五条「ククク… ここが学園都市ですか」その14

2010-12-06 (月) 12:22  禁書目録SS   4コメント  
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轟け性紀の大発明 愛と怒りと悲しみの秘密結社第二科学部


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720 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 23:09:20.31 ID:E0BBca9EO
────────────
八月五日 夏休み十七日目
────────────

『成程、三沢塾か』

五条「……ククク……」

学園都市に来て以来、三度目に足を踏み入れる事となる橙色のビーカーが鎮座する薄暗い部屋で、緑色の手術衣に身を包んだ逆さの人間と向かい合っていた。

『少々前にこの学園都市に一人の錬金術師が姿を現していてね』

五条「……錬金術師?」

『ローマ正教に所属していたチューリッヒ学派の錬金術師が学園都市に潜入したとの事だったんだが……君が会ったという緑髪の男で間違いないだろう』

五条「……」

昨日の男を思い返す。
不意を突かれたとは言え、自身が学園都市に踏み入れて以来初めての敗北を味あわせてくれた男。
ぐつぐつと、ハラワタが沸騰する様な感覚が蘇ってくる。

『ご苦労だったね認識阻害。下がりたまえ』

統括理事長の声を聞き、踵を返した。

五条「……」



721 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 23:09:28.36 ID:Bmk/VkWD0
ククク…待っていましたよ…



726 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 23:13:33.21 ID:qZ2krgEp0
連絡できたのか・・・



729 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 23:19:00.97 ID:E0BBca9EO
『どうした?未だ何かあるのか?』

足を進めない自身を見て、統括理事長が尋ねてくる。

五条「……一つ、お伺いさせて頂きたいのですが……」

『何だね』

五条「……姫神……吸血殺しを確保するご予定などは……?ヒヒヒ……」

表情を変えぬまま、統括理事長が声を返してくる。

『事情の詳細まで語る気は無いが、ローマ正教を離反した錬金術師が関わっている時点で、この件に関しては能力者では無く魔術師を対処に当てなければならなくなった。近日中に彼女を確保する為の魔術師を召集して、その確保に当たらせようと思う』

五条「……そうですか……」

『何か残念そうだね?』

五条「……ええ……人の記憶を弄んでくれたあの錬金術師が、少々気に食いませんので……ヒヒヒ……」

『……』

統括理事長に背を向けたまま言葉を投げる。
暫しの沈黙を挟み、背後から言葉が返ってきた。

『その言葉は覚えておこう』



737 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 23:28:45.63 ID:E0BBca9EO
五条「ククク……期待しておきますよ……」

────────────

それからというものの、二日程退屈な時間が続いた。
黒子が盛夏祭の準備と風紀委員の仕事に追われているというので、あまり負担を増やすものではないだろうし、黒子が居ないと万が一アンチスキルに拘束された際も穏やかに場を切り抜けられる自信が無かった為、揉め事も起こさずにだらだらと惰性で二日を過ごした。

五条(……風紀委員入りも、考えてみますかね……)
七日に黒子から電話があり、

『十二日に常盤学園中で盛夏祭が行なわれますので、是非ご来場下さいませ!』
と告げられた事が、唯一の変化らしい変化だったろうか。
仕方が無いので、十二日までは大人しくしていようかと思っていた矢先、事態が急を迎える。

────────────
八月八日 夏休み二十日目
────────────

ぴんぽーん

昼食をとり終えて暫く時間が経った頃、ソファに腰掛け企鵝を撫でながら他愛も無いワイドショーを眺めていた折、唐突に来客を告げるインターホンが鳴る。

五条「……?どちら様でしょう?」
ソファから立ち上がり、ドアの向こうへと声を投げる。



742 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 23:39:23.73 ID:E0BBca9EO
『ボクだ』

数日ぶりに聞く声が、ドアの向こうから響いて来た。
咄嗟に二日前に統括理事長が魔術師を対処に当てると言っていたのを思い出し、気だるさに沈んでいた気持ちが、一気に高揚するのが理解出来た。

五条「……ククク……オレは空飛ぶスパゲッティ・モンスター教ですので……宗教の勧誘はお断りしております……」

『……』
五条「……」

『無理やり開けて良いかな?』
五条「……今開けますよ……ヒヒヒ……」

ドアのロックを外し、扉を開く。
視界を塞ぐ巨躯、目の下のバーコード、咥えたタバコの灰。
赤髪の神父、ステイル=マグヌスの姿がそこにあった。

五条「……何用ですか……?」

ふう、と紫煙を吐き出し、ステイルが口を開く。

ステイル「学園都市の統括理事長に召集を受けてね。不本意ながら君と上条当麻を伴って任に当たれとの命が下されたんだ」

五条「……命とは……?」

ステイル「チューリッヒ学派の錬金術師がこの街で女の子を監禁しているとの事だ。術師の名前はアウレオルス=イザード。三年前から行方を眩ませていてね。三年間どこで何をやっていたのか……それがひょっこり戻ってきたワケだ」



745 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 23:40:45.88 ID:qZ2krgEp0
またドストライクなものを

空飛ぶスパゲッティ・モンスター教 - wikipedia



749 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 23:42:52.99 ID:vFEQIlwjO
拳での語り合いを経て、冗談を言う仲にまでなったか…感慨深いな。



755 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 23:53:23.60 ID:E0BBca9EO
間違いない、先の件だ。

五条「……グヒヒ……もう結構……吸血殺し、姫神の確保ですね……」

ステイルが目を見開き、驚いた表情を作る。
ぽろ、と煙草の灰が落ちた。

五条「……ククク……オレも一枚その件に噛んでいましてね……」

ステイル「……話が早い。僕はこれから三沢塾に特攻をかける。頼めるかい、五条勝」

五条「……アウレオルス=イザードの処理は、任の内に入っているのですか……?」

ステイル「ああ、処理をしろとまでは言われていないが、間違いなく彼とは矛を交える事になるだろうね」

五条「……了解しました……受けましょうか……」

答えて、踵を返す。

ステイル「……厄介な相手になると思う。準備をしたら、上条当麻の自宅の前で落ち合おう。じゃあ」

背後からステイルがドアを閉める音が聞こえた。

厄介な相手?
五条「……知ってますよ……ククク……アーッハッハッハ!!」

────────────



761 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 00:03:26.31 ID:SsiD0agXO
サッカーウェアに身を包み、巨大なサッカーバッグを背に追ったまま、ビルの前に立ち尽くしていた。

隣には、炎の魔術師が吐き出す煙がゆらゆらと揺れており、その向こう側に幻想殺しの右手を持つ高校生の姿が見える。

上条「これが三沢塾……?別に怪しくは見えないけど……」

ステイル「怪しくは、見えないね。だけど建物自体が錬金術師の強力な結界になっている」

五条(……この間は気付けませんでしたね……)

上条「強いのか?それ」

ステイル「アウレオルス=イザード。彼のパラケルススの末裔さ。君達は錬金術師について何を知っている?」

ステイルが、講釈を垂れる教師の様な口調で呟いた。

上条「鉛を金に変えるとか、不老不死の薬を調合するとかって?」

五条「……修道院を名乗ってお酒を造っている方々もおりますね……確かあの方々はフランスのカト『ボクはイギリス正教徒だから構わないが、敬虔なプロテスタントの前であまりその手の話をしない方が良いと思うよ』

ステイルに遮られた。

ステイル「まぁ良い、錬金術師には本来、究極的な目的が存在するんだ」

五条「……?」



765 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 00:13:31.78 ID:SsiD0agXO
ステイル「世界の全てをシミュレートする事さ」

上条「何だそりゃ?」

間をおかず、上条の声が飛ぶ。

ステイル「もし、頭の中に描いた物を現実世界に引っ張り出せたら……どうなると思う?」

上条「はあ?何でも好きに持ち出せるって事か?そんなの勝てるワケ無いだろうが」

上条の声を聞いたステイルが皮肉っぽく笑みながら、言葉を続けた。

ステイル「じゃあどうする?君はここでお留守番しているのかい?」

話が込んでいる二人の脇を過ぎ、ガラス張りのロビーを外から眺めた。
こうして眺める分には至って通常の進学塾そのものだが、この間の現象は一体どうなっているのだろうか。
ステイルが居れば、何となく原理は説明でもしてくれそうなものだが。

ステイル「気が早いね五条」

二人を伴い、塾のドアを潜った。

上条「……?何か、意外と普通だな」

ステイル「そりゃそうさ、表向きは今も予備校として営業中なんだ」

上条「……あれは何だ?」

不意に上条が目線を送った先に、つられて目線を送る。
玄関ホールの柱の枠に、先日は見られなかった中世西欧風の甲冑が投げかけられている。



766 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 00:22:35.61 ID:SsiD0agXO
甲冑に近づき、上条が言葉を発した。

上条「……ロボット?壊れてんのか?」

ステイル「どうした?ここには何も無い。移動した方が賢明だと思うけど」

五条「……ククク……その言い方は感心しませんね……」
ステイル「……」

上条「……?何言ってるんだお前ら」

五条「……どう見ても……人の遺体でしょう……それは……」

上条「……ッ!?」

上条が改めて遺体を眺める。
つい今しがた絶命したところなのだろうか、遺体から流れた血液が象る血だまりが、徐々にその大きさを増して行くのが見てとれた。

上条「死体!?」

ステイル「恐らく、ローマ正教の十三騎士団だろうね。この様子じゃ恐らく全滅だろう」
上条「……どうして……」

五条「……物騒な気配はしていましたがね……まぁ、覚悟はしていましたが、こんなに早く死人を見るハメになるとは思いませんでした……ヒヒヒ……」

上条「こんな所に死体があるってのに、何で誰も騒ぎ立てないんだ?」

ステイル「コインの表と裏さ、ここは……」



767 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 00:23:38.00 ID:AnOqrGfJ0
五条さんのせいで上条さんが間抜けに見える



768 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 00:24:46.96 ID:IftJH9Lw0
死体を見ても全くたじろがない14才二人



770 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 00:32:33.94 ID:SsiD0agXO
ステイルが懐からコインを取り出し、ピンと音を立てて中空に弾いた。

ステイル「コインの表である住人である生徒たちは、コインの裏の住人、ぼくたち外敵に気付くことが出来ない」

五条「……ククク……」

ステイル「ぼくたちも、彼らに一切干渉する事は出来ない」

上条が暫し思案した後に右手で遺体に触れようとするのをステイルが遮る。

ステイル「無駄だよ、結界の核を破壊しない限り、この状態は解除されない」

小さく十字を切ったステイルが呟いた。
ステイル「……戦う理由が、増えたみたいだ」

────────────

──────ひたすらに駆けていた。
眼前には長大な廊下。
後方には、自身を追ってきている無数の光球。

ステイル「おい!逃げるな!」
後方からステイルの声が響く。

ステイル「上条の右手はドラゴンブレスの一撃を、五条の目はドラゴンブレスの羽を退けたんだぞ!」

上条「人を盾にしておいてよく言うぜ!量が絶望的だ、あんなもん右手一つで対処出来るか!!五条はッ!?」

五条「……ククク……能力も無限に使えるわけでもありませんので……トラップ程度に無駄遣いはしたくありません……」



773 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 00:41:29.97 ID:SsiD0agXO
迫ってきた曲がり角を三人で右折する。

五条「へぇあッッ!!」

曲がる直前に、瓦礫で進路を塞げないかと壁に蹴りを入れ破壊を試みるが、壁面は異様な程に硬く、びくともしない。

ステイル「無駄だ!コインの裏の住人である僕らの物理干渉は、コインの表にある建物自体には通用しない!エレベーターも使えないとさっき言っただろう!?」
五条「……試してみたくなりましてね……」

言って、全力で駆ける。

五条「……お先に失礼させて頂きます……」

背後から掛けられる怨嗟交じりの静止の声を振り切り駆けた。
なんであれ、この状況になってしまったら一旦体制を立て直す必要性がありそうだ。

眼前に見えた階段を跳躍し、中下階の踊り場に着地する。
暫しの静寂。勢いをつけた後、次いでさらに跳躍。
もう一フロア下の踊り場に着地した時、先と同様に無数の光球が更に下のフロアからせり上がってくるのが視界に入った。

五条(……このままでは、挟まれますかね……)

咄嗟に階段脇のフロアへと身を躍らせる。
光球は自身の居た箇所を追い越し、上のフロアへと向かってせり上がっていった。

五条(……さて、これからどうしたものでしょうか……)



776 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 00:51:47.23 ID:SsiD0agXO
眼前の踊り場を完全に飲み込み、徐々に上へと競りあがっていく光球達を眺める。
その一つがふわりとこちらに漂う。

それに続く様に、徐々にこちらへと侵食し始める光球達。
次いで、大量に殺到する光球。

五条「ッ!?」

慌てて踵を返して駆け出す。
幾ばくか駆けた先で、絶望的な光景が視界に飛び込んできた。

五条「……行き止まり……ですか……」

振り返り、背後の光球達を見据える。
五条(……空間……世界の認識阻害ともなると……また統括理事長の大目玉を喰らいかねませんね……)

ふう、とため息を吐いた後、サッカーバッグのファスナーを開く。
中からひょこひょこと五羽の企鵝が飛び出し、先頭の一羽が足もとにサッカーボールを置いた。

五条(……爆発で連鎖はしてくれるでしょうか……試す程度ならばッ!)

次第に迫り来る光球に向かい、ボールを蹴りつける。
五羽の企鵝がボールに纏わりつく様に舞い、ボールと光球が激突すると同時に大きく爆ぜた。

もくもくと黒煙が立ち込める中、黒煙を抜けてこちらへ向かって来る光球を視認した。

五条(……最後の手段ですっ……!)



780 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 01:01:48.92 ID:SsiD0agXO
メガネを外そうと右手を伸ばした途端、眼前で光球が静止した。
五条(……?)

静止したまま重力に引かれる様、一つ、また一つと床へ落下していく光球。
光球が落下した箇所では、仄かに青白い炎が燃え上がっている。

しばしそれを確認した後、再度上層階を目指すべく先の階段に向かって歩を進めた。

階段にたどり着き、様子を伺う。
と、上階から誰かが降りてくる気配を感じたので慌てて壁に身を隠した。
何者かが自分の隠れている踊り場の壁を通過し、更に階下へと降りんと足を進める。

僅かに壁から上体を覗かせその影を視認した。

上条当麻。

先に別れた上条が、呆けた表情で階下へと向かっているのが見えた。
慌ててその後を追い肩を叩く。

五条「……ククク……何をされているのです?」
肩に手を置くが上条は気付く素振りも無く歩を進めていた。

目に生気が感じられないその様は、まるで誰かに操られているかの様にも見て取れる。



783 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 01:10:51.04 ID:SsiD0agXO
五条(……あの男の仕業ですかね……)

ステイルがどうなったのかも気に掛かったが、先の光球が消えたのは、きっとステイルが術式を解除でもしたからなのだろう。
或いは術者があえて自分を追い詰めるだけで消滅させたのだというのなら、そこまで濃密な殺意を感じ取る事も出来ないので、危険性は高く無いだろう。
どちらにしろ無事であろうとの考えを浮かべながら、上条の後を追った。

────────────

上条が以前自分が気付いた公園のブランコに腰掛けたのを確認すると、再度踵を返し、三沢塾へと向かう。
塾へ向かう途中、先の上条と同様に呆けたステイルの姿が見えたので、同じくその後を追った。

先刻まで周囲を包んでいた夕闇は徐々にその姿を宵闇へと移し変え始めている。
ステイルが上条と同じ公園へとたどり着くと、上条の隣の空いたブランコへと腰を据える。
しかし、何故あの錬金術師はこの公園のブランコにここまで人を座りたがらせるのだろうか。

二人で並んでブランコに腰かけたまま呆けている状況に携帯電話を向け、その様を画像データとして保存する。
保存が終った後、呆けている上条の右手を掴み、その額へとあてがった。



788 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 01:17:20.38 ID:CRNiYXaiO
>二人で並んでブランコに腰かけたまま呆けている状況に携帯電話を向け、その様を画像データとして保存する。

五条さん何やってんのww




785 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 01:14:52.80 ID:IftJH9Lw0
間違いなく…この写真がキーになる……!!



789 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 01:19:11.91 ID:IftJH9Lw0
しかし、これってブランコに先客がいたらどうなるんだろう
まさか…2枠埋まったから五条さんはスルーされたのか……!?




791 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 01:20:09.58 ID:j/hY8MxgP
>>789
言わせんなよ恥ずかしい…///




792 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 01:20:41.58 ID:SsiD0agXO
途端に上条の目に意思の光が宿り、キョロキョロとあたりを見回し始める。

上条「……!?ここは……」
五条「……塾の傍の公園ですよ……してやられましたね……」

ハッとした表情になった上条が隣に目線を送り、座ったまま呆けているステイルを見てニヤリと笑う。

上条「……この野郎ッ……」

立ち上がった後に右拳を握り締め、ステイルの前へと移動し、大きく振りかぶる上条。

上条「よくも人様を囮に使って逃げ延びやがったな記念ッッッ!!」

そのまま打ち下ろしぎみの右ストレートがステイルの顔面に炸裂し、その巨躯が地面へと叩きつけられた。

────────────

三度、三沢塾の前に立っていた。

先に二度訪れた時とは異なり、辺りを完全に夜の帳が覆い尽くしている。
塾の入り口に人影を見つけて立ち止まった上条が口を開く。

上条「おい、アイツら、入り口に居た……」

目線を上条が指した方向へと向けると、入り口で屍となっていた騎士と同様の甲冑を纏った七つの影が、一列に並び各々の右手に剣を携えている。

五条「……ククク……何か少々滑稽に見えますね……」

ステイル「十三騎士団の生き残りか……」



793 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 01:30:33.37 ID:SsiD0agXO
『攻撃を開始する!!』

騎士の内の一人が高らかに叫び、右手の剣を掲げた。
次いで、同様に右手の剣を掲げる騎士達。

ステイル「真・聖歌隊(グレゴリオ=クアイア)……」

傍らのステイルが、驚愕した様に呟く。

上条「はぁ?」

ステイル「正真正銘のグレゴリオの聖歌隊だよ」
上条「けどオマエ、グレゴリオの何とかには、大人数が必要だって……」

ステイル「今頃バチカン大聖堂では、3333人の信徒が聖呪(いのり)を捧げているんだろうさ」

最初に剣を掲げた男が高らかに叫ぶ。

『ヨハネ黙示録第八章!第七節より抜粋!第一の御遣い、その手に持つ滅びの管楽器の音をここに再現せよ!!』

叫びと同時に掲げられた剣より赤い光が激しく迸り、周囲を同様の赤色へと染めていく。
いつの間にか塾の上空を黒い雲が覆い尽くし、激しく赤い雷光を撒き散らしていた。

五条「……ククク……相当物騒な事を仰っていますね……終末なんて呼ばれたら、たまったものではありません……」

ステイル「聖呪爆撃ッ…!?」
上条「爆撃ッ!?」

ステイルの呟きに声を挙げた上条が、昂ぶった様子で言葉を続ける。



794 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 01:37:31.37 ID:SsiD0agXO
上条「あの中には姫神がッ!無関係な生徒達だって!」

──────刹那に赤い雷光が落ち、轟音と共に大気が爆ぜた。

巨大な三沢塾の表面に配されたガラスというガラスが音を立て砕け散り、中心よりビルが倒壊を始めた。

ステイル「崩れるぞッ!」
更なる轟音が大気を揺らし、ビルが次第にその姿を崩していく最中。
ビルの倒壊がぴたりと停止し、まるでビデオの巻き戻しを見ている様に、ビルが復元を始める。

ステイル「黄金練成(アルス=マグナ)……」
五条「……黄金練成……?」

ステイル「あれが僕らの敵、アウレオルスの本当の実力……!」

中空に爆ぜていたガラスまでもが、巻き戻される様にぴたり復元される。
復元されると同時に、騎士団達が放つ赤い光が止まり、黒雲が晴れた。

──────にゃーん……

黒雲が晴れ静けさを取り戻した塾の前に、唐突に猫の鳴き声が響いた。
足元を見ると、どこかで見た様な白い布切れがもそもそと蠢いている。

五条(……?)
布の隅から、一匹の三毛猫がひょこりと顔を出した。

上条「スフィンクス!」
猫が顔を出した布を拾い上げた上条の顔色が、みるみる青ざめていく。



796 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 01:41:15.85 ID:SsiD0agXO
上条「まさか……これ……インデックスの……?」

呟きを聞いたステイルが、何かに弾かれる様に駆け出した。

その様を見た自分も、同様に駆け出す。

少し遅れて、上条の足音が続いた。

三人の駆ける足音が、静寂に包まれた市外に響き渡っていた。

──────to be continued──────



803 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /06(月) 01:52:06.01 ID:SsiD0agXO
以上、本日投下分となります。
遅くまで御支援&お付き合いを頂きました皆様、関係各位の皆様、今夜もありがとうございました
また本日も結局休憩を挟まずに書き上げられました由、深謝致します

本気で聖呪爆撃の際に
♪ぷぇ~ぷぇぷぇぷぇッぷぇ~♪
という一行を挟むか否か迷いました
この戸惑いでお嬢に一票入れます
実は爆撃破られて( ゚Д゚)ポカーンとしてる十三騎士団さんたちのヘタレっぷりが大好きです

さて、三沢塾編の最終となります次回投下に関してですが、本日と同じく午後11時頃から投下を開始させて頂こうかと思います
(可能ならば少し早めたいところですが)
お時間がございましたら、またお付き合い頂ければ幸いです



798 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 01:43:17.86 ID:DtQrBNow0
ククク……乙です……



797 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 01:42:39.59 ID:AnOqrGfJ0
このままずーっと話が続いていって、ロシアの戦場を駆ける五条さんが見たいな



799 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 01:43:38.67 ID:UWxW17Nq0
まぁ、ロシアならさぞペンギンが映えるだろうなww



808 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 01:57:59.70 ID:CRNiYXaiO
五条ファンこそ遅くまで乙。
明日の仕事終わりにこそ五条さんがハンバーグを食べられるって、俺信じてる。




769 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 00:25:50.59 ID:qyPzFvka0
投票しに行ったら五条さんの戦闘力が53万突破してた



771 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 00:32:56.85 ID:CRNiYXaiO
投票と言えば、ヒロインの壁紙争奪戦がスゴいな。ずっと1票単位の争いしてる。



810 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /06(月) 02:29:41.13 ID:GGa84kvF0
乙!塾編終わったらついにシスターズと一方登場か・・・胸が熱くなる





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禁書目録SS   コメント:4   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
1315. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/06(月) 12:48 ▼このコメントに返信する
五条さんテラお茶目wwwwww
1317. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/06(月) 18:05 ▼このコメントに返信する
画像がどんどん逞しくなっていくなww
1328. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/07(火) 04:35 ▼このコメントに返信する
※14歳です
1385. 名前 : 名無しさん@ニュース2ちゃん◆- 投稿日 : 2010/12/09(木) 18:02 ▼このコメントに返信する
へぇあっ!?の凡庸性は異常
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