五条「ククク… ここが学園都市ですか」その21

2010-12-20 (月) 08:28  禁書目録SS   9コメント  
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とある魔術の禁書目録 ミサカ盛り (ノンスケールトレーディングミニフィギュア) BOX


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487 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /18(土) 02:05:23.18 ID:yGuG4S6o
『で、アンタ私のクローンなワケ?』

手を差し伸べた子猫に逃げられた美琴が、隣でしゃがみこんでいるもう一人のゴーグルを付けた美琴に尋ねる。

『はい、正確には個体番号 9982のクローンです。とミサカは丁寧に自身の個体番号を開示します』

当然の様に答えるゴーグルを付けた美琴。



……いまいち話が掴みづらいが、眼前に居る二人の美琴の内、自分が先程まで共に行動していたのが『御坂 美琴』で、頭にゴーグルを付けたこの美琴は、彼女のクローンなのだろう。
クローン人間の製造に関しては、外の世界では人権問題や各種宗教等の観点から黙殺され続けているはずだが、ある種無法地帯である学園都市の科学力を以ってすれば今さらクローンの一人や二人現れたところで別段驚く程の事ではない。

美琴「……例の計画とやらは凍結したハズでしょ?何でアンタみたいなのが存在するのよ?」

9982「ZXC741ASD852QWE963' とミサカは符丁(パス)の確認を取ります」

投げられた言葉の真意を理解出来ず、美琴に目線を投げる。
彼女も同様なのだろう、自身と目が合うと、小さく首を横に振った。

9982「やはりお二人は実験の関係者ではないのですね。先程の質問にはお答え出来ません」

9982 号の返答を聞いた美琴の眉間にシワが寄る。

美琴「……どこのどいつが計画を主導してんの?」
9982「機密事項です」

美琴「何の為に造られたわけ?」
9982「禁則事項です」

……はぐらかされた事が頭に来たのだろうか。
美琴の眉間のシワが深くなったと思った矢先に彼女の手が伸び、しゃがみ込んでいる9982の左手を引っつかみ無理やりに立ち上がらせた。

美琴「……痛い目に会いたいの?力づくで聞いたっていいのよ?」

抵抗もせずされるがままになっている9982を見かねて、咄嗟に美琴との腕を掴み9982から引き剥がす。

美琴「……アンタには関係無い事でしょ」

五条「……ククク……すみませんがあまり気持ちの良いものではない……この場に居るというだけでは関係者にはなれませんかね……」



488 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/18(土) 02:06:42.76 ID:yGuG4S6o
9982 「……」

眉間にシワを寄せている美琴とにらみ合う。

美琴「……あーもう!」

諦めた様な表情を浮かべた美琴に腕を振り払われた。
腕を振り払った美琴が、再度9982と向かい合う。

美琴「いいわ、行きなさい。勝手に後つけさせてもらうから。アンタどっかの施設か研究所に帰るんだろうし、そこでアンタの製造者をとっ捕まえて直接聞き出してやるわ」

9982「……お姉さまを制止して頂いてありがとうございました。とミサカは変な男性に心ばかりの謝辞を述べます」

五条「……その変な男性というのは止めて欲しいですね……オレは五条、五条勝です……」

9982「……五条勝。了解しました、五条勝。とミサカは教わった名称を復唱して足を進めます」

言い終えると、歩き始める9982。

その後をつける美琴に続き、自身も歩を進める。
どこに向かうのか皆目検討も付かないが、暇を潰す分にはもう暫し美琴に付き合っても構わないだろう。

────────────

美琴「……ねぇ」

難しげな表情を浮かべたまま隣を歩いていた美琴が唐突に口を開いた。

五条「……どうしました?」

美琴「……もう帰っても構わないわよ」

五条「……帰れ、という意味ですか……?」

視線を美琴から外し、前へ向ける。
相も変わらず無言で歩を進めている9982。

美琴「……」

五条「……ここでお姉さまを放って帰ったら、オレはある娘に張り倒されかねませんので……」



489 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /18(土) 02:08:27.61 ID:yGuG4S6o
美琴「……黒子に余計な事言うんじゃないわよ」

五条「……ククク……オレの口はそんなに軽くありません……」

美琴「……」

五条「……」

はあ、と美琴がため息をついたのが聞こえた。

美琴「……アンタも大概変なヤツね」

五条「……ココに来てからは変な奴としか出会ってない気がするのですが……」

美琴「どういう意味よ!?……まあいいわ」

美琴が顎でクイっと9982を指し示し、言葉を続ける。

美琴「……見ての通り、あの娘アタシのクローン……なんだけどさ」

五条「……ええ」

美琴「アタシのクローンが造られてるんじゃないかって噂は前からちょくちょく聞いてたんだけど、アタシも実際見たこと無かったんだ」

五条「……秘密裏にお姉さまのクローンが造られていた、と?」

美琴「うん……それが何かちょっと気味悪く感じて、色々調べてみたワケ」

五条「……確かにいつの間にか自分のクローンが造られているとしたら、薄気味が悪いですね……ヒヒヒ……

美琴「……でしょ?でも調べてみたらその計画って、もう随分前に凍結されてるハズなのよ」

五条「……?ではあの娘は……」

美琴「……そう。あの娘が今ここに居る事自体、ワっケわかんないのよねー……?」

不意に美琴が足を止める。

足を止めた美琴の前方に目線を送ると、同様に足を止めた9982が何かをじっと見つめている。
続けて、更にその目線の先を辿る。

今正に店仕舞いを始めようかといった体のアイスクリームの移動販売車が視界に入った。
再び9982に視線を戻す。と、いつの間にかこちらを振り返っていた彼女と視線が合った。
五条「……?」
美琴「……」



491 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /18(土) 02:10:30.40 ID:yGuG4S6o
表情こそ無表情だが、その一連の行動から察した要求を問うてみる。

五条「……ククク……食べたいのですか……?」

こくり、とゴーグルを付けた頭が縦に揺れた。

────────────

『お、兄ちゃん両手に華だな、双子かい?』

軒先の看板を畳みながら、恰幅の良い中年男性の店主が笑いかけてきた。

美琴「コイツは妹じゃないっ!!」

次いで背後から響く美琴の声。
その声に一瞬目を丸くした店主が真顔になり、嗜める様に言葉を返す。

『…… おいおい、冗談でもそんな事いうもんじゃないぞ……ちょっと待ってな!』

言い終え、畳もうとしていた車内へ姿を消す店主。
9982 を前にしての美琴の発言が少々気にかかったが、自身が口を挿し挟むものでもないかと静観し、主人の姿を目で追った。

電気を落とした薄暗い車中、慣れた手つきでアイスケースをこそぐ様が視界に入る。

『……ほれ、ウチの自慢の品だ、これやるから仲良くしな』

店主がカウンター越しに、三つのアイスクリームを差し出してきた。
まるでエサを与えられる犬の様に無言でマーブルアイスを受け取る9982。
何かを警戒する様な表情でチョコミントのアイスを受け取る美琴。

……確かに、双子にしか見えない。

『ほれ、ウチの自慢の品だ!兄ちゃんも食ってみてくれ!』

最後に残ったラムレーズンのアイスが眼前に差し出される。

五条「……ククク……お代は『ああ、丁度ケース洗おうかと思ってたトコだから構わないよ!』

言い放って微笑んだ店主に頭を下げ、アイスを受け取る。

『何があったか知らんけど、うまいもん食えばイライラも収まるだろ?』

9982「濃厚でいてくどくなく後味がさっぱりした甘さ……牛乳が良いのは当然ですが、研ぎの良い和糖を使わなければこの風合いは出せません。コーンはクッキーを砕いたクラスト生地を意識したものですね」



492 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/18(土) 02:12:58.46 ID:yGuG4S6o
不意に聞こえた料理評論家の論評の様な声に目線を投げると、既に手にしたアイスのコーンをかじり終えた9932が視界に入った。

9982 「グッジョブです!とミサカは惜しみない賞賛を送ります」

言いながら無表情で店主へと親指を立てる9982。

『はは、ありがとよ』

次いで響く、どことなく照れを感じさせる店主の声。
アイスを受け取った美琴はそのやり取りを聞きながら、9982の隣で頭痛を抑える様に額に手を当てている。

『夫婦は別れりゃ赤の他人だが、姉妹の血は一生繋がったままだ。ま、姉妹仲良くな』

言い終え車の運転席に乗り込む店主に再度一礼する。
直ぐにエンジンがかかり、車がゆっくりと発進した。

美琴「だーかーらー!違うっつーの」

美琴の否定の声を聞き、背後に視線を移す。
右手にアイスを抱えたまま去っていく店主の車を見つめている美琴と、あんぐり大口を開けてそのアイスに近寄る9982。

五条「……」

ばくり、と9982が一口で器用にアイスのみかじり取った。
口の端に、少しアイスのかけらが付着している。

美琴「……まぁ、ハタから見れば姉妹に見えるんだろーけど」

苦苦しい表情で空のコーンを口に運ぶ美琴。

美琴「……あれ?」

────────────

五条「……ククク……オレです」

『あ、勝さん?ようやく今終わりましたの』

五条「……そうですか……お疲れ様でした……」

『もしかしたら来てくれるんじゃないかと思って、内心期待しておりましたのよ?』

五条「……言ったでしょう……団体行動は苦手だと……」

『…… 風紀委員のお仕事は単独行動でも勤まりましてよ?』

五条「……ヒヒヒ……」



493 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /18(土) 02:14:25.50 ID:yGuG4S6o
『まぁ良いですわ。今は何をしてらっしゃいますの?』

五条「今は……」

眼前のテーブルへ目線を移す。
昼食をとって以来、本日二度目に足を踏み入れた喫茶店で同じ顔をした二人の少女とテーブルを囲んでいた。
彼女達の前には、それぞれスイーツと紅茶の入ったティーカップが並べられており、周囲のテーブルからは双子だ双子だという好奇の声が時折響いてくる。

五条「……喫茶店でお茶を飲んでいますね……」

『あら、随分と優雅な事なさいますのね』

五条「……ええ、ほんの気まぐれですよ……」

『……』

五条「……」

『……勝さん』

五条「……なんでしょう……」

『わたくし今日は大変疲れております』

五条「……お察ししますよ……ククク……」

『ですので、妙な疑問が浮かんでいても、疲れすぎてて眠ってしまうかもしれませんの』

五条「……」

『けれど明日以降もこのモヤモヤを抱えたままでは、とてもではありませんけれど眠れそうにありませんの』

五条「……」

『……以上ですわ』

五条「……黒子」

『はい?』

五条「……明日、会えますか?」

『……勿論ですわよ』

────────────



496 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /18(土) 02:17:47.92 ID:yGuG4S6o
完全に日が暮れてから、随分と時間が経っていた。
既に辺りは完全に夜の帳に包まれはしたものの、一向に下がりそうにない気温は、今宵が熱帯夜だという事実を突きつけてくれている。

足を進めながら腕時計を眺めた。
青いバックライトに浮かび上がる文字盤が、午後も八時を回った頃合だという事を教えてくれている。
気がつけばアレやコレやと食物に興味を示す9982に付き合っている内に、随分と時間が経っていたものだ。

『で、アンタいつんなったら帰るのよ?』

隣を歩いていた美琴が、げんなりした様子で声を発した。
その発言を聞いた9982が振り返り口を開く。

9982「言い忘れてましたが、ミサカはこれから実験に向かうので施設へは戻りません」

美琴「は!?」
五条「ひッ!?」

9982「お二人が後を尾けるのは自由ですが、ミサカの製造者には会えません」

美琴「なッ……何で今頃……」
9982「聞かれませんでしたので」

しれっとした表情で言い放つ9982を見て、美琴の表情に険が降りる。
そのままスカートのポケットに手を突っ込んで携帯情報端末を触った美琴が手を引き抜くと、こん、と小気味の良い音がして何かが石畳の上に転がった。

目線で追ってみると、転がったソレは日中必死になってガチャガチャを回し続けた戦利品であるゲコ太の缶バッジだった。

9982「?それは何ですか?」
美琴「ガチャガチャで獲った景品だけど……!」

はっとした表情を浮かべた美琴が、拾った缶バッジを持ったままおもむろに9982の制服の裾に手を伸ばす。

9982 「何でしょう?」
美琴「いいからジッとしてなさい!」

暫しゴソゴソとなにやらいじくっていた美琴が9982から身を離す。
9982 の制服の裾に、ちょこんと先の缶バッジが括りつけられていた。

美琴「うん!鏡で見るよりわかりやすいし客観視できるわね!こうして見ると結構アリって気も……」

9982「いやいやねーだろ、とミサカはミサカの素体のお子様センスに愕然とします」
五条「……無いですね……ククク……アーッハッハッハ!」

美琴「なっ何おう!」



497 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/18(土) 02:19:32.38 ID:yGuG4S6o
9982 「このお子様センスを否定できる点では、あなたは変な男性ではなかったのですねとミサカは五条勝に先の非礼を丁重に詫びます」
五条「クックック……構いませんよ……いや、クローンが素体よりも審美眼を備えているとは……ヒヒヒ……」

美琴「じょっ……冗談よ冗談、ちょっと試しにつけてみただけ」

散々からかわれたのが余程恥ずかしかったのだろうか。
顔を赤く染めながら、美琴が9982のバッジに左手を伸ばす。

刹那、ぱぁんと乾いた音が周囲に響き渡った。
差し伸べた美琴の左手が、9982の右手にはたき落とされている。

美琴「……」
次いで美琴が右手をバッジに伸ばす。
再度響き渡るぱぁんという甲高い音。

美琴「…………」
9982 「…………」

辺りに数多の甲高い音が木霊した。
美琴が手を伸ばす。
9982が払い落とす。
妙に楽しそうに感じるが、何か今二人の間に割って入ってはいけない様な空気を感じる。
その応酬が一体どれ程繰り返されただろう。

美琴「何すんのよッ!!」
手の甲を少し赤く染めた美琴が雄たけびを上げた。

9982「ミサカにつけた時点でこのバッジの所有権はミサカに移ったと主張します」

空手家の様な構えで手刀を掲げながら、9982が言葉を続ける。

9982「従ってミサカに所有権のあるこのバッジに対するお姉さまの行為は、強奪であるとミサカは訴えます」

美琴「なッ……何よそのヘリクツ!」

9982「ヘリクツではありません、それにこれは」

9982の指が、裾に括りつけられた缶バッジへと伸び、その表面を優しく撫でた。

9982 「お姉さまから頂いた、初めてのプレゼントですから」

缶バッジを撫でる無表情な9982の表情に、微かながら笑顔の様な動きが見えたのは気のせいだったのだろうか。

9982「もうちょっとマシなものはなかったのかよ、という本音を胸にしまってミサカは嘆息します」

美琴「やっぱ返せ──っ!!」

────────────



498 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /18(土) 02:20:53.98 ID:yGuG4S6o
五条「……クックック……」

美琴「……?何笑ってんのよ?」

五条「……二人を見ているとなんだか可笑しくなりましてね……」

9982「……?喜劇を演じているつもりは無いのですが、とミサカは首を捻り五条勝の微笑の理由について考えを巡らせます」

美琴「……もういいわ、今日のところは失礼させてもらうから」

諦めた様な表情を浮かべた美琴が、9982に向かい右手を掲げて踵を返した。

9982「……」

その様を見つめ続けている9982。

美琴「……?まだ何かあるの?」

9982「……いえ」

9982「…… さようなら、お姉さま」

美琴「あぁ、うん、じゃあね」

別れの挨拶を交わした美琴が、歩き始める。

五条「……では、俺も彼女と共に戻りますので……」

9982「……さようなら、五条勝。とても美味しかったです、とミサカは先ほど共に食べたアイスの感想を口にします」

五条「……ククク……また会えたらご一緒しましょう……」

右手を掲げ踵を返し、美琴の背を追う。
美琴はいつの間にか駆け出しており、その背を追うために自身も足の回転を速めた。

美琴「……アンタさ、さっき何で笑ってたワケ?」

五条「……いえ、二人がまるで本当の姉妹みたいに見えましてね……」

美琴「……」

夜の街を駆けながら言葉を続ける。

五条「……クローン人間というともっと無機質なものを想像していたのですが……少しズレてはいるものの、彼女もやはり人間なのでしょうね……」

美琴「……そうね、アタシももっと黒いの想像してたんだけど……」

五条「……それよりも、どこへ向かってらっしゃるのですか……?」



500 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/18(土) 02:23:03.79 ID:yGuG4S6o
美琴「ああ、どっかに公衆回線があったら教えて?」

五条「……?」

美琴「さっきあの娘が言ってたパスを解読して、情報を引き出してみようと思うの」

五条「……成る程……」

施設に帰らないと言っていた9982を追うよりも、そちらの方が早いと踏んだのだろうか。

美琴「人に黙ってクローンなんてこさえて……絶対製造者をぶっちめてやるわ」

五条「……確かに、いけ好きませんね……ッ!?」

見回しながら駆けている視界の隅に、公衆端末のBOXが目に入った。

五条「……お姉さま、あちらに……」

美琴「上々ねっ!」

────────────

五条「……ククク……来ました……初春から解析済みのコードです……」

美琴「ありがと、悪いわね」

五条「……いえ、礼はいつか初春にして下さい……」

初春から送られた解析済みの符丁が表示された携帯電話を美琴に手渡す。
受け取った美琴がPDAを開き、その文字列を眺めた後に瞳を閉じた。
次いでバチバチと湧き上がる空中放電。
次第に表示が乱れ、ノイズまみれになるPDAの画面。

再びPDAの画面が復旧した時には、先の画面とは異なる表示が映し出されていた。

五条「……便利なものですね……」
美琴「でしょ?案外応用利くのよ、私の能力」

自慢げに花を鳴らす美琴の肩越しに、PDAを覗き見る。

──────絶対能力進化計画

真っ白な画面に黒い文字という、飾り気の無いレイアウトが表示されている。

美琴「……」



502 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /18(土) 02:24:22.79 ID:yGuG4S6o
────────────

『「妹達」を運用した絶対能力者(レベル6)への進化法』

学園都市には七名の超能力者(レベル5)が存在するが、樹形図の設計者の予測演算の結果、まだ見ぬ絶対能力へたどり着ける者は一名のみと判明した。

この被験者に通常の時間割を施した場合、絶対能力に到達するには二百五十年もの歳月を要する。

我々はこの『二百五十年法』を保留とし、実践による能力の成長促進を検討した。
特定の戦場を用意し、シナリオ通りに戦闘を進めることで成長の方向性を操作する。

予測演算の結果百二十八種類の戦場を用意し、超電磁砲を百二十八回殺害する事で絶対能力者に進化すると判明した。

しかし超電磁砲を複数確保するのは不可能であるため、過去に凍結された『量産能力者計画』の『妹達』を流用してこれに代える事とする。

武装した『妹達』を大量に投入することで性能差を埋める事とし、二万体の『妹達』と戦闘シナリオをもって、絶対能力者(レベル6)への進化(シフト)を達成する。

──────第9982次実験 開始時刻 八月十五日 二十一時 絶対座標  X-162258 Y-415687

────────────



504 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/18(土) 02:26:37.52 ID:yGuG4S6o
美琴「あ……アハハハ……なによコレ……」

五条「……ッッッ!!」

理解の出来ない単語が多数混ざるが、大まかな内容は何と無しに理解が出来た。
文中に出てくる妹達というのは、恐らくは美琴のクローン体である先の少女の事だろう。
そしてクローンを現状レベル5の誰か、美琴以外の誰かであるレベル6に進化できる可能性のある人間が様々な状況下で二万体殺害する事により、その一人はレベル6に進化する事が出来る、と。

体中の血液が、一気に沸騰しそうな程に熱を帯びるのを感じた。

狂っている。
クローン体だからなのだろうか、多少のズレがあるとは言え、先の少女が見せていた挙動は間違いなく人間のソレだ。

狂っている。
こんな計画を思いついた研究者達も、それに賛同してまで絶対能力者を目指す被験者も。

美琴「ねぇ……さっきのアイツが言ってた実験って……」

第9982 次実験 開始時刻 八月十五日 二十一時 絶対座標 X-162258 Y-415687

9982.

(『はい、正確には個体番号9982のクローンです。とミサカは丁寧に自身の個体番号を開示します』)


気が付けば、弾かれる様にBOXを飛び出していた。
傍らの時計が視界に入る。
二十一時 五分。

五条「座標は!座標位置はどちらですかッ!?」

呆けにとられていた美琴の顔が引き締まり、彼女もまた何かに弾かれる様駆け出した。

美琴「こっちよッッッ!!」

先とは異なり全速力で駆ける美琴の後を追う。
つい先刻まで、平和に呆けていた自身が口惜しい。



506 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/18(土) 02:27:52.95 ID:yGuG4S6o
『この一刻を争うタイミングで変な男性と遭遇してしまったものだと、ミサカは憔悴を交えながら自身の不運を嘆きます』
『ミャー……と鳴く四足歩行生物がピンチです』
『グッジョブです!とミサカは惜しみない賞賛を送ります』

足を進める度に、彼女が先に見せていた人間らしい挙動が脳裏に蘇ってくる。

『お姉さまから頂いた、初めてのプレゼントですから』
『……さようなら、お姉さま』
『さようなら、五条勝。とても美味しかったです、とミサカは先ほど共に食べたアイスの感想を口にします』

彼女が言ったあの別れの言葉は──────

『…… ククク……また会えたらご一緒しましょう……』

当たり前の様に交わした、再開の折の約束は──────

遠くから爆発音の様なものが聞こえた。

五条「まだッ……まだなのですかッ……!?」

美琴「~~ッ!!もうすぐよッ!」



507 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/18(土) 02:30:49.35 ID:yGuG4S6o
不意に駆けていた狭い道から、一気に視界が開ける。
周囲の状況を見ると、恐らく電車の操車場にかかる陸橋に出た様だ。

陸橋の下方、目視三百メートル程前方に座り込む、先ほどまで顔を合わせていた人影が見えた。
その胸には大切そうに何かを抱え込んでいる。

────── 左太ももから先が、完全に消失している状態のまま。

ふわり、と彼女の傍らの列車が宙に浮かび上がり、彼女の頭上へと移動した。

美琴「うそ、うそッ!?そんな……!!」
五条「させませんッッ!!!」

叫び、手すりを蹴って跳躍する。

自身の着地と同時、彼女の頭上に移動した列車が、まるで線香花火の先端が重力に引かれる様に落下を開始した。

──────その瞬間、世界が時の刻みを止めた。
灰色に染まった世界で、圧し掛かる重圧に耐え、一歩、また一歩と足を踏み出す。

一歩。
僅か一歩でも全身の筋肉が悲鳴を上げるのが判る。

一歩。
足が痛い。腕が痛い。目の奥が痛い。関係ない。

一歩。
目前の彼女を救う。彼女を守る。人間である彼女を守る。

一歩。
助ける。救う。守る。護る。

一歩。
──────進めない。自身の足が中空に停止する。
悲鳴を上げている全身の筋肉に渇を入れるも、一向に足が前に進む気配が無い。
あと数歩、あと数歩の先に彼女が居るのに。

不意に、止まっていた世界の中で、自身に気付いた様に視線の先の彼女が顔を上げた。

無表情なまま顔を上げた彼女と、時の刻みが凍りついたまま視線を交わす。

刹那、彼女の表情に笑顔が咲いた。

先に美琴のプレゼントを受け取った際に見せた、ティースプーンの半分にも満たない程の、微かな、本当に微かな笑顔が。


──────そして、轟音が、響き、渡り、数メートル、先の、視界が、冷たい、鉄の塊に、塞がれた。


──────to be continued──────



509 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/18(土) 02:32:43.41 ID:YAdlHrU0
そんな…ヘブンズタイムでもダメだったのか…



508 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/18(土) 02:32:30.82 ID:2wZARNAo
やはり一方通行は死んでいい
というか死ね




514 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/18(土) 02:35:33.75 ID:YAdlHrU0
ちょっと近所のコンビニの缶コーヒー買い占めてくる



518 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /18(土) 03:23:07.41 ID:iT6G6Bc0
原作の上やんより五条さんの方が感情移入できるってどうなってんのこれ…
がんばれ>>1!!がんばれ五条さん!!




520 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/18(土) 18:50:51.47 ID:mOUI9WI0
一方さんは一応好きなキャラなんだけどやっぱこの辺の話だと好きになれないな・・・



532 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/19(日) 21:04:47.09 ID:ok/LH1wo
──────唸り声を上げて轟風が吹き抜ける操車場に、二つの人影があった。
一人の少年は緑と橙のサッカーウェアに身を包み、大破している列車の脇に力なく俯き、両膝を地についている五条勝。
彼の前には、かつて列車として運用されていた鉄塊が静かに立ちはだかっている。

『本日の実験、しゅーりょォー』

もう片方の人影、真っ白な肌と髪を持ち、それとは対比的なモノトーンの服に身を包んだ少年が、吹き荒ぶ烈風をものともせず声を上げた。

『……ってなンだテメェ?いきなり出てくるなンてオタク、テレポーターか何かですかァ?』

五条「…………」

『あン?シカトかァ?ンなトコ座り込んで、どォかしたんですかァ!?クケケケケ!』

『あああぁぁアアアあああああああああああああ!!!!!!』
『おおッ?』

少年の笑い声に次いで、形容し難い程昂ぶった超電磁砲・御坂美琴の叫び声が木霊した。
叫び声を上げ、アルビノの少年に向かって駆けていた美琴が、地面に強く右足を押し付ける。
まるで放送終了後のテレビノイズの様な音が当たりに響き、美琴の背後に砂鉄が寄り集まって型を成した大蛇が、大きく首をもたげた。

『スゲェスゲェ、何だ?新ワザかァ!?』

次いで、轟という唸りを上げアルビノの少年に殺到する砂鉄の大蛇。
その巨大な質量を持つ砂鉄の蛇は少年を飲み込むと、黒光りする竜巻へと姿を変え少年をその中へと閉じ込めた。
ノイズの様な音と豪風が巻き起こす騒音が、夜の操車場に響き渡る。

『ふーン、磁力で砂鉄を操ってンのか。おもしれェ使い方だなァ』

言葉に反し、特段驚いた様子も見られない少年の前方、轟々と唸りを上げる竜巻の一部が唐突に爆ぜた。

『タネが割れたらどォって事ねェがな』

美琴(そんなっ……アレを喰らって傷ひとつ負ってないのッ!?)

容易く竜巻が破られた事に狼狽した様子を見せた美琴が、不意に視線を左方に投げた。
操車場を照らす明かりの下、ペールオレンジの"何か"が地面に転がっている様が見える。

太もも、膝、脛、靴下、革靴。
先に列車の下へと消えた9982の左足が、その太ももから先を赤く濡らしたまま、操車場の照明の下に晒されていた。



533 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/19(日) 21:07:34.17 ID:ok/LH1wo
それを見た美琴の表情に、恐怖と憤怒の色が降りる。

美琴「ああああああああああああああああああああ!!!!!!」
自身を抑える様にその両肩を両腕で抱きしめ、美琴が先よりも強く叫びを上げた。
その声に反応するかの様、周囲のレールを形成する鉄骨が一本、また一本とひしゃげ、宙に浮く。

『……?このパワー……オマエ……』

アルビノの少年の表情から、始めて薄笑いが消えた。
その少年へと、今度は鉄骨により形成された蛇が牙を剥く。
蛇が鎌首をもたげる様に宙に浮いていた鉄骨たちが、美琴の操る電磁力により加速され、一斉に少年に向けて放たれた。

まるで五月雨の如く、莫大な質量と加速度を以って少年に襲い掛かる数多の牙の一本が少年に触れた。
刹那、少年の体を食い破るはずだった牙が唐突にその方向を変え、主である美琴へと飛来する。

美琴「ッ……!?」

咄嗟に身をかわした美琴に、次々と鉄骨の矢が飛来する。
辛うじてかわしきり体制を整えた美琴が少年に目線を投げると、少年は何もせず、ただその場に立ち尽くしているだけだった。

『そうかそうか……予定と違うから何かと思ったら……』
立ち尽くしていた少年の顔に、より一層嗜虐的な笑みが浮かぶ。

『オマエ、オリジナルかぁ』

その笑みが投げる戦慄に不吉の色を感じ取ったのか、美琴の体を悪寒が覆った。

『クローンどもはオリジナルの代わり……ってこたァ、オマエを殺ればこのダリィ作業もグッと短縮できンだろォ?』

笑みをうかべたまま、少年の足が美琴へと進み始めた。
少年が足を進める度、足元の砂利が乾いた音を立てる。

『いい加減飽き飽きしてたンだァ……頼むぜェ、オリジナル』

少年が足を進める先に立っていた美琴が、澄んだ音を立てコインを中空に舞わせる。
落下したコインを人差し指を曲げて作った窪みに当てがい、そこへ親指が添えられた。
バチバチと空中放電を放ちながら、少年へコインを向けた美琴が口を開く。

美琴「なんで……何でこんな計画に加担したの……?」

瞳を大きく見開き、憤怒の形相を形作ったまま投げられた美琴の問いに、少年の足が止まる。

『あァ?なんだイキナリ』



535 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/19(日) 21:09:49.34 ID:ok/LH1wo
美琴「答えてッ!それだけの力があって……無理やりやらされてる訳じゃないんでしょ!?」

美琴「こんないかれた計画に加担する理由は何!?あの娘に恨みでもあったってワケ!?」

声を荒げながら投げかけられた美琴の問いに、さして興味も無さそうな様子の少年が口を開く。

『理由?理由ねェ、そりゃ……』

少年の視線が天を仰ぐ。
煌々と空に浮か下弦の月を仰ぎ見た後、その月に向かい右手を掲げ、拳を握った。

『絶対的なチカラを手にするため』

『最強だとか学園都市で一位だとか、そンなつまンねェもンじゃねェ。俺に挑もうと思うことすら許さねェ程の絶対的な力、無敵(レベル6)が欲しィンだよ』

美琴「……んな……」

『あン?』

月を仰いでいた少年の瞳が、美琴へと戻される。

美琴「そんな事でっアンタはっ……そんなッ!!」

美琴の周囲に放たれていた空中放電が、より一層の強みを帯びる。

美琴「そんなモノのためにあの娘を殺したのかああああああああああ!!!!」

激しい電光と共に美琴の親指で弾かれたコインが、空気との摩擦で一気に赤熱し、音速を超えて少年へと殺到する。

その様を見ても、少年は悠然と立ち尽くしたまま、回避行動をとろうとはしない。

瞬く程の時を経た後、何かにぶつかる様な鈍い音と共に少年に向かい射出されたハズの超電磁砲が、美琴へとその向きを変えた。

何が起きたのか理解できず、呆然とした表情を浮かべる美琴。
その美琴を喰らわんと、最早コインとは見て取れない赤い弾丸が迫る。

──────刹那、飛び出した二つの人影が美琴の前に立ち、その足で美琴へ迫る超電磁砲を高く蹴り上げた。

『あァ!?』

突然の出来事に驚嘆の声を上げた少年の目線が、その行く先を追い、止まる。

アルビノの少年が見たのは、蹴り上げた先、下弦の月に重なる様にして宙を舞っている少年、五条勝の姿と、その背後で月明かりに銀毛を輝かせる巨大な狼の姿だった。



537 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/19(日) 21:12:13.18 ID:H.CweI.P
タイガーなんとかまで習得してんのかよwwww



538 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/19(日) 21:13:07.16 ID:7FNZgDso
五条さんレールガン蹴飛ばしやがった・・・



539 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/19(日) 21:14:56.10 ID:ok/LH1wo
五条「──────Gland Fenrir(悪評高き狼神)」

呟いた五条が赤熱した超電磁砲を、再びアルビノの少年に向かい蹴り飛ばす。
周囲の大気を揺るがしながら咆哮を上げた狼神が、その後を追い少年へと駆けた。
狼神が音速を超える超電磁砲を飲み込むと、その全身に激しい空中放電を帯びる。

更に高く咆哮を上げた狼神が、その牙を剥き出し、少年へと飛び掛った。

咄嗟に、少年の前に両手が掲げられる。

少年へと迫った狼神は、少年の頬を掠めその背後の中空へと消え去っていった。
その軌跡をなぞる様、一拍送れて豪風が三度操車場に吹き荒れる。

少年の右頬に走った一筋の赤い線から、つう、と血液の雫が流れ落ちた。

『……』
『……』

先刻と一転し、静寂に染まる操車場。

『……ケッケッケ……』
『……クックック……』

そこに、二人の少年の笑い声が響く。

『くきこきかかか――――――!!』
『アーッハッハッハッハッハ!!!』

笑い声が一層大きくなり、高らかに周囲に響き渡った。

『面白れェえええええええええええ!!テメェ何しやがった小僧ォォォォォオオオオ!!』

少年が、酷く残虐な笑顔を浮かべたまま声を荒げ、五条へと声を投げる。

五条「……何もしていませんよ!何もね!只のサッカーです!ククク……」

返された質問に一層大きく瞳を見開いた少年に向かい、五条が言葉を続ける。

五条「絶対的なチカラが欲しい!?無敵になる!?そんなことのッ……そんな事の為にあの娘は殺されたのですね!ククク……アーッハッハッハッハ!!」

『何がおかしいンだァ?テメェ狂ってんのか?』

五条「ええ!!そうかも知れません!!オレは狂ってしまったのかもしれませんね!!純粋に!!絶対的なチカラ!?無敵!?そんなモノがあっても、女の子一人も護れやしない!!クックック……アーッハッハッハッハ!!」

『……もォいいぜッ!!決めてやンよッ!テメエは今ここで死ねクソ野郎オオオォォォッッッ!』

五条「来なさい無敵くん!!見せてあげましょう!!何の役にも立ちはしない、オレの能力をッッッ!!」



540 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/19(日) 21:16:31.86 ID:ok/LH1wo
スペルミスったあああああああ!!!!恥ずかしいいいいいいいい!!!!



542 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/19(日) 21:18:43.60 ID:ok/LH1wo
『────── お待ち下さい』

共に気勢を上げる二人を遮る様に、冷静な美琴の声が響いた。
響いた声の先に、五条、少年、美琴の目線がそれぞれ注がれる。

『計画外の戦闘は予測演算に誤差を生じるおそれがあります、とミサカは警告します』
三人の目線の先には、御坂美琴と全く同じ背格好をし、常盤台の制服を纏った少女がゴーグルで顔を覆ったまま立っていた。

否、少女ではない。
その少女の姿と全く同一の姿をした少女が、気が付けば自分達を取り巻く様にして、周囲に立っている。

『特にお姉さまはレベル5』
『そちらの男性は完全に不明要素ですので』
『戦闘により生じる歪みは』
『非常に大きく』
『期間の短縮はおろか』
『計画が破綻する恐れもあります』

彼女達が、口々に言葉を並べ、一つの文脈を形取りながら言葉が続けられる。

『またミサカには今後予定されている実験に合わせた』
『チューニングが施されており』
『計画を途中で変更する事は極めて困難であるとミサカは説得します』

『ざっけンじゃねェぞ!!ンな楽しげな奴目の前にしてハイ諦めましょうってかァ!?』

彼女達の説得を聞いた少年が声を荒げた。

『繰り返しますがそちらの男性は』
『完全に不確定要素の塊です』
『ここで戦闘を継続しては』
『その場で計画を破綻する可能性が高く』
『結果的に貴方のためにもならないのではないか、とミサカは客観事実を述べます』

『チッ……分かった分かった、分ァかりましたよ。ちょっとからかっただけだっての。リレーしてしゃべンな気持ち悪ィ』

アルビノの少年の気勢が落ち、現れた『妹達』に向かってひらひらと退屈そうに右手を振った。

『命拾いしたなァ、小僧ォ』



547 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/19(日) 21:22:13.77 ID:ok/LH1wo
言いながら、少年が五条に向き直った。
と、視界に迫ってきているスパイクの底。

五条「黙って逃がしてやると思ったのですか!?」

五条のスパイクの裏が少年に命中する瞬間、大きく後方へと体ごと跳ね飛ばされる。

咄嗟の衝撃に受身を取り損ねた五条の体が、砂利の上に転がった。

『クケケケ……そう焦ンなよ小僧ォ、実験が全部終わったらまずテメェから殺しに行ってやるからよォ……』

言い捨て、足を進める少年。

五条「……!待ちなさ『一方通行(アクセラレータ)だ、またな』

一方通行と名乗った少年の体が、一歩踏み出しただけで急激に加速し、夜の闇に消えていく。

五条がその背を追おうとした矢先、天井から支えていた糸が切れる様に、美琴が力なく地面にその膝を付いた。

美琴「あんた達……何なの……?おかしいよ……何でこんな計画に付き合ってるの……?殺されちゃうのよ……?」

俯いたままの美琴が言葉を続ける。

美琴「何でよ!!生きてるんでしょ!?命があるんでしょ!?アンタ達にもッ……!!あの娘にもッ……!!」

『ミサカは計画の為に作られた模造品です。作り物の体に借り物の心。単価にして十八万円の実験動物ですから』

彼女の叫びを聞いた『妹達』の一人が口を開き、『妹達』は闇の中へと散り散りになって行った。

後に残された二つの影。

力なくへたり込んでいる美琴の傍らに、五条が歩み寄る。

美琴「……」

五条「……お姉さま……」

美琴「…… ちょっと、一人にしt…?」



548 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/19(日) 21:25:32.11 ID:ok/LH1wo
別れの言葉を告げようとした美琴が五条の顔を見上げ、その言葉を止めた。
美琴が知る限り、危機的な状況であろうと笑顔を絶やしたことの無かった五条が、唇を強く結び、眉間に皺を寄せている。

握り締められた右拳からは、一滴、また一滴と血液の雫が滴り落ちていた。

美琴「アンタ……「護れなかったッッ!!」

二人だけになった夜の操車場に、五条の慟哭が響く。
瞳を覆い隠しているその眼鏡の下から涙が流れ落ち、彼の頬を濡らす。
彼の肩は、小刻みに震えていた。

五条「オレッッッ…!!護れなかったッッッ……!!」

五条「子猫が降りれなくて困っていたアイツをッッッ……!!アイスを食べて喜んでいたアイツをッッッ……!!」

五条「表情はッ……無かっだけどッ……缶バッジひどづでっっっ……あ"んなに嬉しそうだっだあいづを"ッッッ……」

涙でぐしゃぐしゃに顔を歪める五条の表情を見た美琴の瞳から、同様に涙が零れ落ちる。
座り込んでいた美琴が立ち上がり、五条の胸に左耳を当て、その腕を腰に回し、強く五条の体を抱きしめた。
彼女の顔もまた、五条と同じく涙に歪んでいる。

美琴「やめなざいッ……アンタのせいじゃな"いんだがらッッ……自分責めでんじゃない"わよッッッ……!!」

五条「オレ"がッッッ……オレ"があと少じばやげればッッッ……!!」

最早言葉も吐けない程に泣き濡れた五条が、より一層声を強め、嗚咽とも咆哮とも取れぬ慟哭をする。
続く様にして、美琴もまた慟哭した。

暫くの間、夜の操車場に、二人の泣き声が響き渡っていた。

────────────



549 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/19(日) 21:27:05.60 ID:pKX.cFoo
こういうところ見ると、中学生なんだなぁと再認識する



550 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/19(日) 21:28:30.34 ID:ok/LH1wo
…… と、ここで一旦お時間を頂きます
恐らく今夜半(午前になると思います)に投下を再開させて頂きますので、また後ほど失礼致します
明日がある方は、絶対に待たずにお休み下さい



552 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/19(日) 21:46:23.13 ID:jQ4VEoAO
グランフェンリルって誰の業だっけ?

五条はつかえるのか?




553 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /19(日) 21:50:42.94 ID:y1i0kOo0
吹雪のやつじゃないの?
あれはウルフレジェンドだっけ?




556 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/19(日) 22:05:51.49 ID:H.CweI.P
吹雪のやつがサンダービーストだな
グランフェンリルは林属性最強技の一角で3人合体技、しかもバージョンと出せる人限定という恐ろしい結果を Google先生が吐いた
五条さん過労死してしまう




555 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/19(日) 22:01:21.50 ID:D6wazNso



3人がかりで撃つ技を1人でやるとか五条さんマジパネエ



557 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/19(日) 22:47:11.21 ID:ijgqDHUo
1ウルフレジェンド習得説
2分身して一人でグランフェンリル説
3あえて御坂の力を借りてサンダービースト説




575 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/20(月) 01:03:50.48 ID:.E7s5uAo
どれだけの時間、二人で泣き声を上げていたのだろうか。
いつの間にかどちらともなく泣き止み、二人で駅へと足を進めていた。

美琴「……」
五条「……」

言葉こそ交わさないものの、感情を全て吐露したせいだろうか。
隣を歩く美琴は目を赤く腫らしているが、先と比べると随分と晴れた表情をしている。

美琴「……アンタ、これからどうすんの?」

五条「……少し疲れました…… 帰って休もうかと思います……」

美琴「……そう……あのっ……今日の件だけどさ」

五条「……はい?」

美琴「アンタは、もう手ぇ引いて?……こっから先は多分相当ヤバイ話んなると思うから」

言葉を聞いて、隣を歩いていた美琴に目線を投げた。
彼女が真剣な眼差しでこちらを見上げている。

五条「……お断りします」

美琴「……」

五条「……さして時を経ていないとは言え、目前で友人が殺害されました……弔いを行なう程度の義理はあるでしょう……」

美琴「……アンタに何かあると、黒子が泣くわよ?」

五条「……お互い様ですね、それは」

反論を聞いた美琴が黙り込む。

美琴「……さっきの黒シャツ、一方通行なんだけどさ」

五条「……えぇ」

美琴「アイツ、学園都市の第一位よ」

五条「……」

美琴「つまり学園都市最強の能力者ってワケ……悔しいけど、アタシじゃまるで歯が立たなかった」



576 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/20(月) 01:08:30.42 ID:.E7s5uAo
はあ、と美琴が嘆息する。

美琴「……アイツは化物よ……変な事考えるの、止めなさいよね」

五条「……留意しておきましょう……」

言葉を交わしながら通り過ぎたバス停の前で、美琴が足を止めた。

美琴「じゃ、あたしこっちだから……」

振り返り、美琴に向かい右手を掲げる。
彼女も同様に、無言のまま自分に向かい右手を掲げていた

────────────
八月十六日 夏休み二十八日目
────────────

美琴と別れてから歩いて自宅に帰り着く頃には、時計はいつの間にか0時を回っていた。
先の戦闘の影響か、体のあちこちがズキズキと鈍い痛みを訴えている。

部屋のドアを開いて、電気を点けたまま外出してしまっていた事に気が付き軽くため息を吐いた。

一刻も早く身体を休めたかった為、そのままの足で風呂場に入り鏡と向かい合う。
砂利道を転がった為だろうか、自身の右頬に軽く切り傷が走っている事に初めて気が付いた。
ため息を吐いた後、手当てをする気も失せたままシャワーを浴び、寝巻きに着替えてベッドに身を滑らせる。

疲労に苛まれていた体は、自身でも判らぬ内にいつの間にか眠りへと落ちていた。

────────────

『あなたがもう少し早く来てくれていれば、とミサカは恨めしげにあなたを睨みます』
『ミサカの左足を知りませんか?とミサカはあなたに自身の左足の所在を尋ねてみます』

轟音と共に、その頭上から列車が降る。

『列車に潰されて死んでしまいました、とミサカは今の状況を冷静に開設します』

────────────

五条「ッッッ────!!」

不意に視界が見慣れた天井に切り替わった。
一瞬の驚愕を経て、先の光景が夢だと言うことに気が付く。

『……勝さん?』

天井が写る視界の横から、心配そうな表情を浮かべた黒子が自分の顔を覗き込んできた。

──────今は、眼鏡を付けていない。



580 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/20(月) 01:11:24.40 ID:.E7s5uAo
五条「っ!!!オレの目を見ないで下さいッッッ!!!」

咄嗟に黒子から目線を逸らし、枕元にある眼鏡へ手を伸ばし、自身の目に掛けた。

『…… どうされましたの?』

五条「……いえ何でも……!?」
言い終え上体を起こし、襲ってきた違和感を感じて黒子に向き直る。

黒子「……?」

きょとんとした表情でベッドの横に腰掛け、こちらを見上げている黒子。
普段とは異なり、ツインテールを下ろしている状態だ。
ピンク色のキャミソールのみの姿は、如何に幼児体型の黒子といえど目のやりどころに困る。

五条「何故オマエがココに居るのですかッ!?」

黒子「あらあらあら、わたくし言ったではございませんの。明日以降もこのモヤモヤを抱えたままでは、とてもではありませんけれど眠れそうにありませんって」

その言葉に、黒子の頭越しに時計を眺めた。
午前二時。

……明日だ。一応明日だ。

黒子「というワケで、お邪魔させて頂きましたの」

五条「……オマエはまた巧妙な真似を……」

首を振りながら、右手を額に当てる。
と、右頬に妙な手触りを感じ、その手をそのまま頬に滑らせる。

右手から伝わってくる、布とテープの感触。
ふと黒子に目線を上げると、彼女は心配そうな眼差しでこちらの様子を伺っていた。

黒子「……お姉さまが、目を真っ赤に腫らしたまま帰ってらっしゃいましたの」

心配そうな表情のまま目線を伏せ、彼女が言葉を続ける。

黒子「……帰ってらっしゃるなり、『寮監は何とかしておくから、勝さんと一緒に居てやれ』と……」

黒子「お姉さまと何かございましたの……?」

今にも泣き出しそうな様子で問いを投げる黒子に、思わず口が滑りそうになる。
……自分と美琴にとって大切な彼女だからこそ、絶対に巻き込んではいけない。
本当の事を全て話したら、次の瞬間には彼女は眼前から消え、あの第一位の所に殴り込みに行きかねない。
いや、間違いなく行くだろう。



582 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/20(月) 01:13:48.45 ID:.E7s5uAo
五条「……ククク……何でもありません……ただ上条とお姉さまの事をからかったら、お姉さまに殴られただけですよ……」

黒子「……ねぇ勝さん」

五条「……?」

黒子「……わたくし、お姉さまも勝さんも、とても大切に想っております」

五条「……」

黒子「……わたくしでは、お力にはなれませんの……?」

五条「……今まで通り、頼りたい時は遠慮なく頼らせて貰いますよ……」

黒子「……わかりましたわ」

はあ、と黒子がため息を吐いた。
先刻から良心がズキズキと痛んでいるのが分かるが、何としてでも彼女を巻き込むワケには行かない。

黒子「ならせめて、今夜はお傍に居させて下さいませ」

言い終えた黒子が立ち上がり、自分が横になっているベッドに腰掛けた。

五条「……」

その様を見て、敢えてベッド際に横たわる。

黒子「……ッ……もう少し奥に寝て頂けませんこと?」

五条「……ククク……嫌ですよ……コレはオレのベッドです……」

彼女の手が、そっと自分の頬に触れた。
次の瞬間、突然目の前に壁が現れる。

……否、自分が壁越しにまで転送されていた。

黒子「さてさて~♪」

背を向けていた自分の肩に再度黒子の手が触れたかと思うと、再び視界が変化し、今度は仰向けに横になっていた。

ぽふ、と脇の辺りに心地よい重さがかかる。
既に乾いている彼女の髪から漂うシャンプーの香りが鼻腔をくすぐった。

五条「……やれやれ……」
黒子「おやすみなさい、勝さん」

そのまま幾度か自分の胸に黒子が頬を擦るのが分かった。
その髪をくしゃくしゃと軽く撫で、枕もとのリモコンを押し、照明を落とす。
数分も立たずして、すやすやと彼女の穏やかな寝息が聞こえてきた。
余程眠かったのだろうか。



583 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/20(月) 01:17:26.62 ID:ZcC/Uq6o
やべえ、黒子が可愛すぎる…



584 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/20(月) 01:19:18.50 ID:kVZl15Uo
なんてけしからん中学生たちだ
少し分けてくれ、その空気




586 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/20(月) 01:19:47.83 ID:.E7s5uAo
その髪を再び撫で、自身も眼鏡を外し瞳を閉じる。
再度襲い掛かってきた睡魔を受け入れ、眠りの淵へ向けて意識を滑落させて行く。

もう、悪い夢は見なかった。

────────────

目が覚めると、黒子の姿が消えていた。
身体を起こし、時計を眺める。
午前も11時に差しかかろうかという時間帯だ。

寝室からダイニングへと足を運ぶと、食欲をそそる香りが部屋に満ちていた。
テーブルの上に憶えの無いの紙片が置いてあったので、手に取り目を通す。

『お疲れの様子でしたので、起こさないでおきます。
お姉さまの事も気にかかりますので、一旦寮に戻ろうかと思います。
簡単ですが冷蔵庫にサラダ、お鍋にスープをご用意してありますので、お召し上がり下さいませ 黒子』

酷く上品な筆遣いで走りがかれたソレに目を通し終えた後、寝室の枕元から充電中の携帯電話を持ち出し、スープの鍋を火にかける。

スープが温まるのを待ちながら黒子に礼のメールを綴ろうと携帯電話を開くと、自分が寝ている間に着信があった事を告げる表示がされていた。

────────────

午後も一時を回った喫茶店で、巫女服を纏った少女と向かい合っていた。

『ごめん。急に呼び出して』

五条「……いえ、構いません……お元気そうで何よりです……」

眼前の少女の名は、姫神 秋沙。
先の三沢塾の件が解決以来とんと便りが無かった彼女からの連絡と、こうして対面して茶を啜っている今の状況には、正直なところ自分でも驚いている。

先に会ったときと同様の格好だが、いつの間にかその胸元に銀の十字架が掛けられていた。
吸血殺し(ディープブラッド)を抑える礼装とはいえ、巫女服に十字架とは何とも妙な取り合わせだ。

五条「……もう落ち着かれたのですか……?」

姫神「おかげ様で。今はあの神父のお陰で普通に生活出来てる。上条当麻の紹介で。月詠小萌の所にお世話になっている」

五条「……そうですか……重畳重畳……それで、用件とは……?」



588 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/20(月) 01:22:20.41 ID:kVZl15Uo
姫神再登場きたああああああああああ



589 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/20(月) 01:23:51.82 ID:.E7s5uAo
姫神「ああ。忘れてた。これを。彼から貴方にって預かったんだけど」

ゴン、と不恰好な大きいアタッシュケースをテーブルの上に置く姫神。
…… そのアンバランスな格好で、このアタッシュを持ったままここまで歩いて来たのだろうか。
今度は吸血鬼でなく、公務員が寄って来そうな気がする。

五条「……?彼……?」

姫神「そう。彼。アウレオルス。アウレオルス=イザード」

五条「……ッ!!」

差出人の名を聞いた途端、眼前のアタッシュケースが何やら酷く物々しい品に思えてきた。
唐突に爆発して中からインゴットが舞い散ったり、この喫茶店の中にグレムリンが溢れかえってもおかしくないだろう。

そうなったら茶色と白のアレはきっちり確保しておいて、後で美琴にプレゼントしてやっても良いかもしれない。
勿論、水をかけるなと12時以降にエサをやるなと注意した上でだ。

姫神「多分大丈夫だから。開けてみて」

こちらの邪推を察したのだろうか、姫神が睨む様な視線で開封を促している。
……よもやグルではあるまいな。

アタッシュを自身へ引き寄せ、そのボタンに指をかける。
パチンと小気味良い音がして、留め金が外れた。

五条「ッ……!!」
意を決し、その蓋を開く。

──────その中に入っていたのは、1セットのスパイクと真っ白なコートだった。
隅に仰々しい封筒に入った手紙が添えられている。

手紙を取り出し、姫神に目線を送った。

姫神「?私もよくは知らないけど。読んでみれば良いと思う」

姫神に促され、封筒を裏返し金色の封蝋を外した。
収められていた便箋を取り出し目を通す。



590 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/20(月) 01:24:47.79 ID:48xk3pU0
ヘタ錬金 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!



594 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/20(月) 01:30:00.22 ID:.E7s5uAo
────────────

憮然、正式な礼をする機会も無く眼前より姿を消しし非礼を、先ずは詫びさせて貰う。

貴様は手ぬぐいのみで礼など不要と発言したが、斯様な布切れ一枚を礼と定めては、私のみならず我が太祖パラケルススとそれに連なる錬金を志した者達への恥辱となるが故、此度改めて返礼の品を練成させて貰った。

当然、倫敦の神父も認可を降ろせし上での練成なので、貴様が深慮する由は何も無い事も併せ伝えおく。

外套は、以前私がローマ正教にて隠秘記録官を努めていた折に触れた、トリノ聖骸布を投影して織り成した物だ。
完全に計算された上で正教の人間の手により成された歩く教会程の結界は持たぬが、有象無象の物理的干渉や魔術的干渉では、綻びの一つを起こすにも至らぬだろう。

戦靴は、我が錬金の粋である稀少金属・オリハルコンや火廣金を大量に用いた練成を行なっている。
真価を得る為には多少の魔力供給が必要となっているが、先に貴様と対峙せし折、貴様が見せた数多の挙動より魔力に近しい力の流動を感じ取れたので、利用にはあたうものであると断ずる。

必然、この魔術礼装二点とも貴様なら使いこなせるのが道理。
これより外法と対峙せし折には、貴様の身を護る一助になりうるだろう。

暫し忘れ置きし感覚だが、誰かの為に何かを練成するというのは存外に愉悦を得らるるものだな。

間然。太祖より続く我が一族の錬金術を用いた最高にして最後の練成、決して無碍にはしてくれるな。

貴様の幸運を祈る。

大恩ある五条勝へ Honos628(我が名誉は世界のために) アウレオルス=イザード

────────────



593 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /20(月) 01:26:47.41 ID:xoCQfMAO
シブいねぇ……
ヘタ錬シブすぎだぜぇ……




595 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/20(月) 01:31:57.93 ID:kVZl15Uo
よし、ヘタレの名を解いてやる



596 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/20(月) 01:32:33.89 ID:48xk3pU0
流石 ヘタ錬 義理堅い



597 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/20(月) 01:33:02.01 ID:e3lNdUs0
なんか知らんが背筋がゾクゾクした



598 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/20(月) 01:33:17.73 ID:.E7s5uAo
読み終え、畳んだ便箋を封筒へ戻し、アタッシュに収め、留め金をかけ直す。

姫神「……プレゼント?」

その様子を見た姫神が、薄く微笑みながらこちらに問いを投げてくる。

五条「……ええ、その通りです……」

姫神「良かった」

五条「……?」

姫神「あなた。今とても嬉しそう」

言いながら、姫神も嬉しそうに笑みを強める。
……確かに嬉しいのは間違いないのだが、恐らく史上最強の錬金術師が人生の集大成として練成した品というのは、物騒すぎて実用には少し気が引ける。
魔力供給が必要だの、ファンタジー小説の中でした見た事の無い様な単語が並んでいたが、身に付けた途端にミイラになったりしたらたまったものではない。

改めて考えてもやはり気は引けるが、折角の品を無碍にするワケにも行かない。

後で何処かで試してみよう。
そんな事を考えながら、窓の外に目線を投げる。

五条「……ええ、本当に嬉しいものです……会う事があったら、再度礼を伝えておいて下さい……」

──────to be continued──────



603 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12 /20(月) 01:38:57.27 ID:.E7s5uAo
以上、本日投下分となります
ご支援を頂きました皆様、関係各位の皆様、並びに遅くまでリアルタイムで読んで頂いた皆様
本日も、篤く御礼申し上げます

さて、気が付けば筆を進めてより早一ヶ月を経ております
読み続けて頂けている事が何よりの幸いですので、一層の気合を以って最後まで筆を走らせたいと存じております
投票はお嬢にしますが

さて、次回投下に関してですが、此度と同じく可能ならば明晩、不可能ならば21日夜に投下を行なわせて頂こうかと思います
お時間がございましたら、またお付き合いの程を頂ければ幸いです



608 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /20(月) 01:45:00.04 ID:DVikFY.0
お疲れさんです
楽しみで血液が逆流しそうだぜ!




610 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/20(月) 01:52:17.87 ID:cX0dGwwo

・・・・・・やっぱりサッカーってのは1人でやるものじゃないんだよな




611 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/20(月) 01:53:36.31 ID:a4JGwz20
乙です
歩く教会が基準じゃ固さは未知数かな
しかしこのサッカーウェアを着た五条さんが上条さんに触られでもしたら……!!




612 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /20(月) 02:01:15.86 ID:c34qj/so
乙ー
黒子がすっかり五条さんの嫁になってるなww
そしてかつての敵対者からの援助とか王道過ぎて鼻血が出る熱い展開だな
しかし一方通行は一筋縄じゃ行かないだろうな




615 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/20(月) 02:23:34.42 ID:.E7s5uAo
~if 魔法名面接~

あれい☆ 「魔法名はSalvere000とありますが、これはどういった意味ですか?」
ねーちん 「はい。救われぬ者に救いの手をという意味です」
あれい☆ 「何故その魔法名を選んだのですか?」
ねーちん 「はい。救われない人にこそ、神すら見捨てた人にこそ救いの手を差し伸べたい、という信念からです」
あれい☆ 「立派ですね。採用です。次の方」

あれい☆ 「魔法名は Honos628とありますが、これはどういった意味ですか?」
ヘタ錬  「俄然。我が名誉は世界のためにという意味です」
あれい☆ 「何故その魔法名を選んだのですか?」
ヘタ錬  「当然。私が魔術を通して得た知識を以って名誉を得るのならば、その名誉を全て良き世界の為に使いたいという志からです」
あれい☆ 「実直ですね。採用です。次の方」

あれい☆ 「魔法名はdedicatus545とありますが、これはどういった意味ですか?」
イン(略  「献身的な子羊は強者の知識を守るって意味なんだよ」
あれい☆ 「何故その魔法名を選んだのですか?」
イン(略  「力の無い子羊でも献身的にさえなれれば、強者の知識を守れる機会があるかもって考え方からなんだよ」
あれい ☆ 「新人類に聞かせたいですね。採用です。次の方」

あれい☆ 「魔法名はFortis931とありますが、これはどういった意味ですか?」
すている 「はい。我が名が最強である理由をここに証明するという意味です」
あれい☆ 「何故その魔法名を選んだのですか?」
すている 「最強だからです」
あれい☆ 「・・・で、その最強は学園都市において働くうえで何のメリットがあるとお考えですか?」
すている 「はい。敵が襲って来ても彼女を守れます」
あれい☆ 「いや、当学園都市には襲ってくるような輩はそんなにいません。それに彼女だけ守っても意味がありませんよね」
すている 「でも、警察にも勝てますよ」
あれい☆ 「学園都市には警察組織はなくてですね・・・」
すている 「札さえ貼れれば巨人を呼べるんですよ。」
あれい☆ 「ふざけないでください。それに巨人って何ですか。だいたい・・・」
すている 「イノケンティウスです。魔女狩りの王とも書きます。イノケンティウスというのは・・・」
あれい☆ 「聞いてません。帰って下さい。」
すている 「あれあれ?怒らせていいんですか?呼びますよ。イノケンティウス」
あれい☆ 「いいですよ。読んで下さい。イノケンティウスとやらを。それで満足したら帰って下さい」
すている 「運がよかったな。札を濡らしたみたいだ」
あれい☆ 「帰れよ」



616 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/20(月) 02:39:35.07 ID:cTufcFwo
なんぞww



617 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /20(月) 02:42:26.79 ID:2DXxydMo
すているwww



621 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /20(月) 04:27:02.30 ID:j7.R/8Qo
コピペ吹いたww
そんな遊び心もいつも楽しみです。






次→五条「ククク… ここが学園都市ですか」その22



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禁書目録SS   コメント:9   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
1624. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/20(月) 09:28 ▼このコメントに返信する
おい最後wwww
1625. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/20(月) 10:19 ▼このコメントに返信する
錬金術師がやっぱりいい人で良かった
五条さんの介入で一方通行にやられる妹達が減ってくれるのかどうなのか…
1626. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/20(月) 10:42 ▼このコメントに返信する
イノケンさん・・・
1627. 名前 : 名無し◆- 投稿日 : 2010/12/20(月) 12:22 ▼このコメントに返信する
さすがにこのあたりの一方さんは擁護しきれんな
1628. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/20(月) 13:55 ▼このコメントに返信する
アレイスターという母、美琴という姉、そして黒子という妻に囲まれた五条さんの苦労物語
しかしヘタ錬さんかっこいいなぁ
1636. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/20(月) 19:13 ▼このコメントに返信する
以前のこのシリーズのコメントにも書かれていたけど、五条さんだけではなく
周りの人物や、かつての敵アウレオルスもきちんと立てることができる作者さんは
やはりすごいですな。
1639. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/20(月) 21:25 ▼このコメントに返信する
なぜかしらんが目から汁がでた。
五条さん泣かないで
1651. 名前 : 名無し@SS好き◆yE7IycBI 投稿日 : 2010/12/21(火) 02:26 ▼このコメントに返信する
錬金さんに胸熱!
このシリーズは本当に楽しみにしてる
1716. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/23(木) 12:17 ▼このコメントに返信する
急に視点が美琴に移動したから違和感あった
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