麦野「私が暗部に落ちる前に」【中編】

2011-03-10 (木) 18:12  禁書目録SS   0コメント  
前→麦野「私が暗部に落ちる前に」



240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:20:08.79 ID:MVKsivV40
────────

────

──


黄泉川「やっと見つけたじゃん、浜面」

浜面「……また黄泉川かよ」

黄泉川「まーまー、そんな顔しないしない」

浜面「何か用かよ」

黄泉川「用って程でもないじゃん、聞きたい事があって」

浜面「お前が俺に聞きたい事だぁ?」

黄泉川「お前がスキルアウトを抜けた事は把握してるんだけどね」

浜面「なんだ、そんな事かよ」

黄泉川「駒場はそれを許したのか?」



241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:20:50.93 ID:MVKsivV40
浜面「……」

黄泉川「駒場じゃん、駒場利徳。お前んとこのリーダー」

浜面「……なんでお前がそんな事気にするんだよ、関係ねーだろ」

黄泉川「ある」

浜面「ないだろ」

黄泉川「関係ある」

浜面「ねぇよ!」

黄泉川「心配してんじゃん!」

浜面「……」

黄泉川「スキルアウトって組織はさぁ、そんな簡単に抜ける事ができる組織じゃないのはよくわかってんじゃんよ。なのに浜面はスキルアウトを抜けた、それ以降駒場の目撃情報は無い、心配するなっていう方が無理な注文じゃんよ!」

浜面「……いいだろ、そんなに知りたきゃ教えてやるよ……駒場の旦那は死んだよ」



242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:21:16.86 ID:MVKsivV40
黄泉川「……っ」

浜面「……死んだんだ」

黄泉川「どうして……」

浜面「詳しい事は知らないし、知ってても教える義理はねぇよ、ただ……」

黄泉川「……」

浜面「駒場利徳っていう人間はもうこの世に存在しねぇ、それだけだ」

黄泉川「……墓、教えるじゃんよ」

浜面「あぁっ?!」

黄泉川「墓参りくらい、私にもさせてもらう権利があるじゃん」



243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:21:52.68 ID:MVKsivV40
浜面「やなこった! だいたいお前が居なかったら……っ! お前が居なかったら……、お前が……クソッ」

黄泉川「頼む」

浜面「……っ」

黄泉川「頼むよ、浜面。私にとっては……誰であろうが大切な教え子なんだ」

浜面「……」

黄泉川「……頼む」

浜面「わかったよ……わかったから顔あげてくれよ黄泉川」

黄泉川「教えてくれるじゃん?」

浜面「……、第七学区の──────、通りを抜けて────」

黄泉川「連れていくじゃんよ、浜面」

浜面「……いいのかよ警備員、完全下校時刻はとっくに過ぎてるんじゃねーのかよ」

黄泉川「時と場合によるじゃん」

浜面「そーかよ」



244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:27:10.44 ID:MVKsivV40


浜面「……ここだよ」


黄泉川「ここが……」

浜面「今日も誰か来てたみたいだな、花が添えてある」

黄泉川「随分慕われてたみたいじゃん」

浜面「たりめーだろ、駒場さんだぞ」

黄泉川「私にとっては……手のかかる子供だったけど、そうか、そうだったのか……」

浜面「……」

黄泉川「なぁ駒場よ」

浜面「……」

黄泉川「すまなかったな……」



245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:31:37.12 ID:MVKsivV40
浜面「……」

黄泉川「本来、お前や浜面みたいにドロップアウトする生徒が出ないようにするのが私の、教師の仕事じゃん」

浜面「……」

黄泉川「なのに私ときたらお前等と顔を合わせるのはいつも、いつもいつもいつも事件の現場じゃんよ」

浜面「……」

黄泉川「そりゃいつも面倒事を起こしてくれて、腹が立った事もあるじゃん。クレーン車でATM強奪した時は怒り心頭だったじゃんよ」

黄泉川「でもそれは、お前達だけに怒りの矛先を向けるのは間違っていた事じゃないかって、最近そう思うじゃん」

黄泉川「お前達をそうさせてしまう、その前に、何か出来たんじゃないか……私の本来の仕事は、そこなんじゃないかって」

黄泉川「……なあ駒場よ」

黄泉川「お前は一体この学園都市で、何を見て、何を感じたんだ」

黄泉川「……ちょっとで良いから、教えてほしいじゃんよ……」



246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:37:36.70 ID:MVKsivV40
『あのー……すみません、警備員の詰め所ってここで合ってますか?』

『いかにも。少年、警備員に何か用じゃん?』

『この子、迷子みたいなんですけど』

『迷子?』

『あー、えー。はい』

『よしよし、そんなに怖がらなくてもいいじゃんよ。ちょっとで良いから、知ってる事をおねーさんに教えて欲しいじゃん?』

──?

『?』

『すみませんこの子、喋れないみたいなんですよ』



247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:40:08.38 ID:MVKsivV40
『んー、参ったじゃんよ。学生証は持ってるじゃん?』

『えっと、俺来週入学で、まだ発行してもらってないんです。たぶんこの子もそうだと思います』

『そうか。だったらとりあえず詳しい話を……』

──?

『そっか、話せないのか』

『あの……この子、ちゃんと戻れますか?』

『安心するじゃん、おねーさんに任せとくじゃんよ。ちゃーんとお家に戻してあげるじゃん』

『だってよ! オマエ、よかったな!』



248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:42:31.86 ID:MVKsivV40
──、ふるふる。

『なんだ? 帰りたくないのか?』

──、こくり。

『んー……、そういう訳にはいかないじゃんよ』

──、……。

『あ、あの。この子の身元がわかるまでしばらく俺の家で預かっていてもいいですか? なんつーか、俺に懐いているというか、その』

『この子が良いなら構わないけど、どうするじゃん?』

──、こく

『ん、わかったじゃん。とりあえずいくつか質問するから、答えてほしいじゃん』



249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:45:14.40 ID:MVKsivV40
『ありがとうございました』

『なんのなんの、困った事があったらいつでも相談にくるじゃん』

『はいっ』

『ん、良い返事じゃん。これから入学となると、身体検査が楽しみじゃん?』

『へへっ』

『勉学に励むじゃんよ、少年』

『わかった!』

『何かわかったら連絡するじゃん』



250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:50:47.26 ID:MVKsivV40
カタカタ

『えーっと……身長約140センチ程の少女、迷子……』

カタカタ

『白色ワンピース……ロングヘアで栗色の髪』

カタカタ

『身元、捜査……願い……○月○日……』

カタカタ

『浜面仕上…… 家で……保護』

カタッ

『黄泉川! 出動だ!』

『わかったじゃん! すぐ行くじゃん!』

パタン



251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 21:58:06.32 ID:MVKsivV40
────────

────

──


──、!

『…… 嘘……だろ……』

──、!!

『鮭味の……カップラーメン……だと……?』

──、こくこく

『シーフード味じゃなくて、なぜ鮭味のピンポイントなんだ…………』

──、きらきら

『すげー目輝いてんなオマエさ、そんなに心配せんでも買うからよ、安心しとけ』

──!

『っだあ! 抱きつくなコラ!』

──、しゅん

『あ…… その、すまん……ほら、2個買ってあげるから』

──!

『喜怒哀楽がわかりやすすぎだろ……』



252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:08:09.17 ID:MVKsivV40
『まーいっか、ほれ、カゴん中入れとけ』

──こくり

『おし、後ほしい食べ物あるか?』

──?

『なんでもいいんだぞー、ただし食べ物なー?』

──……

『いやー……、そんな真剣に悩まなくてもいい気が……』

──!

『ん? 何指差してんだ……?』

──じー……

『……』

──じー……

『いやアレ、この店のマスコットだから。いくら鮭のキャラクターだからってくえねえから』

──、ガーン



253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:10:39.62 ID:MVKsivV40
『お買い上げありがとうございましたー』

『さて、食料も買ったし……次は服だな』

──?

『服だよ服、オマエそれしか着るもんねーだろ?』

──?

『別に困らないけど? みたいな感じで首を傾げられても……こっちが困るんだよ』

── こくり

『わかったら行くぞー、たしかセブンスミストっていう店があったはずだから』



254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:16:43.92 ID:MVKsivV40
『さて……来たはいいが……よく考えたら俺、女の服の事なんてわかんねーぞ……』

──!

『お? 気に入ったのあったか?』

──!

『っだあ! こんなキワドイ水着選ぶやつがあるか! それに普通に着る服を選んでんだよ今は!』

クスクス

兄妹カシラー?

カワイイー

『ぐ……何故か周囲から白い目で見られてる気が……』

──?



255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:20:11.59 ID:MVKsivV40
『ん?』

──?

『これなんかいいんじゃねーの?』

──……!

『向日葵柄のワンピース、どうだ?』

──、こく

『なんつーか、今着てるからかもしれねーけどよ』

──?

『ワンピースが似合う気がするんだよオマエには』

──?

『あー、とにかく試着してこい。って、まさか試着も一人でできないっていうオチじゃあないよな?』

──……

『さ、さすがに服くらいは一人で……』

──?



256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:21:58.46 ID:MVKsivV40
『お買い上げありがとうございましたー』

──♪

『おー? 似合う似合う』

──ぺこり

『…… ん? お礼のつもりか?』

──こくこく

『どーいたしまして』

──♪

『はは、子供みてぇにはしゃいでるな』



257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:24:25.25 ID:MVKsivV40
ドン

不良A『……いてーな、このクソガキ』

──……!

不良A『あぁ?! 人にぶつかっておいてごめんなさいも言えねぇのかてめぇは!』

──ふるふる

不良A『なんだテメェ……おい、ふざけてんのか!』

──、ビクッ

不良A『あぁーん? よく見たら可愛い顔してんじゃねーか、おい、ちょっと来いよ』

『おい、待てよ』



258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:27:12.42 ID:MVKsivV40
不良A『んだてめぇ!』

『この子の保護者……というか、まぁ、そんな感じだけどさ』

不良A『保護者だぁ?! ……だったらてめーが責任とるんかよ』

『責任だ?』

不良A『おー、いてえいてえ。こりゃ骨が折れてるな、おいニーちゃんよ、入院費と治療費寄越せや』

『どう見ても折れてるようにはみえねぇけどな』

不良A『はー? だから病院に行って検査してもらうんだろーが、頭沸いてんのか、あ?』

『……話し合いは無駄な様だな』



259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:29:44.65 ID:MVKsivV40
『おい、荷物もってどっか隠れてろ』

──!

『いいから、どっか安全な所で、な?』

──、ふるふる

『良い子だから、言う事聞いてくれ』

──……

『ちょっとしたら戻ってきてくれ、待ってるからよ』

──、こくり

不良A『話し合いは終わったかよ、ええ? ニーちゃんよぉ』

『ああ』

不良A『だったら……とっとと死ねや!』

ゴッ



260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:30:50.59 ID:MVKsivV40
──、おろおろ

──、あたふた

──、きょろきょろ

──、!

『何かしら? あの子』

『さー、行こう行こう。約束の時間に遅れちゃうよ』



261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:32:22.95 ID:MVKsivV40
──!

── とてとて

『おー? お嬢ちゃんじゃん、どうしたじゃん?』

──!

『そんなに慌てなくても、ちゃんと見つけてあげるじゃん』

『おい黄泉川! また出動だ!』

『わかったじゃん! お嬢ちゃん、おねーちゃんはちょっとお仕事いってくるじゃんよ!』

──、……。



262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:35:11.26 ID:MVKsivV40
──、とぼとぼ。

──、とぼとぼ。

──。

『よぉ……、無事だったかァ?』

──……

『ったくよー、最初は……いてて、最初は勝ってたんだけどな、チクショー、後でぞろぞろ4人も5人も出てきやがってよ、はは』

──……

『負けちまったー、あー、よわっちいな俺、ったくよー』

──……



263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:38:16.48 ID:MVKsivV40
『なんか身体がふわっと浮いたり、鉄がぐにゃんて曲がったり、あれが能力ってやつなのかな?』

──、

『まぁオマエが無事でよかった』

──!

『はは、せっかく買った服、キレーなままで、良かったな?』

──……。

『おーい?』

──、

『どうした?』

──、くるっ

『おい、どこ行くんだよ! 待っ……いててて』



264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:42:53.58 ID:MVKsivV40
ドクン

──、ハァッ

ドクン

ドクン

──、ハアッ

ドクン

──、ハァッ……ハア……ハ……ア……

──、……ロス……コ…………

──、ス………………

────、コロ………………ス……



265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:44:06.09 ID:MVKsivV40
不良A『カカカカ、サイコーだったなオイ』

不良B『てんで弱っちいのによ、倒しても倒しても起き上がってきて笑えたな』

不良C『能力者に立ち向かう無能力者カッコイイ! ってかぁ?』

不良D『ま、あんだけやられたらもう立ち向かってこねーだろ』

不良A『あーあー、しかも全然金もってなかったしよぉ。働き損だっての』

不良B『ちげーねー』



266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:46:47.06 ID:MVKsivV40
不良A『ったくよー、こんなんじゃ全然たりねえよ、あと2.3人狩ってくか?』

不良B『この時期だと新入生のガキが多くて簡単だしなぁ』

不良C『こっちのサイフが潤ってしゃーねーよ』

不良D『風紀委員も警備員も最近出てる事多いしな、こっちまで手がまわんねーのよ』

不良A『まさに俺らへの追い風だなオイ』

不良B『ははっ』


──、ミ……ツ……ケタ……



267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:50:24.51 ID:MVKsivV40
不良A『あん?』

不良B『どうしたよ?』

不良A『なんか言ったか?』

不良C『いや?』

不良A『なんだ? 空耳か?』

不良D『おいおい、脅かすなっての』

不良A『ははっ、すまねえすまねえ』


── ミツ……ケタ


不良D『ああ? なんだぁ? このガキ』



268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:52:18.43 ID:MVKsivV40
不良C『ガキ?』

不良A『さっきのガキの連れじゃねーか、なんだ? せっかく見逃してやったってのにまた来ちまったのか? ああ?』

不良B『げへへ、どーする? やっちまう?』

不良D『お前は女とか子供でも手加減なしだからな』

不良B『げへへ、げへ…… げへ、いいだろ?』

不良A『程々にな』

不良B『いっただっきまーすっ!』

キュイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィン……

ドッ

不良A『……?』



269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:54:11.68 ID:MVKsivV40
不良C『お、おい、あいつは?』

不良D『き……消えちまった?』

不良A『っ、何の能力だ!』


キュイイイイイイィィィン……


不良A『やべぇ……何か知らんがやべぇぞ!』

不良D『に……逃げろぉおおお!!』

不良C『おい、待てよ!』



270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:56:48.14 ID:MVKsivV40
────────

────

──



──、とぼとぼ

──、とぼとぼ。

『お、いたいた! おーい!』

──!

『ったくよー、どこ行ってたんだー? 探したぞオイ』

──……

『ん?』

──くるっ

『あ、おい! 待てって!』

グイッ

──あ……

『どこ行くんだよ』



271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 22:59:06.69 ID:MVKsivV40
──、どこ……

『はぁ……行く当てもなく走り出したんか? アホかオマエ、心配したんだぞー?』

──、うん……

『さ、かえろーぜ』

──、かえ……る?

『俺ん家だよ』

──、家?

『そ、いえ』

──、うん……。

『……』

──、?

『あれ……? ってか今喋って……?』



272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 23:02:25.68 ID:MVKsivV40
黄泉川「できれば、もっとお前と喋ってみたかったじゃんよ駒場」

黄泉川「……また来るじゃん」


浜面「……」


黄泉川「ありがとう」

浜面「何を」

黄泉川「元々お前は迷子の女の子を届けてくれるような心優しい少年だったなって思い出しただけじゃん」

浜面「あ? 迷子だ?」

黄泉川「そうじゃん?」



273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/19(水) 23:04:45.11 ID:MVKsivV40
浜面「何で俺がそんなめんどくせー事しなきゃいけねぇんだよ」

黄泉川「……男にツンデレは似合わないじゃん?」

浜面「ちげぇよ!」

黄泉川「まあいいじゃん、今日はもう遅いから、まっすぐ家に帰るじゃんよ」

浜面「前みたく、ついてこねーのかよ」

黄泉川「浜面のこと、信じてるから」

浜面「そーかよ」

黄泉川「浜面はまっすぐ家に帰るはずじゃん」

浜面「けっ」



279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/20(木) 02:10:53.58 ID:5bVEXwja0
黄泉川「それじゃあ」

浜面「……待てよ、クソババア」

黄泉川「失礼なヤツめ、やっぱ手錠つけて留置場にぶち込んでやるじゃん?」

浜面「俺は学園都市のゴミクズだ、それは認めるよ」

黄泉川「……?」

浜面「けどな、そんなゴミクズにも、ひょっとしたら、守りたいものの一つくらいあったかもしれねーだろ」

黄泉川「何の話じゃん」

浜面「俺にもわかんねーよ、……ただ」

黄泉川「ただ?」

浜面「なーんか、大事なモン、忘れちまってる気がするんだよな」

黄泉川「……ま、せいぜい悩むといいじゃん、少年」

────────

────

──

フレンダ「悩み事?」

麦野「悩み事」



280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/20(木) 02:14:36.13 ID:5bVEXwja0
絹旗「お茶どうぞ」

フレンダ「ありがと」

ズズズ

絹旗「麦野も」

麦野「ありがとう」

ズズズ

絹旗「滝壺さんも」

滝壺「……ん」

モグモグ

滝壺「ありがと」

ズズズ



281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/20(木) 02:17:27.46 ID:5bVEXwja0
フレンダ「く~、お茶がおいし~」

麦野「そうね」

絹旗「お茶の国・静岡から超取り寄せましたからね」

滝壺「そうなの?」

絹旗「最近お茶に超凝ってるんですよ、このお茶菓子も美味しいでしょ?」

麦野「そうね」

モグモグ

フレンダ「ん~、サバ缶があれば文句なしね。カレー味、カレー味」

滝壺「お茶にカレー……」

フレンダ「意外とイケるかもしれないわよ」

麦野「あはは、そんなわけないでしょー」



282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/20(木) 02:19:43.71 ID:5bVEXwja0
絹旗「このお茶に超含まれるカテキンが血圧とかコステロールとか血糖値……アレルギー等に超効果テキメンらしいですよ」

フレンダ「ほ~」

ズズズ

滝壺「おいしいね」

麦野「本当ね」

ズズズ

麦野「そんじゃ、お茶も頂いたし帰るわ」

フレンダ「は~い、またね~ん」

絹旗「超おつかれさまでした」

滝壺「ばいばい」

麦野「……あれ?」



283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/20(木) 02:22:00.30 ID:5bVEXwja0
麦野「危うくいつも通り帰る所だったわ」

フレンダ「いや、やっぱりこう。お約束は一度はやっとかないと」

滝壺「おやくそく」

絹旗「超お約束です」

麦野「……で」

フレンダ「うん」

麦野「……あの」

絹旗「はい」

麦野「……その」

滝壺「うん」

麦野「……………………………………………………」

麦野「っだあ! やっぱりだめ、いえないっ!」



284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/20(木) 02:24:45.40 ID:5bVEXwja0
滝壺「大丈夫、そんな乙女ちっくなむぎのを私は応援してる」

麦野「滝壺……あんた……」

フレンダ「で、浜面がどうしたって?」

麦野「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

フレンダ「へ? え?」

麦野「フー……レ、ン、ダァ……」

フレンダ「な、なになになになに?!」

麦野「人が今から言おうとしていた事をサラっといってんじゃないわよ~~~~~!!!!!!!」

フレンダ「きゃ~~~~~!! 麦野! 落ち着いて! 殿中! 殿中でござるっ!!!」

麦野「あんたそんなナリして忠臣蔵?! やっぱり日本人でしょ!」

フレンダ「今ソレは関係ないでしょ~~!!!」



285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/20(木) 02:26:59.32 ID:5bVEXwja0
絹旗「私の家……超終わった……」

滝壺「大丈夫」

絹旗「ふえぇ~、たきつぼさぁあ~ん」

滝壺「ほらむぎの、フレンダ、きぬはたが泣いちゃったよ」

麦野・フレンダ「ご……ごめんなさい……」

絹旗「……(超計画通り)」



286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/20(木) 02:30:02.94 ID:5bVEXwja0
麦野「……で、その……浜面の事なんだけどさ……」

フレンダ「うんうん、浜面がどうしたわけ?」

麦野「……その」

絹旗「はい」

麦野「……ええっと……」

滝壺「うん」

麦野「……その、えーっと。浜面の事が、気になってるというか……」



287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/20(木) 02:30:51.10 ID:5bVEXwja0
フレンダ「……」

絹旗「……」

滝壺「……むぎの」

麦野「うん?」

フレンダ「結局、アタシらは麦野の事を応援してるわけよ」

絹旗「敵は超強敵ですが、めげない事が超重要だと思います」

滝壺「がんばって」

麦野「え? あ、うん。やけに話が早いわね……」



288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/20(木) 02:32:26.02 ID:5bVEXwja0
フレンダ「だって~ね~?」ニヤニヤ

絹旗「ね~、ですよね~?」ニヤニヤ

滝壺「ね~?」

麦野「?」

フレンダ「結局、アタシらの目に曇りはないってワケよ」

絹旗「ですね」

滝壺「うん」

麦野「そ、そう……」



289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/20(木) 02:34:40.67 ID:5bVEXwja0
フレンダ「でも正直、なんで浜面?」

麦野「え?」

絹旗「この際超ハッキリ言わせてもらいますけど、麦野と浜面じゃ超お似合いじゃないですよ」

麦野「そ……それは……」

滝壺「ワケアリ?」

麦野「う」

フレンダ「ワケアリなのね……」

滝壺「超ワケアリですか……」

麦野「べ、別に大したことじゃないんだけど、本当に、全然大したことじゃないのよ?」



297 :22巻後アイテム:2011/01/20(木) 23:58:22.03 ID:5bVEXwja0
麦野「どこから話せばいいかしら……」


────────

────

──


──、む、ぎの

『麦野? お前麦野っていうのか?』

──、……うん。

『なんだよハハハ、良かったなおい、話せる様になったんだな!』

──、うん。

『あ、そうだ。まだちゃんと名乗ってなかったな。俺は浜面仕上、よろしくな、麦野……麦野……えーっと?』

──、なに?

『下は何て言うんだ?』

──、した?

『苗字じゃなくて、ナマエの方だよ』

──しずり。むぎのしずり。

『しずりかー、どんな字書くんだ?』



299 :22巻後アイテム:2011/01/21(金) 00:03:30.91 ID:zFlo3s+x0
── 沈利。

『へー、かわいいナマエだな、沈利か』

──、うん。

『沈利はどっから来たんだ? なんであんなトコに居たんだ?』

──、……。

『ま、言いたくなければそれでもいいけどさ』

──、うん。

『とにかく喋れる様になったみたいでよかったよ』

──、はまづら。

『あん?』

──、はまづら、しあげ?

『そーだよ、浜面だよ』



300 :22巻後アイテム:2011/01/21(金) 00:07:48.23 ID:zFlo3s+x0
──、クスクス

『あー? 何が面白いんだよ?』

──、ヘンなナマエ。

『ぬわぁんだとぉう! 沈利っ! てめー飯抜きにすんぞ!』

──、キャー

『待てこのやろー!』

──、野郎じゃないもーん、女の子だもーん。

『あいつ……実は結構ポギャブラリー豊富なんじゃねえか? 常識知らずなのに……』

──、おーい、先行っちゃうよー?



301 :22巻後アイテム:2011/01/21(金) 00:10:34.98 ID:zFlo3s+x0
『あーもー、こら。勝手に行くと迷うぞ、お前ただでさえ迷子なのにこれ以上迷子になってどーすんだ』

──、はまづら。

『なんだ?』

──、ふく、ありがと。

『あん?』

──、おしゃれ、してみたかったの。

『そーかよ』

──、怪我、大丈夫?

『全然、喧嘩なんか慣れっこだしよ』

グイ

『いてててててててててててて!!! バカ! 内出血してんだよ! ひっぱんな!』

──、いたいのいたいの、とんでけー。



302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:13:03.58 ID:zFlo3s+x0
『お前……』

──、どう? 治った?

『……ん、あぁ。なんか治った気がする』

──、そ。良かった。

『ありがとな』

──ん?

『これで服とチャラだな』

──、えへへ。



304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:16:18.34 ID:zFlo3s+x0
『…… ま、とにかく。そろそろ帰るか』

──うんっ

『ハラも減っただろ?』

──はやく鮭味食べたい。

『お前、どんだけシャケ好きなんだよ』



305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:19:36.46 ID:zFlo3s+x0
── だって、今まで食べた事なかったから。

『そうなのか?』

──、うん。

『何食ってたんだよ今まで……』

──、さあ? 学園都市で独自に開発したサプリメントとか、栄養はドリンクか点滴で……

『待てまてまてまてえぇぇぇぇぇえ~~~~い!!! なんの話だよそりゃ!!』

──、え?

『独自に開発したサプリメントだぁ?』

──、うん。能力開発を促す薬みたいなものらしいけれど……。

『……ほー……』

──、私、レベル五候補だから。



306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:23:46.71 ID:zFlo3s+x0
『はぇっ?! レベル五候補っ?!』

──、え? うん。

『……すげー』

──、はまづら?

『すげー! すげーよ沈利っ! 何の能力なんだっ!?』

──、えっと。原子崩しって言って……

『メルトダウナー?! く~、なんだそのカッコイイネーミングっ! あぁずりーなぁ、いいなぁ、俺も早く能力開発受けてみたいぜー』

──、ははは。

『俺とお前、友達な』

──、ともだち?

『おう、学園都市に来て最初にできた友達』

──、うんっ



303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:15:30.35 ID:s+m8Ekbao
麦のんかわいいな…


307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:25:55.78 ID:gf3jjtH+o
なにこれかわいい鼻血でそう



308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:27:24.16 ID:zFlo3s+x0
──、でも

『あん?』

──、友達って、何するの?

『いや、別に普通だろ?』

──、普通って何?

『んー……? 普通にしゃべったり、普通に遊んだり、普通に笑ったり喧嘩したり……? そういえば普通って何だろうな』

── はまづら

『ん?』

──わかんない、ちゃんとわかるように話して。

『……ガーン』

──…… プ

『……あん?』

──、アハハハハ……ククク……アハハハハ、はまづら。へんな顔~



309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:34:00.94 ID:zFlo3s+x0
ガチャ

『ただいまー』

──ただいまー。

パタン

『さて、と。今日野球やってたっけかな……』

ピ

──はまづら、鮭味!

『おいおいおいおいおいおい、待て待て、まずは手洗いだろうが!』

── 洗ったよ!

『うそつけっ! ずっとその箱握ってただろうが!』

──むー……。



310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:37:21.66 ID:zFlo3s+x0
『ごちそうさまでした』

──ごちそうさまでした。

『……なぁ』

──うん?

『……いくら好きだからって二箱も食うか?』

──いいじゃない

『まぁお前用に買ったんだからいいけどさ、明日の分ないぞ?』

──……

『……?』

── ジワッ……

『っだああああ!!! 泣くな! そんな事で!!』



311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:40:11.96 ID:zFlo3s+x0
──、だって……だって……

『何も泣く事ないだろ?』

──、だって……美味しくて……

『あーはいはい、そうだな、すげー美味そうに食ってたな』

──、……ごめんなさい……

『そこまで真剣に謝られると何か罪悪感が……』

──、はまづら……

『ん?』

──、また、買っても……良い?

『……』

──?

『…… (あれ? なにこの子、こんなに可愛かったっけ)』

──どうしたの?

『ゴホゴホ、いや、ん~? なんでもない』



312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:43:13.53 ID:zFlo3s+x0
『ま、いいや。また買いに行けば済む話だしな』

──、やったあ!

『ただし、次からは一個だからな』

──、えー、ケチ。

『ケチじゃねえよ! 俺の金だろうが!』

──、お金にうるさい男はモテないらしいよ?

『どこで覚えたんだそんな知識』

──、小説。

『なんの小説だ……』



313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:44:39.55 ID:zFlo3s+x0
『そんじゃ片付けやっとくからよ、先に風呂入ってこいよ』

──、うん、わかった。

『おう』

──、……。

『……?』

──、……。

『どうしたんだ?』

──、覗くなよ、はーまづらぁ。

『覗くかよ!』

──、あははっ。

『ったくどこでそんな言葉覚えてきたんだか……』



314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:47:06.47 ID:zFlo3s+x0
『歯も磨いたし、寝るか』

──うん。

『じゃ……お前布団使っていいからな?』

──、はまづらは?

『ソファーで寝るよ』

──、……ね?

『あん?』

──、一緒じゃ、だめ?

『ナンデストー』



315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:49:17.58 ID:zFlo3s+x0
『いや、俺はいいんだけどさ、お前はいいのかよ?』

──なんで?

『疑問に質問で返球されたっ?!』

──はまづらならいいよ?

『無防備すぎんだろうが……』

──なんで?

『なんでって……はぁ、まぁ、沈利が良いってんだから良いんだろうけどよ……』

──、ほらココ、ココ。

『あーもー、わかったよ』



316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:49:54.17 ID:zFlo3s+x0
『じゃー、電気けすぞー』

パチッ

──おやすみ。

『ん、おやすみ』



317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:51:06.27 ID:zFlo3s+x0
──、ね。はまづら。寝た?

『俺の鼻つまみながら言う台詞かそれ』

──、あははっ。

『はな、いたい』

── ごめんごめん。



318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:53:09.62 ID:zFlo3s+x0
── ねー。

『なんだよ』

──、何かお話してよ。

『はぁ?』

──、こういう時ってさ、昔話とかしてくれるんじゃないの?

『俺はオカンか!』

──、悪寒?

『字面的に間違ってますそれ……』

── わかんないよ?



319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:54:10.03 ID:zFlo3s+x0
──、ねぇ。はまづら。

『あん?』

──、あの時はまづら。私の事、助けてくれたよね。

『あぁ、あの事か』

──、ありがとう。

『別にいいって、たいした事じゃねーし』

──ううん。

『?』

──、私にとっては、すごく、大きな事だから。

『そーかよ』

──はまづらは、私の救世主だよ。

『オーゲサだなオイ』

──ううん、本当に。



320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 00:55:20.80 ID:zFlo3s+x0
──、だから。

『ん?』

──私、私ね、あのね?

『なんだよ』

──はまづらの事、守ってあげるね。

『はは、ありがとよ』

──うんっ

『さ、もう寝ようぜ』



323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 01:05:31.77 ID:s+m8Ekbao
乙です!
応援してるよ!麦のんを( ´ ▽ ` )



325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 05:54:33.58 ID:wagnlNU70
ショタ面ときいてとんできました


326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 07:50:29.19 ID:mVuKCfPIO
>>325
あわきん、口から吐瀉物垂らしながらニヤニヤしないで気持ち悪い



324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 01:09:11.20 ID:rQdkZH2IO
もしもこんな過去があって本編の展開になったとか考えると……(´;ω;`)ブワッ



330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 22:02:57.19 ID:zFlo3s+x0
────────

────

──


『博士! 見つけました!』

『ふむ、情報元はどこだ』

『警備員の書庫です』

『警備員の?』

『迷子の名簿に登録が、……髪型や身長や着ていた服など身体的特徴が一致します』

『それはそれは……善良な学園都市の一般市民に感謝しなくてはな……はははは』



331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 22:03:50.04 ID:zFlo3s+x0
『現在一般人の下で保護されているようですが……』

『構わん、すぐにつれて来い。最悪アレを使っても良い』

『はぁ……しかしアレはまだ開発途中では』

『なに、レベル五のデータが取れると思えば良い』

『わかりました』

『良い報告を待っている』



332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 22:06:45.48 ID:zFlo3s+x0
『逃げられんぞ……原子崩し……私からはな……くくく』


────────

────

──


『逃げんじゃねーよ!』

──、やだ!

『てめー! 俺が隠しておいたお菓子食べやがって! ゆるせーーん!』

──、だからさっきから謝ってるじゃない

『ふんぬー! 理解は出来ても納得できーーーーん!!!』

──、つかまんないよーだ、べー。

『あ、てめー、こら! まちやがれ!』



333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 22:10:10.67 ID:zFlo3s+x0
ピタッ

──、……。

『へへっ、とうとう観念したか』

──、……。

『食べ物の恨みは恐ろしい、くらえーーー!』

──、静かに。

『……どした?』

──、はまづら。

『あん?』

──、そのまま。動かないで

『は? なんで』

──、いいから。

『沈利?』



334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 22:12:43.47 ID:zFlo3s+x0
──、今。隣のビルの屋上から一瞬だけ反射光が見えた。

『反射光?』

──、たぶん、双眼鏡か何かの。

『新手の覗きか?』

──、はまづら。カーテン閉めて、なるべく自然な動作で

『お? おう』

──、……まさか。まさかね。



335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 22:20:35.63 ID:zFlo3s+x0
『ふふふふん♪ ふふん♪ ふふふふん♪ ふふん♪ 星屑ロンリネス♪』

──朝からジョーキゲンね。

『あったりまえだろー? 明日からついに学校なんだからよ』

──ふーん?

『夢にまでみた学園都市の学校……あー、はやく明日にならねーかなー』

── ふーん……はまづらは私より学校の方が楽しみなんだ……

『……へ?』

──、いいんだ、どうせ私なんか……

『お、おい沈利?』

──、……

『す、すまん、傷つけたなら謝る。な? このとおりだ』



336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 22:24:35.38 ID:zFlo3s+x0
──、……

『すまなかった』

──、……プ

『……え?』

──、あはははは、こんなタンジュンな手に引っかかるなんて、ばっかみたい

『ぬわぁんだとぅおおおおおお!!!』

──、べー

『沈利っ! てめー!!』

──、はまづら、やさしいね。

『は?』



337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 22:27:13.77 ID:zFlo3s+x0
──、服、かったくれたし

──、シャケも買ってくれるし

──、面白くないけどバカだし

『おい』

──、私の事、……名前で呼んでくれるし

『それはまぁ、当たり前だろ。友達なんだし』

──、……うん。



338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/21(金) 22:44:10.03 ID:zFlo3s+x0
『それより俺さ、いまから学校に手続きいかないといけないから留守番しててくれるか?』

──留守番?

『おう、2時間くらいで帰って来れると思うんだけど』

──、やだ、はまづらと一緒にいる。

『だーめ、関係者以外入っちゃいけないんだぞ?』

──、はまづらの友達だもん

『おいおい、我侭言う子はダメだぜ~?』

──、ワガママじゃないもん

『ちゃーんと留守番できてたら、シャケ弁買ってきてやるから、おとなしくまってろい』

──、……う、わかった……。

『あれ……? 冷静に考えたら 俺<シャケ弁 ってこと……?』



343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 03:18:51.92 ID:sK0txke00
──、でも。気をつけてね

『迷子にならないようにか?』

──、違う。

『へいへい、すぐ帰ってくるから待っててくれ』



344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 03:21:27.62 ID:sK0txke00
ガチャ

『じゃ、いってきまーす』

パタン


──、心配だ。

──、さっきのアレが私の勘違いだといいのだけれど。

──、……もし、あいつらがこの場所を特定してるとしたら絶対私を連れ戻しにくる。

──、はまづらにも危険があるかもしれない。

──、……だったら、私とはまづらとは別行動の方が……?

──、……。

──、いや、あいつらがはまづらに手出しするかもしれない。

──、でも……。

──、……よし、尾行だ。

──、むかし、推理小説とかで読んだ、大丈夫、やり方はわかる。



345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 03:24:59.82 ID:sK0txke00
──、だったら準備だ。

──、必要なモノは?

──、ええっと……。

──、これと、これと。

──、それから、地図と

──、あとは、水筒と……お菓子ももっていこう。冷蔵庫のうえ、お菓子の隠し場所はもう覚えた。

──、それから、このぬいぐるみも。

──、あ、しまった

──、リュックに入らない。

──、はやくしないとはまづらが見えないところまで行ってしまう。

──、なんとか全部を詰め込んで、私は外に出た。



346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 03:28:39.58 ID:sK0txke00
────────

────

──


『おい』

『なんだ』

『例の少年が家を出たぞ』

『原子崩しは?』

『いない、恐らくまだ家の中だ』

『キャパシティダウンの準備は?』

『いつでもイケる』

『だったら突入だ、原子崩しを確保する。突入と同時にキャパシティダウンを起動しろ。捕獲はなるべく人目につかないようにな』



347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 03:31:43.11 ID:sK0txke00
『…… 待て、ターゲットが家を出た』

『何?』

『リュックサックに水筒……はっ、ピクニックにでも行くつもりか』

『どこに向かっている?』

『わからん……だが人の目の多い場所だろうな』

『……今日の捕獲は諦めるか?』

『いや、博士の堪忍袋が切れる前に仕事を終わらせたい。尾行を継続する』

『わかったよ、上司がアレだと部下は大変だな』

『気遣い感謝するよ』



348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 03:35:51.06 ID:sK0txke00
『…… に、しても。まだガキじゃねえか、本当にあんな子供一人捕まえるのにこんな仰々しい機械が必要なのかね』

『相手はレベル五候補だ、ただの子供……いや、人間とは思わない方が良い』

『鬼だねぇ』

『それが科学だよ』

『俺に子供が居たら絶対こんなところには遣りたくねぇな』

『バカバカしいほど正しい判断だと思うよ』

『皮肉だねぇ、研究者さん』

『…… 気にしないでくれ』

『はいよ』



349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 03:43:31.99 ID:sK0txke00
『それと後一つ質問なんだけどいいか?』

『何だい?』

『キャパシティダウンは原子崩しの能力を封じる、それはわかるんだけどな』

『けど?』

『もうひとつ、この小さいのは?』

『そのデバイスを僕たちは’メモリー’と呼んでいる』

『’ メモリー’?』



351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 03:58:01.23 ID:sK0txke00
『僕はつい半年前、原子崩しの担当になったんだ』

『おい、質問の答えになってねーぞ』

『聞けよ、内部の人間にはこんな話できないんだからさ』

『あーはいはい。聞くよ、聞けばいいんだろ』

『さっきの君の、子供が居たらこんなところに遣りたくないって言ったろ?』

『ああ言ったさ』

『僕もそう思うよ』

『へぇ、科学の鬼でもそう思うのかい?』

『全員が全員鬼なワケじゃないさ、博士の心は100%鬼だけどね』

『ははっ』

『……僕には子供が居てね』

『ほー? いくつだ?』

『3歳』

『一番可愛い時だな』

『その一番可愛い時に、死んだよ』



352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 04:04:41.46 ID:sK0txke00
『……っと、わりぃな』

『いや、……いいんだ』

『また……なんでだ? 3歳っつたら……病気か?』

『娘は学園都市の犠牲になったんだ、とある研究の犠牲にね』

『研究ってまさか』

『ああ、僕も携わっていたさ。もちろん、あの博士もね』



353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 04:10:01.30 ID:sK0txke00
『ある日、原子崩しの素養を持った女の子を博士がどこからか持ってきてね。脳にとあるデータを焼き付ける作業を行う必要があったのさ、それによって演算能力を飛躍的に向上させる事ができるんだ』

『狂ってやがるな』

『そうとも、狂った研究さ。でもさらに狂ってるのはその手術の予行演習を’生きた子供の脳’で行う必要があったって事さ』

『……まさか』

『万全に万全を期したさ』

『そりゃそうだ、自分の娘なんだからよ』

『結果は……、さっき言った通りだ』



354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 04:16:40.08 ID:sK0txke00
『表向きには交通事故という形で処理されている、新聞の記事にもならない事件としてね』

『恨みはねぇのか?』

『自分の無力さを死ぬほど恨んだよ』

『……、救えねぇ話だ。娘が死んでなお研究を続ける父親……ねぇ』

『生きてるんだ』

『あん?』

『確かに娘は死んだ、けどその時に採取された娘のデータが原子崩しの一部になって今も生きているんだ』

『……よくデキた考え方だな、否定はしないがよ』

『だから正直、こんな実験なんか無くなれば良いと思ってる。原子崩しにはあんな暗い研究所なんかじゃなくて明るい世界で生きて欲しい……ってのが、本音といえば本音かな』

『たしかに、あの博士の耳には入れられない話だな。だが俺の仕事は、お前が言うその真っ暗な研究所にあのガキをお届けする仕事だぜ?』



355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 04:18:15.84 ID:sK0txke00
『…… あの原子崩しが逃げおおせたところで、博士はきっとたぶん別の子供で研究を始めるに違いない』

『あの博士ならそうするだろうな』

『その度に娘の様に犠牲になる子供が増えてしまう……』

『……だろうな』

『だからそこでこの’メモリー’の出番なんだよ』

『あん?』

『’メモリー’は人の記憶を一時的に預かっておく事ができる、そしていつでも他の媒体への保存・再生が可能になるのさ』

『へぇ…… この小さいのがね』

『まだ研究途中だからね、保存できる容量には限りがある。けれど、ここ数日間のデータなら可能さ』



356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 04:19:42.68 ID:sK0txke00
『はっはーん? わかったぜ、研究員。お前の考えてること』

『うん?』

『消したいんだろ? 外での記憶を。戻ってから憧れない様に、研究所での生活に疑問を抱かせない様に、希望を根こそぎ奪うつもりだろ。娘さんみたいな犠牲を出したくないが故に、あの博士に原子崩しを縛り付けておく為に、原子崩し一人苦しめばいい、そうだろ?』

『……逆さ、僕は原子崩しを救いたい』

『救う、ねぇ』

『そうさ、苦しまなくていいようにね。希望は堕落だ、だったらそんな希望、最初からなかった事にすればいい』

『俺には、お前自身が誰かに救ってもらいたい、……そう聞こえるけどね』

『解釈は自由だ』

『そうかい』

『とにかくこのメモリーで、原子崩しの記憶を奪う』

『わかったよ』



358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 04:53:14.49 ID:sK0txke00
『与太話はこれくらいしにて、尾行を続けよう』


────────

────

──


──、尾行って楽しい!

──、お菓子美味しいし

──、ジュース美味しいし

──、このふく、おしゃれだし。

『ん…… あれ? こっちで合ってるのかな?』

──、でもはまづら、さっきからきょろきょろしてばっかりだよね

『くそ……地図、やっぱり持ってきた方が良かったか?』

──、あれ、地図って確か……

『ちくしょー、でも時間が……』

──、…… 私、もってるーーー!!



359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 05:01:45.28 ID:sK0txke00
──、どうしよう、どうしよう。

『どうしよう……』

──、渡しにいく……? でもはまづらには黙って出てきちゃったし……

『うーん……』

──、そうだ! この方法なら……



360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 05:03:13.96 ID:sK0txke00
『困った……』


──、他人のフリ他人のフリ他人のフリ他人のフリ他人のフリ他人のフリ……

──、あー……コホン、そこの少年や


『……なぁっ?! し……沈利っ?!』


──、他人のフリ他人のフリ他人のフリ他人のフリ他人のフリ……

──、わ、我輩は麦野沈利ではない


『はぁ……? なに言ってんだ?』



361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 05:03:59.51 ID:sK0txke00
──、他人のフリ他人のフリ他人のフリ他人のフリ……

──、こ……困っているのじゃろ、この地図を持っていくといい


『お前……まさかこれを届けに……』


──、他人のフリ他人のフリ……

──、さ、さきほどこれを君に渡す様に頼まれてだな……それでは私は忙しいからコレで失礼


タッタッタ


『あ、おい! 待てよ!』


──、他人のフリ……ふふふ、完璧だ、完璧な他人のフリ……ふふふ……


『……ありがとよ、沈利』



362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 05:20:48.27 ID:sK0txke00
『よっしゃ、コレで間に合うぜぇぇぇぇ!!!!』

──、はーまづらぁ、間に合うかなぁ。

『くっそおおお!! 走れぇぇぇぇえええ!!』

──、あ、コケた。



363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:26:18.16 ID:sK0txke00
────────

────

──



『というわけで』

──、ガッコ。間に合った?

『おかげさまで』

──、そ、よかった。

『で、なんで沈利がここにいるんだ?』

──、だってしょうがないじゃない、地図なしで帰れないし。

『やっぱさっきのお前だったんじゃねーか!』

──、し、しーらないっ

『おいぃ?!』



364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:26:57.57 ID:sK0txke00
──、どうでもいいじゃない! 間に合ったんだからっ!

『……まぁ確かに』

──、さ、行くわよ

『おーい? どこいくんだー?』

──、どこって

『あん?』

──、シャケ弁、買いにいくの。

『誰が買うの?』

──、はまづらが、私に。

『なん……だと……?』



365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:30:41.73 ID:sK0txke00
ありがとうございましたー


『……結局買ってしまうという』

──、わーい。

パカッ

『わかったからせめて家に帰ってから食べよう、な?』

──、ちぇ

『ちぇって何っ?! ってかそのリュックなに! なんかお菓子の袋いっぱい入ってるんですけどおおお!』

──、こ、これは……

『あ、てめー。このヌイグルミはダメって言っただろー?』

──、べ、べつに、いいじゃない!

『ダメダメ、これは俺のソウルそのものなんだからよっ! ああ懐かしいぜ…… あのクレーンとの格闘……壮絶だったなぁ……』

──、ちょっとくらいいいじゃない、ケチ!

『ガーン』



366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:37:56.75 ID:sK0txke00
──、んー、かわいい。これ何て生物?

『クマもしらんのかい!』

──、クマ? クマっていうの?

『そだよ、クマだよ』

──クマっ♪ クマっ♪

『ははは、そんなに気に入ってるのか?』

──うんっ





『でもあげねーーー!!!! ははははは!!!!!』

──、えーーー!!!!



367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:40:28.63 ID:sK0txke00
『あのさー、そのシャケ弁10個分くらいあるんだぜこのクマ』

──、じゃ、じゃあシャケ弁10個分がまんする!

『あー……やっぱ12個分くらいだったかな?』

──じゃあ12個がまんする!

『いやー……? やっぱり15個だった気がする』

──15 個! がまん!

『ははは、ごめんごめん。20個だった、うん、20個もなー、多いなー、我慢するのは大変だなー?』

──、何個でもがまんするもん!

──、する……もん

──、ジワッ

『だあああ!!! 泣くな! わかったから!』



368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:42:48.54 ID:sK0txke00
──、~~♪  ~~♪

『よかったなぁ……』

──、うんっ!

『ははは、そーかい……』

──、クマさん ♪ クマさん♪

『たははー……また取りにいくか……』

──、また取ってくれるのっ?!

『いつの間にか沈利の為にっていう前提になってる……』

──、ねぇねぇ。取ってくれるの?

キラキラッ

『く……まぶしい! 目が! 目がぁぁぁあああ!!!!』



369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:46:00.57 ID:sK0txke00
『結局、来てしまった……ゲーセン……』

──、ね。アレ! アレとって

『どれだよ?』

──、あの奥の

『アレか? よーし、ちょっと待ってろ』

チャリン

ピ

ウィィィィィィィーーーン



370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:46:30.06 ID:sK0txke00
──ねぇ

『ん?』

── このボタン押したら取れるの?

『そーだよ』

──ふーん。

ピ

『……』

ウィィィィィィィーーーン

『ってあああああああああ?! 勝手に押すんじゃねええええええええええええ!!!!!』



371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:49:29.69 ID:sK0txke00
スカッ

ザンネンデシター

マタドウゾー

──、ちょっと。何も出てこないけど?

『たりめーだ、何も取れなかったんだからよ』

──、えぇ?!

『沈利が! へんなとこで! ボタン! おすから!』

──、はまづらが! 押したら! 取れるって! 言ったじゃない!

『いや、そりゃ言ったけどさ……物事にはタイミングってもんが……』

──、もう一回よ! もう一回!

『もう金ねーよ』

──、なんで?!

『今日は弁当も買ったし、もーすっからかんだよ』

──、……むー。



372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:51:54.72 ID:sK0txke00
『また今度に取ってやるから、そんな落ち込むなって』

──、ほんとっ?!

『おう』

──、あのね! あのね! あの大きいのがいい!

『お、おう? あれだな?』

──、うん!

『わかったよ』

──、いつ?!

『い、……いつ?』

──、明日? あさって? しあさって?

『はは……いつだろうなー』

──、はまづら、約束して!

『あーもー、わかったよ。明日、明日また来ような?』

──、うん!

『ったくよー、その笑顔は反則だぜー……ははは』



373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:56:38.08 ID:sK0txke00
『沈利』

── うん?

『なんでもねー、呼んでみただけ』

──なにそれー?

『はははっ』

──……むー

『ごめんごめん』

──はまづらだけ楽しそうにしてて、つまんない。

『ごめんって』



374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 06:57:21.12 ID:sK0txke00
──はーまづらぁ?

『なんだー?』

──、呼んだだけー?

『なんで疑問系なんだよ』

──、さー? ふふふっ。

『まあいいや、もう遅いしそろそろ帰ろうぜ』

──、うんっ



377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 20:19:11.91 ID:JEPz9a77o
うっひょおおおおおおおおおお


378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/22(土) 20:21:34.93 ID:ZSSk2E8AO
ぬっふぅおうおうおうおうおう

さっさと子作りせんかい



379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 08:58:35.74 ID:8Gjx4MP80
麦は踏まれれば踏まれる程 虐げられれば虐げられる程
立派な恵みを稔らせる、農産物界を代表するドM作物



380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 09:00:28.18 ID:8Gjx4MP80
誤爆


381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 09:12:28.62 ID:INvBydUto
>>380
どんな誤爆だよ



382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 13:05:57.02 ID:e5fia6Hk0
ある意味誤爆とも言い切れんのが怖い



383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 13:52:20.91 ID:vWq3dp/r0
◇  ◇ ◇ ◇


『んー。結構遅くなっちまったな』

──、そうだね。

『暗いから足元、気をつけろよ』

──……ねえ?

『なんだよ』

──、道、あってるの?

『……』

──?



384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 13:53:43.19 ID:vWq3dp/r0
『アッテル』

──、ねぇもしかして

『アッテル』

──、はまづら、ねぇ

『……』

──、いんてる?

『ハイッテル』



385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 13:55:15.76 ID:vWq3dp/r0
── 迷った?

『迷ってねえよ! この裏道抜けるほうがちけーんだよ!』

──、ほんとに?

『地図だとそうなってる』

──、……

『っだああ!! そんな目でみんな!!』

──、バカ面

『誰がバカ面だ! 俺は浜面だっての!』



386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 13:57:06.30 ID:vWq3dp/r0
──、…… はまづら。

『そうそう、俺は浜面だ』

──、囲まれてる。

『あん?』

──、私が合図したら、すぐに走って。

『なんで?』

──、いいから。

『だからなん──』

──、いいから、行けっ!

『ッ!!』



387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 13:58:10.79 ID:vWq3dp/r0



研究者『キャパシティダウン、起動しろ』


ィィィィィィィィイィイイィィィン………………………………



388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 13:58:57.52 ID:vWq3dp/r0
──っ?! あ……ぐ……頭が……っ

『沈利っ?! おい、どうした?!』

──、いたい……

『おい?! 大丈夫かっ?!』

──、はまづら、だめ、……逃げて……

『バカ! お前も一緒にくるんだよ!』



389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:01:28.29 ID:vWq3dp/r0
傭兵『ヘイヘイ、どーこ行くんだよお二人さん。ちょっと待ちなよ』

チャキ

──、……く……完全に囲まれた……。

傭兵『よう? お嬢さん。いや……原子崩しよぉ。あんたに用事があって来たんだぜ? 何の用かは……わかるだろ?』

スッ

『沈利に何の用だッ!』

傭兵『おお? この状況で女の子を守るたぁ殊勝な心がけだ、良い男になるぜ少年。だがおじさん達はその子の、まぁ、なんというか、保護者でね。迷子のお嬢さんを捜してたんだよ』

『嘘つけっ!』

傭兵『嘘じゃないさ、だいたい君は知っているのかい? そこに居るお嬢さんが何かを』

『麦野沈利、俺の友達だ』

傭兵『友達……友達ねぇ、ははは、友達? まるで普通の人間みたいだなぁ。なぁ? 原子崩しよぉ』

『帰れよ、お前ら!』

傭兵『そうはいかねぇ、お嬢さんをつれて帰るのがおじさんの仕事だからねぇ』



390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:02:48.90 ID:vWq3dp/r0
──……。ブルッ

『……沈利?』

──、……やだ、かえりたくない……。

『大丈夫、大丈夫だからな?』

傭兵『へぇ、妬けるねぇ。こんな状況で励まし合いってか?』

『……』

傭兵『辞めとけ辞めとけ、これが見えるだろ? 銃だよ、本物だぞ? 当たったら痛いぞー、当たり所によっちゃ死んじまうかもな』

『……く』

傭兵『あんま抵抗すんなよー? あんまり反抗的だとお前もこわーーーいおじさんがいっぱいいる施設で脳みそいじられておかしくなっちゃうからなー?』

『くっそおおおおッ!!!!』

傭兵『丸腰で突っ込んでくるとは……バカがっ』

ガン



391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:04:11.43 ID:vWq3dp/r0
『がはっ……』

──、はまづら!

傭兵『バカだなーお前さ。この体格差考えろよな。でもお前みたいなバカは嫌いじゃないぜ。ははは。おいお前ら、抑えとけ』

ボカッ

『ぐあぁ!!』

傭兵『でもよーあーあー、だめだこりゃ。あの世行き決定だなおい、まだ抵抗しないってんなら俺は見逃してやってもいいと思ってたんだぜ? 本当だぜ?』

ドガッ

『……っ!』

傭兵『何も抵抗せず、この場の事は忘れる約束をしてくれたらよぉ……誰も殺さず済んだのによ』

『沈利をどうするつもりだ!』

傭兵『うるせーよ。黙りな、浜面仕上クン?』

『沈利に何かしてみろ! ぶん殴ってやるからな!』

傭兵『おーおー、そうかいそうかい。そりゃ楽しみ……だっ!』

ガン!

『ぐは……っ』



393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:06:47.93 ID:vWq3dp/r0


傭兵『あのさー……俺も子供をいたぶる趣味はさすがに持ち合わせてねーんだ。だからもうこれ以上俺に殴らせんなよ、楽に死んどけ』


────、パァン…………。



394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:08:11.07 ID:vWq3dp/r0
傭兵『……よう。そっちのほうは、いいのかよ?』

研究員『いま起動させたよ’メモリー’』

傭兵『そーかい』

研究員『引き上げだ』

傭兵『了解』

研究員『……』



395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:09:30.77 ID:vWq3dp/r0
────────

────

──



あれ

わたし

なにしてるんだろう

はまづらは?

あれ?

はまづらってだれ?

え?

ここどこ?

わたし、なにしてるの?

なにを、していたの?



396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:09:56.86 ID:vWq3dp/r0
えっと

今日は

朝からいつもの研究で

あれ

いつもの研究?

美味しかった

あれ?

何が美味しかったんだろう?



397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:10:38.31 ID:vWq3dp/r0
目の前には大勢の大人

いつもどおり白衣を着ている

あれ?

でも、今日は皆、ヘンな服きてる

まるで

まるで、軍隊みたい?

軍隊?

あれ? なんで?

ここは?

いつもの研究所じゃ、ない?



398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:12:07.70 ID:vWq3dp/r0
着ている服もいつもと違う

違う

何かが違う

何が違う?

わからない

けど、何かが

何かが違う

……気がする



399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:13:26.68 ID:vWq3dp/r0
目の前の景色は見える

見えるけど理解できない

何か

すべての輪郭が曖昧で

ぼんやりとしていて

とけてしまいそうで

音が

音が一切聞こえない

私の耳はどうなってしまっているんだろう



400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:13:56.66 ID:vWq3dp/r0
『沈利っ!』

……だれだろう

誰かから名前を呼ばれている気がする。

音は聞こえないはずなのに

…… やさしい声だなあ。

『沈利っ!』

……こんなやさしい声、いままで聞いた事ない。

……ああ、ずっと聞いていたいなぁ。

『沈利っ!』


『うるせーよ。黙りな、浜面仕上クン?』



401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:14:40.73 ID:vWq3dp/r0
…… あれ?

はまづら?

はまづら……?

はまづら……

浜面?

浜面……

浜面、仕上

浜面仕上

……とても

……とても、やさしいなまえ。



402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:15:18.40 ID:vWq3dp/r0
この服を選んでくれたのは誰?

私を助けてくれたのは誰?

鮭味を教えてくれたのは誰?

名前を呼んでくれたのは誰?

やさしくしてくれたのは誰?

私を友達って言ってくれた人は誰?

私が、守りたい人は、誰?



403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:15:47.33 ID:vWq3dp/r0


はまづら。

浜面、仕上。


そう!


はまづら!

はまづらだ!


…… はまづら、なんだ!



────、パァン…………。



404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:19:46.80 ID:vWq3dp/r0
────────

────

──


傭兵『で、その’メモリー’で記憶とやらは回収できたのかよ?』

研究者『ああ、おそらく。反応があったからね』

傭兵『…… ふーん』

研究者『興味なさそうだね』

傭兵『俺としてはもうこの都市からの仕事を遠慮させてもらいたいところだよ』

研究者『ははは』

傭兵『笑い事じゃねーよ。それじゃさっさとお嬢さんを回収して帰るか』



405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:22:31.27 ID:vWq3dp/r0
──、…… ロ……ス



傭兵『あん?』



──、…………コ……………ロ……


ヨロッ


傭兵『お、おい? 起き上がったぞ、あいつ?』

研究員『大丈夫、キャパシティダウンが起動しているから演算には集中できないはずだよ。何もできやしない』

傭兵『そうか?』



──、……コロス……


ドッ


傭兵『あん?』



406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:23:22.44 ID:vWq3dp/r0
傭兵『ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』



研究員『め……原子崩し……ッ?! まさか、キャパシティダウンが効かない……だと……ッ?!』



──、コロ……ス…… コ……ロ……スッ


ドッ



──、コロス……



──、コロス


ドッ




コロス



コロス




コロス



407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:24:59.31 ID:vWq3dp/r0
────────

────

──


私が正気に戻ると、目の前には誰も居なかった。

ただ、はっきりと覚えているのは

うざったい周波数をまきちらす車を爆発させた事

襲い掛かってくる男たちを能力を解放して爆ぜた事

浜面の体からとめどなく出る赤い液体。



408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:26:53.56 ID:vWq3dp/r0
結論から言うと、私は逃げた。

その場から。そして、浜面から。

逃げた。

こわくなったのかもしれない。

何もしゃべらない浜面を見ているのが

うつ伏せで動かなくなってしまった浜面を見ているのが

とても、

こわ……かった……から。



409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:28:47.42 ID:vWq3dp/r0
その後も何回か襲撃を受けた。

恐らくあの博士が寄越したんだろうと思う。

その度に能力を開放して蹴散らした。

四六時中命を狙われる生活は、相当のストレスだったけど。

その頃はただ生きているだけで、死んでいるのと何も変わらなかったと思う。

そんな時、薄汚れた路地裏で私はあいつと出会う。

最高で最低な、本当にクソッタレな出会いだった。



410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:31:33.70 ID:vWq3dp/r0
『こいつときたら、本当に壊すことでしか生きられないのね』

──、誰よ、アンタ。

『こいつときたらーー! 年上に対する礼儀ってのがなってないわよ!!』

──……フン

『あー、気に入った。その態度が気に入ったわ。あんた、ウチで雇ってあげるわ、感謝しなさい』

──、は?

『あたしの所に来るってんなら、今あんたにちょっかい出してる組織の一つや二つ、潰してあげるわよー? それにアンタ、どこにも行くところ、ないんでしょ?』

──、そうだけど……



411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:32:15.49 ID:vWq3dp/r0
『だったら交渉成立ね、あたしは働き手が欲しい、あんたは居場所が欲しい。そうじゃない?』

──……。

『さっそくだけど仕事、お願いしたいのよね。ちょっとしたゴロツキなんだけど、5.6人シメてきてくれない? 方法は任せるから』

──、ち、わかったわよ。

『あーそーそー、アンタのコードネームだけど、しばらく’アイテム’って呼ぶからそのつもりで』

──、アイテム?

『そ、アイテムね。そのうち人数が増えたらそれを組織名にでもしようと思ってるから。それじゃよろしくねーん』



412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:34:08.09 ID:vWq3dp/r0
◇  ◇ ◇ ◇


麦野「……という、ワケなのよ」

フレンダ「……」

滝壺「……」

絹旗「……え……?」

フレンダ「え?」

滝壺「……」

フレンダ「えぇえっ?! け、結局。ど、どいう事なの?! 浜面! 死んじゃったのっ?!」



413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:41:29.21 ID:vWq3dp/r0
滝壺「死んでたら、いま生きてないよ。フレンダ」

フレンダ「むむむ……、昔死んでたと思った浜面がひょっこり実は生きてましたーって、どこのドラマよそれ」

麦野「ほんとにね。だから最初にアイテムで浜面に会った時は心臓がどうにかなるんじゃないかと思ったくらいなんだから」

絹旗「はぁ……まさか二人の間にそんな超エピソードがあったなんて」

フレンダ「人に歴史アリって訳よ」

滝壺「それで、麦野の悩み事は?」

麦野「そう。それなのよねぇ……」

絹旗「それ、といいますと?」



414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:45:04.35 ID:vWq3dp/r0
麦野「それとなく昔の事を聞いてみても私とは会ったこと無いって言うし……」

フレンダ「その浜面と、この浜面が別人だっていうの?」

滝壺「他人のそらに?」

麦野「でも、別人と言うにはあまりに似すぎてるのよね」

絹旗「私としては浜面超サイボーグ説を推しますね」

麦野「それはないわ、ちゃんと心臓がドキドキしてたから」

滝壺「まるで確認したみたい」

麦野「確認したもの、あいつが居眠りしてる最中に」

フレンダ「え?」

絹旗「え?」

滝壺「え?」

麦野「?」



415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 14:47:52.45 ID:vWq3dp/r0
麦野「まだ他にもいろいろ確認したわよ、あいつが眠ってる間に──」

フレンダ「あーーーーー!!!!!」

麦野「なによ、もう、フレンダ」

フレンダ「それ以上は、……ストップよ麦野。……刺激が強い」

麦野「そう?」

絹旗「(超鼻血でるとこでした)」

滝壺「……」ボー



416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 15:00:52.81 ID:vWq3dp/r0
フレンダ「……ん?」

絹旗「どうしました?」

フレンダ「ねー、むぎの?」

麦野「なに?」

フレンダ「あのさー、さっきの話で一つ質問なんだけど」

麦野「うん」

フレンダ「むぎのが毎晩抱いて寝てるヌイグルミってまさか、そのときの……?」

麦野「フーーーーーー……レ、ン、ダァ…………」

フレンダ「え? え? そうじゃないのっ?! ねぇ?! ねぇむぎのっ!」

麦野「後でお仕置きね」

チーン

フレンダ「なんでっ?!」



417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 15:10:04.18 ID:vWq3dp/r0
絹旗「麦野。私からも質問、超いいですか?」

麦野「うん」

絹旗「私は浜面が過去何をやってたか、なんて超知らないですけど。それでもなんとなくそんなに超悪いヤツでは無いと思うんです。バカですけど、超バカですけど」

麦野「バカなのは否定しないわ」

フレンダ「バカを否定されない浜面、バカ面ね」

麦野「……お仕置き追加ね、フレンダ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

フレンダ「なんでっ?!」

滝壺「一言余計」

フレンダ「うぅ……」

絹旗「それで、麦野はどうしたいんですか?」

麦野「私は……」



418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 15:11:23.38 ID:vWq3dp/r0
麦野「私、……浜面の事、好き、なんだと思う」

フレンダ「ついに言ったわね、麦野」

絹旗「なんとなく超そんな気はしてましたけど」

滝壺「うん」

麦野「でも……、その。ね? なんとなく、この気持ちそのものに自信が持てないというか……。昔の浜面を勝手に今の浜面に投影してるだけなんじゃないかなって、もし別人だったらどうしよう……って」

フレンダ「そりゃまぁ、何年も前に居なくなってたと思った人がひょっこりでてきたらねぇ」

絹旗「しかもそれが同じ浜面かどうかわからない状況じゃ、超しょうがないですよね」

麦野「……うん」

フレンダ「っだあぁ、それにしてもアノ浜面がねぇ~……」



420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 15:24:36.23 ID:F9kl9Svpo
ショタ面とロリのんが可愛すぎる
もうだめ



424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 18:44:05.85 ID:/959ShmZ0
あれ、麦野はちゃんと覚えてるんだな。
メモリーとやらで麦野の記憶がなくなってるという展開だと思ってた。意外意外。
浜面のほうの記憶が問題ってことだがそれは今からの展開のお楽しみね!

おもしろいお!



426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 20:44:53.86 ID:PYWqoCTDO
いつでもいつまでも麦野沈利ちゃんが一番かわいい!!!


427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 23:08:13.53 ID:sIYz42wAO
僕は麦野沈利ちゃん!!

428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 23:32:49.27 ID:aDqMCrGno
僕も麦野沈利ちゃん!!

429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 23:56:37.29 ID:TQvdXjpgo
僕の麦野沈利ちゃん!!

430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/23(日) 23:59:25.78 ID:1RTp4yxgo
僕が麦野沈利ちゃん!!

431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 00:01:27.14 ID:97Vpju9vo
僕に麦野沈利ちゃん!!

432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 00:02:57.09 ID:j+K0higgo
僕を麦野沈利ちゃん!!

433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 00:03:02.13 ID:2fMCuo6Po
僕へ麦野沈利ちゃん!!

434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 00:12:39.73 ID:6hSja+OBo
僕で麦野沈利ちゃん!!

435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 00:15:59.96 ID:NlD9vV4no
僕と麦野沈利ちゃん!!

436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 00:33:33.94 ID:IhISL7dio
                                               ∧_∧
                                        ∧  ◯( ´∀` )◯
                                     ∧_( ´∀ \    /
           ∧_∧                  ∧_( ´ (つ.   _/ __ \_
       ∧_( ´∀∧_∧           ∧_( ´⊂   人⌒l(_/    \_)
       ( ´ (つ ⊂( ´∀∧_∧       (´∀( つ ノ ノ し(_)    ∧
  ∧_∧(○  |  ( /   ( ´∀`)     ⊂二、 \ヽ (_ノ、_ノ   僕は、麦野沈利ちゃん!
 ( ´.( ´||し⌒/ ⊂ ノG(   こ ∧_⊂(´∀`⊂(_(__)
⊂  (   | .|,ノ  し     (_,\  (  (´∀` )  / / / 
 〈 〈 .)  (_)            (_ ⊂  (ノ  (ノ  (__)_)
 (__(__)__)             (__)_)




439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 00:55:19.50 ID:dCZT4GL20
麦野「……あー……、どうすればいいんだろー……」

絹旗「どうするって……」

フレンダ「どうすればいいのかな……」

滝壺「……」

麦野「それを相談しに来たんじゃない」

絹旗「正直チケットの取り方とか聞かれたから、超そっち方向の相談だと思ってたんですけど」

フレンダ「予想の斜め上をはるかに超えてヘビーだったわけよ」

麦野「……やっぱり、私、重いかなあ……?」



440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 00:56:13.63 ID:dCZT4GL20
絹旗「うむむ……」

フレンダ「絹旗、例えば私がいきなり’絹旗っ、実は私はあんたの事が、あんたが死ぬ前から好きだった’とか言ってきたらどう思う?」

絹旗「超びびりますよそれ、どんなホラーですか」

フレンダ「そうよねぇ……」

麦野「…… むー……」



442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:01:42.19 ID:dCZT4GL20
フレンダ「でもこれ、考え方によっちゃとってもロマンチックな話じゃない? だって、死に別れた二人が奇跡の再開を果たすのよ? オペラや小説じゃハッピーエンドな訳よ」

絹旗「でもあの浜面がその浜面じゃない可能性もあるんですよね?」

フレンダ「あの浜面とかその浜面とか……浜面のくせにややこしいわね……」

滝壺「……」ボー

フレンダ「そうねー……、でもまあ麦野の話を聞く限り要点は一つよね」

麦野「うん?」

フレンダ「要するに、過去面と今面が同一人物ならすべて丸くおさまるわけよ」

麦野「それはまぁ……そうだけど」

絹旗「過去面に今面って、どんな呼称ですか」

フレンダ「ややこしいからそう呼んだ」

滝壺「真東から電波きてる……」



443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:11:47.21 ID:dCZT4GL20
フレンダ「過去面が今面だって証明できれば、麦野は後ろめたい気持ちなんてなく今面の事を好きになれるって寸法よ!」

絹旗「でもそれ、どーやって確かめるんですか? 麦野が今面に聞いても超ダメだったんでしょ?」

麦野「そうね、あれは’昔の事を忘れてる’っていうより単純に’知らない’っていう感じだったから……はは、あの時は結構キツかったなぁ……」

フレンダ「あ~、も~。そこ! ウジウジしないっ!」

絹旗「過去面が今面だって証明できる何か超良い方法があるんですか? フレンダ」

フレンダ「ふふふ。結局、私に策がある訳よ」

絹旗「へぇ、どんなですか?」



444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:13:16.82 ID:dCZT4GL20
フレンダ『はーまづらー』

浜面『なんだ?』

フレンダ『ちょっと後ろ向いてて、あと、目つむってて』

浜面『はぁ? なんで俺がそんな事……』

フレンダ『……ばか、恥ずかしいからに決まってるでしょ……』

浜面『は? はぁああ?! おい、フレンダ何をっ、なんでバニーの衣装なんか持ってッ?!』

フレンダ『浜面のえっち……はやく後ろ向いてよ……』

浜面『わ、わかった! わかったから!』

フレンダ『絶対こっち見ないでよ?』

浜面『お、おう? おう!』

フレンダ『……』

浜面『……』



フレンダ「そこで背後からこの新開発のハンマーで思いっきり今面の頭をぶんなぐるッッッ!!!!」

絹旗「殺人だーーーーーーーっ?!」



445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:16:57.20 ID:dCZT4GL20
フレンダ「頭部へのショックを与えて過去の記憶を取り戻す訳よ」

絹旗「どんな理論ですか」


麦野「それ、やってみたけどダメだったわ」


フレンダ「……」

滝壺「……」

絹旗「……」

麦野「なに? 皆黙っちゃって?」

フレンダ「……やったんだ」

絹旗「……超実行済みでしたか」

麦野「ダメよ、その手は効かないわ。何回やっても絶対避けるからアイツ」

フレンダ「今面よ……安らかに……眠れ……」

絹旗「まだ死んでませんってフレンダ」

滝壺「……」ボー



446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:20:37.57 ID:dCZT4GL20
絹旗「ゴキブリ並の超回避ですよね、さすが浜面」

フレンダ「浜面じゃないわ絹旗、今面よ」

滝壺「いまづら」

絹旗「……なんだか超めんどくさいですね」

麦野「……はー……」

フレンダ「!」

絹旗「何か良い手、思いつきました?」

フレンダ「これだ……これしかない!」

絹旗「……超いちおう聞いてみますから、言ってみてください」



447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:28:12.26 ID:dCZT4GL20
フレンダ『浜面』

チャキ

浜面『なんだフレンダ? 銃なんか構えて刑事ゴッコか?』

フレンダ『うるせーよ。黙りな、浜面仕上クン?』

浜面『あん?』

ガン!

浜面『ぐは……っ?!』

フレンダ『ふん、結局、あんた下っ端のくせに生意気な訳よ』

浜面『フレンダ……何をッ?!』

フレンダ『うるさい!』

ドガッ!

浜面『……っ!』

フレンダ『変態っ! 変態っ! 変態っ!!!』

ドガ バキ ドゴ

フレンダ『あのさー……俺も子供をいたぶる趣味はさすがに持ち合わせてねーんだ。だからもうこれ以上俺に殴らせんなよ、楽に死んどけ』


────、パァン…………。



448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:29:00.04 ID:dCZT4GL20
フレンダ「とまぁ、こんな感じで当時を再現すれば何か思い出すんじゃない?」

絹旗「一理ありますね」

麦野「……」

フレンダ「ね? どう? 麦野」

麦野「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

フレンダ「え? なに? なんで無言で? え? え?」

麦野「ふ、レ、ン、ダぁ……、……アイツを傷つけるのはいくらお前でも容赦しないよ……?」

フレンダ「むぎの! むぎのおちついて! これはあくまで仮定の話であって! きゃー!!!」


────────

────

──


絹旗「おーい、生きてますかー?」

滝壺「ご臨終です」

チーン

フレンダ「生きてる! 生きてるから!」



450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:34:10.04 ID:dCZT4GL20
◇  ◇ ◇ ◇

フレンダ「でも結局、ハッキリしないのは麦野よ」

麦野「……ん?」

フレンダ「過去面と今面のどっちが好きなのさ?」

麦野「どっちって……そんなの選べない……」

フレンダ「仮によ? 過去面と今面が同一人物だとするじゃない? それだったら良いよ、でも違った時に麦野はどうするのさ?」

麦野「……」

フレンダ「麦野は過去面の事が好きだったかもしれない、でもそれは過去面が今面だったらっていう前提のもとでしょ?」

麦野「それは……」

フレンダ「もしさ、過去面と今面が全然関係ない赤の他人で、それでも好きって、浜面の事が好きって麦野は断言できるわけ?」

麦野「……」

絹旗「フレンダ、だから今それを相談して」

フレンダ「絹旗は黙ってて、私は今麦野と話してるんだから」



451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:44:59.30 ID:dCZT4GL20
絹旗「なっ」

フレンダ「いいから黙っててよ!」

絹旗「っ」ビクッ

フレンダ「むぎの、よく聞いて」

麦野「……うん?」

フレンダ「仮にこの告白が成功してアイツが麦野と付き合ったとするじゃない?」



452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:46:20.89 ID:dCZT4GL20
フレンダ「そりゃ幸せだろうさ、幸せだろうね。見てるコッチが嫌になるくらい幸せになるだろうさ」

麦野「……」

フレンダ「でもある日、ふとした事から過去面と今面が別人だって知ってしまうの」

麦野「……」

フレンダ「しかも最悪な事に、それが浜面に知られてしまうの」

麦野「……」

フレンダ「自分の愛する人が、本当に好きだったのは’自分に良く似た他人だった’なんて事知ったらさ、その時浜面、どんな顔すると思う?」

麦野「どんな……って」

フレンダ「ああもうハッキリしないなあ!」



453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:48:38.23 ID:dCZT4GL20
フレンダ「あたしがイライラしてるのはね、麦野」

グイッ

麦野「……え?」

フレンダ「煮え切らない麦野に、じゃない。その煮え切らない麦野に! あたしが浜面を好きって気持ちが! 負けそうだって事に! イライラしてんのよ!」

麦野「…… フレ、ンダ?」

フレンダ「むぎの、歯ァ食いしばりな!」

パン



454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 01:57:15.91 ID:dCZT4GL20



フレンダ「あたしだってねぇ!」




フレンダ「あたしだって浜面の事が好きだよ! ああそうさ! あのバカの事が好きなんだ!」



455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 02:00:27.57 ID:dCZT4GL20
フレンダ「そりゃ救えない程バカで! 変態で! おっちょこちょいで調子乗りだけどさ! あたしの事……ちゃんと、ちゃんとあたしの事を見ててくれるんだ……」

フレンダ「ファ……ファミレスで困ってたら助けてくれたり……、ちょっとお願いしたらすぐなんでも作ってくれたり……、いろいろ知らない事教えてくれたり……」

フレンダ「ああこの人ならひょっとして! って思ってたけど、けど……けどさ……」

フレンダ「あんな話聞いた後にそんな事言えるわけないじゃない!」

フレンダ「あたしには、昔の浜面の事なんかわかんない! どこで何してたかも知らないし!」

フレンダ「でも……でもさ……」

フレンダ「昔の事なんか関係ないって、これから知っていけばいいって思ってたところなのに……」



456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 02:01:18.16 ID:dCZT4GL20
フレンダ「ずるいよ……」

フレンダ「麦野がどれだけ浜面の事思ってるか! 知っちゃったからには何もできないじゃない!」

フレンダ「二人にそんな過去があったなんて事言われたらさ……何もできないじゃない……」

フレンダ「勝てる訳……ないじゃない……」

フレンダ「……ずるいよ、むぎの……」

フレンダ「……ずるい、よ……」



457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 02:01:32.51 ID:GEJfWDbDo
なんやて・・・


458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 02:05:03.67 ID:2fMCuo6Po
僕が居るやないの


459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 02:06:14.30 ID:U0igygrAO
超超展開ですね


464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 02:29:19.11 ID:ycpJe/ODO
アイテムは浜面の嫁
浜面は俺の嫁



465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 02:54:37.75 ID:6ae8jiL0o
>>464
そしてお前は俺の嫁



466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 03:31:01.63 ID:vyJJB6reo
滝壺さんは参戦しないの?


467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 03:32:14.99 ID:2fMCuo6Po
既に俺の嫁だから参戦する意味がない


468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 09:44:16.50 ID:Mj7vmmIAO
2fMC/uo6Po


470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 13:18:40.55 ID:xoIC2ZSIO
俺も浜面に生まれたかった・・・!



474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 21:31:15.65 ID:dCZT4GL20
◇  ◇ ◇ ◇

……。

とても懐かしい夢だった気がする。

例えば、昔持っていたはずのわりと大きいクマのヌイグルミがいつの間にか無くなっていた事とか。

例えば、なぜか知らないけれどいつの間にかクローゼットの中に紛れ込んでいたワンピースとか。

無くなっていたものが有ったり、有るはずのものが無くなっていたり。

それから

誰かと一緒に

居た気がする。

そんな夢。

……。



475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 21:34:26.26 ID:dCZT4GL20
あの小さい石ころみたいな、キラキラした謎の部品みたいなもんを拾ってからここ最近、ずっとそんな夢を見ている。

やけにリアルで、まるで自分が経験してきたかのように臨場感のある夢。

どっからどこまでが現実で、どっからどこまでが夢なのか曖昧な世界は、けれどもなぜか温もりに満ちていた。

その夢はきまって一人の女の子と一人の男の子の出会いから始まる。

めちゃくちゃ可愛いけれど、世間知らずというか。そんな女の子。

そんでもって、どこにでもいる普通の男の子。

夢の中で男の子は女の子に振り回されっぱなしで、だけど男の子はそれも案外悪くないと思っている様子だった。

……でも、

夢の終わりにはいつも残酷な結果だけが待っていた。

乾いた音で目が覚める。



476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 21:35:36.43 ID:dCZT4GL20
休日だというのに珍しく早い時間に目が覚めたので、

布団の中にあるはずのリモコンをもぞもぞと探し、旧世代のテレビに向かって

「起きろ」

と信号を送る。

彼はその眠りを妨げられたにも関わらず文句一つすら言わず、命令に忠実に従った。

ニュースや情報系番組が多くを占めるこの時間帯にザッピングを繰り返し、とある戦隊ヒーローの番組が目にとまった。

小さい頃に見たテレビのヒーローに憧れていた俺としては、チャンネルをここで止めるのがジャスティス。

男だったら誰しも大なり小なりヒーロー願望っていうか、

そういうくだらない妄想を抱く時期があると思う。



477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 21:36:47.05 ID:dCZT4GL20
簡単なあらすじはこうだ。

「たった一人の女の子を守るためにテレビのヒーロー達はその身一つで巨大な悪に立ち向かっていく」

いつの時代にもお決まりのパターン。

ヒーロー達は敵の怪物に倒されても倒されてもめげずに立ち向かっていく。

爆薬が炸裂し、耳を劈く破裂音が響き、全てを溶かす閃光が散る。

怪物の攻撃で血を流し、骨が折れても、ヒーロー達のその真っ直ぐな心までは折れない。

何が彼らをそうさせるのか、

彼らの強さは何なのか。

眠い頭で考えてもわからない、

きっとヒーローだけが持っている特別な何かが彼らを駆り立てるんだろう。

そして、放送時間の終わりが近づくと、彼らはお決まりの台詞と必殺技で悪を蹴散らした。

そうしてヒーロー達は一般大衆の中へと帰っていく。



478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 21:38:11.65 ID:dCZT4GL20
ああ自分もこんな風に生きることができたらどんなに良いんだろうか。

小さい頃、確かに持っていた憧れ。

けれどいま、

真っ黒で冷たい学園都市から見上げる空は、くすんで見える。

起き抜けに薄汚れたワンルームの部屋を適当に片付ける。

アイテムの集合時間までの時間をどう潰そうかと考えた挙句、伸びをひとつすると、履き慣れたスニーカーを選んで外に出た。



479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 21:42:38.91 ID:dCZT4GL20
適当に路地裏をプラプラ歩くと

どっかの能力者同士が喧嘩をしていた。

片方はどういう理屈か重力に逆らって垂直の壁を走り、

もう片方はそれを待ち受ける。

壁を蹴って加速をつけたパンチが顔面に届く直前に、

これまたどういう理屈か今まさに殴りかかろうとしていた男の動きがスローモーションになった。

そこまで歩きながらなんとなく見て、興味を無くした俺の両足は別の場所へと向かう。



480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 21:44:53.99 ID:dCZT4GL20
小さい頃、最初はアレを魔法だと思った。

けれど、どうやらそれは魔法ではなく超能力というものらしい。

何がどうなっているのかはわからない。

脳のある部分をいじくってカリキュラムを受ければ俺でも能力が使えるらしい。

というのを聞いた瞬間に頭の中がそれでいっぱいになった。

「学園都市に行きたい」

行った後の事なんか当時はそれほど深く考えちゃいなかった。

きっと自分は超能力者になるだろうし、

きっと自分はか弱い女の子を守るヒーローになるんだろうと思っていた。

だけど現実はそんなに甘くなかった。



481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 21:51:10.26 ID:dCZT4GL20
入学して一番最初の身体検査ではレベル0判定。

それでも最初はクラスの大半もそんなもんだ。

けれど、日が経つにつれ、周りの者も何かしらの能力を扱えるようになっていく。

しだいに俺みたいなレベル0は周囲からおちこぼれの烙印が押されるようになった。

不思議と悔しさみたいなモンは沸いてこなかった。

「ああ、やっぱり自分にはヒーローなんて無理なんだろうな」

ド派手な技で敵を翻弄し、華麗にやっつけ、救うべき誰かを救う。

「やっぱり、自分には無理だったんだ」

わかっていた事じゃないか。

当たり前だ、誰しもがヒーローになれるわけじゃない。

人間、諦める事も肝心なんだってな。



482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 21:56:16.20 ID:dCZT4GL20
ふらふら、ふらふら。

倒れる直前のコマみたく、あっちにブレたり、こっちにブレたり。

けれども、まだ倒れたくない。

ふらふら、ふらふら。

力が無い。

その事実だけで路地裏で暴れても虚しさだけが付きまとう。

それから何人かとツルんだけど、

そいつらだって結局同じレベル0っていう輪の中で付き合って、

見下されない同格のクズが欲しかったっていうだけで。

都合のいい話だと思う。

利用して利用された。

クズはクズらしく生きる。



483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 22:00:32.96 ID:dCZT4GL20
思い描いた理想とか

守りたかった何かとか

きっと、たぶん

こんな自分にも、おちこぼれる前は何かがあったんだと思う。

むしろ何かがあって欲しかった。

……けれど、思い出せない。

思い出そうにも、……真っ白だ。

真っ白。

何も無い。

残念ながら、本当に自分には何も無い。

ただのクズだった。

ただのクズであるが故に、何回警備員に捕まって留置場に何回ブチ込まれようが、更正の余地なんてあったもんじゃない。



484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 22:05:53.57 ID:dCZT4GL20
駒場さんと出会ったのは、それから少ししてからだった。


『お前が浜面仕上か?』

『……誰だ?』

『駒場という者だが……、率直に聞こう。お前、力が欲しくないか?』

『力?』

『そうだ』

『……興味ねーな』

『なぜ?』

『はっ、無能力者の俺が力を得た所でどうなるってんだよ、今更何も変えられないし、変わらねーんだよ』

『ちょっと違うな……』

『何が違うってんだ』

『無能力者でも、適切な力を身に着ける事で能力者とも対等に渡り合える事ができる』

『できねーよ』

『科学を生かせば可能だ』

『はぁ?』

『お前には手先の技術があると聞いている、協力して欲しい』



485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 22:11:36.66 ID:dCZT4GL20
『やだね、何で俺がそんなめんどくさい事』

『……俺の友人が殺された』

『……?』

『能力者にだ』

『……』

『…… 能力者といっても大半はレベル1かレベル2。やつ等のストレスの捌け口として無能力者が襲われている』

『……』

『……俺は、それを救いたい』

『救う、だ?』

『ああ』

『できるのかよ、本当に、そんな事が』

『…… できる、俺とお前。……仲間の力があれば』



486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 22:13:37.86 ID:dCZT4GL20
『おい』

『……む?』

『だったらよぉ、リーダーはこの浜面仕上様、だよなぁああっ?!』

ドガッ

『…… ふむ、良いパンチだが軽いな』

『いっ?!』



487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/24(月) 22:18:05.52 ID:dCZT4GL20
殴っても殴っても倒れない大男。

殴って、蹴って、叩いて、跳ねて。

いつの間にかぶっ倒れて、

気がついたら心配そうに俺の顔を覗き込んでやがった。

『すまん、つい力を入れすぎてしまった』

とか言われた日にはもう笑う事しかできなかった。

『わかったァ、わかったよ。あんたの仲間になる』

『……歓迎する』

『あんた、名前は?』

『…… 駒場、駒場利徳だ』

『わかったぜ、ボス』

その日俺は、スキルアウトに拾ってもらった。



491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 07:31:45.76 ID:ZhTHicm10
◇  ◇ ◇ ◇



本名。

内緒。

フレンダって名前もどこかの雑誌モデルが使ってた名前を拝借したものだ。

別に裏の世界では偽名を使うのは不思議な事じゃないし、

現に麦野や絹旗なんかは対外的には原子崩しや窒素装甲の能力名で通ってる。

一部の気が置けない人間にのみ本名を公開する。

例えば、仕事仲間とか。

私は学園都市の能力開発を受けた訳じゃないから能力が使えない。

だからフレンダ。



492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 07:33:59.95 ID:ZhTHicm10
私が暗部なんていうアブノーマルな仕事をしているのは

「結局、まぁ人生楽しめればいいんじゃないかな」

それくらいの認識だ。

楽しめて楽ができたらそれでいい。

暗部は給料だって悪くない、

普通だと一生かかったって稼げない位のお金を手に入れる事だって難しい事じゃない。

せいぜい頑張って稼いで、後はどっか税金の安い外国でのんびりすればいい。

ただし、死ななければ、だけど。



493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 07:34:50.66 ID:ZhTHicm10
自信満々の能力者を嵌めた瞬間に見せるあの絶望に満ちた顔を見るのも嫌いじゃないし。

そもそも私は他人の人生にあまり興味がない。

アイテムのメンバーにしたってある意味普通の友達っていう認識だし、

依頼で殺さなきゃいけなくなった人間の「それまでの人生」というものに興味が希薄だ。

雇い主が良い人間だとか悪い人間だとかそういうのはどうでもいい。

お金が貰えればそれでいいし、依頼を複数人でやらなければいけない以上は協力だってする。

たまーにミスって麦野からお仕置きされる事もあるけど、あはは。

結局、それはまぁ、ご愛嬌って訳よ。



494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 07:36:24.65 ID:ZhTHicm10
思えば生まれた時からナイフを握っていた気がする。

例えばそれは、ただリンゴの皮を剥く為だったかもしれないし。

例えばそれは、ただ、自分の身を守る為だったかもしれないし。

例えばそれは……。

……今となっては、どうでもいい話だ。

本当にどうでもいい。

ただの、ありふれた話。

裏の世界に私と同じ経験をしたコなんて五万と居るに違いない。

私を含めて暗部に居る人間なんて多かれ少なかれ闇を抱えている。



495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 07:44:15.70 ID:ZhTHicm10
私がアイテムに来る前は「5歳の殺し屋」なんてのと一緒に仕事をした事がある。

私は普段、キャンディと魔女っ子アニメが好きなその子のお守りをしていた。

よく泣くし、よく笑って、誰にでも懐く。

どこにでもいる五歳児だった。

それでもきちんと給料をもらって仕事をこなしていた、

彼女に任されたのは主に「暗殺」

キャンディの中に毒を盛って「おじちゃん、これあげる」と、ターゲットを死に至らしめた事もあるし、

玩具の中に爆弾を仕込んだ事もあった、本人が自覚をもっているかどうかは別として。

そういえばいつも仕事場に人形を持ち込んできてその度に当時のリーダーに怒られてたっけ。

いや、良い大人が5歳児に向かってマジギレよ?

ありえねーっつーの。

結局、どこにも置き場がなくなって私が引き受ける事になったんだけど。

アイテムに配属になってから風の噂で「死んだ」って事を聞いた時は、

「明日は自分が死ぬのかな、にゃはは」

さすがにちょっとだけ強がった。

だって5歳だよ? フツーお父さんお母さん悲しむよ? あ、フツーじゃないから悲しまない? 

いやいや、そんな事ないでしょ……たぶん。



496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 07:45:03.33 ID:ZhTHicm10
私が本名を明かさない原因もそこらへんにある。

どうせいつか消えるなら、

「せめて祝福されて生まれてきたはずの自分」は生きていて欲しい、という事だ。

乙女な願望?

こちとら乙女だっつーの。

偽名のまま死ねば偽名の私だけが死ぬ、それで済む。

本当の私はパパとママの胸の中へ……って?

……あはは、ありえねー。

だって、二人とも私が殺したんだから。



497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 07:50:48.29 ID:ZhTHicm10
パパは酒が切れると暴れだす典型的なドランカー。

ママは金さえ貰えれば1ドルにだって股を開く娼婦。

この国の子供が思い描く「幸せな家庭」なんてものとは無縁の生活だった。

「誰のおかげで生きていけると思ってるんだ」

ご飯を食べるたびに振るわれる暴力、日に日に増えるアザ。

「ごめんね、ごめんね。大丈夫?」

ごめんねが口癖の母親の首筋には他人のキスマーク。

借金取りが来る日には決まって父親はどこかに逃げて

私と母親だけが誰のものともわからない足音に眠れない夜を過ごした。



498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 07:56:03.19 ID:ZhTHicm10
ああ神父さん。

どうすれば私は幸せになれるのでしょうか。

助けを求めに駆け込んだはずの教会で性的暴力を受けた。

おまわりさん。

たすけてください。

破れた服で駆け込んだ法の番人はこの世のものとは思えない最低な笑みで私を辱めた。



499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 07:56:57.64 ID:ZhTHicm10
結局、この世はそうなっているのだろう。

自分の置かれた立場がどうとか、どうすれば幸せになれるとか深く考えるヤツがバカなのだ。

だってほら、救いの手を差し伸べてくれるはずの大人はどこにもいない。

軽くていい。

ラクでいい。

あえて苦しい思いをしなくてもいい。

だって、きっと、もっと人生はシンプルなはずなんだ。



500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 08:00:34.06 ID:ZhTHicm10
「あはっ。あははははははは、あはははははははははははははははははははは」

笑いがこぼれる。

……ひどい格好だ。

服は破れてボロボロ。

下着には薄汚れた白い液体。

月明かりに照らされた肌は青黒い。

私は笑った。

笑った。

あはは。

あははは。



501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 08:03:46.24 ID:ZhTHicm10
表通りから2本裏の筋を進んだところに家がある。

どこにでもあるボロアパートだ。

築数十年を経過して木のドアはいつも開きっぱなし。

私はただいまも言わずにリビングに忍び込んだ。

あはははははは。

父親がテレビを見て笑っている。

頬が赤い、既に朝から何杯もの酒を入れているのだろう。

暢気なものだ。

今から殺されるとも知らずに。



502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 08:05:48.44 ID:ZhTHicm10



右手にはナイフ。


例えばそれは、リンゴの皮を剥くときと同じ要領で。


だけどその日、私は明確な殺意をもってパパとママを殺した。


人生はもっとシンプルでいい。


さあ、これで苦労は終わった。


これからはきっと良い事が待っているに違いない。



503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 08:10:37.75 ID:ZhTHicm10
────────

────

──

どうやら私が売られる事が決まったらしい。

買い手は日本という国の何とかっていう富豪だとか。

こんな貧乏な国で子供を買うなんて物好きが居たものだ。

半年世話になった女からは、

「あんた、高い値で売れるらしいから何かご褒美してあげるわ、欲しいもんはある?」

と聞かれたから。火薬をくれ、とびきりいいやつ。

と答えるとにっこり笑って、

「クレイジーね、良いアサシンになるわよ、あんた」

豪快に笑っていた。



504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 08:13:41.65 ID:ZhTHicm10
良い事ってのが何なのかまだわからないけれど

日本に行けば何か良い事があるのだろうか

……でも、どんなクソッタレな生活が待っていたとして

私がすることはシンプルだ。

ラクなように、軽く生きる。

無理はしない、苦しい事は避ける。

シンプルに、シンプルに。

自分ひとりでだって生きていける。

この半年だってなんとかなった

これからだって、きっとそう。

シンプルに、

シンプルに。



513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 13:54:35.31 ID:ZhTHicm10
それから、日本に来た後は一通り日本の事について学ばされてからこの学園都市に投げ込まれた。

私に日本語と殺しを教えてくれた女は

めんどくさそうに私の働きの何パーセントが胴元にいってうんぬんかんぬんという話をした後に、

「じゃ、せいぜい長生きしなさいな」

これまためんどくさそうにプラプラと片手を振って、私でも知ってる高級車で去っていった。



514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 13:55:25.44 ID:ZhTHicm10
それからはいくつかの組織を転々とする生活が始まった。

生き残る為には裏切り、寝返り、殺し、なんでもありのバトルロワイヤルみたいな世界が広がってるモンと思ってたらどうやら違うらしい。

いくつかの組織に加入・脱退を繰り返したがどこも基本的に4~5人でまとまって行動する。

学園都市という特性もあるのだろう、構成する人間の多くは私と同じか少し年上くらいの若いメンバーだった。

皆何かしらの能力者であり、皆何かしらの後ろめたい過去を持っていた。

何かの怪しい実験に携わった者、刑務所から逃げて来た者。ここでは出生が曖昧なくらいで普通だった。



515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 13:56:02.26 ID:ZhTHicm10
だから私の髪と青い目が特別目立つ事も無かったし、あらためて質問される事もなかった訳よ。

まぁ聞かれても適当にごまかすんだけどね。

めんどくさいじゃない?

同情なんてして欲しくないし、まぁどいつもこいつも同情なんてしてくれるヤワな相手じゃないんだけどね。

私はフレンダ。

それでいいじゃない。

連中には本名だって教えてやらない。

ただのフレンダ。

謎の女って感じでいいじゃない。

結局、私はそれほど他人を信じる事ができないんだと思う。

だから私はフレンダを名乗る。



516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 13:58:50.64 ID:ZhTHicm10
基本的にココでの生活は自由だ、拍子抜けするくらい緩い。

仕事以外の時間は何をするのも自由。

買い物に行くのも良いし、武器を密輸するでも良い。

学校に行っても良いし(実際行ってる人間はいなかったが)株取引で一山当てるも良し。


ある日突然リーダーの元に依頼の電話がかかってきて、仕事が発生する。

仕事は大抵殺し、短い労働時間で嘘みたいな大金が転がり込む。

しかもいつもいつも成功するとは限らない。

酷い時は結成から3時間で組織が壊滅する事もあった。

生きるのはつまらないけれど、死ぬのはもっとつまらないから、仕事をこなしながらいつも逃げる準備だけはしていた。

雲行きが怪しくなると味方を売って生き延びる。

それでも大丈夫だ。

結局、そんな状況まで追い込まれるという事は、もう二度とメンバーと顔を合わせる事は無いという事だから。

乗り込んだ船が沈没しそうならば、そんな沈み行く船からはとっとと逃げてしまえばいい。

結局、それが利口って訳よ。



517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 14:00:32.22 ID:ZhTHicm10
けれど参った。

私が関わった組織が立て続けに壊滅してしまった。

それだけならまぁ、いつもみたく新しい配属先を待つだけ……なのだが。

さらに参った事に私を学園都市に送りこんだ派閥まで抗争に巻き込まれて潰されてしまったらしい。

えーっと

つまり

結局、暗殺家業、クビって訳よ。

これにはさすがに参った。

金はあるが一生を生きていけるかと聞かれると圧倒的に足りない。



518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 14:08:37.81 ID:ZhTHicm10
さてどうしようと立ち往生していた時に知らない番号から電話がかかってきた

不思議に思いながら通話ボタンを押すと

「あんた、失業中なんですって?」

馴れ馴れしい女の声だった。

「失礼な、これでも立派に働いてる訳よ」

「知ってる、けれど慣れもしないデイトレードなんてするもんじゃないわよ? その株ダメね、明日には300万円の損害が出るわ」

「なんでそんな事知ってるのよ」

「あら? この世界ではね、情報が命なのよ? ね、────ちゃん」

「……っ」

「あらあら? びっくりした? フレンダって呼んだ方が良かったかしら?」



519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 14:13:46.46 ID:ZhTHicm10
「あなた……何者……っ?」

「原子崩しからは電話の女って言われてるわ。って、んな事はどうでもいいのよ。それよりフレンダ、この街の暗部の人間が後ろ盾を無くしたままどうするつもりよ? このままじゃあんた飢え死によ?」

「さー? このまま社会に無償奉仕ってのもいいかもしれないわね、せっかく学生の街なんだし普通に学生やるとか?」

「こいつときたらー! 口ごたえだけは超一流ね! いいわ! 気に入った! 無償で殺し? 普通の学生? んな事するんだったら、あたしがあんたを雇ってあげる」

「あたしが? あんたの元で?」

「暗殺のスペシャリストを探してたとこなのよね。うちには爆弾がいるんだけど、どうもあいつはド派手に立ち回る事しかできないみたいでね、任せられる仕事の幅が小さいのよ」

「?」

「会えばわかるわ」


その後に指定された場所で待っていた女が、

学園都市に7人しかいないレベル5の第4位。

原子崩し──、麦野沈利その人だった。

後に絹旗と滝壺が加わって今のアイテムの形になる、少し前の話だ。



510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 10:36:17.05 ID:6mnORMR30
フレンダ可愛い。

けど出番が少ないから難しいんだよな…

あとアイテムは基本的に全員甘えん坊だと思う。



511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 11:02:52.69 ID:0y58fG6IO
このフレンダはどこかレヴィに似てる気がする


512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 13:32:36.25 ID:fedGWb5Jo
フレンダェ…
俺がフレンダの初めての人になるつもりだったのによぉ!!

ちょっと牧師と警官殺してくるわ



520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 14:28:49.80 ID:ZhTHicm10
>>510
超電磁砲4巻がなければアイテムに嵌る事も多分なかったし
フレンダかわいいって思うことも多分無かった
原作は無理でも外伝ならまだ出番の可能性が……!

>甘えん坊
なんとなくわかります、多分皆末っ子だと思う。


>>511

麦野「500だ」

「こいつときたらー! そんな金額出せないわよ!」

麦野「だったらアンタのヘソクリ(ポケットマネー)から出すんだな」

「んなもんあるか!」
                                     ・・・・・・ 
麦野「口の利き方に気をつけなよ電話の女(コールガール)こちとらあんた専用のナースコールじゃねーんだ、その自慢のケツをローストされたくなけりゃ500、耳を揃って払いな」

「……300」

麦野「450」

「……ああわかった、わかったよ。 400! それ以上は出せない」

麦野「交渉成立だ、まいど」


……てきな感じ?
レヴィはそのまんま麦野が入っても違和感なさそうな気が


>>512
フレンダ、結局どこの国の出身なんでしょうね。


526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 18:08:42.89 ID:ZZsVDRabo
結局、フレンダが一番可愛いって訳よ。


527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 19:20:11.18 ID:GVlXZ/IMo
個人的には浜絹>浜麦>>浜レンダ>>>>>>>>>>>>>>>>浜滝なんだな


528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 20:13:51.40 ID:40Mzptt8o
あ、そういうのはいいです


529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/25(火) 20:54:57.26 ID:n0pvXrWDO
超期待してます


531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/01/26(水) 13:41:36.94 ID:Bu46zyIwo
続きが気になるってばよ!




次→麦野「私が暗部に落ちる前に」【後編】

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