ダンテ「学園都市か」【MISSION FINAL】

2012-10-26 (金) 23:01  禁書目録SS   14コメント  
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まとめ→ダンテ「学園都市か」 まとめ





260:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:32:56.35 ID:6e3c2nPro

―――

土御門「―――あそこの店、気に入ってたんだけどな。残念だにゃー」

御坂「そうね」

土御門「カルボナーラが美味いんだこれがまた。前にカミやんと行って―――」

御坂「へえー」

学園都市のとある病棟、
暖かな陽が差し込む廊下を、御坂は土御門とともに歩いていた。

『預かり物』を届けるために、とある人物に会いに来たのだ。


御坂「……へぇ」

やや憂鬱な気分だった。
その人物がいる病室に近づいていくにつれ、
足裏が鉛が溜まっていくように重くなっていく。

隣の土御門の声もろくに頭に入ってこず、
気の抜けた相槌しかつけなかった。
ただ彼の話は、聞き流しても問題ない、
どうでもいい内容ばかりだったが。



261:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:34:40.61 ID:6e3c2nPro

今回の戦いで瓦礫と化してしまったレストランの話を右から左へと流しつつ、
御坂はこの八日間思い悩んでいたことをまた考えはじめていた。

こんなにも届けるのが遅れてしまった、と。


本来はすぐに届けに行くべきだったのだ。

だがあの戦いの後始末が山積みであり、またこれまでの疲労のためか、
緊張が解けたと同時に体調を崩してしまい、四日ほど寝込んでしまったりなどで、
今日まで届けに行くことができなかったのだ。

もちろん、他の者に届けてもらうことも考えた。
土御門や結標がその人物を『一応は知っている』ということであったため、
『預かり物』を彼らに託そうとした。

しかし彼らは御坂自身の手で渡すことを強く推し、
結局今日までこうすることができなかった。


御坂「はぁ……」

この『預かり物』の主が遺した言葉が、ずっと頭から離れない。
内容からしても重要な事柄であると思えるのだが、

それを告げても、土御門は「心配ない」とだけしか言わなかった。
結標も同じくだ。
むしろ彼らは「しばらく時間をおいた方が良い」と良い聞かせてきたのだ。



262:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:36:26.15 ID:6e3c2nPro

土御門「『彼女』は、あいつに依存していたようだ」

こちらの空気を悟ったのか、
それとも病室までの距離をも考えた計算ずくのタイミングなのか、
土御門が突然そう切り出してきた。

御坂「……依存?」

土御門「そうだにゃー。完全に生きる拠り所にしていた。
     お前にとってのカミやんの存在よりももっと大きかった」

表情を変えることもなく、
まるで他愛のない話の続きかのような調子。

御坂「じゃあ……エツァリさんが最期に言った、『彼女を死なせないでください』って……」

土御門「後追い自殺のことだぜぃ」

御坂「それじゃあっ……!!」

あまりにも平然と口にするものだから、思わず腹が立ってしまった。
そこで土御門はようやく顔をこちらに向け、ばつが悪そうな笑みを浮べて。

土御門「まあ落ち着け。彼女は生きてるだろ。自殺なんかしてないからな」

御坂「そ、そうだけど……でも……」

土御門「実は一つ、お前が知らないことがあってな」

御坂「なによ?」

土御門「あいつが話した最期の相手は、お前じゃない」



263:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:37:19.40 ID:6e3c2nPro

御坂「はぁ?」

すぐには理解できない言葉だった。
あの少年を看取ったのは己だ。
彼は目の前でこの世から去っていったのだ。

土御門「ずっと何か言ってなかったか?最期まで」

御坂「確かに喋ってたけど……」

朦朧とした様子でうわ言を口にしていたが、
あれも一番近くで聞いていたのは己だ。


―――そう思っていたのだが、実際は違ったようだった。


土御門「それな、魔術による通信だったらしい」


御坂「……っ!」


土御門「相手はもちろん彼女だ」


御坂「ほ、本当なの?!」

土御門「本人に聞いた。確かにあいつからだったらしい」



264:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:38:18.83 ID:6e3c2nPro

こちらの頼みを拒否して自分は会いに行く、
そんな土御門にまた苛立ちを覚えたも、
責任感から来る好奇心の方が勝ってしまった。

御坂「な、なんて言ったの?」

謝罪の言葉は聞き取れたが、
他には何を言っていたのだろうか。

だがこの問いは無粋だった。


土御門「さあな。聞かなかった。彼女は後を追わなかったしな」


御坂「……」

その通りである。
聞く必要は無い。

彼女へと向けられた、彼女だけへの言霊だ。
彼女が生きている以上、わざわざ部外者が穿りだすべきではない。


土御門「だから大丈夫だと言ったろ。それに急ぐ必要もない、
     むしろ、ある程度現実を受け入れるために時間が必要だった」



265:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:39:54.49 ID:6e3c2nPro

土御門「ただし、それでも一応は注意していてくれ」

御坂「……」

土御門「その形見の品を見て、衝動的にやっちまうかもしれないからな」

御坂「……」

注意しろといわれても、どうしろというのか。
そのそぶりを見せたら電撃で痺れさせて留めろとでもいうのか。

ただ、言われなくても反射的にそうしそうだ。


とその時。
土御門が足を止め、ふと訝しげな表情を浮べた。

土御門「形見……」

自分が口にした言葉に違和感でも覚えたのだろうか。
そしてこちらに向くと、御坂が肩からさげていたバッグを指差して。

土御門「例の品を見せてくれ」

そのようにして広げられたバッグの中を覗き込んだ彼は、
例の預かり物を見ては呆れ笑い混じりにこう続けた。


土御門「ははっ…………これは、原典と呼ばれる代物なんだが、形見の品では『ない』」



266:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:41:31.61 ID:6e3c2nPro

御坂「え?」

土御門「気になってたんだ。魔術師でもないお前がなぜ平気で原典を持つことができて、
     原典もおとなしくしてるのかが」

眉を顰める彼女をよそに、
土御門は一人納得したように言葉を重ねていく。

土御門「原典の活動を封じる術式でも、とも思ってたがそんな術式なんかかけられてない」

御坂「ちょっと、つまりどういうことなのそれ?」

ようやく意識をこちらに向けた彼は、
ニヤつきながらこう問い返してきた。

土御門「原典、魔導書って何か知ってるか?」

御坂「……何なの?」

土御門「手っ取り早く言えば、強大な魔術師が力と魂の一部を移したものだ」

御坂「……それで?」


土御門「魔導書は思念を持っている。魔具のようにな」


御坂「……っ!!」

薄々、彼の言わんとしていることがわかってきた。
土御門は小さく頷きながらこう続けた。


土御門「あいつは、死に際にこれの内容をそっくり書き換えちまったみたいだ」



267:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:43:05.46 ID:6e3c2nPro

御坂「……!!」

土御門は明言をさけて匂わせただけだが、
だが彼が告げようとしていることは明確だった。

エツァリから移された意志がこの原典に宿っている、ということだ。


土御門「これで、お前に一切害を及ぼさなかったことも頷ける。あいつはお前に惚れていたからな」


御坂「そう……なんだ……」

そして当たり前のように告げられる彼の想い。
どう言葉を返して良いかわからなかった。

そうした空気を敏感に悟ったのか、
それとも余計なことを口走ってしまったと思ったのか、
土御門は「恐らく、」と話の筋をさっと変えた。

土御門「最期に彼女に言ったのも、恐らくこのことだろう」


御坂「……」

そうなのだろう。
この世にまだ己の欠片が残っていると告げられ、
彼女も死を思いとどまったのかもしれない。



268:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:46:07.75 ID:6e3c2nPro

土御門「おっと、そろそろ時間だぜよ」

とそうしていたところ。
彼はいかにも取り繕ったような笑みを浮べると、
これから仕事があると告げてきた。

土御門「まったく大忙しだにゃー。いくつも役職を兼任するハメになってな」


御坂「えっと、統括委員会だっけ―――」

能力者世代による行政組織が新しく設置されるということは聞いていた。
黒子たちが所属する『女帝部隊』(命名の由来はもちろん、率いていた麦野沈利だ)も、
近々参加に組み込まれるとのことだと。



『女帝部隊』は現在、結標の指揮下で原石保護作戦に参加中であり、
黒子も文字通り世界中を『飛び』まわっているところだ。

この女帝部隊は、戦闘終結をもって全メンバーが任務から解かれ、
契約通りの報酬を与えられて一度解散したのだが、
事後処理や将来的な必要性もあって解散と同時に再編成、元メンバーのうち七割がこれ応えて部隊に戻った。

そしてこの再編成時に、誰が言い出したのかはわからないが、
メンバー達の要望により『女帝部隊』と暫定的ながらも名付けられたのだ。


ちなみに再編成の際、15歳以下は最大で二ヶ月のみの任期と決められ、
その後は復学するようにも条件付けられた。
人道的観点からの現時点における最大限の措置であろう。

これによって黒子も、遅くとも二ヶ月後には風紀委員・常盤台中学へと戻る予定である。



269:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:48:00.17 ID:6e3c2nPro

また統括委員会の傘下部門に、
芳川の推薦で初春がスカウトされたとも御坂は聞いていた。
主にミサカネットワークの管理をする部門とのことだ。
もちろん、活動は彼女の学校生活に不便をきたさぬ範囲という条件付でだ。

御坂「大変そうねー」

土御門「そうそう、他にもいくつも兼任しているのに、
     統括委員会の委員もやらなくちゃなんだぜぃ。責任重大だにゃー」

御坂「何かできることがあれば、遠慮なく言って。私も力になるから」

土御門「ああ。そのときは頼むぜい」

そのようにして軽く声を交わし、
病室の番号を確認しては簡単に別れの挨拶。

そして彼が踵を返して、去りかけたとき。


土御門「っと、そうだ、一つ小耳に挟んだんだが聞いて良いか?」


何かを思い出したのか、
素早く振り向いては早口で問うて来た。


御坂「なに?」



土御門「お前、弟子入りしたんだって?――――――――――――レディに」



―――



270:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:49:46.20 ID:6e3c2nPro

―――


レディ「…………は……は……は…………ぁ……」

神裂「くしゃみ、出ないと辛いんですよね」

五和「きっと誰かがレディさんのこと話してるんですよ」

レディ「……はぁ……」

フォルトゥナ、我刀院と呼ばれる施設の一室にてため息が一つ。

書類が積み上げられている机の前で、レディはぼうっと天井を眺めていた。


この我刀院は、教皇サンクトゥスの争乱によって当時の教団本部が破壊されて以降、
新生した騎士団の本部として使用されている建物だ。

そして現在は『暫定実施機構』の本部も置かれており、
幹部に任命されたレディにもこうして一室が与えられ、
彼女はこの大仕事に勤しんでいた。


レディ「……はぁ~ぁ……」

とは言うものの、今は机に頬杖をつき憂鬱な息をこぼすばかりであったが。

神裂「ため息ばかりしていますと運が逃げていきますよ」

レディ「……常に魔ととなり合うデビルハンターにゃ運もクソもないわよ」

仕事をサボっているわけではない。
とある用でやってきた神裂と五和に少しばかり書類の整理を手伝ってもらい、
己はちょっとした休憩をしているだけである。

朝からぶっ続けで作業し、今や深夜を回っているのだ。
ここで少し他人に甘えて休んでも罰は当たらないはずだ。



271:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:52:04.24 ID:6e3c2nPro

半人半魔になり肉体の質が大きく変じたとはいえ、
中身は変わっていないために精神的倦怠感はそのまま。
生活の変化に覚えるストレスも変わりない。


レディはフリーの一匹狼だ。

依頼は好きなときに好きな方法でこなすという、
こういったお役所仕事とは対極のやり方で、これまでずっと仕事をしてきたのだ。

そんな身なのに、こうしていきなり堅苦しい世界に放り込まれるとは。
しかも圧し掛かる責任もとんでもないものだ。


さらにその上、たいした金にもならない。


レディ「……あー。これじゃまた完全な悪魔になっちゃいそ」

冗談めかして言うも、あながち嘘でもないかもしれない。
父から『悪魔よりも悪魔らしい』気質を受け継いでしまっているのだから。


とはいえ性に合わないから、
金にならないからと断るような薄情者には、彼女はなりきれなかった。

母から受け継いだ優しさ、正義の意識がそうさせてはくれない。
人々が己の力を求めているのならば、
それに応えずにはいられないのである。

レディ「はぁ……」



272:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:54:37.86 ID:6e3c2nPro

神裂や五和のような生真面目な者でも、
この量を前にしては少し手伝っただけで辟易とした気分を覚えるようだ。

二人もふぅっと息をつき、手を一度とめた。

五和「すごい量ですね。やっぱり一人でこなせる量じゃないですよ」

その通り。
そのため幹部任命された者には、傘下構成員の人事権が与えられている。
必要な人材を自分で確保して部署を構築しろということだ。

実は神裂が尋ねてきたのもその関係だ。


神裂「これ、どうぞ」

再び書類に向き合う傍ら、ジーンズのポケットから一枚の羊皮紙を取り出す神裂。
レディはぐたりとした姿勢のまま受け取り、無造作に目を通しはじめた。

中に記されていたのは、必要悪の教会に所属する魔術師の名が20ほど。
レディのもとへと貸し出すことが許可された優秀な人材たちである。


レディ「……」

6割方希望通り、といったところか。

一番強く希望していた、神裂、ステイル、シェリーのうち一人の貸し出しについては、残念ながら却下されていた。
これは仕方のないことだろう。
無理な話であるのは当初からわかっていた、ダメもとの希望である。
イギリス魔術界も一連のことによる損失で人材不足が著しいのだ。

それは、戦いが終ってすぐの突貫工事的な人事にも浮き彫りになっていた。

シェリーはあののちに即座に正式に最大主教に任命され(一度反逆罪に問われた者としては前代未聞)、
一時はローラとともに除籍されていたステイルも、
キャーリサの恩赦により無罪とされ元の地位へと復帰(女王殺害未遂にかかわった魔術師としてはこれまた前代未聞)

神裂とともに必要悪の教会の実働指揮を執り、イギリスの建て直しに奔走している最中である。



273:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:56:10.01 ID:6e3c2nPro

そうした中で時間を割いて直接訪れた神裂には、
当然そうするに足る理由があった。

まず一つ目、神裂たちが自ら出向かなければ話さないような、
友人に関するプライベートな話だ。

神裂「トリッシュさん、どうですか?」

レディ「ああ……」


片腕と愛銃に加え、長年の相棒をもなくしたトリッシュのことは、
あれ以来誰もが心配していた。


レディ「まあ、元気とはいえないけど、皆が思ってるほど気落ちしてるわけでもないわよ」

これについては事実だ。
事務所デビルメイクライに戻り静かに休んでいるが、
だからといって四六時中寝込んでいるわけではない。

読書したり、たまに事務所内を掃除したり、
唯一残った魔具であるケルベロスと会話していたりなど、そこそこ活動はしている。

今朝方に電話かけた時もいつも通り皮肉や毒をさらりと吐いたし、
こちらの冗談には笑っていたくらいだ。



274:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 01:59:16.68 ID:6e3c2nPro

だがそれでも、皆が彼女のことを心配するのは仕方がなかった。
以前の彼女を知っていた者はみな、戦いのあとにトリッシュに会って愕然とした。

これまでの気の強さは陰を潜め、
線が細くなったと言うのか、いかにも病弱そうで儚げな空気を纏っている姿を目にして。

力が弱まっているという理由だけでは片付けられない。
むしろ傷が癒えて徐々に力を取り戻しているというのに、
以前よりもそんな色が濃くなっているのだ。

また大きく変わったところはもう一つあった。
貪欲な好奇心を見せなくなった点だ。

これまでだったら片っ端からどんどん首を突っ込んできたのだが、
今は「何かできることがあれば」とあくまで受身姿勢。

面白そうな情報を提示しても、
関心ないとはいかないまでも、一歩引いたような視点で受け答えするだけ。
彼女の方からは動こうとはしなくなってしまったのだ。


レディ「大丈夫。心配はないわよ」

だが心配はない、レディは本心からそう思っていた。
トリッシュは皆が思っているように、喪失感に打ちひしがれて気力を失ったわけではないのだ。

彼女は今、意識を内に向けて様々なことを考えているだけだ。
とある己の変化への適応に、時間がかかっているだけである。

そう、それはそれは戸惑り、
変化の収拾に手を焼いていることだろう。


トリッシュは悪魔のまま―――心が真の人間になってしまったのだから。



275:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:01:19.00 ID:6e3c2nPro

レディが言うのならばとしたのだろう、
神裂はそれ以上聞いては来ず、別の話題へとさりげなく変えた。

神裂「大変ですね。こんな大仕事のほかにも、弟子の面倒も見なくちゃならないとは」

レディ「いい小間使いが増えることにもなるし、面倒ばかりでもないわよ」


レディはこのたび、様々な縁もあって初めて弟子をとることになった。

それも『二人』。


一方は、魔術のセンスはからっきしながらも強大な能力を有している、天才肌の子だ。
一方は、中々の魔術のセンスを有した、根っから生真面目・正直者である秀才気質の子だ。

性質は異なれど、どちらも総合的な素質については申し分なく、
デビルハンターの卵としてはひとまず合格だ。

こちらの教え方がうまくいけば、そして二人が過酷な修練に根をあげなければ、
いずれはきわめて優秀なデビルハンターとなるだろう。


神裂「―――では、私はそろそろ」

そそくさと立ち上がり、退席の時を告げる神裂。

神裂「では、ご迷惑をおかけしますが、どうかよろしくお願いします」

彼女は『とあること』についてもう一度丁寧に礼儀正しく礼をすると、そそくさと退室していった。
実はこのことこそ、神裂が直接訪れた二番目の理由だ。

『あるもの』を託しにきたのである。


レディ「それじゃよろしくね」

五和「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

五和は残り、レディの手伝いを続けた。
当然のことである。


なぜなら彼女も、レディの弟子の一人なのだから。


―――



276:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:02:08.72 ID:6e3c2nPro

―――

魔界、煉獄にて今、
とある歴史的建造物の解体が行われようとしていた。


ベヨネッタ「力の状態は問題なし。術式は?」

禁書「大丈夫、安定してるんだよ」

ジャンヌ「それじゃあいいな。よし、下がろう」

影の海に並び立つ三人の魔女。

彼女達の眼前に、その葬られるべき過去の象徴―――神儀の間が、
壮麗なる最後の姿を見せていた。


解体準備には中々の労力を要した。
なにせモノがモノだ、槌でさっさと叩き壊すわけにはいかない。

一般的な人間社会の作業に例えるならば、
市街地でのビル爆破解体に似ているだろう。
構造を正確に分析し、効率よく崩壊させられるように爆薬―――力を流し込み、
それらを完璧なタイミングで炸裂させるべく導火線―――術式を敷き詰めていくのだ。


そのような慎重な作業がようやく終わりを向かえ、
ついに爆破解体する時が訪れようとしていた。



277:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:03:08.60 ID:6e3c2nPro

禁書「…………」

300mほど離れ、
山のように聳え立っている神儀の間へと向き合う魔女達。

この聖域の破壊は、人間界にとっては一大イベントだ。
それなのに観衆が三人と言うのは実にもったいない。

当初はアンブラ一族であるローラも同席する予定であったのだが、
彼女は暫定実施機構の幹部に任命され、
今はフォルトゥナの我刀院にて缶詰状態となっている。

インデックスは他にも、
この聖域に上条を連れて来ようとも思っていたが、
彼もまたネロによって傘下要員に指名され、
現在はフォルトゥナにて様々な打ち合わせに追われているところだ。

その他にも招待の予定はあったのだが、
みなそれぞれの後始末に追われて暇が出来ず、
結局この三人のみとなってしまったのである。



ジャンヌ「始めるぞ」

そうして特にもったいぶりもせず、淡々と告げられた声。

直後、神儀の間の解体が始まった。



278:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:04:32.10 ID:6e3c2nPro

強烈な地響きを伴い、
神儀の間の下から湧きあがってくる無数の黒い手。

ベヨネッタが『最終処分場』とも呼ぶ、
魔女の怨念が作りだす渦である。
その釜の底から伸びてくる黒い手たちが、柱や壁に巻きつき、
締め上げ、砕いては引きずり込んでいく。

悲鳴にも聞えそうな轟音と共に、またたくま間に崩れ落ちていく聖域。


禁書「あの、ジャンヌ様、セレッサ様。そろそろ、例の件の返事を聞きたいんだよ。急かされてるから」

そんな光景を眺めながら、
インデックスは思い出したように両側の二人に告げた。


『例の件』とは、天界からの協力依頼である。

降伏を拒絶したジュベレウス派残党がプルガトリオの果てに逃れ、
しぶとく再起を目論んでいるとのことだ。

逃れた数も結構なものであり、
将来的には人間界にも脅威が及ぶ可能性も捨てきれないために、
諸派閥の長が彼らを討伐すると決定したのである。

そこで対ジュベレウス派の戦闘についてはもちろん、
プルガトリオを誰よりも熟知しているアンブラの魔女に、
協力の話がもちかけられたというわけだ。



279:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:07:05.28 ID:6e3c2nPro

ジャンヌ「どうする?私はこの話を受けるぞ。どうせ暇だしな」

インデックスを挟み声を飛ばしたジャンヌ。
ベヨネッタは軽く肩を竦め、呆れたように小さく笑い。

ベヨネッタ「それ、実際のトコロはさ、天界の内輪もめでしょ?今になって私たちをアテにするなんてみっともない」

ジャンヌ「それじゃあ断るのか?」

ベヨネッタ「それはまた別の話よ。ん~、ま~、暇つぶしにはいいかもしれないわね。受けるわ」

ジャンヌ「それがいいさ。あんまり暇を持て余すと、お前は魔界の内戦に参加しかねないからな」

今回の戦いで一時休戦となった魔界の内戦も、一日と待たずに再開されていた。

ただし、魔界という世界を知っている者にとっては特に驚くことでもない。
戦いに明け暮れることこそ魔界における日常であり、
休戦なんてものが続いた方がむしろ異常だからだ。

それに内戦によって魔界の意識が外に向かわないことも、
外界の者達にとっては非常に好都合でもある。
ゆえに誰しもが、魔界の内戦については歓迎するものだ。


ベヨネッタ「あら、それも面白そうね。討伐が終ったらそうしようかしら」

ジャンヌの返しに乗ってニヤリと笑うベヨネッタ。
冗談のように聞えはするも、彼女の場合は本当にやりかねないものである。

禁書「……」

インデックスは一瞬、このベヨネッタがいつか魔界の頂点に立つのではないかと思ってしまった。
そしてそれを柄にもなく少しばかり面白そうだとも。

ジャンヌ「止してくれ。それじゃあ、私はいつまで経ってもお前のお守をしなきゃならないじゃないか」

ベヨネッタ「良いじゃないの。統一玉座を手に入れたあかつきには、私の右腕にしてあげる」

ジャンヌ「そしていつか裏切ってやるよ」

ベヨネッタ「わ~お楽しみにしてるわよ」



280:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:09:54.99 ID:6e3c2nPro

禁書「それじゃあ、二人とも受けるってことで良いんだよね?」

放っておくといつまでも二人の掛け合いが続きそうだったため、
インデックスはそこで割り込んで確認した。

だが軽い返事とともに返って来たのは、
今度は逆にインデックスへの問いだった。

ジャンヌ「お前はこのあとどうするんだ?」

その時。
彼女が答える前に、
すぐさまベヨネッタが卑猥な動作を交えてこう言った。

ベヨネッタ「そんなの決ーぃまってるじゃないの。ダーリンの仕事の手伝いしながら、ホットな日々を過ごすのよ。
       こう、おヤスミの日は真昼間からダラダラとちちくりあって……ああ~ん」

禁書「えっ……!あっ……そ、そそんなことは……!」

ベヨネッタ「ええっ?何っ?過ごさないの?恋人同士なのにそういうことしないの?」

大きく見開いた驚愕の表情で振り向くベヨネッタ。
あまりにも大げさすぎて、一周回って本気で驚いているのかと思ってしまいそうだ。

禁書「い、いや、そういうことじゃなくて……!!」

この猛攻に思わず、彼女はジャンヌの方を見て助けを求めてしまった。
清く正しいかの魔女の長ならば、
ふざけたベヨネッタに対抗してくれるのではないかと。

ジャンヌ「私はいち教師としては、未成年同士のそういった行為については比較的寛容な方だ。
      だが最近のポルノに見られがちな、特に、と・く・にセレッサが好むような、
      快楽を求めすぎた倒錯的なSEXについては良くは思わない。
      生殖活動を抜きにすれば、人間のSEXとは愛情と絆を確かめ合うものであるべきだ」

禁書「なんっ…………!」

しかし。
確かに清く正しいも、魔女は魔女だ。
喋っている内容については真っ当でも、その内容を選んだ思考はどうしようもなく魔女だ。

ジャンヌ「それと今の時代じゃ、その歳頃で子供を作るのは早すぎるから、そのあたりはしっかり計画するようにな。
      避妊の術式も頭に入ってるだろ?ちゃんと使うんだぞ?な?使い方もわかるよな?ん?」

インデックスの希望もむなしく、僅かにニヤついているジャンヌから返って来たのは、
真面目の皮を被ったからかいの言葉だった。

禁書「……はぁ」

インデックスは学んだ。
この魔女二人の掛け合いに下手に割り込んではならないと。
好きなだけ言わせておくのが一番である。



281:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:12:51.05 ID:6e3c2nPro

結局ここでは言えなかったが、
インデックスは今後のこともそれなりに考えていた。


まずは上条の手伝いをすると決めていた。

暫定実施機構からの仕事で、界の『ひずみ』の修復のほか、
ヴァチカンやエルサレムなどの天の力が濃い地を訪れ、
そこに定着している天の力を検分する作業もある。

取り払っても問題のないものは除去し、人々の生活に根付いているものは、
ジュベレウス派の手が加わっていない新鮮なものに入れ替えるのだ。

そういった際の分析に、インデックスが大いに役立つことになる。

他にも細かい仕事がいくつもあり、
数年の間は上条とともに世界中を飛び回ることになるだろう。

そのあとについてはまだ細かく決めてはいないが、
どこかの片田舎に住居を構え、静かに暮らそうかと彼と話している。

もちろん世捨て人になるつもりではない。
助力を求められたらいつでも力になるし、
そうでなくとも己たちの力が世に必要と見れば、いつでも立ち上がるつもりだ。


またジャンヌが言ったような事柄についてはその後の話、そう、後の話である。


禁書「……」

あれやこれや言い続けている二人の魔女に、
ぼんやりと将来のことを考えていた小さな魔女。

彼女達がそうしている間に、人間界の歴史的瞬間はもう終ってしまっていた。

神儀の間は完全に魔女の怨念に飲み込まれ、
完全に消え去っていた。



282:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:13:43.83 ID:6e3c2nPro

ベヨネッタ「あらら終っちゃった。あっけないわねー」

神儀の間があった空間にはもう何もなかった。
ここに聖域があった痕跡も一つもない。

ジャンヌ「……これでひとまず、アンブラの魔女としての仕事は終ったな」

背伸びをするベヨネッタに、
そう一仕事終えたとばかりとジャンヌが息をつくと、
インデックスがぼそりと言った。

禁書「お墓、作らなきゃなんだよ。アイゼン様の」

ベヨネッタ「……ああ……そうね」

ジャンヌ「……そうだな」

あと一つ、アンブラの子達としての仕事が残っていた。

彼女達はみな、この八日間それぞれの胸の内でかの魔女王を弔ってきたも、
やはり存在が存在である。
正式に弔う必要があるものだ。

ベヨネッタ「ちゃっちゃと済ましましょ」

ジャンヌ「派手好きなアイゼン様には悪いが、仕方ないな。簡単な式で我慢してもらおう」


「うむ。質素なものでよいぞ」


ジャンヌ「そうですか。わかりま…………は?」

禁書「…………え?」

ベヨネッタ「……はぁぁ?」


さりげなく混じっていた四番目の声。
それに皆が弾けたように振り返ると、そこには当たり前のように―――魔女王アイゼンが立っていた。


アイゼン「ん?」



283:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:15:45.98 ID:6e3c2nPro

死したはずの魔女王の姿を目にし、
言葉を失い立ち尽くす三人の魔女。

アイゼン「あー、なぜ我がここにいるかって?ぬふふ」

そんな彼女達へ向け、アイゼンは特にもったいぶらずに飄々と言った。

アイゼン「そなたたち、死ぬときは自害か衰弱死にしろ。他者に殺められると、
      我のように怨念の亡霊の仲間入りするぞ」

それでも呆然としている彼女達をよそに、
魔女王はさらにいつも通りの調子で続けた。

アイゼン「ああそうだ、我はこの煉獄から動けぬから、ちょくちょく顔を見せに来てくれ。
      その時は人間界のワインを土産にな。銘柄は任せるが安物は止せ。
      魔女王に相応しき品格のを頼むぞ」

ここでようやくベヨネッタが淡々と口を開き、
そして他二人も続いた。

ベヨネッタ「さっさと葬式しましょ。このクソババアを成仏させないと」

禁書「うん。死者には静かな眠りが必要なんだよ」

ジャンヌ「ああ。いつまでもベラベラされるなんてたまったもんじゃない」

すると勝ち誇った笑い声をあげるアイゼン。


アイゼン「うふっふふふ!!残念だったな!!他者に殺められた魔女は成仏せんのだ!!」


三人の魔女は、互いに見合わせてため息をつくしかなかった。
これまでの悲しみや真摯な弔いの心が実は必要なかったなんて、もはや脱力するしかない。
一杯食わされたと笑う余裕も、再会に喜び合う気力も吹っ飛んでしまったのだ。


そんな三人を前にアイゼンは踊りだした。
さらにうっとうしく小馬鹿にするように。


アイゼン「アンブラは不滅!!我も不滅!!さあ、この魔女王を称えるのだ!!さあ!!」


―――



284:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:17:36.80 ID:6e3c2nPro

―――

フォルトゥナ、我刀院のとあるベランダにて。

上条「……」

上条当麻は手すりに上半身を投げ出しては寄りかかり、
疲労溜まる体を夜風で冷ましていた。

フォルトゥナの街並みは日中においてもそれはそれは美しいが、
こうしたランプに照らされている夜景もまた、情緒溢れて素晴らしいものだ。
むしろ夜の方が、アリウス襲撃による跡が見えなくなるために眺めは良いかもしれない。


上条「ふう……」

静かな一時、今はこうした時間が必要だった。

体力的には、悪魔の力が目覚めて以来ちょっとやそっとのことでは根をあげなくなった。
七分速で走り続けるなら、一週間は息を切らすことなくできる。

しかし、一方で中身は人間自体から変わっていないために、
精神的疲労の感度も当時とほとんど変わらない。

それゆえ、激務の嵐に上条はあっとういう間に根をあげてしまった。



285:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:22:29.57 ID:6e3c2nPro

もともと上条当麻の頭は、
平凡な水準の高校授業でさえ鈍って眠くなってしまう程度なのだ。

ミカエル時代からそうだった。
あの頃から頭よりも体が先に動くタイプだ。

戦闘中などの緊張に満ちた場での瞬間的な洞察や閃きには自信あるも、
安楽椅子に座れるような平時において、
それも長時間の頭脳労働にはどうしようもなく不向きなのである。

上に立ってあれこれ決めて指示するよりも、
現場で形ある問題と向き合い、泥まみれになってこなすほうが性に合っている。

そのこともあってだろう、
「だからお前を幹部に選びはしなかった」、とネロに言われた。

また数日前に会ったヴェントからもこう言われた。

「ミカエルであるお前のために右方の座を用意してるが、あくまで名誉職だ。
 部外者だからということで権利が無いわけじゃない。
 お前みたいな性格の奴には権限を与えられないのよ」
 


もちろん彼女は、こちらが断るようにそんな皮肉めいたことを言ったわけではない。
むしろ神の右席に名を連ねるよう熱心に説得してきて、
結局上条は根負けして承諾してしまった。

無論そこまでイヤだったわけではない。
『ミカエル』本人が所属するということが、ローマ正教にとってとても大きな意味を持つ、
ということは上条にもわかる。
また、学園都市とローマ正教の関係が新しい時代に入ったことを示す象徴にもなることも。

こういった各組織間の関係強化は他にも多数行われた。

アックアが英騎士として正式に認められ、形式的ながらも騎士団長補佐官の地位が与えられ、
イギリス清教とローマ正教の関係強化に貢献、

他にはレディが、ロシア成教の内部組織『殲滅白書』に名誉大司教として名を連ねたりもしている。
(彼女の母方の遠縁数名が、殲滅白書の創設にかかわっていたと判明したことからこの話が提案された。
 実務が無く、それでも給料が出ると知るとレディは快く承諾した)



ちなみに神の右席の左方の座は、ラファエルの死により永久に空席と一時決定されたが、
バランスを整えるためにも天界側が守護者としてもう一人加えるよう提案して来、
今はカマエルを左方の守護者にするべく話が進んでいる。



286:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:25:59.83 ID:6e3c2nPro

上条「ふーっ……」

思考がぼうっとしてしまう。
夜風は心地良いも、
オーバーヒートしてしまった頭を冷やすにはまだまだ足りない。

上条から気力を奪っていたのは、
単に激務からのものだけではなかった。

正午ごろ、今回の戦いによる人的被害の概算が非公式ながらも関係者に伝えられたのだが、
そのあまりの被害規模に今日はずっと憂鬱な気分だった。

能力や魔術、さらに天界の協力もうけて人間界の人類の数を計測したところ、
デュマーリ島の異変からのたった二日間で約2400万も減少していたらしい。

少しずつ世界の状況が落ち着いていくにつれて判明してくる各地の戦災状況からも、
相当の数が犠牲になったと覚悟はしていた。

だがやはり、実際に答えを聞いてしまうと衝撃を受けざるをえないものだ。

死者総数においては第二次世界大戦よりは少ないも、
それでも甚大な被害であることには変わりない。



287:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:27:28.48 ID:6e3c2nPro

上条「……」

気落ちして嘆いても、過去は変わるわけでもない。
死者がみな帰ってくるわけでもない。

だがこうして思いを馳せて受け入れることは、生きる者達にとっては必要な時間だ。
未来ある者達にとっては、
先に進むためにも踏むべき重要な手順なのである。

だから上条は存分に気を落とし、嘆き、憂鬱な気分をこうして味わった。
消え去った存在達の重みをしっかりと確かめた。

名も知らない人々のことも。
親しき者たちのことも。



そして『二人』の『英雄』のことも。



上条「……」

彼らの消失はこの世界にとって、
そして上条個人にとっても大きな喪失だった。
心の中でも特に重要な部分がぽっかりと抜け落ちてしまった気分だ。

彼らを知り、彼らを信頼していた者達にとってそれは共通だったはずだ。
それだけじゃない、人間界どころか魔界、
天界にも非常に大きな波紋を起こすはずだった。


だがそうはならなかった。
彼らの消滅に起因する混乱は、全くといって良いくらいに起こらなかった。



288:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:29:03.22 ID:6e3c2nPro

トリッシュの様子が変わってしまったくらいか。

他は何一つ、少なくとも上条が知る範囲内で、彼らの消失が原因の変化は見られなかった。
かつての相棒を除き誰もが、
彼らの喪失に膝をつくなんてことはしなかった。

もちろん無反応と言うわけではなく相応の悲しみを表したが、『それだけ』だった。
消え去った他の大勢の者達と同じように、平等に思いを馳せただけである。

外界も同じだった。
魔界が歓喜に湧き立つこともなければ、天界の善き神々が嘆きに沈むこともない。
最後まであの兄弟を恨み続けていたベオウルフでさえ、
特に何も言わずに魔界に去っていっただけ。


上条「……」

そんな彼らの関心の少なさは、ダンテから手ほどきを受けた者としては、
憤りを覚えてもしかたがないものだ。

だが上条はそんなことは思わなかった。

むしろ『認めた』。


『これで良いのだ』、と。


あの二人は、もうこの世界には『必要ない』ということだ、と。


それが彼らの望み、目的だった。
『スパーダ』という概念が中心に鎮座し、この世のすべてを負の側へと沈み込ませていく、
そんな状況を変えることこそ彼らの戦う理由の一つだった。

だから、これで良い。
彼らが自らの手で欲しもぎ取った勝利なのだから。


だがそうと頭ではわかっていても。


上条「………………」


上条当麻は一人の友として、どうしようもなく寂しかった。



289:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:30:22.67 ID:6e3c2nPro

ネロ「ここにいたか」

その時、後方の戸口からのそりとネロが姿を現した。

上条「よう」

彼も精神的疲労がたまっているのだろう。
実にかったるそうな足取りで横にならび、同じように手すりに寄りかかった。

ネロの疲労も当然だろう、こちらとは比べ物にならないくらいの量の作業の他にも、
さまざまな責任が圧し掛かっているのだ。

それに上条は知っていた。
ネロは決して表情には出さなかったも、
内ではトリッシュと同じくらいに―――家族の喪失に揺さぶられていたことを。


彼は一度、疲れ切った息を吐くと、
コートからくしゃくしゃになった書類を取り出した。

ネロ「オッレルスからだ。目を通しておいて欲しいとさ」

オッレルス。
きわめて優秀な魔術師であり、ネロが幹部に指名した一人だ。

ローラ曰く、魔女を抜きにすれば、
彼は現在の人間界において五本の指に入るほどの魔術師だということだ。
(ローラ自身が、総合的には自らよりも優秀だと認めたほど)

彼はアリウスの魔術的部分の後始末や、
アレイスターが学園都市中に張り巡らせた術式の解析除去にもあたっている。

また助手として聖人である『妻』も連れて来ており、
彼女もかなり優秀な魔術師だということだ。



290:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:32:52.39 ID:6e3c2nPro

ネロ「それとローラが、お前のことすげえ罵ってたぜ」

上条「あー……」

ローラ=スチュアート。
彼女もまたこの機構の幹部に名を連ねている。


使い魔だったステイルはもとの地位に復帰できたも、
やはり女王殺害未遂の実行犯たる彼女はそうはいかなかった。

ローラの真の事情を知る者達はもちろん復権を考えはしたも、やはり不可能だったのだ。

恩赦を与えてしまうと、英国の魔術組織全体の反発を買いかねず、
最悪全体の忠誠を揺るがす問題にもなりかねないために、

結局彼女の名誉回復は一切なされず、
大逆者としての烙印が捺され続けられることになった。


そこで、彼女の才をこんな時期に放って置くなんてもったいないと、
この機構に幹部入りする話が回ってきたのである。

ただしネロが指名したわけではない。
それよりも先に上条が推薦した。



291:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:36:03.91 ID:6e3c2nPro

彼女は知識、知恵、経験、実力、どれをとっても申し分はない。
それに何よりも、ネロにはない巧みな政治手腕がある。
あらゆる国・組織の板ばさみになるであろうこの機構にはうってつけの人材だ。

そう考えての推薦、ネロは喜んでその案を受け入れたが、
当然本人は「面倒はイヤ」とかなり反発した。

ただしその強情も、可愛い可愛い『妹』の説得でコロりと陥落してしまったが。

上条「……ああ……」

そうした経緯もあって、
妹の恋人への怒りは凄まじいものになっているわけだ。
(妹を『奪った』ことがその怒りをさらに滾らせている)

ネロ「さっきもお前のオフィスに乗り込みに行ったぞ」

上条「……はは、やべえな」

インデックスに通信して居場所を聞くであろうが、
彼女がはぐらかしてくれることを祈るばかりである。

ただしこれについては望みは薄い。
最近彼女は、こちらがローラに罵られているのを面白がっている節があるからだ。
どうやら彼女からは仲が良さそうに見えているらしい。
上条はむしろ犬猿の仲だと思っているが。

もっとも彼女が『運よく』はぐらかしてくれても、結局はすぐに見つかるだろう。
魔女の追跡術からはそう簡単に逃れることはできないからだ。



292:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:38:55.84 ID:6e3c2nPro

こちらに残されている時間が少ないと理解してくれたようだ。
ネロはやや早めの口調で用向きを続けてくれた。

ネロ「あと土御門から伝言だ。統括理事会が、
   アレイスター=クロウリーとその妻の名を戦災者慰霊碑に加えることを許可した。本名でな」

上条「それは良かった」

彼の遺体を引き取り荼毘に付したカエル顔の医者が、
そのように統括理事会に願い出ていたのだ。

ネロ「親船が、『生前の行いに目を瞑ることはできない、しかし死者自体は平等に扱うべき』、だとさ」

当初、理事会は顔色を曇らせていということだが、
最終的には善意が勝ったのだろう。
こうした慈悲深き判断が下されるのは喜ばしいことだ。

彼はしっかり弔われるべきだと上条も考えていた。

『悪行』の限りを尽くした『アレイスター=クロウリー』ではなく、
一人の女性を愛した『エドワード=アレグザンダー=クロウリー』としてだ。



293:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:39:45.36 ID:6e3c2nPro

上条「……」

どうしたのだろうか。
ローラはすぐには訪れなかった。

そのためにせっかくネロが無駄なく話を済ませてくれたのに、
結果として沈黙の時間が生まれてしまった。

ネロ「……」

ただし気まずいとは思わなかった。
もはや二人とも、そんなことに気を煩わすような『疎遠』な仲ではない。

そしてもう一つ、同じことを考えていたということもある。
ネロもやはり同じだったようだ。
ふとした空白時間が生じると、
休まなければならないのにあれやこれや考えてしまうのだ。


上条「……なあ、どこにいっちまったんだろうな」

仄かな夜景を望みながら、
上条はぼそりと呟いた。

ネロ「…………さあな」

同じ調子で答えるネロ。
このような答えが返ってくることはわかっていた。

そもそもこの問い自体、無意味なものだった。
『彼ら』がどこに行ってしまったのかはわかっていたのだから。



294:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:40:38.70 ID:6e3c2nPro

この件についてはベヨネッタとも少し話したが、
上条もネロも、最終的には彼女と同じ見解に達した。

彼らはあらゆる概念の外にある虚無の果てに放り出されたのだ。

もしも『生きていた』―――存在を存続させたことが出来たとしても、
そこから抜け出す方法はないのだと。


―――いや、一つだけ方法はある。


と、ベヨネッタは冗談っぽく言っていた。
これはさすがに馬鹿馬鹿しい、さすがに無理があるといった風に。


虚無においても自由に行き来できる存在はたった一つだけいた、
創世主ジュベレウスである、と。

これを聞いた瞬間、彼女が言わんとしていることにもすぐに気づき、
上条とネロも笑い出してしまった。


つまりは、あの二人が―――創世主の座を手に入れていたら帰ってくるかもしれない、ということである。



295:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:44:14.87 ID:6e3c2nPro

これはあまりにも度が過ぎた話だった。
さすがのあの二人でもそんなことはまず考えられない。

ベヨネッタもこう言ったものだ。
ある日突然、私の『下の口』から飛び出してくるほうがまだ可能性がある、と。


上条「……」

しかしその時は笑いとばしていたも、
こうして落ち着いてみると、そんな可能性にも縋ってみたくなるものだ。
(もちろんベヨネッタの『下の口』から飛び出してくる可能性もだ)

だがそうだとしても。
例え帰ってこれるとしても、あの二人がすぐにそうするとは上条にはどうにも思えなかった。


ネロ「『もし』、『もし』だ。あの二人がクタバッてなかったとしても、そして帰ってこれるとしてもだ」


ネロも同じことを意見だったようだ。
彼は夜景を眺めながらこう切り出した。


ネロ「『こういう世界』になった以上――――――すぐに帰ってくることはないだろうな」


上条「……」

そう。
この世界はもう、彼らを欲してはいない。
彼らの居場所はあっても、彼らがいる必要性はない。

それを誰よりも認識しているのはあの二人である。

これは裏を返せば、彼らはこちらに全てを任せてくれているということ。
この世界の未来を託してくれたということだ。

こちらへの絶大な信頼の証である。




夜風に撫でられながら、ネロは子供のようにクスリと笑った。



ネロ「そしてよ、あちこち遊び歩いてるに決まってるさ。きっとな」



―――



296:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 02:45:08.03 ID:6e3c2nPro

今日はここまでです。
次のラストは木曜に。



297:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県):2012/06/05(火) 02:46:28.98 ID:8YV+FWCuo

次がラストかぁ

乙乙



298:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県):2012/06/05(火) 03:02:43.55 ID:gznyR7xwo





307:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/05(火) 16:01:57.56 ID:bhADkv/r0

乙です
完結は嬉しいが寂しいなあ



308:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/06(水) 07:59:34.93 ID:zLrsNnUt0

皆がこれゲーム化しろと声が多いのでファ○通の初報風に書いてみた。
それにしてもPCキャラがとんでもなく多くなりそうだし、ブルーレイディスク1枚で全部収まる気がしない…

『デビルメイクライX(クロス)』
発売日未定 価格未定
スタイリッシュなアクションで全世界で大人気のデビルメイクライの新作がついに登場!
今回は何とベヨネッタととある魔術の禁書目録と奇跡のコラボレーションを実現!
この世紀の組み合わせを見逃すな!
「ストーリー」
かつてダンテが倒した魔帝ムンドゥスが復活しそうだと聞いたダンテは学園都市に向かう。
そこにはネロとかつて死んだはずのバージルも来ていた。
しかし、これは後の大きな物語の序章に過ぎなかった…
人間と悪魔、そして天使が交わるとき物語はうねりだす!
「キャラクター」
今回はデビルメイクライ史上最多のPCキャラが登場する。
皆の好きなキャラでスタイリッシュにキメろ!
・ダンテ
悪魔と人間のハーフの最強のデビルハンター
今回も3や4のように数々のスタイルを駆使して悪魔たちと戦うぞ!
さらに今回は新しいスタイルも登場するかも!?
・ネロ
デビルメイクライ4から登場した若き魔剣士
今回もデビルブリンガーを使ったトリッキーなアクションが出来るぞ!
この画面では『とある』の神裂と戦っているように見えるが、これは一体…?
・ルシア
デビルメイクライ2に登場したもう一人の主人公
二振りの剣と投げナイフを使って悪魔たちをほんろうする!
デビルメイクライ2で登場した時と比べて幼い印象を受けるが、これは何を意味しているのだろうか?
・ベヨネッタ
500年前に滅びたと思われていたアンブラの魔女の生き残り
ウィッチタイムやトーチャアタックなどの独特な攻撃を駆使して天使を倒せ!
・上条当麻
幻想殺しを持つとある魔術の禁書目録の主人公
上条の持つ幻想殺しは○ボタンを押すことで右手を使ったアクションが可能だ
これで敵の魔翌力攻撃を無効化したり、メフィストなどのバリアを持つ悪魔のバリアを一撃で剥がすことができるぞ!
また、彼の身につけているのはデビルメイクライ3で登場したベオウルフに似ているがこれは一体…?



309:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県):2012/06/06(水) 22:58:34.76 ID:359wEXNR0

画像がないぞ



310:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 00:24:29.23 ID:eukj9H9DO

>>309
誰かが描いてくれたらいいなー(棒)



314:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:06:10.92 ID:TM8YFtyUo

―――――――――――――――







あと二週間で、あの日から六年になる。



315:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:07:59.19 ID:TM8YFtyUo

月曜、朝六時を回ったばかりの学園都市は、
いまだに色濃く残る冬の冷気に包まれていた。

「……」

今日は一段と冷え込んでいる。
ヒーターをつけていても車内はろくに温まらず、
ハンドルを握る手もかじかんでしまっているくらいだ。

たがそんな厳しい寒さに負けずに、この街はすでに覚醒していた。
すっかり様変わり、もとい元通りになった街並みには、
今からそれなりの数の車や人が往来している。

「……ふぅ」

もう少し早く出ていた方が良かったかもしれない、
彼はハンドルを軽く叩きながら息をもらした。

通勤には普段はモノレールを使っているのだが、
今日は第23学区に寄り、
朝一の便で到着する『妻』とそのお供を拾うため、車で向かうことにしたのだ。


地位が地位だ、彼ほどともなると自ら向かう必要はない、
迎えを寄越せば簡単に済むことなのだが、
どうしてもこの仕事だけは自分でやりたかった。

『彼女達』の『運転手』となるひとときは、
彼にとっては昔馴染みのもので実に居心地が良いからだ。



316:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:09:40.74 ID:TM8YFtyUo

『おはようございます。統括委員長』

しばしの呼び出し音の後、
イヤホンマイクから聞えてきた女性の声。
妻の秘書兼ボディガードのものだ。

「ああ、おはよう」


委員長、と呼ばれるといまだにむず痒い感覚を覚えてしまう。

まさか自分がこう呼ばれる日が訪れるとは、
夢にも思ってもいなかった。
就任して一年になるのに、今でもふと現実を疑ってしまうことがあるくらいだ。

周囲はまだ慣れてないのかと笑うも、
仕方がないだろうと彼は思う。

あまりにも似合っていないじゃないか、と。


能力者世代による能力者世代のための行政組織、
そのトップたる統括委員長が無能力者なんて。



317:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:12:39.81 ID:TM8YFtyUo

もちろん、統括委員会は『能力者世代』のための組織であって、
『能力者』だけのものではない。

無能力者の職員は大勢いるし、それどころか委員の三分の一がレベル0でもある。
むしろ暗部時代からのブレインであった者などの例からすると、
能力者の頂点よりも無能力者の頂点の方が、機知の冴えは上なのかもしれない。

研究分野をリードする若手の割合が、
無能力者か低レベル能力者が大半であることもからもそう推測することができる。

この点について、あらゆる意味で能力者の頂点たる一方通行の考えによると、
高レベルの能力者ほど力の制御に精神域を広く裂かれるために、
様々な内面活動を圧迫している可能性が高いという。

それに能力者は精神的にも不安定、感情的になりやすい傾向があることも起因しているようだ。
(古の人界神に似ているのだろう、とのことだ。
 ただこれらの傾向は微々たる物で、まともな環境においては全くとして良いほどに問題にはならない。
 環境が劣悪であれば、人間として劣化しやすいのは無能力者でも同じである)


とはいえだ。

確かに今は、無能力者がトップに昇ってもおかしくはないご時勢ではあるが、
その人物が加えて『スキルアウトあがりのクズ』であるとなると、だ。


これに対して一方通行は、
人情的であるもきわめて現実的、
慈悲深くも冷酷でもある彼らしく、淡々とこう言ってきた。

「そこは考えるだけ無駄だ。結果は結果だ」、と。



318:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:16:44.15 ID:TM8YFtyUo

六年前に一方通行にスカウトされて以来、
与えられてくる仕事をがむしゃらにこなした。
この足りない頭が焦げるかというくらいに働かせて、
様々な難題を無様に、時には周りに迷惑をかけ、助けてもらいながら乗り越えていった。

するといつのまにか、委員の一人として一方通行の横に並んでいて。

そしてそこでも同じように無我夢中で仕事をこなし続けていくと、
気づくと委員全員に推薦され、委員長の座に立っていた。

確かにそれが結果だ。

彼自身が己をどう思おうが、どれだけ己を卑下しようが、
結果が現実に示している以上、否定しようがない。

ただしそれでも心のどこかでは、これは悪い冗談だ、と思ってしまうものだ。

いつまでも一人だけそんな風に思っていたら、
己の気が世間からズレているのではと疑いそうになっていたところだが、
幸いにも、そんな感覚を共有してくれる者も何人かいた。


『またまた超気の抜けた声してますね。
 どうせ目も口も半開きで超マヌケな顔してるんでしょう?シャキッとしてください』

こちらの過去を良く知っている彼女もその一人である。
立場が変わっても昔と変わらない調子で接してきてくれるのが、
なんとも居心地が良い。

「はは、へいへい」

これが、自ら彼女達を迎えに行く最たる理由である。



319:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:19:18.51 ID:TM8YFtyUo

『こちらはあと25分で到着します』

「あいつはどうしてる?」

『委員長の「奥様」?となりで寝てますよ。超ぐっすりです。あーあー、ワイシャツもスーツも超ぐちゃぐちゃ。
 せっかく出発前に私が超パッキリ仕上げたのに』

「はは、いつも世話かけるな。着いてもそのまま寝かせといてやれ。それで、お前が車のところまで抱いてきてくれ」

『委員長命令ですか?それとも?』

毒を吐きながら一応、
今の会話の相手が『上司としての委員長』か、
それとも尻に敷く『昔ながらの友人』か、確認するあたりもまた彼女らしい。
こちらに厄介な仕事を押し付けられることを警戒しているのだ。


「お前のいつまでも阿呆な友人の頼みごとだ。絹旗」


彼は可笑しそうに小さく笑いながら、
あれから背が伸びたとはいえまだまだ小さい旧友へ言葉を返した。


絹旗『仕方ないですね。超たのまれてやりましょうか。
    まあ、浜面ごときに頼まれなくとも理后さんの安眠は邪魔しませんけど』


浜面「ありがとな。こっちも渋滞に捕まらなきゃ、ちょうどに着くだろうさ」



―――



320:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:20:16.64 ID:TM8YFtyUo

―――

この六年は多忙の身を極めたも、
学園都市にいる間は、
せめて週末はできるだけここに泊まるようにしている。

身がいくら頑丈ではあっても精神的休息は必要であるし、
また彼にとっては『普通の人間』としての生活を忘れない重要な時間でもあった。

仕事のことはひとまず脇に置いて、
家族とくだらない話をして、ダラダラとすごし、眠りにつく。

一方「……」

そして新たな週は再び黄泉川家の朝食から始まるのだ。
ただし当の女家長は、今日は早出だったようだ。


芳川「アクセラレータ!!ご飯!!」


寝起きに響く大声に顔を歪めながらもリビングに出ると、
そこにいたのは芳川だけだった。

彼女もすっかり身支度を整え、
ソファーにて雑誌片手にコーヒーをすすっていた。



321:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:21:30.39 ID:TM8YFtyUo

一方「ラストオーダーは?」

テーブルにつきながら、一方通行はそう問うた。

いまや高校生である打ち止めは、
御坂の姓に実に御坂美琴の妹らしい名前を使っているのだが、
ここの家族はいまだに『ラストオーダー』と呼んでいた。

当初、黄泉川たちは新しい人としての名で呼ぼうとしていたが、
当人が「そう呼ばれた自分がミサカのはじまりだから」と、
家族からは昔ながらの名で呼ばれるのを好んだ。

打ち止めという名に、妹達の一員としての誇りに似た気持ちを抱いているようだ。

芳川「もう行っちゃったわよ。朝のうちにやれるだけ仕事済ませたいからって」

一方「そォか」

打ち止めは現在、長点上機学園に通っていながら統括委員会の職員でもあり、
学業に支障をきたさぬ範囲で活動している。
所属先は芳川と同じネットワークの管理部門だ。


ミサカネットワークはあの後、
DNAが異なる者同士でも容易に接続できる技術が確立されたこともあって、
滝壺の能力を中心として人間界全域を覆うほどに拡張され、
現在は様々な分野で使用されている。

単なる情報網や演算システムとしてだけではなく、異界の力の侵入探知から、
能力の悪用を防ぐためのAIM監視業務などにもだ。



322:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:22:52.69 ID:TM8YFtyUo

このネットワーク関係の仕事はいつ頃からか、
発電系能力者界隈ではエリートの登竜門として定着している。

それはあながち間違ってはいない
事実、ここから委員会上部や風紀委員、アンチスキルや各行政組織の他、
大手民間企業への優秀な人材を多く輩出しているからだ。

そしてそんな部門に所属している打ち止めは、
特に将来を有望視されている一人だった。

能力はレベル4と姉には及ばぬも、
学業成績はきわめて優秀、さらに仕事の実績も目覚しく、
御坂美琴の妹として恥じぬばかりか、姉を越える勢いで今も評価が上昇中である。
(むしろ、常盤台中学を事実上中退してしまった『御坂』の名誉を回復させたとも)

芳川「挨拶なしで行くのごめんなさい、だってさ」

一方「かまわねェさ。熱心なのは良ィことだ」

芳川「最近やる気がとくにすごいわよ。やっと後半だってはしゃいで」

一方「後半?なンの?」


芳川「六年前に約束したんでしょ?十年経ったらどうのこうのって」


一方「…………あァー……ンなこともあったよォな」



323:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:28:13.16 ID:TM8YFtyUo

思い出したのは何年ぶりだろうか。
あの『約束』のことはすっかり忘れてしまっていた。

一方「……っておィおィ、まさか本気にしてるのかあィつ?」

芳川「え?まさかあの子がどう想ってるか気づいてなかったの?あれだけあからさまに接してるのに?」

一方「……」

実と言うと今の今まで気づいてなかった。
打ち止めの接し方が、昔と変わらないために逆にわからなかったようだ。

六年前、あんなことを口走るような感情なんかは、
すぐに一時の夢として忘却すると思いこんでしまっていたことも、
こちらを盲目にしてしまったのか。

なんとも愚鈍な、マヌケなことだ。
常に目を光らせていたと思いきや、彼女にとって特に重要なことに気づかなかったとは、
もはや弁解の余地はない。

芳川「あらららら……それじゃあ可哀想ね」

一方「……チッ……心配するな。約束は守る」

約束はしっかり守るつもりだ。
あと四年経ったらひとまず『話を聞く』ことは、だ。



324:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:30:35.69 ID:TM8YFtyUo

芳川は雑誌を脇に置くと、
一方通行を眺めながらふうんと喉をならした。

芳川「そういえば彼女とか作らないの?」

一方「考えたことねェな」

芳川「浜面くんも上条くんも身を固めたんだし、結婚しろとは言わないから、
    キミもせめて彼女の一人くらい持った方が良いんじゃない?」

一方「だからってラストオーダーとどォのこォのとかはいかねェからな。大体アイツはまだガキじゃねェか」

芳川「ガキって言うキミだって、六年前はあのぐらいの歳で戦ってたじゃないの」

一方「今の俺からすりゃァガキなのは変わらねェ」

芳川「そりゃそうだけどさ。それでもキミは成人なんだし、彼女の一人や二人は、ねえ?」

一方「売れ残り同士で暮らしてる女にはとやかく言われたかねェな」

この話は打ちきりとばかりに、
ちょっと強い毒を吐いたつもりだったか、芳川には全く効果なかったようだ。
『そのあたり』についてはもう開き直っているのだろう。

彼女はまたふうんと喉を鳴らすと、こんなことを言い放った


芳川「やっぱり、今でも麦野沈利のこと想ってるんだ?」


一方「―――ぐぶッ!!」


むせてしまった。



325:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:32:03.04 ID:TM8YFtyUo

喉の中途半端な位置に留まろうとする半噛みのパンの塊、
それを流し込んだコーヒーとともになんとか飲み干すと、
カップを叩きつけながら睨み返し。

一方「…………あンのクソガキだな?あィつから聞ィたンだな?」

芳川「どうなの?」

答えるまでもないと、彼女は平然と無視してさらに問いかけてきた。

一方「…………」

麦野に関しては、例え一時しのぎであっても嘘はつきたくない。
かといってわざわざ答える義理もない。
そこで一方通行は沈黙を選んだが、
これは彼と親しいものにとっては充分な返答になっていた。

芳川「なるほどねぇ……一途だこと」


一方「……勘違いするな。それで俺が恋人をもたねェってわけじゃねェ」

彼女が今でも胸の内にいることは認めざるを得ないが、これも本当だ。
麦野の姿にしがみつくあまり、前に進もうとしていないなんてことはない。

彼女への想いは実に健全だ。
一方通行にとっての麦野沈利という存在は、決して思い出の枷ではない。
未来へと進むための光である。


一方「そォいゥ気にさせる女がいないだけだ」

そう、恋人を作らない、もしくは欲さない理由は単に、
この心を揺り動かすほどの女性が今のところいないだけである。



326:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:33:55.77 ID:TM8YFtyUo

芳川「なるほど……じゃあとりあず現状はそうなだけであって、
    将来的にはあの子がキミのハートを射止める可能性もあることはあるのね?」

一方「……」

これは少し答えに困った。
芳川のことだ、返答はどうであれすぐに打ち止めへと伝えるだろう。

どう答えるべきか。
今はっきり否定しまうと、不安定な青春期の彼女のモチベーションを低下させかねない。
かといって肯定すると、いつか自分の首を絞めかねない。

となればあえて他人事のように曖昧に答えるべきだ。

一方「さァな。あるかもしれねェな」

それにこれは別にはぐらかしてるわけでもない、
この答え方が一番現実的でもあるからだ。

人の心の動きというものは、きわめて予測がつきにくいもの。
四年後まで打ち止めが同じ気持ちでいるかは、
本人ですらもわからないはずだ。


一方「なァに。その時になりゃァわかるさ」


そしてこちらも同じくだ。


―――



327:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:35:38.12 ID:TM8YFtyUo

―――

御坂「それでどうだった?」

黒子『ご・う・か・く!!合格しましたの!!』

御坂「すごいじゃない!やったわね黒子!!」

黒子『なあに!この程度わたくしには朝飯前ですの!!』

とは言うものの、
彼女の声にはやかましいくらいに嬉しさが満ち溢れていた。
イヤホンマイクが吹っ飛んでしまいそうだ。

御坂「言うわねこの!この!」

事務所デビルメイクライの一室にて御坂は髪を結いながら、
後輩の大学受験結果を聞いていた。

御坂「これで教師へ向けて第一歩ってところね~!」

黒子が合格したのはとある大学の教育学部だ。

学園都市内の教育学部は、どの大学であれ非常に難度が高いのが知られている。
それもそのはず、この街の教員免許取得には通常の学業・指導技能・適性のほかにも、
能力研究分野にも秀でていなければならないのだ。


御坂「でもこれからだからね!卒業しなきゃ意味無いんだからしっかりしなさいよ!」

黒子『へへん!わかっておりますお姉さま!この白井黒子はこれからも邁進していきますの!!』



328:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:38:04.44 ID:TM8YFtyUo

御坂「それでさそれでさ、佐天さんはどうだったの?」

時同じく、今日はちょうど佐天涙子が受験した大学の合格発表日でもあった。
彼女が受験したのは、これまた高難度のとある工科系大学だ。
(そもそも学園都市内の大学は、この街の性質上例外なくきわめて学力が高い)

そのまま開発職につくか、学園都市の技師資格をもって外部の優良職につくかは、
佐天は今のところは決めていないと聞いていた。
とりあえず合格してからだと。
(ただし初春の話によると、どうやらフォルトゥナに置かれてる機構に就職したいと仄めかしているようだ)

そしてその結果は。


黒子『ちょうど今メールが!!―――合格ですの!!』


その声と同時に、御坂の傍に置いてあった端末にも
メール受信のメッセージが表示された。

御坂「はぁ~~~ぁ良かった!!最近そっちが心配で中々眠れなかったのよ!」

過剰な表現ではない。
本人達に負けず劣らず緊張していただろう、
ここ数日は本当に寝不足気味になってしまったくらいだ。



329:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:39:27.80 ID:TM8YFtyUo

そのようにして黒子達をねぎらい、
しばらく抱えていた不安をやっと解消していると。

扉がノックされ、少し開けられた隙間から
姉妹弟子の五和がひょっこり顔を出して、
「そろそろ行きましょう」と口だけ動かした。


御坂「ごめん黒子!これからちょっと用事があるの!帰ったら詳しく話そ!」

黒子に謝りつつ、御坂も五和へと頷き返した。


実はこのあと、ゲイツオブヘルにて夕方早々から飲む約束をしているのだ。
集まるのは、トリッシュを抜きにした『デビルメイクライの住人』三人に、
ベヨネッタとジャンヌ、ローラを加えた六人。

これ以上危険な女の集まりが他にあろうか、世にも恐ろしい凶悪な美女達の宴だ。
(そしてエンツィオがたびたび酒の肴にされる。今日も恐らくそうだろう。
 皆が集まる日に限って彼は運悪く居合わせるのだ)


そう、現在ここには、トリッシュを含めて四人の女が住んでいた。
レディに五和、そして御坂の三人が、
レディがフォルトゥナを離れられるようになった三年ほど前から居候している。

あの戦いのあとしばらくしてもトリッシュの様子が中々さえなかったため、
無理やりにでも調子をあげるべく、荒療治として三人で押しかけることに決めたのだ。

そしてこれは、完全とは行かないも功は奏した。
ブツブツ言っていたも結局トリッシュは彼女達を受け入れ、
今はこの事務所を切り盛りするくらいの調子までは取り戻しているからだ。



330:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:42:51.90 ID:TM8YFtyUo

黒子との通話を終えた御坂は、
皮のジャケットを羽織るとギターケースを肩にかけ、廊下へと急いで出でた。
中に入ってるのはもちろんダンテが作ってくれた大砲だ。

レディ流デビルハンターの第一の掟は、常に完全武装していることだ。


扉のすぐ横には、キーボードケースを背負っている五和が待っていた。
中に入っているのはもちろんキーボードではない。
分解してあるアンブラ製の魔槍に、レディの流派たる証の銃器だ。

五和「行きましょう」

そして五和と共に下の広間におりると、
ソファーに座っている師と友が待っていた。


レディに数年ぶりに会う者がいたら、今の姿を見て大いに驚くだろう。
なにせ容姿は20代半ば程度にまで若返っているのだから。
半分悪魔であることを大いに利用して肉体年齢を操作しているのだ。
(実験当初は、一度失敗して10歳前後にまで若返ったこともあった)

だがそんなレディ以上に、
全体印象としては今のトリッシュから抱く驚きの方が大きいだろう。

丁寧に結い上げた金髪に、
上半身をすっぽりと包む大きなストール、足首まで隠す黒いスカート。
そんな出で立ちで品良く座っている姿は、まるでどこかの貴婦人。

彼女のトレードマークとも言えた露出は完全に影を潜め、
いまや見かけは非の打ち所のない淑女となっていた。



331:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:44:23.96 ID:TM8YFtyUo

トリッシュ「準備できた?」

声色までやけに品の良い。

元の容姿が完璧であるために、
そこに柔らかな上品さも加わるとなれば話しているだけでも心地よくものだ。
しかしそんな良いところばかりではない。
たびたび吐かれる皮肉の毒気がさらに増すからだ。


レディ「それじゃあ行きましょ」

そしてこちらは相変わらずだ。
服装から仕草まで、彼女の性格が実にありありと滲み出ている。

立ち上がり、ロケットランチャーをそのまま背負い、
露になっていることも気にせずに外に出て行く。
この挙動だけでもどんな人物であるかは一目瞭然であろう。

御坂「へへっ」

五和「ふふっ」

同じことを考えていたのだろう。
そこで見合わせた五和と少し笑い合い。


レディ「ほら行くわよ!!」

外からの急かしの声に応じては、
壁にかかっている番犬のケルベロスに一声かけて、御坂達は事務所をあとにした。

御坂「行ってきます!」

五和「行ってきます!」

トリッシュ「はいはいいってらっしゃい」

事務所の女主人の声に送られて。

―――



332:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:46:52.70 ID:TM8YFtyUo

―――


ここ三週間は嵐のような日々だった。


自由気ままな上条刀夜・詩菜に騒がしい従姉妹、
加えてなぜか御坂美琴の両親までもやって来て、
さらにはここイギリスにいる三人のシスターズまでもが押しかけてきたのだ。

そこからの日々はそれはそれは騒々しいものだった。
観光買い物につき合わされ、食事洗濯もすべてこちらがこなし、
(最初にこちらが全部やると言ってしまい、引っ込みがつかなくなってしまった)

そして一番大変だったのが入れ替わり立ち代りの話相手だ。


上条「はぁ……」

木目の床を磨きながら、
この家の長たる上条当麻は疲れ切ったため息を漏らした。

親しい者達ならいつでも歓迎とは言うも、
さすがに三週間も振り回されれば「とっとと失せろ」と叩き出したくなるものだ。

ただ幸いにも、振り回されたのは上条当麻だけで済んだ。
あの気ままな客達も、
さすがに臨月に入った『妊婦』を煩わすほど極悪非道ではなかった。


夫とは対照的に鋭気抜群な妻が、
ソファーの上から覗き込んできて、穏やかな声を向けてきてくれた。


禁書「とうまは休んでて良いよ。私がやるから」



333:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:48:16.08 ID:TM8YFtyUo

上条「もう終るから大丈夫だ。ありがとな」

気持ちは嬉しいが、妊婦に床を磨かせるわけにはいかない。

アンブラの魔女ならば指一つ動かさずに磨き上げることも簡単であろうが、
インデックスは極力魔術を使おうとはしない。
可能な限り、あらゆることを普通の人間と同じようにやりたがるのだ。

それについては上条も同じだった。
夜になっても、自分の力ではなく普通のランプを灯すし、
移動なども急用でなければ公共の交通機関を使う。

できるだけ普通の人間として生きよう、
インデックスと正式に一緒になる際にそう決めたのだ。


禁書「そう?無理しないでね」

ソファーにゆったりと腰かけ、膝にスフィンクスをのせながら、
ご機嫌そうに編み物を再開するインデックス。

そんな彼女の姿を見ていると本当に気が落ち着くものだ。

今やすっかり成長して、見た目はローラを少しだけ若くした程度、
一つ違いの姉妹と紹介しても誰もが納得するだろう。

その見事な容姿の二人が並ぶ様は、ステイルによると眩暈がしてくるほどの光景だという。

また外見だけではない、内面もそれ以上に成長し、
彼女の生来の良い点がさらに増していまや聖母のごとき人格だ。



334:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:50:32.97 ID:TM8YFtyUo

おかげで喧嘩というものは起こらなくなってしまったが、
代わりにちょくちょく起こるようになったのは夫が叱責される一幕である。

何かしらヘマをしたり誤ってしまうのはいつも上条当麻の方だからだ。

もちろん彼女の正論にはぐうの音も出ないし、
何よりも本気で怒った彼女はとんでもなく恐ろしく、
そうなってしまったら、上条はただ平謝りするしかない。
(一度ローラが怒られて縮こまっていた時ばかりは、最高に面白い気分だった。
 その後に何を笑ってるのと上条も怒られたが)


とはいえ上条にとっては、
今のインデックスは最高の存在であることには変わりない。


実は昔、彼女の未来に少しばかり心配していた点があった。

個人差や性質の違いはあれど、
他四名のアンブラ魔女は例外なく『ぶっ飛んだ』性格をしているが、
まさかインデックスも同じようになってしまうのだろうか、と。

ああいった気質が一族の血に起因しているのは確実だったからだ。

しかしそれは杞憂だった。
インデックスは実に『真っ当』に、基盤は昔の彼女のまま、
そこから大人になって実におしとやかで慎ましい女性になってくれた。

20過ぎたばかりの若造がこんなことを言うのも何だが、
彼女こそ至高の恋人であり妻、そして今は至高の母にもなりつつあるのだ。



335:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:53:02.51 ID:TM8YFtyUo

子ができた際の周囲の反応は実に様々で、
いかに己の交友関係が変人ぞろいかを上条は再度認識させられた。

ローラは大騒ぎしては毎度のごとく赤ん坊用品を大量にもって来、
そして娘だと判明して以来、最上級のアンブラ式教育をといつも力説してくる。
(申し訳ないが専門教育はフォルトゥナ騎士団で受けさせるとインデックスと決めた)

御坂はこちらが危険を覚えるくらいに興奮し、
(「きっと食べちゃいたいくらいに可愛い」の「食べちゃう」の部分が比喩に聞えなかった)

ステイルは「僕にとっては神の子に等しい」と気持ち悪いくらいに歓待の涙を流し、

一方通行は、「オマエらのガ……子供ってやべェンじゃねェのか?化物になるンじゃねェか?」
なんて途中言い直したもそのあとに平然ととんでもないことを口走り、
(親友じゃなかったらぶっ飛ばしてるところだ。
 彼なりに本当に心配してくれた言葉であるために一応は許した)

五和はしっかりと祝福しながらも、なにやら遠い目をして「もう勝てない」とブツブツ呟くわ、
シェリーやヴェントは、今から自分のところに娘を預けないかと熱心に勧誘してくるなど、
とてもまともではない歓迎を受けたものだ。


ただしごく普通に祝福してくれた真人間も大勢いた。
神裂やネロ、キリエや土御門などはその最たる人物で、
あれ以来交友を深めた浜面や、心は人間のトリッシュもちゃんと祝福してくれた。

そして意外だったのは、レディも実にまともに祝福してくれたこと。

また一番驚いたのは、第三の父たるベオウルフが直接祝いの言葉を言いに来たことだ。
愛情ではなく武人気質の義理堅さからくる行動だが、それでも嬉しいことには変わりない。

ちなみにこの時、実はちょっとした騒ぎになってしまった。
ベオウルフの力を警戒網に登録していなかったため、
大悪魔の侵入を検知して関係各所が一時騒然としたのだ。
もちろんすぐに事情は伝えられて事態は収拾された。



336:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:55:17.81 ID:TM8YFtyUo

禁書「なあに?」

ぼうっとインデックスを見つめてしまっていたようだ。
彼女が首をかしげながら笑いかけてきてくれた。

その仕草に笑顔、上条にとっては殺人的だ。

上条「何でもないよ」

彼はふきんを放り捨てて立ち上がると、
ソファーへと向かい彼女の隣に座った。

禁書「いいの?」

床に落ちているふきんをちらりと見やるインデックス。

上条「いいさ」

そうだ、構うもんか。
こんな女性を前にして、床なんて磨いていられるか。

上条はインデックスの肩に手を回し、軽く抱き寄せた。
それに応じて彼女もぽんと頭を預けてくる。

そうして静かに寄り添い、
彼女の安らぎと暖かさに浸りながら、
彼女と娘の小さな鼓動に耳を傾ける。


まさに至福の一時である。


彼女の膝にいた化け猫が「やれやれ」といった様子で飛び降り、
「どうぞお構いなく」とばかりに今度はテーブルの上で丸まった。

―――



337:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:57:18.92 ID:TM8YFtyUo

―――


とある海沿いの街の郊外。

丘の上にある墓石の前に、
『銀髪』の『幼い少女』が屈みこんでいた。


「ス……パー……ダ」

刻まれている文字一つ一つに指をあてて、
たどたどしくもその名を読み上げていく少女。
一通り声にすると、後ろに立っている両親へと振り返った。


「わたししってるよ。このひと、わたしのひいおじいちゃんなんでしょ?」

両親が優しく頷き返すのを見て、
跳ねるように『隣』の墓石へと移り、再び刻まれている名を読み上げていく。


「エ…………ヴァ」


そしてまた同じように両親の方に振り返り。


「だれのおなまえ?」


答えたのは母だった。
長い金髪をゆったりと結った、
慈愛に満ちた女神像のごとき姿の母親が、娘の横にかがみながらこう告げた。


キリエ「スパーダの奥さん、あなたのひいおばあちゃんよ」


「じゃあ、パパのパパの……ママ?」

キリエ「そう。パパのパパのママ」



338:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/07(木) 23:59:19.42 ID:TM8YFtyUo

風がざあっと丘を撫でた。

いまだの冬の寒さが残っているはずなのだが、
夕日に燃えているせいかそこまで冷たくは感じない。

そして風になびく少女の銀髪からも、時たま燃えるような『赤い』煌きが零れおちた。

単に夕日に燃えているからではない。
彼女の髪そのものが、時々光の加減で炎のような光を纏うのだ。


少女は鮮やかな光を振りまきながら、『三つ』目の墓石へと向いた。
他二つよりも一回り小さい墓だ。

文字に一つ一つに指をあてながら、少女はそこに刻まれている名を口にした。


「…………ル……シ……ア!」


すると読み上げた直後、
彼女はぱっと笑みを浮べては、嬉しそうにこう言った。


ルシア「わたしとおんなじおなまえだね。このひとはだれ?」


一際強く、銀髪を『赤く』煌かせながら。

今度答えたのは父だった。
娘の頭に手を軽くのせながら、彼は優しく答えた。


ネロ「パパとママの大事なお友達さ」


娘に微笑みかけながら。


ネロ「強くて、綺麗で、そして素晴らしい戦士だった『人』だ」



339:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:01:26.09 ID:3BHkb5sFo

戦士、と聞いて瞳を輝かせる少女。
その目を見ると、やはりスパーダの子孫であり己の子だと、ネロはいつも思わされる。
今から闘争心に火がつきはじめているのだ。

ルシア「わたしもそんなふうになれるかな?」

ネロ「もちろんさ。ただしたくさん頑張らなくちゃな」

がんばる!とはしゃぐ幼い娘。
一見無邪気に見えはするも、実は水面下ではもう巨大な力が胎動をはじめている。
周囲の環境も良いために、恐らく一族最速で力が覚醒する準備が整うだろう。

ただしその覚醒に一番必要なのは、
単なる力への欲求ではない。

ネロ「でもな、ここに眠る人たちのようになるには、まず先に知らなくちゃいけないことがある」

ルシア「なあに?」


ネロ「何を守るべきか、だ」


そして愛情だ。


ルシア「…………まもるべき?」

首を傾げる娘。
三歳児にはまだその辺りはよくわからないようだ。

ネロ「急がなくて良い。これから少しずつ知っていけば良い」

だが問題はない。
時間は充分、全てはこれからだ。


ネロ「一緒に勉強していこう」

ルシア「うん!」


―――



340:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:03:52.25 ID:3BHkb5sFo

―――

レディはとある忘れ物を思い出し、来た道を引き返してた。

ロダンに頼まれていた武器製造のための材料、
悪魔狩りで手に入れた戦利品のことをすっかり忘れていたのである。
そこで御坂と五和を先に行かせ、
彼女は自らのバイクを飛ばして事務所へ戻っていった。


レディ「トリッシュ!ロダンにあげるあの―――」

そうしてエンジンかけたままバイクを路肩に止め、
いつも通りに扉を勢いよく開けて早口に用件を放つも。

いると思っていた聞き手の姿は無かった。

レディ「……あら。いないの」

いつも座っているソファーにはいない。
上階にいる気配もない。

そして壁にかかっていたケルベロスもいないとなると、状況は実に明確。
悪魔狩りの急な依頼が入ったのだろう。
狩りとなれば、トリッシュはいつもあの氷結の魔狼を連れ歩くのだ。


と、そんな普段どおりの一幕だと思いかけたのも束の間。


レディ「―――……ッ」


レディはすぐに異常に気づいた。
『これ』は今までにない状況だと。


『二つの椅子』の位置が大きく変わっていたのである。



341:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:05:21.25 ID:3BHkb5sFo

片方はダンテが使っていた椅子。
もう片方は、ダンテがバージルのために揃えた椅子だ。

ダンテの大きな仕事机にそえられている二つの椅子は、
今は誰も使ってはいない。

それどころか座るなどもってのほか、
この椅子に触れるのは、毎朝丁寧に拭くトリッシュの手のみ。
毎朝彼女が綺麗に拭き上げて、
1mmのズレもなく同じ位置に戻されているのだ。

それが、この毎日が騒々しい事務所の中でも唯一不変たる部分なのだが。

レディ「…………」

今は位置が大きくずれている。
いや、それどころじゃない。


『二つ』ともつい今の今まで、『誰か』が『座っていた』形跡が残っていた。


レディ「……ッ」

緊張が頂点に達した。
腰から下げているサブマシンガンに手をかけ、
気配を殺しては意識を研ぎ澄ませていく。

トリッシュとケルベロスは一体どこに消えたのか。

そして何者がここに現れ、
トリッシュがいたにもかかわらずこの椅子に座ることが出来たのか。



その答えを示すものは案外簡単に見つかった。
机の上にあったトリッシュの書置きだ。



342:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:06:35.94 ID:3BHkb5sFo

レディ「―――!」

一目見て状況を把握―――いや、とても信じられないのだが、
そう結論せざるを得なかった。


書かれていたのは、乱雑な字で「少し出かけてくる」、とだけ。


この文自体には特におかしな点はないも、
『今のトリッシュ』がこんな字でこんな事を書いて姿を消すことは実に異常だった。

あの戦い以来、彼女は非常に几帳面になり、
それは様々な用向きを告げる書置きにも及んでいた。
事務所を出る際にどこに、何しに、いつまで、
それらを丁寧な字で正確に書き残していくのだ。


しかし。
この書置きにはそんな片鱗など僅かにもない。
『ここ六年間の彼女』が書いたものではない。



これは好奇心の塊、自由気ままだった頃の彼女の字。



レディ「…………」


こんな彼女の書置き、目にしたのは六年ぶり―――――――――ダンテがいた頃以来である。



343:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:08:19.80 ID:3BHkb5sFo

書置きを手にもったまま、
もう一度椅子を見やった。

レディ「……」

何者かが座った大きな二つの椅子。

その沈んだ座面の形跡をよくよく検分してみると、
座した人物は二人とも中々の『大男』のよう。


『六年前』まで『見慣れていた体格』ちょうどだ。


さらに周囲をよくよく調べてみると、痕跡はあちこちに残っていた。

大きな靴跡、もちろん大男のものが二人分。
一人はかかとを打ちつけるようなだらしない歩き方で、
もう一人は実に丁寧な、厳格な武人に見られる歩き方。

そして『だらしない方』が机に足を勢い良くのせたようだ。
強く打ちつけた跡が、ぴかぴかの机の真ん中に残っている。



レディ「…………マジ……なのね」

どうにも信じがたい、
現実を疑いたくはなるも、それでも証拠は充分、
これは事実だと受け入れるしかない。

思わず笑いが毀れてしまった。
馬鹿馬鹿しさと嬉しさが混じった奇妙な笑い声だ。

そして机に寄りかかっては、今度は『呆れ』果ててしまった。
相変わらずのあの『二人』の調子に。


レディ「……はぁ。挨拶も無しなんて」



344:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:12:00.17 ID:3BHkb5sFo

いかにもあの『二人』らしい。
どう転んでも律儀に挨拶回りにをするような人物ではない。

彼らは前触れもなくふらりと帰ってきて、
またふらりとどこかに行ってしまったのだ。
実にマイペース、何人も彼らの気まぐれを阻害することはできないのである。

これではいつ帰ってくるのかもわからない。

一時間後か、来月か、五年後か、それとも―――


―――そんな彼らには本当に呆れてしまう。


レディ「……はは」

だがその一方で―――『安堵』も抱いた。
彼らは何一つ変わってはいない、
こちらが知っているままなのだ、と。


それに少し、『弟』の方を見直しもした。

六年も姿を見せず。
ここまで来たのに他に顔も出さずにすぐに消えたが、

トリッシュにだけは会いちゃんと連れて行くのを。


いや、彼女を迎えに来ることこそ、来訪の目的だったのだろう。


彼女の相棒は約束を果しに戻ってきたのだ。


『どこまでも連れて行って、どこまでも見せてやる』と。


レディ「中々ね。やればできるじゃないの」

『そういうこと』に関しては、彼は全く不甲斐ないと思ってはいたが。
なんて大きな逆転ホームランをぶちかましていったことか、
あの男は最後の最後に完璧にキメたのだ。



345:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:16:07.82 ID:3BHkb5sFo

全く本当にどうしようもなく自由気ままで、イカれてて、イカしてる兄弟だ。

レディ「ふふ……」

嬉しさと少しばかりの寂しさの中、
レディは脳裏に浮かんでくる姿に思いを馳せた。

昔のように好奇心を爆発させて、
喜び勇んでついていくトリッシュと―――先に立つ『兄弟』の姿。

今の彼らの様子も、手に取るように思い描くことが出来る。


そう、決まっている。
簡単に目に浮かぶ。


遥か遠くの『どこか』に。
遥か彼方の『いつか』に。

彼らを必要としている場で。
彼らを飽きさせない場で。

赤と青のコートを翻し、最強の刃を煌かせ。
変わらぬ声で、変わらぬ調子で。

彼らを知るものなら、誰しもが思い描くそのままの姿で。

皆の脳裏に鮮明に刻まれているありのままの姿で。


そしてきっと。


きっと弟の方は、こんな風に笑って声を挙げているはずだ―――








――― L e t ' s R o c k ! !  B A B Y ! !









―――――――――――――――――――――――――――




              MISSION CLEAR




―――――――――――――――――――――――――――



346:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:16:50.08 ID:3BHkb5sFo

――――――――――――――――――



            原作

         Devil May Cry

      とある魔術の禁書目録

         BAYONETTA

           and 大神



――――――――――――――――――



347:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:17:25.78 ID:3BHkb5sFo

これにて完結です。
vip投下時からの方も、そうでない方も、
ここまで長きにわたり本当にお疲れ様でした。
そしてありがとうございました。

このスレは一週間程度したらHTML化依頼します。



348:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:18:49.43 ID:foQlQOxDO

長い間お疲れ!リアルタイムで長期間追った物語はこれが初めてだよ!本当にありがとう!



349:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/06/08(金) 00:19:17.48 ID:mWBp4Fx0o

―――――――――Jack pot―――!!



350:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:21:13.07 ID:2tUaSqeUo

おつかれさまでした!



351:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/06/08(金) 00:21:14.48 ID:jo3uNOm+o

お疲れさまでした。もう、これしか言えません。本当に、お疲れさまでした



352:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/08(金) 00:21:29.17 ID:GPAvKGgLo

お疲れ様でした。



353:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/06/08(金) 00:23:21.61 ID:0HeqMWmPo

お疲れ様でした!
とても素晴らしい物語をありがとう



354:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:25:08.63 ID:bJ6TExZLo

お疲れ様でした!
本当に楽しませていただきました。ありがとう!



358:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/06/08(金) 00:41:55.48 ID:6zOTvP9Io

最高でしたありがとう!



359:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/08(金) 00:42:55.29 ID:hmRVNHIWo

長木に渡る物語もここで完結か…感慨深い
だけどまだまだDMCも禁書目録の物語は終わらねえ
クロスゾーンの発売が今から楽しみだぜ



360:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県):2012/06/08(金) 00:44:05.01 ID:f1zA7ttTo

SSStylish!!!
お疲れ様でした
楽しすぎて狂っちまう一時をありがとう



361:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:45:52.98 ID:LMRG4FgSO

お疲れ様でした!



362:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/06/08(金) 00:46:27.98 ID:uMeybP0Wo

おつかれさん
長い間楽しませてもらったありがとう



363:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/08(金) 00:47:52.33 ID:kN/ZX/zq0

お疲れ様でした。
私が見てきた中で間違いなく最高のSSでした。
終わってしまったのが非常に残念ですが、この2年間本当に楽しみに読ませていただきました。
最高でした!!!ありがとうございました!
―――――――――Jack pot―――!!



365:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 00:56:27.36 ID:/IZGgVQ6o

他キャラとの再開シーンとかを望むのは野暮なんだろうな…
乙でした!



366:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/06/08(金) 01:17:43.10 ID:sCxqtHZko

おつかれさまでしたァ!!



370:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 02:07:26.52 ID:F3QB9/mc0

最期までDMCらしくてとても楽しく読ませて頂きました。
アニメ化とかゲーム化とか本当にして欲しい作品だと思います。
DMC、禁書のファンのみならず沢山の方の目に留まる事を祈って、

本当に長い間お疲れ様でした。



373:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県):2012/06/08(金) 02:27:21.47 ID:6mOK6SKqo

乙 ついに完結か
本編終了以降のおまけがまさかここまで超大作になるなんて
執筆速度も早くて全く飽きさせることがなかった
最後に兄弟が戻ってきたってことは創世主並か…

よし、もっかい最初から読み返すか



374:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 03:38:08.12 ID:7ZHHdbev0

お疲れ様でした。

最初の方からリアルタイムでずっと見ていたため終わってしまうのは寂しいですが、最高のSSでした。



375:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/06/08(金) 04:06:21.88 ID:J3CeWiS3o

お疲れ様でした!
長かったけど最後まで楽しめたし、ついてきて良かった!



376:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/06/08(金) 04:12:54.39 ID:3uvEYg9no

お疲れ様でした!
最高にcoolな作品をありがとう!



381:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 08:05:51.78 ID:mdQP3erq0

乙乙乙!!

最高にクレイジーなSSだったぜ!!

次回作も楽しみに待ってるぜ!!



383:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 08:33:14.10 ID:GZvDhBzmo

お疲れ様でした!!
こんな感動文庫読んだ時でも早々ないわ
本当にお疲れ様でした!!



388:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 11:09:15.06 ID:HjEQAZ8o0

お好きな方を







391:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 15:27:21.61 ID:FitjvTWDO

お疲れ様です
私はこのSSがきっかけでデビルメイクライという素晴らしいゲームと出会えました。
本当に作者には感謝しても仕切れないです



392:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/08(金) 16:07:59.18 ID:qgRBLOsI0

マジ超スタイリッシュ乙



393:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/06/08(金) 17:29:15.43 ID:h1CGrK4f0

素晴らしかった

ベヨ姐やアマ公が登場したときは興奮したもんだぜ



397:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県):2012/06/09(土) 00:18:05.08 ID:fe1ePRaH0

終わってしまったあああああああああああ
本当にお疲れ様でした



405:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/09(土) 07:01:45.14 ID:toiZXfh50

乙乙乙!!
まゆおうとどっちが文字数多いんだこれ・・・



407:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/06/09(土) 10:45:11.60 ID:rdhIIf640

超乙乙乙tylish!!!

って上条さん人間に戻ってねええええ!



408:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/09(土) 11:59:35.23 ID:WcEP48aDO

>>407
同じ不老であるインデックスさんと永久にイチャつけるからいいんじゃね



399:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/09(土) 01:44:10.76 ID:YfqgdYyIO

マストダイをクリアしたような爽快感と一抹の寂しさ。
お疲れ様でした!



おまけ→ダンテ「学園都市か」【MISSION 00】

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禁書目録SS   コメント:14   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
28123. 名前 : 名無しさん◆- 投稿日 : 2012/10/27(土) 11:09 ▼このコメントに返信する
いつの間にか終わってたあああああ
28129. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/10/27(土) 14:15 ▼このコメントに返信する
感慨深いな…
28136. 名前 : あ◆- 投稿日 : 2012/10/27(土) 16:43 ▼このコメントに返信する
もうこのSSを賞賛するのにふさわしい言葉が思いつかないよ…
28148. 名前 : ngoknok◆- 投稿日 : 2012/10/27(土) 21:34 ▼このコメントに返信する
帰って来るのを信じてたぜダンテ、バージル!!!
28195. 名前 : Stylish◆- 投稿日 : 2012/10/29(月) 18:15 ▼このコメントに返信する
仕事中に読み返してたらルシアの墓のとこで泣きそうになって変な目で見られたわww
28199. 名前 : 山を愛する男◆- 投稿日 : 2012/10/29(月) 19:35 ▼このコメントに返信する
陰ながら応援していました。このssは自分の中で最高の作品です、長い間お疲れ様でした。
28802. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/11/15(木) 15:06 ▼このコメントに返信する
いつの間にか終わってた……
面白かったです乙乙
29084. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/11/22(木) 10:10 ▼このコメントに返信する
最終回が纏められ、ゆっくりと最初から読み直してた……
こんだけ良い作品に出逢えて本当に良かった!
作者、読者、そして最後まで纏めてくださったホライゾンさんに感謝!
29457. 名前 : 名無しさん◆- 投稿日 : 2012/12/04(火) 14:02 ▼このコメントに返信する
長杉内
29534. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/12/06(木) 15:54 ▼このコメントに返信する
このDMCを二週プレイしてきたけど最高だな
DMCがより好きになる良SS。
完走も凄いし、まとめきった管理人さんも凄い。
お疲れ様でした。
私はDMC4でスタイリッシュさを磨いてきます。
31341. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2013/02/09(土) 13:24 ▼このコメントに返信する
読み応えがすごかった
これで文章がきれいだったら本出しても売れると思う。
45949. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2015/08/01(土) 18:51 ▼このコメントに返信する
本当に良く書き切ったもんだ
ただ一言、お疲れ様でした!
47215. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2016/06/24(金) 00:34 ▼このコメントに返信する
もう終了から四年か……早いなぁ……
文庫化されるの待ってる作品だなこりゃ
47229. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2016/06/30(木) 20:51 ▼このコメントに返信する
1週間かけてやっと読み終わった
5年前はリアルタイムで追ってたのに途中までしか読んでなかったんだけど、改めて素晴らしいssだと認識させられた
このレベルの作品はなかなか出会えるものではないよね
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