宗介「こちらウルズ7、常盤台中学の潜入に成功した」

2011-01-25 (火) 18:12  禁書目録SS   3コメント  
11_20100703165549.jpg
リボルテックヤマグチ No.059 ARX-8 レーバテイン〔新装版〕

まとめ依頼より、まとめさせてもらいました。ありがとです!

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:15:30.38 ID:6ob3lNul0
かなめ『ソースケはもう“ウルズ7”じゃないでしょーが』


宗介「む、そうだったな」


かなめ『……まあこれも一応“任務”だし?“ウルズ7”って呼ぶのも面白いわね
      じゃあ“ウルズ7”。“任務”の内容を復唱しなさい』


宗介「“御坂美琴”の護衛であります。マム!」


かなめ「結構!」



5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:17:40.74 ID:6ob3lNul0
―常盤台中学・学生寮―

黒子「護衛研修?誰かを護る研修ですの?」


美琴「その逆、“守られる研修”よ
    SPの養成学校の学生の研修相手になるのよ」


黒子「面倒な研修ですのね。御生憎様
    わたくし誰かに守られるような弱い女ではありませんのに」


美琴「私だってそうよ。実際に向こうの学校レベル0~2中心で
    常盤台の生徒の方が強いってことは珍しくないんだけど…
    何でも『淑女たるもの守られる側の経験も積んどけー』っていう常盤台の方針らしいわ」


黒子「はぁ…その護衛とやらの殿方のせいでお姉様との時間が割かれると思うと…
    一体どんな人が来るんですの?」


美琴「まだ名前しかわからないわね
    えーっと…私の護衛役は……」


美琴「相良宗介…って名前みたい」



7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:19:31.97 ID:6ob3lNul0
アニメフルメタ派 ネタバレ注意
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

かなめ『――ってな感じでハッキングして御坂美琴の護衛役はソースケ担当に変更しておいたわ
     いやー御坂美琴が常盤台の生徒でよかったわ。ソースケの通ってるガッコでこんなイベントがあるとは偶然ね』


宗介「そうだな……しかし学校側にハッキングとは随分と大胆な手を使ったな」


かなめ『文句言うなら得体も知れない依頼主に言いなさいよ!
     いきなり女子中学生の顔写真だけ送って“この子を守れ”って依頼に無理があるってんの
     おかげでまず御坂美琴を探すのに苦労したっつーの
     でも前金も報酬金も高かったし?それなりに本気出さなきゃならないってわけ』


アル《警告――大金を撒餌にした罠の可能性が高いです
    これが罠なら私たちはネズミ以下でしょう》

 無機質な合成音声が響き渡る。
 彼の名は――アル。以前は宗介の愛機“レーバテイン”に積まれていた高性能AIだ。

かなめ『――このぉ……!言わせておけば…!
     アンタのトランザムと食費(電気代)に金がかかってるんでしょーが!!
     じゃなきゃまだ学生なのに護衛会社なんて作らないわよ!』

 そう、今のアルはASでも無ければ兵器ですらない。何の変哲もないスポーツカーに積まれているのだ。
 これは他でもないアル本人の希望によるものであり、アルによって命を救われた宗介の感謝の印でもある。



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:21:55.10 ID:6ob3lNul0
アル《私の人工知能がより“人間”に近づくためには必要な経費です
    私が言いたいのは依頼を蹴るのではなく――》


かなめ『ハイハイちゃんと警戒しろってことでしょ?わかってるわよ
     いいソースケ?私はなんとか依頼主を探るからソースケは普通に護衛してて頂戴』

宗介「了解した」

アル《私は?》

かなめ『アンタは適当に屋外で待機!
     いつでもソースケのバックアップ出来るようにお願いね』


アル《ラージャ。では軍曹が寂しくないように通信上にBGMでも――》


宗介「いらん。普通に待機していろ」



11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:25:16.87 ID:6ob3lNul0
                ・ ・ ・
かなめ『いーいソースケ!普通によ?
     ここには林水センパイいないんだから誰も尻拭いできないからね?』


宗介「ふっ……心配するな
   護衛任務は最早俺にとっては得意分野だ
   これも君のおかげだな」


かなめ『そ……それならいいけど』


宗介「では交信を終了する」



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:27:07.63 ID:6ob3lNul0
寮監「御坂。お前の護衛役が到着したので降りてこい
    白井の護衛役はまだ先なので白井は待機しておけ」

美琴「はい」 黒子「はいですの」


美琴「じゃあ行ってくるわね」

黒子「いってらっしゃいまし」

―――
――


黒子「ふふふ……殿方がお姉様と一日中一緒だなんて認めませんの
    この白井黒子……しっかりと“露払い”しなくては……っ!!」



2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:15:47.66 ID:0uR3lPPN0
かまわんつづけろ



16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:29:14.06 ID:6ob3lNul0
 美琴の降りたころ、ロビーには常盤台の学生とSP学校の学生が大勢いた。
 護衛する方と護衛される方、どちらも緊張した様子でありどこか様子がぎこちない。

美琴(そりゃー女子中学生と男子高校生をいきなり合わせたらこうもなるっつーの)


護衛「わ、私は婚后様を護衛させてさせていただく――」

婚后「要りませんわそんな暑苦しい自己紹介
    ああもう、聞いてませんわよこんな面倒くさい行事
    だいたい!あなたのような『低能力者』に私のような『大能力者』の護衛が務まるとでも思って!?」

護衛「そ、それは――」


美琴(あーあー、婚后さんの護衛役の人も可哀想ねー
    まっ、婚后さんの気持ちもわからなくはないわ。女子中に言い負かされるようなやつに護衛されるなんて……)


先生「御坂さん。こちらが担当の相良さんです」

美琴「はい」
    
 目の前には引き締まった顔の男子生徒が行儀よく立っていた。
 そして愛想のかけらもないへの字口を開く。
 
宗介「本日○八○○時より御坂殿の護衛の任に着きました。相良宗介です」



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:32:42.94 ID:6ob3lNul0
 第一印象は――まあハンサムな男だなと思った。
 しかしこの男には軟派な雰囲気は一切感じ取れない。


美琴(へえ……中々芯がありそうじゃん)


 まず目が他の生徒と明らかに違う。
 相手を臆せずに強く見ている、それでいてそのずっと先を見据えているような眼差し。


美琴「えーっと……アンタが私の護衛なのね
    私は御坂美琴。よろしくね」 


宗介「はっ。よろしくお願いします御坂殿」

 握手などは一切せず、それ以上二人の会話は続かなかった。



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:34:08.79 ID:6ob3lNul0
 護衛研修1日目は所謂“顔合わせ”でしかない。
 聞いた話によると普段は男と接する機会がない常盤台の学生に対する研修も兼ねてるとか。
 つまり護衛役とはコミュニケーションを取らねばならないのだ
 しかし――

美琴(こ、コイツ無愛想すぎる……!)

 さっきの自己紹介から美琴の部屋に戻る最中である今まで一言も口にしないのだ。

美琴(堂々としてるようでこいつシャイなんじゃいの!?気まずいっつーの!)


美琴「あ……あんた私に質問とかないの?」


宗介「?…特にありません」

美琴(しろよ!この空気ぶち壊せよ!っつーか何で私が気遣ってんの!?)


宗介「……っ!いや、1つありました」


美琴「な、何?何でも聞いていいわよ!」


宗介「御坂殿は、何者からか恨みを買った覚えはありませんか?」


美琴「はい……?」



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:37:33.65 ID:6ob3lNul0
 ある――というかありまくる。
 あまり門限を守るタイプでない美琴は街のヤンキーどもによく絡まれる。
 その都度、真っ黒に焼いてさしあげたりするもんだから
 恨みなんてものは大安売りのバーゲンセール状態で買い漁っているようなものだ。

 それだけではない。
 夏休みの間、美琴はいくつかの“闇”とも戦った。
 その際に買ったであろうドス黒い恨みもないとは言い切れない。


美琴「な、何でそんなこと聞くわけ?」

宗介「護衛にあたって重要だからです。何か心当たりはありますか?」

美琴「そりゃあ……無いとは言い切れないけど話すようなことじゃないわよ!」


宗介「やはりありますか……何をしたんです?
    統括理事の娘を誘拐して腹に爆弾でも括りつけて身代金の要求でも?」


美琴「は?」


宗介「それとも罪のない子供がいる孤児院に毒ガスを撒いたか……いや待てよ?
    ま、まさか……っ!!汚れのない女子中学生をクスリ漬にして高額で……っ!?」



23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:40:45.06 ID:6ob3lNul0
美琴「あ……アンタは私を何だと思ってるんだぁぁあああああああああ」

 バヂバヂィ……っと学生寮の廊下に電光が走る。狙う先はもちろんこの妄想男――宗介である。

宗介「あ……危ないじゃないか」


美琴「いきなり愉快な妄想ぶちまけてるからでしょーが!!
    つーか何?私がそういったサイコ野郎に見えるわけ!?
    ……ってアンタ今の避けたの……?」

宗介「……いえ、とっさに身を屈めはしましたが。避けることが出来たのは偶然です
   今のは、能力ですか?」


美琴「能力に決まってんでしょ。アンタも学生なら能力ぐらい知ってんでしょ?
    そういやアンタってレベルは?」

宗介「システムスキャンの結果でしたら……」


宗介「“レベル2”でした」



24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:41:53.32 ID:ALcuPZFb0
開発受けたのか



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:44:03.02 ID:bjrjyCR40
ラムダ・ドライバを発動させるのに出る変な脳波が引っかかったりしたのか?



28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:44:13.36 ID:6ob3lNul0
 少し時を遡る。

 レナード一派との戦争が終わった後も、宗介とかなめは元の生活には戻れなかった。
 かなめが拉致される前のドンパチが原因だ。宗介に至っては戸籍偽装まで知れ渡ったので完全にお手上げ状態だった。
 
 そんな中、救いの手を差し伸べたのは意外にも学園都市だった。

 『千鳥かなめを“原石”として学園都市に招きたい』

 “原石”とは能力開発を受けずに、生まれ持って能力を有する能力者のことを指す。
 『吸血殺し』の能力を有する姫神秋沙という少女がこれに該当する。

 一種の精神世界であるオムニ・スフィアからブラックテクノロジーを引き出し
 その技術を自分のものに出来る『囁かれし者』であるかなめは学園都市から能力者として認定され学園都市に招かれることとなった。
 そこでかなめは学園都市に“戸籍の無い相良宗介も学園都市に招いてくれ”を提示し、学園都市はこれを呑んだのだ。
 
 その後、かなめは長点上機学園に、宗介はSPの養成学校に編入という形で学園都市に迎え入れられた。
 学生であり、何の能力を持っていない宗介は当然能力開発を受けたという形になる。

 ――閑話休題。

美琴「へー。“異能力者”ねぇ……どんな能力なの?」

宗介「大したものではありません……むしろこんな能力あってもなくても何も変わらないです」

美琴「そんなこと言わずにさ、ちょっと見せてよ」



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:48:42.11 ID:6ob3lNul0
宗介「――こんなものです」

美琴「う~ん……ちょっと変わり種ねアンタ
   でも確かに今のままでは……何なら私が教えようか?
   知ってるだろうけど私これでも学園都市の第三位だし」


宗介「光栄です、御坂殿。しかし自分は能力に頼るつもりはありません」

 ……珍しいタイプね、と美琴は思う。

美琴「そんなことよりさ、その『御坂殿』ってのやめない?
    アンタ私より年上なんだしさ、タメ口でいいわよ」

宗介「む……いえ、しかし――」

美琴「いいから!私が気まずいって言ってんの!」

宗介「そうか……了解した“美琴”。これからは丁寧語は無しだ」

美琴「ぶほぉっ!み、みみみみ美琴って4ランクぐらい友好度上げてんじゃないわよ!
    飛ばしすぎよ飛ばしすぎ!」

宗介「??……では御坂、これからよろしく頼む」

美琴「ええ、こちらこそ」

 今度こそしっかり、二人は握手を交わす。



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:51:54.31 ID:6ob3lNul0
 しかしまあ……電撃を飛ばしてから仲良くなるとは皮肉なものね。
 などと美琴は考える。思えば“あの馬鹿”と知り合ったきっかけもビリビリだ。

 などと物思いをしていると自分の部屋に辿りついた。

美琴「ここが私の部屋よ。1つ後輩がルームメイトでいると思うけど――きゃあ!」

 突然、宗介が美琴の肩を引き寄せた。

美琴「ちょ……ちょっとアンタ何してんのいきな――」

宗介「しっ!……静かにするんだ御坂。トラップだ」

美琴「と、トラップ?」

宗介「扉の隙間の部分を見てみろ」

美琴「???」

 覗き込んでみると、確かに引っかかりの部分には糸のようなものが巻かれていた。
 ドアノブを回すと糸が取れてトラップが発動する仕組みだろうか?
 恐らく黒子が悪戯で仕掛けてたものだろう。さしずめ自分に近寄る男に鉄槌を加えてやると言ったところだろうか。



35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:53:51.97 ID:SInf6OQyP
宗介が空回りせず立ち回っているだと・・・
ここは戦場か!




36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:54:44.63 ID:rdTbG01bP
>>35
な……なるほど!




37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:54:47.14 ID:6ob3lNul0
美琴「……ったくあの子ったら、私や寮監が引っかかる可能性を考えてないわね
   それにしてもこんなものに気づくなんて、アンタも流石ね――って
   アンタ何してんの?」

 気づけは宗介は、実に手際よく作業を始めていた。
 ドアの隙間には何やら粘土のようなものを練り込み
 そこから伸ばした糸を離れたところまで丁寧に引っ張る。

宗介「下がるんだ御坂。これよりトラップを的確に“処理”する」

美琴「処理?」

宗介「これを被って俺の後ろに隠れるんだ」

 どこからともなく“安全第一”と書かれたヘルメットを取りだし、美琴にかぶせる。
 美琴は美琴で訳がわからないまま、一応宗介の指示に従ってみた。

宗介「耳を塞いで口を半開きにしろ御坂!これよりトラップを“爆破”する!!」


美琴「え!?……ちょっ!!?」



38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:55:21.64 ID:SInf6OQyP
ごめん完全に俺の勘違いだった



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:56:20.24 ID:rdTbG01bP
ズコー



40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:56:48.27 ID:fiLUo+Xv0
相良さんいつも通りだなwwww



43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:57:23.15 ID:6ob3lNul0
 爆風と共にけたたましい轟音が学生寮に響き渡る。
 美琴の部屋のドアは遠目で見ても無事ではないとわかるぐらいの姿になっていた。

宗介「ふぅ……危ないところだった」

美琴「あ、危ないのはアンタだぁぁああ」

 バリバリィ!っと今度は宗介が避ける暇も与えず電撃を浴びせる。

宗介「い、痛いじゃないかちどr――御坂
    このやり取りに既視感があるぞ」

美琴「知るかんなもん!っつーかいきなり爆破ってどういうオツムしてんのよアンタ!」

宗介「しかしどのようなトラップがあるかわからない以上、爆破するしか手段はなかった」

美琴「アンタってやつは……ちょっと凛々しいと思ってたら天然ボケなの!?
   まったく万が一部屋に人がいたら……」

 ――待てよ?

寮監((御坂。お前の護衛役が到着したので降りてこい
                        ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 
     白井の護衛役はまだ先なので白井は待機しておけ))

 ――まさか?

黒子「お……お姉……様」

美琴「く、黒子ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお」



46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 00:59:36.66 ID:6ob3lNul0
宗介「む、怪我をしているのか?」

美琴「わ、わからない!でも爆風で吹っ飛ばされたみたい!
    早く診てみないと……!」

宗介「その必要はない」

 宗介はむっつりへの字口で黒子に近づき、懐から何かを取りだした。
 あれは……

美琴「な、ナイフ!?」

宗介「治療して欲しければ洗いざらい吐くんだな
   所属・目的・雇い主を言え」

 そう言って宗介は黒子の右腕を背中に回しナイフを突き立てた。
 けが人かもしれない少女に対してこの仕打ち。血も涙も無い男である。

宗介「生憎だが今日の俺は気が短い。
   質問に答えなければ耳を切り落と――!?」

 突然――宗介の視界が反転した。

宗介「!!?」

黒子「この……バイオレンス類人猿がぁああ!」

 黒子の空間転移によって1.5mの高さから頭を下向きに落とされたのだ。



47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:02:13.78 ID:6ob3lNul0
 宗介は左手・肘・肩・背中と器用に受け流しながら着地する。
 とっさに受け身も取ったがそれでも勢いは殺しきれず背中への衝撃は大きかった。

宗介(かはっ!……一体何が!?俺は投げられたのか?)

黒子「あ、あの高さから着地した!?ふふふ……では更なる地獄がお望みですのね!」

 そう言って太ももから金属矢を取りだす。完全に臨戦態勢だ。


美琴「ちょ、ちょっとアンタら――」


寮監「そこまでだ!貴様ら!」



黒子・美琴「「!!?」」



50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:05:32.28 ID:6ob3lNul0
黒子「りょ、寮監……!!」

寮監「この騒ぎは何だ?白井……?いや、そんなことはさておき
   今“能力”を使ってたな……白井?」

黒子「そそそそそそそそそれはですね寮監。わたくしではなくこの殿方が……!」

寮監「言い残す言葉はそれでいいのか?」

 寮監が黒子の首に手を回した途端ゴキッ!っと嫌な音が響く
 それ以降黒子はピクリとも動かなくなった。

美琴「黒子ぉぉぉおおおおおおお!」

寮監「御坂……貴様にはこの事態の説明だ」

宗介「その説明は自分から」

寮監「ほう……」

――!!

宗介(この人は……!?)

寮監(この男……っ!!)

宗介・寮監((出来る……っ!!))



51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:08:30.22 ID:bjrjyCR40
シンパシー感じとるwww



53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:09:11.14 ID:6ob3lNul0
宗介「失礼ですが、あなたは?」

寮監「私か?私はこの学生寮の寮監だ。
    ちなみに“コレ”は一応この寮生でな……私の監督下にある
    では私の質問だ。……所属と名前は?」

 ――何だこのやりとり。と二人の間に流れる異様な空気を美琴は感じ取っていた
 すると宗介は“休め”の姿勢を取り大きく口を開け

宗介「はっ!寮監閣下!
   自分はSP養成学校所属、三年B組相良宗介であります!
   階級は軍曹!得意分野は偵察とサボタージュであります!」

美琴「はい?」

 今なんか後半がおかしかった。軍曹?あの新兵に怒鳴る人?

宗介「――失礼。後半は忘れてください……」

寮監「いや、いい軍曹。では軍曹、説明をしろ」

宗介「はっ!」



58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:13:21.62 ID:6ob3lNul0
宗介「本日○八一五時
    護衛対象御坂美琴及びその護衛相良宗介の両名は談笑しつつ御坂美琴の部屋に到着。
    同刻、部屋の扉に異常を発見しました」

寮監「不審物か?」

宗介「肯定です。糸のようなものが括りつけてあることを確認しました。
    ――自分はこれをドアノブを引くと同時に発動する高脅威トラップだと判断。
    しかし始業間近であったため検査を断念。もっとも確実な処理を行いました」

寮監「その処理方法とは?」

宗介「高性能爆薬による爆破処理です」

美琴(いや!その流れは無い!言ってやってくれ寮監、この戦争ボケ野郎にガツンと一言!)


寮監「…何!?爆破だと?」

宗介「はい。爆破です」

寮監「ベストとは言わないが……妥当な判断だ」

美琴「ズコー!」 



61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:15:33.15 ID:6ob3lNul0
宗介「どうしたんだ御坂?」

美琴「ずっこけてんのよ!それはもう古いリアクションしたくなるぐらい!
    何で納得してるんですか寮監?こいつ私の部屋のドアを爆破したんですよ!?」

寮監「状況の破天荒さに惑わされてはいけない。正しい状況をよく見てみろ御坂
    爆破で吹き飛んだのはドアとその周辺部。おまけにドアの横で待ち伏せしていたであろう白井だけだ」

美琴「え……あれ?本当だ」

 部屋を覗いてみると部屋自身は多少煤がついている意外目立った損傷は無い

寮監「よほど上手く爆破しなければこうはならない。それでいて白井の作ったトラップは沈黙した
    100点とは言わないが、これがもし本当の爆弾で迂闊に引けば御坂達が死ぬと考えると……まあ妥当な判断だろう
    しかし爆破自身は非常識には変わらないのでそこはマイナスだ。それでいいな軍曹?」
 
宗介「了解です!寮監閣下!」

寮監「それにトラップをしかけたのは私の管理下である白井だ。
    その点も考慮して、向こうの学校にはマイナスは伝えないようにする」

宗介「お心遣い感謝します!寮監閣下」


美琴(何でこの二人はこんなに息あってんのよ……)


 こうして、宗介の護衛生活が始まった。



63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:19:33.13 ID:6ob3lNul0
宗介「定期連絡。定期連絡。千鳥、聞こえるか?」

かなめ『聞こえるも何も聞いたわよ。アンタまた爆破したですって!?』

                 ・ ・
宗介「……何故それを?…お前か?」

アル《護衛で忙しい軍曹に代わって定期連絡したまでです。まさかチクるなとでも?》

宗介「……まあいい。そうだ千鳥、確かに爆破した。だが――」

かなめ『――ちゃんと損害報告も聞いたわよ。出来るだけ抑えたみたいね』

宗介「ああ……やはり完全に大丈夫だとは言い切れないんでな」

かなめ『まあ、ちゃんと節度が分かってみたいだし?今回はいいわ』



64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:22:01.33 ID:6ob3lNul0

宗介「それで、そっちの方はどうだ?」

かなめ『それがね、この依頼はアルが睨んだ通り何かあるっぽい
     依頼者へのプロテクトが異常に硬すぎるのよ
     どうする……降りるこの仕事?』

宗介「いや、ヤバい事件かもしれないなら尚更降りられない」

かなめ『いい子だった?』

宗介「ああ、危険な目には合わせたくない」

かなめ『……わかった。じゃあお姉さんも人頑張りしますか!
     依頼主探すのは拉致あかないからとりあえずあの子が狙われそうな理由を探ってみるわ』

宗介「ああ、頼む」



66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:24:16.92 ID:6ob3lNul0
―翌日―

 護衛研修の二日目は街に出ての野外研修である。
 野外研修と言ってもヤンキーのサクラを用意して護衛対象を襲われる
 ――などと言ったあからさまな仕掛けは用意しない。

 この研修では“事件を如何に未然に防ぐか?”を問うのだ。

美琴(その点で言うと……コイツはすごいわね)

 宗介の動きは、ありていに言えば隙が無い
 例え10トントラックが突っ込んできても冷静に対処出来そうな振る舞いだ。

 今、宗介と美琴は特に目的もなく街を歩いている。しかしその歩き方には違和感があった。
 ランダムのように見えて、どこか一定の法則に従って動いているように感じる。



67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:25:54.54 ID:6ob3lNul0
美琴「この動き……もしかして狙撃とかを警戒してんの?」

宗介「!!?」

 宗介が驚いたように目を見開いている。コイツのこんな顔が見れるとは思わなかった。

宗介「自然に見えるように動いていたつもりだったが……不自然だったか?
   ……俺もまだまだ未熟だな」

 宗介が急にしゅんとなった。その仕草は飼い主に叱られた子犬のようでどこか可愛らしい。

美琴「い、いや自分で言うのもアレだけど私レベル5だからね
   物事のパターンを頭で演算するのが癖になってんのよ
   普通の人間なら気づかないと思う――いや絶対に気づかない
   そのぐらい凄いわよアンタ。たまにネジ飛んでるけど」

宗介「……そうか。まあ俺は専門家だからな。これぐらい出来て当然だ」

 『出来て当然』と言いつつもどこかドヤ顔である。
 最初コイツは無愛想だと思ったが、案外ユーモアや茶目っ気のある人間なのかもしれない。



68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:28:13.50 ID:6ob3lNul0
美琴「で?結局どこに向かってんの?」

宗介「特に決めてはいない。行きたいところはあるか?」

美琴「うーん……私もこれと言って――」



上条「おーい!御坂ぁ!」


 : : : : : : .ヘヽ! : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\  V: : : : : : \
 : : : : : : : 人| : : : : : : :ト、 : :.:\、: : : : : : : :.\: : : : ト、 V: : :\: : : :
 : : : i: : : ;イ:.:|: : :i : : ト、! \ : :.:\ト、: : : : :ト、: :\ :.ヘ :\} : :}: : :\ー、
 : : : | /: : : !: : ハ : :|_, ィ――-、 : \\: : | \_:_\:ヘ /: : : : :ヘ
 : :-イ:/⌒ヽ. : : :メ:{   ┃   \:ゝ  \! / \: : ト、:メ:/ :\ 、 : ヘ
 : : : / ノヽ  \ト、ゞゝ ┃     !        , - 、\! ./\二ニ=-\
 |: : :{ (⌒ )  ヾ \  ┃     ,'     /┃  ヽ. V: : : : : \    美琴「!!?」
 |: : : \  (.       \___/       {. ┃   }./: : : : : : : : \
 |: : : : : \__     \\\\       \┃__//.}: : ヘ、 : : : : : \
 |: : : : : : : : :ヘ ij                \\\/ノ: : : :ヘ\ : : : : :
 | i: : : : : : : : :ヘ       l                 |: :.:\: : :ヘ \: : ::
 | |\: :\ : \:i\      `ー― '´\_ノ    /: : : : :\: :ヘ.  \ :
 V   \/\: :.\ \                 /:\ : : : : :.\ヘ


宗介(!?敵か……!?)



69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:28:58.43 ID:K8HAa21q0
上やん逃げてー



72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:30:21.88 ID:6ob3lNul0
上条「おっす。平日の昼間っから何してんだお前?」

宗介「………」

美琴「あ、あああああああアンタこそ何してんの!?学校は?」

宗介「………」

上条「俺?うちの学校は今日は短縮校時で午前で終わり
   で、夕方には特売があるから早めに戦地入りしましょうって算段ですよ
   あっ……もし暇なら御坂も手伝ってくれないか!?
   お礼は絶対にする!何でもする!」

宗介「………」
    
美琴「お、おおおおおおお礼!?な、何でも!?で、でも………その……」

宗介「………」

上条「ん?……アレ?こちらの方はお知り合い?」

宗介「………」



74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:32:39.48 ID:6ob3lNul0
宗介(!?敵か……!?――いや待て、常識的に考えたら友人だろう)

 以前の自分なら容赦なくナイフを突きつけてていただろうが、今の自分はもう違う。
 俺はもう一般人の感覚を手に入れたんだ。
 もう千鳥にはバカにされないぞ。

上条「おっす。平日の昼間っから何してんだお前?」

宗介(「平日の昼間にノコノコと顔出しやがって――」
    ――いや違う、これは額面通り学生である御坂が何故平日に街にいるか聞いているだけだろう)

美琴「あ、あああああああアンタこそ何してんの!?学校は?」

宗介(この御坂の慌てよう……まさか……!?)



76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:35:07.04 ID:6ob3lNul0
上条「俺?うちの学校は今日は短縮校時で午前で終わり
   で、夕方には特売があるから早めに戦地入りしましょうって算段ですよ
   あっ……もし暇なら御坂も手伝ってくれないか!?
   お礼は絶対にする!何でもする!」


宗介(戦地!?戦地と言ったか今!?――いや待て確か特売とも言ったな
    以前に千鳥と特売に行ったが、なるほどあれを戦地と表現するか……いいセンスだ)
    

美琴「お、おおおおおおお礼!?な、何でも!?で、でも………その……」


宗介(!?御坂が赤面している……これは確か……こういう場合は…)


上条「ん?……アレ?こちらの方はお知り合い?」


宗介(ま、まさか……この男……御坂の……)



78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:36:40.58 ID:6ob3lNul0

/l/;;;;;;;;;;;;;;;;;;/    /;;;/   // /;;i' /|   ト、_;;;<,
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ , //;;;;;;/   // /;;/,/;l  , |;;;;;;ヾ,、;;;`;、
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ /i レ;;;;;;/   /;;i /|;/ i;;;;|  |.ト、;;;;;;ヽ\|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ /;;i /;;;;;;/ / /;;;;レ"i;;レ"|;;;|  i; |;;小;;;;;;;;i '
;;;;;;;;;;;;;;;/ /;;;i/;;;;;;;/ /,,,=テニミ=,,  i;;;l  i;; i;;;;! ヾ;;;;i
;;;;;;;;;;;;;i /;;;;;;i;;;;;;;;/ / /i;;;/,,,,,,,,,'''=ミ;i  /;;i;;;;;;;;i   `リ
;;;;/ i;;i i;;;;;;;;;;;;;;;;i  /i ,/.|/'~I;て,)~`.i ii`-/、;;iヾ;;;;i
;;イ^i;;;;i/;;;;;;;;;;;;;;;;;i i;;;i i  i  ト;;;;ノ : i;;iル'、 リ  ヾi
")vl;;;/|/|;;;;;;;;;;;;;;i i/iレ'    `-,,,,- l;;;;/ ,メ,  ノ
(,_,|;;;i`!'-i;;;;;;;;;;;;;;;i'i ,リ  // |\  レ'    ` ,_
\i;i~l'-、i;;;;;/^i;;;/ "         '       ~フ
\リ-、__ i;;;i  レ'                _ ノ
;;;;;ヘ,   キi                   /
;;;;;i `、,__,A'                   i
;;;;;;i     キ               ,r---,,」  宗介(ストーカーか……っ!!……そうだストーカーに違いない)
;;;;i、i     `,             '    )
;iv `      `,               /
i     i    ` ,             !
!      i      ` ,           i
__      i        ` - ,      _ノ
  `- ,__   i         ,---~''---''~


 どうだクルツ、マオ。俺は他人の色恋沙汰まで把握出来るようになったぞ
 次会ったらもう朴念仁だのトーヘンボクだの言わせない。
 俺はまともな一般人になれたんだ。



79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:37:04.18 ID:dGBvPWk70
※なれていません



80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:37:26.14 ID:ALcuPZFb0
(ノ∀`)ノ∀`)ノ∀`)ジェトストリームアチャー



82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:38:12.21 ID:6q0P3cLG0
やっぱり軍曹はさすがだ



84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:38:31.08 ID:6ob3lNul0
美琴「こ、こここここここコイツは……その……」

宗介(あんなに気丈な御坂がこの慌てよう……やはりストーカーか……っ!!
    下衆めっ……!)

宗介「……俺のことか?」

上条「あ、やっぱり御坂のお知り合いですか」


宗介「……知り合いなんてもんじゃない」

上条「え?」

宗介「俺達は“ただならぬ関係”だ……そうだろ美琴?」

美琴「ふにゃ……?な、なななななんて?」

上条「え~……っとつまりあなたは……?」


宗介「まだわからないのか?俺と美琴は恋人同士だ
    愛し合ってる。フォーリンラブってやつだな」


上条・美琴「「!!?」」



90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:40:50.14 ID:6ob3lNul0
美琴「な、ななななななな何言ってんのアンタ!?」

上条「へ~。御坂って年上が好きだったのか」

美琴「え!?ちょ……違っ……わないけど何か違う!!」

上条「あはは、照れんなって~!
   彼氏いるんなら紹介してくれたっていいじゃないか水臭いな~」

美琴「え……」

  何だこのリアクション。私に彼氏がいるって思ってもコイツにはその程度の――


宗介「紹介する必要はないぞ美琴」

上条「…はい?」



88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:39:22.74 ID:uNnnO0HC0
おぉう……



91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:40:50.61 ID:dGBvPWk70
気を利かせたつもりなんだよね、これは…



94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:42:56.14 ID:ZGf/MnU+0
軍曹はフォローに微塵の悪意もないから質が悪い



96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:43:19.57 ID:6ob3lNul0                    ・ ・ ・ ・
宗介「美琴……こんな男に構わず昨日の夜の続きをしてくれ
   ・ ・                   
   アレはよかった。まさか君にあんなテクニックがあるだなんて」

美琴「ちょ……真顔で何言ってんのアンタ!///
   そんなこと言ったら勘違い――」

 そう言って上条に目配せをする。そこには赤面した上条が


上条「あ~……何か話かけてスマン御坂
   彼氏さんとその……楽しんでくれ!じゃ、じゃあ!」


美琴「ちょ…ちょっと!誤解!誤解だって!」


上条「すみませんでしたぁぁぁぁああああああああ」


 踵を返すなり、上条は逃げるように走り去って行く。



97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:43:56.02 ID:h9zuiTxt0
流石は軍曹殿、妙な知恵を付けたせいで斜め上に行ってしまわれた



100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:44:57.91 ID:SInf6OQyP
いきなり突き倒して首元にナイフを突きつけないだけ成長しているんだ、彼は・・・



101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:45:08.86 ID:6ob3lNul0
宗介「か、完璧だ」

 以前隊にいた時にこんな会話があった。

マオ((――そんでね。あんまりにもしつこいから私はその男の前で電話するフリしたのよ
    『もしもし?ベン?今日も寂しいから●●●に●●●●してぇ~』みたいなことをね
    そしたらその男泣いて逃げて行ったわ。どうよこの話?))

クルツ((うわっ!ひっでぇ!))

ヤン((ぷぷぷっ……最高っす!))

マオ((要はね、ビッチになりゃいいのよ。そうすりゃ私に変な幻想抱いてる男は失望して逃げていく
    我ながら完璧な作戦ね))

 あの時は半信半疑であったがこうも効果があるとは……!

宗介「やったな御坂、これで君のストーカーは――御坂……?」



107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:48:21.69 ID:6ob3lNul0
 おかしい。御坂は下を向いたままワナワナと震えている。
 昨日気づいたことだが、御坂美琴という少女はどこか千鳥かなめと似ている――同類と言ってもいいかもしれない
 そして千鳥かなめが怒っている時の“溜め”の仕草はだいたいこういうものであった。

 千鳥かなめの場合、この後、目視出来ないスピードでハリセンが飛んでくるのだが
 発電能力者のレベル5である御坂美琴は……

           ・ ・
美琴「乙女の尊厳2つも奪っておいて何ドヤ顔してんじゃお前はぁぁぁあああああああああああああああ!!」



108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:50:00.95 ID:6ob3lNul0
 ……効いた。死なない程度に手加減はしているだろうがそれでも電気銃並の電気をもらった
 少し気絶していただろうか?街のど真ん中で倒れているのはわかる。だが動けない。
 美琴は美琴で、さっきの少年を追ったのか、ここにはもういない。

宗介(しかし……)
            ・ ・
美琴((乙女の尊厳2つも奪っておいて何ドヤ顔してんじゃお前はぁぁぁあああああああああああああああ!!))

宗介(…2つ?)

宗介(しかしマズイな……護衛の最中にはぐれてしまった)

 きっと待機していたアルが動いているだろう……断言できる
 事前に相談したわけではないがアイツはアイツでそれぐらいの判断力はある。

宗介(だが…今は“身体”が車のあいつに出来る護衛なんてたかが知れてる……
    早く俺が動かないと……)

???「痺れが残っているのでまだ動かないで下さい……」

 宗介の目の前に1人の少女が屈んでいた。

宗介(……?誰だ?)

???「……とミサカは名も知らぬ少年に命令します」

 目線を落とすと、太ももの間から縞模様の下着が視線に飛び込んできた。
 それと同時に宗介は再び気を失った。



110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:50:17.91 ID:KGzaOryP0
正直美琴は泣いてもいいと思う



112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:51:25.93 ID:joqcwCES0
この御坂なら千鳥かなめと三日三晩酒を飲める



113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:52:39.02 ID:6ob3lNul0
 目を覚ますとそこは病室だった。

宗介「クソっ!あの後気絶したのか!通信機は!?」

 案外近くに置いてあった荷物から通信機を取り、アルに連絡をする。

アル《無様ですね》

宗介「そういうのは後にしろ……御坂は大丈夫か?」

アル《ええ。問題ありません
    強いて言えば先ほどの少年の誤解を解く作業に悪戦苦闘していました》

宗介「やつはストーカーじゃなかったのか……」

 コンコン……と不意にノックが響いた。宗介の病室の扉からだ。

???「よろしいでしょうか?」

 少女の声だ。どこかで聞いたことがある声だが気のせいだろうか?

宗介「開いている」

???「失礼します……とミサカは礼儀正しく入室します」

宗介「なっ!?」



115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:54:23.97 ID:6ob3lNul0
 宗介の目の前には、お茶の乗ったトレイを持つ御坂美琴がいた。

宗介「み、御坂……!?君が何故ここに?」

ミサカ「!!……お姉様のお知り合いでしたか。とミサカは自身の行いに後悔しつつ打開策を思案します」

 お姉様?こいつは御坂美琴の妹なのか?
 ――いや違う。御坂美琴の経歴には目を通したが妹なんてものは存在しない。

 それに目の前の『ミサカ』と名乗る少女は何から何まで異様だった。
 まず体幹が不気味なぐらい安定している。そして仕草の1つ1つにまるで隙が無い。
 目の前の少女は御坂美琴のような平和な世界に身を置いていては仕上がらない完成度をしている。

宗介(こいつは……むしろ俺の知ってる世界の――)

 そう断定した宗介の行動は早い。素早くナイフを取り出しミサカと名乗る少女に肉迫。
 痺れが残っているのか多少動きにキレが戻ってないが――問題無い。



118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 01:58:24.91 ID:6ob3lNul0
 ――!?
 
 視界には病院の天井が広がる。一体自分は何をしたのだろうか?

宗介(確か俺は“ミサカ”の腕を取ろうとして――)

 思い出した。ミサカの手首を掴んだ途端、逆に投げられたのだ。
 その人間離れした体術に全く対応できなかった。まともに受け身も取れずに頭から落ちたらしい。
 ミサカはと言うと――右手でトレイを器用に支えて目を丸くしている。お茶は一切こぼれていない。
 

ミサカ「な、何するんですか?……とミサカは警戒しつつ尋ねます」


 どうやら向こうに交戦の意思は無いようだ。拘束して尋問するつもりだったが
 手負いの今は分が悪いようだ。


宗介「お前は一体何者だ……?何故御坂美琴になりすましている?」

ミサカ「み、ミサカは……」


 ミサカと名乗る少女は、初めて少女らしい感情のある表情を浮かべた
 ――罰が悪いと言った様子だろうか?ひどく狼狽している。


ミサカ「あ、あなたの素性が分からない以上、お答えできません――とミサカは回答します」



120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:00:09.19 ID:6ob3lNul0
ミサカ「逆にミサカから質問をします
     あなたは傭兵ですか?――とミサカは自己の見解を吐露します」

宗介「……答える義務は無いな」

ミサカ「では、更なるミサカの見解を述べます
    あなたはソ連出身ですね?――とミサカはかなりの自信を持って問いかけます」

宗介「……!?」

ミサカ「先ほどの動きはソ連の暗殺術と酷似している点がいくつかありました――とミサカは捕捉説明します
     ただ正規軍ではないようです、あなたの動きは正規軍というよりはゲリラ兵に近いです。
     ミサカの鼻腔に伝わる硝煙の臭いからすると――得意分野は爆破でしょうか?とミサカは曖昧な質問を投げかけます」

宗介「なっ…」



121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:01:54.79 ID:sbQvqqvi0
見透かされてるww



122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:02:22.82 ID:6ob3lNul0
 ミサカが連ねる宗介の特徴は、当たらずしも遠からずと行ったところだろうか
 恐るべき分析能力だ。たったこれだけのやり取りでここまでわかるものなのだろうか?

ミサカ「そして何より得意なのが……ASですね?無駄な筋肉がついていない長い手足、細い体とは対照的にがっちりした首回り
     異常に厚い手首や肘の肩の皮――どれも熟練したAS乗りの特徴です……とミサカは今度は確信を持って問いかけます」

宗介「お前は一体――何ものなんだ?」

ミサカ「……何ものなのでしょう?ミサカにもわかりません
    強いて言えば……ミサカ達は今それを見つけている最中です」

宗介「……?」

ミサカ「そんなことより……お茶にしませんか?とミサカは場の雰囲気を和ませることを試みます」

宗介「俺への尋問はいいのか?」

 自分は何を言っているのだろう?本来ならばこちらから尋問しなくてはいけないのに
 何故か目の前の少女にはペースを奪われてしまう

ミサカ「割とどうでもいいです――あなたはそんなに悪い人には見えないので
     それよりASの話を聞かせてくれませんか?とミサカはあなたへお願いします」

宗介「ASの?そんな話に興味があるのか?」

ミサカ「はい。知識は豊富なのですが……実際に載ったことはありませんので
     ――とミサカは自己のニワカっぷりをアピールしてみます」



125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:06:06.89 ID:6ob3lNul0
 ヤバい……怒りにまかせてビリビリさせたままあの馬鹿護衛を放置したままであった。
 “あの馬鹿”の誤解を解いた後、ついうっかり特売にまで付き合ってしまった。

美琴「出来るものならここいらであの馬鹿の家に行って料理の1つでも振る舞いたかったけど……」

 買い物も終わったところであの馬鹿護衛のことを思い出してしまったのだ。
 ここがビリビリした現場だが……

美琴「やっぱいないわね……ってアレは初春さん?」

 黒子と同じジャッジメントの初春飾利が何やら物騒な顔をして佇んでいた。

初春「あっ!御坂さーん!戻ってきたんですね」

美琴「???」

初春「ちゃんと彼を病院へ送りましたか?彼大丈夫そうです?」

 話がイマイチ読めない。

美琴「え~っと……何かあったの?」

初春「も~さっき説明したじゃないですか~
    男子高校生がエレクトロマスターと思わしき能力者から攻撃を受けて気絶していたんですよ~」

美琴「へ、へぇ~……」



127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:08:05.90 ID:6ob3lNul0
初春「で、通報があった場所に駆けつけてみたら御坂さんがその高校生を病院に連れて行くところだったんで
    被害者本人への調査はあきらめてサボろう――じゃなくて聞き込みでもしようかな~なんて……」

美琴「ちょ…ちょっと待って!?」

初春「さ、サボろうとしてませんよ!?」

美琴「違う!その前!私が送ったってとこ!」

初春「ええ!?……いつものあの病院へ送っていくって御坂さんが言ったじゃないですか
    ――って御坂さん!?急に走ってどこ行くんですか!?」

美琴「ちょ…ちょっと急用思い出した!ありがとう初春さん!」


 さ、最悪だ。あの馬鹿護衛はよりによって“あの娘達の誰か”に介抱されたのか
 早くあの馬鹿護衛が目覚める前にあの娘を遠ざけないと――後々厄介なことになりそうだ



130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:10:34.24 ID:6ob3lNul0
美琴「ああもう!こっからだと車使わないと遠いじゃないの!」

 ブッブー!と突然のクラクションに美琴が振り返る。
 そこにはバカでかいスポーツカーが停まっており、一人でに助手席の扉が開いた。

アル《おめでとうございます。あなたは私が走り初めてから10000人目のすれ違った通行人です
    記念にどこへでも送って差し上げましょう》

美琴「自動操縦のトランザム!?つーか何よその胡散臭すぎるキャンペーン!?」

アル《胡散臭くなどありません。どうです?乗りますか?乗りませんか?》

美琴「口答えするなんて高性能なAIね。いいわよ乗ってあげるわよ!
    第七学区の病院まで至急!マッハよマッハ!」


アル《ラージャ。マッハは無理ですが》



133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:13:08.46 ID:6ob3lNul0
美琴「着いた!全速力ありがとうトランザムさん」

アル《ネガティヴ。私の名前はトランザムではなく、アルです。以後お見知りおきを》

美琴「???…とにかくありがとうアル!」

 全力で病院へ駆け込む。病院のロビーには見知った顔の医者がコーヒーを飲んで休憩していた。

美琴「ゲコ……じゃなくてお医者さん!お久しぶりです!」

冥土返し「やあ遅かったね?相良宗介くんだろ?」

美琴「そう!そいつ!そいつ何号室?」

冥土返し「123号だよ。いやーびっくりしたんだよ?感電した患者を一万きゅ――」


美琴「123ね!?ありがとう!」



 ―123号室・相良宗介―

美琴「ここね!!」

 美琴は勢いよく扉を開けた。
 ――そこには、信じられない光景が広がっていた。



134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:16:47.10 ID:6ob3lNul0
ミサカ「それなら……完全に第三世代の方が有利なのでは?
    とミサカは率直な疑問を投げかけます」

宗介「いや、そうとも言い切れない。完全電気駆動の第三世代ASと違い
    動力のトルクを伝える『流体継手』を持つ第二世代ASは単純な腕相撲では第三世代に勝る」

ミサカ「しかしそれは実戦には何の役も立たないのでは?――とミサカは的確な突っ込みを入れます」

宗介「ものは考えようだ。例えば大規模な荷重がサベージとM9にかかったらどうなると思う?
    落石でも建物の倒壊でもなんでもいい」

ミサカ「……屁理屈です。仮に大荷重を持ちあげられたとしても
    装甲のスペックはM9に利があるのでその戦術では落石自身のダメージでサベージがお陀仏です
    とミサカはそのナンセンスな戦術を批判します」

宗介「確かに装甲のスペックはM9の方が上だ。しかしそれはあくまで耐弾性能に関する話だ。
    M9の電磁筋肉は超アラミド繊維のような構造を持つことで防弾ベストのような機能を有しているが
    複雑な人型骨格では建造物として考えると案外脆い一面がある。
    その点、あのずんぐりむっくりな流線形のボディであるサベージは、単純に建造物として堅牢だ」

 美琴が病室を開けると、何ともまあマニアックな話が繰り広げられているではないか。 

美琴「何なの……この和みよう?」



137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:19:41.21 ID:6ob3lNul0
 まだ出会って二日だが、この馬鹿護衛がこんなに流も暢に喋るとは思っていなかった。
 自分のクローン……妹にしても同じだ。あの子達の目ってのはこんなにも生き生きしていただろうか?

ミサカ「あなたのASの知識量には感服します。
     まだロールアウトされていないM9についてまで詳しいなんて驚きです
     とミサカは羨望の眼差しであなたを見つめます」

宗介「……技術誌と専門誌を読み漁ってるのでな。ハリス社の『アームスレイブ・マンスリー』は購読を勧める。
    それに君の知識にも感心した。まさかロックウェル社のMSO-12の開発秘話が聞けるとは」 

ミサカ「あ、それについてはまだ少し情報が
     実はジオトロン社とロス&ハンブルトン社も操縦システム開発に動きが――」

宗介「な、何!?ジオトロン社はここ最近おとなしかったがまさか――」


美琴「い・い・加・減・に・しろぉおおおおおおおおおおおお」


宗介・ミサカ「「!!?」」



139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:21:17.17 ID:6ob3lNul0
美琴「なにシカトぶっこいてオタッキーな会話繰り広げてるのアンタらは!?
    私を無視すんじゃねーっつーの!!」

宗介「み、御坂か!?」

 確かに盛り上がりすぎた。何をやっているのだ俺は
 この怪しすぎるミサカに尋問する前にまずは会話によって打ち解けようとしたのだが……

ミサカ「お、お姉様……申し訳ありません。その…み、ミサカは……」

 ミサカは明らかに狼狽し、上目遣いで美琴に謝っている。

美琴「う、うん?な、何か今日はしおらしいわねアンタ……調子狂うじゃないの」



141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:24:03.20 ID:6ob3lNul0

宗介「ま、待て御坂!このミサカは本当に君の妹なのか!?
    君に妹などいなかったはずでは――」

美琴「い、妹と言えば妹よ。訳はちゃんと話すから……その……何て言えばいいか」

ミサカ「み、ミサカは退室します。本日やることがあるので……とミサカは逃げるように病室を後にします」

 そう言ってミサカはとぼとぼと退室する。その姿は隙だらけであり
 どう見ても普通の女の子だった。

宗介「ま、待てミサカ!」

ミサカ「?」

宗介「礼と謝罪をしていなかった。病院の件、助かった。
    そして先ほどの無礼を謝罪する」

ミサカ「いえ、ミサカも無礼はしましたし……ASの話、楽しかったです
    ……とミサカは率直な感想を述べます」

宗介「ああ、俺も楽しかった。まだ話足りないぐらいだ。また機会があれば」

ミサカ「……はい」

美琴「ちょっと待って!
    アンタ……“何番”?」


19090号「み、ミサカは……19090号です」



143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:27:07.82 ID:dGBvPWk70
恐怖感情の子か



144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:27:10.64 ID:6ob3lNul0
美琴「そう……ごめんね。見た目では他の子と見分けつかないや」

19090号「それが普通です、とミサカは――」


美琴「でも……これからアンタだけは見分けつくかも」

 御坂がミサカに微笑む。
 退出した時のミサカはさっきまでの狼狽していた様子は消えていた。


美琴「さて、アンタには何て話せばいいのかしら……?」


宗介「やはり……妹ではないのか?」

                          ・ ・ ・ ・ ・
美琴「妹と言えば妹よ。あの子――ううん、あの子たちの呼び方は“妹達”」



147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:31:40.91 ID:6ob3lNul0
 耳を疑うような話だ。
 ミズホ機構へのDNAマップの提供・量産能力者計画・欠陥電気…そして絶対能力進化
 先ほどまでのミサカはその美琴のクローンの19090体目だというのだ。

宗介「馬鹿げている…!」

美琴「そう、馬鹿げた計画なのよ。でもそれももう終わったわ
    どっかの馬鹿が計画止めてくれたおかげでね」

宗介「?」

美琴「とにかく、計画は終わったの。それでもまだ1万人近い妹達は生きている
    ほとんどの子は外部の学園都市協力機関に移ったけどね
    学園都市内にも5人ぐらい残ってたはず。あの子はその一人ね」

宗介「そうか」

美琴「私がこの話をアンタにしたのは、私に“妹”がいるなんてことを他言しないで欲しいから
   特に常盤台の関係者にはわね」

 それは自らの体裁のためだろうか……それはそうだ
 自分のクローンがうじゃうじゃいるなんて気味の悪い話、誰だって知られたく――


美琴「――だって……騒ぎになればあの子たちが学園都市に居づらくなるじゃない?
    何だかんだ言っても……あの子たちは私の“妹”なのよ」



149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:36:36.30 ID:6ob3lNul0
美琴「……なに目を丸くして愉快な顔してんのよアンタ?」

宗介「――失礼。俺は君を誤解していた」

美琴「誤解?」

宗介「ああ、何て言えばいいだろうか……とにかく君はいい女だ」

美琴「ちょっ……いきなり何言ってんのよ///」

宗介「?……思ったままを言ったまでだが?
    それに君にも謝らないと行けなかったな。さっきは君の友人に無礼をしてすまなかった
    それに君の尊厳も――」

美琴「ああ、い、いいわよあのことはもう!誤解も解けたし」

宗介「そうか……?それと君にもう一つ話がある」

美琴「話?」

宗介「そう、俺が君を護衛する本当の理由だ」



152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:39:18.92 ID:6ob3lNul0
美琴「護衛会社?アンタ学生じゃないの?」

宗介「ああ、学生だがこれでも苦学生なのでな。副業として護衛会社を設立した
    長点上機にいる相棒と……もう一人妙な相棒
    とにかく3人で経営している」

アル《妙な相棒とは私のことでしょうか?》

宗介「アル……勝手に通信をするなとあれほど――」

美琴「アルって……さっきのトランザム?」

宗介「……!!」

アル《私がミス御坂をここに送り届けました》

美琴「なるほど。見るからに怪しいと思ってたらアンタ繋がりだったわけね
    で?アンタら護衛会社が何で私なんかを護衛に?誰の依頼?」

宗介「それが……依頼主がわからないんだ。これを」

 そう言って宗介が1枚の写真を取り出す 



154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:40:54.43 ID:6ob3lNul0
美琴「私の……写真……?」

宗介「ああ、送り主も不明でこの写真と『この子をしばらく護衛するように』という文面のみ
    君が有名人だったのは幸運だったが、今思えばこれは……」

美琴「あの子たちの可能性があると?」

宗介「そうだ。それなら名前を言わなかったのにも納得がいく
    どうだ御坂?妹達とやらには狙うだけの価値があったりするのか?」

美琴「あの子たち単体には……失礼ではあるけど能力的な商品価値はないわ
    あるとすれば……あの子たち全体の“価値”」

宗介「??」

美琴「ミサカネットワークって言ってね。あの子たちは自分の脳波を電波として飛ばして
    1つの巨大なネットワークを形成しているの。そこでは情報を共有が可能ってわけ
    クローン体と学習装置で整理された『同一の脳波』だからこそ出来る芸当よ」

 “情報の共有”という部分に宗介は引っかかった。
 このシステム、根本的な部分は違えどどこかオムニ・スフィアに通じる部分がある

宗介(まさか……アマルガムの残党か?)



155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:43:36.83 ID:6ob3lNul0
美琴「ただ妹達全員を護衛してるんじゃキリがないわよ
    あの子たちもそれなりに強いし……半端なやつじゃそう簡単に手を出せないはずなんだけど」

宗介「何か特別な個体はいないのか?」

美琴「いる……でもその個体は私達よりも幼い姿なのよ
    いろいろ引っかかるけど……これってやっぱり私絡みなんじゃ……」

冥土返し「特別……と言っていいかわからないけど、変わった個体ならいるよ?」

宗介「?あなたは?」

冥土返し「失礼、僕はこの病院の医者だよ。そして妹達の主治医でもある
      部屋に立ち寄ったら興味深い話が聞こえてしまってね?」

美琴「変わった個体とは?」

冥土返し「そこの患者さんをここに連れてきた……19090号だよ?」

宗介・美琴「「!!?」」



158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:45:38.52 ID:6ob3lNul0
冥土返し「彼女は最初から少し変わっていた。あんまりこういう言い方をすると他の子達に失礼だが
      19090号は他の子たちと比べて明らかに感情が豊かなのさ」

美琴「感情が……確かに他の子と比べて照れ屋に見えたわ」

冥土返し「それだけじゃない。彼女は感情を手に入れることで他の個体にないことを始めてね?」

宗介「他にないこと?」

冥土返し「ダイエットさ。他の個体に内緒でだよ?」

宗介「は?」

美琴「他の個体に内緒って……ネットワークは?」

冥土返し「そう、彼女はネットワークから切り離した“プライベート”の領域を手に入れたんだ
       もっとも、他の子たちも最近個性が出つつあるからこういった領域は増えるだろうけどね?」

宗介「しかし……何故そのミサカだけ感情が豊かなのです?
    番号から察するに最終ロットじゃない。彼女を境目に感情が豊かになったのならまだ話はわかるが……」

冥土返し「そこは僕もわからないんだよ。彼女が学習装置で感情を入力されたのが8月19日
      ……君はこの日に何か覚えはある?」

美琴「その日は……確か絶対能力進化計画の関連施設を潰した日
    初めて施設側から大規模な応戦があった日だからよく覚えてる」 



161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01 /17(月) 02:47:19.22 ID:6ob3lNul0
冥土返し「ふむ……混乱もあいまって学習装置に誤作動でもあったのかね?」

宗介「話はさっぱり読めんが、そんな話はミサカに聞けばいいんじゃないのか?」

美琴「……それもそうね」

冥土返し「彼女なら今日が定期健診だから――」


看護師「――先生!一人が……!ミサカ19090号さんが見当たりません!!」


冥土返し「落ち着いて……ね?他の妹達なら場所がわかるんじゃないかな?」

看護師「それが……!ネットワークでも見つけられないみたいです!」

美琴「ま、まさか……!?」

宗介「考えたくはないが……このような場合
    案外“最悪のパターン”というものが起こったりするものだ…!」




次→宗介「こちらウルズ7、常盤台中学の潜入に成功した」【後編】



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コメント一覧
2723. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/01/25(火) 19:57 ▼このコメントに返信する
まさかのフルメタ
2725. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/01/25(火) 20:29 ▼このコメントに返信する
まとめ感謝です
フルメタSSは貴重な存在
2728. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/01/25(火) 21:40 ▼このコメントに返信する
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