五条「ククク… ここが学園都市ですか」その20

2010-12-18 (土) 16:12  禁書目録SS   6コメント  
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このマンガがすごい! 2011 [単行本]


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429 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/16(木) 23:36:31.08 ID:KZW5McAo
ご支援を頂いております皆様、誠にありがとうございます
また、大変お待たせ致しました由、深謝いたします
先の投下中止でフルボッコを覚悟していたのですが、皆様の思わぬ暖かいご対応にフルボッキでございます

それでは本日分の投下を開始させて頂きます




430 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/16(木) 23:37:53.67 ID:3Iipz1ko
ククク……待ってました……



431 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/16(木) 23:38:13.18 ID:KZW5McAo
────────────
八月十五日 夏休み二十七日目
────────────

──────夏休みもおおよそ三分の二が消化され、
いつの間にか暑中見舞いが残暑見舞いへとその姿を変え、
蝉の鳴き声が徐々に弱り始め、
次第に赤い色をした蜻蛉が中空に踊り、

さりとて未だ暑さの残る真昼の公園の一角に、サッカーウェアを纏った少年の姿があった。

パチン、と少年が指を鳴らす。
その音に誘われる様、土中から全く同じタイミングで企鵝が飛び出し、一列に隊伍を組んだ。

一、二、三、四……

少年は企鵝の数を数える様に目線をずらしながら四度縦に首を振り、最後に一度深く頷く。

少年が頷いた様を見てとったのだろうか、企鵝達は土中へと舞い戻っていった。



再び少年がパチリと指を鳴らす。
再度ぽこぽこと土中から企鵝達が姿を現す。
その様は、まるでゲームセンターにあるモグラ叩きを彷彿とさせる。

一、二、三、四……

またも少年の首が四度縦に振られた。

首を振り終えた少年が深くため息を吐き、傍らにあったバケツへ手を伸ばす。

『……ククク……用も無いのに何度もすみませんね……』

一列に並んだ企鵝達が背筋を伸ばし、一斉にその右手を額の前で斜めに掲げる。
敬礼、なのだろうか。

その様を見た少年がバケツから次々と青魚を取り出しては、居並ぶ企鵝達へと放り投げる。
企鵝達は一匹、また一匹と魚を咥えては土中へと舞い戻っていった。

公園には、少年だけが一人でポツンと取り残されている。

バケツを抱えた少年が、踵を返して歩き去っていった。

────────────



432 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/16(木) 23:39:18.15 ID:uFRpx4Ao
ちゃんと飼ってるとは思わなかった



433 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/16(木) 23:40:28.78 ID:8rFLHy.o
五条さんお願いです
クリスマスを認識阻害してください




434 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/16(木) 23:42:36.69 ID:KZW5McAo
208 の番号が描かれたプレートの貼ってある扉の前に立っていた。
普段はこの部屋に生活しているであろう二人の女子の内の片方であるツインテールの転送能力者は、今頃は風紀委員の夏季公募処理に勤しんでいるハズだ。

『……ちょッ……そんなに焦らさないでよッ……!!』

にも関わらず。

『あぁっ!!いきなりそんな奥までッ……!~~やめてッ……!』

部屋の中から、何やら盛り上がっている気配がする。

『やッ……!今度は後ろッ……!?もうダメッ……!んッ……!』

如何に女子の部屋とは言え、この場合は特例だろう。
ノックもせずに、唐突にドアを開ける。

『王手ッス!』
『ああー!これもう詰みじゃない!!』

視界に入ってくるのは、二つのベッドの間に置かれたテーブルの上にある将棋板と、それを挟んで向かい合っている超電磁砲 御坂美琴。そして一羽の企鵝。

前触れもなく開かれたドアに驚いたのだろう。
驚愕した表情のまま、美琴の目線がこちらに注がれる。

一歩部屋に踏み入り、後ろ手にドアを閉めた。

五条「ククク……強いでしょう……そいつは……」

こちらを見た美琴が口を開いたまま固まった。

『あ、ご主人ッス!お疲れッス!』
企鵝が無邪気に右手を掲げる。

五条「ご苦労……」

そのままつかつかと美琴の向かいのベッドに歩み寄り、座っている企鵝を持ち上げ、自身が代わりにそこへ腰掛ける。
持ち上げた企鵝を膝の上に抱え、美琴と向かい合った。
彼女は不自然な笑顔を浮かべたまま、明後日の方向へと視線を投げている。

五条「……さて、説明して頂きましょうか……」

────────────



435 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/16(木) 23:43:46.80 ID:uFRpx4Ao
ペンギン拉致の現行犯か?



436 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/16(木) 23:45:05.79 ID:KZW5McAo
美琴「だから、最初は御遣いのご褒美にご飯でもご馳走してあげようかな~って……」
『あんな大トロ初めて食べたッス!』

美琴「そしたら案外遅くなっちゃったから、夜中に一人で帰すのもアレかな~って……」
『鳥目ッスからね!』

美琴「で、寝る場所無かったから私のベッドで一緒に~……」
『姐さんにはぬいぐるみって言ってたッス!いやぁ~、動かない様にすんのしんどかったッス!』

五条「……グヒヒ……相の手が無ければ相当危険な事を言ってますよオマエ……」

美琴「ってゆーかアンタ何でココに居るのよッ!?どーやって入ったワケ!?」

五条「……黒子から合鍵を預かっています……」

美琴「……そう……」

膝の上の企鵝がピョコンと膝から飛び降りて、部屋の窓へと歩いていった。

『いやー、居心地良かったからつい長居しちまったッス!お姉さま、色々ありがとッス!』

窓を開き、こちらを向き直り、背筋を伸ばして敬礼をする企鵝。



437 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /16(木) 23:47:05.72 ID:8rFLHy.o
合鍵・・・だと・・・



438 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/16(木) 23:47:23.56 ID:KZW5McAo
美琴「ちょッ……」

企鵝が不思議そうな目線を美琴に向ける。

美琴「あのッ……時々で良いから……また来てくれる……?」

企鵝の視線がこちらを向いた。
黙って首を縦に振る。

『勿論ッス!』

言い終えた企鵝は、窓の外へと身を投げた。

企鵝が飛び去った後の窓辺に掛かった白いレースのカーテンを揺らす風が、間近に迫った夏の終わりを一抹の涼しさと共に部屋へと運んできた。

美琴「……勝手に来て、勝手に居なくなって……ホント、気ままな奴よね……」

美琴が立ち上がり、窓際に立った。
正午にはまだ少し早い、柔らかく感じる夏の日差しが、彼女の栗色の髪を一層淡く輝かせていた。

美琴「あ……入道雲」

彼女の言葉に釣られ、自身も視線を窓の外へと移す。
真っ白な入道雲が、地平線にうず高く積みあがっているのが見て取れた。

美琴「なんか……アイツが笑ってるみたい……」

彼女の目じりを、うっすらと透明な液体が濡らす。
どこまでも澄んだ夏の青空に積みあがった入道雲が成すコントラストは、夏空に消えた企鵝のお腹を彷彿とさせていた──

──────to be continued──────



443 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/16(木) 23:50:28.35 ID:KZW5McAo
五条「……で、何か言うことは……?」

美琴「お宅の企鵝さんお借りしてましたッ!連絡が遅れてゴメンなさい!今後もちょくちょく貸して貰えると嬉しいです!」

五条「……よろしい……」

美琴「でさ、アンタこの後何か予定あんの?」

五条「……特に予定も無いのですが……」

美琴「お昼でもどう?アタシも今日暇なのよねー」

美琴の言葉を聞き、時計を眺めた。
時計の針はそろそろ12時にさしかかろうかという時間だ。
生憎昼食は来る前に済ませてしまっていたのだが、お茶ぐらいならば相伴しても問題ないだろう。

五条「……えぇ、構いませんよ……」

答えてベッドから腰を上げた。

────────────

美琴「……ま、上手いこといったんなら良かったわ」

ランチのプレートを食べ終わった美琴が口を開く。
その様を見計らった店員が、紅茶を注いだカップを持ってテーブルにやって来た。

つられて、自分の前に置いてあるカプチーノが注がれたカップの取っ手を持ち、一口啜って言葉を返す。

五条「そちらはどうでしたか?」

美琴「ちょっと心配だったけど、何とかなったわ。あんな時に限って寮監の見回りが少なかったのはツイてたわね」

五条「……ククク……」



445 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/16(木) 23:54:23.06 ID:KZW5McAo
美琴「わかってんだろーけどさ」

五条「……?」

美琴「もし黒子泣かしたら、本気で怒るからね」

五条「…… これは怖い……ヒヒヒ……」

美琴「……」

五条「……」

美琴「ねぇ、アンタさ」

五条「?」

美琴「兄弟とかっている?」

五条「……お姉さましかおりませんね……どうかしましたか?」

美琴「……そっか。ううん、別に何でも無いわ」

五条「……?」

────────────

美琴「ちょっと待ってッ!」

黒子が夏季公募から開放されるまでやる事が無いとぼやいていた美琴と共に昼食を終え、あても無く第七学区の街を歩いていた。
途中何件か美琴の行きたい店に付き合わされたのだが、彼女が好んで購入するものは、どれもこれも年齢以上に幼い品が多かった。
時折黒子がぼやいている少女趣味とやらの一端を垣間見た気がする。

そんな最中、不意に彼女が足を止め、道端で数人のグループを作っていた遊んでいた小学校低学年かと思しき子供たちの元へと歩み寄って行く。

その中の一人の少女の両肩に手を置き、真剣な表情で何かを話しかけている様が見て取れた。
暫くその少女と会話をした後、ぺこりと少女に頭を下げ、嬉しそうな表情でこちらへ足を運んでくる彼女。

美琴「次やりたい事決まったわ。行こうッ!」

そんな美琴に連れられ、暫く歩を進めた先の商店街の一角にやって来た。
真剣な表情で立ち止まる彼女。
その視線の先にある、一回二百円のいわゆるガチャガチャ。

五条「……ガチャガチャですか……?」
美琴「うん、ちょっと気になるのが入ってるみたいでさ」

言い終えた彼女が一台のガチャガチャと向かい合った。
"世界のマスコット缶バッジ 全255種"と書かれたガチャガチャに向かい、二枚の百円玉を投入する。



447 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/16(木) 23:57:22.71 ID:KZW5McAo
五条「……255種!?……お姉さま……無茶では……」
美琴「フルコンプしようってワケじゃないんだから平気よ、欲しいのが出たら止めるわ」
彼女がハンドルを回し、排出されたカプセルを開く。
美琴「……」

ぽいと自分に缶バッジが放られた。
鼻水を垂らしている海賊帽の様なものを被ったマスコットの缶バッジだった。
彼女に目線を投げると、再びガチャガチャと向かい合い、ハンドルを回している。
美琴「……」

再びぽいと自分に缶バッジが放られた。
薄く切られた沢庵に両手両足が生えた様なキャラクターが、微妙な笑顔を浮かべたままこれまた微妙なピースを浮かべている缶バッジだった。
何故か頭には王冠、右手には木槌。
正直可愛さなど微塵も感じ取れない。

再度彼女に目線を投げると、少し熱くなった様な表情でレバーを回していた。
吐き出されたカプセルを開きもせずに自分へと放って彼女が口を開く。

美琴「あんた開けてって。ゲコ太が出たら教えてくれれば良いから」

五条「……ゲコ太?」

美琴「知らないの!?……すっごい可愛いカエルのキャラだから、すぐわかると思うわ」
五条「……了解しました」

言葉を返し、彼女の隣に腰を据える。
次々とハンドルを回しては、カプセルを自分へと放る彼女。

そのカプセルを受け取り、同様に次々と開いては中のマスコットを確認する。

延々と繰り返される、珍妙な顔をしたマスコットと対面し続ける作業。
炎天下の中繰り返される、世界マスコット博覧会。

どれ程時間が過ぎただろうか。
ガチャガチャが設置されている場所の横に置いてあったスーパーの買い物籠を拝借したのだが、その中は既に大量のカプセルで満たされている。



448 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /16(木) 23:58:30.94 ID:jYNQiwUo
ジャンキーだーーーー!!?



449 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/16(木) 23:59:33.46 ID:uFRpx4Ao
もう問屋から直接買えよww



450 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/17(金) 00:00:08.06 ID:F9cdDSIo
美琴「……」
五条「……」

次第に目が据わっていく彼女を見て、完全に静止の機会を失ったかと肩を落とした。

美琴「……ごめん、両替お願いっ!」
唐突に声を上げた彼女が、自身に一万円札を手渡して来た。

五条「……まだやるのですか?」
ため息混じりに聞き返す。

美琴「……ここまで来たら引けないわよッ!」
何時に無く真剣な表情の彼女に押され渋々と一万円札を受け取り、近所の商店でジュースを二本買って戻る。

渡したジュースの栓を開けようともせず、黙々とハンドルを回す作業に戻る彼女。
その隣で、カプセルを開き続ける作業を再開する。

開いたカプセルの一つから、カエルの様なキャラクターが描かれている缶バッジが姿を現した。

五条「……お姉さま、これは?」
美琴「出たのッ!?」

差し出した缶バッジを緊張した面持ちの美琴が眺める。
と、途端にその顔に落胆の表情が現れ、深くため息を吐いた。

美琴「……確かにカエルだけどさ、こんなにリアルじゃない奴よ」
虚ろな目でまたもハンドルと向かい合う美琴。
否定されたバッジに目を向けると、右手に盾、左手に剣を持ったカエルが西洋鎧と緑色のマントを纏って大口を開けていた。

美琴「……」
五条「……」

延々とハンドルを回していた美琴の手が止まった。
総計で一体いくら注ぎ込んだのだろう。
ハンドルを回され続けたガチャガチャは、完全にその中身を吐き出し尽くしていた。

五条「……」
最後の1個のカプセルを開く。
黄色いピーマンの様なものがロンパった瞳と鋭い牙を持ち、誇らしげに触手を掲げているバッジが出てきた。

美琴「……全滅、ね」

はあ、と美琴がため息を吐く。



452 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /17(金) 00:01:36.24 ID:I3PUQhgo
それどこのカエルだよwwwwwwwwwwwwwwwwwwww



455 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/17(金) 00:03:02.28 ID:F9cdDSIo
五条「……ククク……どうされるんですか?このバッジ……」

買い物籠を二籠満たすほどの缶バッジの前に立った美琴が、言葉を聞いてきょろきょろと辺りを見回した。
その視線が止まった先につられ、自分もそちらへと視線を投げる。
小学校低学年と思しき子供たちのグループ。

両手に山盛りの缶バッジが入った籠を抱えた美琴が、そちらへと歩み寄って行き、その子供たちと何やら話をしている様が展開された。

途中、先と同様に一人の少女の両肩に手を置き、真剣な表情で何かを話しかけている様が見て取れ、嫌な予感が背筋を這う。

嬉しそうに籠を受け取った子供たちに手を振り、美琴がこちらへと踵を返した。
その瞳に、先にハンドルを握っていた際と同様の輝きが宿っている。

美琴「駅前におんなじガチャガチャがあるらしいわっ!行くわよっ!」

────────────

どれ程の時間、カプセルを開き続けただろうか。
午後も五時近くまで差し掛かった街に降る日の光は、柔らかな暖色を帯び始めている。

美琴「……?どう?」
五条「……グヒヒ……本当に入っているのでしょうか……」
先に続き、買い物籠が三箱満たされる程のカプセルを尻目に、同様の作業を繰り返す。
そろそろ時給の一つでも発生してもおかしくは無い様な気がして来た。

ぱこ、と音がして開いたカプセルに目を向ける。
緑色のカエルの両脇に羽のマークが装われた缶バッジが視界に入った。
下部にはSKYという文字があしらってあり、カエルの目はつぶらで、表情は柔らかく微笑んでいる。

五条「……お姉さま、こちらは……?」

取り出したバッジを美琴に向けて差し出す。



457 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/17(金) 00:06:31.87 ID:F9cdDSIo
取り出したバッジを美琴に向けて差し出す。
しけた様子でハンドルを回していた彼女の顔に、一瞬で驚愕と喜びが混ざり合った表情がぶちまけられた。

差し出したバッジを受け取って、嬉しそうに掲げる彼女。
キャーキャーと嬉しそうな声を聞いていると、何やらこちらまで嬉しくなって来てしまう。

その表情は間違いなく狂喜のそれなのだが、目尻に微かに涙が見えるのは気のせいだろうか。
やはり口に出さずとも、身銭を切ってハンドルを回し続ける作業は辛いものだったのだろうか。

五条「……ククク……おめでとうございます……」

美琴「ありがとう!」

まるで眩しいものを見つめるかの様に眼を細めてバッジを見ている美琴をよそに、通りがかった少年達に缶バッジの入った籠を持っていく様言いつける。

こちらも大喜びをした少年達が、嬉しそうに籠を抱えて美琴と自分に一礼し、立ち去って行った。

見計らったかの様なタイミングで、午後五時を告げるチャイムが鳴り響く。

美琴「……ホントにありがとう、ってゆーかゴメンね、こんな事につき合わせちゃって……」

五条「……いえ、時間潰しとしては最適でした……」

美琴「黒子何時ごろ戻るんだろうね?何なら夕飯も一緒に食べ──────」

会話が唐突に途切れた。
不思議に思い美琴の顔に目線を送ると、真剣な表情で明後日の方向に目線を送っている。
美琴がごくりと唾を飲む音が聞こえた。

五条「……どうかされましたか……?」

美琴に問いを投げると、彼女の表情が先と同様の笑顔に戻った。

美琴「…ううん、何でもn「どうかされましたかと聞いているのです」

美琴の言葉を遮り続ける。

五条「……プライベートを詮索するつもりはありませんが……今のオマエの顔はあの時と同じものでしたよ……あの化物と向かい合った時とね……ヒヒヒ……」

美琴「…………」

五条「……暇つぶしなら、お付き合いしますが……?」



459 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/17(金) 00:08:45.98 ID:F9cdDSIo
言いながら、美琴と視線を合わせる。
真剣な表情の彼女と暫し向かい合った後、根負けした様に彼女が口を開いた。

美琴「……だったらちょっと付き合ってくれる?何があるか、私もわかんないんだけど」
五条「……ガチャガチャで無ければお付き合いしますよ……クックック……」

美琴が頷き、駆け出す。

美琴「ついてきてっ!」

その背を追い、夕方の駅前を駆けた。

────────────

駆けて行く美琴の後を追う。
彼女の姿は駅前から住宅街へと足を進め、住宅街の中をきょろきょろと何かを探す様に駆けて続けていた。
住宅街の丘陵地帯へと続く階段を駆け上る彼女を追いかける。

階段を全て駆け上ったところで彼女が足を止めた。
足を止めた背に追いつき、その横顔を眺める。

うっすらと冷や汗を滲ませながら驚愕の表情を浮かべ、視線を前方に投げる彼女。
その視線の先にある、つい今しがたまで追いかけていたはずの少女の後ろ姿。

軽く息を切らしながら見つめるこちらの視線を感じ取ったのだろうか、公園の様なスペースになっている道端で街路樹を見上げていたその人影がゆっくりと振り返った。

五条「ッ!?」

無表情に振り返ったその顔は、今自分の隣に立っている少女、御坂美琴と寸分違わないものだった。

吹き抜けた風が、ざわざわと彼女の髪を揺らす。
その頭頂部には、軍人が夜間作戦の時に使用するノクトビジョンゴーグルの様なものが掛けられていた。

美琴「ッ……!!」
呆然としていた隣の美琴が表情に険を降ろし、声を張る。

美琴「あんた何者?」

声を張った美琴が身構え、眼前に立つもう一人の美琴を見据える。
その気勢に一触即発の空気を感じ取った為、自身もまた身構えた。

五条「……」
美琴「……」



461 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/17(金) 00:11:49.56 ID:F9cdDSIo
張り詰めた空気の中、ゴーグルを身に着けたもう一人の美琴がおもむろに口を開いた。

『ミャー』


五条「へぇあッ!?」
美琴「はッ!?」

その口から発された言葉の真意を理解出来なかった。
隣の美琴も同様なのだろう。
身構えたまま訝しい表情を作っている。

五条「……ミャー……」

何かのコンタクトなのかと思い、彼女を見据えたまま同様の言葉を返してみた。

美琴「……!?ちょっとアンタっ!?」

『ミャーミャー』

再び同様の言葉を返してくる彼女。
やはり猫語なのだろうか。ならば意思の疎通は可能かもしれない。

五条「ククク……ミャー?」

『……』

五条「……」

『この一刻を争うタイミングで変な男性と遭遇してしまったものだと、ミサカは憔悴を交えながら自身の不運を嘆きます』

彼女がため息を吐きながら首を横に振った。

五条「なッ……!?」

『ミャー……と鳴く四足歩行生物がピンチです』

彼女が先まで見上げていた街路樹の先を指差した。
隣の美琴と目を見合わせた後、その指の先に視線を送る。
真っ黒な子猫が枝の先でプルプルと震えているのが目に入った。

『先程この道を通りかかった際に、路上駐車された車内に取り残されている赤ん坊を発見しました』

『居合わせたアンチスキルが熱中症の危険性を示唆したのでミサカの力でロックを解除したのですが、それに驚いたあの生物が木にかけ上がり、降りる事が出来なくなったのです……とミサカは懇切丁寧に経緯を説明します』



462 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/17(金) 00:13:50.35 ID:gi22aWo0
恥ずかしいwwwwこれは五条さん恥ずかしいwwww



463 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/17(金) 00:14:51.97 ID:Oj3H.YI0
『ミャー……と鳴く四足歩行生物がピンチです』

名古屋人が木から下りれずピンチらしい 助けなきゃ




464 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/17(金) 00:15:09.47 ID:F9cdDSIo
ほー、と美琴と二人で枝の先で震えている子猫に目線を送る。
刹那、はっとした表情を浮かべた美琴が、ミサカと名乗った少女へ口を開いた。

美琴「そんなことはどーだっていいのよっ!私はアンタが何なのかって聞いてんじゃないっ!」
ミサカ「あ」

美琴の大声にビクリと反応した子猫が、驚いた拍子に枝から落ちそうになりながらも懸命に枝にしがみ付いた。

ミサカ「どうやら更に危機的状況になったようです」

同じ顔の少女がやり取りをしている様に違和感を覚えつつも、木に向かって助走をつける。

ミサカ「何をするつもりですか、とミサカは勢いをつけた変な男性に対して感じた疑問を投げかけてみます」
五条「……ククク……」

木に向かって駆け、直前で大きく跳躍する。
そのままの勢いで木の表面を蹴り、反対方向へと更に高く跳躍。
跳躍した先の枝にしがみ付いている子猫の腹に両手を沿え、枝から子猫を引き剥がして胸へ抱え込み、着地する。

五条「……こうするおつもりですよ……ヒヒヒ……」

居並んだ二人の目線が胸元の子猫へと注がれていた。
片方は、少し頬を染めてわくわくとした表情を浮かべながら。
もう片方は、感情があるのどうかも怪しい程無表情のまま。

ゴーグルが無く、美琴が無表情になってしまえば、全くと言って良い程見分けがつかない二人が並んでいる様はどう見ても双子のそれである。
しかし、先の彼女に対する美琴の発言から考えれば、相応に複雑な事情がありそうだ。
抱え込んだ子猫を、地面に向かい放つ。
居並んだ二人が、子猫に向かいしゃがみ込む。

興味本位で関わったは良いが、長くなりそうだ。
眼前で子猫に手を差し伸べては怖がらせている同じ顔の二人を眺めながら、何となくそんな考えが脳裏に浮かんだ。
気がつけば辺りには徐々に夕闇が迫り、西の空が仄かに茜色を帯び始めていた。

──────to be continued──────



467 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2010/12/17(金) 00:22:22.51 ID:F9cdDSIo
以上、本日投下分となります
本日もご支援頂きました皆様、関係各位の皆様
プロットを練るお時間を頂きました由、篤く御礼申し上げます
お嬢に一票入れようかと思います

さて、次回投下に関しましては、私事の為明日の投下が難しいかもしれません
可能ならば17日の夜、不可ならば18日の夜となります(折を見てまた告知致します)
またお時間がございましたら、お付き合い頂ければ幸いです




477 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/17(金) 21:02:15.67 ID:ycQ2HfYo
乙乙
ついに妹達編か。楽しみだ

これまでの動向だとポルターガイスト事件は起こってないのかな
まぁ原作のスケジュールは過密すぎだからな…禁書&超電磁砲混合だと特に




479 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12 /17(金) 23:45:09.42 ID:TxSBL6AO
そういやここでは五条さんと黒子が出会ってから一年近く経ってるんだよな



480 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/17(金) 23:54:49.00 ID:T4Q5wZso
事件は五条さんと当麻の分業体制状態なら
原作でもここのスレでも起こっている事件はあるが五条さんは関わってない事件もあるかもしれない
でも個人的に五条さんの動きは多くみたい




481 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/17(金) 23:56:00.46 ID:CytapIso
時間の経過が気になって読みなおしてみたらこのスレももう1か月経つのか
面白くてあっという間だったぜ




482 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/12/18(土) 00:08:45.48 ID:WYY5ny20
五条さん、一年近くもハンバーグ食べれてないのか……
今度ハンバーグタイム邪魔されたら、邪魔した相手、唯では済まないね

下手したら挽肉にされるかも






次→五条「ククク… ここが学園都市ですか」その21



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禁書目録SS   コメント:6   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
1582. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/18(土) 19:49 ▼このコメントに返信する
五条さん可愛い
1587. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/18(土) 21:06 ▼このコメントに返信する
今のオマエの顔はあの時と同じものでしたよっていつのことだっけ
1588. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/18(土) 22:06 ▼このコメントに返信する
レベルアッパー編の話だな
1609. 名前 : 名無し@SS好き◆vmOZb.Uk 投稿日 : 2010/12/19(日) 18:04 ▼このコメントに返信する
お姉様マジジャンキー
1620. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/20(月) 01:35 ▼このコメントに返信する
緑のマントで西洋鎧、剣と盾を持ったカエルなんて、グランドリオンぶん回す勇者以外に無いだろう
1657. 名前 : 名無し@SS好き◆VOpfKO0s 投稿日 : 2010/12/21(火) 06:45 ▼このコメントに返信する
その21へのリンク先が、都城王土になってるんですがw
こっちも好きだからおkだけど
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