( ^ω^)世界は征服されるようです

2010-10-18 (月) 12:20  ( ^ω^)(´・ω・`)('A`)   3コメント  
1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 20:43:48.89 ID:MVMKvs2u0

10月。暑くもなく、寒くもない。過ごしやすい陽気になってきた。
しかし、時たま肌寒く感じることもある。
木々は徐々にその身についている葉を散らし、いずれ来るであろう冬に備えている。

そんな木々に呼応するように、町に並んでいる家々はどことなく静けさを醸し出す。
僕はそんな秋が大好きだ。
この季節が、一番平穏に包まれているのではないかと思うほどに。

ξ*゚⊿゚)ξ「ね、ねえ、ブーン」

同じクラスの友達であるツンと一緒に帰りながらそんなことを考えていると、不意にツンが口を開いた。
ちょうどここは僕とツンが別々の方向へ別れる十字路であり、別れ際の挨拶でもするのかと僕は思った。

( ^ω^)「お、なんだお?」

ツンはそれだけ言ってもじもじしたまま、なかなか言葉を発しようとしない。
いつもの彼女の印象とは、まるで違って見えた。

ξ*゚⊿゚)ξ「……あー、いいや! じゃあまた今度ね!」

結局、ツンは頬を赤らめたまま、何も言わずに家の方向へ急ぎ足で向かっていった。
別れる際に彼女のつけている香水が、かすかに香った。





2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 20:45:50.61 ID:MVMKvs2u0

( ^ω^)「………」

僕はその場に残り、一人でさっきの彼女の態度の意味を考えていた。
そして導き出された答えは

( ^ω^)「………」

(*^ω^)「フヒヒwww」

僕をハッピーにさせるものだった。




3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 20:46:36.53 ID:4mc5TnRw0
フヒヒwww



4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 20:47:51.73 ID:MVMKvs2u0

(*^ω^)「おっとおっと、にやけてたら他の通行人に不審者だと思われちゃうお」

( `ω´)シャキーン!!

( ^ω^)「………」

(*^ω^)

そうは思ったものの、嬉しいことがあれば顔がほころぶのは世の中の常だ。
にやけ面になったまま、僕は家に向かって歩を進めた。

(*^ω^)「やっぱり秋っていいおーw」

秋でなくても僕は天にも舞い上がるほどの嬉しさを胸に抱いただろう。
それでも、なぜか意味不明にこのような言葉がでてしまった。
それだけ、僕は嬉しいということが自分でもわかり、さらに上機嫌になった。




5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 20:49:56.78 ID:MVMKvs2u0

(*^ω^)

愛の告白。
さっきのはツンの様子では、きっとそれをしようと思ったのだろう。
しかし、彼女の性格から考えて土壇場になって言いだせなくなった。

(*^ω^)「うーん、我ながらいい分析じゃないかお?」

僕は誰もいない道路で、自分に向けるように話した。

正直、彼女から告白されるなんて考えてもいなかった。
だから今週末に遊びに誘って、僕から……と考えていた矢先に、さっきの出来事だ。

(*^ω^)

答えはもう決まり切っている。

「僕もツンのことが好きだ!!」

男らしく、彼女に恥をかかせないためにも、そう言いきる。
家に帰ってから、練習でもしようか。
いや、ちょっと舞い上がりすぎたな。ここはクールに

「僕もずっと前からそう思っていたお」

とか言っちゃったり……フヒヒwww




6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 20:52:09.09 ID:MVMKvs2u0

それからハッピーな気分で自宅に着くと

J( 'ー`)し「お帰り、ブーン。何か嬉しいことでもあったのかい?」

カーチャンにこう言われた。
どうやらやはり、僕の顔は嬉しさでいっぱいのようだ。

(*^ω^)「内緒だお~w」

それからすぐに自分の部屋に行き、ハッピーな気分で普段着に着替えた。

(*^ω^)「おっお~w」

居間に行くと、カーチャンは5時のニュース番組を見ているようだ。
僕もソファーに座り、同じようにニュース番組を見る。

(゚、゚トソン「謎の飛行物体、カリフォルニア上空に現る!
     えー、これはカリフォルニア在住のデミタスさんが撮影した映像です。
     デミタスさんが撮影した円盤はカリフォルニア上空を3分ほど漂ったあと、音もなく消え去ったそうです。
     では、次のニュースです……」




7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 20:53:16.53 ID:MVMKvs2u0







( ^ω^)世界は征服されるようです









8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 20:55:17.43 ID:MVMKvs2u0

それから、昨日と同じようなハッピーな気分のまま朝を迎えた。

( ^ω^)「行ってくるおー」

J( 'ー`)し「気をつけてね」

(`・ω・´)「母さん、俺も行ってくるぞ」

J( 'ー`)し「お父さんも、気をつけてね」

僕とトーチャンは同じ用にカーチャンの見送りを受けて家を出た。
僕は高校へ、トーチャンは駅に向かうためだ。

(`・ω・´)「そういえばブーン、昨日はずいぶんご機嫌だったじゃないか」




9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 20:57:20.34 ID:MVMKvs2u0

トーチャンが歩きながら僕に話しかけてきた。
トーチャンと僕は、おそらく普通の家庭から見ても仲の良い方なのではないかと自負している。
先週の休みにも、二人で魚釣りをしに行った。

さすがにトーチャンには敵わなかったが、僕もそこそこの大きさの魚を釣った。
その日はカーチャンが腕によりをかけた魚料理の大盤振る舞いだったことを覚えている。

(*^ω^)「まあ、トーチャンになら言ってもいいかもしれないお」

(*^ω^)「でもカーチャンには内緒だお!」

(`・ω・´)「わかった。男の約束だ」




10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 20:59:56.39 ID:MVMKvs2u0

トーチャンはそう言ってくれた。
正直、カーチャンには言いづらかったが、トーチャンなら別だ。
同じ男だし、僕の昨日感じたハッピーな気持ちも理解してくれるだろう。

(*^ω^)「実は、彼女ができるかもしれないんだお」

(*`・ω・´)「なにっ!? 相手は誰なんだ?」

(*^ω^)「ツンだお、同じ学校の」

すると、トーチャンは納得したようにああ、あの子か!と少し大きな声で言った。
ツンは僕の男友達と一緒に何度か家に遊びに来たことがあり、その時にトーチャンもカーチャンも顔は見知っている。
その際、トーチャンに「ブーンの彼女か?」と言われ、必死に否定した覚えがある。




11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:02:07.74 ID:MVMKvs2u0

(*`・ω・´)「良い子じゃないか。礼儀正しくてかわいくて貧乳で……。
       少なくとも、トーチャンはそう思ってるぞ」

( ^ω^)「うーん、でもまだ確定したってわけじゃないお。
       でも、今度一緒に遊ぶ時か帰るときに、勝負を仕掛けてみるつもりだお」

そうだ。あのあと冷静に考えたら、実際に告白されたわけではないのだ。
だから、カーチャンには言いづらかった。
カーチャンに言うと、

J(*'ー`)し「まあ! じゃあ、今日はお赤飯ね!」

(;^ω^)「カ、カーチャン……まだ付き合ってるわけじゃないお」

J(*'ー`)し「じゃあ決起祝いということで、今日はお赤飯ね!」

と言いだすに違いない。




13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:04:33.79 ID:MVMKvs2u0

でも、トーチャンなら

(*`・ω・´)「失敗したらトーチャンが慰めてやるから、ドーンといけ! 男になれ、ブーン!」

うん、やっぱりトーチャンだ。僕は、トーチャンのこういうところが好きなんだ。

(*^ω^)「……わかってるお! ドーンといってくるお!」

やはり、トーチャンに話して良かった。
不安がないと言えば嘘になるが、失敗をしたとしてもそれを糧にすればいい。
そして、また新しいことに向けて頑張ればいいのだ。

(`・ω・´)「お、じゃあな、ブーン」

そんな会話をしているうちに、分かれ道へやってきた。
トーチャンは駅へ向かう左の道へ。僕は高校に向かうために右の道へ。

( ^ω^)「お、仕事がんばるお、トーチャン」

(`・ω・´)「そっちもな」

( ^ω^)「大丈夫だお!」




14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:06:39.22 ID:MVMKvs2u0

トーチャンの熱烈な激励を受け、高校へ向かう僕。
もはや、僕の成すべきことは一つだけだ。
ツンに、僕のほうから告白を……。

( ^ω^)「…………お?」

そんな決意表明を自分の中で繰り返していると、
友達のショボンとドクオが、道端で言い争いをしているのが目に飛び込んできた。

(#'A`)「だからさあ、そんなことあるわけないだろ? ムーの読みすぎで頭がおかしくなったのか?」

(#´・ω・`)「なんでそう決めつけられるのかなあ!?
      事実、僕も見たんだよ! 僕が嘘をついているって言うのか?」

見た限りだと、あれは本気の喧嘩だ。僕はすぐさま二人の間に割って入った。




15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:08:46.07 ID:MVMKvs2u0

(;^ω^)「ちょ、ちょっと待つお、二人とも。いったい何があったんだお?」

('A`)「おう、ブーンか。聞いてくれよ、コイツ昨日UFOを見たって言うんだぜ」

(#´・ω・`)「嘘じゃないんだ! ブーン、君は信じてくれるよな?」

(;^ω^)「お?」

何かと思ったら、そんな話か。
ショボンはUFOマニアだ。UFOを見たというのは、これで何度目になるのだろうか。

(;^ω^)「また何かの見間違いじゃないのかお?」

こればかりは仕方がない。
この前なんて、夫婦喧嘩で飛んできたお鍋のふたをUFOと勘違いしていたのだ。
誰だってこう言う。おそらく、ドクオも似たようなニュアンスで返事をしたのだろう。

しかしショボンにはその答えが納得できなかったのだろう。

(#´・ω・`)「ブーンまでそんなことを言って……! もういいよ、絶対に本物だって証明してやるからな!」

彼は怒ったまま、僕とドクオに背を向けて学校のほうへ走って行った。




16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:11:05.56 ID:MVMKvs2u0

(;^ω^)「うーん、困ったもんだお」

('A`)「ほんとにな。あいつ、実は宇宙人なんじゃねえの?」

ドクオが皮肉交じりに言う。
さすがにそこまで言ってしまうのはかわいそうだが、この時ばかりは僕もそう思った。

( ^ω^)「UFO好きもあそこまでくると手がつけられないお」

('A`)「まったくだぜ」

僕とドクオは学校に着くまでそんなことをお互いに話した。
お昼ごろになればショボンも落ち着いているだろうと思い、僕たちは追いかけなかった。




18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:13:45.64 ID:MVMKvs2u0

学校に着き、教室へ向かう。
HRが始まるぎりぎりの時間だが、いつもそんなもんだ。
僕たちが席に着いて、数分も経たないうちにフィレンクト先生が教室に入ってきた。

(‘_L’)「じゃ、出席とるぞー」

次々と名前が呼ばれていき、それに対する返事がフィレンクト先生のほうへ飛んでいく。

(‘_L’)「ショボン。……ショボン、いないのか?」

ショボンの名前が呼ばれたが、返事は無かった。

( ^ω^)(僕たちより先に行ったはずなのに……)

そこで僕は、一抹の不安を覚えた。
まあどうせ彼のことだ。どこかの土手で、UFO撮影を試みているに違いない。




19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:15:54.75 ID:MVMKvs2u0

―――――――――――
――――――――
――――
――

特にいつもと変わったことがないまま、授業は終わり帰りのHRも終わった。
僕はドクオと、結局ショボンが学校に来なかったことを話しながら教室を出た。

( ^ω^)「結局学校に来なかったお、ショボン。どこで何をしてるんだか」

('A`)「さあな。俺たちに否定されたから、ふてくされてどっかに行っちまったんじゃないか?」

ドクオはなんともなさげにそう答えたが、僕は不安を拭いきれないでいた。

( ^ω^)「……悪いことしちゃったお」

こんなことになるのなら、少しでも話に乗ってあげた方がよかったのではないかと反省した。
ドクオは微塵にもそんなことは思っていないようだったが。

( ・∀・)「うん? どうしたんだ、ブーン」

ドクオと共に階段を下っていると、僕の呟きが聞こえたのか、モララーが話しかけてきた。

('A`)「ああ、コイツ、朝ショボンのUFO話に付き合わなかったから、ショボンが学校に来てないのかも……。
   って、気に病んでるんだよ。心配することないのにな」

ドクオが僕の代わりに、僕の思っていることをすべて説明した。




20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:18:17.51 ID:MVMKvs2u0

( ・∀・)「なんだそんなことか。それなら心配ないよ」

モララーがドクオと同じように言った。

( ・∀・)「だってあいつ、俺が会ったときに今日はUFOを撮るから休むって言ってたしさ」

なんだそれ。ほんとにUFOを撮りに行っていたのか。
心配した自分が馬鹿みたいに感じた。
しかし、安心したのも事実だった。

('A`)「な? だからあいつに心配なんていらないって。
   どうせ明日になったら、またUFO話でうるさくなるだろうよ」

ドクオが後押しするように言う。
それもそうだ。なぜ僕はあそこまでショボンのことを心配していたのか、自分でもわからなかった。

( ^ω^)「そうだおね、ちょっと心配しすぎてたおw」

そうだ、きっとそうなんだ。
ショボンはいつもと変わらない様子で明日学校に来るに違いない。




21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:21:02.34 ID:MVMKvs2u0

下駄箱に着き、靴を履き替える。
そして正門を出ると、そこにはツンがいた。

ξ*゚⊿゚)ξ「……あ、ブーン」

(*^ω^)「お、ツン」

僕たちの顔は、きっと赤くなっていたのだろう。
一緒にやってきたモララーとドクオが、僕らをからかってきた。

( ・∀・)「ドクオくん、きみ、彼女を作った経験は?」

('A`)「0ですが何か? 今、すぐそこに成立しそうなカップルがいそうなのですが、ぶち壊してもいいですか?」

( ・∀・)「それはいけないなあ。よし、僕と一緒に、きみでも付き合ってくれそうな女の子を探しに行くか」

('A`)「マジで?」

( ・∀・)「マジで」

(*'A`)

( ・∀・)

( ・∀・)「じゃあお二人さん、お幸せに」

モララーが気を利かせてくれて、ドクオと二人でどこかへ消えていった。




23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:23:21.49 ID:MVMKvs2u0

( ^ω^)「………」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

僕たちは無言なまま歩き出した。
町はそれを受け入れてくれているかのように静かだった。
他にも下校中の高校生や中学生がいるだろうに、その存在を感じさせなかった。

(;^ω^)「………」

何か言わなくては。
このままだと、沈黙だけがこの場を支配し、また昨日のようになってしまう。
いや、昨日何かを言おうとしかけたのはツンのほうだったが、今度は僕の番なのだ。

僕が、告白をする。
それはもはや僕の中では決定事項であった。

(;^ω^)「あの、ツン?」

ξ;゚⊿゚)ξ「……え、あ、ブーン、どうしたの?」

( ^ω^)「………」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

この空気のまま、とうとうあの十字路までやってきてしまった。




24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:25:44.69 ID:MVMKvs2u0

言わなくてはいけない。
トーチャンと、約束したではないか。
僕は、男になると。

( ^ω^)「……あの、ツン。聞いてもらいたいんだお」

ξ*゚⊿゚)ξ「……うん」

ツンは顔を赤らめながらこっちを向いている。
おそらく、僕が何をしようとしているのか、昨日の僕のようにわかっているのだろう。
まるっきり僕らの立場は逆になっている。

いけ、ブーン。
今がそのときなんだ。

( ^ω^)「……僕は、ツンのことが」




26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:27:55.60 ID:MVMKvs2u0

( ^ω^)「大好きで―――」

僕が意を決して言葉を発そうとした瞬間。









ξ;゚⊿゚)ξ「キャー!!!!」

彼女の体が、空高く舞い上がった。
空には、黒く巨大な円盤がいた。
さっきまであんなものはなかったはずだ。

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン!! ブーン!!!」

ツンが助けを求めるように僕に声を張り上げる。

僕は呆気にとられていたが、ツンの声で目が覚めた。




27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:30:13.54 ID:MVMKvs2u0

(;^ω^)「ツン! 今助けるお!」

そう言った瞬間に、浮いているツンの手をつかもうと僕は手を伸ばす。
だが、あともうちょっとのところで手が届かない。

(;^ω^)「うう、あと少し、あと少しなのに……」

本当に、あと少しだ。あと数センチもない。
指と指とが、すれ違う距離なのだ。
でも、駄目だった。

ξ;゚⊿゚)ξ「いや! 下ろして! まだ、まだブーンの―――」

ツンは何かを言おうとした。
だが、言い終わる前に完全に円盤の中へ吸い込まれていった。




30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:32:47.94 ID:MVMKvs2u0

(;ω)「そ、そんな……」

ツンが円盤に飲みこまれた。
それだけが僕の頭の中を駆け巡った。

(;ω)「ツン、ツン……」

こんなことになるならば、あの瞬間に僕は早く彼女に言うべきだった。
そして、早く家に返すべきだったんだ。
そうすれば、ツンはこんな目に逢わずに……。

しばらく僕はその場にうなだれた。
だが、円盤は僕を吸い込もうとはしない。

(;^ω^)「………」

そして、音もなく姿を消した。




31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:35:06.40 ID:MVMKvs2u0

僕は急いで携帯を取り出し、すぐさま警察へ連絡をいれた。

(;ω)「嘘じゃないんですお! ほんとに、ほんとに円盤がツンをさらって―――。
     いたずら? いや、だから……」

切られた。それは当然の反応だった。
今朝のショボンに対する僕とドクオの態度のそれとなんら変わりない。

夢? もしかしたらこれは夢ではないのか?
そう思い、僕は自分の頬を強くつねった。痛い。どうやら夢ではないようだ。

(;ω)「どうして……」

どうしてツンだけ? それは、僕が考えたところでわかるわけがなかった。

(;ω)「……家に帰るお」

僕は今起きたことを夢ではないと再確認した後、家に向かって走り出した。




32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:37:16.57 ID:MVMKvs2u0

J( 'ー`)し「お帰り、ブーン。
      ……どうしたんだい? そんな顔をして」

カーチャンは、いつもと変わらない様子で僕を迎えてくれた。
まるで、さっき起こったことは夢と錯覚させるように。

( ω)「……なんでもないお」

どうせ話したところで、信じてもらえるわけがない。
それどころか、気がおかしくなったのかと思われる始末だ。
僕はさっきのことを黙ったまま、家に上がった。

J( 'ー`)し「そう……シャワーでも浴びてきたら? すっきりするわよ」

( ω)「そうするお」

僕はカーチャンの申し出をありがたく思い、さっき起きたことを整理するためシャワーを浴びることにした。




33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:40:47.43 ID:MVMKvs2u0

( ω)「ツン……」

熱いシャワーは気持ちよかった。
さっきよりも、少し僕の心は落ち着いてきたかもしれない。

( ω)「………」

どうすれば、ツンを助け出すことができるのだろうか。
自衛隊にでも連絡して、あの円盤を攻撃してもらうか?
いや、そんなことは無理に決まっている。

もし、万が一僕の言うことが本当だとわかってもらったとしても、攻撃してどうにかなるものなのだろうか?
相手は空を飛ぶ円盤だ。勝てる見込みがあるのだろうか。

( ω)「………」

僕はシャワーを浴び終わり、体を拭きながら洗面台の鏡を覗いた。
そこには、

( ;ω;)

泣いている、僕の姿が映っていた。




34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:43:05.76 ID:MVMKvs2u0

そのまま良い考えが思いつかないまま、夕食の時間になってしまった。

(`・ω・´)「おお、今帰ったぞ」

J( 'ー`)し「あら、お帰りお父さん」

トーチャンが帰ってきた。

(*`・ω・´)「ブーン、ちょっと俺の部屋に来なさい。
       結果を教えてもらおうじゃないか」

トーチャンは僕にそう言った。
おそらく、あの時の約束の話をしているのだろう。

J( 'ー`)し「あら、結果って?」

(*`・ω・´)「男同士の話さ。行くぞ、ブーン」

( ω)「……わかったお」

僕は、言われるがままトーチャンの部屋に足を踏み入れた。




35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:45:10.68 ID:MVMKvs2u0

トーチャンの部屋は、釣り具や仕事の書類があちこちに置いてあって、あまり片付いているとは言えなかった。
その片付いていない中で、僕とトーチャンは真正面に座りあった。

(`・ω・´)「………」

( ω)「………」

トーチャンは、僕が結果を話すのを待っているようだ。
多分、失敗だったとしても笑って受け入れてくれるだろう。
実際の結果は、それよりも悲惨なものだったが。

(`・ω・´)「……よし、わかった。そういうときもあるさ」

トーチャンは一人で納得したようだった。
そりゃあ、僕のこんな様子を見たら、誰も成功しただなんて思わないだろう。
トーチャンは僕の肩をやさしく二度叩くと、話題を変えた。

(`・ω・´)「そうだ、ブーン! 土日は暇か? 暇ならトーチャンと釣りに行こうじゃないか」

トーチャンは極めて明るく、そして陽気に言ってみせた。




36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:47:24.99 ID:MVMKvs2u0

(`・ω・´)「この前は大きさじゃあトーチャンの勝ちだったな。
       でも、たしか数じゃあブーンに負けたんだよなあ……」

トーチャンは立ち上がり、スーツを脱いで普段着に着替え始めた。

(`・ω・´)「今度は数でも大きさでも、すべての面でブーンに勝ってみせるからな!
       だから、お前もやる気を出して俺に挑んで来い!」

トーチャンの言葉は、僕の中にやさしさとなって入り込んでくる。
それを聞いていると、また泣き出してしまいそうになった。

(`・ω・´)「やはりこの前のトーチャンはえさが良くなかったんだろうな。
       だから今回はもっといいえさを用意しようと思うんだ」

(`・ω・´)「そうすればな、年季の入った釣りテクニックでブーンよりも……」

( ω)「トーチャン」

(`・ω・´)「どうした?」




38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:49:56.44 ID:MVMKvs2u0

問い返してきたところで、僕の涙腺は決壊した。

( ;ω;)「ありがとう」

(`・ω・´)「………」

トーチャンはしばらく黙ったまま、僕の肩を抱きながら

(`;ω;´)「泣くな。良い経験をしたと思え、ブーン」

僕と、一緒に泣いてくれた。
傍から見たらよくわからない図になっていたが、僕にはこれが一番の慰めになった。

J( 'ー`)し「お父さん、ブーン、ご飯ですよ」

J(;'ー`)し「って、どうしたの二人とも! 大丈夫?」

カーチャンは、この場の状況が分からずぽかんとしている。
そしてトーチャンは涙を拭って僕の顔を見た。

(`・ω・´)「もう泣くな、ブーン。うまいもの食って、元気を出すんだ」

( ;ω;)「うん、うん」

そうだ、泣いてなんかはいられない。

ツンを助けなくては。




39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:52:09.35 ID:MVMKvs2u0

―――――――――――
――――――――
――――
――

朝になった。

( ^ω^)「………」

ツンを救う手立ては、思いついていない。
だが、昨日の僕とはもう違う。

( ^ω^)「……戦ってやるお、あの円盤たちと」

僕は決意した。
戦う方法は、まだない。
だが、僕の中のたしかな闘志は音を立てて燃えている。




42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:54:40.84 ID:MVMKvs2u0

一階に下り、朝食をいつものように食べる。
そこには、いつものようにトーチャンとカーチャンがいた。

( ^ω^)「トーチャン、昨日はありがとだお」

(`・ω・´)「ん? ああ、気にするな」

トーチャンにお礼を言う。
これh、僕は奴らには負けないという意志表示でもある。

(`・ω・´)「……なんだ、このニュース? 特撮映画でもやっているのか?」

トーチャンが怪訝そうな顔をした。
僕は意識を奴らのことに集中するあまり、ニュースに映っている地獄絵図に気がつかなかった。




44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 21:57:50.77 ID:MVMKvs2u0

(゚、゚;トソン「き、緊急速報です! 謎の円盤が、世界中に出現しました!
      円盤はわたしたち人間を次々に捕獲して、いたるところで燻しているようです!
      現場のビロードさん!」

そして、現場のアナウンサーの映像に切り替わった。

(;><)「こ、こちら現場のビロードです! みなさんご覧ください、あの様子を!」

そこには大木がおり重ねられていて、火が付いている。
巨大な焚火と言ったところだろうか。
その煙がもくもくと空に立ち上り、大きな雲を形成しているように見えた。

そして、その焚火のちょうど真上に、UFOから吊るされた人々の姿があった。

(;`・ω・´)「食事中になんて悪趣味な……リモコンはどこだ! 消せ!」

トーチャンはリモコンを探し出し、すぐさまテレビの電源をオフにした。

(;`・ω・´)「何を考えているんだ! まるで人間を魚みたいに扱いやがって……」

僕はその光景を見て

(;゚ω゚)

声も出なかった。




46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:00:36.62 ID:MVMKvs2u0

しかし、家の周りは特に変わったことがあるわけではない。
トーチャンの言うとおり、たちの悪いいたずらの可能性がある。

そう思わないと、気がおかしくなりそうだった。

(`・ω・´)「……おっと、もうこんな時間か。今日は大事な会議があるんだ、俺はもう行くぞ」

(`・ω・´)「ブーン、あんなニュース気にするなよ。母さんもな」

トーチャンはさっさと支度して、外に出て行ってしまった。

J( 'ー`)し「はいはい。まったく、あんなたちの悪い番組を朝っぱらから流すなんてねえ。
      ここら辺なんてまったく何も起こってないのに……ほどほどにしてもらいたいわね」

カーチャンがぼやきながらテーブルの席に着く。
そして、テレビの電源をもう一度つけた。
チャンネルを次々と回していくが、やっているのはさっき見たものばかりだ。

J( 'ー`)し「……あらあら、今日はどうしたのかしら」

カーチャンは、諦めてテレビの電源を落とした。




47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:03:50.77 ID:MVMKvs2u0

(;ω)「……行ってくるお」

J(;'ー`)し「あ、ブーン!」

僕はそう言って、カーチャンの言葉を聞かぬまま玄関を飛び出た。
外の風景はいつもと変わらない。
しかし、確実に奴らは、円盤はいるのだ。

外には、歩いている人がいない。
珍しいことではないが、今日はそれがひどく不気味に思えた。

(;゚ω゚)「!?」

遠くの空を見ると、小さな黒い点がぽつぽつと漂っているのが見えた。

(;゚ω゚)「あれは円盤だお……」

こっちへやってくる。

(;゚ω゚)「………」

昨日の出来事と、テレビの光景が頭に再生され、足がすくんで動けない。
僕はツンを助けるのだ、ツンを。
それなのにこのざまだ。




49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:07:48.59 ID:MVMKvs2u0

僕は必死に考えた。
こんな状況だ。多分、自衛隊や他国の軍隊も動いているはずだ。
それなのにテレビに映ったような行いをしているということは、おそらく無力だったのだろう。
僕が、ツンを助け出すなんて出来やしないんじゃないか……?

そんな中、

「……けて」

( ω)「!!」



たしかに聞こえた。


ツンの声が。




50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:10:23.65 ID:MVMKvs2u0

ξ;゚⊿゚)ξ「助けて!」

(;^ω^)「ツン!?」

ツンが、こちらへ向かって走ってくる。
後ろからは、円盤が向かってくるのが見える。

ああそうか、ツンは隙を見つけて逃げ出したに違いない。
だとしたら、僕はツンを受け止めて、安全なところへ連れていかなくてはいけない。




51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:13:00.61 ID:MVMKvs2u0

ツンはどんどんこちらへ走ってくる。
そして、僕の胸に飛び込んできた。

( ;ω;)「ツン!!」

僕はツンをしっかりと抱いた。
もう、こんなやつらに連れさらわれないためにも。






しかし、ツンはどうやってあの円盤から逃げ出したのだろうか?




53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:15:44.63 ID:MVMKvs2u0










そして、僕は宙に浮いた。











54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:18:10.39 ID:MVMKvs2u0

―――――――――――
――――――――
――――
――


いやー、しかしラッキーだった。
身近にこんな良い釣り場、もとい食糧が調達できるところがあるなんて。

(・∀ ・)「お、また一匹釣れたぜー」

(-@∀@)「まだあまり釣らない方がいいですよ。本当に食べても害がないか、まだ分かったわけではありませんから」

俺はアサピーにそう言われてカチンときた。

(・∀ ・)「固いこと言うなよー。みんなだって好き放題釣ってるじゃん」

(-@∀@)「たしかにそうですが、わたしたちは食糧危機を脱するためにやってきたのです。
     むやみに取ると、増やす前に数が減ってしまいますよ」

(・∀ ・)「あー、たしかにな。
     こいつら、味はいいんだけど繁殖力が弱いみたいだな」




55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:20:47.31 ID:MVMKvs2u0

最初に捕らえた顔のしょぼい雄と、金色の毛が生えた雌で実験した結果がそうだった。
交尾を行わせたが、雌のほうに新しい子供が宿ったかどうかもわからなかった。
もし宿ったとしても、それが大きく食べ時になるまでに何年もかかるという研究結果らしい。

(・∀ ・)「うめえのになあ。どうにか繁殖力の強化とか、できないのかねえ」

(-@∀@)「それを調べるためにも、今取りすぎるべきではないのです。
     わかりましたか?」

アサピーはもっともなことを言っているのは俺でもわかった。
しかたねえ、今はやめにするか。

(・∀ ・)「わかったわかった。じゃあ、俺はこのチキューニホンアシのおいしい料理でも考えておくぜ」

金色の毛の雌の模造品を使って捕らえた少し太っている雄を、俺は生け作りにするつもりだ。
俺の指先から肘あたりの大きさで、中身もボリュームがありそうだ。
きっと、うまいに決まってる。




57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:23:07.37 ID:MVMKvs2u0

(・∀ ・)「にしても、ほんとによかったよなー。
     ここを養殖場に変えれば、俺たちの食糧問題はすぐに解決だ」

(-@∀@)「ええ。本国にさっそく報告しましょうか」

(・∀ ・)「おお、任せたぜ」

そう言うと、アサピーは本国へ連絡するために俺の部屋から去って行った。
いやあ、まじめだねえ。あいつは。




58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:25:40.29 ID:MVMKvs2u0

(・∀ ・)「いてっ」

生け作りにしようとした雄に噛みつかれた。
指先からは、わずかながら血が出ている。

(・∀ ・)「意外に凶暴だな……まあ、おいしいものにはとげがあるってか」

俺はその凶暴な雄を生け作りにして食べた。
やはり、味は良かった。

(・∀ ・)「もっと食いてえなあ」

しかしそれは我慢しなければ。

(・∀ ・)「はーあ」

なあに、養殖すればすぐにいくらでも味わえるようになる。
それまでの辛抱さ。





(・∀ ・)は本国の食糧問題を解決するようです 終わり




56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:22:25.92 ID:/XQ+R0DmO
地球はでかい釣り堀か



60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:28:15.22 ID:/XQ+R0DmO
食われたか……。
宇宙人側視点が好きだ。





61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:28:41.79 ID:MVMKvs2u0
というわけで、
「( ^ω^)世界は征服されるようです」もとい「(・∀ ・)は本国の食糧問題を解決するようです」
は以上で終了です。

読んでくれた方、支援してくれた方、ありがとうございました!




62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10 /17(日) 22:31:19.83 ID:1pr8guhUO







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( ^ω^)(´・ω・`)('A`)   コメント:3   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
4150. 名前 : あ◆- 投稿日 : 2011/03/02(水) 21:44 ▼このコメントに返信する
BADかよ畜生…
5294. 名前 : ⊂( ・ω・⊂ )ビシッ◆SFo5/nok 投稿日 : 2011/03/28(月) 02:45 ▼このコメントに返信する
NTRかよ畜生…
16957. 名前 : 名無しさん@ニュース2ちゃん◆- 投稿日 : 2012/01/21(土) 23:25 ▼このコメントに返信する
星新一テイストか
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