五条「貴女が殺せと言うなら神だって殺しますよ」その4

2010-12-17 (金) 12:22  その他二次創作SS   7コメント  
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397:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 02:14:37.21 ID:7xre2i6w0

森の奥深く、誰も訪れそうにない寂れた教会の前に私とワルド様は立っている。
アルビオンの桟橋から飛び続け、仕事終えたグリフォンは大きな欠伸を一つして、伏せの体勢をする。

姫様に教えられたウェールズ皇太子の隠れ家。
此処で王党派がレコン・キスタへの反撃の機会を伺っているはずだ。

しかし王族がいるにしては教会の周りに護衛はなし、それどころか人っ子ひとり、誰かがそこに潜んでいるような気配すらも感じられない。

無防備すぎる……
本当にこの教会にウェールズ皇太子様はおられるのだろうか?


ワルド「君の言う通りならウェールズ皇太子はここにいるはずだが……」

ルイズ「はい。ここに王党派に潜んでいる……と教えられました」

ワルド「ふむ、しかしこのような森奥深くに本当にいるとは思えないな」



399:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 02:24:30.84 ID:7xre2i6w0

彼の言葉に、少し不安になる。

ワルド「いやルイズやアンリエッタ様を疑っているんじゃない」

それをすかさずフォローし、頭を撫ぜる。

ルイズ「はい」

ワルド「ただ、いささか人気がなさすぎると思ってね……まあそうでもなければレコン・キスタの連中に見つかってしまう、という考えからの選択だろう」


右手で帽子のつばを弄り、辺りを見渡すワルド様。

王都、ニューカッスル城からも大きく外れたこの森。
彼が怪訝に思うのも無理はない。


ルイズ「とにかく入ってみましょう。それで分かるはずです」

先導するように、教会の入り口へと足を進める。

ワルド「……」



400:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 02:33:14.40 ID:7xre2i6w0


私の身長の三倍はありそうな、軋む巨大な扉を押し開け、中を覗き見る。
意外にも内観は綺麗に整頓されていて、作りがしっかりしていることに驚かされる。


天井からはステンドグラスが太陽を浴び、色とりどりの光を並ぶ長椅子に照らしている。


ワルド「誰もいないな……」

ルイズ「そんな! 確かに姫様はここだと!」

ワルド「他に、この辺りに教会は無いはずだ。しかし、アンリエッタ様が密命を下して君に嘘を教えることも考えられない」

ルイズ「……そうです。姫様が私に嘘をつくはずないんです」

しかしここにはウェールズ皇太子はおろか教会の神父もいない。
その静けさが私をどんどん心細くさせる。



401:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 02:45:30.81 ID:7xre2i6w0

ワルド「もしかしたら、定期的に場所を変えているのかもしれない。もう少しこの辺を探してみよう」

ルイズ「はい……」


そう言って入り口に振り返ったとき、物々しい雰囲気が私たち二人を包む。
どこから現れたのか、鎧兜を身につけた兵士たちが十数人、私たちを取り囲んだ。
その態度からするに私たちを歓迎しているようではない。


兵士「貴様達、ここがアルビオンの管轄下だと知っているのか?」

中の一人、リーダー格の兵士が隣のワルド様に剣を向ける。
それと共に徐々に距離を詰めてくる兵士たち。

だがワルド様は腰のレイピアを抜くこと無く、兵士に話しかけた。

ワルド「知っているさ。彼女はトリステインの大使、僕はその護衛だ」



402:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 02:56:58.38 ID:7xre2i6w0

兵士「トリステイン……? 馬鹿な事を言うな。あの国から、今アルビオンに大使が送られてくるわけがない」

緊張を緩めず、警戒を続ける兵士たち。

ルイズ「私達はアンリエッタ女王陛下から直属の命を受け、ここがウェールズ皇太子の居場所だと聞いてやってきたのよ! 貴方達に用はないわ!」

兵士「アンリエッタから!?」

突然驚きの声をあげ、剣を下げる兵士。

ルイズ「そうよ! 姫様から、ウェールズ様に返していただきたい物があるの! 皇太子様はどこ!?」

リーダー格の男の肩に掴みかかる。
その拍子に天井の光が指輪に反射して、輝きを放つ。

兵士「その指輪は……!」

ルイズ「え?」


後ろの部下たちに警戒をとく様に合図し、私の右手を握る。



403:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 03:08:28.07 ID:7xre2i6w0

兵士「大変失礼した。君たちは確かにアンリエッタから送られた大使のようだね」

先ほどとは打って変わって、温和な声色に変わる兵士。
どういう事?

私の疑問が抜けないまま、目の前の男は兜を床に置く。
と同時に彼の周りの兵士たちは一様に跪く。

顔を見せたのは、金髪の美青年。
右手に輝くのは私の付けている指輪と形のよく似たものだった。




ウェールズ「僕がそのウェールズ・テューダーだ。トリステインからの大使よ、非礼を詫びよう」

恭しく頭を下げるその姿は王族の気品に満ちている。
その様子からも彼がウェールズ皇太子であることは間違いないと一目で分かった。



405:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 03:29:05.51 ID:7xre2i6w0

ルイズ「貴方様があのプリンス・オブ・ウェールズ……あ、あ……私とんでも無い無礼を」

ウェールズ「フフ、大丈夫さ。君の名前は?」

ルイズ「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです」

ウェールズ「君があのルイズかい? アンリエッタから君の話をよく聞いたものだよ。そちらは?」

隣のワルド様に向き直る皇太子。

ワルド「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドです。お初にお目にかかります」

ウェールズ皇太子の足元に跪く。
それに合わせて慌てて、私もしゃがみこもうとするが、それを皇太子はそっと止める。



ウェールズ「そんなに畏まった礼儀はいらないよ」

ルイズ「いえ……」

私の両手を握り、物柔らかな声で話しかける。



ウェールズ「遠路はるばるよくここまで来られた。立ち話も何だ、食事はまだだろう? 詳しい話はその後に聞くことにするよ」




406:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 03:48:54.68 ID:7xre2i6w0

雲の間に隠れがちな夕日が紅く、私を照らした。
食事を終えた私はウェールズ皇太子の部屋に向かっている。
今から渡すことになるであろう密書をみてウェールズ様はどう思うのだろう?
姫様が私に手紙を預けたときの表情……酷く悲しげだった。
お二人のことを考えると、やっとここまで来たのに歩む足は錘でも付けたかのようにずっしりと感じる。


……それだけじゃない。

食事の席でワルド様とウェールズ様が何か話していた。
あれはきっと、結婚の媒酌を頼んでいたはずだ。
フネの中ではよく分からないまま、結婚を受けてしまったけど……本当は悩んでいる。
ワルド様が嫌いなわけじゃない。むしろ好意を抱いているのは確かだと思う。
自分を包みこんでくれる包容力もある。不満など何処にもないはずだ。

でも……思い浮かぶのは眼鏡を掛け、いつものように変な笑いを浮かべる自分の使い魔の顔ばかり。
強くて、優しくて、自分のことを一番に考えてくれて。

私のことを守ってくれると言った使い魔。



気がつくともう、ウェールズ様の部屋の前に到着していた。
思うように上がらない手を無理やり持ち上げ、二三度ノックする。




ウェールズ「どうぞ」



408:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2010/12 /12(日) 03:53:46.15 ID:Dc+aiTbBO
五条さんって中学生で男前なのにおれはおっさんで不細工



409:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12 /12(日) 03:58:37.49 ID:UYVI2m84O
そんな私は五条さんについてきます



411:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 04:04:09.37 ID:7xre2i6w0

ルイズ「失礼いたします」

静かにドアを開け、部屋の中に入る。

ウェールズ「待っていたよ、ルイズ。まあ座ってくれ」

椅子を引き、私を促すウェールズ様。
目下の私にもこんな風に気を使ってくださる方だもの。
姫様が……お慕いするのも、自然なことだ。

浮かない顔をしているだろう私を見て、皇太子は話し始める。


ウェールズ「昔からの言い伝えで、こんな話がある」

ウェールズ「トリステインには水の精霊がいて、アルビオンには風の精霊がいる」

ルイズ「精霊……ですか?」

そういえば、前に授業で誰かが言っていた気がする。
モンモランシーだっただろうか。
私は水の精霊と仲良しだと威張っていた。


ウェールズ「ああ、昔むかしの大昔。ハルケギニアは全ての大陸が地繋がりだったんだ。」



412:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 04:16:55.97 ID:7xre2i6w0

ルイズ「それは……初めて聞きますわ」

ウェールズ「フフ、僕も子供の頃に父に聞いた話だからね。どこまで史実に基づいているかはわからない」

コップの水に口をつけ、喉を潤すウェールズ様。

ウェールズ「ガリアには土の精霊、ロマリアには炎の精霊がいるそうだ」

ルイズ「そうなんですか?」

ウェールズ「ああ、しかも四つの精霊は大層仲良しだったと言われている、まだ始祖ブリミルが生誕されるよりも昔の話だ」

黙って頷く。

ウェールズ「その中でも、水の精霊と風の精霊はお互いを好き合っていたそうでね。他の二人も、それを祝福していたそうだよ」


まるでウェールズ様とアンリエッタ様のようだと思う。


ウェールズ「しかし、ある日二人を引き裂く出来事が起きた。ハルケギニアが大きく形を変え、アルビオンは高く空に連れ去られてしまった」



413:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 04:29:20.58 ID:7xre2i6w0

ルイズ「そんな……」

ウェールズ「風と水はとても悲しんだ。それをみた炎と土は、二人にある相談をする」

皇太子が私の右手を取る。

ウェールズ「双月が重なる日、空に虹をかけよう。そうすれば、お互いがお互いを想い続けているという事がわかるだろう? と」

そして自分の右手を近づける。

ウェールズ「二人はそれに賛成してね。それからだ、トリステインとアルビオンに大きな虹が架かるようになったのは」

ルイズ「素敵……」

ウェールズ「見てごらん、ルイズ。君の水のルビーと私の風のルビーの間に虹が架かっているだろう?」




ウェールズ様の指と私の指の間、ルビーが互いに輝きを放ち、綺麗な虹を作っていた。



414:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 04:43:26.80 ID:7xre2i6w0

ウェールズ「きっと君は……私とアンリエッタの仲を憂いてくれていたのだろう?」

ルイズ「……はい」


夕日の紅と虹色が美しく重なりあい、私の不安を取り除いていく。


ウェールズ「心配はいらない。私と彼女もまた、精霊たちのように虹を見ることで互いを思うことができる。湖の前でそう約束したんだ」

ルイズ「……」

ウェールズ「見せてくれ、ルイズ。何か君はアンリエッタから渡されているんだろう?」

ルイズ「はい、お手紙を」

ウェールズ「手紙か……それを見れば僕はもう少し、戦うことが出来る」


ウェールズ様は決意していた。
例えこの戦に負けようが、自分の誇りをかけて最後まで戦い抜くことを。
その瞳を見て、私は背く事ができなかった。


ルイズ「はい……」

密書を取り出し、彼の手に渡す。

ウェールズ「ありがとう、ルイズ……!」



415:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 05:02:22.63 ID:7xre2i6w0

手紙を読み終えた、ウェールズ様は机の引き出しから手紙を取り出し、私に手渡した。

ウェールズ「……これを」

私の手の仲に手紙は、随分時間が経過しているようで黄色く変色していた。
いつ姫様がお書きになられたかはわからないが……
それを今でも大事にお持ちになられているということは、お二人にとってはかけがえの無いものなのだろう。

ルイズ「皇太子様……姫様は……亡命をお薦めになられたのでは!?」

静かに首を振る。

ウェールズ「そんなことはないさ。それに大使の君はその内容に関与することは許されていない、違うかい?」

ルイズ「ですが……」

ウェールズ「そうだったとしても……私はこの国の王子である以上、皆を見捨てて自分だけ逃亡することなど出来ない」


またゴジョーの言葉が甦る。
誇りのために死にに行くな。
生きろ。

ルイズ「私の……とても大事な人が言っていました。誇りのために死にに行こうだなんて思うな、泥を被っても生き続けろ、と」



417:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 05:18:31.51 ID:7xre2i6w0

ウェールズ「ああ、私もその生き方には賛同する。私一人ならばそうしたかもしれない」

ルイズ「では……! トリステインに亡命して……」


再び首を横に振るウェールズ様。


ウェールズ「だが、私は王子という立場に生れ出た以上は、国民に恥をかかせることは絶対に出来ないんだ。それが……死に赴くようなことでも」

ルイズ「死んでは……死んでは意味がありません!」

ウェールズ「我が国民をレコン・キスタの手で蹂躙されるぐらいならば、死のうとも……一人でも多くのレコン・キスタの首を獲ってみせる」

ルイズ「……ですが! 皇太子様! アンリエッタ様はどうなるのですか!? 姫殿下は……貴方様の帰りを待ち続けています!」



涙が頬から伝っているのにようやく気づく。



418:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 05:36:20.00 ID:7xre2i6w0

ウェールズ「ルイズ、人には死んでも譲れないものがあるんだ。このことを……君の大事な人の言葉と一緒に覚えておいてくれ」

ルイズ「……そんな」

ウェールズ「アンには『君の幸せを誰よりも願っている』と伝えてくれ。彼女の幸せこそが、僕の幸せなのだから」

ルイズ「皇太子様……私の口からは……!」

ウェールズ「フフ、出来れば私の口から言いたかったが……それも叶うまい」


沈みゆく太陽が部屋を暗闇に誘う。

どうして、人は離れ離れになってしまうんだろう?
神は慈悲を与えてくれない。

グリフォンに乗って空を見下ろしたとき、城下町はもう本来の姿をなくしていた。
この目で、王党派が追い詰められているのを見てしまった。
街中にレコン・キスタの旗が立てられているのを見てしまった。
奇跡が起こらない限り、アルビオンはレコン・キスタに占領される。

私が奇跡を起こせるだなんて思わない。
でも、出来ることはあるはずだ。



419:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 05:50:09.97 ID:7xre2i6w0

ルイズ「皇太子様! 私も……私も戦います!」

強い意思をもってウェールズ様に伝える。
せめて、わずかでも力になれるならと思って。
しかしそれにも目の前の王子は小さく首を振る。

暗くなった部屋に明かりを灯しながら。

ウェールズ「それは、絶対に出来ない。君をこの戦争に巻き込むことはアルビオン王子として許さない」

ルイズ「私も戦えます! 兵士の様に強くはありませんが、それでも力になりたいのです!」

ウェールズ「ありがとう、その気持だけで私は強くなれるよ」

儚げに微笑む皇太子の顔を私は直視できなかった。

ウェールズ「だが君がもし戦争に巻き込まれたと聞いたらアンリエッタはどう思う?」

ルイズ「……」

ウェールズ「君は全力をして、トリステインまで安全に送り届けることを誓おう……それに」


一呼吸、間をおいてウェールズ様は言う。


ウェールズ「明日、結婚式が控えているだろう? そんな君を戦わすなど出来ない」



421:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 06:03:29.95 ID:7xre2i6w0

ルイズ「そ、それは……確かに私はワルド様と結婚の約束をしましたが、アルビオンがこんな時に結婚など!」

ウェールズ「それは違うよ。こんな時だからこそ、祝い事が必要なんだ」

椅子から立ち上がり、窓の外を見上げる皇太子様。

ウェールズ「君たちの結婚を聞いて、兵士たちは皆自分のことのように喜んでいる。暗い話題ばかりだったからね。戦わずとも結婚式だけで、僕らには十分な力になってくれるよ」


結婚することで誰かの力になれる。
それはきっといいことだ。
傷ついた兵士たちの心を少しでも紛らわすことが出来るなら、何だってしてやりたい。


……でも、本当にそれが正しい結婚なんだろうか?
こんな迷ったままの私が、結婚をしていいんだろうか?


ルイズ「ゴジョー……」



422:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 06:18:07.31 ID:7xre2i6w0

ウェールズ「ミスタ・ワルドに聞いた時は驚いたが……君たちは許嫁なんだろう?」

ルイズ「はい……」

ウェールズ「ならば何も躊躇うことはあるまい。他に誰か想い人がいるのかい?」

ルイズ「いえ、そんなことは!」


嘘だ。
召喚されてからいつだって私の真ん中にいるのは『アイツ』。
好きって気持ちだけで考えたら、この結婚なんて絶対にしない。

でも、もう私だけの結婚じゃない。
家同士のため。
アルビオンの皆を元気づけるため。

そして、ゴジョーの負担を減らすため。

そんな風に自分を無理やり納得させる。


ウェールズ「フフ、では決まりだね。明日の正午、結婚式を行う。そんなに盛大に飾り付けることは出来ないが……精一杯君たちを祝おう!」

ルイズ「はい、ありがとうございます……」

ウェールズ「では、もう部屋に戻って準備し始めるといい」



424:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 06:30:59.26 ID:7xre2i6w0

ルイズ「失礼いたしました……」


廊下に出て、自分の部屋に戻るとベッドに転がり込み、大きなため息をつく。


なんだか酷く疲れた。
それはウェールズ様とお話ししたせいではないと思う。

色んなことが色んな風に絡みあって、グシャグシャな糸みたいになってる。
もう自分では解けなくなっている。
そしてそれを必死で頭の中で解き明かそうとしているせいだ。

いつから私はこんなに他人任せにしてしまうようになったんだろう。

分かってる。
ゴジョーが来てから。

アイツが私のために何でもしてくれているから、私もどんどん甘えてしまう。

これじゃ、駄目だ。




空にある、薄らぼんやりとした雲の割れ目から一つに重なった月が現れた。

なんだかゴジョーの顔みたいで、少し泣けた。



427:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 07:00:18.15 ID:7xre2i6w0

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キュルケ「ちょっとここ……ホントにアルビオン?」

フネから降りてすぐにキュルケがそんな言葉を零す。
桟橋から見下ろす風景は、まるで荒廃したゴーストタウン。
行き来する人も疎らだ。

至る所にレコン・キスタの旗が立てられており、既に王家が権力を発揮していないのは一目瞭然。
そんな惨状をみてギーシュが頭を抱える。

ギーシュ「ああ、だから僕はこんなところにヴェルダンデを連れて来たくはなかったんだ!」


足元で鼻をひくつかせるモグラ、もといジャイアント・モールのヴェルダンデは主人の思いを知ってか知らずか。

キュルケ「何言ってんのよ、勝手についてきたのはそいつでしょ? それにちゃんと働かなかったらフレイムに丸焼きにしてもらうんだからね」

ギーシュ「ななな、なんてこと言うんだ! 冗談でもそんな恐ろしいことを言う、君が恐ろしい!」

キュルケ「冗談じゃないわよ。はぁ……どう思うゴジョー?」

呆れたように自分に話を振るキュルケ。


五条「ヒヒ……どうもこうも……ヴァリエールさんの居場所を見つけるためにはヴェルダンデさんが……唯一の頼りですからねぇ」



429:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 07:15:30.44 ID:7xre2i6w0

宿屋での一致団結の後、フネの乗船許可にギリギリ間に合ったギーシュが連れてきたのは自分の使い魔だった。

手がかりがない以上、レコン・キスタに直接出くわすリスクを犯してでも、ルイズの居場所を突き止めなければならなかった。
しかしそれには余りに時間がかかりすぎる。
ルイズと一緒にいるであろう、仮面の男とワルド。
奴らがウェールズ皇太子の元に辿り着けば、暗殺するのは目に見えている。
さらに言えば、ルイズを手中に収めるのもほぼ同時だろう。

そんな中、白羽の矢を立てられたのがギーシュのヴェルダンデ。
何の気なしに言った「僕のヴェルダンデは一度かいだ匂いは忘れない」の一言で閃いた。


キュルケ「しっかし……ホントに大丈夫なんでしょうね?」

ギーシュ「フフン、任せてくれたまえ。僕のヴェルダンデは必ずやルイズの行き先を見つけるだろう」

タバサ「私は空から探してみる」


マイペースなタバサはシルフィードの背に乗り、辺りを見回り始める。


ギーシュ「さあヴェルダンデ! 君の能力で、ルイズの居場所を突き止めるんだっ!!」

芝居がかった動きで使い魔に命令するギーシュ。
しかし、ヴェルダンデは依然その辺の木や草の匂いを嗅ぐだけだ。



430:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 07:28:18.71 ID:7xre2i6w0

キュルケ「……そいえばゴジョー、あんた背中の傷は? 少しは良くなった?」

完全にギーシュを無視するように、話しかけてくる。

五条「クックックッ……! お二人がくれた、秘薬のおかげか……傷はもう塞がりましたよ……!」

キュルケ「え!? ちょ、背中みせてごらんなさい!」

自分のウェアを捲るキュルケ。

五条「グフフ……どうでしょう?」

キュルケ「本当に塞がってる……まだ傷跡はでっかく残ってるけど、昨日みたいな爛れたところは無くなってるわ」

五条「それはよかった……!」

キュルケ「よかったって、普通あの傷二日やそこらで治るもんじゃないわよ!? どうなってんのアンタの身体!」


思い返せば、元の世界にいた頃……
まだ小学生の頃だ。
試合途中に相手の強烈なシュートを肋骨に直接食らい、そのまま負傷退場。
あのときも病院で見てもらったが、次の日には骨がくっつきかけていたなんてことがあった。

サッカープレイヤーたる者、回復力は並以上であって然るべきだろう。
それに今回は秘薬を使ってもらったのだ。
火傷くらい治ってもおかしくない。



431:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 07:40:39.09 ID:7xre2i6w0

五条「ヒヒヒ……! オレはサッカープレイヤーですからねぇ……!」

キュルケ「理由になってないわよ……」

もう諦めたように眉間を押さえ、苦笑いするキュルケ。
その後ろではまだギーシュがヴェルダンデに命令している。

ギーシュ「どうしたんだヴェルダンデ! いつものように指輪の匂いを元に探すんだ!」

しかしいくら命令しようとも使い魔はフンスフンスと息を荒くするばかりで、どこにも進もうとしない。

キュルケ「ちょっとぉ? あれっだけ自信満々に言っていたからわざわざ連れてきたってのに、なかなか見つからないようですねぇ?」

ギーシュ「そ、そんなわけはないんだ! 僕が前にモンモランシーから貰った指輪をなくしたときも、僕のヴェルダンデは見つけてきてくれたんだから!」



五条「ヒヒヒ……グラモンさん……!」

ギーシュ「ゴジョーさんまで! そんな、僕を信じてくれないのかい!?」

五条「違いますよ……グフフ……! 少し思ったことがありましてね……!」

ギーシュ「え?」


その言葉を聞き、ヴェルダンデに振る杖を止めるギーシュ。



432:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 07:50:11.47 ID:7xre2i6w0

五条「なに……単純なことですよ……!」

ギーシュ「教えてくれゴジョーさん!」

必死に自分に懇願するギーシュ。
本当にヴェルダンデが丸焼きにされそうで、気が気じゃないんだろう。


五条「『飛んで』いったんじゃないでしょうか……!? 『純粋』に……!」


ギーシュ「……え」

キュルケ「あ、そりゃそうか。ロリコン子爵、グリフォンに乗ってたわね」

五条「見たところ……グラモンさんの使い魔は……土の上にある匂いを嗅ぎ分けて目標を探しているんじゃないでしょうか……?」

ギーシュ「あ、ああ。その通りだよ」

五条「それではいくら探しても見つかりませんよ……クックックッ! それに向こうとしても、さっさと目的を果たしたいはず……ノロノロと徒歩で行くとは……思えませんねぇ」

ギーシュ「じゃあ……ヴェルダンデは」


絶望した顔で膝を地面につかせる。


キュルケ「無駄足もいいとこね。ダメダメだわ」



433:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 08:02:57.68 ID:7xre2i6w0

ギーシュ「そんな……じゃあ僕のヴェルダンデは何のために……!」

キュルケ「はぁ……そんなとこだろうと思ったわ。これじゃやっぱり手がかりナシじゃないの」

タバサ「ふりだし」

シルフィードから降りてきたタバサが残念そうに呟く。



五条「ヒヒ…! ところがそうでもない……!」

キュルケ「……どういうこと? なにかもう見つけたの!?」

ギーシュ「いくらゴジョーさんとはいえ、ノーヒントでルイズの居場所を見つけるのは……」


五条「いえ……どうやらヒントをくれたのは……ヴァリエールさんとコレのようですよ……!」


三人に向けて左足のソックスを下げるみせる。
そこにはぼんやりと光をみせるガンダールヴのルーン。




五条「ルーンを通して……見せてくれたんですよ……! 自分の居場所を……!」



455:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 21:49:19.29 ID:7xre2i6w0

キュルケ「ルーンが……光ってる」

ギーシュ「今までルイズが側にいる時以外はルーンは光らなかったはずじゃ!」

五条「ええ……! 主人が近くにいなければルーンは発動しないはず……!」

タバサ「見えたの?」

タバサが自分のルーンを触りながら、尋ねる。


五条「一瞬ですが、見えました……! 彼女のいる場所が……!」

キュルケ「どこなの! どこにルイズはいるの!?」

五条「森の教会……ヴァリエールさんはウェディングドレスを着ていた……!」



ウェディングドレス……
もう婚礼の儀は始まろうとしている。
鏡に映った主人の顔は、祝い事の前とは思えぬほど暗く沈んでいた。
その姿が幾度も頭の中に繰り返される。



457:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 21:56:33.20 ID:7xre2i6w0


ギーシュ「なんだって? じゃあもうワルドとの結婚が……!」

五条「時間は……余り残されていないかもしれません」

キュルケ「でも森の教会って……それだけじゃまだルイズの居場所は!」


声を大きくし、自分の肩を揺さぶるキュルケ。


五条「ヒヒヒ……! ……しかしこのオレの『よく見える目』は主人の行方を逃しはしない……!」


シルフィードの頭を撫で、心の中で頼む。
もう少しだけ、自分の力になってくれと。


五条「この桟橋から南東に四十リーグ……城下町からも外れたところに大きな森が見えるんです」

拓けた見晴らしの良い、この桟橋から遠くに指を向ける。
肉眼ではとても捉えることは出来ないが、自分の『スーパースキャン』ならば大体の距離も分かる。



459:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 22:05:10.72 ID:7xre2i6w0

五条「その方向に……ヴァリエールさんを『感じ』ます」


タバサがそちらを向き、しばし考える。


タバサ「シルフィードの全速力のスピードで……おおよそ二十分」

キュルケ「呑気してる場合じゃないわ! 乗るわよ、二人とも!」

ギーシュ「ちょ、ちょっと待ってくれ! 僕のヴェルダンデはどうなるんだ! こんなところに置いて行く気かい!?」


ヴェルダンデに寄り添い、必死でキュルケを引き止めるギーシュ。


キュルケ「そんな事言ってる場合じゃないでしょ! ルイズが結婚しちゃったら虚無の力はレコン・キスタのものになるのよ!」

ギーシュの頬を両手でつねる。
口元が歪み、上手く喋れない。


ギーシュ「ひょ、ひょれわひょうらが……」



460:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 22:14:14.97 ID:7xre2i6w0

キュルケ「それにルイズのことだから、自分一人で国務もこなそうとするわ……」

声色を少し落とし、ギーシュの顔から手を放す。

ギーシュ「じゃあそこにウェールズ皇太子もいるってことかい!?」

五条「グフフ……恐らく……! ワルドと襲撃者はヴァリエールさんを泳がせて、皇太子の居場所を引き出す気だったんでしょう……! 
ヴァリエールさんは虚無の力を持つだけでなく、皇太子の居場所をも知っている……!」

ギーシュ「そんな……!」

五条「向こうからすれば……! これほど好都合な存在はいないでしょう……!」

こめかみに手を当て、顔を伏せるギーシュ。



腹の中が煮えたぎるのを感じる。
主人の思いを踏みにじり、それだけでなく私欲のために利用しようとする、そのやり方に。




461:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 22:20:46.73 ID:7xre2i6w0



タバサ「私たちから離すことで、戦力を削ぐだけでなく虚無と仇の命を奪いに行く気」

五条「クックックッ……! そのとおりです……!」

タバサ「時間がない、皆乗って」

主人が乗ったことを確認するとキューイと鳴き声をあげ、翼を広げるシルフィード。

キュルケ「分かったわタバサ! ほら、ギーシュ! ゴチャゴチャ言ってる時間はないのよ!」

首根っこを引っ張り、無理やりギーシュをシルフィードの背中に乗せるキュルケ。
ヴェルダンデは寂しそうに土の中に顔を隠す。


五条「……」

二歩近づき、ヴェルダンデの鼻に手を当てる。

五条「ヴェルダンデさん……! ここから先、森についたときあなたの力が必要です……手伝っていただけますか……?」



その声が届いたかどうかは分からない。
しかし嬉しそうに自分に擦り寄って来る様子は、快諾とみて間違いないだろう。



462:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 22:28:39.17 ID:7xre2i6w0

ギーシュ「ご、ゴジョーさん!?」

キュルケ「ちょっと! ゴジョーそいつ乗せる気!?」

五条「クックックッ……! わけは後で話します……! ひとまず、ヴェルダンデさんも連れて行ってあげてください……!」

タバサ「わかった」



シルフィードは自分が背に飛び乗ると、高く舞い上がりヴェルダンデを前足に掴む。
目下三十メイルにある高台の船乗り場が一気に小さく見える。

そしてシルフィードは主人の差した方向へ、凄まじいほどのスピードで突き進む。
それを目の端で捉えながらも、遙か下に見える荒廃した街並みが過ぎ去っていくのを早送りで見ている。

話に聞くのと実際に見るのとでは、重みが違った。
船着場の周りだけではなく、もっとも王家が力を発揮するはずの城下町もこの有様。
レコン・キスタがトリステインに攻めて来るのは時間の問題ではない。
もうこの荒れたアルビオンを征服されれば、すぐにでも反逆者たちは武器を伴って大勢来る。

それは変えられない事実となっているのだ。



464:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2010/12 /12(日) 22:34:51.16 ID:7xre2i6w0

キュルケ「ちょ、ちょっとタバサっ! 速すぎるわよ!」

タバサ「大丈夫。まだギリギリ誰も落ちないスピード」

キュルケ「ギリギリって……! 風が強すぎて息が上手くできないわよ!」


この雲をも切り裂いていくスピードの中でタバサは涼しい顔でしゃべっている。
しかし、キュルケとギーシュは息も絶え絶え、しがみつくので精一杯のようだ。
タバサはふう、と息を吐き小さな声でスペルを唱える。


タバサ「エア・シールド」

空気の膜が自分たちを包みこむ。
途端にシルフィードの背の上は風が止み、力尽きたように二人は倒れこむ。

ギーシュ「ふう……死ぬとこだった」

キュルケ「スピード出しすぎ! ていうか五条はなんで大丈夫……聞くまでもないわね」

五条「クックックッ……!」



465:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2010/12 /12(日) 22:42:19.33 ID:7xre2i6w0

落ち着いたところで、横のギーシュが尋ねる。


ギーシュ「ゴジョーさん……どうしてヴェルダンデを連れてきてくれたんだい……?」

キュルケ「そ、そうよ。ただでさえ四人乗ってシルフィードのスピードが落ちるのにヴェルダンデまで乗っけたらもっと遅くなるわよ!」

五条「ヒヒヒ……! ちゃんと理由があります……!」

ギーシュ「理由?」


オウム返しで自分を見るギーシュ。


五条「あの大きな森……空からでは探せない。森の入口からはヴァリエールさん達も徒歩で行ったことでしょう……!」

キュルケ「じゃあそこからヴェルダンデに匂いを追尾してもらって!」

五条「ええ……! 闇雲に探すよりは、その方が早いと思いましてね……!」



466:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2010/12 /12(日) 22:50:22.05 ID:7xre2i6w0

ギーシュ「さすがゴジョーさん……! ああ、僕のヴェルダンデに活躍の場を!」


ギーシュは目を潤ませ、喜ぶ。


五条「ヒヒヒ、頼みましたよ……! グラモンさん……!」

キュルケ「ホントに大丈夫かしら……?」

ギーシュ「任せてくれたまえ! 匂いがあるところからならば、必ずや探し出してみせる!」



やれやれとこちらを一瞥するキュルケ。

下を見るともう栄えていたであろう城下町は通り過ぎ、焼き払われた小さな家屋が並ぶのみだ。
まだしばし時間はかかる……
祈るような気持ちで、主人の顔を思い浮かべる。







五条(ヴァリエールさん……どうか……ご無事で……!)

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467:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2010/12 /12(日) 22:59:59.56 ID:7xre2i6w0

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教会の鐘が鳴る。
式が始まってしまった。

私の後ろには十数人のアルビオンの兵士たちが、真剣なまなざしを向けている。
でもその顔は私に会った敵意は感じられなく、本当に幸せを願うような表情だ。

目の前にいるウェールズ様。
彼もまた、静かに微笑みを浮かべ私たち二人の幸せを願っている。
まるで自分の結婚式を執り行っているかのようで、私は胸が苦しくなる。



昨日一日、ずっと考え続けた。
本当にこれでいいのか。
自分の気持ちはこれを望んでいるのだろうか、と。

でも……どうしてもこの結婚式をやめて欲しいとは言えなかった。

断った時点でワルド様とはもう以前のように、話せなくなる。
兵士たちも落胆するだろうし、ウェールズ様もお心落とししてしまうだろう。

そんな事は、私には出来なかった。



469:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2010/12 /12(日) 23:06:48.59 ID:7xre2i6w0

ルイズ(ゴジョー……)

私は自分の使い魔に頼りすぎている。
年下の使い魔に。


これからはこの人と一緒に生きて行くんだろうか?
顔を上げ、隣のワルド様を見上げる。

意思の強そうな目。
端正な顔立ち。
大きな肩。

ふ、と自分の使い魔の顔が重なる。
目を擦るとそこには当然ゴジョーはいない。

ワルド「どうしたんだい……?」

ルイズ「いえ……」

ウェールズ「では始めてもよろしいかな?」

その言葉に、僅かに首を縦に振る。



472:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12 /12(日) 23:14:15.78 ID:7xre2i6w0

ウェールズ「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド」

ワルド「はい」

ウェールズ「汝は始祖ブリミルの名において、この者を敬い、愛し、そして妻にすることを誓いますか」

ワルド「誓います」

ニッコリと笑うウェールズ様。

ウェールズ「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」

ルイズ「は……い」

ウェールズ「汝はこの者を敬い、愛し、そして夫とすることを誓いますか」


夫。
これからはワルド様と一生生きていくの?
それでいいの?

自問自答がグルグルと駆け巡り頭が真っ白になる。

声が出ない。
息が上手くできない。
足に力が入らない。



473:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12 /12(日) 23:21:26.04 ID:7xre2i6w0

ルイズ(助けて……ゴジョー!!)

ウェールズ「新婦?」

ワルド「申し訳ございません。彼女は少々緊張しているようで……」

ウェールズ「フフ、さもあろう」


そっと、私の耳元で囁くワルド様。

ワルド「ゴジョーくんのためだよ……」

ルイズ「ゴジョーの……ため……」

眼鏡を掛けた、笑顔が脳裏に焼きつく。

ウェールズ「今一度問おう。汝は始祖ブリミルの名において、この者を敬い、愛し、そして夫とすることを誓いますか」

ルイズ「ち……ちかい……」

ワルド「ルイズ……」

これを言えば……
もう、ゴジョーに辛い思いはさせない……
これが……皆の幸せになるはず……

「誓い……ま……」
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475:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12 /12(日) 23:23:21.05 ID:7xre2i6w0

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ギーシュ「こ……ここが……その教会……?」


生い茂る森の奥深く、ヴェルダンデの先導のもと、走り続けてようやく発見した教会。
その頂上の鐘が辺りに鳴り響いている。


キュルケ「ちょっと! もう式が始まってるんじゃないの!?」


慌てたように自分の腕を掴み、扉の前まで連れてくるキュルケ。
きつく閉められたドアは何人たりとも進ませようとはしない。


ギーシュ「くそ! 開かないぞ!」

キュルケ「どいて、あたしのファイアー・ボールでこじ開けるわ!」

ギーシュ「そんな無茶な!」

火のスペルを唱え出すキュルケ。
魔力が杖に集中していく。

キュルケ「……ファイアー・ボール!」


杖の先から放たれた火球は燃え盛りながら激突するが、あざ笑うかのように扉はそれを弾く。



485:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 23:36:23.36 ID:7xre2i6w0

キュルケ「なんで……!」

タバサ「どいて……私の魔法でこじ開ける」


タバサがエア・ニードルを唱えようとしたその時。


「無駄さ! テメェら程度の魔法じゃその扉は開かねぇぜ!」


艶やかな緑の髪。
銀縁の眼鏡。
そしてかつて見た、ゴーレムの肩に乗る姿。
後ろから現れたのは、牢の中にいるはずの盗賊だった。


五条「土くれの……フーケ……!」

フーケ「よう、ゴジョー……! また会ったな」

キュルケ「なんであんたが此処に!」

フーケ「なんでぇ? そんなもん決まってるじゃねえかよ……! 脱獄したんだよ!」

五条「クックックッ! それでわざわざここまでですか! 楽じゃないですねぇ……盗賊も」



487:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 23:45:55.15 ID:7xre2i6w0

不敵な笑みを浮かべ、こちらに杖を向けるフーケ。

フーケ「別にあたしだってアルビオンくんだりまで来る気はなかったがねぇ。あたしを脱獄させた雇い主がついて来いって言うもんだからね」

五条「……」

フーケ「それにあたしは言ったんだ。あんたのライトニング・クラウドをまともに受けて、ここまで来るわけ無いだろって」

ギーシュ「お前じゃないのか! ゴジョーさんを撃ったのは!」

フーケ「おや色男、テメェもいたのかい。つくづく仲良しだねえ……!」


小馬鹿にする様にギーシュを笑うフーケ。


ギーシュ「質問に答えろ!」

憤慨し、手を振るうギーシュ。

フーケ「敵に聞くテメェも馬鹿だが、その馬鹿さ加減に免じて教えてやるよ。ありゃあたしには使えない魔法さ」

五条(やはり……!)

フーケ「だがまあ……ちゃあんと生きていてくれたんだ……!」


ゴーレムの腕を高く振り上げる盗賊。



490:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /12(日) 23:59:36.90 ID:7xre2i6w0

フーケ「美味しいところは頂いていくぜ!!」

他のものには目もくれず、自分めがけて殴りつけるゴーレム。

ズウンと地鳴りのような衝撃が閑静な森の中に響き渡る。


ギーシュ「ゴジョーさん!」

叫ぶギーシュ。

フーケ「あっけねえな! 病み上がりのテメェにゃ重すぎる攻撃だったかぁ!? ヒャッハッッハッハ!!」


癇に障る笑い声をあげるフーケ。
教会の階段にめり込む左足。
手応えを覚えた感触に勝利を確信しているようだ。

キュルケ「ゴジョー!」

ゆっくりとあげられるゴーレムの堅い腕。

フーケ「ハッハッッハッハ……!?」



急に止む笑い声。
フーケの目の前にいるのは……



491:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 00:09:31.53 ID:gbEecaUc0


五条「クックックッ……! 学習しないヤツですね……!」

右足を天に向かって振り上げている自分の姿。
確かに効いたが……自分を屠るほどではない。


五条「言いませんでしたか……? オマエではオレを倒すことなど出来ない……!」



フーケ「ゴジョーォォォ!! テメェは……!」

今度は大きな右足で踏みつけようとするゴーレム。
それをワンステップで回避しようとしたとき、身体が浮く感触。
少し離れたところからタバサが自分をレビテーションで呼び寄せる。

タバサ「ヤツにかまっている時間はないはず」

五条「ええ……しかし、フーケを倒さなければ中には……!」

タバサ「乗って」

有無を言わさず、自分をシルフィードの上に乗せるタバサ。



フーケ「逃さねぇよ! クソッタレが!!」



493:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 00:20:23.85 ID:gbEecaUc0

青竜を掴みかかろうと、掌を広げ伸ばしてくるゴーレム。
それを間一髪回避し、虚空に駆け上がるシルフィード。

フーケ「ちぃ! 逃げやがって!」

教会の屋根、十数メートル上に停止する。
ゴーレムの攻撃はここには届かない。


五条「タバサさん……! 下ろしてください……!」

タバサ「だめ」

五条「何故……! グラモンさんとツェルプストーさんでは……あのゴーレムには……!」

地上ではフーケが杖を構え、二人に向けて詠唱を開始している。


フーケ「いいぜ! ゴジョー、テメェが逃げるんならあたしはこの二人を殺らせてもらう!」

五条「!」

フーケ「アース・ハンド!」


地面から触手のような土の手が現れ、キュルケとギーシュの足元を固定する。


フーケ「これで逃げられねぇよ!」



494:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 00:32:09.80 ID:gbEecaUc0

五条「タバサさん……!」

タバサ「大丈夫」

タバサの言葉とは裏腹に、ゴーレムの豪腕が二人に迫る。
しかも、あえて一撃では潰れないような遅さで。
恐らく傷ついていく仲間の姿を見せ、自分をおびき寄せようとするつもりだ。

フーケ「そぉぉぉら!!」



キュルケ「舐められたものね……! ウル・カーノ!」

ギーシュ「ワルキューレっ!」

杖先からでた炎が触手を焼ききり、同時にギーシュのワルキューレが、その槍で土の手を切り裂く。

二人は同じように、ゴーレムの拳を避けてみせた。
フーケは苦虫を噛み潰した顔で睨みつける。


フーケ「……!」



ギーシュ「ゴジョーさん! 君にはコイツと戦うよりも先にやらねばならないことがあるはずだ!」



496:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 00:42:30.26 ID:gbEecaUc0

五条「グラモンさん……」

ギーシュは上を向き、自分に言い切る。


ギーシュ「僕らを信じろ! コイツは僕らが足止めしてみせる!」

五条「……」

ギーシュ「君しか……! 君しかルイズを助け出せる男はいない!」

タバサは自分の肩をつかみ、飛び降りようとするのを制止する。


ギーシュ「行くんだ『ゴジョー』! ゼロの使い魔よ!」


シルフィードは、再び翼を羽ばたかせる。

仲間を信じれていなかったのは自分のほうだ。
彼らはいつだって……オレのことを信じていた。
その気持ちを無下にはできない。

五条「タバサさん……!」

タバサ「彼らはこのために貴方の側にいる。信じてあげて」



498:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 00:53:28.91 ID:gbEecaUc0

フーケ「行かせるかよぉっ! ブレッド!」

フーケが杖から土礫を生み出し、砲弾へと硬化し空へ放つ。
しかしそれは横から飛んできた炎に阻止される。

キュルケのファイアー・ボールだ。


キュルケ「カッコつけすぎ……! あんた一人じゃ足止めも出来ないでしょ」

キュルケは杖を右に左に振りながらそう言う。

ギーシュ「ハハハ……手厳しいな」


フーケ「餓鬼共が……!」

ゴーレムを震わせて、地面を殴りつけるフーケ。


キュルケ「行きなさいゴジョー! そしてさっさとバカルイズを助けて戻ってきなさい!」


大きく頷く。
彼らなら、きっと。
土くれ相手でも簡単にやられたりしない。



499:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 01:04:06.58 ID:gbEecaUc0

五条「タバサさん……教会の真上に飛んでください……!」

タバサ「どうするつもり?」

五条「屋根を破壊して、直接中に乗り込みます……! タバサさんはすぐに二人の元へ……!」

タバサ「貴方一人では心配……まだ怪我も」

静かに自分の手を握る青い魔法使い。
シルフィードは黙って教会の屋根の上で停止する。


五条「クックックッ……! オレを『信じなさい』……! 『純粋』に!」

判然と言い放ち、ボールを自分の傍らへと寄せる。

タバサ「……」

なにも言わぬ瞳。
その優しさを胸に、空へと飛び降りる。




五条「オレは……『ガンダールヴ』……! 盾は主人を残し死んだりはしない……!」


少し、タバサが微笑んだような気がした。



500:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 01:18:08.24 ID:gbEecaUc0

ハルケギニアの重力に引かれ、身体はどんどん屋根に落ちていく。
いくら脚力に自信があるとは言え、落下スピードを乗せても教会の屋根の破壊は難しい。
だからこそ、このボールを共に連れてきた。


自由落下し続けるボールに照準を合わせる。
このボレーだけは……外せない。

狙い澄まし、輝き出す左足を後ろに振り上げる。
躍動する筋肉の音が体の内側から聞こえてくる。
ルーンの力によって強化された左足がボールを正確に捉える。

五条「弾けろ……!」

光り輝く光線と螺旋状に回転しながら屋根へ切迫するボール。

天井の屋根を物ともせず、柱を破壊しながら教会に大穴を開ける。

中から聞こえてくるどよめき。



そして見える……
ウェディングドレスを身に纏った、我が主人の姿。



501:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 01:30:31.12 ID:gbEecaUc0

轟音を立てて教会内部の床へと着地する。
中にいる……恐らくアルビオンの兵士たちも状況が分からず、動きを止める。
振り向いているルイズも、同じだ。


五条「クックック…アーハッハッハッハ!! これはこれは、大変良いところに出くわしたようですね……!」

ウェールズ「……何をしている! そいつを捕らえろ!」

慌てて自分の周りを取り囲む、アルビオンの衛士達。
しかし一様に一定の距離を保ち近づこうとはしない。
見えているのかもしれない……怒りに赤く染まる自分のオーラが。

ルイズ「ま、待ってください! 彼は私の使い魔です!」

ウェールズ「なんだって?」

ルイズ「その……ラ・ロシェールで怪我をして……ここに来るはずがないんですが。どういう事ゴジョー!?」

自分を指差すルイズ。

ゴジョー「ヒヒヒ……まあ積もる話もありますが……! ヴァリエールさん、その隣りにいるレコン・キスタの手先から離れてください……!」

ルイズ「え……!? レコン・キスタ!?」

彼女の向いた先にはワルドしかいない。


五条「クックックッ……一杯食わされましたよ……隊長さん……!」



503:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 01:41:36.64 ID:gbEecaUc0

ワルド「……なんの事だね? 使い魔くん。それに余りにも無礼すぎないか、今は婚礼の儀の最中だぞ」

ルイズを自分のもとへと抱き寄せるワルド。

ルイズ「え……?」

未だ状況が掴めず自分とワルドの顔を交互に見る主人。

五条「……そのオマエの薄汚い手をヴァリエールさんから離せと言っているんですよ……! ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド……!」

ワルド「おやおや……自分の主人が結婚するからと言ってそんなに怒ることかい? 普通は祝福の言葉が先だろう」

五条「ええ……オマエがレコン・キスタでなく、皇太子の命を狙っていなければそうしたかもしれませんねぇ……!」

ウェールズ「レコン・キスタ!? どういう事だミスタ・ワルド!」

にわかに騒ぎ出すウェールズ。
ワルドはその声を聞き、やれやれと頭をふる。




ワルド「ここまでか……全く君はどうしてこうも、僕の計画の邪魔をする? ゴジョー・マサル」



506:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 01:52:19.93 ID:gbEecaUc0

五条「やっと、正体を現しましたか……!」

ワルド「ラ・ロシェールでの対決……あの時、君を葬ったつもりだったんだがね」

右手に持っていた帽子を深くかぶり、目元を隠した。
左手はゆっくりと腰のレイピアへと添える。

ルイズ「ワルド様……!?」

五条「クックックッ……! 思惑通り死にかけましたよ……! だが……地獄の釜は少しオレには温すぎましてね……!」


ワルドは髭に手を当て、話し始める。

ワルド「僕は君をルイズから引き離すために、幾つか手を打った。一つは決闘場での不意打ち」

ルイズ「……? え……?」

五条「どういう理屈か分かりませんが、アレはやはりオマエの仕業でしたか」

ワルド「もうひとつは……君が死んだとは思ったが念には念を、グリフォンで足跡を隠した」

五条「……」

ワルド「そして僕が一番疑問なのは……何故外にいるフーケを躱してここまでこれたのか、ということだよ」



508:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 02:07:40.86 ID:gbEecaUc0

五条「クックックッ……! 何故?」

ワルド「ああ、君がいなければ滞りなく、この間抜けなルイズは僕の物になり虚無の力を手に入れ」

ワルドは後ろの皇太子を指差す。

ワルド「崩壊寸前な、アルビオンの王子を簡単に殺せたというのに……!」

ニヤリと笑い、レイピアをウェールズに向ける。


ウェールズ「貴様やはりレコン・キスタ! 衛士、この者を殺せ!」

ワルド「ウィンド・ブレイク……!」

飛びかかったはずの兵士達は皆ワルドの魔法で壁に叩きつけられる。


ワルド「まちたまえ、まだ僕と彼の話は続いているだろう?」

ウェールズ「ぬけぬけとっ!」

杖を構え呪文を詠唱し始めるウェールズ。



五条「皇太子さん……そいつはオレの『獲物』です……!」



509:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 02:16:52.11 ID:gbEecaUc0

ウェールズ「な、何を言っているんだ!」

五条「それに……レコン・キスタの目的は皇太子、その命なんですよ……! ひとまず離れてください」

ウェールズ「しかし!」

五条「下がれ……!」

ウェールズ「……」


何も言わず、ワルドから距離を置くウェールズ。
そうだ、それでいい……


ワルド「フフ、相手は皇太子だぞ? 不敬罪で殺されてもおかしくない」


自分の中の二つのリミッターの内一つが外れる。
これまでは対峙した誰に対しても『殺意』を抱いたことは無かった。
戒めとしてずっと守ってきた……そのお陰で、自分はまだサッカープレイヤーでいられていた。

その枷が、今音を立てて壊れる。



五条「構いませんよ……!」



514:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 02:46:33.75 ID:gbEecaUc0

ルイズ「ご……じょー……?」

五条「『シグマゾーン』」

一瞬の世界。
それがこの瞬間だけは、無限に感じられる。
時間が止まっているわけじゃない。
脳内領域を『狂わせて』、無理やり身体を動かしている。
一秒よりももっともっと短いその世界に適応させるように。
光速に追いつけるように……

『止まっている』ワルドの腕からルイズを引き離し、抱き抱える。

ワルド「……!」

五条「返してもらいましたよ……オレの主人は……!」

ルイズ「え、あ、ゴジョー!」


距離を置き、抱きついてくるルイズをウェールズの傍にそっと下ろす。



ワルド(この僕が……視認できないだと……!? 今は決闘の時のように偏在は使っていない……!)



515:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 02:57:03.98 ID:gbEecaUc0

ワルドは戦慄している。
閃光と呼ばれる自分よりも段違いのスピードで動きを終える姿を見て。
しかしすぐに戦意を取り戻し、杖を構える。


ワルド「ゴジョー。君を殺すのは惜しい……」

五条「クックックッ……! 何のつもりです……?」

ワルド「僕は思い違いをしていた……本当に恐ろしいのは虚無の力を持つルイズなんかじゃない」

ルイズ「虚無……?」

ワルド「ああ、ルイズ。君はまだ目覚めてはいないが、この世界を支配できる力を持っている。伝説の虚無の力を」

ルイズ「私が虚無!? そんなわけ……」

ワルド「いや、これは疑いようのない事実だ。しかもそれだけじゃない」

五条「……」




ワルド「そこにいる君の使い魔は、ガンダールヴ……だが虚無以上の力を持っている。恐ろしい話だよ」



517:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 03:04:45.35 ID:gbEecaUc0

ワルド「どうだ? 僕と手を組んで世界を手に入れないか? そうすれば、いままでの様に煩わしい生活からは抜けられるぞ、ゴジョー」

自分を見据え、腰に手を当てるワルド。

五条「クックックッ……!」

ワルド「そうだ……! 笑いが止まらないだろう? 世界を自由に操れるんだ、こんなに楽しいことはない」

五条「……」

ワルド「僕の知力と君の能力が合わされば、それは簡単に叶う……」


こちらに近づき、手を差し伸べる。


ワルド「この手を取れば、契約は成立だ……! さあ、ゴジョー。どちらが正解か分かるだろう?」



519:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 03:14:38.80 ID:gbEecaUc0

五条「ヒヒヒ……!」

ゆっくりとその手に自分の手を近づけ……

ワルド「そうだ、それが正解だ」

ルイズ「ゴジョー……!? そんな……」


弾き返す。


五条「クックックッ…アーッハッハッハッハ!!」

ワルド「それが……答えか……!」

五条「オマエのような人間が世界を支配する……!? ジョークも程々にしておきなさい……!」

ワルド「貴様……」


睨みつけ喉元にレイピアを近づけるワルド。
その先を掴み力任せに捩じ曲げる。

ワルド「な!」


五条「ワルド……! オマエには今から……死ぬほど自分の身の程を教えてやりますよ……! 『狂いたく』なるほど『純粋に』……!」



520:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 03:27:39.44 ID:gbEecaUc0

一歩引き、自分との距離をとるワルド。

ワルド「残念だ……! しかし、我が手中に入らぬものならばこの手で引導を渡してやろう」

五条「……できるものなら」

ワルド「フン、ゴジョー。貴様、先日の決闘が僕の全力だと思っていないか」

五条「だとしたら……どうします?」

ワルド「残されているのは……死、だけだということだよ……!」

呪文の詠唱を始めるワルド。

ワルド「ユビキタス・デル・ウィンデ……」

刹那、ワルドの影がブレたと思ったとき。
少しずつ別れていく影。
徐々に形を整え、それはワルドの姿形と同じになっていく。


五条「これが……襲撃者の種明かし……ですか……」

四人になったワルドが同じ先の曲がった杖を自分に向ける。



521:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 03:41:39.30 ID:gbEecaUc0

ワルド「その通り」

ワルド「君を撃ったのはこの僕さ!」

ワルド「個にして全」

ワルド「全員が意思を持ち貴様を殺す!」


一人ずつ言葉を区切り、話すワルド達。


ルイズ「ゴジョー……私……」

傍らにいるルイズが話しかける。

五条「ヴァリエールさん……命令してください」

ルイズ「私に……そんな資格ないわ」

ルイズは目を見ない。



ルイズ「いつもアンタに頼ってばかりで……結局今も助けてもらった。助けてもらわなければ……知らずにレコン・キスタに協力していたかもしれない」

ルイズ「主人失格ね……私」



523:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :sage:2010/12 /13(月) 04:17:11.30 ID:gbEecaUc0

ちょっと……ここからどう書けばいいか本当に分かんなくなってます……

未完にしたくないので、お願いですから待ってください……



524:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2010/12 /13(月) 04:25:00.78 ID:6KLolJXZ0
頑張れよー
気長に待ってるぜ




525:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12 /13(月) 04:25:12.23 ID:18qLChcaO
支援。

じっくり練って書いてくれると嬉しい。




529:睡眠不足 ◆Uq2i1ARauU :2010/12 /13(月) 06:08:47.46 ID:gbEecaUc0
すみません、一旦考えを煮詰めてみます

今日中に必ず来るので、どうかお待ち頂けたら幸いです


落ちたときは、そのとき考えます……
ぶつぶつ途切れがちな投下で本当にすみませんでした!



530:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12 /13(月) 06:19:20.23 ID:6Xo6UX2RO
そういう意志を持って書く奴は嫌いじゃないわ!



528:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2010/12 /13(月) 05:48:11.00 ID:tHl2BkJjO
五条氏とルイズ嬢は1を待っていますよ。





次→五条「貴女が殺せと言うなら神だって殺しますよ」その5



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コメント一覧
1561. 名前 : 名無し@SS好き◆/b5XDoic 投稿日 : 2010/12/17(金) 14:50 ▼このコメントに返信する
ルイズっていうとくんかくんかのイメージしかなかったけど
五条さんのおかげでかわいさに目覚めた
1562. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/17(金) 19:02 ▼このコメントに返信する
五条さんのせいで、※1と同様ルイズ=クンカクンカだった俺も、ちょっと読んでみた

……五条さんチート杉だろ、強過ぎてニューゲームって感じか
1563. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/17(金) 19:23 ▼このコメントに返信する
まぁ五条さんだし
1564. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/17(金) 20:15 ▼このコメントに返信する
禁書目録SS……だと……!?
1567. 名前 : ホライゾン@管理人◆oAjApoT6 投稿日 : 2010/12/17(金) 20:23 ▼このコメントに返信する
※1564
なん……だと……!?
カテゴリー修正しておきました。最近この手のミスが多くて申し訳ねえですヽ|-∀-;|ゞ
1607. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2010/12/19(日) 15:08 ▼このコメントに返信する
最近五条△しか言ってない気がする
でも五条さんだし仕方ない
1968. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/01/02(日) 06:33 ▼このコメントに返信する
>空にある、薄らぼんやりとした雲の割れ目から一つに重なった月が現れた。
>
>なんだかゴジョーの顔みたいで、少し泣けた。


不覚にもきゅんとする
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