麦野「私が暗部に落ちる前に」

2011-03-10 (木) 18:12  禁書目録SS   1コメント  
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バッカーノ! Blu-ray Disc BOX

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:19:08.10 ID:PVxwcD5S0
麦野「はーーーーーーーーーまづらぁ、またあんたはつまらないミスして……死にたいわけかにゃーん?」

浜面「す……すまねぇ、麦野。き、気をつける」

麦野「’気をつける’だぁ?! 気をつけるで済んだら警備員はいらねぇんだよ! 今日こそてめえのその情けない×××を ×××してやろうかコラァ!!」

バァン

浜面「ひ、ひぃ?! 麦野っ、ゆるしてくれーっ。命、命だけはっ」

麦野「ア”アァ?! だったらさっさと下部組織に召集かけてシコシコ後片付けでもやっとけや!!!!!」



3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:21:30.15 ID:PVxwcD5S0
フレンダ「き、今日の麦野……、いつにも増して怖い訳よ……」

滝壺「むぎの、こわい」

絹旗「さっきのは敵が超最期の足掻きで暴れただけで浜面のミスって訳でも無い気が……」

麦野「ほら、アンタらも無駄口たたいてないで、後片付けは下っ端に任せてさっさと退散するわよ」

絹旗「浜面は待たないんですか?」

麦野「なんで正規メンバーのアタシらが下っ端ごときを待ってなきゃいけないのよ」

絹旗「いや、だってほら。車が」

麦野「車だったら他の適当なヤツにでも運転させればいいじゃない。ほら、帰るわよ」

フレンダ「う、うん。まってむぎの」

麦野「はやくしなさい」

スタスタ



4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:22:32.52 ID:PVxwcD5S0
バタン

ブロロロロロロロロロロロロロロ……

麦野「揃ったわね」

滝壺「うん」

麦野「出して頂戴」

「へい」

フレンダ「……」

絹旗「……」

滝壺「……」

麦野「……」

滝壺「……」

フレンダ「……」

絹旗「……」

麦野「……」

絹旗「む、ぎの?」

麦野「なに?」

絹旗「いや、なんでも……」

麦野「そう」



5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:23:45.30 ID:PVxwcD5S0
フレンダ「(たきつぼ、たきつぼ)」

滝壺「(なに?)」

フレンダ「(なんかさぁ……ココ最近ずっと麦野の機嫌わるくない?)」

滝壺「(そうだね)」

フレンダ「(さっきからこの重たい空気、耐えられないのよ)」

滝壺「(べつに、私はへいきだけど)」

フレンダ「あたしが平気じゃないわけよっ」

麦野「どうしたの?」

フレンダ「ひゃっ?! い、いやべつになにも」

麦野「そう」

フレンダ「(ひゃ~……、何かあったなコレは絶対……)」



7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:27:47.64 ID:PVxwcD5S0
シーン……

麦野「……」

滝壺「……」ボー

フレンダ「……」そわそわ

絹旗「……」

シーン……

フレンダ「あ、あのさ」

麦野「うん?」

フレンダ「結局、さっきの浜面、最高にバカだったよね、あははー」

麦野「そうね」プイ

フレンダ「(はい原因特定っ……、はーまづらぁあああああっっ、アンタか、アンタのせいか!)」



8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:29:19.54 ID:PVxwcD5S0
ブロロロロロロロロロロロ……

麦野「止めて頂戴、あたしはここで良いから」

「はい」

麦野「それじゃあアンタ達も、いつまでも遊んでないでさっさと帰って寝なさいよ」

絹旗「超わかりました」

滝壺「うん」

フレンダ「了解」

麦野「それじゃあまた明日」

バタン

フレンダ「……」

絹旗「……っだぁ~、なんか超疲れました」

フレンダ「結局、仕事よりしんどかった訳よ……」



9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:30:25.72 ID:PVxwcD5S0
滝壺「二人ともへーき?」

絹旗「滝壺さんは超平気なんですか?」

滝壺「うん」

フレンダ「この子のマイペースさには感服ねー……」

絹旗「どうしたんでしょうね、超何かあったんですか麦野は」

フレンダ「何か知ってる?」

滝壺「ううん、何も」

絹旗「私も超知りませんよ、フレンダは?」

フレンダ「しらな~い」

絹旗「う~ん……」



10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:31:33.99 ID:PVxwcD5S0
フレンダ「麦野さーここ最近、ずっとこんな調子じゃない?」

絹旗「そうなんですか?」

フレンダ「あ、そっか。絹旗ってずっと個人任務行ってたんだっけ」

絹旗「1週間ほど超出てましたけど、ずっとこんな感じだったんですか……、超ご愁傷様です」

フレンダ「ほんとにもー、麦野がこんな時に限って浜面が火に油注ぐようなマネ繰り返すからずっとヒヤヒヤだった訳よ」

絹旗「浜面、超空気読めませんもんね」

フレンダ「っだー、疲れたから温泉でも行って帰ろうかな。二人とも行く?」

絹旗「滝壺さん、どうします?」

滝壺「二人が行くなら」

絹旗「ん~、それじゃあ行きましょうか」

フレンダ「行くいく~、レッツゴー。運転手さ~ん、隣の学区の温泉までお願いね~」

「わかりました」

ブロロロロロロロロロロ……



11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:33:23.20 ID:PVxwcD5S0
◇ ◇  ◇ ◇


「浜面さん、ココの片付け、あらかた終わりました」

浜面「わかった、いつもご苦労さんな。それじゃあ俺らもとっととずらかるか」

「あと……コレ、落ちてたんですけど。どうすればいいですか?」

キラッ

浜面「なんだこりゃ?」

「さぁ? 見た目がなんか綺麗だったんで拾ったんですけど、何かの部品みたいですね?」

浜面「まぁいい、俺が預かっとく」

「へい」

浜面「報酬はいつもの口座に振り込まれてるはずだから、確認しといてくれ」

「わかりました」

浜面「それじゃ俺も帰るか」



13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:35:37.49 ID:PVxwcD5S0
浜面「帰るか……って」

キョロキョロ

浜面「あれ」

キョロキョロ

浜面「……」

キョロキョロ

浜面「く……」

浜面「車が無えぇーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」

♪ トアルニチジョーハパラレルワールド♪

浜面「えぇぇぇ……ん? なんだ、メールか?」

From 絹旗
件名 三人で超温泉です
今日は超災難でしたねー
今フレンダと私と滝壺さんで温泉です
浜面はキッチンで水浴びでも
しといてください☆ミ
あ、後、浜面の車で皆超帰りましたから


浜面「犯人お前等かよ……思いっきり温泉自慢されてるし……」

浜面「温泉……いいなぁ、あいつら」

ヒュウウウウウウウ

浜面「うぅ……さむっ、はぁ…… 歩いて帰るか……」



15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:40:47.08 ID:PVxwcD5S0
浜面「こんな時、火の能力者だったらストーブ代わりに火を出して暖かくするんだろうなー?」

浜面「流行のエコだろそれ、エコロジーいっつイージーってか」

ヒュウウウウウ……

浜面「うぅっ……さみさみ、早く帰ろ」


黄泉川「おー? 誰かと思えば浜面じゃん」


浜面「げ」

黄泉川「ちょっと待つじゃん」

浜面「なんだよ! 俺はまだ何もしてねぇぞ!」

黄泉川「まだって事は何かするつもりじゃん?」

浜面「いや……ご心配なく、帰るとこだよ」

黄泉川「ふーん? 急に真面目になったじゃん? 感心感心」

浜面「真面目というか……はぁ」

黄泉川「どうした、元気ないじゃん?」

浜面「おめーにゃ関係ねぇよ」

黄泉川「ちょっと待つじゃん」

浜面「な、なんだよ」



16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:42:24.53 ID:PVxwcD5S0
キラッ

黄泉川「これ、落し物。ちゃんとポケットに入れとくじゃん」

浜面「お、おう。ありがとよ」

黄泉川「随分高そうなモノ持ってんじゃん」

浜面「うるせーな、関係ないだろ」

黄泉川「関係ない?」

ガシッ

浜面「いてっ」

黄泉川「浜面……まーた何か悪さしたら、すぐ捕まえるから覚悟するじゃん?」

浜面「してねーよ、いてーな。離せよっ!」

黄泉川「ちゃんと家に着くまで監視するじゃん」

浜面「はぁ?! なんでだよ!」

黄泉川「完全下校時刻はとっくの昔に過ぎてるじゃん」



17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:43:25.48 ID:PVxwcD5S0
テクテク

浜面「……」

テクテク

黄泉川「……」

テクテク

黄泉川「浜面、スキルアウトを抜けたらしいじゃん」

浜面「何でそんな事知ってるんだよ」

黄泉川「風の噂じゃん」

浜面「そーかよ」

黄泉川「なのに相変わらず学校には通ってないらしいじゃん」

浜面「何でそんな事知ってるんだよ」

黄泉川「浜面の学校の先生と知り合いじゃん」

浜面「……そーかい」



18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:45:16.01 ID:PVxwcD5S0
黄泉川「今からでも遅くない、ちゃんと学校に通って勉強するじゃん」

浜面「大人はすぐそれだな口あけたら、勉強・勉強ってさ」

黄泉川「聞いてるじゃんよ浜面、昔は真面目な生徒だったって、だから──」

浜面「昔の事は言うな!!!!」

黄泉川「っ」

浜面「俺らの事、何もしらねぇくせに大人面するんじゃねえよ!!」

黄泉川「…………………………」

浜面「……なんだよ」

黄泉川「……随分な口を利いてくれるじゃん、こっちは心配して言ってるのに」

浜面「うるせぇ!」

黄泉川「このチンピラが……痛い目みないとわかんないじゃん?」

浜面「いいぜ黄泉川……かかってこいよ」



19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:47:04.84 ID:PVxwcD5S0
黄泉川「今日こそその腐った根性、叩きなおしてやるじゃん!」

浜面「いくぜ黄泉川アァァァ!!!」

黄泉川「来るじゃん!」


浜面「必殺ッ・煙玉!」

ボワン


黄泉川「っ! 煙幕か!」

浜面「だっはっは! なーんてな! お前に腕力で勝てるわけねえだろ! 逃げるが勝ちなんだよ!」

黄泉川「待つじゃん! 浜面!」

浜面「誰が待つか!」

黄泉川「お前は! まだやりなおせる! だから!」

浜面「うるせえ! ばーか! おとといきやがれ」

タッタッタ……



21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:49:30.46 ID:PVxwcD5S0
──、走る。


──、走る。


──、走る、走る。


──、どこに。


──、…… どこに。



22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:50:36.91 ID:PVxwcD5S0
────────

────

──

浜面「……はぁっ、はぁ……逃げ切ったか……?」

浜面「ったくよー……仕事上がりでこっちも疲れてんだよ……」

浜面「勘弁してくれよなホント」

浜面「……だいたいよ」

浜面「もう堕ちるとこまで堕ちきった俺が、今更戻れるワケねぇだろうが……」



23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:51:35.11 ID:PVxwcD5S0
──戻るって、どこに


浜面「あぁ? だからがっこ──」


──戻るって、どこによ?


浜面「……?」


──どこに戻るの?


浜面「さっきから……なんだ……? どっから声が……?」



24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:52:15.61 ID:PVxwcD5S0
浜面「おい! そこに誰か居るのか!」

「……」

浜面「……(スキルアウトか? こんな狭いビルの間の空き地で集団だったらめんどくせえぞ)」ゴクリ

「……」

浜面「出てこいよ! 居るんだろ!」

ジリッ……

ジリッ……

「……」

……ゴクリ

浜面「……、来るっ!」



25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:56:34.39 ID:PVxwcD5S0
麦野「大きな声出さなくても聞こえてるわよ、はーーまづらぁ」


浜面「っ、麦野っ?! なんでこんなトコに」

麦野「なに、私がこんなとこに居ちゃ悪いわけ? なんでいちいち浜面の許可もらわなきゃいけないのよ」

浜面「いや……何も悪いなんて言ってねぇけどよ」

麦野「ふぅ~ん? それで、浜面はこ~んな寂れた場所に何の用かにゃ~ん?」

浜面「……知り合いの警備員から逃げてきた」

麦野「警備員?」

浜面「なんていうか……、まぁ、ゴリラみたいなやつ?」

麦野「なによそれ、人間?」

浜面「いやはは、本当、なんなんだろうな」

麦野「ま、逃げてきたってのが浜面らしいわね。あんたがマトモに戦ってる姿なんか想像できないし」

浜面「うおい! 俺だって男らしく戦っただろうが今日!」

麦野「あれで?」

浜面「あれで……です」



26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 21:59:33.26 ID:PVxwcD5S0
麦野「あんたは別に大人しくしてれば良いのよ、戦闘員で雇ってるわけじゃないんだから」

浜面「はぁ……でもよ」

麦野「うん?」

浜面「本当にお前等が危ないとおもったから突っ込んでいったんだよ」

麦野「あー、はいはい。それで死んでりゃ世話ないわよ」

浜面「……御尤もです、はい」

麦野「次は知らないからね、最低限自分の身くらいは自分で守りなさいよ」

浜面「了解……です」



27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:04:40.59 ID:PVxwcD5S0
麦野「で? その死にかけた浜面は、こんなとこになんの用事よ?」

浜面「いや、用事というか……適当に逃げ回ってたらココに来たんだけどよ、お前こそこんな所でなにやってんだ?」

麦野「私がこんな所にいたらヘン?」

浜面「いや、ヘンというか。スキルアウトかと思ってビビったぞ」

麦野「スキルアウト如きでビビってんじゃないわよ」

浜面「いや、お前はそうかもしれないけどさ」

麦野「はいはい」

浜面「それより俺は麦野がこんなとこに居たのがびっくりでよ、何かしてたのか?」

麦野「ふーん? じゃあ浜面はどこだったら私に似合うと思うの?」

浜面「どこって……お屋敷とかじゃねえの?」

麦野「お屋敷?」

浜面「そ、お屋敷。しかも金持ちのお屋敷で執事とかつけちゃうお嬢様ってとこじゃね? わかんねーけどさ」

麦野「……ぷ」

浜面「あん?」

麦野「あはははははははははははははは! 私が? お嬢様? ……ククク……あははははは、笑える、サイッコーに笑えるわ、それ」

浜面「そーかよ」



28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:05:51.60 ID:PVxwcD5S0
麦野「はーまづらぁ。浜面はそんな妄想を繰り広げて毎晩×××を上下させてるわけ? あー、幻滅だわ」

浜面「なんでそうなるんだよ!」

麦野「ま、育ちが良いのは否定しないけどね」

浜面「否定せんのかい」

麦野「……あんまり覚えてないのよねー昔の事って。能力開発していた事くらいしか覚えてないかも」

浜面「あぁ、そりゃ学園都市に七人しか居ないレベル五の第四位だからな。やっぱり小さい頃から実験漬けだったんだろうな」

麦野「なーに? 浜面のくせに知った風な口利いてくれるじゃない」

浜面「ひっ?! べ、別にイヤミとかじゃねえぞ」

麦野「当たり前でしょ。浜面は無能力者、私は超能力者なんだから」

浜面「はぁ……そうだな」



29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:12:39.75 ID:PVxwcD5S0
麦野「浜面は覚えてる? 昔の事」

浜面「昔?」

麦野「そ、むかし」

浜面「べつに、普通の子供だったよ。普通に学校いって、普通に友達つくって、普通に……普通にスキルアウトに入ってたな」

麦野「なにそれ、つまんなーい」

浜面「ひでぇ」

麦野「なんかないの? 見知らぬ女の子をその身一つで救ったとか、銀行強盗を捕まえたとか、国際指名テロリストをぶん殴ったとかさ」

浜面「んなコトできてたらスキルアウトに流れてねぇよ!!」

麦野「そうよねー」

浜面「ったくよー俺に何期待してんだよ」

麦野「それじゃあ、学園都市に来る前の事は?」



30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:14:10.07 ID:PVxwcD5S0
浜面「別に、普通だろ」

麦野「もっと具体的に」

浜面「はぁ?」

麦野「いいから、教えなさいよ。この第四位の麦野沈利様が興味を持って聞いているのよ。光栄に思いなさい」

浜面「まぁいいけどよ……」

麦野「うん」

浜面「学園都市に来る前は、……そうだな、こう見えて結構真面目な子供だったな」

麦野「この見るからに頭悪そうなチンピラ風情が?」

浜面「おおい! 過去の俺に謝れ!」

麦野「ふん、いいから続けなさいよ」

浜面「無茶苦茶だなオイ……」



31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:14:37.68 ID:PVxwcD5S0
浜面「小学校じゃ学級委員とかやってたし、放課後行ってた野球チームじゃエースで四番のキャプテンだったよ」

麦野「全然そんな風には見えないわよね、今」

浜面「うるせー」

麦野「で、何でここに来たわけ?」

浜面「そりゃあ子供が学園都市に来る理由なんか一つだろ」

麦野「一つ?」

浜面「超能力に憧れてたんだよ、こう、能力をばーーーーーーっと使って、ごわーーーーーーーっと相手をやっつけて、正義のヒーローになるんだーーーーってな」

麦野「浜面が? 正義のヒーロー?」

浜面「そーだよ、悪いか」

麦野「いや、いいんじゃない? 私には良さがわかんないけど」

浜面「お前さ、テレビとかアニメとか見てなかったワケ?」

麦野「見てないわよ。それに戦隊モノなんてどれも同じじゃない、飽きるわよ」

浜面「わかってねぇ! お前は戦隊ヒーローの良さがわかってねぇなぁ、麦野」



32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:15:35.85 ID:PVxwcD5S0
浜面「いいかぁ! まずはなぁ!」

浜面「────────で、────────な、──────だろ!」

浜面「────が出てきたら3分で──────で!」

浜面「──────────敵も──────そこはお約束で────────」

浜面「────がピンチになったら────────でよ!」

浜面「────────だろ!」

浜面「──────なんだよ!」

浜面「わかったか!」


麦野「──ふにゃ? もう、終わった?」


浜面「寝てたとか……ひどい……」



33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:31:29.09 ID:PVxwcD5S0
浜面「まぁいい、とにかくそんな風だ」

麦野「ふーん」

浜面「?」

麦野「浜面もやっぱ、そういうのに憧れてたんだ」

浜面「まぁ……大抵のヤツはそうじゃないの?」

麦野「わっかんないなー、そういう憧れるっていう感情は」

浜面「そりゃ最初から上に居たからだろ。勝手に憧れて、勝手に堕ちてった、そんだけだよ」

麦野「憧れ、ねぇ」

浜面「憧れるのは自由だろ?」



35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:32:13.96 ID:PVxwcD5S0
麦野「という事は、浜面はこんな学園都市の最底辺まで堕ちてきといて勝手な妄想を抱きながら毎晩オナニーしてるのかにゃーん?」

浜面「いつもそうやって茶化すのな、オマエさ」

麦野「は?」

浜面「別に」

麦野「……浜面の癖に」

浜面「悪かったよ、気に障ったなら謝る」

麦野「謝罪なんかいらないわよ」

浜面「そうかよ」

麦野「そ、……その代わりもっと話しなさいよ」



36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:32:43.21 ID:PVxwcD5S0
浜面「何を」

麦野「浜面の小さい頃の話」

浜面「はぁ? なんで」

麦野「いいから!」

浜面「……ん~?」

麦野「例えばホラ! 学園都市に来た時の話とか!」

浜面「ここに来た時? ん~?」

麦野「そう、来たとき」

浜面「……来たとき……来たとき……?」

麦野「うん」

浜面「あー……、そういえばここに初めて来た時──」



37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:34:24.61 ID:PVxwcD5S0
◇ ◇  ◇ ◇


カポーン……


絹旗「超極楽です」

滝壺「良い湯だね」

フレンダ「極楽極楽……」

絹旗「日々の疲れが超癒されていく気がします」

フレンダ「む~」

ジー

滝壺「ふれんだ、なに?」

フレンダ「麦野もカナリ大きいけど、滝壺も結構大きいね」

モミモミ

滝壺「ひゃっ」

フレンダ「待て、たきつぼっ」

滝壺「やだ」

フレンダ「ま~て~」

絹旗「やれやれ……二人とも超子供なんですから……」



39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:40:49.76 ID:PVxwcD5S0
モミモミ

滝壺「ふえぇ……」

フレンダ「きひひっ」

絹旗「あーもー、二人とも、そこらへんにしといてくださいね」

フレンダ「わかってるって」

滝壺「……もー」

フレンダ「めんごめんご、後で牛乳奢ってあげるから許してね」

滝壺「……」

フレンダ「?」

滝壺「二本、ね」どーん

絹旗「勝利のブイサインっ?!」



40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:42:21.94 ID:PVxwcD5S0

滝壺「……ごくごく」

絹旗「それにしても、今日の依頼は超ヘンでしたね」

フレンダ「そう? 適当に暴れただけで終わっちゃったから歯ごたえがなかったと思うけど」

絹旗「いつも爆弾で超ドカーンで終わらせてますもんね」

フレンダ「ふふ新種も開発中よ」

滝壺「……ごくごく」

絹旗「研究所を襲うのは超わかるんですけれど、暴れるだけで目的物の回収とかは依頼内容に含まれてなかったじゃないですか?」

フレンダ「ん、そういえばそうね」



41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:42:54.90 ID:PVxwcD5S0
絹旗「それに、最期浜面と超殴り合いになってたあの研究員、やたらと好戦的というか、何かを守ろうと必死でしたし」

フレンダ「そりゃ、自分が殺されそうになるってなったら必死にもなるでしょ?」

絹旗「んー、そうでしょうか」

フレンダ「ま。あそこでどんな研究があったとか、何に応用されるとか私達には関係ないって」

滝壺「……ぷはー」

絹旗「そうですね」

フレンダ「さ、絹旗も飲む飲む。こうやって腰に手をあてて……」

滝壺「もう一本」

フレンダ「プハー! 結局、風呂上りの一杯は格別な訳よ!」



42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:44:26.61 ID:PVxwcD5S0
絹旗「私も牛乳、超おかわりです」

フレンダ「あ、待ってよ絹旗」


────────

────

──


黄泉川「ちょっと待つじゃん! ……切れた」


鉄装「どうしたんですか?」

黄泉川「匿名のタレコミじゃん」

鉄装「匿名で?」

黄泉川「子供に大切なものを奪われた、取り返して欲しいって」

鉄装「大切な物って……?」

黄泉川「さあ? それを聞こうとしたら切れたじゃん」

鉄装「イタズラ電話ですかー?」

黄泉川「だと良いじゃん」



43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 22:45:12.44 ID:PVxwcD5S0
鉄装「んーそうですね、最近。私達の出動回数も減ってますもんね」

黄泉川「なんだ鉄装、出動がないからって怠けるつもりじゃん?」

鉄装「そ、そんな訳じゃないですよ!」

黄泉川「ほー……?」

鉄装「バリバリ頑張りますよ!」

黄泉川「頼もしい頼もしい」

鉄装「はい!」

黄泉川「それじゃあ、今日も一杯やるじゃん!」

鉄装「えぇぇ……今日も、ですか」

黄泉川「ホラホラ、今日はもう終わりの時間じゃん! 行くじゃん行くじゃん!」

鉄装「ふえぇ~い」



45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:02:12.92 ID:PVxwcD5S0
鉄装「そういえば、あの彼どうなりました?」

黄泉川「ん? あの彼?」

鉄装「はま……なんとか、くん。でしたっけ?」

黄泉川「浜面じゃん?」

鉄装「ああ、そうその子」

黄泉川「浜面がどうかしたじゃん?」

鉄装「いや、黄泉川先生の机の上に資料が置いてあったから……」

黄泉川「鉄装~……盗み見とは良い度胸じゃん?」

鉄装「そ、そんなぁ。別に盗み見たわけでは……、その、ちょっと好奇心で」

黄泉川「まぁいいじゃん、浜面は元々どこだかのスキルアウトでチンピラで過去14回留置場にぶち込んだじゃん」

鉄装「じゅ、14回って……」

黄泉川「絵に描いた様なチンピラで、困ったもんだったんだ……けど」

鉄装「けど?」

黄泉川「その浜面がどうやらスキルアウトを抜けたみたいじゃん」



46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:03:11.01 ID:PVxwcD5S0
鉄装「え? じゃあ更正したんですか?」

黄泉川「わからん」

鉄装「わからん……って」

黄泉川「今日見てきたが相変わらず学校にも通わずフラフラしてるみたいじゃん」

鉄装「そうなんですか……」

黄泉川「……鉄装、どう思う?」

鉄装「どう、って?」

黄泉川「スキルアウトはそんな簡単に一言『辞めます』って辞められる様な組織じゃないじゃんよ」

鉄装「はぁ……それが?」

黄泉川「あそこのリーダー、駒場の姿もある日を境にぱったり見なくなった。一体何が起こってるじゃん?」

鉄装「仲間割れ、とか?」



47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:03:58.64 ID:PVxwcD5S0
黄泉川「だったらまだいいんだけど……最近、街がやけに静かじゃんよ。何かが起こる前兆じゃなければ良いけど」

鉄装「もー、心配しすぎですよ、黄泉川先生」


────────

────

──


浜面「そんで、心配して探しに行ったら半蔵の野郎が郭とイチャイチャしててよ、さすがに頭に来たな」

麦野「……わかった」

浜面「あん?」

麦野「あんたのとこのスキルアウト? だっけ」

浜面「おう」

麦野「あんた含めて、バカばっかりだったって訳ね」

浜面「おーい!」



48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:04:49.44 ID:PVxwcD5S0
浜面「まぁ……否定はできねぇけどよ」

麦野「ほらね」

浜面「それでも」

麦野「うん?」

浜面「俺らには俺らで、目的があったんだよ。組織としても、そしてたぶん、個人としても」

麦野「ふーん、目的ね」

浜面「おう」

麦野「ATM強奪したり、無駄に武装したりする事?」

浜面「いや、それはあくまで手段であってだな……少なくとも暗部組織とは違うぞ」

麦野「何が違うのよ、殺し……盗み……監視、観測、ハッキング、ピッキング、追跡……やってる事は一緒じゃない」

浜面「まぁ……そう考えるならそれでもいいけどよ……、それにもう俺はあそこを出た人間だからな」

麦野「哀愁漂わせちゃって、似合わないわよ」

浜面「うるせー」



49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:06:37.82 ID:PVxwcD5S0
麦野「はー、なんか浜面の話聞いてたら私の悩み事なんか消えちゃいそう」

浜面「悩みだ? お前に悩みなんかあんのかよ」

麦野「失礼ね」

浜面「う、わりぃ」

麦野「だいたい誰のせいだと思って…………………………」

浜面「あん?」

麦野「……なんでもない」

浜面「そーかよ」

麦野「バカだから許してあげる、バカだから」

浜面「二回繰り返さんでもええわい!」

麦野「あははっ」

浜面「あー……なんかいつもこんな感じだな、俺。損な役回りというか……」



51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:08:02.86 ID:PVxwcD5S0
浜面「……」

麦野「……」

浜面「……あー」

麦野「……」

浜面「……」

麦野「……」

浜面「……」

麦野「……なんか喋りなさいよ、はーまづらぁ」

浜面「お、おう」

麦野「……」

浜面「あ、あのさ」

麦野「うん?」

浜面「……えーっと……(やべ、なんか何喋っていいかわかんねぇ)」



52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:09:03.44 ID:PVxwcD5S0
浜面「……」

麦野「……」

浜面「え……っと」

麦野「はーまづらぁ?」

浜面「……(つーかよぉ、よくみると麦野って結構美人?)」

麦野「?」

浜面「……(いや、結構っていうか、かなりというか……少なくとも俺の知ってる奴等と比べたら……)」

麦野「どーしたのよ、固まっちゃって」

浜面「……い、いや。別に」

麦野「?」

浜面「……(く……、顔! 顔! ちかいっての!)」

浜面「いや、ははは。そ、そうだ。上見てみるよ上」

麦野「上?」



53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:09:56.42 ID:PVxwcD5S0
浜面「……(よ、よっしゃ、ナイス俺! とりあえず顔を離す事に成功したぜ!)」

麦野「はーまづらぁ? 上になんかあるの?」

浜面「……(し、しまった! 顔を離す事だけしか考えてなくてこの後の展開なんて何も考えてなかった!)」

麦野「はー……、それにしても、夜なのに星一つ無いわね」

浜面「そ、そうだな」

麦野「声裏返ってるわよ?」

浜面「そ、そうか? コホン、あーあー、うん。ゴホゴホ」

麦野「ヘンな浜面?」

浜面「(っだあああああああああああ!!! 近い! だから近いって! 顔! あたる! 顔が! 息が!)」

麦野「何よ鼻息荒くして、どうせエロい事でも考えてたんでしょ?」

浜面「な、ななななななんでだよ! はっ、アホな事いうなよ!」

麦野「だーれがアホだって……?」

浜面「いや! これは顔が! 顔じゃない! その、息じゃなくて! 近いのは! えっと!」

麦野「はーーーーーーーーまづらぁ……」

浜面「そ、そうだ! 麦野!」



54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:11:02.30 ID:PVxwcD5S0
麦野「なーにかにゃーん?」

浜面「月だ!」

麦野「月がどうしたって?」

浜面「月が綺麗だな、なーんつって、ははは」


麦野「………………………………………………………………」


浜面「ほら、月が……」

麦野「どこ? 月なんか出てないじゃないのさ」

浜面「うぐっ?! なんだって!」

麦野「ほら、見てみなさいよ、どこに月があるって?」

浜面「……なん……だと」

麦野「あはは、バーカ面、浜面のバーカ」

浜面「う……ぐ(しかしなんか知らんが機嫌よくなったみたいで良かった……)」



55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:12:09.05 ID:PVxwcD5S0
麦野「……ぷ」

浜面「?」

麦野「……あはは、あんた、さっきからなんて顔してんのよ」

浜面「は?」

麦野「くく……あはは、笑いすぎてお腹痛い……」

浜面「なんだよ……そんな笑う事かよ」

麦野「うん」

浜面「ああもう死んでもいいよ、畜生……」


麦野「………………………………………………………………」


浜面「え? 何この間」

麦野「はーーーーーまづらぁ」

浜面「え?」

麦野「私以外の女の前でこの台詞禁止な」

浜面「え? なんで?」

麦野「なんでって……なんでも」

浜面「なんか知らんが、わかったよ」



57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:13:02.40 ID:PVxwcD5S0
浜面「あ、そうだ。麦野」

麦野「ん? 何?」

浜面「いや。大した事じゃないかもしれないんだが」

麦野「今気分良いから特別に聞いてあげてもいいけど」

浜面「そうか、なら言うが。フレンダや絹旗、怖がってたぞ。お前が不機嫌だーってな」

麦野「あらそう? それならもう治ったから大丈夫よ」

浜面「は?」

麦野「だーかーら、もう大・丈・夫・だ・っつってんの!」

浜面「お、おう。さんきゅな、伝えとくよ」

麦野「フン、用が済んだら帰るわよ」

浜面「あ、おい。待てよ」

麦野「ついてくんな!」

浜面「待てよ! 麦野!」


──、……ありがとう



58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:16:33.83 ID:PVxwcD5S0
◇ ◇  ◇ ◇

スタスタ

スタスタ

浜面「お、絹旗じゃん」

絹旗「……超おはようございます」

浜面「どしたん? なんか暗いぞ?」

絹旗「朝一番で超バカの浜面の顔みたからじゃないですか?」

浜面「ひどい! ……ひどすぎるっ!」



59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:18:50.81 ID:PVxwcD5S0
浜面「ってかお前等温泉行ってたらしいな」

絹旗「そうですよー、超楽しかったです、浜面も来ればよかったのに」

浜面「誘う気なかったくせによく言うぜー」

絹旗「当たり前じゃないですか、温泉ですよ? 浜面だったら絶対覗くに決まってるじゃないですか」

浜面「しねえよ! んなこと!」

絹旗「そうでしょうか……」

浜面「絹旗さーん? その可哀想なものを見る目やめてもらいますー?」



60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:21:44.17 ID:PVxwcD5S0
絹旗「それにしても」

浜面「ナンだよ」

絹旗「昨日の麦野、超こわかったですね」

浜面「あいつはいつもあんな感じだろ?」

絹旗「いやー、いつもの3割増くらいでブチ切れてましたよ」

浜面「……そうかも」

絹旗「何が原因なんでしょうね」

浜面「さあなー、あの日じゃね?」

絹旗「最悪、超死ね、女の敵」

浜面「ひでぇ……」



61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:23:52.95 ID:PVxwcD5S0
絹旗「で、何があったか知りませんか?」

浜面「ああ、その件だけどよ」

絹旗「?」

浜面「昨日お前等が帰ったあと、麦野と会ったんだよ」

絹旗「超殺されませんでしたか?」

浜面「だったら今ココにいねえよ!」

絹旗「それで?」

浜面「昨日あいつ自分で言ってたけどさ、なんかもう機嫌治ったらしいぞ」

絹旗「超怪しいですね……」

浜面「あん? 何がだよ」

絹旗「麦野は私が仕事で居なかった一週間前から機嫌が超悪くなったんですね?」

浜面「あ? あぁ、そうだと思うけど」

絹旗「その一週間前。浜面、プライベートでどこか行きました?」

浜面「はぁ? なんでそんな事言わなきゃいけないんだよ」

絹旗「窒素装甲・展開」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

浜面「ちょ! 待て! その車を下ろせ! 街中だぞここ!」

絹旗「超話す気になりましたか?」

浜面「なった! なったから!」



62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:24:22.10 ID:PVxwcD5S0
浜面「一週間前っつたらアレだな、なんかよ修道服着たシスター道端で倒れててがハラヘッタっつうからファミレスにつれてってやったんだよ」

絹旗「はぁ? シスターが道端でお腹を空かせて倒れてたぁ? もっと超マシな嘘はつけないんですか、浜面?」

浜面「いやだから本当なんだって!」

絹旗「はぁ……まぁいいでしょう、それで?」

浜面「それで、ファミレスに行ったのはいいんだけどよ。そのシスターの食欲がすごくてよ、店のメニュー殆ど一人で食いやがるんだ」

絹旗「超暴飲暴食シスターですか」

浜面「いやだからマジなんだって! 俺も一食くらいなら別に……って思ってたんだけどよ、これじゃさすがにやべーって思ってさ」

絹旗「財布が軽くなりそうですもんね」

浜面「軽くなるどころかマイナスなんだよ……」

絹旗「超ご愁傷様です、それで?」



63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:25:01.43 ID:PVxwcD5S0
浜面「そんな所に麦野がやってきたんだよ」

絹旗「……他の女性と一緒に居るところを超見られたわけですね……」

浜面「おー、丁度いいところに! って思ってさ」

絹旗「修羅場的な意味でですか?」

浜面「ちげーよ、さすがに持ち合わせがなかったから金貸してくれーって言ったら財布投げられて走って帰っていっちゃったんだよな。何か機嫌悪かったのかな、ははは」

絹旗「お前が超原因です!」



65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:35:19.38 ID:PVxwcD5S0
浜面「なんだ俺が原因……、俺っ?!」

絹旗「どう考えても浜面しか居ないじゃないですか!」

浜面「なんでそうなるんだよ!」

絹旗「なんでって……はぁ、それ本気で言ってるんですか……」

浜面「……わっかんねーな」

絹旗「超浜面ですね……」

浜面「って、おーい。どこ行くんだよ、路地裏だぞそっち」

絹旗「こっちのが超近道なんですよ、ボヤボヤしてると先行きますよ」



66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:39:00.64 ID:PVxwcD5S0
浜面「おーい、待てよ……って行っちまった」

ポロッ

浜面「っとっと、また落としちまった、コレ」

キラッ

浜面「何なんだろうな、一体」


──、オマエさ。結局どこの誰なんだー?


浜面「……?」

浜面「まただ。……また、なんか聞こえたな……」

浜面「まさか俺、なんかの能力に目覚めたのか?」

浜面「ははっ、まさかな」

浜面「あんなに望んだって手に入らなかったんだ、今更手に入ってたまるかってんだ」



67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:41:29.18 ID:PVxwcD5S0
浜面「空耳だろ空耳」

浜面「だいたい心理系の能力ってどうなのよ」

浜面「どうせならこう、わかりやすく火とか出てくれたらいいのにな」

浜面「リーダーのレッドっつたら、赤だから火だろ、イメージ的に」

浜面「……ま、うちのリーダーは火というか炎というか……まんま自然災害みたいなもんだけどな」

浜面「……能力、ねぇ」

浜面「まったく、無能力者の俺には関係のねー話だな」



68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:43:17.17 ID:PVxwcD5S0
浜面「な、そう思うだろ絹旗……って,あれ? 絹旗ー? おーい」

浜面「……あいつ俺置いてとっとと行きやがった……」

浜面「ひでぇ……」

浜面「うぅっ、俺、アイテム入ってからずっとこんな扱いばっかり……」

浜面「スキルアウト時代が懐かしいなぁ、チクショウ」



69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:50:16.31 ID:PVxwcD5S0
浜面「あの頃は適当に集まって、適当にバカやって適当に……」

浜面「駒場さん」

浜面「俺は、あんたみたいにはなれなかったよ」

浜面「あー、ほんっと。ツイてたなぁ俺は」

浜面「……つーかよ」

浜面「昔と違って、リーダーが怒りっぽくてな。遅刻するとすげー怒られるんだよ、出てくるならさっさとしてくれねーか?」


「浜面仕上だな?」


浜面「その浜面仕上に何の用だってんだよ、そんなゾロゾロと大人数でさ」

「悪いが一緒に来てもらおう」

浜面「お前らどこの組織だ」

「答える義理は無い」



70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:53:53.90 ID:PVxwcD5S0
浜面「そーかよ……」

「大人しく従えば命までは奪わない」

浜面「随分高圧的だなおい」

「無駄な抵抗はしない事だ」

浜面「……(正面に3人、後ろに2人。やれるか? ……いや、無理だな。かと言って逃げ道は奴等が塞いでる……)」

「一緒に来てもらおうか」

浜面「万事休す、か」

ゴソッ

浜面「……(ん……ポケットの中に……、昨日のアレか)」

「さあ」

浜面「……(なんとか、なるんじゃねーか……やってみるか)」



71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:56:36.61 ID:PVxwcD5S0
「答えは決まったか」

浜面「……へっ、そんなの答えは最初っから決まってんだろ!」

「そうか、それなら」

浜面「答えは、NOだ! 必殺! 煙玉っ!」

ボワン

「なんだこの煙はっ?!」

「く……子供だましが!」

浜面「っらあああああああああああああああああああ!!!!」

ドガッ

「ぐあっ……」



72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:59:59.80 ID:PVxwcD5S0
浜面「(とにかく、後ろのあと一人ぶっ倒して逃げるっ!)」

浜面「(武器……武器……何か適当にぶん殴れるもん、落ちてないか……)」

浜面「!」

浜面「鉄パイプ! みーっけ!」

ガン!

浜面「なははははは!! 後は逃げるだけ──っ」

ガシッ

「捕まえたぞ、クソが、てこずらせやがって。オイ、上に連絡だ」

浜面「……あれ? 絶対絶命?」



73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:04:17.79 ID:P7Kj2VIn0
「よくもブン殴ってくれたなガキが……」

「おい、一発くらいいいだろ?」

「死なない程度にな」

ドゴッ!

浜面「……ぐあっ?!」

「あーあーあーあー、情けねえなおい。地面の味はどうだ? あ? このバカ野郎が」

浜面「……バカはお前等だ」

「あん?」

浜面「あれがただの煙幕だと思ったか……信号弾なんだよ……」


絹旗「浜面! 超大丈夫ですか!!」


浜面「絹旗! ……っだああああ!! 車、車はやめろ!」

絹旗「えいっ」



74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:06:39.04 ID:P7Kj2VIn0
絹旗「必殺・車投げ」


ぽいっ



浜面「……死ぬかと思った」

絹旗「何勝手にヘンな奴等に殺されかけてるんですか、浜面」

浜面「お前にだよ!」



75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:08:24.00 ID:P7Kj2VIn0
「くそ……新手か!」

絹旗「なかなか来ないから超心配しましたよ」

浜面「……そりゃどーも、やれるか?」

絹旗「心配超ご無用ですよ!」

ドガッ

「ぐあっ」

絹旗「窒素装甲の前では銃弾も無力ですから!」

バキッ

「く……」



76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:09:25.66 ID:P7Kj2VIn0
絹旗「あと3人!」

ガッ

「く……くそ!」

絹旗「後2人!」

ドゴッ

「っ!」

絹旗「残るは……!」

「く……来るなァァ!」

絹旗「銃ですか……」

「一歩でも動いてみろ! う……う、撃つからな!」

絹旗「どうぞ、超ご勝手に」

「は?」

絹旗「だから、どうぞご勝手に」



77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:11:14.55 ID:P7Kj2VIn0
「な…… 何を言っているんだ、怖くないのか? 命がどうなってもいいのか?」

絹旗「怖い? 何を言っているんですかアナタ? そんな甘っちょろい事言ってるから命を落とすんですよ」

「ひ……」

絹旗「ほら、撃ちたきゃ撃てばいいじゃないですか」

「く! くるな!」

絹旗「ほら、ここが心臓ですよ。よく狙ってください」

「く……!」

絹旗「一歩」

「っ」

絹旗「二歩……三歩……」

「来るな……来るなよぉ……!」

パァン!

「…… こ、殺した……殺しちまったアアァァァァ!!!!」

絹旗「……勝手に殺されるのは超不快ですね」

「……なっ」

絹旗「だから私には効かないって言ってるじゃないですか。ほら、今逃げたら私は超許してあげますよ」

「ひ……、ひ……、銃が効かない? ば……化け物!」



78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:13:52.87 ID:P7Kj2VIn0
タッタッタ


絹旗「超逃げましたか」

浜面「……みたいだな」

絹旗「とんだ腰抜けですね」

浜面「逃がしちまっていいのか?」

絹旗「私は許すっていいましたけど」

浜面「でもよ」

絹旗「私がそうでも、麦野がどういうつもりかは、超わかりませんけどね」

浜面「……ご愁傷様……、って、いててて」

絹旗「超大丈夫ですか?」

グイッ

浜面「ギャース! ひっぱんな! 患部を刺激してんじゃねええええ!!」

絹旗「それだけ大声だせたら超大丈夫ですね」



79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:14:43.72 ID:P7Kj2VIn0
────────

────

──

「はぁ…… はぁ……、ここまで逃げてきたら平気だろう……」

「くそっ、なんだってんだ。無能力者のガキ一つさらってくるだけじゃなかったのか!」

「なんであんな強い女が一緒に居るんだよ! くそ!」

「とにかく連絡を……」

「あ……? あれ? 携帯電話がない?」



麦野「探してるのはコレの事かにゃーん?」



80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:21:50.45 ID:P7Kj2VIn0
「あ、あ。あぁ……(なんだこの女……)」


麦野「さっき、そ・こ・で、拾ったのよーん」


「そ、そうか。ありがとう。それを返してくれないか? 大事なものなんだ」


麦野「ふふ、お兄さん? そんなコトよりわたしとイ・イ・コ・ト・してかない?」


「いぃいいい? いいこと?」


麦野「ふふ、赤くなっちゃって可愛い。そんな下半身おったちゃって、早漏なのかにゃーん?」


「な、なにを……」



81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:24:03.82 ID:P7Kj2VIn0
麦野「ねぇ~? お兄さん」

「……?」

麦野「これ、返して欲しい?」

「あ、あぁ。返してくれないか?」

麦野「ふふ、いいわよ」

バキィィ

「なっ?!」

麦野「あ、ごめんなさ~い? 手が滑っちゃったぁ♪」



82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:28:34.18 ID:P7Kj2VIn0
「手が滑っただぁ?!」

麦野「……りねぇ……」

「(こ、こいつ……笑ってやがる……)」

麦野「足りねぇ…… 足りねぇなぁ……こんなんじゃあよぉ……」

「なに……を……」

麦野「私はさぁ……別にいいんだよ、あのバカがどこで何してようが誰と居ようが何喋ってようが誰と一緒に食事してようがさぁ……」

「……?」

麦野「でもさぁ……アレはだめだ、お前……あいつの事蹴っただろ……アレはだめだなぁ……」



83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:33:52.92 ID:P7Kj2VIn0
カツン

「ひっ」

カツン

麦野「大事な大事な身体なんだよ……傷がついたらどう落とし前つけるつもりなんだよ……なぁオイ」

カツン

「ひっ、ひぃいい……」

カツン

麦野「あいつをどうにかしていいのはなぁ、私。……私だけなんだ、それを何でどこの馬の骨とも知れない輩がよぉ……よくもでしゃばってくれたもんだ……」

カツン

麦野「ね? おにーさん?」ニコッ

カツン



84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:34:40.86 ID:P7Kj2VIn0
カツン

カツン

麦野「そう、動かないで。いい子だから動かないで、そのまま」

カツン

カツン

「は? はい?」

麦野「だから、動くなっつーの。脳味噌まで×××なのかっつーの。大人しくしてたら逝かしてやるからよ」

「え、ええと……」

カツン

カツン

麦野「逝かしてやるって言ってんだろ? 聞こえなかった?」



85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:36:33.57 ID:P7Kj2VIn0
「あ……ぁ…… あぁ……」


麦野「クソが! どこの犬かしらねぇけどよぉおおお!」


「あ……あ……まさか……まさか……」


麦野「てめぇの所有物に手ぇ出されて黙ってられる程、お人良しじゃねえええええええんだよ私はアアァァァァ!!!!」


「まさか……まさか……原子崩し……」


麦野「人の事を能力名で呼ぶんじゃねえよ。私には、私にはなぁ……ちゃあああああんと麦野沈利って名前があるんだよおぉ、覚えとけクズがアァァァ!!!!!」


キュイイイイイイイイイイイイイィィィィィン……


「ゆ、ゆるし……」

麦野「──ま、最も。もう二度と喋れないだろうけどなァァァァァァァァアアアア!!!!!!」


ドッ



86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:38:07.97 ID:P7Kj2VIn0
麦野「……ちっ、胸糞わりぃな」

麦野「二度とアイテムに手を出すんじゃねーぞ」

麦野「……」

麦野「原子崩し……か」

麦野「どいつもこいつも畏怖、畏怖、畏怖……レベル五だから、当たり前といえば当たり前か……」

麦野「歩く自然災害……か、私にぴったりじゃねぇか」

麦野「……はぁ」

麦野「なんか疲れちゃった……」

くたっ



88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:41:46.45 ID:P7Kj2VIn0
──、麦野!


麦野「麦野沈利……」


──、麦野! 麦野!


麦野「ちゃーんと…… 名前、あるのになぁ……」



89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:44:30.06 ID:P7Kj2VIn0
── ナ……マエ……。


──、そう。


──、伝えなきゃ。


──、私。私の、私のナマエは……。



91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:56:45.49 ID:P7Kj2VIn0
浜面「麦野!」

麦野「……あぁ?」

浜面「麦野! あぁよかった、気がついたか」
 
麦野「なんだ、浜面か……」

浜面「なんだじゃねぇだろうが麦野……何回呼んでも返事しねぇし、心配したんだぞ?」

麦野「はっ、無能力者の浜面が超能力者のこの私を心配? はーまづらぁ、腹で茶ァ沸かせるつもりかよ」

浜面「ほんとに心配したんだって、無事そうでなによりだ。ったく麦野よぉ、お前は一人で突っ走るから追っかけるのも大変だったぞ」

麦野「追いかけてきてくれたの?」

浜面「当たり前だろうが」

麦野「……あ、そ」



92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:57:36.75 ID:P7Kj2VIn0
浜面「ったく麦野よぉー」

麦野「むぎの」

浜面「あん?」

麦野「ねー、浜面」

浜面「なんだよ」

麦野「名前、呼んで」

浜面「はぁ? なんで」

麦野「いいから」



93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:58:25.56 ID:P7Kj2VIn0
浜面「麦野」

麦野「苗字じゃなくてちゃんと名前も」

浜面「……は、はぁ?(なんでそんなこと……)」

麦野「はーまづらぁ」

浜面「……っ(なんだ、どうしたんだ麦野? さっきから様子が変だぞ?)」

麦野「……おねがい」

浜面「なにこの麦野、可愛すぎだろ……(どうしたんだ麦野……)」

麦野「私、そんなに可愛い?」

浜面「し! まった! 心の声がっ!」

麦野「心の声? 浜面は心の中でどんな妄想を繰り広げていたのかにゃーん?」



94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:59:02.47 ID:P7Kj2VIn0
浜面「ドチクショウ……なんたる失態……」

麦野「はーまづらぁ?」

浜面「ああもう煮るなり焼くなり好きにしろぃ!」

麦野「あんたなんか煮たところで出汁なんか出ないわよ」

浜面「ひでぇ……」

麦野「それより、さっきの」

浜面「お? おおう……」

麦野「はやく」

浜面「ええい! ままよ!」



95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:59:30.77 ID:P7Kj2VIn0
浜面「沈利、麦野沈利」

麦野「ん、もっかい」

浜面「しずり」

麦野「もっかい」

浜面「もっかいだぁ?」

麦野「文句いわない」

浜面「……沈利」

麦野「……うん」

浜面「沈利」

麦野「……」

浜面「麦野沈利」

麦野「……うん……」



96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 00:59:57.36 ID:P7Kj2VIn0
浜面「も、もういいか」

麦野「……うん」

浜面「……なぁ、なんかあったのか?」

麦野「べつにー」

浜面「そぉかよ」

麦野「……」

浜面「まぁ、無理にはきかねェよ」

麦野「そ」

浜面「……」

麦野「それじゃあ私から一つ聞いてもいいかな」

浜面「あん?」



97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:06:12.12 ID:P7Kj2VIn0
麦野「浜面と、アイテムで会ったときから、ずっと聞こうと思ってたんだけどさ」

浜面「なんだよ」

麦野「……あー、やっぱりいいわ。気のせいかもしれないし」

浜面「らしくねーな、いいから話せよ」

麦野「そう? じゃあ聞くけど……」

浜面「おう」


麦野「……私とあんた、ずっと、どこか、ずっと前に会ってない?」


────────

────

──

絹旗「ちょっとフレンダ! 押さないでください!」

フレンダ「絹旗こそ! ちょっと下がるわけよ!」

滝壺「北北西から電波きてる……」

絹旗「っだあー、ここからだと声が聞こえませんね」

フレンダ「でも感じるのよ……あの辺り一帯に広がるピンク色のオーラを!」

絹旗「ピンク色って……なんだか超いやらしいですね」

フレンダ「ピンク色、もとい、バニー色な訳よ」

絹旗「あー、なんかそれ聞いて隠れてるの超アホらしくなってきましたよ……」

フレンダ「!」

絹旗「どうしました!」



98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:06:53.84 ID:P7Kj2VIn0
フレンダ「あ……あ……」

絹旗「フレンダ……?」

フレンダ「とある魔術の禁書目録、録画するの忘れてたーーーーっ!!!」

ズコー

絹旗「な……なんですか?」

フレンダ「ごめん、先帰るね」

絹旗「帰るって、ちょ……」

滝壺「きぬはた、かえろ?」

絹旗「滝壺さんまで」

滝壺「いいから、ね?」

絹旗「むー」



99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:07:50.20 ID:P7Kj2VIn0


黄泉川「そこの3人、ちょっと待つじゃん」


フレンダ「……(い、今、気配なんかなかった訳よ!)」

絹旗「…… (……おそらく相当のやり手ですね、どうします?)」

フレンダ「……(まだ麦野と浜面が中に居るし、事は荒立てない方が良さそうな訳よ)」

滝壺「なんですか?」

黄泉川「お? さっきの奴等と違ってちゃんとお話できるじゃん、偉い偉い」

フレンダ「さっきの?」

黄泉川「なんか4人くらい静止を振り切ってここの廃工場に振り切って入ろうとしたから成敗したじゃん」

絹旗「そうなんですか、それじゃあ私達は超失礼しますね」

黄泉川「まーまー、待つじゃん」



100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:08:28.16 ID:P7Kj2VIn0
絹旗「何でしょうか?」

黄泉川「この顔に見覚えあるじゃん?」

滝壺「だれ?」

黄泉川「昔、この辺りを根城にしてたスキルアウトの一員じゃん、名前は浜面仕上、こっちは駒場利徳」

滝壺「しらない」

黄泉川「そっか、ありがとじゃん」

滝壺「お役に立てなくてごめんなさい」

黄泉川「いいじゃん、それよりこんな古い工場で遊んでるといつ崩れてくるかわからないし危ないじゃん。早く帰るじゃん」

フレンダ「それじゃあお言葉に甘えてそうさせてもらう訳よ」



101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:10:21.87 ID:P7Kj2VIn0
黄泉川「ここには居ないか……ほかを当たるじゃんよ」



スタスタ

フレンダ「……」

スタスタ

絹旗「……」

スタスタ

滝壺「……」

スタスタ

フレンダ「行った?」

絹旗「みたいですね。……っだぁ~、超疲れました」

フレンダ「何なのよあの警備員、絶対タダ者じゃない訳よ」

滝壺「はまづらを探してたね」

絹旗「滝壺さん……、’知らない’って嘘つくのに超微動だにしませんでしたね」

フレンダ「世界最高の嘘発見器があったとしても感知できなさそうね」

絹旗「超すごかったですよ」

滝壺「それほどでも」

フレンダ「照れちゃっても~、かわいいっ」



102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:11:29.30 ID:P7Kj2VIn0
フレンダ「それよりあの写真の人、駒場っつったかしら?」

絹旗「駒場、駒場利徳でしたっけ?」

フレンダ「結局、誰なのよ?」

滝壺「しらない」

絹旗「誰なんでしょうね」

フレンダ「浜面に関係ある人なのかな」

絹旗「今度機会があったら聞いてみましょうか」

滝壺「……」

フレンダ「そういえば浜面の過去って、あたし等、なーんも知らないのよね」

絹旗「それはお互い様では……?」

フレンダ「まっ、一緒に働くからには、興味が無いわけじゃないのよね」



103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:12:32.46 ID:P7Kj2VIn0
フレンダ「浜面だってほら、ひょっとしたらどこかの国の王子様かもしれないし」

滝壺「はまづらが王子様?」

絹旗「なんですかそれ、どこの超アホアホキングダムですか」

フレンダ「わっかんないわよ~、だいたい、ここに来る前どうしてたかなんて本人以外わかんないもんね」

絹旗「なんか超興味沸いてきましたよ」

滝壺「南南西から電波きてる……」

フレンダ「今度皆の前で吐かせるわけよ、きひひっ」

絹旗「超罰ゲームでもやりますか」

フレンダ「浜面限定罰ゲーム大会? いいねいいね」

絹旗「超かわいそうですけど、超お似合いなのが悲しいですね」

滝壺「お似合い」

フレンダ「そんじゃもう解散って事でいいかな? あたし先帰るね」

絹旗「あ、待ってくださいよ」

滝壺「どこいくのフレンダ」

フレンダ「サバ缶」

絹旗「昨日超勝ってたじゃないですか」

フレンダ「昨日とは違う味が新発売な訳よ、全国を代表するコレクターとしては抑えときたいアイテムなのっ」

絹旗「サバ缶コレクターって全国に何人居るんですか……」



104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:14:01.32 ID:P7Kj2VIn0
────────

────

──


「……浜面仕上の捕獲に失敗した?」

「は、はいっ」

「どういう事だ、きちんと現状を報告しろ」

「それが……」



105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:15:22.95 ID:P7Kj2VIn0
「…… なるほどな、あの原子崩しが関与しているのか」

「どうしましょう」

「アレはまだ浜面仕上が所持している、間違いないな?」

「は、はい」

「ふむ……やぶへびだったか、どうしたものか……」



106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:15:48.57 ID:P7Kj2VIn0
「社長、しかしアレには我が社の命運が……」

「わかっている」

「社長」

「ここは学園都市……、これ以上騒ぎを大きくして他の組織から目をつけられるのは得策ではない……静観する他あるまい」

「しかし!」

「なぁに、ただ何もせず待つと言っているわけじゃない」

「?」

「果報は寝て待て……ここには金で動く連中なら五万といるだろうさ」



107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:18:12.40 ID:P7Kj2VIn0
◇  ◇ ◇ ◇




──あんまり覚えてないのよねー昔の事って。能力開発していた事くらいしか覚えてないかも。





── というのは嘘だ、本当は全部覚えている。

──ただ、思い出すにはあまりに無味簡素で、

──黒と灰色しかない世界の事ばかりが支配していて、

──夜な夜な、それが私の心をチクチクと刺すように音も無くやってくるんだ。



108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:21:49.63 ID:P7Kj2VIn0





──、沈利。

──、麦野沈利。

──、しずり、なんて。我ながら変わった名前だと思う。

──、それが申し訳程度につけられた名前だという事は子供ながらに理解していたけれど。

『アレが……原子崩し』

──そこでは誰も私の名前を呼んではくれなかったから。

『やあ、原子崩し。今日から僕が君の能力開発を担当する事になった』

──白衣を着た男が私の前にやってきて薄っぺらい顔で笑う。

『今日からよろしく頼むよ、原子崩し』

──毎回繰り返される意味の無い遣り取り、これで一体何人目なのだろうか。



109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:25:15.63 ID:P7Kj2VIn0
──、白色の部屋。

──、何も無い部屋。

──これも、私の能力開発を促すための部屋らしい。

──原子崩し

── それがあの白衣の男によってつけられた、私の呼び名。

──、反芻してみる。

──、メルトダウナー。

──、私の能力名。

──、誰も呼んでくれない名前。

──、むぎの、しずり。



110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:28:55.24 ID:P7Kj2VIn0
── 振り返るとつまらない毎日だったと思う。

──研究室で見る0と1の繰り返しが面白いとは思えず

──インストールされるプログラムを横目に座りながら足をプラプラさせてみた。

──きっと彼らが興味あるのは私個人ではなくて、私個人から採取される0と1の世界なのだろう。

──、数値の変化に一喜一憂する彼らを見る事さえ、いつしか飽き始めて、やがて何も思わなくなった。

──ただ促されるまま

──0と1を吐き出す。



111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:30:06.34 ID:P7Kj2VIn0
── 朝が来る。

──足音が聞こえて、起床を促される。

──窓すらない研究施設の隅の部屋で与えられた物と言えば、研究者の男が趣味で読んでいるという本くらいだった

『おはよう、原子崩し』

──特徴の無い声が抜けていく。

── ああ、今日もあのつまらない時間が始まるのか。

──そう考えるとほんの少しだけ億劫になる。

『どうした? 行くぞ』

──いっそ目の前の男を殺してしまえばこの意味の無い日々に終わりがくるのだろうかと思って

──白衣を赤色で染め上げた事もあった。



112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:31:33.22 ID:P7Kj2VIn0
── 人を殺したという実感は無かった。

──なんだ、こんなものか。

──かんたんじゃないか。

──簡単なことじゃないか。

──いつも通り、普段やっている実験の通りに照準を合わせて、能力を解放する

──それだけで目の前の男は動かなくなってしまった。

──本当に。

──息をするのと同じ感覚で能力を解放しただけ

── たったそれだけの事だったんだ。

──何も生み出さない

──恐らくは、ただ、奪うだけ。

──ただ、壊すだけ。

──それが原子崩しだという事に

──私は気がつかないフリをした。



113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:32:29.85 ID:P7Kj2VIn0
── 騒ぎを聞きつけた警備員が私の部屋に集まってきた。

──なのに誰一人として私を咎める物は居ず

──ただ、畏怖

── そして、無関心

──淡々と、業務的に遺体を回収して消えていった。

『素晴らしい……素晴らしい力だ、原子崩し』

── おかしいな

──悪い事をした子供は怒られるんじゃないのか

──少なくとも本で読んだ世界では、そうなっていたのに。

『これは実験の計画を少し前倒しにしてもいいかもしれないな、ははははは』



114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:34:30.49 ID:P7Kj2VIn0
── 白衣が一つ消えて

──部屋に残ったのは何冊かの本だけ。

──そしてまた繰り返される。

『やあ、原子崩し。今日から新しく君の担当になった者だ、よろしく頼むよ』

──また。

──また、白衣を着た男が私の前にやってきて薄っぺらい顔で笑う。

──同じ顔で。



115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:35:01.98 ID:P7Kj2VIn0
── 実験

──実験

──実験実験

──被検体番号4

──能力名

── 原子崩し

──実験

──実験



116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:39:06.17 ID:P7Kj2VIn0
── ねぇ。

『何だ、原子崩し』

──こんな実験繰り返して、何になるの?

『いつも言っているだろう、お前は将来莫大な利益を生み出すんだよ』

──将来って、いつ?

『明日の明日の、もっと先だよ』

── その日が来たらどうなるの?


──答えは、無かった。



117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:40:53.06 ID:P7Kj2VIn0
── 捲ったカレンダーの数は覚えていないけれど。

──そんな日が、ぐるぐると続いた。

──窓の無い、白い部屋。

── 寒暖の差など無く、空調で色を消された季節の無い部屋。

──最初の白衣が残していった本だけを読んで過ごしていた。



118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:41:37.64 ID:P7Kj2VIn0
── やがて私はある一つの事に興味を持ち始めた。

──研究所の外

──この外側の世界はどうなっているのだろう。

──24時間をこの研究所の中で生きていた私が始めて関心を抱いた事柄だ。

──きっと、私の知らない不思議な出来事が沢山待っているに違いない。

──だったら。

──とっととこんな所、抜け出してしまおう。



119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:48:40.11 ID:P7Kj2VIn0
── 思い立ったが吉日。

──味気ない金属製のドアを原子崩しでぶち破った。

──警告音が鳴るが、気にしない。

── 迷路の様な研究施設。だけど道筋は覚えている。

──途中、私を制止する大人達を何人か能力で黙らせた。

──大人達が後ろで何か叫んでいたけど聞こえない。

──行くんだ。

──外へ

──帰るんだ。

── 外へ。



120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:50:05.66 ID:P7Kj2VIn0
── 右。

──右、

──ひだり

──階段を上がって

──長い廊下をぬけて

── いつも自分の実験が行われていた部屋を横目に私は走った

──銃を持った大人が立ちふさがる

──気にしない。

── 能力を解放して駆けた

──皮肉なものだと思う

──壊す事にしか使えない私の能力が

──今、私の願いをかなえようとしている。



121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:51:06.80 ID:P7Kj2VIn0
── 息があがる。

──肺がつぶれそうだ。

──だけど、代償と思えば安いもの、

──今までの過去を清算するための。

──思い返せばつまらない毎日だった

──朝起きて一番に色々なプラグが取り付けられた服を着せられ

── その後いくつかの栄養を摂取し

──パラメーターの変化を測定

──それに従って白衣の男が指示する通りに原子崩しを発動させる。

──薄気味悪い笑い顔が浮かんだ

──それを、おもいっきり、右足でふみつけるようにして

── 私は走る。



122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:51:58.89 ID:P7Kj2VIn0
── 外に出たら

──なにをしようか

──あの本で読んだ

──おしゃれ、というものにも興味があるし

── しゃけという魚にも興味がある

──やってみたいこと、みてみたいこと

──たくさんありすぎてどれをしようなんて選べない

──ああ

──ああ

──なんて、

──なんて楽しいんだろうか



123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:52:27.96 ID:P7Kj2VIn0
── あと少しで

──あと少し

──あと少しで、

『め、原子崩し! 待て!』

──うるさい

──ジャマスルナ

『原子崩し!』

──私はそんな名前じゃない

──私は、私の名前は!



124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:53:26.10 ID:P7Kj2VIn0
──

──

──

──

──

──

──

──、

──、これが、外の世界。

──思っていた程も、

──、いや、想像以上に

──、何も無かった。



125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:54:16.64 ID:P7Kj2VIn0
── 結論から言うと、何も変わらなかった。

──これが世界。

──これが世界か。



── でも、次にやってきたあの感覚は例えようの無い興奮・快楽の類で

──風・音・光・温度・匂い・声・人の気配・町並み・ビル・雲・車・建物・ガラス・木・道・煙突・煙・騒音……エトセトラエトセトラエトセトラ……

──同時にあまりに多数の情報が脳に入ってきて

── 私の頭はどうにかなってしまいそうだった

──

──、……まぶしい

──これが日の光というものだろうか

──うん、……悪くない。



126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:54:59.81 ID:P7Kj2VIn0
── 感動と呼べばいいのだろうか。

──あるいは。

──だがその一時の感動はすぐに不快な声でかき消される。

『ばか! お前等撃つな! 撃つな! 当たったらどうするんだ! あいつは金の成る木なんだぞ!』

──振り返ると銃を構えた大人達が追いかけてくる

──オマケにあの耳障りな声だ。

──私はまた、走った。

──威嚇で何回か能力を解放すると、奴等の動きが止まる。

──追いかけてこないでよ

──私、帰るんだから。



127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:55:45.65 ID:P7Kj2VIn0
『原子崩し!』

──声が聞こえる。

『原子崩し! どこにいくつもりだ!』

──私は答えない。

『お前は、お前は俺の元でしか生きていけない! 一人で生きていけると思ったのか!』

──そんなの、知らない。

『原子崩し!』

──、うるさい

『……く』

──、ジャマ、しないでよ!



128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:56:38.11 ID:P7Kj2VIn0
『くそ……まだ実験段階だが、アレを使うか』

──白衣が携帯電話越しに何か指示を出した直後

──不快な音が私を襲う。

── とたんに演算に集中できなくなった。

──私の能力はその特性上「照準」が最も重要な要素であるらしい

──あの白衣の男が言っていた事だ

──「照準」が狂うと能力が暴発してしまうかもしれない、と

──最悪自分を傷つけてしまうかもしれない。

──、……だとするとこの状況で能力を発動させるわけにはいかない……っ

──大人たちの足音が大きくなる。

── 私は、



129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:57:26.04 ID:P7Kj2VIn0
── 逃げる

──息があがる

──でも、逃げる

──だめ。

──だめ、捕まったら。

── 私は、私は外の世界に行くんだから。

──白い部屋なんかじゃない、薄暗い研究所なんかじゃない太陽の世界に。

──、一度手に入れたんだ。

──離して、たまるか……っ



130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:58:01.88 ID:P7Kj2VIn0
──、でも

──、……だめ

──、耳が痛い、頭が痛い。

──もう

──もう、何も考えられない。

──ああ

──そうか

──だめなんだ

──私は、私には

── この世界には

──私の場所なんて……



『おい! こっちだ!』



131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:58:33.45 ID:P7Kj2VIn0
── その声は耳を塞いでいても聞こえたし


『こっちだ! はやく!』


──この、不快な音に支配された世界でも、はっきりと私に届いた



132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 01:59:41.93 ID:P7Kj2VIn0
── 男の子だった。

──年は同じくらいだろうか?

──背は私と同じくらい、髪はボサボサ、なぜか土色に汚れた半そで半パン。

『逃げるぞ!』

──手を掴まれて、ぐいぐいと引っ張られる

──痛いくらいに強く引っ張られて、私は思わず手を引っ込めた。

『なにやってんだよ! 追われてんだろ!』

──、え……あ

『いいから!』

──、また、手を引っ張られる。



133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:02:51.48 ID:P7Kj2VIn0





── その手は今まで差し伸べられたどの手よりも汚れていて




──その手は今まで差し伸べられたどの手よりも暖かかった




134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:03:53.92 ID:P7Kj2VIn0
────────

────

──



『……ふぃー、逃げ切ったか?』

──、

『なんだよ、せっかく助けてやったのにお礼もねえのかよ』

──え、あ、……

『どうしたんだ?』

── う、あ……

『なんだオマエ、喋れねえのか?』

──何かを伝えようとするほど、私の喉は枯れていった。



135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:04:48.95 ID:P7Kj2VIn0
『んー、ま、いいや。無理に喋んなくてもいいよ。あいつらに何か怖い事されたんだろ?』

──、ん……

『さ、これからどうするか。それよりオマエ、腹へってないか?』

──、……おなか? そういえば今日はまだ何も……

ぐるるるるる

『そっか、じゃあ俺の家に来いよ! なんかレーゾーコの中にあったと思うから』

──、言葉を介さなくても、なんとか空腹の意思は伝わった様だ。



136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:05:25.73 ID:P7Kj2VIn0
『つーかよ、最近この辺りも色々工事中ですげーよな、ビルとかいっぱい立つのかな?』

『学園都市ってさ、すげーよなぁ。俺の居た地元じゃこんないっぱい人いなかったしさ!』

『あーもうなんかワクワクするなー!』

『来週からさ! 俺! 学校なんだ! どんな能力に目覚めて、どんな事ができるか、今から考えたらワクワクするぜ!』

『っと、話してる間に着いたな。このマンションが俺の部屋、狭いけどゆっくりしてけよ!』

──、こくり

『って、オイオイオイ、靴脱げ靴!』

──、?

『ハテナ? じゃねえよまったく、欧米か』

──オーベイ?

『いやそんなキョトンとされてもだな……』



137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:06:05.06 ID:P7Kj2VIn0
ガチャ

『あー……』

パタン

『おーい、コンビニで買ってきた鮭弁当しかないけど、食べるか?』

──、こくり。

『ん、ちょっとまってろ。暖めてくるから、えーっと、確か電子レンジはこのボタンで……』



138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:06:40.29 ID:P7Kj2VIn0
──、そわそわ。

『なんだよ、なんか珍しいモンでもあったか?』

──、?

『テレビに机にポスター、あとタンス……雑誌、別に普通のモンばっかだけどよ』

──、じー

『あぁこれか? 昨日ゲーセンで取ったカエルのストラップだけど、欲しいのか?』

──、こくり。

『ま、いいぜ。俺は別にいらなかったし、欲しい人に持っててもらえるならそいつも幸せだろ』



139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:07:12.68 ID:P7Kj2VIn0
──、じー

『それはダメ』

──、?

『いや、だってそのヌイグルミ取るのにすげー金つかったんだよ、でかいし重いしクレーン甘いしで大変だったんだからよ』

──、じー

『……そ』

──、じー?

『…… そんな目で見てもだめなもんはだめだああああああああああああああああっ!!』

チーン

『あぁぁぁああああって、出来たみたいだな』



140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:07:41.88 ID:P7Kj2VIn0
──、?

『ホレ、熱いから注意しろよ』

──、っ!

『あーもー、そんながっつくなって……ってオイ! 手で食べるな手で! 箸をつかえ! ギャグか? 身体を張ったギャグなのか!』

──?

『お箸だよ、お・は・し! 日本語アンダスタン? チョップスティーック!』

──、?

『この顔はマジでわかんねーって顔だな……』



141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:08:07.70 ID:P7Kj2VIn0
『いいか? こうやって右手で……こう、わかるか?』

──、こくり。

『お、そうそう。そうやって掴むんだ』

──、こくり。

『おー、上手い上手い。そのまま食べちまえ』

──、もぐもぐ。

『どうだ? 美味いか?』

──、こくこく。

『そっか、鮭好きなんだなオマエ。コンビニ弁当くらいしかなくてすまねぇな』

──、ふるふる。



142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:08:37.84 ID:P7Kj2VIn0
『そういえば、オマエ、名前は何て言うんだ?』

──、

『ナマエだよナマエ、いつまでもオマエのままじゃ嫌だろ?』

──、ナ、……マエ……

『そうだよ、名前、なんだよ喋れるんじゃん!』

『あ? あ、あぁそっか。人に名前を聞くときはまず自分からだよな』

『俺な、俺の名前は──』

────────

────

──

麦野「……私とあんた、ずっと、どこか、ずっと前に会ってない?」



143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:09:10.50 ID:P7Kj2VIn0
浜面「俺と麦野が?」

麦野「うん」

浜面「さあなー、誰かと勘違いしてねーか?」

麦野「そうかな」

浜面「だいたいよー、俺は女の知り合いっつったらスキルアウト繋がりで数人居る程度だしよ」

麦野「……それじゃああの修道服の娘は一体何だったのよ」

浜面「っだあ! かあ! らぁ! あの娘は道端で倒れてたんだって何度も説明しただろぉ!?」



144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:09:52.60 ID:P7Kj2VIn0
麦野「ふつーさぁ、今日日の日本で道端に倒れてる修道服の女の子って居ると思う?」

浜面「いや、ベランダに引っかかっててもおかしくねぇんじゃねぇの?」

麦野「……むぎのびーむ」

浜面「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッ?!」

麦野「ち、はずしたか」

浜面「い、いま! 髪! チリって! チリっていった! 髪! チリ! 当たるトコだったぞ! 麦野!」

麦野「当たり前じゃない、当てる気だったんだから」

浜面「さらっと恐ろしい事を言ってくれるな麦野は……」

麦野「浜面の分際で私に口ごたえしようなんて態度が気に入らなかったのよ」

浜面「ひでぇ……」



145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:10:32.57 ID:P7Kj2VIn0
麦野「ま、いいわ。今日はもう帰りましょう」

浜面「ん。そうだな」

麦野「ここの後片付けよろしくね」

浜面「っておい! 俺一人でっ?!」

麦野「当たり前じゃない、正規の依頼でもないんだから下部組織使うわけにもいかないでしょ?」

浜面「いや俺所属は下部組織なんだけど……」

麦野「はーまづらぁ? あんたのせいで今日は休日出勤なんだからね」

浜面「う……」

麦野「……ま、どうしてもっていうなら手伝ってあげてもいいけど」

浜面「ほ、本当かっ?!」

麦野「その代わり……、か、買い物、付き合いなさいよ」



146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:11:08.80 ID:P7Kj2VIn0
『買い物だよ、か・い・も・の、わかる?』

──、?

『なんつったらいいか……、食べ物、無くなったから買ってくるんだよ。わかるか?』

──、こくり

『よっしゃ通じた、そんじゃ俺は行ってくるから』

──、ふるふる

『ん?』

──、とことこ。

『一緒にってか?』

──、こくこく

『はぁ……、ま、いっか。夜は冷えるからほらコレ、着てけよ』



147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:11:45.83 ID:P7Kj2VIn0
『そんじゃあ、行くか』

──、こくり。

『戸締りして……と。まーったくよ、オマエさ。結局どこの誰なんだー?』

──、?

『迷子の迷子の子猫ちゃん、あなたのおうちはどこですかーってか……結局名前も聞けなかったしさ』

──?

『まぁ、誰だって言いたくない事の一つや二つあるもんだしな、気にすんな』

──、……こくり。



148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:12:21.98 ID:P7Kj2VIn0
『さー着いた着いた、おい勝手に行くなよー』

──、?

『あぁ? これか? これはサバ缶っつってな、サバの缶詰だよ』

──?

『缶詰がわかんねーのか、缶詰ってのはまぁ、保存食みたいなもんか?』

──、こくり

『保存食って言葉はわかるんだな~?』

──、こくこく



149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:12:56.97 ID:P7Kj2VIn0
『…… ま、インスタントの麺類何個か買ってりゃ当分は大丈夫だろ』

──?

『ソレ、お湯入れたら食えるんだよ、うめーぞ』

──、っ

『あー……鮭味のラーメンは無い……かな』

──、……

『あからさまに落ち込んでるな……喋れねえのにナンつーわかりやすさだオイ』



150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:13:22.93 ID:P7Kj2VIn0
『…… あー、ちょっと来い』

グイ

──?

『魚のコーナーは、っと。ここか』

──!

『おお……目が輝いてるぜオマエ……』

──っ! っ!

『あーはい、はいはい。買う、買うから。ったくよーグリルなんて使った事ねーから焦げてもしらねーぞ?』



151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:13:52.83 ID:P7Kj2VIn0
浜面「ったくよー、絶対コレ焦げてるって髪の毛さ」

麦野「さっきからグチグチと、女々しいのよ」

浜面「そりゃ女々しくもなるわい!」

麦野「はーまづらぁ」

浜面「なんだよ麦野」

麦野「……」

浜面「なんだよー?」

麦野「べつにー」

浜面「なんだぁ? ヘンな麦野だな」

麦野「ヘンはヘンでもヘンタイの浜面にだけは言われたくないわよ」

浜面「ははっ、負け犬上等ォ~……」



152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:14:26.39 ID:P7Kj2VIn0
麦野「あった」

浜面「何買うかと思ったら弁当かよ」

麦野「明日の朝用よ。ここの鮭弁、好きなのよね」

浜面「ふ~ん」

麦野「なによ」

浜面「いや……意外っつーか、麦野がこんな庶民派スーパーを使ってるなんて思わなかったからさ」

麦野「なによー、人がどこで何買おうと勝手でしょ」

浜面「ちげぇねえ」

麦野「浜面は何買うの?」

浜面「そうだな……今日の晩飯、何にすっかなぁ」



153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:14:53.51 ID:P7Kj2VIn0
浜面「……、あ」

麦野「うん? どうしたの?」

浜面「……麦野」

麦野「なに?」

浜面「……大変悲しいお話だ」

麦野「だからなによ」

浜面「金、ない」

麦野「……さー、かえろっと」

浜面「まままま、待って! 待ってよ~! 麦の~ん!」

麦野「誰が麦のんだ! ×されてぇのか浜面ァ!」

浜面「む、麦野! ビームはやめろ! 公共の場! 公共の場だって!」

麦野「……フン、なによ。お金が無いのってあのせいでしょ? 自業自得じゃない」



154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:15:20.38 ID:P7Kj2VIn0
浜面「頼むよ~、腹が減って死にそうなんだ」

麦野「勝手に飢え死にしてれば?」

浜面「ひでぇ……」

麦野「フン」

浜面「俺がオマエの立場だったら絶対手を差し伸べるぞ麦野! 間違いなく! どこの誰であっても!」


『…… オマエさ。結局どこの誰なんだー? 』


麦野「……」

浜面「あん? どうしたよ麦野?」

麦野「……なんでもないわよ」

ぐるるるるるるるるる……

浜面「は……はらへった……」



155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:15:53.25 ID:P7Kj2VIn0
麦野「あーもう、わかった。わかったからそんな子猫みたいな目でみないでよ」

浜面「……麦野っ!」

麦野「そのかわり!」

浜面「?」

麦野「食材は買ってあげるわ。でも料理は浜面がすること、いい?」

浜面「お、おう! もちろんだぜ! 俺のスーパーでスペシャルな料理で麦野のほっぺた落としてやるから覚悟しとけよ!」



156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:16:20.71 ID:P7Kj2VIn0
『っだああああああああああああああ!!!! 煙が! 煙が出てるっ?!』

──、けほ、けほ

『おい! ちょっとトイレ行ってくるから見ててくれって頼んだじゃねーか!』

──、?

『いや、見てたけど? って感じで顔をかしげられてもだな……』

──、ふるふる

ポン

『慰めてくれるのか、オマエ……』

──、こく

『そっか、優しいんだな』

──、……

『でも、晩飯は残念ながらカップラーメンだ』



157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:16:47.25 ID:P7Kj2VIn0
──、ずるずる

『うまいか?』

──、こくり

『そっか』

──、ずるずる

『今度鮭味のラーメン、探してみるか?』

──!

『ここは学園都市なんだし、商品も変わったもの置いてたりするかもな』

──っ!

『あー、はいはい。また明日な、今日はもう遅いから』



158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:17:14.16 ID:P7Kj2VIn0
『オマエ、布団つかっていいぞ』

──、?

『俺、ソファーで寝るから』

──、……?

『布団だよ、布団、ワカル? これを、こう、被ってねるの』

──こく

『お、そっか。じゃあ電気けすぞ、おやすみなー』

カチ

──、……。



159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:17:40.35 ID:P7Kj2VIn0
──、……。

──、……。

スー

スー

スー

Zzz……。



161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:18:08.34 ID:P7Kj2VIn0
『ふあぁ……よく寝た』

『って、うおお!!』

──、すー……すー……

『なんでオマエがソファーに……、ベッドで寝てたはずじゃ……』

──、すー……すー……

『ま、いっか。気持ち良さそうに寝てるし』

──、すー……すー……

『ほんっと、幸せそうに寝てるなー』

──、すー……すー……

『それにしても、誰なんだろこの子』

『やっぱ、誰か大人に相談した方がいいのかな』



162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:18:36.00 ID:P7Kj2VIn0
『つっても、俺ここらへんの事まだよくわかんねーんだよな』

『こんな時どうすればいいんだっけ……』

『たしかこのガイドには……ええっと? こまった事は風紀委員か警備員にご相談って書いてあるな』

『これ、地図か』

『んー、ここからだと警備員の詰め所が近いのかな』

『んじゃ、買い物のついでに寄っていくとするかな』

──、ぱちり

『お? おはよ、おきたか?』



163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:19:03.06 ID:P7Kj2VIn0
──、…… ぼー

『おーい?』

──、びくっ

『そんな警戒すんなよ、俺だ俺。昨日の事は覚えてるよな?』

──…… こくり

『そりゃ良かった、シャワーでも浴びて来いよ』

──、?

『買い物、いくんだろ?』

──!



164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:19:34.46 ID:P7Kj2VIn0
『シャワーわかるか? お湯が出てくるんだぞ?』

──こくこく

『へ~、オマエでも知ってるのあるんだな』

── こく

ヌギヌギ

『って、うおお! バカ! こんなとこで脱ぐんじゃねえ!』

──?

『だから何? って顔してんじゃねえええええええええ!!!!』



165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:20:05.34 ID:P7Kj2VIn0
シャーーーーーーーーーーーーー

──♪

『ったく、脱ぎ散らかすんじゃねーっての……、うへぇ……生暖かい……』

──♪

『ち、ちがう。これは別にやましい気持ちなんかじゃなくて、その! ちらかってるのはダメだろうどうかんがえても!』

──、♪

『ってかこいつ、服コレしかないんじゃ……』

──♪

『ついでに服屋にも寄ってくか? 金は親から振り込んでもらったのがまだたんまりあるし、大丈夫だろ』

──♪

『あいつ……結構胸、大きかったな……ってそうじゃねええええ!!!!!』



166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:20:36.88 ID:P7Kj2VIn0
キュ

ポタポタ

ガチャ

──♪

『……』

──、?

ポタポタ

『……』

──?

『……タオルでふけー……』

──こく



167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:21:08.20 ID:P7Kj2VIn0
カシャン

浜面「もー、なにやってんだよ。麦野が動いたから醤油倒れただろ? ホラ、これで拭けよ」

麦野「あんたが押すからよ!」

浜面「ただでさえキッチン狭いんだから、二人も入ったらそりゃキュウキュウだっての!」

麦野「何よ! せっかく手伝ってあげてるのに!」

フキフキ

フキフキ

浜面「……ん」

麦野「どうしたのよ」

浜面「このニオイ……」

麦野「あ?」

浜面「麦野! 火! 止めろ!」

麦野「火?」

浜面「魚! 焦げてる!」



168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:21:34.62 ID:P7Kj2VIn0
麦野「……」

浜面「ま、焦げちまったもんはしゃーねー」

麦野「そうね」

浜面「責任の所在は一先ず置いといて……だ」

麦野「そ、そうね」

浜面「晩飯……どうするよ……、シャケしか買ってこなかったじゃねーか……」

麦野「なんとかするわよ」

浜面「なんとかってったって……」

麦野「ったく、しゃーないわね。アレを出すか」

浜面「あれ?」

麦野「鮭味のカップラーメン。あんまり売ってないから大事にとってたんだけど特別だからね」

浜面「どんだけ鮭好きなんだよ!」



169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:22:02.24 ID:P7Kj2VIn0
◇  ◇ ◇ ◇


海原「お疲れ様でした」

一方通行「あー疲れた疲れた疲れた疲れたァ……、ほんっと、マジで疲れたわァ」

結標「っていうか……今日の依頼って、本当に四人で行く意味あったの? 三件とも全部瞬殺だったじゃない」

土御門「にゃー。依頼は完遂、何事もなく終わったんだから文句言わないにゃー」

海原「そういえばあの噂、聞きましたか?」

一方通行「何だァ?」

海原「なんでも人の記憶を自由自在に操るデバイスの研究が、とある施設で行われていたそうですよ」



170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:22:34.22 ID:P7Kj2VIn0
結標「また悪趣味な研究をしていたものね」

一方通行「記憶だァ? ンなもんいじくってどうしよってンだ?」

海原「さぁ……そこまでは、ただ裏でその研究に不釣合いな程莫大な資金が動いていたとか何とか。噂じゃ子供の記憶の改変に用いられたらしいですけど」

一方通行「子供のねェ……」

結標「許せないわね、遺憾の意を表明するわ」

一歩通行「全くだァ」

海原「そうですね、でもまぁ統括理事会の意向に背いたとか何とかで封殺されたらしいですけどね」

土御門「おー、こわいこわい」

海原「ま、何かと尤もらしい理由をつけて、後は僕らみたいな組織が力づくで黙らせる。それが彼らのベーシックなスタンスですけどね」

土御門「さわらぬ神にたたりなしって事だにゃー」

海原「さて。与太話もこれくらいにして……、今日はもう解散ですかね?」

土御門「そうだにゃー、もう今日はアジトに残っててもやることがないにゃー。解散ですたい」

Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrr.......

土御門「っと、電話か……」



171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:23:40.01 ID:P7Kj2VIn0
結標「何の仕事?」

土御門「’メモリー’の回収だにゃー」

一方通行「’メモリー’?」

海原「その’ メモリー’とは?」

土御門「詳しい事はわからないにゃー。ただ、……」



172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:24:40.67 ID:P7Kj2VIn0
─────────────

────────

────


浜面「タダより高いものはねぇ!」

フレンダ「なによ」

絹旗「超大声だしてどうしたんですか?」

滝壺「耳……きーんってする」

浜面「いや、何故か叫ばなくちゃいけない衝動に駆られてよ」

フレンダ「バカなの?」

浜面「うるせーやい。それよりフレンダ、この前頼まれてた品できたぞ」

フレンダ「え?」

浜面「なんだ忘れちまったのか? これだよコレ」

ゴトリ

フレンダ「あ、靴と……えーっとなんだっけ?」

浜面「イグニスだろ? 中身はただの窒素ガスだけどよ」

フレンダ「あー、そうそう。イグニスよイグニス、ありがと」

浜面「大事に使えよな」

フレンダ「結局、フェイクの爆弾なんて使う場面が限られすぎてて使いにくい訳よ、発想が逃げ腰の浜面らしいというかさ」

浜面「おおい! 人に作らせといてそれかよ!」



173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:25:33.81 ID:P7Kj2VIn0
浜面「あと絹旗、窒素のビン、お前にもだ」

絹旗「私にもですか?」

浜面「お前さ、窒素装甲使ってる時は殆ど無敵みたいなもんだけど、窒素なくなったらやべーんじゃねーか? クリボーみたいに踏み潰されちまうかもしれねーだろ?」

絹旗「は……浜面には超言われたくないです!」

浜面「へーへー、いいからほら、持っとけ。持ってりゃいつか使うだろ」

絹旗「あ、……ありがとうございます」

浜面「おう。それにしてもフレンダさー。靴に仕込みのナイフなんてよ、なんかスペツナズみたいだな」

フレンダ「憧れてたのよね」

浜面「映画の見すぎじゃね?」

フレンダ「ちょっと浜面さー、あたしの故郷バカにしないでくれる?」

浜面「え? フレンダってロシア人だったの?」

フレンダ「ぜんっぜん、縁もゆかりもないけど」

浜面「なんだそりゃあ……」

フレンダ「とりあえず、ありがと」



174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:26:10.90 ID:P7Kj2VIn0
滝壺「はまづら」

浜面「ん、どした?」

滝壺「むぎのは?」

浜面「あと30分くらいしたら来るんじゃね?」

フレンダ「……なーんで麦野が来る時間を浜面は知ってるわけなの?」ニヤニヤ

絹旗「超謎ですね」ニヤニヤ

浜面「な……なんだよお前ら」

フレンダ「さぁねーはーまづらぁ」ニヤニヤ

浜面「なんだよ麦野のマネかフレンダ」

絹旗「昨日麦野の家に泊まったんですよね」ニヤニヤ

浜面「な”ぁ?!」

フレンダ「とぼけても無駄よ、浜面の靴にGPSチップを設置していたからねー」ニヤニヤ

浜面「お……お前らっ?!」

絹旗「で」

フレンダ「ぶっちゃけ、シたの?」



175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:26:39.12 ID:P7Kj2VIn0
浜面「はぁぁぁぁぁぁああッ?! な、な、な、何を言ってるんだよ!」

フレンダ「何って、ナニでしょ」

絹旗「超ナニですよね」

滝壺「なに」

浜面「ナニとかさらっと言うんじゃねええええええ!!!!! だ……だいたいっ! 麦野は俺の事なんか全然好きでもなんでもねーよ!!」


絹旗「そうでしょうか?」ニヤニヤ

フレンダ「なんでそんな風に言い切れるのかにゃーん?」ニヤニヤ


浜面「あいつはベッドで寝たけど俺は廊下だぜ?! この扱いからわかるだろーが!」


フレンダ「という事はつまり」

絹旗「麦野の家に泊まった事実は認めるんですね?」



176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:27:05.86 ID:P7Kj2VIn0
浜面「はぁ? 認めるも何もそれはお前等が俺の靴に細工して……」


フレンダ「あたしら、何も細工なんかしてないよ」

絹旗「まさかこんな簡単な誘導尋問にひっかかるなんて……浜面はやっぱり超浜面ですね……」

滝壺「たんじゅん」


浜面「なん……だと……」

フレンダ「(きひひっ、これから罰ゲームのはじまりはじまりよ!)」

絹旗「(フレンダ……悪魔の尻尾がでてますよ)」

フレンダ「(気のせい気のせい)」

絹旗「(超ワルですね。まぁこのノリ、嫌いじゃありませんよ)」

フレンダ「(さーさー、尋問開始よ!)」



177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:27:32.19 ID:P7Kj2VIn0
フレンダ「ネタは上がってんだよにーちゃんよぉ」

浜面「何のネタだ何の」

フレンダ「……吐いてラクになってまえよ…… カツ丼くうか?」

浜面「いらねーよ!!」

絹旗「ずばり、麦野のどこに惚れたんですか?」

浜面「はぁ?! なんで俺が麦野に惚れなくちゃいけないんだよ」

フレンダ「……」

絹旗「……なんで、って」

フレンダ「自覚なし?」

絹旗「ファミレスの件といい……きっと超自覚無しなんでしょうね……」

フレンダ「むぎの……不憫……」



178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:28:21.30 ID:P7Kj2VIn0
フレンダ「浜面はさー、麦野の事どう思ってるの?」

浜面「どう……って」

絹旗「超好きだーーーー!! とか。超愛してるーーーー!! とか」

浜面「だからぁなあ、そんなんじゃねえんだよ」

フレンダ「婚前宿泊までしておいてっ?!」

浜面「婚前って……久々に聞いたぞそんな言葉、お前やっぱり日本人なんじゃ……」

フレンダ「今私の国籍の話なんかどうでもいいの」

浜面「はぁ……」

絹旗「昨日、麦野の様子はどうでしたか? 何か変わった様子は超ありませんでしたか?」

浜面「変わった……? 変わった様子って言われてもなぁ……」



179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:28:54.22 ID:P7Kj2VIn0
浜面「あ」

絹旗「何か超おもいだしましたか?」

浜面「昨日夜さ、晩メシ作ってたんだよ」

フレンダ「どっちが! どっちに!」

浜面「どっちが……って別に、二人で、だけどよ」

絹旗「愛の共同作業ですねこれは……」

フレンダ「OH……LOVELY WORKS……トゥギャザー……」

浜面「いや、フレンダ意味わからんから」

フレンダ「それで、料理した。はい終わり。って訳じゃないんでしょ?」

浜面「あー、それでよ。狭いんだ麦野の部屋のリビング、二人入ったらもうキュウキュウでさ」

絹旗「つまりスキンシップも自然と増えるっていう超寸法ですね」

フレンダ「麦野……涙ぐましい努力……」

浜面「そしたらあいつさ、醤油とか零しやがってよ」

フレンダ「ドジっ娘アピールっ?!」

絹旗「なんか麦野のイメージが超崩れていきます……」

浜面「ったくしゃーねーなって感じで拭いてたら、鮭を焦がしちまってさ」

フレンダ「そこで更にワンモアパンチを重ねにいったのね麦野……」

絹旗「二重の仕掛けですか、超ハイレベルです」

フレンダ「上級者向けよ上級者向け」

絹旗「なるほど、超参考になりますね」

メモメモ

フレンダ「参考になるな……ならねーよ」

メモメモ



180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:29:21.02 ID:P7Kj2VIn0
フレンダ「で、お風呂は当然一緒に入ったんでしょ?」

浜面「は……はぁ?!」

絹旗「超エロ面ですね」

浜面「あのなぁ……んな事してたら命がいくつあってもたりねーよ!」

フレンダ「3つくらい命、ありそうじゃない?」

絹旗「浜面でひとつ、エロ面でひとつ、バカ面でひとつですか?」

フレンダ「絹旗、上手いこというじゃない。ザブトン進呈よ」

絹旗「超ありがとうございます」

浜面「ったくよー、麦野が俺の事好きとかありえないからさ。お前等だけで盛り上がってんじゃねーぞ」

絹旗「それじゃー、昨日浜面が襲われた時の事はどうやって説明するんですか?」

浜面「昨日?」

フレンダ「結局、麦野ったらスゴい形相で逃げた一人を追っかけていった訳よ、あんな小物ほっといても別に大丈夫そうなものを。私が走っても追いつけなかったんだから」

絹旗「そうですよ、あんな小物」

浜面「その小物に追い詰められた俺の立場はっ?」

フレンダ「なし」

絹旗「超ありませんね」

フレンダ「でも浜面、よっく考えなよ」

浜面「あん?」

フレンダ「麦野の気持ちよ」



181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:29:54.39 ID:P7Kj2VIn0
浜面「だから昨日のアレはアイテムのリーダーとして……」

絹旗「ここまでとなると……超呆れたものですね」

フレンダ「天然記念物クラスな訳よ、どっかの博物館に展示すればいいのに」

浜面「はぁ?」

絹旗「たぶん……超アレじゃないですかね」

フレンダ「アレだよね」

浜面「アレってなんだよ」

絹旗「アレはアレしかないです」

フレンダ「うん、アレしかない」

浜面「アレ?」

フレンダ「アレはアレよ」

浜面「アレってなんだよ」

絹旗「浜面だって自分の持ち物を勝手に取られたら超怒るでしょう? 例えば、お金を奪われたりしたら」

浜面「当たり前だろ」

フレンダ「麦野も一緒ってコト」

浜面「……そうだったのか」

絹旗「やっと気づきましたか」

フレンダ「鈍感」

絹旗「超鈍感」

滝壺「どんかん」


浜面「やっぱ麦野……ファミレスで金借りたコト怒ってるのか……?」



182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:30:30.94 ID:P7Kj2VIn0
滝壺「」

絹旗「」

フレ ンダ「」

浜面「しかも昨日もお金無いって言ったらすげー怒られたし……金の切れ目が縁の切れ目って言うしなぁ……、次金が入ったら一番に謝りにいくよ……って、なんで三人ともずっこけてるんだ?」

絹旗「あの~、浜面? お金の事はものの例えで、実際麦野はそういう事で怒ってたわけじゃないと思うんです」

浜面「そうなのか?」

絹旗「え、えぇ。そうですよ」

フレンダ「こ……ここまでとは……」

絹旗「浜面仕上……超侮りがたし……」



183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:30:59.02 ID:P7Kj2VIn0
麦野「随分楽しそうな話してるじゃない? 私も混ぜなさいよ」



フレンダ「む、むぎの」

絹旗「い、いつから居たんですか?」

麦野「いつ? 今きたとこだけど?」

フレンダ「そ、そう。なははー、なんか喉渇いちゃったなー、ドリンクバーでも行ってこようかなー」

麦野「あら? そんなの浜面に任せとけばいいじゃない」

フレンダ「な、なんだか今日は自分で入れに行きたい気分なのよ、そう! たまには自分で動かないとねー」

麦野「あ、そ。いってらっしゃーい」

滝壺「(にげた)」

絹旗「(超逃げましたね)」



184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 02:31:25.77 ID:P7Kj2VIn0
浜面「お前等は何にする?」

絹旗「コーラ」

滝壺「かるぴす」

浜面「麦野は、いつものでいいな」

麦野「うん」

浜面「じゃ、行ってくるわ」



192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 19:36:17.03 ID:P7Kj2VIn0
フレンダ「(きゃ~! むぎのにバレた? 聞こえてた? それとも聞こえなかった?!)」

フレンダ「(……でも、なんかいつもと同じ風だし……別に大丈夫だよね)」

フレンダ「(それにしても、あ~、浜面、ほんとに麦野のコト、なんとも思ってないのかな)」

フレンダ「(麦野は麦野で、浜面のコト、どー思ってるんだか……)」

フレンダ「(でも正直、浜面に麦野はもったいないと思うわけよ)」

フレンダ「あれ、レモンティーが無い?」

フレンダ「むー、ツイてないな」



193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 19:39:36.45 ID:P7Kj2VIn0
フレンダ「だったらこの特製のサバフレークをミックスして……」

浜面「やめんか」

ひょい

フレンダ「ちょ、返せバカ!」

浜面「あのなぁ、どこの世界にドリンクバーに持ち込みのフレークをミックスするヤツがいるんだよ」

フレンダ「ここに居るわよ」

浜面「アホか」

フレンダ「むきー!」

浜面「こういう時はな~。すみませ~ん店員さん。レモンティー切れてるみたいなんですけど」

「わかりました、少々お待ちください」



194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 19:42:28.29 ID:P7Kj2VIn0
浜面「な? ホラこう言えばいいんだよ。ほれ、ティーパック」

フレンダ「……」

浜面「えーっと、何だっけ。滝壺がカルピスで絹旗がコーラで麦野が紅茶だったか」

フレンダ「あ、あのさ」

浜面「ん?」

フレンダ「ありがと」

浜面「あいよ」



195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 19:47:39.57 ID:P7Kj2VIn0
麦野「~~♪」


絹旗「(滝壺さん、滝壺さん)」

滝壺「(きぬはた、なに?)」

絹旗「(さっきから麦野、超ゴキゲンじゃないですか?)」

滝壺「(そうね)」

絹旗「(……誰かさんの行動一つで機嫌が超良くなったり超悪くなったり……恋する乙女ですか)」

滝壺「(麦野も女の子だもの)」


麦野「~~♪」



196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 19:51:36.95 ID:P7Kj2VIn0
浜面「ところでさっきの話だけどさ」

フレンダ「ん?」

浜面「その……マジな訳?」

フレンダ「何が?」

浜面「麦野が俺の事……その、なんだ、ほら」

フレンダ「さ~ね~」

浜面「はぁ?」

フレンダ「気になるなら自分で確かめたらぁ?」

浜面「で……できる訳ねぇだろんな事!」

フレンダ「そうだよね~、結局、浜面ヘタレだし」



197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 19:55:18.24 ID:P7Kj2VIn0
浜面「……う」

フレンダ「ヘタレの浜面、略してヘタ面ね。お似合いじゃない」

浜面「うるせー」

フレンダ「……(なにこの浜面、ちょっと可愛い訳よ。こんな顔されたら母性本能くすぐられるわよね……、あ、それで堕ちたのか麦野)」

浜面「…… で、どうなんだよ」

フレンダ「し~らないっと」

浜面「おい?! 待てよフレンダっ」

フレンダ「結局、外野がどうこう言う話でもないからね~」



198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 19:59:33.76 ID:P7Kj2VIn0
浜面「お待たせ」

麦野「ん」

浜面「ほれ、紅茶」

麦野「ありがと」

浜面「お前等も、カルピスとコーラな」

麦野「さて、全員揃った所で作戦会議を始めましょうか」

フレンダ「作戦?」

麦野「依頼よ」

絹旗「内容は?」

麦野「詳細はもうすぐ届くと思うわ、浜面、あんたのとこにメールが届くはずだから全員に転送して頂戴」

浜面「あ? あぁ、わかった」



199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 20:05:06.09 ID:P7Kj2VIn0
♪ マヨエー ソノテーヲ ヒクモーノナ-ドイナイ♪

浜面「お、来たな」

コロン……コロッ、コロッ

麦野「浜面、ポケットから何か落ちたわよ」

浜面「ん、あぁ。すまんな」

ひょい

麦野「なにそれ?」

浜面「さあ?」

麦野「さあ……って。綺麗ね、パズルのピースみたい」

浜面「全員、転送したぞー」



200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 20:09:51.04 ID:P7Kj2VIn0
滝壺「……聞こえる」

絹旗「……? 滝壺さん?」

滝壺「……声、聞こえる」

フレンダ「どーしたの?」

滝壺「……わからない、けど。悲しい声が、そこから」

麦野「ここから?」

浜面「あー、そういえば持ってて何か聞こえたな、俺も」

麦野「ふーん?」



201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 20:12:59.77 ID:P7Kj2VIn0
麦野「ま、いいわ。それより浜面、大切なものならちゃんと持っておきなさいよ」

浜面「お? おう」

フレンダ「結局、麦野はモノは大切にする派な訳よ」

浜面「ほう?」

フレンダ「だってボロボロのヌイグルミ抱いてないと眠r」

浜面「ヌイグルミ?」

麦野「フーーーー……レー……ン、ダァ?」

フレンダ「ひぃっ?! な、なんでもない、なんでもないっ」



202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 20:17:55.67 ID:P7Kj2VIn0
────────

────

──


「報告します。’メモリー’の件に関して依頼をしたところ『グループ』という組織とコンタクトがとれました」

「ふむ、ウデは確かなのか?」

「噂では学園都市でもかなり上級に位置する能力者が在籍しているとか」

「それは頼もしい」

「’メモリー’について情報を要求されていますが如何しましょう?」

「任せる」

「承知致しました」



203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 20:28:02.87 ID:P7Kj2VIn0
◇  ◇ ◇ ◇


麦野「それじゃあ、今日は解散ね。各自そのデータを叩き込んでおくこと、いいわね?」

滝壺「うん」

絹旗「超お疲れ様でした」

フレンダ「は~帰って新しいサバ缶た~べよっと」

浜面「ほんと、サバ缶好きだよなぁ」

フレンダ「きひひっ」



204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 20:32:38.32 ID:P7Kj2VIn0
絹旗「それじゃあ私はお先に超失礼しますね」

滝壺「ばいばい」

フレンダ「サバ缶サバ缶っと~♪」

麦野「はいはい」

浜面「おーう、またな」

麦野「ったく、サバ缶のどこがいいのやら」

浜面「ははは」



205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/18(火) 20:35:14.37 ID:P7Kj2VIn0
麦野「……」

浜面「……え、っと」

麦野「ん?」

浜面「お、俺らも帰るか」

麦野「そうね」

浜面「それじゃあお先に」

麦野「待ちなさいよ」

浜面「……え?」

麦野「女の子を一人で帰す気?」

浜面「あ、いや」

麦野「イヤならいいけどー?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

浜面「お供させていただきます麦野さん」

麦野「うん、よろしい」

浜面「ははは……(こんなとこでビームだされたら死ぬだろーが!)」



216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:10:37.45 ID:MVKsivV40
スタスタ

浜面「で、──────昨日のサッカーがな──」

スタスタ

浜面「────岡崎が──────ハットトリックで──────」

スタスタ

浜面「決勝──────リーグに────────」

麦野「……」

スタスタ

浜面「────おーい……麦野ぉー?」

麦野「なによ」

浜面「オレノ、ハナシ、キイテマスカ」

麦野「聞いてるわよ、岡崎がハットトトリックして勝ったんでしょ」

浜面「あと、前田も2ゴールな」

麦野「はいはい、聞いてた聞いてた」

浜面「そーかよ、ならいいけどさ」



217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:15:20.67 ID:MVKsivV40
浜面「でよ、次は開催国のカタールと試合なんだとさー。勝つと思うか?」

麦野「私サッカーなんかあんま見ないから」

浜面「そ、そうか…………(あー……スポーツの話題はNGだったか……)」

麦野「……」

浜面「……(気まずい沈黙だな……)」

麦野「……」

浜面「……(な、なんかないか話題、話題っ?!)」

麦野「ど……」

浜面「……?」

麦野「どっちかと言えば……」

浜面「……どっちかと言えば……?」

麦野「どっちかといえば、野球かなー……なんて」

浜面「は?」



218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:18:20.84 ID:MVKsivV40
麦野「だから、どっちかって言えば野球かなって言ってんのよ!」

浜面「あ? あぁ……そ、そうか。お前でもナイターとか見るんだな」

麦野「何よ! おかしい!」

浜面「いや、別に。最近じゃ女も野球見るのは普通だろ」

麦野「フン」

浜面「なんだ麦野も野球好きだったのかー、どこのファンなんだ?」

麦野「あ、あんたはどこが好きなのよ」

浜面「あ? あー、どこって……強いて挙げるなら京浜アスレチックスとか?」

麦野「じゃあ私もそこ」

浜面「私も、って……」

麦野「何よ! おかしい?!」



219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:20:29.77 ID:MVKsivV40
浜面「おかしくはねーけどさ」

麦野「ならいいじゃない、私がどこのファンだろうとさ」

浜面「いや、そうか。漫画が好きなんだな」

麦野「?」

浜面「?」

麦野「何?」

浜面「い……いや、べつに?」

麦野「そ」

浜面「……?」



220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:27:17.00 ID:MVKsivV40
麦野「それじゃ、ここでいいから」

浜面「おう」

麦野「次は遅刻すんじゃないわよ」

浜面「しねーよ!」

麦野「はいはい」

浜面「またな」

麦野「また、ね」


────────

────

──



♪ ハナテココロニキザンダユメヲーミライサエオーキーザーリーニシーテー♪

絹旗「超限界など~♪ しらない~♪ 超意味ない~♪」

絹旗「この力が~♪ 超光散らす~♪ その先に超遥かな思いを~♪」


ピ


絹旗「はい、絹旗です」

麦野『出るの遅い』

絹旗「はい、すみません。何か超緊急の用事ですか?」

麦野『……ちょっと、聞きたいんだけど、いいかしら?』

絹旗「は?」

麦野『だーかーら、聞きたい事があるんだけど』

絹旗「はぁ……私でわかる範囲なら超答えますけど」



221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:32:36.49 ID:MVKsivV40
絹旗「ナイターのチケットぉ? 麦野、野球はとっくに超シーズンオフですよ?」

麦野『え? そうなの?』

絹旗「そうですよ」

麦野『でも、サッカーは試合あったんじゃないの?』

絹旗「いや、そもそも種目が超違いますし……」

麦野『そ、そうだったの……』



222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:36:46.25 ID:MVKsivV40
絹旗「そうですよ」

麦野『まぁそんな事はと、当然、知ってたけどね。確認よ確認』

絹旗「はぁ……そうですか」

麦野『それじゃあもう一つ確認していいかしら』

絹旗「はい?」

麦野『京浜アスレチックスって何県の球団なの?』

絹旗「京浜? 超聞いたことありませんね」

麦野『え?』

絹旗「その京浜アスレチックスが超どうかしたんですか?」

麦野『いや、浜面が好きって言うから……どんなチームなのか気になって……』

絹旗「ちょっと待ってください、ネットで超調べますから」



223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:38:35.39 ID:MVKsivV40
麦野『あ、ありがと……』

絹旗「お?」

麦野『みつかった?』

絹旗「あー……」

麦野『どうしたの?』

絹旗「漫画で出てくるチームみたいですね、実在しない架空の球団だそうですよ」

麦野『』

絹旗「むぎの、超どうかしましたか?」



224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:45:18.99 ID:MVKsivV40
絹旗「……大体事情は把握しましたよ。浜面が昔野球やってたから? 野球好きをアピールしたと思ったら? 好きだって言った球団が架空の球団で?」

麦野『だ、だって。そんな事しらなかったんだから』

絹旗「どんだけ健気なんですか麦野」

麦野『し、仕方ないじゃない』

絹旗「っていうか麦野って、そんなキャラでしたっけ」

麦野『なによ、私にどんなキャラ期待してんのよ』

絹旗「いやいや、あえて無知な所を無知なりにがんばってみた感じの会話ってのがひょっとしていいかもしれませんよ?」

麦野『そ、そうかしら』

絹旗「っていうか、別に気にする事でもないと思いますよ。浜面ですし」

麦野『な……なんで浜面の事だって……』

絹旗「いや、さっきから自分で超言ってますよ、麦野」

麦野『はっ』

絹旗「超落ち着いてください」



225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:49:36.00 ID:MVKsivV40
絹旗「超深呼吸ですよ」

麦野『スーーーー……ハーーーー……』

絹旗「落ち着きました?」

麦野『……おかげさまで』

絹旗「超良かったです」

麦野『で、どうしよう絹旗ァ……』

絹旗「はー……恋する乙女みたいですね、麦野」

麦野『みたいじゃなくて、してんのよ!』



226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:50:11.34 ID:MVKsivV40
絹旗「そーですか」

麦野『そうなの』

絹旗「……」

麦野『……』

絹旗「……?」

麦野『いまの、きいた?』

絹旗「ええ、超聞きましたよ」

麦野『超・ブ・ッ・殺・す!』



228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:52:39.21 ID:MVKsivV40
絹旗「麦野っ?! 麦野、落ち着いてください!! 麦野!」

麦野『あーーーあーーーー、聞こえない何も聞こえない!』 


────────

────

──


ピンポーン

ガチャ

オジャマシマース

絹旗「と、とりあえず。お茶でもどうぞ」

麦野「あら、悪いわね」

絹旗「なぜこんな展開に……」

麦野「私の秘密、知ったんだから当然よ」

絹旗「ある意味超不可抗力ですけどね」



229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:58:33.27 ID:MVKsivV40
麦野「……で、相談なんだけど。用件はもう言わなくていいわよね?」

絹旗「ええまぁ……だいたいは」

麦野「そう、じゃあ言わせてもらうけど」

絹旗「けど?」

麦野「どーしてこいつ等がいるのよ!」


滝壺「……お茶、おいしい」

ズズズ

フレンダ「なははー、面白そうじゃない。私も混ぜなさいっての。あれ? お茶菓子おいしいわね」

モグモグ



230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:59:44.09 ID:MVKsivV40
絹旗「いや、なんか超面白そうでしたし」

麦野「そう……絹旗……あんたやっぱり……」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


絹旗「い、いやほら! 滝壺さんもフレンダも経験豊富というか! 私一人より大勢いたほうが客観的なアドバイスもできるかとおもいまして!」

滝壺「そうだよ麦野(けーけん?)」

フレンダ「そ、そうよ麦野。落ち着いて(だーれが経験豊富よきぬはたぁっ! 彼氏なんか居たことねーっつの!)」

麦野「そう……、ありがとね」

しゅん

フレンダ「小動物みたいなむぎの! たまらーん!」

麦野「っだあ! 寄るなフレンダ! 暑苦しい!」



232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 08:44:06.10 ID:r40RNmRAO
いちいち歌詞に超つける絹旗超かわいい


227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 06:50:44.64 ID:v/ALD8NGo
野球だけに超どストレートですね、麦野


231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 07:03:07.69 ID:MVKsivV40
>>227
きっと163km/hのストレートとか投げるに違いない


50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/17(月) 23:08:01.58 ID:ZLY1zJ85o
むぎのんを幸せにしてやって欲しい


236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 16:41:14.57 ID:HAwgGzls0
応援してる


237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 18:20:02.21 ID:ufT4iETDO
早く続きを!
関係無いけど、ウィルス性胃腸炎で熱38,5℃
だがこのスレを諦めるわけにはいかない!



238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 18:26:06.51 ID:T320UFEDO
>>237
ほんとに関係ねぇな



239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 20:14:09.25 ID:3tE05Xdd0
どうしてSSの麦野はこうもかわいいのか。結婚したい。




次→麦野「私が暗部に落ちる前に」【中編】

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保志総一朗、早見沙織、斎藤久 2011/06/24

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禁書目録SS   コメント:1   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
4571. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/10(木) 18:58 ▼このコメントに返信する
まとめ乙です
改めて読むとやっぱいいなー
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