( ^ω^)百鬼夜行のようです【第四話 百縦千随 麗しきは女郎蜘蛛。 後編】

2010-09-01 (水) 18:21  ( ^ω^)(´・ω・`)('A`)   0コメント  
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4 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 20:56:47.68 ID:owevEAYSO


 崩れ落ちたる一人の男。

 餓鬼はこぼれんばかりに目を見開いて、その情景を見ていた。

 しっこくの獣は我に返り、こんじきの目を見開き顔色を無くした。

 雷の後の肌が裂ける様な、せいじゃく。



     ( ^ω^)百鬼夜行のようです。

      【第四話 百縦千随 麗しきは女郎蜘蛛。 後編】



 せいじゃくを引き裂くは、

 黒の、はばたき。





5 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 20:58:08.11 ID:owevEAYSO


 どさ、と音を立てて坊っちゃんは地面へと倒れ伏す。
 白い装束はあちこちが黒く焦げ、煙を上げていた。

 何が起きたのか、どくお達だけではなく、坊っちゃんを襲った当人すらも理解出来ずに居て。


(;'A`)「坊っ……ちゃん……?」


 ぽつんとどくおが呟き、ふらふらと倒れた坊っちゃんの側まで寄る。
 そして焦げた肩をそっと撫でて、揺らす。

 ゆさゆさ体を揺すられても、坊っちゃんはぴくりとも動きはしない。
 本来は上下している筈の背中は、その動きを見せる事はなく。

 触れる肩から伝わる体温は、急速に失せて行き。


 さあっ、と、どくおは白い顔をした。




7 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:00:31.96 ID:owevEAYSO

(; A )「う、嘘だろ……おい坊っちゃん……お、おい……」


 ゆさゆさと、ゆさゆさと坊っちゃんの肩を揺らす。
 微動だにしない坊っちゃんを起こす為に、ひたすら、ひたすら、肩を揺すって。

 ひきつった笑みを浮かべるも、その顔には絶望の色しか存在はせず。

 走馬灯の様に脳裏を駆け巡るのは、坊っちゃんと築き上げてきたこの関係。
 親代わりとし隣に立つ様になるまでの過程。
 出会いから此処に至るまであった事がざらざらと、頭の中でめぐりめぐって。


(; A )「坊っちゃん…………死んだのか……?」


 小さくこぼした言葉に、つられてぽつり、涙がひとつぶ。


( A )「な……何てな、な……ほら、起きろ、よ、なァ……坊っちゃん、ほら」

(∩A )「……別に、泣いて、ねェから、ほら……なァ…………なあ……」

( ∩A)「なァ、ほら……坊っちゃん…………坊っちゃん……?」

( ∩)「………………坊っちゃん……」




8 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:00:46.58 ID:owevEAYSO

 なぜか、なぜか、心の臓が握られた様に痛んだ。
 どうすれば良いのか解らなくて、揺する手を止めて坊っちゃんの肩に顔を埋めた。

 頬にふわふわと当たる髪が、やたらと涙を誘う。

 あまりにも突然すぎて何も理解は出来ず、受け入れる事など出来はせず。
 混乱しきっているにも拘わらず、妙に冷えた頭の芯。

 どくおは虚ろな目を長い前髪で隠しながら、声も上げずに涙で坊っちゃんの肩を濡らす。


 いったい何が起きたのか。
 いったい何がどうなったのか。
 解らないし、解りたくはない。
 ただ装束から焦げ臭さが伝わって、泣いてしまう。

 怒りなどより心の真ん中を抉られた様な悲しみで、いっぱいで。


 また失う。
 大事なものがこぼれおちて。
 地面に吸われて消えてしまう。

 地を嘗めたとしても、得られるものは喪失感。
 舌につくのは砂に土、泥臭さに土臭さしか存在せず。

 ただ、ただ、かなしい。




9 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:01:14.56 ID:owevEAYSO

 そんなどくおを見て、木霊達は戸惑いを隠せずあたふたとその辺りを彷徨く。
 しっこくの獣がぽかんとした顔で、どくおと坊っちゃんを見詰める。


 それは条件反射。
 それは本能。

 結界の中に異物が入り込んだから、条件反射で雷を、雷を、落として。

 落として。


( ΦωΦ)「…………坊、主」


 ぽつり呟くしっこくの獣は、呆けた顔を晒す。

 それは最強とさえうたわれる彼の雷獣公と思えぬ表情で、
 今起こした出来事の重みを伝えるには、十分すぎるほどのもので。

 しっこくの獣は雷を繰る。
 雷を降らせ獲物を射抜く。

 その行為は、獣の本能と云うに等しくて。
 本能と云う事は、無意識と云うもので。


 雷獣公は、坊っちゃんを撃ち抜くつもり等、微塵もなくて。




10 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:01:31.09 ID:owevEAYSO

 当然と云えば当然だ。

 雷獣公は、坊っちゃんの父。
 内藤の大旦那が、若旦那を殺す意味は無く。
 久々に父に会いに来た息子を、なぜに射殺さねばならぬのか。


 父は当然会いに来た息子の姿に驚き。
 その息子を己の雷で殺した事に、驚き。

 獣はどうすれば良いか、混乱した頭を振るって前を見る。
 そして一歩、前へと足を踏み出して。


 そうだ、確か。
 確か、あれが居た筈だ。


 坊っちゃんの父がそう頭の縁で思いながら、倒れる坊っちゃんへと近付いた。

 その瞬間、
 ばさばさと耳を撫でるはばたきが、雷獣公へと襲い掛かる。




11 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:01:44.33 ID:owevEAYSO

( ΦωΦ)「ッ!」

( ゚∋゚)「…………お止まり下さい」

( ΦωΦ)「……貴様は、?」

( ゚∋゚)「内藤さんに使える陰摩羅鬼、くっくる」

( ΦωΦ)「ほう……妖怪を増やしたか、坊主は」

( ゚∋゚)「お分かり頂けますか、黒き方」

( ΦωΦ)「ふむ、?」

( ゚∋゚)「何故どくおさんが泣いて居られるか、お分かり頂けますか」

( ΦωΦ)「ああ、解るとも」

( ゚∋゚)「そうですか」

( ΦωΦ)「ふむ……」

( ゚∋゚)「ならば血を流して下さい」

(´ΦωΦ)「……あの坊主は血の気の多い奴を従えるのが好きなのか……?」




12 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:02:01.92 ID:owevEAYSO

 ばさばさばさ、黒い羽根を撒き散らして雷獣公の前へと躍り出たのは、陰摩羅鬼くっくる。
 無表情に変わりはないが、その顔には何処と無く怒りが見え隠れ。

 拳を振り上げたくっくるに、雷獣公はだん、と大きく後ろへ跳ねる。
 振り下ろした拳は地面を抉り、腹の底に響く様な音に、どくおが顔を上げた。


 振り上げ、振り下ろされる拳。
 それを難なく避ける雷獣公。
 地面は見る間に傷だらけ。


 くっくるはあれでも、意外と真面目で従順で。
 その理由は恐らく、刷り込みとも云えるもの。

 生まれて初めに優しくされて、生まれて初めに主人を持って。
 くっくるは、実際は見た目や思考等よりも、ずうっとずうっと幼くて。


 本来ならばよちよちと歩くのがやっとの、雛。

 その雛は、父代わりとも云える主人を殺された事で、ぴよぴよと威嚇をしているのだ。


 尤も、図体が大きいと威嚇では済まないのだが。




13 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:02:32.45 ID:owevEAYSO

 とん、と軽い動きで獣は跳ねる。


( +ω+)「全く、昔のどくおと云い……」


 たん、と一歩後ろへ下がる。


( +ωΦ)「あいつも気性は荒く、幼馴染みの娘も性格は厳しく……」


 ぐるりと身を捻って拳をかわし。


( ΦωΦ)「果てにはこの雛、何と云う狂暴さであろうか……全く、次は火車に牛鬼でも従えるか?」

(;'A`)「だ、旦那様……何をのんびりと……」

(ΦωΦ )「ほう、泣き止んだか青鬼よ、古来より泣くは赤鬼だと云うに貴様は泣き虫でいかんな」

(;'A`)「あの……殴られかけながら何をそんなのほほんと……」

(ΦωΦ )「我輩がこの様なひよっこに殴られる訳があるまいて、ほれ」

(ΦωΦ )=⊃)#)∋ )「ひでぶッ」




15 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:03:26.96 ID:owevEAYSO

(##)∋゚)「…………ッ」

(;'A`)「……くっくる、くっくる」

(##)∋゚)「すぐに殴ります」

(;'A`)「いや殴るな」

(##)∋゚)「何故ですッ! どくおさんはこの様な見知らぬ輩に、」

(;'A`)「あのな……それ、坊っちゃんの親父さん……」

(##)∋゚)

( #)∋゚)

( #)∋゚)「えっ」

( ΦωΦ)「内藤の父です」

( #)∋゚)「あ、内藤の家来です」

( ΦωΦ)

( #)∋゚)


<ギブ! ギブ!!




16 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:04:10.20 ID:owevEAYSO

('A`)「良かったな坊っちゃん……坊っちゃん死んだけど、喧嘩は収まったぜ……」

( ∵)「ゴェ……」

('A`)「死んだら意味ねェよなァ……牡丹餅も食えねェし」

( ∴)

<_プー゚)フ「なんだ、それ死んだのか?」

('A`)「ああ、見ての通り死んでるよ」

<_プー゚)フ「ふーん、あのおっさんヘマしたな。焦げてんなーこいつ」

(#∴)

('A`)「あー怒るなぜあ、大丈夫大丈夫」

    スカー
<_プー゚)⊂('A` )「こいつはこう云う奴だから」

     ボタモーチ ◎
<_プー゚)フ('A` )ノ「こうして」
       メシアガーレ
<_プー◎⊂('A` )「こうして」
クエネェ! _,    ニシコリ
<_フ;д;◎('∀` )




17 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:04:34.12 ID:owevEAYSO

('A`)「こうするに限る」

( ∴)

('A`)「よく解らなかったか?」

( ∴)゙

('A`)「要するに、この蜜柑色のテレサは物に触れないから
    美味そうな飯とか目の前に置いてやるのが一番堪えるんだよ」

( ∴)"

('A`)「うん? ……ああ、これの名前?」

( ∴)゙

('A`)

('A` )「何だった?」
   _,
<_フ;Д;)フ「こんの野郎……」




18 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:04:47.95 ID:owevEAYSO

<_プー゚)フ「良いか、俺はえくすと! その黒いおっさんに従ってやってる火の玉だ!」

('A`)「触れないのを良い事に悪さをしては巫女に捕まって除霊されかけるのが日常の灯りにしかならない妖怪だ」

<_プー゚)フ

('A`)「事実だろ」

<_プー゚)フ「だからこそムカつく」

('A`)「あと頭が悪い」

<_プー゚)フ

('A`)「まァどうでも良いかそんな事、それより坊っちゃんどうすんだろう」

,,( ΦωΦ)「主人公でも変更するか、( ΦωΦ)百鬼夜行のようです」

('A`)「あんた息子殺しといて主役も強奪する気ッスか……」

( ΦωΦ)「違和感は感じまい」

('A`)「そうだけど……あの母にしてこの父ありだなァ……」




19 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:05:11.45 ID:owevEAYSO

( ΦωΦ)「冗談はさておき、おい小僧」

<_プー゚)フ「貴様にサンが救えるか」

( ΦωΦ)「黙れ」

<_プー゚)フ「さーせん」


 何処からともなく現れた、蜜柑色の簡単に描かれた幽霊の様な妖怪が、ふわふわと坊っちゃんの周りを飛ぶ。
 その妖怪の名はえくすと、火の玉の妖怪。

 火の玉と云えど、触れても熱くも何ともない、ただの灯りの様なそれ。
 それを従えるのは、坊っちゃんの父である雷獣公、なのだが。

 どうも、この火の玉、余り云う事をきかないらしい。


 雷獣公が大人しくなったくっくるを背に乗せて、のしのしと坊っちゃん達の元までやって来た。

 鼻先で坊っちゃんの肩をつつき、反応を確かめる。
 しかしぴくりともしない坊っちゃんに、後頭部を前足で踏んだ。




20 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:05:27.77 ID:owevEAYSO

(;'A`)「……旦那様」

( ΦωΦ)「ほれ起きよ、我が子」

(;'A`)「いやいや……」

( ΦωΦ)「このまま力を込めれば頭が砕けるぞ、それ起きよ、死ぬには貴様は肥えすぎだ」

(;'A`)「旦那様ぁ……」

(ΦωΦ )「貴様も貴様であるぞ、育てろとは云ったが肥えさせろとは云うとらん」

(;'A`)「初めて子供持ったもんで、つい……じゃなくてぇ……」

( ΦωΦ)「そうれ、頭がみしみし云うておるぞ、起きねば脳漿で地を濡らすぞ」

(;'A`)「…………」

( ΦωΦ)「…………」

(;'A`)「あの……」

(#ΦωΦ)「起きよと云うておろうがこの戯けッ!! 我輩の手を煩わせるか愚息めがッ!!
      我輩の雷で貴様の魂が裂けると云うかッ!! その様な愚鈍な者と育てたとでも云うか戯けェッ!!!!」

(;'A`)「ひっ!?」




21 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:05:52.45 ID:owevEAYSO

 びりびりと皮膚が震える様な怒号に、どくおは頭を抱えて縮こまる。

 それに反して、坊っちゃんの身が、ぴくりと動きを見せた。


(;'A`)「…………え?」

(;^ω^)「…………おっとさん……耳が痛いですお……」

(;゚A゚)

(#ΦωΦ)「漸く起きたか愚図めッ! さっさと身を起こせ戯けッ!!」

(;^ω^)「す、すみませんお……足を退けて下さいお……」

(#ΦωΦ)「全く、我輩の雷で貴様が死ぬ等、笑い話にもならぬわッ!!」

(;^ω^)「おー……撃ったのおっとさんですお……」

(#ΦωΦ)「すまなんだなッ! しかし結界の内に声も掛けず入る方も悪いッ!!」

(;^ω^)「ごめんなさいお……」

(#ΦωΦ)「大体、我輩の雷を受けたのは何度目だッ! そろそろ耐性をつけんかッ!!」

(;^ω^)「んな無茶苦茶な……」

(;゚A゚)




22 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:06:07.77 ID:owevEAYSO

(;゚A゚)「……ぼ、坊っちゃん……?」

( ^ω^)「お、どうしたお?」

(;゚A゚)「何で生きてんの……?」

( ^ω^)

(^ω^ )

( ^ω^)つミ´・ω・`彡 フワッ

(;゚A゚)「何その当社比三倍に膨れ上がったしょぼん」

( ΦωΦ)「それは、こう云う時の為に居るのだ」

(;゚A゚)「へ?」

(´ΦωΦ)「十年以上使えていて知らなんだのか……その狐は坊主を守る為に居るのだぞ」

(;゚A゚)

(´ΦωΦ)「……もう少し、学をつけろ、鬼……」

(;゚A゚)「……すんません」




23 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:06:44.64 ID:owevEAYSO

( ^ω^)「大丈夫かお、しょぼん」

ミ´・ω・`彡「むきゅん……」

( ^ω^)「おーよしよし、すまなかったお、痛かったおね」

ミ´・ω・`彡「むひゅー……」

( ^ω^)「おー……皮膚が焦げっちまってるお……痛むかお?」

ミ´・ω・`彡「むきゅ……」

( ΦωΦ)「帰ったら手当てをしてやれ、我輩の雷を受け、貴様の傷と痛みを吸ったのだ」

( ^ω^)「よしよし、僕の間抜けとおっとさんのうっかりの所為ですまなかったお……」

( ΦωΦ)

( ^ω^)

( ΦωΦ)「云う様になったな貴様」

( ^ω^)「おっかさんのお陰ですお」

( ΦωΦ)「ならば仕方あるまい」




24 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:06:59.81 ID:owevEAYSO

 ふわふわと静電気で膨れ上がったしょぼんの毛並みを掻き分けて、中を覗く。
 するとしょぼんの皮膚は無惨な迄に焼け焦げ、血が滲んでいた。

 痛まぬ様にと優しく抱き上げてやり、首から下げた竹筒の中にそっと戻した。


 しょぼんは、従来の管狐とは訳が違う。
 坊っちゃんの為に設えられた、専用の守りびと。

 如何にして作られたか、誰が作ったかは坊っちゃんも知らず。
 ただ、普段は愛玩動物の様に愛らしいが、
 何かがあった時には牙を剥き、身を呈して坊っちゃんを守る。

 そう考えると、このしょぼんは、下手をすればどくおよりも優秀な従者なのかも知れず。


('A`)「俺の存在価値って……何……?」

( ΦωΦ)「飯を炊くであろう」

('A`)「母親ですかい俺は……父代わりの筈だったのになァ……」

( ΦωΦ)「まあよかろう、貴様ら無事か」

( ∵)ゴェ

( ∴)゙




26 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:07:23.39 ID:owevEAYSO

( ΦωΦ)「すまなんだ、山を煩くさせて」

( ∴)"

( ΦωΦ)「我輩とて、遊びで吼えていた訳ではないと察してくれ」

( ∴)゙

( ΦωΦ)「ふむ……貴様は優秀な木霊であるな、とても聡い」

( ∴)"


 鼻先でぜあをつんつんとつついて、顔の上へ掬い上げて乗せる。
 ぜあも敵意のない雷獣公に安堵したのか、大人しく感情をあらわにする事を止めた。

 そんなぜあとはうって変わって、びこは坊っちゃんの肩に乗っかりはしゃいでいるのだが。


( ^ω^)「どくおは怪我はないかお?」

('A`)「おう、大丈夫だ」

( ^ω^)「くっくるは……」

(メメ#)∋(メ#)「大丈夫です」

( ^ω^)「ああ、うん、ごめんね」




27 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:07:38.82 ID:owevEAYSO

(メメ#)∋(メ#)「知らなかったとは云え、お父上にご無礼を働きましたので」

( ^ω^)「ごめんね……」

( ∵)ゴェェ

( ^ω^)「びこもぜあも大丈夫そうで良かったお」

<_プー゚)フ「良かったな」

(^ω^ )

(^ω^ )「誰?」

<_プー゚)フ「泣くぞ」

(^ω^ )「何で居るの?」

<_プー゚)フ「お前の親父の従者だよ」

(^ω^ )

<_プー゚)フ

(^ω^ )「へぇ」

<_プー゚)フ「本当に泣きそうだから止めて、影薄存在価値皆無クソワロタとか云わないで」




28 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:08:27.76 ID:owevEAYSO

( ^ω^)「しょぼん以外みんな無事と云う事で、おっとさん」

( ΦωΦ)「む?」

( ^ω^)「何をしてたのか、お聞かせ願いますお」

( ΦωΦ)「…………まあ、怪我をさせたのだ……云わねばならんか」

( ^ω^)「おっかさんも寂しがってますお、理由を下さいお」

( ΦωΦ)「さあ帰るぞ今帰るぞ」

( ^ω^)「先にお話し」

( ΦωΦ)「それよりしゅうだ」

( ^ω^)

( ΦωΦ)

( ^ω^)「おっかさんに息子殺しかけたってチクりますお」

( ΦωΦ)「すまなんだ」




29 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:08:42.04 ID:owevEAYSO

( ΦωΦ)「理由、な」

( ^ω^)「お山でずっと吼え続けていた理由、ですお」

( ΦωΦ)「……退けていた、何やら雲行きが怪しいのでな」

( ^ω^)「退けて……?」

( ΦωΦ)「見るが良い、西の雲が黒かろう。あちらは、外の妖怪の住処が多い
      以前の月が黒い時は、あの様な雲は見えなんだ」

( ^ω^)「お……」

( ΦωΦ)「しかし今度の月が黒い時から、あの様な暗雲が姿を見せた。
      あれは外の妖怪が、何かしらの力を持つ為に儀式をしておる証であろう」

( ^ω^)「力、儀式……町に居てちゃ、関わりのない事ばかりだお……」

( ΦωΦ)「関わりが無いとは、もう云えまい」

( ^ω^)「お?」

( ΦωΦ)「我輩が此処で、あやつらが近付けぬ様に吼えて居た。しかし、効果は殆ど見せぬ」




30 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:08:55.79 ID:owevEAYSO

( ^ω^)「つまり、おっとさんの力が通じない、と?」

( ΦωΦ)「通じる事は通じよう、しかしあやつら、我輩の事を知らぬのだ」

( ^ω^)「おー……おっとさんが怖いと、知らないから効果がない、と?」

( ΦωΦ)「うむ、見た事もない獣が吼えて居ようが、恐ろしいは初めだけ。
      慣れてしまえば、ただ耳障りなだけであろうな」

( ^ω^)「……おっとさん、」

( ΦωΦ)「解るか倅よ、あやつらが退かぬ事で、何が起きかねんか」

( ^ω^)「…………解りませんお、僕は、温室で育ちましたお」

( ΦωΦ)「良かろう、ならば父が教えよう」


 じゃり、と雷獣公の足が砂を踏む。
 西の空を見上げて、静かな顔をしていた。


( ΦωΦ)「このままでは、戦が起ころう」




31 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:09:14.43 ID:owevEAYSO

(;^ω^)「い、いくさっ!?」

( ΦωΦ)「うむ、奴等が力を付けるは、何かしらの理由があるからであろう」

(;^ω^)「そ……それが、そんな、幾ら何でもおっとさん……」

( ΦωΦ)「笑うか、大袈裟だと」

(;^ω^)「…………」

( ΦωΦ)「笑えるか、雷獣を」


 これが、その辺の妖怪ならば、そんな馬鹿なと笑い飛ばせた。

 けれどこの獣が云うと、重みが、違う。

 大体、町で相当な権力と実力を持つ雷獣公が、わざわざ足を運んで吼えていたのだ。
 雷獣公は町の地盤を作ったとも云われるあやかし、若い頃に暴れて地ならしをしたと云われている。

 町の誰もが逆らわず、雷獣公を町の父とし敬意を払う。
 それは恐怖、畏怖する対象だからこそ。


 町の外のあやかしは、世代が変わってしまったのか、雷獣公を知る者も減ったのだろう。
 知っていても、老いた事を知っている。




32 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:09:48.41 ID:owevEAYSO

 雷獣公が吼えた。
 雷獣公が云った。

 それだけで、首を横には振れない程の説得力があって。


( ΦωΦ)「倅よ、急いて西に行き様子を見に行くが良い」

(;'A`)「旦那様ッ!?」

( ΦωΦ)「この温室育ちの平和呆けしたがきに無茶を云うなと思うか?」

(;'A`)「全くもってその通りっすよ!!」

( ^ω^)

( ΦωΦ)「しかし我輩が行けば余計に事が拗れかねん、それに、多少は場数を踏むべきである」

(;'A`)「でも……坊っちゃんは旦那様が思うよりずっとヘタレで……」

( ^ω^)




33 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:10:04.51 ID:owevEAYSO

( ΦωΦ)「杞憂であれば良いと思う、されど我々町の妖怪には外の奴等が考える事は解らぬ
      我々が思いもせぬ方法で、我々が思いもせぬ事をするかも知れぬのだ」

(;'A`)「……例えば、町を襲ったり?」

( ΦωΦ)「理由はなくとも、奴等はそれをしかねんのだ
      昔の我輩の様に、ただ遊ぶ様に人を殺す事も、十二分に考えられよう」

(;'A`)「…………元、外の妖怪だから、ですか」

( ΦωΦ)「ああ、我輩もしゅうを娶る迄は荒くれろまねすくであった」

( 'A`)

( ΦωΦ)

( 'A`)「旦那様」

( ΦωΦ)「何だ」

( 'A`)「荒くれ」

( ΦωΦ)「云うな」




34 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:10:28.70 ID:owevEAYSO

( ΦωΦ)「あー取り敢えず、西の方から悪い気配を感じるから貴様ら偵察に行け
      悪い予感が当たったら町と外の戦になりかねんから、心して行く事、良いな」

('A`)「旦那様は?」

( ΦωΦ)「我輩は町であやかし共に呼び掛ける
      我輩が吼えても意味は無いに等しかったが、我輩が出向けば余計に荒れる」

('A`)「成る程」

( ΦωΦ)「それに我輩も早くしゅうに会いたい」

('A`)

( ΦωΦ)

('A`)「旦那様」

( ΦωΦ)「もとい、しゅうが寂しがって余計な被害が出かねんからな」

('A`)「…………じゃあ、今日は一先ず、帰りましょうか」

( ΦωΦ)「うむ、乗れ貴様ら、狐の手当てもせねばならん」




35 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:10:52.99 ID:owevEAYSO

( ^ω^)「あーおいてけぼりだった……びことぜあはどうするお?」

,,( ∵)

( ∴)っ< ∵)

(∵;(⊂( ∴)"

( ^ω^)「お、残るかお?」

( ∴)゙

( ^ω^)「ああ……木霊は森から出ると弱るのかお、じゃあしょうがないお」

(´∵)

( ^ω^)「また遊びに来るお、元気でおー」

( ∵)ノ

( ∴)゙

('A`)「すっかり意思の疎通が……」




36 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:11:07.51 ID:owevEAYSO

 雷獣公の背中にくっくるを乗せ、坊っちゃんとどくおもひょいと跨がる。
 ごうと大きく一つ吼えてから、雷獣公は地を蹴った。

 宙へとぶわり舞い上がった、しっこくの獣。
 下では木霊達が手を振って、坊っちゃん達を見送っていた。


 空を駆ける様に、陽の光を裂いて黒い影が地へと降りる。
 それを見た町の者達は恭しく頭を垂れて、雷の獣へ敬意を表す。


 山頂から姿を消した雷獣公に、坊っちゃん達。
 その背中を見送りながら、三匹はぼんやりと空を見上げていた


( ∵)

( ∴)

<_プー゚)フ

(∵ )

(∴ )

<_プー゚)フ「解ってたよ、置いてかれるって」




37 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:11:25.57 ID:owevEAYSO

 雷獣公に乗せられ、束の間の空の旅を楽しむ二人と一匹。
 空から見下ろす町の風景は、何時もと違った不思議な感覚。

 おー、と坊っちゃんが楽しげに声を上げた瞬間、雷獣公の体は一気に下へと傾く。
 そして、だん! と音をさせて、地面へと降り立った。


 雷獣公が降りた場所は、毒婦の君が待つ雷獣邸の目の前で。
 もう少し飛んでいたかったな、と坊っちゃんは静かに頬を膨らませた。


( ^ω^)「おー……久々だお」

( ΦωΦ)「たまには顔を出せ、愚息め」

(;^ω^)「す、すみませんお……」

( ΦωΦ)「そら降りろ、しゅうに顔を見せて行け」

( ^ω^)「はいですおー、今日会ったけど」

(´ΦωΦ)「まあた分身作りよったか……」

( ´ω`)「えれー目にあいましたお……」

(´ΦωΦ)「……すまなんだな」




38 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:12:05.94 ID:owevEAYSO

 坊っちゃんとどくおが雷獣公の背から、くっくるを持って降りる。

 すると雷獣公は二足でひょいと立ち上がり、その姿を変えた。

 長い黒髪を一つに束ねた、黒い着物を纏う中年の大男。
 いささか若作りな風貌ではあるが、その姿こそが、雷獣公の人としての姿で。

 人の形を成しても溢れるは、威風堂々の威厳と力強さ。
 それも、なかなかの男前である。

 厳めしい顔をした雷獣公は、玄関戸口へ手を伸ばし。


(*ΦωΦ)「今戻ったぞしゅう!! 我輩である!!」

( ^ω^)

('A`)

(メメ#)∋(メ#)


 厳めしい顔が、台無しであった。




39 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:12:30.72 ID:owevEAYSO

 しかし、妻である毒婦の君のお帰りなさいを期待していた雷獣公の耳に届いたのは、
 ずりずりと廊下を這いずる音と、幼く柔らかい声音だった。


ζ(゚ー゚*ζ「あ、お、おかえりなさいませ、だんなさま!」

( ΦωΦ)


 ふわふわと柔らかそうな髪を二つに結わえた幼い娘。
 桃色の可愛らしい振り袖は見覚えのある物だが、その下から伸びるのは蛇の尾。

 しゅうの着物を着てはいるが、可愛らしい娘ではあるが、肝心の中身が少し違う。

 雷獣公は娘を見下ろしながら、くに、と首を傾げて己の顎を撫でる。


ζ(゚ー゚*ζ「…………だ、だんな、さま?」

( ΦωΦ)

( ΦωΦ)「縮んだな、しゅう」

ζ(゚ー゚;ζ「う、うぇ?」




40 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:13:13.07 ID:owevEAYSO

( ΦωΦ)「しかし懐かしい着物を着ている、桃色とは珍しい」

ζ(゚ー゚;ζ「あ、あの、ぇ、その、ぁの……」

( ΦωΦ)「如何にした、しゅうよ」


 不思議そうな顔の雷獣公。
 そのごつごつとした手が幼子の頭を撫でるが、雷獣公は依然不思議そうな顔で。

 後ろからそれを見ていた坊っちゃん達は、何とも云えない苦笑い。

 戸惑いを隠せない幼子が、視線をあちらこちらへ向けていると
 屋敷の奥から、先程より大きな何かが這いずる音。

 そして、雷獣公が待ち望んでいた声が耳へと舞い込んだ。


lw´‐ _‐ノv「しゅうこっち」

(ΦωΦ*)「しゅう!!」

( ^ω^)

('A`)

(メメ#)∋(メ#)




41 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:13:29.64 ID:owevEAYSO

 手足の千切れた毒蜘蛛しゅうが、ずりずりと地面を這ってやって来た。

 その姿は本来の半人半蜘蛛のそれではなく、
 右の手足を無くしてはいるが、人間の姿を象っていた。

 かたわの女が廊下を這いずる姿は、知らぬ者が見れば恐怖を煽るであろう。
 しかしそれが誰かを知っていれば、異様な迄に美しく扇情的で。

 前の開いた襦袢から溢れ出す豊満な乳房が、床に押し付けられてぐにゃりと歪んでいた。

 その前にしゃがみこんだ雷獣公が、両腕をしゅうの脇へ差し込み、抱き上げる。
 雷獣公の腕の中に収まり、人形の様に抱かれたしゅうは左腕を首へと回した。


lw´‐ _‐ノv「お帰りなさいましな、旦那様」

( ΦωΦ)「嗚呼、しゅう、寂しい思いをさせたな」

lw´‐ _‐ノv「はいな、とおっても」

( ΦωΦ)「すまなんだしゅう、我輩は此処に居るぞ」


( ^ω^)




42 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:13:48.34 ID:owevEAYSO

lw´‐ _‐ノv「お坊っちゃんに鬼の子ちゃんも、お久しゅうね」

( ^ω^)「おっ、お久し振り? ですお、おっかさん」

('A`)「今日振りですね、しゅう様」

(メメ#)∋(メ#)「このお方が……」

lw´‐ _‐ノv「あらん、雛ちゃんは初めまして、でありんすか?」

(メメ#)∋(メ#)「はい、お初にお目にかかります、くっくると申します」

lw´‐ _‐ノv「おやまあ、礼儀の正しい事。お坊っちゃんをよろしくね、雛ちゃん」

(メメ#)∋(メ#)「はっ!」

( ΦωΦ)「所でしゅうよ、また分身を作ったな」

lw´‐ _‐ノv「はいな、寂しかったもので」

( ΦωΦ)「ならば仕方あるまい」

( ^ω^)




43 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:14:14.51 ID:owevEAYSO

lw´‐ _‐ノv「でも、旦那様がお戻りになられて、幼子ちゃんもやって来んした」

( ΦωΦ)「もう寂しくはないか?」

lw´‐ _‐ノv「はいな、幸せにありんす。お山では、何かありんしたか?」

( ^ω^)「雷に撃たれたお」

lw´‐ _‐ノv

( ΦωΦ)

lw´‐ _‐ノv「旦那様」

( ΦωΦ)「心よりすまんと思っている」

lw´‐ _‐ノv「大暴れはなさらなかったのね」

( ΦωΦ)「もう歳だ、暴れる体力は無い」

lw´‐ _‐ノv「夜はわっちの上でお暴れなさる癖に」

( ^ω^)「そう云う話題はそこまでだ」

lw´‐ _‐ノv「あらん」




44 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:14:31.42 ID:owevEAYSO

 雷獣公の腕の中で、ころころと笑うかたわの女。
 豊満な肉体をした、麗しきその人こそが、坊っちゃん達の母である。


 毒婦の君と云う禍々しい通り名からは、想像も出来ない程に穏やかなほほえみ。
 昼頃に訪れた、幼いしゅう様とはまるで雰囲気が違われた。

 これが本来の姿であり、あれは半端な分身に過ぎない。

 とは云え、顔はやはりそのままだ。
 紫の髪に細い目、このしゅう様が纏うのは、紫色の襦袢だが。

 どこかふわふわとした掴み所のない雰囲気も、当然だが似てはいる。


 相変わらず、我が母ながら美しいと坊っちゃんは笑う。
 母らしい事はその身体によって出来なかったが、それでも坊っちゃんの母に代わりはなく。

 けふ、と小さく息を吐いたしゅう様の口許に、牡丹餅の餡がついている事に少し笑った。




45 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:14:49.67 ID:owevEAYSO

( ΦωΦ)「所で、このお稚児は如何に」

ζ(゚ー゚*ζ「で、でれともうします! 今日から、その、しゅうさまのおせわを!」

( ^ω^)「おーでれちゃんかお、おっかさんのお世話にって呼んだんですお」

ζ(゚ー゚*ζ「はいっ、ないとうさんのおかげで、あの、おしごとさせていただけて」

( ^ω^)「そう気張らなくても良いお、頑張るんだおーでれちゃん。うりうり」

ζ(´ヮ`*ζ「は、はいー……」

( ^ω^)(似てるなあこの姉妹)

( ΦωΦ)「ほう、ほう、ふむむ……よろしく頼むぞ、でれや」

ζ(゚ー゚*ζ「はっ! は、はい、だんなさま!」

( ΦωΦ)「夜は寝所へ近付かぬ様にな」

( ^ω^)(このじじい)




46 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:15:20.76 ID:owevEAYSO

('A`)「そういやァ、でれも百鬼夜行を手伝ってくれンのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「は、はい! もちろんです! ね、しゅうさま!」

lw´‐ _‐ノv「ん、そうでありんすね」

('A`)「毒婦の君もお手伝いして下さるのか」

lw´‐ _‐ノv「はいな、旦那様もお戻りになられたし」

('A`)「へいへい、有り難ェ」

ζ(゚ー゚*ζ「んと、でれは何をすればいいんでしょうか?」

('A`)「その時になったらちゃんと云う、それまではしっかり働いてな」

ζ(^ー^*ζ「はい! わかりました!」

lw´‐ _‐ノv「でれちゃんは働き者にありんす、姉様に良く似たよいこよいこ」

ζ(´ヮ`*ζ「え、えへー……お姉ちゃんをほめられるの、うれしいですー」

lw´‐ _‐ノv「あらん、ほんによいこだ事」




47 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:15:34.78 ID:owevEAYSO

( ^ω^)

( ΦωΦ)

( ^ω^)「所でおっとさん」

( ΦωΦ)「む」

( ^ω^)「百鬼夜行するんですが」

( ΦωΦ)

( ^ω^)

( ΦωΦ)「手伝おう」

( ^ω^)「きたこれ」

( ΦωΦ)「仕方があるまい」

( ^ω^)「息子からのお願いだから?」

( ΦωΦ)「しゅうが手伝うならば、我輩も手伝おう」

( ^ω^)




48 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:15:53.10 ID:owevEAYSO

lw´‐ _‐ノv「あらあらん旦那様、わっちが居たらお手伝いなさると」

( ΦωΦ)「当然であろう、しゅうが居るのだぞ」

lw´‐ _‐ノv「やん、愛されてる?」

( ΦωΦ)「無論」

lw´‐ _‐ノv「わっちもお慕い申しておりますわ」

( ΦωΦ)「ふむ、我輩もであるぞ、しゅう」

lw´‐ _‐ノv「やあん、旦那様ったら」


ζ(゚ー゚*ζ。o(なかよしだー)

( ^ω^)。o(胸焼けしてきたお)

('A`)。o(年甲斐のねえ馬鹿夫婦)

(メメ#)∋(メ#)。o(zipで)




49 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:16:12.48 ID:owevEAYSO

( ^ω^)「あー……おっとさん、おっかさん」

( ΦωΦ)「む」

lw´‐ _‐ノv「はいな」

( ^ω^)「胸焼けしてきたから帰りますお、でれちゃんの前で変な事はせんで下さいお」

( ΦωΦ)「ふむ、ではまた来るが良い」

lw´‐ _‐ノv「またいらっしゃいましね、お坊っちゃん」

( ^ω^)「はいですお、それでは、これにて」

('A`)「失礼致しやした」

(メメ#)∋(メ#)「失礼致します」

ζ(゚ー゚*ζ「んと、お疲れさまでした!」

( ^ω^)

( ^ω^)「あれ、えくすと居らんお」

( ΦωΦ)「気のせいだ」




50 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:16:41.34 ID:owevEAYSO

 坊っちゃんとどくおが頭を下げて、でれの頭を撫でてから外へ出る。
 前が見えるのか怪しいくっくるの背に乗ると、手を振りながら雷獣邸を後にした。

 その後ろ姿を三人で見送ると、でれは直ぐ様ずりずりと廊下を這いずる。

 散らかり放題の部屋を片付ける為に、そこらじゅうの着物やら何やらを拾い集め
 あるべき場所に戻したり、洗濯の場へと集めたり。

 幼いながらも精一杯、一生懸命なその姿は、ひたすら愛らしかった。


 雷獣公はしゅうを抱いたまま、奥の座敷へと足を進める。
 そして赤い布団の上に下ろすと、その隣へと座った。

 広い肩に身を預け、しゅうは目ででれを追う。
 下半身は蛇ではあるが、普通の女の子。

 健気で可愛らしい、娘。


 しゅうはきゅ、と眉を寄せて俯き、額を雷獣公の肩に押し付けた。
 雷獣公はそんなしゅうの肩へ腕を回し、でれを見る。

 その目は、妙に、寂しそうな物で。




51 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:16:58.35 ID:owevEAYSO

lw´‐ _‐ノv「……わっちらの御子も、わっちらが育てれば、こうなりんしたか」

( ΦωΦ)「分からぬ、しかし我らが御子は今も幸せであり、幸せであった筈だ」

lw´‐ _‐ノv「……御子の幸せが、わっちの幸せにありんす」

( ΦωΦ)「御子としゅうの幸こそが、我輩の命」

lw´‐ _‐ノv「…………愚かな母で……妻で、ごめんなさいまし……ね」

( ΦωΦ)「否々……否、しゅうは我輩の、至高たる存在」

lw´‐ _‐ノv「……ごめんなさい……な」

( ΦωΦ)「謝るな、謝るなしゅう……
      その手足を引き換えに、其方は御子を、」

lw´‐ _‐ノv「育てられねば、母とは云えませぬ……」

( ΦωΦ)「しゅう……」




52 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:17:24.23 ID:owevEAYSO

lw´‐ _‐ノv「この身を喰い尽くされ様とも、守り、育てねばならぬ
      でなくば、母とは云えぬのです……」

( ΦωΦ)「止めよ、止めよしゅう…………止めるのだ」

lw´‐ _‐ノv「旦那、様……旦那様……」

( ΦωΦ)「しゅうが居らねば、我輩は息をする事も叶わぬ……しゅう」

lw´‐ _‐ノv「ああ、ああ……あああ……
      この足らぬ腕では、御子を抱く事も出来ませぬ……」

( ΦωΦ)「しゅうの腕の代わりに、我輩の腕を差し出そう
      しゅうの脚の代わりに我輩が地を踏もう
      しゅうの目の代わりに我輩が全てを見渡そう」

lw´‐ _‐ノv「旦那、様」

( ΦωΦ)「我輩の胸以外では泣くな、嘆くな、その涙を拭うは我輩の舌であれ」

lw´‐ _‐ノv「はい、はい旦那様……旦那様……」




53 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:17:42.45 ID:owevEAYSO


 荒れる空に、荒れるは運命。

 それでも愛しき者の舌へ、
 甘露なる幸を乗せようと立ち回る。

 それは人もあやかしも、何も変わらぬ事で。


 西の空はずしりと暗く、
 町の者も、それに気付き始める。

 何が起こるか未だ解らず、
 ただただ時は流れ行く。



 『四話前編 おわり。』




54 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/03 /14(日) 21:18:02.23 ID:owevEAYSO
支援有り難うございました。

これで、リメイク部分が終了です。
ここから先はオリジナルとなって行きますが、どうぞお付き合い下さいませ。

それでは、これにて失礼!




57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03 /14(日) 22:17:06.81 ID:5zf08AwO0
乙!





次→( ^ω^)百鬼夜行のようです【第五話 百八煩悩 疎ましく。 前編】



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