岡部「ギガロマニアックス?」

2013-04-26 (金) 18:01  シュタインズゲートSS   0コメント  
1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:03:17.87 ID:1xhGCn/90

俺は賭けに勝った。

二人のうち、どちらか一方を見殺しにするという選択を放棄し、賭けに出た。
結果、二人は今も生きている。
その代償は──思い出。

ふと、携帯に登録したアドレスの一覧に目を通してみる。
が、そこにかつてあったものは、ない。
なかったことになっている。

再び携帯を操作し、メモ欄を起動する。
表示された六つの数字を見て、ため息をついた。



          『275349』



俺は賭けに勝った。

──はずだった。



Chapter 1 『安息のフィーネ』


eval.gifSTEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム (数量限定版)





4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:06:17.73 ID:1xhGCn/90

2010年 8月20日



「───ま」

「──うま!」

「きょうま!」

フェイリス「凶真!」

岡部「ん? お? おお?」

フェイリス「次は凶真の番だニャン!」

岡部「あ、あぁ……そうだった、悪い」

フェイリス「全く! 携帯を見ながらフェイリスの相手ニャンて、失礼しちゃうのニャ」

岡部「……」

フェイリス「しかもため息までついて……まるで恋する乙女だったのニャ!」

岡部「…………」

フェイリス「その相手は目の前にいるはずニャのにぃ~!」



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:09:05.59 ID:1xhGCn/90

フェイリス「はっ、まさかまたマユシィのことを考えて──」

岡部「よ、よし! せっかくだから俺はターミナルカード、ラインブーストを使うぜ!」

フェイリス「……ニャフフ、甘いのニャーン」

フェイリス「ラインブーストを乗せたそのカードはぁ~……ウィルスカードなのニャ!」

岡部「うぐっ!」

フェイリス「で、こっちがリンクカードニャ。はい、フェイリスの勝ちニャ」

岡部「ぐぬぬっ……」

フェイリス「携帯を弄りながら対戦できるほど、雷ネットは甘くはないのニャ」

フェイリス「大体、以前の凶真ならともかく、今の凶真はよくて中級者と言ったところなのニャ」

フェイリス「この前の雷ネットABグラチャンで優勝できたのは、フェイリスのおかげということを忘れたのかニャ?」

岡部「はい、すいませんでした……。フェイリスのおかげです……」

フェイリス「……」

フェイリス「でもでもぉ~、凶真がそばにいてくれたからこそ優勝できたのニャ」

岡部「お、おい……?」



11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:12:18.81 ID:1xhGCn/90

フェイリス「凶真ぁ……」

岡部「こらよせっ! と、隣の部屋に黒木さんがいるだろうっ」

フェイリス「……また、ルーンに秘められし失われた記憶を追い求めていたのかニャ……?」

岡部「あ、あぁ……どうやら機関はどうあっても俺に目覚めてほしくはないらしい」

フェイリス「大丈夫……凶真が覚醒しなくてもフェイリスは……フェイリスだけはずっと凶真のそばにいるのニャ……」

岡部「お、おいフェイ──」

 ブーブーブー

フェイリス「あ……」

岡部「む……」

フェイリス「フニャァ、フェイリスの携帯だニャ。ちょっとごめんニャ」

 ピッ

フェイリス「どうしたのかニャ?」



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:14:27.14 ID:1xhGCn/90

フェイリス「うん、うん…………わかったニャ」

 ピッ

フェイリス「凶真ぁ……ごめんニャ、メイクイーンが窮地に立たされてるみたいなのニャ」

岡部「メイクイーンが……?」

フェイリス「魔大戦で傷ついたご主人様たちが、メイクイーンに押し寄せてきているのニャ」

フェイリス「フェイリスはその手助け──いや、前線に立ってご主人様たちを癒さなければいけないのニャー!」

岡部「くっ……魔大戦……鍛えぬかれた歴戦の戦士たちですら通用しないというのかっ……!」

フェイリス「というわけでフェイリスは混沌渦巻く戦地へと赴かなきゃだめなのニャ」

岡部「心惜しいが、従わねばならんようだな……」

フェイリス「ごめんニャ……」

フェイリス「それじゃあ、マユシィたちを助けに行ってくるニャン!」

岡部(まゆりを……助ける……か)

フェイリス「凶真? どうしたニャ?」



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:16:45.71 ID:1xhGCn/90

岡部(このままフェイリスの家でゆったりしているのも悪くないが……)

岡部「俺も一緒に行こう」

フェイリス「凶真はそんニャにもフェイリスと一緒にいたいのかニャ?」

岡部「そ、そうは言っておらんっ」

フェイリス「またまたー、照れなくてもいいのニャ」

岡部「ええい、さっさと行くぞ!」

フェイリス「ニャフフ、凶真は甘えん坊で照れ屋さんなのニャ」



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:19:54.62 ID:1xhGCn/90

~メイクイーン~



まゆり「お帰りニャさいませー、ご主人様~」

岡部(まゆり……)

まゆり「あー、ほーおーいんさんだぁー、こんにちニャンニャン」

岡部「あ、あぁ」

まゆり「フェリスちゃんと一緒に来店なんて、ジェラシィメラメラバーニングだよぉ☆」

フェイリス「ニャフフ、親友と言えど手出し禁止ニャ」

岡部「しかし、混んでるな……」

フェイリス「だからそう言ったニャ」

岡部「あ、そ、そうだったな……」

フェイリス「それじゃあフェイリスはお仕事に入るから、凶真はゆっくりしていってニャ」

 ザワザワ

岡部(やはり混みすぎて落ち着かんな。まゆりの顔も見れたし、コーヒー1杯飲んだら帰ろう)

岡部(……あの場所にも足を運んでみるか)



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:22:22.37 ID:1xhGCn/90

岡部(もうすぐ日暮れ時だというのに暑いな……)

岡部(こうして歩いているだけで汗が滴り落ちてくる)

岡部「ん?」

???「うー……!」

岡部(なんだあいつ……あんなに唸って……)

岡部(だが……どこかで見たような…………だめだ、思い出せん)

???「梨深も七海もどこいっちゃったんだよぉぉっ……」



20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:25:51.76 ID:1xhGCn/90

~ブラウン管工房前~



岡部「本当に変わらないな、この場所も」


それは慣れ親しんだ風景。
幾度となく目にした風景。

二階へ上がればラボがあり──
みんながいて、まゆりがいて。
──俺の居場所があった。

が、そこにあるはずのものは、ない。
なかったことになっている。

数日前、俺はフェイリスのDメールを打ち消そうとした。

しかし、俺にはできなかった。

まゆりの命を救うためとはいえ、フェイリスの大切な人を奪うことなんてできなかった。
その責任を負うことなんてできなかった。
俺は神になんてなれなかったんだ。



23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:29:36.19 ID:1xhGCn/90

だから俺は賭けに出た。
賭けたのだ──まゆりも救い、フェイリスのパパさんも死なない可能性に。

結果、二人の命が救われる世界線にたどり着いたものの……。

俺とラボメンとの関わりは、フェイリスを除き、全てなくなっていた。
俺とラボメンとの思い出は、フェイリスを含め、全て犠牲になった。

──まゆりとの思い出すら。

だがそれでいい。
消えた思い出は思い出としてしまい込んで──
これから、ここで生きていくために、俺はこの世界線の岡部倫太郎と同化する──

そう決めたんだ。



岡部(しかし……こうして思い出にすがりに来ているわけだ)

岡部(これでは想いを犠牲にしてしまった鈴羽に怒られるかもな……)



24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:33:55.96 ID:1xhGCn/90

岡部(……相変わらずラボの有無以外はあの時のまま)

岡部(今にも鈴羽が店から出てきそうな光景──)

鈴羽「ふんふーん」

岡部(そう、こんな風に──)

鈴羽「今日はどうしようかなー」

岡部(参ったな。思い出にすがるあまり、妄想が溢れだして──)

岡部「ん?」

鈴羽「あれ、お客さん?」

岡部「鈴羽ぁっ!?」

鈴羽「えっ!? な、なんであたしの名前……」

岡部「お、おまっ……なんで、ここにっ……この世界線にっ……」



25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:37:01.16 ID:1xhGCn/90

岡部(鈴羽がいる、間違いなく)

鈴羽「おーい」

岡部(す ず は が い る)

岡部(いや待て! 何もおかしいことはない)

岡部(俺は8月14日、α世界線からの跳躍後、ダイバージェンスメーターを確認しに天王寺家へと向かった)

岡部(そこには確かにダイバージェンスメーターが存在した)

岡部(それが示すことは……)

岡部(未来の俺が、タイムトラベラーにダイバージェンスメーターを託した)

岡部(そしてタイムトラベラーである鈴羽は未来を……世界線を変えるためにこの時代へとやってきた。ダイバージェンスメーターが何よりの証拠)

岡部(ぐうぅっ、迂闊だった! もっと注意を払うべきだった! なぜこの可能性に気づかなかったのだっ)

鈴羽「おーいってば」



26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:40:31.30 ID:1xhGCn/90

岡部「きっ……きさまぁっ! 未来から来たのだろうっ!? 何しに来た!」

鈴羽「ちょ、なんであたしがタイムトラベラーだって知ってんのぉ!?」

岡部「この期に及んでまた未来を変えろ、などと言うのではあるまいな!?」

鈴羽「もしかして……君が岡部倫太郎……?」

岡部「おっ、俺はもうっ……! 受け入れたんだっ!」

岡部「大切な思い出を犠牲にしてまでたどり着いたこの世界線を受け入れ──」

鈴羽「……やっぱ君がそうなんだね……よかった、やっと接触できた」

岡部「たのに…………」



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:43:07.25 ID:1xhGCn/90

鈴羽「岡部倫太郎──」


やめろ。


鈴羽「力を貸して──」


聞きたくない。


鈴羽「未来を──」


それ以上言わないでくれ。


鈴羽「変えて欲しい」



Chapter 1 『安息のフィーネ』END



29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:47:10.51 ID:1xhGCn/90

Chapter 2 『虚像妄想のリアル』



気づけば俺は、その場から逃げるように走り出していた。

ふざけるなよ。
ここ数日、俺がどんな気持ちでいたと思っている。

頭では受け入れたつもりでも、心のなかを、空虚さが占めていることに気づいて。
情けないけれど、とてもさみしくて、心細くて。

でも、やっと受け入れられるようになってきたんだ。
それなのに……。
鈴羽はまた俺に、未来を変えろなどと言ってくる。

罰なのか? 不用意に過去改変をした罰なのか?
鈴羽の想いを犠牲にした罰なのか?

もう……引っかき回すのはやめてくれ……。


岡部「なんだよ……なんなんだよ……」



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:50:13.58 ID:1xhGCn/90

岡部「俺がやってきたことはなんだったんだよ……」

岡部(世界がまゆりを殺そうとして、それから逃れるために何度もタイムリープしてっ!)

岡部(でも全て同じ結果になってっ!)

岡部(鈴羽の想いを犠牲にして、フェイリスの大切な人まで奪いそうになってっ!)

岡部(でも俺には、もう選べなくて……)

岡部(だから収束から逃れるために賭けに出た……そして賭けに勝った……)

岡部(そうじゃ……なかったのかよっ……!)

岡部「……」

岡部(鈴羽がタイムトラベルしてきた以上、未来で何かしらの異変、それもかなり不都合な状態に陥ってる可能性が高い)

岡部(ディストピア構築に匹敵するほどの未来か、あるいは……ディストピアそのもの……)

岡部(くそっ……どうしたら……どうするべきなんだ、俺は!)

???「そんなところで何してる」

岡部「──え?」



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:53:22.77 ID:1xhGCn/90

???「邪魔だ、どけ」

岡部「あ……」

岡部(この女……どこかで……?)

???「なんだ、人の顔をじろじろと……」

岡部「──あ! お前は確かっ」

???「ん……?」

岡部「蒼井……セナとか言ったか」

セナ「なぜ私の名前を……って、そういうお前は……」

セナ「そうか……白衣を着ていたから分からなかったが、あの時の妄想垂れ流し男か」

岡部「くっ!」

セナ「道のど真ん中を占領して立ち止まって……また妄想に浸っていたのか?」

岡部「なんだとっ!」

セナ「言ったはずだ、あまり妄想するな、と」

岡部「馬鹿を言うな! 決して妄想などではないっ!」



34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:54:06.07 ID:JtWiIg+N0

セナキター



35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:56:30.32 ID:1xhGCn/90

セナ「付き合いきれないな」

岡部「あ、おい! 待て! あの時はよくも──」

鈴羽「っと、いたいたーっ!」

岡部「──っ!」

鈴羽「ちょっとー! 勝手にいかないでよー!」

鈴羽「店長に捕まって大目玉食らったじゃんかー、もー!」

岡部「鈴羽……」

鈴羽「話は最後まで聞いてってば……」

岡部「……す、すまん。だが俺は……」

鈴羽「ふーっ……」

鈴羽「岡部倫太郎、ギガロマニアックスについては、もう知ってる?」

岡部「ギガロマニアックス?」



36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 14:59:32.99 ID:1xhGCn/90

鈴羽「あっちゃー、存知してないんだっけか……説明するのが面倒だねこりゃ」

セナ「おい」

岡部「おわっ!?」

セナ「今、ギガロマニアックスと言ったか」

岡部「お、おい、襟首を掴むな、くるし──」

セナ「今、ギガロマニアックスって言っただろ」

岡部「いや言ったのは俺じゃ──」

セナ「質問に答えろ!」

岡部「これじゃ答えられなっ……ぐぇぇ」

鈴羽「言ったのは、あたしだよ」

セナ「……お前か」



37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:02:10.51 ID:1xhGCn/90

岡部「げほっ……」

セナ「お前は何者だ。なぜギガロマニアックスのことを知っている!?」

鈴羽「もしかして君……ギガロマニアックスなの?」

セナ「だとしたらどうする」

鈴羽「どうもしないし、できない」

鈴羽「あたしは……阿万音鈴羽。……2036年から来たタイムトラベラーだよ」

セナ「なん……だと……?」

セナ「…………」

鈴羽「…………」

セナ「なるほど、確かに未来から来たようだな」

岡部「!?」

岡部(信じた! あっさり信じたぞこの女!)



38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:05:27.30 ID:1xhGCn/90

鈴羽「あたしの思考を……読んだんだね。よかった、説明する手間が省けたよ」

セナ「そうだ、よく分かってるじゃないか」

岡部(何を言ってるんだこいつら、厨二病か!? 揃いも揃って厨二病なのか!?)

鈴羽「聞いて岡部倫太郎。未来の世界は……SERNが開発した装置、ノアによって支配されている」

岡部(またSERN……)

鈴羽「まずギガロマニアックスってのは何かっていうと、妄想を現実にすることが出来る人達のこと」

岡部「は?」

鈴羽「で、ノアは人工のギガロマニアックスを作り出す装置、SERNが開発して独占している」

鈴羽「SERN──いや、300人委員会は、ノアとその端末を使用して人々の思考を支配……ディストピアを構築しているんだ」

岡部「はっ……ははっ」

鈴羽「どっ、どうしたの?」

岡部「フハハ、フゥーハハハ!!」



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:08:02.24 ID:1xhGCn/90

岡部「ハハハ、何を言い出すかと思えば……」

岡部「妄想を現実だと? ふざけるのも大概にしろっ」

岡部「鈴羽、さてはお前……俺を脅かしに来ただけだろ。そうだ、そうに決まってる」

岡部「ついでに蒼井セナ、貴様も協力者だな? 手の込んだことをしてくれるな全く!」

岡部「だがこの鳳凰院凶真! そんな嘘に騙されるほどバカではないぞフハ、フハハ!」

岡部「大体なんだ、ギガロマニアックスというのは! センスの欠片もない!」

セナ「その女の言ってることは本当だ」

岡部「馬鹿を言うな! ぬぁにが妄想だ! そんなものに世界を変えられてたまるかっ! それこそお前らの妄想だっ!」

セナ「妄想は、電気仕掛けだ。いや、すべてのものは電気仕掛け、とすら言える」

岡部「ふん……一年前に会った時もそのようなことを言っていたな! この、電波めっ!」

セナ「……」

岡部「……?」



41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:11:12.53 ID:1xhGCn/90

セナ「…………」

岡部(なぁっ──!?)

セナ「お前には、この剣が見えるか?」

岡部(け、け、け剣が、出てきたっ!?)

岡部(こ、こんなでかい剣、一体どこから……こいつ手品師か!?)

岡部「お、おい、その剣は一体何だ……」

セナ「まさかとは思ったが……見えていたのか、このディソードが……」

岡部「ディソード……?」

セナ「”見えてないフリ”をしていたとは……」

岡部(”見えてないフリ”? いや、”見えてるフリ”をした覚えはあるが……)

岡部「こ、答えろ! その剣は一体何だ! どこから出したのだ!」

セナ「世界の仕組みは3つの数字で全て説明できる。0と1、そしてマイナス1」



43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:14:15.30 ID:1xhGCn/90

セナ「ディソードは、そのマイナス1を生み出す為のショートカットであり、ディラックの海へと干渉するための端末だ」

岡部「ディラックの海……空孔理論か」

セナ「ディソードがディラックの海に干渉することで粒子と反粒子を対生成される」

セナ「この時生み出された粒子こそがギガロマニアックスの妄想、エラー」

セナ「そのエラーを周りの人間のデッドスポット──視界の死角──に送り込み、個人の妄想を”周囲共通認識”として成立させることで、妄想を現実にすることができる」

セナ「量子力学的に妄想を現実にすること……それがリアルブートだ」

セナ「そしてリアルブートする力を持った人間をギガロマニアックスと呼ぶ」

岡部「に、日本語で頼む……」

セナ「できることに限りはあるが、私たち……ギガロマニアックスは妄想を具現化できるということだ」

岡部(いやいやいや、そんなことできるわけがなかろう!)



44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:17:02.12 ID:1xhGCn/90

セナ「VR技術、というものを知っているか」

岡部(VR……? 確かヴィジュアル・リビルディング……)

セナ「そう、ヴィジュアル・リビルディングだ」

岡部(助手に似て髪長貧乳理系キャラだが……決定的に違うところは黒髪なのと、電波すぎるところだな)

セナ「だれが貧乳だ……斬るぞ」

岡部「お、ぉっ、落ち着けぇ! 剣を向けるな!」

岡部(……俺……今、声に出してたか……?)

セナ「……VR技術を用いて、ある物体の情報を神経パルスへと変換──それを人の脳に認識させ、五感をコントロールすることができたなら……」

セナ「その物体はそいつにとって”存在する”ことにならないか?」

岡部「たしかにそうだがっ……それはあくまで個人の脳が認識しているに過ぎないだろ!」

セナ「もう一度いう、この世界はすべて電気仕掛けだ。”目に見えたことこそがすべて”なのではない」

岡部「しかしだな……」

セナ「……まだ信じられないのか」



46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:20:57.94 ID:1xhGCn/90

鈴羽「実際に見せた方が早いんじゃないかな」

セナ「…………」

岡部「うおっ!? ガ、ガルガリ君が何もないところから出てきた!? また手品か!?」

セナ「…………」

岡部「!? ま、まただ……」

鈴羽「岡部倫太郎……あたしはそのガルガリ君を、”蒼井セナが最初から持ってた”そう認識してるよ」

岡部「へ……?」

鈴羽「蒼井セナ、君がリアルブートしたんでしょ?」

セナ「そうだ」

岡部「鈴羽、お前本当にこれが最初からあったって思ってるのか? 今出てきただろ! 何もないところから!」

鈴羽「そのことを証明する手立ては無いけど、本当だよ。あたしは”最初からアイスがそこにあった”って知覚している」

セナ「ギガロマニアックス以外の人間には、リアルブートされた現実でも、”最初からそこにあった”としか認識できないからな」

岡部(バカな……それではまるで記憶の再構成……)

鈴羽「君たちの会話を聞いて、リアルブートしたんだろうなって推測しただけ」

岡部(というかそのガルガリ君は本物なのか? 俺が幻を見せられてるだけじゃないのか?)



47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:23:12.12 ID:1xhGCn/90

岡部「ある……実体は……ある……」

岡部「お、おい……これって、食えるのか?」

セナ「もちろんだ」

岡部「そ、そんな……嘘だろ……? 本当にこれが妄想から作られた存在なのか……?」

セナ「だが私は食べないことにしている」

岡部「? ……なぜだ」

鈴羽「じゃああたしにちょうだい」

セナ「……食っていいぞ」

鈴羽「サンキュ」

セナ「そのガルガリ君は99%ガルガリ君ではある──が、100%ではない」

岡部「なに?」



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:26:34.05 ID:1xhGCn/90

セナ「私はガルガリ君について知り尽くしている、当たり札の割合まで知っている」

セナ「その情報を元に、限りなく本物近い形で具現化したが、所詮は人のイメージ。100%とは言えない」

セナ「つまり、100%のガルガリ君をリアルブートすることはできない」

岡部「ふむ……?」

セナ「故に私はそのガルガリ君を食べないことにしている」

セナ「店に売っている100%のガルガリ君以外は……邪道だ!」

岡部「何を熱弁しているのだ貴様は……」

セナ「……こほん」

鈴羽「ねえ……そろそろ説明に入りたいんだけど、いいかな」

鈴羽「未来がどうなっているのか、と……未来を変えるための方法について」

岡部「…………」



52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:30:35.62 ID:1xhGCn/90

~大檜山ビル2階~



岡部「ラボ──いや、この部屋はお前が使っていたのだな」

鈴羽「最初は店長のお家にお邪魔させてもらってたんだけど、つい最近貸してもらったんだ」

鈴羽「空き部屋だし、ちょうどいいってことで、格安でね」

岡部(だから店長の家にダイバージェンスメーターがあったのだな……)

鈴羽「それに……」

岡部「それに?」

鈴羽「なんだか、すごく思い入れがあるんだよね、この場所」

岡部(……フェイリスと同じように、鈴羽にもリーディングシュタイナーが発動したのか?)

鈴羽「一応さ、ギガロマニアックスの力について、もう一度おさらいしてみようか」

岡部「あぁ……」



54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:33:15.23 ID:1xhGCn/90

岡部「ギガロマニアックス……妄想の剣ディソードを持ち、妄想を現実化することの出来る人間」

岡部「これでいいな」

セナ「もっとも、ギガロマニアックスの力は様々な使い道がある」

セナ「ディソードをリアルブートし、現実の剣として使用すること」

セナ「他人の思考を読む、見る」

セナ「他人に思考を読ませる、見させる」

セナ「人の記憶を改変したり、五感をコントロールし洗脳することも可能だ」

セナ「力の強い者が望めば、生物すら作り出せる」

岡部「やりたい放題ではないか……」

セナ「だが弱点がないわけではない」

岡部「と言うと?」



56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:35:44.37 ID:1xhGCn/90

セナ「一つは、周囲の人間に対して認識するよう働きかけなければならないので自分だけでは使用できないということ」

セナ「もう一つ、は肉体の再生はできないということ」

セナ「脳が痛みを認識してしまう為、怪我の治療などには使えない」

岡部「ふむ……」

セナ「また、特殊な例だが……他人の心の声が音声として、強制的に頭の中に流れてくるという能力を持った者もいる」

岡部「強制的に……」

セナ「制御はできないらしい」

セナ「他人のむき出しの心の声が無制限に聞こえてしまうというのも、本人にとっては耐え難い苦痛だ」

岡部「そう言われれば、そうなのかもしれないな……」

セナ「……」

 ガターン

拓巳「セナァァァァ!!」

セナ「やっときたか」

岡部「お前は……さっきの……」



57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:39:19.04 ID:1xhGCn/90

鈴羽「えっと……誰?」

セナ「西條拓巳、私が呼んだ」

岡部「……! どこかで見覚えがあると思ったら、ニュージェネ事件のエスパー西條か!」

拓巳「セ、セナ! な、七海たち見つかったのっ!?」

セナ「……いや」

拓巳「って、どっ、どこにも居ないじゃないかっ……」

拓巳「ぐぞぉぉぅ、僕にギガロマニアックスの力が残ってればぁぁぁっ」

岡部(こいつもギガロマニアックス……? でも能力は失われているのか?)

セナ「落ち着け西條、私だって梢たちを助けたい」

拓巳「って、あ……こ、この人達は……?」

鈴羽「阿万音鈴羽、よろしく」

岡部「……鳳凰院凶真だ」

拓巳「う、うそ! マ、マ、ママジ!? あの凄腕雷ネッターの? で、でもなんでセナと一緒に……」



58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:42:18.84 ID:1xhGCn/90

────
───
──


鈴羽「さっきも言ったけど、未来の世界はSERNが支配している。人工のギガロマニアック装置、ノアを使ってね」

拓巳「ちょ! う、うそ……でしょ? つか、み、未来って……なんぞ……」

セナ「だが、プロジェクトノアを企てた野呂瀬はすでに死んでいる。ノア?Uも破壊されたはずだ」

拓巳「そ、そうだぞ! の、の、野呂瀬は死んだし、ノ、ノア?Uも破壊した!」

鈴羽「プロジェクトノア……ニュージェネ事件や渋谷崩壊を引き起こす元となった計画」

岡部(この世界線でも渋谷崩壊はあったのか……)

鈴羽「2009年に野呂瀬玄一をはじめとした首謀者の死亡、及びノア?Uが破壊されたことにより計画は阻止された」

鈴羽「だけど、SERNが再びノア──いや、ノア?Vを開発した。そして──」

鈴羽「ノア?Vの力を独占し、プロジェクトノアを引き継ぐ形で、世界人間牧場化計画を実行したんだよ」

拓巳「ノア……?V……?」

セナ「バカな……」



60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:46:11.94 ID:1xhGCn/90

鈴羽「SERNはノア?Vを使って人々の思考──攻撃性や欲望といった感情をコントロールすることで、ほぼ完全なディストピアを構築してる……」

セナ「だが……野呂瀬はSERN……300人委員会に対し反旗を翻そうとしていたはず」

岡部(300人委員会……いや、SERNならば不思議はない、か)

セナ「なぜその委員会がプロジェクトノアを引き継いだんだ?」

鈴羽「技術をSERNが盗んだか……最初から野呂瀬が踊らされていたのか……って考えるのが自然だろうね」

岡部(自然……なのか? α世界線ではノアのことなど一切聞かなかったが……)

岡部(……しかしタイムマシンではなく、妄想を現実にする装置でディストピア構築とは……一体どんな心変わりを?)

岡部(いや、電話レンジがないのだから、タイムトラベル研究が頓挫する……のか)

拓巳「と、とすると、な、七海たちがどっか行っちゃったのも、SERNの仕業……なの?」

鈴羽「恐らくそうだよ」

岡部「どういうことなんだ?」

セナ「今、私の周りで、ギガロマニアックスの力を持った人間が次々と行方不明になっているんだ」

セナ「4日ほど前に、梢……私の友人が」

拓巳「こ、こずぴぃを探してたら……こ、今度は梨深と七海が……」

鈴羽「計画の邪魔にならないよう、さらったか……もしくは……」



61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:49:48.67 ID:1xhGCn/90

セナ「ギガロマニアックスが力を使う過程で放出する特殊な脳波のサンプル、コードサンプルを採取するため……か?」

岡部「コードサンプル?」

セナ「ノアの完成には、ハードウェアとは別にギガロマニアックスのコードサンプル──いわばソフトウェアに当たる部分が必要になる」

岡部「ということはつまり、まだ開発段階……ということでいいな?」

鈴羽「うん。ノア?Vの稼働は、2012年12月21日」

鈴羽「このままじゃノア?Vが完成してしまう。早く未来を変えないと──」

拓巳「なんだよそれ……」

岡部「お、おい……?」

拓巳「なんだよそれなんだよそれなんだよそれぇっ!」

セナ「おい、西條……落ち着け」



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:52:49.50 ID:1xhGCn/90

拓巳「せ、せっかく! ぼっ、僕が野呂瀬を倒したっていうのになんだよそれ!!」

拓巳「死ぬとこだったんだぞ! め、めちゃくちゃ怖かったんだぞ! つ、つか一回死んだも同然でしたしー!!」

拓巳「妄想の中で三日三晩拷問みたいな痛み味わってさ! それなのに……また……」

拓巳「ま、また僕に世界を救えっての……? 僕は英雄なんかじゃ……」

鈴羽「ちょっと、落ち着いてよ西條拓巳」

拓巳「お、落ち着いてなんて……」

鈴羽「未来を変える鍵は君じゃなく、岡部倫太郎が握っている」

拓巳「へ……?」

鈴羽「岡部倫太郎も君も、話を最後まで聞かないんだから、まったく」

岡部「……悪かったな」

拓巳「つか、さ、さっきから未来って……。なに? なんなの? み、未来って何さ。こ、この人も電波なの?」

鈴羽「あぁ、君にはまだ言ってなかったっけ」

セナ「こいつはタイムトラベラーだ」

拓巳「へっ?」



64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:56:07.06 ID:1xhGCn/90

鈴羽「そう、あたしはタイムトラベラー・ジョンタイター」

拓巳「え? ええええ!? そ、そ、それって7月の終わりに@ちゃんで、ま、祭りになってた!?」

鈴羽「2036年から来たんだ。未来を変えるために──」

岡部「……」


鈴羽はまた、未来を変えろ、などと言ってくる。
正直、俺は迷っていた。
確かにまゆりとフェイリスのパパさんを助けるためにした選択は、逃げだ。
鈴羽の思いを犠牲にしておきながら、無責任であった、と言える。

しかし──

未来を変えたら、その先は一体どうなるんだ?
また世界線を不用意に変えてもいいのか?

俺は受け入れたんだ。
この世界を……。
二人が生きているこの世界を……。



Chapter 2 『虚像妄想のリアル』END



66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 15:59:46.95 ID:1xhGCn/90

Chapter 3 『惜別のデジャヴュ』



岡部「…………」

セナ「アトラクターフィールド理論……過程は違えど必ず行き着く結果は同じになる、ということか」

鈴羽「そうだよ」

セナ「2036年ではそのような理論が提唱されているのか。……驚いたな」

鈴羽「そして、世界線を移動しても記憶を持ち続けることのできる岡部倫太郎こそが世界を救う鍵なんだよ」

拓巳「つかジョンタイター存在したんだキタコレ!
    祭りも沈静化してたから完全に忘れてたってばよ!
    ポーター共のいたずら乙って決めてた僕のバカバカ!
    それにしてもこんなにかわいいおにゃのこがタイターとかムネアツすぎ!」

拓巳「み、未来人のしょ、証拠、み、見せて、ほ、ほ、ほしいなチラッチラ、なんて! ふひひ」

鈴羽「証拠って言われてもなぁ……ラジ館にめり込んでる機械がタイムマシンだよ、ってくらいかな」

拓巳「うそ! あれ、タッ、タイムマシン!? まっじかよ! じっ、人工衛星じゃねーじゃんっ!」

岡部「鈴羽」

鈴羽「ん?」



67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:02:08.09 ID:1xhGCn/90

岡部「未来を変えろ、といったな」

鈴羽「う、うん……」

岡部「俺は……お断りだ」

拓巳「へ?」

鈴羽「へ?」

岡部「俺はもう、受け入れたんだ、この世界線を……」

岡部「まゆりとフェイリスのパパさんが生きてるこの世界線を……」

拓巳「ちょ、ちょっと待ってよ! そんなの無責任だろおっ!?」

岡部「これ以上世界線を不用意に変えて、二人が再び命を落とすことになったら……俺は……」

拓巳「そ、それじゃあ捕まってる七海たちは、どっ、どうなるのさ!」

岡部「……」

鈴羽「岡部倫太郎……」



69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:05:32.14 ID:1xhGCn/90

岡部「すまない、俺は……」

鈴羽「椎名まゆりも、SERNに捕まるって言ったら、どうする?」

岡部「何……? それはどういう意味だ……?」

鈴羽「そのままの意味だよ。椎名まゆりはSERNに捕まる」

鈴羽「コードサンプル採取の目的でね」

セナ「ということはつまりそいつも──」

鈴羽「そう──」

鈴羽「椎名まゆりはギガロマニアックスの素質を持っている」

岡部「馬鹿な……」

拓巳「そうか……ぼ、僕の力がなくなったことでコードサンプルが十分じゃなくなったんだ……」

拓巳「だ、だから他のギガロマニアックスも捕まえて、ノアをより完璧に仕立て上げるために……」

岡部「くっ……まゆりっ!」

鈴羽「大丈夫、椎名まゆりが拉致されるまでは時間がある」



71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:06:22.93 ID:vs1GghKL0

まゆりもタイムリープしてるからなぁ



73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:09:09.08 ID:1xhGCn/90

岡部「でも!」

鈴羽「今君が行っても、どうにもならないでしょ」

岡部「確かに、そうだがっ……」

鈴羽「2010年8月25日、SERNに捕らえられた椎名まゆり」

鈴羽「彼女はその後、拷問の果てにギガロマニアックスとして覚醒することになる」

岡部「ご、拷問だと!?」

セナ「ギガロマニアックスの素質を持つ者がギガロマニアックスとして覚醒するには……」

セナ「想像を絶する程の肉体的、精神的苦痛に耐え抜かなくてはならない」

岡部「は!?」

セナ「その苦痛を受け入れた時……」

セナ「それまで風景に溶け込んでいたディソードが持ち主の前に姿を現す」

セナ「故にディソードを持つギガロマニアックスは、誰もがみな……一度は心が壊れているんだ」

拓巳「ぼ、僕の時も大変だったよ……みんなして僕をいじめてさ……」

セナ「あれはお前がヘタレすぎたんだ」

拓巳「セ、セナに言われたくない……」



74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:11:52.33 ID:1xhGCn/90

鈴羽「ギガロマニアックスのコードサンプルを取られた椎名まゆりは……」

鈴羽「いや、SERNに捕らえられたギガロマニアックス達はみな……処分されることになる。ノア?Vの稼働とともに」

岡部「そんな……」

拓巳「う、うそ……でしょ……?」

鈴羽「覚醒したギガロマニアックスに、ノア?Vの洗脳はほとんど効かないしね……」

鈴羽「邪魔な存在ってことで、消されたんだと思う……」

岡部(この世界線でのまゆりも助けられないっていうのか……)

岡部(それも拷問だなんて……そんなのあんまりだろ……)

鈴羽「そして岡部倫太郎。君もギガロマニアックスとしての素質を持っている」

岡部「俺も……?」

拓巳「そ、そうなの?」

セナ「さっき私の剣を見ただろう」

岡部「あ、あぁ……」



77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:14:48.32 ID:1xhGCn/90

セナ「リアルブートする前のディソードを見ることが出来るお前は、ギガロマニアックスとしての素質を持っている」

セナ「あの時……”見えてないフリ”をしていたとはな、まんまと騙された」

岡部「……?」

岡部(確かに俺は一年前、こいつに会った時”剣が見えるか”と問われたが……)

岡部(結局剣などどこにも存在していなく……)

岡部(その当時は厨二病全盛期だったので、”見えるぞ? 妖刀朧雪月花か”と、ホラを吹いたのだが……)

岡部「俺がギガロマニアックスの素質を……」

鈴羽「でも岡部倫太郎、君だけは処分されなかった」

岡部「……なぜだ」

鈴羽「一つは、君の妄想力がそこまで高くなかったってこと」

岡部「……貶されてるのか、褒められてるのか、分からんな」

鈴羽「もう一つは、タイムトラベルに関する知識を持っていたこと」

鈴羽「SERNはさ、タイムトラベルの研究も行なっていたんだ」

岡部(前の世界線ではむしろそちらの方が本来の目的だったが……)



79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:18:32.73 ID:1xhGCn/90

鈴羽「世界線を越えても記憶を持ち続ける力、リーディングシュタイナー。君はSERNにその力を持ちかけて、処分を逃れたんだ」

鈴羽「後に君は脱走しSERNに対抗するレジスタンスを結成することになる」

岡部「レジスタンス……」

鈴羽「未来では人々の意思なんて無いも同然。まさに家畜同然の扱いを受けている」

鈴羽「ただ生かされ、ただ死んでいく……。洗脳が効かない者は容赦なく殺される……」

鈴羽「そんな世界を変えるためにレジスタンスを結成した君は、SERNに抵抗を続け──」

鈴羽「父さんたちレジスタンスの仲間と共にタイムマシンを開発──」

鈴羽「世界を……未来を変えるのは父さんの意志でもあり……そして、君の意志でも、あるんだよ」

岡部「俺の……意志……」

鈴羽「そう、椎名まゆりを救おうとする意志だけじゃない。世界に自由をもたらす立派な志だよ!」

岡部(そう言えば、α世界線でも似たような会話をしたな……)



82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:22:51.05 ID:1xhGCn/90

岡部(あの時俺は、その意志をくだらないと一蹴したが──)

拓巳「たっ、頼むよ……七海たちの命もかかってるんだよぉっ……」

岡部「……いいさ、やってやるよ」

岡部「まゆりを助けるためなんだろ? それならなんだってやってやる」

岡部「言っとくがこれはまゆりを救うためであって、世界を救うためじゃない」

拓巳「お、女絡みっすか……」

鈴羽「良かった……」

岡部(この世界線での俺とまゆりはほとんど他人といっていいようなもの)

岡部(だが他人になったからと言って……殺させるわけにはいかない)



83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:26:52.10 ID:1xhGCn/90

岡部「そういえば……」

岡部「紅莉栖……牧瀬紅莉栖は未来ではどうなっていた?」

岡部(あいつがいてくれれば心強いが……いや、巻き込むわけにもいかないか?)

鈴羽「……まさか君からそんな名前が出るなんてね」

岡部「……?」

鈴羽「牧瀬紅莉栖……あいつはSERNでタイムトラベル研究に従事していた」

岡部「なに……?」

鈴羽「2036年現在でも、研究はうまく行ってないみたいだけど……」

鈴羽「それでもSERNに協力する科学者なんて、許せないっ……!」

鈴羽「ノア?Vに加えてタイムマシンなんて作られた日には、それこそおしまいだよっ……」

岡部(バカな……)

岡部(この世界線での紅莉栖やダルはSERNに拉致される理由もないはず……)

岡部(だとしたら紅莉栖が自発的に? くそ、訳がわからんぞ……)



85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:30:26.93 ID:1xhGCn/90

岡部(でも……この未知の世界線ですらまゆりの命が失われるというのであれば……)

岡部「……で? どうすればいいのだ?」

鈴羽「世界を救う鍵……未来を変える方法は、IBN5100にある」

岡部「……IBN……5100……」

鈴羽「ノア?Vの構築プログラムのデータ──いわばハードウェア部分の設計図だね」

鈴羽「未来の君が掴んだ情報によれば 、そのデータは今、SERNの最重要機密のデータベースにのみ存在している」

鈴羽「そしてノア?Vの開発は、すべてのギガロマニアックスのコードサンプルが採取されない限りスタートしないんだ」

岡部「ということはつまり……」

鈴羽「IBN5100を使ってSERNのデータベースにクラッキングを仕掛け──」

岡部「ノア?Vの構築するためのデータを消してしまえば──」

鈴羽「未来を変えられる──」

鈴羽「ホントはもっと早く君に接触して、この情報とIBN5100を託すつもりだったんだけど……」

鈴羽「時間が掛かっちゃったね。ごめん……」

拓巳「で、でもSERNにクラッキングとか、む、無理じゃね?」



86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:34:09.25 ID:1xhGCn/90

岡部「それは、マイフェイバリットライトアームに頼めば問題ない」

セナ「なんだそれは……」

拓巳「で、でもさ、仮にできたとしても、ノア?Vの設計図はど、どうやって探すのさ?」

拓巳「希テクノロジーが開発したんだよ? わ、分かるの?」

セナ「問題ない、私が解析できる」

拓巳「あ──そ、そうか、セナのお父さんって……希のしゃ、社員だったんだ」

セナ「……」

拓巳「あ、ご、ごめ……」

岡部「よし、ならば早速IBN5100を──」

鈴羽「うん、君に託すために……1975年に……飛ぶよ」

鈴羽「思った以上に事態は深刻みたいだしね……」

鈴羽「大分岐によって、捕まったギガロマニアックスたちの運命も変えられればいいんだけど……」

岡部「……いや、待て」

鈴羽「ん?」

岡部(フェイリスは確か、パパさんにIBN5100を売らないようにDメールを送ったはず)



87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:37:02.06 ID:1xhGCn/90

鈴羽「どうしたの?」

岡部(だとしたらパパさんがIBN5100を持っている?)

岡部「早速フェイリスパパに──」

岡部「ってちょっと待て! あの人は今、海外に飛んでるのだったっ……!」

岡部(いや…………もしかすると)

鈴羽「ちょっとー、どうしたのさー? 説明してよー」

岡部「すぐ戻る!」



88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:40:09.12 ID:1xhGCn/90

~柳林神社~



岡部「はぁっ……はぁっ……ふぅっ……はぁっ……」

るか「お掃除終わりっと……」

岡部(ルカ子……)

るか「あ……」

岡部(相変わらず巫女服が似合っている、だが……どっちだ?)

るか「えっと、参拝の方……ですか……?」

岡部「……あ、いや……少し尋ねたいことがあるので、お父上を呼んできてもらえるか?」

るか「お父さん……ですか? 分かりました、呼んできますね」

岡部(やはりこの世界線では俺とルカ子に面識はないみたいだな)



89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:42:21.47 ID:XTl7WrZj0

ルカちゃん・・・



90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:42:32.53 ID:HmfARHvI0
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:44:59.10 ID:1xhGCn/90

────
───
──


栄輔「おやおや、これはこれは、どうされました?」

岡部「ええと、その……昔、この神社に古いパソコンが奉納されたりはしませんでしたか?」

栄輔「古いパソコン……ですか?」

栄輔「……あぁ。奉納という言葉が正しいかどうかはわかりませんが、昔古いパソコンが預けられたのは確かです」

岡部(やった!)

栄輔「それがどうかしましたか?」

岡部「もしよろしければ、貸していただきたいのですが」

栄輔「ええ、分かりました。少し待っててくださいね」

岡部(よし……)



93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:48:14.84 ID:1xhGCn/90

────
───
──


栄輔「おかしいですねえ……」

岡部「ど、どうかしたんですか?」

栄輔「いえね、確かにあったはずなんですが……なくなっていたんです」

岡部「え……」

栄輔「去年の大晦日まではあったんです。……るかも覚えてるよな?」

るか「はい……確かにあったと思います。ボクも大掃除の時に、確認しましたから……」



94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 16:52:18.23 ID:1xhGCn/90

────
───
──


岡部(どういうことだ……? フェイリスパパが奉納したのはルカ子の父上の証言からも明らか……)

岡部(……ルカ子のDメールか……もしくは萌郁のDメールが関係していると?)

岡部(だとしても、俺にはもうどうすることもできない……)



~大檜山ビル2階~



拓巳「あ、か、帰ってきた」

鈴羽「ちょっとー、説明もなしにどっか行かないでよー」

拓巳「そ、そうだぞっ」

拓巳「お、おかげで僕は両手に花……じゃなくて、たっ、大変だったんだからなっ」

鈴羽「あっはは、全然喋ってなかったよね君」

拓巳「そ、そもそも2036年の科学とか話されても、ぼっ、僕には理解できないっつーのっ」



107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 17:49:38.99 ID:1xhGCn/90

鈴羽「で、どうしたの?」

岡部「IBN5100を探しに……な」

鈴羽「嘘! あったの!?」

岡部「いや、なかった……」

鈴羽「……そっか」

岡部(くそ、一体どこに行ってしまったんだ……)

鈴羽「じゃあ、あたしは行くよ」

拓巳「い、行くってどこへ……」

鈴羽「1975年、IBN5100の発売された年」

拓巳「ま、まじっすか!」

岡部「……」

鈴羽「……」

岡部「鈴羽よ……お前、この時代へは、父親を探しに来たんじゃないのか?」

鈴羽「そうだったんだけど……探してる暇も、もうないかな……」



108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 17:54:43.34 ID:1xhGCn/90

鈴羽「タイムマシンオフ会でも、結局見つけることはできなったし……」

鈴羽「今は一秒でも早く、君にIBN5100を託さないと、ね」


鈴羽はどこか憂いを帯びた表情をしている。
やはり、行ったら戻ってこれないのだろう。


岡部「俺はっ……お前の父親の居場所を知っている」

鈴羽「う、嘘! ホントに!?」



109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:00:00.20 ID:1xhGCn/90

~メイクイーン~



鈴羽「ホントにこんな所にいんのぉ?」

岡部「あぁ……恐らく、来ているはず」

鈴羽「ここってさ、メイド喫茶ってヤツだよね。と、父さんって一体……」

岡部「一応、覚悟はしておけ」

鈴羽「まさか、メイド服来て登場とかしない……よね」

岡部「それはない」

まゆり「おかえりニャさいませー、ご主人様~」

フェイリス「ニャニャ、凶真、また来たのかニャン?」

岡部「ああ」

フェイリス「ニャフフ、やっぱり凶真はフェイリスのことが──って」

フェイリス「凶真……その後ろのかわいい女子は誰かニャ……」

岡部「え? い、いや、こ、これはだな──」



111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:04:19.43 ID:1xhGCn/90

フェイリス「フェイリスが前線で必死に戦っているときに凶真は……凶真は……!」

フェイリス「凶真のニャンばかーっ!」

岡部「お、落ち着けェーっ!」

ダル「ちょっとちょっと! なにフェイリスたんと馴れ馴れしくしてるのさ!!」

岡部「ダ、ダル!」

ダル「って、よく見れば鳳凰院氏じゃないっすかー、また会えて感激っす」

フェイリス「ダルニャンには少し黙っててもらいたいのニャ。今はフェイリスが話してるのニャ」

ダル「ぐは……」

まゆり「フェリスちゃんはダルニャンくんに容赦ないねー」

岡部「おい鈴羽……心して聞くがいい」

鈴羽「え? なになに?」

フェイリス「凶真? 何こそこそと話してるのニャ」



114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:08:12.97 ID:1xhGCn/90

岡部「この帽子をかぶった大男こそがお前の父親、橋田至だ」

鈴羽「え? 父さんこんなに太ってなかったよ?」

岡部「痩せたのだろう。信じろといっても無理かもしれないが……事実だ」

鈴羽「そ、そっか……」

フェイリス「凶真ぁ!! フェイリスを差し置いて内緒話とはどういうことニャ!」

岡部「ええい、いちいち勘ぐるでない! これは必要な儀式なのだっ」

鈴羽「……」

ダル「う、うぇぇ?」

フェイリス「フニャ!?」

まゆり「わわーっ!?」

鈴羽「……とうさ──ううん」

鈴羽「あたし……やり遂げるから……」

ダル「え、え……?」



115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:13:53.88 ID:1xhGCn/90

鈴羽「君たちがやり遂げようとしてたこと……あたしが……必ずやり遂げるから……」

鈴羽「だから、見てて欲しい……」

ダル「え? えっと、み、見てるよ……う、うん」

鈴羽「……」

鈴羽「あ、あはは……ごめんね、いきなりこんな事言われても、分かんないよね」

ダル「え、あ、う……」

鈴羽「っと、ごめん、もう行かなきゃ!」

岡部「もう……いいのか?」

鈴羽「これ以上居たら、この時代に、未練が残っちゃうかもしんないし、さ……」

鈴羽「ホント、いきなりゴメンね! さよなら!」

ダル「あ、ちょ!」



116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:17:29.49 ID:1xhGCn/90

岡部「すまんフェイリス、俺も失礼する」

フェイリス「きょ、凶真!?」

まゆり「ほぇー……」

ダル「……」

フェイリス「ダルニャン?」

ダル「……モテ期キタコレ?」

まゆり「お~、ダルニャンくんにも春が来ました~」



118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:22:56.64 ID:1xhGCn/90

~ラジ館8階~



岡部「やはり、ここに跳躍していたのか……」

鈴羽「あはは、別の世界線でもここだったんだ、なんだか不思議だね」

拓巳「ひょほーーー! これタイムマシン!? マジ!? 激アツ、激アツなんだけど!」

セナ「実際に間近で見るとやはり驚かされるな……」

拓巳「ねえねえ、ぶ、無事に1975年へ行けたらさ、75年の伝説の魔法物、ラ、ラジカルオミットちゃんのセル画を──」

岡部「自重しろ!」

拓巳「ふひひ、サ、サーセン!」

岡部「店長にあいさつはすませたのか?」

鈴羽「うん、今時のわけーもんはー、って怒られちゃった」

岡部「今時……ではないのだがな」

鈴羽「あはは、確かに」



119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:27:37.52 ID:1xhGCn/90

鈴羽「そうだ、これ」

岡部「ダイバージェンスメーター……」

鈴羽「君にあげるよ」

岡部「俺以外が持っててもしょうがないからな」

鈴羽「あれ、どうしてあたしが言おうとしたこと……」

岡部「いや……」

鈴羽「まあいいや」

鈴羽「岡部倫太郎……」

鈴羽「必ず、君にIBN5100を託してみせるから──」

鈴羽「きっと、未来を変えてね……今みたいな自由な世界に……変えてね──」


ふと既視感。
俺はこのまま鈴羽を1975年に送り出していいのだろうか。


岡部「な、なぁ鈴羽!」

鈴羽「ん?」



121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:34:35.89 ID:1xhGCn/90

岡部「そのタイムマシン、壊れてたりしない……よな?」

鈴羽「え? えーっと……うん、大丈夫だけど?」

岡部「そ、そうか」

鈴羽「ちょっとー、不安になるようなこと言わないでよー」

岡部「あぁ……すまない」

拓巳「で、でもさ……過去方向しか跳躍できないとか……そ、それじゃタイムマシンじゃなくね?」

セナ「そう言うな。過去方向へのタイムトラベルを成功させただけでも大したものだろう」


          『いえね、確かにあったはずなんですが……なくなっていたんです』

あ──

まずい。
このままでは。
結局、俺の手にIBN5100が渡ることは──ない?


鈴羽「それじゃあ、短い間だったけど──」

岡部「鈴羽! ま、待て!」

鈴羽「え? また? ど、どうしたの?」



140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 19:37:09.99 ID:1xhGCn/90

岡部(鈴羽がIBN5100を手に入れ、フェイリスパパに託し、彼が神社に奉納したとしても、いずれなくなることが決まっている……)

岡部(どうすれば……)

岡部「そ、そうだ!」

岡部「IBN5100は! できるだけ複数購入するよう頼む!」

鈴羽「あっはは、軽々しく言ってくれるなこのー!」

鈴羽「当時の値段でも結構高いんだぞー?」

岡部「……」

岡部(恐らく……この世界線での鈴羽も、2000年前後に収束によって……)

岡部(どうする、引き止めるか……? いや、止めてどうする……)

岡部(死を仄めかしてもこいつは1975年に飛ぶだろう……)



141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 19:42:23.70 ID:1xhGCn/90

岡部(ならば俺は……俺にできることは……)

岡部「そ、それとだな」

岡部「もし手に入れたら2000年までに俺の家に直接渡しに来てくれ!」

鈴羽「え? い、いいけど……なんで2000年なの?」

岡部「いや……」

鈴羽「……」

鈴羽「分かったよ。とにかく……絶対君に託すから、信じて待っててよ」



143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 19:46:51.94 ID:1xhGCn/90

────
───
──



鈴羽「それじゃ、また……会おうね」

拓巳「げ、元気でね!」

セナ「健闘を祈る」

岡部「……」


ハッチが閉じ、しばらくすると、タイムマシンから静かな唸り声が上がり始める。
同時に、目が眩むほどの光を放つタイムマシン。
それでも俺は、この時代に鈴羽がいた形跡を必死に目に焼き付けようとした。

数秒後、タイムマシンは跡形もなく消失した。
俺の視界からも、この場所からも──

俺は……過去を変えることが出来たのだろうか。
俺に……未来を変えることが出来るのだろうか。

今度は、鈴羽の思い出を消さずに済んだのだろうか。


Chapter 3 『惜別のデジャヴュ』END



146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 19:51:00.91 ID:1xhGCn/90

Chapter 4 『不可逆のモナド』



セナ「行ってしまったな」

拓巳「35年か~、な、長すぎだろ常考……」

セナ「孫がいてもおかしくないな」

拓巳「ぜ、ぜひ幼女であって欲しいです、ふひひ」

セナ「……」

拓巳「ちょ、ちょっと! ディ、ディソード出さないでよ!」

岡部「……」


          『 .275349』


岡部(ダイバージェンスの値が……変わっていない……)

岡部(落ち着け……これは想定された事態だ、まだ分からない……)

岡部「……二人は大檜山ビルに戻っていてくれ」

拓巳「え?」



147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 19:56:39.57 ID:1xhGCn/90

~岡部宅~



岡部「なぁ、親父。昔、誰かから古いパソコン、譲り受けなかったか?」

岡部の父「古いパソコン? えー……あぁ、確かにもらったなぁ」

岡部「本当か!? 今、どこにある!?」

岡部の父「それなんだがなぁ……」

岡部の父「売っちまったんだよ」

岡部「……は?」

岡部の父「鈴さんには悪いと思ったんだが……」

岡部「鈴……橋田鈴か!?」

岡部の父「って、覚えてないのか? おめーもよく小さい頃遊んでもらってたじゃねーか」

岡部「小さい頃から……遊んで……?」

岡部(この世界線の過去の記憶を、俺は知らない……)

岡部の父「お前が生まれる前からの付き合いだったよ。良い人だった」



149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:01:19.25 ID:1xhGCn/90

岡部「……」

岡部(鈴羽は確かに……俺にIBN5100を託してくれていたんだ……なのに……」

岡部「ど、どうして売ったんだよっ!」

岡部の父「お前……覚えてないのか?」

岡部「は? 何をだよ」

岡部の父「前に話しただろ。母さんがお前を身篭ってる時に誘拐されたって話。えーと、あれは……91年の8月くらいだったか……」

岡部「誘拐……?」

岡部の父「で、その誘拐の身代金が払えなくて手をこまねいてたら……」

岡部の父「ちょうどフランスの実業家が、そのなんちゃらっていうパソコンを高額で買い取りたいっていう話を持ちかけてきてな?」

岡部の父「それで仕方なく、だ」

岡部(また……フランスの実業家……フェイリスのパパさんの時も……)

岡部の父「その誘拐事件のこと、鈴さんは随分気に病んでたな……」

岡部の父「鈴さんに責任はねーってのに……」



151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:06:41.77 ID:1xhGCn/90

岡部「鈴……橋田鈴は、今……どこに……」

岡部の父「2000年の6月に……亡くなったよ、本当に覚えてないのか?」

岡部「もしかして……自殺……?」

岡部の父「バカ言っちゃんじゃねえ、病死だよ!」

岡部「……」


分かっていた。
十分想定された結果だった。
だがこのままではSERNのデータベースをクラッキングすることができない。
それはつまり、ノア?Vが開発されるのを防げないということ。
訪れるのはディストピア。

──そしてまゆりはギガロマニアックスとして覚醒させるための拷問を受け。
苦しみながら死んでいくことに。



154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:11:14.96 ID:1xhGCn/90

────
───
──



その後俺は、大檜山ビル2階に戻り、事の顛末を二人に語った。
西條は引きつった笑いを浮かべ、信じられないというような表情をしている。
セナは”そうか”と一言呟き、目を閉じ何かを考え込んでいる。


岡部「……」

拓巳「ど、どうすんのさ……」

セナ「……」

拓巳「IBN5100がな、な、なないと、未来がヤバいんでしょ!?」

拓巳「優愛たちも連絡つかないし、あぁぁっ……もっ、もうだめだぁぁぁっ……」

岡部「おい、西條……?」

セナ「ギガロマニアックスの力を持った人間が消えている、という話はさっきしただろう」

岡部「あぁ……」



157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:15:57.18 ID:1xhGCn/90

セナ「先程、楠と岸本──ギガロマニアックスの能力を持った二人に連絡を入れようとしたんだが……」

拓巳「ぐぐぐ……」

セナ「二人とも連絡が付かなくなっていた」

岡部「なに……?」

セナ「そしてラジオ会館からここに来るまでに、私たちに尾行がついていた」

岡部「もしかしてラウンダーか!?」

セナ「ラウンダー? なんだそれは」

岡部「SERNの……治安部隊とも言うべき存在だ……」

セナ「ギガロマニアックスの力を持った者はいるのか?」

岡部「それは分からない……前の世界線ではいなかったように思える……」

セナ「……その部隊の中にギガロマニアックスがいる可能性も考えておいた方がいいかもしれないな」

岡部「どういうことだ……?」



161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:19:59.99 ID:1xhGCn/90

セナ「力を持たない人間に咲畑や岸本が捕まるとは考えられないからだ」

拓巳「で、でも! た、確かに七海やこずぴぃに比べたら、け、警戒心は強いけどさ!
    梨深はどこか抜けてる所あるし、あ、あやせは電波だし、優愛は病んでるし……」

拓巳「ギッ、ギガロマニアックスがいるとは限らないじゃないかぁっ……」

セナ「不安なのは分かるが気をしっかり持て、西條」

拓巳「うぅぅ……」

セナ「ともかく、お前も警戒を怠るな」

岡部「あ、あぁ……」



163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:24:42.59 ID:1xhGCn/90

翌日 8月21日

~岡部宅~



岡部「……」

 カタカタ

岡部(結局あのあと解散。各自IBN5100を探索、という流れになったものの……)

岡部「今更ネットで調べてもな……」

岡部(セナに頼んでIBN5100をリアルブートしてもらおう、とも思ったが……)

岡部(セナがそれをしないということは恐らく完璧に再現するのは難しいのだろう)

岡部「早くしなくては……」

岡部「ん……なんだこの文書ファイルは……禁書目録?」

岡部(こんな文書ファイル、作った覚えはないが……)

 カチカチッ

岡部「……パスワードが必要? ……おのれ」



165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:29:31.66 ID:1xhGCn/90

岡部「……シュタインズゲート……エルプサイコングルゥ……12141991……」

岡部「……だぁーっ! 通らん!」

岡部「たかが文書ファイルにパスなどつけおって!」



岡部「……何パターンか試してみたが……やはりダメか」

岡部「……ヤツを頼ってみるか」



────
───
──



ダル「うひょー! 鳳凰院氏のお部屋拝見キタコレ!」

岡部「あまり引っ掻き回すなよ?」

ダル「ふんふん、ごちゃごちゃしてますな。意外っちゃー意外」



166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:34:23.20 ID:1xhGCn/90

岡部「で、頼みたいのはこの文書ファイルなのだが……」

ダル「んーと、どれどれ?」

岡部「いけそうか?」

ダル「や、まだ調べてみないことにはなんとも」



────
───
──



ダル「んんんー……」

岡部「……」

ダル「んんんんんんー……」

岡部「おい、ダル……?」

ダル「ちょっと鳳凰院氏。一体どんな文書なのさ……コレ」

岡部「いや、その、だな」



168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:38:38.49 ID:1xhGCn/90

ダル「硬すぎ、暗号化複雑すぎ、ぶっちゃけソーシャルハッキングじゃないと無理ぽ」

ダル「文書のプログラム自体がオリジナルでさ、僕じゃどうにもならないお……」

岡部「そうか……」

ダル「つか鳳凰院氏がパス設定したんしょ? ヒントプリーズ」

岡部「そ、それが……完全にど忘れというか……」

ダル「いや、ありえんしょ」

岡部「ともかく、パスワードに関する情報は一切分からんのだ!」

ダル「それじゃあ諦めたほうがよさげ」

岡部「くっ……」



172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:44:32.70 ID:1xhGCn/90

ダル「つかこんなひた隠しにするほどの文書ファイルって一体なんなのさ?」

岡部「……」


分からない。
この世界線の俺は何を考えていた?
鳳凰院凶真と名乗り、凄腕の雷ネッターとして活躍していたというが……。

2000年以降が書き換わっているのだから、俺が雷ネットにのめり込んでいてもなんら不思議ではない。
いや、正確には1975年以降か?

──ふと、違和感が頭の中を掠める。

鳳凰院凶真……鳳凰院凶真……鳳凰院……凶真……。

頭の中で反芻する。
何かが引っかかっていた。


ダル「あーでもなんつーか」

ダル「僕がプログラム組むとしたら、こんなの組むかもわからんね」



175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:49:15.53 ID:1xhGCn/90

────
───
──



岡部「IBN5100の探索はひとまず置いておいて……この世界線とα世界線の大きな違いについて纏めてみるべきか……」

岡部「少しでもIBN5100に近づく手がかりになるかもしれん」

岡部「まずは……」


橋田鈴と俺の家につながりがあり、俺の母親が1991年前後に誘拐されていたこと。
ラボは出来ておらず、ラボメンと俺との関わりがフェイリスを除き、全てなくなっていたこと。
そのフェイリスと俺は雷ネットで知り合い、コンビを組んで戦ううちに恋人になったこと。
SERNが構築するディストピアは、タイムマシンを使ったものではなく、ノア?Vという装置を使ったものであること。


岡部「……」


α、β世界線でもニュージェネ事件や渋谷崩壊は起きていたことから……。
恐らくそれを引き起こしたプロジェクトノア計画はα、β世界線でも実行された。
そしてエスパー西條や他のギガロマニックス達のおかげで計画は阻止。



176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:53:44.80 ID:1xhGCn/90

岡部「だが……」


プロジェクトノアは再び始動……。
未来ではノア?Vによって人々の思考は操作され、SERNが世界を支配していると行っても過言ではない。


岡部「……」

岡部「フェイリスパパに”IBN5100を絶対に売るな”という旨のメールをしただけでここまで変わるのか?」

岡部「バタフライ・エフェクト……いったい何がどう作用して……」


俺はしばらく、モニタ上の文書ファイルをじっと眺めていた。
ただじっと。

このファイルが、大きな鍵になるような気がしてならなかったのだ。



Chapter 4 『不可逆のモナド』END



178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:57:35.20 ID:1xhGCn/90

Intermission 『猫娘のメランコリィ』



8月14日、その日、私の王子様は消えてしまった。
ううん、別の人になってしまったって言ったほうがいいかも知れない。

それでも彼は、私と一緒にいることを選んでくれた。
これからも、彼のことを好きでいてもいいの? という問いに、頷いてくれた。

だけど──
時折彼は、とても悲しそうな顔をする。
まるで、私の前からまた消えてしまうんじゃないかと思っちゃうくらいに……。



8月22日

~フェイリス宅~



フェイリス「凶真、よくきたニャン」

岡部「うむ……」

フェイリス「どうしたニャ? なんだか、疲れた顔をしてるみたいニャけど……」

岡部「いや、なに、寝不足気味でな……」



179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 20:58:30.76 ID:n66A9fSK0

フェイリスくぁいい



180:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 21:01:13.23 ID:1xhGCn/90

岡部「それより……」

岡部「フェイリスのパパさんとママさんはまだ帰っていないのか?」

フェイリス「二人ともまだ海外だニャ」

岡部「随分長く出張しているのだな……」

フェイリス「パパとママは多忙の身だから仕方ないのニャン」

岡部「そうか……」

フェイリス「パパとママがどうかしたのかニャ?」

岡部「い、いや、なんでもない」


目をそらさなくてもいいのに。
今の私にあなたの心を読む度胸なんて、ないよ。



189:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 21:34:09.37 ID:1xhGCn/90

────
───
──



岡部「……」

フェイリス「ニャフフ、熟考なのニャ」

岡部「あ……」

岡部「よ、よし! 鳳凰流秘奥義ウィルスチェッカーだ!」

フェイリス「こんな序盤に使っちゃって大丈夫なのかニャーン?」

岡部「う……ま、まずかった……か……?」

フェイリス「そうやって動揺するところが今の凶真のダメなところなのニャン」

岡部「ぬぬっ……」



192:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 21:38:22.63 ID:1xhGCn/90

────
───
──


岡部「くっ……9戦9敗とはっ……この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真の名折れどぅあっ……!」

フェイリス「ニャハハ、今の凶真はすぐ顔にでるのニャ」

岡部「……」

岡部「なぁフェイリス……。俺は……鳳凰院凶真は……どんな奴だったんだ? 本当に強かったのか?」

フェイリス「それはもう、雷ネットの申し子とも言うべき強さだったのニャ!」

岡部「ほう……」

フェイリス「フェイリスと初めて死闘を繰り広げた時も、対戦中にフェイリスの特殊能力に気づいたのニャ」

岡部「相手の目を見ると、考えてることが何となく分かるという、あれか」

フェイリス「そう……魔眼チェシャーブレイク……」

フェイリス「そして凶真は……”フェイリスが心理を読んでいる”ことを逆手に取り──」

フェイリス「圧倒的演技力と優れた洞察力で怒涛の攻めを展開していたのニャ!」

フェイリス「あれこそ魔技グランドジャッジメント、凶真に隙を見せたら最後。相手は死ぬのニャ」

岡部「はは、それはすごいな……」



193:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 21:43:08.49 ID:1xhGCn/90

フェイリス「そして凶真は試合の後、こう言ったのニャ」

岡部「ん?」

フェイリス「”人の心を読めるとはな……。だがその力はあまり使うな……”」

フェイリス「”他人の闇の感情で、心が押しつぶされるぞ……”って」

フェイリス「ニャハハ、ご丁寧に後ろ斜め向いてポケットに手を突っ込んで言ってきたのニャン」

岡部「……厨二病全開ではないか」

フェイリス「でもでもぉ~、フェイリスはそう言われてグッときたのニャ」

フェイリス「相手の心理がまるわかりというのも、実際は中々大変なのニャ」

フェイリス「表ではいい顔してても、嘘をついてるって、分かっちゃうと辛い時も……あるのニャ」

岡部「フェイリス……」

フェイリス「だから凶真に分かってもらえた時はすっごく嬉しかったのニャ」



194:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 21:47:55.67 ID:1xhGCn/90

フェイリス「あの時から……フェイリスは、凶真に惹かれていたのニャ……」

岡部「今の俺には……とても真似できそうもないな……」

フェイリス「凶真……?」

岡部「……」

フェイリス「ABグラチャンの決勝戦……」

フェイリス「凶真がいてくれて、とても心強かったのニャ……」

岡部「……え?」

フェイリス「フェイリスはずっと一人で戦ってきたから……」

岡部「……」

フェイリス「凶真がいたからこそ優勝できたのニャン……」



195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 21:51:18.33 ID:1xhGCn/90

フェイリス「ふふ、思い出が消えてしまっても……凶真は凶真だよ……」

岡部「……」

フェイリス「厨二っぽいところとか、そっくりだニャン!」

岡部「フッ……厨二は余計だ」

フェイリス「凶真の本質は、何も変わらないのニャ!」

岡部「すまない。……色んな事を考えすぎていたようだ」


──大丈夫。
あなたが忘れてしまっても、私は覚えているから。



Intermission 『猫娘のメランコリィ』END



198:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 21:57:21.18 ID:1xhGCn/90

Chapter 5 『焦心苦慮のアンジェロ』



8月24日

~岡部宅~



岡部(結局あれからIBN5100の情報は入らないまま……)

岡部(西條たちからも連絡が無いということは、進展がないままなのだろう)

岡部(このまま時間がすぎるのを待つしか無いっていうのか……!)

 プルルルル

岡部「? 電話?」

 プルルルル ピッ

岡部「俺だ」

『おっおっおっ』



201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 22:02:50.16 ID:1xhGCn/90

岡部「その声……西條か?」

拓巳『おっ、岡部くん……たす、たすけて……』

岡部「!? おい、どうした!」

拓巳『セナが……セナが連れてかれちゃったんだよぅうぅ……』

岡部「なに……?」

拓巳『す、数人のお、男が僕らの前に現れて、そ、それでセナが抵抗して……。
    ら、楽勝だと思ってたら、い、いつの間にかセ、セ、セ、セナがいなくなってて……。
    ぼ、ぼ、ぼ僕、何もできなくて……』

拓巳『うぅぅうぅぅ……』

岡部「あの女……人に警戒を怠るなと言っておいて……」

拓巳『あ、相手はきっとギガロマニアックスに違いないよ……そ、そうだ、そうに決まってる。
    じゃないと、突然セナが消えた説明がつ、つかないよ……』

岡部「くっ……妄想を見せられていた……ということなのか……?」

拓巳『あああぁぁっもう! ど、ど、どうしたらいいんだよぅうぅっ……』

拓巳『ぼ、僕はギガロマニアックスの力が無ければ……二次元の嫁にハァハァしてるだけのキモオタで……』

拓巳『あ、あ、あの時だって追い詰められて、か、覚醒しただけであって。
    もう……あ、あの時みたいな、こ、怖い思いはだぐざんなんだようぅぅっ!』



202:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 22:06:33.61 ID:1xhGCn/90

岡部(とは言ったものの……事態は非常にまずいことになっている)

岡部(まず、IBN5100についての情報が全く得られていないこと)

岡部(そして敵にもギガロマニアックスがいる可能性が濃厚だということ)

岡部(くそ! どうしたら……!)

岡部(俺にも……ギガロマニアックスの素質はあるんだよな?)


拳を掲げ、何もない空間から剣を取り出そうとしてみる。
が、反応はない。


岡部「……」

岡部(俺はレジスタンスを結成後も生きていることは確定済み……)

岡部(ならばSERNに対し命がけで強行手段に出ても死ぬことはない……)

岡部(やってみるか……? それで覚醒できれば……)

岡部(いや待て! それでは俺のコードサンプルも取られ、結局ノア?Vの完成を助長することに……)

岡部(どうすればっ……!)

岡部(どうすればいいっ……!)



205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 22:11:57.10 ID:1xhGCn/90

~メイクイーン~


まゆり「お帰りニャさいませ~、ご主人様~」

岡部「……」

まゆり「あ、ほーおーいんさん、こんにちニャンニャン~」

まゆり「えっとねー、今日はフェリスちゃん、お休みだよー?」

岡部「まゆり……」

まゆり「も~、だから、マユシィ・ニャンニャンだよ~」

岡部(どうする……まゆりを連れて逃げるか? だがこの世界線での俺とまゆりは他人……)

岡部(それに……どの道収束によって捕まる可能性が高い……)

岡部(何か手はないのかっ……!)

まゆり「え、えっと……どうしたのかな……」

岡部「……」

まゆり「そ、そんな顔されるとね、なんだかとっても悲しいのです……。フェリスちゃんと、ケンカでもした……のかな?」

岡部「いや、なんでもない……なんでもないんだ」

岡部(結局俺は……どうすることも……できない……)



207:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 22:19:01.15 ID:1xhGCn/90

~岡部宅~



岡部「……」

岡部(IBN5100の情報は手に入らない……)

岡部(まゆりを警察に匿うなどしても、結局捕まる可能性が高い……)

岡部(俺は知ってるんだ……この世界が、どれだけ不条理にできているか……)

 ピンポーン

岡部「……?」

岡部「なんだ……?」



211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 22:38:31.12 ID:XTl7WrZj0

誰だ



212:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 22:43:30.28 ID:61QSPoUG0

私だ



213:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 22:44:44.83 ID:nNvQ6sQN0

お前だったのか



223:ほしありがとう:2012/11/04(日) 22:56:01.03 ID:1xhGCn/90

────
───
──



 ガチャリ

岡部「……どちら様──」

???「あの私ま──」

岡部「おっ、お前はっ……」

???「え?」

岡部「クリスティーナァ!?」

紅莉栖「いやだからっ、私はクリスティーナでも助手でもないと!」

岡部(ど、どういうことだ? なぜ助手が俺の家に……)

紅莉栖「ってあれ……なんで私……」

紅莉栖「そ、それよりっ! え、えっと私、牧瀬紅莉栖と言います。岡部倫太郎さんいらっしゃいますか?」

岡部「……?」



230:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:00:31.77 ID:1xhGCn/90

岡部「俺とお前は……初対面……か?」

紅莉栖「そうですけど。てゆーかチェーンなんかかけちゃって……どうしたんですか?」

岡部「……お、岡部倫太郎は俺だ」

紅莉栖「あぁ、そうだったんですか」

岡部(助手にもフェイリスの時のように、リーディングシュタイナーが発動した……のか?)

岡部「な、何の用だ?」

紅莉栖「それなんですけど……」

紅莉栖「これ、見てください」

岡部「携帯……?」



233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:06:22.98 ID:1xhGCn/90

From:chris-m@docono.ne.jp
Sub:
本文:電子レンジを

 ピッ



From:chris-m@docono.ne.jp
Sub:
本文:岡部倫太郎に

 ピッ



From:chris-m@docono.ne.jp
Sub:
本文:返してあげて


岡部「これはっ……! 送信日時が未来からになっている……」

紅莉栖「このメールが未来から届いて、ずっとあなたを探していたんです」

岡部「いやそれより! 電子レンジというのは!」

紅莉栖「あぁ、それなんですけど、車に積んであるので手伝ってくれませんか? 一人じゃ重くて……」



236:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:10:52.72 ID:1xhGCn/90

────
───
──


岡部「こ、これは、紛れもなく電話レンジ(仮)ではないか!」

紅莉栖「電話レンジ……?」

岡部「ある……ペケロッパも変圧器も……その他Dメールを送るのに必要な器具も揃ってる!」

岡部(なぜこの世界線に電話レンジ(仮)が……いや、それよりも……)

岡部「なぜ助手が電話レンジ(仮)を持っているのだ!」

紅莉栖「だから私は助手じゃないと……それが私にも、よくわからないんです」

岡部「は?」

紅莉栖「気づいたらこれがあって……」

岡部「なに……?」

紅莉栖「誰かから預かった大切な物だっていう記憶はあったんですけど、それが誰なのか全然思い出せなくて……」

紅莉栖「あぁ、後、過去にメールが送れる電子レンジだということも覚えてます」

紅莉栖「……でもあなたのだったんですね」

岡部(ど、どういうことなんだ? リーディングシュタイナー? いや、違う気がする……)



242:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:15:36.97 ID:1xhGCn/90

紅莉栖「でも過去にメールが送れるって言っても、ちっとも送れないし……正直荷物になってて困ってたんです」

紅莉栖「そしたら本当に未来からメールが送られてきて……。やっぱりコレって本物なのかしら」

紅莉栖「良ければお話を聞かせてもらえませんか? どういう原理なのか興味深くて……」

岡部(一体コレはどういうことなんだ……? サッパリ分からんぞ?)

岡部「というか! お前アメリカに帰ったのではなかったのか!?」

紅莉栖「え? 確かに、私はアメリカの大学を卒業してますが……」

岡部「だったらなぜ日本にいる!」

紅莉栖「……いちゃ悪い? バリバリの日本人ですが何か」

紅莉栖「それより、この未来からのメール、説明してもらえませんか?」

岡部(なんにせよ……電話レンジが戻ってきた、ということは……)

紅莉栖「……? ちょっと、聞いてます?」

岡部「……してやる」

紅莉栖「え?」

岡部「説明してやるから、今すぐ車を出してくれ!」

紅莉栖「あ、ちょ、ちょっと何勝手に乗り込んで──」



243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:20:34.79 ID:1xhGCn/90

~大檜山ビル2階~



岡部「クックク、ミスターブラウンめっ、鍵なんぞかけおって」

岡部「だがその抵抗も虚しいかな」

岡部「この鳳凰院凶真! 鈴羽から鍵を受け取っていたのだっ!」

岡部「決して返すのを忘れていたわけではない」

岡部「フッフフフ! フハハ」

岡部「フゥーッハハハハハッ!」

紅莉栖「その笑い方やめて……」

岡部「電話レンジ(仮)が帰ってくればこっちのものどぅあ!」

紅莉栖「ねえ、さっさとメールの説明を……」

岡部(説明してやると言ったが、そんな暇はない。今は世界線を変える手立てを考えるのだ)



247:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:24:39.08 ID:1xhGCn/90

岡部(どうする? どうメールを送ればIBN5100が手に入る?)

岡部(柳林神社に奉納されていたが、すでに失われていた……この事実が指し示すことは)

岡部(フェイリスのDメールを取り消さず新しく送ったことが要因か、もしくは──)

岡部(ルカ子のDメールか萌郁のDメール。順番から言ってルカ子のDメールの可能性を当たった方が無難か?)

岡部(……だが俺はルカ子の母親のポケベル番号を知らんっ!)

岡部(一応、ルカ子に確認してみるか)

紅莉栖「あ、ちょっと! 待って! 待ちなさい!」

岡部「すぐ戻る」



248:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:28:47.87 ID:1xhGCn/90

~柳林神社~



るか「あ、こ、こんにちは。確か……岡部さん、でした……よね?」

岡部「あールカ子よ……」

るか「え、えっと、ボクの名前は……る、るか、ですけど……」

岡部「あ、あぁ……るか……よ」

岡部「……」

るか「……?」

岡部(ええい! どうすればいいのだ!)

るか「え、えっと……ボクに何か……用でしょうか……」

岡部(考えろ、俺は灰色の脳細胞を持つ狂気のマッドサイエンティスト……)

岡部(こんな少女を騙すなど、造作も無い! だが男だ!)

岡部(い、いや、どっちだ……? くそ、混乱している!)



251:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:34:06.28 ID:1xhGCn/90

岡部(そ、そうだ……)

岡部「その、お前の母親のポケベルに、変なメッセージ……」

岡部「例えば、野菜がどうとかいうメッセージを受信した……などということはないか?」

るか「お母さんの……ポケベルに……ですか?」

岡部「ああ」

るか「ちょっと、ボクにはわからないです……聞いてきましょうか?」

岡部「頼む……」

岡部「後! お前の母親のポケベルの番号も教えてもらえればなおありがたい!」

るか「え? 番号も……ですか?」

岡部「頼めるか?」

るか「え、えっと……あ、あの……お、お母さんはっ……」

岡部「……?」



252:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:38:18.08 ID:1xhGCn/90

岡部「……?」

るか「もう、け、結婚してて……」

岡部「…………?」

るか「その、不、不倫は、よくないと思、思いま──」

岡部「不倫などせんわっ!」

るか「──すっ……え?」

岡部「第一、聞くなら携帯の番号だろうっ! 俺が聞いてるのはポケベルだっ」

るか「あ……そ、そうですよね、やだ、ボクってば……」

岡部(ま、まぁ、ルカ子の母親なら、相当な美人なのだろうが)

るか「じゃ、じゃあちょっと聞いてきます……」



253:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:42:48.66 ID:1xhGCn/90

────
───
──



ラボに戻ってきた時、すでに紅莉栖の姿はなかった。
ただ説明求ムというメッセージと連絡先を残して。

結局、母親のポケベルに変なメッセージは届いていなかった、とのことだった。
世界線が大きく変動して1975年以降が書き換わったせいだろうか?
この世界線に移動してしまったおかげで、図らずともルカ子のDメールを取り消す形になってしまったのかもしれない。
つまりルカ子は男、という可能性が高い。

すまない、ルカ子……。


岡部(しかし……こうなると、IBN5100を手に入れるためには、どうDメールを送ればいいのか……)

岡部(いや、もはやIBN5100ではなく、他の手段で……)

岡部(何か手は……だが、迂闊に過去改変するような真似もしたくない……)

岡部(そういえば……なぜ助手が電話レンジを持っていたのかも気になる。本人は覚えていないと言っていたが……)

岡部「……そうだ」

岡部(あのパスワードがかけられた文書ファイル! あれを見ることが出来れば何かわかるかもしれない!)

岡部「となると……」



255:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:47:06.51 ID:1xhGCn/90

────
───
──

 バチバチバチバチ

岡部「来た! 放電現象!」

岡部(送信日時はあのファイルの最終更新の少し前の8月3日……)

岡部(このDメールで俺が応じるかは分からない……)

岡部(過去が変わらなければ、もう一通送るまで……)


To:mad-phoenix-kyoma@egweb.ne.jp
Sub:
本文:禁書目録パス
    steinsgateに
    変えてくれ


岡部「頼む……!」

 ピッ


指に力を入れた瞬間、世界が琥珀色に包まれぐにゃぐにゃと揺れ始める。
強烈な目眩とともに平衡感覚は失われていき──



257:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 23:51:43.10 ID:1xhGCn/90

──世界がぼやけている。
徐々に歪みが矯正され、感覚が戻ってきた。


岡部「……」

岡部(リーディングシュタイナーは発動した、過去が変わった……)

岡部(早速俺の部屋に──)




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