前→
ステイル「第六位、『魔女狩り(ファイアハンター)』だよ」
198 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 23:10:35.06 ID:8SmPQ2BSO
ちょうど
一年ぐらい前
日本
学園都市に当てはまらない東京
そのどこかにある安いアパート
そこに住む、とある少年、上条当麻は自分の部屋の外にいた
部屋の扉の前にただ立ち尽くしていた
上条『……!?』
目の前の扉が開く
それに上条は反応する
上条『……神裂!』
出てきたのは上条の待つ人物ではなかったが、声をかけるに値するには十分な人物だった
上条『……インデックスは』
神裂『……本当に何も覚えてはいませんよ』
上条『いいっ!会わせてくれ!!』
上条は神裂を押しのけて、部屋の中に入る
199 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 23:11:15.60 ID:8SmPQ2BSO
中には女の子がいた
かつて主人公だった上条のことも覚えていない、悲劇のヒロインが
インデックス『……』
上条『インデックス!』
そんなの構わない
上条は思わず少女の名前を叫んでいた
インデックス『貴方も…?』
魔術結社の人間なのか?と
上条『違う…俺はただの少年だ』
上条『お前の記憶が消える前にお前の…』
正直に答える
上条『友達だったんだ』
インデックス『ほんとう……?』
200 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 23:11:42.29 ID:8SmPQ2BSO
全て話した
自分は右手に変な能力を持つ以外はただの少年
不相応な夢を目指すべく東京の高校に通うため、親元を離れ安いアパートに住んでいたら
インデックスがベランダにひっかかっていたこと
そこで魔術師に追われているということで力を貸したこと
神裂という追手がやってきて闘ったが、初戦から惨敗だったこと
だがその追手は実はインデックスの親友で色々事情があったこと
インデックスは魔道書を一字一句記憶しているため脳の八五%も埋め尽くされ
一年ごとに記憶を消去しないと命の危険に関わること
そして他の助ける方法も見つからず
先程、記憶を消去したこと
201 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 23:12:08.15 ID:8SmPQ2BSO
インデックス『……』
上条『……信じられないかもしれないが、本当なんだ』
インデックス『……ごめんなさい』
上条の説明にインデックスは不審に思うのではなく
辛そうな顔をして謝った
上条『……!』
インデックス『なにも思い出せないの、本当ならごめんなさい…貴方達がこんなに…』
本当なら信じないだろう
証拠も根拠もない
しかしこの少女は自分が覚えていないことを、謝罪した
同じく辛そうに話す上条のために
上条『いいんだ!』
202 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 23:14:28.24 ID:8SmPQ2BSO
叫んだ
記憶が消される前、培った信頼関係の欠片も残っていなかったのも無視し
上条『何も覚えてなくていいんだよ…ったく人を勝手に値踏みする癖は相変わらずだな』
インデックス『……?』
無表情にきくインデックスに上条は正面から本心を
上条『……俺が弱かったのが悪いんだ』
拳に力をこめ、まっすぐインデックスを見据えて
上条『また、思い出をつくればいいだけなんだからいいんだ!』
言う
203 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 23:16:08.25 ID:8SmPQ2BSO
インデックス『……ほんとう?』
上条『ああ』
その言葉にインデックスは僅かに笑う
やはり不安や戸惑いがあったのだろう
目が覚めたら記憶が無く、突然たくさんの身に覚えのないことを言われる
上条『だから一緒にいよう…』
インデックス『…………うん』
上条は今度こそ救うと誓う
二度とそんな想いをさせないために
204 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 23:17:10.76 ID:8SmPQ2BSO
外にいた神裂はその光景を見ていた
彼女は何を思っていたのだろう
インデックスという少女か
上条当麻という少年か
それとも
神裂『……?』
すると、神裂の前に紙飛行機が飛んできた
そして足元におちた紙を手にとり、開く
神裂『……これは…!』
205 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 23:18:03.27 ID:8SmPQ2BSO
上条『げ、何もねーじゃん』
冷蔵庫を漁ると何もない
上条(そういえば神裂にやられて、三日ぐらい寝てたっけ…)
それ以前に貧乏で何もなかった気がするが
上条『悪い、何も無いから買いに行かなきゃな』
インデックス『……だったら私も……、っ!』
インデックスはふらつく
上条『……無理すんなよ、すぐ帰るからさ…』
そんな自分もまだ怪我人だが、歩けない程でもない
ズボンから財布を出し、残金を確認し、出る
上条『じゃあ、待っててくれな』
インデックス『うん』
この時二人は、これが別れの言葉になるとは思わなかった
206 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 23:24:05.71 ID:8SmPQ2BSO
上条が外に出ると神裂が立っていた
上条『……お前』
神裂『ご安心をもうやめます』
自嘲するように露出した姿の魔術師は宣言した
神裂『……それに私にあの子と関わる資格はありません』
冷たく機械のような口調で言葉をつむぐ
神裂『……しかし、もし許されるなら、あの子を救うのに協力させて欲しいのです』
上条『……!』
和解できそうな神裂の言葉に上条は安心するが
神裂『……といいたかったのですが』
上条の期待を壊し、場が硬直した
神裂自身もその冷凍に巻き込まれたように重く冷たい表情
上条『……どういう』
神裂『我が組織トップからの伝言が来ました』
神裂『鬼ごっこは終わりにして、『禁書目録』を回収しろと』
208 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 23:26:21.25 ID:8SmPQ2BSO
インデックスは安堵した気分だった
記憶が無く、『禁書目録』や『魔術師』、『必要悪の教会』などという知識だけが頭を回っていた
正直不安で怖かった
だけど、証拠はないけどああ言ってくれる人がいる
それが救いになった
すると、買い出しに出たその少年は玄関外で誰かと話していた
インデックス(なんだろう…?)
のそのそ、と重い体を引きずり、玄関に向かう
すると聴こえた
目覚めた時に側にいた女性の冷たい声が
神裂『我が組織トップからの伝言が来ました』
神裂『鬼ごっこは終わりにして、『禁書目録』を回収しろと』
209 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/03(日) 23:27:15.26 ID:8SmPQ2BSO
インデックスの時が止まる
どういうことか分からない
少年はあの女性のことを自分の同僚で親友と言っていたはず
本当は追い回したくないと思っている人物、と
なのに禁書目録(じぶん)を回収?鬼ごっこ?
判断するには情報が足らず、混乱していた
インデックス(つまり…さっきのとうまの言葉は嘘…?)
根拠のない言葉と実際この耳できいた言葉
どちらが信憑性があるか
インデックス(……嘘だったんだね…)
その瞬間インデックスは窓から飛び出していた
インデックス(わたしを…回収するための作り話だったんだ!)
インデックス(あの優しさも…ぜんぶ!嘘だったんだね!!)
涙を浮べ、落下する
地面に激突しても痛みがないのが、自分を更に虚しい気持ちにさせた
216 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 00:50:36.60 ID:ZW+zfFbSO
窓が開けられた音
それを聞き取り上条はドアをはね飛ばすように開ける
上条『インデックス!』
神裂『……どうしたのですか!?』
上条『……』
神裂『……!』
部屋の様子に上条と神裂は呆然とする
上条『インデックスが…いない』
―
神裂『……』
上条『どういう…!まさか他の魔術師が本当に誘拐…!?』
上条は開けられた窓に向かい、外を除くが誰もいない
上条『いるなら返事してくれインデックス!』
神裂『……まさか』
上条『なんだよ!大人しくしてないでお前も捜すのを手伝って…』
神裂『ききなさい』
上条は固まる
神裂の声は冷たさや怒気で満たされていた
神裂『……推測ですが』
上条『……』
217 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 00:51:09.46 ID:ZW+zfFbSO
神裂は重い口を動かして言った
神裂『先程の最大主教からの伝言を聞いて…』
自分の最大のミスに激怒し
神裂『私達を…誘拐する集団として勘違いしたのでは…』
上条『……』
なんだそれは
218 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 00:51:43.09 ID:ZW+zfFbSO
上条『まっ、待てよ!俺はちゃんと説明したぜ!?仲間だって』
神裂『人の言葉の真偽を確かめる術は彼女にはありません、先程の貴方の言葉を受け入れたのも信じたのではなく、気を使っただけは?』
上条『いくらなんでも、記憶を失った直後から十〇万三〇〇〇冊を狙うヤツって勘違いする経験も…』
神裂『記憶がないからこそ不安で、私達の信頼関係はゼロに近い…十〇万三〇〇〇冊を狙う、とまで辿り着かなくとも、「狙われている」とは勘違いするでしょう』
上条『……でも』
必至に否定材料を探す
自分がインデックスにとって敵になってしまったという真実に対しての
219 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 00:52:15.56 ID:ZW+zfFbSO
上条『……』
何も言えなかった
神裂の言うこともあくまで推測だ
インデックスはただおなかがすいて出ていっただけかもしれない
上条『………』
神裂『少しは分かりましたか?この絶望感を』
上条『ああ…』
上条はかつて避難した神裂の弱い心に同意してしまっていた
守りたかった者に忘れられ、尚且敵と認識された
神裂『どうします?追いますか?』
上条『お前は?』
神裂『追いますよ、上からの命もありますし…』
神裂は前を見据えてなにかを覚悟した様子で
神裂『すでに私は彼女に一年以上も逃亡生活をおくらせてしまった、もう二度と、させません』
これが本当の彼女
救われぬものに救いの手を
今さら名乗る資格はないかもしれない、しかし
神裂『貴方が腐っているなら、資格がなかろうと一人でやらせていただきますよ』
上条『……』
220 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 00:52:46.27 ID:ZW+zfFbSO
そうだ
なにをやっているんだ
インデックスが敵になろうと、避けようと
やることは一つだろうが腰抜け
上条『……インデックスの誤解をとく』
神裂『……』
上条『そして今度こそ助ける、アイツと良い思い出をつくるんだ!』
そして上条は立ち上がった
真直ぐ
だが
『中』はやることを成し遂げるため
上条『絶対しくじらない…どんな手を使っても』
歪んだかもしれない
221 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 00:53:14.44 ID:ZW+zfFbSO
ステイル「……」
上条「こういうことだ」
ステイル「 … … 」
何も言えなかった
勘違い?
上条という少年はインデックスの生い立ちや問題を交え、自分達の過去話を話した
それらのことをまとめると
つまり
脳の問題により、逸早く処置をしなければならない
だから勘違いから逃げたインデックスを連れ戻そうとしただけ
インデックス「ステイル騙されないで、証拠がないよ」
汗だくなステイルにインデックスは冷静に対応し、フォローしてくれた
だが気休めにもならなかった
上条は嘘を言っている顔ではなかった
誰かのために真剣に頑張っている顔
ステイルが今まで知らなかった、ようやく最近出せるようになった顔
ステイル「あ…」
222 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 00:54:25.50 ID:ZW+zfFbSO
つまりインデックスは始めから救われていたのだ
相手の事情で理不尽に追い回されていた、というわけでめなく
こんなに思ってくれている人がいる
『幸せな娘』役の少女が自分の役を勘違いし、『悲劇のヒロイン』役として舞台にあがってしまっただけ
だったら
自分は
なんのために
インデックス「……ステイル?」
ステイル「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
223 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 00:57:42.71 ID:ZW+zfFbSO
ステイルは炎を放った
先程と同じように
ただインデックスへの配慮はなかった
しかし
上条「はあああああ!!」
上条はそれに反応し、右手をつき出した
すると炎はパッと消えてしまう
だがステイルは気にしない
ただ自分の絶望感にうちひしがれていた
ステイル「だったら僕はなんなんだあああああ!!!」
224 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 00:58:20.02 ID:ZW+zfFbSO
上条「……?」
インデックスという地獄に落とされた少女
その少女を助けたいと思った
だから初めて闇の中で惨めにいることを止め、もがき始めた
だから笑えるようになった
悩んでいる見ず知らずの少女の力になりたいとも思えるようにまでになった
だが始まりのきっかけになった少女は、始めから幸せだった
変わっただけ良い?
冗談じゃない
225 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 00:58:52.37 ID:ZW+zfFbSO
僕は変わるためにインデックスを助けたんじゃない
インデックスを助けたかったから、変わろうとしたんだ
インデックスが幸せだったのは、いい
だったら
ステイル「今の僕はなんなんだ…」
助けるため地獄の底までついていったのに相手は消え、一人とりのこされた
しかも助ける努力が全てが意味をなさなくなった
突然大きなものを失い、なんとも言えない虚しさがステイルを包んでいた
226 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 00:59:20.18 ID:ZW+zfFbSO
インデックス「……ス」
インデックスが声をかけるが、最早応じない
ステイルはとりあえず
ケースをとりだし、体晶という粉末を舐めた
そして
ステイル「お前らが邪魔なんだ…」
上条「……」
ステイル「こんな気分にさせるお前らがジャマだああああああああ!!」
インデックス「……」
壊れた、かつて自分に救いの手を伸ばしてくれた少年にインデックスは
何も言えず、見るしかできなかった
227 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 01:00:14.88 ID:ZW+zfFbSO
ステイル「あああああああああああああああああ!!」
炎の塊がステイルの前に出現した
文字通り、ただの炎の塊
塊のいる床が水のようにドロドロ溶ける
しかし僅かに浮いているので落ちない
炎の巨人のように顔があり長い手がぶら下がっているわけでなく、ただただずむように燃え盛る
しかし動きはあった
炎の頭上付近が、まるでスライムのように伸び、手のようなものを二つ形作る
そしてソレは形を保ったまま押しつぶすように、上条に向けて放出された
ステイル「焼き潰せ!」
228 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 01:00:57.77 ID:ZW+zfFbSO
上条「う、おおおおおおおお!!」
上条は前に飛んで出て
再び右手を迷いなく炎に叩きつける
やはり右手に触れた瞬間、上条を溶かすことなく摂氏三〇〇〇度の炎は消える
放出された手は本体と繋がっていたため、連鎖するように本体も散った
上条「……」
そうして上条はステイルに向けて走り出すが
神裂「上条当麻!」
神裂の怒号に上条は立ち止まる
そしてステイルは汗を流した顔を、口を歪ませ笑わせていた
229 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 01:01:44.18 ID:ZW+zfFbSO
上条が怪訝そうに見ると、眼前の景色が紅蓮に染められる
上条「…!」
そう
炎の塊が復活し、再び上条を同じように押しつぶす
上条「……くっ!」
上条は再三、右手で対応する
しかし今度は消えもしなかった
上条「ぐぅ……ぁ!」
上条は炎とは思えない体重を持った塊の圧力に押される
上条(消えない…?他に核がある……!?)
ステイル「もう補給速度を全開にしたから、一瞬で回復する」
と、ステイルの声
230 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 01:02:20.66 ID:ZW+zfFbSO
神裂「ッ!」
神裂が上条を援護するため動く
しかし
ステイル「…は!」
炎の塊から三つ目の新たな手が、神裂と上条を遮るように発射される
神裂「……く」
しかし神裂は止まらなかった
神裂はワイヤーをとりだし、放つ
神裂「七閃」
空を切り、三つ目の腕を裂こうとする
だが三〇〇〇度の炎を前には意味をなさず無残に溶けおちた
上条「………おぐ…っ!」
そうしている内にも上条はドンドン床に押し潰される
神裂「……仕方がありません」
この惨状に神裂は決意し日本刀に手をかける
そして居合いの体勢をとり、集中する
神裂「……唯閃!」
231 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 01:03:04.94 ID:ZW+zfFbSO
ステイル「させないよ」
神裂「……ッ!?」
遠くからステイルの声が響く
神裂が見ると、ステイルは火炎放射が火遊びにみえる程の炎を、恐ろしい速度で噴出させていた
もちろん神裂にむけて
神裂「ォ……あああああアアアア!」
咄嗟に唯閃の軌道を曲げ、火炎放射に応戦する
しかし集中を殺がれ、無理な体勢からの対応
炎は払えたが、その爆風に神裂は僅かに後方に飛ばされ倒れ込んだ
232 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 01:06:26.84 ID:ZW+zfFbSO
上条は炎の両腕を押さえながら、横目でそれをみる
上条「神裂!」
ステイル「いいのかい」
炎の手は何故か消えない
他に核があるのだろう
上条はある経験からそう予想した
そしてそこら辺にはそれらしいものはない
だとすると
ステイルが舐めたあの粉か
ステイル自身!
上条「………………っ、ぐおおおおあああああ!!」
ステイル「!?」
上条は炎の手を力で押し始めた
今まで押されていたものとは思えないほどの勢いで
上条「ああああああああああああ!!」
そして
上条の右手が炎の腕を、自分の斜め後ろに逸した
233 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 01:06:57.19 ID:ZW+zfFbSO
ステイル「チィッ!」
炎の能力者の舌打ちが聞こえた
上条は飛び込むように前に逃げる
すでに周りはグチャグチャだ
酷い所は床がなく、下の部屋に被害が出ているだろう
そのためにまずあの能力者の暴走を止める
上条「がああああああ!!」
炎の塊を避けながら、ステイルに駆ける
しかし上条が塊の横を通る際
三〇〇〇度の炎の腕が“五本も“飛び出してきた
上条「くそっ!」
右手で応戦するが、対応しきれない
神裂がコチラに駆け寄ってきているが間に合わない
上条「くそぉぉおおあああああああ!」
ヤケになり、腕の一本を他四本に、力任せに押しつける
するとそれに四本の腕は押され、はじかれた
234 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 01:07:34.58 ID:ZW+zfFbSO
炎の塊にスキが出来た
上条「今の内にアイツの所に…!」
そして一歩前に進むと
ステイル「やれやれ、まさか僕がジッと待っているとでも思ったのかい?」
声がした
炎の塊を挟んだ上条の反対側から
すると炎の塊がさけた
制御を失ったというより、意図的に裂けさせた
自分の道をつくるために
上条「……!」
235 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/06(水) 01:08:34.39 ID:ZW+zfFbSO
やはりそこからステイルが飛びだしてきた
そして彼は上条の全身くらいはあるだろう炎の剣とも見えるものを手から放出しようとしている
神裂は裂けた炎が回復して、再び出来た塊に防がれていて、駆け付けられない
インデックスは生まれたままの姿のまま、もはやなにも言わない
上条「…」
ステイル「死ね」
炎がまっすぐ縦に下ろされた
254 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:38:25.33 ID:2f9PfAgSO
ステイルの炎の剣が真っ直ぐ縦に振りおろされた
神裂「……」
ステイル「……」
そう
上条「……」
上条の手前の地面に突き刺すように
255 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:39:25.64 ID:2f9PfAgSO
インデックス「……」
ステイル「……」
本当に突き刺すだけ
そこから派生される衝撃などは一切なかった
上条「……ッ!」
だから上条は目の前に居座る炎剣を叩きわった
炎が散る
それに呼応するように神裂を邪魔していた炎の塊も消える
神裂「……!」
いや、消した
ステイル「……」
しかしステイルは動かない
この場にいる全員が動かない
256 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:40:16.74 ID:2f9PfAgSO
ステイル「……」
ステイルが止まった理由
それは上条がインデックスを思いやる人物だから
悔しいが、インデックスが自身が認めずとも上条はインデックスの味方だった
苦しめているならともかく、思いやっている
もしもインデックスの記憶が戻ればインデックスは上条が死んだことを悲しむだろう
そんな存在を自身の暴走で奪えなかった
例え見えないほど小さいものだとしても、彼女の幸せは奪えなかった
ステイル「……」
257 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:41:08.35 ID:2f9PfAgSO
ステイル「………はあ」
上条「?」
溜息をついたステイルは身を翻し、この場から去ろうとしている
それに対して上条は
上条「待てよ!」
言葉を浴びせる、悪意なき言葉を
上条「お前も…インデックスを助けたいんだろ?」
神裂「……」
上条「だったら、一緒に助けようぜ」
258 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:41:38.85 ID:2f9PfAgSO
ステイル「……」
なるほどね
これがこの男か
インデックスが助かるのなら、それでいい
誰が助けようが関係ない
例えたった一人のヒーローではなくともいいわけだ
いい信念だ
僕もそう思うよ
でも
ステイル(……もう、疲れたんだ)
259 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:42:08.92 ID:2f9PfAgSO
自分は今まで人から嫌われる存在だった
絶対に幸運が来ない場所に縛られ、誰かが助けてくれるまで『これでいい』
と諦めていた
しかし、自分と似た境遇の少女と出会い
その少女を救いたいと思った
だから変わった、変わろうと一生懸命になった
だが
少女は最初から幸せだった
ただの勘違いだった
そんな虚無感が…………………………………
もう…………………………………
261 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:43:25.39 ID:2f9PfAgSO
ステイル「……いいんだ」
上条「!?」
ステイル「興味が…なくなったから、君達が救ってやってくれ」
残酷な言葉が響いた
インデックス「……!」
それにインデックスは更になにも言えなくなる
胸や秘部を隠すことも忘れ、口を開いたままステイルを見ていた
慕っていた親に捨てられた子供の様に
上条「……なんでだよ」
上条は思わず漏らした
262 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:43:57.74 ID:2f9PfAgSO
上条「お前は最初、インデックスの修道服を破壊していた俺達にすげー怒ってたじゃねぇか」
叱咤を、いや懇願かもしれない
上条「さっきだって、そんなに絶望しているのにインデックスのために俺を生かした!」
上条「なのになんでそんなに簡単に諦められるんだよ!」
ステイル「……」
上条「なんで!自分の大切な気持ちを簡単に捨てられるんだよ!!」
ステイル(……知らないよ)
ステイルはその言葉に取り合わない
しかし妙に鋭く刺さる
ステイル(分かったら、こんなになっていない)
263 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:46:35.36 ID:2f9PfAgSO
ステイルは何も言わず去る
上条「待…」
上条は再度説得を試みるが、神裂がそれを遮る
神裂「随分部屋を破壊してしまいすいません」
上条は神裂をどかそうとするが、聖人の筋力がそうさせない
神裂「……先程も言いましたが、部屋の修理についてはお任せを」
ステイル「別にいいよ」
264 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:47:25.24 ID:2f9PfAgSO
インデックス「………………」
ステイル「……………………」
一度だけインデックスを見た
神裂「しかし…」
ステイル「いい」
ステイル「もう…」
そして捨てた
ステイル「ここには帰らないから」
彼女との繋がりを
265 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:49:18.51 ID:2f9PfAgSO
上条「おい!」
あれだけ言ったのにまだ引き止めようとする少年
ステイルはそれを鬱陶しいとも有り難いとも思わない
今の彼にそんな余裕はない
だが一つだけ
ステイル「脳の八五%が魔道書に占められ、残り十五%で一年間しか生活できない、ね」
上条「?」
自分だけ抜け駆けできたかもしれない
辿り着いた一つの冷たい真実を口にする
ステイル「だったら完全記憶能力者とやらは全員五、六歳で死ぬみたいだね」
神裂「……?」
上条「……」
そして今度こそ去る
インデックスのためにコンビニで買った食料品を横切って
266 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 08:50:33.77 ID:2f9PfAgSO
この言葉は
ステイルがインデックスに差し延べた手すら
引き戻したことを意味していた
七月二十日 終
271 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:43:59.80 ID:2f9PfAgSO
七月二十一日
ステイル=マグヌスはある研究施設にいた
この研究施設では秘密裏に実験を行っている
「どうしたの?いきなり」
と、ステイルと同じ部屋にいた研究者は問いかける
ステイルは長期休暇をとっていたはずなのに、その休暇中に出てきたから疑問に思ったのだ
それにステイルは答えない
代わりに睨みで返す
「おっと…」
研究者は引っ込む
272 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:44:53.43 ID:2f9PfAgSO
だが、今日の実験内容の報告だけはすることにしたらしい
「どうせなにもしないよ」
ステイル「構わない」
いつもは乗り気ではなく、終了したら誰にも声もかけず帰宅するステイルが進んでここにいる
そんな疑問に再び問いかける
「? 実験がしたい気分なのかい」
ステイル「家がなくなった」
「はい?」
273 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:45:27.71 ID:2f9PfAgSO
いきなりの暴露に驚く研究者
だがこの研究グループは財力がある
「だったら新しい家を用意しておくよ、なにか条件とかはあるかい?」
ステイル「いらない」
ステイルは再び即答する
だがそういうわけにもいかず研究者は食い下がる
「おいおい」
ステイル「路上生活でもするよ」
「なにを馬鹿なことを」
274 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:46:00.89 ID:2f9PfAgSO
「とりあえず今日中に手配しておくから行くんだぞ」
ステイルはそれに答えない
研究者は良心からステイルを気遣っているのではない
単に体調を崩して研究に影響が出ると迷惑だからだ
ステイル「出ていくよ」
「どうぞ」
部屋の出口に向かう
この空間にいても一層苛立ちが募る
275 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:46:44.48 ID:2f9PfAgSO
扉を閉める直前に
「あ」
研究者が声をあげる
「参加するなら十二時からA室で開始な」
という連絡が聞こえたが返事はしなかった
扉を閉め、廊下に出る
ステイル(……実験、か)
ステイルは電灯に照らされた通路の天井を見上げながら思う
ステイル(あれだけ嫌悪していたのに進んで受ける気になるなんて)
繰り返すがこの研究施設では、ある実験が行われている
ステイルはその被験者
『体晶服用実験』という実験の
276 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:47:44.54 ID:2f9PfAgSO
―――『体晶』
服用した者の能力を暴走させる効果がある
大抵は暴走により悲惨な結果が訪れるが
稀に暴走した方が良い結果がでる『適合者』がいる
ステイルはその『適合者』の一人
更に
『体晶』による体の負担
それが極端に少ないという特殊な体をした『適合者』の中でも特別な存在
277 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:48:41.19 ID:2f9PfAgSO
だから『体晶』を研究する者に目をつけられる
まず手始めに負担が少ないということで、木原幻生が新たに開発した
「常人なら一度の使用で死に至る程の『体晶』」
を用いられた
負担は辛かったが耐えられた
そこからついにステイルへの扱いに遠慮がなくなった
投薬や機材を用いた調整により、暴走を途中停止できる体にいじられた
これによりただの炎の玉が
あの摂氏三〇〇〇度の炎の塊となった
暴走によりステイルの意思に関係なく無尽蔵に炎が放出されるが、体晶の暴走をいつでも切れる
実験成功以降はステイルの体の仕組みを研究するものなど、様々な人物が来訪し、目的が枝分かれした
しかしこの延長線上の研究達は足踏み状態で今に至る
278 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:49:47.82 ID:2f9PfAgSO
そんなステイルを研究道具としかみていない連中
嫌悪していたが、今はそんな悪意を受け入れてしまう程の絶望がステイルを包んでいる
ステイル「……」
あの輝いている記憶
ステイル(……インデックス)
もういいのだ
要らない捨てた
なのに
何故
インデックス『ステイル!』
彼女の顔が離れないのだろう
七月二十一日 終
279 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:53:10.18 ID:2f9PfAgSO
七月二十四日
ステイルは新しく用意された家にいた
彼は落胆している
ステイル「……」
やはり悪意の塊は果てしない闇だった
かつての記憶がステイルに殺意や復讐心、そして恐怖を押し寄せる
だが恐れることはない
この実験を利用し強くなり、なにもかも潰せばいい
ステイル「…………ふっ」
ステイル「あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
叫んだ
決意した途端に
280 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:54:20.32 ID:2f9PfAgSO
インデックス『ステイル!』
思い出が頭に響く
ステイル「うぅぅ…」
インデックス『おなかへったー』
ステイル「……」
地面を睨み、叩く
ステイル「インデックス…」
彼にとって光だった彼女の顔が離れない
その未練が闇と戦う決意を削いでしまう
だがその光はステイル自身が捨てたのだ
281 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:54:57.20 ID:2f9PfAgSO
なのに未練がましく求める
光とも闇ともまともに向き合えない
その中途半端さ、弱さ
闇の脅威
インデックスという光への未練
様々な負へ誘う流れがステイルを追い詰めた
282 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:55:44.00 ID:2f9PfAgSO
ステイル「はっ…はっ……」
ベランダを見る
だがいるはずもない
ステイル「……………」
外出した
ふらふら、と街中を歩く
目が虚ろになりながら目的もなく
目の前にベンチがあった
ステイル「……」
座る
ステイル(もうこのまま…)
死んでしまおうか
そうまで思ったその時
283 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:56:48.88 ID:2f9PfAgSO
携帯の着信音がなった
ステイル「……?」
ステイルは鈍感に携帯をとりだそうとするが
プツ
とすぐ切れてしまった
ステイル(……なんだ?)
番号を見るが知らない番号
イタズラだろう
そう思い放置することにした
284 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/10(日) 22:57:47.76 ID:2f9PfAgSO
七月二十四日
幻想御手(レベルアッパー)
無能力者
欠陥品?
佐天涙子の転機とも言える日
その前の―――
290 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:04:36.71 ID:uMlTagLSO
佐天「どうしよう…」
佐天は焦る
彼女は幻の道具『幻想御手』を手にいれていた
しかし風紀委員が回収運動を展開している状況をおそれ、親友にも言い出せず
友達をまきこんで使用してしまった
副作用で昏睡してしまうことを知らず
佐天(どうしよう…どうしよう…!)
佐天(だれか…あたしのせいで……どうすれ…ば)
あまりの焦りに繋がりのない言葉を散らす
佐天「……誰か」
親友の初春達には言えない、言いたくない
でも誰かに…
佐天「…」
そんな時、頭に一人の人物が浮かんだ
291 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:05:52.24 ID:uMlTagLSO
自分にとってチカラが必要かどうか、自分で考えろ
と言った―――
佐天「……!」
佐天は携帯に登録されている番号を探る
―――ステイル=マグヌス
そして目当ての人物を見つけて、そこにある番号を押す
292 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:06:39.04 ID:uMlTagLSO
佐天「……」
プルルルと呼び出す音をきく
あの人ならなんとかしてくれると期待を抱き
しかし
佐天「……」
極限にまで追い詰められていた佐天は、思考が消極的になっていた
佐天(……あの人のことだ)
佐天(こんな弱気で自業自得の相談になんかのってくれないかも)
取り消しのボタンを押して連絡を断ち、携帯を足元に落とした
そして意味もなく視線だけで周りを見回すと
かつて母親がくれた御守りを見つけた
それを握りしめる
佐天「……」
293 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:07:21.58 ID:uMlTagLSO
佐天は落とした携帯を拾い、再び呼び出す
だが連絡相手はステイルではない
自分の過ちを認めて今度こそ
あの親友へ
294 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:08:19.38 ID:uMlTagLSO
しばらくベンチに座り続け、呆けていたステイルだが
ステイル「……」
一度は放置することにした先程の電話
反応してやろうかと思い始めていた
例え間違い電話でも、イタズラでも
闇からの誘いだとしても良い
自分を脅かすのなら焼いて焼き尽くすだけだから
むしろ、ステイルはそれを望んでいるかのようだった
このせいで死ぬことになろうが構わない
どうせ自分にはなにもないのだから
とにかく今はこの気持ちを晴らしたい
ステイル「……ふ」
もうかつての面影もない、まるで酷いスキルアウトのような、暴れることを求めるだけになっていた
そんな彼は着信履歴から先程の電話番号を押す
295 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:10:22.15 ID:uMlTagLSO
呼び出し音を聞き、相手が出るのを待つ
しかし中々出ない
やはり程度の低いイタズラ電話だったのかと思うと
「……もっ、もしもし」
出た
その人物は、察するに少女に分類されるだろう
闇には馴染まない飴玉を転がしたような、そして僅かに泣いている声だった
とりあえずステイルは苦情を言う
ステイル「君は先程僕に電話をしてきたよね?すぐ切るというイタズラ電話を」
「……えっ?その…」
ステイル「一体どういうつもりなのかな」
「すいません、今はそれどころでは…それにこれは私の携帯ではありませんし…」
困ったように返事する相手の少女
本当に知らないようだった
296 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:11:57.43 ID:uMlTagLSO
ステイルは考える
本当にただのイタズラなのか?
だがそう素人を装い油断させようとしているのかもしれない
ステイル「……そうかい、なにか聞いていないかい?」
「分かりません…すいません本当に時間がないので、また…」
少女はステイルに付き合っている暇はないと、それだけ急いでいる
ステイル(……ハズレか)
本当に切ろうとしている様子から闇などではないことをステイルは悟る
機会を失ったことを、少し残念に思ったが
「……また余裕ができたら再度連絡を…え、と…ステイル=マグヌスさんですよね」
電話の少女が放ったこの言葉にステイルは再び食いつく
297 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:13:41.00 ID:uMlTagLSO
こちらは相手に覚えがないのに、あちらは名前まで知っている
つまり調べられていた?
ということはやはり間違い電話などではなく、意図的なものだったのか
ステイル「まった、何故僕の名を?」
既に切ろうとしていた所に再び声をかけられ、口早に少女は質問に答える
「だってこの携帯に貴方が登録されていますから、実は知り合いなのでは?」
ステイル「……」
またしてもあっさりと答えがかえってきた
そして相手の携帯に自分が登録されている?
それに電話相手の声はどこかできいたことがある
ステイル「……」
『あれが爆弾です!』
298 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:16:37.13 ID:uMlTagLSO
ステイル(……あの時の…?)
セブンスミストという衣服店で虚空爆破事件に巻き込まれた時
爆弾から小さい少女をまもっていた花を乗せた少女の声に似ているのだ
確証はないが
その子の知り合いの携帯で、自分の情報を知っているということは
『貴方も…人間にとってレベルなんて関係ないと…』
ステイル(まさか、彼女…か……?)
洋服店で共にいたことがある
レベルに悩み、力は必要か否かを質問してきたロングの、確か佐天涙子という少女
ステイル(そういえば教えていたね、アチラの連絡先もきかずに…)
ステイル(それならば、いくらかは合点がいく)
それはステイルが幻想を胸に抱いていた時の話
299 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:17:33.51 ID:uMlTagLSO
とりあえず、その事実が僅かにステイルの頭を冷した
ステイル「すまない…知り合いだったよ」
「いえ」
ステイル「こちらのせいで時間をかけさせてしまったね」
また人に迷惑をかけた
ついに足をひっぱるにまで落ちてしまったのかと落胆しそうになるが、少女の言葉がそうさせる暇を与えなかった
「“救急車”は私の電話で呼びましたんで」
ステイル「?」
300 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:18:25.77 ID:uMlTagLSO
驚愕の言葉が聞こえた
ステイル「……救急車?」
ステイル「佐天君とやらが、どうかしたのかい?」
佐天という言葉にステイルが佐天の知り合いであることに確信を得たのか
話し始めた
「…………はい」
「幻想御手という物をご存じで?」
知らない
だから詳しい説明を求めた
すると相手は丁寧に答えた
301 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:19:27.29 ID:uMlTagLSO
それは音楽
共感覚性により、聴くと能力のレベルが上がる
だが使用後しばらくして何故か昏倒してしまう副作用がある
ステイル「……」
つまり佐天はそれを使用し倒れた
かつて投げ掛けた一つの課題
“自分にとって”は力が必要かどうか
それにより『必要』とし、幻想御手を使用した、のだろう
「ステイルさん?」
ステイル(……いや…)
そんな単純なものではないはずだ
彼女の内には様々なものがあったのだろう
ステイルの言ったことなど後押ししたかどうかくらいの重要度でしかないはずだ
「……ステイルさんは、本当に佐天さんのお知り合いなんですよね」
ステイル「……おそらくね」
「だったら、佐天さんを助けるのに協力してくださいませんか…?」
302 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:23:19.14 ID:uMlTagLSO
ステイル「……」
呼吸が止まった
また助けを求められた
手を差し延べるべき時がきた
だが今の自分にそんな…
ステイル「……あ」
声が出ない
どう反応していいかも分からない
「私…助けたいんです、佐天さんを…絶対…」
「佐天さんは…自分を…欠陥品とまで言ったんです…そこまで……」
ステイル「……」
「……私のせいで…」
ステイル「……君のせいでは」
ステイルは思う
この要請を断ろうと
佐天もあの少女と同じく十分幸せだった
誰かに想われ、自分の入る余地などない
自分は不必要
ステイル「そう自分を責めるんじゃない…君がいれば……絶対助かるよ」
「貴方は…」
ステイル「僕はいらないだろう、君やあの…他の友達がいれば十分じゃないかい…?」
「そんなことないですよ!」
303 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:24:54.26 ID:uMlTagLSO
以外な言葉がかえってきた
「たくさんいた方がより早く解決します!」
「それに…佐天さんは随分追い詰められていました…」
声を荒げ、彼女は熱弁する
「そんな中…一度でも貴方に電話しようとした…」
ステイル「……」
「十分必要だと思います」
ステイル「……」
佐天にとって自分が必要?
他に親友がいるのに?明らかに僕みたいな薄情より慕っている人が他にいながら?
自分がいなくともいいのに…?
ステイル「……なぜ?」
ステイル「もう十分なのに」
その答えは既に出ている
必要だからだ
ただ理解ができないだけ
304 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:26:16.08 ID:uMlTagLSO
「……私は佐天さんではないので本当のことは分かりませんが」
少し言葉を考えるため、間を置く
急いでいたはずなのに時間をかけている
ステイルが力になってくれると思っているから
そして少女はいう
「“十分”ではないですからね」
ステイル「……?」
「だって親しい人に助けてもらえないのは、少し寂しいですから」
ステイルの時が止まる
305 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:27:39.39 ID:uMlTagLSO
ステイル「……さみ、しい?」
「はい、当たり前じゃないですか」
「確かに一人でも慕っている人がいれば幸せなのかもしれませんが、それとこれとは話が別ですよ」
ステイル「別…」
「はい別です、それくらい贅沢になってもいいはずです」
………………………。
ステイルも相手も黙る
沈黙をつくる者と返事を待つ者の空間
「あ、救急車きました!失礼します!!」
ステイル「あ…」
初春が沈黙を破り、通話を切った
返事もきかないまま
救急車がくることで危機感が増したのか
306 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:29:04.95 ID:uMlTagLSO
通話が切れたステイルのいる場所は蝉の声がうるさく響く
だが、ステイルの世界はとても静かだ
ステイル「……そうか」
例え幸せであっても親しい人に助けてもらえない
だとしたらそれはもう、『十分な幸せ』ではない
ステイル「……もしかして」
―――インデックスも、そうだったのかな
307 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:30:23.71 ID:uMlTagLSO
ステイルはまだ初春の持論に理解が追いついていない
ステイル「だがこの一件に関われば理解できるかもしれない」
例えインデックスのことそう思っていたとしても、すでに愛想をつかされているだろう
しかしこの答えが見えないことには前に進めない
ステイル「佐天涙子を助けることで辿り着いてみせる」
自分のために利用するのだ
ステイル「……これでいい、僕みたいなヤツは…今はヒーローという柄でもないことだしね」
進む
幻想御手とやらの黒幕を探すため
308 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:35:04.89 ID:uMlTagLSO
ベンチから立ち上がり、ステイルは走り出した
ステイル「それにしても全く手掛かりはないね」
もう少し時間がたってから佐天の親友に協力を求めるべきかもしれない
だが番号も名前もしらない
ステイル「……色々不足しすぎだね」
だがアテがないわけではない
あのステイルが所属する研究グループ
ステイルの要望には自分達への不都合がない限り、応える
この幻想御手とやらが不都合とは思えないが
ヤツラに頼るのはお断りだ
ステイル「この事件は……闇をみずに解決する」
光をただ目指す
309 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:36:12.11 ID:uMlTagLSO
木山『いけないな、他人の研究成果を勝手に盗み見ては』
黒子『木山春生の所にいった初春に連絡がとれませんの…』
美琴『こんな時くらい「お姉様」に頼んなさい』
木山『面白い副産物をもたらす者なのだよ』
『能力者だと!?』
310 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:36:59.46 ID:uMlTagLSO
黒子『多重能力者…』
木山『言うなれば『多才能力者』だ』
木山『この街の全てを敵に回しても、止める訳にはいかないんだっ!!!』
311 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:37:31.89 ID:uMlTagLSO
美琴「…は?」
『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・……
312 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:38:14.55 ID:uMlTagLSO
場面は高速道路の真下
周りは戦闘により破壊され、瓦礫や砂利ばかりだ
と、そこで咆哮すると同時に周りを爆破し始める
幻想御手の黒幕である木山春生から出た胎児のような化物
そしてそれに巻きこまれそうになった、学園都市の第三位の超能力者、御坂美琴
彼女は幻想御手解決のために尽力していた
そして木山が犯人であることをつき止め、止めることに成功する
そして今に至るわけだ
美琴「なんなのよ、アレ」
胎児の化物の爆破に対し、周囲の鋼鉄や砂鉄を組み上げて防ぐ
その後、電撃を放ち応戦する
すると化物はあっさりソレをくらい、血も出ず体が弾けた
313 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:40:16.43 ID:uMlTagLSO
美琴(……やっぱり生物じゃ…)
考える暇はなかった
生物は失った部分を取り戻す
そして瓦礫で反撃してきた
美琴「~~~ッ!」
必至で走り、体勢を立て直す
よく分からないが、ほっておくわけにもいかない相手だ
美琴「相手になるってんなら…」
美琴は電気をバチッと出しながら、臨戦態勢に入る
美琴「……?」
『キャアアアアアア……
相手は追ってこない
動かずただ叫んでいる
314 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:41:01.27 ID:uMlTagLSO
それを疑問に思っていると、美琴の足元に何かあたった
美琴「……!?」
それは物ではなく、人
美琴「あ」
化物を召還した、木山春生
315 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:43:15.96 ID:uMlTagLSO
一方、相変わらず叫ぶだけの化物はというと
美琴とは一時休戦となったが、木山に全滅させられた警備員に目をつけられる
生き残りの警備員はガンガン攻撃するが
やはり化物は立体映像のように、くらった部位が揺らぐだけですぐ戻る
そして何もできないまま、警備員は弾き飛ばされる
鉄装「ハハ…」
ただ一人の生き残り
なにもできないまま笑い、現実逃避するしかない
鉄装「ぜんぶ…」
化物の伸ばしてきた一部が、襲うための用意をする
鉄装「幻」
その言葉を合図に、化物の一部は襲いかかる
はずだった
316 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:44:05.65 ID:uMlTagLSO
「!?」
熱い
何か強烈な熱が鉄装の肌を襲う
眼前は橙の何かでうめ尽くされていた
鉄装「……火?」
それが目の前の脅威を焼き払った
「まったく…」
真横から、おそらく炎の発射口と思われる人物が歩いてくる
「警備員ならせめて逃げるくらいの度胸もちでいなよ」
317 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/14(木) 22:45:48.67 ID:uMlTagLSO
赤い髪、二メートルはある長身
耳にはピアス、そして全部の指に指輪をはめている
黒いシャツの上にさらに黒いジャージと厚手のコートを着た
まるで衣替えを忘れているような服装の人物
鉄装「み、民間人がなにを…」
「…………さぁ」
そう呟き、目の前を見据えて立つ
(急いで出動する警備員を見かけたので尾行してみたら、とんでもない…)
「ビンゴなのか、的はずれか…」
『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・……
「キミが教えてくれるのかい?」
そう
学園都市の超能力者、第六位『魔女狩り』
ステイル=マグヌスが
322 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:21:15.66 ID:zAbPLytSO
ステイル「…」
静寂
嵐の前の静けさが包む
そして次の瞬間
炎が
灼熱の弾丸が雨のようにターゲットに放たれた
爆音が響く
ステイル「……」
成果はあった
化物は攻撃を全て受け、体は炎にやられたのか弾けていた
しかしステイルの顔は優れない
なぜなら化物はすぐに形を取り戻し、修復したからだ
323 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:22:00.10 ID:zAbPLytSO
ステイル「む…」
効果がないということで、やり方を変えることにした
ステイルが思案している間に化物は反撃してきた
伸ばした触手のようなものでステイルの足元を念動力で叩き崩し
よろけた所を謎の光線で仕留める手筈
しかしステイルはそう簡単にはやられない
素早く触手を炎で切断する
そしてすぐにその場から離れて、廃材や警備員が散らかした銃や盾を掻き集め
『それらを溶接した』
人間バーナーの彼には鉄などの溶接も造作ない
発火能力に関しては学園都市最強であり加減も分かる
それは、質量も小さく雑な繋ぎあわせだったが銃身などが鋭く突き出た鈍器化していた
ステイルはそれを炎の放射を推進力として使い、発射させた
324 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:22:45.54 ID:zAbPLytSO
とてつもない勢いを得た鉄のハリネズミ
もともと不安定なものなので、勢いで途中崩れた所もあったが
無事ヒットし爆破した
それが放とうとしていた光線ごと化物の体を千切り飛ばす
一部には塊から外れたドロドロの銃が刺さっていた
これでいいか?と思ったステイルだが
ステイル「ッ!?」
目の前の現象を前に、本能だけで横に飛んだ
その次の瞬間、ステイルの居る場所が弾けとんだ
化物の強烈な電撃が襲ったのだ
325 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:23:38.90 ID:zAbPLytSO
ステイル「……は、ぁッ」
無事回避し倒れこんでからも、転がりながら距離をとる
ステイル(威力はそこそこだが…本当になんの兵器なんだいアレは!?)
考える時間もなく、化物は体を修復させながら何かしようとしていた
転がり込んだ先に座り込んでいた警備員を見つける
彼女にも一応警告を促す
ステイル「今のを見ただろう!早く立て!!」
鉄装「……こ、腰がぁ…」
ステイル「く、この街では安全に暮らせそうにないな…!」
警備員はいっぱいいっぱいでそんな嫌味にも反応しない
そうした間にも化物の第二派がやってくる
ステイル「………く」
326 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:24:27.02 ID:zAbPLytSO
巨大な氷柱
それがミサイルのようにコチラに照準を定めて発射された
ステイル(しまった…この人に気をとられたから……!)
『体晶』をとりだし、切り札を使う暇はない
だから自分の持てる限りの出力で応戦する
ステイル「はあああああああああッッ!」
ステイルが覚悟を決めて、決死の炎を
ステイル「!?」
出さなかった
巨大な氷柱は突然飛んできた砂鉄に輪切りにされ無残にその場で落下した
「……アナタがなんでここにいるかは知らないけど…」
柱などを伝いながらコチラに向かう常盤台の制服でスカートの下に単パンを履いている少女は言う
ステイル「……」
美琴「とりあえずあの時の借りは返せたわね」
それは第三位と第六位の再会だった
327 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:25:11.72 ID:zAbPLytSO
ステイル「……」
美琴「……」
鉄装「に、逃げてっ!」
美琴・ステイル「!!」
自分の攻撃が失敗したことも気にせず化物は、すぐさま追撃しようとしていた
触手を何重にも巻いて、一つの怪獣のような腕にしたもので
美琴「っと…!!」
美琴は再び砂鉄を操り、軽くそれを切りとばした
ステイル「すぐ再生するぞ!」
美琴「分かってるわよ!さっきからそれで困っているの!!」
ステイルと叫びあう美琴を後ろから、光線が狙っている
ステイル「ハ、アァッ!」
気づいたステイルは炎で美琴を守る
迅速な対応だったため、美琴に危害が加わらない場所で爆発した
美琴「また借りができたわね」
ステイル「キリがないからノーカンいいよ」
328 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:26:18.80 ID:zAbPLytSO
そういうわけにもいかないわ
だったら、早めに返してくれ
と駄弁りながら化物と戦う化物達
それを傍観する(するしかない)鉄装綴里さん
鉄装(ってぇ、あの子達なんで和気あいあいと戦えるのよ~!)
度胸だけではない
あの何度粉砕しても再生する怪物と片手間のように戦闘し、持ち堪えている実力
鉄装(明らかにレベル4くらいだよね!)
訳が分からなくなってきたため、腰も治ったということで倒れている同僚を避難させながら
彼等の実力を考察する
現実逃避
鉄装「ん?」
すると二人はコチラに走って帰ってくる
329 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:27:38.61 ID:zAbPLytSO
鉄装「な…」
鉄装(なんで優勢なのにこっちににげてくるの!?)
敗走したわけではあるまい
重傷を負ってもいない
理解できない顔をしていると
答えは二人が言ってくれた
ステイル「一度距離をとり作戦を練ろう、追って来たら僕が払う」
美琴「大丈夫、こっちがちょっかい出さなければ襲ってこないから」
二人の声には、ありがちな負け犬の遠吠えの色はない
鉄装(手際よく連携してるし…)
鉄装が思う通り、二人には早くも連携みたいなのが出来上がり始めていた
330 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:28:11.68 ID:zAbPLytSO
別に小難しい連携をしているわけではない
ただ、ステイルが攻撃している間は美琴がステイルのカバーをし
美琴が攻撃している間はステイルがカバーに徹する
そんな基本的で基礎的なこと
だがこれだけでも二人には十分であり防御を考えず攻撃に専念できた
二人が超能力者あってこその効果
ステイル(チームプレイは苦手と思っていたんだがね…)
美琴(なんかこの人とはスラスラといくわね)
確かにあまりに攻撃の威力が高くて仲間まで害する二人
単独で戦う方が合っている
“そんな似た者同士だからこそ”相手の行動をなんとなく察知できる
周りを気にするか気にしないかの差はあるが
美琴のすぐ真横に爆炎を通過させ、怒られるなどといった綻びもあったが
無意識に生まれた連携はただ暴れる怪物には強かった
331 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:28:59.82 ID:zAbPLytSO
そんな戦略的撤退をした二人に鉄装は言う
鉄装「時間に…余裕はないわよ」
ステイル・美琴「……?」
鉄装は、ある建物を指さした
332 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:29:46.09 ID:zAbPLytSO
化物は移動し始めた
進む方角を決めるわけでもなく、メチャクチャに
美琴「待ちなさい」
化物はその声に振り向かない
だが動きを止める
美琴「私と遊びましょう」
爆破でOKサインが出され、砂鉄の壁で美琴は受け取った
333 :1
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/16(土) 20:33:02.87 ID:zAbPLytSO
レスいつも感謝しています
では読んでくれた方ありがとうございました
335 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/04/17(日) 09:10:17.70 ID:mSqt/Ym60
乙!
同い年で同じレベル5でかませ犬気質だけどやるときはやる
この二人のコンビはなかなか新鮮だな 340 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:35:27.36 ID:1J9Kn0PSO
ステイルはこの暴走の原因ともいえる人物の元へ走っていた
木山春生の所へ
御坂美琴にあの怪物は木山から生まれたものだと聞かされた
だから対策を思い付くかもしれない
だから二手に別れる
美琴は化物を引きつけて
ステイルは対策をききにいく
ステイル(……再生する化物は、その元が壊れると…ってね)
ステイルの切り札と敵の怪物は似ている
なんとなくそう思っていた
341 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:36:57.08 ID:1J9Kn0PSO
ステイルは美琴に聞かされた場所に辿り着いた
ステイル(確か…このへんに木山とやらを隠したと…)
ステイル「!?」
突然、ステイルはギョッとする
美琴から聞いた容姿と合致する人物を見つけたのだ
だが驚いたのは、そのせいではない
彼女は今にも頭を銃で撃ちぬこうとしていた
ステイル「……!」
「ダメー!」
だが無事阻止された
花の子の首締めによって
342 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:40:20.53 ID:1J9Kn0PSO
そしてその功労者は木山を必死に説得している
首が締まっている、と伝えてやるわけではないがステイルもその輪に加わる
ステイル「やれやれ…」
初春の首締めも解かれ、少し落ち着く場
木山の自殺を阻止できたことに安堵して初春は尋ねた
初春「?アナタは…」
ステイル「あの電話の人間だよ」
初春「!?」
そんなやり取り後、しばし二人は見つめ合う
二人の関係を知らない木山は交互に顔を見ている
そんな様子にも気を止めず初春は会話を再開した
初春「……ありがとうございます」
ステイル「お礼はいらないよ、自分のためだから」
343 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:41:36.17 ID:1J9Kn0PSO
いつまでもそんなことを言ってる場合ではない
ステイルは本題に入る
ステイル「……あれはなんだ?」
と、木山に初対面らしからぬ言葉で尋ねた
ステイルはあまり敬語を使わない男である
木山「……」
木山「おそらく」
首の痛みを気にしながら、一息おいて木山はいう
木山「虚数学区」
ステイル「……」
その言葉にステイルは黙る
どう反応するか迷っていたら、先に初春が聞き返してしまった
初春「あれって都市伝説じゃなかったんですか」
木山「巷に流れる噂と実体はまったく違ったわけだがね」
木山はあの化物の真実を流がれるような口調で語る
木山「虚数学区とは『AIM拡散力場』の集合体だったんだ」
344 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:42:28.36 ID:1J9Kn0PSO
その事実に再びステイルは驚く
ステイル「AIM、拡散力場…!?」
ステイル「ではまさか…」
木山「ああアレもおそらく原理は同じ」
『幻想猛獣(AIMバースト)』
『幻想御手』のネットワークによって束ねられた一万のAIM拡散力場が、触媒になって産まれた
ステイル「そして今は、学園都市中に広がっているAIM拡散力場を取り込んで成長している、ってわけかい」
ステイルの意見に頷いて、木山は続ける
木山「……そんなモノに自我があるとは考えにくいが、核であった私の感情に影響されて暴走しているのだろう」
345 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:44:36.68 ID:1J9Kn0PSO
ステイル「なるほどね、ならばなんども再生するのも納得だ」
その話からステイルは今までの疑問が解消され、少しスッキリした
しかし逆に初春は
初春「なんかカワイそうかも…」
愁いていた
初春「どうすればあれを止める事ができますか」
そう木山に強く言った
ステイルがいうはずだった言葉を先に
自分が抱いたものを成し遂げるため一生懸命だ
ステイル(……これが…)
初春はただ可哀相というだけで揺るがぬ決意を固めることができた
彼女がどんな能力があるかは知らないが、強い
自分のためにしか動けない自分とは違い
自分が傷つけば、手を引っ込めてしまう自分とは違い
346 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:45:22.71 ID:1J9Kn0PSO
今、ステイルに足りないものはこれなのかもしれない
『強く、揺るぎない精神』
347 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:46:56.18 ID:1J9Kn0PSO
木山「預けたものは持っているかい?」
ステイルはハッとする
話がいつの間にか進んでいた
首を横にふり、話に集中する
木山「『幻想御手』をアンインストールするプログラムでネットワークを破壊すれば止められるかもしれない」
ステイルと初春は向き合う
そして互いに頷きあい、行動に移る
348 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:50:04.57 ID:1J9Kn0PSO
対策が見えた初春とステイルは上層の高速道路へ向かう
そこには警備員のトラックがある
そこにアンインストールできる設備が備えてあるかもしれない
だから上に繋がる階段を、急ぎ無警戒にかけ上がっていると
『幻想猛獣』の攻撃の流れ弾がやってきた
ステイル「!」
それを捉えたステイルは咄嗟に初春を突き飛ばした
それにより初春は突き飛ばされた先で階段の角に顔をぶつける
強打し、赤く腫れるがマシだったと思う
防御が間に合わなかったステイルは直撃をうけ、階段から『幻想猛獣』の反対側に落下した
初春「ステイルさんっ!」
349 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:53:04.27 ID:1J9Kn0PSO
ステイル「大丈夫…だ」
下から微かに声が聞こえてきた
しかし今にも消えそうなくらい弱い声が
初春「でも…」
ステイル「止めるのだろう…!」
叱咤する
自分のために彼女の覚悟を揺るがすわけにはいかない
ステイル「アレを止める、そして、彼女を…助けるのだろう!」
弱くなった言葉に力が籠る
もう足を引っ張らないために
初春「でもアナタも…!」
ステイル「……」
350 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:54:05.52 ID:1J9Kn0PSO
初春はただ優しい
今ごねる理由もそれだけのこと
だとすれば彼女の決意の足をひっぱらない方法はただ一つだ
ステイル「………ぁぁぁああああ」
背中を地面に強打し激痛が襲い、息苦しい
口は血の味がする
頭も僅かにぶつけて視界がボヤけている
両手両足も骨折しているかもしれない
だが
ステイル「あああああああああああああああ!!」
351 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:54:54.57 ID:1J9Kn0PSO
ステイルの落下した場から火柱が吹き出た
やがてそれは纏まりはじめ、一つの巨大な塊となり
初春を安心させるため、轟々と燃え盛る
ステイル「……大丈夫、だろう?」
初春「……はい」
この力に初春は黙って呆けていた
だがステイルの言葉で我にかえる
ステイル「だから早く、行くんだ」
352 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:55:45.51 ID:1J9Kn0PSO
初春は再び目的地に向かった
ステイルはそれを感じて、炎の塊を解除する
ステイル「……はあ」
重傷に加えて、体晶の負担
それに耐え兼ねたのもあるが一番の理由は
ステイル(コイツは、移動ができないからね)
ステイルは痛みを堪えながら、立ち上がる
足が悲鳴をあげる、やはり骨折しているかもしれない
だが壁に手をつき、引きずりながらも進む
ステイルが見るは、『幻想猛獣』と御坂美琴の戦場
353 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:56:23.72 ID:1J9Kn0PSO
ステイルは切り札で美琴を援護することを決めた
ステイル(まず、出現させる座標を指定する)
切り札を出すために必要な、何度も繰り返してきた作業
ステイル(そして、そこに炎を運ぶための最適な道などを…見つけ、演算する)
頭で確認しながら、黙々とこなしていく
ステイル(最後に『体晶』を舐めて…)
まるで初心にかえったように
ステイル(炎を座標におくる!)
新しく、生まれ変わるために
ステイル「いけええぇぇぇッッ!!」
354 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:57:15.47 ID:1J9Kn0PSO
美琴は不死身の化物に対し善戦していたが
ついに足元をすくわれた
文字通り、足を触手に取られてそのまま引きずられる
美琴「うわわわわわわわぉ!!」
そんな隙だらけの美琴にに怪物の長い腕が襲いかかる
電撃で応戦しようとしたが
炎の塊、『幻想猛獣』にも劣らない大きさの炎が化物と対立するように現れ、腕を溶かし美琴を守った
美琴「!!」
ステイル「これは僕が手柄を独り占めするための行動だ、借りはつくらせないよ」
後ろからの声
木山と共に肩を支えながら歩くステイルの
355 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 22:57:58.18 ID:1J9Kn0PSO
美琴「……アンタ」
ステイル「あの化物については今、花の少女がなんとかしてくれている」
美琴「……そ、そう…でも大丈夫…?」
ステイルのふらつき具合を心配する美琴
先程、ミスで敵の光線が飛んだ
それのせいではないか、と思っているのだろう
ステイル「いいよ、逆に頭が冴えてる」
そう慰めて、ステイルは『幻想猛獣』と張り合う炎の塊を操る
356 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 23:00:45.96 ID:1J9Kn0PSO
炎の塊がうねる
美琴「あれは…」
美琴が何かを思い出したように呟くが、それに反応する暇はない
『幻想猛獣』が炎を避けるようにコチラに腕をまわしてきた
それを、あの炎の腕を出して防ぐことにする
出現させた時と同じ様に手順を頭で確認しながら
ステイル(炎をおくる!)
そうすると狙い通り、炎の腕が現れて『幻想猛獣』の攻撃を防いだ
生えた、というよりは炎の塊から押し出されたという感じに突き出た
しかし防いだ炎も揺らぎ形が崩れるが、すぐ修復する
ステイル「キミと同じだよ」
357 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/19(火) 23:01:37.63 ID:1J9Kn0PSO
ステイル「やられてもすぐ戻る」
ステイルは炎の塊の頭上から巨大な手を出して
ジュウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ、と不死身の化物を焼き潰した
ステイル「自分の厄介さを、実感してもらえたかな?」
368 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:00:53.86 ID:MQq2mYoSO
ステイルは『幻想猛獣』を焼きつくした
だがステイルも美琴も気を抜かない
ステイル(すぐに……)
美琴「…………?」
しかし思わず気を抜いてしまいそうになる
ヤツはすぐに再生するかと思われた
だがいつまでたっても『幻想猛獣』は焦げ臭い煙を舞い上がらせている
美琴「……どういうこと」
美琴が疑問を呟くと木山がそれに答えた
木山「……『幻想御手』のアンインストールに成功した」
369 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:01:47.24 ID:MQq2mYoSO
ステイル「だったらアレは…?」
ステイルが化物から目を離し、力を抜く
それに木山は喝をいれる
木山「まだだ!」
すると『幻想猛獣』はゆっくりと再生しながら、炎の塊を攻撃し揺らがせた
その瞬間、ステイルが苦しそうに呻いた
ステイル「ぐぅ……っ」
ステイルから、本人の意思に関係なく再生のための炎が送り込まれたのだ
ステイルは既に限界だが、まるで万全のように流れ込んだ
美琴が疲労により電撃が出せなくなることがあるように
能力者の体調によって、能力は使用困難になることがある
だがステイルはその本能のブレーキともいえるものが壊れている
もちろん『体晶』のせいで
370 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:02:48.40 ID:MQq2mYoSO
まさに能力者あってこその能力が、能力者を支配しているともみえる
これは『不死身の炎』の仕組みに問題があり
これを使用するために必要な演算式に、予め再生に使う炎の演算式も組み込んでいるのだ
『体晶』無しだと、その予約式を好きな時に発動させることができる
だが今は暴走でそれができない
木山「大丈夫か…?」
ステイル「大丈夫……」
371 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:10:33.81 ID:MQq2mYoSO
だが明らかにやせ我慢ということが分かった
前述の通りステイルは怪我のせいで能力をまともに使えないのに、まともに使わされている
そんな様子から美琴はステイルの無茶を許さなかった
美琴「休んでなさい、後は私がやる」
そうして美琴は身を翻し、木山に質問をする
美琴「どうすればいいの?ネットワークが完全に壊れるまで待つとか?」
木山「力場の塊を自立させている核のようなものがあるはずだ」
美琴「……分かった、それを破壊すれば…」
と言った美琴は突然固まる
それと共に口から出た強い言葉も途切れる
いや、途切れさせられた
『幻想猛獣』の悲痛な叫びにより
372 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:11:17.05 ID:MQq2mYoSO
『ntst欲kgd』
『kg苦s』
『n憤kd』
ノイズの混じった謎の、そして時として鮮明になる声に
『w羨―≡≡≡≡===――――何の力もない自分がいやで、でも憧れは捨てられなくて』
美琴「……」
ステイル達は今の声には聞き覚えがあった
ステイル「……今の声は…?」
373 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:12:17.47 ID:MQq2mYoSO
『――――――――≡==―――dknr歎yjtnj』
ステイル「……」
その他様々な叫びに、誰も声を出せない
何を思い、黙るのかは本人しか分からない
その一人、ステイル=マグヌスはなにを思っているのか
―――『でも憧れは捨てられなくて』
―――『なんで!自分の大切な気持ちを簡単に捨てられるんだよ!!』
ステイル(……憧れは捨てられない)
そうか
インデックスの顔が頭から離れなかったわけ
捨てられないんだ
インデックスとの繋がりを
374 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:13:49.96 ID:MQq2mYoSO
ここで無責任にもステイルの意識はおちた
次目覚めた時には
ステイル「!」
美琴「あ、起きた」
瓦礫の散らかった周囲
ステイルはまだあの戦場にいた
初春「大丈夫ですか!」
周りをよくみると、初春も木山もいた
唯一、いないのは
ステイル「……」
美琴「私が、決着をつけたわ」
ステイル「そうかい」
重く語る美琴にステイルは息を吐く
さらに詳しく訊くと、今は木山春生を連行する警備員の増援を待っている所らしい
375 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:14:59.44 ID:MQq2mYoSO
ステイル「……そうかい」
ステイルは上体をおこす
初春は止めようとするが、それを聞かず
ステイル「だったら僕は帰らせてもらうよ」
初春「えぇっ!?」
美琴「何いってんの、病院に…」
さらに皆が止めにかかるが、やはり聞かない
ステイルはこれ以上こんなところにいるわけにはいかない
ステイル「今すぐ、行かなければいけない所があるから」
376 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:15:43.14 ID:MQq2mYoSO
初春「で、でも…」
美琴「そうよ、せめて診てもらってから…重傷よ!」
ステイル「悪いが、聞けない」
そう断言し、近くにある鉄棒を拾い、それを松葉杖にしながらノソノソ歩く
速度は遅いが、力強い
美琴も初春も止められない、気迫があった
ステイルも二人には気にとめず去る
ステイル「……ありがとう」
だが背を向けて礼をいう
たくさんのことを教えてくれた
377 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:16:33.25 ID:MQq2mYoSO
ステイル(……行く)
ステイルは一歩一歩前に進む
ステイル(会いにいく…)
ステイルに足りなかったもの
それは単に強い精神
あの花の少女のように、決してブレない
地獄の底に一人取り残されたのなら、そこから這い上がってでも再び助けにいく
ただそれだけのことだった
378 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:17:25.01 ID:MQq2mYoSO
インデックスは想われてはいたが、幸せではなかった
勘違いといえどインデックスは泣くほど苦しんでいた
それにまだ記憶の問題がある
ステイルから捨てられなくともインデックスはまだ十分な幸せを持ってはいなかった
だったら、別にかつてのパートナー達と協力しなくてもいい
救うべきだった
それどころか、さらにインデックスの幸せを奪ってしまった
反省の渦にのまれるが、今はそんな過去形の言葉を並べる時ではない
ステイル(……待っていてくれ)
379 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 21:18:03.84 ID:MQq2mYoSO
もう捨てられているだろう
インデックスはこちらを向いてくれないだろう
勝手だろう
会う資格なんてないだろう
でも
捨てられない
黒髪の子が憧れを捨てられず『幻想御手』を使ってしまったように
どうしても捨てられない
もう一度
ステイル(……インデックスに、会いたい)
拒絶されたら、インデックスを助けてから消えよう
と心に思いながら歩く
384 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 22:59:23.11 ID:MQq2mYoSO
学園都市の範囲から外れた東京
そのどこかに存在する、とある安いアパート
その一室の扉の前に、ポニーテールでおヘソを見せ、ジーンズの左足の裾を太股の根元までバッサリと切っている
加えて腰に二メートルはある刀を下げた容姿の女性がいた
名を、神裂火織という
彼女が壁にもたれながら待っていると
その部屋の扉が開かれ、別の少女の声が聞こえてきた
「一応。夕食を食べさせて寝かしたわ」
神裂「ご苦労様です、姫神秋沙」
姫神秋沙と呼ばれた、腰まである黒髪で巫女装束を着た少女は言葉を返す
姫神「いいの。上条君の家に居候させてもらっているから。これくらいやらせて」
385 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 23:01:01.24 ID:MQq2mYoSO
そう
ここは上条当麻の住んでいたアパート
ずっとそのままにしていたため、まだ上条の部屋ということになっていた
四日前のあの後、上条達は動かないインデックスを連れて学園都市を出た
そのままイギリスに帰る、という予定だったが
上条『調べたいことがあるから、学園都市にしばらく通う』
と上条がそんなことを言い出した
意図は分からないが、譲らないので神裂は折れ
こうして姫神を住ませていた上条の部屋で待機することにした
386 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 23:06:56.44 ID:MQq2mYoSO
続けて上条部屋の居候兼、管理者となっていた姫神は言った
姫神「それに。貴方達には借りがある」
神裂「それに関しては気にしなくていいと申し上げたはずです」
借り、とは
姫神はかつて京都の山村に住んでいた時に、とある魔術師に拉致されたことがある
それをインデックスを捜索している最中だった神裂と上条に発見され救われた
助けはいらないと言うのに
第一の目的を置いてまで助けられた
その後、帰る場所もなくなっていた姫神はこの部屋を与えられたというわけだ
姫神は余計なお世話と思うと同時に
自分のために一生懸命になってくれた二人に感謝の念を抱いた
だから救われた
姫神「……。まあそれは置いておいて。上条君はまた…」
姫神は無表情で、二人の間では定番となる質問をした
それに神裂は僅かに困った色を混ぜた表情で答える
神裂「はい、学園都市の図書館に籠りっきりです」
387 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 23:07:52.86 ID:MQq2mYoSO
神裂は頭に手をあて、焦りを感じさせるように
神裂「気になることがあるらしく、脳に関する書物を頭を抱えながら読みあさっています」
姫神「脳」
そのワードに姫神は反応する
理由は簡単
目の前の部屋で眠りにつく少女、インデックスの抱える問題に引っ掛かったからだ
姫神「なにか。掴みかけているのかしら」
神裂「さあ…ですが余り時間もありません」
神裂の言葉には焦りの他に、僅かな期待も混じっていた
389 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/21(木) 23:10:27.16 ID:MQq2mYoSO
神裂「……そろそろ、時間ですね」
そう言うと神裂はアパートの階段を下っていく
上条当麻を迎えにいくため、学園都市にいくのだ
自分から遠ざかる神裂に姫神は呼び掛ける
姫神「晩ごはんは。私が作っておくから」
神裂「感謝します」
そう言い、神裂は足早に学園都市に向かっていく
神裂を見送りながら姫神は
姫神(いつものように。もうしばらくは帰ってこないだろうな)
と、思いながら二人の帰る時間帯を考慮して夕飯の準備にとりかかろうと頭で呟いた
次→
ステイル「第六位、『魔女狩り(ファイアハンター)』だよ」【後編】
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