憧「しずに秘められた力」

2013-03-22 (金) 07:01  その他二次創作SS 咲-saki-   1コメント  
1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 19:42:36.58 ID:hfAFjDlM0

<阿知賀女子学院への通学路>

憧「…………」テクテク

穏乃「おっはよー!憧~!!」ダダダダッ!

憧「あ、おはよ」

穏乃「いや~!今日もいい天気だねー♪」ダダダダ(憧の周りをグルグル回る)

憧「朝から元気よすぎ」クスッ

憧(昔と全然変わらないんだから……そういえば和と友達になった日もこうやってあたしの周りを回ってたっけ)

憧(向こうの方からフリフリの服着た和が歩いてきて……)

グラッ..

憧「え?」

穏乃「~♪」ダダダダッ(憧の周りをグルグル回り続けている)

憧(何これ……頭がグラグラしてきた……目の前が……暗く………うわっ……体が引っ張られ………――――)

―――――――――――――

―――――――

―――


eval.gif咲-Saki-(11) (ヤングガンガンコミックス)





4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 19:45:42.06 ID:hfAFjDlM0

憧「―――……はっ!?」

憧(あれ?あたし……今どうなってたの?気絶してた?)

憧(体調が悪いわけでもなかったのにどうして?………それと………なんか見える景色が違う?全体的に大きいというか……)

穏乃「やぁ転校生さん」

憧「え?」

和「あ………」テクテク

憧「ええっ!!?」

憧(和が縮んだ!?ランドセル背負ってるし!!)

穏乃「どしたの?急に大声出して」

憧「だって!和が……小さくなってるから!」

穏乃「?」

憧「いや、小さくなるなんてありえないから他人のそら似か。でもフリフリをこれだけ着こなす子って和以外そうそういないだろうし…」ウーン

和「転校生とかフリフリとか呼ぶのやめてもらえませんか」

憧「え」



80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:56:04.96 ID:dKZsDF4a0

     ____    ━┓
   /      \   ┏┛
  /  \   ,_\.  ・
/    (●)゛ (●) \
|  ∪   (__人__)    |
/     ∩ノ ⊃  /
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |
  \ /___ /



5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 19:47:47.82 ID:hfAFjDlM0

穏乃「へぇ、じゃあなんて?」

和「私は和……原村 和です!!」

憧(……あれ?この会話……確か…)

穏乃「なんか…いいね!じゃあ…」

和「?」

穏乃「友達になろう!!――――和!」

憧「!!」

憧(やっぱり………和と友達になった日だ!この後、しずが駆けっこだー、って言って…)

穏乃「………んんんんんー!よぉーし、駆けっこだー!!」

和「え?」

憧「………」

穏乃「和!行こう!」ダダッ!

和「え?ちょっと…待って下さい!」ダッ



6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 19:50:23.70 ID:hfAFjDlM0

憧「…………」

憧(………昔に……戻ってきてる?そんなバカな……)タタッ

憧「!?早く走れない……?」

憧(わっ!あたしの体も縮んでる!?やけに建物が高いと思ったら……)

穏乃「憧ー!」

憧「あ、うん!」ダダッ!

憧(この状況………普通に考えたら夢だけど…)

憧(地面を蹴る感触、木や花の匂い……あまりにもリアルすぎる感覚…)

憧(ここまで鮮明な夢は見た事ない)

憧(でも……夢じゃないとしたら……何?)

憧「………………」

憧「タイムスリップ………とか……?」

憧(いやいや!夢ではないからって飛躍しすぎだって!)

憧(…………だけど……あたしと和が縮んでる理由は……)



7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 19:52:56.31 ID:hfAFjDlM0

和「はぁ、はっ…はぁ……」フラフラー..

憧「……ねえ和」

和「は、は…い?な、なんですか……今は……お話出来るっ……よ、よゆ、う……が……」ゼェゼェ

憧「……今って西暦何年だっけ?」

憧(もしタイムスリップしてないとしたら今年は2××○年だけど……)ゴクリ

和「?そんなの……簡単、じゃないですか……2×××年です……よっ……」

憧「!!」

憧(和と出会った年だ………まさか本当に……)

憧「タイムスリップ……?」

穏乃「おそいよ和っ」



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 19:55:28.64 ID:hfAFjDlM0

憧「…………」

穏乃「憧も早く早く!」

憧「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」ダダダダッ!!

和「ぅえっ!?」

穏乃「お、おお……気合入ってるね!負けないぞー!」ダダッ!

憧(マジで!?マジで!?こんな映画みたいな出来事があるなんて!!信じらんない!やっばいテンション上がりまくり!!)

憧「ああああああああああああああああああ!!」ダダダダダ!

グラッ

憧(あれ?……頭がグラグラするこの感じは……ここに来る前の……あ……だんだん暗く……なって……――――)

―――――――――――――

―――――――

―――



10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 19:59:50.22 ID:hfAFjDlM0

憧「―――……っ!?」ハッ

穏乃「ふぃ~、いい汗かいた」

憧「あ……あれ?」キョロキョロ

憧(体が元に戻ってる……)

穏乃「ん?どしたの?」

憧「いや、別に何も……あ、ねえ。今って西暦何年だっけ?」

穏乃「え?2××○年じゃん……忘れたの?」

憧「まぁ、ちょっとね」

憧(元の時間に帰って来たんだ……よね?あれはタイムスリップだったよね?)

憧(急にいつも通りの日常に戻ると、やっぱり夢だったのかと思えるけど……)

穏乃「?」

憧「あたしさ、何してた?」

穏乃「え?」

憧「しずがあたしの周りをグルグル回ってた時よ。立ったまま寝てた……とか」



11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:02:00.62 ID:hfAFjDlM0

穏乃「あはは、立ったまま寝るわけないじゃん。普通に起きてたよ?」

憧(やっぱり夢を見てたわけじゃない……となると本当に……?)ゾクゾクッ

穏乃「変な憧~♪」

憧「しず!」

穏乃「何?」

憧「今日の放課後、ちょっと付き合ってもらっていいかな?」

穏乃「?いいけど……」

憧「ありがとう!」

穏乃「うん」

憧「…………」

憧(過去に戻る直前まであたしの周りにはしずしかいなかった。という事はタイムスリップを発生させる条件にしずが関係してる可能性は高い…)

憧(タイムスリップを発生させる方法がわかれば………過去に戻れる……)

憧(過去に戻れれば、あの日の自分を止められる……)

憧(あたしとしずの間に出来た隙間を……埋められるんだ!)



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:06:16.85 ID:hfAFjDlM0

夜―――

<新子家 憧の部屋>

憧「ふぅ、疲れた……」ゴローン

憧(自分でも驚くぐらい興奮してはしゃいじゃったもんね)

憧「……ま、当然か」

憧(タイムスリップする方法がわかったんだもん。多分、全世界であたしとしずだけが知ってる)

憧(その方法ってのが『しずに自分の周りをグルグル回られている間に過去を思い描く』なんて、どういう原理なんだかわかんないけどとにかく過去へ戻れた)

憧(思い描くイメージが固まってなかったりすると失敗するけど、それも色んな思い出に結びつく阿知賀への通学路でやれば100パーセント成功するから問題無し)

憧(それと過去にとどまれる時間は『周回数×10秒前後』だった。しずが止まる、あるいは回るスピードが遅すぎた瞬間、現代に帰る)

憧(つまり、しずがあたしの周りを回ってくれている間は、ずっと過去にとどまれる)

憧(とはいえ、100周してくれたとしても16分前後だから、それほど長時間は無理…しずに負担が掛かりすぎる)

憧(でも……あたしが変えたい過去は、10分あればきっと変えられる)

憧(あの時、間違った選択をした自分を止めれば……)



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:08:19.63 ID:gS9rnAka0

人力かよwww



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:08:42.31 ID:hfAFjDlM0

憧「~~~~っ!!やっばい!ワクワクしすぎて眠れないよ~!」

憧(しょうがないよね!タイムスリップだもん!誰だって過去を変えられると知ったら絶対……あ)

憧(………もし、しずがタイムスリップを発生させられると誰かに知られたら……)

憧(人から人へと話が伝わり、大ニュースになって世界中の研究者がしずを調べるために色んな実験をしようと群がる)

憧(結果しずの自由は奪われて研究室の中で一生を終える……なんて事になる可能性はゼロじゃないかもしれない!)ゾクッ!

憧「っ!」ピピピッ

プルルルル..

憧(放課後に付き合ってもらった時、本人に隠すのは悪いと思ってタイムスリップの事を言っちゃったけど……)

憧(あたしは事の重大さを認識してなかった!本当にバカだ!)

ガチャ

穏乃『もしもし~、どしたの?』

憧「あ、しずっ!?夜遅くにごめん!あのさ、放課後に話したタイ…しずの秘密、誰かに喋った!?」

穏乃『え?』

憧「しずが起こした現象について!誰かに喋った!?」

穏乃『ううん、誰にも言ってないけど……』



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:10:49.25 ID:hfAFjDlM0

憧「ほっ……よかった」

穏乃『……言っちゃまずいかな?』

憧「は?」

穏乃『中学の時の友達とかに……』

憧「ダメに決まってるじゃん!」

穏乃『なんで?』

憧「それは……その子が他の人にベラベラ喋って回ったりしたら大変だからよ!」

憧(研究者に捕まるってのは大げさだとしても、大勢の人に頼まれてヘトヘトになるまで走らされる!悪用される可能性だって……)

穏乃『うーん、大丈夫だと思うけどなぁ』

憧「しずを利用しようとか考えるかもしれないし!」

穏乃『いやいや……憧は知らないだろうけど、すっごくいい子だし、今でもたまに遊ぶくらい仲良しだからそれはないと思うけど…』

憧「っ!」

穏乃『……言わない方がいいかな?』

憧「………あたしは……そう思う」



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:13:07.13 ID:hfAFjDlM0

穏乃『そっか……うん、じゃあそうするよ。わざわざ電話くれてありがと』

憧「うん……」

穏乃『それじゃ』

憧「っ!あのさっ!……その……中学の友達を悪く言っちゃって……ごめん」

穏乃『え?ううん、私を心配してくれての事だもん。それに憧はあの子を知らないんだし、しょうがないよ』

憧「………そう言ってくれると助かるよ……」

穏乃『ん。それじゃまた明日、じゃね!』

憧「うん…じゃあね」

ピッ..

憧「……………」

憧(そう……あたしはしずの中学時代を知らない……聞こうともしなかったから)

憧(しずが中学時代をどう過ごしていたかも、誰と過ごしていたかも……知らない……)

憧(その空白の期間が……あたしから勇気を奪うんだ)

憧(しずに抱いているこの気持ちを告白するための勇気を……)



20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:19:20.50 ID:hfAFjDlM0

3日後―――

<阿知賀女子学院への通学路>

憧「ごめんね、ちょっと遅れちゃった」タタッ

穏乃「ううん、本当に今来たとこだから全然大丈夫」

憧「用意するのに手間取っちゃって………はい。これ、プレゼント」ガサッ

穏乃「え?ありがとう……えっとこれは………わっ!!」ガサガサ..

穏乃「新しいジャージだ!わわ、靴も!!」

憧「前にしずが欲しがってた事を覚えててさ」

穏乃「おおお……でもこれ結構高かったでしょ?」

憧「んー、まぁ少しね」ハハ

穏乃「本当にありがとう!すっげー嬉しい!誕生日でもなんでもないのにプレゼントくれるなんて……」

憧「…………」

穏乃「私もお返しに今度………憧?」

憧「…………」

穏乃「……どうしたの?」



23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:23:39.61 ID:hfAFjDlM0

憧「いや……その……」

穏乃「?」

憧「喜んでもらえて嬉しいんだけど、それをあげるのには裏があるっていうかさ……」

穏乃「裏?」

憧「うん。しずにお願いがあって……ね。そのお願いを聞いてもらうため、って事だから」

穏乃「お願いって何?」

憧「……タイムスリップ……」

穏乃「あ、やっぱり?」

憧「うん……」

穏乃「ん?だからってなんでプレゼントくれるの?」



24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:25:54.42 ID:hfAFjDlM0

憧「え?だって、あたしの個人的な都合のために何周も走らせるんだから……普通に悪いじゃん」

穏乃「???憧のお願いなら全然いいんだけど。友達だしさ」ヘヘ

憧「しず……」

穏乃「……よしっ!じゃあ早速やろうか?何周走ればいい!?」

憧「あ、その……60周……お願いしていい?」

穏乃「おうっ!任せとけ!」

憧「…………」

穏乃「えーと、確かタイムスリップするための準備として、最初の10周は回数に入れないんだっけ?」

憧「そう。頭の中で描く時間が必要だから」

穏乃「という事は全部で70周か……了解。準備はいい?」

憧「……うん。お願い」



25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:28:03.02 ID:hfAFjDlM0

穏乃「じゃあ行くよ?よーい……スタート!」ダッ!

憧「…………」スゥー..

穏乃「…………」ダダダダ(憧の周りをグルグル回る)

憧(あの時……あたしが意地を張らなければ、しずとずっと一緒にいられた……)

憧(自分に素直になっていれば……全てはあの時………)

穏乃「…………」ダダダダッ(憧の周りをグルグル回り続けている)

グラッ..

憧(来た!このまま……流れに身を委ねて………――――)

―――――――――――――

―――――――

―――



28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:30:33.98 ID:hfAFjDlM0

憧「―――……っ!」ハッ!

憧(体は………よし!小さくなってる。状況は……)キョロキョロ

穏乃「あはは」テクテク

和「穏乃は相変わらずですね」テクテク

憧(しずと和と3人で歩いて阿知賀の校門に向かってる……あの時だ……ちゃんと来れた……)

憧(そりゃそうか……何度も思い出して後悔した場面だもん……思い描くのを失敗するはずもない)

女生徒A「じゃね~」

女生徒B「メールするー」

和「………ここの制服はいいですね…」

憧「!」

憧(きたっ!!)ドクン!

憧(この後、どこの中学に行くかの話になって……)



29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:33:18.38 ID:hfAFjDlM0

穏乃「玄さんから借りれば?」

和「いえ…制服として着たいなぁと…」

憧「……和。来年は阿知賀に行くの?」

和「そうですね…そうしたいです」

穏乃「私も阿知賀かなー。ここの部室好きだし」

憧「…………」

憧(ここで過去のあたしは……阿太中に行くと答えた)

憧(麻雀がやりたかったのは本当だし、阿太中も選択肢の1つだったけど、それ以上にしずの気を惹きたかった)

憧(しずが和と仲良くなるにつれ感じる危機感を解消したかったから…)

憧(あたしが阿太中に行くと言ったら、しずはきっと止めてくれる。その時、あたしはしずにとって大切な存在だと実感できるって思った)

憧(そうすれば、ずっと感じていた危機感も吹き飛ぶと信じて疑わずにいた)

憧(……でも、それは大きな間違いだった……だから!)



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:35:50.05 ID:hfAFjDlM0

憧「……あたしも阿知賀だね!」

穏乃「おおー!良かった~!憧も一緒かぁ!!」

憧「当然!しずと離れ離れになるなんてありえないよ!」

穏乃「嬉しい事言ってくれるじゃんか!だよね!いやぁ、私は最初から憧はそう言うと思ってたんだ~!!」

和「よく言いますね。心配していたじゃないですか」フフッ

憧「え?そうなの?」

和「憧は阿太峯に行くかもしれない、と不安そうに言ってましたから」

穏乃「わわっ!それ内緒だって!」

憧「しず……」

憧(あたしが阿太中に行くって言った時、平気そうに見えたけど……心の中では悲しんでくれてたの……?)

憧「……ありがと」フフッ



32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:42:02.40 ID:hfAFjDlM0

穏乃「うっ……た、ただ憧と離れるの……寂しいなって思って……ポロっと言っただけで別にその…」

憧(その言葉だけでも……だいぶ救われるよ)

憧(……このまま当時を思い出しながら3人で過ごしたくもあるけど……あたしにはやる事がある……)

憧(ここでの宣言とは別に、あたしが阿知賀に通うようにしなければ未来は変わらない。だから……)

憧「あー!あたし急用思い出した!」

穏乃・和「え」

憧「だから今日はもう帰る!今日は2人で遊んでて!」

穏乃「え、それなら私も一緒に」

憧「本当ごめん!それじゃ!」ダダダダッ!

和「?」



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:44:34.50 ID:hfAFjDlM0

<新子家>

憧「っ!」ガラガラッ!

憧母「あら?もう帰ってきたの?」

憧「お母さん!」

憧母「何?」

憧「あたし、中学は阿知賀に行くから!」

憧母「そうなの?」

憧「うん!そう決めた!だから、後であたしが何を言っても阿知賀に行くように言い聞かせて!」

憧母「え?え?」

憧「お願いね!」タタッ!

憧母「あ、憧?」

憧(これであたしが阿知賀に行く確率は上がるはず……次は部屋で…)タタ

望「……」スッ

憧(え?お姉ちゃん!?やばっ、ぶつかる!!)

望「えっ!?」



36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:47:02.68 ID:hfAFjDlM0

ドシン!

憧「っ!」バタッ!

望「わわ!」バタン! パリーン!

憧「痛た……ご、ごめん……」

望「ビックリした……急に目の前に飛び出してくるから…………あああ!!親戚のおじさんにいただいた花瓶が!」

憧「うっ……」

憧(あれって確か……昔からずっとリビングに飾ってある花瓶だ……結構な値打ち物らしいけど……)

憧母「すごい音がしたけど、大丈夫~?」

望「やっば…お母さんが来る……あ、憧!」

憧「……お姉ちゃんごめん!」タタッ!

憧(今のあたしはやる事があるんだ!)

望「ええっ!?ちょっと!どこ行くのよ~!」



37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:49:48.43 ID:hfAFjDlM0

<憧の部屋>

憧「…………」ゴソゴソ

憧「あった!この紙に……………」カキカキカキ

憧(急げ!途中でタイムアップだけは避けないと!)カキカキカキ!

憧「……………よし、完成!この手紙を封筒に入れて、あたし以外は開けない引出しに……っと。これでオッケー」

憧(あたし宛の手紙……これをこの時代のあたしが読めばきっと阿知賀に決める…)

憧(最初はうさんくさいと思うかもしれないけど、あたし以外は知らない事も書いたし最終的には信じるはず)

憧「…………」

グラッ...

憧「あ……」

憧(このタイミングで……危ないところだったけど準備は全て終わった。これであたしは阿知賀に通い、しずと疎遠にもならずにすむ)

憧(元の時代のあたしとしずはどうなってるんだろう?もしかしてすでに恋人……だったり……して……――――)

―――――――――――――

―――――――

―――



38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:52:24.95 ID:hfAFjDlM0

憧「―――……っ!」

穏乃「………どうだった?」

憧「あ……うん、全部上手くいった」

穏乃「おお!やったね!」

憧「うん、ありがとう……しずは大丈夫?疲れてない?」

穏乃「え?全然平気!まだまだ余裕だよ!」

憧「そっか、あたしのためにたくさん走らせちゃってごめんね」

穏乃「いいってそんなの」フフッ

憧「…………」ジー

穏乃「……何?」キョトン

憧「う、ううん、なんでもない……」

穏乃「変なの」アハハ

憧(恋人どころか普段と全然変わらない……まぁいいか。とにかくあたしが阿知賀に行ったかをしずに聞いて…)

憧「…………」



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:54:59.12 ID:hfAFjDlM0

憧(いや、それを聞いたらあたしがどの過去を変えたかったかしずにバレる……そしたら芋づる式にしずへの気持ちも……)

憧(あれ?でも過去が変わってれば阿知賀に行ってるのが当然だから大した問題は……うーん)

穏乃「どうしたの?黙り込んで」

憧「え?ああ、ちょっと考え事してて。もう終わったから」

穏乃「そっか」

憧(とりあえず、今すぐに確認しなければいけないわけじゃないし。家に帰ってお母さんかお姉ちゃんに聞けばいいや)

憧「あ、そうだ。これからどうする?」

穏乃「うーん、特に何も決めてないんだけど……」

憧「じゃあさ、どっかでゆっくり休もうよ。おごるからさ」

穏乃「え!?いいの!?」

憧「もちろん!いっぱい走って疲れたっしょ?」

穏乃「やったー!ありがとー!」ワーイ

憧(今はしずと一緒の時間を楽しもう)



41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 20:57:45.29 ID:hfAFjDlM0

夕方―――

<新子家 リビング>

憧「ただいま」

望「おかえり~」

憧「あ、お姉ちゃん」

望「ん?」

憧「あのさ……あたし、中学はどこ行ったっけ?」

望「は?」



43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:00:15.14 ID:hfAFjDlM0

憧「…………」ドキドキドキ..

望「……急にどうしたのよ?」

憧「い、いいから答えてよ」

望「阿太中じゃん」

憧「!!?」

憧(阿知賀じゃない………?どうして……)

望「ねえ、なんで今さらそんな事聞くの?」

憧「っ!」ダッ!

望「あ……なんなんだろ?」



44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:01:17.44 ID:EtgBuRiK0

未来は変わらなかったのか
http://www.amazon.co.jp/dp/B00842A6PU/




45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:04:58.88 ID:hfAFjDlM0

<憧の部屋>

憧「…………っ」ガチャ!

憧(手紙さえ読んでたら阿知賀以外に通うという選択肢はないはずなのに……もしかして手紙を読んでない?)

憧(……手紙の最後に、読み終えたら信じようが信じまいがこの引出しの奥に入れておくよう書いた……それを守っていればここに……)ガサ..

憧「……………無い……」

憧(手紙を読んでない?それとも、未来の自分からの手紙なんて全く信用しなかった?)

憧(……でも、あたしの性格を考慮した上で書いたから、読んでいたら絶対無視はしない……ならやっぱり読んでない?でも目に入る場所に置いたし…)

憧「…………」ハァ..

憧(しずたちへの宣言、お母さんへの伝言、自分への手紙……この3つでもあたしの行動は変えられなかったというの……?)



47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:07:25.35 ID:hfAFjDlM0

<リビング>

憧「…………」

望「あ、戻って来た……ってどうしたの?顔色悪いけど」

憧「……ねえ、あたしなんで阿太中に行ったの?」

望「え?麻雀がしたいからって言ってたじゃん」

憧「そうだけど……お母さんが止めたでしょ?それでも聞かなかったの?」

望「お母さんは別に止めなかったよ?前々から憧がやりたいようにやればいいって考えだし」

憧「それは……でも……あの日、阿知賀に行かせるようお願いしたもん!」

望「あの日って?」

憧「覚えてない?お姉ちゃんとぶつかって、親戚のおじさんからもらった花瓶割っちゃった日!あの日にお母さんにお願いしたの!」

望「花瓶?」



48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:09:47.58 ID:hfAFjDlM0

憧「そうだよ!いつもリビングに飾ってた!ほら、割れるまではあそこ………に……………え?」

望「割れてないよ?違う花瓶の事言ってない?」

憧「そんな………」ダダッ!

憧「…………」ジー

望「だから割れてないってば」

憧(修復した形跡すら無い……という事は、本当に花瓶は割れてない……つまり…)

憧(……過去に起きた出来事が反映されてない……?)

望「?さっきからどうしたの?花瓶に何か……」

憧「どうして……?」フラフラ

望「え?ちょっと……憧?」

憧(……何が間違ってたの?わからない……)



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:13:25.81 ID:hfAFjDlM0

翌日―――

<阿知賀女子学院への通学路>

憧「…………」

憧(あの後、あたしは過去を変えられなかった理由を考え続けた)

憧(手紙の内容が悪かったのか、お母さんへの頼み方がいけなかったのか……他にも色々考えたけど)

憧(割れたはずの花瓶が割れてなかったという事から最悪な答えが思い浮かぶ)

憧(過去での行動に関係なく重大な問題があるのではないか…)

憧(それは『過去は変えられないかもしれない』……という事)

憧(タイムスリップ自体が信じられないような現象だからって、イコールで過去を変えられると断定するのは早計だったかもしれない)



51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:15:56.50 ID:hfAFjDlM0

憧(パラレルワールドとか難しい事はわからないけど…)

憧(今あたしがいる現代は、あたしが阿太中に通っていたという前提で成り立つ世界)

憧(過去に戻って阿知賀へ行かせるよう仕向けたとしても、今現在この世界に存在するあたしが阿太中に行ったというのは変わらない)

憧(過去を変えた事によって生じるのは、あたしが阿知賀に行った世界が新たに誕生する。それだけかもしれない……)

憧(…………)

憧「………いや、まだそうと決まったわけじゃない」

憧(これはあくまであたしの仮説だ。もう1度しずに協力してもらって、それでもダメならタイムスリップについて勉強して……)

穏乃「お待たせ~!」タタタッ!

憧「あ」

穏乃「ごめんごめん、待った?」

憧「ううん全然。ごめんね、今日もまたお願いしちゃってさ」



53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:18:15.29 ID:hfAFjDlM0

穏乃「いいって。それで?どんくらい回ればいいの?」

憧「10周でお願い」

穏乃「10周だけ?」

憧「うん」

穏乃「わかった。じゃあ、準備はいい?行くよ………っ!」ダダダッ!

憧「…………」スゥー..ハァー..

穏乃「っ!」ダダダダッ!

憧「…………――――」

―――――――――――――

―――――――

―――



55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:20:43.95 ID:hfAFjDlM0

憧「―――……っ!」ハッ

憧「…………」キョロキョロ

憧(阿知賀への通学路、あたしの体も縮んでない。うん、4日前に来れたみたい)

憧(なら、このまま歩いていれば…)テクテク

穏乃「おっはよー!憧~!!」ダダダダッ!

憧「………おはよ」

憧(この後、しずがあたしの周りをグルグルと回り出す……そこで)

穏乃「いや~!今日もいい天気だねー♪」ダダダダ

ガシッ!

穏乃「ほ?」ピタッ

憧「…………」グイイ

穏乃「なんで裾を掴むの?」



57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:22:56.11 ID:hfAFjDlM0

憧「……グルグル回るの禁止。目が回るから」

穏乃「そう?」

憧(ここでしずを止める事で、タイムスリップの事を知る未来は無くなった)

憧(……これでもし現代に帰った時、しずがタイムスリップの事を知っていたら……少なくとも今のやり方では過去を変えられないという事になる)

グラッ..

憧「………っ」

憧(お願い!変わってて!………――――)


―――――――――――――

―――――――

―――



58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:25:12.67 ID:hfAFjDlM0

憧「―――………っ」

穏乃「………どう?成功した?」

憧「あ、うん………それで……あの、さ…」ドクン..ドクン..

憧(……過去が変わったならタイムスリップの事を知らない。変わってないなら……)ドクンドクン!

憧「しずは……タイムスリップのやり方って知ってる?」

穏乃「え?」

憧「…………」ドクッドクッドクッ..

穏乃「もちろん知ってるよ」

憧「!!」

穏乃「だって憧が教えてくれたじゃん」

憧「そう……だよね」

憧(やっぱり……ダメなんだ……)

穏乃「………どうかした?」

憧「ううん、何も……」

穏乃「…………」



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:27:27.55 ID:hfAFjDlM0

憧「……………」

憧(やっぱり過去は変えられない……?そんなの……認めたくないよ)

穏乃「憧?」

憧(希望だけ見せておいて今さら無理なんて……)

穏乃「……………」

憧「…………」

穏乃「………憧は……変えたい過去があるの?」

憧「え……」

穏乃「……よくわかんないけど、過去から帰ってきて落ち込んでるって事は過去を変えられなかったんでしょ?」

憧「…………うん」

穏乃「それは……そんなに悲しい事なの?」

憧「えっ?」

穏乃「……私もさ、実は結構後悔してる事あるんだよね。一時期麻雀をやめちゃったのもそうだし」

憧「…………」



60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:30:17.04 ID:hfAFjDlM0

穏乃「特に後悔してるのは、憧が阿太中に行くって言った時に止められなかった事」

憧「!?」ピク

穏乃「あん時はさ、阿知賀は麻雀部が無いからって言われて納得した風に振る舞ったけど、本当は止めたかった」

憧「しず……」

穏乃「結局別々の学校に通うようになって……でも放課後くらいは遊ぼうと思ったんだけど…」

穏乃「部室が好きだとかそんな理由で阿知賀を選んだ私が、ちゃんとやりたい事を見つけて阿太中で頑張ってる憧を誘うのが……悪い気がしてさ」

憧「そんなの……」

穏乃「うん。今思えば考えすぎだったよね。私らしくない」アハハ

憧「…………」

穏乃「それでね『放課後すら憧と遊ばなくなっちゃった』とか和に愚痴っぽく言ってみたりもしたんだ」

穏乃「そうすれば和から3人で遊ぼう、っていう流れになるかなーとか思ってさ」

憧「…………」

穏乃「そしたら和から転校するって聞かされて……」

憧「…………」



63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:32:17.76 ID:gS9rnAka0

変える必要なんてなかった



64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:32:25.56 ID:hfAFjDlM0

穏乃「…………」

憧「…………」

穏乃「…………私さ、嬉しかったんだ」

憧「えっ?」

穏乃「タイムスリップが出来るって知った時。過去を変えられるなんて夢みたいだって」

憧「……うん」

穏乃「自分自身は過去へ行けなくても、それこそ憧にお願いして過去を変えてもらえば……とか考えてさ」

憧「…………」

穏乃「でも……いざ自分が誰かを過去に戻せるってなると急に客観的な見方になっちゃって……複雑な心境になるんだ」

憧「……どんな?」

穏乃「……そんなに今が嫌なのかな?って、悲しくなる」

憧「あ………」

穏乃「憧だと特にね。はは………なんか不思議だよね。自分だって過去を変えたいって願ってたのに」

憧「…………」



65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:34:46.98 ID:hfAFjDlM0

穏乃「赤土さんがいなくなって、憧が阿太中に行って、和が転校して……」

穏乃「寂しさに慣れる事で大人になっていくのかな、なんて思ってたところに和の活躍をテレビで観て触発されて全国を目指したくなった」

穏乃「麻雀部を復活させたのは和と会うのが1番の目的だったけど、麻雀部でみんなと過ごすうちにもっと大切なものを思い出したんだ」

憧「大切なもの……?」

穏乃「うん、みんなと一緒に過ごす事の楽しさ。私がずっと好きだった空気」

憧「あ……」

穏乃「夜遅くになって帰らないといけない時に感じた寂しい気持ち。でもそれ以上にまた明日遊べる事が楽しみな気持ち」

憧「…………」

穏乃「周りが変化して寂しさに襲われた時、寂しさに慣れようとするんじゃなくて楽しくなるように無理矢理にでも動けばよかったんだって気付けたし」

穏乃「麻雀部だって最初は私のわがままからの見切り発車だったけど、途中から絶対なんとかなるって思えた」

憧「……どうして?メンバーの当ても無かったはずなのに……」

穏乃「…………憧のおかげだよ」

憧「え…」



69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:37:04.02 ID:hfAFjDlM0

穏乃「憧が晩成を蹴って阿知賀に来るって言ってくれた時……すっごい…すっごいすっごいすっごい嬉しかった!」

憧「っ……」

穏乃「その気持ちだけで絶対いけると思ったんだ!諦めずに頑張れるって!」

憧「しず……」

穏乃「だからさ……その時の喜びも……過去を変えたら無かった事になるかもしれないと思うと……」

憧「…………」

穏乃「……あ、ごめん。別にタイムスリップするのが悪いって意味じゃなくて……その……」

憧「うん……わかってるよ」

憧(そう……本当はわかってたんだ。あたしが過去を変えようとするのは臆病さからきてる事を……)

憧(しずに告白してフラれたら……という恐怖から逃げたかったんだ……)

憧(だから過去を変えてしずとの距離を詰める事で告白が成功する確率を高めようとして……ううん、あわよくばすでに付き合っている未来に作り替えようとした)

憧「………情けない…」ボソッ



72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:39:44.02 ID:hfAFjDlM0

憧(しずがあたしとの別れを寂しがってくれてた時、あたしは何してた?)

憧(どうして阿太中に行く事を止めてくれなかったの、なんて……自分の事ばかりでしずの気持ちを考えようとしなかった)

憧(阿太中に行ってからもそうだ。しずから遊びの誘いがこない寂しさを埋めるために部活に没頭した。自分から誘えばいいのにそれもしないで……)

憧(そのくせ、しずからもらった電話1本で舞い上がって自分で決めた進学コースをひっくり返した)

憧(……挙句の果てに、タイムスリップして自分の怠慢を帳消しにして、告白せずにしずと恋人になろうなんて……)

憧「はは……」

憧(最悪だ、あたし)

穏乃「…………」

憧「……………」

憧(こんなあたしじゃ……しずに告白する資格なんて……ない……)

憧(資格がないなら……どうする……?もう……しずを…………諦める……?)

穏乃「……もう1度やろっか?タイムスリップ」

憧「え?」



73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:43:42.14 ID:hfAFjDlM0

穏乃「だって、落ち込んだ顔して戻ってきたって事はミスったんでしょ?だったらもう1回やりたいよね、うん」

憧「しず……」

穏乃「いやぁ本当ごめん!私が変な事言ったから頼みづらくなっちゃったよね。失敗失敗」アハハ

穏乃「誰だって変えたい過去の1つや2つあるんだから、チャンスがあれば挑戦するのが普通!」

憧「あ……」

憧(この感じ……あたしが阿太中に行くって言った時と同じだ……)

穏乃「さぁさぁ!何周回ればいい?遠慮なくどうぞ!」

憧(当時はあたしがいなくても平気なんだって落ち込んだけど、実際はしずの強がりだった)

憧(そんなしずの目に、今を見ようとせずに過去を変えようとするあたしはどう映ってる?)

憧(しずと一緒にいる『今』に不満で、他の『今』を手に入れようとしてるみたいじゃない……)

憧「………っ!!」ドクン

憧(まただ……またあたしは同じ事を繰り返そうとしてる……)



74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:46:44.35 ID:hfAFjDlM0

憧(あたしより和を想ってるかもしれないとか、中学時代の空白期間とか……)

憧(自分の中だけで悪いイメージを想像し、告白を諦めて現状維持ばかり……)ギリリ..

憧(そんな想像になんの価値がある……ただ逃げるための理由として作り上げただけだ)

憧(中学時代に今のあたしを想像出来た?しずと再会してインハイで活躍したあたし!過去へタイムスリップしたあたしを!そんなの……想像出来るわけない!)

憧(だったら……自分が想像して決めつけた未来に絶望するなんて馬鹿げてる!)

憧(フラれても諦められないくせに……ただ傷付くのを怖がってるならそう認めればいい)

憧(認めた上で……覚悟を決めて行動する!それぐらい出来なきゃ……しずの恋人になる資格は無い!!)

憧「しずっ!!」

穏乃「!」



76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:48:56.28 ID:hfAFjDlM0

憧「あ…あたしはっ!後悔してる事がある!だから……過去を変えたかった!」

憧(声が……足が震える……フラれたらって思うと……苦しい…)

穏乃「憧……」

憧「でもっ……問題は過去じゃなくてっ!ただあたしが……弱いだけで……!」

憧(怖い……怖い……怖い…………でも……)

穏乃「…………」

憧「………今までっ!言えなかったけど……」

憧(怖いからってしずを傷付けていい理由にはならない!)

穏乃「…………」

憧「………あ、あたしっ!」

憧「……ずっと……しずの事が………―――」



77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:51:41.12 ID:hfAFjDlM0

数年後―――

<阿知賀女子学院への通学路>

憧「……懐かしいな」

憧(風も、匂いも……あの時と変わらない)

憧(ここから動き出したんだよね。和と友達になり、しずの力にも気付いた)

憧(……あの力は結局なんだったんだろう?当時はタイムスリップだと信じてたけど…)

穏乃「憧ー!!」ダダダッ!

憧「あ、戻ってきた」

穏乃「っと!」キキーッ!

憧「そんな急に止まるとケガするよ?」

穏乃「大丈夫大丈夫」

憧「それにしても……懐かしいのはわかるけど全力で走らなくても」

穏乃「いやぁ、やっぱりこの道に来たら走らないとね!」

憧「ちょっとわかるけどさ」クスッ



79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:54:52.28 ID:hfAFjDlM0

穏乃「で、さっきからボーっと立ってたけど、どうかしたの?」

憧「うん…昔を思い出してて。タイムスリップってなんだったのかなって」

穏乃「ああ……そういえばあれから1度もやってないね。したいの?」

憧「ううん。ただちょっと気になっただけ……ってそれもすごいわね。もしかしたら世紀の大発見かもしれないのに」

穏乃「あはは、確かに。でもお互い、あれが転機になったのは間違いないよね」

憧「そうね。しずが高2になっていきなり陸上始めるって言った時はビックリしたなー」

穏乃「……実のところ、プロ雀士になりたいとも思ってたんだけど、タイムスリップのために走り回ってたら走る楽しさを再確認出来てさ」

憧「ちょっと前までインハイ目指して麻雀漬けだったもんね」

穏乃「うん。それで麻雀より魅力を感じちゃって。遅まきながら陸上で世界を目指してみようってね」

憧「それでオリンピック代表に選ばれるんだから……大したものよね」フフッ



81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:57:24.25 ID:hfAFjDlM0

穏乃「いやー、照れるなぁ。でも憧だってすごいじゃん。今シーズンの成績は赤土さんと大差ないし、上位だよ!」

憧「うん……そうだね、調子いいかな」ヘヘ

穏乃「もしかしたら近いうちにプロ麻雀せんべいのスターカードになるかもよ?」

憧「……それいいね」

穏乃「あ、喜んでる」

憧「う、うるさいなぁ」

穏乃「あははは」

憧「もう」クス

穏乃「はは……は…………」

穏乃「………………………」

憧「?」



82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 21:59:33.74 ID:hfAFjDlM0

穏乃「え、えーと……さ」

憧「な、何?」

穏乃「今日は……楽しかった?」

憧「え?うん。久しぶりに地元に帰ってきて色々回れたし」

穏乃「そっか、よかった…」

憧「?どうしたのよ急に……」

穏乃「…………」

憧「……………」

穏乃「これ……プレゼント」

憧「え?でも今日は別に誕生日でも無いし」

穏乃「……前に憧も誕生日じゃないのにプレゼントくれたじゃん。そのお返し」

憧「……それ、ずいぶん前だけど……律儀ね。開けていい?」

穏乃「う、うん……」



83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 22:01:45.37 ID:hfAFjDlM0

憧(小さい箱……アクセかな?)カパッ

憧「あ…………」

憧(指輪……)

穏乃「…………」

憧「……これって……!」

穏乃「その………私……やっぱり……これからも憧とずっと一緒にいたい……」

憧「しず……」ウル..

穏乃「憧がいないと私はダメなんだ……でも憧が傍にいてくれればいくらでも頑張れる」

憧「うぅ……」

穏乃「私に出来る事は憧を引っ張っていくぐらいだけど……」

穏乃「憧が見たいもの、憧が行きたいところ、憧が望んでいる未来……どこへだって連れて行く」

憧「…ぅ……」グス..

穏乃「絶対幸せにするから…………結婚しよう」

憧「しずっ!」ガバッ!

穏乃「憧……」ギュ..



87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 22:07:32.74 ID:hfAFjDlM0

この通学路から全ては始まった

和と友達になり

しずに秘められた力に気付き

しずと恋人になった

そして今日から

また新しい日々が始まる――――

【完】



91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 22:11:04.52 ID:EtgBuRiK0


穏からのプロポーズと言うのがいいね



92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/03/20(水) 22:11:23.57 ID:gS9rnAka0

ちょー乙だよー

アコシズもっと増えろ



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その他二次創作SS 咲-saki-   コメント:1   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
32569. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2013/03/23(土) 21:01 ▼このコメントに返信する
過去に戻りてー
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