匂いのエロティシズム (集英社新書) 前→
五条「願わくば、もう一度貴女をこの手に抱きたい」その2最初から→
五条「貴方が殺せと言うなら神だって殺しますよ」76 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/09(日) 22:51:39.99 ID:t4IvFA8Uo
皆さんのご支援、一番の大好物です
70 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/09(日) 22:04:14.18 ID:zgSD0nvyo
キターーーーーーーーー
wwktk wwktk72 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/09(日) 22:26:47.81 ID:nuT4PL9S0
wwktkってなんぞ73 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/09(日) 22:33:51.90 ID:xMRC/Bxso
よかろう、貴様にも説明する時が来たようだ
「だぶるわくてか」について…77 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/09(日) 22:52:25.76 ID:lyeTbvm/P
食べてええええええええええ!!!!!!!!!!!!78 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/09(日) 23:09:32.95 ID:4Jtf7HCAo
食べるならあたしの支援を食べてえええええええ!!!
80 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/09(日) 23:50:29.86 ID:t4IvFA8Uo
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キュルケ「ルイズ……あんた服を仕立てに行ってたんじゃなかったの?」
キュルケは私が汗だくになりながら両手で抱えている剣を見て尋ねる。
ギーシュもキュルケも、もうレコン・キスタ兵の鎧に身を包んでいる。
タバサは読書。
ルイズ「……私が聞きたいわよ」
ギーシュ「それにしても大きな剣だ。ゴジョーさんに渡すのかい?」
キュルケ「ゴジョーが剣なんか使うとは思えないけどね」
そう言ったキュルケが剣を鞘から抜き出す。
剣「プッハー! 息ぐるしいったらありゃしねえ! どうせならいつも鞘から出しといてくれよ!」
キュルケ「きゃあ!? なに!?」
剣がカクカクと口を動かす。
タバサ「……インテリジェンス・ソード?」
ルイズ「そうよ、ホント言うとこんな大きな……いえ、五月蝿い剣、持ってくる気は無かったんだけどね」
剣「カッカッカッ! あんなとこで埃かぶってるよりゃ、お前さんたちについてくほうが幾分かマシみたいだな!」
この場にいる誰よりも大きな声でそう宣言する剣。
81 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/09(日) 23:56:27.66 ID:t4IvFA8Uo
ルイズ「て言うか剣!」
キュルケから奪い去り、指をさす。
デルフ「お嬢ちゃん、俺には立派なデルフリンガーって名前があるんだぜ?」
ルイズ「そんなのどうだっていいわ! あんた、虚無のこととかガンダールヴのこととか分かるんでしょ!?」
デルフ「いや?」
ルイズ「は!? 自分で言ってたじゃないの、ガンダールヴの左腕がどうとか!」
デルフ「うーん、そうなんだけどな。その、全然思い出せないのよ、なにしろスゲー昔の話だから」
ルイズ「……」
悪びれる様子もなく話す剣を手から離す。
金属音が夕暮れの広場に響いた。
デルフ「お、お嬢ちゃん?」
ルイズ「捨ててくわ、ここに」
冷酷に言い放つ。
82 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:04:49.76 ID:t4IvFA8Uo
デルフ「ちょ、ちょっと待ってくれよ!! 人間誰だって思い出せないことがあるじゃねぇか!」
キュルケ「あんた人間じゃないでしょ」
デルフ「そうだけど! 決断が早過ぎるだろ! せめても『ガンダールヴ』に会わせてからにしてくれよ!」
必死に弁明する剣に視線を向ける。
ルイズ「……ゴジョーに会えば思い出せるんでしょうね」
デルフ「多分……きっと。そんな気がする」
ぼそぼそと力なく返事するデルフリンガーを踵で壁際まで蹴飛ばす。
ルイズ「さよなら」
デルフ「だーーー! 思い出せるよ! あは! 絶対、確実! 余す所無く思い出すことを約束しますから捨てないで!?」
ルイズ「本当でしょうね!? 思い出せなかったら戦場のど真ん中に捨てるんだからね!」
デルフ「分かったよぉ! ……全く、とんだ奴に貰われちまったもんだぜ」
ルイズ「なにか言った?」
デルフ「いいえ」
83 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:10:37.79 ID:t4IvFA8Uo
仕方がなく剣を拾い、大きな木箱に立てかけるとタバサが本を閉じた。
タバサ「話はもういい?」
ルイズ「いいわ」
タバサ「では今から私と貴女はこの木箱に入る」
コンコンと叩いたそれはあまりきれいでなく、通気性も悪そうだ。
……そうだ。
重要なことに気がつく。
ルイズ「タバサ、その、フネに乗った後の事なんだけど……」
タバサ「なに?」
ルイズ「その、催しちゃった場合はどうするの? 丸一日ぐらいはフネに隠れているんでしょ? トイレに行ける……?」
タバサ「その時はこれを使うの」
タバサが箱の中から取り出したのは、あひるの顔が間抜けに付いているオマル。
ルイズ「……じょ、冗談じゃない! 淑女としてそんなこと、プライドが許さないわ!」
タバサ「だったらやめる?」
ルイズ「うぐ……」
キュルケ「そもそも人の服の匂い嗅いでトリップしてるような女を淑女と呼べるかどうかも怪しいじゃない」
84 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:14:04.97 ID:t4IvFA8Uo
思い出したくもない記憶が甦る。
バカ剣のせいで忘れていたが、私の人生で恥ずかしいランキングトップ3に入る瞬間をこの女には見られていたのだった。
ボッと顔が真っ赤になる。
ルイズ「あ、ああああんた! そのことは忘れるって言ってたじゃないのっ!」
キュルケ「フフン、アンタの態度次第ね」
ニンマリと顔を綻ばせ、私の弱みを握った優越感を隠そうとしないキュルケ。
……なんだって、こんなことに。
自分の不注意ね。
忌々しいわ!
ルイズ「ぐうううう!」
ギーシュ「ま、まあまあ。トイレに関しては……僕かキュルケが船内の様子を窺ってからなら何とかなるんじゃないか?」
キュルケ「かもね。どうしようもなくなったときだけ、このアヒル君を使いましょう」
タバサ「折角買ったのに残念」
タバサは箱の中におまるをしまった。
109 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/10(月) 02:06:14.75 ID:C+jUGG7Lo
ルイズたんのクンカクンカ祭り111 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/10(月) 02:09:22.30 ID:xMRC/Bxso
いい匂いだなあ
いい匂いだなあ!!!!85 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:18:55.66 ID:t4IvFA8Uo
キュルケ「じゃあまずルイズからこの中に入んなさい。あんたが持ってきた馬鹿でかい剣も入れるんだから、暴れないでよ」
ルイズ「分かってるわよ!」
キュルケ「クンカクンカ」
ルイズ「やめなさいっ!!」
ぶつくさ言いながら私は木箱の中に入る。
外から見たとおり、箱は小さな私一人が隠れるには十分な大きさで、しゃがみこめば簡単に姿は見えなくなった。
イマイチこの作戦に自信が持てなかったけれど、隠れてみれば意外に上手くいきそうな気がしてくる。
我ながら中々単純な人間だと思うが、そうとでも思わなければ心臓は飛び跳ねるほど緊張し、箱の中にじっとしていることさえ出来なさそうだった。
木箱の中に次々と物が投げ入れられる。
キュルケ「えーと、食べ物と服と、あと日用品と……」
ルイズ「痛! ちょ、バカキュルケ! 痛い! あんたもっと丁寧に!」
86 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:25:32.43 ID:t4IvFA8Uo
キュルケが乱暴に放り入れたものは、一つ残らず私の頭にぶつかって底に落ちていく。
極めつけにインテリジェンス・ソードが眉間に直撃する。
ルイズ「いったぁぁぁい! いい加減に、しなさ……」
キュルケ「スーハースーハー、いい匂いだなあ!」
手に掴んでいた林檎をすんでのところで留める。
代わりに底に落ちていたハンカチを口に噛み締めて、怒りに震える心を必死で落ち着かせる。
ルイズ「ずぇる”ぶずどぉぉぉ……!!」
キュルケ「ぷくく……これ、対ルイズ最強の魔法かもしんない」
腹を抱えて笑うキュルケ。
……奥歯がギリギリと軋み、取れそうだ。
ギーシュ「……僕は後が怖いよ」
ルイズ(トリステインに帰ってきたら……コロス!)
87 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:28:57.24 ID:t4IvFA8Uo
キュルケ「じゃ、二人とも蓋閉めるわよ」
ルイズ「……」
タバサ「オッケー」
二つの箱に蓋が被さり、箱に差していた太陽の光が遮られる。
真っ暗な、何も見えない世界で釘の打つ音だけが中に聞こえ始める。
これで貨物船に運び込まれるまでは動けない。
急に身体が音を立て始める。
……暗いのは嫌だ。
ゾクリと恐怖が私の心に忍び寄った。
ついこの前までいた自分の部屋が鮮明に思い出されて、私は全身を身震いさせる。
あのときにはもう戻りたくない。
でも私の意思とは反して、脳味噌は絶望の絵を闇の中に描きはじめる。
88 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:31:38.21 ID:t4IvFA8Uo
孤独。
不安。
死。
ガタガタと一点に定まらない手を何とか動かし、鞄から縫い直してもらったゴジョーの服とボールを取り出す。
息を吸う。
息を吐く。
ぎゅっとそれらを抱きしめながら深呼吸すると、身体の悪寒が和らぎ、安心感が広がっていくのを感じる。
大丈夫。
もう私はあの部屋から出たんだから。
自分で捕まえにいく為に、ここまで来たんだから。
台車の動く音と広場のタイルから来る振動で、私とタバサが動き始めたのがわかった。
静かだった箱の中が急に人の喧騒で満たされ始める。
通りに出たんだ。
手足をゴジョーの服ごと抱きしめる様に縮めた。
物で狭苦しくなった『隠れ家』でも、少しでも楽な体勢を取るために身体を横たえる。
89 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:36:00.84 ID:t4IvFA8Uo
漸く声が収まったと思ったら、今度は箱が斜めに傾き始める。
……忙しいわね。
きっと乗り場に向かう道の途中なんだろう。
まとわりついてくる歯ブラシと時計を横に置き、フネに乗り込むのを待ち続ける。
急に、台車が歩みを止めた。
それと共に外から声が聞こえだす。
そっと箱に頬を寄せて、耳を済ませる。
「あー、すまないがちょっといいかい?」
「ああ? どうした?」
「このフネはアルビオン行きだろうか?」
「そうだ。だが残念ながら人は乗れないぜ」
「ああ、それは構わない。しかし、もしよかったらでいいんだがこの荷物を向こうにいる僕の戦友に届けて欲しいんだ」
「……許可は取ってあるのか?」
「い、いや……取ろうと思ったんだが、その……」
突然叩く音が聞こえる。
90 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:45:30.73 ID:t4IvFA8Uo
「へへ、すみませんね、コイツ口下手で……許可を取ろうと思ったんですが、丁度締め切られちまってね……兄さん、どうかコイツで黙っててやくれませんかね……?」
「ああん……?」
「受け取ってくだせえ」
「どれ……ひ、ふ、み、よ……仕方ねえなあ……!」
「ありがとうございます、恩に切りやすぜ」
再び進み始める台車。
ギーシュから安堵のため息が聞こえてくるような。
キュルケの演技は、悔しいが上手かった。
無事に乗り込めると思い、身体を起こしたその時。
「ちょっと待て」
運搬口に差し掛かったであろうところで、さっきの男の声が二人を止める。
91 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:48:30.98 ID:t4IvFA8Uo
「…… なにか?」
「いや、大したことじゃあねえんだが……やっぱりその中身、確認させてもらうことにする」
「え”? そ、そそんな、何もヤバいものは」
「……ただの日用品ですが?」
「わかってる。だがな、一応の規則として確認はしなくちゃならない……それに何か気になるんだよ……箱の中身がな」
「……」
「もし『何か』良くないものが混じってたら、俺の責任になっちまうだろ?」
「そりゃ、そうですね」
「見られてマズイものが入ってるのか?」
「……いえ」
「じゃあ開けさせてもらうぜ」
92 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:49:52.78 ID:t4IvFA8Uo
心臓がどんどん高鳴り、呼吸もそれに伴い短いものに変わっていく。
見つかる?
いえ、タバサの『あれ』があるから大丈夫なはず。
でももしそれに気がつかれたら……ここにいる私には逃げ場がない。
乗り場の役人が言っていたことを思い出す。
「トリステインから来たってバレたら良くて捕虜、八割殺されますよ」
殺される。
ゴジョーに会えないまま。
「釘、外すぞ」
「どうぞ……」
ガコンという音が鳴り、閉じられていた蓋が開けられる。
呼吸が止まる。
94 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 00:59:42.90 ID:t4IvFA8Uo
「…… ちっ」
「いかがでしょうかね」
私の真上で物がゴソゴソとかき混ぜられる。
手があと数サント、奥に届けば私がここに横たわっていることがこの男に知られてしまう。
それを防いでいるのは……一枚の何の変哲もない板。
「ふん、確かに……インクに服に林檎、古ぼけた剣。問題はねぇな」
「こちらも開けてみますか?」
「いんやその必要はねえ。さっさと持っていけ」
つまらなそうにそう言い捨てると、止まっていたタイヤが回りだす。
良かった……
タバサの策が敵を一歩上まった。
95 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 01:07:43.91 ID:t4IvFA8Uo
私のすぐ真上にある板を指先で撫でる。
この『二重底』構造でなければ今ので私は終りだった。
大量の物で一枚目の板の存在を隠して、その下に私が潜む。
箱の深さに比べて高すぎる位置にある、最初の底板を見えなくするためにタバサはこんなにも沢山の日用品やらを買ってくるよう私たちに言ったのだ。
誤算だったのは、既に貨物船への運搬が大方終わっており、割合レコン・キスタが暇だったこと。
そうでなければ、この箱すら開けられずにフネの中に忍び込むことが出来ただろう。
外から三回ノックの音が聞こえる。
作戦成功の合図だ。
こちらからも三回ノックを返し、問題ないことを知らせる。
二重底が外され、やっと新鮮な空気が肺に取り込まれた。
ほの暗いそこはレコン・キスタ軍への支援物資で埋め尽くされ、動きまわったりしない限りバレそうにないほどだった。
キュルケの背丈よりも高く荷物が所狭しと並ぶ。
96 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 01:18:36.63 ID:t4IvFA8Uo
ルイズ「ふう……」
ギーシュが周りにある荷物を移動し、壁から五メイル四方のスペースを倉庫の中に作っている。
これで荷物をずらさなければ私たちの存在は奴らに知られぬまま、アルビオンまで辿りつける。
ギーシュ「よっと……よし、これで見えないだろう」
キュルケ「ギーシュ、あんた案の定緊張し過ぎで挙動不審だったわね……」
ぎくりとした金髪はコソコソと壁際にしゃがみ込む。
ギーシュ「申し訳ない……」
もうひとつの箱からタバサが出てくる。
タバサ「終わりよければ全て良し。落ち込まないで」
ルイズ「終わってないじゃない……本当の戦いはアルビオンに着いてからでしょ」
キュルケ「まあ、その前にどうやってこのフネから降りるかって問題があるけど……どうするの?」
97 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 01:37:41.37 ID:t4IvFA8Uo
タバサ「行きと変わらない。むしろ、降りるほうがずっと楽だと思うけれど」
ギーシュ「レコン・キスタも皆同じ服装をしているんだ。そうそうバレないだろう」
キュルケ「なら大丈夫ね」
やっと……ここまで来れた。
当分は見回りも来ないだろうし、静かにしていればすぐにアルビオンに着く。
遠くの雲に消えかけていたゴジョーの影が、段々と手の届くところまで近づいてきているように感じられた。
緊張のし過ぎからか、不意に眠気が私を襲う。
キュルケ「ルイズ……?」
ギーシュ「フフ……起こさないほうがいい。彼女も部屋から出てからまだ数日しか経っていないんだ、疲れて当然さ」
キュルケ「それもそうね……コイツ、無理してた部分あったものね」
ギーシュ「ルイズはきっと今だって心の何処かは不安に苛まれてると思う……それでもここまで来れたのは、やっぱり、ゴジョーさん。君の力なんだろうね……」
キュルケ「逆も言えるわよ……ゴジョーだって、多分ルイズがいるから……今も戦ってるんでしょう」
ぼんやりと耳に入ったその言葉を最後に私は、深い眠りについた。
「「似たもの同士」」
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98 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 01:41:24.65 ID:t4IvFA8Uo
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振り続けていた雨が止んだ。
雲の間から一筋の光明が差し、自分の黒衣を照らす。
この光は自分たちにそそぐ希望の光か。
それとも敵に反撃の狼煙をもたらす絶望の光か。
フーケ「ゴジョー、メイジから殺せ!」
五条「……」
言われるまでもなく、一目で分かる。
レコン・キスタの主戦力は前線の兵士だが、実際に致命的な攻撃を放つのはメイジ。
さらに真空波で吹き飛ばした兵士を水の魔法で回復しているのもメイジ。
奴らを先に消さなければ、魔力が続く限り兵士たちは立ち上がってくる。
五条「フーケ!」
フーケ「おらよっ!!」
背後から飛んでくる土と金属の混じり合った球を感覚で合わせ、ボレーで弾き返す。
ワルドクラスのメイジであれば避けることは可能であろうその球筋を腹部に直撃したメイジは、後ろにいる人間も巻き込みながら地面を転がっていく。
99 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 01:44:46.46 ID:t4IvFA8Uo
フーケが現れて戦況が変わったのは一目瞭然であった。
ゴーレムの雑魚散らしが、自分の動きを止める兵士をまとめて殴り飛ばし自在に動けるようになったのもさる事ながら、最も効果的だったのがほぼ無限に生み出すことが出来る土の球。
これのお陰で、敵の攻撃を跳ね返すことでしか届かなかった遠距離への攻撃と同時に、多くの敵を再起不能にしてくれる技の縛りが解き放たれた。
五条勝という人間の能力は今、十二分に、いかん無く発揮されていた。
スクウェアとまではいかないものの、フーケのスペル詠唱は時間のロスが無い。
フーケの魔力が減ることだけが懸念材料であったが、延々と僅かずつ、体力と共に無くなるよりはまだマシだ。
無尽蔵にシュートが撃てる。
これは一人では不可能なことだ。
そのため回避行動を行う以外のときは、常時自分が球を蹴り続けることで敵軍の戦力を目に見えて削れる。
さながら人間マシンガンと言ったところか。
サッカーボール程威力は出ないが、二度と立ち上がれなくするには充分すぎるほどの破壊力が出る。
人を傷つけるために使われる右足は、きっと自分を憎んでいることだろう。
だがもう手段を選んで戦っている余裕は一寸も残されておらず、只管に硬い球を蹴ることだけが勝利への方程式。
極力特殊技を使わずにいるのも、効率を追求した結果だ。
常用しているのはスキャンと脳の高速回転のみ。
それも敵位置の把握と回避のためだけだ。
ペンギンも分身も一対一ならば温存する必要はないが、戦場で体力の消費を鑑みると通常のシュートのほうがより効率的。
そして多くの戦力を削ることが可能だと判断した。
102 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 01:53:18.09 ID:t4IvFA8Uo
フーケ「ゴジョー! 目の前の騎兵を馬ごと蹴り上げろっ!」
五条「ヒヒ……! 無茶を言いなさる……!」
しかし、考える余裕はない。
この場でのフーケの言葉はどんな哲学書の名言よりも価値を持っている。
それを本能で理解している自分は馬の真横で躯を沈める。
五条「……ふ……ん!」
馬の体重は三百キロではすまない。
せめても足への負担を軽減するために両手を地面に着いて、踵で馬の腹を蹴飛ばす。
持ち上がったとしても五メイルが限界であろう。
「うわっ!?」
衝撃をもろに受けた軍馬は本来ならばあり得ない高さで、その四足をばたつかせ、地上に落ちないように藻掻く。
そこを盗賊は見逃さず、巨大な土人形の右腕を振りかぶっていた。
フーケ「ぶっ飛びな!!」
頭に響くような、ずっしりとした音が戦場に響き渡る。
金属でコーティングされた拳が空中で馬を捉え、その重量は進行方向の直線上にいる兵士、メイジをまとめて吹き飛ばすのに好都合なブルドーザーだった。
集まっては散る。
103 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 01:55:50.06 ID:t4IvFA8Uo
レコン・キスタは数が十分の一、百分の一に減っても決してバラバラに攻撃してこようとはしなかった。
それは『軍隊』としては当然の選択。
圧倒できる戦力を有してトリステインに辿り着かねば、何の意味もないからだ。
一人二人が自分とフーケの形成する防衛ラインを突破したところで、トリステイン軍に捕虜にされるのが関の山。
『全』が故に弱点。
『個』である自分たちに残された一握りのアドバンテージ。
…… いや、アドバンテージではないか。
逆に不利な条件だとも言える。
全員殺さねばならぬということだ。
それならそれでいい。
104 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 01:56:55.94 ID:t4IvFA8Uo
もうレコン・キスタ軍は援軍も全て壊滅し、残されているのは百数十人。
完全に戦いの主導権は自分とフーケが握っていた。
既にこれ以上戦いを続けてもレコン・キスタにメリットはない。
トリステインに攻め入る戦力もここにはいない。
それでも、自分を殺すためだけに兵士たちは剣を振りかざす。
命令に従うまま。
その姿は意思を失った人形と同じだ。
力のない人形に自分は殺せない。
勝ちは、手の中に入りかけていた。
105 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 01:59:54.97 ID:t4IvFA8Uo
フーケ「だらッッ!!」
ゴーレムの左足が地面の土を敵の真上に散らす。
一見無意味に見えるその行為にも、意図が隠れている。
フーケ「練金ッッッだゴラぁぁぁあ!」
中空が一瞬だけ光る。
フーケ「ぶっ放せッッ! ゴジョーォォォ!!」
黒土は渾身の力で唱えられたスペルによって、油に変わった。
降り注ぐ油の雨は湿気った空気を飲み込み、視界に入る全ての敵をべっとりとしたそれに濡らす。
簡易型爆炎、というわけか。
だったら話は早い。
右足の目標を敵の顔の高さから足元に切りかえる。
必要なのは威力じゃない。
油に火を着ける熱。
五条「ず……おおおおおおおおッ!」
テイクバックを小さく取り、爪先でボールの中心を蹴る。
遠くに飛ばすことよりも油が地面に染み込む前に打つ方が重要。
コントロールが難しいトーキックも、辺り一面敵だらけな此処でなら問題ない。
スパイクに猛打されたフーケ製の土球は地面の数サント上を走り始める。
ここが使いどころ。
単独ならせいぜい四五人しか吹き飛ばせぬこの技も、魔法が組み合わされば……
五条「分身ペンギンッ……!」
106 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 02:01:24.19 ID:t4IvFA8Uo
何もなかったはずの球の周りに蒼い小さなペンギンが五匹、姿を現し、各々回転しながら油まみれのレコン・キスタ軍に迫っていく。
威力を小さくした分、数を増やした。
五条「『散れ』、ペンギン……!」
その声と共に、ボールの傍にいた小さな火力を秘めたペンギンたちは五方向に舞い上がり、一気に大地に向かって降下する。
五条「今度燃えるのは……オマエたちの方です……!」
刹那、爆ぜたペンギンが油に着火し、油の付着した敵兵をおしなべて焼き殺す。
トライアングルスペルの爆炎のような空気をも燃やし尽くす火力はないが、引き換えに広範囲の敵を一人残らず戦闘不能にする程度の熱は持っている。
周囲に響き渡る、多くの人間のもがき苦しむ声。
声を出したところで火は消えない。
むしろ叫ぶことによって、炎が喉を焼き、余計死期を早めるだけだ。
屍が次々に増えていく死線の上に、自分は立っている。
その人を焦がす炎が……美しいと感じてしまったオレはもう戻ってこれない。
感情に理性が取り込まれた瞬間こそ、戦場では死を意味する。
殺し合いの中に惹かれるものなどあってはならないのだ。
107 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/10(月) 02:03:07.59 ID:zgSD0nvyo
え? プリニー?108 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 02:05:20.44 ID:t4IvFA8Uo
胸に手を当て、心臓に戒めの杭を打ち込む。
レコン・キスタにもう最初のような肉の壁は残されていなかった。
立っているのは大凡で三十人。
今の技で百人は死んだ。
漸く火がおさまったところで、フーケが口を開く。
フーケ「ハッ……! ようやく、集まった糞どもの親玉が見えてきた」
五条「その、ようですね」
フーケ「なんだ、嬉しくないのか」
五条「嬉しさなど……あるのは、躯の痛みだけですよ」
あるいは……不安か?
先の見えなかった戦いにやっと見えた希望が一縷の懸念を呼び出す。
これではまだ終わらない……?
そんな根拠もない疑心暗鬼が心に渦巻く。
何かがいる。
ここまでの戦いが霞むような、強大な何かが。
迷いを消し去る様に頭を左右に振る。
110 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 02:09:14.69 ID:t4IvFA8Uo
フーケ「まあいい。乗んな、ゴジョー」
ゴーレムの掌に立つと、その手は自身の肩まで運ばれる。
右肩にフーケ。
左肩に自分。
目の前には今の今まで自分から逃げおおせていた、臆病な司令部。
フーケ「テメェら……命乞いは聞かねえぞ」
戦場は何も答えない。
フーケ「あたしとコイツはテメェらが何処に逃げようとも追いかけて、殺す」
僅かな兵士は剣を下ろす。
メイジはその杖を地面に投げ捨てる。
勝負は決した。
その証拠に部隊長らしき男もまた、両手を天に掲げる。
諦めが戦場に広がっていく。
フーケ「投降しても無駄だ」
顔を俯かせるレコン・キスタ軍をゴーレムの足が潰そうと大きく一歩踏み出す。
汗でずれていた眼鏡を少し持ち上げ、後ろに振り向く。
視線の先には、数限りない死体。
至る所で上がる、人の肉を焼いた煙。
それがこの今回の戦いの過酷さと規模を表していた。
正確な数は分からないが、自分一人で数千人は殺した。
その事実に目を背けることは出来ない。
背負わなければならないのだ。
自分の行為の残した結果と責任を。
112 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 02:11:48.29 ID:t4IvFA8Uo
ガクン、と突然ゴーレムの動きが止まった。
兵士達の頭上でその足は動かない。
フーケ「なんだ、ありゃあ……?」
フーケの見据える先には一匹のドラゴンが翼を広げてこちらに飛んできていた。
竜の手には……布に包まれた四角い物体がぶら下がっている。
この期に及んで増援?
いや、それにしては数が少なすぎる。
一匹のドラゴンで勝負が決まるのなら最初から連れてきているはず。
意図が見えない。
唖然とした自分とフーケの前に翼竜は降り立つ。
その背には一人の男が乗っていた。
見たこともない、金髪の男。
その顔には奇妙な笑いがへばりついていた。
反響する拍手。
「フ、フフフ……素晴らしいよ、ゴジョー・マサル」
113 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 02:14:40.43 ID:t4IvFA8Uo
フーケ「テメェは……!?」
盗賊は何か知っているようであった。
五条「誰ですか……? オマエのような知り合いはいない筈……」
フーケ「ゴジョー、コイツがレコン・キスタのテッペンだ……!」
五条「……!」
フーケ「オリヴァー・クロムウェル……!」
下りてきた男はドラゴンの持つ四角い物体の横で、手を止める。
クロムウェル「フ、フ……ご紹介ありがとう、盗賊。彼女が言うとおり、私がレコン・キスタの総司令官であるオリヴァー・クロムウェルだ」
フーケ「ヒャハ……こりゃあ願ってもねぇなぁ……ゴジョー」
五条「……」
フーケ「だってよお……! 鶏がソース咥えて来たようなもんだぜ……! 探してブチ殺す手間ぁ、省けたじゃねぇか」
クロムウェル「……いけないな、君は口が悪くて」
フーケ「ハッ! 御託は地獄の閻魔に言いな……!」
ゴーレムの右足を兵士たちからクロムウェルの頭上に差し向け、踏み殺そうとするフーケ。
114 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 02:16:20.20 ID:t4IvFA8Uo
クロムウェル「ファハハハハ、まあ待ちたまえ! いいのかな、私を殺しても……?」
フーケ「ああ!? ぼけてんのか、テメェ!?」
クロムウェル「いや、君の大事な『子供たち』が死んでも構わないのかな、と思ってね……?」
ゴーレムの動きが再び止まる。
この男……
フーケ「……テメェ、そりゃあどういう意味だ……?」
クロムウェル「ワルドが君をレコン・キスタに連れてきたとき、既に素性は調べさせてもらったよ。マチルダ・オブ・サウスゴータ」
フーケ「な!?」
クロムウェル「ついでにウェストウッド村についてもね。フ、ファハハ! 泣ける話じゃないか? 貴族を捨ててエルフのような民を守るとはね」
フーケ「テメェ……! ティファニアに……!?」
クロムウェル「安心したまえ、あのような村はいつでも焼き払えるのだ。まだ手出しはしていない」
フーケ「く……!」
115 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 02:19:12.75 ID:t4IvFA8Uo
クロムウェル「だが……この泥人形の足をさっさと避けなければ、どうなるかは分からないがね。私が死ねば、すぐにあの村は焼き払われるぞ?」
クロムウェルは下卑た笑いを浮かべて、フーケを睨みつける。
フーケは怒る右手の杖を下ろし、唇を噛み締めた。
人質を取られた、ということか。
クロムウェル「お前のようなゴミは、そこで突っ立っているのが相応しい……」
五条「……わざわざそんな下らないことを言いに来たのですか……オマエは」
ゴーレムの肩から飛び降り、クロムウェルの前に立ち塞がる。
クロムウェル「おお、すまないな、『トリステインの黒い悪魔』。私の目的はそこにいる雑魚じゃない……君だよ」
五条「生憎ですが……お前のような下衆と話をする気はないですねぇ……!」
クロムウェル「ハハハ……! しかし、君の実力は目を見張るものがあるな」
五条「……」
クロムウェル「まさかこの軍勢を、ほぼ一人で壊滅させるとは……ぜひ我がレコン・キスタに力を貸して欲しいが……?」
五条「ヒ……! レコン・キスタの奴らはどうして皆、こんなにも愚かなんでしょうかね……? オレが本当にその話に乗るとでも思っているんでしょうか?」
クロムウェル「まあ、そうだろう。フフフ、そうだろうと思ったよ」
116 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 02:29:21.93 ID:t4IvFA8Uo
クロムウェルは四角い物体に掛かっていた布を取り払う。
現れたのは、檻。
その奥には黒い影が蠢いている。
フーケ(……なにか、いる)
クロムウェル「……味方にならないのなら……その力は余りにも障害だ。事実、君はここひと月で我が軍の多くを壊滅させている」
クロムウェル「末おそろしい……その若さで軍と張り合う、いや、それどころか勝てる力は」
五条「……何が言いたい」
クロムウェル「『トリステインの黒い悪魔』。フ、ヒヒ……上手く言ったものだな
」
クロムウェルはカールした横髪を指で弾き、笑い続ける。
クロムウェル「だがね、私たちにも『悪魔』は呼び出されたんだよ……!」
五条「……悪魔、だと」
クロムウェル「君以上かもしれない、とても大きな力を持っている悪魔だ」
クロムウェル「私たちは狂喜した……この力があれば、世界を支配できると」
ワルド、いや、それ以下の思考。
ワルドはまだ自分で戦うことから逃げてはいなかった。
この男は違う。
自らの手を汚そうとはしない、屑の見本のような男。
117 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 02:32:07.07 ID:t4IvFA8Uo
クロムウェル「残念なことに悪魔は私たちの言う事を聞こうとはしなかったがね……それどころか、我が軍を脅かしかねないことをも言い始めてね」
クロムウェル「おとなしく従っていれば、こんな事にはならなかったのにな」
クロムウェルは檻に魔法を唱え始めた。
それに呼応して錠は外され、中から四つん這いの……
クロムウェル「さっかー、がどうとか言っていてな……元の世界に帰せ、とも言っていたよ」
そんな……
これは人違いだ。
そうじゃなければ、他人の空似だ。
118 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 02:37:47.27 ID:t4IvFA8Uo
クロムウェル「私は魔法が使えないのでね……この『アンドバリの指輪』がなければ、殺されていた」
違う違う違う違う違う。
なんで、オマエがここにいるんですか……?
こんな異世界でどうして。
クロムウェル「なんとかコントロールをしたはいいが、この悪魔、戦いではその力を発揮しようとしない」
否定する脳。
だがその身につけるユニフォームは見間違えようもない。
クロムウェル「仕方が無いので、我々は少しばかり悪魔の心を弄った」
ドレッドヘア。
顔には大きすぎるゴーグル。
クロムウェル「効果は覿面だった……! 悪魔は一人でアルビオン軍の大半を壊滅させた……だが何かを成すには何かを犠牲にしなくてはならない」
およそその身体にはつり合わないマント。
119 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/10(月) 02:40:39.45 ID:t4IvFA8Uo
クロムウェル「……闘争に特化しすぎた結果がこのケダモノだよ」
14番。
クロムウェル「会話も成り立たない上に、敵味方の識別もつかない。要はコイツが放たれるときは、完全にその場所は『終わる』というわけだ」
口から犬のように涎を垂らし、首を振る。
鬼道有人。
五条「な……ぜ……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
120 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/10(月) 02:41:14.38 ID:zgSD0nvyo
ほんとになぜwwwwwwwwwwww121 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/10(月) 02:42:29.54 ID:CS/CpDH+o
最初の豪炎寺を除けば他のイナズマ選手が出んのは初めてだなwwwwwwwwww
他のSSを含めても127 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/10(月) 04:38:08.13 ID:H4S4npAAO
こりゃあ更に面白くなってきたな128 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/10(月) 04:47:45.91 ID:F6AXekWNo
おうどんは犠牲になったのだ140 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/10(月) 23:43:56.45 ID:/tNBTYxUo
鬼道の詳細誰かよろしく141 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/10(月) 23:46:35.38 ID:wKxfJmoEo
こいつ
\\ニ三〉
{三二〃三〃ニ{
/〃\〃\三─ニ⌒`‐‐、_
/三≡三〃\三/ ̄〃\=\=\`、 ‐、
7二彳三_/""~─ 、,‐-}、__!、,,/_,-j :i
/三二三〃_{_"~ ̄_/Fミヾ _,,_,,,,....--―''''"'''-- .,,_
\/ ̄`、_{∥_,‐'´( ,-'{( (( ''-,,
〉彳_,-'´iニ弋ト=三―-- ....,,,,_ ' ,
Y/ ,'⌒ ノ } "''- ,, '',_
\/、_ `、二フ / "',_ '
└、_〃\. _/ '',_ '',_
ヽ.! `‐------''' '',_ '',_
,,‐─!`‐-、_ !__ '',_ '',_
,--、 i__  ̄\ `!i' i ̄\ '',_ '',_
/  ̄ ヽ \___i!_,,, i/ i‐-、 '',_ '',_
へ へ ( ヽ |\ <⌒l
( レ⌒) |\ \ノ \ \ l⌒l \_) / /
|\_/ /へ_ \) ___ \ \/ / |\ / /
\_./| |/ \ __/ _ \ > / \_) / /
/ / ̄~ヽ ヽ. (___/ \ \ / / / /
/ /| | | | | | / / / / ヘ
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\\ノ | / / / / | ヽ____ノヽ / /^\ ヽ_ノヽ
\_ノ_/ / _/ / ヽ____ノ ヽ_/ \___ノ
∠-''~ ∠-''~
142 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/11(火) 00:05:23.67 ID:1yJKZjyqo
よけいにわからない143 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/11(火) 00:09:36.43 ID:PvsGQz1z0
おうどんAAを呼び出したかっただけか…
ていうか何で鬼道がおうどんなのか知らぬ145 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/11(火) 01:13:38.96 ID:ytRYylMho
3D 映画でゴーグルが立体的に飛び出している
それがおうどん169 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU [sage saga]:2011/01/14(金) 16:06:42.63 ID:oZ74ngZ0o
唾液が、粘り気を持って喉から離れない。
確率と言う何ら参考にならない、人間が創りだした論理は今の状況が起こり得た可能性を幾つと示すのだろうか?
起きてしまった事は全て事実として歴史に刻まれる。
それが例えゼロに限りなく近い道の一つであったとしても、起こってしまった現実を塗り替える事は『絶対』に出来ない。
時間軸に僅かだけ干渉可能な自分。
それでも……時間の河を遡ることまでは及ばない。
大きな、眼に見えない力がこの戦場に鬼道を呼び出したのか。
そうだったとしたら『最悪』だ。
頭からは数多の疑問が止めどなく溢れる。
何故鬼道有人なのか?
異世界の人間が二人もハルケギニアに存在するなどあり得ることなのか?
尚且つ自分と少なからず関わり合いのある人間。
自分は試合途中でこちらに召喚されたはずだ。
彼もまた誰かに召喚された……?
鬼道は自分がこちらに飛ばされたことを知っているのか?
そもそも今、野獣のような風体の鬼道有人は自分の知っている鬼道有人なのか?
向こうの時間はどうなっている?
同じだけの時間が経っているのか?
解らないことだらけだ。
170 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 16:11:55.48 ID:oZ74ngZ0o
フーケ「……ォ……ゴジョー! 大丈夫か!?」
はっとすると、フーケが自分の肩を揺さぶっていた。
いつの間にか身体はガタガタと震え、呼吸が乱れている。
五条「……ヒ……ヒヒ……いえ、あまり……大丈夫ではないですね……」
フーケ「マジかよ……」
心底参った顔で眼鏡を持ち上げるフーケ。
クロムウェル「やはりな。ゴジョー、この男は君の知っている人物だろう?」
クロムウェルはしたり顔で鬼道を指差す。
クロムウェル「君の姿形を見てそう確信した。こいつと君の戦い方は余りにも似ているからな……」
そうだ。
他の誰でもない、鬼道有人がここにいるということは超次元サッカーの技を使える人間が二人いるということ。
考えつくプレイヤーの中でも最強クラスのこの男を、満身創痍の自分で止められるのか?
いや、止めるだけでは駄目だ。
鬼道は心を奪われている。
それを取り戻さなくては意味が無い。
171 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 16:15:06.26 ID:oZ74ngZ0o
五条「クロムウェル……! オマエが鬼道さんを、こんな姿に……!」
怒りが黒いオーラとなって背中から吹き出すのを感じる。
クロムウェル「おお……怖い。その威圧だけで心臓が止まってしまいそうだよ」
言葉とは裏腹に、ヘラヘラとした笑いを浮かべ続けるクロムウェル。
その横で呻く鬼道は頭脳明晰な、皆を統率するリーダーシップを持つ司令塔の姿ではなかった。
クロムウェル「……悪魔対悪魔、非常に楽しみな戦いだが巻き添えをくらってはどうしようもない。私は一足先に戻ることにするよ」
「お、お待ちください! 司令官!」
ドラゴンに乗ろうとしたクロムウェルに兵士の一人が話しかける。
クロムウェル「なんだね……」
ため息を吐き出したクロムウェルは兵士の方に向き直る。
「我々はどうなるのですか!? この戦いもレコン・キスタの栄光のためと思い、必死で戦ってきました! それなのに……我々は見捨てられるのですか!?」
クロムウェル「見捨てる……?」
「そうでしょう! この檻に入った男が放たれたということは、我々が殺されても構わないということではないですか!?」
クロムウェル「……」
172 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 16:33:54.36 ID:oZ74ngZ0o
「敵に殺されるのは本望です……! レコン・キスタに入った時からその覚悟はしてきました!」
クロムウェルはつまらなそうに兵士を見据える。
「ですが……! 貴方様自らがこの男を連れてきたということは……既に我々には価値がないということではないですかッッ!」
「捨て駒ですら無い……! 我々は味方に殺されるためにこの戦場に来たわけではありません!」
爆炎のように結果として味方を巻き込むわけではないのだろう。
鬼道が此処にいる人間を一人残らず殺すためにいることを知っているからこその言葉だ。
クロムウェル「……君、総司令官たる私にそこまでの啖呵を切れたことは褒めてあげよう」
クロムウェル「だが、最初から君たちは死ぬためにこの戦場に来ている」
「な……!?」
173 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 16:37:42.04 ID:oZ74ngZ0o
クロムウェル「ゴジョーを君ら如きで、本当に殺せるとは露程も思っていない……まあ勝てたら儲けものかな、程度の認識だよ」
クロムウェル「この部隊は……黒い悪魔の体力と精神力を削るため、それと別部隊がトリステインに侵攻するための時間稼ぎに派兵されたのだよ」
「そ、そんな……それでは、我々は何のために……!」
クロムウェル「君は、役目を終えた道具を何時までも取っておくのか?」
「え……?」
クロムウェル「要らないんだよ、もう貴様らは。傷ついた兵士を癒すのもタダじゃないんだ、この人数ならまとめて悪魔に掃除されたほうがずっと『経済的』だ」
「あ、ああ……! じゃあ、死んでいった仲間は……!」
膝から崩れ落ちた兵士は、周りを気にすることもなく慟哭する。
唾を兵士に吐きかけてドラゴンに視線を移すクロムウェル。
クロムウェル「フン、戦争に個人的感情を持ち込むとは……バカなやつだ」
フーケ「テメェ……!!」
クロムウェル「フーケ……大方お前も『レコン・キスタが押され始めている』なんて与太話を聞いて、ノコノコ此処までやってきたんだろう?」
フーケ「……だったらなんだ」
クロムウェル「まさか本当に我々がこんな崩壊寸前の国に反撃されていると思ったのかね?」
フーケ「な……に?」
五条「……」
クロムウェル「ファ……ハッハッハッ! いや、仕方ない! それに騙されたのはお前だけじゃない、愚かなアンリエッタも同じだ!」
174 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 16:41:40.51 ID:oZ74ngZ0o
クロムウェル「ゴジョー、兵を減らしていたのは君ではない。私だよ」
クロムウェル「アンリエッタとウェールズがただならぬ仲だということは薄々知っていた。だからワルドが君のところに仕向けられただろう?」
クロムウェル「もちろん奴が手紙を奪っても良かったんだがね……それは残念ながら失敗に終わった」
クロムウェル「だから早々に次の手を打ったのだよ。我々が勢力を弱めたと情報を流せば、トリステインはゲルマニアではなく、雑魚のアルビオンに手をさしのべるだろうと考えてな」
クロムウェル「まあ、それも保険のようなものだ。例えゲルマニアと同盟を結んだところでトリステインに勝ち目があるとは思えなかったが……これでより簡単にコトが進められる」
クロムウェル「……ついでに言えば、君の存在も情報操作を行う上で非常に助けになった」
クロムウェル「『最終ライン』を一人で守っている男がいる……誰だってそんな話を聞けば縋りたくなるものだよな……? 崩壊しかけている王家にもそれは大層素晴らしく聞こえただろうさ」
クロムウェル「想定外だったのは君が思いの外、粘ったことだけだよ……だからこそ私は最初に君を賞賛した」
クロムウェル「お陰で最短ルートは使えなかったが……減ったと思われていた兵は既に本拠地に集まり、他ルートでトリステインへの進軍は始めている」
五条「……!」
175 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 16:46:28.90 ID:oZ74ngZ0o
クロムウェル「ファハハ……! ゴジョー、まさか此処さえ通さなければトリステインを守れると思ったのか? 本当に一人で我がレコン・キスタを壊滅できると思っていたのか?」
クロムウェル「こっちに送られていたのは囮だよ、囮! 君が本拠地にまでこれぬようにするための壁だ!」
五条「貴様……!」
クロムウェル「掌の上でのダンスパーティーはさぞ楽しかっただろう……?」
クロムウェル「でももうそれも終りだよ。この兵器でお前たちは全員『死ぬ』」
クロムウェルは鬼道の頭を軽く撫でた。
そして指輪をその顔に近づけ、耳元で何事か呟いた。
クロムウェル「それじゃあ……お前たちが骸になった頃にまた来るよ……」
逃げられる……
この男の首を胴体から刎ねることは造作も無い。
魔法も使えぬ、体術も持たぬクロムウェルはこの場の誰よりも弱い。
だがしかし、出来ない。
フーケが全てを捨てて守ってきたものを自分が壊すことは、許されない。
それ故自分もフーケも、血が流れるほど拳を握り締めているのだ。
ドラゴンが大きく羽ばたく。
その瞬間、大きな怒号が鳴り響いた。
176 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 16:48:22.10 ID:oZ74ngZ0o
「…… こ、ろせ! この男を殺すんだッ!! このままではどちらにしろ悪魔に殺される! それならばせめてもこの男も地獄に道連れにしてやるぞッッ!」
声に反応したレコン・キスタの残党は一斉に地面の武器を拾う。
忠誠を誓った主君に裏切られた恨みを晴らすべく。
フーケ「待て!!」
「黙れ! お前の事情など知ったことか!」
制止を聞かず、兵士とメイジはクロムウェルに攻撃を仕掛ける。
槍と剣が取り囲み、生命を奪い去ろうとする。
レコン・キスタにとってフーケの守ってきた村など紙くず以下だ。
他人には理解らない重みなのだ。
憎しみのみが彼らを支配し、クロムウェルを殺すことだけが生きる目的になっている。
それでも止めなくては。
村の安全を確認するまでクロムウェルは殺せない。
たとい腸が煮え返る相手でも。
五条「フーケ……! 土球を……!」
フーケ「分かってるッ!」
フーケがスペルを唱えだそうかという時、クロムウェルがぼそりと呟く。
クロムウェル「バカめ……! これで先に死ぬのは貴様らだ」
177 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 16:49:28.71 ID:oZ74ngZ0o
「おおおおおおおおおおお!」
瞬きをする間もあっただろうか。
十人がクロムウェルに剣を振りかざし、瞼を閉じれば奴は死ぬだろうと思った矢先。
それまで動きのなかった鬼道有人が、空中を跳ねた。
比喩表現などではなく文字通り。
脳の高速回転(クロックアップ)をしていない自分にはそこまでしか認識出来ず、右足を踏み出したときには既に兵士の首から上は無かった。
時間にしてコンマゼロゼロ以下の世界。
どうやって兵士が死んだのかも分からない。
結果だけが、荒廃した戦場に残っていた。
五条「……!」
フーケ「は……!?」
続けて唸り声を上げる鬼道は、後ろで杖を構えるメイジを目標にしている。
疾すぎる。
スペルを唱えている時間など皆無。
レコン・キスタに残されているのは、戦場で最も恥ずべき行為。
しかも恐らくはこの男に通用しない。
それでも……敵だった人たちでも。
五条「逃げろッッッッ!!! 早くッ!! 死にたいのかッッッ!!」
クロムウェル「無駄だ」
178 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 16:51:04.23 ID:oZ74ngZ0o
自分の声よりも速く、鬼道は残兵に跳びかかる。
瞬時に脳内スピードを高め、レコン・キスタの方向に足を進める。
遅い。
疲れのせいもある。
シグマゾーン応用、クロックアップですら鬼道のスピードには及ばない。
彼の再生速度が動画だとしたら、自分は紙芝居程度。
身体を一歩前に進めるごとに鬼道はレコン・キスタ兵を屠っていく。
五条「ぐ……!」
まるで水の中を歩いている様にすら感じられる。
思考する間にも兵士は身体を二つに裂かれている。
間に合わない。
人間の可能な行動速度をとっくに超越しているはずだ。
それでも距離は三メイルも移動していない。
もっと速く……!
動け、躯……!
鬼道さんを力づくでも止めてみせろ……!
最後の一人が遠くで粉々になる。
敵軍がその手によって全滅する。
五条「ぐぅぅ……!」
脳の速度を緩め、ブレーキをかける。
179 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 16:53:20.23 ID:oZ74ngZ0o
クロムウェル「……余興は終わったな」
フーケ「と、止まってる……? 時間が……」
クロムウェル「あの化物には時間も距離も関係ない。言っただろう、奴は私を除いた生物を一匹残らず肉片にする」
フーケ「ふざけてやがる……」
クロムウェル「命令は二つ下してある。『全員殺せ』と『終わったらその場から動くな』だ」
五条「クロムウェル……!」
クロムウェル「早く終わりすぎても面白くない、せいぜい足掻いて見せてくれよ……トリステインの黒い悪魔」
そう言い残し、クロムウェルはドラゴンの手綱を引く。
再び翼を広げた竜はゆっくりと雲の上に舞い上がった。
フーケ「……クロムウェル! テメェだけは殺す! このまま終われると思うな!」
クロムウェル「ファハハハハハ! 実に雑魚らしい遠吠えだ! まあもし生きて延びられたなら、その時はぜひやってみろ!」
フーケ「クソッタレ……!」
傷ひとつ負うこと無く、男は消えていく。
核弾頭級の置き土産を戦場に残して。
180 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 17:00:38.91 ID:oZ74ngZ0o
どうすればいい。
自分に鬼道を止められる技があるのか?
今の彼は持っている潜在能力を強引に引き出されている。
まともに正面から向かっていっても勝てない……
速さも強さも硬さも上。
あるのは、知力とフーケの援護のみ。
鬼道は動くものから殺している。
視界に入る、動くものは敵だとインプットされているのだろう。
その証拠に筋痙攣するレコン・キスタ兵の死体を一人づつ潰している。
まるで子どもが蟻を踏みつぶすような、そんな無垢さで。
感情の起伏が全く見られない。
五条「フーケ……まだその場から動いては駄目ですよ」
フーケ「……分かってる。あたしたちが動いたのをアレが認識した瞬間、ゲームオーバーだろ?」
五条「……」
フーケ「……ゴジョー、アイツぁテメェの知り合いなんだな」
鬼道を見て、フーケが聞く。
181 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 17:02:36.31 ID:oZ74ngZ0o
五条「ええ……」
フーケ「テメェの知り合いってのは皆あんなバケモンみてぇな奴ばっかりなのか」
五条「いえ、彼は心を失っている。だから躊躇なく人を殺せるのでしょうし……かのような動きが出来るのでしょう」
フーケ「……」
五条「……そうでなくても、鬼道さんは互角か……それ以上の力を持っている」
フーケ「どうすんだ。あたしにゃとてもじゃないがアレの攻撃を避けれそうにない」
五条「ヒ……オレもそうですよ」
フーケ「笑えねぇ冗談だ」
五条「……鬼道さんにかかっている呪縛というのは、どんなものなのか分かりますか?」
フーケ「いんや。ただ、その辺に転がってるようなものじゃねえ事は確かだ。人の心を操る魔法は禁呪だからな」
五条「……解除方法は?」
フーケ「術者を殺すか……本人を殺すかぐらいしかこの場では思いつかねぇな。つーかそんなこと出来る余裕はねぇだろ、殺らなきゃ殺られる」
182 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 17:04:48.27 ID:oZ74ngZ0o
フーケの言う事は正しい。
これまでの敵は皆自分の限界値よりはいくらか下の相手ばかりだった。
ギーシュもフーケもワルドも。
だから勝ててこれたのかもしれない。
しかし今対峙しているのは、自分より格上の実力を持つ男。
尚且つ、ただ殺せば良いというものでもない。
自分は鬼道を助けたいと思っている。
それは甘えだ。
心情的にも、実力的にも勝てる要素が出てこないのに。
それでも。
キャプテンだった人なのだ。
みすみす目の前で操られている彼を見捨てることは、自分の心が許さない。
五条「フーケ……オレは彼の心を取り戻したい」
フーケ「……正気か?」
五条「クックックッ……! 狂いそうな状況ですが、オレはまだイカれてはいないですよ……!」
フーケ「……どうやって、だよ。二人合わせたって勝てる相手じゃねぇだろ」
五条「かもしれません」
183 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 17:08:42.35 ID:oZ74ngZ0o
フーケ「しれっと言いやがって……まあ、どっちにしろ逃げられるわけもねえが……」
五条「心臓を一度止めれば、鬼道さんの呪縛は解けます。そして再び心臓を動かせば……自分の心を取り戻せる」
フーケ「はあ? 根拠は?」
五条「ヒヒヒ……一サントも無いですねえ。そんな気がするだけですよ」
フーケ「……テメェにしては馬鹿げた理由だな」
五条「ですが、此処で彼を助けられる手段はそれしかない……オマエが言ったんでしょう? 出された選択肢に後悔しないように生きろ、と」
フーケは疲れた表情で杖を握り、小さく頷いた。
フーケ「99%以上、んにゃ100%の確率で死ぬな……あたしも流石にヤキが回ったかな」
五条「グフフ……死ぬ前に諦めては何も変わらないでしょう……?」
フーケ「ま、な。どうせ死ぬなら……大穴に賭けてみるのも悪くねえかもな」
五条「それに……オマエを殺させはしません……! オレの生命を使ってでも……守りきってみせます」
フーケは突然顔を赤らめて俯いた。
184 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 17:11:30.00 ID:oZ74ngZ0o
五条「……?」
フーケ「ば、ばーか! そう言うのはご主人に言っとけボケ! 大体テメェこそあのピンク色にもっかい逢うまで死ねねぇだろ! アホ! メガネ!」
五条「……何を怒っているのですか……?」
フーケ「ケッ! テメェのツラだ!」
五条「まあいいでしょう……」
フーケ「で! 策はあんのか!?」
頭を振って、急に話を変えるフーケ。
五条「策の通じる相手ではないかもしれません……が。特徴として動きのあるものからターゲットにしているようです」
フーケ「それで?」
五条「いいところ、オマエの魔法で単純な土人形を生み出して、それを囮に攻撃するくらいしか有効な攻撃手段が思いつきませんねぇ……」
フーケ「……それで勝てんのかよ」
五条「勝てるか、じゃない……勝たなくては死ぬだけです」
フーケ「こっちの攻撃が当たるかも分かんねえのによく言うぜ」
五条「しかし、それもやってみなくては分かりません」
フーケ「ゴーレムは? 攻撃してみんのか?」
五条「当たらないでしょうね……ハッキリ言って多対一には向いていても、少人数相手には不向きな物ですよ、コレは」
フーケ「うるっせええ!」
185 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/14(金) 17:39:38.90 ID:oZ74ngZ0o
五条「それならば、ゴーレムから作れるだけ人間大の土人形を生み出して囮に使ったほうが効果的です」
フーケ「はあ……魔法力が切れるまでが勝負だぜ? っても、あの野郎相手に長期戦なんざ望めねえか……トドメはテメェが刺すのか?」
五条「……隙あらば、オマエが直接ブレッドで」
フーケ「力加減すればこっちが殺られるからな……? もしそうなったとして、殺しちまっても文句は聞かねえぞ」
五条「大丈夫……オレが蘇生してみせます」
フーケ「ヒャハ、何が大丈夫なんだか。そこまでの奇跡を起こして、あたしたちが立ってられる保証もねぇのによ……こうなりゃヤケだ」
五条「クックックッ……さあ、話している時間ももう終りです。オレが動き出したと同時に土人形を出現させてください。その瞬間だけでいい、只管、的を増やして彼の注意を引くこと」
フーケ「分かってる……! タイミング外しゃあ終りだ……土球も一発だけ出すからな。よく見とけよ」
五条「……ありがとうございます」
フーケ「フン……敵だったテメェにこんな事言うのも癪だが……!」
五条「……」
フーケ「死ぬなよ、ゴジョー」
気恥ずかしそうにフーケはそう言った。
それに返す言葉は決まっている。
五条「クックックッ……! 死ぬのは……最後でいいですからね……!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
219 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 06:42:16.43 ID:b4uK0dAko
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
始動した脳は世界を狂わせる。
先に動いたのは自分だったが、鬼道は自分が一挙動する間に三挙動行う。
あとは鬼道の世界にどれだけついていけるか。
それに懸かっている。
向かってくる自分に気付き、首を上げるまで一秒経たず。
と同時に鬼道の目の前に土人形が出現。
その数五体。
単純な命令しか出せぬ、腕を振り上げるだけのもの。
それでも鬼道の意識をそちらに向けさせる事は可能だ。
案の定、突っ込んでくる自分を標的から外し、刹那で一体目の人形を破壊。
振り向きざまにスパイクで人形の胴体を貫く。
最後に手刀で三体目の人形の胴体を縦に裂く。
ここまで一挙動。
先程の動きだけでわかる。
鬼道の疾さは群を抜いている。
だが……『視える』。
220 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 06:43:28.74 ID:b4uK0dAko
遅すぎる自分の脳に拍車を掛ける。
まだだ。
もっと神経伝達スピードを上げろ。
せめて、動きが二挙動になるぐらいまで……
鬼道「グガ……」
五条「鬼道さんッ……」
信頼していた人は何も答えない。
機械的に目の前にある人形を砕くだけだ。
次に目標になるのは自分。
五条「う……ぉおおおおおおおおお!」
寸前に迫る右手を左肘で弾く。
地面を踏みしめる。
筋肉が大地に噛み付く。
そのまま体重を全力で前に掛ける。
しかし、もう左腕は自分の胴体目がけて放たれている。
喰らえば……内臓まで潰れるか?
鬼道「カッ……ガ……!」
221 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 06:45:15.18 ID:b4uK0dAko
回避できない。
防御しても右腕が折れる。
手刀が届くまであと三十サント。
だが。
ヘッドバッドが決まるまであと十サント。
五条「へ、があッ!」
懐に飛び込んだ自分の額が鬼道の鼻に直撃する。
鼻骨を砕いた衝撃が頭に響く。
『ゆっくり』と後ろに倒れていく鬼道の動きは、止まっている。
動きがどれだけ速かろうとも、直撃を受けた刹那だけは自分の意思で躯を動かせない。
鬼道「……ッッ!?」
今度はこちらが二撃放てる。
近いのはどこだ?
左足。
……否!
足では心臓を止めるどころかアバラごと……!
思考の間に、鬼道は背筋で倒れこむことを防ぐ。
そのまま両手で地面にブリッジ。
通常ではあり得ない身体能力を見せつける。
222 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 06:48:58.30 ID:b4uK0dAko
迷っている時間はない!
右拳!
五条「があああッ!」
ありったけの力を篭めて放つ。
しかし心臓目がけて繰り出された拳が当たる数瞬前に、右足が顎に突き刺さった。
鬼道のそれは回避しながらの攻撃。
顎先に当たった衝撃は生命を奪うまでではない。
が。
五条「あ……が……」
ダイレクトに脳天まで届いたダメージに、意識が持っていかれる。
白目を剥いて仰け反るが、ギリギリで真後ろにいた人形がそれを支えた。
天に顔を向けたまま、小さく、笑う。
僥倖。
223 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 06:54:03.96 ID:b4uK0dAko
胆力でもって吹っ飛びかけた意識を取り戻し、状況を確認。
バック転で後ろに跳び、距離を取った鬼道は土を抉りとり、次の呼吸で自分の生命を奪い去る。
一瞬の間が二人の視線を交錯させた。
地面から球体が出現する。
五条「……ッ!」
チャンスはここしかない。
超反応で鬼道はボールに目標を移す。
自我はなくとも、躯が覚えているか。
五条「グ……クックッ……!」
自分の振り上げた右脚と鬼道の右脚がほぼ同時にボールにぶつかり合う。
金属で覆われたそれは二人のプレイヤーに挟まれ、中心をスパイクの形に変形させていく。
ボールから火花が飛び散り、エネルギーが小さな球体に蓄積される。
右足が悲鳴を上げて、反対方向に曲がろうとする力に屈するのを腰の力で無理やり堪えさせる。
224 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/19(水) 06:55:42.71 ID:iBaURtRvo
メンタルが揺らぎやすいおうどんは自分で術を破ったりできなさそうだな192 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/15(土) 06:01:20.67 ID:JAA2jonpo
鬼道さんマジ悪鬼225 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 07:02:54.41 ID:b4uK0dAko
息を吸う。
酸素が満たされる。
息を吐く。
ヒビの入る感覚。
骨が限界をむかえようとしていた。
五条「おしッ……負け……られ……ないッ!」
鬼道「ウガッアアアアアアアアア!」
二人の男の咆哮が戦場に響くと、それが決着の合図であった。
破裂音と共に土球は細切れになり、エネルギーが放出される。
受身も取れぬまま身体は中空に浮き上がる。
衝撃。
身体は羽毛のように簡単に後ろに飛んでいく。
落下地点にあった小石が皮膚を擦る。
転がる。
転がる。
なにか柔らかい物体にぶつかって漸く止まる
血生臭さが鼻をつく。
瞬時に死体の山だと気がつく。
五条「ハッ、あぁ……?」
頭をブンブンと振り、現在地点を確認。
鬼道は視界に見えない。
今の衝撃で自分と同じように吹っ飛んだか。
226 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 07:17:07.86 ID:b4uK0dAko
砂煙が舞い上がっている。
その向こう、十メイル程前にフーケの姿があった。
こちらに足を進めようと砂塵に背を見せている。
フーケ「お早いお帰りで……!」
五条「ク……! ジョークを言う余裕はオレにはないですね」
フーケ「ジョークでも何でもねえ感想だよ」
まだ頭の芯を衝撃が駆けまわっており眉の間を押さえて、無理やり視線を定める。
土と血が体中に付着し、手で払おうとも決して拭えない。
フーケにとっては確かに数秒間の戦いに見えたのだろう。
シグマゾーンなしであれだけの行動回数を可能にする、鬼道の潜在能力はクロムウェルの言う『悪魔』の言葉を体現していた。
リスク無しで、いや……心を失うということが何よりも大きなリスクか。
それがどれだけ心身にダメージを与えるかは誰よりも理解しているつもりだ。
ホコリまみれの眼鏡を持ち上げ、彼のいる方向を見据える。
まだ影は立ち上がってきていない。
一時的に自分とフーケを見失ったか?
違う、狙ってるのか?
227 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 07:22:01.98 ID:b4uK0dAko
フーケ「というかあたしの球ァ、役に立ったの? 速すぎて見えやしねえ」
五条「グフフ……それはまあ、バッチリと」
フーケ「にしては……あのバケモンがぶっ倒れたとは思えねえ」
半分ほどになったゴーレムの足に手を当てて、拳を握るフーケ。
感じるのだ。
鬼道の圧倒的な存在感を。
五条「ええ。残念ながら、まだ一撃しか当ててません……やはり速度が違いすぎる」
フーケ「……テメェの身体はもつのか? 脳、イカレてきてんじゃねえか?」
五条「ヒヒヒ、そんな事は承知の上……!」
フーケ「次のぶつかり合いで制さねえと……」
緑色の髪が戦場の腐った風を受けて、はためいている。
その遙か奥。
殺気と戦意の混じり合ったプレッシャーが放たれる。
オレは今、最高に冴えている。
その脳内麻薬で破裂しそうな脳味噌が危険信号を赤々と照らす。
第六感とも言うのだろうか。
光。
229 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 07:34:38.08 ID:b4uK0dAko
五条「伏せろッ!」
フーケ「!」
声が発せられるとほぼ同タイミング。
砂埃を一閃で消し去る光線がその緑髪の向こう側から、見え始める。
咄嗟にフーケに飛びかかり、横一線に辺りを破壊するそれを紙一重で躱す。
転がり込んだ土の味が味蕾を苦々しく刺激する。
後方では崩れかけていた岩山が光線の直撃を受け、横半分に。
前方のゴーレムは膝の部分を斜めに両断され、地面を僅かに揺るがして砕けた。
腕の中のフーケの心臓の鼓動が痛いほど伝わる。
呼吸も定まっていない。
飛び道具……
破壊力も十分。
当たれば、致命傷か。
フーケ「じょ、冗談だろ……!? 接近戦であのスピード、その上何だ今のはッ!?」
伏せの姿勢を続けるフーケが怒りと戸惑いを含んだ声を上げた。
戸惑っているのは自分も同じだ。
あんな技、試合で一度も見たことがない。
超常現象は幾らでも見てきたが、それも『一応』はルールに則った技の一つであるからこそ超次元サッカーというスポーツは成り立っていた。
だが先刻の光線。
あれはボール蹴るための技ではない。
ボールを奪う技でもない。
ただ、人を傷つけるがための技。
230 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 07:46:58.07 ID:b4uK0dAko
五条「クックックッ……! 超次元サッカーに理屈は通用しないとはよく言ったものですが……流石にオレも今の光線は……」
放った本人が見えない以上憶測の域はでないが、恐らく若干のタイムラグしか無いそれを遠距離から幾度も避けられる自信はない。
フーケ「なんでもアリかよッ! クソッタレ、打つ手がねえ!」
五条「フーケ、彼を此処までおびき寄せますよ」
フーケ「ああ!?」
五条「距離のある内に……土球、真空波、拳の多段攻撃でケリをつける……!」
フーケ「んな都合よくこっちまで来るのかよ」
五条「大丈夫……一発目のシュートで位置を把握したら、必ずこっちに向かってくるはずです」
フーケ「……」
緑色は納得行かない表情でこめかみを掻く。
後ろ手でそのブラリと下ろされたフーケの右手を握りしめる。
五条「それでも……仕留められない。だからオレは右腕を捨てます」
231 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 07:51:19.90 ID:b4uK0dAko
五条「彼の三挙動が終わった瞬間、オマエがブレットを撃ってください。その瞬間、きっとオレが動きを止めているはずですから」
フーケ「囮は……?」
五条「いりません。残りの魔力は全て次の一撃に注いでください」
フーケ「バカ……言ってんじゃねえ。テメェだけイイカッコしようとすんじゃねえよ」
五条「人は犠牲なしには、何も成すことは出来ないです」
フーケ「……」
犠牲が右腕一本なら安いものだ。
鬼道さんの心を取り戻せるなら。
フーケが生き残ることが出来るなら。
地面から生成されたボールが現れる。
それが無言の了承。
言葉はいらない。
湿った風が立ち上っていた煙をトリステインに運んでいく。
232 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/19(水) 07:53:33.14 ID:iBaURtRvo
五条さんにやめてくれと言えたらどんなにいいだろう233 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 07:53:34.13 ID:b4uK0dAko
フーケ「五」
五条「……」
フーケ「四」
五条「クックックッ……!」
フーケ「三」
砂の晴れた先に姿が視える。
フーケ「二!」
首を上げる、鬼道。
フーケ「一ッ!」
234 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 07:59:59.34 ID:b4uK0dAko
弾丸の如き速度で加速する鬼道に、全身全霊のシュートが飛んでいく。
五条「ペンギンッッ!」
四足移動、獣がサバンナを駆けるように距離を詰める『悪魔』はボールを認識した瞬間、空中で躯をきりもみ回転させる。
五条「爆ぜろ……!」
小さな体躯に先行していた三匹の爆弾が直撃する。
本来であれば一匹でも動きを止めることは可能なはず。
しかしその爆撃を受けても尚、鬼道のスピードは緩まない。
五条(……!)
まるで効いていない。
ローリングソバットの体勢でスパイクにボールを捉えた鬼道は、こちらが与えたエネルギーを反動に使い、着地とシュートを同時進行で行う。
紅い螺旋を纏っていたはずのボールは蹴り返された途端、蒼い炎に包まれだして自分の顔面めがけて風を切り裂いていく。
鬼道「ハッアァァァァァァッッ!」
続けて真空波。
強引に振り回された右足から空気の刃がボールに直撃。
若干速度を殺したものの、勢いは止まらない。
235 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 08:04:44.72 ID:b4uK0dAko
ボール。
その後ろに鬼道。
重なりあう影。
五条「チッ!」
これだけ距離があっても相手のほうがやはり疾い。
ワルドの魔法とレイピアの同時攻撃が止まって見える。
フーケ「ゴジョー! もう一発ッッッ!」
フーケの叫びに伴って足元に生み出された土球を、二も三もなくトーキックで蹴り飛ばす。
このシュートで相殺は無理。
だがコースを少しだけずらすことなら。
蒼い土球の右側を削りとると、鬼道の左手を掠めて彼方へ消えるボール。
思惑通り、こちらの初撃であるはずの蹴り返されたボールはコースを変えた。
これで自分と相手を遮るものは無くなったのだ。
この肢体で耐え切らなければならない。
無防備な状態で手刀を受ければ、首ごと切り落とされる。
そんなリスクを背中に負ったまま。
236 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 08:11:35.44 ID:b4uK0dAko
鬼道「ア”ッッッ!」
五条「ヘアアアアアアア!」
突き出された左拳が右手に抑えつけられる。
駄目だ。
自分には見えない世界が鬼道には見えている。
脇腹に一閃が襲いかかる。
視える、が。
躱せ……ない!
最も硬い右肘で対抗しようとしたものの、利き足の蹴りを堪え切ることは不可能だった。
関節が痛みと共に気味の悪い音を立てて砕ける。
圧倒的なその脚力は、自分で『右肘に当てる』という意思がなければ切り落とされかねない破壊力を持っていた。
あまりの激痛にショックで意識が吹き飛びそうになるのを、割れる骨の痛みでたたき起こす。
五条(『骨』を切らせて……『肉』を絶つとは……皮肉な)
右腕の犠牲でもって生まれた数瞬の間を攻撃には使わない。
既にフーケは真後ろにいる。
このまま鬼道の動きを止めれば……勝利条件は満たされる。
237 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/19(水) 08:16:25.19 ID:b4uK0dAko
空中に浮く鬼道の左腕を捕まえ、二撃が生命を奪うことをギリギリで留める。
ゴーグルの向こう側の瞳は覗き込むことが出来なかった。
バランスを崩した鬼道は片足で地面に着地し、右掌を地面に付ける。
それを見逃さず、スパイクで踏みつけ完全に躯の自由を拘束する。
五条「フーケッ!!」
フーケ「直ならぶっ飛ぶぜッッッ!」
瞬間、脇の下から手が伸びる。
見えたのは杖。
黄色いユニフォームに押し付けられた先には、残る魔力が篭められている。
フーケ「ブレッドォォォォォォォォォ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
239 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/19(水) 14:03:30.24 ID:kAchMXMDO
今日は終了かな?244 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 17:56:21.44 ID:jK97cUUDO
五条さんが死んだら会社辞める245 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/20(木) 18:55:06.70 ID:5DHBSfplo
>>244
`¨ - 、 __ _,. -‐' ¨´
| `Tーて_,_` `ー<^ヽ
| ! `ヽ ヽ ヽ
r / ヽ ヽ _Lj
、 /´ \ \ \_j/ヽ
` ー ヽイ⌒r-、ヽ ヽ__j´ `¨´
 ̄ー┴'^´
252 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/22(土) 17:22:23.64 ID:Fc+S271po
まだー?253 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/22(土) 19:12:05.15 ID:bX8+q7q5o
睡眠不足死亡説260 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/23(日) 18:32:52.04 ID:ZgVhKImIO
お待ちの皆様、申し訳ありません。
非常に勝手な言い分なのですが現在私情が忙しくなっているので、執筆する時間が取れていません。
まーたか、とお思いになって当然のことかと思います。
しかし時間がないだけならば、少しづつでも書き溜めることで投下出来ます。
事実、昨日の時点で多少の投下量はあったのですが、自分で書いていてクォリティが落ちている様な気がしてならないので全部削除致しました。
あまり自分を卑下する事を言うのは望ましくないのでしょうが、
「おいおいこんな文章で読んでる人満足するとでも思ってんのかよwwww」
と考えてしまい、中々書き進められなくなってしまってもいるのです。
情けない話ですがもう僅かばかり、自分で納得のいくものが書けるまで待っていただけないでしょうか?
二月前には来ますので、しばし時間を貰えれば幸いです。
261 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 18:39:28.73 ID:ldsh49u7o
うんわかった。じゃあその間俺達は
サッカーやろうぜ265 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 21:20:13.37 ID:pJbpJFTjo
サッカーして待ってます268 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/23(日) 21:52:28.85 ID:3AfEt4UQo
123とも買ってきたから五条さん仲間にして育てながらゆっくり待ってるよー328 :
睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2011/01/31(月) 22:47:05.99 ID:NoC0uXWIO
お待たせしました
1月32日の朝方から投下します
329 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 22:48:23.60 ID:TvCaMQpBo
1月は32日まであるからな、2月前にギリギリ猶予があるな 330 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 22:56:50.45 ID:76/fAY5uo
32日か、ギリギリだったな 333 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 23:07:32.49 ID:DtB5RIHio
『話を纏めよう。"君の父親と帝国学園長は、同一人物である可能性が高い"。そして"帝国学園長である誰かであり君の父親である誰かが、サッカーの為君に認識阻害を植え付けた"ものかと思われる。その後、"君の能力を制御し切れない事が発覚したので、君を平行世界であるこの学園都市に放り込んだ"。"万一君がこの学園で認識阻害の制御を身につけたのならば、回収する事を目算として"ね』
全ての欠片を繋ぐ言葉の鎖が、次々と編みこまれていく。
……告げられた推論の群れに心が一段と悲鳴を挙げるのを感じたが、胸の痛みなど今は気にしている場合ではない。
五条「……それで」
この際、もう過去はどうでも良い。
自分のこれまで歩んだ道のりに撒き散らされていた辛苦の欠片が、偶然でなく肉親による悪意に満ちたものだった事には腹も立つが、今はそんな事はどうでも良い。
五条「……オレは、この先皆を守る為に、この世界を守る為に何をすれば良いのですか……?」
乾いた喉から言葉をひり出したが、やはり理事長の表情は綻ばない。
『考えられる方法は幾つかある。一つはこれまで通り認識阻害の力を最小限に抑えて生きて行く事だ。しかしこの方法はいつ能力が暴走してもおかしくないリスクを伴う。暴走した際に君を処分する手筈は整っているのだが、君が死亡して次元に開いた穴がどうなるのか全く予見が出来ない為、可能ならば避けておきたい方法だ』
五条「……」
今までと変わらない保留案、というところだろうか。
『次に考えられるのは、君が先の一方通行との対峙で会得した次元移動能力を行使し、ここで告げた事実を抱えて"あちら"の帝国学園長に、認識阻害の是正手段を問う方法だ。……しかし、この方法も君が押し付けられる形で"こちら"に送られた事を考えると、解決策になり得る可能性は低いだろう』
五条「……でしょうね……」
ここまでで、何となく嫌な推論が頭をよぎる。
この統括理事長の性質を考えれば、有効な策があるのならば真っ先に提示しその是非を自分に問う事だろう。334 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 23:08:15.86 ID:DtB5RIHio
スマソ、誤爆しますた
楽しみにしてます 335 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 23:09:33.42 ID:Tsv0h9r6o
>>333-334
全力で爆笑したwwwwwwwwwwwwwwwwww 336 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 23:12:17.84 ID:lUIKUcQxP
>>333
そっちも見てるし好きだけど言わせて貰う
紛らわしいわこの野郎wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww お茶目な五条ファンさんのSS→五条「ククク… ここが学園都市ですか」次→
五条「願わくば、もう一度貴女をこの手に抱きたい」その4
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