五条「ククク… ここが学園都市ですか」その24

2010-12-30 (木) 18:03  禁書目録SS   9コメント  
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これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学


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909 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /29(水) 01:28:36.26 ID:RXuWPSQo
『まったく……私らが合流するまでは足止めに徹しろって言っておいたのに、深追いした挙句返り討ちにあって捕まっちゃうなんて、撃破ボーナスに目が眩んだからって何やってんだか……』

五条と御坂の対面に立つ、桃色のブランド服に身を包んだ麦野と呼ばれた女が、呆れた様に首を左右に振りため息を吐いた。

麦野「ギャラの分配考え直さなきゃねー」

いつの間にかフレンダと呼ばれた少女のベレー帽を拾い上げていたジャージ姿の女が、麦野の言葉を聞いて深く肩を沈める彼女の頭にそっとベレー帽を被せ、優しく声をかける。



『大丈夫だよフレンダ。私はそんなフレンダを応援してる』

五条勝は、死地であるにも関わらず、まるで新聞受けにある新聞を取って来いと言われただけの様な余裕を保つ女達に、若干の違和感を覚えた。
この女達の自信の源は一体何なのだと。

和気藹々と言葉を交わしている女達に警戒の目線を投げている五条勝よりも先に動いたのは、くぐった修羅場の数の違いだろうか、学園都市第三位の御坂美琴だった。

一丸となっている女達目掛け、いつの間にか手近な箇所にあったボイラーの様な機器を電磁力で中空へと抱え上げ、照準を合わせると急速に加速、射出する。

轟、と唸りを上げ、数百キロはあろう鉄の塊が、女達に向かい飛翔する。

美琴と向かい合い一番先頭に立つ麦野と呼ばれた女が、その様を感じ取り機器に向かい右手を掲げた。

刹那、麦野の右手より走った閃光と、再びとどろく轟音。

美琴が射出した機器は麦野に届く直前に、何らかの力により粉々に破砕されていた。

麦野「で、あれが噂のインベーダーね」

フレンダ「……うん……」

気だるそうな表情で言葉を吐いた麦野が、美琴に向けその右手を掲げる。

その手の平から空気が軽く振動した様な耳障りな音を立てると、眩い閃光と共に一筋の光線が放たれた。

一筋の光線が、立ち尽くしたままの美琴へと飛来する。

美琴「……ッ!!」

放たれた光線の行き様を見届ける事も無く、今度は五条に向かいその右手を掲げる麦野。再度の空気振動と共に、彼女の右手から光線が放たれる。

五条「ククク……」



910 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/29(水) 01:30:58.97 ID:RXuWPSQo
放たれた光線が、五条の腹部を食い破り壁面へと向かう。

フレンダ「……っ!!」

壁面に着弾した光線が爆発を起こすと共に、腹部を貫かれた五条の姿が揺らぎ、幻の様に掻き消えた。

五条「……危ない危ない……クックックック……」

いつの間にか麦野を挟み、先に立っていた箇所の真逆側の空中に留まっている五条勝の姿があった。
足先からは真紅の炎が立ち上り、その佇まいを淡い陽炎で揺らめかせている。

麦野「……へぇ……」

五条「……そんなにゆっくりこちらを眺めている場合ですか……?」

深い笑みを表情に張り付かせたまま腕を組んでいた五条が、くいくいと顎の先で逆側を示す。

その示された先の壁に激しい雷光が走り、先に麦野が放っていた光線が引き起こす爆炎の最中から、電磁力に引かれる様美琴が飛び出す。

美琴「……やってくれんじゃないのッッ!!」

声を上げながら壁面を駆ける美琴の後を追う様に中空に浮かんだ鋼鉄の瓦礫が、美琴の怒声と共に麦野に向かい急加速する。

五条「……ナイスパスですよ……」

その瓦礫の中でも一番弾速が早いの一片が、逆側の中に屹立している五条の元へ走った。
組んでいた腕を解いた五条が、飛来する瓦礫に向かい大きく足を振り上げる。


五条「……ッ!!」

その瓦礫に向かい、足を蹴り出す五条。
轟々と激しい音を響かせながら燃え盛る彼のつま先に当たった瓦礫は、その場で激しく回転し、空気との摩擦で炎を帯び始める。

五条「──────Hell Fire.(地獄の業火)」

空中で激しく燃え上がる瓦礫を、更なる勢いで炎熱を纏った五条の足が強く蹴りだす。
その照準の先は、麦野と呼ばれた光線を放つ女。

逆側からは、先に美琴が放った瓦礫が同様に加速を帯び飛来している。



911 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/29(水) 01:33:33.98 ID:RXuWPSQo
雷光と炎熱を帯びた瓦礫が自身に向けて殺到する中、麦野は余裕の表情を保ったまま傍らに立つフレンダの襟首を掴み、後方へと投げ飛ばして右手を掲げた。

麦野「……器用なまねをするわね」

ぽつりと呟いた麦野の右手が発光し、手の平から迸った光がドームの形を形成する。

飛び交う瓦礫はそのドームに直撃すると、激しい音と共に一瞬で溶解し、虚空へとその姿を消していった。

麦野「壁に張り付く蜘蛛女と、ふわふわ浮かぶ蝙蝠男?面倒そーなく見合わせね……」

言葉とは裏腹に余裕の表情を浮かべ続ける麦野が、その服のポケットから透明のアンプルを取り出した。

麦野「滝壺、使っときなさい」

滝壺と呼ばれた後方に控えるジャージ姿の女に、そのアンプルが放られる。

放物線を描いて滝壺の手へと向かうそれを、熱風と共に唸りを上げて赤く燃える影が掻っ攫った。

麦野「なッ……!?」

五条「オレの前でそんなに緩いパスとは……ナメられたものですね……」

五条のつま先で、白い結晶の詰まったアンプルがポンポンと跳ねる。

五条「……貰っておきましょうか……イケない薬の気配しかしませんしね……」
一段と高く蹴ったアンプルを中空で五条の手が掴み、身に纏う白外套のポケットへと滑り込ませた。

麦野「……っっっざけんなぁッッッ!!」

その様を見た麦野が、先と同様五条に向かい一際大きい光線を放つ。

五条「ッッと……!!」

身をかわして宙に舞った五条が、逆側の壁面に張り付く御坂と目線を合わせ、声を張り上げた。

五条「施設の破壊を優先して下さい……!ここはオレが抑えますッ……!!」

五条の声を聞いた美琴が、一瞬驚いた様な表情を浮かべる。
しかし、すぐにその表情を険しいものへと戻すと、先のやり取りで開いた穴より部屋の外へと体を投げた。

五条「……さて……」

その様を見届けた五条が、再度部屋の中心に立つ三人へと目線を投げた。



913 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/29(水) 01:35:51.92 ID:RXuWPSQo
三人の内滝壺と呼ばれたジャージ姿の女は狼狽したまま、フレンダと呼ばれた金髪の少女はわき腹を押さえたまま困惑の瞳で、麦野と呼ばれた光線を放つ女は自信に充ちた眼差しで、それぞれ中空に浮かぶ五条を見つめていた。

五条「クックック……」

その三人に向かい、人差し指を突きたてた五条の手が動く。

五条「オマエと、オマエ……帰りなさい……」

滝壺とフレンダに向かい、それぞれ指先が向けられた後、その口から退却を薦める言葉が響いた。

滝壺「なっ……!?」
フレンダ「……」

五条「……オレはこれからそこのビームと踊らせて貰います……断言しましょう。お前たちが居たら、死にます」

そこまで言って、五条はフレンダと呼ばれた金髪の少女と目を合わせた。
先刻振り返りざまに見た縋る様な瞳でこちらを見上げている。

その二人の様子を見た麦野が口を開いた。

麦野「……フレンダ、滝壺。絹旗と合流しなさい」

滝壺「私……やれるよ!」

麦野「良いからッッッ!!」

唐突に声を張り上げる麦野と、凍りつく二人の女。

麦野「……フレンダは蜘蛛女から受けたダメージが深刻でしょう?滝壺もアレが無ければ追跡は出来ないわね……?私ひとりであなた達二人をアイツから守りきるのは無理。断言しても良いわ」

その言葉を聴いたフレンダと滝壺が顔を見合わせる。
しばしの間を置いて、申し訳なさそうにフレンダが口を開いた。

フレンダ「ごめんね……足引っ張って……」

申し訳なさそうなフレンダのベレー帽を、ぽんぽんと優しく麦野が叩く。

フレンダ「わ」
麦野「別に責めてやしないわよ」

叩きながら、優しい笑みを表情に浮かべ、麦野が言葉を続ける。

麦野「むしろよくやってくれたわ。アンタのお陰で蜘蛛女は虫の息だし、滝壺がバックアップに回ればここで逃がしてもアイツらを追跡出来るでしょう?……後詰は絹旗に任せて、休んでなさい」



914 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /29(水) 01:36:12.26 ID:UJQDTEAO
そういえば五条さんDFだった…



915 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/29(水) 01:37:28.76 ID:DbtNKbQo
つえぇww



916 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /29(水) 01:39:00.79 ID:RXuWPSQo
麦野が言葉を終えると滝壺がフレンダに肩を貸し、部屋の入り口へと歩き去っていった。

部屋から出る直前、その肩を抱えられたフレンダが五条の姿を見上げたが、その視線が五条と交わる事は無かった。

────────────

『わざわざ待ってくれるなんて、アンタはあの電撃使い(エレクトロマスター)と違ってずいぶん紳士的ね?』

去っていく二人を見届けた麦野が、泰然と宙に立ちはだかる五条に向かい口を開いた。

五条「クックック……いえ、淑女をダンスに誘うときは華を添えるのが礼儀でしょう……何より────」

五条の体がふわりと浮力を失い、静かに地面へと降り立った。
降り立った彼がその場で後方へと宙返りをし、着地と同時に高く右足を振りぬく。

赤熱したスパイクから迸る炎が、薄暗い研究室の虚空へと赤く燃える十字架を描いた。

五条「まともに踊れそうな相手ならば、可能な限り邪魔は排除しておきたい……」

その様を見た麦野が、軽く笑みながら口を開く。

麦野「あら、気が合うわね」

彼女の両手から迸った光線がゆっくりと彼女の周囲を旋回し、その姿を薄闇に浮かび上がらせる。

麦野「せいぜい退屈させんなよ……クソガキ」

その言葉を合図に五条の体が加速し、麦野へと走った。
距離を詰めようと走りよってくる五条に向かい、麦野の右手が光線を放つ。

五条 (……光線ならば蹴り飛ばせますが……出力的に少し難しそうですね……)

右手の射角より咄嗟に身をかわした五条が、大きく右側へと跳躍する。



917 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/29(水) 01:39:53.66 ID:UJQDTEAO
初対面の学園都市第四位すら警戒させる五条△



919 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/29(水) 01:41:38.12 ID:DbtNKbQo
> 光線ならば蹴り飛ばせますが

 この時点でおかしいwwwwww




920 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/29(水) 01:42:12.30 ID:RXuWPSQo
跳躍しながら麦野に視線を送ると、彼女はポケットからカード状の"何か"を取り出し、それを宙へと放り投げていた。
重力に従い落下するカードに向かい、再度麦野の手が向けられる。

五条(……ッ!!)

放たれた光線がカードに当たり拡散し、無数の光の矢となって中空に浮かぶ五条へと押し寄せる。

五条(……かわしきれないッッッ……!!)

辛うじて体を捻った五条のわき腹を、強い衝撃が襲い、そのままの体勢で側方へと弾き飛ばされた。

麦野「拡散支援半導体(シリコンバーン)。案外あっけなかったわね……まぁ中坊のアタマじゃできてこの程度か……ッ!?」

光線が当たり蒸発した壁面がもうもうと煙を上げる中、五条の遺骸を確認しようと歩を進めた麦野の視界に信じがたい光景が飛びこんできた。

本来なら体を貫通された五条が脇腹から夥しい量の血を流し昏倒しているはずの箇所に、脇腹を押さえて立っている彼の姿。

五条「ノーダメージ……というわけには行きませんが……まぁ……死にはしませんか……」

麦野「なッ……そうかよ、あんな細い光線じゃ効きやしませんってか!ンなら……」

麦野が五条に向かい両手を掲げると、一段と甲高い音が鳴り響きその手の平が激しく発光を始める。

麦野「これでどうよッッッ!!!!」

周囲の大気がうなり声を上げると同時、麦野の両の手の平より、直径一メートルはあろうかという光の柱が射出された。

五条「……残念ですが、それでは遅すぎます……」
麦野「!?」

いつの間にか光線を放つ背後に立っていた五条が、くつくつと笑いながら麦野に言葉を投げ、パチンと親指を鳴らす。
刹那、麦野の側面から室内とは思えない程の轟風が吹きつけ、その体を壁面へと吹き飛ばし強く打ち付けた。

麦野「ぐッッ!!」

壁面に肢体を打ちつけた麦野に向かい、更に五条の右足が走る。
同時に、麦野の眼前に四つの光球が浮かび上がる。

五条「終わりですッッッ!!」
麦野「ざっけんじゃねぇえええええ!!!!」



924 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/29(水) 01:45:59.59 ID:RXuWPSQo
次第に迫るその右足に向かい、麦野の眼前に浮かんだ光球が光の線を迸らせた。
直前で素早く足を引いた五条が後方へと跳躍し、再びその間合いが開かれる。

麦野「っは!!ビビっちまったかクソガキィ!?男だったらンなトコでチ○ポコ萎えさせてねえで、とっとと突っ込んで来いってんだよコラ!」

五条「……オマエを淑女と見たのは失敗でしたか……」

吼え猛りながら次々と光線を繰り出し、周囲の惨状を更に塗り潰す程の惨状に変えていく眼前の女に対し、五条が思考を巡らした。

ヘブンズタイムは、少しインターバルを置かねば使えない。
企鵝が居ないので、爆発もボールを用いた技も使えない。
簡単なシュートの類ならば瓦礫でも可能であろうが、再びあのドーム上の光線に阻まれる可能性が高いだろう。
近接戦に持ち込んだとしても、一撃で勝負を決め損ない間近から極大レーザーを放たれたらたまったものではない。

もう少し、企鵝の出し惜しみをしておくべきだったか。

……最早、切れる札はひとつしかない。

五条(……研究所を潰す際に使い過ぎているのが恐ろしいところですが……背に腹は変えられませんね……)

静かに、その瞳にかかるメガネに手を伸ばす。

麦野「オイオイどぉしたあ!?涙でメガネが曇っちまったってかあ!?」

そのメガネを外した五条が、瞳に力を集中し、立ちはだかったまま罵声をつむぎ続ける麦野を睨み付けた。

五条「……狂え、純粋に……!!」
麦野「何見てn!?」

途端に五条を見据えていた麦野の瞳が焦点を失った様にその輝きを失い、掲げられていた両手がぶらりと脱力する。
その様を確認した五条が直ぐにメガネをかけ直し、弾かれる様に壁の穴へと駆け出した。

五条「……オレの本来の目的は施設の破壊でしてね……ここは退かせてもらいますよ……クックック……アーッハッハッハッハ!!」

────────────



929 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/29(水) 01:49:49.88 ID:fCG6f6co
久々の狂え純粋にいただきました
ここで逃げておくのが紳士のたしなみ
むぎのんのキレっぷりとか道具の使いっぷりとかいいわァ




930 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/29(水) 01:50:01.89 ID:tc0qTYAo
やはり五条さんフェミニスト
倒せるのに放置とは




931 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/29(水) 01:50:21.55 ID:RXuWPSQo
先に別れた美琴を探して、施設の中を駆けていた。
麦野より逃走してから十数分は経過しているだろうか。
広いホール状のフロアを駆け抜け、作戦開始前に初春より告げられた破壊対象のある部屋へ足を薦める。
……視界に入った研究機材はすべて黒く焦げ、バチバチと回路がショートする音を上げていた。

美琴が破壊したのだろう。
この様子ならば、恐らくは彼女も無事に脱出している筈だが……

────── 刹那、先刻まで散々耳にしていた嫌な爆発音が耳についた。

慌てて音がした方角へと駆け抜けると、廊下の突き当たりの壁面が一部融解していた。
人が通れる程度に融解した穴より先を覗くと、シャフト状の機器が中央にそびえる、縦穴構造のフロアになっている様だ。
その下方より響く、麦野の怒声と爆発音。

……先の認識阻害が切れたのだろうか。
声から判断するに、もう随分と元気そうな様子だ。

その穴から身を投げ、重力に従い自由落下を始める。

数十メートル落下した先の足場に、二人の女の姿が見えた。
片方は、予想の通り麦野と呼ばれたビーム女。
そしてもう片方は、先に別れた学園都市第三位、御坂美琴。

回避する場所の無い足場での戦闘を強いられた影響だろうか、それとも、連日の破壊活動によるものだろうか。
彼女の顔色からは、濃厚な疲弊の色が見て取れた。

麦野「パリイ!パリイ!パリイ!てかァ?笑わせんじゃねぇぞクソガキ!!お子様の喧嘩程度でこの街の『闇』をどうにかできると思ってんのかァ!!?」

振り絞る様に怒声を張り上げる麦野と美琴の間を遮る様、宙を蹴る。

五条「……そこまでですッッ!!」
麦野「あァ!?」

自身が上げた声に彼女が気づくのを見計らって、再度メガネを外し、彼女の目を強く見据える。

暫しの視線の交錯を経て、麦野の周囲に浮いていた光の球が、まるで蜃気楼の様にふっと消え去った。

麦野「!?……!?……クソガキ!!てめぇ何しやがったぁ!?」

その怒声が若干耳障りだったが、今は眼下の美琴の保護が最優先だろう。
足元から吹き上がる炎を纏い、美琴と麦野の間の足場に着地する。

美琴「……!!ちょっとあんt……!!」

降り立った足場がバラバラに倒壊したのは、本当に一瞬の出来事だった。

────────────



932 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/29(水) 01:53:48.24 ID:RXuWPSQo
轟音が縦穴を満たし、二人の少女と一人の少年が立つ足場が、一瞬にして寸断される。

崩壊の最中、一人の少女は右手を鉄骨へと伸ばすと自身の体を膨大な電磁力で鉄骨に引っ張らせ、その淵へとしがみ付いた。

一人の少年は、崩れる足場から跳躍すると、後方にひらりと身を返した後に当然の様にして中空に留まった。

残る一人の少女は、為すすべも無く崩れた瓦礫と共に重力に引かれ、その体を自由落下させ始めている。
鉄骨にしがみ付いている少女 御坂美琴が、間近に垂れ下がっていたワイヤーを手に取り、落下を始めた少女へと電磁力で射出する。

美琴「つかまって!!」

眼前に差し出されたワイヤーを払う様に手を振った少女は、一瞬唖然とした表情を見せた後に諦めた様な笑顔を浮かべ、その体を底も見えぬほどの暗闇へと落としていく。

その少女の姿を見て、一筋の炎が宙を舞った。

落下する少女に追いつくほどの速度で足を進めた炎は、バタバタと白い外套をはためかせながら少女の頭を両手で掴み、自身の胸へと強く抱き寄せる。

『……!っざけんなクソガキッッッ……!はなs『黙りなさいッ!!』

胸元で怒声を上げる少女の声を更に大きい怒声で一蹴し、強くその体を抱いた少年が加速する先方へと目線を送る。

暫く、と言っても時間にすれば数秒の自由落下を経て、その視線の先に鋼鉄の床が飛び込んできた。

それを確認し、少年は自身の身体が先に床に到達する様、少女を抱いたまま身体を丸める。

『アンタ……何をッ……』

同様に迫る床を確認した少女が、少年に抱かれながら手を下に向けるも、その掌からは何も放出される様な兆は無い。

『ッッッ…………!!』

自身の加速度と床までの距離を省みた少女が強く目をつぶり、息を殺す。
掌はいつの間にか少年の胸元へと伸び、彼が纏う白外套の淵を強く握っていた。

…………

………

目を閉じた少女が、衝撃が身体に伝わない事を疑問に思いその瞳を開く。



933 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/29(水) 01:55:37.17 ID:RXuWPSQo
『…… 大丈夫ですよ……クックックック……』

緑と白のコントラストに染まった視界に自分を抱きしめていた少年の声が響き、両肩にかかっていた圧力がふっと消失した。

呆然とした表情のままの少女、麦野沈利が上体を引き起こす。
そしてその視界に飛び込んでくる、先まで敵対していた五条勝の笑顔。

五条「……怪我はしていませんね……」

狐に摘まれた表情で麦野が立ち上がり、それに続いて五条も立ち上がり、ぽんぽんと外套の裾を払う。

……払った箇所からは、特段埃等が立ち上る形跡は無かった。

麦野「……チッ、毒気抜けちまったよ」

忌々しげに麦野が呟く。

五条「……毒づかれても、暫くは能力も使えませんから問題は無いのですがね…… あぁ、一過性のものなので、心配はしないで結構です……グヒヒヒヒ……」

呟きを聞いた五条が言葉を返した。

麦野「……ねえ、アンタ名前は?」

五条「……」

麦野「……別に悪い事は考えてないから、気にしないで答えなさい」

五条「……五条……五条勝です……」

五条の名乗りを聞いた麦野が、大きくため息をつき首を横に振った。

麦野「……やっぱりアンタがあの"認識阻害"か……」

五条「……?オレを知っているのですか……?」

麦野「そりゃそーよ。統括理事会周りの暗部でアンタの名前知らない人間なんていないわ。最悪のレベル0ってね」

五条「……?何故です」

麦野「皆周知徹底されてるのよ?"最悪の場合"が起こった時は、各隊連携して何としてでもアンタを殺せってね」

言いながら麦野が嗜虐的な笑みを浮かべる。



935 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/29(水) 01:56:50.68 ID:RXuWPSQo
五条「……」

麦野「っても、どの道その様子じゃ長生きしそーも無いわね。今回は見逃してやるから感謝しなさい」

麦野がひらひらと手を振る。

五条「……何故、オレにその話を……?恐らく最重要機みt「何となくよ、その方が面白そーだから」

五条の言葉を遮った麦野が、更に言葉を続ける。

麦野「自己紹介してなかったわね。私は麦野。麦野沈利(むぎのしずり)。レベル5の一人よ」

五条「……レベル5……道理で……」

麦野「善かれ悪かれ、アンタとはまた近いうちに会いそうね……敵も助ける甘ったるさで、せーぜー寝首掻かれない様にしなさい」

麦野が踵を返し、コツコツとブーツの音を響かせながら縦穴を後にした。

その様を見届けた五条が、落下した足場の先に目をやると、既に鉄骨へとぶら下がっていた美琴の姿も消失していた。

五条(……一応、ミッション完了といったところでしょうか……)

強く地を蹴り、縦穴を一気に飛び上がる。

最早隠密行動等不要だろうと悟った彼の姿が加速して縦穴の天井を突き破り、真夜中の夜空へと舞い上がる。

誰も居なくなった縦穴の底は、薄暗い闇のカーテンに包まれ、ただただ静寂を保ち続けていた ──────

──────to be continued──────



936 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/29(水) 01:58:53.12 ID:lUE5aZUo
乙ー!



934 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /29(水) 01:56:50.66 ID:DbtNKbQo
黒子「あらあら、勝さん。また他所の女性とフラグですの?」



946 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/29(水) 08:29:57.31 ID:UPXiI8w0
上条勢力 + 五条勢力。
とんでもない事になってるな。




947 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/29(水) 09:03:56.65 ID:wjc7x3Qo
上条さんは魔術側にフラグ立ててるけど
五条さんは超能力側にフラグ立ててるよね(御坂を除く)




948 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/29(水) 09:40:43.34 ID:lSMvb.6o
幻想殺し(イマジンブレイカー)
一方通行(アクセラレータ)

じゃあ認識阻害はなんだ?




949 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/29(水) 09:47:42.33 ID:DbtNKbQo
認識阻害(デコグニション)

と、アレイスターに呼ばれていたよ




950 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/12/29(水) 09:50:39.00 ID:lSMvb.6o
>>949
サンクス

五条ファンさん次いつ来るかレスしないで行っちゃったね




951 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /29(水) 12:04:32.34 ID:nZWVZkAO
昨晩は大変失礼致しました
投下前に入れた酒も相まってか、投下完了と同時に意識を失う様寝入っておりました

さて時間投下に関しましてですが順当に行けば明日の夜、私事が混んだら明後日の夜を予定しております
お時間がございましたら、またお付き合い頂ければ幸いです



953 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/29(水) 12:13:58.11 ID:c3oGTkco
乙です!





次→五条「ククク… ここが学園都市ですか」その25



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禁書目録SS   コメント:9   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
1906. 名前 : 名無し@SS好き◆HtnrlDSA 投稿日 : 2010/12/30(木) 18:36 ▼このコメントに返信する
画像wwww
1907. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/30(木) 18:45 ▼このコメントに返信する
敵でこわーい麦のんまで助ける五条さんマジ紳士
1908. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/30(木) 18:57 ▼このコメントに返信する
麦のんが五条さんに全身ラブラブビーム出すのはいつですか?
1909. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/30(木) 19:30 ▼このコメントに返信する
五条さんいいともに出演か・・・
胸が熱くなるな
1910. 名前 : R◆- 投稿日 : 2010/12/30(木) 19:40 ▼このコメントに返信する
正直、五条さんがお友達紹介で誰を紹介するか気になります。
1915. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/30(木) 23:38 ▼このコメントに返信する
五条さんを躊躇なく「クソガキ」「中坊」呼ばわりするむぎのん。
あの時点じゃ彼が「最悪のレベル0」って確証はないだろうに。
やっぱり、老け顔は老け顔を知るのか。
1917. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/31(金) 00:14 ▼このコメントに返信する
私がNo.1915を見たのはそれが最後でした…
私にはどうすることもできなかったのです……
1921. 名前 : 名無し◆- 投稿日 : 2010/12/31(金) 04:07 ▼このコメントに返信する
このシリーズマジで面白いわ…
1929. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/31(金) 13:04 ▼このコメントに返信する
こりゃあ第二回人気投票まで続く大作になりそうだな…嬉しいわ。
五条さんが紹介するのはそりゃあ上条さんだろう…と思ったけど、同年代のステイルも居たんだった。
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