中野四葉「私はより多くの人を救います」上杉風太郎「それになんの意味がある?」

2020-03-15 (日) 18:01  その他二次創作SS 五等分の花嫁   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:24:40.18 ID:5UAoJkSUO

「上杉さん」
「ん? なんだ、四葉」
「もし良ければ、映画を観に行きませんか?」

どうも皆さん、初めまして。
中野家の五つ子の四女の四葉です。
五つ子の中でもとびきりお馬鹿な私は、家庭教師である上杉風太郎さんに対して常日頃から多大なご心配とご迷惑をかけていることを自覚しているので、今日はそんな上杉さんの疲れを癒すべく、集中講義がひと段落したのを見計って、映画にお誘いしてみました。

「すまん。金欠だから映画には行けない」
「ふっふっふっ……チケットは私のおごりです」

上杉さんは家庭の事情でいつもお金に困っていらっしゃるので、事前に前売り券を用意しておきました。しかし、律儀な彼は渋い顔をして。

「お前に奢られる筋合いはないぞ」
「気にしないでください。この映画は一花が声優に初挑戦した今話題のアニメ映画なので、きっと上杉さんも気に入ると思いますよ?」
「声優って、あいつそんなことまでしてんのか。たしかに気になると言えば気になるが……」

上杉さんは一花のことを気に入っています。
そんなことは姉妹である私にはお見通しです。
きっと、私よりも一花のことが好きだから。
だからきっと、この映画も気に入る筈です。

「そんなに難しく考えずに、教え子からの日頃の感謝の印だと思って受け取ってください」
「そこまで言うなら……有り難く受け取るよ」

さあ、それでは元気良く映画館に出発です!





2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:26:56.53 ID:5UAoJkSUO

「上杉さん上杉さん」
「なんだ四葉。そわそわして」
「ポップコーンはいかがですか?」
「だから俺は今、金欠で……」
「私、買ってきますね!」

映画館に到着した私は真っ先に一番大きなサイズのポップコーンとドリンクを確保しました。
そんな私を見た彼は呆れて小言を口にします。

「お前それ、ひとりで食いきれるのか?」
「無理ですね。だから、手伝ってください」

その為に一番大きなサイズを買ってきました。

「……四葉」
「はい、なんですか?」
「お前は優しいな」
「っ……ああっ!?」

不意に褒められて、驚いた私は思わずバケツサイズのポップコーンを床に落としそうになり。

「あっぶねー。ほんと、お前はドジだな」

あわやというところで上杉さんがナイスキャッチをしてくれたおかげで大惨事を免れました。

「上杉さん……いつもありがとうございます」
「気にすんな。ほら、映画始まっちまうぞ」

ポップコーンを小脇に抱えて前を歩く彼の背中に思わず飛びつきたくなる衝動に駆られましたが、そんなことをしたら今度こそポップコーンを床にばら撒いてしまうのでぐっと堪えます。
私だって、少しは学ぶことが出来るのです。




3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:28:31.26 ID:5UAoJkSUO

「いよいよですね」
「それなりに席が埋まってるようだが、そういやこの映画ってどんな作品なんだ?」
「ふっふーん! よくぞ聞いてくれました!」

上映までの待ち時間を利用してご説明します。

一花が声優初挑戦したこの映画作品は、所謂『セカイ系』とジャンル分けされるアニメ映画で、空から隕石から大雨が降ってきて世界がヤバイことになった状況下でヒロインを救うべく奮闘する主人公を描いた、話題作なのです。

「ふーん。世界とヒロインねえ」
「上杉さんならどちらを選びますか?」

究極の選択を私は気楽に尋ねます。
何故ならば、答えは決まりきっているから。
より多くの人を救うに決まっています。
きっと彼なら、迷わず世界を救うでしょう。

「まあ、普通にヒロインだろ」
「……えっ?」
「世界なんて、どうなってもいいしな」

聞き間違いかと思って、耳を疑いました。
彼は誰かに必要とされる人間を目指している筈なのに、世界を切り捨てると言いました。
頭が真っ白になって、呆然としていると、上映開始のブザーが鳴り響いて、幕が上がります。

映画の主人公は、彼と同じ選択をして、世界の大混乱と引き替えに、ヒロインを救いました。




4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:29:59.80 ID:5UAoJkSUO

「結構、面白かったな」
「はあ……そうですか」
「今回は一花が声を当てたキャラも死ななかったし、これであいつもまた有名になるな。なにせ、すげー声がいい。声優一本でも食っていけるんじゃないかってくらい、良かったぜ」
「はい……そうですね」

帰り道、残ったポップコーンをもしゃもしゃ頬張りながら、私は生返事を繰り返します。
映画自体はすごく面白かったですし上杉さんが楽しめたのなら何よりですが、上映前の彼の選択の衝撃が尾を引いていて、頭が真っ白です。

「どうした、四葉」
「別に……なんでもありません」
「何か言いたいことがあるならはっきり言え」

上杉さんは優しい方ですが、デリカシーに欠ける人で、思わずむっときた私はつい声を荒げ。

「上杉さんもあの映画もおかしいです!」
「何がおかしい?」
「だって! 世界よりもヒロインを選ぶなんて! それでどれだけの人が迷惑すると思っているんですか!? 絶対ありえませんよ!!」

世界よりもヒロインを選ぶ。
その選択は美しくあっても正しくない。
そう私は思うし、事実、その通りの筈だ。
それを彼がわかってくれないのが、むかつく。




5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:31:45.16 ID:5UAoJkSUO

「四葉」
「なんですか、私の考えは変わりませんよ」

上杉さんはすこぶる頭がいい。
きっと馬鹿な私を丸め込もうとする。
だから警戒して、身構えていたのですが。

「仕方ないだろう、好きなんだから」
「っ……!?」

なんだ、それは。
頭の良い人の発言とは思えない。
感情論なんて、上杉さんに相応しくない。

「見損ないましたよ! 上杉さん!!」
「そうか」
「あなたがそんな人だと思いませんでした!」
「悪いが、俺はそういう人間だ」

違う。違う違う違う。そんなの嫌だ。
上杉さんは迷わず世界を救うべき人だ。
たったひとりの好きな人だけじゃなくて、私のような落ちこぼれも助けてくれなきゃ困る。
じゃないと私のことは誰が助けてくれるのか。

「四葉。きっとそのうち、お前にも出来る」
「なにを……」
「世界よりも大切だと思える人がさ」
「ッ!?」

目の前が真っ赤に染まる。絶対に許せない。




6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:34:12.11 ID:5UAoJkSUO

「私はより多くの人を救います」
「それになんの意味がある?」

意味なんて決まってる。考えるまでもない。
より多くを助ければ、より多く感謝される。
英雄として讃えられて、誰もが自分を頼る。

「私は、多くの人に必要とされたいんです」
「俺はただひとりに必要とされれば満足だ」

さらりと、上杉さんはそう返した。
思わず怒鳴り散らしたくなるも、堪える。
彼に嫌われたくない。彼に嫌われたら私は。
こんな私を救ってくれるのは、彼しか居ない。

「……わかりました。もう口答えはしません」
「四葉?」
「いや~! ほんとに一花、良い声してましたね! 声フェチの方の人気も鰻の滝登り間違いなしです! 本当に素晴らしい作品でした!」
「……四葉」
「そうそう、声と言えば上杉さん! 私も一応、五つ子の一員なので声も似てますし、将来は声優を目指すのも選択肢のひとつかも知れませんね! すぐに顔に出る私は役者には向いていないので、顔を出さずに済む声優ならもしかしたら上手くやれるかもしれません!」
「四葉、もういい」
「大丈夫ですよ! ちゃんと振り仮名を振って頂ければ、お馬鹿な私だって台本くらい……」
「四葉、もうやめろ」

あーあ。最悪。どうして、こうなるんだろう。
グイッと手を引かれ、ポップコーンが落ちた。
せっかく、落とさないように気をつけたのに。
上杉さんのせいだ。全部全部上杉さんが悪い。




7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:36:14.99 ID:5UAoJkSUO

「四葉、もう無理をするな」
「……はて、なんのことですか?」
「言いたいことがあるならはっきり言えとさっきも言った筈だ。我慢なんてしなくていい」

我慢。我慢我慢我慢。そろそろ我慢の限界だ。

「だいたい、そんな顔して出演した映画を褒められても、きっと一花は嬉しくない筈だ」
「っ……だって! 上杉さんがっ!!」
「俺がどうしたって?」

我慢、出来ない。嫌な自分が、抑えきれない。

「上杉さんが! おかしなこと言うから!!」
「おかしなことなんて言った覚えはないぞ」
「私にとっては、聞き捨てならないんです!」
「世界よりもヒロインを選んだことか?」
「そうです! そんなの絶対おかしいです!」
「まあ、たしかにイかれてるよな」
「イかれてます! 頭がおかしいです!」
「でも、恋ってのはそういうものじゃないか」

また感情論。騙されない。それは正しくない。

「上杉さんは間違ってます!!」
「ああ、俺は間違えているんだろう」
「だったら、取り消してください!」
「いいや、取り消さない。取り消せねえ」
「何故ですか!? どうしてそこまで!!」
「好きだから」

結局それだ。この議論に意味はなく、不毛だ。




8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:38:03.25 ID:5UAoJkSUO

「……使えよ」
「……えっ?」

不意に、ハンカチを差し出されて困惑する。

「涙を拭いて、鼻をかめ」
「わ、私は別に、泣いてなんか……!」

慌てて否定するべく頬に触れて気づく。
いつの間にか、私は号泣していたらしい。
また彼を心配させて、迷惑をかけてしまった。

「ごめん、なさい……」
「いいよ。気にすんな」
「上杉さん……私を、嫌わないでください」
「嫌わねーよ。なに馬鹿なこと言ってんだ」

嘘だ。私は醜い。私は嫌われて当然なのに。

「四葉、俺はお前に感謝してるんだぜ」
「な、なんで……?」
「ちょっと前までの俺なら、こんな映画を見せられてもくだらねえと鼻で笑うだけで、世界よりもヒロインを選んだ主人公の気持ちなんざ理解出来なかっただろうよ。けど、お前ら五つ子と知り合って、お前のおかげで良い関係を築けて、だから俺は変わることが出来た。そしてそれは、お前が架け橋となってくれたおかげだ」

彼を変えたのは私らしい。全部、私のせいだ。




9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:39:55.39 ID:5UAoJkSUO

「……優しくなんて、しなきゃ良かったです」
「はっ。そしたらたぶん、泣いてるお前を見ても俺は見向きもせずに放って置いただろうよ」
「それは人間としてどうなんですか?」
「最悪だな。だが、それが俺という人間だ」

そんなことはない。彼は昔から、優しい人だ。

「昔の上杉さんだってきっと、泣いてる私を放って置くことは出来なかったと思いますよ」
「そうだろうか」
「はい! それが上杉さんという人です!」

そう断言すると、何故か彼が柔らかく微笑み。

「ようやく、笑ったな」
「……見ないでください」

困ったなあ。自分の表情が、よくわからない。
自分が今、泣いているのか、笑っているのか。
顔に出やすい私の本心を、彼は見抜いている。

「さて、四葉」
「なんですか、上杉さん」
「そろそろトイレに行きたくないか?」
「な、何故それを……」

ポップコーンで口が乾いた私は、ドリンクをガブ飲みしていたので、当然、催していました。
頭の良い家庭教師には、お見通しらしいです。




10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:41:21.32 ID:5UAoJkSUO

「良い機会だから、さっさとトイレに行ってその泣き顔をどうにかしてこい。待ってるから」

上杉さんはデリカシーに欠ける人ですが、やっぱり優しい方で、私はそんな彼が大好きです。

「上杉さん」
「なんだ、早く行ってこい」
「このまま漏らしちゃ駄目ですか?」
「は?」

私はお馬鹿なので、柄にもなく難しく考えるのはやめて、自分の本能に従うことにしました。

「お漏らしして、迷惑をかけたいんです」
「お前、正気か……?」
「はい。ダメ、ですか……?」

赤い瞳を利用して懇願すると彼は折れました。

「まあ、いいんじゃないか。それがお前のやりたいことなんだったら、好きにすればいいさ」
「見てて、くれますか……?」
「ああ、約束する。だから存分に漏らせ」

本当はぐちゃぐちゃにして欲しい。
彼の手で、おし○こを出させて欲しい。
けど、それは流石にわがままだから自分で。

「んっ……ふぁっ」

ちょろろろろろろろろろろろろろろろろんっ!

「フハッ!」

はしたない水音と共に、私は世界を破壊した。




11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:43:06.35 ID:5UAoJkSUO

「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

上杉さんの愉悦が哄笑となりて、響き渡る。
外とはいえ、お誂え向きに人気のない路地裏で漏らしたので、彼以外には迷惑をかけてない。
私に迷惑をかけられた彼は、ひとしきり愉悦に浸り、そして股間に大きな染みを作った。

「おっと、うっかり俺も漏らしちまったぜ」
「どうして、上杉さんまで……」
「ひとりで叱られるよりもふたりで叱られたほうか気楽でいいだろ? それに一応、お前は俺の教え子なわけだし見捨てることは出来ない」

良かった。私は見捨てられていない。嬉しい。

「ありがとうございます! 姉妹には上杉さんにおし○こをかけられたと説明しますね!」
「やめろ。みんなに嫌われちまうだろ」
「おや? 上杉さんはただひとりに必要とされればそれでいいと仰っていたじゃないですか」

意地悪を言うと、彼はやれやれと首を振り。

「はっ……馬鹿な癖に、よく覚えてやがるな」

お馬鹿な私を彼は決して見捨てない。
たとえ、世界を尿塗れにしたとしても。
全ての汚名を背負って、私を救ってくれる。

そんな風太郎さんのことが、私はすごく好き。


【漏らしたヒロインの救世主】


FIN




12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/03/07(土) 17:46:55.04 ID:5UAoJkSUO

原作は単行本の既刊を全て読んでおりますが、結末は未読なので齟齬があるかもしれません
その点はご容赦して頂けるとありがたいです
来月発売の最終巻が、とても楽しみです!

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!




元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1583569480/

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