五条「ククク… ここが学園都市ですか」その26

2011-01-07 (金) 12:17  禁書目録SS   7コメント  
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イナズマイレブン3 世界への挑戦!! ジ・オーガ


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67 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/06(木) 01:21:02.72 ID:OLpT5Zso
────────────
八月二十一日 夏休み三十二日目
────────────
『夏が終わる前に、海が見たいですの』

未だに陽炎が残る真昼の街に、一縷の日陰を拵えている喫茶店の庇の下。
通りに面したオープンカフェのテーブル。

五条勝の向かいに座った黒子が口を開き、表面がうっすらと汗をかいているグラスになみなみと注がれた食後のアイスティーをストローですすり上げた。



五条「……海、ですか……」

黒子「ええ。せっかくお休みも頂けたのですし、ついでに外出許可が下りれば行けるのですけれど……」

彼女の言葉を聴いた五条が、顎の先に右手を置き何かを考える様な仕草を作る。

黒子「……とは言っても、そう簡単に外出許可なんて頂けそうにありませんわね……」

五条「……少し心当たりがありますので、駄目で元々当ってみましょう……期待しないで待っていて下さい……」

黒子「まぁ、無理なら無理で学園都市内にも遊戯施設は沢山ございますしね」

五条「努力はしてみますよ……ククク……」

呟いて、その表情に浮かべた笑みを若干強めた五条の様を見て、黒子が彼から視線を外し再度言葉を紡ぐ。

黒子「……わたくしの方は都合がつきましたけれど、勝さんの方は如何ですの?」

五条「……」

黒子「……沈黙がお答えですのね?」

五条「……今日明日には、きっとカタをつけますよ……」

黒子「……」

五条「……」

黒子「……勝さん?」

五条「……?何でしょう……?」

黒子「顔がお怖いですわよ?」

五条「へぇあッ!?」



69 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/06(木) 01:23:53.57 ID:OLpT5Zso
僅かに笑みながら告げられた彼女の言葉を聴いた五条が、いつの間にか強張っていた顔を驚いた様な表情で塗りつぶし、すぐにいつもの微笑みへと戻す。
その移り変わりを見た黒子が、くすくすと可笑しそうに微笑んだ。

黒子「まったく……あまりご無理はしないで下さいませ?」

五条「ククク……えぇ、ご心配には及びません……」

黒子「あら?でしたら心配致しませんわよ?」

五条「……えぇ、無用ですね……オマエは二十七日以降の事を考えておいて下さい……」

黒子「わかりましたわ。でしたら、お言葉に甘えさせて頂きますの」

互いに他愛も無い軽口を叩きあい、目を合わせ笑いあう二人。

と、そんなうららかな午後の一幕を遮る様に、黒子の携帯電話がぴーぴーと甲高い音を放った。
鳴り響いた携帯電話に視線を落とした彼女が口を開く。

黒子「……もう出勤時間ですの」

五条「……相変わらずオマエも忙しいですね……」

黒子「勝さんにお手伝い頂ければ、もう少し暇になりますのよ?……あ、お会計ですけども「オレが出します……」

立ち上がり、鞄から財布を取り出そうとする黒子を五条が制する。

五条「……いつも朝食を用意して貰っているのに、これ位オレが出さなければバチが当たるでしょう……」

黒子「……でしたら、甘えさせて頂きますの。では勝さん、また今夜連絡しまs「待ってください」

右手を掲げ、別れの挨拶を告げようとする黒子を、再度五条が制する。
その声を聞いて、きょとんと瞳を丸くした黒子が五条を見つめた。

黒子「……?どうかされましたか?」

五条「……いえ……その……」

黒子「……?」

黒子から視線を外した五条が、軽く俯く。
変わらず不思議そうに五条を見つめる黒子。

暫しの間を置いて五条の顔が上がり、黒子の瞳を強く見据えて言葉が吐かれた。

五条「……黒子!」
黒子「……!?何ですの!?」



70 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/06(木) 01:25:54.48 ID:OLpT5Zso


五条「大好きですよ」


一陣の風が静かに吹き付けた。
残暑とはいえ、未だに暑さが残る街に吹いたその涼風に、五条の前髪と黒子のツインテールが静かに揺れる。

風が吹き抜けるのを見計らった様なタイミングで、黒子が五条と目線を絡ませたまま優しく微笑んだ。

黒子「……わたくしもですわ、勝さん」

その言葉を聞いた五条の微笑もまた、いつも通りのそれながら若干優しい色合いを帯びる。
それは彼を知る人間しか、その違いが判らない程度の、ほんの僅かなものだった。

黒子「では、また後ほど連絡しますの」

黒子が右手を挙げ、五条もまた右手を掲げる。
次の瞬間には黒子の姿は何処かへと消失し、テーブルには五条が一人残されていた。

先に吹き抜けた涼風を愛しむ様にメガネ越しの五条の瞳が細くなり、風が吹き抜けていった先へと視線を走らせる。

その風の残滓は既にそこには無く、ただ静かに揺らめく陽炎が、アスファルトに塗り固められた学園都市をゆらゆらと彩っていた。

────────────



71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/06(木) 01:27:09.63 ID:RFWBBJgo
うひょぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお



72 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/06(木) 01:28:30.90 ID:OLpT5Zso
普通に浴びる分には熱すぎる程のシャワーを浴び、一気に身体を加熱させる。
芯まで熱が通ったのを実感してから風呂場を後にし、バスタオルで身体を拭った。

一通り髪の毛を拭い終え、洗面台の脇にあるコームを右手にドライヤーのスイッチを入れる。
ワックスを塗りつけ、頭髪を全て後ろになで付けながらドライヤーで形を整え、仕上げに前髪を一房額に垂らして軽くカールさせた。

眼前の鏡に映る男の姿を確認する。

…… 体調は万全。
何ら心配の要素は無い。

傍らのつるなしメガネを目元へとかけ、ボクサーパンツの上から萌葱色のユニフォームを纏い、洗面所から自室へと足を運ぶ。

いつの間にか机の上のPDAが、メールの受信を知らせていた。
未だに少々使い慣れないPDAを操作し、届けられたソレに目を通す。

──────

送信者:
題名:一方通行(アクセラレーター)について
本文:…………

──────

送信者名が空欄になっている異常事態には見覚えがあるので、スクロールするまでもなく誰からのメールか理解は出来た。
先に初春が秘匿回線だと言っていたこのアドレスにメールを送ってくる事など、きっとあの人間にとっては造作も無い事なのだろう。

思惑こそ理解出来ないが、本文に軽く目を通しながら画面をスクロールさせて行く。

到底まともに読む気も起きない小難しい言葉が羅列されているそのメールの中の一説が、不意に興味を引いた。

……一方通行と呼ばれた男の、少年時代の話。
彼が自身の能力に気付き、その異常性を周囲に認知されるまでの下り。

どこかで聞いた様な話が、そこに記されていた。



73 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/06(木) 01:31:34.83 ID:OLpT5Zso
その話を見かけたのを皮切りに改めて本文に目を通すが、理解できる範疇のものとしては既に自分が持っている情報とは大差なく、具体的な能力の攻略法等は記されていなかった。

このタイミングでこの情報を送りつけてくるあの人間の思惑がまるで読めない。
自身が本気で推し進めている計画ならば、妨害の体を成している自分や美琴はとうの昔に処分されていてもおかしくはないだろう。

そしてこの期に及んでの、あまりに唐突過ぎる情報提供。

自分を、一方通行を、あるいはその両方を試そうというのだろうか。

スクロールが本文の一番下に到達すると同時に、PDAの電源が落ちた。

この後の展開は読めているので再度電源を入れる気にもならず、そのまま壁に掛かっている純白のコートへと手を伸ばし、ハンガーを外し身体に纏う。

全身を包むその感覚に、軽く身体が引き締まった様な気がした。

足を動かし、部屋の電気を消す。
既に周囲は宵へどっぷりと浸り切っており、部屋は一瞬で闇の底へと落ちた。

玄関脇の靴箱から一組のスパイクを取り出し、両足に履く。
そのまま玄関の照明を落とし、完全に闇に沈んだ部屋を後にした。

────────────

雲も風も無い夜空は、手を伸ばせば星屑まで掴めそうな感覚だった。

見上げていた視線を落とし、眼下に広がる光景を見渡す。
既に夜の帳が下りているとはいえ未だ宵の口にある街の灯りは強く、地平線にまで届きそうな輝きが隔壁の内外で随分と発展に差がある事を改めて知らしめてくれる。

その光景に軽くため息を吐いて、腕に着けた時計に目をやった。

……午後八時二十七分。

闇に浮かぶデジタル表示を確認して、瞳を閉じる。
上空に吹く風の音が耳に届き、初めてサッカーボールを蹴った小学校の授業の歓声を想起させる。

……あれから随分と時間が経ち、気がつけば学園都市という場所にまで流れ、いつの間にやら生命のやり取りすら身近にある珍妙な環境になっていた。

学園都市に足を踏み入れて以来、今では自分にとって大切な人となった少女との出会いをきっかけに相当な数の人間と対峙したが、実際に自分の生命の危機を実感するのは今日が初めてではないだろうか。

そんな事を考えていると、僅かに膝が震えた。



74 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/06(木) 01:34:56.11 ID:OLpT5Zso
自分が得たものを、積み重ねてきたものを全て一瞬で失う死という現象に、その現象に近づこうとする自身に、心が悲鳴を上げているのだろうか。

閉じている瞼に一層強く力を込め、9982と呼ばれた少女が最期に浮かべた微笑を思い浮かべる。
感情を持っていない様に見えた少女が、最期に掴んだ一片の淡い感情を。

────胸の中に、ごうと赤黒い炎が燃え上がる様な錯覚を覚えた。

次いでその胸に左耳を当てながら、嗚咽を上げて泣いていた少女の姿を思い浮かべる。
何よりも強く、気高くあろうとするが故に流された、少女の頬を濡らす水晶の様な涙を。

──── 胸の中の炎が吼え猛り、徐々にその勢いを増して足先へと流れる。

爆炎に包まれながら駆けた夜を、電波の先で支えてくれた少女を思い浮かべる。
自身の危険すら省みず、非道は許さないと憤慨していた、花の様に可憐な少女の声を。

────足先に収束した炎が、轟々と唸りを上げながら、その開放の時を待ちわびている。

海が見たいと言った少女の横顔を思い浮かべる。
全てに気付きながらも尚、自身を信じ何も問わず、ただ帰りを待ってくれる大切な少女の笑顔を。

────膝の震えが、止まった。

腕の時計から僅かにアラームの音が漏れる。
刹那、足先で咆哮を上げていた炎が爆ぜ一気に身体を押し出した。

頭を向ける座標はX228561 Y568714。
あの晩に、9982と呼ばれた少女が"実験対象となった"操車場。

僅かな飛翔を経て、操車場の片隅に佇む一つの影とその足元に倒れる影が視界に入った。

こちらの気配に気付いたのか、特徴的な黒いシャツを纏ったまま佇んでいた影がゆっくりとこちらに振り返る。

幽鬼を思わせる程真っ白な髪、同様に生気を感じられない白い肌。
その造詣の中でも一際異彩を放っている、鮮血の様に真っ赤な瞳と自身の目線が交差し、相手の口元が大きく歪む。


──音を置き去りにした世界。
自身の頭の中では、高らかに試合開始のホイッスルが鳴り響いていた。

──────to be continued──────



75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/06(木) 01:38:10.28 ID:RFWBBJgo
あれ? 上条さんストーリーに絡んでなくね?



76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/06(木) 01:39:38.78 ID:KYUKIFco
お姉さま今回出てきてないからそういうことなんだろう



78 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/01/06(木) 01:42:36.20 ID:OLpT5Zso
以上、本日投下分となります
ご支援を頂いております皆様、関係各位の皆様
本日もありがとうございました
私事が起因にて遅筆気味となっておりますが、ご容赦の程を頂ければ幸いです

さて、丸々バトル描写を予定しております次回投下に関しましてですが、例のごとく可能ならば明晩、不可ならば明後日の晩を予定しております
可能ならば、八日の第二回投票開始までにはひと段落終えておきたいところです
お時間がございましたら、またお付き合いの程を頂ければ幸いです



79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/06(木) 01:45:40.12 ID:RFWBBJgo
おつかれー
無理すんなよー




84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/06(木) 03:06:47.02 ID:NO3RmOQP
海の誘いって…。
エンゼルフォールフラグ!




85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/06(木) 03:07:59.55 ID:RFWBBJgo
>>84
それ見たいわ




90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/06(木) 14:50:24.82 ID:JtW4qdEo
えっえっえんだ…
ま、まだ言っちゃだめか?そろそろ我慢の限界え、え、えn




94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/07(金) 00:56:19.33 ID:EiWeo460
この作者は敵も魅力的に仕上げるから安心して見ていられる



91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/06(木) 20:30:10.04 ID:lluQMwAO
流石に最強キャラに圧勝したら最低過ぎるが
どうなるのか期待




93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/06(木) 22:50:28.60 ID:4dD9LQU0
>>91
おっと、エイワスさんの悪口はそこまでだ






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コメント一覧
2141. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/01/07(金) 13:18 ▼このコメントに返信する
きたああああ!
てめぇらずっと待ってたんだろ!?(ry

最近このSSの更新がジャンプより楽しみになってきたぞw
2144. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/01/07(金) 17:43 ▼このコメントに返信する
展開遅えよおおおおおおおお
早く読みたいんだよおおおおおぽお
2145. 名前 :  ◆- 投稿日 : 2011/01/07(金) 17:47 ▼このコメントに返信する
うん、俺は待ってた。
このSSを読むためにこのサイトをブックマークしてる。
2146. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/01/07(金) 18:00 ▼このコメントに返信する
>>2145
同じく!
次回いよいよ一方さんとのバトルか……
2153. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/01/07(金) 19:52 ▼このコメントに返信する
やっぱ五条さんが出てるSSは面白い
2156. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/01/07(金) 21:27 ▼このコメントに返信する
スレの方で既に読んでいても、ここでまとめられたものをもう一度読み直しちまうぜ…全く持って罪な作品だ。
さて、今日には恐らく続きが来るはずだし…今のうちに脱いで待機しとくか。
2157. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/01/07(金) 22:09 ▼このコメントに返信する
にやけちまったじゃないの…
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