ダンテ「学園都市か」【MISSION 34】

2012-04-22 (日) 09:01  禁書目録SS   11コメント  
前→ダンテ「学園都市か」【MISSION 33】
まとめ→ダンテ「学園都市か」 まとめ





1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/21(土) 14:00:14.92 ID:MvGhN54no

デビルメイクライ(+ベヨネッタ)」シリーズと「とある魔術の禁書目録」のクロスです。

○大まかな流れ

本編 対魔帝編

外伝 対アリウス&ロリルシア編

上条覚醒編

上条修業編

勃発・瓦解編

準備と休息編

デュマーリ島編

学園都市編(デュマーリ島編の裏パート)

創世と終焉編(三章構成)←今ここの第一章中盤(スレ建て時)

ラストエピローグ



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/01/21(土) 15:54:52.08 ID:at4kGd8ro

スレ建て乙です。前スレ>>1000でごっつふいたwwwwwwww



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/01/21(土) 18:26:52.15 ID:654NvuDRo

スレ建て乙乙乙。
前スレ>>1000ひでぇwwwwww今までスタイリッシュだったのにwwwwww



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/01/22(日) 02:45:02.17 ID:FfkHJoXDO

VIPにスレが立ってからもうすぐ2年だ、すげえな>>1



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/23(月) 01:36:31.00 ID:Q+LCdqD2o

―――

堰を切ったかのごとき無数の悪魔の侵入。
その衝撃は、テメンニグルの塔の最下層にして心臓部、礼典室にまで届いていた。

そこは直径50mはあろうかという広い円形の広間。
硬質な壁は仄かに碧さを湛え、高い天蓋からは恐ろしげな彫像の数々が下がり。

床のほぼ全面を覆うは、はめ込まれた一枚の巨大な円形台座。

表面には放射線状に走る溝や文様が刻まれており、
隙間から漏れる淡い白き光が広間全体を下から不気味に照らしあげていた。

五和「…………」

振動はさほど強くなかったものの、独特の重い息苦しさはかなりのもの。
槍を握り締める五和が跳ね上がるようにして天蓋を見上げ、
次いでダンテとレディもゆっくりと上へと目を向けた。

二人は、この円形台座の床中央にはめ込まれている『器』を挟み向かい合って立っていた。
そのダンテの斜め後ろに五和はおり、
そして彼女達三者の周りをせわしなく巡っている巨馬、ゲリュオン。

この興奮した魔馬のけたたましい蹄の音が響く中、
三者はそのまま、塵が舞い落ちてくる天蓋をしばらく見上げていた。

五和「今のは……?!」

ダンテ「悪魔か。かなりの量みたいだな」



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/23(月) 01:41:46.16 ID:Q+LCdqD2o

五和「この塔から外に出始めたんですか?」

ルドラ『否、きゃつらはこの塔の住人ではない。何者かが、この塔を触媒として魔界から召喚したとみえる』

「さあな」と肩を竦めたダンテに代わりすばやく答える彼の背の魔剣。

五和「…………」

その瞬間、五和は見てしまった。
ダンテ越しに見えるレディの顔、その眉間が小さく引きつったのを。
まるで、いいや、確実に思い当たる節があるという反応だ。

ルドラ『この塔を基点として能力者が展開した外殻上に、人間界にも侵入しておるようだ』

そんなレディの表情を読み取ってか、それとも気にもしていないのか。
その両方ともとれる調子で、そこでダンテが両手を軽く広げてこともなげに一言。

ダンテ「―――だとよ」

五和の方へも横顔を向け発した。
無論、それが『投げやり』な相槌ではないことを五和もわかっていた。

余計な説明は全て省き、「どうする?」なんて結論を問うてすらもいない。
この一言に篭められている意味はこれだけ、「―――ということでそれぞれやることをやれ」、だ。

五和「……」

今の状況と話を前にして、己の現在の立場にも大きな変化が生じたのを五和は認識した。

上条当麻と聞いて飛び込んだ魔塔だが、ここに身を置く『理由』が『それだけ』ではなくなったのだ。

天の侵略と抗う学園都市に横から侵入しつつある悪魔、己は今その流入の『基点』にいる。
この壮大な流れの転換点の真っ只中、その中心点にいるのだから。

これもまた皮肉であろう。
上条当麻を追って至った立場は―――その優先順位から、彼の追跡という項目を下げざるを得ないものだった。



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/23(月) 01:46:46.75 ID:Q+LCdqD2o

その自覚によっての衝撃と様々な感情が渦巻く傍ら、
徹底的に鍛えられた戦士としての『頭』は、機械の様に冷静に状況を分析していく。

五和「……」

誰が悪魔を召喚しているかは、いまや五和にも容易に推測できた。
ここまでの道中、ダンテとレディの話の中心にあったアーカムと言う男でまず間違いないと。

そしてこの男がレディの『悪夢』―――『父親』であることも。


またその件について当のレディには、
部外者が『協力者』という名目で踏み篭める隙は一切無かった。

無言のままそそくさと装備を整え始めるレディ、
一見するとそっけなく事務的な挙動だが、醸す空気の質は強烈そのもの。
体に触れようとすると手先が切れてしまうかと思えるくらいに、研ぎ澄まされた殺意。

声にせずとも、それらがレディの意志を明確に代弁していたのである。
『これは何人にも邪魔はさせない、これは己だけの仕事だ』、と。

五和「…………」

何をするべきかはひとまずとして、
この悪魔出現の原因とレディが取り組むという点を学園都市の者達に伝え、それから今後の行動を検討するべきであろう。
そう考えた五和は槍を撫でて、早速ステイル宛てに通信魔術を起動させたが。

五和「…………?」

交信はできなかった。
術式自体は起動するのだが、回線が繋がらなかったのだ。

すると彼女が怪訝な表情を浮べたのも束の間、
レディが顔も向けずに声だけを放ってきた。

レディ「この階層は普通の術式じゃ通らないわよ。外界と交信したいならさっきダンテと合流した回廊まで戻らなきゃ」



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/23(月) 01:48:30.30 ID:Q+LCdqD2o

五和「―――……」

来た道を戻ればよい。
レディから告げられたことは『それだけ』、至極単純なこと。
ただ五和にとっては、単純ではあっても―――容易なことではない。

入り組んだ廊下、橋、地底湖、ここに来るまでにも大量の悪魔達と遭遇したのだ。
来る際はダンテとレディの前に屍が積みあがっていくだけであったが、
五和だけとなるととてもそうはいかない。

するとその時、そんな彼女の頭を過ぎった懸念を察したのか。

ダンテ「ゲリュオン。少し小さくなれ」

パチンと指を鳴らしては魔馬を呼び、ダンテがそう命じた。

魔馬は声にする以上に主の意識とリンクしてるのであろう、
一声で承諾するようにいななくと、その巨体をみるみる縮小させ、
一般的な乗用馬と同じ程度の大きさへと変じていった。

ダンテ「乗っていけ」

ルドラ『うむ。悪魔が方々から湧き出しておるしな』

そしてゲリュオンの尻を叩き、五和の方へと進ませるダンテ。
魔馬は軽く跳ねるようにして彼女の傍へつき、鼻息荒く首を大きく振った。

あたかも『さっさと乗れ』と告げているかのように。



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/23(月) 01:50:22.23 ID:Q+LCdqD2o

五和「―――……ッ!」

何事も経験と、乗馬の心得自体は少しばかりはあるも、
魔馬に乗ったことなどはもちろんあるわけがない。
それが神たる大悪魔となれば尚更である。

ダンテの厚意なのだから心配することはないと頭でわかってはいても、
五和は思わず怖気づき一歩下がってしまった。

ダンテ「心配すんな。ちっとばかり暴れたがりだがお嬢ちゃんを食いはしねえさ」

ルドラ『ダンテを主と仰ぐ者に、人間に危害を加える奴はおらん』

五和「ほ、ほんとですか?!ほんとうですね?!」

無論そんなことはわかってはいるも、彼女は己に言い聞かせるためにそう返しながら、
恐る恐る魔馬のたてがみに手を伸ばして。
そして意を決して、逞しいその首に腕をかけて勢いをつけて飛び乗った。

乗り心地は、昔に乗った訓練馬とさして変わらぬもの。
否、それ以上にきわめて乗り易かった。

この魔馬の力による作用なのであろう、
鐙どころか鞍すら無いにも関わらず完璧に安定しており。

五和「……っと、と」

手綱など無くとも意識するだけで自由に、いいや、明確に『意識するよりも前』に的確に動くのだ。
五和は少しその場で魔馬を足踏みさせて、この不思議な感覚を馴染ませていった。



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/23(月) 01:52:21.60 ID:Q+LCdqD2o

五和「―――だ、大丈夫です!ありがとうございます!」

大悪魔が同伴となれば、
まず同じく大悪魔が現われでもしない限り道中に心配はないか。
しばらく慣らしたのち、五和は門の方へと向けて駆け―――。

五和「じゃあ行ってきます―――って、あのその前にちょっと良いですか?!」

―――出したのも一瞬、3m程進んだころでゲリュオンを急停止させ、
ダンテに振り向きこう声を飛ばした。

五和「上条さんは上にいるんですよね?!」

これもまた情報の確認のためだ。
ここに来るまでの道中で聞いた話を頭の中で確認しつつ彼女がそう問うと、
ダンテは肯か否かもわからぬ仕草で肩を窄めて。

ダンテ「上にいる、って奴が言ってただけだ。本当にこの『塔の上』にいるかはわからねえ」

五和「でもこの塔は門となり目的の場へと繋げる、つまり……もし塔の上にいなくても、
   この門としての機能で上条さんがいるところにも繋がる、という解釈でいいんですね?」

ダンテ「そうだ」

これまた表面上言葉は肯定と受け取れるも、
その調子や表情はどちらか判断がつきにくいもの。

ただ、次の問いの返答は声も仕草も明確なものであった。


五和「……この塔が起動した場合、門の入り口はどこになるんです?」


ただその解釈には、いささか齟齬が生じていたかもしれないが。

彼女の問いに対してダンテは両手の指で真下、
『床』を真っ直ぐに指差して明確にこう告げた。


ダンテ「『ここ』だ」



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/23(月) 01:55:19.42 ID:Q+LCdqD2o

結局、この解釈の齟齬について彼女が気付くのはしばらく後になってからだった。
彼女はそのままの意味、つまりは『この地下深くの礼典室』に門が開くと受け取ったのだ。

そうして一通り情報を確認したのち、五和はそこで一呼吸置いて。

五和「それと……」

もう一つの話を切り出した。
聞きたいことではなく、『頼みたい』あることについてだ。

手を広げて先を促すダンテを一瞥して、五和はふと腰の背面に手を回して。
黒い大きな拳銃を引き抜いた。

ダンテ「……」

あのダンテから上条へと贈られた銃を。

五和「…………」

彼女はその手にある拳銃を見て数秒、切なく名残惜しげな色を瞳に湛えて。
そして躊躇いながらも―――パッと面を挙げて、ダンテの方へと放り投げた。


五和「これを―――」


ダンテ「―――いいのか?お嬢ちゃん?」


すかさずキャッチし、人差し指に引っ掛けてそう聞き返すダンテ。


五和「……私なんかよりも、ダンテさんが持っていてくれた方が確かですので」



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/23(月) 01:58:45.86 ID:Q+LCdqD2o

『そういう話じゃなくてだな』、と。

五和の返しを聞いたダンテの表情や仕草には、そんな風に言いたげな色が滲んでいた。
もちろん、五和もそんな彼の声なき問い返しははっきりと受け取っていた。
だがそれに対しては答えずに。

彼女はそこでまた数秒、唇を甘く噛んで黙したのち。


五和「どうかそれを…………ダンテさんの手で上条さんに。お願いします」


身の底から声を絞り出してそう告げた。
そして馬上で小さく礼をしては、魔馬に声をかけて足でその腹を叩き。

礼典質の大きな門を蹴り開け、駆け出でていった。

その柔らかな背中には、頑なな気持ちが色濃く滲んでいた。
決して振り返るもんかと。

そんな彼女の消えゆく後姿を、ダンテは涼しげな笑みを浮べながら見送ったところ。

レディ「意地悪ね」

五和が消えて数秒後、ぼそりと呟く、装備を整えていたレディ。
その調子は厳しい緊張に満ちてはいるも、
普段どおりの皮肉染みた声色も混ざっているか。

レディ「あの子が戻ってくる前に起動させるつもりでしょ」

対してダンテは上条の銃をくるくると回しながら、すっとぼけた調子で肩を竦めた。

ダンテ「嘘は何一ついってねえぜ」

そう、確かに嘘は一つも言っていない。
起動して門が開くのも、ダンテが指差した『床の上』だ。

ただし。
この礼典室の床、全面にはめ込まれた台座は、
塔が起動すれば最上層まで昇るということは教えてはいなかったが。

それに―――。

ダンテ「まあ、そのあたりがどうであれ」

ダンテは悟っていた。
少なくとも、彼女はもう『上に行くこと』に執着してはいないであろうと。


ダンテ「お嬢ちゃんの方がなんとなく『そのつもり』だっただろ。あれは」


ダンテはそうレディに返した。
上条の拳銃を見せるように振りながら。



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/23(月) 02:00:40.80 ID:Q+LCdqD2o

レディ「へえ」

そんな彼の表情を、ようやく顔を挙げて見たレディはここでぼそりと。

レディ「ダンテでも少しはわかるんだ。ああいう複雑な『乙女心』も」

にやりと声無く笑い返すダンテ。

レディ「じゃあ尚更馬鹿ね。それを少しでも自分のために使えたら、もっと女関係をマシなものにできてたのに」

次いでその笑みは少し乾いたものへ。

ダンテは数度「参った」と喉を鳴らしたのち、
上条の拳銃を腰のベルトに差し込んでこう話を切り替えた。

ダンテ「ところでレディ。お前にいくらツケがあったっけ」

彼女はすでに身支度も終えていた。
ロケットランチャーのベルトの端を引っ張りながら背負いなおしつつ、
この麗しいデビルハンターはまたもや毒を効かせて。

レディ「あらら珍しい。そっちからその話をだすなんて。明日は魔界の住人がみな手を繋いでるかもしれないわ」

そんな言葉をダンテは普段どおり流しながら、
ふとコートのポケットをまさぐり。


ダンテ「―――この際だ。冥土の渡し賃くらいは奢ってやる」


取り出した一枚のコインを、レディに向け指で弾いた。



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/23(月) 02:04:29.82 ID:Q+LCdqD2o

レディ「…………」

それは磨り減りに磨り減った、くすんだ1セント硬貨だった。
彼女は掌の上のその小さなコインを一目しては、あからさまに眉を顰めて。

レディ「……ちょっと冗談キツすぎない?縁起悪すぎるわよ」

ダンテ「お前のじゃねえさ。『親父』さん宛てだ」

レディ「ああ……そういうこと……」

『親父』。
その単語で、少し彼女の声が重く濁るも。

ダンテ「『帰り』の駄賃くらいは奢ってやるよってな」

変わらぬダンテの調子か、
それともそんな彼と正反対にここまで硬化している己が滑稽になったのか、
彼女は普段通りの冷笑を仄かに浮べて。

レディ「アホらしい。奢りって言える額面でもないでしょうに」

硬貨を軽く上に弾きあげては、くるりと踵を返して。

レディ「こんぐらいで貸し作った気になられるのも鬱陶しいから」


彼に背を向けて。


レディ「あとで返金させてもらうわよ」


落ちてきた硬貨を掴みとっては門の方へと足早に歩を進め、
そのまま礼典室から去っていった。

『父を狩る』、そんな困難に向かっていく親友の背を、五和の時とは違いダンテは見送りはしなかった。
彼女が去るのと同時に彼もまた一瞥もせずに背を向けたのだ。


まるで後を託して―――背中合わせにするように。


ちなみに。
この時の1セントは結局、レディからダンテに返金されることはなかった。

―――



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/23(月) 02:05:38.88 ID:Q+LCdqD2o

短いですが今日はここまでです。
次は火曜に。



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/01/23(月) 12:50:11.01 ID:ZCKwTBQto

乙です。なんだ、最近のフラグのバーゲンセールはなんだ。



28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:10:54.90 ID:IEJOpem1o

―――

ステイル『来たぞ!数は120!場所は第四学区の―――!』

窓のないビルそばの本陣にて、ステイルは悪魔の流入への対応に追われていた。

立体映像の地図上に次々に表示されていく情報をもとに、
各隊へと通信魔術を用い指示を飛ばしていく。

いまや学園都市の方々に悪魔が出現し、要所に配置されていた隊のみならず、
建宮、アニェーゼ、騎士隊長の遊撃隊も早々からフル稼働であった。
ただその侵入の勢いの割には、学園都市の被害は今のところは微少なものであったが。

このような現象は以前の魔帝争乱の際も見られた。
悪魔達はまず一目散に『武装した敵』に向かうのである。

これまた魔界の存在特有の本能であろう、
彼らは『戦いの熱気』という蜜の誘惑にはとにかく従順なのだ。
以前の魔帝争乱時も、悪魔達はシェルター下の大勢の『餌』には見向きもせず、
一目散に学園都市の駆動鎧部隊に群がり、次にはイギリス隊に集中。

悪魔にとっては単なる『食事』よりも『戦闘』が優先なのである。
また下等悪魔は基本的に知能も低いため、尚更その本能に強く従う傾向にある。

そして現在もまた、そのような例に漏れてはいなかった。

学園都市の防衛側は、方々に散る悪魔達を長く追跡する必要もない、
悪魔達の方から彼らへと群がってくるのである。

餌が詰まっているシェルターではなく、その地上を守っている戦士達が狙いなのだから。



29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:13:53.52 ID:IEJOpem1o

ただし、戦況が厳しいのは変わり無かった。

本来この防衛線は、一方通行・風斬その他の手をすり抜けてきた天使達を迎え撃つものだ。
事態の悪化も予測して、それなりの数にも対応できるようにしていたのだが、
それでも―――この悪魔の大軍ほどの数は見積もってはいなかった。

既に現時点で許容を超えかけていた。

主戦力である重装のフォルトゥナ騎士達が、鬼神の如き戦いで悪魔の屍を積み上げてはいるも、
前述の通り、定点配置した隊も遊撃隊も全てが悪魔の対処に追われているのだ。

このまま下等悪魔どころか高等悪魔の数も増えたら、
重装のフォルトゥナ騎士ですらも対処が難しくなってくるのは明白。


さらに恐らく―――いや、いつか『確実』に大悪魔も現れる。


神裂を介して伝わってくる情報を受けて、ステイルは確信した。
この悪魔達はただ魔界からやってきた無法者ではない、十強の影響下にある『軍』なのだ。

ステイル『……ッ』

時間を経れば必ずこの軍を率いる『将』共が現れる。
そう認識して思い出すのは、現に目にしたアスタロトの一派。
アグニに聞くところによると、かの恐怖大公の下には100柱を越える数の大悪魔が仕えていたとのことだ。

そんな強大な戦力を有していても『十』強として内戦が膠着するのならば、
他の勢力も同等の戦力を有していると考えるのが妥当だ。

アスタロトの臣下100柱はダンテによって『ほぼ皆殺し』となったらしいが、
ここにはダンテはいないし、もし彼がいても、この界にはそれほどの戦いを支える『強度』などあるわけがない。



30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:15:26.22 ID:IEJOpem1o

そもそも100柱なんて数でなくとも、数体でも出現されてしまったらこちら側は追い詰められてしまうだろう。
大悪魔に対抗しうる戦力は全て虚数学区上で天界勢に釘付け。

もうすぐやって来るイフリートと神裂ならある程度は対処できるも、それも『最初』だけだ。

これまた魔界の存在の性質上、神裂とイフリートが先陣の大悪魔を倒せば、
その力と戦いに魅せられて、更なる強者が次々と挑戦してくるのは明白。
そこまでの規模になった段階では、ダンテなどがやってきても、
敵の殲滅と同時に学園都市のみならず人間界に甚大な被害を残す結果になる。

ステイル『…………』

それらの災厄を免れるためのには、
学園都市、そして人間界をこれ以上『主戦場』にしてはならない。

そしてそれを成し得る手段はたった一つ。


―――滝壺という能力者の到着だ。


彼女がこの街に到着して虚数学区を直接支配下においてしまえば、
虚数学区の穴は全て塞がり、天界勢に対して一切隙間のない完全なる防壁となる。

更にたったいま海原達が行った『簡易分析』によると、
彼女の力で虚数学区を『引き伸ばし』、魔塔の界層の隔離断絶も『恐らく可能』とのこと。

これぞ唯一の手段。
彼女が到着さえすれば状況は一変する可能性がきわめて高いのだ。

ただ、そんな彼女の到着は1時間以上も先の予定であったが。



31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:16:59.17 ID:IEJOpem1o

そう『時間』というどうしようもない障壁を前に、彼が表情を曇らせていたところ。

ステイル『……来たか』

ようやくここで待ちに待った『主』の到着だった。

インデックスと現れ、心配しながらもその場をイフリートに任せて『彼女』がこちらに歩いてくるのを、
意識共有しているステイルはリアルタイムで『見』。


神裂「―――ステイル。あなたに任せます。私にも指示を」


次いで己が瞳と耳でも直接その存在を捉えた。

ステイル『特には無いよ。君自身の裁量で行動してくれ。君の意向に沿うように全隊の直接指揮は僕が行う』

彼は傍に降り立った神裂を一瞥して、
情報もまた共有しているからね、と軽く自身の額を指差しつつそう返した。

神裂「わかりました」

ステイル『おっと、お待ちを我が「主」』

とそうしたのも束の間、ふとステイルは大げさにへりくだっては彼女を呼び止めて。
立体映像の地図上のある光点を指差してこう続けた。


ステイル『まずは「彼」と合流なさった方がよろしいのでは?
     合流した場合は、「彼」への指揮権もあなたに「返還」いたしますが』

神裂「……」



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:18:17.67 ID:IEJOpem1o

彼が指していた光点。
それが何なのかは、ステイルと情報共有している神裂も知っていた。
『己の副官』が指揮する隊である。


神裂「―――了解しました。我が『使い魔』よ」


小さく頷いてみせて、ステイルの調子に合わせて言葉を返す神裂。
そしてすかさず踵を返し、
一気に跳躍してその場へと向かおうとしたところ―――ふと彼女は動きをとめて。

神裂「さっきの件ですが……」

背中越しにステイルへと声を向けた。

ステイル『……』

『さっきの件』、その言葉が何を指しているかは、当然リンクしているステイルは『知っている』。
神裂がここで意に留めたのは、滝壺が到着するまでの時間についてだ。

ステイル『……なるほど』

そしてまた、彼女がこの瞬間に思いついたある策も同時に『知る』こととなる。
その内容は滝壺の到着までの時間を一気に解決するものであった。

これぞまさに救いの一手か。
精神共有している二人は、それぞれの頭でこの策の確実性を確認しては、
すかさず通信魔術を起動して。


神裂「―――あのう、一つ手を貸していただきたいことがあるのですが、よろしいですか?」


ステイル『―――海原、土御門達の現在の座標をここに映せるか?』


この策の実現のため、それぞれの関係者へと声を向けた。



33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:20:17.76 ID:IEJOpem1o

神裂「―――本当ですか?!可能なんですね?!―――はい!ではお願いします!!彼らの座標は―――!」

事はスムーズかつ素早く運んだ。
神裂の通信先の相手は快諾し、
その策の実行者としてすぐさま行動を開始してくれるということだ。

そうして自身達の作業を一つ速やかに済ませて、主と使い魔は互いに頷き合ったその時。

五和『―――ステイルさん!聞えますか?!』

そんな一拍の間をさながら狙っていたかのように、
タイミングよく五和の声が滑り込んできた。

神裂「―――聞えていますよ、五和」

五和『ッぷップリエステス!!ご無事で何よりです!!』

神裂「ええ、あなたも」

これは不意打ちであったであろう。
返って来たのがステイルではなく神裂の声で、
五和の驚きは音声のみでもはっきり感じ取れるものだった。

ただそれも一瞬の間だけ。
彼女はすぐに切り替えては戦士としての姿勢に戻り、
ステイルも交えて報告と情報確認を簡潔に行った。


この悪魔の大量召喚はやはりテメンニグルの塔が基点であること、
その首謀者はアーカムという男であること、
そして―――彼はレディの父であり、彼女が対処にあたるということを。



34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:21:31.00 ID:IEJOpem1o

ステイル『……』

ダンテが信頼して一任している以上、
そのレディの狩りにこちらが割り込む余地はまず無いか。
下手な支援は逆に邪魔になってしまうことが容易に考えられるため、

向こう側から何らかのアクションがない限り、こちらもダンテと同じく一先ず傍観しているべきであろう。

ルドラがテメンニグルの塔が基点だと証言した事については、
海原達が行った簡易分析の裏付けとなる好ましい報告だ。
滝壺による魔塔の界域隔離の成功確率が、これでまた確かに上昇した。

隔離さえしてしまえば全てこっちのもの、
魔塔の処理事態はレディやダンテ達にゆっくり任せれば良いだけでなのだ。

そして最後は五和について。

神裂「―――五和。しばらくそのまま、そちらでの情報収集を継続できますか?」

塔側のエージェントとしてこのまま向こうに置くことを、
神裂とステイルは共有意識下で同意した。


五和『もちろん大丈夫です!ダンテさんから馬をお借りしましたし!』



35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:22:53.95 ID:IEJOpem1o

ステイル『(馬?)』

神裂「……ではお願いします。それとこちらの判断を待てないような状況となった場合、迷わず自身の裁量で行動してください」

馬という言葉で一瞬ステイルと神裂は顔を見合わせるも、そのまま何事も無く続けた。
すると無視されたことにさながら憤り、より自己主張を強めたかのように。

五和「了解!プリエステス!」

通信終了間際の了解の声に重なって、
確かに馬の大きないななきが響いてきた。

ステイル『……馬、だな』

神裂「ええ、確かに馬ですね」

ステイル『……』

通信終了後、二人は真顔でそう示し合わせるも、
それ以上は特に追求しようとはせず。
ステイルは立体映像の地図へと向き直り。

神裂「では行ってきます」

ステイル「ああ」

神裂は一気に跳躍し、古い『副官』のもとへと向かっていった。

―――



36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:24:47.14 ID:IEJOpem1o

―――

土御門「―――それは本当か?今来るのか?」

学園都市に向かう米軍の超音速輸送機内にて土御門は、
通信魔術の相手、海原に食いつくように問い返した。
少しばかり耳を疑うことを聞いたのだ。

土御門「本当なんだな?可能なんだな?」

ただ悪い話なんかではなかった。
確かな返事に彼は小さく笑みを浮べて、
向かいの結標に頷いてみせてよい話であることを伝え。

土御門「今来るんだな?わかった」

海原との通信を簡潔に済ませると、
今度はすかさず耳元の通信機に指をあてて。

土御門「滝壺」

滝壺『はい』

土御門「全員に伝えろ。今『ここ』にある人物が来るが敵ではないと」

そうして、向かいの「どういうこと?」といった
表情を浮べている結標に向き直り、けたたましいエンジン音に負けぬようにこう声を張り上げた。


土御門「―――魔女だぜぃ!魔女が来る!」



37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:26:23.54 ID:IEJOpem1o

その直後だった。
このカーゴ内の空気が、エンジン音がけたたましく響いているにも関わらず、
一瞬しんと静まり返ったかのように思われたのは。

それは突如機内に現れた異物への緊張と警戒によるもの。

前もって土御門・滝壺から伝えられていたとはいえ、
みなの『スイッチ』が思わず入ってしまったのである。

ただ、それも仕方ないことか。

銀白のボディスーツを纏った異様な圧を醸す女が、
カーゴの天井に『逆さま』に立っているという光景を目にしてしまえば。

瞬き一つせず息を殺し、本能的に感覚を研ぎ澄ませる少年少女たち。
そんな彼らを、短い銀髪の女は天井から一通り『見上げて』。

土御門「…………」


「―――土御門か?」


機首側に立っていた彼を認めて、張りのある声色でそう問うてきた。

決して大声ではない、どちらかというと厳かで静かなものであったにも関わらず、
このエンジン音が響く中でもはっきりと聞える不思議な声だった。



38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:28:10.53 ID:IEJOpem1o

その問いかけに土御門が声無く頷いてみせると、
女はかかとを鳴らしながら優雅に天井を歩き進み、彼の上までやってきて。

ジャンヌ「ジャンヌだ」

土御門「魔女か?!」

ジャンヌ「そうだ。話は聞いているな?」

土御門「ああ!具体的な内容はまだだが!!」

簡潔に自己紹介と確認を済ませると女はふっと小さく笑い、
土御門に向けこう『具体的』に告げた。


ジャンヌ「この機体ごと―――学園都市近辺まで転送させる」


簡潔極まる説明に、
半ば苦笑しつつ頷く形で「なるほど」と示し返す土御門。

土御門「それで所要時間は?!」


ジャンヌ「―――機体に術式を適用するのに1分。移動に要するのは1秒だな」



39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:29:46.66 ID:IEJOpem1o

土御門「―――はっ」

これまたなんという数字か、予想を遥かに越える時間短縮っぷり。
あまりにも早すぎて、むしろこちら側が待たせぬよう準備を急がねばならないほどだ。

土御門「どういった形で転送する?!」

ジャンヌ「あくまで空間をつなげるだけだ。機体はこのまま飛ぶだけ、私が進路上の空間を改変する」

土御門「できれば機体からの直接降下は避けたいのだが、その辺りについてはどうだ?!」

ジャンヌ「そうだな、学園都市から約100kmの空域に飛ばすから、そこから減速して空港に降りれば良い」

土御門「わかった!では始めてくれ!!」

すると頷いた魔女は、術式適用の作業のためか光の円に沈んで『機外』に出ていった。

脇で話を聞いていた結標は瞬時に状況を把握し、
機長にも話をつけるために弾ける様にコックピットに向け駆け出していき。
土御門もすばやく通信機に指をあてて、滝壺のネットワーク越しに全隊員へと声を飛ばす。


土御門「聞け!一分後に第23学区へのアプローチを開始する!」


土御門「着陸後はまず付近の安全を確保!滝壺隊は俺と「窓のないビル」へと向かう!他はそのまま待機しろ!」


そうした彼の声によって、みな声も漏らさずに一斉に準備を開始する。
装備類がしっかり留まっているか、
ベルトは締まっているか、と手早くチェックしていく。



40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:31:36.49 ID:IEJOpem1o

次いで土御門は個別回線に切り替えた。

土御門「レールガン、お前は待機部隊を保持しろ」

御坂『……了解』

返って来た御坂の声はどことなく張り詰めていたがあったが、
その理由は容易に想像できるものだ。
特にここで指摘することもせずに御坂との回線も閉じて、
今度はちょうどコックピットから戻ってきた結標に向けて。

土御門「話は?!」

結標「ついた!!大丈夫!!」

土御門の向かいの席に座ってベルトを締めながら、
彼女は土御門にならい、通信回線を使わずに声を張り上げて答えた。

土御門「よし!降りたらすぐ俺と滝壺隊を窓のないビルに飛ばせ!お前も一緒にな!」

結標「私がお守りする『あの子』は?!」

佐天涙子のことだ。
一瞬土御門は、結標の力で彼女をシェルター内に放り込むことも考えたが、
それではそもそも連れて来た意味が無い。

佐天だってこの舞台上の役者の一人、
彼女の処遇は彼女自身に決めさせるべきであろう。

土御門「とりあえず一緒に連れて来い!学園都市の地上じゃ今はあそこが一番安全らしいからな!」

結標「了解!!」



41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:34:29.25 ID:IEJOpem1o

と、その時。

あのジャンヌの1分という見積もりは、相当な余裕をもったものであったのだろう、
魔女は30秒もしない内にまた天井に現れた。

ジャンヌ「準備が整った。いけるぞ」

それを聞いて土御門は自らの座席に飛び込むようにして着き、
手早くベルトを付けて声を返した。

土御門「OK!始めてくれ!」

再び光の円を通ってすうっと機外に抜けていく魔女。

皆は一様に、それぞれの緊張と集中の色を見せていた。
手を握ったり開けたり、大きく深呼吸する者もいれば、目を閉じて静かに佇んだりなども。

土御門「さぁて―――お待ちかねの凱旋だぜぃ!!」

そんな土御門の言葉に反して、少年少女達の様子はどう見ても帰還の色ではなく、
むしろこれから戦地へと出撃するものであったか。

当然、そう見えてしまうのも間違ってはいない。
デュマーリ島における勝利を手にしての帰還であるのも事実であるが、
これから帰る地が、かれら少年少女達の唯一の『家』にして―――


土御門「行くぜぃ!!―――クソッタレ共!!敵は皆殺しだ!!」


―――天と魔が入り乱れる更なる『戦場』であるのもまた事実なのだから。

土御門の煽りに、皆が一斉に声を挙げた直後、
一度やや大きな衝撃が機体を揺らし。

一行は相模湾上空に到達した。


―――



42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:35:54.19 ID:IEJOpem1o

―――

学園都市の一画、闇夜に包まれる街中にて、
建宮が指揮する隊は今まさに悪魔の一群と激突していた。

彼らの数は25名。
対して悪魔達は、下等の者達とは言え100を有に越える数。

この隊に属す15名のフォルトゥナ騎士がその超重装甲に任せて、
戦車でひき潰していくかのように片っ端から悪魔達を屠っていくとはいえ、
やはりこの数の差では優勢とは言い難いもの。

数も数であるため、フォルトゥナ騎士達の手も全てには回らず。
前面に押し進むの騎士達の間を抜けた悪魔達が、
後列の天草式・アニェーゼ隊の者達へと飛び掛ってくるのだ。

この遊撃隊に属すのは天草式・アニェーゼ隊でも特に戦闘に秀でている者であるが、
それでも前列のフォルトゥナ騎士達に比べたらその対魔能力は微々たるもの。

フォルトゥナ騎士達の重装甲に傷一つ与えられない程度の攻撃でも、
彼らにとっては命取りの一撃になり得るのである。


建宮「ッ―――!」

前方の騎士たちの間を抜けてきた黒い猿のような悪魔―――ムシラが二体、
そのおぞましい牙と爪をむき出しにして、彼へと飛びかかってきた。



43:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:39:36.66 ID:IEJOpem1o

それを認識した建宮は小さくかつ短く息を吐き。
即座に前に踏み出してフランベルジェを横に一振り。

魔界魔術との混同で強化されている刃は、
まず真正面から向かってきていたムシラの体を上下に分離させた。

次いで彼はそのまま長剣の慣性に身を任せ、円を描くようにしながら―――

―――身を瞬時に低く落とし。

飛びかかってきた二体目のムシラが振るう腕の下を潜り、
すれ違いざまにその脇を斬りさばく。

こうして二体目もまたその体の上下を分断させ、瞬く間に見事に斬って捨てた建宮。

だが―――


「―――上だ!!」


脇の仲間からのこの声がなければ、
次の瞬間にはその体は肉塊となっていたであろう。

『上』、警告の声を受けて彼が咄嗟に執った行動は、横へ跳ねての回避。
そしてその行動は正解だった。



44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:41:47.87 ID:IEJOpem1o

アサルトが真上から飛びかかってきていたのだから。


このアサルトもまた下等悪魔に分類されるとはいえ、
その戦闘能力はムシラなどといった存在とは桁違い。

フォルトゥナ騎士にとってですら、その巨大な爪には集中して警戒せねば成らない代物。

ましてやこのアサルトの全身を使った真上からの飛びかかりなど、
建宮達が真っ向から受け止めてしまったら完全に押し負け、
次なる攻撃に一切対応できなくなってしまう。

建宮「―――ふッ」

一瞬前まで自身が立っていた路上が丸ごと叩き割られ、アスファルトの破片が飛び散っていく中、
彼はその欠片の向こうにアサルトの姿を認めて。

―――このような場合に重要なのは速度。
余裕を持って倒せる相手ではない時は、隙を目にしたら迷わず一気に畳み掛けるのだ。

回避のため飛び跳ねて地面に片手ついたのも束の間。
彼はそのルールに従い、一気に地面を踏み切り―――前に体を切り替えし。

飛びかかり攻撃を外したばかりという、アサルトの一瞬の隙目掛けて突進した。


建宮「―――ッ」

―――狙うは喉元。

半ば滑り込むように懐へと飛び込み。
力を限界まで注いだ刃を、鱗に覆われた喉に押し当てて―――勢いそのまま『すり抜けていく』。

そうしてアサルトが穿った穴の淵を転がり出でて、建宮が反対側へと抜けると、
その数秒ののち。

―――獣染みた咆哮と共に、そこに悪魔の大量の鮮血が溢れ散った。



45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:43:42.05 ID:IEJOpem1o

建宮「はッ!」

溜め込んでいた息を短く吐いて起き上がる彼、
その目が次に捉えたのは、このアサルトの最期の時。

天草式の仲間が建宮に続き、
悶えるアサルトの頭部を切り落として止めを刺したのだった。


そのように、アサルトとの一幕の戦いは建宮達の勝利で終ったも、
全く被害なくというわけでもなかった。

この不意打ちとして飛び込んできたアサルトは、
建宮との一瞬の攻防の間に、これまた凶暴な尾で後方にいたアニェーゼ隊の一人を打ち掃っていたのだ。

術式による防護のおかげか、幸い彼女は命は助かっていたものの。
両手前腕の骨を完全に砕かれ戦闘能力を喪失していた。

建宮「一人こっちに来てくれ!」

傍に駆け寄り彼女の応急処置を手早く行う傍ら、
彼は前列の騎士を一人呼び。

建宮「彼女を『本陣』に連れて行ってもらえるか?!」


そのようにこの負傷者を送り出して、
再び正面に向き直っては、騎士達の隙間を抜けてくる悪魔を迎え撃った。



46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:46:17.04 ID:IEJOpem1o

休む暇など無かった。

この一団だけではなく、また新たな悪魔の群れがこの戦いの熱に寄せられて集まって来、
悪魔の数はますます増えていく。

それもイギリスで戦った人造悪魔とは違う、生粋の悪魔達の軍勢。
まるで魔界の大気をそのまま引き連れてきているかのように、
辺りの空気の質が急速に魔で淀んでいく。

周囲の世界そのものがこちらに牙を突き立ててくるかのごとき居心地。

まさしく魔帝争乱時と同じ空気、同じ強烈な圧迫感だ。

建宮「(こいつは―――ヤバイのよな)」

本能が、鍛え上げられた戦士としての直感が、この高濃度の『危機』に反応する。
置かれている状況は魔帝争乱時と酷似しつつあるも―――あの時と比べればこちらの『戦力』が違う。

確かにフォルトゥナ騎士達の強さは凄まじい、だがそれでも。

ベオウルフを装備した上条、イフリートを装備したステイル、
そして―――神裂という戦力には並ばないのだ。


―――そんな建宮の懸念は早々に現実化した。

またしても新たな悪魔の一団が現れたのだ。
それも今度は建宮達を完全に包囲するべく―――彼らの真上に。



47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:47:16.03 ID:IEJOpem1o

建宮「―――」

飛びかかってきたムシラを斬り掃って見上げると。
目に映るは、怒涛の勢いで崩れ落ちてくる『黒い天蓋』。

その一粒一粒が悪魔。
数はこれまでの群れよりもずっと多く、恐らく1000近くはいるか。

退くには間に合わない、
そう瞬時に判断してすかさず声を張り上げる建宮。


建宮「―――防御円陣ッ!!防御円陣だ!!」

すると即座に天草式・アニェーゼ隊が彼の周りを囲み、
その外周をフォルトゥナ騎士が囲み、堅牢な円陣を敷いた。


ただどれだけ強固であろうと―――あの一団に立ち向かうにはきわめて困難に思えた。
なぜなら数という他にも―――ゴートリングといった高等悪魔がかなりの数混じっているのが見えたから。

―――と、その場にいた誰しもが今一度、ここが死地だと覚悟した時だった。

突然、その悪魔の一団を包み込むように、
空に格子状に細く鋭い筋が走り―――悪魔達をその塊ごと斬り裂いていったのは。


それは建宮他天草式の者達には見慣れた『技』であった。

ただしこの時、格子状を描いていたのは、
彼らの記憶にある『鋼糸』ではなく―――とんでもない力によって形成されていた『青白い光の筋』だったが。



48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:49:36.69 ID:IEJOpem1o

みなはしばらくその光景に唖然としていたが、
イギリスから来た者達は次いで更なる驚愕に包まれた。

特に天草式の者は。


建宮「――――――――――――ッ」


なにせ死んだとされ、遺体すら戻ってこなかった―――『主』が、僅か10mほど離れたところに立っていたのだから。
もちろん生きたまま。

厳かで鋭くも、弱き者や友にはこれ以上ない慈愛を見せる瞳。
姿勢正しく、清廉な品を纏う佇まいに。
結い上げられた艶やかな黒髪に、凛として整った顔立ち。

そして手にある―――長大な芸術的業物。


「―――――――――建宮、なんて顔をしているのですか」


この時の天草式の者達の顔は、それはそれはこの状況にそぐわない、
『腑抜けた』ものであったはずだ。


神裂「―――みっともない。私の副官ともあろう者が」


そう、こうして再会した主君―――小さく微笑む神裂火織に向けていた顔は。


―――



49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:51:36.33 ID:IEJOpem1o

―――

土御門達を乗せた機体はもう第23学区にアプローチ中、
あと1分も経たぬうちに彼らは学園都市の地を踏めるであろう。

ステイル『…………』

そうして彼らが学園都市の空域に入ると同時に、
滝壺が早速この街を覆うAIMの層に直接触れることが出来、早々にして虚数学区を全掌握。


なんとすぐさま、虚数学区上の穴を塞ぐことを成功させてしまった。


ステイル『…………』

だが、これほどの喜ばしい結果となったにもかかわらず、
ステイルの顔に笑みは無く、むしろ重く曇っていた。

虚数学区上の穴の封鎖の件とは逆に、その問題と双璧をなすテメンニグルの塔の隔離の件が、
今や『暗礁』に乗り上げて重大な決断を必要としていたからだ。

虚数学区を安定化させていざこの魔塔の件にも取りかかったが。


滝壺の力をもってしても、かの魔塔の界層を正確に認識できないため、
完全に隔離することができなかったのだ。



50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:53:10.40 ID:IEJOpem1o

ただしその点の打開策を、滝壺はしっかりと導き出してくれた。

彼女はこう言った。

私をあの界層に連れて行ってくれたら、
向こう側から人間界を閉鎖する形で断絶できると。


つまり『自ら』がテメンニグルの塔に行けば、と。


―――ただ、だからといってそう簡単に送り出すわけにもいかないのもまた事実。

これはリスクが余りにも高すぎる。
虚数学区の顕現には滝壺の力も必要であり、
彼女がもし死んでしまえば―――能力が使えない状況に陥ってしまえば、虚数学区は一気に崩壊しかねない。

最悪の場合、学園都市は天魔両方に対して丸裸になってしまうのだ。

ステイル『……』

だが、とステイルは考える。
ここに召喚されているのは魔界十強の軍勢、
となればこのままではいずれ大悪魔共が現れる可能性も大。
バージルの力を受け継ぐ神裂が現れたことで、尚更それら強者達を刺激するであろう。

悪魔達の召喚の基点であるテメンニグルの塔を隔離しなければ、
これら神域の戦火が学園都市、さらに人間界各地に飛び火していく結果が容易に想像つく。

そうなれば最悪であり。


そして現状では―――滝壺をテメンニグルの塔に送り出すしか、それを確実に回避できる策は無いのだ。



51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/25(水) 02:56:06.22 ID:IEJOpem1o

確かに神裂含め戦力を彼女の守護に集中できるが、
それでも最前線に送り込むことは危険極まりない。

虚数学区とテメンニグルの塔間を隔離するまでには、さすがの滝壺も手は及ばない。


ならば天界の者達に、彼女の存在が『気付かれないこと』を祈るしかないのである。


滝壺が虚数学区の安定化の要であり、その顕現にも一躍買っているとなれば、
必ず天界側は彼女を最重要目標とし何が何でも排除しようとするはず。
同じく悪魔達もだ。


ステイル『―――はッ』

彼は「正気か」と、この策の決行を推す己に何度も自問する。
一歩間違えれば、一気に学園都市と人間界の敗北を決定付けてしまう博打だと。

最終的にこの決断に踏み切る勇気を与えたのは、
精神を共有している主からの「やりましょう」という声だった。

ステイル『土御門、降りたらまずはすぐこちらに来てくれ。作戦を具体化しよう』

決断した彼はすかさず通信魔術で土御門に声を飛ばし、次いで。


ステイル『―――五和、聞えるかい?』


早速この塔側のエージェントへと指令を放った。


五和『はい!何でしょう?!』


ステイル『至急、その塔内で出来るだけ防御に適した場所を探してくれないか?』


―――



66:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 02:38:23.91 ID:tLkFxn0yo

―――

『自身が愛した上条当麻』はもう『存在しない』。

彼の現在の状態の詳細を、『当人』の次に最も良く知っている小さな魔女、
インデックスは、その『絆』の向こうから垣間見える情報をもってそう結論付けた。

残酷な現実だった。

彼は竜の中に囚われているわけでも、
何らかの力で強引に融合状態を保たれているわけでもない。

『彼』は本来の状態へと『回復』したのだ。

二つに分かれていたこれまでが異常・不完全だったのであって、
こうして『元通り』なった今こそ正常な状態。

フィアンマと上条当麻というパーツをただ繋ぎ合わせたのではない、
この二つを一度完全に溶かして一つに鋳造し直したようなものだ。

フィアンマと上条当麻という二方を隔てる境界は消滅し、
一つの魂として完璧に安定した形を構築。

そうして出来上がった存在は、確かに『上条当麻』本人ではあったが。
『インデックスが愛した上条当麻』ではなくなっていた。


『彼』は『溶けて』無くなってしまっていたのだ。



67:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 02:40:54.30 ID:tLkFxn0yo

これではどうしようもない。
救うなんて考えはもはや無意味、『彼』はもういないのだから。
『彼』の現状を知れば知るほど、誰しもが『彼』を救い出すことなんで不可能だと絶望するであろう。

―――たが。

アンブラの叡智の全てを秘める彼女にとっては、そこまで知り尽くしてもなお『不可能』なんかではなかった。
彼女の頭の中には、『自身の愛した上条当麻』に再び触れるための手段が存在していた。

それは特にもったいぶるほどのものでもない、至ってシンプルなものだ。

アンブラの魔女の『強制召喚』の技を使うのである。

これは禁術でも秘儀でもない、
アンブラの者がまず一番最初に覚える召喚術。

対象の位置・認識さえ正確であれば、そこらの物置小屋に置いてあるガラクタから、
『使用可能な者がいない「大衆奥義」』と言われた『魔界の力場』の召喚術―――『クイーン=シバ』まで、

『いかなる物』でも『どこから』でも引き出すことが出来るという技術だ。

単純がゆえに、召喚対象によっては力の消費や負荷も誤魔化しきれないものになるが、
同じく単純がゆえに力と技量さえ伴えばどんな存在だろうと召喚できるのだ。


それこそ、あの竜から―――『インデックスと契約した部分だけ』を召喚することも。



68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 02:42:28.26 ID:tLkFxn0yo

神の一柱たる銀光の魔獣を前にしても、少女は一切気負いすることなく。


禁書「―――手伝ってほしいんだよ。とうまを『強制召喚』するのを」


当然のことのように、強く明確な声でそう声を放った。
この魔獣に捧げられた上条当麻の瞳を、一切の淀みもなく真っ直ぐに見つめ上げて。

助力を請う態度とはとても言い難い、むしろ有無を言わさず命じている風にも捉えられるか。

そんな不遜な物言いに彼女の背後のイフリート、
そして少し離れたところから作業の傍ら横目を向けていた海原に、一瞬緊張が走った。

彼女の態度にこの誇り高き魔獣が怒りを覚え、次の瞬間にはその拳を振り下ろすかもしれない、
鼻からベオウルフを信用できない彼らはそんな懸念を抱いたのだ。

それは杞憂に過ぎなかったが。

対するベオウルフの反応は、ゆっくりとインデックスと右腕を伸ばし。
彼女の胴ほどもあろうかという太い人差し指を、その胸元へと向けて。


ベオウルフ『さあ―――我と「契約」するがいい』


そう静かに促しただけだった。
彼女は無言のまま頷くと、その巨大な人差し指に左手を乗せた。



69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 02:44:25.04 ID:tLkFxn0yo

イフリートにも海原にも、この二者間の話の流れが全く掴めなかった。
それも当然であろう、彼らでなくとも、
当人以外が今の場だけを見てその真意を知ることは不可能である。


『話し合い』は、インデックスがここに『来る前』にすでに完了していたのだから。


彼女はここに来る前からすでにこの魔獣が快諾するのを知っていたし、その逆もまた然りだった。

上条がインデックス越しにローラの意識を垣間見たのと同じく、
ベオウルフもまた上条越しにインデックスの意識とある程度繋がっているのだ。

禁書「……」

そして今、彼女はその『一族』の繋がりを更に強固にするため、
このベオウルフと契約を結んだ。

あの竜の構成内における、
彼女と共にしてきた上条当麻とそれ部分の最も明確かつ確実な区別方法は、
『悪魔化したかどうか』である。

その部分を正確に認識し引き出すには、
自身と同じく上条当麻と魂のリンクを有し、かつ上条の『親』の位置に立つという、
魂の上位権限を有するベオウルフの影響力が必要不可欠だったのだ。

ぱきん、と響く乾いた音と共に光が明滅し、
契約の儀式は速やかに成された。

禁書「ありがとう……」

インデックスは大きな指に手を乗せたまま、魔獣を見上げて微笑んだ。
すると魔獣は「ふん」と喉を鳴らしては、
翼の一端で闇夜向こうのテメンニグルを指して。


ベオウルフ『早くゆけい。聞くところによるとかの魔塔は隔離されるらしいぞ』



70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 02:45:52.82 ID:tLkFxn0yo

そう、次に彼女はテメンニグルの塔に向かう必要があった。
実はもう一人契約をしなければならない者がいたのだ。

その人物の認識抜きにして、『あの上条当麻』の『全てのパーツ』を見出すことはできない。


禁書「―――うん!」


少し前までこのベオウルフの上位に位置し、
上条が悪魔化したのちも、彼の人格にとてもとても大きな影響を及ぼした人物。
彼の力がベオウルフによって育てられたのならば、
精神はこの人物の存在によって鍛えなおされたとしても過言ではない。


禁書「―――スフィンクス!」


彼女の声に、待っていたとばかりに肩から飛び降りた子猫は、
地に着く前に大きな白虎へと変じた。

インデックスはその背に飛び乗って。


禁書「あなたはここで待ってて!すぐ戻ってくるから!」

そう声を放つとベオウルフの返答も待たずに、
自ら浮き上がらせた白銀の魔方陣の中へと消えていった。



71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 02:49:42.96 ID:tLkFxn0yo

イフリート『ふむ……これはどのような風の吹き回しだ』

そうして彼女の姿が消えて数秒ののち、炎の魔人が口を開いた。
重く、尋問するかのごとく口調で。

対して銀光の魔獣は、イフリートに向けてかそれともインデックスに向けてかは定かではないも、
はっきりと嘲笑の色を浮べて。

ベオウルフ『人間どもの「情」は理解できぬ。理解したいとも思わぬ』

そう吐き捨てた。
そして少し思案気に喉を鳴らしたのち、「だが」と続けた。


ベオウルフ『あの小僧は我が名のもとにある子。そして我が子はあの小娘と契りを交わした』


イフリート『……』

銀光の魔獣はそれだけ言うと押し黙った。
それだけで充分だろう、言わんばかりにまた喉を鳴らして。
対してイフリートもまた、やや嘲笑した風ではあるも「なるほど」と鼻を鳴らした。


それは人間の情とはまた違う、どちらかといえば感情ではなく本能であろう、
魔界の存在にとっての血、魂、名、誓いの繋がりは、人間世界のそれとは比べ物にならない意味を有しているもの。

それゆえ人間のように誰かを想い、慕い、情を抱くことは無くとも。
知ある悪魔はその魔界のやり方で義を貫くこともあるのだ。

特にこのベオウルフのように、ただ武のみに生きてきた誇り高き存在ならば。

誇りを踏み砕いたスパーダへ向けられた強烈な執念と『同じよう』に、
その誇り高き武名のもとに結ばれた誓いには、きわめて強固な忠義が注がれるのである。

―――



72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 02:52:37.05 ID:tLkFxn0yo

―――

一方通行が『下界』から矢継ぎ早に送られてくる情報の精査を優先したこともあり結局、
天使達の『お家騒動』、その原因の具体的な話は有耶無耶になってしまった。


もっとも、ラファエルが返したあれだけの言葉でも、
原因は充分想像が付くものである。


そうして知るべき優先順位は低いこともあって、
一方通行はそれ以上この疑問については口にせず、
より優先順位の高い差し迫った問題について話を進めていった。

一方『―――第二の門は、まだ使えねェンだろ?』

不思議な『樹』の下で、その『恩恵』を受けて力を回復させながら、彼は深緑の天使にそう問うた。
虚数学区にて一柱が屠られ、形勢が不利になったにもかかわらず増援が送られてこない、
それを踏まえての質問だ。

ラファエル『形成途中に大きな力を有した者が無理に抜けると、門に大きな傷をつけてしまいます』

一方『つゥとカマエル他の「四匹」はその無理を押して降りてきたってわけか』

ラファエル『はい。彼らの突破で一時完全に使用できない状態にまで損傷したようです』

一方『次に使えるよォになるのは?そォだな、カマエル達のレベルが抜けられるよォになるのはいつだ?』


ラファエルはふむ、と一泊置いて答えた。


ラファエル『人間界の時間で言いますと、早ければもう1分、遅くとも5分以内には確実に』



73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 02:54:53.80 ID:tLkFxn0yo

一方『……そォか』

強化と莫大な支援を受けている今の滝壺でさえ、
魔塔と学園都市、虚数学区と学園都市という二つの境界の完全隔絶で手は一杯となり、

魔塔と虚数学区間にまではさすがに手が回らない。

虚数学区上の穴は完全に閉ざされたとはいえ、
悪魔という勢力の参戦、そして諸々の事情で滝壺がテメンニグルの塔に身を置かねばならなくなった以上、
可能ならばやはり天界側の行動を封じるにこした事は無いのである。

一方通行は瞬時に今後の己の行動を練り建てていく。

まずこちらがある程度回復次第、ラファエルの案内で第二の門に向かい、
一つ目と同じようにして蓋をしてしまう。

そしてさっさとここにまた退いて来て、
充分回復して万全に整えてからあの四元徳とやらに向かう。

一方『…………』

ここで重要になってくるのは、この恩恵による回復速度だ。
カマエル達のような存在が第二の門を抜けられるようになるまで早ければ1分もないのだが。

現在の回復速度だと、1分では完全な状態にまでは届かない。
だが門を塞ぐだけならば、7割8割程度の状態で向かっても問題は無い―――と。

そのように思考を巡らせて、何気なくこの樹からの『恩恵』に意識を向けたとき。

小さくかすかに、だが確かに。


『―――』


妙な『声』が聞えた。



74:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 02:59:20.70 ID:tLkFxn0yo

一方通行はふと顔をあげて。

一方『―――……あァ?なンか言ったか?』

すると天使は、その白亜の彫像の如き顔でもわかるほどに、
はっきりと不思議そうな表情を浮べて。

ラファエル『いえ。特に何も』

そう告げて、今度は次第に怪訝な表情に。
その顔を浮べたいのはこちらとばかりに、同じように眉を顰める一方通行。

するとその時。

『―――』

また聞えるかすかな声。

ラファエル『何か……ありましたか?』

一方通行の僅かな反応に気付いてだろう、そう問いかけてくるラファエル。

その物言いから、恐らくこの声は彼には聞えていないのであろうか、
だが一方通行には確かに聞えていた。

何を言っているのかまでは全く判別つかないも、
確実に誰かが『声』を発したのだ。


一方『……』

いや、こうしている今も『発され続けていた』。
それも複数―――大勢の声が、急流のように絶え間なく。



75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 03:02:54.51 ID:tLkFxn0yo

一度認識しだすと、途端にその存在対象への感覚・認識力が鋭敏化する。

こうして神の領域の力を手に入れた今はもとより、
彼の基盤となっているベクトル操作の能力自体が、もともとそんな働きを持っていたものだ。
(これもアレイスターに風に言わせれば、『力の認識』を短時間で得るにとても都合の良い性質か)

そんな『得意分野』であることもあって、彼はすぐに原因―――声の源を特定する。

一方通行ははっとしたように背を伸ばしては身をよじり、
背後すぐの樹へと半身振り返って。

そっと年季の入った皮へと手をあてがって。

一方『―――…………』

彼は己の知覚が正しかったことを確信した。


声は樹からの『恩恵』―――この身を癒す力から発せられていたのだから。


こうして源を正確に特定しても依然、何を喋っているのかはわからない、
いいや、正確に言えば『意味のある言葉を発していない』と判明した。

大勢の声はただただ喚いていたのだ。


あるものは滅茶苦茶に叫び、
あるものは何かを呪うかのようにぼそぼそと意味の無い声を連ね、

あるものは―――


一方『……』


―――泣き声のような音を。

そう、確かに意味を成した言葉は一つも無かったが。
みな一律してある系統の情感が滲んでいた。


―――物寂しげな『負の感情』である。



76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 03:04:30.96 ID:tLkFxn0yo

それらを聞きながら一方通行が思い出したのは、
ラファエルとの先ほどの話の中でふと悟ったあること。

あの時は、優先事項ではないためひとまず脇に置いていたが。

一方『……』

改めてその考えが今、一方通行の頭の中を占めていった。


この恩恵の癒しの力―――この声の源は――――――無数の『人間の魂』なんだと。


この時点でもはや一方通行にとっては、
この『恩恵』は『ただの癒し』としては見れなくなってしまった。


誰に向けることも無く声を発し続ける魂が、止め処なく身に浸み込んでいき。
耳を覆いたくなるくらいに、その声で内を満たしていく。


ラファエル『……あなたには聞えるのですね』

一方『―――……こィつらは……』

様々なことを脳裏を過ぎ、
思わず樹から手を離して―――立ち上がり離れようとした時、


ラファエル『―――みな亡くなっています』


彼をその場に押し留めるように、ラファエルが鋭い声を発して。
次いではっと身を引いて少し言い淀んでから静かにこう続けた。


ラファエル『どうか彼らを……せめて人界神のあなたの手のもとに………………』


深緑の天使の言葉はそこで口を閉ざし、後にはただただ沈黙を残した。



77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 03:07:36.02 ID:tLkFxn0yo

搾取する天の身でそこから先を言霊にする資格はないと思ったのか、
それとも最初から続ける気が無かったのかは定かではない。

だがこの天使が何をどう思い、
何を伝えたかったのはその彼の表情、佇まいで充分示されていた。

一方『………………』

一方通行は立ち上がろうとしてたその身を押し留めて。
より近くに、今度は樹と向かい合うようにして座り直し、
再びその硬い皮へと手をあてた。


確かにこのラファエルも含め、天には責任を問い、
その行いへ対して何らかのけじめをつけなければならないであろう。

だが一方通行は悟っていた。
今は天を裁く時でもなければ、それ以前に己には―――天を裁く資格も無いと。

また今更そんなことをしたところで、『彼ら』が再び日の光を浴びることはない。
ここに流れついた『彼ら』は、もう終ってしまった『物語』なのだから。

それに、と。
一方通行は『これ』を、己がやるべき一つの仕事だと認識していた。
アレイスターの言う『人間界の神』になった気などはしていない。

だがこれは力を持つ者としての―――声が聞える者としての義務だろうと。


救いを求める人間に、『生きている』か『死んでいる』かは関係ないのだ、と。


一方『…………』

時間が許す限りのあいだ彼らを受け入れていく中、一方通行はふと思った。

もしかすると―――この中には己が殺めた者達もいるのであろうか、と。

もしかすると―――この中には一万人の同じ顔をした少女達がいるのだろうか、と。



もしかすると―――あの『彼女』もここに―――



――――――この区別の付かない大勢の中にいるのであろうか、と。



一方『…………………………………………』


流れ落ちてくる無数の声は、この身の奥底へと沈むにつれて静かに消えていった。
まるで穏やかに眠りにつくかのように。


―――



78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 03:09:52.89 ID:tLkFxn0yo

―――

遥か古、この塔が作られた本来の目的で使われていた時代は、
魔女の血が捧げられていたのであろう。

レディの言葉通り、『巨大な力を有した人間の血』だけでテメンニグルの塔は起動した。

激しく振動したのち、
礼典室の床全面にはめ込まれている台座がそのまませり上がっていく。

この円の台座は、実は巨大な棒状の構造物の上辺である。

上にダンテを載せたまま、光り輝く螺旋が刻まれた『芯棒』が塔の中心を貫き昇り、
途中で七つの大鐘を乗せていき―――テメンニグルの塔の最上部へと到達する。


ダンテ「………………Humm」

案の定といったところか。
最上部には竜の姿は無かった。

もちろんそれでも問題は無い、この塔の機能で奴のもとへと向かうだけである。


虚数学区のものか、それとも学園都市のものか、
はたまたかつての日のものを忠実に再現しているのか。

吹き抜ける冷たい虚風にコートをなびかせながら、
ダンテはぶらりと端に歩き進んでいった。



79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 03:11:12.97 ID:tLkFxn0yo

ダンテ「…………中々の眺めだな」

闇夜に広がる街並み。
虚空から出現し雪崩落ちる悪魔達、そして―――戦う天使達と人間達。

そんな複数の界層を見渡せる眺望に、ダンテは小さく笑いながら呟いた。

遥か下からは、この起動によって、
崩れた塔の外殻が地面に激突する音が響いてきていた。


そうやって彼がしばらくその轟音に耳を傾け、
巻き添えになった人間がいないかどうか確認していると。

ルドラ『まずはどうするのだ?バージルのもとへ向かうのか?』


ダンテ「まあな。だがその前にもう『一仕事』ある」


ダンテは背の魔剣の柄を後頭部で、軽く小突いて声を返した。

するとその時、まるで示し合わせていたかのように―――『白虎』が塔の外壁を駆け上がってきて。
大きく跳ね飛び、ダンテの後方へと軽々と降り立った。

そしてその白銀の光を纏う虎の背から―――


禁書「―――ダンテ!」


―――小さな魔女が彼の名を。


ダンテ「よう―――お嬢ちゃん。お急ぎだな」



80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 03:12:59.61 ID:tLkFxn0yo

普段の調子のダンテを認めると、
インデックスはひらりと虎の背から降りては、一度大きく深呼吸し。

禁書「あの……一つお願いがあるんだよ」

緊張でもしているのか少し言い淀んだものの、
確かな声でそう単刀直入に話を切り出してきた。

対して不敵な笑みを浮べたまま、小さく喉を鳴らして先を促すダンテ。
彼女はそこでまた意を決するように深呼吸して、今度は言い淀む事も無くはっきりと声を放った。

禁書「私と魔女の契約を!とうまを引っ張り出すのにあなたの力が必要なの!」

するとダンテは一拍おいたのち可笑しそうに鼻で笑うと、
彼の反応に少し驚いた彼女に向けてこう返した。


ダンテ「そこまで気張らなくても良いぜ―――お嬢ちゃんの『依頼』は生きてるんだからな」


禁書「―――ほ、ほんとっ?!」


ダンテ「で、契約を結ぶには何をすれば良い? ちなみにお嬢ちゃんの年頃は趣味じゃねえから、
    ナニをするようなのはお断りしたいけどな」

禁書「ち、違うんだよ!そそそそんなことはしなくてもいいから―――っ!」

緊張感の無い思わぬダンテの返しに戸惑い顔を赤くしながらも、
彼女はその場で瞬時に術式を組み上げたのか。


魔方陣をいくつも腕輪のように出現させて、その左手を差し出してきた。


禁書「……あ、握手だけで充分なんだよ」



81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 03:14:53.95 ID:tLkFxn0yo

ダンテ「へえ、なるほど、身を捧げるのは一人だけか。貞節なのは良いことだ」

禁書「―――!」

そうお気楽に茶化しながら、
言葉に成らない抗議の表情を浮べているインデックスの手をダンテが掴むと。
ぱきりと乾いた音が響き、魔方陣が少し動いたのちに姿を消した。

どうやら契約が完了したのだ。
その証拠に―――


禁書「―――ッ……だ、ダンテ……」


恐らく頭の中を垣間見たのだろう、インデックスが表情を一変させていたのだから。

ダンテがこの争乱をどんな視点で見、何を考えているのか。
それを知った小さな魔女は大きく目を見開いて、唖然とした面持ちでダンテを見上げていた。

対して彼は普段どおりの調子で笑い。


ダンテ「心配するな。坊やの銃はちゃんと届けるさ」


そうこれまた軽薄な調子で口にして、
彼女の横をすれ違ってはこの最上層の中心点へと向かって歩んでいく。
そんな彼に向け、少女は思わず口を開きかけたも。


ダンテ「早く行きな―――『インデックス』」


その背中を見てインデックスはぎゅっと口を閉じ。
そして何も言わずに白虎の背に飛び乗ると、そのまま塔の端から飛び降りていった。


ダンテ「…………」

ダンテは顔色一つ変えぬまま黙って聞いていた。
柱に吊り下げられた七つの大鐘が奏でる、けたたましい不協和音を。

―――



82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 03:16:35.57 ID:tLkFxn0yo

―――

土御門「……なるほど」

ステイル『いけると思うか?』

土御門「どちらにせよそれしか方法が無いんだろう。だったらコレでいくしかない」

到着早々、いや、厳密には結標の能力で一足先に到着した土御門は、
(ちょうど今この瞬間に、機体は滑走路上で減速している最中であろう)
窓のないビルそばの本陣にてステイルと話を合わせていた。


例の計画―――滝壺をテメンニグルの塔に設置する件についてだ。


土御門「滝壺。しっかり頼むぞ」

彼の隣で、口をしっかりと結びながら頷き返す滝壺。
土御門に同行してきたのは彼女とその護衛チームである。

結標はある程度部隊の展開が完了次第、佐天を連れてここに来て、
人員の配置をステイルと決める予定だ。



83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 03:17:36.57 ID:tLkFxn0yo

土御門「―――よし。じゃあ早速行くか。滝壺、準備してくれ」

ぱん、と手を叩いた土御門は、そうして少し離れた路上に向かい、
待機していた滝壺の護衛チームも呼び。

その彼の隣に滝壺が並び立ち、一同は魔塔突入の位置についた。
ちなみに彼女の背後には浜面と絹旗が立っていた。

ステイル『向こうでは五和が待機してる。彼女と合流して、防御に適した場に向かってくれ』

土御門「OK」

ステイル『神裂と建宮隊をすぐに向かわせるし、可能ならば騎士隊長とアニェーゼの隊もだ』

そして最終確認を済ませて。

土御門「頼むぜぃ。戦力は多ければ多いほど良い。気付かれたら激戦必須だからな―――」


ステイル『―――ああ。天に気付かれないことを祈るばかりだ』


滝壺「みんないい? じゃあ上にあがるよ」

滝壺のその言葉の直後、
彼らの姿はすうっと背景に消えて無くなっていった。

魔塔の界域に昇ったのだ。

そうして土御門たちが消え去った後、
ステイルはふと闇夜の空を見上げて。


ステイル『頼むぞ…………気付かれないでくれ』


『祈る』ように呟いた。



84:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 03:20:34.63 ID:tLkFxn0yo

―――だが。


その祈りは届くことは無かった。
『竜』は『全て』を見ていたのだから。

『竜』にとっては、この展開は―――『面白い』ものではなかった。
ただその一方で、少しばかり刺激を与えるだけで一気に『面白くなる』とも。

そうして状況は、、ステイル達にとって最悪の方向へと転がっていく。


『竜』は協力者である四元徳に何もかもの情報を流したのだ。


滝壺という能力者が界域の隔離断絶を行っており―――その彼女がテメンニグルの塔にいると。

また彼女の能力は、打ち止めと言う幼い少女がいるからこそ成り立っているとも。


これが学園都市を守る人間側の『二つの弱点』であると。
このどちらかを排除してしまえば、一瞬にして虚数学区は崩壊するのだと。


そうして四元徳の命により、
第二の門がまたしても激しく損傷するのも厭わずに。


フォルティトゥード『我らが主神ジュベレウスの名の下に命じる。ゆけい―――』



セフィロトを守護する天使達の中でも特に強き―――『元人間』の戦士達が下界に放たれた。



フォルティトゥード『―――メタトロン。サンダルフォン』



―――彼女達を排除するために。


―――



85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/28(土) 03:21:18.34 ID:tLkFxn0yo

今日はここまでです。
次は月曜に。



86:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県):2012/01/28(土) 03:37:31.10 ID:bzJvrvAno


盛り上がってまいりました



87:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/01/28(土) 03:48:37.03 ID:s7J09bHDO

乙乙乙!
ダンテと契約したって事は今のインデックスの強さは凄いことになっているんじゃないか?主契約とか云々で



88:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/01/28(土) 08:00:56.98 ID:6a3hAiCwo

乙です。いい感じで進行してると思ったらこれの有様だよ!竜王マジ竜王。



97:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県):2012/01/29(日) 09:37:50.56 ID:x17hwPM8o

この二人とかやばいよ
てかやっぱ天界側なんだ



100:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 01:35:10.72 ID:e2mIhRIoo

―――

宙空から怒涛のごとく流れ落ちてくる大量の悪魔、
この突然の介入によって虚数学区上の戦いの様相は一変していた。

ちょうどその時の状況は五対四、名だたる天の一柱が欠けたことで形勢が人間側に傾き、
キャーリサ達がここぞとばかりに攻勢に出ようとしていたところだったのだが。

キャーリサ『―――邪魔くっせーなこの野郎共!!』

その攻勢転換も頓挫してしまった。

下等悪魔であれば、どれだけ数がいようと今のキャーリサ達にとっては直接的な敵ではないも、
きわめて厄介な障害物であることは変わりない。

群がってくる一団を一纏めに葬り去ることは出来るが、
そのたびに刃やら拳を振るわなければならず、
必然的に守勢に回ったカマエルら四柱への追い込みが手薄になるのだ。

天使達もまた雑魚の群れを薙ぎ払いながら、
一方で追うキャーリサ達とは対照的に、距離を開けようと下がって行く。

キャーリサ『チッ!来いよ!根性ねー連中だな!―――追え!!』

シェリー『―――はッ!』

キャーリサが一振りから放たれた光筋が、
モーセのように正面の悪魔の群れを割り裂き、その中へとすかさず飛び込むシェリー。

彼女が猛烈な勢いで目指すは、後退する天使達の殿であるハニエルだ。



101:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 01:38:27.35 ID:e2mIhRIoo

すかさず魔像の右腕に、
タルタルシアンの躯から得た力を集束させていくシェリー。

そうして勢いそのまま半ば体当たりぎみに、
背丈ほどの大槌を持った小柄な天使へ向けて拳を叩き込む。

シェリー『―――』

だが直後、拳の先に走った感触は明らかに防がれたものだった。
混沌とした戦場の中で迸る強烈な衝撃―――その向こうに彼女が捉えたのは、

こちらの渾身の一撃を―――その『細腕』の肘で受け止めていた小柄な天使だった。

本当にその体躯はアニェーゼよりも数センチ背が高いかという程度、
手足も華奢で、纏っている装具類もこじんまりしたもの。

だがそんな見かけでも、正真正銘の神の領域の存在。
所詮『大悪魔もどき』の魔像が放つ拳などものともしない、
とてつもない腕力と頑強度を誇っていた。

小柄な天使はそのまま受け止めているどころか、
一拍置いては、肘を伸ばす形でシェリーの巨腕を押し弾き。

シェリー『―――チッ!』

魔像もろとも彼女を後方に押し下げたのだ。
両者の間に生じた距離は10m程度か、
瞬間、シェリーは周辺にまた群がってきている悪魔達の存在を認識した。

となれば、ハニエルはまたこのどさくさに紛れて更に距離を開ける―――と、
彼女はこの天使の次の行動をそう判断しかけたが。


周囲の状況を認識した中でふと悟った。


ハニエルが次にとる行動はその『逆』だと。



102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 01:40:25.71 ID:e2mIhRIoo

もしシェリーが逆の立場だったのならば、彼女だってそうした。
彼女は今、己は一瞬の『仲間との連携から外れてしまった間』にいると気付いたのだ。

シェリーの背後には風斬が追って来ていたもまだまだ距離があり、
ハニエルにしてみれば軽く四回は大槌を打ち合わせられる余裕がある。

そして『五対四』であれば守勢なだけで―――『一対一』ならば。
ましてや敵が自身よりも明らかに『弱い』のならば、
この小柄な天使が攻勢に出るのは当然だった。

シェリー『―――ッ』

だん、とその細足に似合わぬ地響きを轟かせ、
一気に前へと踏み出してくるハニエル。

振り上げられた、同じく細いもう片腕には―――天に仇名す存在を容赦なく叩き潰す大槌。


ここで迷わずシェリーは判断した―――退くことを。

直後。
魔像が一瞬前までいた空間を、天の大槌が突き抜け、
既に瓦礫の更地となっていた大地を更に叩き沈めた。

咄嗟に後方に跳ね、この強烈な一撃を回避したシェリー、
だが彼女には息を吐き出す間も与えられはしない。

ハニエルは振り下ろしたのも束の間、
その衝撃が周囲空間に伝わっていくよりも速く―――

―――大槌を軽くあげ、そのまま『突き』攻撃を放ってきたのだ。



103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 01:43:33.83 ID:e2mIhRIoo

回避行動に移る猶予は無かった。

いや、そう言うとやや語弊があるか。
ハニエルの攻勢はパワフルで凄まじかったものの、
一方でシェリーもここである種の『しぶとい強さ』を発揮したのだ。

天使の大槌の突きを、彼女は交差させた巨腕で真っ向から受け。
そうする一方で足は踏ん張りはせず、逆に後方へ踏み切る。

シェリーはその強烈な突きの衝撃を利用して、後方に一気に跳んだのだ。

当然ハニエルは、間合いから離脱した相手を一瞬追おうとするも。

そこでようやくシェリーに風斬が追いついたのを認め、
この小柄な天使もまた的確な判断でさっと身を退いていった。

風斬『大丈夫ですか―――?』

シェリー『問題ないわ』

直で大槌を受けた魔像の右腕が、
もう一つ関節を増やしたようにひん曲がってはいたも、この程度はすぐに修復できる。

盾の様に前に立つ風斬の背後にて、彼女は即座にその腕を修復し、
そうしてまた悪魔を掻き分けながらの追い込みを再開。

風斬『―――少し状況が変わりました』

しようとしたのだがどうやら、
この風斬の様子や声によると天使の追い込みは一先ず中断か。



104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 01:44:50.18 ID:e2mIhRIoo

これ以上どう変わるのか、また変わったのか。
風斬の物言いからして手放しで喜べる方向ではないのは確かか。

シェリー『何があったの?』

彼女は半ば辟易としながらも問うが、
人工天使は彼女に背を向け真っ直ぐ正面を見据えたまま何も言わなかった。

そして代わりに返って来たのは。

ステイル『天界魔術による通信と、天使がいる界域での口頭の情報伝達は控えてくれ―――』

魔界魔術による意識内へのステイルの声。
そうまず前置きすると、彼は簡潔に状況説明の言葉を並べていった。

風斬とアグニは、その様子からすでにそれぞれの情報網で事情を知ったのだろう。

一方、魔界魔術を使用できないキャーリサとヴェントは、
今ここでは詳細を知る術がないか。

シェリーの傍に降り立った彼女達は、
人工天使・大悪魔とは対照的にやや腑に落ちないという表情を浮べていた。
おおかた風斬に後で説明するとでも言われたのだろうか。



105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 01:46:45.40 ID:e2mIhRIoo

ステイル『―――というわけでね。危険な賭けだが、これしか選択が無い』

シェリー『…………』

一通り素早く聞いたシェリーは、同意を篭めて沈黙を返した。
彼の言う通り極めて危険ではあるも、残念ながら今ところこれが最良の策だ。


―――と、彼女が心の中で頷いたちょうどその時。

この危険な『最良』の策が、『最悪』をも兼ね備えてしまった。
新しい局面になったと思ったのも束の間、状況はまた一転。
目まぐるしく変わっていく。

まず反応を示したのは―――風斬。

はっとしたように彼女は顔を上げ、ある一点をじっと見つめ始めた。
この虚数学区と一心同体とも言える風斬は、即座に『体内』に侵入してきた異物を検知したのだ。

そうして打ち止め、海原と介して。

ステイル『―――待て……ちょっと待て……これは―――』

ステイルにまで通じ。
そこでキャーリサが怪訝な表情を浮べながら、風斬と同じ先を見据えて。


キャーリサ『ちッ……援軍、か―――メタトロンとサンダルフォンだ。奴らはヤバイらしーぞ』


カーテナから情報を受け取り、
その侵入してきた『異物』の正体を口にした。



106:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 01:48:57.36 ID:e2mIhRIoo

シェリー『…………』

その数秒間の内にシェリーは、
魔界魔術の回線先から漂ってくる空気がみるみる凍り付いていくのを感じ取った。

そして高校制服姿に光剣・翼と頭上の輪という妙な格好の風斬、
その後姿からも同じ色が滲む。

風斬『―――「残念」ながら…………例の件は口にしてもいい状況になってしまったみたいです』

ヴェント『何があった?結局ここで説明できるのか?』

シェリー『いいえ―――まずはテメンニグルの塔に向かってからだ』

そうして一気に飛翔した風斬に続きヴェントも飛びあがり、
魔像は豪快に地を駆け抜けていき。

品などお構い無しに悪態付いて舌を鳴らすキャーリサ、
状況がどうなろうが変わらず「ぬん」と頼もしく覇気を放つアグニもまた続いた。

タイミング同じくして、彼らと併走するように四つの光体―――カマエル達もまた、
悪魔の群れを吹き飛ばしながら魔塔へと突き進んでいた。


そして両組が目指す魔塔、その遥か高空からは―――二つの光体が降下しつつあった。

―――



107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 01:50:38.26 ID:e2mIhRIoo

―――

ステイル『―――ッ』

これに見合う悪態など、少なくとも彼は知らなかった。
代わりに口角端から漏れ出すのは焔。

言葉に変換できなかった衝撃と憤りを熱として吐きながらも、
彼は必死に激情を抑えて思考を巡らせて行く。

滝壺が魔塔に入った直後のこの更なる天使の侵入。
キャーリサの言によると正体はかのメタトロンとサンダルフォン。
その進路は真っ直ぐテメンニグルの塔。
そして他四柱も守勢から一転、皆この魔塔へ進路変更。

物的証拠はない―――だが状況証拠で明白だった。

『そう』としか思えない。


原因はわからぬも―――滝壺の存在が瞬時に知られてしまったのだ。


ステイル『―――海原ァ!隔離完了までの時間は?!』

内では神裂に声を飛ばしつつ、
彼は声を張り上げて、ビル内にいる海原へと問うた。

滝壺の作業が完了するまでの時間は、と。
完全隔離が完了さえすれば、全ての主要戦力を彼女の防御に集中できるのだ。



108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 01:51:41.86 ID:e2mIhRIoo

海原『―――約2分です!!』


そこで返って来た答えは―――2分。

人間的感覚ならばごく短時間、
だが異界の神域の者達にすれば―――目的を成し得るに十分過ぎる時間。
そして守る側からすればさながら永遠の如き時間。


まさしく学園都市の命運が決定付けられる―――『魔の二分間』。


ステイル『―――ッ』

とその時。
ここで『あるもの』を目にして、ステイルの思考はついに一瞬停止してしまった。
それは立体地図上に出現したあるもの。

滝壺の侵入によって描写されつつあったテメンニグルの塔の界域、
その魔塔の『頂点』辺りに表示された―――


―――『Index Librorum Prohibitorum』という文字が振られていた光点。


海原『―――「禁書目録」が―――!!』

同じく気付いたのであろう、海原の張り上げられた声が聞えた時。
魔塔から降下中の『彼女』は、今にも別の『光点』に接触する寸前であった。

魔塔の真上から猛烈な勢いで降下してきていた内の一つ、


天使であることを示す白い輝きの―――『Sandalphon』と振られていた光点に。


そして刹那。
ステイルの意識内が文字通り真っ白にまっていたその瞬間。


『―――小僧はそこにいろ。「我ら」が向かう』


そんな彼を安心させるかのように確かに、
強く猛烈な『熱』を帯びた『父』の声が響いてきた。


―――



115:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:20:09.97 ID:LAoSMBcIo

―――

こればかりは不運だとしか言い様が無かった。

ダンテと契約を終えて、魔塔の頂点から飛び降り。
移動用のための魔方陣を出現させようとしていたその時―――彼女は気付いた。

真上、彼女からすれば『真後ろ』か。

はっと振り返ると―――僅か15mの宙に『彼』がいた。

一見するとその姿は、
古代地中海風のフルフェイスの兜に胴鎧を纏った人間にも見えた。
装具・衣の隙間から覗く肌が完全に人のものなのだ。

だが翼と光を灯す瞳、そして―――


禁書『―――ッ』


―――纏う力は、領域も質も人のものではなかった。

インデックスの『目』にはその目に見える姿以上の情報が見えていた。

その力は紛れも無く神の領域。
大悪魔に並べれば上位の存在に比する領域か。

更にそれだけではない。

彼が振り上げ引いている腕、そして両足には―――妙な力の塊が『絡まっていた』。

それも尋常ではない、
この強大な『天使』にとっても―――不釣合いではないかという位にまで莫大な。



116:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:22:31.26 ID:LAoSMBcIo

彼女の『目』はそれをはっきりと捉え、
今や封切られているアンブラの知識がそこを完璧に『説明』する。

この天使の名は―――サンダルフォン。

一般的にこの存在が語られる際は、兄弟とされてるメタトロンと同じく、
そのきわめて桁外れの『体の大きさ』が良く述べられる。

この通り肉体はやや大柄な成人男性程度ではあるも、
実はその伝承はあながち間違ってもいない。

『彼の体』が『とてつもなく巨大』という表現は、不完全な言い伝えが形を変えた比喩である。
その本当の正体は、彼と彼の兄にだけ許されたある『特権』。


彼女が今目にしている―――このサンダルフォンの手足に纏わりついていた力だ。


体がとてつもなく巨大、そう表現されてしまうのも不思議ではない。


この天使の身には―――『天界の一部』が『乗っている』のだから。


その『天の質量』が負荷された拳が、
偶然遭遇した宿敵の生き残り―――アンブラの小さな魔女に振り下ろされようとしていた。



117:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:25:16.30 ID:LAoSMBcIo

           OLPRT
禁書『―――「光を」!』


刹那、彼女はそうエノク語で唱えた。
するとそのすぐ脇に巨大な魔方陣が浮かび上がり。

出現するのは銀髪に巻かれた―――契約したばかりのベオウルフの巨腕。


それが光の中から猛烈な勢いで飛び出で、上空からのサンダルフォンと衝突。
金と銀の閃光が溢れ、強烈な光の爆轟が空間を歪めた。

あまりの衝撃に、
スフィンクスごと一気に党側へと吹き飛ばされていくインデックス。

ただ、あわや叩きつけられるかという勢いではあったが、
白虎の見事な姿勢制御で彼女達は塔の一部へと降り立った。

そこは崩れ割れた外殻の一画。

爪を立てて制動するスフィンクスの背の上にて、
まだ止まりきる前から彼女は例の天使の方を見上げた。


すると例の天使―――サンダルフォンは、翼を広げて彼女を真っ直ぐに見下ろしていた。

探りの一撃を叩き込んでの今は分析中であろうか。
その姿には、ベオウルフの拳と激突したにも関わらず消耗した形跡は微塵も無く。

禁書『―――ッはぁっ……はぁっ……』

対してインデックスは早くも息が上がっていた。



118:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:26:27.92 ID:LAoSMBcIo

力を取り戻しているベオウルフは今や大悪魔の中でも上位存在、
本来ならば、アンブラでも歴戦の最高位の幹部達でもないと個別契約できない相手。

そんな存在を実体召喚させるなど、
たったの一度きりで腕だけであってもインデックスの身には荷が重過ぎたのだ。

アンブラの魔女は、そもそも魔獣は『体』で召喚することを大前提にしている。
その方が直感的におこなえるために簡単、かつ精神への負荷がきわめて少ないからだ。

だがインデックスはそれが『できない』。
ベースとなった『妹』はそれら魔女の戦闘修練を受けてはいないため、
どうしても『頭』で全ての作業をやるしかない。


扱える力は多くとも、彼女自身の技術・力量が伴っていなかったのである。


しかも―――その命削る思いで放った今の一撃も効果は薄い。

いいや、それどころか彼女はあの瞬間、
はっきりと見てしまった。

振り下ろされたサンダルフォンの拳と激突する際、
ベオウルフの巨腕が―――歪に曲がるのを。

ただでさえ今のベオウルフと同格程度の身の上に『天の質量』のブースト。
そんなサンダルフォンの圧倒的な一撃は、その魔獣の拳を真っ向から砕いていたのだった。



119:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:28:37.55 ID:LAoSMBcIo

禁書『(―――戦ってはいけない!)』

まともに相手をできる存在ではない。
それは明白だった。

選択肢は一つ、移動用の魔方陣を組み離脱するのみだ。

彼女のサンダルフォンの認識が流れ込んだのか、
それとも彼が自身の本能でこの相手の脅威を悟ったのか、
ぞわりと毛が逆立つスフィンクス。

その跨る背をインデックスは叩くと。

禁書『(いくよ―――!)』

迷わずすぐに魔方陣の起動に取りかかった。


そして案の定、その様子を一目見ては、真っ直ぐに宙を切り裂いてくるサンダルフォン。


こうなることを彼女はわかっていた。
到底『足』で逃げれるような相手じゃないのは明らかであったため、
最初から魔方陣による離脱を敢行したのだ。

それしか選択肢が無かったのである。
そう、どちらが速いかもまた―――予想が付いていたとしても。

ただし、サンダルフォンの突進か彼女の離脱か、
どちらが速かったかの結果は明確に示されなかった。


その瞬間―――『二体』の大悪魔がその場に乱入してきたからだ。

まずインデックスの盾となるように降り立ったのは―――炎の魔人、イフリート。
そして魔人の出現に、一瞬驚きの色を浮べかけた天使を―――横っ腹から蹴り飛ばす―――ベオウルフ。



120:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:33:20.64 ID:LAoSMBcIo

先のお返しとばかりの不意の強烈な一撃によって、
サンダルフォンは遥か先へと吹っ飛ばされていった。
この界域にも溢れている『悪魔の雲』を貫き、遥か見えなくなってしまうまで。


禁書『―――ベオウルフ!』

『一蹴り』終えて、上の外殻にしがみ付いたベオウルフ。
やはり先の召喚の際か、その右腕の先が歪にひしゃげていた。

だが当の魔獣は特に気にしている風も無く、
右腕に注がれるインデックスの視線を目障りだとばかりに喉を鳴らした。

イフリート『ここは「我」に任せろ』

天使が吹っ飛んでいった方向を見据えながらそう告げる炎の魔人。

禁書『―――……』

インデックスはこれは自らに放たれた言葉だと思ったが、
直後にベオウルフの反応を見てそれが違っていたことを知った。
魔獣は意味深に鼻を鳴らしていた。
どことなく嘲笑しているかのような、皮肉めいたものだ。


イフリート『―――何をしておる。さっさとゆけ』


そんなベオウルフに対し、炎の魔人は今度は一際強い声を発して、
今度こそ上にしがみ付いている魔獣へと視線を向けた。
すると魔獣は一転、嘲笑染みた色を潜めて。

インデックスの傍へ地響きを轟かせて降り立つと、
今度は厳かな空気を纏い―――ひと声、短く強く咆哮した。


その一連の意味深なやり取りは、
インデックスの目には、あたかも―――『仲間』へ声を手向けているかのようにも見えた。

だがその真意を確認する暇は、彼女には無かった。
魔獣はすぐに彼女の方に振り向き、魔方陣を起動させるよう促してきたのだ。

禁書『う、うん……』

そうしてこの魔獣と共に光の中に沈んでいく間、彼女は炎の魔人の背をずっと見つめていた。

ちなみにこのイフリートの背こそ、
インデックス・ベオウルフの両者が見た彼―――この炎の魔人の最後の姿だった。

―――



121:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:34:55.31 ID:LAoSMBcIo

―――

テメンニグルの塔。

門前の広間に到達した土御門達を出迎えたのは、
蒼い魔馬に跨った五和だった。

その出迎えに滝壺や、絹旗や浜面といった彼女の護衛チームは目を丸くし、
五和を知っている土御門はそれ以上に驚きの色を浮べてしまう。

神裂と共に五和も実は生きていた、とつい数十秒前に聞いたばかりな上、
そんな五和が乗っている魔馬は、慈母の知覚を通すとどう見ても大悪魔。

誰がこんな五和の姿を予想できたであろうか。

あのヴァチカンの一件以来一体何があったのか、もう詳しく聞く気にはならなかった。
状況がここまで切迫していなくとも、
事情を聞くことはもう諦めてしまっていたはずだ。

同じく『細かいこと』は何も言わず、
魔馬をいななかせながら門扉を蹴り開ける五和。


五和「―――こちらに!」


皮肉と呆れ混じりの笑みを浮べながら土御門は、
その五和の横を通る形で、滝壺達を連れて門の中へと進んでいった。



122:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:36:26.81 ID:LAoSMBcIo

門の先は、巨大な吹き抜けの広間だった『はず』であろう。
『はず』というのも今、この広間の中央を巨大な柱が聳えていたからだ。

直径数十メートルはあろう円柱には、らせん状に溝が刻まれており、
その隙間から不気味に胎動する光。
どうやらこの円柱は、つい今しがたにでも床を突き破って上に伸び上がったのだろう。
割れて久しそうな塵が周囲を舞っており、瓦礫もあちこちに散らばっていた。

そうやってほぼ習慣的に周囲空間を観察する傍ら、
土御門は確認の意を篭めて滝壺の名を呼んだ。

すると彼女はこくりと頷き。

滝壺「もうはじめてるよ。隔離完了まであと2分くらいかな」

土御門「2分か。五和、安全な場所まで誘導してくれ」

五和「はい。それと一つ言っておきますが、完全に安全な場所はここにはないと思います。どこからでも悪魔が湧き出しますので」

それは把握していると土御門が頷き返すと、
五和を乗せた魔馬が門のところから一っ跳び。

五和「ではこちらへ!」

一階上の回廊に飛び乗り、槍を大きく振ってついて来るよう促した。

それを見て、土御門が首を軽く傾げる風に指示を飛ばすと、
まず絹旗が滝壺を抱き抱え、もう片手で浜面のベルトを乱暴に掴み、
五和の傍へと向けて跳躍。

そうして他の能力者たちも後に続いていった。

だが。


土御門「―――……」


当の土御門だけはその場から動かなかったが。



123:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:38:22.79 ID:LAoSMBcIo

その時、慈母が残し与えてくれた知覚と力が『あるもの』の接近を捉えたのだ。
この塔内や周囲に蠢く無数の下等悪魔共ではない。

次元が違う、桁違いの存在が―――『二つ』。


紛れも無い、上位の大悪魔級の力を有したもの。


土御門「―――……」

彼は身を強張らせた。

五和「―――土御門さん!大丈夫です!」

一方、彼の警戒へと向けられた五和の声は、
明らかにこの『あるもの』の正体を知っている風であったが、
土御門がここでそれを問う必要は無かった。


『相手』がちょうど今、門扉の片側を押し開けつつあったのだから。


土御門「―――はっははっ」

ここでまた、彼は驚きと呆れ混じりの笑みを浮べてしまった。
五和と同じく生きていたとは聞いていたが、これまた同じく―――


神裂『―――土御門』


いや、五和以上に―――神裂火織は変貌していた。



124:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:40:32.74 ID:LAoSMBcIo

その外見は何ら変わらない、
以前の神裂火織のままであったが、その魂と力の質と規模が豹変していた。

土御門の知っていた神裂は『半天使』だったのだが、
今目の前にいる彼女は『完全な悪魔』だった。

声のエコー、瞳に仄かにゆらめく赤い輝き、
身から発する強烈な威圧感、どこからどう感じ取っても悪魔。

それも正真正銘の大悪魔だ。

建宮「―――い、五和!!五和か?!何だそりゃ、う、馬か?!馬に乗ってる?!」

五和「建宮さん!!!皆さんもご無事で!!」

神裂の後ろに続いていた天草式と上階の五和の再会、
その飛び交う声に挟まれる中、

土御門「はっ……はっはっ、ねーちん一体こりゃぁ……まあ色々あったようだな」

神裂『ええ。土御門、あなたも』

この二人の間で交わされた声は対照的に静かなものだった。
そして再会の言葉はそれだけ、あとは互いに頷くと。

神裂『建宮、五和と共に彼女の護衛を』

建宮「―――了解なのよな!」

神裂『では土御門、あなたも』

土御門「………………」



125:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:42:06.00 ID:LAoSMBcIo

土御門はそこで神裂の顔を見つめた。
どこからどう観察しても、五和達に同行するつもりが見受けられないその表情を。

土御門「やっぱり『アレ』は、『こちら側』じゃないんだな?」

そう、土御門がさきほど検知した桁違いの存在は『二つ』だ。
一つはこの『神裂』という頼もしい味方あったが、もう一つはどうやら―――


神裂『―――アレは、あなた達ではどうにもなりません』


その時だった。
建宮隊の最後尾の者によって扉が閉ざされた直後。

その向こうから強烈な『地響き』が伝わってきた。
この塔、そして界域全体を揺るがすほどの。

さながら『空』がそのまま落下してきたかのような『大質量』の衝撃だ。

土御門「―――……」

そして今度こそ土御門は、この扉一枚隔てられた空間に『降り立った存在』、
その力の片鱗を確かに感じ取った。

五和が跨っている魔馬であろうと、この存在には到底勝ち目がないように思われるか。

本領の片鱗どころかその姿すらまだ目にしてはいないものの、
それでもこうして近くにいるだけで明らかになってしまうほどの―――強大な『天使』だ。

神裂が同じ調子で再び口にした。


神裂『―――あなたではどうにもなりません』


真っ直ぐ門扉の方へと向いて。



126:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:43:11.49 ID:LAoSMBcIo

―――土御門達が五和に誘導されて進んで行ったのち。


神裂は一人、一度大きく深呼吸して、
この門扉向こうの存在に意識を研ぎ澄ませた。

相手『自身』の力量は、大体ステイルの『父』たるイフリートと同程度か。
それだけでもかなりの強敵であるのだが、更に悪いことに。

どうやら相手自身の力とはまた別に、その身に莫大な規模の力が付加されているようだ。


神裂『…………』

この界を沈ませるほどの異常な『質量』はそれによるものだろうか。
彼女は一通りここからの分析をし終え、静かに歩んでは、
ゆっくりと門扉を引き開けた。

重々しい扉の向こうは、魔の氷が隅にこびり残る門前の広間。


その中央に『彼』が立っていた。


右手に短槍とも言える杖、フルフェイスの兜に、
白銀の装具を纏った―――『成人男性』のような姿の。

大量の翼に、頭上には天の言語で構築されている光臨がある『天使』。



127:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:45:20.64 ID:LAoSMBcIo

彼の名は神裂はもう知っていた。
ステイルから情報が来ているし、
それに『元人間』の天使となれば―――少なくとも神裂が知る範囲ではそう数も多くない。

神裂『……………………』

『彼』は、神裂が門前の台を降りてくる間、
その兜の眼孔から覗く『人の瞳』で彼女をじっと見つめていた。

そこには少し驚きのような色も見えたか。

それも当然の事かもしれない。
ヴァチカンで『魔女に殺された』以降は、彼らは神裂の動向は何も知らないのだ。

その死んだはずの『天の使い』がこうして生きているどころか、
スパーダ―――バージルの眷属としての身で現れたら、誰だって驚くに決まっている。


そしてどうやら、この天使はここで理解したようだ。

滝壺へとたどり着くには、
まずこの『バージルの使い魔』を打ち倒さねばならないのだと。

天使は杖で一度、戦いを告げるかのように床を叩いた。
すると見た目は軽く打ちつけられた程度でも、響くは界を揺るがす衝撃。

続き一歩、一歩と天使が歩むたびに、同じくとてつもない地響きが轟いていく。
戦鼓の如く。



128:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:47:21.50 ID:LAoSMBcIo

その緊張を手繰るような『彼』に合わせ、神裂もまた気を研ぎ澄ませながら、
静かに七天七刀の柄に手を乗せて。


神裂『あなたは―――「エノク」、ですね?』


伝承から聞く『彼』の人間の頃の名を口にした。

対する返事は、声としては返ってこなかった。
それに神裂も別に返答を待つ気は無かった。


その瞬間、どちらが先というわけでもなく―――両者がほぼ同時に動いたのだから。


この場を満たしていた極度の緊張は、青と白銀の閃光によって打ち砕かれた。
まず初撃を繰り出したのは白銀の天使、メタトロンによる、

鋭い光刃がある杖の―――神速の突き。

その速度は尋常ではない域。
だが対する青い光を纏った女魔剣士、神裂にとっては見切れぬものでも無かった。

神裂『―――』

彼女は躊躇い無く前に踏み込み、七天七刀を抜刀し。
切っ先が鞘から出でる前から、その刃でそのまま―――メタトロンの穂先を外に流しながら、

すれ違い様に逆袈裟斬り―――それがこの瞬間、彼女が打とうとした一手であったが。

結局それは成せなかった。



129:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:49:04.98 ID:LAoSMBcIo

このような『強敵』という相手は、往々にして『型通り』の戦い方をさせてはくれないものだ。


メタトロンの杖に刃が触れた瞬間、彼女は気付かされたのだ。
この天使の穂先に圧し掛かっている桁違いの―――『重量』に。

その『重さ』は、流しざまに斬り抜けていくことなど持っての外、
七天七刀がそのまま『持って行かれそう』なほどである。

いや、それ以前に、その進路を自身の体から逸らすことさえもできない。

喉に受けることはないであろうが、
どれだけ押し出しても―――肩を貫かれるのは必須だった。


そうして刹那、神裂はほぼ反射的に、
この一振りの挙動を『攻防一体』のものから『防御一点』に変更する。

すれ違いざまに逆袈裟で抜けていくことは諦め、
すかさず足を踏み切り、体を半身横へと移動。

メタトロンの穂先は、その肩の僅か1cmの空間を突き抜けていった。
魔刀と擦れ、凄まじい火花と金属的な悲鳴を轟かせながら。


神裂『―――ッ』


―――その穂先の『質量』たるや、なんと凄まじいことか。

触れていないにもかかわらず、神裂は、体がそのまま杖の進行方向に引っ張られる感覚を覚えた。
文字通り空間が『重さで沈んでいる』ようなものだ。


一撃でも体に貰ったら―――致命傷になりかねない。

彼女はそう瞬間的に確信した。
体にあの穂先が『沈めば』、魂まで貫かれ『持って行かれる』。

まさにこの天使の一突きは『必殺』のものだった。



130:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:50:08.37 ID:LAoSMBcIo

だが、と。

神裂は負けじと返す。
確かに重くて強力な攻撃では有るも―――バージルのものに比べたら可愛いものだ、と。

質量も鋭さも速度も全てにおいて彼の刃の方が遥かに上だと。


そして、と。

横に滑らせた足で今度はしっかりと床を噛み、
振り上げる形の七天七刀の柄を両手で握り込み、彼女は力と体と刃を一つにする。


『必殺』の刃なら―――こちらも『同じ』だと。


バージルのように連射もできなければ、
それこそ魔帝の身に溝穿つほどのものも放てやしない。


だが決して模造品ではない、正真正銘の―――『次元斬』である。


神裂『―――ッシッ―――!!』

瞬間、青き光の満ちた一振りが、メタトロンに向け横から振り下ろされた。
心地良いくらいに鋭い金属の衝撃を響かせて。



131:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:52:29.56 ID:LAoSMBcIo

やはりバージルの次元斬というものはとんでもない技・力である。
下位互換である神裂が放った今の一振りでも、どれだけの破壊を刻んでゆくか。

刃の先から『漏れた』光の筋は、その剣線に沿って広間内の空間を切り裂き、
ここを満たしていた力の大気から、異質な力に守られているこの魔塔の天井から壁をも寸断、
その向こうの領域にまで突き抜けていった。

恐らく下等悪魔共が形成する『雲』も分断しただろうか。


ただ―――たった一つ、その刃に狙われていながら、破壊を免れていた存在がいたか。


神裂『―――……』

メタトロンは神裂が振り下ろす直前に―――この刃の力を悟り、すぐに回避行動に移ったようだった。
青き破壊の光がおさまる頃、白銀の天使は神裂から15m程離れた場所にまで退いていた。

その彼の足元には、神裂のすぐ前からレールのように二筋の溝。

神裂の次元斬を杖で受け流そうとしたが、
予想以上に凄まじくて思いっきり押し弾かれた際に、その足で刻んでしまったものだ。


神裂『…………』

この今の一振りの一部始終を見て、神裂は静かに戦慄を覚えていた。
いくら下位互換とはいえ、セフィロトの樹を容易に切り裂く水準の『次元斬』を、
曲がりなりにも受け防げるメタトロンの頑強具合にだ。

だが、その気持ちはどうやら相手も『同じ』だったらしい。
彼女はこの天使の底力に驚く一方、彼の人間の瞳にも焦燥・戦慄といった色を見た。


メタトロンもまた、今の神裂の『次元斬』に戦慄していたのだ。



132:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:55:19.51 ID:LAoSMBcIo

互いに一振りずつ。
それだけで二方とも確信したのだ。

この相手との戦いでは、刃を打ち合わせてはならない、と。

まともに防ぎ受け止めようとすれば一撃で体制が崩れ、
まともに肉体に受ければ一撃で魂まで破壊されると、と。


神裂『…………』

だがそれは言い換えれば、触れさえしなければよいという事。

神裂はここに勝機を見た。

このメタトロンの力量は己やイフリートと同等な上、
そこに更に莫大な力が付加されているも、付加されているその力はただ『あるだけ』。

メタトロン自身の力となってその速力や能力などに還元されることはなく、
単に破壊力に上乗せされているだけなのだ。
つまり『当たらなければ』、どれだけ『質量』があろうとほぼ関係ないのである。


神裂『―――ふーっ……』

一度七天七刀を納刀し、静かに息を吐く神裂。
その揺るがぬ視線先のメタトロンも、どうやらこちらと同じくこの戦いを決するつもりであろう。

天使は何度か、強張りを掃うかのように杖を握り直し、
足も如何なる動きにも対応できる位置へと静かにずらした。

神裂も手の痺れを軽減させるべく、柄の上にてゆっくりと何度が開きほぐした。

今しがたの次元斬を行使したことでの負荷もさることながら、
あのメタトロンの杖を受けた際の『質量の感触』が、いまだにこの腕の肉と骨を軋ませていたのだ。



133:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/01/31(火) 23:59:33.72 ID:LAoSMBcIo

そうして一拍の静寂ののち。

ここで小手調べは終わりとなり。
互いの戦闘能力を図れたところで、ここからが雌雄を決する本番である―――と。

ほぐした手を柄に沿え、腰を留めて、張った戦意を解き放とうとした時。

同じように完璧な姿勢を取っていたメタトロンが突然―――ふっと翼を広げて、
一気に飛翔しては、天井の穴を抜けてこの場から去って行ってしまった。


神裂『―――えっ―――はい?』


予想だにしていなかった事に、彼女は思わず素っ頓狂な声を漏らしてしまった。

明らかにメタトロンもその気だったはずなのに、それに己を倒さねば滝壺には到達できないのに。
あの天使は一体何を理由にこの戦いから去り、一体どこへ向かっていったのだろうか。

―――そんな風に、彼女の頭の中では様々な考えが頭を巡ったものの。


答えは考えるまでも無かった。


神裂『……ッ』


それはテメンニグルの塔と学園都市の境界の隔離完了まで―――あと25秒という時のこと。

この門前の広間へと、
組み合ったサンダルフォンとイフリートが天井を割り砕いて落下してきたのとほぼ同時に。


かのメタトロンが、その標的を滝壺とは別の―――もう一人の少女へ変更したというのを、神裂が悟った瞬間だった。



神裂『―――』



彼女は、再びメタトロンの『姿』を『すぐ目の前』に『見た』。


―――『学園都市にいるステイル』の目を通して。


―――



134:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/01(水) 00:00:37.07 ID:nkWiMSJgo

今日はここまでです。
次は金曜に。



136:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/01(水) 01:05:43.34 ID:rCj+7rDDO

そういえば神裂は悪魔なんだから魔具にもなれるんだろうな



140:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/01(水) 08:00:47.88 ID:2Qb/6nSp0

>>136-137
それを装着したダンテが「Hoo!」とか「Yeah!」とかはしゃぎながら
30秒ほどスタイリッシュな演武を行うムービーが挿入されるわけだな



141:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2012/02/01(水) 11:28:49.49 ID:QWQCgL0K0

乳揺れスタイリッシュ演武か…文字通り胸が熱くなるな…



149:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/04(土) 00:34:42.02 ID:Nl2Z9k0R0

>>1乙 日々の楽しみにさせてもらってます。

ふと気になったんだが、DMC4のラスボスの神様は>>1的にどんくらいのランクなんだろうか?
自分は上~特上の間と勝手に予想



154:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 01:51:42.08 ID:A5iRkL9To

>>149
総合的には維持なしアスタロトや今の一方通行と同等、
固さのみなら覇王よりも少し上かなといった具合です。


それと少し前から偽海原が「海原」表記になってますが、
名を呼ばれる時以外は正しくは全て「エツァリ」です。
すみません。



150:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/04(土) 00:48:53.80 ID:BCUocKL60

スパーダの血と魔剣スパーダを使ってやっと起動・制御できるらしいし、結構強かったのかな?あの神様。



152:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/04(土) 01:26:23.56 ID:Q7ZrNfwDO

一方→強化一方→義手一方→神一方
アクセラレータさんどんどん変わっていったな……



153:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/04(土) 01:33:09.01 ID:K1wkZ7FA0

学園都市最強から人間界の新たな王だからな…
時代が時代なら一方さんを崇める宗教が誕生してもおかしくないレベル



155:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 01:54:31.36 ID:A5iRkL9To

―――

それは両者にとって予想だにしていない形の再会だった。

佐天「―――なっ?!」

壮大な舞台の上、学園都市と人間界の命運を決する直前に、
巡り巡ってようやく彼女達の運命が重なったのだ。

学園都市、壁を無くした窓のないビル。
結標に連れられて空間を跳んで来た佐天が目にしたのは、
褐色の肌の少年に白衣の女性、隅にてうなだれている『緑の手術衣を纏った女』に、
『小さな御坂美琴』、そして―――

佐天「―――初春?!」

初春「―――さ、佐天さん?!」

無造作に積み上げられている端末に向かっていた親友、初春飾利の姿だった。

佐天「―――なんでこんな所にいるの?!」

初春「―――佐天さんこそ何をしていたんですかッ?!」

名を呼ばれ弾けるように振り返った初春は、
グレーのTシャツに軍用の作業用パンツという格好の佐天を一目見るや、
(血で大変汚れていたため、マクガイル空軍基地で着替えていた)
彼女は座っていた椅子を倒して駆け寄ってきて。

初春「探したんですよ!!探して!!探してッ……!!無事で……良かった……!」

佐天の両二の腕を正面からがしりと掴むと、
涙ぐみながら声を絞り出した。



156:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 01:58:50.97 ID:A5iRkL9To

佐天「…………うん。初春も……初春もッ!」

そんな彼女につられて佐天もまた声を震わせてしまった。

初春の顔とその甘ったるい声を見聞きして、
やっと学園都市に帰ってきたということを実感したのだ。


彼女と顔を合わせるのはたった一日ぶりであるにもかかわらず、
もうずっと何年も離れていたような気がしていた。

この数時間、とてもちょっとやそっとでは語りきれない体験をした。
前のデパートの時よりも遥かに濃厚で、強烈で、現実離れした出来事。
周りの世界の『現実』の何もかもが変わってしまったのだ。

その中で彼女は、自分自身すらも大きく変わってしまってはいないだろうか、
と不安を覚えていた。
それこそ容姿から何もかも違う別人にでもなってしまったかのように。

だが向こうで再会した黒子や御坂が、そんな不安を押し留めてくれて。


佐天「―――初春、初春だね……初春……」


そして今。
『家』で再会した初春が、決定打となってその全てを吹き掃ってくれた。
現実は変わっていても、ここは学園都市であることは変わりなく、
この『佐天涙子』も何も変わってはいないのだ、と。

そうして佐天は、ひとまずここに至る事情を抜きにして、初春とともに無事の再会を喜び合った。
世界が変わろうとも、変わらぬ学園都市に変わらぬ友ら、変わらぬ絆を祝福して。

ただその傍ら。

こうした喜びでより際立った心痛と共に、佐天の脳裏にはある者の顔が浮かんでいた。
消息が依然わからぬ友―――赤毛の少女の顔が。



157:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 02:01:30.65 ID:A5iRkL9To

―――と、それは突然のことだった。

瞬間、奇妙にして強烈な地響きが轟いた。

一瞬大地震に見舞われたように錯覚したが、辺りの地面も建物も一切揺れてはおらず、
一方でその場に立っていられなくなってしまうほどに覚える強烈な『衝撃』。


眩暈にも似ていたか、そんな衝撃によろめき合う二人。
だがその原因が何だったのかと考えるどころか、
この時はこの奇妙な感覚を意識することすらできなかった。

一秒かそれとも二秒か。
瞬きする間ほどの僅かな時間、
彼女達の認知速度を越えた勢いで、場は急変していった。

衝撃から一拍後。

「―――結標さん!!」

まず褐色の肌の少年が、凄まじい形相と半ば怒号染みた声で結標の名を叫び。

結標「―――全員ね!!」


そう確認の声を返した彼女に少年が頷くと。
次の瞬間には、目に移る周囲の光景が一変していた。

佐天「―――」



158:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 02:05:25.70 ID:A5iRkL9To

そこはとあるビルの屋上だった。

初春「―――ひゃっ!!」

佐天「わっわっ?!」

吹き抜ける冬の夜風を受け、
突然のことに跳びあがるようにして佐天に抱きつく初春。

テレポート自体は初春も初体験ではないものの、
それでも不意に視界が切り替われば誰だって驚くものである。
佐天もその例に漏れず、同じく驚き彼女にしがみ付き返した。



そこにはいたのは、彼女達の他にエツァリ、芳川、
打ち止めと皆を運んだ結標、そしてアレイスター。

まず口を開いたのは芳川だった。

芳川「ねえどうしたの?!あの設備が無いと―――」

その声は最後まで続きはしなかったが。
眼下に広がる街並みの向こうにて突如迸った白銀の閃光によって、
彼女の口が止まってしまったのだ。

輝きはちょうど窓のないビルがある辺り。
その閃光を一目見て、芳川も今の状況をある程度悟った。

あそこにはいられなくなったのだ、と。
なにせ光が瞬いた直後、その周囲の街並みが一瞬にして『散り消えて』―――

―――その猛烈な衝撃波の残滓が、
一瞬にして彼女達のもとにまで到達してきたのだから。



159:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 02:10:19.90 ID:A5iRkL9To

ビルのガラスが砕け、壁面には亀裂が走り、
下の道路では小石の様に転がっていく車。

ただそんな爆風も、
彼女達のいる屋上にだけはそよ風程度としてしか届かなかった。

エツァリ「―――皆さん大丈夫ですか?!」

エツァリによって張られた即席の魔術防壁によって。
そして彼はそれぞれ驚きと怯みの色を浮べている皆を一瞥したのち、
(アレイスターは一人変わらぬ様子であったが)
返事を待たずに声を続けた。

エツァリ「ラストオーダー!システムの状態は?!」

打ち止め「だ、大丈夫!『まだ』何とか維持できてる!でもちょっと危ないかも!」

芳川「いくつか設備整ってる所の心当たりがあるから行きましょ!早くしないとシステムがもたないわ!」

せわしなくアホ毛を揺らしながらそう声にする、芳川の腰元にしがみついてる打ち止め。
次いで芳川も、少女の声に続きそう叫んだ。
すると。

結標「―――それどころじゃないでしょ。『アレ』は」


そこで結標が、妙に落ち着いた声色で彼女達の声に割り込んだ。

その声は落ち着いて聞えただけか。
彼女の表情や醸す空気には、極なる戦慄と緊張が滲んでいた。



160:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 02:12:47.32 ID:A5iRkL9To

驚きのあまりすっ転んでいた佐天・初春に手を貸しつつ、
光源の方に鋭い視線を向ける結標。

これも能力強化され、更にデュマーリ島で異次元概念に触れて経験したせいか。
彼女はこの場にいる中でただ一人。

この時、かのメタトロンから向けられてくる、
とてつもない『憎悪』に満ちた『殺気』を覚えていた。


結標「―――……」

そのあまりの憤怒の濃さに息を呑んでしまう。

まるで親や兄弟でも殺した『仇相手』に向けるような、
そんな執念染みた苛烈な『怨念』だったのだ。

これまでの仕事上、憎まれ呪われることにはかなり慣れている結標でさえも、
「身に覚えが無い」と思わずその場で釈明したくなる衝動に駆られてしまうほどだった。


その理由は、天界と人界の間の古の歴史を知る者ならばすぐに把握できたであろう。

遥か太古、人界にはどんな神々が君臨していて、
その頃の現生人類の祖達はどれだけ虐げられていたか。
そんな力無き人々を、『当時』の天界の者達はどんな思い出救おうとしたのか。

そしてこの結標淡希の力もまた、その根源が一体どこなのか、を。


結標「早く―――逃げるわよ」

気を奮い立たせた彼女がそう告げた直後、その場にいた全員が空間を跳躍する。
その一瞬後、そのビルの上半分が天の一撃によって吹き飛んだ。

―――



161:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 02:17:22.43 ID:A5iRkL9To

―――

遡ること僅か。

ステイルはその瞬間、自身の横15mの虚空に出現する魔方陣を目にした。
彼から見て、窓のないビルの反対側の位置だ。


魔方陣の中からまず姿を現したのは『杖だった』。


光刃のついた杖がぬっと突き出でて、
そして続く腕、肩、フルフェイスの兜を被っている―――メタトロンの頭部。

その肉体が現出すると同時に、莫大な『天の質量』が空間を押し沈めていく。

ステイル『―――』

そうして半身ほど現れたところ。
かの天使はステイルの姿を一瞥するや、即座にその杖の先を向けた。

いいや、厳密には彼を見ていたのではない。
彼の背後にある窓のないビル、そこにいる幼い少女へ向けられたものだった。
もちろんその杖の狙いも同じく。

対してステイルの行動は、鍛え抜かれた戦士としての咄嗟の反応だった。
驚くよりもまず先に通信魔術でエツァリへとこのイメージを放ち。

己が力を解き放ち、前面に集中させる。
かの天使が放とうとしている一撃を少しでも遮るために。



162:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 02:18:57.64 ID:A5iRkL9To

遠くからでは、僅かな炎の煌きすらも見えなかったことだろう。

杖に集束していた光が解き放たれた瞬間、ステイルの業火の防壁は、
その構築とほぼ同時に光の奔流に押し潰されて飲まれてしまったのだから。

放たれた光の衝撃波は、一帯を『砂地』に変えてしまった。
『瓦礫』として残っているだけまだマシか、大半の構造物が細かな粉状にまで砕かれ、
遥か先へと吹き飛ばされていく。

だがその破壊の爪痕も、僅かに漏れた『余波』によるものにしか過ぎない。
集束された力が飲み込んだ窓のないビルは、
その原子を一つも残さずにこの世界から消滅していた。

ステイル『――――――…………』

次にステイルの意識が戻ったのは、そんな砂地の一画だった。

意識が再起動しても視界は暗転したまま、肌の物理的感覚もマヒ状態。
そうした人間時代からの知覚が軒並み機能停止している中、
まず最初に取り戻した知覚は悪魔のものだった。

100mほど吹っ飛ばされたのだろう、そのぐらいの距離のところにメタトロンの存在を捉えた。
そして次に覚えるのは、想像を絶するほどの激痛だった。

思わずステイルは顔を歪め―――ようとしたも、ここで彼は気付いた。


歪める顔が『なかった』ことに。



163:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 02:21:34.40 ID:A5iRkL9To

瞼もなければ頬も唇も無い。
眼球から鼓膜、顔も含め、全身前面があの衝撃波で叩き潰されたのだ。
声帯も喉ごと抉り飛び、肺も他の臓器もろともシェイク状態になっているのだろう、呻き声すら出せない。
漏れる音は、だらしなくごぼごぼと零れ落ちる体液のものだけ。

さながらスプラッタ映画の惨状のような姿か、
人間ならば痛みを感じる以前にとっくに即死だ。

いや、今の一撃は、この悪魔の身であっても、
かの『主の加護』が無ければ即死していたほのどのものだった。

ステイル『…………』

ステイルはふと実感した。
また彼女に救われたのだと。
この魂は、主たる神裂の生命力によっていまだに繋がっていられるのだと。

しばらく待っていれば、神裂からのその影響で損傷した魂も肉体もまた元通りになるであろう。
これぞ使い魔として隷属する代償の恩恵だ。

早くも元通りになっていた悪魔の知覚は、
かの天使の全身がやっと魔方陣から出で終ったのを捉えた。


とてつもない力の質量で界を揺らして、ここにメタトロンは『里帰り』を果したのだ。

だが彼は、その故郷の地には感傷の色は示さなかった。
ステイルにも見向きもせず、
降り立つと同時にまっすぐと彼方の一点、あるビルの方角へと顔を向けて。

大きく翼を開き伸ばしては、凄まじい勢いで飛翔していった。



164:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 02:23:13.11 ID:A5iRkL9To

ステイル『……………………』

間違いなく彼女達を追ったのだ。
直後、メタトロンが向かった方向でまた力が放たれたのを覚えた。

どうやら感じからして今の二撃目も仕留め損ねたか。
結標の能力は瞬間移動系だと聞いていたが、かなりの水準の持ち主なのであろう。

だがそれでもいずれ追いつかれるのは目に見えている。
どれだけ強力な能力者であろうと、神域に達していない者が、
神域の上位に属す者の手から完全に逃れられるわけが無いのだ。


―――だから急いでくれ、と。

ステイルは『繋がり』を介して声を放った。

ちょうど今、メタトロンが出現した時と同じように、
今度は悪魔の魔方陣の中から降り立った神裂に向けて。

彼女はその声を受けると、ステイルのところには来ずに、
メタトロンの向かった方向へと一気に跳躍して行った。


ステイル『……』

そうして神裂が向かったのを確認して少し糸が緩んだのか、
意識がまたもやおぼろげになってきた。

神裂からの情報を認識することさえ厳しくなってきたか。
彼女の側で受け取る情報も、中身の無いおぼろげなものになってしまっているであろう。

この時死は免れたものの、さすがに魂の損傷が激しく、
より回復を速めるための『冬眠』状態に入りつつあったのだ。



165:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 02:25:53.18 ID:A5iRkL9To

ステイル『―――……っ』

そんなその薄れゆく意識の中でも、
完璧に稼動している悪魔の知覚だけは更なる存在をここで捉えた。

数は三人ほど。
すぐ足元に立っていた。

「うわっ…………『これ』、本当にス、ステイルさんなの?」

そして。
鼓膜ではなく悪魔の知覚が捉えた、まず一番最初の声は若い女のもの。
こちらの凄惨な姿を見て戦慄しているのであろう。

「…………ま、まだ……本当に生きて……おられますの?」

そして同じくやや怯みがちに続くもう一人の女の声。
するとそんな二人とは対照的に。


「―――生きてるさ」


静かで確かな男の声が響いた。
その有無を言わせぬ心地よさと力強さに、
おぼろげな中でもこの人物の身元はすぐに特定できた。


「ステイル。今からお前の魂を覗かせて状況を教えてもらうぜ。少し痛むが我慢してくれ」


そんな声に続きずぶり、と。
ステイルは屈強な腕が胸に沈み込んでくる感触を覚えた。

指の並びからして右手か―――それは妙なことだった。
不思議なことに、その腕は『普通の人間のもの』と同じ形をしていたのだ。

ステイルが知る限りこの声と空気の持ち主は、右手が『異形』だったはずなのだが。

―――



166:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県):2012/02/04(土) 02:26:26.94 ID:A5iRkL9To

短いですが今日はここまでです。
次は日曜か月曜に。



167:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/04(土) 02:48:18.21 ID:Q7ZrNfwDO

最強の『人間』のネロさんキター!



172:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2012/02/05(日) 07:21:29.03 ID:BNjiya4r0

ステイルがネロの魔具になったらやっぱり篭手かナックルなんだろか



174:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/05(日) 14:37:04.15 ID:R7p4UJ/go

>>172
表記は魔具ヌスさんになってしまうん?



173:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/02/05(日) 09:42:19.74 ID:GTT6b6hf0

きっと煙草とかバーコードとか赤毛のウィッグとかだろう。



175:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/02/05(日) 14:40:23.22 ID:TWZXkCVdo

・・・・・・・・どんな機能が・・・・・・・・・・・・。



次→ダンテ「学園都市か」【MISSION 35】

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禁書目録SS   コメント:11   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
20858. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/04/22(日) 13:15 ▼このコメントに返信する
天界勢が前の話で語られてた頃よりずっと弱いな
いま魔界>>>>>>人間界>>天界ぐらいの差?
20860. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/04/22(日) 13:32 ▼このコメントに返信する
一方通行のがんばりでなんとかもってるだけで
スパーダファミリーと魔女抜きにすれば戦力は天界>>>人間界くらいだと思うけど
20865. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/04/22(日) 16:42 ▼このコメントに返信する
人間界が強い×
一方通行が強い○
20943. 名前 : 名無し◆- 投稿日 : 2012/04/24(火) 09:12 ▼このコメントに返信する
先に結末言い過ぎじゃね?
イフリートとか。
予告なしで死にかけたり死んだほうがインパクトあって好きなんだが。
露骨にフラグ立てられるとどっちに転んでも心構え出来ちゃう。
20951. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/04/24(火) 15:30 ▼このコメントに返信する
※20858
ジュベ(神)>三神・スパーダ家・ベヨ(チート)>>>十強・四元徳・最強魔女・一方(←ココ)(最上級)>>大悪魔・大天使級・風斬(←ココ)(上級)>>>>>天魔の無双されてる連中>>>>>超えられない壁>>>>>モブ天使・モブ悪魔>>>>>超えられない壁>>>>>人間界の有象無象
で、一方や風斬がぶっ飛んでるだけで、実力差は魔界>>天界>>>>>>人間界()状態なのは変わらず
20953. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/04/24(火) 16:29 ▼このコメントに返信する
※4
それはここで言わずに本スレで言ったほうがいい
20984. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/04/25(水) 03:13 ▼このコメントに返信する
よくもまぁこんな駄作を長い間
20989. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/04/25(水) 10:30 ▼このコメントに返信する
そろそろ退屈を持て余した最強の魔女が登場してもいい頃だと思うんだが

禁書が大人になったら、ああなるのか?&ダンテ召喚て最強過ぎ!でワクワクだなぁ
21035. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/04/26(木) 16:57 ▼このコメントに返信する
あ、なんか禁書が爆食してる横でストサンとピザを頬張っているダンテを横目に見ながら
財布と睨めっこして泣いてる上条の図が浮かんだ。
21326. 名前 : あ◆- 投稿日 : 2012/05/04(金) 23:18 ▼このコメントに返信する
神過ぎる…
どんだけ天才なんだよこの作者は
21896. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/05/22(火) 00:03 ▼このコメントに返信する
続きマダカナー チラッチラッ
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