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上条「約束したよな?例え地獄の底でも、お前を ――― 」その3最初から→
上条「約束したよな?例え地獄の底でも、お前を ――― 」
542 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:16:20.60 ID:BBsHBRkt0
手摺りにもたれて街を眺める。
そういえば、こうして街を眺めるのは二回目だ。
この場所には何度も来てるのに、落ち着いてこの場所にいたことは殆どない。
大抵ここは通り過ぎる場所だから。
走って駆け抜けていくだけの場所。
アイツに特大の雷撃をぶつけたのも此処だ。
結局通用しなくて、ヘトヘトになって帰ったこともあった。
徹夜で、学校の授業は眠くて眠くて死ぬかと思った。
死ぬといえば、死にたいくらいの絶望に沈み込んでいたときも此処でアイツに雷を食らわしてやったけ。
あはははは
何だか物騒だわ。
ホント、振り返るとアイツがビリビリって呼ぶのもわかる。
だって雷撃ってばかりだもん。
素直になれなくて、手より先に雷撃っちゃったりして何してるんだか。
ホントは、苦しんでいる人の為の力だった。
筋ジストロフィーで苦しんでる人の為の力。
クローンだとか、ネットワークだなんて想像もしなかった。
クローンの子達を否定するつもりはないけど。
543 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:17:09.97 ID:BBsHBRkt0
でも、それも今日で最後。
これで最後。
さっさと最後にしたい。
これでおしまいにしたい。
空を見上げる。
鬱陶しいくらい重そうな雲ばかり。
お月さまなんて見えやしない。
でも、その方がいいかも。
これからのことは月にも星にも見られたくない。
誰にも見られたくない。
これからの私は、きっと最低だから。
最低にみっともないだろうから。
アイツに…当麻の前では、最後まで見せなかった…
意地と見栄で誤魔化してた、最低の御坂美琴だから。
見せるのはたった一人でいい。
コイツにだったら見られても構わない。
コイツにだけはそんな意地も見栄も必要ない。
544 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:17:35.49 ID:BBsHBRkt0
そうだよね、一方通行。
545 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:19:01.68 ID:BBsHBRkt0
「何だよ、ずいぶんとシケたツラしてンじゃねェか超電磁砲」
杖を突く、乾いた音。
夜の闇の中から這いずり出てきたみたいに、不気味な空気を纏った姿。
私がこの世で一番憎くて、嫌いで、目障りな奴。
きひ、そんな嫌悪感しか抱けない笑顔で私を馬鹿にしたように見つめてくる赤い瞳。
「三下にフラれたってのは、ありゃマジみてェだなァ…きひひひ」
喉を振るわせて笑う。
改めて再確認。
私はやはりコイツが嫌い。
不気味な赤い目も、得体の知れない白い髪も、見下したような口元も。
コイツの全てが気に入らない。
でも、嘗て、アイツが止めた日のように私の中に恐怖心はない。
アンタさ、前に言ったよね?
「あァ?」
私には殺されても文句は言えないって。
「………」
あれってさ、まだ有効な約束だったりする?
546 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:20:02.30 ID:BBsHBRkt0
一方通行は何も思っていないみたいな、静かな目で見てくる。
呆れたようにも見える
それが感に障る。
まるで私が馬鹿なことを言ってるみたいじゃない。
私にはコイツをどうにでもしてもいい、そういう権利がある。
私だけじゃない。
妹達みんなが、コイツをどうにでもしたって良い。
八つ裂きにしても、奴隷のように扱っても、ゴミのように蔑んでも。
そうされてもコイツには文句一つ言えない。
それだけのことをコイツは今までやってきたのだから。
一万人の妹達の命を救ったから、それでチャラに出来るの?
プラスとマイナスでゼロになる。
そんな簡単なものなの?
たとえ一万人の命を救うことが出来なくたって、一万人の命を奪わないのに越したことはない。
仮に、コイツが10万人の命を救ったからって、それで一万人の命を奪ったことが無くなりはしない。
私が散々踏みにじられたことが帳消しにもなりはしない。
だから私にはコイツを糾弾する権利がある。
たとえ、救われた妹達にとってのヒーローだとしても、そんなこと関係ない。
コイツが幸せになるなんて間違ってる。
人を散々もてあそんで、命を奪っておいて。
コイツに殺されたあの子達が、生きていれば知ったかもしれない喜びをコイツが知るなんて間違ってる。
コイツが、そのために支払った代償がどれだけあろうとも関係ない。
547 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:22:30.75 ID:BBsHBRkt0
「ったく……クソガキといい…どいつもコイツも攻撃的な奴ばかりだな…全部テメェの遺伝子のせいってか?」
面倒くせェ、なんて皮肉気な声。
その癖、顔は全然嫌だとは思ってないような。
あの子達のことを思い出してるのか、何処か幸せそうでもある。
あははあははははははっははははははははははははははっははははっははははああはは
ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
あははははははっはああはははははははははははははははははっははははははっはははは
ふざけるな。
コイツが幸せになるなんて、そんなこと私が認めない。
548 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:23:55.40 ID:BBsHBRkt0
なんでアンタが笑ってるのよ…なんでアンタが幸せそうにしてるのよ…
嫌な声。
余裕も、思いやりも何も無い声。
誰の声なのかしら。
アイツがびっくりしたように、少し目を丸くする。
ふふふ、アンタでもそんな人間らしい顔するんだ。
そういう顔すると、アンタって結構可愛いんだね。
初めて知ったわ。
きっと、あの子達はコイツの前では笑ってるのだろう。
これは予想じゃなくて、事実。
昼間目にした、あのとろけそうな笑み。
何て幸せそうなんだろう。
姉と、母と、そう自覚する私はそれを祝福すべきなんだろう。
きっと、そうだ。
不遇な出生。
悲しい出自。
そんなあの子達がようやく手にした安住。
何て素晴らしいんだろう。
自分を守ってくれる、最高の騎士なのだコイツは。
いや、王子様なのかしら?
ホント、素敵だ。
自分の大好きな人が、自分の事を考えて、自分の側にずっといてくれるなんて。
それは何て幸せなんだろう。
549 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:25:06.32 ID:BBsHBRkt0
「お前……何泣いてンだよ」」
あははあははははははっははははははははははははははっははははっははは
はああははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははは ――――………
……―――― 何でアンタが辛そうな顔してるのよ?
私が泣いてる?
ハァ?
何よ、同情?
馬鹿で哀れな奴だって、そう思ってるの?
550 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:26:31.13 ID:BBsHBRkt0
なんでアタシが泣かなきいけないのよぉッ!!!
あははは、ちょっと、誰この声。
ヒステリック過ぎない?
みっともない。全然スマートじゃない。
火花が闇の中で、鮮やかに散る。
ヤだな、思わず放電しちゃった。
アンタがくだらない事言うから、街灯が割れちゃったじゃない。
「テメェは言えたはずだろォが。行くなって。言う権利があったはずだろォが、テメェには…」
忌々しそうに呟く一方通行。
何言ってるのよ。
何知った風に言ってるのよ。
大体行かないでって、そう言って何になるってのよ。
「どうにもならねェかもしれねェ……あの馬鹿はクソが付く頑固な奴だからな……」
アンタ、知ってるの?
「テメェは、そンなンになる前に、いくらでもぶつけることだって出来たンだろォが…」
何言って…
「クソが……ガキが生意気にカッコつけるからそォなンだよ」
551 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:29:48.30 ID:BBsHBRkt0
!?
見透かされた気がした。
私のつまらないプライドが。
それで、結局自分を追いつめてるのを。
よりにもよってコイツに。
こんな奴に。
こんな悪魔に。
あんた…なんで生きてるのよ!!あの子達を殺しておいて、そんなアンタがなんで、
あの子達に幸せを与えてる奴に。
あの子達に幸せを貰ってる奴に。
なんでそんな満たされた顔で生きてるのよ!!
おかしいじゃない。
散々踏みにじって、奪って、足蹴にして、あざ笑って、貶めておいて。
その分傷つけばそれでいいわけ?
傷ついた分だけ幸せになれるなんて、そんな決まりがあるの?
552 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:30:24.11 ID:BBsHBRkt0
だったら、私はダメなの?
私だっていっぱい傷ついたって、そう思ってたのは私の思いこみなの?
もっと傷つかないといけないの?
もっと、もっと、たくさん踏みにじられないと、私の番は来ないの?
そんなはずないよね。
そんなことあっていいわけないよね。
当麻を失って、これ上どうやって傷つけば良いのよ。
当麻がいないのに、どうやって幸せになれば良いのよ。
なんで…なんでアタシがこんな気持ちにならないといけないのよ!!
アンタなら知ってるの?
アンタなら、報われる為の方法を知ってるの?
だったらさ、答えを教えてよ。
ねぇ、答えてよ!!!
553 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:32:21.28 ID:BBsHBRkt0
「知ったことか……教えれるもンならとっくに教えてやってるよ」
一方通行はくだらないと、そう言いたげに吐き捨てる。
その瞬間、私の中の最後の躊躇が消えた。
火花が弾ける。
あああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!
指先を白光が走る。
その瞬間だけがやけにゆっくりと見て取れた。
気づけば、目の前には倒れ伏した白髪頭。
街灯が火花を弾く以外に、何の音もしない暗闇の中、私は大きな困惑と、小さな安堵を持て余す。
何故コイツは倒れているのだろうという戸惑い。
小さく身じろぎする姿への安堵。
手加減をしたのはコイツを思ってのことではない。
人を殺めることへの忌避感だ。
つまりは、私自身の為のもの。
正直、本当に反射しないとは思ってなかった。
コイツのことを信用なんて出来るわけがないじゃない。
仮に本当だとしても、せいぜい逸らすくらいだと思っていた。
まともに浴びるとは思わなかった。
能力を使う暇もなかったのかもしれない。
でも、本音はどうでもいいと、そう思っていた。
それによって、死ぬことになっても。
でも……
でも、もし仮にこいつを失ったら、妹達はどうするのだろう。
今の私のような気持ちになるのだろうか?
それとも、仕方がない末路だと、案外あっさりと引くのだろうか。
浅ましい好奇心がぬるりと鎌首をもたげる。
554 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:34:50.72 ID:BBsHBRkt0
震える腕に力を込めて、華奢な体がゆっくりと起きあがる。
思い切り手加減をしたとはいえ、少しびっくりする。
起きあがった一方通行は、顔中に馬鹿にしたような笑みを浮かべていた。
「かは、はは……温いなァ……これで第三位とか……きひひひひ、クソ雑魚すぎンだろ」
杖を付いて、思い切り馬鹿にした笑み。
膝が震えているはわかってるのに、どうしてそんな口が利けるんだろうか。
「やっぱり、アレだなァ……身体まで使ってもあっさり捨てられた挙げ句に……くだらねェ意地で……
それも無駄にしちまう馬鹿じゃこれくらいが限界か」
腕を振るったのは無意識だった。
ピンボールを弾いたように、細い身体が跳ね上がる。
ぶつけた電撃は、あっさりと華奢な身体を打ちのめす。
「かははは……はは……」
また……起きあがる。
「何なんですかァ~?……静電気しか起こせないンですかァ超電磁砲さンはァ?」
小馬鹿にした笑みに、腕を振るう。
起きあがる度に私は腕を振るう。
殺さないように手加減をして。
その笑みを打ち消してやりたくて。
けれど、次第に、私の中に別の感情が沸き始める。
嘗て手も足も出なかった第一位を一方的に叩きのめしてるという確かな快楽。
一方通行は、ただ、立ち上がるだけで、何も言わない。
というか言えないのだろう。
舌が痺れて何もしゃべれないはずだ。
もし喋れたらなんて言ってただろう。
相変わらず憎まれ口か?
それとも命乞い?
奪った命への言い訳がましい言葉の羅列だろうか?
なんでここまで私に手を出さないのか、そこまでこだわる必要あるのだろうか。
そもそも、そこまで義理堅いなら最初からあの研究に荷担しなかったのではないだろうか。
そんな疑問は理性の部分としては理解してるのに、私はそこから目を背けてしまう。
コイツが、こんな風に、ひたすら打ち据えられてる理由なんて何だって良かった。
けれど、叩きつけた雷撃が10を越えた頃、荒くなった息を整えながら気づいた。
コイツ…能力どころか、チョーカーに指を伸ばしさえしていない。
555 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:35:50.32 ID:BBsHBRkt0
馬鹿じゃないの?
けれど、感謝なんてしない。
そんなこと当然なのだから。
何よ、そうやって……償ってるつもり?
ただの自己犠牲に酔ってるだけの自己満足じゃない
ふと、昏い好奇心が沸く。
ポケットを探ると慣れ親しんだ感触。
体温で温い感触になったコインだ。
だったら、試してあげる。
コレにだって同じように出来るのか。
一方通行は顔色を変えない。
いや、そんな余裕もないのだろう。
目の焦点が合っていない。
痛覚も麻痺しているのかもしれない。
それでも構わずにコインを指で弾く。
狙いを定める。
ずっと、あの時夢想し続けていたことを実現させるのもいいかもしれない。
この学園都市第一位をありったけの電撃で貫くという。
脳裏を、小さな疑念がよぎる。
本能的に能力を使うかもしれないと。
それによって、反射された超電磁砲を浴びて死ぬかもしれない、と。
556 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:37:03.94 ID:BBsHBRkt0
でも、本音はどうでもいいと、そう思っていた。
それによって、私が死ぬことになっても。
だから、私は迷うことなく、指でコインを弾く ―――――
―――――― 瞬間、私は目にした。
両手を広げて、じっと私から目を逸らさない一方通行の姿を。
いつか、どこかで見た姿。
私の、私自身さえ信じていない良心を信じきった、馬鹿な奴。
それと同じ馬鹿な瞳がじっと見つめていた。
557 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:38:14.21 ID:BBsHBRkt0
「ダメェーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
558 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:40:01.04 ID:BBsHBRkt0
――――――
――――――――
―――――――――……
痛みすら感じられねェ中、分厚い幕を重ねられたみてェだ。
そんな中を、遠い叫び声が聞こえていた。
気のせいか?
そもそも、俺は今何をやってンだ?
起きあがろうとするが、いっこうに力が入らねェ。
声も出ねェ。
体中が麻痺したみてェだ。
もしかして死ンじまったか?
そう思っていると、温かけェ感触が唇にした。
夢か?
「―――― きなさいよ……」
いや、違う…
「ねぇ、起きなさいよ………」
夢じゃねェ。
「………起きてよ……お願いだから………」
夢なんかじゃねェ。
瞼に力を入れる。
じりじり、苛つくうすのろぶりで開いた視界には不細工出みっともねェ泣き面。
ボロボロボロボロと、鬱陶しいくれェの泣き面。
温かかったのはこいつの涙か。
ガキかテメェは。
……てか……お前………
結構ピーピー泣くンだな。
「バカ……」
560 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:42:37.68 ID:BBsHBRkt0
本当に馬鹿だ。
心臓が止まっていたのに。
超電磁砲の余波で、簡単に死にかけてしまっていたくせに。
何余裕だぜって感じに笑ってるのよ。
人工呼吸が功をそうしたのか、それとも、電気ショックが上手くいったのかわからない。
ただ、ただ、夢中で私は此奴を助けようとした。
自分が、どうしようもない取り返しのつかないことをしてしまったと、本能が叫んだ。
失くしちゃいけないものを、自分で捨てようとしていると、何処かから声が聞こえた気がした。
コイツは馬鹿だ。本当にバカだ。あの馬鹿以上に馬鹿かもしれない。
あの右手も無いのだから、かもしれないのではなくて、確定だ。
「泣いてンじゃねェよ……鬱陶しい…」
無茶言わないでよ、この馬鹿。
何であんな無茶したのよ?
ただの八つ当たりなのに……そうよ。
これはただの八つ当たり……手頃な相手を見つけて、ただ、ただ理不尽をぶつけたいがための……
そんなもの…付き合う必要なんて無いのに。
もしかして、私が当てないなんて、本気で信じてたっての?
あのバカみたいに。
ハッ、と一方通行が笑う。
馬鹿を言うな、そう言いたげに。
561 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:44:44.16 ID:BBsHBRkt0
「どこのお人好しのヒーロー様ですかァ?おめでてェなァおい」
ボロボロの身体で何悪ぶってるのよ、馬鹿じゃないの?
「フン……うるせェよ。テメェごときの電撃なンざモノ数じゃねェンだよ」
何言ってるんだか。
最後の超電磁法外さなかったら、今頃アンタ跡形もないわよ。
「だろォな」
あっさりと言い放つ一方通行にとっさに言葉が出ない。
まるで私が最初から外すって思ってたみたいに。
何よ……
アイツみたいに、わかってるんだぜ、みたいな顔しないでよ。
「馬鹿が……どンだけブチ切れてよォと……そういうタマじゃねェだろォが……」
…………
……………
「テメェはよォ……どンだけ腐っても、トチ狂っても……簡単に人を殺れるよォには出来てねェンだよ……馬鹿が……」
…………
………………
…………………
ヘタクソ。
562 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:45:40.69 ID:BBsHBRkt0
「あァ?」
ヘタクソって言ったのよ。
「何がだよ……」
もっと、上手く慰めなさいよ……
「チッ……」
本当、女心のわからない奴。
膝の上の、その今世紀最大の馬鹿は、何でだろう、悔しそうな顔をしてる。
そこまで悔しかったの?ヘタクソ呼ばわりが。
アンタのそんな顔見られるならもっとこれからも呼んであげよっか?
「違ェよ……」
ぼそりとつぶやく。
何がよ?
「うるせェ……俺が勝手にムカついてるだけだ……」
わけがわかんない。
わけがわかんないけど……
ありがとう。
「何がだよ……」
んん~~
とりあえず、スッキリしたことについて?
「サンドバッグかよ……」
ああ、それいいわね。
「ぶっ殺すぞ……」
そんなボロボロで言われてもね。
「フン……」
563 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:47:52.03 ID:BBsHBRkt0
ふふふふ……
あは…あはははは。
「……何だよ急に……キメェな……」
あははは……
どうしてかな…何だか、急に笑えてきちゃった。
ホッとしたからかな。
「知るか……」
うん。そうだね。
答えを預けるのはズルいよね。
私は、多分ホッとしてるんだと思う。
ギリギリの、本当にギリギリのところで、踏みとどまれたことに。
心底ホッとしてるんだ。
アイツを失くしても、それでも、私は、何もかも手放したかったわけじゃなかったんだって、気づけたから。
上手く説明できないけど、アイツだけが、私のすべてだって思い込もうとしてただけで、全然そんなことないって。
ギリギリで、それに気づけたことが嬉しいんだ。
悲しいけど、嬉しいんだ。
それと、踏みとどまらせてくれる馬鹿がいてくれたことにも。
こんな馬鹿な私を、どうにかしようとしてくれる馬鹿がいてくれたことにも、私はホッとしたんだ。
私は、久しぶりに笑ってた。
泣きながらだけど、心の底から笑ってた。
564 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:50:38.55 ID:BBsHBRkt0
クソが……
何、勘違いしてンだよ…
コイツはただの自己満足だ。
お前がどンだけ泣こうとも、アイツが笑ってくれることを選ンだ俺自身への当然の報いだってのに…
ああ……
どォして上手くいかねェかな…
笑って欲しい奴は笑ってくれねェし。
泣いて欲しくねェ奴は泣かせちまう。
アイツみてェに、上手くできねェ……
……馬鹿が……
何、泣きながら笑ってやがンだよ……うぜェ……
ホント、
確かにヘタクソだな。
565 :
◆d85emWeMgI:2011/03/13(日) 02:52:07.91 ID:BBsHBRkt0
以上で投下終了。アニメ見るたびに美琴と打ち止めが可愛くて辛い。
それではまた
571 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/13(日) 03:12:39.67 ID:SbVCQPoDO
乙572 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 03:20:23.10 ID:HvbfxqOTo
美琴はスッキリできたか 573 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/13(日) 07:12:10.79 ID:FRgGDQ0I0
一通さん‥…美琴とキスしちまったのかよ 574 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 09:19:22.18 ID:zR+L/5CIO
>>573
いや、人工呼吸ってそんな可愛いもんじゃないぜ。 583 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 16:48:18.12 ID:3HAeRpbeo
人としての経験が一番少なかったはずの一方通行が皆を引っ張り押し出して行っているのが強烈な皮肉だ。
妹達との縁がそうさせたんじゃなく、禁書目録への思いがそうさせてんだから余計に笑えてくる。
思いの強さは同じなのに求めるのでなく均そうとした彼が船頭なのは悲しいね。 584 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:02:56.84 ID:ClPYBDLN0
美琴に罵倒される
↓
上条をボコって問い質す
↓
海原をボコって止める
↓
深手を負って、カエル医者のところで縫合
↓
怪我を隠して黄泉川家で食事
ここまでで、一日の出来事。
二日後?
番外止めとデート
↓
美琴の電撃食らいまくり⇒一時的に心停止
↓
美琴の気持ちに踏ん切りつける?ことに成功 <……今ココ
一方さんェェ…
一方さんはインデックスには絶対触れちゃいけないみたいな誓いを立ててる風だよね。
犯してきた罪やらの罪悪感で。打ち止めや番外個体とは別の意味での聖域的な。
「俺みてェな悪党じゃなくて、ヒーローがアイツには相応しいに決まってる」って端から求めてない。
人間関係に臆病なことが、結果的に人間関係を一番俯瞰から見れることに繋がってるわけで。
とりあえず、この一方さんはハーレムでも何でもいいから幸せになるべきだろう…585 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/13(日) 17:59:13.35 ID:Dzyf7QoN0
一方さんは据え膳をガン無視して生涯独身貫きそうだから困る 594 :
◆d85emWeMgI:2011/03/15(火) 00:07:50.35 ID:KoKVPhiq0
結局何が変わったというわけでもない。
当麻が私の前からいなくなったという事実は存在し続けている。
私が捨てられたことには変わりなく、そのことを思い出すと泣きたくなる。
ただ、何ていうか少しだけ吹っ切れた気がする。
泣くのをこらえているんじゃなくて、泣きたいな~っていうくらい。
涙を堪えてるんじゃなくて、泣きそうって、そんな程度。
当麻の事が好きなのは一緒だし、いきなりあんなことがあったからってアイツに惚れるなんて、そんな漫画みたいなこともない。
ただ、こんな私を止めてくれるヤツがいることが、心のどこかで救いになった気がする。
一つだけ確かなことがあるのだ。
アイツのおかげで踏み止まれたということ。
だから、私 ――― 御坂美琴は、アイツ ――― 一方通行にとても感謝してるのだ。
あれから、ゲコ太先生の病院まで運ばれた一方通行は緊急手術。
私の応急処置があったおかげで助かったと、先生は褒めてくれたけど、そもそもそんな状況に追い込んだのは私。
喜べるはずがない。
結局一方通行は丸一日眠っていた。
携帯に目を覚ましたという連絡が入ったのは今朝の5時前。
すぐに跳ね起きたけどどんな顔して会えばいいのかわかんなくて結局アイツの部屋の前をうろうろ。
行き掛けにフルーツの盛り合わせは昨日買っておいて、これをチャチャッと渡すだけなのに、怖くて行けない。
ヘタレすぎよ………御坂美琴。
595 :
◆d85emWeMgI:2011/03/15(火) 00:09:45.78 ID:KoKVPhiq0
「あれぇ~~お姉さまじゃん」
声に振り向けば其処には末っ子の姿。
末っ子だけど、一番年上。
見下ろしてくる視線は、気のせいなんかじゃなく冷たい。
私より若干高い位置から見下ろしてくる
悪意を抽出するっていう設定は解除されつつあると聞いている。
ということは、この子の冷たい目は、純粋にこの子の中から生まれた意思。
だからこそ逃げちゃダメだ。
ごくりと唾を飲み込む。
小さく深呼吸。
一つ。
二つ。
お…
おはよ~
「なに作り笑い浮かべてるのキモイ。お姉さまもしかして緊張してるぅ~~?ミサカがあの馬鹿を傷付けられたから怒ってるとか、そういう展開予想しちゃったりしてる~?」
馬鹿にした笑み。
うわ、なまじ私そっくりだから余計ムカつく。
番外個体は私の手の中のフルーツの入った籠と部屋の扉を見比べる。
596 :
◆d85emWeMgI:2011/03/15(火) 00:11:21.48 ID:KoKVPhiq0
「……なぁ~んだ。てっきり止め刺しに来たかって思ってたのに、ツマンネー」
何よ、止めって!!
「え?だってあの馬鹿に恨みつらみ晴らしたからこうなったんでしょ?」
どこからの情報だそれ!
復讐鬼のイメージかアンタ達の中の私は。っていうか、アンタはその方が良かったの?
「はァ?バッカじゃないの。アイツはミサカの獲物なの。すぐには殺さないけどね。じわじわじわじわ嫌がらせしてさ。
ずぅ~~っと擦り切れたボロ雑巾になるまで嬲り抜いてやるの」
番外個体ははんっと笑う。
不自然に唇を捲るような、変な顔。
「………だからさ。ミサカの獲物勝手に取るんだったら………お姉さまでもただじゃ済まさないよ?」
真っ直ぐな目が私を射抜く。
それはほんの一瞬で、直ぐに三日月みたいに目を歪める。
「――――……にゃ~んてね。べっつにお姉さまがアイツをどうしようがミサカには関係ねーし。それに、お姉さまじゃアイツ殺せないでしょ?
アイツをいたぶるのも殺すのも、ぜーんぶミサカの役目なんだもん」
げひゃひゃひゃ、なんて下品な笑い声が病院の廊下に響く。
私の顔で止めて欲しいなそんな笑い。
でもさ、アンタの手にあるのってお菓子の袋じゃない?
597 :
◆d85emWeMgI:2011/03/15(火) 00:12:41.11 ID:KoKVPhiq0
「!?な、なん、何でミサカがクッキー焼いてきたってわかったの……?」
ああ、クッキーなのね、やっぱり。
うん、すっごいデジャブ。
そして、手作りかぁ……
恋しちゃってるわね~~
「はひゃッ、こ、こ、恋とかバッカじゃねーの!!げひぇへひゃは…ッ、ミサカがそんな真っ当なもんするわけないじゃん、あんなモヤシに。
これはね、特性の甘~いクッキーで、甘いの苦手な一方通行の苦しむ顔を拝んでやろうっていう、ミサカのいやらしい嫌がらせっていうの?つまりは ―――………」
「箱の中身は甘さ控えめなビターチョコクッキーですと、ミサカは上位個体からのリークにより番外個体が一方通行好みのクッキーを徹夜で焼いたという事実を暴露します」
「ちょッ!」
あ、やっぱり?
「グッモーニンですお姉さま」
アンタも此処に来てたんだ。
「ええ、今日は調整の日ですので。番外個体もおはようございます」
「あ、おはようございま………って、違ぇ!!てめぇ……この欠陥姉。どっから湧いてきたぁーーーーーーー!!!!!」
「おっと、やべぇと、ミサカは沸点の低いヤンデレ(笑)妹をpgrしつつ華麗に去ります」
「ぶっ殺す!!」
598 :
◆d85emWeMgI:2011/03/15(火) 00:13:26.36 ID:KoKVPhiq0
あ~あ、行っちゃった……
病院の廊下は走っちゃダメなのに。
あとで先生に叱ってもらわないとね。
それにしても、アイツったら結構隅に置けないのね。
ふふふふふ……
……
…………
………………
…………………… ま、あんだけお人好しの馬鹿だったらそうかもね。
何だか毒気が抜かれちゃったな。
さっきまでの緊張が無くなっちゃった。
うん。
これなら、すんなりお見舞い出来そう。
一度だけ深呼吸をしてドアに手を掛ける。
おっはよ~~一方通行~~~!!!
あれ?居ない?
599 :
◆d85emWeMgI:2011/03/15(火) 00:14:12.47 ID:KoKVPhiq0
色々すまねぇな、土御門。
「水臭い事言うなよカミやん」
からからと土御門はいつもの笑いで、陽気に返す。
「しっかし、寂しい旅立ちだにゃー」
見送りは土御門以外誰も居ない。
まぁ仕方ねーだろ。誰にも知らせてないんだから。
今、俺と土御門は空港のロビーにいる。
見送りの土御門は、ファー付きのジャンパーを着ているだけで、手には荷物なんて何も無い。
俺はキャリーバック一つ。小旅行にでも出かけるのかっていうノリだ。
「一生帰らない旅に出るとは思えないにゃー」
必要なものなんて殆どねー。
この身と、この心、それから、この右手で十分だろ。
「微妙にカッコ付けきれてねーセリフだなカミやん」
え、俺結構決まったと思ったのに。
600 :
◆d85emWeMgI:2011/03/15(火) 00:15:04.25 ID:KoKVPhiq0
一週間の期限が来て、神裂はもう一度尋ねてきた。
それが三日前。
俺の返事は当然何一つ変わりはない。
アイツはホッとしたような、悲しそうな顔をした。
きっと、俺がしようとしてることは決して褒められるようなもんじゃないんだろう。
だって全てを捨てようってんだからな。
美琴に別れを告げて、一方通行に全てを託して ――― ハッキリと確認したわけじゃないけど、アイツの言葉を俺はそう捉えた ――― からアイツ等には一度も会ってない。
俺は俺で準備が忙しかったし、伝えるべきことは全部伝えたからだ。
馬鹿なことしてると思う。
最低だと思う。
全部全部、うっちゃって、振り返らずに走っていくんだ。
俺のやったことは、誰もが非難しても、肯定はしないだろう。
でも、それでいい。
その方が割り切れる。
「何だか、思ってたよりずっとさっぱりした顔してるにゃー先週なんてじゃがいもみたいな顔だったのに」
ぷぷぷと思い出したのか、土御門が笑う。
一方通行にしこたま殴られた俺の顔は翌日が悲惨なものだった。
夜道で会えば悲鳴をあげるような、そういう怪談レベルで。
「で、その様子だと全然迷いはねーみてーだにゃー」
まぁな。
土御門は俺の返答に満足したのか、鷹揚に頷く。
「そうか。なら俺から最後に言っておくが、カミやんは金輪際コッチに連絡を取ることは出来ない。親御さんに連絡することもな」
わかってるって。
上条当麻としての名残を全部消すんだろ?
「そうだにゃ。コッチの戸籍は俺の方で消しとく。アパートにある物の処分もな」
悪いな。
「礼なんて言うなよ。これで終わりじゃねぇ、カミやんの戦いはこれからなんだぜい?」
どんと胸を土御門の拳が軽く押す。
601 :
◆d85emWeMgI:2011/03/15(火) 00:16:04.45 ID:KoKVPhiq0
「これからカミやんは今までのカミやんが見たらまっさきに軽蔑するようなことだって平気で出来るようにならないといけねー。禁書目録の為に、目の前で苦しむ人間を放っておくことだって必要になる。
十を切り捨てて千を救う英雄なんかじゃなくて、一人の為に万の人間を見捨てることだって要求されうる。カミやんにとっては地獄だろう。その地獄にこれから足を踏み入れるんだぜい?」
わかってる。
俺は正義のヒーローになるんじゃねー、アイツのヒーローになるんだ。
それに……約束してるしな。
「約束?」
いや、なんでもない。
つーか、今のは俺にもわからねー。まるで、誰かが頭の中で呟いたみたいだ。
「おいおい、幻聴とか大丈夫かよ」
問題ねーって。それよりも、俺の痕跡を残さないって、父さんと母さんはどうするんだ?
記憶操作でもするのか?
「んにゃ、あまり一般人に魔術を使うわけにはいかねーにゃ。カミやんには今から死んでもらうんだぜい」
は?
「というか、今からジャンボジェットに乗ってもらうわけだが、乗客はカミやんひとり。後は全部こっちで用意した偽名。カミやんはその右手によって“不幸”にも飛行機ごと……」
………
……………大げさ過ぎないか?
「ジャンボジェット一機でも十分おつりが来るんだよ、神上にはな」
そっか…
何だか複雑だな。
602 :
◆d85emWeMgI:2011/03/15(火) 00:16:36.05 ID:KoKVPhiq0
『10時35分発のイギリス行きの便に搭乗予定の………』
そろそろみたいだ。
「おう、達者でなカミやん」
土御門が右手を差し出してきた。
何だか、こうやって改まると恥ずかしいな。
そっと握り返す。
「カミやんの行動はダチとしては褒められたもんじゃねぇ。小萌先生も姫神も、吹寄も、青ピも、みんな裏切って騙すわけだからな」
ああ……
「……けど男としては、羨ましいな」
土御門……
「俺にもいるからな。他の誰をも裏切ってでも守りたいヤツが。しがらみが多過ぎて捨てて連れて逃げたいヤツが」
まぁ、此処までどっぷり浸かっちまうと、そうも言ってられねーけど、そういって土御門は笑う。
その顔はどこか寂しげだ。
握り締めた土御門の手に若干込められた力が、コイツの数少ない本音を物語っている気がした。
血が繋がってないんだろ?
そんな野暮な質問は呑み込んだ。
コイツがこんな顔するんだ、きっとそれだけじゃないんだろう。
でも、それを聞き出してどうこうするのは俺の役目じゃねぇ。
だから、俺はただ、土御門への感謝も込めて握り返す。
それが伝わったのか、土御門が、子供みたいに無邪気に笑う。
603 :
◆d85emWeMgI:2011/03/15(火) 00:21:59.69 ID:KoKVPhiq0
「さ、行ってこい。お姫様を思い切り抱きしめてやれ」
ああ、行ってくるよ。
「じゃあな、親友」
ああ、さよなら親友。
土御門の上げた手に、思い切り手のひらを思い切り叩いた。
小気味の良い音が鳴る。
ゲートに向かう。
俺はそのまま二度と振り返らなかった。
604 :
◆d85emWeMgI:2011/03/15(火) 00:25:04.78 ID:KoKVPhiq0
以上で投下終了。閑話休題っぽい。
多分次でラスト。一方通行と美琴の過去話は別スレできっちり書くつもりです。
それではまた ○ノシ
609 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 00:55:10.82 ID:0gaE9Jux0
乙。
なんていうか漢だな。 614 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/15(火) 07:25:50.68 ID:J9EVYDJ9o
全てを捨てるって実はかなりキツイ…
親友っていいな 617 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県):2011/03/16(水) 00:05:37.11 ID:O0xwCFf40
乙なんですよ。上条当麻が死んだ日か、、、。。
とりあえず、詩菜さんは俺が責任持って慰めるよ。 618 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2011/03/16(水) 02:33:41.61 ID:lmc81L+Wo
刀夜さんは任せろ 622 :
◆d85emWeMgI:2011/03/16(水) 20:59:15.37 ID:bNMeyf8/0
退屈極まる病室からの脱走に成功。
といっても、外出なンざ出来やしねェ。
だが、あそこにいて、超電磁砲のヤツが万が一、いや、億に一でも見舞いに来られた日には堪ったもンじゃねェ。
俺はただ『アイツ』の元にあのクソバカを送り出してやる為にした事のツケを払っただけだ。
アイツを笑顔にしてやれンのはあの馬鹿しかいねェンだからな。
仮にアイツの元に俺が行ったとしても、どうにも出来るモンじゃねェ。
ああ、ンなことはわかりきってンだよ。
チッ…らしくねェな。過ぎたことをグダグダ……
「さっさと入ったらどうですか浜面!」
「いや、だって、こんなバラの花束持ってよ…いきなり変に思われたら」
「大丈夫です。浜面は超デフォルトで変でキモイですから」
「酷いッ!!高校生になって、少しは落ち着いたと最近思ってた矢先に罵声の通常運行ですか!!」
「うるさいですよ。そんな変でキモイ浜面のことが滝壺さんは超好きなんですから、今更くだらねぇ心配なんてする必要ないんですよ」
「絹旗……」
「ああ、浜面。言っておきますけどこんなところで超獣欲を超解放して滝壺さんに何かしたら……超デンプシー窒素パンチですよ?」
「どんだけ俺は猿設定なんだよお前の中で。しませんから!!ええ、しませんさ。病み上がりの我が姫君をそんなぞんざいに扱うはずがねぇーだろ!!!」
「でも、ベッドの上でちょっぴり弱った滝壺さんの超上目遣いに、超クラクラっと来るんでしょ?」
「うん、まぁね。なんていうか、こう髪が解れて頬に掛かっている滝壺の可憐さと庇護欲直撃っぷりと色気はもうレベル6なわけで……ハッ!?誘導尋問!?」
「ホラ見ろ。ホラ見ろ。超猿じゃないですか。超大猿じゃないですか……ま、今回はあえて信じてあげましょう馬面」
「てめ、全然信じてねぇだろ…」
623 :
◆d85emWeMgI:2011/03/16(水) 21:00:33.73 ID:bNMeyf8/0
ありゃ浜面と、もう一匹のチビは……モアイだったか。
相変わらず仲が良いっつーか、猿山の猿並にウルセェな。
「ホラ、さっさと行ってこいヌケ面。恋人の癖に超モジモジとか超キモイです」
「お、おう!!すまねぇ絹旗」
「ったく…超世話が焼ける……」
泣かせるねェェ、モアイ。
「おっひゃぁぁ!!ゲッ!!!第一位?」
久しぶりだなチビモアイ。
「モアイ言うな!!最愛です。さ・い・あ・い」
わかってるって、も・あ・い、だろ?
「だろ?じゃねー!!何で超ドヤ顔なんですか!」
うるせェぞ、チビガキ。病院で騒ぐンじゃねェ!!
「…エェェェ……超不条理に怒られました……」
それにしても、浜面の野郎もしかしてあのピンクに?
「超プロポーズですよ」
そォいや、アイツ働いてンだっけか。
ちゃンと給料三か月分か?
「浜面の超薄給じゃ三か月分じゃ足りないんで、超九か月分です」
ヘッ…
気合入れてンじゃねェか、ド三下が。
「超ヘタレの浜面が、滝壺さんなんて超優良物件を手に入れようとするんです。九か月分でも超格安です」
くかかかかか……違いねェ。
624 :
◆d85emWeMgI:2011/03/16(水) 21:04:00.82 ID:bNMeyf8/0
それにしても……お前学校行ってンのか。
「………悪いですか?どっかの誰かさん達のせいで暗部解散しちゃいましたしね~~超暇を持て余してたんですよ」
ふゥん。
「笑いたかったら笑ってくれてもいいですよ」
笑いやしねェよ。
「ふん。似合わない社交辞令は超結構です。暗部のガキが何世迷いごと言ってるんだって、ハッキリ言ってくれても超構いませんよ?
私だってそう思ってるんですから……」
思わねェっつってンだろォが、バカチビガキ。
「超失礼ですね!」
馬鹿だから馬鹿だっつってンだよ、バカチビヒンニューチビガキ。
「貧乳じゃないもん。大きくなってるもん!!超成長してるもん!!!」
うるせェな……
勝手に世迷い事だって決め付けてンじゃねェよ。
表の世界に行きてェンだろォが。じゃあ、行けよ。
誰に笑われよォが関係ねェ。やりてェよォにすりゃいいだろォが。
ゴチャゴチャ抜かしてくる奴等はぶっ飛ばしてきてンだ。
折角自由になったってのに、テメェでテメェを縛ってンじゃねェよ、ボケが。
ガキの癖に何も失くすモンはねェって面して泥に浸かってた時はぶっ飛ばしてやろうかってくれェイラついたがなァ。
今のテメェは悪くねェ。
少なくともクソったれ暗部にいた時より、少しはマシな面してンじゃねェか。
まァ、この先お前がどォするつもりなのかは知らねェが、そのまま抜け抜けと表舞台に出りゃいいンじゃねェの?
「一方通行……」
浜面といい滝壺といい……テメェらは全然温過ぎて暗部は場違いなンだよ。
とっとと、表の世界に出ちまえ、邪魔臭ェ。
少なくとも、テメェは俺なンかより、ずっと似合いそうだぜ。
「………一方通行……」
…………
……………あァ……
………………………………今の言葉は話半分に聞いとけ。
625 :
◆d85emWeMgI:2011/03/16(水) 21:13:32.08 ID:bNMeyf8/0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~死にてェ~~!!!
思わず病院の外にまで出ちまった。
なンなンですかァ?俺のキャラじゃねェだろ?
会って速攻何語ってンだァ…あ~あァ…らしくねェ……
ったく…………あの馬鹿の説教癖が伝染ったか?
………だが、表を生きてくのはあのチビにはお似合いな感じだ。
少なくとも俺の一万倍は似合いそォだしなァ。
「一方通行!!」
あァ?モアイじゃねェか。
何か用か?つーか病院で走るンじゃねェ。
「絹旗最愛には超夢があります!!」
……ジョルノ?
「可愛くて優しい保母さんになることです!!」
……………
…………
……………ハァ?
「その夢が叶った暁には、『あの計画』に関わってた連中全員に『超ザマァ!!!』って言って笑ってやるつもりです。
当然、貴方も例外じゃありません。つーか、超最優先です!!」
…………
「だから……悔しかったら」
絹旗が、何故か茹でタコみてェなツラをする。
「悔しかったら『表』出ろォってンです!!」
何いきなりデケェ声あげてンだよ。
「いきなり会って人に説教かましただけでも超ウザイってのに……何勝手に諦めきった顔してンですか。超々ウザ過ぎて気になっちまったンですよ!!
言うことはそれだけです!!フンッ」
626 :
◆d85emWeMgI:2011/03/16(水) 21:15:55.70 ID:bNMeyf8/0
何?
何なンだ?
何なンですかあのガキ…
言うだけ行ってドスドス歩いて帰りやがった……
ホント……何なンですかあのガキ……
クハッ…かかかか……
ホントにアイツ俺の思考パターンを元にしてンのか?
あのバカっぷりでか?
ぎゃはははッ……愉快すぎンだろ。
ったく……喧嘩売られちゃ買わねェわけにはいかねェな。
表に…出てやるか。
手始めに、まずアイツに会わないとなァ……
もしかしたらあの電撃娘が来てるかもしれねェ病室に俺は向かうことにした。
顔を合わせたら気まずいだとか、面倒くせェだとか、そンなチャラけた情けない考えなンざ、バカチビの大声でとっくに吹っ飛んでいた。
642 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:10:52.16 ID:ZKVoi/S+0
軽い頭痛がこめかみを打つ。
自分の眉間に皴が自然と寄ってしまっているのがわかる。
この一年、気持ちいい朝っていうのを、一体私は何回味わったのかな。
数えようとして、両手で事足りそうだとわかったので止める。
何も自分で自分の心を圧し折る必要はないし。
シルクのシーツを払いのける。
このベッドにしても、とんでもないお金なんだと、寝ぼけた頭でぼんやり思う。
高級品だろうと、快眠を提供してくれなきゃ意味なんてあるのかな。
見渡すと上質の調度品が目に付く。
けれど、そういうものに心を慰められるような教育は受けていない。
ウチに寄付をしてくれるお歴々の中には随分造詣の深い者ものもいるけれど。
ジノリだのウェッジウッドだのロイカーカムだの。
ベリークは結構好きだって言ったら顔を顰められたことがある。
別にアイルランドだからって、食器に罪は無いのに。
正直使いやすくて紅茶が十分に楽しめるなら何でもいい。
そういう意味なら、百均で買ったカップの方が気を遣わなくてもいいから寧ろ好ましいかも。
ベッドから降りる。顔を早く洗いたい。
身体が重い。
勿論、体重が増えてしまったからどいうわけではない。
むしろ最近は体重が減る一方。
確かにイギリスの料理はお世辞にも美味しい部類には入らないけど、それでも食事はしっかり摂っている。
そうしないと身体が保たないからだ。
望めば洗顔一式を持ったシスターが現れて、恭しく洗面器を差し出してくれて、ベッドに座ったまま洗顔できるんだけど正直それはちょっと遠慮したい。
逆に落ち着かない。生まれてからずっとそれが当たり前になっている王族の人間なら疑問にも思わないのだろうけど、生憎私は庶民暮らしが長い。
髪が濡れてしまわないように括ると、冷たい水で顔を洗う。ようやく頭がしゃっきりとする。
濡れた洗面台を顔を拭いたついでに拭っていく。いつになっても私は顔を洗うのが下手だな。
643 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:16:49.23 ID:ZKVoi/S+0
『あ~ !!また洗面所がびしょびしょじゃねーか!!』
不意に懐かしい記憶が過ぎって、思わず笑ってしまう。
彼は元気にしてるだろうか。
………
…………
……………
………………止め止め。そんなこと考えても仕方が無い。
ドアをノックする音が聞こえた。
遠慮がちにコンコン、コンコンと穏やかなリズム。
それだけで誰かわかる。
ノックにもその人の性格や気分て現れるものなんだって最近わかった。
『最大主教、お目覚めでしょうか?お着替えをお持ちしました』
今目覚めたところです、構いませんよ。
出来るだけ気取った声を出す。
油断をすると直ぐに昔のイントネーションと口癖が出てしまうから。
ドアをゆっくりと開けて足を踏み入れてくるのは、この一年間ですっかり見慣れた顔。
「おはようございます、最大主教」
おはよう、五和。
セミロングの黒髪に、下がり気味の柔らかい瞳をした美人さん。
いつ見ても羨ましいなって思ってしまう。
あいさもそうだったけど、黒髪の女の人って、それだけで凄くたおやかな感じがする。
思わず自分の髪を摘んでみたりする。私の髪ではそんな雰囲気は出せない。
「どうなされましたか、最大主教?」
何でもありませんよ。
下らないことに頭を悩ませているなんて、流石に言えない。
不思議そうに首を傾げるいつわから装束を受け取る。
着せてくれようとする彼女を制して、着替え始める。そんなに複雑な衣装でもないのだ。
流石に安全ピンなんてものは何処にも無い。
姿見鏡の前の椅子に腰掛けると、いつわが髪を梳いてくれる。気持ちいい。
一つ一つの動作が細やかで柔らかいいつわに髪を整えてもらうのは一日の中で一番の楽しみかもしれない。
気持ちが落ち着くというか、ホッとする。
644 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:18:12.41 ID:ZKVoi/S+0
「最大主教。先ほど連絡が入りました。あと1時間ほどでローマ教皇様、総大主教様のお二方が到着されるそうです」
あいかわらず働き者のお二人だ。
ローマ教皇はもう随分な御年のはずなのに、精力的過ぎて周りがハラハラしてしまう。
御本人曰く、今が無理のし時なのだそうだけど。
「実直な方ですからね。第三次世界大戦を食い止めることが出来なかったことを随分と悔いていらしゃるようですから」
その実直さがあの方の力の源であり、同時に消耗させている要因なのだろう。
そして、総大主教。そのままモデルとして通用しそうな美少年……じゃなくて、美青年なのかな。
あの方がお見えになると、シスター達がそわそわするのが面白い。
確かに、女から見ても綺麗な方だと思う。
「総大主教様、今日もウキウキしながらお見えになるのでしょうかね。うふふふ、余程此方に来るのが嬉しいのでしょうね」
そうなの?
知らなかった。そんなにもイギリスを気に入って下さってるなんて。今度護衛付きだけど、イギリス内をご案内しようかしら。
「え……そういう意味じゃなくてですね…つまり、総大主教様は、最大主教に会えるのが……」
どういうこと?
「いえ……何でもありません。…………あの方も報われませんね……」
よくわからないことをいつわはぶつぶつと呟く。
何か不味いことでも言ったのかな。
ごめんなさいね、五和。
「え?」
お側人とかいって、貴女にこんなメイドじみたことまでさせてしまって。
鏡越しにいつわをチラッと見る。
柔らかな笑顔のいつわと目が合う。
「こんな…なんて言い方をなさらないで下さい。こうして少しでも最大主教のお役に立ててることが嬉しいんです。寧ろ自慢にしたいくらいなんですから。女教皇なんていつも羨ましそうにしてますし」
くすくすと笑うと、いつわは優しく頭を撫でてくれる。
気持ちいいけど、少し恥ずかしい。
「最大主教、忘れないで下さい。私達は、貴女がとても大好きなんですから」
うん、ありがとう。
でも、いつわの言葉に甘えてしまうわけにはいかない。
簡単に誰かに縋ったり頼ったりしていい立場じゃないことを、私は理解しているつもりだ。
645 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:19:32.70 ID:ZKVoi/S+0
「ごめんなさいね、五和」
そう言って目を伏せる最大主教に私はありきたりの慰めしか出来ない。
この小さな女の子に、私達はイギリスにいるイギリス清教徒、そして魔術師達の運命を背負わせている。
勿論、罪悪感なんかじゃなくて、私自身がこの人の事を大好きだからお側人として従っているのだけれど、でも、こうして朝サラサラのプラチナブロンドに櫛を通していくと堪らなく泣きたくなることがある。
彼女お気に入りの青いヘアピン。
高級品に固められた中で、余り高くないそのヘアピン ―――― 青い羽を模したヘアピンを最大主教は毎日身に着ける。
それ以外のアクセサリーは絶対に身に着けない。
きっと に貰ったものなんだろう。
可愛らしいなと思う。本当に、可愛らしい。
お人形さんのような愛くるしい少女。
本当なら、誰からも愛されて、幸せになるべきなのに。
辛い思いをしてきた人間は、その何倍も幸せにならなきゃ嘘だ。
それが叶わないならば、その時は手を差し伸べるべきなのが私達であるはずなのに。
それなのに、私達はこの華奢な肩に自分達の運命すら乗せてしまっている。
この人の事を魔法名にちなんで子羊姫と揶揄する者がいる。生贄になるためだけに存在するお飾りのお姫様という意味らしい。
政治的な手腕なんてものは求められず、前最大主教程気ままな自由は与えられていない。求められているのはたったの二つ。
『あの男』の娘として世界の憎しみを受ける為の『人柱』。
有事の際の魔術サイドの最大の切り札としての『決戦兵器』。
自ら被災地に赴いたこの人を罵る声は数年たった今も変わらない。
『悪魔』
『魔女』
『バケモノ』
『お前が死ねば良かったんだ』
『地獄へ落ちろ』
この人は何もしていない。そんな事が出来る人ではないと私達は知っている。
けれども、他の人々にはわからない。
何も知らされず、ただわけもわからず巻き込まれた人々には、自分達を欺いてきた女にしか見えない。
あの男の娘という理由だけではない。
前最大主教に瓜二つに成長したこの人の姿に、あの女への怒りをダブらせる者も多い。
唯一の血族という理由で、そして、最大主教に就いたことで、全ての不満も怒りも憎しみもぶつけられることになった。
646 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:20:08.91 ID:ZKVoi/S+0
それでも、この人は泣き言を漏らさない。
初めて会った時の、あの幼児のような無邪気さと同じくらいの我が侭な甘えん坊が、どうしてこんなにも強くなれたのだろう。
そう疑問に思った者は数知れない。けれども、私はすぐにわかった。
全てをもらさず記憶するこの人は、誰よりもずっと長く、誰よりも近くであの人の姿を目にしてきたのだ。
倒れても倒れても立ち上がるあの人の勇気をその頭の中に焼き付けてきたのだ。
そして、その心に刻み付けてきたのだ。
だから、この人は決して逃げ出さない。立ち向かうのをやめない。どれだけ傷ついても。まるであの人のように。
それでも……だからといって、この人が傷ついていないわけではない。
湯浴みの時に背中を流していると、腕や手に赤い傷痕を見かけることがある。
手に刻まれたミシン目のような傷痕。
腕に走る赤い蚯蚓腫れ。
その痕の正体に気付いたのは包丁で指を切った時に、自分の指を咥えている時だ。
止血するつもりで、強く指に口を咥えていたときについた歯型。
頭を殴られたような気がした。
この人は泣かなくなったんじゃない。
誰かの前で泣くことを止めただけだったんだ。
声を殺して泣くために手を噛み。
抑えきれない辛さを押し殺す為に腕に爪を立てて、一人ぼっちで耐えていたのだ。
そして、漠然と理解してしまった。
頼る人が居ないからこの人は強くなった。
けれども、同時に孤独になったのだ。
頼りたい人が居ないからこの人は泣くことが出来なくなったのだ。
647 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:21:16.18 ID:ZKVoi/S+0
ねぇ、知っていますか最大主教?
お酒なんて嗜むことのなかった女教皇が、この頃時折酔いつぶれるんですよ?
絡み上戸の泣き上戸。お相手は大体が斎字さん。
頼ってもらえないっていうの、結構辛いんですよ?
あの人の側にいた貴女ならわからないはずがないですよね。
でも、きっとそう言っても貴女は止めないのでしょうね。独りで泣く事を。
それに、私達にはそれを止めて私達にもっと頼れなんて言う資格はない。
貴女に守られてしまっている私達じゃ、そんな言葉言えない。
私達は皆知っています。自分達が役者不足だってことくらい。
そして私達は知っています ――― 貴女が思い切りわんわん泣ける人はたった一人しかいないんだって。
だから ――――
648 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:21:59.99 ID:ZKVoi/S+0
三者会談は思ったよりも難航してしまった。
無責任なトップ同士の会談も長引くけど、責任感が強過ぎるトップ同士も考え物。
私のような例外を除いて、頂点に担がれる人というのは大なり小なり背負いたがり。
責任感の強さに比例するように、自分だけで全て解決しようとしがちで、これはこれで議論が平行線。
ローマ教皇様は御自分の御年を懸念されているみたいで、生きている内に出来る限り全てを終わらせておこうと息巻いていて。
総大主教様は、先の大戦で若輩者と侮られた苦い経験から、少しでも自分の総大主教としての実績を上げて周囲を納得させたいという焦りがある。
互いに自身の無力さを悔いたが故の強迫観念じみた使命感で、気持ちは理解できる。
結論は結局次回に持ち越し。
それまではイギリスが指揮をとるという形に落ち着いた。
つまり、此方の思惑通り。
装束を脱ぐと、私はベッドに倒れこむ。
行儀が悪いけれど、何も考えたくない。
記憶力があっても、駆け引きは得意なわけじゃない。
先代ならば嬉々として取り組み、軽々とこなしてみせた権謀術数を覚えてみたところで、それらしく振舞うのだけで精一杯。
多分経験とかじゃなくて、教養の積み重ねによって培われた素養だったり、人間関係によって形作られてきた性質なんだろう。
私に出来ることはやっぱり、魔法名の示す通り献身的な子羊であること。
でも、それで誰かが救われるならそれで構わない。
一時であっても、私に憎しみをぶつけることで、その人の明日を生きる気力が少しでも満たされるのならそれでいい。
辛いと思わないといったら嘘になるけれど、どうして自分が、とは思わない。
ううん、思わないなんていうのは嘘で、思いそうになるたびに、そんな弱い自分の気持ちを打ち消す。
だって自分で決めたことだから。
あの人のように強くなろうって決めたから。
あの人にもらった強さが私の大切な宝物だから。
649 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:22:46.58 ID:ZKVoi/S+0
ヘアピンを外す。
薄い青色の羽のヘアピン。
私の二番目の宝物。
二年間、毎日着けてるせいで随分色褪せちゃった。
そのうち銀色の羽になっちゃう。
せっかく、銀色の髪に青色って合うと思ってなんて珍しく にしては気の利いた言葉を尽くしてくれたのに。
身体がずっしりとする。
ベッドに沈み込んでそのまま落ちて行きそう。
嫌だな……こんな時は、色々思い出しちゃう。
身体が現実逃避を促すみたいに、私に との思い出を色々見せてくる。
それはとっても温かな思い出で。私の一番の宝物。
でも、だから辛い。
我に返った時の苦しさが途方もない。
だから、私は思い出さないようにする。
持ち帰った写真も見ないようにする。
一度辛過ぎて、逃避するようにアルバムを見てしまった夜は大変だった。
夢に を見て。
それから夜中に起きて、寝ぼけて部屋中探し回って。
そして我に返り思い出す。
ここは学園都市の小さな寮の一室ではなくて、イギリス清教の最大主教の部屋なんだと。
その瞬間の絶望。
思い出すだけでぞっとする。
けれど、疲労が澱のようにこびりついている身体は、柔らかなシーツに包まれて条件反射のように眠気を齎す。
湯が溢れるように、温かな記憶が箍が外れたように沸き出でる。
今にして思えば結構わかりやすかったよね。それはお互い様だったかもしれないけど。
どうして、もう少し素直になれなかったのかな。今更だけどね。
それに今頃の彼の側には、あの子がいるだろう。私と同じように、ずっと彼に焦がれ、追いかけていた子が。
私よりも強くて、ただ守られているばかりの私と違って強くて、どんどん突き進んで行く子。
いつも待たされて待ちぼうけを食らって、それから蚊帳の外にされてしまう私とは違う子。
強引に自分の居場所を作り出してしまいそうな女の子。
結局最後まで面と向かっては名前で呼んであげることも出来なくて、『短髪』なんて呼んでた。
私と違って、彼と並んでいると、とてもお似合いで、私はそれが悔しくて目を逸らすか、嫉妬を堪えきれずに噛み付いていたりした。
650 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:24:20.72 ID:ZKVoi/S+0
『こら!! !!年頃の娘さんがはしたない。いい加減俺のシャツをパジャマ代わりにするのは止しなさい!!』
やだもん。これがいいんだよ。
のシャツが。どうしてわかってくれないのかな… のバカ……
『あのぉ…… さん?私の見間違いでなければ、このカレーに入っているのはワカメのような気がするのですが…?』
ふっふぅ~~ん、ワカメは髪の毛に良いんだよ。お馬鹿な は知らないかも。
『何でカレーにまでそれを入れる必要があるのでせうという疑問が沸々と沸いてくるのですが?』
だって、いつも私に噛み付かれてるんだよ?このままじゃ、 ってば、10代で気の毒な頭になるかもって心配になったんだよ。
『だったら噛み付き癖をどうにかする方に解決策を持っていけよ!!』
それは聞けない話なんだよ。
『 、大丈夫か?指切ったのか?ホラ見せてみろって……』
わわわ…ッ、 恥ずかしいんだよぉ~~……
『あッ!……わ、わりぃ……』
……もう………
『美味ぇ!!味付けじゃ、既に に負けてるな』
今まで にはずっと作ってもらってばかりだったからね。毎日は無理でも交代で作ってあげるんだよ?
あくせられーたにも色々教えてもらってるし。あくせられーたってとっても器用なんだよ。
そうそう、それでね、あくせられーたって、教え方も凄くわかりやすくて上手なんだよ。でね、でね…
『………ああ~~っと…… さん。今は一方通行の話は置いておいてですね、その、何と言いますか……この時間を楽しむというかですね』
?楽しいよ? と一緒にいるの。
『いや、そうじゃなくて。俺も楽しいけど、そういう意味じゃなくて、だな。俺と一緒にいるんだからあまり一方通行の話ばかりというのは……その……』
よくわかんないけど、 がそう言うんだったらそうする。
おかしな 、ふふふ。
651 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:25:32.57 ID:ZKVoi/S+0
いつの間にか眠っていたらしい。
目が覚めると、外は日が上り始めたばかりみたい。
顔を触ると涙と寝汗でべとべとして気持ち悪い。
のろのろと起き上がる。洗面所まで足を運ぶことも苦痛なくらい。
でも、そんな事も言ってられない。
冷たい水を叩き付ける様に顔に浴びせる。
今日も頑張らなくちゃ。
鏡を見て、顔色の悪い自分の顔に言い聞かせる。
ふとヘアピンに目が行く。
青い羽。
青い鳥の羽。
童話にそんなのがあった。
どうしてだろう。二年もたって、私はそのモチーフに気付いた。
私の思い込みかもしれないけれど。
彼の性格上そんな洒落たモノをくれるとも思えないし。
けれど、この羽が童話をモチーフとしているとしたら。
確か、物語は幸せの青い鳥を探しに幼い兄妹のお話。
結局探し続けていた『幸せ』はすぐそばにあったという教訓の童話。
はそれを知っていて私に青い羽をプレゼントしてくれたのだろうか。
いつも『不幸だ』なんて叫んでいた彼が、『幸せ』という意味を私に持たせてくれたのだろうか。
それは、私の幸せを祈ってくれてのこと?
それとも………自惚れも甚だしいけれど、私といることが彼にとっての幸せだったということ?
あはははは……
だとしたら、私は何て酷いんだろう。
前者なら彼の祈りを無碍にしてしまい、後者ならば、彼から幸せを奪ったことになる。
何で今になってそんな事に気付いてしまったんだろう。
気付かないままなら良かったのに。
652 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:27:04.17 ID:ZKVoi/S+0
ドアをノックする音が部屋に転がり込んだ。
このリズムはいつわだ。
「このようなお時間に申し訳ございません、最大主教」
予想通りのいつわの声。
私は慌てて鏡を見る。
確認。
泣きそうな気持ちにはなったけれど、涙は出ていない。
小さく咳払い。
構いません。お入りなさい。
「失礼致します」
背中越しにいつわの声がしてから少しの間を置いてドアがゆっくりと開く。
私はその僅かな間に、小さな違和感を覚える。
何となく変だな、くらいの些細なものだ。
こんな朝早くにどうしたのですか、五和 ―――
一体何かあったのだろうか、そう続けるつもりで振り返り、私は続くはずの言葉を呑み込んだ。
653 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:33:51.56 ID:ZKVoi/S+0
「よ、久しぶり……インデックス」
一年ぶりに私は自分の名を呼ばれた。
654 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:36:23.12 ID:ZKVoi/S+0
一年ぶりに会ったアイツの顔は呆気に取られたという言葉以外に無いって感じだ。
でも、ビックリしたのはこっちも同じ。
つーか俺の方がやばいね、絶対。
一緒に暮らしてた時も、日増しに成長してく姿に、内心どうしたもんかとモンモンとしてた。
一年も会ってなかったら多少は大人びてるだろうな、なんて思っていた。
けど、一年ぶりに会ったコイツはそんな上条さんの予想を優々と超えていた。
何ていうか……って、色々例えを思い浮かべようとしてみたが何も当てはまらない。
余計な言葉なんていらねぇな。
ただ一つの言葉しか俺には言えない。
―――― 綺麗になってた。
ローラ・スチュアートとほとんど同じパーツなのに、全然比べられないくらい綺麗だ。
身体が熱くなる。
すげぇドキドキしてるのが自分でもわかる。
「来ないで!」
ぴしゃりとたたきつけられた言葉に、足が止まる。
というか、気付けば部屋の真ん中まで俺は踏み込んでいた。
自然と俺はアイツに近付こうと歩き出していたようだ、まるで夢遊病者のように。
後ずさりするアイツに、俺は不覚にも可愛いとか思っちまう。
ホント、どうしようもない思考回路だ。
「当麻…どうして貴方が此処に?」
一年ぶりにその目に映すアイツの姿に、上条当麻のすべてが過剰に反応してるみたいだ。
過呼吸に陥ったように、から回しし過ぎて苦しい。
「どうして……どうして此処にいるの…」
答える代わりに一歩踏み出す。
「当麻…答えて、当麻」
アイツが後ずさる。
これじゃ、まるで悪者だ。可憐なヒロインを追い詰める。
「当麻……答えて…」
かぶりを振るたびに、腰まで伸びた銀髪が静かにさらさらと震える。
655 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:38:14.73 ID:ZKVoi/S+0
「とーま!!」
足が止まる。
その声に、怯んだからじゃない。
その声に、ずっと聞きたくて仕方が無かった声に、身体が震えたんだ。
「どうして…来たの…」
碧い瞳に、薄い泪が幕を張っていく。
「どうして来てしまったの……」
小さな手を胸の前で心細そうに組み合わせる。
それだけで胸が痛くなる。
それなのに、足は目の前の少女に近付くことを決して止めようとしない。
「どうして……来ちゃったんだよぅ」
限界まで張り詰めた水の天蓋が崩れ落ちるように、透明な雫が白磁の頬を滑り落ちる。
気付けば、俺の指先がそっと白い頬に触れていた。
熱い涙を指で受け止めて、微かに感じる柔らかい感触だけで俺は、心の中の何処かが声を上げるのを聞いた気がした。
旱魃で干上がった土地に、雨が降った時の様な、人々の上げる喜びに近いかもしれない。
俺が指で触れちまったせいか、それを切欠に宝石のようにキラキラとした泪が次々と溢れていく。
656 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:40:23.25 ID:ZKVoi/S+0
「どうして此処に来れたの?」
静かに尋ねる。
まるで答えを知っているかのように。多分知っているのだろう。
だから答える。
全部捨ててきたと。
簡潔に。言い訳の余地なんて自分自身に微塵も与えないように。
息を呑むのがわかる。
瞳を伏せると、微かな吐息と共に「ああ…」という声が漏れる。
後悔と自己嫌悪をどろりと溶かし込んだような声。
きっとコイツのことだ、自分が巻き込んでしまったと思っているんだろう。
お前のせいじゃねぇ。コレは俺が勝手に決めたことだ。
両肩を掴んで真っ直ぐに目を見る。
蒼い瞳が、一瞬丸くなるが、直ぐに悲しそうに伏せられる。
悲しみに歪めるのも勿論嫌だが、それ以上にインデックスが俺を見てくれないことが嫌で顔を覗き込む。
「何てこと……バカ……もう、どうしてそんな……そうだ、今からでも……ッ」
それは絶対に断る。
「どうして!?」
悲鳴のような声。でも、少し満足。俺を真っ直ぐに見上げてくれるから。
俺はゆっくりと、噛んで含めるように、言い聞かせるように目の前のお姫様に語りかける。
全て自分の我が侭だと。
657 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:41:26.82 ID:ZKVoi/S+0
自分が臆病だったから、こんな回り道をしてしまったと。
その代償に過ぎないってこと。
そんでもって俺は最低の行為をしてしまったこと。
けれども………それでこの場所に今いられることに何ら後悔をしていないってことを。
アイツはそれでもかぶりを振る。
「それでも……とーまが私に会いさえしなければ ――― 」
それ以上は言うな。
「とー…ま?」
それ以上はアイツのことまで侮辱することになる。
「アイツ?」
上条当麻……お前が最初に出会って、お前を救って、お前の為に死んでった上条当麻だよ。
喉の奥で何かが閊えたかのようにインデックスが言葉を切る。
そうだ、コイツとの出会いを否定するっていうのは、多分全部の否定、今の世界の姿まで否定しちまうってことなんだ。
だから、そんな事を言うのはやめてくれよ。
恋敵だけど……お前を助けてくれたっていう意味では恩人なんだよ。
「とーま……」
インデックス……お前覚えてるか?合格発表の日の約束。
「約束…?……あ…――― 」
658 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:42:59.92 ID:ZKVoi/S+0
―――― もし、大学に合格したら。その時は聞いて欲しいんだ。
俺のきもちを ――――
659 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:45:02.28 ID:ZKVoi/S+0
思い出してくれたな。
「あ、あの…とーま、その……」
逃がさないように、俺はインデックスの両肩に手を置く。
「あ、う…―――― 」
ははは、真っ赤な顔だな。
俺も多分同じか。
やべぇ、スッゲー緊張する。
「とーま………」
インデックス……
660 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:45:42.43 ID:ZKVoi/S+0
俺は……上条当麻は、お前のことが好きだ。
家族として。でもそれ以上に、一人の女の子として、ずっと、ずっと前から ―――― お前を愛してる。
「 …ぁう ―――――――ッ 」
綺麗な帯びを描くように滑り落ちる泪。
ようやく言えた言葉に、俺は突き飛ばされるように目の前の小さな身体を抱きしめた。
知ってたはずの温もりは、俺が知ってるよりももっと柔らかくて、温かくて、甘くて、溶けてしまいそうだ。
手が自然と腰と背中に回され、サラサラの髪ごとかき抱く。
知らなかった、こんなに俺は飢えていたんだ。
この少女に。
「あ、ぅ、、、、、、――――― ……、、ぅ、」
声が上手く出せないのか、幼い女の子のような嗚咽が腕の中から響いてくる。
俺の中の知らない誰かの声が不意に口を突いて出る。
661 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:48:30.82 ID:ZKVoi/S+0
『約束したよな?例え地獄の底でも、お前を ――― 必ず引っ張り上げてやるって』
662 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:49:20.94 ID:ZKVoi/S+0
そうなのか?
俺は尋ねる。
そうなんだ。
『俺』が照れくさそうに答える。
らしいな。
俺は笑って答える。
だろう?
『俺』が少し誇らしげに答える。
腕の中のインデックスが、涙だらけの顔を上げる。
責めるように、非難するように、訴えるように。
「……とーまは…なにもわかってないんだよ……引っ張り上げても無駄なのに……私がいる場所が地獄になっちゃうんだよ?それなのに……はうっ」
腕の中に再度閉じ込める。
まぁ~~た、この子は悲しいこと言っちゃって。上条さん怒りますですのよ。
「と、とーま…ッ!」
じゃあ、その約束……更新させてもらうわ。
「こーしん?」
ああ……
腕に力を込める。
甘い香りが、俺の決意を誘い出すような気がした。
663 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 00:57:54.24 ID:ZKVoi/S+0
約束する……もしお前がいるところが地獄だっていうなら ――― その地獄ごとお前を愛してやる。お前を決して離さない。
664 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 01:02:52.53 ID:ZKVoi/S+0
腕の中から響く嗚咽が止む。
腕の中から見上げてきた顔は、せっかくの美人が台無しなくらいぐしゃぐしゃ。
涙と鼻水と涎の三重奏。
それは…悲しくなるくらい上手な泣き方を知らない子供みたいで。
ぐちゃぐちゃの泣き顔は、ただただひとしおコイツを愛しくさせた。
しゃくりを上げながら、けれど少女は俺から目を逸らさずに、一句一句区切るように口にする。
「わだ、わたしも…ど、とぉまが、、、、、大好゛き…なんだよぅ……ぅ、ぇ、………」
何の変哲も無い言葉の一つ一つが、ゆっくりと染み込んで行く。
身体が、心が、何を求めて飢えて乾いてたのか、俺の頭が把握するより先に言葉に反応していく。
抱きしめる腕に力がこもる。誰にも渡すまいとするように、腕の中に銀色の少女を閉じ込める。
………もし、仮にこのまま力を込めてしまえば、この少女は雪ウサギのように簡単に壊れてしまうのだろうか。
もし、コイツを壊してしまえば、コイツは俺だけのものになるのだろうか。そんな事を少し考える。
ああ、俺はどうしようもないな。
救いようがねぇわ。
あんだけ御坂を泣かせて。
あんだけ一方通行に背負わせて。
裏切って、捨ててきて、見限られて、軽蔑されて、失望されて、手放してきておいて。
そこまでしておいて、ようやく手にしたのはこの温もりだけ。
それも、手を伸ばせば、俺が臆病でなければ手に入っていたかもしれないものを手にしただけだというのに。
それなのに、俺はこんなにも満ち足りてしまってる。
何もかも捨ててきたってのに、コイツの言うとおり、俺はまさしく不幸になってるはずだってのに。
この右手の呪いのなのか、コイツの地獄なのか、それはわからない。
けれども、この右手が不幸を招くとしたら。
俺に不幸を齎すコイツを引き当てたのだとしたら。
俺は何て………――――
665 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 01:04:58.55 ID:ZKVoi/S+0
「とーま…?」
ん?
「泣いてるんだよ?」
泣いてる?
ああ、そうだな。ああ、そうさ。
泣いてるよ。チクショウ、お前のせいだぞ、インデックス。
「えぇッ!」
慌てるインデックスの額にこつんと自分の額を当てる。
はにかんだ顔が可愛くて、思わず泣きながら笑っちまった。
ホントに、全部お前のせいだ。
俺が何もかも捨てることになったのも、こうして泣いてるのも。
ぜーんぶお前のせいだからな。ちくしょう……本当に…
ああ……不幸(しあわせ)だ……」
666 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 01:12:51.11 ID:ZKVoi/S+0
上条当麻とインデックスの、周囲を思いきり、傍迷惑に振り回し傷付けた恋物語はこれで一つの終わりを迎える。
学園都市を舞台としたヒーローとヒロインのラブストーリーは閉幕。
けれども、彼らの舞台がイギリスへと移り、これからも日々として続くように、他の者達の物語はこれからも学園都市を舞台として続いていく。
捨てられた者、託された者、残された者、知らない者、ただ傍観していた者。
彼らの舞台は変わらず、主演降板により、新たなる主演による日々(物語)は続いていく。
彼らの物語は、また別のお話にて。
668 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 01:15:14.57 ID:ZKVoi/S+0
投下終了。長々とお付き合いありがとうございました。
200レスで終わらせるつもりだったのだがどうしてこォなった…
一方通行、御坂美琴、貧乏くじを引かされた人たちのお話は別の場所で続いて行きます。
それでは ノシ
677 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県):2011/03/17(木) 01:23:54.53 ID:rJhXt0Cvo
乙でした 673 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/17(木) 01:20:21.27 ID:Zv8Jg8EIO
乙
面白かったッス
別スレも楽しみ674 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/17(木) 01:21:02.22 ID:yiPyYIqgo
乙
ここの上条さんが全てを捨ててインデックスを選ぶ姿はどこか清々しくも悲しい
捨てられた美琴や引っかぶった一方さんや他の関係者達の事、心情描写の片隅にも少ししか出てこないのがそれだけ一途なのを表してるんだろうけど
それだけの覚悟がなきゃ選べない選択肢なんだろうかね・・・ 676 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2011/03/17(木) 01:22:23.22 ID:vyMPdbcAo
失ったものも多いけど、得たものも大きいし、これから増えていくんだろうな…
最後まで楽しませていただきました乙! 683 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/17(木) 01:46:37.17 ID:VBgcS6ISO
>>1乙
いい話だった、ありがとう 687 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/17(木) 03:55:24.76 ID:A/ISDIAIO
連投スマソ
スレに余裕はあるが、エピローグ的な物はあるのかい? 688 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/17(木) 05:27:44.81 ID:Cfl3dEcIO
>>687
これ以上ないってくらいに綺麗に終わったからどうなんだろう
とにかく>>1乙でした! 690 :
◆d85emWeMgI:2011/03/17(木) 06:07:23.77 ID:sw4xUmsi0
エピローグは書く予定はありません。物足りないかもしれませんが、元々200レス程度で終わらせるつもりだったくらいのものなので。
それでは ノシ
693 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/17(木) 10:07:57.13 ID:D0CNsx+DO
乙
寂しくなるな……… 695 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/03/17(木) 11:00:01.68 ID:qc1Aq/c2o
>>1乙!!
俺の中では数ある上インの中でも最高傑作だった。作者まとめ→
貧乏螺子 ◆d85emWeMgI さんのSS一覧
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