垣根「友達が欲しいんだが」その2

2010-09-18 (土) 01:55  禁書目録SS   6コメント  
1041439.jpg



前→垣根「友達が欲しいんだが」

153 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 01:12:37.44 ID:kxSj00I0
垣根「チッ、なんであんな時に限ってBULLに当たるかねえ」

一方「運不運も合わせて実力だってなァ。48点で勝てるたァ思っちゃいなかったけどよ」

垣根「49点だったんだから……三点でも二点でも勝ちだったんだ……、神は死んだ……」

一方「おう、約束なンだから飲みもン買って来いよ。俺ァコーヒーな」

垣根「オマエコーヒー以外頼んだ試しねえじゃねえかよ一方ちゃんよお……、まあ約束は約束だ。涙を飲んで――――ん?」

一方「ン? 今更ごねたって何もかわンねェぞ」

垣根「おい、あそこ見てみろ」ボソボソ


一方「ァあン? …………オマエが好きそォなちょっと年上の女じゃねェか。ありゃ何点だよ」ボソボソ

垣根「間違っちゃいねえがそんな事が言いたい訳じゃない。ありゃあ第四位だ」ボソボソ

一方「第四位? 超能力者かよ。
……アレが原子崩しか、そりゃそォとなンでこっちみて間抜けに口開けっ放しなンだよ。しゃぶりてェってのか?」ボソボソ

垣根「俺に聞くなよ。取り合えずあんだけ見られてっと落ちつかねえ。声かけてみようぜ」ボソボソ

一方「ま、俺ァ別に構わねェがな」ボソボソ





154 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 01:17:48.29 ID:kxSj00I0
一方「おゥおゥ、そンなに食い入るようにこっち見て誘ってやがるンですかァ?」

麦野「――――――!」

垣根「コイツの言う事は置いといても、俺達に何か用かよ?」

一方「中々愉快なスルーかましてくれるじゃねェか垣根くゥン……」

麦野「て、テメェらなんでこんな所で和気藹々としてんのよ!!」

垣根「なんで、って突っ込まれてもな。ダーツしてたんだよ、ダーツ。狙った場所にタマ突っ込んでく最近のマイブーム」

一方「と、その付き合いだ。能力無しってのも悪くァねェもンだな」

垣根「これこそ本当の技術力の勝負だよな」

麦野「そんな事聞いてんじゃねえッてんだろうが……」ビキ




155 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 01:26:00.78 ID:kxSj00I0
麦野「私が聞いてんのは、学園都市の第一位様と第二位様がガン首並べてなぁに仲良しこよしやってんだってんのよ……」

垣根「そういうオマエは一人で来てるみてえだな、学園都市第四位原子崩し」

麦野「――――ッッ!!」

麦野(一人でいる事が看破されてる!? クソが、情報が回るのが早すぎる……!)

麦野(このままじゃマズい……、滝壺も絹旗もいない状況でトップツーを纏めて敵に回すのはあまりに分が悪すぎだ)

麦野(なんとか状況の打破を――――!)



一方「ンだよ只の寂しがりやさンかよ。ぼっちの僻み入りましたァー」

垣根「おい言ってやんなよ、気にしてるかもしれねえだろうが!」

麦野「………………」

麦野「……はァ?」ポカーン




156 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 01:31:33.09 ID:kxSj00I0
一方「ンだよ、混ざりたかったンなら最初からそォ言えやまだるっこしィな。一緒にやンぞ」

麦野「あ? い、いや私は」

垣根「金は最初に全部払ってやり放題だから気にする事はねえよ。原子崩し、お前ダーツできんのか?」

一方「パッと見はできそうには見えねェけどな」

麦野「ル、ルール位はわからなくも……
そ、それより質問に答えてくれない? 何トップツーの二人が日和ってんのかって事を……」

一方「ンじゃあ、オマエこそ何で一人で突っ立ってたンだ?」

麦野「こんな昼間っから男二人でイチャイチャやってるのは何でだっつってんのよ気持ち悪ィな?」ビキ

垣根「女一人で干上がってた奴に言われたくねえよ。そんなことよりダーツしようぜ」

一方「ぎゃはは! 干上がって!!! 確かにコイツァ干物だァ!」

麦野「だ・か・ら、なぁぁぁんで、お二人は、仲良くダーツに興じてるの? って、平和的に、聞いてるの、わかる?」ビキビキ

一方「直訳:私も混ぜてよ仲間外れはズリィ。又は意訳、絶対勝てねェんでマジカンべンして下さい」

麦野「」ビキビキビキビキ




157 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 01:39:37.48 ID:kxSj00I0
麦野「上等だコラァァァァァ返り討ちにしてやるっつってんのよォおおおおおおお!!」ピカーーー

垣根「よっしゃ、じゃあ最初だし01やろうぜ。さっきの負けはノーカンにしといてやるよ、喜べよ一方ちゃん」シュッシュッシュッ、ボウンッ

一方「垣根くン調子のンな。最初なンだから301からな。
原子崩し、テメェの実力の程見せてもらおうじゃねェか。俺らに喧嘩売ったこと後悔して絶望しなァ」ウズウズ

麦野「……」

麦野(どうしてこうなった……)





垣根「そんじゃジャンケンだ。さーいしょーはグー、ジャーンケーン」

三人「「「ポンッ!」」」バババッ



一方「俺が一番だな。ハッ、速攻で終わらせてやンぜェ!!」

垣根「原子崩しもいんだからそんな飛ばすんじゃねえよ。でもま、大トリに期待はしなきゃなあ」

麦野(なんで私こんなことやってんだろ)

垣根「あ、ダブルインダブルアウトは無しな。ダーツは俺の予備の貸してやるよ」

麦野「――――あ、ありがと」

一方「よっしゃァ、始めンぜェ!!」ヒュッヒュッヒュッ 




158 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 01:42:54.26 ID:kxSj00I0
垣根「20のダブルに20シングル、それに1か……幸先良いじゃねえか一方通行」

一方「カカカッ、モタモタしてっと終わらせちまうぜ垣根くンよォ!」

垣根「俺は俺のペースを崩さねえ。ダーツは、自分との闘いだ」


一方「ダーツは、自分との闘いだ」キリッ

一方「おィィ原子崩し今の聞いたかよォォ!! コイツマジ調子乗っちゃってンですけどォ!」プークスクス

垣根(無視無視)ヒュッヒュッヒュッ

麦野(学園都市ってこんなんがトップツーだったの……?)




159 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 01:46:05.49 ID:kxSj00I0
一方「14シングル11シングル、14シングルか……、相変わらずの左寄せしてンなァ」

垣根「俺は考えた。考えた末に結論付けた。
確かに 20点やど真ん中は取れれば美味しい。しかしその左右は一点と五点に囲まれている」

垣根「高いリスクを負うにしては20点は割りに合わねえ……。なら中心の少し左側を狙えば?
集まっているのは14、11、8、16、最低でも8点。上手くいきゃ16トリプルで48点にもなる」

垣根「調子が良いラウンドは二投目又は三投目でBULLを狙い更に高得点を狙うわけだ……、
この俺の理論に死角はねえ。聞いてっか一方よお!」ババーン

一方「なげェ」

垣根「ごめん」シュン

麦野(あー、成る程ね。こいつ等初心者なんだ)



一方「さァて、次は期待の新星原子崩しな訳だが」

垣根「プレッシャーかけてんじゃねえよ。どんなに下手でも笑うのは最低な行為だ」

麦野「んじゃ、投げよっかなあ。ダーツなんか久しぶりね」グッグッ

一方「……やけに様ンなってやがンな」

垣根「そうか? 俺にはよくわからねえが」

麦野「…………」ヒュッ ポウンッ


二人「「――――!」」
二人((い、いきなりBULLだと……?))




160 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 01:51:31.07 ID:kxSj00I0
麦野「…………」ヒュッ トン

一方「い、いきなりブル当てられてビビっちまったじゃねェか! ま、3のシングルは残念だったがよォ!」

垣根(いや待て……、横の軸は殆どブレてねえ……。まさか)

麦野「…………」ヒュッ ポウンッ

麦野「ん……久々だけどやっぱり体が覚えてるもんねえ」デレレンッ


一方「」
垣根「oh......」


一方「え? え? ン? あれ、おィおィ原子崩しァ、能力は無しだぜ? ずっこいじゃねェか」

麦野「電子飛ばしてどうすんだよ。ボードごと撃ち抜けっての?」

垣根「原子崩しオマエ……、『投げ込んで』いるなっ!」

麦野「一時期凝ってた位だね。流石に本職やら常習者には負けるけど、そこそこ位なら狙った場所には行くのよ」

一方「マジかよ…………、ンなの聞いてねェぞ……。フェアじゃねェンじゃねーの?」

麦野「テメェらから売った喧嘩に負けて吠えてりゃ世話無いわ。言いたい事があんならまず勝つ所から始めなさいよ」

垣根「クソが……、残念だが口では分が悪いぞ一方通行……」

一方「ケッ! 勝負はまだまだ終わっちゃいねェンだよォッ!」ヒュヒュヒュッ




161 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 01:56:28.52 ID:kxSj00I0
麦野「私の勝ちかな」

一方「」ズゥーン
垣根「ナンテコッタイ」

麦野「口程にも無いってこのことね」

一方「五ラウンド目で終わられるとか……、死にてェ……」

垣根「お前に七ラウンド目で終わられたせいで俺がビリっけつじゃねえか、一方通行大爆発しろ」

一方「原子崩しが圧倒的過ぎたせいで負けた気しかしねェ……」

麦野「『どんなに下手でも笑うのは最低の行為だ』」キリッ

麦野「勿論私は笑ったりはしないけどね」ニコッ

一方「」プルプルプルプル
垣根「」プルプルプルプル




162 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 02:01:05.75 ID:kxSj00I0
垣根「畜生だが負けは負けだ仕方ねえ……、飲み物買ってくっか、クソ。第四位、とんだダークホースだったぜ……」

垣根「一方ちゃんはコーヒーな。……原子崩しは何が良いよ」

麦野「え、わ、私?」

一方「テメェ以外に原子崩しはいねェだろォが。ビリがジュース奢りって決めてたンだ、遠慮するこたァねェよ」

麦野「……そう? じゃあ午後々ティーで」

垣根「いってくるぜ」スタスタ




一方「…………」ソワソワ

一方「……さて、原子崩しァさン。ちィィィっとばかし聞きたい事があるンですが」

麦野「!」

麦野(腐っても第一位か? 何か釘を刺されることは覚悟しておかないと……)

一方「あのよ……その、だな。うン」

麦野「……なにさ、焦らしプレイがお望みなの?」

一方「どうやったらダーツそンなに上手くなるンですかァ?」


麦野「……」

麦野「…………うん、やっぱそんなこったろうと思ったわ」




163 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 02:03:35.25 ID:kxSj00I0
垣根「あー、ココアうめえ。……ん? あいつら……」タタッ

垣根「おうコラ、なぁに仲良しこよしに談笑しちゃってんだ? そろそろ混ぜろよー」

一方「っせェテメェは黙ってろ! 俺ァ今原子崩しさンにダーツの極意を伝授してもらってンだよ!」

垣根「――!? テメェ抜け駆けする気かよ!
原子崩しのあの実力を見た途端に媚売ろうってか、誇りに欠けた強者程見てて痛々しいもんはねえなあ一方通行!」

一方「抜け駆けってこたァ、テメェも手取り足取り腰取りナニ取り教えてもらう気マンマンヤル気マンマンなンじゃないですかァ?」

麦野(コイツらも力に擦り寄ってきてる奴ら……なのかしら? よくわかんないわね)

垣根「ぐっ…………。オマエがコーヒーを欲しくねえって事はよくわかった。ほらよ、原子崩し」

麦野「あ、ストレートだ。ありがと」

一方「おィ。そォいうの、あンま良くないンじゃないの?」

垣根「ありがとうございますはどーしたぁ一方ちゃんよ」

一方「ありがとン」




164 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 02:04:41.40 ID:kxSj00I0
垣根「ほらよ」ポイッ

一方「サンキュ」パシッ

麦野「――――ああ、おいしいわ。けど午後々ティーのストレートって何がストレートなのかしら」

垣根「俺も前々から思ってたな。原材料に砂糖が入ってんのにストレートとか名に偽りありじゃねえか」

一方「コーヒーうめェ」

垣根「そういや一方ちゃん、お前MAXIMUMコーヒーって飲んだ事あるか?」

一方「ン、飲んだことねェな。うまいのか?」

垣根「悪くなかった。今度お前も飲んでみろよ」

一方「ふーン」

麦野「それあの黄色い缶のやつの事? ゲロ甘で飲めたもんじゃ無かったんだけど」

垣根「あっバカ」

一方「ゲロ甘……? そりゃ甘党のテメェが好きそうなゲテモンだなァ未元物質」ハンッ

垣根「……空気読めや原子崩し、何も言わずに飲ませて噴出すコイツの素敵なザマぁ特等席見たかったのに……」

麦野「砂かぶりってか砂糖かぶりの席? ぶっ掛けられんのは流石に御免だわ」

一方「ぶっかけとかなンかエロくね?」

垣根「最低だな一方通行、俺もちょっとだけ連想したけどな」

麦野「下ネタとかあからさま過ぎて引いちゃうよ」

俺「お前が言うな」




165 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/21(月) 02:04:55.80 ID:Zbyl1YDO
ああもうかわいいなこいつら
どうなってんだ



166 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 02:11:31.50 ID:kxSj00I0
垣根「まあ取り合えずダーツ教えろよダーツ」

麦野「……まあ、我流だけどアンタ達よりはマシだからね。取り合えずそこ。そこにあっち向いて二人とも並びな」

垣根「おう」
一方「ウス」


麦野(――――あれ? ひょっとして、このまま後ろから吹き飛ばしたりできないのかな……)

一方「原子崩しァさンまだー」ウズウズ

麦野「急かすんじゃないわよ、ガキじゃあるまいし」

垣根「……」プププッ

一方「……」ビキビキ




167 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 02:12:50.35 ID:kxSj00I0
麦野「そんでもって的に当てるつもりで投げるまね!」


一方「おらァ!」ヒュッ
垣根「――!」ヒュッ


麦野「……一方通行は論外。投げようとする時に肩とヒジが開いて少し振りかぶってる」

一方「」

麦野「未元物質はパッと見それっぽいかな。
後はただ漠然と投げるんじゃなくて上手く投げれた時のイメージを意識して投げると良いよ、あくまでイメージだけどね」

垣根「成る程な、参考になりやがる。ただ、名前で呼んで欲しいもんだな。俺には垣根帝督って名前があるんだからよ」

麦野「ならまず相手の名前から呼ぶのがマナーでしょ。私の名前は麦野沈利、復唱」

垣根「麦野沈利……ね。良い名前じゃねえか、悪くねえ」




168 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 02:18:51.86 ID:kxSj00I0
垣根「お前はいつまでいじけてんだよ」

一方「いいンだいいンだ、どうせ俺なんか論外だし本名不詳なンだ……」シュン

麦野「肩とか使うんじゃなくて腕だけで投げれば良いんだって。こう、シュッって」

一方「それやると届かなかったりする上にすぐ疲れンだよォ」

麦野「……アンタヒョロすぎ。触ったら折れちゃいそうって男に使う言葉じゃないんだよ?」

一方「――――――――――」ズゥーン


垣根「おい、言いすぎだ! コイツ一旦落ち込むと長えんだぞ!」ボソボソ

麦野「なーんかこれまでそれなりに苦労して生きてきたのが馬鹿らしくなってきたわ」




169 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 02:22:43.12 ID:kxSj00I0
垣根「ダーツに熱中してたらもう昼過ぎて暫くかよ……、時間も切れるしそろそろ愉快にお昼ゴハンと洒落込もうか」

一方「…………チッ、イライラすンのも全部空腹のせいにしちまうか。確かにいい加減腕が重てェし」

麦野「アンタら何時から投げてたのよ」

一方「十時だな。そっから投げっぱ」

麦野「開店時間じゃない、どれだけやる気勢なんだか」

垣根「なあ原子……麦野、お前も暇なら一緒にメシ食い行かねえか?」

麦野「――――ハァ? なんで私がアンタらと?」

一方「ォ、良いねていとクン良い意見だァ! 麦野さンも一緒にメシ食おうぜェ、ついでにダーツ教えてくれやがれ!」

垣根「テメェはダーツ教わりたいだけじゃねえのかよ。ま、取り合えずファミレスで良いよな?」スタスタ

一方「よォし。さっさとメシ行くぞメシだァ」スタスタ

麦野「あ、お、おいちょっと!」




ナァーニヤッテンデスカァー?  サッサトコイヨー


麦野「…………一体もう、何がなんなんだか……」スタスタ




171 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/21(月) 02:37:08.24 ID:D8PS3SAo
くそただのリア充じゃねーかくそくそ



181 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 23:03:46.48 ID:kxSj00I0
ガヤガヤ


麦野(それにしても…………)

麦野(流れでファミレス入っちゃったけど、一体全体どういう状況なのこれ。
学園都市が誇るレベル5が三人揃ってファミレスで談笑? 笑わせてくれるね)

一方「あー、コーヒーうめェ」

垣根「抹茶ラテまじうめえ」

麦野(コイツらはコイツらで完全にくつろいでる……、気ィ張ってる自分が滑稽に思えてきたじゃない)

麦野(…………まあ、私だって……。何度か空気に呑まれかけちゃってたけどさ)

一方「麦野さンは紅茶派なンだな」

麦野「……え? ああまあ、紅茶はよく飲むかな。砂糖はあんまり入れないけど」

垣根「俺は甘いの好きだからな。紅茶には砂糖ガンガン入れる派だ」←甘党

一方「コーヒーはブラックに限るだろォ」←そもそも紅茶飲まない

麦野(日和ってるコイツらどうにか利用して何かできれば文句無いんだけど……そう上手くいくとは思えないし……)




182 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/21(月) 23:11:43.54 ID:kxSj00I0
一方「取り合えずいつも通りドリンクバーだけ頼ンじまったが、メシも頼もうぜメシも。腹ァ減って力が出ねェよ」

垣根「麦野は何食うんだ?」

麦野「うーん……、垣根? と……、一方通行は何食べるつもりよ」

一方「あれェ? 何故か呼び名俺だけハブられてねェ? ……俺ァミックスグリルとグリルソーセージな」

麦野「だってアンタさっき自分で本名不詳って言ってたじゃないの」

垣根「一方(アクセラ)ちゃんで良いんじゃねえの?
あ、俺は若鶏のみぞれ煮な。ライス大盛りで、サイドメニューは……麦野アスパラ食えるよな?」

麦野「全然大丈夫」

垣根「じゃあそれにピザ頼むわ」

一方「まァたみぞれ煮かよ。よく飽きねェな、いつもそれ食ってるし」

垣根「暫くこれ以外食べる気が起きない位惚れこんでるからな。――――浮気、ダメ、絶対」




183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 23:18:48.93 ID:kxSj00I0
麦野「――――――垣根に一方ねえ…………、
ゆーめーじんが急に身近になった感じなのかな。なんだか実感わかねーわ」

一方「ン、なンか言ったかよ?」

麦野「べぇつにぃ?」

垣根「早く決めろよー」

麦野「ん…………、鮭とか無いのかな」

一方「鮭ェ? あったっけか?」

垣根「モーニングのメニューにはあった。と、思うがな。
まあ試しに聞いてみようぜ、押すためにある横車もあるもんだ」ピッ  ピーンポーン

店員「ご注文お決まりでしたらお伺いいたします」

垣根「あ、すいませんけどモーニングのメニューの焼鮭朝食ってまだ大丈夫ですかね?」

店員「――――ええと、少々お待ちください」スタスタ

一方「ァ、ダメだった時用のも一応決めとけよ」

麦野「そうねー。じゃあもしダメだったら銀ひらすの西京焼きね。でもひらすって何かな、しらすには見えないけど」

垣根「しらすをどうやって西京焼きするんだよ、炭になってでて来るぞ」

一方「腹ァ減ったぜェ…………」グゥゥゥー




184 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 23:26:55.08 ID:kxSj00I0
店員「特別にご用意させて頂く事になりました」

垣根「お、ラッキー。あざーす」

一方「あー、ミックスグリルにライス大。それとォ若鶏のみぞれ煮にライス大。あと焼鮭?
一つ。ンでグリルソーセージとアスパラベーコンピザ」

店員「以上でよろしいでしょうか?」

一方「麦野さン他になンかあるか?」

麦野「……特に無し」

一方「ンじゃ以上で」

店員「かしこまりましたー」


一方「よし、飲みもン取ってくる」ガタッ

垣根「じゃあ俺待ってるから一方ちゃん入れてきてくれ。抹茶ラテな」

一方「泥水のようなコーヒーを入れてきてやンよ」

麦野「……じゃあ私もお願い。ローズヒップね」

一方「テメェは来いよ、楽しよォとしやがって! お年で足腰に来てるンですかァ!?」

麦野「…………聞かなかった事にしといてやるよ」ピクピク

垣根「いいからさっさと行って来いって」




185 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 23:33:37.63 ID:kxSj00I0
垣根「抹茶ラテうめぇー」

一方「コーヒーうめェ」

麦野「……ローズヒップすっぱい」

一方「外れか?」

麦野「入れ方間違えたかな……」

垣根「いや、ローズヒップはそもそもすっぱいもんだ。間違っちゃいねえだろうよ」

麦野「純粋にミステイクだったっぽいわね……」

垣根「そういやよ、麦野はゲーセンとかよく行ってんのか?」

麦野「結構前に足繁く通ってた、けど最近は全然って所。今日はたまたまだし」

一方「あンな場所ででも会わなきゃ声かけることなンざねェだろうしな。運が良かったってか」

垣根「成る程な、今日は仕事もねえって事かよ」

一方「仕事? 麦野さンやっぱ年――――なンでもねェ」

麦野「…………」ビキビキ

麦野(腑抜けてるだけならまだしもよくもまあ人をイラつかせてくれるわねコイツら…………)

麦野(…………でも、『アイテム』も……こんな感じだったっけ……?)




186 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 23:40:08.62 ID:kxSj00I0
垣根「んー、俺の記憶が確かなら、麦野は『アイテム』とかいう組織のリーダーはってた筈じゃねえか?」

一方「ンだそりゃ? 聞いたことねェぞ。スキルアウトの親戚か?」

垣根「暗部の組織系統の一つだよ。俺のいた『スクール』と同じようなもんだ」

麦野「『いた』? なにさ垣根、アンタ『スクール』から抜けた訳?」

垣根「籍はまだ残ってるだろうな。が、そりゃ俺がいねえと組織がまわらねえからだ。
歯車が壊れても取替えりゃ機械は動くが、駆動機が働かないんじゃ前提条件すら満たせてねえ」

一方「つまりは垣根くンにやる気が一切無いと、そういう訳だ」

垣根「自主休学、とでもしとけよ。『スクール』だけに」

麦野「なにそれつまんない」




187 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 23:48:28.04 ID:kxSj00I0
一方「結局麦野さンの仕事は今日はねェって話か?」

麦野(ここは隠しておくべき所、か……? ――――いや)

麦野(本当の事を言っても別にデメリットは無い、か。そもそも相手の組み合わせが悪すぎるわ)

麦野「それは違う。私も垣根と似たようなもんよ」

垣根「俺と? 自主休学か?」

麦野「もうそれは良いからね。色々あって三行半叩きつけて来たの」


店員「お待たせいたしましたー、ミックスグリルとライス大のお客様」

一方「ン」

店員「若鶏のみぞれ煮とライス大のお客様」

垣根「俺俺」

店員「前失礼します。焼鮭朝食のお客様」

麦野「私ね」

垣根「あ、ピザとソーセージはここに」

店員「かしこまりました。ご注文は以上でおそろいですか?」

麦野「多分これで全部かな?」

店員「ごゆっくりどうぞー」


一方「うーン、ミックスグリルとグリルソーセージでソーセージがダブってしまった」

垣根「それ言いたくて狙ってやっただけだろテメェ。ああ、飲み物とってくる」ガタッ

麦野「わー鮭だー」




188 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 23:53:03.33 ID:kxSj00I0
一方「やっぱ肉だろ肉ゥ」ガツガツ

垣根「みぞれ煮の美味さは異常」パクパク

麦野(鮭おいしい)モグモグ

一方「あ、ソーセージとピザも勝手に食えよ」

麦野「あんがと」モグモグ

垣根「どこまで話したっけ?」

一方「なンでか西京焼きだけ覚えてる」

垣根「それ結構前じゃねえ?」

麦野「私が『アイテム』に三行半って所までじゃない?」モグモグ

一方「あァそこまでだ。なンか理由でもあンのか」

麦野「別にぃ? ウザかったからでて来ただけだよ」

一方「麦野さン短気っぽいしなァ。たまに口汚ェし」

垣根「……ほんとかよ。それだけか?」

麦野「――あん? 誰に口聞いてんだ、私は超能力者(レベル5)で第四位の原子崩し(メルトダウナー)だ。
気にいらねえもんほっぽり捨てて何か悪い事でもあるっての……?」




一方「今思い出したけど俺も超能力者で第一位だったな」

垣根「俺も俺も」

麦野「そういやそうだった」ウッカリ




189 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/21(月) 23:58:28.52 ID:kxSj00I0
垣根「いやな、そこそこ前に麦野と……『アイテム』?
が町を歩いてんのを見たことがある。ユルそうな女に、キツそうな金髪に、やかましそうなガキだったが……」

垣根「あの時それなりに麦野も楽しそうに見えたのは多分俺の気のせいじゃねえ」

麦野「ハッ、それがどうしたんだって?」

一方(なンか、ここは空気読ンで黙っとくか)モグモグ

垣根「俺がクソッタレな『スクール』を『自主休学』してんのはあそこが俺の居場所じゃねえからだ。
本当の意味で俺を見てる奴が只の一人もいなかったからだ」

麦野「アンタと私の何処が違うって? かきねぇ、アイテムの内部事情も知らないくせに大きな口叩くんじゃねえよ」

垣根「お前が心の底からそう思ってるなら、戻らなきゃ良い。んな事は自分だけの自由だ。
俺もそこまで口を出そうとは思ってねえし」

一方(あ、このピザうめェ)パクパク




190 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/22(火) 00:03:06.18 ID:4h0v3Jg0
垣根「ま、居場所なんてもんは欲しがって気がついたら出来ちまうもんだ。
麦野もちょいと落ち着きゃ案外すぐ見つかるかもしんねえぞ」

垣根「幸せの青い鳥っつーのは気付かない程近くにあったりするってのが定石――――」チラッ

一方(このピザマジでうめェな)パクパクモグモグ

垣根「――――って一方通行テメェ! まだ俺ピザ食ってねえのにほとんど食いやがったコイツ信じられねえ!」クワッ

一方「――――あ、やべっ」

垣根「あ、やべっ じゃねえよ……。美味かったか?」

一方「気がついたら無くなってる程にはな。いや、悪ィ」

垣根「謝ってもゆるさねえ、スズメバチに刺されて死ねよ」

一方「虫は得意じゃねェンだがな……」


麦野(居場所だぁ? んなもん何処にあるっつうのよ、この化け物一歩手前の超能力者を。
腕の一振りで自分を消し飛ばせる人間の形をした兵器を受け入れる奴が何処にいるってのよ)

麦野(…………でも垣根は、私以上の化け物の筈のコイツは居場所とやらを見つけていると暗に言ってやがった)

麦野(第一位と第二位
所詮誰からも理解されない奴同士が馴れ合って傷を舐め合ってるようにしか私には見えない。その筈なのに…………)

麦野(羨ましい、のか? 私は?)モグ




191 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/22(火) 00:07:58.99 ID:4h0v3Jg0
垣根「悪いな、このバカが調子乗って食いすぎやがってピザあとちょっとしかねえわ」

麦野「(ケロッとしやがって……)別に良いよ、欲しかったらまた頼むし」

麦野「――――――――――ん?」

麦野「…………」ゴソゴソ

麦野「あれー? そんなはず……あれー……?」

一方「どうした麦野さン」

麦野「財布とケータイが無い……」



一垣「「な、なんだってー!」」



麦野「私どっかでどっちか取り出してたりしてなかったっけ?」

一方「ダーツは俺らが最初に払ってたし飲みもンは垣根くンが買ってたな」

垣根「見てねえよ。そもそも麦野手ぶらだったぞ」

麦野「んー…………、あ」

麦野「そもそも出て来る時に財布もケータイもカードも全部忘れてきた、かも……」

一方「麦野さン文無しかよ。こういうときってほンとに皿洗いさせられたりすンのかねェ」

垣根「まあ家に取りに帰れば良いだろ。
もしアイテムに会っても別にやましいことも無いんだから堂々と行けば良いんじゃねえの」

一方「まァココ位は出すから、今度なンか奢れ」

麦野「う、うーん……取りに帰り辛いってか帰りたくないってか帰れないってか……」ボソボソ

一垣「「…………」」




192 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/22(火) 00:13:41.50 ID:4h0v3Jg0
一方「で、話戻すけどよ。結局麦野さンはなンで『アイテム』出て来たンだっけ?」

麦野「じ、自分から出て来たって言ったでしょ」

垣根「果たして本当か? もし事実自分で出て来たなら清々してる爽やか麦のん☆ な筈だろ。
つまりなんか込み入った事情があるんだぜきっと」

一方「どういうことかね、ていとクン!」

垣根「つまり真の事情が存在する、という事だ」キラン

麦野「んなわけないでしょうが。下らない事話してんじゃないよ」




196 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/22(火) 00:19:21.47 ID:4h0v3Jg0
一方「『ンだが、その麦野さンの発言。――ブラフ』」

垣根「して、その実態は?」

麦野「…………」

一方「素直に言うンだ麦野さン、今ならまだ傷は浅いぞ」


麦野「…………」ギリッ
麦野「……い出されたのよ」

二人「
                ハ        _
    ___         ∥ヾ     ハ
  /     ヽ      ∥::::|l    ∥:||.
 / 聞 え  |     ||:::::::||    ||:::||
 |  こ ?  |     |{:::::∥.  . .||:::||
 |  え      |     _」ゝ/'--―- 、|{::ノ!
  |  な 何   |  /   __      `'〈
 |  い ?   ! /´   /´ ●    __  ヽ
 ヽ      / /     ゝ....ノ   /´●   i
  ` ー―< {           ゝ- ′ |
        厶-―    r  l>        |
      ∠ヽ ゝ-―     `r-ト、_,)      |
      レ^ヾ ヽ>' ̄     LL/  、   /
      .l   ヾ:ヽ ` 、_      \\ '
     l    ヾ:ヽ   ト`ー-r-;;y‐T^
      |    ヾ `ニニ「〈〉フ /∥. j

                      
 」

麦野「」プッツゥゥゥン
麦野「オォォイだされたッッつッてんだよォォォォおおおおおお!!!」ピカー

垣根「バ、バカッ声がでけえ!!」

店長「――――」スタスタ

一方「すンませン! マジすンませン! 静かにするンで!」

店長「…………」クルッ スタスタ
ザワザワ ザワザワ

一方「麦野さァんここ出禁になったらどうしてくれるンだよォ……」ボソボソ

垣根「抹茶ラテ飲めなくなっちまうじゃねえか、あれ置いてる所そんなねえんだぞ」ボソボソ

麦野(…… なーんか本格的にどうでもよくなってきた)




197 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/22(火) 00:22:25.38 ID:4h0v3Jg0
一方「しかしわりィ麦野さン……、別に何もねェだろとか思って逆に調子のっちまった……」

麦野「…………あー、別に良いわよ。いっぺん叫んでむしろスッキリしたわ」

垣根「王様の耳は、だな。穴に向かってじゃねえのが唯一にして最大の問題だったが」

一方「追い出されたって、なンかしでかしたのかよ。穏やかじゃねェぞ」

麦野「それがねー」



麦野説明中



絹旗「誤解しないでほしいのが」

絹旗「別に超追い出した訳じゃなくて、麦野が勝手に出て行っただけなんですけどね……」

絹旗(それはそうと)

絹旗(私なんで急にこんなこと口走ったんでしょうか……、超不審者じゃないですか……)

滝壷「きぬはた、何か言った?」

絹旗「いえ何も」




222 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 01:10:20.69 ID:cHCwViw0
麦野「――――って事があってさ」

一方「…………」
垣根「…………」

一方(いやそこは謝れよ……)
垣根(……俺も『スクール』の連中相手なら似たような事言ってたかもしれねえな)


麦野「ほら聞いてんのか一方(アクセラ)ぁ! アンタが聞いたんでしょうが!」

一方「な、なンで俺だけ怒られるンですかァ!?」

麦野「私も喋ったんだし何かアンタも喋んなさいよ。それが公平ってもんじゃない」

一方「なァに言ってンだこの人……、別に最近特に変わった事ァねェよ?」

麦野「ふーん……、学園都市は今日も今日とて平和なのかしら。つまんない」

一方「それはそうと、『アイテム』だったか? 麦野さンの事考えて言ってくれてンなら良い奴らじゃねェか。大事にしとけよ」

麦野「……ふんっ」

垣根「やれやれだぜ」




225 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 01:19:02.30 ID:cHCwViw0
垣根「ん、思ったんだが。なんで一方は麦野『さん』なんだ?」

一方「目上だろォ? 後ダーツうめェし」

麦野「……目上扱い、嬉しくないなぁ……」

垣根「マジか。じゃあ俺も麦野さんって呼んでみっかな」

麦野「そういうのはアンタに合ってないんじゃない? 気色悪いわ」

垣根「……なんか俺今すげえ酷いこと言われなかった?」

一方「気のせいだろ」ズズッ




226 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 01:25:33.36 ID:cHCwViw0
一方「そういや、原子崩しってどンな能力してんだ?」

麦野「――――そう簡単に自分の手の内明かすと思う?」

垣根「いや、調べりゃ大体の事はわかるからな? 電子を中庸な状態で固定、とは又規模の割には応用の難しい能力だな」

麦野「まあ……今更かしら。その応用性が高けりゃもう少し上狙えたのに、って愚痴られながら育ったわよ。
やっぱ子供は褒めて伸ばすもんなのかしら」

一方「ンー……、電子っつっても素粒子なンだから垣根の能力に近いのか?」

垣根「いや、俺の能力は存在しない物を『現出させ、操る事』だ。
存在する物に対して働きかけてやるのは確かに近いが全くの別もんだろ」

一方「話を聞く限りだと、電磁気学的な側面からじゃなくもっと直接的に……
電子に対してアプローチをかけてる変質交じりの『念動力(テレキネシス)』って側面があるんじゃねェのか?」

垣根「……あっさりと否定したい所だが、わかんねえ所だな。おい麦野、お前って『電撃使い』だったか?」

麦野「厳密には違うらしいよ。発電効率が絶望的らしいんだわ」

一方「だから、在る状態の『原子を崩す者』ってわけだな。
危険極まりねェ……炉心溶融(メルトダウン)すんじゃねェぞ。麦野さンも危ねェだろうしな」

垣根「もう少し、ちょっとした事に使えるような能力だったら便利だったのにな。
こう、寝ながらテレビのチャンネル変えたりとかゲーム中に痒い背中をかいたりとか」

麦野「アンタそんな事に能力使ってんの……?
てか『未元物質』と『一方通行』の汎用性に勝てる能力なんてあるわけないじゃない」

一方「いや、勝手な解釈だが俺ン『一方通行』は言うほど高尚な能力じゃねェって考え方もできンだ」

麦野「アンタの能力が量産されてたらこの世の終わりでしょうが」

垣根「能力無い一方ちゃんが量産されても同じくらい対処に困るぜきっと」

一方「喧嘩のバーゲンセールやー」




227 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 01:34:19.58 ID:cHCwViw0
一方「念動力は、動いて無いもンを動かす力だ。ベクトル変換は、既に所持してる運動エネルギーの方向を変えるだけの能力。
ハンドルさえ付いてりゃ、止まってる車を動かすのと走る車を曲げるのどっちが楽かって話なンだよ」

垣根「ヨガフレイムとヨガファイヤー、実はよりすげえのはヨガファイヤーだ、みたいなもんかよ。飛んでくし」

麦野「垣根はよくわかんないけど、そういう意味じゃ単純に縦に並べられるような能力でもなさそうね」

一方「その意味じゃ垣根と麦野さンは似たタイプの能力者だろ。変質と生産の違いはあるにしろなァ」

垣根「……電撃使いの最先鋒が『超電磁砲』、みたいなもんだっつうのか?」

麦野「随分と胡散臭い話になってきたわね。研究者だったら、諸説あるがで打ち切ろうとするような話題だし」

一方「その辺、科学じゃ限界があンのかもしれねェってよ。
『自分だけの現実』なんて一人用の代物を、万人に理論を啓蒙するための科学で扱えるわけねェだろうが。って話だ」

麦野「うわ、学園都市全否定」

垣根「それ、誰の受け売りだ?」

一方「判ってて聞くんじゃねェぞ。ま、演算云々が絡むと何だかんだで俺のが優秀らしいけどな」

垣根「自慢かよ」




228 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 01:46:12.13 ID:cHCwViw0
一方「大分話が逸れた、麦野さンの財布の話だっけか」

垣根「取りいけないならどうするつもりなんだ?
いくらレベル5でもその辺での野宿なんざ襲ってくださいって誘ってるようなもんだろ、」

麦野「うーん…………」

一方「ていとくンそォ思うんなら泊めてやれよ、ダーツ教えて貰ったろ」

垣根「テメェもじゃねえか」

一方「ウチは木原くンいるから無理だろ」

垣根「だが男と女一つ屋根はまずい、常識的に考えりゃな」

一方「『常識は通用しねえ』が口癖だったあン頃の未元物質はどこへ行ったンですかァ」

垣根「常識は俺に通用しねえ訳じゃねえだろ! ――――ああ、お前も来いよ一方通行」

一方「俺もォ? お泊り会ですってか?」

垣根「そんなら大丈夫…………肝心の麦野の話聞いてなかったな、悪い」

麦野「ん……垣根んちに泊まれって?」

一方「ああ、麦野さン泊まるとこねェなら垣根くンち泊まれば良いだろォ」

麦野「そうねえ……」




229 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 01:50:57.64 ID:cHCwViw0
麦野(最悪名乗って照合取ればホテルでも何でも泊まれるんだけど…………そんな気分でも無いし)

麦野(コイツらが血迷って私に盛るとも思えないな……、寧ろこの二人がその気だしゃ対処できるやつはいないか)

麦野(それにしてもコイツら本当に本物の一位と二位かしら? あまりにも無警戒ってかなんていうか……)


一方「おーい、麦野さーン?」

麦野(コイツら利用してなんたら、って気分じゃもっとない…………かな。ほんとに毒抜かれちゃったよ)

麦野「……じゃあ、お願いするわ」

垣根「よっしゃあ、そんじゃ速めに出て買い物行こうぜ」

一方「おォ? 何買うんだよ」

垣根「食い物に酒にツマミに……」

麦野「え? 鮭?」

垣根「買ってもいいけどつっこまねえぞ」

一方「突っ込む?」

垣根「それももう良いからな?」




230 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 01:54:30.74 ID:cHCwViw0
垣根「そういや一方も麦野も酒は飲めるよな」

一方「嗜む程度にはな…………、って一度言ってみたかった」

麦野「どっちよ。私は普通に飲めるけどマズいのは勘弁」

垣根「そりゃ不味いもん飲み食いしたがる奴は普通いねえだろ。
よし、抹茶ラテも満足したしそろそろ出るか? ウチで食うなら買い物もしなきゃだろうが」

麦野「ん、私は構わないけど。それにしても何杯飲んだのよ。飲みすぎじゃない?」

垣根「だいぶ飲んだ、もう暫く抹茶は見たくねえ」

一方「とか言ってまた来たら抹茶ラテ飲んでンだぜ?」

麦野「それに多分若鶏のみぞれ煮のセット頼むよきっと」

垣根「テメェらが俺の事を余すことなく理解してくれてて冥利に尽きるぜホント」ハァ




231 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 01:59:43.96 ID:cHCwViw0
麦野「……あー、ちょっとお金かカード貸してくれない? 色々準備があってね」

垣根「まあ別に麦野が金に困ってんのは今だけだからかまわねえよ? 何するんだ」

麦野「野暮な聞くんじゃないよ」

一方「バラけるなら連絡取れないとまずいだろォ。麦野さンケータイ持ってねェしな」

垣根「じゃあどっちも俺の貸しとくから、後で返せよ」

麦野「さんきゅさんきゅ、じゃあ又後でねー」スタスタスタ

垣根「何か込み入った事情でもあんのかありゃ?」

一方「女だし色々あンじゃねェの? 違ェかもしンないけどな」

垣根「まあ、別にどうでもいいな。俺らはスーパーでも行って色々買っとこうぜ」

一方「堅揚げポテトもな」



ざわ……
  ざわ……


垣根「スーパーに到着した訳だが」
一方「デケェ。とにかくデケェ」
垣根「俺は酒と飲み物類を集めとくから、お前はツマミ類を集めとけ。
適当に揃ったらレジの近くで突っ立っとけよ」スタスタ
一方「ン」スタスタ




232 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 02:07:03.03 ID:cHCwViw0
一方「スナック菓子は基本だよなァ……、後チョコレートとか色々……。
――キャベツもか。ゴマ油とか焼肉ダレは垣根くンちにあるか」

一方「ナスの漬もンとかも食えるし大根も……、鮭フレークも一応買っとくかァ、余ったら垣根くンちにおいときゃいいし」

一方「チーズにソーセージに、あ、コーヒーだァ。これもこれも」ガシャガシャ

一方「後はなンか缶詰でも…………、鮭缶と……鯖缶かァ。コイツも持ってくか」パッ

パッ

一方「――――ン?」
?「――――ん?」




233 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 02:11:45.90 ID:cHCwViw0
一方「ンだテメェ」

?「それはこっちの台詞よ。何の用よ」

一方「質問には答えましょォっておかーさン教えてくれませンでちたでちゅかァー?」

?「な、何よ腹立つ事言ってくれちゃって! 結局さっさとその缶詰から手ぇ離しなさいよ、それは私のだってーの!」ムキー!

一方「絡む相手見てから絡めやメスガキ、俺の手の方が早く缶持ってたンだから俺のもンに決まってンだろォが」

?「結局私の手に絡んでんのはアンタの指でしょうが!
どっちも最後の一個じゃない、缶詰の価値崇高さもわからなさそうなアンタなんかに渡したら勿体無い訳よ!」グググ

一方「こっちにも鮭大好きな人いるンですゥゥ、
年がら年中鮭食べてないと全身の皮膚が溶けて口から手が出て胃液が鉄を溶かす位分泌されちまうンですゥゥ」グググ

?「何処の地球外生命体な訳よそいつ……」


?「……それはそうと、どうせ絡んだんだからちょっとだけ聞いて欲しい事があるんだけど」パッ

一方「ハッ、たちどころに聞き流してやらァ」




234 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 02:14:26.60 ID:cHCwViw0
?「私の知り合いにも鮭缶好きな人いるんだけどさー……ちょっと仲違いしちゃった訳なのよね。
んで居所不明になっちゃったから探したりもしてるんだけど」

一方「ならとっとと探しゃァ良いだろ」

?「でも結局仲違いって言っても、多分間違ってるのはあっちなのよ。
見つけても、又意見のすれ違いになりそうなのよね。どうすれば良いと思う?」

一方「ンな事知るか。とっとと仲直りすりゃ良いだけじゃねェか」

?「簡単に言わないでよ、私の言い方もキツかったかもしれないけど正直悪いのは結局あっちなんだから。
こっちから折れたらあっちの為にならない訳よ」

一方「ふーン。なら謝ってくンの待てば良いだろ」

?「それじゃいつ帰って来るかわからないでしょ
――――――はぁ、結局通りすがりなんかに相談したのが間違いだった訳かー」

一方(どう答えりゃ良いのかぜンっっぜンわっかンねェ訳だが……)




235 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 02:17:16.32 ID:cHCwViw0
一方「結局、その間違ってる奴ってのはテメェのダチなンだろ?」

?「ダチって……、そう思ってるのはひょっとしたら私だけなのかも知れない訳で……」

一方「テメェがそう思ってンなら大人しく信じて待っててやンな。そいつがダチならちゃァンと帰って来て謝ってくるだろうからよ」

?「……結局気休めじゃん」

一方「ンでその鮭缶好きな奴が謝ったら御褒美にコイツでもくれてやれ」ヒョイ

?「――――あ、鮭缶」パシ

一方「ンじゃな。俺ァ行くぞ、ツレも待ってるしよ」スタスタ


?「…………」ポカーン

?「かっこいいつもりな訳? あれ。ただの変人じゃん」

?「……麦野、謝ってくるかなぁ」

?「ま、あの変人の顔を立てて暫く待ってみようかな。麦野を信じるねえ……案外結局、そんなことしたこと無かったかも」

?「…………結局鯖缶持ってかれた訳よ」




236 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/27(日) 02:20:21.92 ID:cHCwViw0
垣根「おい、何処で油売ってたんだよ一方通行。遅かったじゃねえか、焦らされるのにも限度ってもんがあるんだがな」

一方「悪ィな、変なンに絡まれてて遅くなった。……カートとか気合入ってンな」

垣根「ま、大いに越した事はねえからよ。っつーか変なの? スキルアウトかなんかか?
テメェが遅れを取る相手が俺以外にいるとは思えねえ」

一方「ガキも加えとけ、相手すンのが面倒臭ェったらありゃしねェ」

垣根「ま、いいけどな。麦野に連絡取ったか?」

一方「ああまだだァ。レジ通っててくンねェ? メール打っとくから」

垣根「カードよこせカード。今俺一文無しみてえなもんだからな」

一方「ホレ」シュ

垣根「サンキュ」パシ







ブーン ブーン ブーン


麦野「――――メールだ」

麦野「一方からね……短っ! ……待ち合わせ場所は、そこでいいわよ、と」

麦野「垣根の奴もケータイにカードなんて渡しちゃって無警戒にも程があるわね」

麦野「……でもただ日和ってるだけでもなく何かされても処理できるって自信の表れかしら」

麦野「…………」

麦野「……一方通行の分類が友達、ねぇ」




273 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/30(水) 23:13:09.98 ID:pwNn63k0
垣根「麦野より先に着いちまったみてえだな」

一方「ソーセージに魚ソーもチーズもジャーキーもポテチも氷結も
コーヒーもキャベツとレタスもコロッケも刺身も他にも色々買った……、もう買うもンねェだろ」

一方「そういやオマエんち行った事無かったな、近くにコンビニとかあンのかよ?」

垣根「一応ある。後今日のメシピザの出前で良いよな?」

一方「俺もォ散々食ったぞ」

垣根「そのせいで俺と麦野が食えなかったんだろうが。答えは聞いてねえ、今日はピザの出前を取る」

一方「俺に聞く意味あったのかよ」

垣根「味位は選ばせてやるよ。…………ああ、あれ麦野だろ」

一方「でっけェ袋二つも抱えてやがンな。おォーい麦野さァーン」




274 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/30(水) 23:20:39.27 ID:pwNn63k0
麦野「おっまたせー、まあ別にそんな待ってないよね?」

一方「なンだその袋、何買って来たンだよ?」

麦野「乙女の秘密ね、見たら叩ッコロシ確定。そっちも随分と大荷物だねー……
それより多分アンタら缶チューハイとかそんなんばっかだろうと思ったからこんなのも買っといたよ」ズンッ
垣根「乙女(笑)、俺の家はこっちだぜ。……瓶? 焼酎か」

一方「ンて読むんだこりゃ……とみのほうさん?」

麦野「富乃宝山、まあウマイからアンタらも飲みなさいよ。後は鮭とば沢山買ってきちゃった、垣根にプリンも買ったかな」

垣根「よくやったと言わざるをえねえ」

一方「俺にはねェのかよ俺には」

麦野「一方にはさっきババァよわばりされたし、そんなに量持てないんだから買ってこなかったわ」

一方「ンのババァ! 干物が干物しゃぶって悦ンでアヘ面晒してンじゃねェぞ!! 男日照りが調子ン乗りやがって!!」クワッ

麦野「……折角の極上のインスタントコーヒーとオリーブオイルポテトチップスは
ドブに流されていく運命にあるみたいだねぇあぁぁくせらぁぁぁ」クワワッ

一方「っつゥ、ていとくンの心の声が聞こえましたァ」

麦野「次言ったら実行するからね。I can do it. これは演習ではない」

一方「ウス」

垣根「おいテメェらじゃれてねえでさっさと行くから付いて来い」




275 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/30(水) 23:31:52.94 ID:pwNn63k0
一方「垣根くンちって学生寮なのか、一応」

麦野「第七学区だしそうなんじゃないの? 一方んちもココ?」

一方「いや、俺ンとこは八学区にある。一緒に住ンでンのがそこにいるからよ」

垣根「麦野も第七か?」

麦野「相当遠いよ? 一応同じ学区内だけど」

一方「出歩いてても、麦野さンとバッタリ、なんて事今まで無かったしなァ……学園都市は狭ェようで広い」

垣根「一方が周り見なさすぎなんだろうが。いっつも顔が斜め三十度下向いてんだからよ」

一方「一応前向いちゃいンぞ。……猫背直せとは言われるけどよォ」

麦野「上目遣い、なんて可愛げあるツラでもないわこりゃ。……ん、ここ?」

垣根「おう、ちょっと待ってな今ここのユルマン開けてやるよ」ピッピッピッ

一方「セキュリティしょっぺェのか?」

垣根「ま、それなりの奴がやる気出しゃ、あって無いようなもんという意見も無きにしも非ず」ウィーン




276 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/30(水) 23:39:02.41 ID:pwNn63k0
垣根「よっと」ガチャ

一方「お邪魔しまァす」

麦野「へぇ、案外良い部屋じゃない。テレビとかもしっかりしてるし」

垣根「まあ金はねえわけじゃねえしな。――――ああカードとケータイ机んとこ置いといてくれ」

麦野「はいはい」ガチャガチャ

一方「たけのこの里山の宇治抹茶ミルク味が箱で積まれてンな…………抹茶好き過ぎて引くわァ……」

垣根「部屋漁ってないでとっとと冷蔵庫に荷物ぶち込むの手伝えよ!」

一方「ン」

麦野「……この冷蔵庫だけやけに旧式じゃない? なんでこんなの使ってんのよ」

垣根「使ってる内に情が沸いちまってな。なんだか知らんが他人の気がしねえんだ」

冷蔵庫「…………」




278 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/30(水) 23:45:14.39 ID:pwNn63k0
一方「そういや垣根、テメェ料理とかしてンのか?」

垣根「I can't do it. できるわけねえだろ、お茶汲みとレンジでチンを料理と言うなら話は別だが」

麦野「だよね。台所こんな新品なわけないし」

一方「じゃあ外食ばっかかよ。栄養偏ってンだろ」

麦野「なんかお母さんみたいな事言い出したじゃない一方」

垣根「別に平気じゃねえの? この年からコレステロール気にしたくはねえよ」

一方「そういう油断が成人病に繋がって手遅れになってからじゃ遅ェンだよガキが!」

垣根「って、木原くンが言ってた?」

一方「うン」

垣根「相変わらずの人だなあの人……」




279 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/30(水) 23:54:03.32 ID:pwNn63k0
麦野「そういえば木原くんって誰? 友達?」

垣根「コイツの保護者。一度会ったが顔面刺青のイカツいおっさんだった。
言っちゃ悪いがツラだけで言えば完全に何人か殺してそうな感じだったぜ」

一方「」ピク

麦野「完全にヤクザかスキルアウトのカッコじゃない、そんなのに育てられてりゃ一方もガラ悪くなるか」

垣根「一方の話聞いてんと面倒見は良いらしいんだが過保護なんだと。
見た感じもアンバランスだったが完全に子供の心配する親だった」

麦野「子離れできてないのかしらね、いかついのに。私も一回会って見たいわ」

一方「おいテメェら、木原くンの悪口はそこまでだ」


麦野「……何コイツちょっと可愛い」

垣根「まあ保護者がいるだけ幸せってもんだよな、置き去りなんかに比べりゃ」

一方「……俺ァ垣根みてェに上見て誰かいるなンて事が無かったしな、
木原くンいなかったらどうなってたか知れたもンじゃねェよ」

麦野「第一位は第一位で色々あるわけか。当たり前だけど忘れちゃいそうになる事よね」




280 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/06/30(水) 23:59:44.86 ID:pwNn63k0
垣根「さて、もうブツはあるべき場所に収まったがまだメシ食うには速すぎるな……、取り合えずなンかして時間潰すか」

一方「ああ、ゲームあンだな。何か良いのはねェかな、と」ガサガサ

麦野「ねー垣根、空いてる部屋とかある?」

垣根「そこの手前の洋室は空いてんだろ、そこ使って良いぜ」

麦野「んじゃ使わせてもらうわ」ガチャ

一方「垣根くゥゥン、部屋まだ空いてたりしねえのか?」

垣根「なーに猫撫で声出してんだ、気色悪いぜ。テメェはソファか風呂場で寝てろ」

一方「随分と態度が違ェじゃねェか、俺も客の一人なンだぞ」


垣根「え? 客?  …………オマエが?」

一方「そういうナチュラルに驚くみたいな真似はよせ、マジで傷つく……」

麦野「なーに落ち込んでんのよあくせらぁ」バタン

一方「うっせェ……」ガサガサ




281 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/01(木) 00:06:39.38 ID:1SvwEsg0
一方「それにしてもゲームもねェ訳じゃないが一人用かよくわかんねェのばっかだな」

垣根「うっせえ。人呼ぶことなんざこれまでまるで念頭に無かったんだから当たり前だ。
パーティーゲームばっかあっても逆に引くだろうが」

一方「逆に引く。間違いねェわ。一人でマリパとか桃鉄とか人生ゲームやる虚しさは凄まじいもンだ」

垣根「マジかよ糞箱売ってくる」

麦野「今から夕飯って言うのも先走りが過ぎるかな。……ほらほら、何か時間潰すこと考えなさいよ」

垣根「あー、さっきも言ったけど晩はさっき食えなかった分ピザ取るってな。これ、近所のピザ屋のチラシ」

一方「デノミピザだな。ハーフで適当に一人一種を二枚分頼みゃ足りンだろ。俺ァミートセブンな」

麦野「私はそこまで拘り無いなぁ……じゃあデラックス? で」

垣根「じゃあ俺はプライムシーフード…………後一つは適当で良いよな」

一方「ン」

麦野「問題ナシ」

垣根「んー……、マヨじゃがにするか」メモメモ




283 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/01(木) 00:15:36.28 ID:1SvwEsg0
垣根「どうせ時間あるんだしツマミの用意でもしようぜ」

一方「よしきた」

麦野「本格的な宅飲みみたくなってきたじゃん。何作んの?」

垣根「俺も一方も料理できねえしな、ホントに簡単で即席のもんをでっちあげるだけになりそうだ。麦野は料理――」

麦野「あると思う? 経験」

垣根「――半ば判ってて聞いた、すまねえ。試行錯誤で何とかやんぞ」

二人「「おー」」




286 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/01(木) 00:28:12.91 ID:1SvwEsg0
麦野「一方、手まで卸さないでよ」ジャー

一方「怖ェ事言うなよ、ベクトル操作すりゃ大根なんてまるで野菜扱いだぜェ」ゴリゴリゴリゴリ

キャベツ「刻むのは半分位でも良いよな?」トントントン

一方「おゥ。焼肉ダレだの卸しだのソースだの……万能すぎンだろ」ゴリゴリゴリ

垣根「うし、終わりだ。後は冷蔵庫に入れといて食う少し前に洗やいい」

麦野「もやしもこんなもんかな」

一方「…………」ゴリゴリゴリ

一方「疲れてきた」グデー

麦野「もやし(笑)」

垣根「もやし(裏声)」




287 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/01(木) 00:32:23.41 ID:1SvwEsg0
とりかえしのつかないことをしてしまった…………



290 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/01(木) 00:34:30.60 ID:G659aUAO
キャベツwww クソワロタwwwww

ドンマイ



291 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/01(木) 00:37:22.99 ID:J5r3WsAO
キャベツさん自分刻んでるんですかwwwwww



289 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/01(木) 00:33:48.14 ID:1SvwEsg0
垣根「よしじゃあ後は時間だけじゃねえか。なーにして潰すかな」

麦野「垣根は普段なにしてるのよ」

垣根「最近は……そうだな、DVD屋で映画を何個かレンタルしてきたからそれ見たりしてるな」

一方「それで良いンじゃねえの。ここに積んである奴か?」

麦野「エロいのだったりしたらドン引きにも程があるけどそれはそれで面白いよね」

一方「垣根くンは年上好きっぽいからな。ロリもンとかよりは熟女もンじゃねェかな」

垣根「おいこらそこ、勝手な憶測で物を言うんじゃねえ。そもそも、そんなもんをんなとこに出しとくわけねえだろうが」

麦野「後で家捜しフラグがビンビンだー」

一方「ザ・フライ1・2、ディープ・ブルー、ターミネーター、パイレーツオブカリビアン、マトリックス……節操ねェな」

垣根「ターミネーターとパイレーツオブカリビアンはもう俺見ちまったから抜いといてくれよ」

麦野「マトリックスは私一回見たけど……、派手なのは良いとして途中からよくわからなかったわ」

一方「そうかァ? 俺は色々頑張ってて良かったンじゃねェのとか思ったンだがよ。
ただ、銃弾は止まって武器は止まらン理由が判ンなかった位だ」

垣根「おい、まだ見てねえんだからネタバレだけはやめろ」




292 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/01(木) 00:39:38.09 ID:1SvwEsg0
一方「消去法だと……ザ・フライかディープ・ブルーか」

垣根「ディープブルーにしようぜ。ザ・フライとかグロものっぽいしな実は得意じゃねえんだよ」

麦野「じゃあ何で借りてきたのよ」

垣根「B級フェアとかでワゴンにあったからな。借りる権利をやろう、とかおにぎりみたいなキャラが書いてあった」

一方「パッケージ見る限りサメ物だな。じゃあこれにすっか。一本見たら丁度腹減る頃合なンじゃねえか?」

垣根「終わる少し前に注文だな。忘れないようにしねえとな」

麦野(そういえば絹旗が前騒いでた映画もそんなんだったっけ……、なんて言ってたかな…………)

垣根「ああ、お前ら飲み物いるか?」

一方「俺ァさっきの缶コーヒーな」

麦野「私は何でも良いよ。お茶お願い」

垣根「何でも良くねえだろそれ……」トプトプトプ




293 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/01(木) 00:46:00.07 ID:1SvwEsg0
垣根「よし、じゃあ始めるか」ピッ

麦野「映画見るとき喋らないタイプ?」

一方「パニック系とかビビらせる奴なら見逃すことあるから集中してた方が良いだろォ」

垣根「そうだな、終わってから言いたいことあったらピザでも食いながら話すか」

麦野「りょーかい。静かに鑑賞しましょうか」

一方「お、始まった始まった」




294 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/01(木) 00:54:58.15 ID:1SvwEsg0
滝壺「あ、ふれんだ。おかえり」

フレンダ「たーだいまぁー、あー結局結構重かった訳よ」ドサドサ

絹旗「買い物超お疲れ様でした。麦野は見つかりましたか?」

フレンダ「ううん。……でも変人は見つけたかな」

滝壺「変人? ふれんだ?」

フレンダ「私が新しい自分発見してどうするのよ!
結局なんかちょいムカつく奴だったけど、良い事もちょぴっと言ってた訳だし」クルクル

絹旗「それは……超、鮭缶ですか」

フレンダ「そ。麦野がもし帰ってきてもし……ううん、麦野が帰ってきたらあげる訳よ」

滝壺「……よくわからないけど、ふれんだ楽しそうだね。いい事だと思うよ」

絹旗「超意味不明なんですが……、物に釣られるような麦野では無いと信じたいですね」

フレンダ「あは、そんなところ信じてどうする訳?」




328 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 00:43:53.01 ID:GNQUe420
一方「…………」

麦野「…………」

垣根「…………」

垣根「さて、終わった訳だが、色々言いたいことがあるんだなこれが」

一方「俺も俺も」

垣根「一方君どうぞ」

一方「B級としては十分及第点だっただろォ。いや、久々に笑いどころの多い映画見た気がすンな」

麦野「なんか特典で監督と俳優の説明付いた字幕もあるっぽいわよ」

垣根「続けて見んのもアホらしいだろ、また今度見ようぜ」

一方「そうだな」

麦野「……そうねぇ」ピンポーン

垣根「ん……、ピザ来たみたいだな。取ってくる」

麦野「いってらっしゃーい」

一方「ン、俺も行くわ」

垣根「悪いな」スタスタ




329 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 00:45:22.07 ID:GNQUe420
麦野(やれやれ、仲良すぎて逆に疑いそうだわアイツら。変な趣味でも持ってんじゃねえかってさ)

麦野(――――嫌われもの同士の傷の舐め合い……、だと思ってたけど)

麦野(でも……)

麦野(今、私がこいつらとこうやってツルんでんのは、只の傷の舐め合いなのか……?
それとも、何か考えがあってこいつらの側にいるのか?)

麦野(それは違う。私が一緒にいんのは一方通行と未元物質じゃない、アクセラと垣根帝督だ。
誰がなんと言おうと私がそう決めてる。アイツらといる時間は悪くない、
そう思った事は私の中でのそのまま決定事項だ。それが私の選んだ自由ってやつよ)

麦野(ならこれまであいつらと一緒にいた私は。
そして、私に付いてきてくれてるあいつらにも自由があるなら、それでも尚あいつらが付いてきてくれていたなら)

麦野(きっとそれと同じように……私がこれまで一緒にいたのは……)

麦野(『アイテム』じゃなくて――――――)




330 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 00:51:49.01 ID:GNQUe420
フレンダ『麦野ぉー、この鯖缶一口食べてみてよ! すっごいおいしくてほっぺた千切れる訳よ!』
フレンダ『え、理由? そんなの、楽しく楽しむ為に決まってるじゃない!』

滝壺『鮭弁、おいしい? …………そう、よかった』
滝壺『うん――――私の居場所はここにあるから、かな』

絹旗『あぁー、たまの休日ってやつは超心のオアシスってやつですねー麦野』
絹旗『……超クソッタレな人生での唯一の希望は、新しい誰かと出会える事位でしょうか。麦野と会えたみたいに』



麦野(………………)



絹旗『そんな考え方ずっとしてたらいつか後悔しますよ?』

フレンダ『で、でもそうやって嫌な事からずっと目を背け続けられる訳ない訳よ!』
フレンダ『こっちだって少しは麦野の事を本当に思って――――』

滝壺『…………そうやって、力を振りかざすの?』



麦野(…………)



垣根『ま、居場所なんてもんは欲しがってようが気がついたらいつのまにか出来ちまってるもんだ。
麦野もちょいと落ち着きゃ案外すぐ見つかるかもしんねえぞ』

一方『『アイテム』だったか? 麦野さンの事考えて言ってくれてンなら良い奴らじゃねェか。大事にしとけよ』



麦野(……)




331 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 01:00:45.61 ID:GNQUe420
麦野(あーあ。何だよ、結局悪いの私なんじゃない)

麦野(帰ったら……そうだねえ……、フレンダにはさっきの鯖缶でも持ってってやるかな。
絹旗と滝壺にも何かあげるべきかしらね、公平じゃないし)

麦野(でも……今更ってのもちょっと虫が良すぎるかな。……そこで開き直るのも私らしさ、かなぁ)

一方「おーい、麦野さンドア開けてくれよ手がいっぱいでよォ」

麦野(…………ま、後でいっか)

麦野「はいはい、ちょっと待ってなさいって」トタトタ




332 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 01:21:37.00 ID:GNQUe420




一方「――――このピザ結構でけェな」

垣根「こんなもんじゃねえのか? もし余ればしまっておきゃ良いだろうからな」

麦野「ツマミのセットも出来たし良いから早く乾杯するわよ」

垣根「せっかちは嫌われんぞ。…………何に乾杯すんだ?」

一方「何かに乾杯とか面倒くせェな、とにかく乾杯だ乾杯」チーン

垣根「かんぱーい」チーン

麦野「はいかんぱーい」チーン




333 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 01:22:13.20 ID:GNQUe420
一方「ピザうめェェェェ」モッキュモッキュ

垣根「お前昼からそればっかだな」

麦野「くぅぅぅ、ビールうまいわー」プハー

一方「麦野さンオヤジくせえ」

麦野「ちょっと一方、花も恥らう乙女にその言い草は酷いんじゃない?」

垣根「突っ込みてえ、が、突っ込まねえ。未元物質は突っ込まない」

麦野「鮭とばも良いけど何でシャケ弁ってあんなおいしいのかしらね」

一方「あ、そっちのピザ取ってくれよ」

垣根「これか?」

一方「ン、サンキュ」

麦野「あー、垣根私にもそれ取って」

垣根「……お前らちょっとは自分で動きやがれってんだ」




334 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 01:24:49.14 ID:GNQUe420
一方「思う。キャベツと大根おろしは万能すぎンな」

垣根「とりあえず何にでも合わせられなくはないからな。楽なのも尚良い」

麦野「外で頼むと割高なんだけど……ついつい頼んじゃうわよね」

一方「判るぜェ」

麦野「そういやアンタら二人、ツルむようになった切っ掛けってあんの?」

一方「あァ、あるぜ。結構前に垣根くンが俺ンとこ押しかけt」

垣根「てて、テメェッッ! そのヘリウムみてえにド軽い口に未元物質詰め込んでやろうか!!」ゴパァー

一方「ムゴッ……いきなり何しやがンだアァン!?」

垣根「良いか言うなよ! 絶対に口が縦に割けても言うんじゃねえぞ!」

麦野「垣根、それフリにしか聞こえないから。ほら一方ぁ、ちゃっちゃと言っちゃいな!」

垣根「良いか一方通行、あの事言ってみやがれ。と、次の瞬間俺の火炎物質が火を吹く事になる。覚えとけよ」

一方「二度としねェさ、もうあんな火炎物質はゴメンだよ
……でもねェだろ。別に良いじゃねェか、減るもンでもなかろォが」

垣根「減らなきゃ良いってもんじゃねえぞコラァ!」




335 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 01:26:10.69 ID:GNQUe420
垣根「お前ら実験とかやっぱ日ごろ受けるだろ? 何やってんだよ」

一方「最近は打ち止めって所かねェ、すべき事も一通りオシマイで今はツリーダイアグラムに何かやらせてるらしいが。
ああ、実験で少なくとも脳味噌に棒ッ切れ突っ込まれた事ァねェぞ」

麦野「私もあんまりないなぁ。――――ああ棒っきれじゃないわよ?
伸び代が無いとか思われてるのかな、その分暇できて良いけど」

垣根「まあ能力開発ったって俺ら位まで来ると前例も少なすぎて手探りになるのはしゃあねえな」

一方「実験って言えば結構前にあった話なンだがな」

垣根「ほう」

一方「前っつっても相当前だぞ。俺がまだこン位の時に研究所に呼ばれてよ、研究者に実験の指示されたンだ」

麦野「ここまではありがちな話ね」

一方「頭にセンサーとか機材色々つけてなァ。やらされた事がなンと盆踊り」

麦野「………… 夏にやるアレ?」

垣根「月がー、でたでーたー、のアレか?」

一方「月がー、でたァ、のアレだな。ご丁寧にBGMまで流れてやがった」

垣根「意味わかんねえwwwww」

麦野「で、一方踊ったの?」

一方「踊ったな。比較的素直に」

麦野「素直な一方wwwwwwwあんま想像できないわwwwww」




336 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 01:31:02.58 ID:GNQUe420
一方「ンでその実験の目的なンだが」

垣根「盆踊りをする事によって大脳真皮が活性化する仮説の実験」

麦野「バカをやってる能力者を見て笑う会」


一方「麦野さンが近ェな。意図不明な行為を強制された時の能力者の通常時と比較した演算能力と
その脳波の推移の計測、だとよ。しかも大真面目だ」

垣根「知ってっか、昔の人は良い事を言った。曰く、頭が良いのと勉強が出来るのは違う、ってよ」

麦野「勉強すればするほどバカになってくってある意味真理よね」

一方「又世の中に勉強をしない理由が一つ増えちまったなァ」




338 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 01:39:34.46 ID:GNQUe420
一方「ま、オチなンだが。その事実が判明して、
こンな糞みてェな実験なンざしやがって人おちょくってンのかドカスがァ! って責任者ぶン殴った」

麦野「一方ちっちゃい頃にしてはエキサイトしてるわね。やる時はやる子供だったの?」

一方「いや、木原くンが」

垣根「木原さんワンパン入りましたァァァ!」

麦野「どんだけかわいがってんのよwwwwwwwwww」

一方「今考えりゃ意味わかンねェがそン時は木原くンが輝いて見えたなァ……返り血で」

垣根「木原さんあのガタイで研究者なんだろ? 筋肉の研究しかしてねえだろ実は」

麦野「まだ見ぬ木原さんへの想いが良い感じに膨らんできたにゃーん」




339 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 01:41:22.68 ID:GNQUe420
垣根「ああ、俺トイレ行ってくるわ」

麦野「いってらー」

一方「おう」



麦野「…………」
麦野「さぁて、鬼がトイレ行ってる間にさっさと洗濯済ませちゃいましょうか」

一方「洗濯ゥ? なンか零したのか?」

麦野「違うわよ馬鹿ね、アンタらつるむようになった訳よ。
学園都市第一位と第二位はいがみ合ってる、みたいなのが定説だった筈だけど」

一方「ン? あァ、いやァそれが聞いてくれよ麦野さン、結構前の事なンだけどよォ」

麦野「ふんふん」

一方「アイツがファミレスでコーヒー飲んでた俺ンとこ急に来やがって、
いやに深刻な面ァ見せやがるから何事かと身構えたら第一声が『友達が欲しいんだが』」キリッ

麦野「――――――――プ」

麦野「あああぁぁっっはっはっはっはwwwwwwwwww何それ腹痛えぇぇえぇえwwwwwww」バンバンバン

一方「いやwwwwww俺も最初はビビったぜwwwwwなんせコレまでやけに絡んできやがってた第二位が急にだからなァ」

麦野「流行のツンデレってやつなんじゃないのwwwwwww
いやぁ、ここにきて学園都市トップツーの株が大暴落してうなぎのぼりだわwwwwwww」

一方「なンだそりゃ。ツンドラとは違ェのか」

麦野「また懐かしい単語だすわねえ、アパルトヘイトとか無駄な単語ってなーんでか頭から離れないのよ。
……ツンデレだったかしら、小学生みたいなもんよ。
好きなあの子に対してだからそっけなくとかキツく接しちゃう、みたいなwwww」

一方「なにそれこわい」




342 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 01:42:17.45 ID:GNQUe420
垣根「おうただいま。……麦野がやけにテンション高えな、どうしたんだよ」

麦野「垣根ちゃんの純真無垢な一面が聞けて高ぶってた所ねー」

垣根「――――おい、一方ちゃん、オマエまさか」

一方「垣根『友達が欲しいんだが』までしゃべった」

垣根「」



垣根「テメェエエエエエエエエエエエエエエエエ」ブワァァァァァ




344 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/05(月) 01:46:50.82 ID:GNQUe420
麦野「笑わないよ、笑うわけないじゃん。私もレベル5なんだからそんくらいわかるわ」

一方「あんだけ爆笑してる上に進行中でニヤけててよく言うな麦野さン。重苦しいのは字面だけだァ」

垣根「おい麦野、テメェ誰にも言うんじゃねえぞわかってんな」

麦野「アンタもそういうフリ好きだね。リアクション芸は長持ちしないわよ?」

垣根「フリじゃねえっつってんだろ未元物質ケツにぶち込まれてえのか!」

一方「ただし、その未元物質も尻からでる」

麦野「ほんとに只のクソじゃんwwwwwwww垣根最低wwwwwwww」

垣根「えー……今の俺の発言じゃねえだろ……」

一方「あ、酒切れた。次の取ってくれよ麦野さン」

麦野「レモンでいいわね。はい」

一方「どォも」

垣根「マジに言うんじゃねえぞ……こっ恥ずかしいだろうが……」




362 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 22:12:50.13 ID:kod8cBA0
ワイワイガヤガヤ




一方「カハハハ、つゥぎはなァにを飲もうかなァァァァああ??」ガサガサ

麦野「ねー垣根、コイツ顔真っ赤だけど大丈夫なの? 普段白いからほんっとに目立って怖いんだけど。死ぬ予兆とかじゃない?」

垣根「何度か飲もうみたいになった時は外で飲んでたからな……、環境が違うと酔いも進むのかね。ま、死にゃしねえだろ」

一方「おゥおゥ、おソトではベェェェクトル変換してるンですゥゥ、今はかきねくンちだから素で飲んでんだァ」グビ

麦野「昼間も100%シラフとは言えない喋りだったけどこりゃ完全に酔ってるわ」

一方「ふっざけんじゃねェぞ麦野さァン、俺ァ120%シラスだぜェ」

垣根「俺はもう何もつっこまねえぞ。……俺の酒も切れたな、次のカン、と。麦野はいるか?」スクッ

麦野「あー、ゆずの頂戴」

垣根「おう……ほらよ」

麦野「あんがとね」

一方「芋焼酎のコーヒィ割りってうめェかなァ?」

垣根「オラ、わかったから歩き回るな。じゅうたんの上で吐くんじゃねえぞ」




363 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 22:30:53.42 ID:kod8cBA0
麦野「…………ハァ、自分がこういう馬鹿をやれるなんて、あんまり思ってなかったなー。良くも悪くも普通な感じに?」

垣根「なんでだよ」

一方「堅揚げうめェェ」バリバリ

麦野「言わなくたってわかるでしょアンタらなら。嫉妬と、恐怖と、下心と、物を見るような目に、ほんのちょっと同情?」

麦野「そんな視線の海でいつまでたゆたってれば良いのかわかんなかったし。
こっちも見下すか叩き潰すか、ごっこ遊びしかできないし」

麦野「ほんとにおさかなよ。口パクパクあけてんの、苦しい苦しいってさ」

垣根「それでどうしたんだ?」

麦野「……能力以外で何かを手に入れる、そんな発想もなかったからね。
せめて『堕ちる』より『堕りてやる』って後ろ暗い仕事を始めたわ。今考えりゃ私なりの反抗期だったのかしら」

垣根「随分規模のでけェ反抗期だ」

一方「酒うめェェ」グビグビプハー

麦野「――もしかしたら只の後付けの屁理屈かもしれないけどさあ。後ろ暗い事やるような奴なら、
そのまま私を見んじゃないかな? って思ったのかもね。今となっては昔の事だからはっきりしないんだコレが」

垣根「この若白髪と付き合ってても、時々思うな。
俺とコイツの関係だって馴れ合いと指刺されりゃ完全否定は困難だ。勿論、ただ言わせるつもりも更々ねえが」

一方「うおォン 俺ァまるで人間火力発電所だァ」バリバリモグモグ

垣根「が、ある意味開き直る事にしたんだ。
人同士の付き合いなんて大なり小なり傷の舐め合いだ、歯車にだって潤滑油使うんだからな。人間様にだって必要だろうよ」

麦野「……アンタが良い事いってんだろうけどほんとコイツのせいで台無しだわ」

垣根「当のコイツのお陰な部分もあンのが腹立たしいがな」

麦野「……でも、私がこんな風に考えてんのもアンタらのお陰よきっと、全部じゃないけど」

垣根「随分曖昧だな?」

麦野「なんていうか……アンタらのユルさ馬鹿らしさがさ、なんていうか、うん。……なんだかいいな、って思っちゃったのよね」

麦野「アンタらがそうなら私もって事。うーん、朝の私に会ったらブチコロサレ確定かな。
なーに半日ぽっちで飼い慣らされてんだ、って」

一方「飼い慣らすも何もよォ、なァかよくなるのに頭使って考えンのとかアホくせェだろォよォ」

垣根「いきなり話に混ざってくんじゃねーよ酒臭え……あーあ完全に酔ってんなコイツ」




364 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/06(火) 22:34:44.46 ID:mzjrWgIo
こいつらいいな……



366 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/06(火) 22:37:14.55 ID:e9zpX.Io
一通さんw



367 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 22:45:42.85 ID:kod8cBA0
麦野「でもね一方、私はこれまで結構調子乗ってたんだよ。『アイテム』の奴らにも色々と上からだったしね」

麦野「せめて言い訳をさせてもらうとしよっかな。……私と同格の人間もいなかったし、贔屓目じゃなくあいつらは私に恩がある。
だから、良くも悪くもあいつらは私のもんだと思ってた。だから、意見されるとイラついてたのよ。
今考えりゃ私が一番ガキだった気もするかもね」

麦野「そんな私が、今更図々しくも謝って仲良しこよししようなんて……
あいつらからすれば虫が良すぎる話だって思われても仕方なくない?」

一方「ハァ? 『アイテム』は麦野さンのダチなンだろォ? なら別に考えることねェじゃンよ。
謝って、許してもらってそンでしまいだろォがァ」ゲフ

一方「ほらアレだ! ダチっつーもんは……アレだ、えーと……アレなんだよ……」

垣根「指示語が多すぎてわかんねえよ」

一方「あー、えー……、俺あの時なンて言ったっけ垣根くン」

垣根「『友達は、態々友達であることを確認したりはしねえ』」

一方「そうそれだァ。つまりはそういうこった」

麦野「なんか良い事言ってるっぽいけどさ、それってちょっと意味違うんじゃないの?」

垣根「だな、あんまかみ合ってねえ。所詮酔っ払いだなw」

一方「あれェ……、おっかしいなァ……」

一方「とにかくゥ、麦野さンは『アイテム』の奴らの事が好きなンだろ? それならそれで解決なンだよォォォぉろろろろろろろ」

垣根「ば、バカクソ野郎口から未元物質吐きやがった!! ぞ、雑巾雑巾っ!!!」ダダッ




369 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 22:50:44.88 ID:kod8cBA0
麦野「――――――あは」

麦野「はっは、あぁぁぁっはっはっはっはwwwwwwwww」ゲラゲラ

一方「」グデー

垣根「オイコラ麦野! 笑ってねえで一方の背中でもさすってろ!」ドタドタ

垣根「雑巾で拭いて消臭物質を……」パァァ

麦野「ひぃwwwwwあーwww楽しいねぇかきねぇあくせらぁ!」

垣根「楽しいわけあるかドカス! あぁぁ絨毯が……」フキフキ

一方「」グデー




370 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/06(火) 22:51:50.72 ID:FTSJ6vQ0
垣根くん良い人だなぁ…wwww



371 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/06(火) 22:57:28.56 ID:e9zpX.Io
これはもう苦労人ポジション確立www



372 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 22:58:22.23 ID:kod8cBA0
垣根「やれやれ、やっと落ち着いたか」ハァ

麦野「垣根おつかれー」

垣根「ずっと笑ってやがって……覚えとくぞ……」

一方「ゥゥう、気持ちわりィ……」

垣根「ほら横んなってな。確かこういうとき毛布かけときゃ良いんだっけか?」バサ

麦野「体あっためると良いとか聞くけどねえ……」

垣根「水だけ飲んどけ、後が酷いからな」

一方「……」グビグビ

垣根「後は寝とけ。ったく……世話かけるクソ野郎が……考えて飲めってんだよ」

麦野「垣根ママ(笑)」

垣根「ぶっとばすぞ」




374 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:01:51.39 ID:kod8cBA0
麦野「さっきの話の続きだけど。やけにインパクトある事に流されちゃったけどね」

垣根「インパクトありすぎだろ……口から激流葬だったろありゃ」

麦野「好きならそれで良い、ね。酔っ払いに言われてちゃ世話ないわ。私があいつらの事好きねえ……、あー好きかも」

垣根「ま、間違っちゃいないんじゃねえか? 時に、ガキの言うこと程真理を突くってのは良くある笑い話の一つだ」

麦野「酔っ払ったら大人も子供も皆ガキかしらね。ほら、注いであげるわ」トプトプ

垣根「ん、サンキュ」トットットッ




375 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/06(火) 23:04:42.96 ID:e9zpX.Io
激流葬wwwwww
まさかのていとくんデュエリストwww



376 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/06(火) 23:06:01.48 ID:VHBE0lgo
バーストストリームではないんだな



377 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:11:08.09 ID:kod8cBA0




一方「」スースー

麦野「寝顔は素直そうで可愛いわねーコイツ」プニプニ

垣根「性根が単純なんだろうな。中二病だがよ」

麦野「でもそんな所も好き、かなぁ垣根くぅん?」

垣根「気色悪い事言うんじゃねえよ……。だが、友達兼居場所であることは残念ながら否定できねえな」

麦野「それと同じように……きっと私の『アイテム』は最初から私の居場所だったんだね。
アンタらに会わなきゃ多分『気付けなかった』、感謝してやってもいいわ」

垣根「俺と一方通行はなんでもなくただ勝手に一緒に騒いでツルんでただけだろ。
それを麦野が勝手に見ただけだ、俺らが特別なんかした訳じゃねえぜ」

麦野「序列だのなんだのに嫌気が差して離れた筈が、いつのまにかそれに縋り付くようになってたんだから世話無いわ。
でもアンタも。そのなんでもない事が欲しかったんじゃないの?」

垣根「……まあガキの頃からの本当に欲しかったものが手に入った、んだと思う。
何を欲しがってたって訳でもねえが手に入って思った。ああ、これが幸せって事なのか? ってな」

垣根「幸せってのは、楽しいに似てたな。寂しくなくて、面白い、だ」

麦野「詩人みたいな事いうじゃない。楽しいわね、何かの受け売り?」

垣根「整理していって要素を挙げていっただけだろ。ただ、この幸せってもんはずっと同じ形をしてる訳じゃねえだろうしな」

垣根「勿論小さくもなるだろうが……それを恐れて前に進まねえ奴は損してるって事だけははっきりしてる」

麦野「随分とメルヘン極まりない発言じゃん、能力だけじゃなくて性格もメルヘンかな?」

垣根「喧嘩売ってんじゃねえぞー」




378 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:15:39.52 ID:kod8cBA0
麦野「……そうね、私たちも普通に人間やってんだもんね」

垣根「そんな当たり前の事がわからねえ程馬鹿だった時期もあったがな」

麦野「友達って、なるもんじゃないんだ」

垣根「そうだな。気がついたらなってるもんだな」


麦野「ねえ、垣根」

垣根「ん?」

麦野「好きなものが友達ならさ」

麦野「私とコイツや……。私と、アンタも――――――」

垣根「……」



麦野「――――ははっ、なんでもないんだにゃーん」

垣根「――――やれやれ、ピロートークでもあるまいししんみり談笑なんてガラじゃねえわ。
酒の後戯もここまでだ、後ろで苦しみも悲しみもなさそうな面でグースカしてるそいつみたいに寝ちまいな」

麦野「あらあら、つれないじゃない。ま、もう寝ようかな。お肌にも悪いしねー」

垣根「曲がり角をもう通り過ぎ…………いや冗談だからな」

麦野「最後で台無しだわね。……おやすみ。入ってきたらブチコロスから」

垣根「寝ぼけないように祈っとくぜ」ヒラヒラ




379 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:17:28.70 ID:kod8cBA0


音を立てて閉じたドアを暫く見やって、垣根帝督が笑みを浮かべた。

垣根「――――――青い鳥は結局、一番身近な所にいたのでした、かよ? 『アイテム』、ねえ」



別段返答を期待した訳でも無い。ポツリとこぼれただけの言葉に、途中からうっすらと意識を取り戻していた彼は言葉を返す。

一方「…………ハッ、このメルヘン野郎がァ」

悪意の一切が含まれていないこの辛辣な言葉に、垣根帝督は苦笑を零した。

垣根「心配するな。自覚はある」ゴロン



そのまま言葉を交わすことなく、
部屋に残っていた二人もそのまま夢の世界へと落ちていった事で、部屋の中で動くものはいなくなった。
そして夜は更けていく。



380 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:20:20.53 ID:kod8cBA0



朝より昼が近い時間帯、ほんの少し痛む頭を抑えながら垣根帝督は起床した。
カーテンからもれる陽光が瞳孔の開いている目には眩しい。細めた目で辺りを見回すと、そこは居間だった。
どうやら昨晩そのまま寝床に入らず寝てしまっていたらしい。すぐ近くで、丸くなって一方通行が寝息を立てているのが見える。


垣根「おい一方、起きろ」

一方「…………ンだよォ木原くゥン……もうちょっと待てよ……」

垣根「何寝ぼけてやがるんだ、さっさと起きろ」

一方「ァ……? あれ、垣根くンなんで俺ンちに……」

垣根「ここは俺んちだよ。昨日飲んで騒いだだろうが」


目を擦りながら未だにぼんやりしている一方通行を一瞥して、垣根帝督は立ち上がる。と、同時に眩暈でふらついた。
酒が入っていたせいか普段よりキツ目の眩暈を何とかやり過ごした所で、彼はあることに気付く。
昨日いた筈の人物がいない。麦野沈利がだ。

入るべからずとおどけていた洋室の扉は開いたままで、その向こう側に彼女の姿は無い。
恐らく、自分達が寝ている間に出て行ったのだろう。
何も言わずに去って行った彼女を、僅かばかり心配したがすぐ思い直す。
昨日の最後のあの様子ならば、問題が起きることは多分無い。
裏付けがあるわけでもなかったが、多分そうだろう。そうあれかしと、彼は結論付けた。




381 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:21:46.77 ID:kod8cBA0
ふらついた足取りでトイレに向かう一方通行を横目に見ながら、垣根帝督は昨夜彼女が過ごした部屋を覗き込んだ。

当たり前だったが、昨日以前の自分が知る一室と殆ど変化は無い。
丁寧にたたまれた布団と整えられたシーツが少し意外だなと言う考えは失礼に当たるのだろうか。
恐らくシャワーでも浴びていったのだろうか。
シャンプーなのかどうかまで彼には良くわからなかったが、何かの残り香が微かに彼の鼻を擽った。


アイドリングも終わり本調子になってきた頭を首に乗せて居間に戻った垣根帝督は、とあるものを発見した。
昨日食べ散らかした状態のままの机上に、記憶にそぐわぬ一枚のメモ。
ふと手にとって見てみれば、一目見れば美しくともどちらかといえば豪快や、
場合によっては野蛮とも言える言葉で形容されるであろう文字の紡ぎ手とは裏腹な、
丸く可愛らしく女らしい文字がそのメモの上で踊っている。




382 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/06(火) 23:22:22.93 ID:OEP1T2Eo
いいねいいね、最っ高だねェ!!



383 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:24:49.67 ID:kod8cBA0
一方「スッキリだァ……。なンだそりゃ」スタスタ

垣根「置手紙、じゃねえのか? 昨日ここにいて、今ここにいない奴からのな」

一方「ふーン……、なンて書いてあるよ」

垣根「ほらよ。お前も読んでみろ」

一方「『昨日は随分と色々世話になったね、ありがとう。
取り合えず気持よさそうに寝てたアンタら起こすのも気が引けたし、
今の気が変わらないうちに帰ってあいつらに言うこと言ってくるわ。
その後何をするかは、適当にあいつらと相談でもして決めようと思ってる。
じゃあ、またいつか会いましょう 

PS、余ってた鯖缶だけ貰ってくわよ 麦野沈利』だとよ。何もいわねェとか水臭くねェか?」

垣根「ちょっと恥ずかしかったんじゃねえの? 言うこと言ってくるとか遠まわしに言ってるしよ」

一方「あー、十分ありえンな。ま、あの様子だとちゃんと謝れてンじゃねェかな」

垣根「テメェは半分くらいバカ酔いしてて話聞いてねえだろ」

一方「ンだと、麦野さンと人には言えねェ話をしてたのか……?」

おどけながらも一方通行の表情には、微塵の心配も無かった。
麦野沈利の目的の達成は疑う余地が無い、そう確信している表情だった。そして、勿論垣根帝督も同様に。



384 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:26:52.22 ID:kod8cBA0
垣根「ま、次会った時にでも解説付きで事の次第を拝聴しようぜ。……寝すぎたせいか腹減ったな。外で食うか」

一方「ああ、じゃあ顔だけ洗わせろ」

垣根「早くしろよ、次は俺だからな」


へいへい、と空返事をする一方通行に背を向けてカーテン、続けて窓を全開にする。
途端世界が一際輝きを増したように錯覚するほどの陽光と爽やかな風が部屋に飛び込んでくる。
青天に座す太陽は殆ど真上から陽射しを注いでいた。彼女は、今頃何をしている所だろう。
ここ出て行った時間もはっきりしなかったが、向かった先は定めて彼女の居場所で間違いあるまい。

麦野沈利は、またいつかと書き残して去っていった。
そのまたいつかの日に果たして、彼女はどんなエピソードを聞かせてくれるのか。
きっと、なんだかんだで面白い話になるのだろうが、催促するのもつまらない。
近い将来になれば良いと、またいつかの出来事を思い浮かべて。垣根帝督は空に向かって大きく欠伸をした。








                ┼ヽ  -|r‐、. レ |
                 d⌒) ./| _ノ  __ノ





385 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:27:46.06 ID:kod8cBA0
恒例のおまけ(エピローグ)まで暫くお待ちください



386 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/06(火) 23:27:50.74 ID:OEP1T2Eo
おつ



387 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:32:03.20 ID:kod8cBA0
休日の昼過ぎという時間故か、ファミリーレストランは普段にもまして客達の喋る声が響く。
その中でも既に珍しいものではなくなった光景、
茶髪と白髪の二人組みはいつもと同じ様に窓際の席で他愛無い言葉を交わしながら各々の笑みを浮かべている。
カップ片手の談笑は途切れる兆しを見せない。昼時を少し過ぎて、空いた席もちらほら目立ち始めいていた。


ドアが軋む音と共に、入り口の扉が開く。女ばかりの四人連れが姦しい声と共に店内へ入ってくる。
各々が個性的な彼女達だが、四人共に酷く楽しそうな笑顔だった。
誰が見ても、仲の良い友達グループなんだな、そんな感想を抱く程度には。


「あー、お腹ペコペコですよ! 一刻も早く食べなきゃお腹と背中が超くっつきますよ!」

「食べ過ぎると、お腹と背中がどんどんはなれてく」

「……食欲なくなるようなこと言わないでほしいんだけど。
に、してもこんな中途半端に遠くのファミレス来るのなんて初めてじゃない?」

店員「いらっしゃいませー、四名様でよろしいですか?」


愛想の良い顔で店員が彼女達に声をかける。短い茶髪の少女がそうです、と答えた。
長い茶髪を躍らせている女性は店員に答えず店内をぐるりと見回した。その動きが、一点で止まる。
続いて、お世辞にも碌な事を考えていなさそうな笑い声を漏らした。まるで何か悪巧みが成功した時のような表情だった。


「いえ、知り合いいたから結構」スタスタ

「あ、ち、ちょっと麦野!」タタッ




388 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:33:26.30 ID:kod8cBA0
後から慌てて付いてくる三人に構う事無く、先陣を切って歩く彼女は一つの席の前で足を止めた。
顔を上げる先客――、茶髪と白髪の少年達は、
腰に手を当てて自分達を見下ろしている彼女を見てそれぞれ仔細は違うものの驚いている素振りを見せる。


麦野「案外早い再会だったわね、一方物質のお二人さん。相変わらずおアツいわ」

一方「またいつか、じゃなかったのかよ。いくらなンでも早すぎだろ、まだ日も沈んでねェよ」

垣根「電話番号は教えといた筈だろ、アポイントメント位取れ、礼儀がたんねえぞ」


呆れたようにぼやく一方通行とおどけて言う垣根帝督に、麦野沈利は口角を吊り上げて答える。


麦野「親しき仲にも礼儀ありって言葉はね、親しいと礼を欠く事が多いから使われるらしいわよ」

一方「ほンとかよ」

麦野「知らない」


その言葉に伏せられた意味を解して、垣根帝督は彼女に習って口角を吊り上げた。
その間後ろから何事かとこちらを窺っている三人の内に、一方通行は覚えのある人物をみとめる。




389 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:35:26.53 ID:kod8cBA0
一方「テメェ、あンときの缶詰ガキじゃねェか」

フレンダ「……鯖缶持ってた変人じゃない」

滝壺「――ふれんだ、知り合い?」

フレンダ「ううん……結局縁があったって訳かな。ちょこっとだけ、アンタのお陰で助かったわ、ありがと」

一方「……缶詰はあるべきとこに収まっちまったのか、つまンね」


麦野「あら、二人で盛り上がってるとこ悪いけど。まだ紹介もしてないんだから早漏も程ほどにしてくれる?」

垣根「っつぅ事は後ろのそいつらが…………」


得心したように頷く垣根帝督を見ると、麦野沈利は後ろに視線を流して笑った。


麦野「そ、私の友達で、『アイテム』の主要メンバーよ」


コイツらは今朝の話の登場人物、麦野沈利がそう囁くと『アイテム』の三人は揃って目を丸くした。
茶色い短髪の少女は麦野沈利を見上げ。金髪の少女は、眉をひそめてこちらを観察している一方通行を観察し返し。
残った少女は一人虚空を眺めていた。目が、空ろだ。


絹旗「あ、えっと……絹旗最愛です。超はじめましてですよ」

フレンダ「全く一期一会(笑)だわ、偉い人の言葉も結局当てにならないわねー……、私はフレンダ」

滝壺「私は滝壺。白い人も茶色い人もよろしく」ペコ




390 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:37:06.55 ID:kod8cBA0
垣根帝督、一方通行両名は突如繰り出された自己紹介にあっけに取られたようだった。
どォも、等と思わず反射的に下げられた頭が間抜けに見えたらしい。少女達の顔から緊張と警戒が消える。
麦野沈利が視線と首で、次はお前らだろうと促していた。男二人は顔を見合わせると、観念したように口を開いた。


一方「あー、一方通行だ」
垣根「垣根帝督。よろしくってな」


双方の名乗りが終わると共に、『アイテム』の三人の視線が麦野を向く。
声に出されていなかったが、彼女達の視線に乗っていた疑問に麦野が答えた。


麦野「言ったとおり昨日一日、コイツらの世話してやってたのよ。やむを得なくだけどね」

垣根「ダウト、事実の捏造はよせよ。麦野も一緒に騒いでた癖して良く言うぜ」

滝壺「騒ぐ?」

垣根「ああ、そもそも昨日麦野がな……」

一方「フレンダっつー事はオマエがダーツマスターか……?」

フレンダ「マスター? ……ダーツは自信あるけど」




391 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:39:50.93 ID:kod8cBA0
二組の、互いにまるで関係の無い会話が始まる。
一方通行は妙にそわそわした様子でフレンダに声をかけ、垣根帝督は滝壺理后に事のあらましを説明し始めた。
少し置いていかれたように呆けていた絹旗最愛は、あっという間に打ち解けている彼らから視線を逸らさず問うた。


絹旗「麦野。ってことはこの白髪と茶髪の二人が…………」

麦野「そうね」


首を傾け、絹旗最愛を横目に眺めた麦野沈利はくつくつと喉を鳴らした。
絹旗最愛は、今朝の話の登場人物達と眼前の人物達を脳内で一致させようと努めているのだろう。
そんな眉根を寄せて唸っている彼女の仕草が、麦野沈利にはとても愛おしく思える。
そしてそれ一つだけではなく、目の前視界に入る彼ら彼女らの悉くが、だ。


一度気付けば大したことは無い。
一度認めてしまえば、もう何も恐ろしくなど無い。そもそも、これは初めから恐ろしいものなどではなかった。
私は、一人で生きてはいなかった。これまでも。そして、一人で生きていくつもりもない。これからも。
永遠に続く保障も無いが、暫くは私の人生は彼ら彼女らとともにあるだろう。
そしてそれがとこしえにそうあれかし、心の中で呟いて彼女は答える。
浮かんでいる表情は、とても魅力的な満面の笑みだった。


麦野「コイツらが私の、新しい友達よ」




392 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:41:23.78 ID:kod8cBA0
麦野編 糸冬
よくみたらスレ立ててから三週間も立ってるじゃん、付き合ってくれててありがとな!




393 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/06(火) 23:41:52.24 ID:OEP1T2Eo
おい垣根さん美少女4人と知り合いですか

なんというリア充



394 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/06(火) 23:45:02.33 ID:wJR54AAO
ご馳走さま
フレンダとか一方物質に驚かないのな



395 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/06(火) 23:45:19.67 ID:mzjrWgIo
面白過ぎwwwwwwwwwwwwww
乙! 続きも書いてくれると嬉しいな♪



399 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/06(火) 23:56:53.44 ID:kod8cBA0
三話目は前も言ってたけど心理掌握の話になるんや、オリジナル設定の固まりみたくなるけど勘弁な!
木原くン外伝とかその他外伝も書いてみたいんだけどまだ一文字も書いてないから延期しとく事になるw

三話の投稿は暫く先になるっぽい
暫く忙し気味なのと、今までと違って三話自体がまだ六割位?
しか書けてないから最初の方に修正入れる可能性がまだある内に投稿したくねえw
ごめんな! 頑張る!




400 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/07(水) 00:00:53.36 ID:9sMTzkAO
それが>>1の最期の言葉になろうとは以下略



402 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/07(水) 00:28:29.40 ID:ednbrUAO
>>400
おい、やめれww
……>>1さんもちゃんと来てね?



403 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/07(水) 08:12:50.69 ID:XASWRn60
乙!
そうあれかしって聞くとヘルシングしか思い出せん



423 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/24(土) 13:55:11.23 ID:UBuPkL20
へwwwwwwへwwwwwwいwwwwwwwwwwww
ただいま、まじすまそ。
修羅場が終わった開放的な気分で色々開放してたらいつの間にかネトゲ廃人になりかけてたでござるの巻

それとちょっと悩みに悩んでることを相談させてくれ
次に出てくる心理掌握なんだが、口調で言うとお嬢口調のキャラに今のところなってんのよ
心理「…………嘘は言っていないようですわね、ご苦労様。『忘れてしまっても構わなくてよ』」 こんな感じに
理由は二つあって、一つは普通の口調だと今後第三位とかも出てくる所で三四五位で口調被りを防がせようとしたのが一つ。
黒子もレギュラーに出る予定ないし、もう一つは心理定規=心理掌握かもっていう考えが無かったからですの
ただ、上の心理定規=心理掌握っていうのもありえるような気がしてきてな……
書き上げた部分の設定変えなきゃいけない箇所も僅かだしセリフ回し変えるのも良いんだけど
万が一心理定規=心理掌握になったとき違和感MAXでどうすんべってなっちゃうからさww アドバイスってか意見くだしあ
他力本願でごめんな




424 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/24(土) 14:13:55.66 ID:GdOwfkg0
            /)
           ///)
          /,.=゙''"/   
   /     i f ,.r='"-‐'つ____   こまけぇこたぁいいんだよ!!
  /      /   _,.-‐'~/⌒  ⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |
     / iトヾヽ_/ィ"\      `ー'´     /




426 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/24(土) 15:09:12.49 ID:SL9ZnvIo
君に任せる



427 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/24(土) 18:39:46.22 ID:8j3DcEg0
心理定規=心理掌握は無いんじゃない?
少なくともこのスレで気にする必要はないと思う
二次創作なんだし三四五位の書き分けやすさの方が大切だよ

ちなみに俺の中の心理掌握は何故かハルヒの佐々木になってる



430 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/24(土) 20:41:51.51 ID:ImUqfsAO
書きたいように書きゃいんだよ
納得いかないなら書き直したっていんだし
どうせ待ってるから



431 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 01:07:46.90 ID:US9DRmI0
わかった! 皆ありがたう! そのまま進めてもし設定違ったらもう一回書くわ!

あと、おわびとばかりに木原くゥンの外伝ばなしをさっき書いてみたので投下する
ただ本編に輪をかけてオリジナル設定満載だから注意してね!




435 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 01:33:04.86 ID:US9DRmI0
男性は、少年の保護者である。これは自称でもあり、他称でもある。
つまり、彼と少年の関係を見た人が「ああ、仲の良い親子か兄弟じゃない」と、思う程度にはだ。

少年には家事能力が無い。皆無ではないが、有していると言うと語弊が生じる。
多少の料理は可能だが、家事全般は一人でやるとなると絶望的だ。洗剤の場所すらわからないに違いない。
加えて、少年はは自堕落な生活に浸っており朝自分で起きる事すら難しい。所謂、駄目人間といわれる分類だ。
しからば、家事の一切は男性の手に委ねられるのは当然の結果だろう。
そして男性の家事能力が二次関数の放物線を描いて上昇したのも予定調和に違いなかった。

そんな彼は常日頃と同じように、朝食の準備をしていた。
こわもてに似合わぬカエル柄のエプロンは、少年に贈られた品だった。
朝日というには少し遅いが輝きを増している太陽の光が、室内を照らす。
トーストにサラダ、ハムエッグとコーヒー。非の打ち所の無いブレックファストである。
満足げに鼻息を吹いた男性は、いそいそとエプロンを脱いで壁に引っ掛けてると眼つきも鋭くある一室に足を向けた。

そこには、甲斐甲斐しく働く自分と対照的に惰眠を貪る同居人がいるはずだった。
春眠にはもう遅ぇぞ。一言ごちて彼はドアを荒っぽく開いた。
バン、という乾いた音と同時に引っかかっていた木の板が盛大に揺れる。そこにはこう刻まれていた。『一方通行』。

見下ろす男性、むにゃむにゃと呟く少年。寮とは名ばかりの高級気味なマンションの一室から、この物語は始まる――――




436 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 01:34:18.38 ID:US9DRmI0
木原「オラッ、起きやがれ一方通行! 今日は俺が家出んの早ぇっつっただろうこのドカスが!」クワッ

一方「――――ンン、……あと三分待てよォ」グデー

木原「俺だって急いでんだぜぇ? ちぃっと程度はこの配慮に配慮しようって気は無ぇのかな一方通行ちゃァァァン?」

一方「…………起きる……起きるからあと三十秒……」

木原「テメェの三十秒は三十分だろォが!
今日は垣根くん達とどっか出掛けるから早く起こせっつったのはどこのどいつだ?」

一方「…………!!」ガバッ

一方「い、今何時だァ!?」

木原「九時半」

一方「ンだよまだまだじゃねェか……」バタッ

木原「」ビキビキビキ

木原「アタァ!!」バキッ

一方「イデッ!!」

木原「おきろ、ぶっとばされんうちにな」凸

一方「一発ぶっとばしといてから言うセリフかよォ……」ムクリ

木原「いぃから顔洗って来い。メシが冷める」スタスタ

一方「ン……」ノソノソ




437 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 01:38:32.84 ID:US9DRmI0
木原「ンー……、朝のコーヒーはうめぇ」グビリ

一方「悪くねェな」グビリ

木原「態々入れてやった人の前で悪くねぇとは何事だ。入れて欲しくねぇのか?」

一方「とか言って明日も入れてくれる木原くンだったのである」

木原「………… チッ」グビリ

一方「にしてもそろそろあちィしアイスコーヒーの季節だと思うンだが」

木原「そうだな、もう夏か。…………テメェがコーヒー飲み始めたのもこんぐらいの季節だったな」

一方「――――よく覚えてンなそんなこと」

木原「何言ってやがる、散々俺もコーヒー飲むって騒いだ癖に苦いだの暑いだの喚きやがってたじゃねぇか。
忘れようにも忘れねぇよ」

一方「あンときはまだガキだったンですゥ、今はこうやってブラックも余裕じゃねェか」フフン

木原「ま、あんま飲みすぎんなよ。胃に優しくねぇんだ、コーヒーは」

一方「俺より飲んでてなァに言っちゃってンだか。……トマトかァ」ススッ

木原「おい、残すんじゃねぇぞ」ギロッ

一方「…………味蕾からの信号ベクトルを操作イデッ」バキッ

木原「能力に頼りきるんじゃねぇぞ。
それにな、食い物ってのはな、遺伝子研究所の研究員達が精魂込めて組み替えてんだぞ」

一方「食う気無くすような事言うなよォ……」モグモグ

木原「タコ、昔のままのトマトならテメェは食えちゃいねぇ。昔のトマトは食卓に出た途端に
全ての子供がトマトと対照的な真っ青の顔して泣き出す程の食材でなぁ――――」モグモグ




438 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 01:40:47.95 ID:US9DRmI0
一方「ごっそさン」

木原「おぅ、よく食った」ガシガシ

一方「よせやガキじゃねェンだぞ!」バッ

木原「そのガタイでよく言うぜ。ああ、今日でかけんだったな……晩飯は食って来る予定あんのか?」

一方「あー、もしかしたら食うかもしンねェ」

木原「あいまいなのが一番困るっつってんだろ。五時かそこらまでにはメールよこせ」

一方「りょーかい。そっちは遅ェのか?」

木原「どぉだかなぁ。ま、やることっつったら実験の尻拭いだけっぽいからそんなでもねぇだろ。俺は控えめに見て天才だからよ」

一方「木原くン紙一重紙一重」




439 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 01:44:38.90 ID:US9DRmI0
木原「よし、じゃあ俺は出るからな。テメェも気ぃ付けろよ」

一方「鍵だけ閉めてやンよ」

木原「前いっぺん俺が鍵持ってき忘れてえれぇ事になったの思い出したぜ」

一方「えれェ事になったのはマンションの壁だろォが。ちょっとコンビニから帰ってきたらドアの形に穴が開いててぶったまげたわ」

木原「まあ、鍵も持ったから大丈夫だ。ンじゃ行ってくんぞっと」

一方「頑張って来いよォ」ヒラヒラ




440 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 01:49:26.46 ID:US9DRmI0
第十八学区のとある研究所にて



木原「…………」カタカタ

木原(昼前か……、そろそろ一方通行は家でた頃かねぇ)

木原(あのガキ時間にルーズだからな……、さんざ教えてやったのにちっとも直りやがらねぇ……)

木原(ま、最近はそうでもねぇから大丈夫だとは思うが)


コンコンコン


?『失礼。木原さん、いるかな?』

木原「入んな」

研究員「失礼する」ガチャ




441 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 01:52:12.68 ID:US9DRmI0
研究員「木原さん、新しいリストを持ってきたんだが」

木原「お、そこんとこ置いとけや」

研究員「それにしても、このような場所までご足労を願ってしまって面目ない。随分とお久しぶりだというのに」

木原「そう思うんならケツは自分で拭けるようになりな。いくら女んケツでもそぉいうイケナイ趣味は俺にはねぇぞ」

研究員「……しかし色々と理由を付けても来てくれるんだからな。これでも、心底感謝しているよ」

木原「…………やれやれ。そぉいやそっちんガキ共の具合はどうなってる? 俺が『使えそう』なのは育ったか?」

研究員「――――冗談でもそのような事を言わないで欲しいんだが」キッ

木原「なんで冗談だと思う。この俺が冗談言ってるって本気で思ってんのか?」

研究員「………………」


木原「はィはィ俺が悪かったよ……ったく『遊び心』が足んねぇなぁ、一体全体何回目だこのやり取りはよ」

研究員「冗談でも言って欲しくない言葉はある。……そうでなければ、貴方に付いてきた意味が無い」

木原「俺といると目ぇ付けられてんの知ってんのか。
ただでさえお偉いのと溝入ってる上に第一位を飼い殺してるとか何とか言われてんだがな」

研究員「知ってるさ、貴方を慕う一方通行の事も。……貴方がいなければ子供達の無事も無かった。
私も何をしていたか分からない。その事に関して私達は一生貴方に頭が上がらないな」




442 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 01:53:33.16 ID:US9DRmI0
木原「ジジイが気に食わなかっただけだった、テメェらの事なんざ知ったこっちゃなかった
何度言わせりゃ気が済むんですかァ?」

研究員「関係ないさ。例えどんな理由だったとしても起きた結果は変わらない。だから私達が抱く感情も変わらないよ」

木原「妙な事言ってんじゃねぇぞ……」ユワッショーッ アイデソラガーオチテクールー

研究員「ケータイが鳴っているが」

木原「ん……」ピッ

研究員「(スッ)……噂の一方通行からか。仲睦まじい事だ」

木原「テメェ勝手に覗き見んじゃねぇぞ」

研究員「少しくらい構わないだろう。減るものでもなし」

木原「俺はテメェと違って露出癖はねぇんだよ」

研究員「……そういう言い方はいくら私でも少し傷つく。
私は見せたいのではなく見られる事で起きる周囲の反応に興味が無いだけだ」

木原「一緒だろ。……とは言っても今日は随分とあっちいのに脱がねぇとこを見ると治ったみてぇだな」

研究員「い、いや暑いが……貴方に見られるのは恥ずかしいだろう……」

木原「あ?」




443 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 01:55:32.64 ID:US9DRmI0
研究員「そ、そうそう。子供達は貴方に会いたいと言っていた。彼も一緒に連れてきてほしいとも」

木原「一方通行もか。あいつ昔ガキ共に会わせた時に何人か泣かせてただろ確か」

研究員「貴方に殴られて彼自身も泣いていたね、懐かしいな。あの時から数年ぶりだが……
子供達もその事を覚えていたんだ。私が貴方と仕事をする事になる、と言ったら『二人に是非会いたい』だそうだ」

木原「ふぅん、まぁ一方通行に後輩ができんのも悪くはねぇか」

研究員「そ、そうだろうそうだろう。そうと決まれば場所はどうしようか。そうだな、どちらにせよ私の所は大所帯だ。
こちらに来てもらう方がそちらへ行くより効率的だろう。
子供達ももうすぐ夏休みだし予定は空いているだろうから
私の予定が空いている時と貴方の予定が空いている時に合わせて――――――」

木原「おい、頭沸いてんぞ。また今度連絡すりゃいいじゃねぇか」

研究員「――――――それもそうだ、見苦しいところをお見せした」シュン

木原「……まあよし、んじゃとっとと仕事終わらせちまうとするかよ」

研究員「……いや、じっくりと進めないか? 何事も慎重にだろう」

木原「? 何でだよ、そんなに危ねぇもんでもねぇだろ」

研究員「いや……その……、すぐに終わってしまっては折角貴方を呼んだ意味が……」モジモジ

木原「いいからほら行くぜ。終わらせてメシだメシ」グイッ

研究員「――――あっ」




444 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 01:56:32.17 ID:US9DRmI0




研究員「今日はお疲れ様。お陰様で随分早く終わったように感じるな、あっと言う間だった」

木原「ほんとに俺の助けがいったのかよ。テメェ一人でできたんじゃねぇのか?」

研究員「あ、それはだね、やはり木原さんがいたお陰だろう。うん」

木原「はぁ?  取りあえず俺は帰るぜ。また何かあれば連絡よこせよ」

研究員「も、もう帰るのか?」

木原「あぁ、さっきのメールで一方通行が外でメシ食ってこないらしいからよ。買いもんして帰るんでな」

研究員「そうか……」

木原「ん、テメェもウチで食うか? 二人分も三人分も大して変わらねぇぞ」

研究員「」

研究員「なんだって?」




445 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 01:57:52.14 ID:US9DRmI0
研究員「いや、私も子供達に食事を用意しなければいけないから断らせてもらおう。
たいへん、とても、ひじょうに、残念だが」

木原「そぉか。なら俺は行くぜ」

研究員(あっさりすぎる……せめてもう一度位聞いてくれても……)

研究員「ああ、またこちらから連絡するよ。ではまたね」

木原「次は仕事以外で呼べよ」ヒラヒラ スタスタ

研究員「――――――!!!」




研究員(仕事以外で呼べ、彼は確かにそう言った)

研究員(つまり私と彼の友好関係は仕事仲間という現状から進展したということだろう)

研究員(ああ、子供達に相談してよかった……
彼女達が言わなければ仕事を口実に呼び寄せるという発想など浮かばなかっただろうし)

研究員(…………)

研究員「――――それにしても暑いな、彼もいなくなったことだし」ヌギヌギ

研究員B「あ、主任またそんな所で!」ダダダッ




446 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 01:59:01.94 ID:616VDqQo
まさかのせんせー
何と言う俺得



447 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 01:59:07.84 ID:US9DRmI0


木原「今日のメシは何だろな、と」スタスタ

木原「」アァァッタタタタタタタタタタタ ピッ

木原「俺だ」

?『ただいまお受けした電話はァ、現在使われておりませン。番号をお確かめの上、もォ一度』

木原「おい一方通行、さっさと用件を言え」

一方『ンだよつれねェな。もう少し反応しろって』

木原「用がねぇなら切んぞ」

一方『馬鹿待て! 木原くン今どこよ』

木原「十八から帰るとこだよ、仕事終わったし買いもんしてな」

一方『俺ァ六から今帰るとこだから合流しよォぜ』

木原「構わねぇがどこでだ」

一方『どこで買いもンすンだよ?』

木原「七学区のでけぇスーパーで纏めて買いもんしようと思ってる」

一方『おしきた、スーパーの入り口で待ってるか待ってろよォ』

木原「待たせんじゃねーぞ、急げよ」

一方『電車に言ってくれよ、ンじゃ』プツッ

木原「はぁ……、よし行くか」スタスタ




448 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:00:25.74 ID:US9DRmI0
一方「木原くゥゥン、お待たせってなァ」スタスタ

木原「遅ぇな一方通行、早すぎんのもよくねぇが遅すぎても嫌われんぞ」

一方「なンの話だそりゃ」

木原「ま、行くぞ」スタスタ

一方「はァ?  ……おゥ」スタスタ




木原「牛乳ポン酢マーガリン……、ゴマダレはまだあったな。無かったのはもうねぇか」

一方「木原くンアイス買おうぜアイス。夏だしよ」

木原「なんか好きなの一箱買って来い」

一方「ヒィィハァァァ!!!」ダッ

木原「何歳だ、走ってンじゃねぇぞ!」

一方「ヒーハー」スタスタスタスタ

木原「ったく競歩じゃねぇんだぞ……、あぁ納豆も買っとくか」




449 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:01:35.08 ID:US9DRmI0
一方「おゥ木原くンこれも頼んだ」ガラガラ

木原「んだこのアホみてぇな量の缶コーヒーは」

一方「買いだめが切れちまってたの思い出したンだよ」

木原「全部一緒のじゃねぇか。少しは違うの買ったらどうだ?」

一方「これで良いンだ。むしろこれが良いっつゥかな」

木原「こだわりでもあんのか」

一方「まァ色々とな」

木原「そういやこりゃ俺が昔テメェに初めてやったコーヒーだな、懐かしいぜ」

一方「――――! ……覚えてやがったのか」

木原「元々俺が好きで飲んでた銘柄だ、わからいでかよ。俺にも何本かよこせな」

一方「……ケッ」




450 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:02:11.03 ID:US9DRmI0
木原「よし後は今日のメシだけだな」

一方「今日のメシの予定とかあンのか?」

木原「そぉだな……おう一方通行、今日のメシは何が良いとかあるか?」

一方「ハンバーグ」キリッ

木原「よし、麻婆豆腐にすっかな」ガサガサ

一方「おォい!」





一方「あ」

木原「レジの前でなんだ」

一方「ポテトがねェの忘れてた」

木原「ァあ? またスナック菓子か……さっさと取って来い、二袋だけだ」

一方「いってきヤース」スタスタスタスタ

木原「ったく…………」




451 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:03:06.57 ID:US9DRmI0
一方「重そォだな」スタスタ

木原「そりゃこんだけ買えばな」

一方「一個持ってやろォか?」

木原「能力使わねぇんなら一袋任せてやる」

一方「げ……パス」

木原「テメェのそのモヤシボディはなんとかなんねぇのか一方通行、自分で情けねぇと思うだろ」

一方「前に木原くンボディ目指して筋トレしようとしたンだけどよォ……
疲れてくっと勝手に能力出ちまうから筋トレにならねェんだ」

木原「負荷に対する反射演算の式を組み替えなきゃ駄目みたいだな、今度の実験の時にでも考えといてやる」

一方「腹筋割れてンな」サスサス

木原「おいくすぐってぇからやめろ。卵落としたら洒落にならん」

一方「俺の腹筋は……割れてるんじゃなくて脂肪が無さ過ぎて筋肉が見えてるだけかァ……」ペタペタ

木原「プロテインでも飲んでみるか?」

一方「まァ木原くンが演算組んでからだなァ。頼むぜェ」

木原「任せろ、俺を誰だと思ってやがる」




452 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:03:52.72 ID:US9DRmI0
一方「ただいまァ」

木原「おかいま」

一方「どっちだよwww」

木原「冷凍もんだけ入れといてくれ、ちと先にトイレだ」

一方「ン」ガサガサ

木原「ああ挽肉は出しといて良いぞ」スタスタ




木原「ふぅ……すっきりしたぜぇ……」

木原「ブツはみんな納まりやがったな。よし、よくやった」

一方「ンじゃァ俺ァテレビでも見てンぞ」

木原「メシ前にスナック食うんじゃねぇぞ」

一方「ン」




453 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:05:14.95 ID:US9DRmI0
木原「数多の料理道場ォォォォ」

木原「さーってハンバーグちゃん覚悟しちゃってねぇぇぇ」

木原「まぁずはタマネギを粉微塵切りだぜぇ」ドガガガガガガガガガガ

木原「次に刻んだタマネギをフライパンで炒める。
油でもバターでもマーガリンでも良いから狐色でやらかくなるまでなぁ」ロォォォォドォォォォォオ

木原「タマネギをのけて冷ましてる内に、挽肉をボウルに叩き込みッッ!」ドグシャァ!

木原「くたばるまで混ぜるッッ! カッコイーッ!!」メメメメメメメメタァ

木原「挽肉が更にグチャグチャのミンチにおなりお遊ばしたらッ!
パン粉、牛乳、卵、塩、胡椒、タマネギを
ぶち込みィィィィィみっくちゅじゅーちゅだハッハァーーーー!!」ドッギャァァ――――z____ン!!


木原「……よし焼くか」ジュージュー

木原「肉汁でソースを作って……」

木原「つけあわせのサラダを……」

木原「できたぞ一方通行ァー」




454 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:06:42.90 ID:US9DRmI0



一方「ァー、うまかったうまかった」

木原「ごっそうさん。食い終わったら持ってけ」

一方「わァってるって」ガチャガチャ

木原「明日の予定はなんかあんのか?」ガチャガチャ

一方「明日は特にねェなァ……、木原くンどっか行く予定あンのか?」

木原「実は俺もねぇんだよ。――――あ」

一方「あけっぱなしの口から木原くンどォぞ」

木原「いや、第三学区に安くてうまいっていうステーキハウスがあるらしくてよ。
そこにテメェを連れて行ってみっかとか思ってたが……」

一方「おォ、俺はハンバーグ連チャンでも一向にかまわン」

木原「クソガキが、俺の事も考えろ」

一方「あ、そォか……」シュン

木原「………………」

木原「とは言ったものの、別に俺も構わねえから昼飯に行くか、ステーキハウス」

一方「ンだよマジかよンだよ! ビビらせやがって!」バシバシ

木原「俺が聞いた話だと中々らしい。最も、俺が話の出元に担がれてなけりゃの話だがな」

一方「良いじゃン別に、まずけりゃ笑い話にならァな」

木原「それもそうか」




455 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:07:30.48 ID:US9DRmI0
木原「ああ、木山に会ったぞ。今日のオシゴトでな」

一方「あの人か。ンで、どォだった?」

木原「どうだったも何もねぇよ。ふっつーにオシゴトしてメシ食ってオシゴトしてしまいだ」

一方「……あの人も苦労しそうだねェ」ハァ

木原「んだその溜息は。五月病には遅ぇぞ」

一方「なンもねェよ。何か言ってたか?」

木原「あぁ、今度メシ食いに来いッつってたぞ。夏休みでガキ共が暇してんだと。テメェも是非だとさ」

一方「お、頑張ったじゃねェの木山さン。いつよ」

木原「あっちから連絡だっつってたから適当に待ってりゃ良いんじゃねえのか?」

一方「…………暫くは連絡こねェンだろォな」ハァ




456 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:09:10.32 ID:US9DRmI0
木山「……」カチカチカチ

木山「再来週の週末に、以前話した食事の誘いをさせて頂こうと思います……敬語は気持ちが悪いと前に言われたな」

木山「……」カチカチカチ

木山「今日少し話した食事の件だけど、再来週の週末辺りにでもどうかな?……軽すぎるか?」

木山「……」カチカチカチカチ

木山「この学園都市にてさえ風鈴の涼やかなる音の響く季節となりました。さて、先日に触りのみお伺いした件の話で
……あほか」

木山「……」

木山「…………」

木山「ぅぅぅうぅうぅううぅうぅぅぅ」ゴロンゴロン

少年「せんせー、俺腹減ったんだけど……」グゥー

少女「バカ! 今先生は行き遅れるかどうかの瀬戸際なんだから邪魔しちゃ駄目よ!」ボソボソ




457 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:11:03.69 ID:US9DRmI0
一方「いやそれにしても、木原くンと外食とか久しぶりだなァ……明日が楽しみだ」

木原「言われりゃそぉか。……ダチ連中はどうだ一方通行、仲良しこよしやれてっか?」

一方「あァそうそう聞いてくれよ木原くゥン、今日垣根くンがクリームソーダ頼んでたンだけどなァ」

木原「どっちかっつーと俺はバラバラに食いてぇ派だな、クリームソーダ。アイスとソーダで」

一方「垣根くン、炭酸を抜く!
とか妙なこだわりがあンだがストローでかき混ぜたらクリームと泡がなんかスゲェ事ンなってよwwwwwww」

木原「具体的に一声あげな」

一方「なんつーの? 科学の実験? ビールより大雑把な泡がボコボコいいながら下から湧き出て机がべしゃべしゃwwwww」

木原「愉快な様じゃねーか」ククッ

一方「それ見た麦野さンがまたなァ――――――」


木原(ンだよ、楽しそうじゃねェか、一方通行)

木原(まぁ、そのザマ眺めてる俺もそれなりに楽しいんだがな)

木原(やれやれだ……、友達か。――――俺のお役御免も近ぇかな)


一方「――――ンでダーツマスターが……、木原くン聞いてンのかよ?」

木原「おぉ、聞いてる聞いてる。ダーツマスターがどうしたって?」




458 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:13:22.78 ID:US9DRmI0


~~~


少年と、男性が並んで歩いていた。
灰色気味の髪の毛にやけに白い肌をした少年の横、金髪を撫で付け顔の半分に入れたタトゥーが目を引く体格の良い男性だ。
俯きがちに視線を泳がせる少年の向く先は男性の腕、三角巾で首から下げられたギプス。
少年の視線に気づいていた男性だったが、緘口して語らない。何かを待っている様子だった。


「あ、あのっ!」

「ァアン?」

「その、あの……その手……」

「んなもん診たカエル面した医者がヤブでよ、大げさなだけで大した事じゃねェ」


ええいままよ、とばかりに口を開いた少年だったが、鼻を鳴らして威嚇するようにこぼす男性を見て再びうつむいてしょげ返る。

困ったのは男性だ。
優しい声のかけ方も知らねば励まし慰め方も知らぬこの男、犬のおまわりさんの気持ちが少しわかった気がした。
困りきった挙句、男性は無事な左手を持ち上げると、おもむろに少年の頭を小突く。
激突の瞬間、男性の手が過剰に跳ね返る。

痛っ、と声をあげて頭を抑える少年。
世界を見渡せば万物を見通すプロビデンスの目ならずとも見とめることができるだろう、どこにでもありそうな普通の光景。
だがこの少年は普通では無い。
彼が持つ異能は未調整の現状ですら、己に向かう許容以上の運動質量の指向性を反転させる、といった稀有な代物だ。

つまりそれは『本来ならば』ありえないはずの現象。
しかしそのありえない現象を受けた少年は、痛みをこらえるような表情をしながら笑っている。何故かとても嬉しそうに。


「殴られて笑うとかドマゾですかぁ? おい、神経通ってんのかテメェ」

「ちが……ちげぇよ! 喜んでねぇよ!」

「じゃあそのにやけ面は何なんだ」

「いや……これは……」




459 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:14:56.73 ID:US9DRmI0
再びちらと男性の腕を見上げる少年だったが、決意を新たにしたような面持ちで口を開く。
それでも、瞳は落ち着き無く左右している。


「腕……、その、ごめん。俺のせいだ」

「ガキがいっぱしに気ぃ使いやがるたぁ驚きだぜ」


少年の言葉に片側の眉を上げて応じた男性は、呟く。屁でもねぇ。
それを受けて返されるのは尊敬に近い感情を含んだ視線だった。やりにくそうに男性がバリバリと頭を掻き毟った。



そのまま歩いている内、少年は再び男性の方を窺い始める。
先ほどと違って暗さの感じられない表情には照れが見え隠れし、男性の空いた左手をチラチラと見ている。


「な、なぁ木原くん」



暫しの沈黙。
言われ慣れていない名で呼ばれ、男性は少しだけぽかんとしたようだった。
程なくわれに返った男性は眉をハの字にしてため息をつき、更に呆れたように言った。




460 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:17:00.33 ID:US9DRmI0
「『木原くん』? さん付けだろ普通はよ。俺は年上で目上で且つ一方通行、テメェの保護者予定者だぜ」

「良いだろ木原くん! 友達には、『くん』付けるもんなんだろ!」


前言ってたじゃねぇか! と胸を張る少年に男性は口を開きかけ、今度は諦めたように口を閉じる。同時に肩が少し落ちた。

何を笑ってやがるガキ。今一度とばかりに言葉と共に放たれた一撃は、素早い動作で少年にかわされた。
得意げな笑みに向かって、大人気ないと知りつつ男性はみたび鉄槌を振り下ろす。
少年の悲鳴が響く。ざまあみろとばかりの男性の笑みがこぼれる。
少年が、左手に飛びついた。何しやがる! い、いいじゃン別に!
暫くその場でもつれていた二人だったが、やがてどちらともなく歩き出す。





夕日を浴びて伸びる二つの影。その距離は、遠くなくむしろ近い。

交わされる違う色の笑顔。ほんの少しだけ悪くなった少年の言葉遣い。そして繋がれて、離されない二つの手。

生まれた時から年上で目上、先刻には研究者と保護者となり、今彼らは友達になった。

そんな絆達。それが、これから始まる彼らの関係の全て。



~~~




461 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:18:56.37 ID:US9DRmI0




一方「おォい、早く行こうぜェ」ドンドン

木原「俺に起こして貰った分際でえらそーな口叩きやがる……、ちっと待ってな」

一方「いィや限界だ行くね! 腹減って死ぬぜェ!」

木原「やれやれ……、うし行くかぁ」

一方「おォ、ステーキ&ハンバーグの園へご招待ってかァ? ヒャッハー! 肉だァ!」

木原「騒ぐなうっせぇぞ。……ったく、うるささだけは変わりやがらねぇ」

一方「何にやけてンだよ、気色悪ィ」

木原「思い出し笑いだよ。じゃ行くぞ一方通行」

一方「いよっしゃァ待ちくたびれたぜ木原くゥン!」








                ┼ヽ  -|r‐、. レ |
                 d⌒) ./| _ノ  __ノ



462 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 02:22:11.41 ID:xiUskGQo
乙だぜ
木原くン、いい親父だな
顔面タトゥーだけど



463 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/07/25(日) 02:26:55.35 ID:US9DRmI0
と、言う話だったのさ。夜遅くに唐突ですまそすまそ。顔面タトゥーのパパはかっこいいよな
やっぱたまに恋的表現を書くと楽しいなww
自分で書いたキャラに萌えられれば一人前と聞いたことがあるがその域に達するように頑張るわ

心理掌握の話はもう少し待ってくれ、それではおやすけ!




464 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 02:27:03.37 ID:1RcrFzEo
乙なんだよ!
木原くンと一通さんの仲が良さ過ぎて生きるのがつらい



465 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 02:49:27.97 ID:sSEQ0WUo
乙!面白かったよ。心理掌握も楽しみにしてる
それに木原くんン×木山先生とか…目覚めただろうどうしてくれる



466 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 04:23:28.61 ID:yFMWCoYo
まさかの木山先生→木原くンwww

そしてこの親子二人はホント良い味だしてんなー




467 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 04:25:48.46 ID:rWjC74c0
乙!面白かった。



468 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/25(日) 05:18:30.85 ID:DdHIoBMo
回想の一方さんは、色素抜け途中なんだな
なんだか新鮮だ

この親子大好きだ。乙!



470 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/27(火) 01:25:54.72 ID:2zdnv0U0
これ見てると、木原くんが旅掛+刀夜÷2の良い親父にしか見えない



471 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/27(火) 01:48:16.55 ID:hSmSUTc0
木原くんが良い親父なのは、
一方通行と暮らし始めて暫くしてから『こいつの保護者としてきっちりやってやろう』って思ったからだよ
普通に夫婦の内で父親やってるより、父親になろうとしてやってるからちょっと良い意味でやりすぎたりする傾向がある感じ
まあ木原くんはそういうの向いてないし
ノウハウも無いわ体晶投与無しのテレスさんに散々吹き込まれるわ色々あって今の関係を構築。
一方通行の中の木原語録に奇天烈なのがたまにあるのはそのせい
はじめのうちは木山先生と子育ての意見を交換し合ったりとかもあった、という設定だけ存在する

いやレスしてる暇あれば書き進めろってなwwwwwwww
がんばってるんだぜwwwwwwwwACNXやってたけどwwwwww
今月中、今月中までには最低一度は投下するつもりです。
あと本編以外のサブエピソードかなんかでなんかあればなんか言ってくれ。気抜く時にでも書ければ書いてみるんで




472 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/27(火) 01:53:19.59 ID:eP4uvkUo
心理定規に一通さんやむぎのんとの心の距離を測られて
からかわれるていとくん希望



473 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/27(火) 04:46:33.91 ID:UWlm4ego
木原くんとテレスの会話とか見てみたいな



474 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/27(火) 06:30:23.72 ID:pbnwdNw0
一方さん家に遊びに来た麦のんとていとくんに木原くん遭遇



477 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/28(水) 09:58:59.40 ID:y56xovco
木原×木山……イイな。
もっとみてぇ!






次→垣根「友達が欲しいんだが」その3






関連記事

禁書目録SS   コメント:6   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
547. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/10/18(月) 03:46 ▼このコメントに返信する
一方さんマジ一方
27662. 名前 : 二浪◆- 投稿日 : 2012/10/14(日) 18:59 ▼このコメントに返信する
木山せんせー結婚してくれー
29889. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/12/17(月) 15:37 ▼このコメントに返信する
そうか心理掌握がまだちゃんと出てきてない頃か
30208. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/12/27(木) 21:46 ▼このコメントに返信する
               ハ        _
    ___         ∥ヾ     ハ
  /     ヽ      ∥::::|l    ∥:||.
 / 聞 え  |     ||:::::::||    ||:::||
 |  こ ?  |     |{:::::∥.  . .||:::||
 |  え      |     _」ゝ/'--―- 、|{::ノ!
  |  な 何   |  /   __      `'〈
 |  い ?   ! /´   /´ ●    __  ヽ
 ヽ      / /     ゝ....ノ   /´●   i
  ` ー―< {           ゝ- ′ |
        厶-―    r  l>        |
      ∠ヽ ゝ-―     `r-ト、_,)      |
      レ^ヾ ヽ>' ̄     LL/  、   /
      .l   ヾ:ヽ ` 、_      \\ '
     l    ヾ:ヽ   ト`ー-r-;;y‐T^
      |    ヾ `ニニ「〈〉フ /∥. j

でふいたww
38829. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2013/10/08(火) 00:19 ▼このコメントに返信する
超能力者三人で能力の考察してるとことかなかなか興味深い
ホントに友人同士の会話みたいだし
41185. 名前 : 名無し◆- 投稿日 : 2014/01/28(火) 12:35 ▼このコメントに返信する
キャベツw
コメントの投稿