五条「ククク… ここが学園都市ですか」その13

2010-12-05 (日) 12:17  禁書目録SS   8コメント  
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ゴールデンタイム〈1〉春にしてブラックアウト (電撃文庫)


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504 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /04(土) 23:11:38.01 ID:tO24yqkRO
──────決断の時というものは、往々にして夏の夕立が如く、唐突にやってくるものだ。

少々の思案すら、時間は待ってはくれない。

あの娘は待ってはくれない。
隣の娘も待ってはくれない。

──────ハンバーグもまた、待ってはくれない。

『どうされましたの?勝さん』
「へぇあッ!?」

隣の黒子に声をかけられ、意識が一気に現実へと引き戻された。

五条「……ククク……何でも、何でもありませんよ……」
黒子に目線を送り、慌てて取り繕う。
店の前に備え付けられたパイプ椅子に座る自分達の前を、姫神が横切った。

五条(……どうしたものでしょうか……)

黒子「勝さん」
再度声を掛けられ、黒子に目線を送る。

黒子「……あちらの女性、ですわね?」

姫神が去っていった方へと黒子の目線が動く。

五条「……」



508 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /04(土) 23:20:43.43 ID:tO24yqkRO
はあ、とため息を吐き出した後、メニューを閉じて少し残念そうな笑顔を浮かべた黒子が言葉を続けた。

黒子「どう見ても珍妙な方ですし……勝さん、目が本気ですの……何かございますのでしょう?」

五条「……ククク……」
咄嗟に黒子から目線を外す。

黒子「……お行き下さいませ、五条勝さん。この白井黒子、私情であなたの足を引っ張る程、落ちぶれてはおりませんの」

意外な言葉が耳に入ったので、再度視線を黒子へと移す。
その表情には先の残念そうな笑顔は露も残っておらず、只凛とした表情でこちらを見据える瞳が輝いていた。

黒子「お手伝いはご不要でして?」

がた、っと立ち上がり、黒子に頭を下げる。

五条「……いりませんよ……この埋め合わせは必ず……」
黒子「……」

頭を下げたまま黒子の言葉を待つ。
次に吐かれる言葉を思い、心臓がどくどくと早鐘を打つのが判った。

『行ってらっしゃいませ』

言葉を聴き、頭を上げる。
先の表情から再び一変し、『仕方ないですの』といった笑顔で右手をひらひらと振っている黒子。



512 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /04(土) 23:23:53.95 ID:4r3IgTB+0
嫉妬に狂うかと思ったが、意外に冷静な黒子



517 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /04(土) 23:25:14.15 ID:/Mn7C4+9O
余裕のある黒子いいな



518 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /04(土) 23:29:48.85 ID:J8Z6cnV20
ひどい……!
ひどすぎるっ……!
こんな話があるかっ……!
命からがら………
やっとの思いで…
辿り着いたのに……
やり遂げたのに……
姫神っ……!
あいつがもぎ取ってしまった……!
せっかく手にした
奴のハンバーグ… ごちそう…
人生をっ……!




519 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /04(土) 23:30:01.48 ID:tO24yqkRO
黒子「あまり、ご無理をされすぎません様……」

手を振る黒子に背を向け、雑踏に消えかかっている姫神の背中に向かい、駆け出した。

────────────

一定の距離を保ったまま、姫神秋沙の後をつける。

人通りの多い交差点を渡り、歩道橋を抜け、モノレールの駅を利用するでもなく、その脇を通り過ぎ……

只でさえこの学園都市では目立つ格好をしている少女が歩く。
すれ違った男性が随分と振り返ることが多かった様な気がするが、彼女の奇異ないでたちに好奇心を引かれたのだろうか。
或いは、その整った容姿に惹かれたのだろうか。

次第にひと気の無い方面へと向かい始めた彼女が、裏路地の交差点を曲がる。

曲がると同時に塀で姿が隠れたので、慌てて距離を詰め、その交差点をまg…──
『吸血鬼』

角を曲がると同時に投げられた声に驚愕し、思わず飛びのく。
角を曲がったかに見えた姫神が、曲がった直後の死角部分に身を隠し、こちらを伺っていた。

五条(……気付かれていましたか……)
すっと彼女が懐から金色の針を取り出すのが見え、距離をおいたまま身構える。

五条(……?)



524 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /04(土) 23:39:31.94 ID:tO24yqkRO
彼女はその針を自らの左手のひとさし指に押し当て、一瞬痛そうに表情を歪めたあとその指をずいとこちらへ向けてきた。

五条(……!?)
彼女が何をしようとしているのかは理解出来ないが、少し腰を低くし、いつでも飛びのける様な体勢を作る。

……………………何も起こらない。

指先をこちらへと向けたまま、姫神が首をかしげる。

姫神「……吸血鬼?」

構えを解いてとことこと姫神に近寄り、ポケットから取り出したハンカチをその手に被せる。

刹那、複数の人の気配が辺りを取り囲んだ。
辺りを見回すと、複数の男が自分と彼女の周りを取り囲む様に立ちはだかっている。

五条「……ククク……何事ですか……?」
周囲の男達から明確な敵意を感じた。
再び身構え、パチンと指を鳴らす。
めきめきと鈍い音と共に隆起し、砕けちるアスファルト。
その中から五羽の企鵝が飛び出し、自身を中心に円陣を組んだ。

姫神「待って」

一触即発の空気の中、唐突に姫神の声が響いた。

姫神「この人。吸血鬼じゃない。普通の人」
次いで発された姫神の言葉に、男達の敵意が散るのを感じた。
ぞろぞろと散って行く男達。



535 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /04(土) 23:49:14.62 ID:tO24yqkRO
取り残される、自分と姫神。

姫神「何か用?」

考える間も無く、姫神から声を掛けられた。
五条(……さて、どうしたものでしょうか……)

────────────

姫神「知り合いに似ていた?私が?」
五条「……ククク……知人の巫女と見間違えまして……」

表情の薄い瞳を細め、こちらを見つめてくる姫神。
流石に苦しい言い訳なのは理解しているが、咄嗟に出たものとしてはマシな部類なのではなかろうか。

姫神「……ナンパ?」
五条「……いえ、違います……ヒヒヒ……」

姫神「……まあ良い。これ。ありがとう」

すっと彼女が血を拭ったハンカチを差し出してくる。
差し出されたハンカチを受け取ろうとしたした瞬間、はっとした表情を浮かべた彼女がそのハンカチを引いた。

五条「……」

姫神「……やっぱり。ダメ」



539 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /04(土) 23:51:30.75 ID:bMeS9Hx50
そうだな、血の付いたのを相手に渡したら色々と大変だ



538 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /04(土) 23:50:50.66 ID:PyOYGksU0
洗濯して、アイロンかけて、後日手渡しフラグ?



547 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 00:00:29.69 ID:NajFcg0jO
首を傾げ、彼女に問いを投げる。
五条「……?何故です?」

姫神「私の血。吸血鬼を呼ぶから」
五条「……吸血鬼ですか……」

化物退治ならば経験はあるが、次は吸血鬼まで出てくるものなのかと少しうんざりしていると、彼女が踵を返した。

姫神「……ついて来て。別なのを渡す」

言い終えて、歩き出す彼女。

五条「……はい……わかりましたよ……ヒヒヒ……」

これで、ヤサの場所でも押さえられればしめたものなのだが。

────────────

不意に彼女が一つの大きなビルの前で立ち止まった。
上を見上げる彼女に釣られ、自身も上を見上げる。

四本の同型のビルが正方形を描く様に立ち並び、中空で渡り廊下の様なモノが各々のビルを繋いでいる。

姫神「塾。三沢塾」
五条「ククク……三沢塾?」

言い終えるなり足を進め、入り口のドアを潜った彼女に続く。
吹き抜けになっており、。開放感のあるロビーで制服姿の男女が歓談している様が目に入った。



549 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 00:02:45.84 ID:qZ2krgEp0
五条さんまさかの平然と潜入



553 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 00:09:25.63 ID:E0BBca9EO
五条(……?)

妙な違和感を感じた。
街中を歩いていた時にはあれ程人目を引いた彼女が、この塾の人間からは一切の目線を投げられていない。

同様に、塾のドアを潜った自身に対しても、誰一人反応する素振りすら見られない。

気になってメガネを触った。
問題なく、掛かっている。
能力が発動しているわけでは無さそうなので、単純に周囲の状態がおかしいのだろう。

五条(……嫌な予感がしますね……)

『唖然。お前が客を連れてくるとは。その者は吸血鬼か?』

唐突にロビーに男の声が響き渡る。
堂々とした声に周囲を見回すと、いつの間にか正面の中二階の踊り場に一人の男がこちらを見ながら立っている。
深い緑色がかった総髪。
瞳の色も同じく緑。
白いスーツに身を包んだまま、口元に自信に満ちた笑みを湛えている。

男があれだけ声を張り上げたにも関わらず、やはり周囲の学生は反応を示さない。

姫神「違う。只のお客さん。血を出した時に彼にハンカチを貰ったから。別なものを出してあげて欲しい」

『間然。仔細無い、かの者の手に格調高き布片を』

男が口にすると同時に、右手に違和感を感じた。



562 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 00:18:26.10 ID:E0BBca9EO
いつの間にか閉じられた手に、金刺繍が美しいハンカチが握られている。

五条「なッ……!?」

姫神がその様を見ると薄い表情を僅かに嬉々に染め、男へと言葉を吐いた。

姫神「ありがとう。あとは」

『当然。貴様の恩人なれば、害成す由は無し。されど記憶は消させて貰う』

筆舌に尽くしがたい程の嫌な気配を感じ、咄嗟にメガネに手を伸ばす。

『動くな少年』

男が言葉を発すると同時に、身体が動かなくなった。

五条(……虎の尾を……踏みましたかッ……?)

眼球へと力を集中するも、能力が発動しそうな気配は無い。

『案ずるな。殺しはしない』

男がいつの間にかその手に黄金の針を持っている。
ゆったりとした動きで、男は自分の首筋に向かい針を突き刺した。

『吸血殺しを目視せし時より、これまでの全てを忘れよ』

────────────



567 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 00:27:37.75 ID:E0BBca9EO
────────────

未だ赤くは無い西に傾いた太陽が注ぐ中、公園のブランコに腰掛けていた。

妙だ。

一体自分が何故こんなところに居るのか、全くの理解が出来ない。
確か黒子とハンバーグを食べる為、行列に並んでいたと思ったのだが。
何故自分はこんな所に居るんだろうか。
時計を眺める。
午後三時台も、直に終わりを告げようとしていた。

『……あんたは人の妹分ブッちぎって……』

不意に、背後に殺気を感じた。
慌てて地を蹴り、ブランコを囲む鉄柵を飛び越える。

『こんなところで何しとんじゃああああああああああ!!』

先に自身が座っていた箇所の後方から、バチバチと音を立てて電光が走る。
電光はブランコとその鉄製の部位に帯電し、ブランコの鉄柵から内側を目まぐるしく駆け回っている。

その電光の源を見る。
先ほどまで自分の隣に居たはずの白井黒子と同様の制服。
栗色のショートカットにヘアピン。
憤怒の形相でバチバチと周囲に電気を撒き散らす学園都市第三位、御坂美琴の姿がそこにあった。

五条「……!?お姉さまっ!?」
美琴「だれがお姉さまよッ!?」



568 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 00:29:04.67 ID:zCzV+f380
キャーオネーサマー



571 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 00:29:22.59 ID:qZ2krgEp0
キャーノゾキヨー



572 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 00:31:54.81 ID:wvt3bFPz0
お姉さま、まさか毎日覗いて……ん?
もしかして上条ストーキングは休止中なのか




573 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 00:36:07.38 ID:E0BBca9EO
再び自身へと走る電光。
すんでの所で回避し、再度美琴へ言葉を投げる。

五条「……ククク……襲撃される理由がよくわからないのですが……」
パチン、と指を鳴らす。
土中から現れた企鵝達の一羽をひょいとツマミ上げ、自身の前に掲げた。

五条「……さぁ、来るなら来なさい……もしもオマエが電撃を放ったら……」

持ち上げた企鵝が、短い手足をジタバタと振る。

五条かこ「……こいつ諸共、丸焦げですよ……ヒヒヒ……」

美琴の憤怒の形相が凍りつく。

美琴「へぇ……黒子とのデートをブッチして他の女について行った挙句、今度は自分のペットを盾に……?あんたの事、誤解してたわ……」

五条「……ブッチ……?オレがですか……?」

美琴「とぼけんじゃないわよッ!」
美琴が再度電撃を放つ。

企鵝を抱えたまま横っ飛びし、電撃を回避する。

美琴「あの娘がッ……あの娘がどんな気持ちでッ……!!」
次から次へと襲い来る電撃を回避し続ける。

美琴「それをアンタはッ……!!」
美琴の眼前の中空に、銀色のコインが踊った。



600 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:01:01.63 ID:vFEQIlwjO
これだけ美琴が怒るって事は、黒子はそうとう嬉しそうに話してたんだろうなあ…



577 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 00:37:44.55 ID:JCgwWxIh0
ここまで怒るくらい大事にしてるんなら、少しは愛を受け入れてやれよwww



580 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 00:39:48.37 ID:qZ2krgEp0
相変わらずレベル0にレールガン撃つのが仕事ですね



586 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 00:43:04.82 ID:JCgwWxIh0
まぁ、これはいつも上条さんからスルーされている自分の状況と、
デートをブッチされた黒子とを重ね合わせてるんだろうな

だから半分は八つ当たりだと思うの




588 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 00:44:08.95 ID:E0BBca9EO
咄嗟に手にした企鵝を美琴へと蹴り飛ばす。
コインが落下するより早く美琴へと到達した企鵝が大きく爆ぜ、周囲の土煙を巻き上げた。

もうもうと立ち込める次第に土煙が晴れ出した先に、一層大きく空中放電を撒き散らしている美琴の影が見える。

その影に向かい、深く頭を下げ続けた。

美琴「覚悟は……って!?」

自分の姿を確認した美琴が素っ頓狂な声をあげる。

五条「……ククク……すみませんが……詳しくお伺いしたいお話が……」

頭を下げ続けている状態でも、その音で次第に美琴の傍の帯電が収まる様が判った。

美琴「もういいわ……ごめん、ちょっと熱くなり過ぎた……」

美琴の許しが聞こえ、頭を上げる。

五条「……感謝します……」

怪訝そうに眉間にシワを寄せている美琴の瞳を見つめ、言葉を続けた。

五条「……教えて頂けますか……オレが……何をしていたのか……」

────────────

美琴「……で、あのビルから出てきたアンタがふらふらこの公園に来たんで、声をかけたってワケ」

五条「……そうですか……」



590 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 00:45:36.60 ID:l9htXnTXO
爆発って、完璧にプリニーかよwwwwwwwwww



597 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 00:53:37.84 ID:E0BBca9EO
声をかけたのではなく、どう見ても先制攻撃を仕掛けてきたのだろうとツッコミを入れたくなったが、話を聞く限りでは完全に自分が悪人だ。

はあ、と深くため息をつく。

美琴「ホントに何も憶えてないの?」
五条「……残念ながら……」

再びついたため息に、自分の肩が落ちるのがわかった。
恐らく、自分と共にあのビルへと入った女は姫神秋沙に間違いは無いだろう。
美琴から聞いた外見的な特徴は完全に一致している。

そして、美琴の話を聞く限りでは自分が姫神を見つけてから以後の記憶が完全に欠落している。
彼女が何らかの能力者なのだろうか。
美琴の説明振りでは、最低でもあのビルに入るまでは、自発的に行動を執っていたらしいのだが。

美琴「……何かの能力者かしら?頼みたくないけどあの女に……いや、マズイわよね……」

ぶつぶつと呟いている美琴を見て、ふと湧いた疑問をぶつける。

五条「……ククク……そういえば……」
美琴「?」

五条「……何故、オレの行動を把握しているのですか……?」

身体をビクッと竦ませた後、美琴がゆっくりとこちらを向いた。

美琴「いやー……それはー……そのー……」

黙って美琴を見据える。



603 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 01:02:50.02 ID:E0BBca9EO
美琴「アタシは黒子の先輩としてー……」

はぁ、と本日何度目か判らなくなったため息を吐いて、しどろもどろに言葉を続けている美琴に口を開いた。

五条「……まぁ、お陰で助かりましたよ……ヒヒヒ……今日の事は黒子には伝えないで下さい……余計な心配をかけたくない……」

言い終え、ブランコから腰を上げた。

美琴「……これからどうするの?」
五条「……彼女の居所がわかれば、もう充分なんです……あとは……」

右手で銃の形を作り、自身のこめかみに当てる。

五条「……一件、アテがありますので……」

────────────
『よお、元気そうで良かったわ』

五条「……ククク……突然済みませんね……」

随分と空に留まっていた太陽が西の山に隠れようとし始める頃、上条当麻の部屋にたどり着いた。

五条「……こちら、お宅の聖職者様に……」

駅前のコージーコーナーで買ったシュークリームの箱を眼前に差し出すと同時に、上条の背から飛び出した一つの影が素早くその箱を攫う。



606 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:05:35.70 ID:q1dvHXc5O
『黒子には』
『黒子には』
『黒子には』

良かったな黒子。




605 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:04:08.24 ID:JCgwWxIh0
ふーん……呼び捨てなんだ……へー……



609 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 01:11:52.58 ID:E0BBca9EO
『天にまします我らの父よ、この慈悲深き五条勝に貴方のしゅくふk』
上条「こらこら、行儀わるいですよオマエ……ったく、悪いな。毎度気ぃ使わせちゃって」
五条「いえ……お布施としては安いものです……」

わーい、シュークリームシュークリームー、ありがとうマサルー、と嬉しそうに箱を抱えて部屋を駆け回るシスターの姿が上条の向こうに見える。

上条「で、頼みってなんだ?上がってくか?」
五条「……いや、あまり時間がありません……」
首を左右に振った後、右手の人差し指を突き立て、とんとんと自分の額を叩いた。

上条「……?」
五条「ダメで元々なのですが……右手で……デコピン、して頂けますか……」

不思議そうな表情のまま、上条が親指を中指で抑えた右手を眼前に差し出してくる。
前髪を上げ、額をさらけ出した。

ばちんッ

途端に目前の曇りガラスが割れて落ちる様に、靄が掛かっていた記憶が一気に戻ってくる。
姫神を見つけた事。
背を押してくれた黒子に見送られ、彼女のあとを追った事。
彼女に尾行を気取られ、妙な男達に取り囲まれた事。
彼女に引かれて入った塾の中で、緑髪の男と出会った事。
そしてその男が起した不可思議な現象。



613 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 01:21:01.12 ID:E0BBca9EO
加えて、自身が男の術中にはまり、まんまと記憶を失くしていた事に対する自責の念と、男に対する憤怒の感情がふつふつと湧き上がって来る。

五条「ククク……アーッハッハッハ!!」

昂ぶる感情を抑えきれず、高笑いを上げた。

上条「あのー、人んちの前で高笑いするのやめてもらえます……?」

五条「……ククク……これは失礼を……いや……助かりましたよ……本当に助かりました……」

踵を返し、上条の家の前から歩を進める。

『よくわかんないけど頑張れよー』

背中に投げられた声に、黙ったまま右手を高く掲げた。

────────────

自宅に帰り着き、ふと自身が昼から何も食べていない事に気がついた。
何か無いものかとキッチンを見ると、朝に黒子が持ってきたバゲットの残りを見つけた。

冷蔵庫に残っていたツナの缶詰を開き、マヨネーズと微量の醤油をたらしてかき混ぜる。

これまた朝の残り物のサニーレタスを程よい大きさに千切り、カットしたバゲットに載せ、スプーンでツナを盛り付ける。

五条(……少し、味気ないですが……)

手早く食事を終え、黒子の携帯電話をコールした。



610 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:12:54.23 ID:JCgwWxIh0
上条さんて便利アイテムだよね



614 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:21:50.38 ID:zCzV+f380
>人んちの前で高笑いするのやめてもらえます……?
ホントだよな
自然過ぎてうっかり突っ込み忘れそうになるがwww




615 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:22:55.20 ID:uEdvoN5yP
五条さん記憶消されただけだしそんな怒ることでもなくね?
まぁ黒子のことでは怒るだろうが




616 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:23:37.91 ID:vFEQIlwjO
ハンバーグは仕事を終わらせてからか…



617 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:25:19.93 ID:wvt3bFPz0
ハンバーグを食えなかった五条さんの
怒りと悲しみは深く激しい……




620 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:28:49.13 ID:uEdvoN5yP
>>617-618なるほどなww それに五条さん自体記憶から消えるという事態が嫌いそうだ



623 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 01:29:52.95 ID:E0BBca9EO
数回の呼び出しを経て、彼女の声が受話器から響く。

『どうされました?』

五条「……今日は本当にすみませんでした……」

『……構いませんわよ、別に』

受話器から聞こえる声色から、特に怒りは感じ取れない。

五条「……そう言ってもらえると助かります……」

五条「……今日のお詫びと言ってはなんですが……明日お時間は……」

『申し訳ございませんわ、明日以降はちょっと用事が立て込みますの』

何故だろうか、少し胸が痛んで眩暈がした。

『盛夏祭が近くなっておりますので』

五条「……盛夏祭?」

『常盤台中学、うちの中学校の文化祭みたいなものですわね。また近い内に、追ってご案内差し上げますわ』

五条「……初耳です……その準備ですか……ヒヒヒ……」



628 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 01:35:27.53 ID:E0BBca9EO
『ええ。風紀委員のお仕事もありますので、当面は暇も無さそうですの』

五条「……オマエは少し頑張り過ぎますから……あまり根を詰め過ぎないで下さいね……」

『お互い様ですの』

くすくすと笑う声が受話器から伝わった。
自然と、自身も笑みがこぼれる。

五条「……ではまた……」

『えぇ、またご連絡しますわ』

電話を切り、ソファに腰を投げる。

五条(……統括理事長へ、彼女の居所の報告だけしておきますか……)

思い出した様に携帯電話を開いて、暫し思案した。

五条「……」

自分は、統括理事長と、コンタクトが、取れない。



629 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:36:21.23 ID:m2bPKzjT0
わろたwwwwwwwww



631 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:39:00.64 ID:pAuIEz5A0
吹いたwwwwwwww



632 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:39:43.27 ID:vFEQIlwjO
アレイスター「そういえばメルアド教えてなかった…」



634 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 01:41:27.14 ID:E0BBca9EO
次第に、食べ損ねたハンバーグに対する怒りと、一方的に仕事を投げられた統括理事長への怒りと、不意打ちをしてくれた昼に会った緑髪の男への怒りが腹の中でグルグルと渦を巻き、ドス黒いマグマの様な感情の奔流が身体中に広がるのが理解できる。

ハンバーグは別に構わない、いずれまた食べに行けば良いだけだ。

「……ククク……」

飯を食わせて貰っている身として、統括理事長の依頼を聞くというのも、自身で決めた事だ。

「…クックックック……」

最後に残ったこの感情の原因を特定する。
不意打ちをしかけ、やりたい放題やってくれたあの男。
眼前に、自信に満ちた笑みを浮かべる男の顔が浮かび上がる。

「ア───ッハッハッハッハ!!」

赤子の手を捻るとは、まさにこの事じゃないか。
あんなにワンサイドゲームであしらわれたのは初めてだ。
いとも簡単に、人の記憶を好き勝手いじくり回して、まるでピエロの様に踊らせてくれたあの男。

──────あの男だけは、絶対に許さない。


──────to be continued──────



635 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:42:30.85 ID:wvt3bFPz0
J( 'ー`)し まさるへげんきですか。いま観測してます

(`Д)   クックック……早く連絡よこせ頃しますよ

J( 'ー`)し ごめんね。クロウリーはじめてめーるしたから、ごめんね

(`Д)   言い訳はいいです、早く連絡をよこしなさい ヒヒヒ

J( 'ー`)し お金ふりこんでおきました。たいせつにつかってね 食事はしていますか?

(`Д)   お金はいいから、早く連絡よこせ




643 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /05(日) 01:49:12.35 ID:E0BBca9EO
以上、本日投下分となります
本日も保守&支援を頂きました皆様
またお付き合い頂きました皆様
関係各位の皆様
伏して御礼申し上げます

途中で休みを挟むって言ったな?アレは嘘だ
ようやく塾内突入です
明日・明後日辺りには三沢塾編を片せればと考えております
途中でお嬢に一票入れました

明日の投下に関しましてですが、異常が無ければ本日と同じく午後11時より投下を開始させて頂こうかと思います
風邪など引かれておらず、またお時間がございましたら、お付き合い頂ければ幸いです



642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:47:27.15 ID:vFEQIlwjO
乙。
インデックス編とは打って変わって、戦う理由もギャグ色が強いなww




644 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:51:24.14 ID:JCgwWxIh0

風邪引くなよ




647 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:52:56.45 ID:GuNfWWLUO
よく考えたら■■さんが気を利かせたせいで、アウレオルスが余計な恨み買ってないかこれw



649 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /05(日) 01:55:14.76 ID:D0Qg//Y20
アウレオルス何も悪くないような気もする



509 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /04(土) 23:20:52.69 ID:96AnQCOk0
このスレ見てると五条さんの中の人が気になって仕方がないw



510 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /04(土) 23:22:25.03 ID:W0T+TaEw0
>>509
水谷豊




511 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /04(土) 23:23:35.06 ID:4pfFCN9A0
五条勝(cv.水谷豊)
「亀山君。狂え・・・純粋に・・・!」




521 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /04(土) 23:33:37.03 ID:cbtOiSOnO
支援
五条さん求めてやっと4章……
五条さんフレンドリーだな

キャプチャ




522 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /04(土) 23:36:37.70 ID:96AnQCOk0
>>521
五条さんて常に一人称オレな訳じゃないのな




523 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12 /04(土) 23:38:41.85 ID:W0T+TaEw0
帝国学園のチーム内だと一歩さがってる感じがするかな。





次→五条「ククク… ここが学園都市ですか」その14



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禁書目録SS   コメント:8   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
1295. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/05(日) 12:25 ▼このコメントに返信する
画像がwww
1297. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/05(日) 14:49 ▼このコメントに返信する
五条さんの絵がかっこいいww
1298. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/05(日) 15:33 ▼このコメントに返信する
なんか五条さんが俺っていうのに違和感あったけど、口調が丁寧なんだから私のほうがしっくりくるな。ゲームのやつ
1299. 名前 : 名無し@SS好き◆nmxoCd6A 投稿日 : 2010/12/05(日) 15:55 ▼このコメントに返信する
狂わされた……! 純粋に……!
五条さんがメアリー・スーになるかなと思っていたが
そんなことどうでもよかったぜ
1301. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/05(日) 16:40 ▼このコメントに返信する
本屋に行ってふと文具コーナー見たらイナイレグッズがあって、見に行ったら空気キャラばっかで五条さんが全く無かった。残念。

それとも五条さんが能力発動させてたから気づけんかったのかな
1303. 名前 : 名無し@SS好き◆Tj1r2rQU 投稿日 : 2010/12/05(日) 19:10 ▼このコメントに返信する
五条さんは大人が使うような所に置いてあるのさ、見た目で判断するお子ちゃま低能の目には見えないからもっと純粋になればきっと・・・!
1310. 名前 : 名無し◆- 投稿日 : 2010/12/05(日) 22:02 ▼このコメントに返信する
へぇあッ!?が
どうしてもブロリーに変換される
1311. 名前 : 名無し@SS好き◆-◆- 投稿日 : 2010/12/06(月) 00:02 ▼このコメントに返信する
五条さんゲームでもかっこよすぎだろ・・・
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