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五条「ククク… ここが学園都市ですか」その28まとめ→
五条「ククク… ここが学園都市ですか」 まとめ343 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01 /17(月) 20:23:15.56
ID:ogjtM/8Oo 瞬く様にその光を明滅させる星々。
彼方では、星団の群れが渦を描きながら仄かに光を放っている。
恒星の明かり、飛び交う流星、全てを飲み込む漆黒の孔。
疑う余地も無い"宇宙空間"に、自身が放り出されているのが理解出来た。
重力が存在しないにも関わらず浮遊感を感じない事に疑問を覚え、足元に目線を走らせる。
その足先に網目状に走っている数多の緑線。
『一番理解の容易な表現方法を採るのならば、"異次元"という事になるのでしょうか。とミサカは変な男性に、この世界についての自分なりの推論の一端を吐露します』
不意に投げられた声の方角へと目線を向ける。
自身と同様、緑色の線が描く床の上に佇んでいる少女の姿が目に入った。
サマーセーターにプリーツスカート、肩までの長さに整えられた短髪の上には、ちょこんと違和感を招く軍用暗視ゴーグルが鎮座している。
五条「オマエは……?」
問いを投げ掛け、自身がよく知る少女と同一の姿を持つ彼女の腰の辺りに、一つの缶バッジが括り付けられている事に気が付いた。
五条「9982……なのですか……?」
9982「はい。ミサカに与えられた固体番号は9982。現地時間八月十五日二十一時に実施された第九九八二実験にて被験者一方通行に殺害された固体です。とミサカは自身の不幸な生い立ちを惜し気もなく語ります」
表情を変えずに自身の死に様を語る彼女を見て、何故だか僅かにため息が漏れた。
五条「……ククク……相変わらずですね……しかし何故オマエがここに……?」
9982 「……これも推論に過ぎないのですが、恐らくは貴方がこの次元に持ち込んだバッジに対し貴方が描いていたイメージであったミサカの存在が収束された結果なのではないか、とミサカは貴方に強く思われていたという事実に対しわずかに羞恥の念を抱きます」
344 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/17(月) 20:27:39.37
ID:ogjtM/8Oo 五条「……夢……ではなさそうですね……」
9982「はい。観測出来る原理は不明ですが、ミサカから観測した貴方は現在一○○三二実験での負傷が原因となり、病院のベッドで昏睡状態に陥っている模様です。とミサカは貴方の現状を冷淡に宣告します」
五条「……そうですか……」
立ちっ放しで会話を続けるのもどうかと思われたので、緑色に煌いている床に腰を下ろす。
暫しの間を置いて、同様に9982が自分の隣に腰を下ろした。
場を包み込む、深い沈黙。
遠くで青く瞬きながら流れる星が目に入り、その美しさに思わず感嘆の声が漏れる。
9982 「……ありがとうございました」
唐突に隣に座る9982が口を開いた。
五条「……?」
その言葉の意を解する事が出来なかったので、彼女に向かい首を傾げる。
9982「この世界に構成された際、ミサカと出会って以降の貴方の行動記憶が流入して来ました。とミサカは謝辞の根源を提示します」
五条「ああ……ククク……別に構いませんよ……」
9982「実験動物として生を終えたミサカでしたが、生命活動を停止する直前、貴方とお姉さまがこちらに向かい来る様を見てとても胸が痛くなったのを覚えています」
五条「……そうですか……」
9982「他の妹達にも、出来るならばあんな思いをして欲しくはありませんでした。そしてその希望を、貴方とお姉さまと上条当麻は生命を賭して聞き届けてくれた。その事実がとても嬉しく思えました。とミサカは自身の胸中を素直に自白します」
五条「……」
9982「だから……ありがとうございました。そちらの世界のミサカは既に生命活動を停止してしまいましたが、ミサカが最後に貴方やお姉さまと過ごせた事は、本当に大切なものだったと感じる事が出来ます」
隣の彼女が、こちらを向いて僅かに微笑む。
それはあの日見せた最後の笑顔よりも、本当に少しだけ感情の色合いが濃くなったものの様に感じられた。
思わず視界がぼやけたので、星を見るふりをして視線を上方へと投げる。
345 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/17(月) 20:30:25.01
ID:ogjtM/8Oo 9982 「そろそろ目が覚める頃合かと思われます。もう行って下さい、とミサカは隣で感動のあまり落涙している五条勝に目覚めを促す声をかけます」
五条「……クヒヒッ……別に泣いてなんかいませんよッ……星を見ているだけです……」
9982「……了解しました、では貴方は星を見ているだけという事にしておきます」
彼女の返答を聞いて目線を落とすと、自身と9982だけかと思っていた世界に自分たち以外に五つの影がある事に気が付いた。
人間の腰ほどの大きさのその影達は、互いにサッカーボールを蹴り合って遊んでいる様だ。
視線を凝らして影を見据える。
青と白のツートンで構成される体表。
黄色く大きな嘴。
死んだ魚の様なまん丸の瞳。
それは普段自身に添ってくれている、五羽の企鵝の姿だった。
五条「……!?何故アイツらが……!?」
驚愕の声に反応した 9982が、同様に企鵝達に視線を投げる。
9982「ああ、彼らも此処の住人のようですね。良い話相手になってくれています、とミサカは愛らしい同居人達に手を振ってみます」
こちらの様子に気が付いた一羽が、その短い羽?手?をこちらに向けてブンブンと振り帰して来た。
五条「……いつもどこに居るのかと思っていたら……?ちょっと待って下さい、オレがアイツらを呼べるのならばお前もあちらに戻ってくる事は」
9982 「残念ながら、それは不可能かと思われます。あちらの世界のミサカの存在情報は既に死亡したものとして固定されていますので、現出が可能とは思えません。とミサカは悔しげな表情を浮かべながら説明します」
五条「……そうですか……」
彼女の返答を聞きため息を吐いた所で、視界が僅かに白く染まった。
9982「目が覚める様ですね。とミサカは貴方の回復を喜びながら右手を振ります」
徐々に白さが強みを帯び、眼前の景色を認識出来なくなって行く。
9982「あちらの世界には戻れませんが、ミサカは此処に存在しています。時々で良いので遊びに来てくれても構いません。とミサカは五条勝に向かい右手を振り続けます」
そんな言葉を耳にしながら、光の中へと身体を投げ出していった。
────────────
347 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/17(月) 20:34:17.76 ID:b41hE0/lo
9982救済されてよかった!346 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/17(月) 20:32:57.27
ID:ogjtM/8Oo 先の閃光から一転し闇に閉ざされていた視界に、再び徐々に光が戻ってくる。
自身が瞼を閉じているのがわかり、少々力を込めて瞳を開けた。
以前もどこかで目にした天井が視界に入る。
次いで鼻を突く、消毒液の香り。
……間違いない。病院だ。
点滴こそされている様だが、酸素マスクをされていない事から考えるに、今は生命に関わる程の重態ではないのだろう。
『……五条?……おい、起きたのか五条!?』
付近から聞きなれた声が響いてきたので、左側へと首を向ける。
視界に入って来たのは、隣の医療用ベッドのリクライニングを起こしこちらに目線を投げ嬉しそうな表情を浮かべている幻想殺しの高校生、上条当麻の姿だった。
彼も自身と同様、病院のパジャマに身を包んでいる。
同様に入院している状態だとみるのが妥当だろう。
上条「おおおぉぉ!!皆心配してたんだぜ?大丈夫か!?傷痛んだりしてないか!?」
矢継ぎ早に質問を投げてくる彼の様を見て思い返す。
……そういえば、自分は腹に穴が開いて大量に出血を起こしていたハズだ。
言葉を返す前に、視線を自身の腹に落とす。
包帯こそ巻かれてはいるものの、既に違和感や痛みはなくなっていた。
再度視線を上条へ戻し、口を開いた。
五条「……ククク……死に損ないましたか……」
言葉を聴いた上条の表情が一瞬止まり、深くため息が吐かれる、
上条「よくもまぁあの状態からそんな事が言えたもんですね……ホントに危なかったんだぞ、オマエ」
五条「……まぁ、生きてさえいれば善としましょうか……今日は何月何日ですか?」
上条「八月二十三日。あの晩から二日経った昼だな」
348 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01 /17(月) 20:34:45.49
ID:ogjtM/8Oo ────────────
八月二十三日 夏休み三十四日目
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その言葉に反応して、窓の方へと目線を投げた。
色とりどりの花が飾られている花瓶の向こうに、昼の町並みが見て取れる。
五条「……随分と眠っていた様ですね……」
上条「無理もないところなんだけどな。ま、何にせよこれで一安心だ」
言いながら笑う上条を見て、そういえば一先日の晩に浮かんだ疑問を尋ね忘れていた事を思い出した。
五条「……そういえば、あの晩オマエが操車場に来た際の話ですが……」
上条「おう、どうした?」
五条「……オレと一方通行の間に割って入った時、もうすでにボロボロの状態ではありませんでしたか……?」
上条「ああ、あれかぁ……」
上条の表情が苦笑へと切り替わる。
五条「見たところ、火傷が主な負傷の様でしたが……」
上条「ありゃあ『名誉の負傷、ってやつよね?』
病室の入り口から、新たな声が響く。
その姿を見た上条の表情が凍りついたのが判った。
自身も顔を病室の入り口へと向ける。
目に入ってきたのは、先も目にしていた常盤台中の制服姿の少女だった。
その表情と眼差しに宿る色濃い感情から、彼女が学園都市第三位、御坂美琴だと言うことがすぐに理解出来る。
美琴「そーゆー事にしときなさい?……余計な事吹き込んだら殺すわよ?」
上条を見据えたまま恫喝の言葉を吐く彼女。
『あらあらお姉さま、一体どうなされ……』
349 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/17(月) 20:37:35.10
ID:ogjtM/8Oo その彼女に続いて、病室に足を進めてきた小柄な少女と目が合った。
栗色の長髪を赤いツインテールに纏め、美琴と同様常盤台中の制服に身を包む風紀委員の転送能力者、白井黒子。
上体を起こし上条と話をしていた自身と目が合った彼女は、驚愕の表情を浮かべて静止したかと思いきや、唐突にその目尻に涙を貯めたと同時、自分のベッドの上方30センチ程の位置に転移して来ていた。
黒子「勝さぁぁぁぁぁああああああん!!!!」
ぱさ、と音を立てて、彼女が手にしていたコンビニの袋が病室の入り口に落ちた。
ぼふ、と音を立てて、彼女の身体が自分の身体の上に落ちた。
絶叫と共に、腹部に彼女の全体重が圧し掛かるを感じる。
恐らくは自身に飛びつきざま、強く抱擁されているのだろう。
五条「へぇあッッッ!?」
続けざまに、腹部の傷に走る鈍痛。
背に回された手にぎりぎりと力が込められるにつれ、痛みの度合いが飛躍度的に上昇していく。
黒子「辛かったですの!!悲しかったですの!!勝さんもお姉さまもロクに相手にしてくださらなかった日々は黒子にとってこれ以上無い責め苦でしたのよ!?
それがっ!!それがようやく終わったとお姉さまからお伺いしましたの!!かと思いましたら今度は勝さんが重態だなんて……!!
ああ、一体わたくしはいくつ胃と心臓を用意すればよろしいのでしょうか!?でも良かったです!本当に良かったですわ勝さん!!
あなたならばきっと帰って来てくれると信じておりまし「あの……黒子?」!?どうされましたっお姉さまっ!!」
興奮した様子で五条の胸に頬を擦り付けていた黒子が、美琴の言葉に反応して彼女へと目線を送る。
視線の先の美琴は、血の気が引いた様子で苦笑を浮かべながら五条の顔を指差していた。
不思議に思った黒子が視線を上げた先。
……激痛のあまり、再び昏倒している五条勝の姿がそこにあった。
────────────
350 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/17(月) 20:39:06.81
ID:ogjtM/8Oo 『嬉しいのはわかるけど、まだ抜糸も済んでいない状態なんだ。あんまりはしゃいじゃいけないよぉ?』
黒子「……はい、大変反省しておりますの」
『まあ、でもカワイイ彼女に抱きしめられて死ぬんなら君も本望かもねぇ?』
五条「……ククク……ご冗談を……」
飛び込んできて黒子を引っぺがしたナースと入れ替わりで、カエル顔の医師が病室に足を踏み入れてきた。
五条「……度々お手数をおかけ致します……」
『ボクはそんなに大したことはしていないよ?驚いたのは君達の生命力そのものだ。いやあ、若いってのは全く羨ましいもんだねえ』
黒子「あの……先生、勝さんの退院は……」
『んーそうだね、特段症状に変わりが見られなければ明日には抜糸して、明後日には退院になると思うよ?そこの常連の彼も、明日明後日には退院出来るだろう』
返答を聞いた黒子の表情が、途端に明るくなった。
黒子「……!わかりましたの!本当にありがとうございます!先生!」
『あっはっは、だからボクは別に大したことはしていないって。じゃあ二人とも、お大事にね』
言い終えた医師が踵を返して病室を後にする様を、頭を下げて見送る。
351 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/17(月) 20:42:10.57
ID:ogjtM/8Oo 黒子「よかったですの……これで休暇中も勝さんと過ごせそうですわね」
医師の言葉を聞いた黒子が安堵の息を漏らす。
五条「ククク……確かにオレも気がかりでしたからね……」
黒子「あら、気がかりでしたのはわたくし?それとも遊ぶ事ですか?」
五条「……オマエに決まっているでしょう……」
黒子「……相変わらず不意打ちには定評がありますのね」
五条「これは不意打ちでは無いと思うのですが……」
微笑み、ベッドの横の椅子に座る黒子の頭へと手を伸ばしわしゃわしゃと撫でる。
まるで猫の頭を撫でた時の様に、んーと声を上げて彼女が気持ち良さそうな表情を浮かべた。
美琴「まったく……本当に仲良いのね、あんた達」
呟いた美琴が、眼前に小さな紙袋を差し出してきたので受け取り、中身を確認する。
美琴「あ、大したモンじゃないんだけどさ。あんたには…… その……今回随分色々世話かけちゃったし?」
五条「……お気遣いなど無用だというのに……」
美琴「良いから黙って受け取っときなさいって!!」
そんなやり取りをしていると、そわそわとした様子で壁の時計を眺める上条の姿が視界に入った。
こちらの視線に気付いた上条と目線が合う。
その口元がパクパクと動き、こちらに何かの意図を伝えようとしていた。
五条(……?)
お・お・お・お・あ・ば・い?
その唇の動きから、意を察してみようとするがお行が連続し過ぎている。
これでは読むに読めない。
一体何を伝えようとしているのd『五条さん!!気が付いたんですね!!』
唐突に病室に響いた声に、上条が右手を額に当て、首を横に振った。
今度はその唇の動きを読み取れる。
間違いない。上条は今"あちゃー"と呟いていた。
病室に居た全員の視線が、一口に注がれる。
柵川中学校の制服に身を包み、真っ黒な髪に色とりどりの花飾りをつけた風紀委員の少女、初春飾利の姿がそこにあった。
352 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01 /17(月) 20:46:02.69
ID:ogjtM/8Oo その右手には、彼女の髪飾りと同様、カラフルな花の束。
初春「あれ……?白井さん?」
黒子「初春……?」
初春「あ、ちょっと待ってて下さい。今お花替えますから」
そのままつかつかと病室の中に入り込み、窓際の花瓶を持ち上げる初春。
……あの花を見舞ってくれたのは彼女だったのか。
今回の件では随分世話と心配をかけてしまった。
改めて礼を言わなければならない。
何かベッド横に座っている黒子の方から妙な威圧感を感じるが、やましい所は何も無いし筋は筋だ。
程なくして、花瓶を持った初春が戻ってきて、窓際に再度ソレを飾った。
黒子「どうして初春がここに居ますの?というか、勝さんが入院したのをご存知ですの?」
初春「そちらの上条さんから伺ったんです。前に常盤台の学園祭の時に少しお話して、五条さんの先輩だっていう事で連絡先も交換していましたので」
上条「え……!?あ、ああ。うん。そうだ。そういうことなんだ」
黒子「……そうでしたの」
はあ、と黒子がため息を吐く。
対照的に、何故か隣のベッドの脇からバチバチと火花が散る様な音が聞こえるが、いくらなんでも病院内ではマズイのではなかろうか。
彼女の良識を信じる事しか出来ない自分が歯がゆい。
初春「私が花が好きって言うことを覚えててくれた上条さんから、"病室が殺風景だから花を届けて欲しい(キリッ"って連絡を頂いてたんで、こうして花を届けに来てたんですよ」
上条「なっ……!!?くっ……ああ!!そうだ!!そうだとも!!そういう事なんだぜぇぇぇええ!!」
初春が楽しそうな笑顔を浮かべ、黒子もあらあらでしたら言ってくれればご一緒しましたのに等と苦笑を浮かべている。
反比例して、隣のベッド側の空気が何か大変な事になっている。
353 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/17(月) 20:48:13.35
ID:ogjtM/8Oo 反比例して、隣のベッド側の空気が何か大変な事になっている。
────人は感電した時、あばばばばといった声を発するのか。
──── また一つ、勉強になった。
初春「じゃあ私はこれで戻りますね!白井さんも、あんまり仕事サボり過ぎないで下さいよー!」
そのまま初春が右手を掲げ、病室を後にする。
病室から姿を消す直前、自分に向けて軽くウインクしたのは、一体どういった意味合いなのだろうか。
そんな事を考えていると、自分が大切な事を忘れていたのに気がついて咄嗟に言葉が口を突く。
五条「お姉さま……そういえば、"アイツ" は、"アレ"はどうなりましたか!?」
満面の笑みを浮かべたまま上条の布団に手を添えていた美琴が一瞬ビクっと背を伸ばし、すぐにまじめな表情でこちらに目線を投げてきた。
美琴「……!そう言えば、まだ話してなかったわね……あの晩、あれからの事なんだけど……」
彼女が話し始めると、コンコンと病室のドアがノックされた。
……間の悪い来客だ。
言葉を遮られた美琴も、むすっとした表情で入り口へと目線を投げている。
上条「……どーぞー!!」
上条が声を上げると、音も立てずに入り口のドアが開かれた。
『クカカカカ……おジャマしまァす、ってかァ?』
予想だにしなかった来訪者に、黒子を除く全員の表情が同時に凍りついたのは、言うまでも無い。
──────to be continued──────
355 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/17(月) 20:54:10.95 ID:b41hE0/lo
乙!
サッカーでもしに来たのか?ww356 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/17(月) 20:55:38.94
ID:ogjtM/8Oo 以上、本日投下分となります
ご支援を頂いております皆様、関係各位の皆様、本日もありがとうございました
また昨晩お待たせしました皆様には、重ねてお詫び申し上げます
病院内でのドタバタに思った以上に時間を割きそうな気配がします
遅筆もありますので、早いところ展開を回せたらなー等と考えながら筆を執っております
それでは、またお時間がございましたらお付き合い頂ければ幸いです
354 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/17(月) 20:54:07.11 ID:qm2sC3Kao
おおおおあばい って何て言おうとしてたんだ?
最後は「やばい」か?362 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/17(月) 21:16:23.89 ID:LzTGT/yA0
そろそろやばい かと思ったんだが363 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/17(月) 21:17:19.13 ID:qm2sC3Kao
>>362
おお! 多分それだ!364 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/17(月) 21:21:44.12 ID:1GOTyk8do
初春が来るから「そろそろやばい」と言う意味だったのか365 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/17(月) 21:25:54.41 ID:qm2sC3Kao
初春は五条さんが気掛かりで何度か見舞いに来ていたんだな
だから上条さんは初春が来る時間帯を把握していた
それで「そろそろやばい」か
そして初春が黒子に気を遣ったせいで、上条さんが不幸になる、とww366 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/17(月) 21:29:26.15 ID:b41hE0/lo
なるほど
上条さんは初春とメアド交換したというだけでビリビリされたのか?ww372 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/18(火) 00:28:22.93 ID:6v2XAt7x0
すまねえ五条さん…誘惑に負け、ファミレスでついハンバーグ食っちまった…
めっさ美味しかったれす
428 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/23(日) 00:56:30.21
ID:AdYByZwOo 女性と言われても疑わしくはない程に細く華奢な体つき。
透き通る白さを持つ肌と、同様の白さを湛える頭髪。
そしてその獰猛性を表するかの如く、爛々と赤く輝く瞳。
ドアを開けて病室に足を踏み入れて来たのは、学園都市第一位の超能力者、一方通行だった。
五条・上条・美琴「」
黒子「あらあら、お二人のお知り合いの方ですの?」
一方通行「……なンだ、鳩が豆鉄砲食らったみたいなツラァしやがって」
上条「い……医者……!?いや、アンチスキルを!」
美琴「コインコイン……」
五条「コートっ……!!コートとスパイクはどこですかっ!?黒子!早くっ!!えぇいシグm」
一方通行「あのなァ……別にドンパチやりに来たワケじゃねェンだけどよォ」
予想だにしなかった侵入者が気だるそうにため息を吐き、自身の腹の上にどさりとビニール袋を置いた。
ゴツゴツとした感触を確かめ、その中身を確認する。
五条「缶コーヒー……?ですか……?」
一方通行「見舞いと礼みたいなもンだから取っとけ」
美琴「見舞い……?お礼……?アンタ、何企んでるの?」
眉間に皺を寄せた美琴が、声のトーンを落とし一方通行に声を投げる。
一方通行「あァ?オレが用があンのはこの小僧とそこの三下なンだよ。うるせェンでその他大勢は黙ってて貰えますかァ?自殺志願ならまた今度相手してやるからよォ……クカカカカカ……」
美琴「なッ……!?」
黒子「殺しますの?」
上条「落ち着け!?落ち着け御坂!?ほら、白井もソレしまえ!?ここ病院だからなっ!?怪我してる人とか一杯居るからなっ!?」
431 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/23(日) 00:58:55.98
ID:AdYByZwOo バチバチと放電の音を発する美琴を一瞥した赤い瞳が、上条を見据える。
一方通行「まずはそこの三下に礼だ。オマエが救急呼んでなかったら、オレも今頃こんなにピンピンしてなかったらしいぜェ!?」
上条「そっか……まぁ、お前だけ放置ってのも、何か後味悪いしな」
五条「……猿芝居は結構です。本題を伺いましょうか」
眉間に皺を寄せながら道化の様に振舞う男に言葉を吐くと、赤い瞳が今度は自身を捉えた。
一方通行「クカカカカカ……そンなに愉快なツラしてんじゃねェよ小僧……オマエのお陰でこっちゃあ晴れて暇人生活に逆戻りしちまってなァ」
五条「……!?」
慌てて美琴へと視線を送る。
視線がぶつかった美琴が、険しい表情のまま首を立てに振り口を開いた。
美琴「……昨日づけで実験は凍結。無能力者(レベル0)に撃退されて実験の内容を乱したソイツの可能性を、研究者連中が疑問視したみたいね」
一方通行「そンでもってオレの無敵化プランもおじゃンになっちまったってワケだ」
再び一方通行に目線を戻すと、苦虫を噛み潰した様な表情でこちらを見据えていた。
……ドンパチする気は無いと言っていたが、危機的な状況に違いは無い。
万一今すぐに暴れられたら、シグマゾーンを再度使える確証も無いこの場で撃退できる可能性は非常に薄い。
下手をすれば、病室の中に無残な死体が四つ転がるスプラッターな展開まっしぐらだ。
一方通行「でよォ……」
五条「!?」
432 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/23(日) 01:01:16.09
ID:AdYByZwOo ゆらり、と一方通行の身体が動く。
咄嗟に身構えようと試みるが、生憎と自身はベッドの上。
体勢を整えようにも、時間が掛かりすぎる。
背筋を冷や汗が伝うと同時に、一方通行の口が開いた。
一方通行「……サッカーってのは面白ェんだろォな?」
五条「……は?」
見回す余裕は無かったものの、きっとその場に居合わせた誰もが同じ表情をしていたに違いない。
一方通行「何度も言わすンじゃねェよ。だからサッカーってのは面白ェンだろ?」
苛立たしげに一方通行が言葉を続ける。
一方通行「オレの知ってるサッカーとは随分違うみてェだけど、オマエが使ったあの狼やらペンギンやら宇宙空間ってのも、全部サッカーなンだろ?……面白そうじゃねェか。観測も出来ない現象なンて、今までに無かったからなァ!!あァ面白そうだなァ!!クカカカカカカカカカ!!」
五条「……いや…… その……アレは通常のサッカーとは若干異なっているのですが……」
一方通行「……なンだ、そォなのかよ」
自身の発言を聞くなり、一気に膨張したテンションで高笑いを上げていた一方通行が、ガックリと肩を落とした。
……その様からは、殺気らしいものが一切感じられない。
どうやら、本当にドンパチする気は無い様だ。
先のお姉さまの例を考えると、自身に害していない一般人を手に掛けるつもりは無いのだろうか。
五条「ですが……」
一方通行「あァ?」
五条「……これだけは保障できます……」
一方通行から目線を外し、窓際の花瓶を眺めた。
飾られたばかりの色とりどりの花が、薄く開けられた窓から吹き入ってくる風に微かに揺れている。
五条「楽しいものですよ、サッカーは……」
────────────
433 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 01:03:43.86 ID:u7bp5Evpo
ベクトル操作をサッカーに取り込んだら酷いことになるぞwwwwww434 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/23(日) 01:04:01.41
ID:AdYByZwOo 上条「…で」
美琴「何で」
黒子「こうなってますの?」
三人が苦笑を浮かべながら見据える先では、二人の少年が押し問答を繰り広げている。
一方通行「……つうと相手の身体が当たったらその場で爆破しちまやァ良いワケだな?」
五条「……ダイレクトにはマズイですね……マントルを掘り出してぶつける程度ならば全然問題はありませんが……」
一方通行「ンじゃあ自転のベクトル変換してスローインってなァどォだ?」
五条「……ふむ……二、三人巻き込んでしまえばオウンゴール扱いになりそうですね……これは盲点でした……流石は第一位……やはりオマエは有望そうだ……」
一方通行「……良いね良いねェ、堂々とやりたい放題ってワケだなァ……」
五条「……クックック……どうです?楽しそうでしょう……」
一方通行「クカカカ……」
五条「クックックック……」
一方通行「クカキキクケクキカカクケキコケコケカー!!」
五条「アーッハッハッハッハッハッハ!!」
美琴「どう考えてもサッカーの話してないわよねアレ……」
上条「てゆーか、あの二人が揃って高笑いしてるとテロ組織の会談風景って言われても違和感無いぞ……」
黒子「あら、ご無礼な事仰らないで下さいませ」
事実この二人は、各々半端なテロリスト等造作でも無い程の武力を持っているなど、傍目から見て一体誰が理解出来ようか。
一方通行「……ってちょっと待て小僧ォ」
五条「……?どうされましたか?」
435 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 01:05:16.53 ID:/20+xaIDo
まさしく超次元サッカーだな436 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/23(日) 01:07:45.04
ID:AdYByZwOo 一方通行「サッカーってなァ最低でも十一人でやるスポーツなンだろ?」
五条「えぇ」
一方通行「面子はどうするつもりなンだよ?」
五条「……」
五条の顔がくるりと横を向き、メガネ越しの瞳が上条側のベッドに集まっていた三人を捉える。
その様を見た三人の身体が、一瞬ビクリと跳ねた。
三人を一瞥した五条が再度正面を見据え、ため息を吐いて肩を落とす。
五条「……あと六人ですか……」
上条「おおおおおい!!待て!ちょっと待て!!入ってるのか!?俺達もそのサッカーらしい血生臭い何かの参加メンバーに加えられてるのかッ!!??」
一方通行「当たり前だろォが三下ァ。あ、拒否権無ェからな。拒否ったらこの場で暴れンぞ。もっかいまぐれパンチ試してみるかァ?」
美琴「ちょっ……!!ジョーダンじゃないわよ!!アタシまだあんたの事許したワケじゃないのよっ!?」
一方通行「あァ?怖ェのかお嬢様?おーおー、第三位っても大した事ねェもンだなァ。そンなンだから乳の一つも」
美琴「やってやろうじゃない!えぇ、やってやるわよ!!せいぜい背後からのパスに気を付けなさいね」
不幸だーと咆哮する上条と、バチバチと放電を始める美琴。
二人の様子を眺め、クカカカカと笑い声を上げている一方通行。
その脇の椅子にに腰を下ろしていた黒子が、苦笑を浮かべたまま掌を左右に振っている。
黒子「わたくしはちょっと……風紀委員も忙しいですし……」
438 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/23(日) 01:10:20.21
ID:AdYByZwOo 五条「黒子」
断りの言葉を吐こうとした黒子を遮り、五条が彼女の名を呼んだ。
五条「……オレは、オマエが欲しいのです (チームの面子的な意味で)」
黒子「……ほッ……だっ……駄目ですわ勝さん!!病室ですの!!皆が見ている前ですの!!欲しいだなんてそんなッ」
五条「……駄目ですか?」
黒子「うぅ……そんな目で見ないで下さい……」
五条「……黒子……」
黒子「……っ!わかりました!わかりましたわよ!!」
顔を真っ赤に染め上げた黒子が、五条の瞳を見据えたまま大声で言葉を続ける。
黒子「皆様……少しでもご良心がございましたら、この黒子めに恥をかかせないで下さいませ……!!ご退出をお願いしm「ククク……これで残りは六人と……」へっ……?」
上条「ステイルと神裂はどうだ?あいつらインデックスの件で変に恩義感じてるみたいだし、貸し借り無しにするのには調度良い機会だろ」
五条「……!!そうですね、"そっち側"の人間に助力を頼むのもアリでしょうか……」
ごっ……ごっ…… ごっ……
五条「アウレオルス……は連絡が取れれば良いのですが、果たして人目に触れる行動を採れるものかどうか……」
上条「姫神の能力じゃサッカーには向かないだろうしなぁ……」
五条「インデックスと初春は……監督向けですかね……あの二人の観察眼と情報収集能力があれば、相当な采配が出来るでしょう……」
ごっ……ごっ……ごっ……
一方通行「なァ、何してンだソレ」
美琴「……いつもの病気だから、あんまり気にしないであげて」
黒子「うふふふふふふふふ……バカバカ!!黒子のバカっ!!」
それから暫くの間病室には、わいわいと人選を進める談義の声と、床に額を打ち付ける音が木霊していた。
────────────
440 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/23(日) 01:12:42.73
ID:AdYByZwOo 五条「……では面子が集まって対戦相手が見つかり次第、オレの方から連絡をします」
一方通行「おォ、早いトコ頼むぜェ」
別れの挨拶も無く自身のオーダーを告げた少年が、踵を返して病室の入り口へと歩を進める。
こつこつと足音を響かせて彼がドアの前に立つと、触れても居ないのに音を立ててドアが開いた。
一方通行「あン?」
否、開かれた。
次いで、廊下側に立ってドアを開いた人物の姿が一方通行の視界に入る。
ピンク色のブランド服に身を包んだ、茶色いロングヘアーの少女。
その脇に、ビニール袋を掲げたベレー帽の少女が隠れる様に寄り添っている。
一方通行「……どけよ」
『あぁ?テメエがどけよ』
441 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01 /23(日) 01:14:18.73
ID:AdYByZwOo 『ちょッ……!!麦野!!マズイって!!コイツ第一位じゃん!!』
入り口の異変を察知したのだろうか、部屋の中に居た四人の視線が同時に入り口へと注がれた。
四人の瞳に映ったのは、部屋を出ようとしている一方通行。
そしてその一方通行の背中越しに見える、学園都市第四位"原子崩し"麦野沈理の姿と、彼女に付き添う金髪碧眼の少女、フレンダの姿。
麦野「ッッ……!!」
フレンダの言葉を聞いた麦野が、咄嗟に一歩横に身体をずらす。
一方通行「……ご苦労さン」
皮肉めいた笑みを浮かべて、その脇を一方通行が通り抜けていった。
再びコツコツという足音が、徐々に病室から遠ざかっていく。
その背中があろう方向に目線を投げる来訪者の少女達と、きょとんとした顔をしている上条と黒子。
そして二人とは対照的に、一気に険しい表情になる五条と美琴。
麦野「……大量殺人鬼が、こんな所で何してんのよ」
遠くなったその背に向かい忌々しげに呟いた麦野の視線が、病室の中に向けられた。
麦野「入るわよ」
フレンダ「結局ノックしないでドア開けたのに、今頃言っても遅いって訳よ……」
二度目の思わぬ来訪者の姿に、病室の空気が一気に凍りつく。
先の一方通行とは異なり純粋に暗部に所属している人間が放つ特有の威圧感が、一気に部屋中を満たした様な錯覚を覚えた五条が深くため息を吐いた。
五条(…… 来客の多い一日です……)
部屋に踏み入れて来る彼女から目線を離し、何の気無しに壁の時計を眺める。
彼が目を覚ましてから未だ二時間も経過していない事実を、短い針が音も無く刻み付けていた。
──────to be continued──────
446 :
五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/23(日) 01:18:34.37
ID:AdYByZwOo 以上、本日投下分となります
ご支援を頂きました皆様、関係各位の皆様、本日もありがとうございました
正味皆様の暖かいご支援に、何度目頭がやられかけた事かわかりません
ようやく若干ながら筆を執れる週末になりましたので、書き進めさせて頂こうかと思います
急な私事が入らなければ明晩再度投下を行わせて頂きます
お時間がございましたら、またお付き合い頂ければ幸いです
442 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 01:15:57.13 ID:u7bp5Evpo
麦野とフレンダにもフラグ立ってることを知ったら、また黒子が壊れるぞ443 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 01:16:46.66 ID:aHgT9yxAO
修羅場ですな445 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 01:18:32.13 ID:qDsNSFzZ0
もう皆でサッカーすればいいよ447 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 01:20:57.50 ID:goQQlsTho
まあ正妻は黒子だから大丈夫だ、安心していい454 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 02:26:57.78 ID:nidZRl+DO
黒子も気苦労が絶えんなw455 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 02:34:01.44 ID:+zY21XRAO
恐るべし学園都市超次元五条さんサッカークラブ(仮)...
いやでもなんか嬉しくて目から砂鉄が.......459 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 03:06:39.13 ID:QWYDUDyQ0
まさかの展開すぎるだろwwwwww
今度はイナイレよりでサッカーやんのかね次→
五条「ククク… ここが学園都市ですか」その30
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