変わらない。
あいかわらずどうでもよさそうだ。
絹旗「死ぬつもりもありませんし、お前を逃がすつもりも超ありません」
フレンダ「なんつうか、ここで逃がしたら麦野に真っ二つにされそうで怖いのよね」
垣根「はあ。せっかく生かしてやろうと思ったのによお。なんだ? この善意を踏みにじられた気分は」
垣根は身体をこちらに向ける。
そして、敵意というより殺意をこちらに向ける。
425:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:01:14.52 ID:3dn63S2i0
垣根「そんなに死にてえなら、勝手に死んじまえよ」
絹旗とフレンダは身構える。
垣根のほぼ一撃必殺と思われる攻撃をよけるためだ。
だが化け物はつっ立ったままである。
あくまでつっ立ったままである。
次の瞬間、フレンダたちは体中が切り裂かれた。
距離、装備、能力。
すべてを無視して彼女たちの皮膚を引き裂く。
そしてすべてが倒れ伏す。
反応できなかった。というよりいつ攻撃されたかも、
そもそも攻撃されたかどうかも分からなかった。
それはそのシーンを見ていた浜面もである。
428:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:08:07.56 ID:3dn63S2i0
浜面(み、みんな殺される……)
浜面は目の前の光景を見てそう思った。
そう思うしかなかった。
それくらい垣根帝督という化け物は、圧倒的だった。
フレンダ(な……んで?)
不思議と痛みは感じない。
ただただもう自分は死ぬのだろうかと感じるだけだった。
フレンダ(死にたくない……)
指一本動かせない状態で、フレンダは思った。
もはやどうしようもないというのことは分かっている。
これは運命といっても過言ではないだろう。
足音が近づいてくる。おそらく垣根帝督だろう。
その足音が地獄へのカウントダウンに聞こえる。
430:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:16:42.88 ID:3dn63S2i0
自分の十数年の人生を振り返った。
『暗部』なんかに入って、ろくな人生ではなかった気がする。
学園都市の闇の住人になってから、こうなることは分かっていたはずだ。
フレンダはふと見上げる。
純白の巨大な翼を広げる垣根が目の前に立っていた。
周りの人から見れば、『天使』などと口から発するだろうが、
フレンダからはどうみても『悪魔』にしか見えなかった。
それを見てフレンダはただただ思うだけだった。
垣根は足を上げる。次にその足の着地地点はフレンダの脳天だ。
434:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:26:48.84 ID:3dn63S2i0
フレンダはなぜかあの少年が脳裏に浮かんだ。
自分が過ちを犯そうとしたところに、さっそうと現れて自分を救ってくれた少年が。
今ごろ、絹旗の手刀を食らって隠れ家で寝ているだろう少年が。
自分にとって『ヒーロー』に見えた少年が。
フレンダ(……最後に……もう一度上条に会っておきたかったな)
今下ろされよう足を見て、フレンダは目をつむる。
涙があふれる。
今度こそ死んだと思った。
フレンダ(……死にたくない―――!!!)
437:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:32:04.51 ID:3dn63S2i0
しかし足は振りおろされなかった。
目を開けると垣根はいない。
その代わりに別の人物が立っていた。
本当に会えるとは思わなかった。
もし神様がいるのなら、感謝してもしきれないと思った。
彼女の目の前に『上条当麻(ヒーロー)』が立っていた。
――――――
438:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:33:47.60 ID:0i48GIFc0
さすが上条さんだぜ
442:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:37:13.10 ID:S5+FV5EX0
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
443:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:37:42.80 ID:3dn63S2i0
――――――
浜面はその一部始終を見ていた。
フレンダが踏みつけられそうになるところから、『垣根帝督(化け物)』が上条にブッ飛ばされるところまで。
浜面「あ、ありえねえ……」
浜面は驚愕した。
麦野「ほんとバカよね……わざわざバイト代をテーブルの上に置いといてあげたのに」
麦野はあきれる。
絹旗「ふう。私としたことが超浅かったってことですね」
絹旗は自分のミスを笑う。
フレンダ「あ……ああ……」
『ヒーロー』の参上に安堵したフレンダは
涙を流しながらその名を呼ぶ。
447:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:44:55.17 ID:3dn63S2i0
「かみ……じょう……」
上条「はは、よかった。無事だったかフレンダ」
隠れ家からここまで走ってきたのか、
上条は息が荒く、顔に汗が目に見えるほど流れていた。
上条「あとはゆっくり休んでな。後は俺が片をつける」
フレンダ「わ……わかった……」
フレンダは安心したのか、ゆっくりと瞳を閉じていった。
445:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:39:27.66 ID:m7f8B8p00
やだカッコイイ
451:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:51:43.28 ID:MI7WcNk70
このままだと浜面のポジションがやばい
452:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:51:57.85 ID:3dn63S2i0
麦野「かーみーじょー。残業代はでないわよ」
上条「いやいやいらねえよ。そもそも何にもしてねえのにバイト代もらうのは気がひけたしな」
麦野「……バカよねえ、まったく」
垣根「おいおいおいおいおい。俺の事を忘れてんじゃねえよ」
上条から笑顔が消える。そして、明確な敵を睨みつける。
上条「また会ったなホスト野郎」
垣根「俺としてはホストみてえな軽い男じゃねえんだけどな」
そんなどうでもいいことを軽く返す垣根だが、
それに反して目はまさしく狩人の目だった。
458:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 22:57:11.68 ID:3dn63S2i0
垣根「あのときは、俺の『不幸(アンラッキー)』が、
テメェに『幸運(ラッキー)』を起こしてしまって、
退いてしまったが……今回はそんな『幸運(ラッキー)』はおこらねえぜ」
上条「分かってねえな」
上条は呟くように言う。
そして上条は地面を思い切り蹴り、垣根との距離を詰める。
上条「俺に『幸運(ラッキー)』なんて起こらねえんだよ!!」
460:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 23:06:34.23 ID:3dn63S2i0
上条が右腕を後ろに引く。殴りにかかる姿勢だ。
垣根はそんな姿を見て、
垣根「学園都市最強になった俺にそんなちっぽけな拳が届くわけが―――」
すべて言い終える前に、上条の拳が垣根の顔面に突き刺さった。
バギン!!
という音とともに真後ろに垣根は吹っ飛んだ。
垣根は驚いた顔をした。
バカな!ありえるか?なぜ!?
そんな言葉が脳裏によぎった。
垣根(どうなってやがる。ちゃんと目の前の空気を『侵入する物体を粉々にする』、
という性質にするために『未元物質(ダークマター)』でいじったはずだ!? なぜ!?)
465:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 23:12:47.50 ID:3dn63S2i0
『未元物質(ダークマター)』。
この世に存在しない素粒子を生み出し、操作する能力。
生み出した物質はこの世の物理法則に従わず、独自の物理法則に従って動き出す。
攻撃面でも防御面でも圧倒的な力を誇る能力である。
しかしそんな能力も上条の右手には通用しない。
上条「立てよ!!」
垣根の思考は上条の怒号で阻害された。
469:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 23:18:51.28 ID:3dn63S2i0
上条「テメェにはムカついてんだ!! 人の仲間をこんなにまでしやがって。
さらに無関係の人まで巻き込みやがって、もしかしたら死んでたかもしれねえんだぞ!!」
垣根「チッ、俺だって関係ねえ奴らに危害を加えるつもりはねえよ。
だけどよ、俺は、俺のジャマをするヤツはぶっ殺す、と決めてんだよ」
垣根は口から出る血を拭った後、悪魔のような笑みで、
垣根「でもテメェら『アイテム』は俺のジャマをしてきた。だから攻撃した……それだけだ」
上条「ふざけんじゃねえ!! たしかに麦野たちがお前のジャマをしたのは分かる。
だけど『一般人(周りの人たち)』を傷つけるのは筋違いだろ!!」
垣根「大丈夫だ。ちゃんとジャマをしてたさ、ちゃんとな。
『一般人(あいつら)』がそこに立っているだけで俺のジャマになんだよ!!」
476:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 23:27:53.09 ID:3dn63S2i0
無茶苦茶だ、と上条は思った。
今までいろいろなヤツと戦ってきたが、
こんな歪んだ思考のヤツはいたか?
垣根「無茶苦茶だ、って顔してるな。そりゃそうだ。
俺にテメェらの常識は通用しねえんだからよ!!」
上条「いいぜ。」
上条は思う。こいつをこのまま野放しにはできない。
このままほっといていけば、一般人(みんな)の平穏は一瞬で踏みにじられるだろう。
上条「テメェの常識が、本当にそんなクソッたれなもんでいいと本気で思ってんなら……」
上条は拳を握る。あの歪んだクソ野郎をぶん殴るために。
480:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 23:34:11.57 ID:3dn63S2i0
上条「まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す!!」
垣根『やってみろやァあああああ!!! ザコがァあああああああああ!!!』
上条が拳を振りかざす。
垣根はとっさに後ろに回避した。
それと同時に複数の衝撃波を上条に向けて飛ばす。
上条は横に飛びその攻撃を回避した。
なぜ打ち消さなかったのか?
それは防ぎきれなかったからである。
上条の『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』の効果は右手のみである。
右手一つでさばききれないほど数の攻撃はどうも相性が悪い。
だからそういう攻撃は避けた方が得策なのである。
483:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 23:41:52.64 ID:3dn63S2i0
垣根はその光景を見て、
『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』の弱点に気付いたのか、
先ほどとは比べ物にならないほどの数の衝撃波を、
上条に向かって放った。
上条(や、やべえ!! 避けきれねえ―――)
ドドドドドゴォオオン!!
すさまじい爆音と共に上条がいた場所付近の地面が吹き飛んでいた。
それだけの爆発だったので、たくさんの砂煙が舞っていた。
487:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 23:48:26.08 ID:3dn63S2i0
垣根は邪悪な笑みを浮かべ、
「勝った」と心の中で呟いた。
もう垣根の邪魔をするやつはいない。
後はそこのゴミどもを片付けて、一方通行をぶち殺すだけだ。
垣根「ヒャッハハハッはっはっはっはっ!!」
我慢できず思わず声をあげて笑ってしまった。
こんな喜びは久しぶりだ、と垣根は思った。
しかしその喜びは一瞬で打ち壊された。
490:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/27(日) 23:52:44.55 ID:3dn63S2i0
上条「……なにがおかしいんだよ?」
垣根「!?」
砂煙の中にひとつの影が。
先ほどぶっ殺したはずの少年の影である。
垣根「はあ!? どうなってやがんだテメェはよお」
上条「そう簡単に死ねるかよ」
ボロボロの姿で上条が立っていた。
垣根「クソが。クソが。……死ねよォおおおおおお!!」
上条「!?」
497:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 00:03:00.62 ID:7Hcj0niC0
ザクシュ!!!
上条の全身の皮膚が切り裂かれた。
一瞬でだ。
上条「がっ―――!?」
一瞬で上条の服の色は赤一色に染まった。
上条は、グチャ、と言う音とともに地面に倒れこんだ。
垣根「は。はははは。ざまあねえぜ」
垣根は倒れた上条を見る。周りにはたくさんの赤い液体。
これは絶対死んだな、と垣根は思った。
これで死ななかったら、今度こそアイツは化け物だ。
506:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 00:08:35.47 ID:7Hcj0niC0
荒くなっている息を整えながら、
垣根は周りに倒れている人たちを見て、
垣根「あーあ。ムカついた。テメェら皆殺しな」
周りの意識がある人間は、これを聞いて絶望しただろう。
垣根「まずは……そのきったねえ面でビクビク泣いてたテメェからにするか!!」
垣根は倒れているフレンダの方向へ目を向ける。
浜面は、「まずい」、と思って立ち上がろうとしたが、
足が震えて立つことができない。
浜面「ち、ちくしょう……」
垣根は左腕を構える。狙いは意識のないフレンダ。
垣根「まずはひと―――」
上条「……やら……せるかよ……」
511:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 00:13:47.25 ID:7Hcj0niC0
後ろから一番聞きたくない声が聞こえた。
バッ、と後ろへ振り向く。
全身ズタボロの少年が、
もう死んでもおかしくない少年が、
息を切らしながら立っていた。
垣根は予想外の事態に陥り、完全に焦りを見せていた。
目は見開き、全身に冷や汗が流れ、身体が震えていた。
520:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 00:23:53.71 ID:7Hcj0niC0
垣根「な、なんだってんだよテメェはァアアアアアアアアアアアアアア!!!」
垣根は六つの翼を上条にたたきつける。
0.1秒より早く地面に着きそうな速度。
時速300キロで走る新幹線に正面からぶつかるよりも重い衝撃。
その翼の行きつく先は、すべて上条の脳天。
垣根は今度こそ勝ったと思った。
まず、この速度の攻撃はかわせない。
まず、これを食らって生きている人間はいない。
527:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 00:32:39.55 ID:7Hcj0niC0
0.1秒後。
その翼はすべて、跡形もなく消え去った。
上条が頭上に振りかざした右手、
『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』によって。
垣根「……は?」
としか言いようがなかった。
実は、今まで垣根は、上条の右手が異質なのを信じてなかった。
信じたくなかったのだ。
『未元物質(ダークマター)』という絶対的なプライドが壊されなくなかったから。
『たまたま』、衝撃波がヤツの目の前で消えてしまった。
『たまたま』、爆発がヤツの目の前で消えてしまった。
『たまたま』、『未元物質(ダークマター)』が働かずにヤツに殴られた。
と『たまたま』でやりすごせるだろう。
そう思って右手の事は信じてなかった。
530:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 00:39:58.58 ID:7Hcj0niC0
しかし、今のは『たまたま』では絶対やり過ごせない。
垣根「どうなってんだ!! その右手はァァあああああああああああ!!!!」
垣根は吠える。目の前にある不可解な現象に。
自分はこの世界にないものを作る能力である。
おそらくあの一方通行の絶対的な『反射』でも防ぐことはできないであろう。
しかし、理解できないものを作る垣根でも、目の前にある彼の『右手』は理解できない。
いったいどういう構造で、どういう原理であれは働いているのだろうか。
まったく理解できない。
はっきり言って、自分は自分の事を『化け物』と思っていた。
『最強』だと思っていた。『負けること』はないと思っていた。
しかしその『幻想』はことごとく破壊された。
目の前の『化け物』に。
532:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 00:46:58.37 ID:ZAesn0p30
上条さんかっこよすぎるww
533:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 00:47:15.66 ID:T68KGX32O
うなる主人公補正!!!
534:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 00:47:47.02 ID:7Hcj0niC0
上条「うおォおおおおおおおおおおおおおお!!!」
上条は精一杯走った。全身ズタボロで、動くこともできるか分からない身体で。
もう上条には痛みなど関係なかった。
ただただ、目の前の垣根帝督(常識知らず)をぶちのめすために。
上条は、軋む足を動かす。
これ以上、仲間たちを傷つけさせないため。
垣根は近づいてくる上条に、とっさに『未元物質(ダークマター)』で衝撃波を形成した。
これ一つで、一つの町は滅ぼせるほどの威力がある。
人など軽く粉々にできる。
上条はその形成されたものが何か分からない。
しかし、仲間を傷つけさせるものだとは分かる。
ならばそんなものは全てぶち壊すだけだ。
541:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 00:52:57.54 ID:7Hcj0niC0
衝撃波が発射される。
右手がかざされる。
バキン!!
町を滅ぼす衝撃波はあっさりと消え去った。
それと同時に垣根の戦意も消え去っていく。
546:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 00:56:37.08 ID:7Hcj0niC0
上条と垣根の距離は3メートルも無い。
もはや上条の間合いだ。
フレンダという外国人がこう言っていた。
『上条は無能力者(レベル0)』だと。
垣根は無能力者(レベル0)についてこんなことを思い出していた。
549:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 01:02:00.53 ID:7Hcj0niC0
垣根(……そういや。心理定規がこんなこと言ってたっけ……)
―
――
―――
心理定規『第一位の一方通行が、どこの馬の骨とも知らない、
無能力者(レベル0)に負けたらしい……って噂を聞いたのよ。本当だと思う?』
垣根『そんなデマに踊らされてんじゃねえよ。
ただの無能力者(レベル0)が、あの第一位(化け物)に勝てるってんなら、
俺でも余裕で一方通行殺せるわ』
心理定規『そう……面白い話題だと思ったんだけど……お気に召さなかったかしら?』
垣根『チッ……』
―――
――
―
垣根(……まさか……コイツが!?)
557:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 01:10:06.29 ID:7Hcj0niC0
上条は歯を食いしばる。拳に力を入れる。右腕を引く。
垣根は、クソが、という声とともに後ろに逃げようとする。
しかし上条の拳は彼を逃がさない。
上条「うォおおおおおおおおおッ!!!!」
上条のアッパーが、垣根の顎を貫く。
その勢いで彼の体が2,3メートルくらい吹っ飛び、5,6メートル転がって行く。
上条は垣根を見る。もう動く様子はない。
563:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 01:15:50.90 ID:7Hcj0niC0
ぜえ、ぜえと息を荒くしながら、垣根に言った。
上条「もう立つんじゃねえぞ。」
上条は警告する。これ以上自分に殴らせるなと言うように。
上条「もしこれ以上立って、仲間を傷つけようとするなら……もう俺は……これ以上容赦はしねえ!!」
566:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 01:21:00.34 ID:7Hcj0niC0
終わった。
終わってみるとあっけなかった。
とあるバイトがきっかけで戦った少年により、
自分の力に溺れていた超能力者(レベル5)と、仲間のために拳を握った無能力者(レベル0)の、
『スクール』と『アイテム』の戦いは終結した。
表の世界に多大なダメージを残してから。
――――――
570:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 01:25:47.45 ID:7Hcj0niC0
――――――
上条は座り込んでいた。
真っ先に救急車を呼ばなければならないのだろうが、
今の上条の頭はそこまで回らない。
麦野「かーみじょー。悪いけど『ピンセット』回収してくれる?」
上条「『ピンセット』って。垣根の着けてたやつか?」
そう言いながら垣根の寝てる方向を見る。
右手に機械でできた奇妙な『爪』があった。
上条「あれか……」
573:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 01:32:04.22 ID:7Hcj0niC0
上条は立ち上がろうとしたとき、上条の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。
「あれー。一体どうなったのー?ってミサカはミサカは起き上がって辺りを見回してみる……って、
なにこの状況、ってミサカはミサカは驚愕してみる」
上条「ら、打ち止め(ラストオーダー)?」
打ち止め「あれ? カミジョー? ってミサカはミサカは意外な再会に衝撃を覚えてみたり」
御坂美琴をそのまま幼児化したような少女が、瓦礫の中から起き上がった。
この騒動に巻き込まれていたのか瓦礫に埋もれていたようだ。
打ち止め「あれー?ミサカは何してたんだっけ……ハッ!! ってミサカはミサカは迷子を捜してたのを思い出してみる」
あの調子ならケガとかはしてなさそうだなと、
そんなことを思いながら上条は垣根のいた方向に頭を向ける。
582:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 01:37:53.51 ID:7Hcj0niC0
いない。
さきほどまで、寝転がっていた垣根帝督は既にそこにはいなかった。
上条は辺りを捜す。
上条「どこに。どこに行きやがった―――?」
そんな上条の耳に先ほどと同じ声で悲鳴みたいな声が聞こえた。
打ち止め「きゃー! あなた誰? ミサカに触らないで!!ってミサカはミサカはあなたの腕を振り払って逆らってみたり!」
垣根「うるせえよ。とっととテメェを捕まえて、俺はあのうっとおしい第一位をおびき出して、殺すんだよ」
打ち止め「えっ!? あの人の知り合い? なら逆にあの人の居場所が知りたいかも、ってミサカはミサカはあなたに尋ねてみたり」
586:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 01:47:26.28 ID:7Hcj0niC0
上条「そいつから離れろ!! 打ち止めァァあああああああああ!!!」
上条は打ち止めのもとへ駆ける。
距離は40メートル強。
垣根「遅えェんだよ!! のろまがァあああ!!!」
上条の足元が爆発する。
バランスを崩し、上条は転倒してしまう。
垣根は手が打ち止めに向けられる。
おそらくあれが打ち止めに触れたら、
打ち止めは死ぬ、と上条は思った。
死ななくとも必ず打ち止めは傷つくだろう。
588:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 01:53:20.13 ID:7Hcj0niC0
上条(くそッ……間に合わねえ……)
上条は拳を握りしめる。
しかし、こんなことをして打ち止めが助かるわけがない。
どんな異能の力も打ち消す右手。
所詮はそれだけのチカラ。
たった40メートル先にいる少女の命すら助けられない。
上条「ちくしょぉぉぉおおおおおおお!!!」
『ヒーロー』は諦めた。
590:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 01:55:57.88 ID:R6xWeWy5P
一方さんあんたの嫁だろなんとかしろ
593:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 01:58:58.20 ID:7Hcj0niC0
「ったくよォ。『ヒーロー』がこンなとこで諦めていいのかってンだよ」
しかしもう一人『ヒーロー』がいた。
実質『ヒーロー』というより『悪党』であろう。
少女のピンチに『悪党』が駆け付ける。
「そンなくっだらねェことで、ハシャいでンじゃねェよ格下がァ!!」
打ち止めと垣根の間に白い影がさえぎる。
垣根の手が白い影に当たり、『反射』される。
垣根「が……ァアアアアアアアアアアア!!!」
595:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:05:19.28 ID:7Hcj0niC0
折れた左手を必死に支えながらもだえ苦しむ垣根。
それをゴミのように見ている赤い目を持つ白い人物。
その名は一方通行(アクセラレータ)。学園都市第一位の超能力者(レベル5)。
一方通行「くそ、『スクール』のクソ女が。きたねェ能力使いやがって。ぶち殺すのに時間がかかっちまった」
首をコキコキと鳴らしながら、一方通行はぼやいた。
打ち止め「やっと迷子を見つけた、ってミサカはミサカは感動の再会に涙を浮かべてみる!!」
一方通行「チッ、くだらねェ……」
596:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:06:32.47 ID:7zfjc4Uo0
心理定規潰されたw
599:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:10:44.65 ID:Nb3L/snsO
>>596死んではないだろうな、なぜなら一方通行さんはロリコry
・・・こんな時間に誰だ?
598:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:10:44.31 ID:7Hcj0niC0
垣根「アクセラレェェタァアアアアアア!!!」
吠える垣根。いきなり現れた第一位(ターゲット)に向けて衝撃波を放つ。
垣根の本来の目的は第一位を殺して、『第一候補(メインプラン)』になることである。
その目標が目の前にいれば、もはや打ち止めは必要なかった。
その衝撃波は真っ直ぐ一方通行の方へ走っていった。
しかし、その白い能力者は顔色一つ変えずに打ち止めの前に立つ。
その小さな少女を守るために。
衝撃波は文字通り『反射』された。
放った垣根自身に衝撃波が返ってゆく。
垣根「ごォハッ―――!!?」
602:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:17:05.21 ID:7Hcj0niC0
いつもの垣根ならそのようなことはないだろうが、
今の彼は頭に血が上り、完全に冷静さを失っていた。
自分の放った即死級の攻撃を受けてしまい瀕死状態となった。
うずくまる垣根の前に最強の能力者が立ちはだかる。
右手で現代的な杖をついている彼が、
左手で拳銃を構える。
一方通行「そンなくっだらねェ力に踊らされた時点でてめェは『第二位』なんだよ……」
605:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:23:24.12 ID:7Hcj0niC0
ズカン!! ズカン!! ズカン!!
垣根の身体に三発の銃弾が撃ち込まれる。
垣根は指一本動かなくなった。
学園都市第二位の超能力者(レベル5)から、ただの肉塊へと変化した。
一方通行は首についているチョーカーのスイッチを左手で触り、
能力使用モードから通常モードへと変更する。
608:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:31:04.08 ID:7Hcj0niC0
そして呆然と立ち尽くしていた上条の方へ目を向ける。
上条「あ、一方通行?」
一方通行「よォ三下。てめェ、なンでこンなとこに居やがるンだ?」
一方通行は尋ねる。
自分を変えた『ヒーロー』がなぜこんな汚いところにいるのかを。
上条「なんでって、仲間を助けるために―――」
一方通行が、上条の言葉をさえぎる。
一方通行「そンなこと聞いてンじゃねェよ!!」
上条「!?」
上条は硬直する。学園都市第一位の迫力に負けて。
612:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:34:53.22 ID:7Hcj0niC0
一方通行「てめェの言う仲間ってのは『アイテム』の連中だろうが。
てめェがどンなふうにその『仲間』たちを見てンのか知らねェけどよォ、
所詮は俺たちと同じ『クズ』だ!!」
打ち止め「もうこれ以上は、ってミサ―――」
上条「違うッ!!」
上条の硬直が解ける。それと同時に上条には怒りが満ち溢れる。
一方通行「違わねェな。そこに転がっている垣根は『スクール』、俺は『グループ』、
そこにいるお仲間さンは『アイテム』。全員、学園都市の暗部組織。
いわば闇に住み込むクズどもだ」
上条「おい一方通行!! いくらテメェでもこれ以上言うのは許さねえぞ!!」
一方通行「そういうのも含めてもう一度聞く。上条当麻、てめェなんでこンなクズどもと一緒にに居るンだ?」
617:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:39:59.71 ID:7Hcj0niC0
上条「一方通行ァあああああああああああああああ!!!」
上条は悲鳴を上げる身体で一方通行に向かって走りだす。
それの叫び声が聞こえた途端、一方通行は首のチョーカーに手を当てる。
一方通行「離れてろ」
一言打ち止めに言い、スイッチを入れる。
ただの運動不足の学生から、学園都市最強の能力者へと変わる。
再び、あの操車場での戦いが繰り返される。
一方通行「あンときの借り、全部まとめてここで返してやるよ三下ァ!!」
上条「うォおおおおおおおお!!」
619:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:41:35.83 ID:Nb3L/snsO
>>617
>ただの運動不足の学生
吹いたwwwww
622:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:46:34.61 ID:7Hcj0niC0
「やめてよ上条!!」
たった一人の少女の声で上条の動きが止まった。
さっきまで倒れていたフレンダがふらふらと立ちあがりながら、
フレンダ「もうやめて上条!! 一方通行の言っていることは間違ってない!!」
もう立ち上がるだけでも限界な身体で、上条に聞こえるように声をあげる。
626:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:57:56.25 ID:7Hcj0niC0
上条「で、でも……」
麦野「まあ、たしかに私たちは学園都市の闇の住人。いまさら「クズ」とか言われてもなんでもないんだけど」
左腕を失ってもなお堂々とした振る舞いで麦野は言った。
絹旗「やってる仕事だって、『人殺し』ばっかですから、そう言うことを言われるのは超当然ですね」
全身をズタボロになった絹旗が言った。
627:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 03:03:47.61 ID:7Hcj0niC0
浜面「なんつーか。俺は元々スキルアウトだったから今さら「クズ」って言われてもなあ……
まあ、『アイテム』が正しいとは言わねえけど、間違ってるとも言わねえよ」
麦野「浜面、いつあなたは『アイテム』の一員のなったのかにゃーん?」
絹旗「浜面は、『アイテム』じゃなくて、『アイテム』の超下部組織ですね」
浜面「い、いいじゃねえかこんなときぐらい」
滝壺「大丈夫……私は……そんな残念なはまづらを……ゴホッゴホッ」
浜面「滝壺!! 気がついたのか!? っていうかこれ以上言うな。なんか悲しくなるから」
自分が『クズ』だということを、何のためらいもなく言った浜面。
滝壺「かみじょう……」
ぼおっとした目で上条を見つめる。
いつもはどこを見ているか分からない目だが、
今回はちゃんと上条を見ている。
滝壺「それでも……私たちはこの仕事を恥ずかしい……と思ったことは……ないよ」
629:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 03:09:23.22 ID:7Hcj0niC0
フレンダ「結局、私は学園都市の闇と言われても、『クズ』の集まりと言われても……」
ボロボロの身体で、痛みをこらえながらも笑顔をつくるフレンダ。
フレンダ「そんな『アイテム』のメンバーで『幸せ』って訳よ!」
振りかざした右腕を下げる上条。
それと同時にチョーカーのスイッチを通常モードに戻した。
631:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 03:14:09.32 ID:7Hcj0niC0
上条「『アイテム』であることが『幸せ』っていうなら、俺がどういうことじゃねえな」
一方通行「ふン。良い『悪党』がそろってンじゃねェか。『アイテム』は……」
一方通行は背を向ける。戦いから帰る『ヒーロー』のように。
その後ろに打ち止めが付いて回る。
打ち止め「あなたの住んでいる所が知りたいかもって、ミサカはミサカは己の願望をさらしてみたり」
一方通行「……とっとと黄泉川ンとこへ帰りやがれ」
打ち止め「嫌だ! ってミサカはミサカはバッサリ拒否しみる」
一方通行「クソガキィ……」
そんなやりとりを一方通行している彼らは、
どこかへと消え去って行った。
632:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 03:16:21.84 ID:R6xWeWy5P
結局何で上条さんがアイテムにいるのかは言わなかったわけですね
609:
忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/03/28(月) 02:32:00.50 ID:IaBL4Mo70
バイトだなんて言えない……//
610:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 02:33:26.63 ID:sg0Gj+Wc0
>>609
ワロタwww
633:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 03:22:12.91 ID:7Hcj0niC0
本当にすべて終わる。
一気に緊張の糸が切れたのか、上条は地べたに座り込み、
そのまま力が抜けて、転がり込んでしまった。
上条(あれ? 意識が……)
フレンダと浜面が駆け付けて何か言っているようだった。
もう意識がほぼない上条には何も聞こえなかった。
――――――
634:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 03:28:22.49 ID:7Hcj0niC0
――――――
上条は、気が付いたら目の前に白い空間広がっていた。
上条「ああ。またここに来てしまったのか……」
常連の上条は、ここがすぐに病院の病室であることを瞬時に理解した。
だが、いつもと違うの点が一つあった。
いつもは一人部屋だったのだが、今回は二人部屋らしい。
なぜそうだとわかったのか、
それは、隣のベッドでマジックペン(油性)を隠そうとしている浜面がいるからである。
636:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 03:34:02.70 ID:7Hcj0niC0
上条「ごきげんよう、浜面くん」
浜面「ご、ごきげんよう……ってやめろ。その右手を振りかざすのはやめろ!! ここは病院、暴力反対」
はあ、と溜め息した上条。
とりあえず自分の顔に落書きがないのを確認し、
自分たちが今どういう状況にあるのかを聞いた。
浜面「どういう状況って、入院しているとしか……」
上条「まあそりゃそうだけどさ……『アイテム』は、つうかほかのメンバーはどうなってんだ? 同じ病院なのか?」
浜面「ああ多分な。あのカエルっぽい顔した医者がそう言ったんだからそうだろうけども」
やっぱりあの人が担当医か、とふと思う。
639:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 03:40:19.60 ID:7Hcj0niC0
上条「多分、って会ってないのか?」
浜面「会う、って俺たちはマシだけど、あいつらは全員重症だぜ。会いに行こうにも病室分からねえし……」
上条「そうか……」
あいつらは元気だろうか、などと思いながら上条は天井を見つめる。
浜面「そんなに心配なら、病室探しだしてちょっかいかけに行こうぜ!」
上条「は?」
浜面「よし、いざ女子どもの部屋にしゅっぱーつ!!」
上条「待て待て。お前は修学旅行中の学生か。そんなことしたらぶっ殺されるぞ。おもに麦野に」
浜面「大丈夫だって。あいつらは俺たちより重症なんだぜ? さすがの麦野も本調子じゃねえだろうし」
643:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 03:45:23.56 ID:7Hcj0niC0
そう言うと、浜面は上条を強引に連れて、病室を捜す。
探すほど二十分。
ついに、表札に
『麦野沈利』、『滝壺理后』、『フレンダ=セイヴェルン』、『絹旗最愛』
と書かれた四人部屋を見つけた。
上条「おいやめようぜ浜面。俺ははまだ死にたくねえよ。
上条さんの『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』が不幸をガンガン呼び込んでいる気がするんですが」
右手を握ったり開いたりを繰り返しながら上条は言う。
そんな上条を無視して、浜面はドアノブに手をかける。
上条「お、おい。せめてノックしようぜ……」
浜面「ここまで来てなにビビってんだよ、上条隊員。ここで逃げたら男がすたるってもんだ」
そう言うと、ドアノブを勢いよく回しドアを勢いよく開く。
浜面「たのもォおおおお!! 女子ども!! 『アイテム』下部組織二人組が殴りこみでェえええい!!」
645:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 03:51:13.21 ID:7Hcj0niC0
よくわからない口調で叫ぶ浜面。
後ろから上条は中の様子を覗いた。
そこには天国と地獄、両方の意味を持つ部屋だった。
なんと『アイテム』女子たちは現在、
俗に言う着替えシーンだった。
649:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 03:56:32.49 ID:7Hcj0niC0
絹旗「……なにやってんですか、超バカ面」
上半身裸で、胸をシャツで隠している絹旗が浜面を睨みつける。
フレンダ「はあ。結局、浜面は……って上条!!!?」
下着姿で、麦野の身体を拭いてあげようとしたのか、
濡れタオルもって、麦野を拭こうとしているのを彼女に止められていたフレンダ。
上条の姿を確認した途端、顔を真っ赤にし自分のベッドに飛びこんでいった。
滝壺「……はまづら? 私はそんなドスケベなはまづらは応援できないな」
すでに着替え終えていた滝壺は、『体晶』のリスクの影響なのか顔が真っ赤に火照っていた。
滝壺は、浜面をジト目で見つめている。
麦野「…………」
麦野は器用に右手だけで服をせっせと着て、
こちらへ身体から正面に向ける。
651:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 04:03:35.53 ID:7Hcj0niC0
麦野「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね。クソエロ野郎どもがァああああ!!!」
上条・浜面「「ぎゃァあああああああああ!!」」
病院内で麦野と一時間は追跡劇が終わらなかった。
自分たちより重症というのがウソのような常人離れした動きだった。
もともとの身体能力が高いのか、捕まった瞬間、すぐさまボコボコにされた二人。
そのあと浜面と上条は、ナースに一時間説教されたのは『必然』のできごとである。
――――――
653:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 04:08:21.64 ID:7Hcj0niC0
――――――
ここは、どこと知れぬ場所。暗部組織『グループ』の隠れ家である。
そこには『グループ』のメンバーである、土御門元春、結標淡希、海原光貴、そして一方通行が集まっていた。
土御門の右手には、以前、垣根帝督が右手に着けていた『ピンセット』を着けてあった。
一方通行が、それ眺めて呟いた。
一方通行「どさくさに紛れて回収してやがったか。どうやったか知らねェが、あそこには『アイテム』の連中がいたはずだぜ」
655:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 04:15:16.43 ID:7Hcj0niC0
土御門「まあ、そういうことは後回しだ。
こいつの中には『滞空回線(アンダーライン)』と言うナノデバイスが格納されていたらしい。
『スクール』の連中は、この『滞空回線(アンダーライン)』を採集して、
情報を手に入れるために動いていたみたいだな」
海原「中身のデータとやらは?」
顔色がいつもより悪そうな海原光貴が尋ねた。
土御門「『滞空回線(アンダーライン)』は学園都市でのアレイスターの直接情報網を形成する中核だ。
だから、中の情報も『書庫(バンク)』とはレベルが違う」
結標は退屈そうな表情で、
結標「面倒ね。結局そのナノデバイスにはどんな情報が隠されていたの?」
土御門「ちょっと待て、今出る」
656:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 04:19:40.03 ID:7Hcj0niC0
ピッ、という電子音と共に、『ピンセット』の手の甲に当たる部分にある小型モニタに、
文字化けしたような解析結果が高速でスクロールし、それに続いて正しい形式の情報が映し出されていく。
土御門「学園都市暗部にある機密のコード類、だな」
一方通行「そいつが打倒へのヒントになるっつーのか?」
土御門「名前は……『グループ』、『スクール』、『アイテム』、『メンバー』、『ブロック』……
それにこっちは『ピンセット』……これは『ひこぼしⅡ号』のデータか。後は『少年院の見取り図』……そんなとこか」
結標「何が機密コードよ。
結局、上層部が『グループ』の全員の動向を監視するための情報を集めてただけじゃない。
今さらそんなもの見せられても―――」
土御門「それともう一つ……」
そういうと、『グループ』のメンバー全員が『ピンセット』のモニタに注目した。
わざわざ土御門が区別したのだから、それまでの情報とは違うという意味と受け取ったのだ。
657:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 04:25:00.81 ID:7Hcj0niC0
新たに得た情報。
それに表示された文字を、土御門元春はゆっくりと読み上げた。
土御門「最後に出たのは―――『ドラゴン』」
戦いの果てに得たのは、小さな小さな突破口。
確かなカギを手に入れた『グループ』の四人が、これより打倒学園都市へと動き出す。
――――――
660:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 04:30:09.36 ID:7Hcj0niC0
――――――
上条「じょ、冗談だろ?」
上条は絶望していた。
いろいろとゴチャゴチャしていたが、退院した後一応バイト代の二万円をもらった上条だが、
風に一万円札一枚飛ばされて行方不明になるという不幸が起こり、
大食いシスターの食欲により、上条家は相変わらず金欠だった。
662:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 04:36:49.69 ID:7Hcj0niC0
禁書「とうま~。おなか減ったかも。」
上条「嘘だろ。つい三十分前に昼食を終えたばっかりだろ」
禁書「所詮野菜炒めなんかで私の胃袋は満たされないかも」
上条「あーもう」
上条は頭を抱える。
そしてこの後出てくるセリフはもはやお約束だろう。
上条「不幸だァあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
今日も少年は不幸である。
――――――
666:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 04:42:02.02 ID:7Hcj0niC0
――――――
第七学区。とあるファミレスに今日も彼女たちは集まる。
入って右奥にある、6人がけのテーブルに座っている。
一人はシャケ弁を堂々と食べ、
一人はサバ缶を缶切りで開けるのに苦戦して、
一人は映画のパンフレットを広げている。
いつもは四人座っている席だが、今日は一人いない。
現在、その一人は病院に療養中だ。
その席に両手にドリンクの入ったコップを持っている少年が近づいてくる。
669:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 04:48:23.65 ID:7Hcj0niC0
浜面「ほら、持ってきたぞ」
絹旗「……浜面。私はジンジャーエールを頼んだつもりなんですけど」
浜面「へっ?」
絹旗「これ、ウーロン茶ですよ」
ジンジャーエールの割には炭酸が抜けているドリンクが入った、
浜面が持ってきたコップに指を指して絹旗が言った。
浜面「ゲッ! お、俺は間違えた覚えはねえぞ!!」
麦野「現に間違えてるじゃん」
浜面から受け取ったメロンソーダを飲みながら、
目の前の事実を浜面へ叩きつける。
浜面には一切の言い訳もゆるさない。
フレンダ「結局、浜面はドリンクバーへもう一往復って訳よ。私はオレンジジュースね」
あいかわらず缶切りでサバ缶を開けられないのか、
いつものように例のツールでサバ缶を開けようとしている。
670:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 04:53:36.06 ID:7Hcj0niC0
今度こそ浜面は間違えなくドリンクを持ってきた。
浜面は滝壺がいない分の席に座る。
これから『アイテム』としてどうするかを話し合う。
話し合う内容にこれから皆は驚くことになる。
麦野「これから決断して欲しいことがあるんだけど……」
麦野は割り箸を置き、真剣な表情になって皆を見回す。
麦野「納得できなかったら、『アイテム』を抜けてもらってもかまわないから」
浜面「な、なんだよそれ」
ゴクリ、とつばを飲む音を出す浜面。
いつもなら「浜面キモイ」という罵声が飛んできそうなものだが、
それだけ真剣なのか誰も罵声の一つも発しない。
671:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 04:59:16.97 ID:7Hcj0niC0
麦野「『グループ』って暗部組織のヤツから連絡が来たんだけど、向こうから『手を組まないか?』って誘いがきたんだけど……」
絹旗「つまり、これから超共同戦線しよう! ってことですね」
フレンダ「でも妙だよね。向こうには学園都市第一位がいるのに私たちと手を組もうなんて」
麦野「だよね。だから『ふざけんじゃねえよ!! ブチ殺されてえのか!?』って言ってやったの」
浜面「さすが麦野……」
フレンダ「結局、その後はどうなったの?」
麦野「ああそうそう。そう言ってやった後、向こうになんでウチと組みたいのか問いただしたわけよ」
絹旗「で、どういった理由だったんですか?」
麦野は窓から外を見ながらストローからドリンクを吸う。
中に入っているクリームソーダが空になってから麦野は言った。
674:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 05:04:44.90 ID:7Hcj0niC0
麦野「『学園都市にひと泡吹かせる。だから戦力が必要だ』だって」
皆は当然のごとく驚いた顔をする。
しかし落ち着いた声で言う。
絹旗「学園都市に……ひと泡吹かせる、ですか」
浜面「つまり学園都市に喧嘩売るってことか……」
フレンダ「む、無謀じゃんそんなの。……麦野はそんなのおかしいと思ってるよね!?」
皆の視線が自然と麦野のいる方向に向く。
麦野は今までになく真剣に言った。
麦野「私は言ったわ。『いいわよ乗ってあげるわ』ってね」
やはり皆は驚く。自分たちが思っていなかった答えが、
麦野の口から発されたことによって。
677:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 05:10:49.50 ID:7Hcj0niC0
絹旗「し、正気ですか麦野!?」
麦野「ええ正気よ。いつまでも学園都市の犬なんて言われたくないじゃない?」
浜面「麦野……」
麦野「私は『グループ』と共同戦線を張る。だから最初に言ったわよね。納得いかない人は『アイテム』から降りてもらっても構わないわ」
しばらく沈黙が続く。この選択はどっちが正解なのかわからない。
なので『麦野についていく』と『アイテムをやめる』と言う選択肢の答えを出すのに迷っている。
学園都市に喧嘩を売る。それがどれだけ無謀かは目に見えている。
もしかしたらその選択をした次の日には死んでいるかもしれない。
それくらい危険なのだ。
そんな悪条件の中、
『アイテム』メンバーの意見は満場一致だった。
678:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 05:15:06.91 ID:7Hcj0niC0
絹旗「分かりました麦野。私も超ついていきます」
フレンダ「結局、私も同意見って訳よ」
浜面「今さら行先はねえからな。
……ってことは俺は『アイテム』と『グループ』の下っ端ってことか?
なんか自分で言って悲しくなってきたぜ……」
麦野「みんな……ありがとね」
浜面「そういや滝壺はどうするんだ?」
麦野「ああ。滝壺は最初っから賛成してくれたよ。
本当は彼女に『暗部』に残るべきじゃないからやめときなさいって、止めたんだけどね」
麦野は一息置いた後、ある事柄について話し始める。
679:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 05:19:52.36 ID:7Hcj0niC0
麦野「それじゃあ、『グループ』から教えてくれた、打倒学園都市の突破口になりそうな情報をここで発表しまーす」
麦野の口が開かれる。
麦野「―――――-『ドラゴン』」
そんなことで彼女たちの話し合いは終了する。
そこから他愛も無い会話が繰り広げられるのだろう。
今日も『アイテム』は暗躍する。
今までと違って、今度は自分たちのために。
―――FIN―――
680:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 05:21:16.04 ID:lOiKvYrLO
お疲れ様!
結構楽しめたのである
684:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 05:24:30.79 ID:oTqiBsX40
おつかれさま!
上条さんとフレンダの後日談あれば見たい
726:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 13:59:51.20 ID:7Hcj0niC0
このスレを立ててくださった代理の方ありがとうございました
とりあえず少し書き溜めてみたので、投下します。
にやにやしてもらえるほどの文章かはわかりませんが……
728:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 14:04:49.86 ID:7Hcj0niC0
――――――
第七学区。とあるファミレスの中。一人の少女が、一人の少年の事について考えていた。
フレンダ(……そういえばあのとき以来、上条と会ってないなあ)
はあ、と溜め息つきながら少女は窓の外の風景を見る。
その行動が異常とみられたのか、周りの人たちは、疑問の表情を浮かべていた。
浜面「……なあ、フレンダのヤツ、なんか様子おかしくないか?」
絹旗「……たしかにそうですね。開けたサバ缶が超減ってないですし」
浜面「あんなフレンダ初めてみたぜ……まだ会って間もないが」
絹旗「私だって超見たことないですよ。フレンダとは付き合いが長いから分かりますけど、あんなおとなしいフレンダ見たことありません」
731:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 14:11:51.28 ID:7Hcj0niC0
周りのヒソヒソ話に全く気付かず、はあ、とフレンダはまた溜め息をつく。
フレンダ(そういえば、上条のこと全然知らないんだよね。苗字だけで、名前がわからないって……)
そんな『アイテム』のメンバーが座っている席に、遅れてくる一人の人物がいた。
コンビニ袋を手に持って、おそらくその中身はシャケ弁だろう。
麦野「ごめーん。カスどもボコしてきたからちょっと遅れちゃった~」
軽い口調でとんでもないことを言っている麦野沈利。
その姿を見て浜面が言った。
浜面「おまえ、左腕治ったのか?」
麦野「まあね。義手だけど」
一瞬本物かと思うくらい精巧にできているその義手が、
麦野の左腕として、ついていた。
麦野「とりあえず浜面。メロンソーダ取ってきて」
浜面「いきなりだな……へいへいわかったよ」
733:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 14:20:27.08 ID:7Hcj0niC0
よいしょ、と腰をあげて、ドリンクバーのコーナーに足を進める浜面。
麦野の視線はそんな浜面から様子のおかしいフレンダに向けられた。
麦野「なあに一人溜め息なんかついて、似合わないわよフレンダ」
フレンダ「ん? ああ、おはよう麦野」
どうやらフレンダは、麦野がきていたことに今気づいたようだ。
浜面「どうしちまったんだ。おまえ」
ドリンクバーから帰ってきた浜面が、さっきまでフレンダに聞けなかったことを聞いた。
フレンダ「別に……何も変わりはないって訳よ」
そう言った後。すぐに窓の外を見て溜め息をつくフレンダ。
やっぱりおかしいと疑問を持っていた浜面たち。
そこで、その疑問を解消させる一言をフレンダへ麦野が放った。
734:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 14:31:44.81 ID:7Hcj0niC0
麦野「なーに? 愛しの上条くんに会えなくてさみしいの~? 乙女だねーフレンダちゃん」
その一言が『アイテム』メンバー全員の耳に届いた瞬間、
フレンダ「べべべべべべべ、別にそんなんじゃないよ!!」
大声で反発するフレンダ。でもその反発する様子がおかしいのは明らかだ。
麦野「隠さなくてもいいのに。この前の仕事帰りの車の中で、
居眠りをしてたアンタが寝言で『かみじょー……えへへ』とか言ってたのを、
お姉さんはきちん聞いてるのよ」
衝撃事実を聞いて顔を真っ赤にするフレンダ。
そんなフレンダの顔を見るのは新鮮だなあ、と浜面は思った。
737:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 14:41:59.00 ID:7Hcj0niC0
麦野「とっとと告っちゃえばいいのに」
フレンダ「そ、そんな。そういうのはまだ早い―――」
絹旗「フレンダ……それ自分が上条にきちんと気があるってことを自分でバラしてますよ」
はっ、となるフレンダ。
ニヤニヤする麦野。
今日の『アイテム』は、いつもと違った日常だった。
――――――
739:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 14:51:33.87 ID:7Hcj0niC0
――――――
フレンダはブラブラと街の中を歩いていた。
麦野に「とりあえずデートの約束くらいはこぎつけてきなさい」
と言われたので、とりあえず上条を捜していた。
今は、だいたいどこの学校の生徒も下校している時間なので、
運が良かったら会えるかもしれない。
会えたらいいなと消極的な考えで上条を捜していた。
しかし、学園都市は広い。その広い街のなかで、一人の少年を見つけるのは大変困難である。
こんなことなら携帯の番号でも聞いとけばよかったかな、と今さら後悔するフレンダだった。
744:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 15:01:09.85 ID:7Hcj0niC0
歩き疲れたのか、フレンダは第七学区にある公園のベンチに腰かけていた。
ぼー、と空を見上げるフレンダ。今日の夕焼けはとてもきれいだ。
そんなことを思いながら空を見ていた彼女の視界に、一人の少年の顔が映る。
上条「何やってんだお前?」
フレンダ「ふぇ!?」
いきなりの捜し人の出現で、驚き、戸惑ってしまって、
ベンチから転げ落ちてしまう。
上条「ほんとなにやってんだよ? ほら」
右手を差し出す上条。
フレンダ「あ、あ、あ、ありがと」
その右手を取り、お礼を言うフレンダだったが、声が完全に裏返っていたのには本人は気づいていない。
747:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 15:11:40.50 ID:7Hcj0niC0
上条「こんなところにいるなんてめずらしいな。なんか用事でもあったのか?」
フレンダ「いや、その……」
声が詰る。うまく声が出せない。極度な緊張で、いつもの軽口はここでは発揮されなかった。
フレンダ(早く言え、早く告―――違う違う。デートの約束を―――)
上条「フレンダ……?」
フレンダ「あ、あ、あ、あの!!」
上条「はい!?」
フレンダ「こ、今度の日曜日空いてないかな?」
上条「うーん……まあこれといって用事はないけど」
フレンダ「じゃ、じゃ、じゃあ……」
心臓がバクバクと高鳴る。今ここから全速力で逃げ出したいところだ。
しかし、ここで逃げ出したら何も変わらない。
フレンダは勇気を出して口を開く。
フレンダ「か、買い物に付き合ってくれにゃいかな?」
749:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 15:21:29.38 ID:7Hcj0niC0
……………噛んだ。
終わった、とフレンダは思う。
なにこんな大事な場面で舌噛んでんだバカヤローと心の中で自分に言う。
そんなことを思ったところで噛んだ事実は消えることはない。
上条「お安いご用ですよ。その買い物付き合ってあげますよ」
フレンダ「」
上条「あのーフレンダさん。もしもーし」
フレンダ「ハッ、気を失ってたわ」
上条「ほんとに大丈夫かよお前?」
750:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 15:25:13.15 ID:nZKU4Sao0
>>612でフルネーム言ってるの聞いてなかったけ?
751:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 15:29:30.85 ID:7Hcj0niC0
>>750 すいません。全然気づきませんでした。以後気をつけます
フレンダはあまりのうれしさに一瞬気を失っていた。
まさか了承を得られるとは思いもしなかったからである。
この後、待ち合わせ場所、集合時間、どんなことをするのか、などを決め、
ついに念願の上条の携帯電話の番号とアドレスを入手することに成功したのである。
――――――
778:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 17:31:15.23 ID:7Hcj0niC0
――――――
第七学区。『セブンスミスト』の入り口の前で一人の少女が立っていた。
いつも以上におめかしをして、待ち合わせ時間の三十分以上前から待っている彼女はフレンダだ。
どんな格好をしているのかは、読者の想像に任せる。
え? なぜかって? なぜなら主はファッションセンスがないからである。
フレンダ(やっぱり早く来すぎたかな?)
そわそわしている彼女は腕時計を何回もチラチラと見ていた。
そんなに何回も見たところで時間の流れが早くなるわけではないのだが、
早く上条に会いたいという気持ちが行動に現れているのであろう。
781:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 17:37:27.85 ID:7Hcj0niC0
集合時間十分前。そわそわしている彼女の後ろから声がかかる。
上条「わりー。待たせちまったか?」
フレンダ「ひゃ!?」
突然の出現により、やはりフレンダは驚いてしまう。
フレンダ「い、いや。別に待ってないよ」
上条「そうか。そりゃよかった」
上条はフレンダの服装を見て、
上条「へー。なんだかいつものヤツとは違って新鮮だなー」
フレンダ「え!? に、似合ってない!?」
上条「いや。充分似合ってると思うぞ」
フレンダ「そ、そう。ありがとう」
テレながら礼を言うフレンダ。
しかし、上条はそんな顔は見てなかった。
784:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 17:42:25.03 ID:7Hcj0niC0
上条「よし。とっとと店に入ろうぜ!」
フレンダ「う、うん」
二人は店内へと入って行く。
さあ、デートの始まりだ!!
まあ、そう思っているのはフレンダだけで、
上条にはただの買い物としか思っていない。
なぜかというと、それは上条だからである。
――――――
789:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 17:53:23.29 ID:7Hcj0niC0
――――――
『セブンスミスト』洋服コーナーに二人はいた。
フレンダ「この服似合うと思う?」
上条「ああ、似合ってると思う」
フレンダ「じゃあこれは?」
上条「うんうん、似合ってる」
フレンダ「……じゃあこれはどう?」
上条「似合っていますよお嬢様」
上条はファッショについてはそこまで詳しくはない。
なので、細かいことが分からないので、
よっぽど似合っていない服ではない限り似合っているとしか言いようがなかった。
790:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 17:57:44.40 ID:7Hcj0niC0
しかし、フレンダは、そんな上条の返事が適当に答えている感じがして、
なんだかいい気分ではなかった。
フレンダ「上条。なんか適当に言っていない?」
上条「い、いや。そんなことはないぞ」
フレンダ「……ほんとに?」
上条「ほんとだからさ。……そうだ。試着とかしてみたらどうだ?」
フレンダの気を逸らすために、上条は試着室に指を指す。
フレンダ「……わかった。ちょっと着てくる」
フレンダは自分で選んだ服を持ち、試着室へと歩いていく。
上条(た、たすかった……)
そんな失礼なことを思っている上条。
上条「やっぱファッションとか勉強した方がいいのかなあ……」
そんなことを呟きながら、フレンダが出てくるのを待つ。
792:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:02:38.19 ID:7Hcj0niC0
待つこと約十分後。試着室から、服を着替えたフレンダが出てくる。
上条はその姿を見る。
上条「…………」
上条は、しばらく言葉が出なかった。
なぜか?
試着室から出てきた少女に見とれてしまったからである。
上条(か、かわいい……)
フレンダ「……どうしたの上条?」
上条「はっ、いやちょっとぼー、としてた」
フレンダ「ふーん。で、どう? この服」
上条「すっげえェーかわいいと思うぞ!! 似合ってる似合ってる!!」
フレンダ「ふぇ!!?」
794:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:07:29.66 ID:7Hcj0niC0
いきなりの言葉に顔を真っ赤に染めてしまうフレンダ。
フレンダ(い、い、い、い、今、かわいい、って!!)
またあっさりと返されるのを予想しただけに、
予想外の言葉でフレンダは混乱してしまう。
上条「ど、どうしたフレンダ? 顔が赤いぞ!?」
フレンダ「な、な、な、何でもないからああああ!!」
そんなやりとりをしている二人。
それを見ていた周りの人間は必ず彼らを、
恋人か何かに見えているだろう。
――――――
796:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:15:04.58 ID:7Hcj0niC0
――――――
今は昼ごろ。
「セブンスミスト」で、あらかた用事を終わらせて、
現在、近所のファミレスで二人は昼食を取ろうとしていた。
二人席に、ダラッと二人は座っていた。
上条・フレンダ((……疲れた))
上条はメニューを取って、
上条「なにか食べたいものあるか?」
ダラっとしているフレンダは、
フレンダ「もはやなんでもいいって訳よ」
相当疲れてるんだなあ、と思いながら上条はハンバーグセット(小)を二人分注文した。
797:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:19:43.13 ID:7Hcj0niC0
十分後。
どっと疲れている二人に、脅威が訪れる。
向こうから一人の影が近づいてくる。
ウェイトレス「お待たせいたしましたー。『特製カップル用ラブラブドリンク』ですー」
はっ!? と二人はその物体を見る。
明らかに一人で飲むには多過ぎる量のドリンク。
二本のストローが交差し、ハート形を形成していた。
デート物の話でよく見るあれである。
上条「……あのー。こんなもの頼んだ覚えはないのですが……」
ウェイトレス「これはカップル様たちのための当店からのサービスでございます」
そう言ってウェイトレスは「ごゆっくりー」と言って立ち去って行った。
上条は、壁に貼られているポスターを見た。
それに書かれていたのは。
『本日はラブラブデー!!』
798:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:24:41.47 ID:7Hcj0niC0
……………。
どうするよこれ? と二人は目を合わせる。
上条「の、飲むしかねえのか?」
フレンダ「そ、そうみたいね」
上条(いやいやいやいやいやムリだろ!! そもそも俺たちは恋人でも何でもねえぞ!! 飲めるわけねえだろ!!)
フレンダ(ムリムリムリムリムリムリ!! そんな恋人みたいな……いやそれを望んでいるんだけど……やっぱり恥ずかしい!!)
周りの席からひそひそと声が聞こえる。
それだけ上条たちは目立っていたのだろう。
早く飲んでここから出ていきたい。でも飲むのは恥ずかしい。
かといって飲まずに放置してたらそれだけでも目立つ。
800:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:30:14.45 ID:7Hcj0niC0
前門の虎、後門の狼。
上条はストローを咥えた。
上条「と、とっとと飲んで、飯食って、ここから出るぞ!!」
そう言ってドリンクを飲む。
フレンダ「わ、わかった!!」
返事をし、その場の勢いでストローを咥えたフレンダ。
フレンダ(か、顔が近い―――)
そんなことに気付いたときにはもう遅い。
今日は二人にとって、今までの人生の中で一番恥ずかしいときだったに違いない。
――――――
801:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:34:55.92 ID:7Hcj0niC0
こちらの事情で昼の部は省略させていただきます。
大変申し訳ございません。
――――――
恥ずかしい昼食を終えて、二人は街をぶらぶらと歩いた。
ゲームセンターに行って、恥ずかしいプリクラを撮ったり、
クレープを買っているところに、ビリビリ中学生が襲いかかってきたり、
絹旗オススメのB級映画を見て、いつの間にか二人は寝てしまっていたり、
そんなことをしていたら、あっという間に完全下校時刻前である。
ここは、あのときデートの約束をした公園である。
二人はベンチに座って談笑していた。
802:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:38:20.69 ID:gyJ6ADaX0
おい
おい
803:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:38:24.60 ID:ZAesn0p30
展開早wwww
804:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:38:28.35 ID:7Hcj0niC0
上条「―――もうこんな時間か……」
上条は公園にある時計を見る。そろそろ学生は寮に帰らなければならない。
フレンダ(え、そんな。もうこんな時間なの?)
楽しい時間ほど早く過ぎる、ということが実感できた瞬間だった。
上条「そろそろお開きとしますか……」
フレンダ(まだ別れたくない……)
上条「送って行こうか?」
フレンダ「!? 私を誰だと思ってるの? 一応『アイテム』の一員って訳よ!」
上条「……そうか」
強がりだ。本当は一緒に帰りたい。
だけど一緒に帰った後の別れに、自分は耐えられるとは思えない。
805:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:42:04.00 ID:7Hcj0niC0
上条「じゃあ、俺は行くわ……」
フレンダ「あ……」
上条は離れていく。
フレンダの心が張り裂けそうになる。
麦野は言った。
『とっとと告っちゃえばいいのに』と。
無理だ。臆病ものな自分にそんな事出来るわけがない。
上条いた時間はとても楽しかった。
『アイテム』のみんなといた時間とは、別の楽しさだった。
もし告白が失敗したら、
二度とその時間を過ごせなくなる。そんな気がしてならない。
そんなことを考えているうちに、上条は離れていく。
806:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 18:46:37.50 ID:7Hcj0niC0
フレンダは声を絞り出した。
告白は無理だ。でも、
フレンダ「また!! 会えるよね!?」
涙目になりながらも声を出す。
今自分はどんなひどい顔になっているのだろうか?
上条は驚いたような顔をしていた。
しかし、すぐさまその顔は笑顔に変わる。
上条「当たり前だろ!!」
そう言って上条は視界からいなくなった。
また次も会えるという『約束』をして。
――――――
823:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 20:03:29.56 ID:7Hcj0niC0
――――――
麦野「えええ!? そこまでいって告白しなかったの?」
フレンダ「……う、うん」
フレンダが顔を伏せて答えた。
ここは、やはりいつものファミレスである。
現在、フレンダのデートの反省会をしていた。
額に手を当て、やれやれ、というポーズをしながら麦野が言った。
麦野「まったく。ほんとアンタって臆病よねえ」
825:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 20:08:57.60 ID:7Hcj0niC0
浜面「まあいいんじゃないか? また会えるって言ってたんだから」
絹旗「わかってませんね浜面。こんな感じのセリフは大体死亡フ―――」
浜面「わっ!! 絹旗、それ以上言うな!!」
絹旗の口をふさごうとする浜面。
絹旗「なにするんですか浜面!?」
その一言とともに窒素パンチを食らう浜面。
浜面は机に伏せてピクピクしていた。
826:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 20:13:47.04 ID:7Hcj0niC0
麦野「でも絹旗の言う通りよ。私たちは今死んでもおかしくない立場なんだから。
それに上条だって『暗部』にかかわってしまったんだから、ほかの『暗部』に狙われてもおかしくはないし……」
確かに上条はバイトとしてだが『暗部』の活動にかかわった。
バイトだったのだがその戦果は見上げたものであった。
垣根帝督の仇として動く『暗部』の連中がいてもおかしくはない。
フレンダ「……わかってる」
今まで顔を伏せていたフレンダが顔をあげた。
フレンダ「だから、そんな奴らがいたら『私』が一人残らずぶっ潰すって訳よ。
上条には指一本触れさせないわ」
827:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 20:18:19.74 ID:7Hcj0niC0
真剣な表情のフレンダを見た麦野は、溜め息をつく。
麦野「まったく。間違えてんじゃないわよ」
フレンダ「へっ?」
麦野「そこは『私』じゃなくて『私たち』でしょ?」
フレンダは驚く。あの麦野がこんなことを言うなんて。
麦野「なに驚いてるの? もっと仲間を頼れって私に言ったのはアンタたちじゃない。だから、フレンダ。どうしてもってときは、私たちに頼りなさい」
フレンダ「麦野……」
828:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 20:23:24.70 ID:7Hcj0niC0
麦野「さあて。真面目っぽい話はしゅうりょー!!
おら浜面、とっとと起きて車用意しやがれ!! 殺し合いに行くぞ!!」
今日も『アイテム』は暗躍する。
その中の一人の少女は、一つ決意をした。
その決意が、後々上条を驚かせることは、また別の話である。
―――FIN―――
832:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 20:33:26.08 ID:7Hcj0niC0
後日談はなんかグダグダになってしまいました。
最後まで妄想に付き合っていただいてありがとうございました。
839:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 20:48:33.44 ID:LevYoovT0
おもしろかったよ。乙!
836:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 20:37:41.58 ID:Jxoxslsm0
超乙
681:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 05:22:31.44 ID:cVQkcNPYO
孕ンダッ!!孕ンダッ!!
結局、当麻の赤ちゃんってワケよ///
730:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/28(月) 14:11:12.99 ID:Nn38iB7Y0
後日談ありがとう
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