絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」その18

2011-05-19 (木) 09:02  禁書目録SS   5コメント  
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773 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 22:53:44.77 ID:ZquZ6q4Yo

それでは、始めさせて頂きます。
卒業編、卒業式なようです。



775 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 22:55:37.75 ID:ZquZ6q4Yo


~3月上旬 第7学区 隠れ家的喫茶店~


番外個体 「なんか今日は街中の雰囲気も違いますよね」

マスター 「卒業式だからであろう。外部からの客人も多いのである」


<カランカラン♪


番外個体 「いらっしゃいませー、あれ?」

美鈴 「やっほー、久しぶりねー♪」

番外個体 「美鈴さん? なんで?」

美鈴 「可愛い可愛い娘の卒業式だもの。で、ついでにこっちにも顔出しとこうと思って」

番外個体 (あー、そっか。お姉様も卒業か)

マスター 「おや、奥方。久しいであるな」

美鈴 「マスターさんも相変わらずシッブイわねー。あ、アイスティーくださいな」

マスター 「了解した」

美鈴 「今日はちっちゃい方の真琴ちゃんはいないんだ?」キョロキョロ



776 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 22:57:41.63 ID:ZquZ6q4Yo

番外個体 「ちっちゃい方……あー、あの子は来てないです」

美鈴 「あの子ももしかしたら小学校卒業かな? って思ってたんだけど」

番外個体 (そもそも学校に通ってないよ)

美鈴 「来てないのかー、顔見たかったんだけどな」

番外個体 「まあ、またその内にでも」

マスター 「ご息女のところに行かなくてよいのであるか」コトッ

美鈴 「ええ、まだちょっと早いので」

番外個体 「にしてもそっか、卒業式だからスーツなんですね」

美鈴 「ホントはもっとお洒落したかったんだけど、主役より目立つワケにいかないじゃない?」

番外個体 「まあ、たしかに」

番外個体 (ただのパンツスーツでここまでオーラ出せるのもすごいけどね)

美鈴 「にしても、美琴ちゃんも高校生か。早いなー」

番外個体 (早い、か……もし私に母親がいたら、早いと感じる暇もなかったのかな)

美鈴 「ちょっとー、何ボーッとしてんのよ」

番外個体 「え? あ、なんでもないんです」



777 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 22:59:44.70 ID:ZquZ6q4Yo

 :
 :
 :

美鈴 「じゃ、そろそろ行くわね。こちそうさま」チャリチャリ

番外個体 「毎度どうもー」

美鈴 「またその内、買い物にでも行きましょうねー」ガシッ

番外個体 「はい、ぜひ。美鈴さんに選んでもらうと色々と参考になるし」

美鈴 「素材はいいからねー」

番外個体 「美鈴さんには負けます」

美鈴 「またこいつときたらー。それじゃ、今日は思いっきり楽しんでくるわね」

番外個体 「……私からは一つ、羽目をはずさないように」

美鈴 「?」

番外個体 「その、お酒とか」

美鈴 「大丈夫よー。じゃ、またね」ケラケラ


<カランカラン♪


番外個体 「……大丈夫かな」



778 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:01:41.40 ID:ZquZ6q4Yo


~その頃 第7学区 学舎の園~


婚后 「とうとう、この日が来てしまいましたのね……」

白井 「あらあら、今日の主役が浮かない顔をしていては在校生も浮かばれませんの」

絹旗 「まあ、色々と超感慨深いのも分かります」


<お嬢様。


執事 「いよいよ巣立ちの日、祝着至極に存じまする」カツッ

白井 「あら、執事さん。お久しぶりですの。去年の夏以来ですわね」

絹旗 (やっぱり超カッコイイです)

執事 「白井様に絹旗様も、ご壮健なようでなによりです」ペコリ

絹旗 (名前覚えててくれました!)ピャー

婚后 「今日はご苦労でしたわね」

執事 「とんでもないことでございます。いやはや、しかし……」

婚后 「なんですか?」

執事 「歳を取ると、時の流れが早く感じるものでございますな。
    ついぞこの間まで赤子だったお嬢様が、人生の節目を迎えるとは」



779 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:04:00.49 ID:ZquZ6q4Yo

婚后 「貴方からすれば、わたくしはいつまでたっても子供なのでしょうね」

執事 「成長を見守る親の気分を味合わせて頂いたことは感謝しておりますぞ」

絹旗 (私たち、超空気です)ヒソヒソ

白井 (今日ばっかりは仕方ございませんの)ヒソヒソ

婚后 「学園都市に来る前。多忙な両親に代わり、いつもわたくしを傍で見守ってくれたことには感謝してます」

執事 「務めでございます故」

婚后 「……これを」

執事 「こちらは?」

婚后 「感謝の印、ですわ」

執事 「……ご立派になられましたな」

婚后 「まだまだ若輩ですわよ。貴方にも迷惑を掛けるのですから、長生きしてもらいませんと」クスクス

執事 「これ以上、この老いぼれの寿命を縮めないで頂きたいものです」

婚后 「ふふ、お戯れですわね」

執事 「お嬢様には適いませんな……さて、そろそろ時間でございます」

婚后 「ええ。それでは、そろそろ向かいますわね」

執事 「お気をつけて」ペコリ



780 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:06:03.82 ID:ZquZ6q4Yo

婚后 「申し訳ございません。お待たせしてしまいまして」

絹旗 「いや、とても入り込める空気ではありませんでしたし」

白井 「執事さんには何をお渡しに?」

婚后 「これまでの感謝を込めた、ちょっとした贈り物ですわよ」

絹旗 「? 婚后さんがもらう側じゃないですか? お祝いとかで」

婚后 「今日という節目の日に、お世話になった人に贈り物をするのもいいじゃないですか」

白井 「確かに、ここまで育ててくださった親や教師に感謝する日でもございますの」

絹旗 「そういうものですか」

婚后 「そういうものですわよ。さ、参りましょう」

白井 「そろそろ参りませんと、時間もおしてますの」

絹旗 「あ、執事さんにはまた会えますかね?」

婚后 「え? ええ、おそらくは」

絹旗 (写真を一緒に撮ってもらいましょう!)

白井 「?」

婚后 「?」



781 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:08:07.67 ID:ZquZ6q4Yo


~第18学区 霧ヶ丘女学院~


浜面 「あー、なんか慣れねぇなぁ、こういう格好も」ガシガシ

海原 「よくお似合いですよ。ホストみたいです」

浜面 「お前に言われたかねぇや」

結標 「……ねえ、この2人が来て大丈夫なの?」

滝壺 「大丈夫だよ。卒業生関係者ってことになってるから」

結標 「まあ、ならいいんだけど……」

滝壺 「誰も来てくれないのもなんか寂しいし」

海原 「お役に立てたようでなによりです」

浜面 「デジカメもミサワの姐さんに借りてきたからな! 準備もバッチリだぜ!」

海原 「ちなみに動画は僕が担当します」●REC

滝壺 「2人ともお願いね」

結標 「そこまでしなくても」

浜面 「いいじゃないの、今日ぐらいは」



782 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:10:18.96 ID:ZquZ6q4Yo

海原 「高校の卒業式なんて、一生に一回あるかないかですよ」

結標 「いや、一回でしょ普通は」

滝壺 「人によっては2~3回あるかもね」

浜面 「そうなったら壮絶な人生を歩んでるんだろうな」

結標 「ま、いいけど……にしても、何も感慨深いものがないわね」

海原 「おや、クールですね」

結標 「貴方知ってるでしょ。私、事情があって2年生の途中からロクに通ってないんだから」

滝壺 「大丈夫だよ、私も似たようなものだから」

浜面 「そういうヤツほど、本番になったら泣いちゃうんだぜ?」

海原 「結標さんの涙ですか……それほどレアでも」

結標 「」バシッ

海原 「いてっ」

結標 「ほらもう行きなさい! 貴方達は来賓席だからあっち!」

浜面 「はいはい、んじゃ後でな」

滝壺 「ここで集合だからね」



783 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:11:52.72 ID:ZquZ6q4Yo


<なあ、なんで怒ってたんだ?
<さあ?


結標 「……ったく」

滝壺 「」モゾモゾ

結標 「? 滝壺さん?」

滝壺 「制服縮んだのかな。ちょっとキツイ」

結標 「あら、奇遇ね。私もちょっとパツパツなのよね」

滝壺 「むすじめも?」

結標 「そ、ちょっとだけキツくて」

滝壺 「私も胸が少し」 結標 「ウエストがちょっと」

結標 「……」

滝壺 「……」

結標 「聞かなかったことにして」

滝壺 「大丈夫だよ、とりあえず応援しておく」

結標 「」グス

滝壺 「あ、泣いた」



784 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:13:33.54 ID:ZquZ6q4Yo


~常盤台中学 卒業式の様子~


絹旗 (なんだって偉い人の話はどこでも長いんでしょうか……)

白井 (どこもそんなもんですの)

絹旗 (超ヒマなんですが)

白井 (今しばらくご辛抱くださいまし)

絹旗 (お、ようやく卒業証書授与ですよ)

白井 「あ、お姉様ですの!」ガタッ

絹旗 (ちょっ!)

白井 「」ハッ

絹旗 (座ってくださいよ! 周囲からの注目を超浴びちゃってるじゃないですか!)

白井 (し、失礼いたしましたの……)



~霧ヶ丘女学院 卒業式の様子~


結標 「」スピー

滝壺 「」スピー



785 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:15:21.11 ID:ZquZ6q4Yo


~同日午後 第7学区 常盤台中学~


白井 「お゛ね゛え゛さ゛ま゛ぁ゛~~、黒子を置いていかないでくだざいまし~」ビエー

美琴 「ち、ちょっと、落ち着きなさいよ!」

絹旗 「白井さんはやっぱりこうなっちゃうんですね」

婚后 「式典の間は耐えておられたようですし、まあ、今ぐらいは……」


<あ、婚后さん!


絹旗 (あ、あのお二人はたしか婚后さんの子分の)

湾内 「ご卒業おめでとうございます」

泡浮 「婚后さんがいなくなってしまわれると、寂しいですが……」ウルウル

婚后 「あらあら……そんなことでは困りますわ」

絹旗 (また私が入る余地がなくなりました)

婚后 「お二人とも」

湾内泡浮 「「は、はいっ」」



786 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:16:54.95 ID:ZquZ6q4Yo

婚后 「来年度からは貴女達が最高学年なのですから、しっかり後輩を導いてくださいな」

湾内泡浮 「「……」」

婚后 「わたくしからの、先輩としての最後のお願いです」ニコニコ

絹旗 (そんな超死亡フラグみたいなこと言わなくても!)

湾内 「……わ、わかっております。わかっておりますが……」

泡浮 「せめて、今だけは……」グスグス

婚后 「…………本当に手のかかる後輩ですわね」ウルウル

美琴 「ほらアンタもあの二人を見習いなさいよ!」

白井 「お゛ね゛え゛さ゛ま゛ぁ゛~~!」ビエーン

絹旗 (……コレも白井さんなりの想いの伝え方なんでしょうね)

絹旗 「……」スチャ

絹旗 「超集合ー! せっかくみんないるから写真とりますよ!」

美琴 「ほら、写真撮るって。そんなみっともない顔で写るつもり?」

白井 「う゛~~」ゴシゴシ

婚后 「貴女達もですわよ。もう泣き止みなさい」



787 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:18:22.62 ID:ZquZ6q4Yo

湾内 「も、申し訳ございません。みっともないところを……」

泡浮 「お恥ずかしい限りです……」

絹旗 「はい、いいですか?」

美琴 「なにこれ? 骨董品?」

婚后 「ずいぶんとレトロなカメラですわね」

絹旗 「撮れるから超いいんですよ! はい、3!」

白井 「ちょ、ちょっと待ってください!」ゴシゴシ

絹旗 「2!」

湾内 「あ、あの、わたくしの顔、変ではありませんか?」オロオロ

泡浮 「だ、大丈夫です!」ワタワタ

絹旗 「1!」

婚后 「思えば、貴女とも色々ございましたわね」

美琴 「お互いにね」


  カシャッ



788 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:20:25.78 ID:ZquZ6q4Yo


~その頃 第18学区 霧ヶ丘女学院~


滝壺 「終わった終わった」

結標 「お腹空いたし、お昼食べにいかない?」

滝壺 「ウエスト」

結標 「海原! 野菜が美味しいお店つれてって!」

浜面 「……なあ、卒業式ってなぁ、こうも淡々としてるもんなのか?」

海原 「人によるのではないんですかね」

浜面 「なんか想像してたのと違ぇなあ」ガシガシ

海原 「浜面さんは、卒業式というとどんな感じでした?」

浜面 「小学校の頃なんざ、みんなして泣きまくってたぜ。それこそ、普段はワルぶってるヤツまでさ」

海原 「ワルぶってるやつってのは、浜面さんですか」

浜面 「なんでだよ。俺だって昔はいい子だったんだぜ?」

海原 「」ニコニコ

浜面 「なんか言えよな!?」



789 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/20(日) 23:21:57.80 ID:ZquZ6q4Yo

滝壺 「二人とも、置いてくよ」

結標 「早く行きましょうよ」

浜面 「あまり食いすぎるなよ。夜は夜で準備してるんだからな」

海原 「卒業祝い、ですね」

滝壺 「焼肉だっけ」

浜面 「小市民の俺にあの店は無理だ」

結標 「あら。何か準備してくれてるの?」

浜面 「ごくごくささやかなな卒業祝いだぜ」

滝壺 「何してくれるの?」

海原 「今は秘密ということで」

結標 「せいぜい楽しみにさせてもらうわ」

浜面 「とりあえず昼メシといくか」

海原 「野菜が美味しい店でしたよね。ならばいい店を知っています」

結標 「もしかして、あの店? あそこいいのよね、行きましょ」



818 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:17:24.84 ID:rEUkw2fuo


~同日夕方 第7学区 隠れ家的喫茶店~


<カランカラン♪


番外個体 「まいどどうもー」

マスター 「ようやく落ち着いたであるな」

番外個体 「こんなに客が来たのは大覇星祭以来ですね」

マスター 「大きいイベントがあればこんなものである」

番外個体 「あの、マスター。今日は……」

マスター 「うむ、早めに上がる日であったな」

番外個体 「ええと、そういうことなので」

マスター 「今日は開店前から来てもらったであるからな。問題ないのである」※開店=7:30

番外個体 「後はお願いします」

マスター 「ご苦労であった」



820 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:19:09.37 ID:rEUkw2fuo

 :
 :
 :

番外個体 「うは、もうこんな時間。ヤバイヤバイ」

番外個体 「さっさと受け取って、帰って隠さないと」

番外個体 「よし、急ごう」



~???~


番外個体 「すいませーん、予約してた者でーす」

店員 「はい、ご用意してありますよ。お待ちください」

番外個体 (あとは持って帰って……)

店員 「はい、こちらになりますねー」ドン

番外個体 「あれ……大きい?」

店員 「在庫が余ってたのでサービスさせて頂きました♪」

番外個体 「は、はあ……どうも」



821 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:20:45.08 ID:rEUkw2fuo

番外個体 「えー、コレどうやって持って帰るんだよ……」

番外個体 「一人じゃ厳しいなぁ」

番外個体 「……いないよりマシだよね」カチカチ

番外個体 「あ、もしもし?」



~15分後~


一方通行 「……でェ? 俺はこれ運ぶためにわざわざ呼び出されましたってかァ?」

番外個体 「よく分かってんじゃん」

一方通行 「オイ、俺はオマエのなンなンだ?」

番外個体 「だ~~い好きな彼氏です☆」

一方通行 「うっわ、ウゼェ」

番外個体 「報酬は先払いしておくから、手伝ってよ」つ【回数券】

一方通行 「ンだこれ……オマエの店の回数券か」

番外個体 「うん」

一方通行 「チッ、しょォがねェ……」



822 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:22:55.19 ID:rEUkw2fuo


~第7学区 某所~


一方通行 「つうかよォ、タクシーとか使えばいいじゃねェか」

番外個体 「捕まらなかったんだよ、今日は人も多いから」

一方通行 「あー、卒業式とかテレビで言ってたアレか。俺にゃ縁がねェな」

番外個体 「……今日、ちょっと思ったんだけどさ」

一方通行 「あァ?」

番外個体 「最終信号って、学校に通わせるつもりある?」

一方通行 「……本人が望めばな」

番外個体 「話したの?」

一方通行 「まだだ」

番外個体 「通うなら色々必要なものがあるよ? それこそ……」

一方通行 「分かってらァ……アイツに必要なものがあれば、なんだって揃えてやる」

番外個体 「お、今の台詞はあそこの先生のパクリ?」

一方通行 「あんなナース好きと一緒にすンじゃねェ」



823 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:24:06.98 ID:rEUkw2fuo

番外個体 「んー、でもほら。私がID持ってるのも先生のお陰だし」

一方通行 「まァ……アイツの手も借りることになるだろォな」

番外個体 「私から話してあげよっか?」

一方通行 「……いや、いい。必要になったら俺から話す」

番外個体 「ふーん……ならいいけど」

一方通行 「で? まだ着かねェのか? 結構歩いてンぞ」

番外個体 「見えてきたよ、ほら」

一方通行 「……オイ、あんな廃屋に住んでンのか」

番外個体 「あ、そっか。あなたが来るのは初めてか」

一方通行 「いっつもオマエの方から押しかけてくるからな」

番外個体 「まだ誰も帰ってないみたいだし、寄ってく? 水ぐらいは出すよ」

一方通行 「水かよ……まァいい。休ませてくれ」

番外個体 「ちなみに廃屋じゃないからね。中はそこそこしっかりしてるから」

一方通行 「だといいンですけどねェ」



824 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:25:29.70 ID:rEUkw2fuo


~きぬはた荘 リビング~


一方通行 「へェ……古臭いけど、悪くねェな」

番外個体 「作りが古いのは否定しないけどさ」カチャカチャ

一方通行 「オマエさっき、まだ誰も帰ってないって言ってたが……」

番外個体 「あー、うん。全部で……8人かな? 共同利用してるから」

一方通行 「……どンな連中だ」

番外個体 「……なに? 心配してくれてるの?」

一方通行 「そォじゃねェけどな……」

番外個体 「平気だって、変わり者はいても悪人はいないから」

一方通行 「……なンかあったらすぐに言え。東西南北に引き裂いてやる」

番外個体 「東西南北って……別にそこまでしなくても。自分の身ぐらいは自分で守れるよ」

一方通行 「だけどなァ」

番外個体 「もー、いつからそんな心配性になっちゃったのかな。らしくもない」

一方通行 「あァ? オマエ、人が……」



825 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:27:02.20 ID:rEUkw2fuo

番外個体 「大体あなただって、このチョーカーがなければ生まれたての一方通行状態」

一方通行 「オイ、バカ! 人の生命線に触ンじゃねェ!」グイ

番外個体 「え、ちょっと押さないで……!」グラッ

一方通行 「コラ、掴むな……!」


  バターン


番外個体 「いったー……」

一方通行 「オ、オイ、大丈夫か?」


<ギィィィ バタン
<ただいまー


番外個体 「やばっ、誰か帰ってきた! 早くどいてよ!」

一方通行 「待て、杖、杖どこいった!?」


<真琴? 帰ってるの?(ガチャ)



826 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:29:05.87 ID:rEUkw2fuo

結標 「……」

滝壺 「……」

番外通行 「「……」」←マウントポジション

結標 「そういうのは、自分の部屋でやってもらえない?」

滝壺 「うさぎさんは性欲が強いから」

一方通行 「違ェ!! 勘違いもいい加減にしろォ!!」

番外個体 「いいからどけぇぇ!!」ゲシッ

一方通行 「へぶっ」ゴロゴロ

番外個体 「なんでこんな……用は済んだから帰れ!」ウガー

一方通行 「ああ、はいはい、お暇させて頂きますよォ!」ムキー

番外個体 「また今度押しかけてやるからね! 首洗って待ってろ!」ウガー

一方通行 「せいぜい待っててやらァ! 首狩れるもンならやってみやがれェ!」ムキー


<バタン



827 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:30:30.08 ID:rEUkw2fuo

結標 「……」

滝壺 「……」

番外個体 「」ゼーゼー

結標 「仲いいのね、貴女たち」

滝壺 「私たち、入り込む隙もなかったよね」

番外個体 「……いいからさっさと着替えてきなよ」プイ

滝壺 「そうだね、制服も疲れちゃうし」

結標 「後で何があったか聞かせてよね」

番外個体 「なんもないから!」


<バタン


番外個体 「…………うあああああ、もおおおおお///」バタバタ


<ガチャ


浜面 「あの二人は部屋に戻ったか?」

海原 「ええ、もう大丈夫そうですね」



828 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:31:55.37 ID:rEUkw2fuo

浜面 「で? ミサワの姐さんはどうしたんだ?」

番外個体 「なんでもない。それよりそっちの準備は?」

海原 「大丈夫です、問題はありません」

浜面 「今日は俺達が夕食を馳走してやるぜ!」フンス

番外個体 「任せて大丈夫なの?」

浜面 「漢の料理ってのを見せ付けてやるよ!」

番外個体 「もうなんかダメなような気がしてきた」

海原 「及ばずながら、僕もおりますので。ミサワさんの方の首尾は?」

番外個体 「うん、大丈夫。私の部屋に置いてあるから見にいってみようか」

浜面 「入って大丈夫なのか?」

海原 「同じ屋根の下とはいえ、異性の部屋というと戸惑ってしまいますね」

番外個体 「二人してお相手の部屋に通ってるクセに、今更何言ってるんだか」

浜面 「それはそれ」キリッ

海原 「気分の問題ですよ」



829 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:33:34.64 ID:rEUkw2fuo


~きぬはた荘 番外個体個室~


<ガチャ


浜面 「なんか緊張するな」

番外個体 「別に見られて困るものもな……」

ユリコ 「(・ω・)」モシャモシャ

番外個体 「ちょっとぉ~~!?」

海原 「これはこれは……」

浜面 「こらユリコ、これ食いもんじゃねぇぞ」

ユリコ 「三三三( ・ω・)」ドタタタ

番外個体 「逃げたぞ! 追えーー!」

海原浜面 「「は、はいっ」」


<ユリコさん、お待ちください!
<おい、ユリコ!大人しくいってぇぇぇぇ!?
<シャァァァ



830 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:35:23.11 ID:rEUkw2fuo

 :
 :
 :

番外個体 「で? 逃がしたと?」

海原 「部屋から顔を出した結標さんに五月蝿いと怒られてしまいまして」

浜面 「そもそも捕まえてどうにかなるもんでもねえし」

番外個体 「ま、そうだけどさ……あー、もう、どうしよコレ」

浜面 「せっかく卒業生に進呈しようと用意した花束なのにな」

海原 「損害はどれぐらいなんですか?」

番外個体 「んー……よく見たら花一輪食べられただけだね」

浜面 「つっても、差がでちゃ不平等だよな」

海原 「そうですね、できれば不公平はなくしたいところですが」

番外個体 「……」ブチッ ブチッ

海原浜面 「「」」

番外個体 「はい、これで平等♪」

海原 「なるほど、押してダメなら引いてみろということですね」

浜面 (無表情で花をちぎるミサワの姐さん超怖ぇ……)



831 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:36:54.95 ID:rEUkw2fuo


~その頃 第7学区 学舎の園~


絹旗 「超長居してしまいましたね」

婚后 「みんなで昼食もいただきましたし、その他もろもろもございましたから」

白井 「なんだかんだで大賑わいでしたの」

絹旗 「執事さんは、客として入った店でなぜ給仕をしていたんでしょうか」

婚后 「職業病かと……ええ、わたくしからも言っておきますので」

白井 「店長さんが"店員教育をぜひ"と言っていたのが印象的でしたわね」

絹旗 「やっぱりプロは超違いますよね」

婚后 「まあ、あの仕事ばかり何十年とやってる人ですから」

絹旗 「執事さんもそうですけど、普段見ない人も結構いましたね」

白井 「久しぶりにお姉様のお母様も見られましたし、当分は生きていけますの」フンス

婚后 「あそこまでそっくりだとは思いませんでしたわね」

白井 「姉妹といっても通用しますの」

絹旗 (最初綺麗なミサワさんかと思いました)



832 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/22(火) 00:38:19.45 ID:rEUkw2fuo

絹旗 「さて、超遅くなる前に帰りましょうか」

婚后 「……」

白井 「婚后さん?」

婚后 「このゲートをくぐるのも……生徒として、これで本当に最後ですのね」

絹旗 「ここをくぐれば、婚后さんの新たな伝説が始まるというワケですね」

白井 「そうですの、終わりではなく始まりなのですから」

婚后 「伝説ですか? 今度はどのような伝説を残せば良いのやら」クスクス

絹旗 「行きましょうよ。踏みとどまってても始まりませんよ」

婚后 「そうですわね。遅くなっても家の人が心配するでしょうし」

白井 「最終下校時刻を過ぎれば、ここを通るのもいろいろ面倒ですの。そうなると感動も薄まりますの」

絹旗 「さあさあ、超輝かしい一歩を踏み出してくださいよ」

婚后 「ふふ、ではとくと見届けておいてくださいな」


 ピンポン


婚后 (本当に、お世話になりました)



868 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/23(水) 23:44:42.94 ID:m8b5ABp2o


~きぬはた荘 キッチン~


浜面 「おし、始めるか!

海原 「今日用意した食材はこちらです」


  >゚))))彡


浜面 「こりゃなんていう魚だ?」

海原 「スズキです」

浜面 「なんでまたスズキさんなんだ? 縁起物つったら鯛とかだろ」

海原 「鯛でもよかったですね。でも、スズキも普通にアリかと」

浜面 「そりゃまたどうして」

海原 「スズキは出世魚ではないですか。鯛ほどではないにしろ、縁起は良いと思いますよ」

浜面 「なるほど、出世魚か! 普通にアリだな!」

海原 「さて、このスズキをですね」

浜面 「どうすんだ?」

海原 「それを考えるのは浜面さんですよ」



869 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/23(水) 23:46:28.68 ID:m8b5ABp2o

浜面 「は、え? 俺?」

海原 「はい」

浜面 「考えろって言われてもな……このまま丸ごと塩で焼くぐらいしか思いつかねえぞ」

海原 「豪快で良いですね」

浜面 「そうなのか?」

海原 「漢の料理を見せ付けると豪語していたではないですか」

浜面 「そ、そんなことも言ったっけな」

海原 「塩だけでもいいですか、ハーブを添えるとよりベターかもしれません」

浜面 「ハーブか……そうだ、ハーブだな」ゴソゴソ

海原 「?」

浜面 「あったあった。滝壺がお茶用に買ってたドクダミの余りがあったぜ!」

海原 「……それはハーブではありませんよ」

浜面 「え? 違うの?」

海原 「たしかみなさん使った余りが……」ゴソゴソ

浜面 「ハーブなんてハイカラなもん、俺にゃ分からねぇぞ」



870 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/23(水) 23:48:05.04 ID:m8b5ABp2o

海原 「ありましたありました、これを使いましょう」

浜面 「葉っぱにしか見えねぇ」

海原 「バジルとローズマリーですよ。これで丸ごとハーブ焼きといきましょう」

浜面 「おし、いっちょやるか!」

海原 「僕は添え物のサラダとスープを準備します」

浜面 「……海原、ちょっと待て」

海原 「?」

浜面 「このスズキさん、まだ内蔵入ってるぞ」

海原 「そりゃ魚ですから」

浜面 「これ、どうやってとるんだ?」

海原 「口で説明するよりは見て頂いたほうが早いですね」チャキッ

浜面 「よっ、大先生」

海原 「はっ」


  ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ スパン


海原 「はい、これで内蔵が取り出せると」

浜面 「わかんねぇよ」



871 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/23(水) 23:49:45.12 ID:m8b5ABp2o

 :
 :
 :

浜面 「」ゴリゴリゴリゴリ

海原 「おお、見事な手付きですね」

浜面 「鱗とるのって楽しいな」

海原 「あとは塩と葉っぱ乗せて焼くだけですか」

浜面 「これどうやって焼くんだ? BBQセットでも使うのか?」

海原 「オーブンで」

浜面 「これ、魚も焼けるのか。お前、無骨な見た目に似合わず器用だな」


 【オーブン】<バタン


海原 「あとは待つだけですね」


<ギィィィ バタン
<戻りましたの
<ただいま戻りました
<超ただいまです


浜面 「おっ、お嬢たちのご帰還か」



872 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/23(水) 23:51:10.81 ID:m8b5ABp2o


~きぬはた荘 リビング~


絹旗 「はー、帰ってきたら超ドッと疲れましたね」ポスン

白井 「慣れないことばかりでしたし、仕方ございませんの」

婚后 「」ホワーン

絹旗 「婚后さんはまだ余韻に浸ってるんですか」

白井 「今日ぐらいは大目に見てあげてくださいまし」

絹旗 「とりあえず着替えてきましょうよ。制服は超肩が凝ります」

白井 「あの、ここにいると忘れがちなのですが、一応常盤台ではプライベートでも
    制服着用が義務付けられていてですね」

絹旗 「あ、だから白井さんと婚后さんは普段から制服だったんですか?」

白井 「知らなかったんですか!?」

絹旗 「ええまあ」

白井 「4月から復帰なのですから、しっかりしてくださいまし……」ハァ

絹旗 (復帰、ですか……)



873 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/23(水) 23:52:41.32 ID:m8b5ABp2o

絹旗 「でも婚后さんは別に私服でもいいんじゃないんですか?」

白井 「まあ……卒業されましたし」

婚后 「そういえば、制服はどうしましょう」

絹旗 (あ、戻った)

白井 「思い出としてしまっておけばよろしいですの」

絹旗 「もしくは超高く買ってくれる人がいるかもしれません」

白井 「ジャッジメントですの」

絹旗 「いやいやいや、私は売りも買いもしませんよ!?」

婚后 「わたくしが着古した制服など、どこのどなたが買い取るというのですか」

絹旗 「そりゃその道のhモゴッ」

白井 「もう喋らないでくださいまし」

婚后 「?」

白井 「あ、なんでもないですの」

絹旗 「」ジタバタ



874 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/23(水) 23:54:02.95 ID:m8b5ABp2o

 :
 :
 :

絹旗 「うん、やっぱりいつもの服装が楽です」

ユリコ 「( -ω-)=3」

白井 「制服も慣れてしまえばなんてこともございませんの」

婚后 「制服、礼服、外出着、部屋着、寝間着と大活躍でしたわね」

絹旗 「最後おかしくないですか」

白井 「戦闘服と特攻服も追加ですの」

絹旗 「特攻服!?」

婚后 「白井さんは風紀委員ですし」

白井 「ええ、風紀委員ですので」

絹旗 (いや、でも特攻服って……)

白井 「外出着といえば、婚后さんは一度ご実家に戻られるのでは?」

婚后 「ええ。ですので、来週3日ほど家を空けますわね」

絹旗 「お土産を超お願いします」



875 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/23(水) 23:56:35.29 ID:m8b5ABp2o

婚后 「忘れなければ用意しておきますわ」

白井 「わたくしたちも、荷物の整理をしておきませんと」

絹旗 「う……」

白井 「まあ、全財産持っていく必要はないにしろ、最低限のものは」

絹旗 「わ、分かってますよ」

婚后 「そういえば、寮に入ることはみなさんに伝えましたか?」

絹旗 「……まだです」

白井 「話しづらいようであれば、わたくしから」

絹旗 「いいです! 超自分で話しますから!」

白井 「なら良いのですが……時間が経てば経つほど話し辛くなりますの」

絹旗 「分かってます……」

絹旗 (超、辛いです、けど……)

絹旗 (今更覆せません……自分で決めたことですから)


<ガチャ


海原 「そろそろ夕食にしませんか?」



876 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/23(水) 23:58:16.40 ID:m8b5ABp2o


~きぬはた荘 食堂スペース~


白井 「まあ、魚丸ごと一匹焼いたんですの?」

浜面 「俺の自信作だぜ!」フンス

絹旗 「浜面らしい超大雑把な料理ですね」

婚后 「あら、殿方らしく豪快な料理ではございませんか」

浜面 「ただの魚じゃぇねえ。スズキだぜ、出世魚だぜ」

白井 「縁起物ですのね」

婚后 「もしや、滝壺さんのために?」

絹旗 「そういえば、滝壺さんも今日卒業でしたね。浜面にしてはやるじゃないですか」

浜面 「いやいや、お嬢のためでもあるぞ?」

海原 「今日の料理は、卒業を迎えた皆さんへの捧げ物ですよ」ニコニコ

婚后 「まあ、ここまでして頂けるなんて……」


<ガチャ


滝壺 「いい匂い」フンフン

結標 「あれ? 一人足りなくない?」



877 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/23(水) 23:59:43.35 ID:m8b5ABp2o

絹旗 「ミサワさんがいませんね」

結標 「また寝てるのかしら……ちょっと呼んでくるわね」

海原 「あ、いいですよ。すぐいらっしゃいます」

結標 「?」

浜面 「まあまあ、座れ座れ」

海原 「さて、そろそろですかね?」

白井 「まだなにか企んでますの?」


<ガチャ


番外個体 「お待たせー」

婚后 「ミ、ミサワさん、それは……?」

滝壺 「花束、だよね」

番外個体 「んーと、とりあえず浜面さんと海原さんね」

海原 「はい」

浜面 「なんか緊張するな」



878 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/24(木) 00:01:36.53 ID:AMox1waDo

結標 「いったい何を始めようっていうのよ」

海原 「結標さん」キリッ

結標 「は、はいっ」

海原 「これはご卒業のお祝いです」

結標 「へ? えっ?」

浜面 「えーと、その、なんだ……お、おめでとさん」

滝壺 「はまづら……ありがとね」

番外個体 「で、もう一つは……白井さんでいいや」

白井 「でいいや、ってヒドイですの!」

絹旗 「白井さんに、ではないですよね? 渡す相手は決まってますよね」

白井 「分かってますの!……はい、ご卒業おめでとうございますの」

婚后 「ありがとうございます……来年から、後輩たちを頼みますわね」

白井 「い、言われなくても分かっておりますの」プイッ

絹旗 「あ、超照れてます」

白井 「照れてません!」



879 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/24(木) 00:03:58.25 ID:AMox1waDo

番外個体 「じゃ、渡すものも渡したし、夕食にしよ」

絹旗 「はーまーづーらー、取り分けてくださいよ」

浜面 「悪いがお前は後だ。今日の主役は別だからな」

絹旗 「ぐぬぬ……わ、私だって超復学するんですから!」

浜面 「じゃお前は4番目に取り分けてやろう」

絹旗 「くっ、超仕方ないですね……」

結標 「わざわざここまでしてもらうと、かえって申し訳ないわね」

滝壺 「これ本物の花だ」フンフン

番外個体 「最初はね、もっと大きいのにしようって話もあったんだ」

浜面 「あの、開店したパチンコ屋の前に置いてあるようなヤツな」

海原 「予算の都合で見送ったんですよね」

白井 「あんな大きい物をもらっても困るでしょうに」

婚后 「貰う側としては、これぐらいが一番嬉しいかもしれませんわね」

浜面 「さあ、適度に分けたぜ。食った食った!」

番外個体 「あ、白身魚にはこのワインが合うらしいk」

結標 「没収」ヒュ



880 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/24(木) 00:06:00.72 ID:AMox1waDo

番外個体 「……淡希はアルコールに嫌な思い出でもあるの?」

結標 「貴女にだけは絶対に飲ませない」

海原 「まあ、色々あるんですよ」

番外個体 「?」

絹旗 「……これ、浜面が作ったんですよね」

浜面 「その通りでございます」

絹旗 「……」

滝壺 「おいしいよ」モシャモシャ

白井 「あっさりしていてよろしいですの」

婚后 「豪放な外見の割には、美味しいですわね」

浜面 「それ、褒めてんのか?」

絹旗 「お代わり」

浜面 「お、うまいってことか! そうだろうそうだろう」

絹旗 「ち、違いますよ! 浜面が取り分けた量が超少なかったんですよ!」

滝壺 「はまづら、そういうことにしておいてあげて」



881 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/24(木) 00:08:07.68 ID:AMox1waDo

浜面 「そうだな、そういうことにしておこう。さあ絹旗、たーんと食うがいい」

絹旗 「なんですかそれ! 超なんですかそれ!」

番外個体 「ねー、一口ぐらいなら」

結標 「ダメったらダメ!」

白井 「未成年の飲酒は禁止されておりますの」

番外個体 「えー、去年のクリスマスとか全員で酔いつぶれてたじゃん」

滝壺 「あ、こんごう。ゆりこが」

ユリコ 「(・ω・)」モシャモシャ

婚后 「こら、ユリコ! 白身魚とはいえ、ネコには濃いですわよ!」

海原 「ユリコさんもお気に召すほど上等な魚だったのでしょうか」

浜面 「いやいや、俺の味付けだろ」フンス

絹旗 「猫向けに作ってないくせに何言ってるんですか。あ、ダメですよ、ユリコ」

ユリコ 「ノシ・ω・)ノシ」

滝壺 「ゆりこは好き嫌いしないよね」

結標 「好き嫌いしなさすぎだと思うんだけど……」



882 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/24(木) 00:10:12.09 ID:AMox1waDo


~同日夜 きぬはた荘 絹旗個室~


絹旗 「うー……」

絹旗 「結局、超話せませんでした……」

絹旗 「ここから出なきゃならないって」

ユリコ 「」スピー

絹旗 「分かってるんですよ、いつでも帰ってこれるって」

絹旗 「……自覚してないだけで、超イヤなんでしょうか」

絹旗 「今の生活から離れることが」

絹旗 「でも、私は……」

ユリコ 「」ゴロン

絹旗 「決めたんです、いい加減踏み出さないといけないって」

絹旗 「」ゴシゴシ

絹旗 「超眠い頭で考えても結論はでませんね。今日はもう寝るとしましょう」



883 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/24(木) 00:11:09.90 ID:AMox1waDo

といったところで、今回はここまでです。
卒業編もこれで終わりとなります。
当初思ってたよりも長くなった。

次回からは幕間を2つお送りしたいと思います。
幕間なので、それほど長くなりません。
次回投下は3/25(金)の夜を予定しています。

お付き合い頂き、ありがとうございました。
それでは、これにて。



885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/24(木) 00:13:48.06 ID:55rzD3FDO


完結までがんばってくれ




890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北):2011/03/24(木) 07:26:48.77 ID:rZpdd5jAO
結局、乙って訳よ!
黒子、絹旗がでてくとなるとすごい寂しくなるな…。はまづらの大事な娘なのに…




891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/24(木) 11:37:05.90 ID:FyyBNSNSO
娘というより妹だろアレは



889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2011/03/24(木) 00:23:05.28 ID:WN3s1Hvd0
乙!
さみしくなるな……




907 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:40:15.44 ID:YfC85ouFo
それでは、始めさせて頂きます。
幕間その1、裏デルタフォースのお話です。



908 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:41:36.22 ID:YfC85ouFo


~3月13日 第7学区 とある廃ビル~


 カツッ...カツッ...カツッ...


一方通行 「……ここかァ?」

一方通行 「随分と洒落たところを指定してきたじゃねェか」


 ガチャ ギィィィ...


浜面 「来たか」

海原 「ふふ、これで全員揃いましたね」

浜面 「しかし、お前が素直に来てくれるとはな。驚いちゃったぜ」

一方通行 「……」

海原 「彼はこう見えて、義理堅いところもあるんですよ」ニコニコ

一方通行 「オイ、意味のねェ雑談するために集まった訳じゃねェだろ」

海原 「そうですね。では、始めましょうか」



909 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:42:51.14 ID:YfC85ouFo

浜面 「ホワイトボードが置きっぱなしになってたんでな。使わせてもらおうぜ」カラカラ

海原 「これで色々捗りそうですね」

一方通行 「……なァ、ここでやる必要あンのか?」

浜面 「お前のリクエストに答えた結果、決まった場所がここなんだよ」

海原 「人は少ないほうがいいと仰っていたじゃないですか」

一方通行 「まァ、いいけどよ」

浜面 「さて、今日集まったのは他でもない。これを決めるためだ」カキカキ


  【ホワイトデーのお返しはどうするべきか?】ドン


海原 「幸運なことに、今年は結構頂いていますしね」

浜面 「俺なんぞここまでもらったのは人生初だぜ」

一方通行 「俺はこういうのは詳しくねェ。適当に決めておいてくれ」

海原 「喜んで頂けるのが第一です」

一方通行 「喜ばせりゃいいのか? だったら高級なアクセサリーでも与えりゃいいかァ」

浜面 「よせ。あらぬ誤解を生みかねん」



910 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:44:13.97 ID:YfC85ouFo

一方通行 「だったらなンだ? 高級な下着か?」

浜面 「お前、それはマジでやめとけ。相手によっては殺される」

海原 「まず高級というキーワードから一旦離れてくださいよ」

一方通行 「ったく、メンドくせェ……じゃ、何ならいいンだよ」ガシガシ

海原 「」

浜面 「」

一方通行 「オイ、オマエらも分かってねェじゃねェか」

海原 「いやいや、お恥ずかしい限りです」

浜面 「俺だってこういうのは詳しくねぇしよ」

海原 「……ふむ、どうやら僕らは重大な問題を見落としていたようですね」

一方通行 「あァ、俺たちはあまりに無知すぎる。ホワイトデイってヤツに関してな」

浜面 「敵を知り己を知れば百戦危うからずと昔の偉い先生も言ってたしな」

海原 「という訳で、まずは情報収集から始めましょう」

浜面 「そうだな。情報は命だ、そこさえ押さえれば、俺たちに負ける要素はなくなる」



911 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:45:29.47 ID:YfC85ouFo

海原 「では、4時間後にここに再集合ということでよろしいですか?」

一方通行 「俺は構わねェ」

浜面 「よし、いくぜ! 俺たちの勝利のために!」

海原 「将来のために」

一方通行 「……」

海原浜面 「「」」ジー

一方通行 「?」

海原 「なにか言ってくださいよ」

浜面 「ここはビシッとキメるところだぜ?」

一方通行 「いや、訳わかンねェから」

海原 「まあまあ、そう照れずに。さあ、どうぞ」

浜面 「今から第一位がめっちゃかっこいいこと言いまーす」

一方通行 「……あ、アイツのために」

浜面 「決まったぁ! 惚れちゃいそうだぜ一方通行!」

海原 「参りました。おいしいところを全部持っていかれてしまいましたね」

一方通行 「だァァ! うるせェ! 時間ねェンだからさっさと行くぞ!」



912 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:46:50.96 ID:YfC85ouFo


~第7学区 とある書店~


一方通行 「さァて、始めるとしますかねェ」

一方通行 (とりあえず実用書、その後で参考書、学術書、辞書の順にまわってみるか)

一方通行 (そンだけ探しゃどっかしらにはあンだろ)

一方通行 「さっさと済ませるとすっかァ」


~1時間後~


一方通行 (ねェ……だと……? クソッ、どォなってやがる!)

一方通行 (これだけ探して1冊も出てこねェなンざ……)

一方通行 (……まさか、情報操作が?)

一方通行 (ホワイトデイなんざ俺には似合わないと、そう言いてェのか?)

一方通行 (クッ……上等じゃねェか!)

一方通行 (どんな手でも使って、最高のホワイトデイを演出してやらァ!)

一方通行 「オイ、そこの」

店員 「は、はいっ」

一方通行 「金に糸目はつけねェ。ホワイトデイに関する資料を寄越しやがれ」



913 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:48:23.58 ID:YfC85ouFo


~第7学区 とあるネカフェ~


浜面 「やっぱ今時の情報収集つったらネットだろ」

浜面 「ええと、"ホワイトデー お返し"と……」カチャカチャカチャ ッターン

浜面 「よーし、いい子だ……」

浜面 「お? おお? ホワイトデー特集? 人気ランキング?」

浜面 「いいね、いいねぇ。情報の海だねぇ」

浜面 「あとは、滝壺が喜びそうなものをピックアップして、と」カチカチ

浜面 「……んー、色々あって目移りしちまうな」

浜面 「まあ、いいさ」

浜面 「時間だけはたっぷりあるんだしな」カチャカチャ ッターン

浜面 「しかし、安いのから高いのまで、ピンキリなんだな。こういうのは」ウンウン


<(さっきから隣のブースがうるせぇなあ……)



914 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:49:53.01 ID:YfC85ouFo


~第7学区 とあるデパート~


海原 「お、やっぱり特設コーナーがありましたか」

海原 「やはり、主役はお菓子のようですね」

店員 「何かお探しですか?」ニコニコ

海原 「ええ、恋人と義妹と同居人にお返しをしたいと思いまして」

店員 (……? どういう人間関係?)

海原 「お菓子にも種類がありますが、何がいいのでしょうか」

店員 「そ、そうですね。例えばこちら」

海原 「これは、焼き菓子ですか?」

店員 「はい。お返しする品物によって、暗黙のメッセージがあるんですよ」

海原 「初耳ですね」

店員 「ホワイトデーのお返しで、主流といったらこの3種類になります」

海原 「クッキーに、飴ちゃんに、これは……マシュマロですか」

店員 「はい。それぞれ、意味が込められていてですね……」



915 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:51:06.50 ID:YfC85ouFo


~数時間後 第7学区 とある廃ビル~


海原 「おっと、僕が最後ですか」

浜面 「遅かったじゃねえか。収穫はあったんだろうな?」

海原 「ええ、それはもう。ところで、一方通行さんは何を?」

一方通行 「見りゃ分かンだろ。雑誌だ」パラ...パラ...

海原 「それが一方通行さんが見つけた情報ですか」

一方通行 「まァな。オマエはどうだったんだよ」

海原 「有益な情報を仕入れてきましたよ」

浜面 「きかせてくれよ」wktk

海原 「贈り物には暗黙のメッセージがあるそうです」

一方通行 「暗黙だァ?」

海原 「ホワイトボードかりますね。つまり……」カキカキ


  マシュマロ → NG
  飴ちゃん  → お友達
  クッキー  → OK



916 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:52:42.34 ID:YfC85ouFo

海原 「ということらしいですよ」

一方通行 「オマエ、それはメーカのキャンペーンじゃねェのか?」

浜面 「そこを否定したらホワイトデーそのものがなかったことになるぞ」

一方通行 「でもよォ、これ見てみろよ」

海原 「"本命へのお返しに手作りマシュマロ"?」

一方通行 「わざわざ作り方の解説までしてるンだぜ?」

浜面 「親切だな。これなら俺でも作れそうだ」

海原 「おや? となると食い違いが発生してしまいますね」

一方通行 「マシュマロに意味のバッティングが発生するってワケだ」

浜面 「……どっちが正解なんだ?」

一方通行 「さァな」

海原 「これは保留にしましょう。浜面さんが持ってきた情報とは?」

浜面 「おお、俺はな、こいつだ」つ□

一方通行 「なンだこりゃ」

海原 「ショッピングサイトのランキングですか……?」



917 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:54:17.84 ID:YfC85ouFo

浜面 「これ見ると、一方通行が"高級高級ゥ!"って言ってたのも間違いじゃない気がしてくるな」

海原 「ジュエリーにブランドグッズに……高級スイーツもありますね」

一方通行 「……オマエ、これを人数分揃えるだけの甲斐性あるンかよ」

浜面 「ないぜ!」

海原 「これだけを素直に受け取るなら、たしかに高けりゃいいというのも頷けます。ですが……」

浜面 「ですが?」

海原 「僕に贈ってくれた人たちが、価値や金額になびくような人とは思いたくありません」

海原 「例えそれがふざけた幻想であってもです」

浜面 「……たしかにな。大事なのは値段じゃねぇ。それは最初から分かってた話だ」

一方通行 「俺ァ、そォいうのは苦手だ……だが、やらなきゃならねェようだな」

海原 「行きましょう。ここで燻っていても何も始まりません」

浜面 「そうだな。大事なのは価値じゃねぇ、ハートだ!」ドン

一方通行 「……行くとしますかァ。あのドアの向こうへよ」

浜面 「値段が高いものを贈っておきゃいい。そんな幻想があるのなら」

海原 「この僕達で、その幻想を」

一方通行 「ブチ殺してやンよ」

海浜通行 「「「行くぞ!」」」



918 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:55:34.65 ID:YfC85ouFo


~数時間後 第7学区 とある廃ビル~


浜面 「厳選に厳選を重ねたぜ……アイツらが喜びそうなものを、蜘蛛の巣はった頭で考え倒した」

海原 「きっと喜んで頂けますよ」ポンポン

浜面 「ああ、やりきったな!」

一方通行 「……オマエら、大事なこと忘れてンぞ」

海原 「なんですか?」

一方通行 「買って終わりか? ンなワケねェよなァ。プレゼントは渡さなきゃ意味がねェ」

海原 「たしかに。つまり僕らはようやくスタートラインに立てたということですね」

浜面 「闘いの本番はまだこれからってことだ」

一方通行 「そォと決まりゃァ、ちと休憩を挟まねェとな」

海原 「今何時ですか?」

浜面 「そうね、大体ね……19時ちょい前だな」

海原 「小休止するぐらいの時間はありそうですね」

一方通行 「今のうちに、消費した体力を回復させておかねェとな」ゴロン

浜面 「言われてみりゃ、歩きっぱなしだったし疲れたな」

海原 「では、一休みと行きましょうか」



919 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:57:02.27 ID:YfC85ouFo


~同日夜 きぬはた荘 リビング~


結標 「」ソワソワ

滝壺 「……」


<ガチャ


番外個体 「あれ? まだ起きてたの?」

結標 「……帰ってこないのよ」

番外個体 「海原さん?」

結標 「うん……」

滝壺 「はまづらも」

番外個体 「二人とも? 一緒にいるのかな」

結標 「分からないけど……電話しても出ないし」


 【携帯電話】<トーキヲコーエー イツマーデーモー アナターダーケー アーイシーテルー


番外個体 「あっ、ちょっとゴメン……もしもし?」



920 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 00:58:41.70 ID:YfC85ouFo

結標 「さすがに心配ね」

滝壺 「……」

番外個体 「……帰ってこない? 連絡もないの? ……いや、知らない……わかった」ピッ

結標 「貴女、今の電話もしかして」

番外個体 「彼の……同居人から。あいつ帰ってきてないんだって」

滝壺 「あくせられーたも?」

番外個体 「ちょっと行ってくるよ。家に一人で不安みたいだから」


<ガチャ バタン


結標 「3人揃って?……なんか嫌な予感がしてきたんだけど」

滝壺 「……私、探しに行く」

結標 「ま、待ちなさい! こんな時間に……いくらなんでも危ないわよ」

滝壺 「でも心配だから」

結標 「……」

滝壺 「大丈夫だよ、なにかあったらすぐ逃げるから」

結標 「待って。私も行く」

滝壺 「……みさわにも一応連絡しておこう。もしかしたら3人一緒なのかも」



921 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 01:00:02.56 ID:YfC85ouFo


~翌朝 第7学区 とある廃ビル~


 チュンチュン......


浜面 「……んぉ。いかんいかん、すっかり寝ちまった」

浜面 「おい、ちょっと待て。気のせいか外が明るいぞ?」

浜面 「携帯携帯……今何時だ?」パカッ


  不在着信 96件


浜面 「」

海原 「」スピー

一方通行 「」スピー

浜面 「おっ、おおおぉぉおお起きろお前ら! 大変だぁぁぁ!!」

海原 「……? これはこれは、寝てしまっていましたか」ムクリ

一方通行 「ウルセェな、人の頭上で騒ぐンじゃねェ……」

浜面 「……お前ら、携帯見てみろ」



922 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 01:01:45.16 ID:YfC85ouFo

海原 「?」カシュッ


  不在着信 104件


海原 「」ポロッ ガシャン

一方通行 「……オイ、ちょっと待て。なんで朝になってるンだ!?」

浜面 「ははは、どうやら全員揃って寝ちまってたらしい」

海原 「ど、どうするんですかこれ! 大変なことになりましたよ!」

一方通行 「ンで起こしてくれなかったンだァ!」

浜面 「知るかぁぁ! んなもん全員同罪だろうがぁぁ!!」


 コツッ コツッ コツッ


海原 「……誰か来てますよ」

一方通行 「近づいてきてやがるな」カチッ

浜面 「チッ、こんなときに……」


<キィ...パタン...


?? 「……見つけた」



949 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:28:26.85 ID:YfC85ouFo


<キィ...パタン...


滝壺 「……見つけた」

浜面 「たっ、滝壺!?」

滝壺 「あくせられーたが一緒だったお陰で、探しやすかったよ」ポイッ


  カシャン


一方通行 「……なンだこりゃ」

浜面 「まさか……お前、体晶を!?」

滝壺 「ううん。体晶を使わなくても、方向だけならなんとなく分かるから」

浜面 「で、でもよ」

滝壺 「あとは勘かな」

海原 「勘……」

浜面 「けど、これは体晶ケース……ん?」ヒョイ

滝壺 「それはGPS発信器。ここの座標をみんなに知らせてるの」

海原 「座標を、みんなに……?」



951 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:29:50.14 ID:YfC85ouFo


  カツッ


結標 「今日ほど自分の能力に感謝した日はないわね」

海原 「」ビクッ

結標 「一体どういうつもり? 夜中になっても帰ってこず、電話にも出ないで」

海原 「あ、あの」

結標 「ようやく見つけてみれば、こんなところでキャンプ? 気楽なものね、人の気も知らないでさ」

海原 「それはその、どこから説明しましょうかね?」

結標 「……納得できる説明ができるのでしょうね」

海原 「ええとですね」


<バゴォォォン カランカラン...


浜面 「かっ、壁が……!?」

番外個体 「一方通行ぁ!」ギロリ

一方通行 「」ゾクッ



952 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:31:25.32 ID:YfC85ouFo

番外個体 「最終信号から電話があったんだよ……あの人が帰ってこないって」

番外個体 「それで夜中にあなたの家に行った。でも帰ってくる気配はないし、電話にもでない」

一方通行 「あァ……悪かった」

番外個体 「悪かった? ホントに悪かったって思ってる?」

一方通行 「っ……!?」ビターン

浜面 「お、おい! 一方通行!?」

番外個体 「最終信号も怒り心頭だよ? 安全が確認できた以上、演算停止されても文句言えないよねぇ?」

番外個体 「……チョーカーの電池が切れたとか、或いは不具合があったとか」

番外個体 「どれだけ心配したと思ってんだ!!」ゲシッ

一方通行 「」ゴロゴロ

海原 「ミ、ミサワさん! どうか穏便に!」

浜面 「俺らが一方通行に声掛けたんだよ! な!」

番外個体 「どれだけ、心配、した、と……」グス

一方通行 「」



953 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:33:05.74 ID:YfC85ouFo

番外個体 「……無事で、よかった……」ギュウ

一方通行 「」

海原浜面 「「……」」

滝壺 「私たちの言いたいこと、もうわかるよね?」

結標 「その上で、何か言うことがあるんじゃない?」

海原浜面 「「ご心配ご迷惑おかけしてすみませんでした!!」」 orz orz

 :
 :
 :

結標 「ふーん、それで寝ちゃってた、と……」

海原 「はい」←正座中

結標 「その気持ちは嬉しいんだけどさ……」

滝壺 「ちゃんと連絡してほしかったよね」

海原 「返す言葉もございません」

浜面 「驚かせてやろうという思いもございました」←正座中

番外個体 「違う意味でなら驚いちゃったけどね」

一方通行 (あ、脚が……)←正座中



954 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:35:16.27 ID:YfC85ouFo

滝壺 「ね、ホワイトデーだから何か用意してくれたってことなんだよね」

浜面 「いかにも!」

海原 「と、とりあえず、受け取って頂けないでしょうか?」

結標 「……見せて」

海原 「はいっ。こちら、ホワイトデーの品になります」ズイ

結標 「これって……」

海原 「紅茶の葉です。結標さん、食後はいつも紅茶ですので」

結標 「海原」

海原 「はっ」シャキッ

結標 「ありがとね」ニコニコ

海原 (こ、これでお怒りをお鎮めに)

結標 「でもそれとこれとは別だからね」

海原 「」

浜面 (海原……死ぬときは一緒だぜ)

浜面 「滝壺! 受け取ってくれねえか!」



955 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:36:39.17 ID:YfC85ouFo

滝壺 「うん、いいよ」

浜面 「お納めくだせえ」ズイ

滝壺 「」ガサガサ

番外個体 「なになに?」

滝壺 「……パスケースだ」

浜面 「滝壺、今持ってるのは使いづらいって言ってただろ? それで、普段着とお揃いのピンクのヤツをだな」

滝壺 「はまづら、ありがとね」

浜面 (ktkr)

滝壺 「ちょっとだけ許してあげる」

浜面 「ちょっとだけ……」

番外個体 「二人とも容赦ないなー」ケラケラ

海原 (浜面さん……)

一方通行 (あ、あァァァ……脚がァァ)ジンジン



956 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:37:54.40 ID:YfC85ouFo


 【携帯電話】<アナータダーケ ミツメーテールー デアッタヒカーラー イーマデモズット♪


滝壺 「もしもし……あ、きぬはた」

滝壺 「……うん、今みんな一緒にいるよ」

滝壺 「ごめんね……もうちょっとしたら帰るから……はい」ピッ

結標 「絹旗さん? 書き置き残してきたのよね?」

滝壺 「うん。"出てきます。ごめんなさい"って」

結標 「……え? それだけ?」

滝壺 「うん」

番外個体 「それで伝わるかどうか疑問だけどね」

結標 「はあ……とりあえず帰るわよ。家の人も心配してるし」

海原浜面 「「はい」」

一方通行 「……」

番外個体 「あなたもだよ」

一方通行 「……ワースト……手を貸してくれねェか?」



957 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:39:14.32 ID:YfC85ouFo

番外個体 「?」

一方通行 「痺れて……立てねェ……」

番外個体 「……つかまって」

一方通行 「すまねェな……」ヒシッ

番外個体 「ゴメン、この人送ってくから。先に……」

滝壺 「うん、そうしてあげて。みんなにははまづらから説明させるから」

浜面 「ふぇ?」

結標 「プルプルしてて生まれたての一方通行状態だもんね」

番外個体 「ゴメンね、夕方までには戻るから」

結標 「はいはい」


<もー、さっさと歩いてよ(ゲシッ)
<ンぎゃァァァァァア!?


滝壺 「それじゃ、私たちも帰ろうか」

結標 「そうね、一晩中動きまわって疲れちゃったし」

海原浜面 ((助かった、のか……?))



958 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:40:29.88 ID:YfC85ouFo


~数日後 第7学区 とあるファミレス~


店員 「いらっしゃいませ、一名様ですか?」

一方通行 「……待ち合わせだ」


<おっ、来た。こっちこっち。


海原 「やあ、先日はどうも」ニコニコ

浜面 「ちゃんと帰れたか?」

一方通行 「なンとかな。オマエら、あれから何もなかったのか?」

海原 「まー、いろいろありましたよ」

浜面 「どうにかお許しは頂けたけどな」

一方通行 「……バツゲームか」

海原 「その様子だと、一方通行さんも何かあったようですね」

浜面 「3人共同の企画だったんだな、あれは」

一方通行 「オマエら、何やらされたンだよ」



959 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:42:16.04 ID:YfC85ouFo


海原 「僕はですね……」



 *** 回想ここから ***


結標 「あのね。私、今すっごい眠いの」

海原 「はあ」

結標 「なんでか分かる?」

海原 「寝てないからじゃないですか?」

結標 「一晩中寝ずに貴方を探してたからでしょ!!」

海原 「はいっ、すいません!」

結標 「で、今から寝るから。貴方は私が起きるまでずっと腕枕してなさい」

海原 「ですが」

結標 「いいから」ジロリ

海原 「はい、喜んで!!」


 *** 回想ここまで ***



960 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:43:45.16 ID:YfC85ouFo


海原 「その後、結局腕枕ではなく抱き枕にされてしまいまして」

浜面 「……」

一方通行 「……」

店員 「……」

海原 「まあ、この程度で許してもらえて良かったと思うべきなんでしょうね……」ハァ

一方通行 「オマエおかしくねェかァ!?」

浜面 「それバツゲームじゃなくね!? ご褒美じゃね!?」

海原 「え!? ですが、飲まず食わず動けずで7時間もじっとしてたんですよ!?」

一方通行 「それだけで済ンでンだろォがァァ!」

浜面 「そうだそうだ! 敢えていうならいつも通りじゃねぇか!」

海原 「そういう浜面さんたちは何があったと言うんですか」

浜面 「いいぜ、話してやる! 刮目して聞け!」



 *** 回想ここから ***


滝壺 「はまづら。私ね、すっごい心配だったの」

浜面 「はい」



961 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:45:05.42 ID:YfC85ouFo

滝壺 「また何か危ないことに巻き込まれたんじゃないかって」

浜面 「申し訳ございません」

滝壺 「だからね、これ」

浜面 「お、おい。これって」

滝壺 「お守りがわり、ずっと持ってて。私だと思って」

浜面 「あ、ああ、あの……」

滝壺 「なくしたり捨てたりしたら怒るからね」


 【GPS発信器】ピコーンピコーン


浜面 「これを、ずっと、肌身離さず?」

滝壺 「それを、ずっと、肌身離さず」

浜面 「……」

滝壺 「ね?」

浜面 「分かり申した」グス


 *** 回想ここまで ***



962 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:46:55.50 ID:YfC85ouFo

浜面 「見ろよ、今もネックレスにして持ち歩いてるんだぜ!」バッ

一方通行 「なンつうか……」

海原 「深い愛ですね」

浜面 「深すぎだぜ、深すぎるぜ」

一方通行 「ま、まァ、いいンじゃね? なンかあっても見つけてもらえンだろ」

浜面 「まあな……さあ、次は一方通行の番だ」

海原 「どういった制裁を受けたのですか?」

一方通行 「オマエは制裁っていうな」



 *** 回想ここから ***


打ち止め 「」ムスー

一方通行 「オイ、いい加減機嫌直せよ」

番外個体 「んなこと言える立場か」ベシッ

一方通行 「いてェ」

打ち止め 「ミサカすっごい心配して! 寝ないであなたが帰ってくるの待ってて!」



963 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:48:24.02 ID:YfC85ouFo

一方通行 「……」

打ち止め 「ワーストにも協力してもらって……それで、ミサカは……ミサ……」ウルウル

番外個体 「……この子もずっと寝ずに待ってたんだよ」

一方通行 「すまなかった」

打ち止め 「うわあああああん!!」ビエー

 :
 :
 :

打ち止め 「」スピー

番外個体 「流石に徹夜は応えたみたいだねぇ」

一方通行 「……」

番外個体 「私に対してはもうどうこうしなくていい。あなたが無事だったし、それでいいよ」

一方通行 「だが……」

番外個体 「そうだなー。悪いと思ってるなら、この子の負担をちょっと減らしてあげたら?」

一方通行 「?」

番外個体 「例えば、今分担してやってるのを全部あなたがやるとかさ」


 *** 回想ここまで ***



964 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:49:52.56 ID:YfC85ouFo

一方通行 「つうワケで、家事全般をやってる状況だ」

浜面 「慣れないことすると大変だろ」

一方通行 「情けねェことに、今も全身筋肉痛だぜ」ミシミシ

海原 「まあ、それだけのことをしでかしてしまったんですよね、僕らは」

浜面 「なんかお前が言うとむかつく」

海原 「何故ですか!」

一方通行 「オマエが起こしてくれなかったからだろォが!」

海原 「それは僕だけの責任ではないでしょう」

浜面 「まあまあ、過ぎたことはしっかり反省して、昼飯にしようぜ。あ、すいませーん」

店員 (クソッタレリア充どもがお呼びだ)

海原 「しかし、普段は女神のような方でも、怒らせると怖いですね」

一方通行 「女ってなみンな似たようなもンだ」

浜面 「今まで通りやってりゃ、今回ほど怒らせることもないだろ」

海原 「そうですね。今回はあくまでやらかせてしまったのですし」

一方通行 「気を付けねェとな、ホントによ……あいてて」ミシミシ



965 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/26(土) 23:50:58.52 ID:YfC85ouFo

といったところで、今回はここまでです。
幕間その1、裏デルタフォース編は以上となります。
ミサワさんの着メロは LIV MOON の『DOUBLE MOON』という曲です。



966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/03/26(土) 23:53:18.96 ID:umdHzT1K0
乙です
男性陣は当然の報いだなうん しかし店員が俺らの気持ちを言ってくれてるな




973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/27(日) 01:35:52.41 ID:O59jYX/SO
裏デルタフォースワロタwwwwww
実際に全員が暗部出身だもんなwwwwwwww




975 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:40:53.16 ID:GP/ApBnQo

>>1です。

このまま始めさせて頂きます。
幕間その2、とあるマスターの業務日誌です。



976 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:41:53.54 ID:GP/ApBnQo

4月5日

無印良品で買ってきた出納帳の隅っこに謎のスペースがあったので、
日々の所感でも書き留めてみようと思う。



977 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:43:08.57 ID:GP/ApBnQo

4月7日

巡り巡って、学園都市でひっそりと喫茶店を始めることになった。
傭兵稼業でもよかったのだか、体力の衰えは否めないのである。
こんな状態で姫をお守りすることができるのであろうか。

いや、そもそも姫は私のことを覚えているであろうか。
何も言わずに消えた男など忘れて当然なのかもしれない。

まあ、あの世話焼きがいれば大丈夫であろう。


オープンから3日。客は1人も来ていない。



978 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:44:30.75 ID:GP/ApBnQo

4月17日

オープンから10日が経過した。
客のいない寂れた雰囲気が逆に受けたのであろうか、徐々に常連客が増えてきた。
学園都市というが、常連客に学生風な人物は見受けられない。

印象に残った客について書いてみようと思う。
今日、ゴリラが来店した。
いや、ゴリラかと思ったのだが、よく見たら人間だった。

雑談していて分かったのであるが、どうやら教師をしているらしい。
失礼を承知で言うが、このなりでは生徒が怯えるのではないだろうか。
どうもしばらく入院していたらしく、濃いコーヒーは久しぶりだと喜んでいた。

このゴリラ、誰かと間違えられた挙句、フルボッコにされたそうだ。
人違いでボコられるとは災難だ。
世の中にはひどいことをする輩もいるものである。



979 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:45:43.51 ID:GP/ApBnQo

4月20日

こちらが慣れていないせいもあるが、手が回らなくなりつつあるので
バイトの募集を初めてみた。

といっても、学園都市の給金の相場が分からないので、
求人情報誌を何冊か購入し、今中身を確認している。

思っていたよりも高いのである。
どうしたものか。



980 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:46:52.88 ID:GP/ApBnQo

4月22日

広告の打ち方など分からなかったので、バイト募集という旨と
連絡先を書いた紙を数枚、電柱に張っておいたのであるが。
募集をかけて2日、早くも連絡があった。
思っていたよりも早く来てくれてよかったのである。

余程の変人でない限り採用するつもりであるが、形式を取り繕うため
面接だけはしておこう。

電話の声を聞いた感じ、若い女性らしい。
欲を言うと軽食メニューが作れるぐらいのレベルがほしいところであるが。



981 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:48:07.35 ID:GP/ApBnQo

4月23日

バイト志望の子が来店。
釣り目が印象的な10代後半ほどの少女であった。
なんでも、ロシアから来日したばかりで学校には通っていないらしい。
そういう事情であれば日中でもシフトに入ってもらえそうである。

どうでもいいことであったが、なんとなく志望理由について訪ねてみた。
曰く「お金がないから」だそうだ。これには好感が持てた。
「社会勉強」やら「労働の経験」といった取ってつけたような理由では
ないあたり、素直で良い子である。

とりあえず採用した。



982 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:49:41.39 ID:GP/ApBnQo

4月24日

今日、一見さんが来店した。
やたらと白くて細い、もやしのような少年だ。
「お、うめェな」と呟いていたので、コーヒーには一家言あるらしい。

このもやしが帰るとき、買い物から帰ってきたバイトの子と
鉢合わせしたのだが、妙な雰囲気であった。
どうやら因縁ある関係らしい。

店で殴り合いを始めるようなら仲裁するつもりであったが、
そんなこともなくもやしは帰っていき、バイトの子も
何事もなかったかのように仕事に戻った。

予想するに、私とあの世話焼きのような関係なのであろう。



983 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:51:00.60 ID:GP/ApBnQo

5月1日

英国王室、ローマ教皇庁からの電話攻撃が酷い。
ほとんどは帰って来いというものである。

というか、電話攻撃のほとんどは例の世話焼きと女王陛下である。
女王陛下に至ってはもはや暇潰しの世間話レベルだ。
暇なのであろうか。困ったものだ。

何が困るって、時差があるのだから、電話がかかってきた時、
こっちは大抵真夜中なのである。

ローマ教皇庁と言えば、ペテロという人物から電話があった。
ペテロという名には覚えがなかったのであるが、話を聞いてみると
教皇就任の挨拶ということであった。

ローマも大変な時期、頑張ってほしいものである。



984 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:52:31.71 ID:GP/ApBnQo

5月16日

店に変わった客がきた。
いや、想定外と言うべきか。
とりあえずバイトの子には買い物を頼んで避難させた。
暴れるつもりなのかと警戒していたが、その様子もない。

曰く「俺様は本場の紅茶を味わいにきただけ」らしい。

本場の紅茶を楽しむために学園都市に来る変わり者は彼奴ぐらいであろう。
昔に比べて丸くなったものである。



987 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:53:51.63 ID:GP/ApBnQo

5月30日

バイトの子が回転寿司に行ったと話していた。
寿司は分かるが、回転寿司とはなんであるか。
話に聞くと、文字通り寿司が廻っているらしい。
ますますよく分からないのである。

「じゃ行ってみます? もちろんマスターの奢りで」と言うので、
モノは試しと店を閉めた後に連れて行ってもらった。

驚いた。本当に寿司が廻っているのである。
これなら人員も少なくて済む。
業務の効率化もここまでくれば立派である。

うちの店にもこのシステムの導入を考えたが、
バイトの子に止められた。「カフェでは使えるものではない」らしい。

残念である。



988 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:55:16.71 ID:GP/ApBnQo

6月11日

あれから俺様がちょくちょく来るようになった。
といっても、10日に1回ほどのペースであるが。
いったい何をしているのであろうか。

曰く「俺様は世界を見て回っている」そうだ。

よくわからないが、まあよしとする。

もうすぐ日本を離れるので、当分は来れないそうだ。
選別に、俺様が気に入っていた紅茶(彼奴は本場の味と言っているが、
工場生産のティーバッグである)をいくつか包んでやった。



989 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:56:34.48 ID:GP/ApBnQo

7月1日

しかし、日本の夏はなぜこんなにも過ごしづらいのであろうか。
空気がまとわりついてくる、という表現も大袈裟ではない。
傭兵稼業をしていた頃に行った熱帯雨林を思い出させるのである。

バイトの子が最近疲れた顔をしているのも暑さのせいらしい。
自室に空調がないので、少しでも涼しいようにと
フローリングに直に寝ているそうだ。

そりゃ疲れて当然なのである。



991 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/27(日) 22:57:52.71 ID:GP/ApBnQo

番外個体 「……」ペラ...ペラ...

番外個体 「なんか意外だなー」

番外個体 「マスター、帳簿の隅っこに日記なんてつけてたんだ」

番外個体 「読んで思ったけど、意外とお茶目なんだね」

番外個体 「……まだ続きがあるな」ペラ...



35 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:06:25.43 ID:EZn6lMVWo

7月12日

最近、バイトの子の雰囲気が変わった。
なんというか、元気というか、活発になった。
それとなく話を振ってみたのだが、「禁則事項です♪」と
口に人差し指を当てるポーズで返されてしまった。

そういえば、あのもやしも割と頻繁に店に来るようになった。
バイトの子と仲が良いのか悪いのか、なんとも言えない、
長年連れ添った夫婦のような会話を交わしていることが多い。

男女の仲とは複雑なものである。



36 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:07:41.78 ID:EZn6lMVWo

8月3日

バイトの子から業務連絡。
3日ほど休み、というかシフト振替をしてもらいたいらしい。
なんでも、仲の良い友人と旅行にいくそうだ。

土産を買ってくることを条件に承諾した。



37 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:09:02.93 ID:EZn6lMVWo

8月10日

バイトの子から土産をもらった。
オキナワという南の島へ行っていたらしい。

緑色のキャビアのようなもの、海ぶどうと言うらしいが。

持ち帰って食してみた。
味がほとんどしない。おそらく食感を楽しむものなのであろう。
プチプチプチプチとなかなか斬新な食感である。

クセになるのである。



38 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:10:29.53 ID:EZn6lMVWo

8月31日

普通に店にでて、普通に終わる日々。
書くことがないのである。
これからは書くことが見つかったときだけ記録しておくとしよう。

と、ここまで書いてから気付いたが今までもそうであった。



39 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:11:53.78 ID:EZn6lMVWo

9月19日

学園都市では大覇星祭なるものが催されているらしい。
人が多いのもそのせいであろう。

今日、バイトの子をそのまま小さくしたかのような童女が店に預けられた。
彼女曰く「妹」だそうだ。なるほど、よく似ているのである。

と思っていたら今度は彼女たちをそのまま成長させたような女性が来店した。
少し経ち、バイトの子を少しだけ幼くしたような少女が来店した。

いったい何が起こっているのであるか。



41 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:13:52.48 ID:EZn6lMVWo

11月4日

バイトの子の様子がおかしい。
いや、良い意味で、だが。

これまではどちらかというと飾り気のない、ラフなタイプで
あったのだが、ある日から毎日ピアスを装着してきている。
それも真っ赤なものを。

装着しているだけなら髪に隠れて気付かなかったのだが、
時折嬉しそうにピアスをいじっているのでは
私でも気付いてしまうというものである。

それは贈り物であるかと聞いたら、何か思い出したのか、
ピアスと同じかそれ以上に真っ赤になっていた。



42 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:15:26.37 ID:EZn6lMVWo

11月16日

俺様から絵葉書が届いた。
今は米国の西海岸にいるらしい。

絵葉書と書いたが、土産屋で売ってるようなものではなく、
アロハシャツを着た俺様が写った写真が載せられたものである。
そういえば、こいつは変なところでマメな男であったな。

楽しんでいるのは結構だが、世界は見て回れているのであろうか。



43 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:16:43.10 ID:EZn6lMVWo

12月23日

もうすぐクリスマスである。

私にとってクリスマスとは主に祈りを捧げ、
家族と静かに過ごす日なのであるが、日本では
商業イベントの一環として捉えているように見える。

所変わればなんとやら、であろうか。

とりあえずクリスマスは休業とする予定である。



45 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:17:58.71 ID:EZn6lMVWo

1月18日

ショッキングな出来事があった。

頻繁に来店しているもやしが、バイトの子に真っ向から告白した。
しかも営業中の店内で、だ。大胆にも程がある。

告白を受けた側であるバイトの子はその場で泣き出してしまった。
泣くほど嫌だったのかと少々心配したが、事実は逆であり、
まったくの杞憂であったようだ。

この涙なら、その理由を変える必要もあるまい。



46 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:20:05.16 ID:EZn6lMVWo

2月2日

確定申告の書類を作成するため、店はバイトの子に任せ、
私は奥に引っ込んでいた。

目の疲れを感じたので、小休止を挟んでいたところ
バイトの子がひょこっと顔を出してきた。
困った様子で「あの、マスターの友人と名乗る人が
来てるんですけど」ということなので、表に出た。

……。

なぜだ。
なぜお前がここに来ている。



47 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:21:41.47 ID:EZn6lMVWo

2月12日

あれから悶々とした日々を送っている。
あの男が放った一言のせいだ。

「ヴィリアン様は今もお前をお待ちだ。一体いつまで悲しませれば気が済むのだ?」

返す言葉がなかった。

「帰ってくるつもりがあるならば、関係者には私から話をつけておいてやる」

「いつでも連絡してこい。早ければ早いほどいいんだがな」

不敵な笑みを浮かべながらそう言い放ち、紅茶を飲み干すと帰っていった。
無言で佇む私を、「これは貴女に」と押し付けられた花束を抱えたバイトの子が
心配そうに見ていた。



49 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:23:55.91 ID:EZn6lMVWo

2月25日

ロシアの地で、私が再び立ち上がるきっかけになった男がいる。
学園都市の関係者らしいということは聞いていたのだが、
今日とうとう対面を果たした。

妻?に頭があがらないダメ亭主と貸していた。
いや、或いは最初からそうだったのかもしれない。

映画のヒーローによくいるタイプなのであろう。
普段はテンプレ通りのダメ男だが、逆境に立たされたときや
大切な物を護るためなら世界一のヒーローとなるタイプだ。

だがヒーローであっても妻に頭があがらないのは
世界共通事項なのであろうな。



50 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:25:04.86 ID:EZn6lMVWo

3月16日

バイトの子が新しいエプロンを使っていた。
黒をバックに、白い菱形を縦にいくつかあしらったシックなデザインだ。
シンプルで好感が持てるのである。

聞いてもいないのに「彼からもらったんです♪」と
言っているあたり、余程嬉しかったのであろう。

……もし仮に、彼女一人となっても大丈夫であろう。
彼女にもヒーロー兼常連客がいるようであるからな。



52 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:26:30.76 ID:EZn6lMVWo

3月19日

そろそろ、決断しなければなるまい。



53 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:27:47.96 ID:EZn6lMVWo

番外個体 「日記はここで終わっている……」

番外個体 「……マスター、まさか」


<ミサワさん、見てしまったであるか。


番外個体 「」ビクッ

マスター 「」ゴゴゴゴゴ

番外個体 「ひっ……!」

マスター 「そこに書いてあったことは他言無用である」

番外個体 「はい! 全部忘れました! 今綺麗サッパリ忘れました!」

マスター 「では、今日はもう閉める時間である」

番外個体 「お、お疲れ様でした!」ピュー

マスター 「……見られてしまったであるか」ハァ



54 : ◆r462iqU2Ag:2011/03/29(火) 00:28:25.90 ID:EZn6lMVWo

といったところで、今回はここまでです。
幕間その2、とあるマスターの業務日誌も終了となります。
次回からはまた本編に戻ります。
次回投下は2~3日の内に。投下前には改めてご連絡させて頂きます。

お付き合い頂き、ありがとうございました。
それでは、これにて。



58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/29(火) 00:30:16.29 ID:eOA2LVBSO
乙。

マスターの日記の日付ってもしかしてその部分投下した日付と一致してるのか…?




60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越):2011/03/29(火) 00:32:29.77 ID:JYM2IfQAO
まさか>>1はマス…ん?外で物音が…



63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/29(火) 00:45:19.19 ID:fQpbh22DO
投下乙
そういやぁマスターは死ぬほどカッコいい魔法名を持っていたんだったなw




66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州・沖縄):2011/03/29(火) 02:50:02.44 ID:7HLQS7CAO
マスター日記可愛すぎるわ
萌えた




次→絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」その19

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禁書目録SS   コメント:5   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
7124. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/05/20(金) 15:22 ▼このコメントに返信する
もうそろ終わるのか・・・。
26887. 名前 : 名無しさん◆- 投稿日 : 2012/09/24(月) 04:41 ▼このコメントに返信する
LIV MOONとは、2009年にデビューした日本では珍しいシンフォニックメタルユニット。
ボーカルであるAkane Livはスウェーデン生まれの元宝塚歌劇団の男役で、4オクターブの音域をもつ。
ヘヴィメタル雑誌「BURRN!」では日本人アーティストでは異例の3ページにわたる記事が掲載され、“4オクターブの美神”と評された。
30644. 名前 : 名無し@SS好き◆92.l/qwY 投稿日 : 2013/01/13(日) 01:15 ▼このコメントに返信する
そもそもホワイトデーを作ったのはキャンディー会社・・・
31193. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2013/02/03(日) 08:41 ▼このコメントに返信する
マスターの魔法名のかっこ良さはガチ
37135. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2013/08/06(火) 14:30 ▼このコメントに返信する
>このゴリラ、誰かと間違えられた挙句、フルボッコにされたそうだ。
>人違いでボコられるとは災難だ。
>世の中にはひどいことをする輩もいるのである。
そうだよお前のことだよアックア
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