劇場版「空の境界」Blu-ray Disc BOX 前→
上条(悪)「この右手で、殺してやるだけさ」まとめ→
一方禁書 悪条の人のSS一覧
250 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 01:46:41.23
ID:YTeyW4S90 時は経ち、夜。
上条は、人通りの少ない、というかまったくない裏通りをフラフラと当て所なく歩いていた。
考えるのは、もう二度と関わりを持つまいと決めていた御坂美琴のことだった。
上条「あいつもまあ……とことん不幸なやつだよなぁ」
上条は情報屋から聞いている。
美琴が己のクローンが二万体殺されるなんて実験をよしとせず、研究所を潰しまわっていることを。
そんなに忙しいなら俺のことなんてほっとけよ、と思う。
いや、それでも放っておけないほど俺に執心しているのか――考えるだけで、げんなりする。
上条「二万体…二万人、か。桁違いだな、これは」
美琴はどんな気持ちだったろう。
自分が軽はずみにDNAマップを提供したせいで、二万人もの命がモルモットのように使い捨てられると知ったときは。
しかも、その時には既に一万人が殺されていたという。
上条「ほんと…たいしたもんだ」
そんなことを呟きながら歩いていたら。
目の前に御坂美琴が現れた。
252 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 01:53:23.40
ID:YTeyW4S90 いや、違う。
目の前にいる美琴は、傷一つ無い綺麗な顔をしていた。
つまり、クローン。
二万体いる『妹達(シスターズ)』の内の一人――!
??「いいえ、とミサカはあなたの予想を否定します」
上条「あれ? 違うの? でもどうみてもお前御坂なんだけど」
??「お姉様のクローンであることは変わりません。しかし、このミサカにはミサカシリーズであることを示す検体番号がつけられていない」
ミサカ「ただの――ミサカなのです、とミサカは説明を完了します」
上条「えーと、つまり、どういうこと?」
ミサカ「仮に検体番号をつけるなら、ミサカのナンバーは20002号」
ミサカ「ミサカはあなたのためだけに急遽作られた『存在し得ない個体』なのです、とミサカは追加説明を終えました」
259 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 01:59:36.22
ID:YTeyW4S90 上条「いや、全然意味がわからねえぞ。おいどや顔やめろ。全然説明になってねえって」
ミサカ「やれやれ、随分察しの悪い方なんですね、とミサカは露骨にがっかりします。前情報では異常に勘の鋭い方と聞いていたんですが、まあいいでしょう」
ミサカ「物分りの悪いあなたのために、ミサカは一から十まで説明しましょう」
上条「やべえ、コイツぶん殴りてえ……」
ミサカ「それは後に回してください。それでは説明を開始しましょう。『絶対能力進化計画』についてはもうご存知ですね? とミサカは一応確認を取ります」
上条「ああ、それは知ってる。一方通行がお前たちクローンを二万回殺すことでLEVEL6に至るって実験だ」
ミサカ「Exactly(そのとおりでございます)」
上条「うるせえ、いいから続けろ」
264 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 02:11:00.27
ID:YTeyW4S90 ミサカ「ところでその二万という数がどのようにして定められたかはご存知でしょうか?」
上条「何かお偉いさんがした計算の結果なんじゃねえの? その辺は詳しく聞いてねえな」
ミサカ「はい、実はその計算、最初はミサカのオリジナルであるお姉様を用いたらどうなるかということで計算されていたのです。と、ミサカは衝撃の事実を発表します」
上条「……へえ。ちなみに、御坂美琴の場合は何回殺せば条件クリアーなんだ?」
ミサカ「128回です。無論、お姉様を、学園都市第三位の超能力者を128人も準備することなど不可能でした」
上条「それで、クローンか」
ミサカ「はい。私たちクローンはお姉様より力が大分劣ります。故に、お姉様128人分を代用するのに、二万もの数が必要となったのです」
ミサカ「ここまで説明すれば、わかっていただけたのではないでしょうか?」
上条「なるほど、な。つまり、俺のせいで――」
上条当麻というLEVEL0が、御坂美琴というLEVEL5をコテンパンにし続けたせいで。
上条「――御坂美琴の価値に、疑問が生まれ始めている」
ミサカ「Exactly(そのとおりでございます)」
265 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 02:12:27.16 ID:MtoVravA0
あれ、プラスに働いた?271 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 02:23:39.93
ID:YTeyW4S90 上条「果たして、一方通行をLEVEL6に進化させるのに、御坂美琴128人分で足りるのか?」
ミサカ「まさしくそういうことですね、とミサカは頷きます。なんだ、やっぱり物分りはいい方なんですね」
上条「まぁ…な。嫌なことまで察しちまうから、もう少し愚鈍でいたいもんなんだけどよ……」
上条はぶらぶらと右手を揺らす。
それは、戦闘に入る前の、彼のおなじみの動作だった。
上条「つまり、お前は確認に来たわけだ」
ミサカ「はい。『お姉様が弱いのか』、それとも『あなたが強いのか』。それを確かめるために、ミサカは生み出されたのです」
そう言って、ただのミサカを名乗った少女は、スカートの下に両手を差し込んで―――
美琴と違って短パンを履いてないからパンツが見えた。水色と白の縞々だった。
ミサカ「いやん、とミサカは頬を赤らめます」
上条「嘘つけ、無表情じゃねーか」
ミサカ「そりゃあ、もう戦闘は始まっているのですから」
ミサカがスカートの中に突っ込んだ手を前に戻し――その手は、両方ともオートマチック式の拳銃を握り締めていた。
278 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 02:37:01.68
ID:YTeyW4S90 前に出るか――!? いや無理だ。間に合わ――ない!
上条は一瞬で判断した。
恥も外聞もなくミサカに背を向けて、駆け出す。
もちろん、右に左に、上に下に、不規則に動きを変えて。
ダンダンと連続して吐き出される銃弾が、上条の服を掠めていく。
ミサカ「二丁拳銃で追い切れないとは、信じられませんね。ゴキブリですかあなたは、とミサカは素直な感想を漏らしながら追いかけます。待てー」
上条「えれえモンに例えてくれるなチクショウ!」
叫びながらも上条は壁を蹴り、地面を転がり、とにかく的確なタイミングで縦横無尽に道を駆ける。
あと五秒も走れば広い道に出る。そうなればミサカを撒くのも難しい話ではない。
ミサカ「面倒なのは好みではありません。一気にケリを着けましょう、とミサカは決意します」
上条「んげっ!?」
発砲が止んだことに疑問を覚えた上条は、後ろを振り返って絶句する。
ミサカが肩に構えている大筒には見覚えがある。
多分、あれ、ロケットランチャーっていうやつじゃねえの?
上条「どっから出したそんなもん!! ドラえもんかてめーわ!!!!」
ミサカ「このスレンダーボディのミサカを指して二頭身のずんぐりむっくりに例えるとは、とミサカは憤慨します。ムカついたんで即座に撃ちます。どーん」
ミサカの可愛げのある効果音とは似ても似つかぬ轟音が響き。
四階建てのビルが一つ、半壊した。
306 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 08:41:58.11
ID:YTeyW4S90 ぼふっ、と爆発によって巻き起こった煙を割って、上条は駆ける。
上条「冗談じゃねえ。右手が効かないような攻撃方法ばっかでこられちゃ、俺はただの一般人と変わんないって言ってるじゃねえか!」
そう吐き捨てて、上条はとにかくミサカから距離を取るため、走る。
小道を見つけては入り、抜け、また小道に入り、と繰り返す。
上条「そ、そろそろ撒いたか?」
上条は足を止め、後ろを観察する。嫌な気配は感じない。
上条「ふぅ~」
上条は安堵の息を漏らすも、すぐに苛立ちから髪をガシガシと掻きむしった。
上条「あぁ、くそ。一度くらいはまともに眠らせてくれよ。まだ今日の寝床も決めてないってのに」
ぶつくさ愚痴りながら、上条は念の為にもう少し距離を取っておこうと、歩みを再開する。
小道を抜け、新たな小道を見つけ、入る。
上条「……あらぁ?」
そこで、ミサカが死んでいた。
308 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 08:49:11.72
ID:YTeyW4S90 上条「……なんだぁ? どうなってんだこりゃ?」
その死体は、ひどい有様だった。
どうすれば、人間の体をここまでズタズタに出来るのか、上条にはわからなかった。
まるで、全身の血管が膨張し、破裂してしまったような――灰色のプリーツスカートに半袖のブラウスにサマーセーターというおなじみの格好でなければ誰か分からないほどにその死体は破壊されていた。
御坂美琴本人ではないだろう。顔に包帯が巻かれていた様子はないし、その死体の傍らには軍用ゴーグルが転がっている。
上条「あれ? そういやアイツゴーグルつけてたっけ?」
上条は先ほど自分を強襲してきたミサカの顔を思い出す。
他の個体との差別化を図るためなのかは知らないが、つけていなかった――ような気がする。
上条「つまり、コイツは実験とやらで正当に殺された個体ってことか」
まるで、上条にその通りですよ、と答えるかのようなタイミングで。
銃声が響いた。
312 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 09:04:57.97
ID:YTeyW4S90 音が上条の耳に届くよりも先に、上条はその右足をひょい、と持ち上げていたように思う。
とにかく、背後から右足を狙って飛来した銃弾は空を切り、地面に倒れ付していたミサカの体へと着弾した。
上条「ひでえことすんなよ。死者に鞭打つ、どころじゃねえぞオイ」
上条は顔だけで後ろを振り向いた。
ミサカ「……まさかよけられるなんて夢にも思っていなかったんです、とミサカは言い訳します」
オートマチック式の拳銃を上条の背中に向けたまま、ミサカは言う。
上条「いやいや、実はちょっとほっとしたぜ。俺に関わっちゃったから死んだ奴……その最短記録を塗り替えたかと思っちまったからよ」
上条「出会って10分ってのはさすがの俺も経験したことねえからさ」
ミサカ「随分とお優しいことを言うのですね。データでは、極悪非道が服を着て歩いているような男、と聞いていたのですが」
そう言って、ミサカは一歩、上条との距離を詰める。
上条「馬鹿野郎。データなんかに惑わされんな。ありのままの上条さんを見てくれや」
そう言って笑って、上条は今度こそ体ごと背後を振り返る。
二人の距離は、もう10mそこそこといった所だった。
315 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 09:15:34.78
ID:YTeyW4S90 ミサカ「何故逃げないのです? とミサカはあなたに問いかけます」
上条「何故撃たないんだ? と俺はお前に返そうか」
ミサカ「撃てばあなたは無様に逃げるでしょう、とミサカは確認します」
上条「そりゃあ、撃たれりゃ逃げるさ」
ミサカ「ですから、ミサカはまずはあなたがどうあがいても逃げきれないほどに距離を詰めることを優先しました。一発必中というやつです、とミサカはどや顔で答えます」
上条「そりゃ愚策も愚策だな。本当に事前に俺のデータを参照してたのか?」
上条はポケットに手を突っ込みながら、悠然と佇んでいる。
背中を向けて無様に逃げ出していた男の姿は、もうそこにはない。
上条「この距離まで、どうやって近づくかが問題だったのさ。自分から近づいてくれるなんて、ありがとよ」
ミサカ「虎穴に入らずんば虎子を得ず、とも言います。ミサカの頭が悪いような言い方はやめてください、とミサカは頬を膨らませます。それに……」
ミサカは右手に持った銃の照準を、上条の胸の真ん中に合わせる。
乱射する必要はない。一発必中、だ。
まあ、とか言いつつ何発か連射はさせてもらうけど。
ミサカ「いくらあなたが常識外れの動きをしようと、私が引き金を引くほうが早い」
上条「なら、試してみようぜ」
320 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 09:25:11.18
ID:YTeyW4S90 ミサカ「……!?」
上条の体が、左右にぶれた。
照準を混乱させられたミサカは、一瞬、引き金を引くのが遅れてしまう。
それでも、それは瞬きほどの一瞬だ。
その程度では、10mの距離は詰めれない。
ミサカは冷静に照準を付け直し、引き金を引こうとして――
激痛と共に、左側の視界が死んだ。
ミサカ「あぐ…!」
上条「やっぱり世の中は金だよな。小銭だって大事に持ってればこうやっていいことがある」
ミサカが残った右目で捉えたのは、くるくると宙を舞う、一枚の硬貨。
コレを、指で弾いて―――!?
上条「レェールガン……なんつってなぁ!!」
上条は地を蹴って駆け出した。
325 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 09:32:57.79
ID:YTeyW4S90 上条の体が半分に限定された視界から消えうせる。
まずい、死角に潜られた――!
ミサカは慌てて黒く染まった左側を確認する。
ミサカ「――ッ!?」
いない。
上条当麻が、どこにも。
上条「右目で左側を確認すりゃあ、当然右側はまったく見えねえよなあ?」
声が聞こえたのは、体の右側からだった。
ミサカ「くっ!!」
ミサカは声のした方を目で確認するよりも早く、銃口を向ける。
そして、引き金を引こうとして―――
上条「撃たせねえよ?」
銃を持った右手ごと、押さえ込まれた。
左手をスカートの中に差し込もうとして――
上条「抜かせねえし」
それも、上条に抑えられた。
330 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 09:40:26.27
ID:YTeyW4S90 右手を上条の左手に。左手を上条の右手に。
それぞれ掴まれてしまっている。
ならば、残された攻撃手段はひとつ。
ミサカ「――ッ!!」
頭を、思いっきり振りかぶって。
上条の下あご辺りを目掛けて、叩きつける――!
上条「舐めんなッ!!」
上条はそれを向かい撃った。
額と額がぶつかり、ボーリングの球が勢いよくぶつかり合ったような、鈍い音が響く。
そして。
ミサカの体がどさり、とその場に崩れ落ちた。
336 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 09:47:44.98
ID:YTeyW4S90 一方通行「あン?」
上条「おお?」
コンビニの前で、珍しい、というか珍しすぎる奴と会った。
上条「第一位でも普通にコンビニとか行くんだな」
一方通行「そりゃ行くだろ。俺を何だと思ってンだ? 飯も食えばクソもするわ」
上条「果てしなく意外だわ」
一方通行「オマエマジで俺を何だと思ってンの?」
上条「化物」
一方通行「あってるけどよォ」
一方通行が持っていたビニール袋がガランガランと音を立てた。
上条は思わず己の目を疑う。
上条「それ全部缶コーヒー?」
一方通行「おう」
上条「うわぁおマジありえねえ。まとめて買うならスーパーいけよ……一本88円の所だってあんだぞ?」
一方通行「せせこましい野郎だなオマエ」
339 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 09:55:42.72
ID:YTeyW4S90 一方通行「ンで、オマエはこんな所で何してンの? ってか何でまだ生きてンですかァ? 口封じは来なかったンかよ」
上条「ああ、そうだったそうだった。急がねえと、目を覚ましちまうからな」
一方通行「あン?」
上条「ちょうどいいや。ちょっとお前に聞きたいことあんだけど」
と、そこまで口にしてから上条ははたと気付く。
そうか。あそこにあった『妹達』の死体は、そういうことか。
実験直後ってわけだ。
上条「食後のコーヒーってわけか?」
一方通行「飯はこれから食うンだよ。飯の前に好物飲ンで落ちた気分上げとくンだ」
上条「まあいいや。そんなことより」
上条は自分から振ったくせにコーヒーに関する話題を打ち切った。
上条「『妹達(シスターズ)』のことならお前詳しいだろ? ちょっと教えてくれよ」
一方通行「何をだよ」
上条「コンビニって荷造り用の紐くらいしか置いてないんだよな。それであいつらを拘束とかって、出来る?」
341 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 09:57:41.58 ID:jcZcVt0J0
上条と一方の掛け合いおもしろいな345 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 10:05:09.33 ID:0pSIP2jJ0
仲良いなおい346 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 10:05:54.56
ID:YTeyW4S90 ぐるぐる巻きに縛っときゃ出来ンじゃねェ? というのが一方通行の回答だった。
その助言に従って、上条はミサカを芋虫のようにぐるぐる巻きにしてから、ミサカが目を覚ますのを待つ。
ぱちり、とミサカが目を開けた。左目はまだ少し赤い。
ミサカは自分が横になっていることに気付き、起き上がろうとして、それが一片もままならないことに気付いた。
自分の体を見下ろすミサカ。
しばらくミサカはそうして芋虫のように縛られた自分の体をじっと見つめていたが。
やがて、傍らでこちらを覗きこんでいる上条を見上げて、言った。
ミサカ「こういう趣味が、あるのですか?」
上条「ねーよ、ボケ」
ミサカ「ミサカはどうして生きているのでしょう、とミサカは疑問を呈します」
上条「そりゃ、俺が生かしておいたからだ」
ミサカ「あなたの命を狙ってきたミサカを、生かしておくメリットなんて無さそうなものですが」
上条「頼みがある。つってもお前に拒否権はねえんだけどな」
348 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 10:15:26.09
ID:YTeyW4S90 ミサカ「つまり、それは命令ですか?」
上条「つまり、そうなるな」
ミサカ「ミサカがそれに従う必要性を感じません」
上条「うるせえよ。お前は俺のためだけに作られた個体なんだろうが。なら俺の命令に従うほうが道理ってもんだ」
ミサカ「言われてみればその通りと思えなくも無いですね、とミサカは頷きます」
上条「まあ、そうだよな。簡単に頷けるわけがねえ。でもな、こんなこた言いたくねえけど、死にたくなければ俺の命令に……ってあるぇー?」
ミサカ「元よりミサカの運命はあなたに負けて殺されるか、あなたに勝ってそのまま『一方通行』の実験に流用されるという二者択一でしたので」
ミサカ「あなたに負けて生きている、というこの状況は完全に想定外です。故に今のミサカは人生ノープランなのです、とミサカは嘆きます」
ミサカ「この際だからあなた専用ミサカ、『ミサカ上条号』として第二の人生を歩むのも悪くはないのかもしれません」
上条「いや、お前そんなあっさり」
ミサカ「これからよろしくお願い致します、ご主人様。きゃ、言っちゃった」
上条「俺が悪かった」
359 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 10:32:08.61 ID:0pSIP2jJ0
また美琴が襲ってきたら姉妹丼できるな
wktk357 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 10:29:31.91 ID:kxF6WX4i0
おい寒いだろ早くしろ352 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 10:22:42.15
ID:YTeyW4S90 ミサカ「それで、命令とはなんなのです? ご主人様。とミサカは確認を取ります」
定着した……。
上条は頭を抱えた。
上条「……もういい、気にしない」
上条はすっぱりと諦めて、というかどうでもよくなって、ミサカの拘束を解く。
上条「ミサカ。俺を『絶対能力進化計画』、その責任者の所に連れて行け」
ミサカ「何故です? とミサカはあなたに問いかけます」
上条「興味があるんだよ。神様に会おうなんていう、その馬鹿げた計画に」
ミサカ「いいでしょう。あなたに取っては渡りに船、といえるでしょうね」
上条「あん?」
ミサカ「元より、あなたがミサカを打倒した場合、あなたを研究所へ招待する手筈となっていました」
ミサカ「本来その案内人は別の『妹達』が務めることになっていたのですが、まあいいでしょう」
上条「へえ、それはそれは、話が早い」
ミサカ「案内いたします。『絶対能力進化計画』、その中枢に」
360 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 10:33:33.80
ID:YTeyW4S90 科学者「ようこそ」
ミサカに連れられた先で上条を出迎えたのは、齢70程の老人だった。
その傍らには、若い男の姿もある。
老人は名乗らなかったが、男は天井亜雄と名乗った。
御坂美琴のクローンである『妹達』を発案したのは、この天井亜雄という男らしい。
とはいえ、そんなことは上条にとってはどうでもいいことだった。
もし上条の思い通りに事が運べば、今日、この日、全ての『妹達』は―――
――その存在価値を、失う筈だから。
科学者「来てくれて嬉しいよ。上条当麻くん」
上条「アンタが実験の責任者か?」
科学者「まあ、現場レベルではね。不肖ながらそのような大役を務めさせてもらっているよ」
上条「それで、こんなところに俺を招待して、一体何の用なんだ?」
科学者「そうだね。私たちも君も忙しい。用件を伝えよう、上条当麻くん。いや……」
科学者はその目を細めて微笑んだ。
科学者「――もう一人の可能性よ」
368 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 10:47:39.53
ID:YTeyW4S90 科学者「まことに申し訳ないが、君の事は調べさせてもらった」
上条「まったく、最近の俺のプライバシーってやつはホントどこ行っちゃったんだろね」
科学者「謝罪は後に存分にさせてもらうよ」
上条「それで?」
上条は話の先を促す。科学者は頷いた。
科学者「学園都市内で確認できるだけの君の戦闘記録を拝見させてもらった。素晴らしい……その一言に尽きるよ」
上条「そりゃどーも。恐縮だぜ」
科学者「ずば抜けた身体能力もさることながら……真に特筆すべきはその異常なまでの勘のよさだ」
科学者「相手が何を考えているのか、これから先、何が起こるのか……『予感』どころではない。これはもう『予知』と言ってしまっていい」
科学者「君は、予めこれから先何が起こるのか『全て知っている』のだ」
上条「そりゃいくらなんでも大袈裟ってもんだろ。神様でもあるまいし」
科学者「つまりはそれが君の可能性だ……『全知』……まさしく、人の身では在り得ぬ能力だろう?」
374 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 10:57:56.45
ID:YTeyW4S90 科学者は悠々と、朗々と自身の仮説を語る。
その様子はまるでプレゼンを行っているようだ。いや、事実コレはプレゼン以外の何物でもないだろう。
科学者は、今まさに上条当麻を己の実験に勧誘しているのだから。
科学者「LEVEL5である御坂美琴を歯牙にもかけぬその強さ。無傷でクローンを打倒するその実力」
科学者「LEVEL0などとんでもない。君は『一方通行』と同じ、LEVEL6に最も近い存在なのだ」
上条「あいつと同じとか、反吐が出るんでやめてくださいよ」
科学者「おやおや、仲良くお喋りしていたと、そう報告が来ていたのだがね……まあいい」
科学者「どうだい? 君もこの実験に、神に近づこうという試みに参加してみる気はないかい?」
上条「乗った」
即答だった。
上条「もしこの世に神様ってのがいるんなら、本当に、是が非でも、何が何でも会ってみたかったんだ」
まさしく渡りに船、だ。
そこまでの道を酔狂にも用意してくれるというのなら、それを使わない手はない。
379 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 11:10:25.52
ID:YTeyW4S90 科学者「そうか!」
科学者は喜色満面の笑みを浮かべた。
科学者「なら、さっそく『妹達』の量産に取り掛かろう。数の計算には後で取り掛かれ。『ツリーダイアグラム』が破壊された以上、計算には手間取るだろうからな」
とりあえず『一方通行』を基準として二万体を生産しろ、という科学者の指令に従い、天井亜雄が動き出す。
が、それを上条は止めた。
上条「おいおい、勘弁してくれよ。二万? そんなしち面倒くせえことやってらんねえっての」
休み無く一日10人ペースで捌いたとしても、一年で3650人、二万にたどり着くには六年以上かかる。
ふざけるな。そんな面倒なことはやってられない。
――俺は、今すぐにだって神様に会いたいんだ。
科学者「し、しかし、それ以外にこちらは準備する手立てが……」
上条「いるじゃねえか。もっともっと適役がよ」
上条は不敵に笑う。
上条「一方通行をLEVEL6に引き上げるには、御坂美琴が128人必要だった。だったらよ」
上条は、ウインクして言った。
上条「その御坂美琴を既に十数回撃退してる俺なら、同じLEVEL6に至る可能性である俺なら、一体何人で済むんだよ?」
380 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 11:13:31.99 ID:kxF6WX4i0
つまり・・・どういうことだってばよ386 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 11:19:32.91
ID:YTeyW4S90 学園都市最強のLEVEL5、一方通行。
人の域を超えた危機回避能力を持つ上条当麻。
共に、人間では勝てぬと判定された者同士。
神に至ると仮定された存在同士。
ならば、その二人がぶつかりあえば。
勝者が既に人の身に在らずのは自明の理。
しかし科学者は軽々には頷けない。
それもそのはず、その理論には理はあれども保証がない。
上条「失敗を恐れて何もしないのは、愚か者だ」
上条は、どこかで聞いたようなセリフを口にした。
上条「どの道、この提案が受け入れられないなら俺は降りるぜ」
上条は、ふざけているのか片目を閉じたまま科学者に向けて言う。
394 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 11:31:08.45
ID:YTeyW4S90 科学者「……ぬう…」
天井「か、考えるまでもありません。ツリー・ダイアグラムにより演算結果が出されている一方通行のプランを今さら変えて、どうするんですか」
天井亜雄は必死で科学者を説得する。
それも当然だ。仮にプランが上条当麻と一方通行の一騎打ちに移行してしまえば、彼を支える『量産型能力者計画』が全くの意味を成さなくなってしまうのだから。
上条「おいおい、急げよ。お前らは科学者ってわりに、何もわかっちゃいないんだな」
科学者「む…?」
天井「何ぃ…?」
上条は片目を閉じたまま、にやりと笑う。
上条「お前らは、俺を施設にこんな長いこと留まらせておく意味を、全くわかっちゃいない」
上条のその言葉と、それは同時だった。
バヅン、と音がして、辺りが暗闇に包まれた。
天井「て、停電!? な、何故!? 『配電盤に雷が直撃でもしない限り、停電など起こるはずはない』のに!!」
上条「ほーら、こうなった」
上条はここに至り、ようやく――閉じたままだった目を開いた。
上条「おーおー、あんたらのうろたえた顔がよく見えるぜ。さあどうする? 顔を包帯まみれにしたこわーいお姉様がやってきたぜ?」
402 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 11:43:48.40
ID:YTeyW4S90 電気系統は死んでも、無線は生きている。
天井亜雄は必死で無線で連絡を飛ばし、状況を確認する。
『LEVEL5がやってきた』
『オリジナルが強襲してきた』
入ってくる連絡は、どれも上条の言葉を裏付けるものばかりだった。
上条「前門の虎、後門の狼ってところだな。ただ、あんたらにとって幸いなのは、前門の虎には交渉がきくってことだ」
上条「さあ、どうする?」
上条はもう一度科学者に問う。
科学者の眉間に深く刻まれていた皺が消える。
科学者はふぅー、と長いため息をついた。
科学者「選択の余地はなし、か」
上条「賢いな、アンタ」
科学者「まあ、中国の故事でも二匹の龍が絡み合うことで互いが互いを天に引っ張り上げる、と言うしのう」
上条「毒虫を潰し合わせて究極の毒を抽出する『蠱毒』って言ったほうが例えとしては的確なんじゃねえの、この場合」
科学者「わかった。認めよう。『絶対能力進化計画』は『全知』たる上条当麻と『全能』たる一方通行の激突をもって完遂するものとする」
405 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 11:50:25.18
ID:YTeyW4S90 天井「きょ、局長!!」
上条「うるせえなあ。あんまりしつけえと助けてやんねえぞ、アンタ」
天井「ぐ、ぐう…」
バン!と勢いよく扉が開かれる。
開け放たれた入り口から、極大の電撃が飛び込んできた。
上条「ひゅう、容赦ねえな」
闇に慣れた目を光で焼かれぬように、もう一度、片目を閉じてから。
上条は右手で電撃を消し飛ばす。
まさしく、いつも通りに。
美琴「な、何で……」
その、いつも通りの不可思議な現象を前に。
美琴「何でアンタが、ここにいんのよ……」
暗視ゴーグルを着けた御坂美琴は、呆然と立ち尽くしていた。
443 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 13:05:23.42
ID:YTeyW4S90 上条「よう、生きてたんだな。ビリビリ」
美琴「何で? 何でよ? 本当、何でアンタが……」
御坂美琴は混乱していた。いや、もはやパニックに陥っていたといってしまっていい。
上条当麻のこと。一方通行のこと。
それぞれが美琴を苛む複雑かつ巨大な悩みだったが、それでもそれを今まで何とか処理できていたのは、それぞれが別個の悩みとして存在していたからだ。
それが、ここにきて突然邂逅し、ひとつとなった。
処理しきれない。頭が、ついていかない。
そんな美琴を打倒することは、恐らく上条当麻でなくとも容易いことだっただろう。
上条は呆ける美琴をあっさりと地面に引き倒すと、その右手で首元を押さえつけた。
上条「質問には全て答えてやろう。上条さんは優しいからな。『何故あんたが?』、答えは呼ばれたからだ」
美琴「どうして…!」
上条「『どうして呼ばれたのか?』、それは俺が、上条当麻という人材が『絶対能力進化計画』に必要となったからだ」
美琴「ど、どういう意味よ!?」
上条「その質問の答えは二つある。ひとつは、俺が『一方通行』とやりあう事になったって意味と」
上条「お前がご執心していたであろう『妹達』が用無しになったって意味だ」
美琴「な…!?」
448 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 13:15:40.42
ID:YTeyW4S90 上条「わかるか? 御坂。お前が抱えていた不幸なんて、こんなもんだ。降って湧いた幸運で、あっさりと消え去っちまう」
美琴「何を…何を言ってるの、アンタは……」
上条「考えてみれば、お前が俺に出会ったちまったことで、こういう結果になるのは当然のことだったのかもな」
今までの苦労が水の泡。
それは、きっと他の何よりも不幸なことだろう。
上条「ま、精々運がいいわ、なんて自分を誤魔化して荷物を下ろせばいいさ」
美琴「ふざけんな! アンタ、アンタ何様のつもり!?」
上条「何様だろうと関係ねえよ。お前程度の不幸がこの俺に出会ったんなら、これは当然の帰結なんだ」
小さな川の流れが、大きな川にぶつかったなら、小さな川は大きな川に飲み込まれる。
これは、ただそれだけの話だ。
上条「お前の不幸は、この俺が飲み込んで連れて行く。身軽になったその体で、精々人生を謳歌しな」
美琴「認めない…認めないわ! 認めるもんですか、そんなの!!」
問答は終わりだ。
質問には答えても、抗議は一切受け付けない。
451 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 13:21:05.44
ID:YTeyW4S90 科学者「実験の日取りに希望はあるかね?」
上条「今日でなければいつでもいい」
科学者「ふむ、何か必要なものはあるか?」
上条「ふかふかのベッド。一晩邪魔されずぐっすり眠れる環境」
科学者「全力をもって準備しよう」
上条「それともうひとつ」
科学者「聞こう」
上条「実験場までの足に、車を一台」
こうして、実験は開始される。
上条当麻VS一方通行。
『絶対能力進化計画』は、頓挫することなく、その最終局面へと向かっていく。
454 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 13:34:10.27
ID:YTeyW4S90 ここで、一方通行について少し語らせていただこう。
一方通行の持つ能力は『ベクトルコントロール』。
あらゆる力の『向き』を自在に操る能力。
そんな全能に等しい力を持っていた彼は、幼い頃から多くの敵意に晒されて生きていた。
彼のもっともスタンダードな能力の行使、『反射』によってその敵意を跳ね返しながら生きてきた。
悪意も、好意も、一緒くたにして跳ね返してきた。
そうしなければ、己の身を守れなかったから。
悪意も好意も、見た目には区別のつけようがないものだから。
結果として、彼は決して望ましくない結果を多々残してきた。
彼の能力で守れるのはあくまで己の体のみ。
彼の周囲にいた人物は、みな世界の悪意に耐え切れなかった。
彼は学ぶ。
自分は誰かと一緒にいちゃいけない人間だ。
否応なく周囲を狂わせ、関わった人間の人生を悉く終わらせてしまう。
彼の持つ真っ白な輝きは、蛾を迷わせるように、周囲の人間を惑わせる。
だから彼は、太陽になりたかった。
太陽にまでなってしまえば、そこに手を伸ばそうなど、誰も考えないだろうから。
457 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 13:41:32.43
ID:YTeyW4S90 もちろん、上条当麻はそんなことは知らない。
渡されたレポートの中にも、そんな彼の心情は一言も記されてはいない。
だが、その生い立ちを知って――何故だか、上条は確信のように、彼の心を知ることが出来た。
そして、それはきっと、目の前でレポートを片手に立っている一方通行にしたって同じなんだろう。
プライバシーなんて、本当に、笑っちまうくらいないがしろだ。
上条「よう、『最悪』」
一方通行「よォ、『災厄』」
今夜は満月。
月明かりの下で、二人は対峙する。
上条「正直に言えば、俺は初めてここでお前に会った時からこの時を待っていた」
一方通行「おォ、俺もだよ」
パラパラと、二人の手元からプリントが離れ、夜風に吹かれて空に吸い込まれていく。
464 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 13:47:36.30
ID:YTeyW4S90 一方通行「オマエと会って喋ってる間、何回殺してやろうと思ったかわからねェ」
上条「おう、俺もさ」
二人は、互いが互いを知ってなお。
いや、互いを知ってしまったからこそ。
目の前の存在を、許せない。
鏡を見ているようで。
もう、醜悪な自分の姿を突きつけられるのはたくさんだ。
上条「じゃあ、早速」
一方通行「おォ、迅速に」
――殺し合いを、始めよう。
負ければ無様に死ねばいい。
勝てば、太陽になろうが神に会おうが好きにしろ。
どちらにせよ――望むところなのだから。
469 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 13:56:24.91
ID:YTeyW4S90 上条が駆け出した。
いつだって、いつまでだって彼の武器はその体一つ。
距離を詰めて、思うままに拳を振るうだけだ。
一方通行「そらよォ!!」
一方通行が地面を踏みつける。
一方通行の足を中心に亀裂が走り、大地が持ち上がった。
上条「とんでもねえな!! さすが最強、派手に決めてくれる!!」
一方通行「ンで!? LEVEL0はこっからどう無様に足掻いてくれるンだ!?」
上条「猪突猛進、それっきゃねえだろぉ!!」
上条は捲れあがった大地を即座に迂回し、一方通行に突進する。
だが、そんな行動は一方通行の予測の通り。
待ち構えていた一方通行がその手を伸ばしてきた。
触れればそれだけで血流を操作し、死に至らしめる『死の手』。
上条「舐めてんのか!! スロウすぎて欠伸が出んだよ!!」
上条は右手で迫ってきた一方通行の手を打ち払う。
初めて上条の『幻想殺し』を体感した一方通行の目が驚愕に見開かれる。
その大きく開いた目に――上条は躊躇いなく親指を突き入れた。
470 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 13:56:51.78 ID:L4volc1R0
やだ…なにこの二人…濡れちゃう///474 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 14:02:44.07 ID:4rawSz6z0
目て…殺り慣れすぎだろ…476 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 14:04:09.00
ID:YTeyW4S90 一方通行「あッがァァァああああああああ!!!!」
一方通行は無我夢中で大地を破裂させ、上条を吹き飛ばす。
大きく吹き飛ばされた上条だったがしかし、彼は空中で体勢を立て直し、ダメージ無く着地した。
一方通行の左目から、どろりと赤い血が零れる。
上条「どうよ? 初めての感覚だろ。感想はどうだ、最強」
一方通行「ぐ、あぐ…!!」
痛みでまともな声も出せない。
そうか、これが痛みか。
これを、俺は今まで一万人に振りまいてきたってわけか。
ぐちゅり、と音がした。
さすがの上条もぎょっとして目を見張る。
一方通行は、潰れた左目に己の指を突き入れていた。
487 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 14:12:16.87
ID:YTeyW4S90 一方通行「がああああああああああああああああああ!!!!」
――執念。自分は一万人の犠牲の果てに今ここにいる。
だから、実験の本懐を遂げ、太陽になるのは俺だ。
オマエなンぞに、譲ってやるわけにはいかねェ。
指を引き抜いたとき、一方通行の左目は、多少歪になっているにしろ、元の輝きを取り戻していた。
上条「……マジかよ。いよいよ何でもアリだなお前の能力」
一方通行「自分でも果てしなく意外だぜ。まさか俺の能力が『治療』なンて前向きな方向に使えるなンてよ」
とはいえ、一方通行の左目は完治したわけではない。
あらゆる力を作用させて、かろうじて機能を発揮できる形を保っているだけだ。
気を抜けばすぐに左目はぐじゅりと潰れてしまうだろう。
人間が、同時に二つの物事を考えながら進行させることは不可能。
知ったことか。思考を切り離せ。
同時に二つの情報を処理させろ。その程度が出来なくて、何が『最強』だ。何が『無敵』だ。
一方通行「……オーケィ、完璧。さあ再開するぜ三下ァ」
――彼は今、ひとつ階段を昇った。
492 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 14:22:26.58
ID:YTeyW4S90 一方通行「もうテメエは近づかせねェ!! 潰れて死ね三下ァ!!」
一方通行はそこらに落ちている鉄クズを蹴り上げる。
ベクトル操作。
重力を無に。下に向いていた力を横に転換。
空気摩擦――無視!!
一方通行「飛べオラァ!!」
一方通行の足をカタパルトに、ロケットのように鉄骨が射出される。
ひとつではない。ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ。次々と、次々と。
上条「しょっぱいぜ最強……」
上条は思考する。いくつかは避けれる。
だが、いくつかは間違いなく当たる。
このままでは。『向き』を変えてやらなくては。
上条「この程度なら、御坂美琴だってやってきたんだよ!!」
上条は右に飛び、地に伏せ、二つ目をやり過ごしたところで立ち上がり。
三つ目の鉄骨を、右足で蹴りつけた。
上条「力の向きを操作するってのが、お前だけの特権だと思ってんじゃねえぞコラ!! 横から角度変えて打ち込んでやりゃ、向きを変えるくらい出来るんだよ」
三本目が、勢いはそのままに、軌道を逸らし、上条の傍を通り過ぎていく。
上条「もちろん、『こんなこともあろうかと』、靴には最低限鉄板仕込んでるけどよ」
最後の鉄骨が背後に消えて――上条は笑った。
502 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 14:29:38.82
ID:YTeyW4S90 上条が駆ける。再び一方通行の懐へ。
させない。一方通行は地面を踏みつけ、大地を爆裂させる。
瞬間、上条は大地に右手を当てた。
上条が触れたその一部分だけは爆発を免れる。
それで、十分。
それで、吹き飛ばされないように踏ん張るには十分だった。
砂煙から飛び出し、上条は右手を振りかぶる。
一方通行は、身構える。
だが、一方通行のその構えは、笑ってしまうくらい隙だらけだった。
上条「そりゃあそうか。殴り合いのケンカなんてしたことねえだろ! 最強!!」
かざされた両腕のどこにも触れず――上条の拳が一方通行の下顎を跳ね上げた。
505 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 14:37:57.04
ID:YTeyW4S90 一方通行「ごふっ…」
上条当麻は手を緩めない。畳み掛ける。
右手の『幻想殺し』以外特殊な能力を持たなかった上条は、こうして勝機を逃がさぬことで勝ってきた。
だが――いかんせん、右手だけしか振るえないというのは勝手が悪い。
到底いつものようには体を動かせない。
それでも、着実に、一方通行にダメージを重ねていく。
一方通行「がァッ!!」
一方通行は生まれて初めて惨めったらしく、恥も外聞もなく後退した。
大地を蹴り、ベクトルを操作して自分の体を宙に持ち上げる。
そうやって、一方通行は上条から大きく距離を取った。
上条「逃がすかよ!!」
上条は駆ける。一方通行は思考する。
駄目だ。並みの手じゃコイツは止まらねェ。
演算の速度を上げろ。やれそうなことは全てやれ――!!
一方通行「おォォォォおおおおおおおお!!!!」
一方通行の上空に、風が集まり始めた。
510 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 14:48:11.62
ID:YTeyW4S90 圧縮、圧縮、圧縮―――!
一方通行の『ベクトルコントロール』により操作され、彼の元に学園都市の風が集まる。
集まる風を、一方通行は次々に圧縮していく。
やがて、彼の上空には、直径20mに及ぶほどの――巨大な『高電離気体(プラズマ)』が生み出されていた。
上条「ナニソレ? 元気球? 地球の皆から元気もらってんの?」
一方通行「もらってンのは学園都市中の『風の力』だ。学園都市全体の大気の流れを演算しなきゃなンねェから、いくら俺でも出来るかはわかンなかったけどよ」
一方通行は醜悪ともいえる笑みをその顔に浮かべた。
一方通行「あはぎゃは! ニンゲン、やろォと思えば何でも出来るモンだな!!」
上条「冗談じゃねえっつの!」
上条は逃げる。無理だ無理無理。
あんなものに近づけば、右手が触れる前に全身が溶ける。
一方通行「オイ! ちょっと待てェ!!」
当然、全力で大気の流れをコントロールしている一方通行にそれを追う手立てはない。
512 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 14:49:29.07 ID:HIkXCeV20
なんか所々ギャグるのやめてくれwww
不意打ちで笑ってしまう513 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 14:51:09.85 ID:MtoVravA0
逃げ出したwwwwwwwww521 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 14:56:13.39
ID:YTeyW4S90 一方通行「信っじらンねェ! あンだけでかいクチ叩いといてマジで消えやがった!!」
一方通行は目の前に誰もいなくなった実験場で、ため息をついた。
一方通行「……マジで、この場合実験ってのァどうなっちまうンだァ?」
上条「もちろん、続行に決まってんだろ」
一方通行「…ッ!?」
一方通行の目が驚愕に見開かれる。
上条当麻は戻ってきた。
一台の車に乗って。
一方通行は、勿論その場を動けない。
上条「アクセル全ッ開!! 死ねコラァ!!」
上条はアクセルを思いっきり踏みつけた。
五人乗ってもなお広々としたサイズのワゴン車が、一気に加速を始める。
上条はある程度の加速がついた段階で、運転席から飛び降りた。
慣性の法則にしたがってワゴン車は一方通行に突っ込んでいく。
衝突。
ワゴン車は、一方通行の『反射』によって大きくひしゃげ。
上空にあるプラズマの熱に焼かれ、爆発した。
536 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 15:06:28.67
ID:YTeyW4S90 上条「ま、死ぬわけねーよな。こんなもんで」
しかし上条の狙いは一方通行の命ではない。
あのプラズマを生み出すには複雑な大気の流れを演算しなければならない。
愚かにも一方通行自身の口から語られたことだ。
なら、あの爆風で大気の流れとやらはもう無茶苦茶だろう。
加えて、一方通行はその体に触れた爆風もやたらめったらに反射してしまったはずだ。
そんな風に空気をミキサーでかき混ぜられたかのようにグチャグチャにされてなおプラズマを維持することは不可能だ。
結果は目の前に出ている。
プラズマはもう跡形もない。
上条「あんな切り札が残ってるって分かった以上、長引かせるわけにはいかねえな」
ワゴン車の爆発によって、まだメラメラと地面を焦がす炎の中に、上条は突っ込んだ。
上条「終わらせてやるよ! 最強!!」
そして、一方通行の姿を煙の中で認め、上条が拳を握り締めたその瞬間――
ぞくりと、上条の背に寒気が走った。
何かが――何かが来る!!
542 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 15:15:58.19
ID:YTeyW4S90 一方通行は炎の中で、思考していた。
足りねェか。まだ足りねェか。
成程、さすがは俺と同じ、LEVEL6の可能性。
認めてやるぜ。テメエは第三位『御坂美琴』の二万倍厄介だ。
実感が持てた。テメエを超えれば俺は無敵だ。
テメエ以上の個体がこの世界に存在しているとは思えねェ。
だから、勝つ。テメエを完膚なきまでに殺して、俺は『無敵』になる。
手を伸ばすのも馬鹿らしくなっちまうくらいに眩しい、『太陽』に――!
必要なのは何だ? 常識の枠内じゃ駄目だ。それじゃ、常識外のアイツを超えれねェ。
こっちも常識を超えろ。演算の幅を拡幅しろ。今まで見もしなかった領域に手を伸ばせ。
あァ――なンだ、あるじゃねェか。こンな所に、こンな力が。
一方通行の背中から、黒い翼が吹き荒れた。
545 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 15:17:28.06 ID:qequUQUWO
ちょwwwww
覚醒早ェなおい543 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 15:16:59.19 ID:57MJTuY10
おお、黒い翼きたか559 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 15:23:59.42 ID:6ZDcBXq90
ブチギレてもないのに翼出す一方通行さんマジ頭おかしい563 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 15:25:05.51
ID:YTeyW4S90 一方通行「づォォォおおああああああああ!!!!」
その姿は、余りにも人間離れしていた。
その姿は、余りにも神々しかった。
上条は思わずにへら、と力の無い笑みを浮かべる。
上条「おいおい……お前、もう十分人間超えてるよ」
一方通行「いいやァ…まださ。まだオマエを殺せてねェ」
上条「いや…ホント、そこまでの力を見せ付けられちゃったら、呆れるわ。いや、呆れを通り越して、ムカツク」
一方通行「あァ?」
上条「お前は何でそこまでの力を持ちながら、『こんな所』にいるんだ? 太陽になりたい? いいよ、なれよ。なっちまえ。出来るよ、お前なら」
一方通行「そのセリフはそっくりそのままお返しすンぜ。オマエは何でそンな力を持ちながらこンな所でもがいてる?」
上条「あぁ?」
一方通行「見ていて本当に苛立つぜ。手を伸ばせば届くくせに、諦めて、自分には手が届かないと決め付けて、ウジウジウジウジいじけてやがる」
上条「鏡に言えよ。そんなことは」
一方通行「だから、今言ってンじゃねェか」
578 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 15:33:48.13
ID:YTeyW4S90 もういいよ。認めよう。
どうして俺たちは、互いが互いにこれ程憎たらしいのか。
存在を許しておけないのか。
言葉を誤魔化すな。
そうこれはただの――同族嫌悪だ。
鏡に映った自分の姿が醜くて、醜悪すぎて、直視していられない。
一方通行の翼が振るわれる、圧倒的な破壊力で振るわれるソレは、あっという間に周りを更地にした。
ごろごろと、上条は地面を転がる。
翼自体は『幻想殺し』で逸らした。だが、衝撃を殺しきれなかった。
上条は立ち上がる。
上条「お前は弱虫だ。クソだ。見てらんねえ。だから殺す」
一方通行「お前は惰弱だ。クズだ。目も当てられねェ。だから消す」
それは、一体誰に向けた言葉なのか。
一方通行の翼が蠢く。上条は拳を固く握り締める。
一方通行「世界を敵に回したこともねェくせに、ほざいてンじゃねえェェェェえええええええ!!!!」
上条「運命に弄ばれたこともないくせに、のたまってんじゃねぇぇぇぇええええええええ!!!!」
589 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 15:43:01.10
ID:YTeyW4S90 振るう、振るう、一方通行は翼を振るう。
払う、払う、上条当麻は前に出る。
逸らしたと思った翼がブーメランのように戻ってきた。
上条はたまらず後退する。
上条はぎりり、と奥歯をかみ締めた。
くそ、もっとだ。もっと思考しろ。
アイツは正真正銘化物だ。常識の枠外だ。下手すりゃマジで『全能』だ。
感じ取れ。いや駄目だ。予め感じるだけじゃ足りない。
予め知れ。確信しろ。
アイツの取りうる全ての行動を想像しろ。
それらに対する全ての対策を創造しろ。
上条「らああああああああああああああああ!!!!」
一方通行「があァァァァァァあああああああああ!!!!」
抜けた。
嵐のような連撃の中を。
届く。
一方通行の体が後方に大きく吹き飛んだ。
601 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 15:53:04.66
ID:YTeyW4S90 一方通行「が…ごふ…!」
限界が近い。
元々一方通行はひどく打たれ弱い人間だ。
既に視界はもやがかっていて、これ以上は一歩だって歩けそうにない。
そう、精々が――立ち上がるだけで、限界だ。
上条「ふう…ふう……」
上条も息が荒い。
だが、それは一方通行のソレとは質が違う。
それはただの疲れによるもの。
そう、結局、上条はこの戦いで、一度もその身に直撃を受けていない。
一方通行の攻撃手段、全てを想像し、対応してしまった。
一方通行「そォか…こンだけ限界超えて…まだオマエが上か……」
一方通行は呆れたように呟く。
あと一撃でももらえば、もう意識を保ってはいられまい。
一方通行「なァ…ひとつ聞かせろよ」
上条「なんだよ」
一方通行「神に会って、どうすンだ?」
上条「そんなもん、決まってんだろ。もし、この世に神様なんてのがいるんなら……」
上条「この右手で、殺してやるだけさ」
604 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 15:55:51.77 ID:QCrpt0BPi
スレタイいただきましたー579 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 15:34:49.67 ID:qequUQUWO
熱いな…607 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 16:02:27.27
ID:YTeyW4S90 上条「お前こそ…『無敵』なんてもんになってどうすんだ?」
一方通行「ハ…それこそ、決まってンだろォが」
この期に及んで嘘をつく必要はない。
自分を誤魔化すのは、もうやめよう。
一方通行「敵がいなくなりゃ、あとは味方を増やすだけだろ」
バサリ、と一方通行の翼が震えた。
一方通行「取り出した力をむやみやたらに振るうだけじゃ、オマエにはとどかねェ」
だから、研ぎ澄ませ。
素材を素材のままで無駄にするな。
研いで、研いで、鋭い刀に磨き上げろ。
一方通行「いくぜ…『上条当麻』。次で最後だ。気ィ入れろよ」
上条「わかったよ…っと、お前本名なんて言うんだ?」
一方通行「『―――――』。ありふれた名前だろうが」
上条「いい名前じゃねえか。『―――――』」
一方通行の翼の色が、その根元から反転していく。
黒から白へ。今までよりも、なお神々しく。
それはまさしく――『神の領域』の力。
614 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 16:07:23.57 ID:++qO2zGFO
白翼化来やがった612 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 16:05:58.94 ID:9W72Xpct0
白翼でも能力じたいは黒翼とそんな変わってないよな?615 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 16:07:30.77 ID:PBkK2pna0
>>612
白翼一通さんはユーラシア大陸を吹き飛ばす魔術攻撃を防いでほぼ無傷レベル621 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 16:10:04.24
ID:YTeyW4S90 一方通行「はああああああああああああ!!!!!!」
一方通行の頭の上に、翼と同色のリングが生み出される。
一方通行は前に歩けない。ただ、その場に立ち上がるのが限界だ。
だが、翼は違う。生まれ変わった翼は、その威容を誇るかのごとく大きくばさ、とはためき。
――その先端が、地面の中に吸いこまれた。
一方通行を中心に、大地が円形に輝く。
円の直径は、およそ100m。当然、上条当麻はその円の中にいる。
月明かりと、輝く大地に照らされて、世界が真っ白に輝く。
上条は、一方通行が何をしようとしているのかを知った。
上条「うおらぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」
上条は一方通行目掛けて駆け出し――跳ぶ。
直後に、光の円から無数の光弾が、隙間なく射出された。
640 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 16:22:40.59
ID:YTeyW4S90 上条は空中で頭を下に、体を垂直に安定させた。
腹筋、背筋、その他数多の筋肉の総動員。ぶちぶちと、どこかで嫌な音がなった。
構うものか。
上条は自分に言い聞かせる。
もっともっと真っ直ぐだ。じゃなきゃ死ぬぞオイ。
上条「くぅ!!」
その姿勢のまま、上条は真下から垂直に撃ち出された光弾に右手をかざした。
だが、そんなものが何になる?
打ち消せるのは精々右手の面積分。頭への即死弾を防ぐのが精一杯。
肩を、左手を、腹を、体を縦になぞる様に、くり貫かれた。
上条「ぐああああああああああ!!!!」
だが、守った! 死んでいない!
脳みそも、心臓も、貫かれてはいない!!
一方通行「だろうと思ったよ!! だから!!」
真上に打ち上げられた光弾が、直後に向きを変え、今度は真下に撃ち出される。
まさしく、持ち主の手元に帰るブーメランのごとく。
上条「そうくることはわかってたんだよぉ!!!!」
上条は一方通行目掛けて降下しながら――吼えた。
650 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 16:29:12.62
ID:YTeyW4S90 上条は一方通行の目の前に着地し、一方通行を引き倒す。
一方通行の体を、傘にする。
一方通行「ハァ?」
当然、光弾は一方通行の体を貫かない。
しかし、とはいっても。
そんな姿勢で密着すれば。
一方通行の手が、血流を操作し、人間を即死させる手が、上条当麻の体にべったりとくっついていた。
もっともそれは、上条の右手も届く距離、ということになるが。
一方通行「……ッ!!」
上条「……ッ!!」
何かの破壊される音が二つ、連続で響き。
『絶対能力進化実験』はここに終結した。
659 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 16:34:44.59
ID:YTeyW4S90 ―エピローグ―
一方通行が目を覚ましたのは、病院だった。
冥土帰し「お? 目を覚ましたかい?」
ベッドに横たわる一方通行の顔を、かえるによく似た顔の医者が嬉しそうに覗き込んでいた。
一方通行「ここは……どこだ?」
冥土帰し「病院だよ。そして僕は、医者だ」
一方通行「そうか……」
一方通行は思い出す。最後の刹那、何が起きたのか。
一方通行は理解する。
一方通行「俺は……負けたのか」
そう、実験は、上条当麻の勝利で幕を閉じたのだ。
670 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 16:41:28.69
ID:YTeyW4S90 最後のあの瞬間。
一方通行は上条に触れた手のひらから血流を操作し、血管を破裂させようと試みた。
上条は、一方通行がそうすることを、それに意識を引き摺られることを知っていた。
だからあの局面、上条は冷静にまずは一方通行の腕を振り払ってから、あらためて顔面を殴りつけたのだった。
一方通行「敵わねェな……化け物め」
冥土帰し「上条当麻のことを言ってるのかい? 馬鹿を言っちゃいけない。僕はあれ程人間らしい人間はしらないよ」
一方通行「ハン……そンで、アイツはどこに消えたンだ? 俺よりよっぽど重傷だっただろうがよ」
冥土帰し「本当に、ついさっきまで君の隣で寝てたんだけどね。意識を取り戻したと思ったら、すぐに飛び出していったよ」
一方通行「オイオイ……それでも人間かよ、アイツ」
冥土帰し「まあ、しょうがないといえばしょうがないかもしれないね。この病院に、彼はいい思い出を持っていないから」
674 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 16:47:22.16
ID:YTeyW4S90 冥土帰し「ところで一方通行くん、君の傷はそう大したことはなかったから、そろそろ立てると思うんだけど、どうだい?」
一方通行「ン…多少ふらつくが、まァいけるな」
冥土帰し「では、少しついてきて欲しい。そう歩かせはしないから、安心して着いてきたまえ」
一方通行「……?」
一方通行は怪訝に思いながらも、取り合えず医者の後をついていく。
程なくして、ひとつの病室にたどり着いた。
その病室の中では、上条当麻が闇に堕ちる引き金となった少女が眠っている。
一方通行「誰だコレ」
冥土帰し「僕が受け持っている中で一番厄介な患者でね。名をインデックス、という」
それは、かつて彼が救えなかった少女の名前。
救うどころか、殺してしまった少女の名前だった。
687 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 16:54:45.29
ID:YTeyW4S90 一方通行「えれえゴテゴテしたモンくっつけてンな。生きてンのかよ?」
冥土帰し「生きているよ。少なくとも、体はね」
冥土帰し「僕個人宛に支払われてくる『ある援助』によってアレコレ意識を取り戻す方策を試しているんだけどね、中々うまくいかない」
一方通行「ふーン」
冥土帰し「悔しいよ、僕は悔しい。だって、彼女を目覚めさせる理論は頭の中にあるのに、それを可能にする『道具』がないんだ。いいかい、一方通行」
医者はいつのまにか呼び捨てになっていた。
図々しい野郎だ、と一方通行は舌打ちする。
一方通行「なンだよ」
冥土帰し「彼女の脳に『理想的な方向』で、『理想的な強さ』の刺激を与えれば、彼女は目を覚ますはずなんだ」
一方通行「……オイ」
冥土帰し「そうやって悩んでいたところに君の入院だ。僕は嬉しかったね。小躍りして喜んだよ」
冥土帰し「これで、僕の患者を『二人』救ってやれるとね」
695 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:02:39.38
ID:YTeyW4S90 一方通行「なンで俺がそンな慈善事業しなきゃなンねェンだよ」
冥土帰し「言ってしまうと、この子は上条当麻ゆかりのものだ」
一方通行「なに?」
冥土帰し「君は上条当麻に勝てなかった。君は確かに神に近づくほどの力を得たのかもしれないが、敵は一人、残ってしまった」
一方通行「……オマエ、何モンだ?」
冥土帰し「僕は医者だよ。患者に必要なものは、どんな手を使っても用意する。そんな医者だ」
冥土帰し「人生の先輩として、僕は君にひとつアドバイスをしておこう」
一方通行「……」
冥土帰し「敵を無くすには、何も勝負して勝たなきゃいけないってことはないんだよ」
一方通行「ハッ」
冥土帰しの医者の言葉に、一方通行は笑った。
一方通行「オンナノコ一人助けるだけで無敵確定か。達成感の欠片もありゃしねェ。逆に泣けるね」
いいさ。もう自分に嘘をつくのはやめだ。
この俺が誰かを救うなど、笑いたければ笑えばいい。
俺は俺のやりたいようにこれからは生きさせてもらう。
その為の力は、もうこの手にあるのだから。
708 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:10:40.69
ID:YTeyW4S90 病院の一室でそんな会話が行われていることなど露ほども知らず。
上条当麻は病院の入り口を抜けたところで御坂美琴と対峙していた。
上条「よう。元気か?」
美琴「馴れ馴れしく声かけてこないでよ、殺すわよ」
上条「おっかねえな。そんなん言うなら俺の進行方向に立ち塞がってんじゃないよ」
美琴「実験は……どうなったの?」
上条「おう、実験は無事成功。これにて円満終了だ。よかったな、悩みがひとつ解決したじゃねえか」
美琴「アンタは……神に会えたの?」
思わず口にしてしまった美琴の問いに、上条はにへら、と笑う。
上条「おう、見た見た。真っ白な翼広げてな、ちょっとかっこよかったぜ」
715 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:16:44.53
ID:YTeyW4S90 美琴「ひとつだけ……」
上条「ん?」
美琴「私は、アンタに借りを作るなんて、我慢ならない。だから、ひとつだけアンタの言うことを聞いてあげる」
上条「マジでか。何でもいいの?」
美琴「何でもいいわよ、今さら何言ってんの」
上条「じゃあ、もう二度と俺を狙わないってことで」
美琴「それは却下よ」
上条「うそーん。まあいいや。そうだろうと思ってたし。だったら、うん」
上条は――いつものものとは違う、何だかスッキリしたような笑みを顔に浮かべて、言った。
上条「その顔を治せ。冥土帰しに頼んで、傷ひとつなくな」
722 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:20:50.35 ID:c58EWsJdO
うおおおおおああああああああ!!!!!723 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:20:55.41 ID:6Gqfp6u6i
この上条さんも結局、原作と同じくヒーローだよな・・・725 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:21:41.00 ID:L4volc1R0
ダークは付いてもヒーローなんだよ734 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:27:11.06
ID:YTeyW4S90 美琴「な…!」
上条「出来ればそれで俺のこともキレイさっぱり忘れて――ってのは虫が良すぎるから、言わねえよ」
上条「お前はこれからいつでも俺を殺しに来い。お前に顔を治させるのは、単に俺の精神衛生上の問題だ」
上条「俺は自力でお前から必死で逃げるよ。お前が追いかけるのが馬鹿らしくなるまで逃げ切ってみせる」
そう。逃げる。
悪意を振りまいて威嚇せずとも、生きていけるだけの力は得たから。
美琴「勝手すぎるでしょ!! 何の責任も取らないで!!」
上条「なんだよ、責任とって欲しいのか?」
美琴「な…! そんなわけないでしょ!! 死ね!! どっかですぐに野垂れ死ね!!」
上条「おう、そうする。じゃあな美琴。もう二度と会うことはないだろうけど」
美琴「……ッ!! 気安く名前呼んでんじゃないわよゴラァァァアアアア!!!!」
735 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:28:32.35 ID:0Ht9W9Qu0
いつもの夫婦喧嘩になってきました743 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:35:03.97
ID:YTeyW4S90 数日後――。
一方通行はとある少女と道端で出会う。
「私を保護して欲しいのってミサカはミサカは助けを求めてみたり!」
数日後――。
上条当麻は、一人の少女に出会う。
■■「ハンバーガーを食べ過ぎて。うぷ。気持ち悪い」
数日後――。
とある病院で、一人の少女が目を覚ます。
「とうまは……どこ?」
こうして彼らは、正しい歴史の中に還っていく。
758 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:41:06.79
ID:YTeyW4S90 とはいえ、これ程までに運命を歪められた彼らが。
これから先、正しき歴史とやらの中で、誰かに描かれたシナリオどおりに踊ってみせるものだろうか。
――まあいい。
語り部はこれ以上でしゃばるまい。
これから先は、諸君らのご想像にお任せするとしよう。
< 完 >
784 :
◆QKyDtVSKJoDf :2010/11/03(水) 17:46:03.77
ID:YTeyW4S90 おしまーい 長かったー
製作速報に行こうかぎりぎりまで迷ってたけどこの一話で終わりだしいいやvipでって感じでこっちでやりました
パートスレうぜえってなった人はごめんちゃい
厨二的な言い回しってなんかくせになる 書いてて楽しかった
あ ミサカの存在を今思い出した
ミサカはとっても元気です
762 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:42:07.50 ID:r/JgXHKx0
乙っ……!!774 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:43:30.68 ID:HIkXCeV20
乙でした!
熱かった805 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:53:44.76 ID:Jg7H2TUd0
続編の草案とか構想はあったりする?813 :
◆QKyDtVSKJoDf :2010/11/03(水) 17:57:50.02
ID:YTeyW4S90 >>805
ない ってか話の展開しようがない どうしたって俺TUEEEEEの繰り返しになっちゃう
いやこれもそうじゃんって言われたらぐぅの音も出ねえけど
772 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:43:17.93 ID:9KgxkjXB0
乙
犠牲になったのは美琴の処女膜だけだったんだ
よかったよかった756 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:40:27.46 ID:tO0seYGW0
正しい歴史の中……えらくインフレした世界だな779 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:44:34.09 ID:T+drJs9C0
垣根君涙目783 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:46:02.78 ID:PBkK2pna0
>>779
そもそもまともに機能してる暗部組織がアイテムだけって時点で、おそらくスクールはすでに壊滅済み
ていとくんもとっくに冷蔵庫だろう786 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/03(水) 17:46:13.27 ID:rgLIZdpEO
たまらん乙を捧げよう!
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