(*゚∀゚)は花を育てるようです

2010-09-06 (月) 20:11  ( ^ω^)(´・ω・`)('A`)   0コメント  
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /05(日) 23:39:00.57 ID:Q4siJ6UWO
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暗紅色の太陽が、雲の切れ間から顔を覗かせた。




(*゚∀゚)「ん……」


強く、己の命を撒き散らすその光は、彼女―――つーの目を焦がす。

つーは右の掌を、自分と太陽の間に置いた。

手が太陽に照らされて、赤く透けて見えた。
彼女の赤い髪も、光を得てキラキラと輝いている。





4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /05(日) 23:40:56.93 ID:Q4siJ6UWO
しかし、それも束の間。
再び太陽は厚い雲に包まれてしまう。



大地が、色を消した。




(*゚∀゚)「うん。太陽とのにらめっこに勝利、と」


呟いて、太陽に背を向け歩き出す。

鳥も、虫の声も聞こえないその大地を、彼女は進んだ。



ただ一つ、彼女が身につけている鎧が擦れる音だけが、その場に鳴り響いていた。




5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /05(日) 23:42:57.52 ID:Q4siJ6UWO
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ジニア暦(以下、Z.Aと称す)113年。


世界は類を見ない程の大寒波に襲われる。


それにより食物の生産が激減したのはもちろん、
降り積もる雪によって道が塞がり、交易にも多大な影響を与えた。




北の大国である『ラウンジ帝国』も例に漏れず、経済面に尋常ではない程の被害を受けた。


国中の備蓄を用いて、かろうじてその大災害を乗り越える事は出来たものの、
将来もう一度、このような危機が訪れたら国が滅ぶかもしれない、
と危惧した当時の皇帝であるラウンジ五世は、ある決断をする。


その決断とは、ラウンジ帝国の南に位置する小国、『VIP国』を攻め落とすというものである。




6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /05(日) 23:45:15.70 ID:Q4siJ6UWO
攻める理由の一つは、VIP国のさらに南にある『ニュー速地帯』の存在である。


このニュー速地帯は、“神が住む大地”と呼ばれ、
あらゆる国の支配を受けない中立の土地だ。


南国の暖かな気候と豊富な水源により、
唯一先の大寒波の影響を受けなかった場所でもある。


皇帝はそのニュー速地帯に目をつけた。


神の土地なので、そこを我が物とする事は出来ないが、
近くにいればその恩恵を頂く事は出来る。
ここならば、もう一度大寒波が到来しても耐えられるであろう。


そのためには、ラウンジ帝国とニュー速地帯との間にあるVIP国が邪魔なのである。




7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /05(日) 23:46:57.07 ID:Q4siJ6UWO
そして理由のもう一つとして、VIP国が近年
その力を急激に増してきているというのが挙げられる。


今までVIP国は細々とその生を繋いでいるだけの弱小国であった。
が、今代の王か余程の腕利きなのか、国力を右肩上がりにしているのだ。


これを放置していたら、いずれはラウンジ帝国に
迫る程の力を手に入れるかもしれない。


故に、今の内に目を摘んでおく。


それがラウンジ五世の決断であった。




9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /05(日) 23:49:22.71 ID:Q4siJ6UWO
Z.A 115年。


ラウンジ帝国はVIP国に宣戦布告を言い渡した。


ラウンジ帝国の兵が3万9200であるのに対し、VIP国は1万3800。
実に三倍近い差である。


いくらVIP国が力をつけてきたと言っても、大国であるラウンジ帝国には遠く及ばない。
ラウンジ帝国の勝利は誰の目から見ても明らかだった。


だが、宣戦布告からほんの三日後に、誰もが予想だにしていなかった事態が起こった。


VIP国の東に位置する『シベリア国』が、VIP国と統合してしまったのだ。


どうやら今まで秘密裏に話を進めていたのを、
ラウンジ帝国の布告を皮切りに一気に纏め上げたようだった。


これにより誕生した『VIP・シベリア連合国』の兵力は3万8100。
大国ラウンジ帝国と肩を並べる程の力を有する国となった。




11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /05(日) 23:51:20.40 ID:Q4siJ6UWO
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始めはラウンジ帝国の圧勝で幕を閉じる筈だったこの戦い。


それは第三の勢力、そして新たな国の誕生により。


両国は、一万の朝と夜を繰り返しても尚、争い続ける事となる。




ジニア暦を代表する大戦となったこの戦い。




“七十七年戦争”と後に呼ばれた戦いが、幕を開けた。





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12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /05(日) 23:52:57.43 ID:Q4siJ6UWO
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(*゚∀゚)は花を育てるようです





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13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /05(日) 23:55:21.54 ID:Q4siJ6UWO
(*゚∀゚)「フサギコー。入るよー」


つーは幾つか並んでいる簡易テントの内の一つに入る。
武器や雑貨、そして少々の熱気がある内部には、一人の大柄な男が椅子に座っていた。


ミ,,゚Д゚彡「やあ、つー。どうかしたかい?」


机に広げられた地図から目を離し、つーに笑いかけるフサギコと呼ばれた男。
彼の金色で長めの髪が、ふわりと宙に揺れていた。


(*゚∀゚)「いーや、別に何も。アタシの友人の顔を見に来ただけさね」

ミ,,^Д^彡「ハハハ、それはどうも。何か飲む?」


フサギコは椅子から立ち上がり、手慣れた様子でコンロに火をかけた。


(*゚∀゚)「アールグレイでよろしくっ」

ミ,,゚Д゚彡「好きだね、紅茶。つーの体の中、紅茶でパンパンなんじゃない?」

(*゚∀゚)「紅茶の海で溺れ死ぬなら本望だね」

ミ,,^Д^彡「ハハハ」




14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /05(日) 23:57:18.24 ID:Q4siJ6UWO
金属で出来た質素なコップに、フサギコが紅茶を二人分注ぐ。


ミ,,゚Д゚彡「はい、どうぞ」

(*゚∀゚)「ありがと」


しばし紅茶の味を楽しむ二人。
柑橘系の香りがテント内を満たしていた。




(*゚∀゚)「それにしても、アレだね」

ミ,,゚Д゚彡「アレって?」

(*゚∀゚)「戦争。まさか、アタシ達の代で終わるとは、ね」




今はZ.A 191年。
戦争が始まってから実に76年もの年月が経過していたが、
いよいよもって戦争は終わりに近付いていた。



つー達の国、VIP・シベリア連合国の勝利によって。




16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /05(日) 23:58:57.18 ID:Q4siJ6UWO
ミ,,゚Д゚彡「……うん、そうだね。ここ二年でかなり戦局が動いたからね」


Z.A 189年。
ラウンジ帝国で内乱が発生した。


革命軍と名乗った2000人程の彼らは、帝国内でゲリラ戦を繰り返し起こした。


とはいえ、その規模は小さいもの。帝国軍に大きな傷を与えるほどでは無かった。


しかし、その行為は彼らの存在を帝国に知らしめた。同時に、VIP・シベリア連合国の方にも。


そして彼ら革命軍は、連合国との秘密裏の会談に持ち込めた。
これこそが、革命軍の目的だった。




18 : ◆Uxfj98URO6 :2010/09 /06(月) 00:01:22.97 ID:rsNApiHmO
革命軍が連合国に申し込んだ内容は次の通りである。


「この戦争は貴国の勝利によって終焉を迎え、帝国は貴国の属国となるであろう。
 だがその際、国民に圧政を敷く事を無く、また、
 国の統治を我らが示す人物に全権を任せて頂きたい」


これはつまり、属国の即時独立―――言ってみれば、
今までの戦争を無かった事にしてもらいたいという申し出であった。


無論、この要求を飲ませるには見返りが必要である。
そこで、革命軍が切るカードは二枚。


一枚は、帝国にいる全貴族の資産から新政権に必要な費用を抜いた
全額の献上(ただし、最小でも全資産の50%は確約)である。


帝国は貴族中心の政治を行っていたため、国民の大半は貴族を嫌っていた。


よって革命軍は、貴族の存在を不要とする新政権を推奨したために、
このような取り決めがなされたのだ。




19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:03:06.19 ID:rsNApiHmO
そして二枚目は―――









「我ら革命軍が、帝国の現皇帝、ラウンジ八世を暗殺します」








Z.A 190年。

革命軍がラウンジ八世の暗殺に成功した。




20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:05:06.41 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「―――あの暗殺からの帝国の転落っぷりは、かなりのモンだったね」


皇帝が暗殺された事が帝国内に広がると、国中が混乱の渦に巻かれた。


その混乱が一番顕著に表れたのは国民だ。


長く続いている戦争。貴族を潤すための重税。国民は貧困に喘いでいた。
彼らの多くは革命軍と同様に帝国に不満を持っていたのだ。


だが革命軍のように表立って逆らおうとはしない。軍による報復が怖いから。
彼らに出来る事と言えば、酒場で安い酒を飲みながら愚痴をこぼすのが精々だった。


だが、帝国の頂点である皇帝が暗殺された。
その事実は、この国はもう長くないと、国民の誰もがそう思わせるには充分な出来事であった。



結果、帝国内の至る所で国民の暴動が起こったのは、至極当然であったと言えるだろう。




21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:06:57.88 ID:rsNApiHmO
混乱したのは国民だけではない。軍もまた同様に混乱し、内部分裂が起こっていた。


そう、多くの兵士もこの国が長くない事を理解していたのだ。
そして帝国の兵である自分も、遠くない将来に無残に命を散らすであろう事を。


故に多くの兵は投降した。彼らは滅び行く母国よりも、自らの明日を選択した。



しかしその一方で、地に手を付かずに最後まで反抗しようとする兵もいた。
彼らは一般兵とは一線を画した、貴族直属のエリート兵であった。




22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:09:00.47 ID:rsNApiHmO
民は国が変わっても民でいられる。
一般兵は投降したとしても、それなりの暮らしは保証される。


だが、彼らは?
貴族の恩恵を受け、一般兵とは雲泥の差の暮らしをしていた彼らは?


次の政治では貴族は抹消される。
だから彼らはエリートでも何でもなくなる。


一般兵と同様に敵国へ投降すれば命は助かる。しかしその後に待っているのは並以下の日々だ。
甘い汁を啜っていた彼らにとって、そんな人生は耐えられない。


だから彼らは反抗する。可能性が低くとも、今までの地位を維持するために。



例えその可能性とやらが、限りなくゼロに近いモノであったとしても。




24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:10:57.93 ID:rsNApiHmO
ミ,,゚Д゚彡「貴族直属兵2200人と、投降する事を潔しとしなかった一般兵1300人。
      この3500人が僕達の最終的な敵になった」


3500人。
大陸にその名を轟かせた大国の歴戦の勇者達。
いまやその名声は、寂れ、伏した。



(*゚∀゚)「そしてアタシ達は帝国の残党を狩りつつ今に至る、と。
     いやはや、歴史のお勉強、為になりましたです」


授業が終わり、先生に礼をする生徒のように、つーが頭をぺこりと下げる。
フサギコは苦笑しながら、人差し指で頬を掻いた。




25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:13:05.23 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「ま、過去の話は置いといて今の話をしようか」


つーは先程フサギコが見ていた地図に目を落とす。


(*゚∀゚)「どう? それっぽいとこ見つかった?」


尋ねられたフサギコは、紅茶を一口啜ると、地図をつーの方に向けて話し出した。


ミ,,゚Д゚彡「うん。確率が高いのは、ここから東に15kmの平野部と、北西17kmの湿地帯の二つだね」

(*゚∀゚)「ふむふむ。そこに―――」

ミ,,゚Д゚彡「帝国の残党がいるかもしれない」


簡易テントがガタガタと音を鳴らし、揺れる。
どうやら強い風が吹いたらしい。




26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:15:01.15 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「となると、部隊を二つに分ける訳だね。アタシとフサギコ、どっちがどっちに行くの?」

ミ,,゚Д゚彡「そうだね……。湿地帯はぬかるみが多くて、馬の足が取られる。
      歩兵が多いつーの部隊に湿地帯に行ってもらおうかな」

(*゚∀゚)「あらやだ。レディーをそんな汚れそうなところに行かせるなんて、
     紳士としての配慮が足りませんわよ?」

ミ,,^Д^彡「ハハハ。つーは泥だらけになって遊んでいる方が似合っているよ」

(*゚∀゚)「さりげにひどい!」

ミ,,^Д^彡「まあまあ。僕はドレスで着飾るよりも、そっちの方のつーが好きだよ」

(*゚∀゚)「フサギコに好かれてもなぁ……。ま、いいや。
     しょうがないから湿地帯はアタシが行ってあげるよ」

ミ,,^Д^彡「うん。ありがとう」




29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:17:26.19 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「で、出発はいつだい?」

ミ,,゚Д゚彡「うん。今、本国に連絡用の馬を走らせてるから、
      彼が帰ってきたら僕の部隊が先に平野部に行こう。
      つー達は明日の早朝に湿地帯へ行ってくれ」

(*゚∀゚)「りょーかい。その連絡用の馬は、後どれくらいで戻ってくる?」

ミ,,゚Д゚彡「何もトラブルが無ければ、30分くらいかな」

(*゚∀゚)「ん。じゃあ後30分は我が友とおしゃべり出来るってわけだね」

ミ,,^Д^彡「うん、そうだね。お付き合いさせていただきます」


フサギコは席を立ち、空になった二つのカップに再び紅茶を注いだ。




32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:19:08.93 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「で、さぁ……。さっきの話の続きになるんだけど」


つーは二杯目となる紅茶に口を付けつつ話す。


ミ,,゚Д゚彡「うん?」

(*゚∀゚)「戦争、終わるじゃん」

ミ,,゚Д゚彡「そうだね。多分、来年には完全に収まると思う」

(*゚∀゚)「って事は、アタシ達は兵士で無くなるって事じゃん?」

ミ,,゚Д゚彡「まあそうだね。僕達は只の志願兵だったからね。
      戦争が終われば、兵の役目は降ろされる」

(*゚∀゚)「戦争が終わって……、兵じゃなくなったら……。フサギコは何をするの?」


問われた内容は己の未来。
フサギコは軽く腕を組んで虚空を見つめる。




33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:21:10.66 ID:rsNApiHmO
ミ,,゚Д゚彡「戦争が終わった後の事か……。そう言えば、考えてなかったな」

(*゚∀゚)「フサギコは戦争の事しか考えてないからね」

ミ;゚Д゚彡「ちょっとちょっと、人を危険人物みたいに言わないでくれる?」

(*゚∀゚)「えー、間違った事は言ってないじゃん」

ミ;-Д-彡「あのね、僕はどうやったら戦いを終わらせられるかとか、
      味方の被害を最小限に抑える為にはどうしたらいいかとか……」

(*-∀-)「敵兵を如何にしてブチ殺すかとか……、
     どうやったら捕虜の苦しみ叫ぶ声が聞けるのかとか……」

ミ;゚Д゚彡「こ、こら! 物騒な継ぎ足ししない!」

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャ!!」

ミ;゚Д゚彡「まったく……。とにかく、今の事が忙しかったから、
      未来の事なんて思いもしてなかったよ」

(*゚∀゚)「フサギコ君は生真面目だからねー。じゃ、今この時間を使ってチャッチャと考えなさい」

ミ,,゚Д゚彡「え? うーんそうだなぁ……」


そう言って、うんうん唸っているフサギコを愉快そうに眺めながら、
それを肴につーは紅茶の味を楽しんだ。




36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:22:57.60 ID:rsNApiHmO
つーが三杯目の紅茶を注ぎ終わると、ようやくフサギコが彼女の方を見た。


ミ,,゚Д゚彡「決めた! 決めたよ、つー!!」

(*゚∀゚)「おうおう。たっぷりと悩んだじゃない。それじゃ聞こうか。
     フサギコ、アンタは何をするの?」

ミ,,゚Д゚彡「ああ、つー! 僕は―――」


意気揚々、少年のような輝かしい笑みを浮かべながら、フサギコは高らかに宣言した。




37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:24:58.18 ID:rsNApiHmO
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ミ,,゚Д゚彡「僕は、保父さんになるよ!」








39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:27:06.08 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「…………」

ミ;゚Д゚彡「あ、あれ? どうしたの? 何か言ってよ」

(*゚∀゚)「…………ヒャ」

ミ,,゚Д゚彡「ひゃ?」





(*;∀;)「ア―――ッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!!」

ミ;゚Д゚彡「う、うわっ! なに!?」

(*;∀;)「ヒャッヒャッヒャ……、ほ、保父、ヒャ、
      ほふさんだってさっ……、ヒャッヒャッヒャ!!」

ミ;゚Д゚彡「え、ちょっ……、うええ!? 泣くほど可笑しいの!?」

(*つ∀;)「いやー……、グスッ、無いわー。有り得ないわー。
      ル○ージが主役のゲームが発売されるくらいに有り得ないわー」

ミ;゚Д゚彡「そ、そんなに!? ていうかル○ージマンションがあるからね!?」

(*つ∀;)「そんなモンは知らん。とにかく、有り得ないのだ」




40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:29:01.91 ID:rsNApiHmO
つーの大爆笑に、目に見えてうろたえるフサギコ。
今となっては、100点満点の笑顔で夢を叫んだ過去の自分がエラく恥ずかしい。


ミ;゚Д゚彡「り、理由を! 何故有り得ないのか理由をお願いします!」

(*゚∀゚)「いや、お前そんな2メートル近い体で、筋骨隆々で、
     そんな厳つい顔してたら子供怯えてショック死するわ」

ミ;゚Д゚彡「酷い言われようだ! つーか急に真顔に戻らないで!
      『本当に有り得んわコイツ……』みたいな顔するの止めて!」

(*゚∀゚) ホントウニアリエンワコイツ…

ミ,,;Д;彡「小さい声で言わないで! 胸が痛い! 胸が痛いから!」

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャー。たーのしーいなー」

ミ,,;Д;彡「魔女だ……。つーは魔女だよ……」




42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:31:01.74 ID:rsNApiHmO
ガックリと肩を落とすフサギコの姿を永久保存したいなーと思うつーは、
改めて彼に聞いてみる事にした。


(*゚∀゚)「まあまあ、顔を上げなよフサギコ。
     君が保父さんになりたいと思った理由を聞こうじゃないか」

ミ,,゚Д゚彡「うう……」

(*゚∀゚)「例えそれがどんなに似合っていないというのをね、
     本人がこれっぽっちも理解していなかったとしても、
     アタシは君の友人として真摯に聞いてあげないといけないんだ。
     そしてそれを聞いたら、悪いことは言わないから諦めろ、と優しく肩を叩くのもまた、
     友人であるアタシの役割なんだよ。だから言え。さあ言え」

ミ,,゚Д゚彡「……僕は何故君の友人なのだろうかと、今もの凄く疑問に思っているよ」

(*゚∀゚)「愚問だね。友情に理由なんていらないのさ。さあ言え。はやく言え」

ミ;-Д-彡「はぁ……。判った、判ったよ。言う。言うから……」




43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:33:00.30 ID:rsNApiHmO
フサギコは一つ大きな溜め息をつくと、穏やかな顔で話し始めた。


ミ,,゚Д゚彡「僕はね、子供が好きなんだよ」

(*゚∀゚)「ぶふっ」

ミ,,゚Д゚彡「……これ以上笑ったら絶対話さないからね」

(*゚∀゚)「ああ、ああ。判った判った。もう邪魔しないから思う存分話しなさい」

ミ,,゚Д゚彡「まったく……。それでさ、僕は子供達に伝えたいんだ」

(*゚∀゚)「ほうほう。なにを?」

ミ,,゚Д゚彡「……僕は戦争で多くの人を殺めた。
      別にその事について今更何か弁明しようとは思わない。
      相手だって、僕を殺す気で来ていた訳だし、僕だって死んでやる訳にはいかない。
      彼らだって戦場に立っていたんだから、死ぬ覚悟は出来ていたはずだ」




44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:35:25.11 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「…………」


つーは黙って彼の話を―――いや、彼の苦悩を聞く。


ミ,,゚Д゚彡「でも、彼らは覚悟出来ていたとしても、彼らの親しい人はどうだろうか?
      彼らの家族や、恋人や、友人達は彼らの死を
      何でもない事のように受け止められるのだろうか。
      そんなはずはない。彼らの親しい人達は、彼らの訃報を聞いて涙を流したはずだ」

ミ,,゚Д゚彡「僕が一人殺せば数人、数十人の涙が流れる。
      もちろん戦場では僕も必死だからそんな事は考えない。
      だけど戦いが終わって、倒れる敵国の兵の姿を見て―――。
      ああ、今日僕はどれほどの人に涙を流させたのだろう、と。
      僕は、とても悲しい気分になるんだ」


フサギコは目を閉じる。
その暗闇が映し出す光景は、彼に何を思わせているのだろうか。




46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:37:29.83 ID:rsNApiHmO
ミ,,゚Д゚彡「戦争は悲しいものだ。国は何かを得ようとして戦争をするのだろうけど、
      その対価として人々は相応の―――いや、それ以上の悲しみを背負うんだ。
      だから僕は子供達に伝えたい。戦争が産み出す悲しみというモノを。その涙を。
      未来に生きる子供達に知ってもらいたい」

ミ,,゚Д゚彡「これが、僕が保父さんになりたい理由さ」


フサギコの話が終わる。
彼は、渇いた喉を潤すために、冷めた紅茶を口に含んだ。

つーは話が終わってもしばらく黙っていたが、やがて口を開き自分の意見を語る。


(*゚∀゚)「……うん。そうだね。私達のような戦争をやってきた人間は、
     戦争を知らない人間に教える義務がある。
     そして願わくば、その知識を以て戦争の無常さを理解し、
     戦争を経験しない人生を送ってもらいたいもんだね。
     子供達も、孫達も、それから先の世代も」

ミ,,゚Д゚彡「うん。そう、そうなんだ。僕はそんな世の中にしたいんだ。
      僕一人の力じゃたかがしれてるけど、それでも出来る限りの事はしていきたい」

(*゚∀゚)「そう。まあアンタがそれをしたいと言うんなら、アタシは背中を押すだけさ」

ミ,,^Д^彡「うん。ありがとう、つー」


朗らかに笑うフサギコ。
彼の目は、子供達が笑顔で過ごす未来を見ていた。




47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:39:03.18 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「で、だね。それはそれとして……」

ミ,,゚Д゚彡「うん?」





(*゚∀゚)「そんな重っ苦しい話ばかりしてたら子供に好かれないよ?
     ただでさえ近寄りがたい風貌してんだから」

ミ;゚Д゚彡「うぐっ! き、君は最後までホント……」

(*゚∀゚)「アヒャヒャ、でも事実だよー。子供にはもっと明るくて楽しいお話をしてあげないと」

ミ;゚Д゚彡「ま、まあそうなんだけど……。ああ! もういいよ僕の話は!
      つーは? つーはどうしたいの!?」

(*゚∀゚)「ん、アタシ? アタシはそうだなー。
     お母さんが小料理屋やってたし、アタシも何か店でもしようかなー、っと」


つーはそう言いながら、テント内をキョロキョロと見回している。
新しい話のネタになるものを探していたのだ。




48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:40:58.45 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「ん? これ……」


彼女の目に止まった置物。
それはレンガ色をした一つの小鉢だった。
小鉢の中には土が盛られ、中央には小さな芽が顔を覗かせていた。


ミ,,゚Д゚彡「ああ、それね。ようやく芽が出たんだ」


顔を綻ばせてフサギコは語る。

あの芽は、前回の遠征でとある村を警備した時。
そこの村の子供から、守ってくれたお礼に、と貰った種を育てたモノであった。


(*゚∀゚)「ああ、あの時の……。律儀に育てちゃった訳ね」

ミ,,゚Д゚彡「せっかくの好意を無碍には出来ないしね。
      それにいざ育ててみると、これが意外に楽しいんだ」




49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:43:10.19 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「……子供大好きで植物育てるのが趣味。こんな熊のような大男が……」

ミ;゚Д゚彡「別にいいじゃないか」

(*゚∀゚)「敵国の兵士からは『金獅子』の通り名で恐れられてる男が、
     実はロリコンの植物マニア……」

ミ;゚Д゚彡「止めてよ、その名前恥ずかしいんだから……。
      てゆーかロリコンの植物マニアってなに!?」

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャ♪」


つーがからかい、フサギコはうろたえる。
そんないつもの二人の間に、一人の兵がやってきた。


ミ,,゚Д゚彡「ああ、帰ってきたか。ご苦労さん」


その兵は先程フサギコが話していた、本国に連絡に行った兵であった。
彼とフサギコは二言三言交わし、そして兵はフサギコに敬礼をしてテントから出て行った。




50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:45:18.36 ID:rsNApiHmO
ミ,,゚Д゚彡「さて。じゃあ僕達は行く事にするよ。そっちは頼んだよ、つー」

(*゚∀゚)「あいあいさー」


つーはおどけながら敬礼し、テントを後にしようとする。
だが、フサギコは「あ」と何かを思い出したように声を上げ、つーを引き止めた。


(*゚∀゚)「ん、なに?」


フサギコに背を向けていたつーが振り返ると、彼は先程の小鉢を手に持っていた。


ミ,,゚Д゚彡「つー、頼みがあるんだけどさ。こいつを預かって貰えないかな?」

(*゚∀゚)「えー? なんで?」

ミ,,゚Д゚彡「ほら、今から僕が行く平野部なんだけど、地図を見ると近くに川とかが無いんだよ。
      村は有るみたいだけど。こいつに与える水が無いと困るからさ。
      つーが持っててくれないかな。つーの行く場所は
      湿地帯だから水場は沢山あると思うし」




52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:47:07.86 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「えーメンドクサーイ」

ミ,,゚Д゚彡「まあまあそう言わずに。この埋め合わせはキチンとするからさ」

(*゚∀゚)「うー。安くないよ?」


つーは小言を言いながらも小鉢を受け取る。


(*゚∀゚)「……あー。でもさ、これってさー」


つーはふと、頭に浮かんだ事を口に出してみる。


ミ,,゚Д゚彡「ん? どうかした?」



(*゚∀゚)「……死亡フラグっぽくね?」




53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:48:59.68 ID:rsNApiHmO
ミ;゚Д゚彡「ぶっ!!!」

(*゚∀゚)「『この戦争が終わったら○○するんだ』とか
     『これを預かっといてくれ。後でちゃんと返せよ』とか。うっわ、完璧じゃん」

ミ# Д 彡「き、君は……。今から出発しようとしている人に何という事を……」

(*゚∀゚)「…………」

(*>∀<)b「安心して! この子は私がちゃんと育てるわ!」

ミ#゚Д゚彡「出てけ――――っ!!!」


フサギコに怒鳴られたつーはケラケラと笑いながら退散する。
そんな彼女を見て、フサギコは頭痛を払うように頭を振った。




54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:50:57.01 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「あ、最後に聞いておく」


すると、もうこの場を去ったと思っていたつーが、顔だけをフサギコに見せて尋ねてきた。


(*゚∀゚)「これってなんていう種類? なにが生えるの?」


預かった小鉢を見せつつ彼女は言った。


ミ,,゚Д゚彡「……知らない」

(*゚∀゚)「むくれるなよぅ。アタシが悪かったってば」

ミ,,゚Д゚彡「いや、別に……。本当に知らないんだ」




56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:53:03.70 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「なに? 呆れたね。何が出るかも判らないのに育ててたの?」

ミ,,゚Д゚彡「しょ、しょうがないだろ。種を見ただけで
      何の種類が判るほど、僕は植物に詳しくないよ」

(*゚∀゚)「ふむ。まあいいか。何が咲くかお楽しみ、って感じて育てるのもいいかもね」

ミ,,゚Д゚彡「かも、ね」

(*゚∀゚)「でも花が開くまでにはちゃんと受け取ってよね」

ミ,,^Д^彡「ははっ、そうだね」

(*゚∀゚)「ん。じゃあまたね」


言って、つーは今度こそテントを離れ、見送ったフサギコは出発の準備を進めた。



それから少しして、フサギコが率いる部隊は東の平野部へと移動していった。




57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:55:12.48 ID:rsNApiHmO
.


フサギコ達が出発してから数時間後。
つーは紅く色付こうとする太陽を眺めていた。

そんな彼女に、見張りの兵が声をかける。


「隊長、暇なんですか?」

(*゚∀゚)「いや、暇じゃない。忙しい。夕日に変化していく太陽を見るのに忙しい」

「暇なんじゃないですか」


見張りの兵は苦笑する。
彼女の奇行に走る癖を充分に知っているのだろう。
彼はつーに合わせて軽口を叩く。




58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:56:58.60 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「馬鹿を言え。これは……そう、修行なのだよ」

「修行? 何のですか?」

(*゚∀゚)「美しい風景を見て心を優雅にする修行」

「なるほど。それなら隊長は特に念入りにやっとかないといけないですね」

(*゚∀゚)「ほう、そうかそうか。アタシには優雅の欠片も無いと
     言いたいのか。オーケー判ったお前今日の晩メシ抜き」

「うげぇ。勘弁してくださいよ」

(*゚∀゚)「うるさいうるさい抜きったら抜き」

「優雅さの欠片もねぇ……」ボソッ

(*゚∀゚)「加えてお前明日の朝まで交代せずに見張っとけ」

「うぎぃ」


ガクリと肩を落とし、涙目になる兵。




60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 00:58:58.23 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「じゃあアタシはお前の分の晩メシを先に貰っておくね」

「え……、マジで?」


太陽に背を向けてテントに帰ろうとするつー。










その時、彼女は視界の隅に何かが動いたのを捉えた。




61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:01:16.77 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「んう?」


しっかりと前を見据えてみる。
何も見えない。
薄目になってみる。
何も……。



いや、何か……。


(*゚∀゚)「おいお前! 双眼鏡は持っているか!!」

「え? どうしたんですか急に……」


突然のつーの大声に驚き、目を見開いている兵。


(*゚∀゚)「持っているかと聞いているんだっ!!」

「は、はい! えっと、えー、ここに……」


更に音量が跳ね上がった彼女の声に、半ば混乱しつつも彼はポーチから双眼鏡を取り出した。




62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:03:15.31 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「貸せ!」


それをひったくるように取ると、もう一度先程の場所を目を皿にして見る。



その方向は暮れ行く太陽を背に向けた方角。








つまり―――『東』。




63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:05:28.99 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「……畜生!」


『確認』すると、彼女は双眼鏡を放り投げ、
未だ呆然としている見張りの兵に怒鳴るように指示を出す。


(*゚∀゚)「おいっ! 今すぐ全員を集めて至急、東に向かわせろ!!」

「……ま、まさか!?」


ここにきてようやく、彼も緊急事態に気付いたらしい。


(*゚∀゚)「敵だっ……! 帝国兵がいるぞ!!」

「!!」

(*゚∀゚)「早く兵を集めろっ! アタシは先行する!!」

それだけを早口でまくし立てると、彼女は全速力で自分のテントに向かう。


「先行って……、一人でですかっ!? ちょっ、隊長!!」


彼の言葉は、もう彼女には届いていなかった。




64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:07:22.10 ID:rsNApiHmO
体当たりをするかのような勢いでテントに入り込み、兜を手に取る。
彼女の赤い髪が銀色の金属に覆われる。



その時、目に映った一つの小鉢。

彼から預かった、小さな芽が出た小鉢。



ギリ、と奥歯を噛み締め、つーはテントの裏に置いていた自分の馬に跨り、平野を東に駆けた。


(*゚∀゚)「あの馬鹿っ……。死亡フラグにまんま乗っかりやがって……。
     面白すぎて逆にツマラナイだろうがっ……!」


前方に長く伸びる自分の影を、ただひたすらに踏み潰していった。




66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:09:41.96 ID:rsNApiHmO
馬を全力で走らせてどれくらい経っただろうか。
辺りに『有るモノ』が目立ち始めた。



そう。『人の死体』だ。

帝国兵の鎧を着た死体。
それと、つーと同じ鎧を着た死体も。


(*゚∀゚)「…………」


馬の速度を少しだけ落とし、周りを見回しながら進む。
やがてついた先には、廃れた家が数件並んだ小さな村があった。


その辺りは一際両国の兵の死体が散乱していた。
家も幾つか燃え尽きている。
どうやらこの村が主な戦地となったようだ。




68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:12:21.19 ID:rsNApiHmO
つーは土の上に転がる死体を見て考える。


(*゚∀゚)(……おかしい。敵兵の数が多すぎる)


革命軍が皇帝を暗殺して以降、つー達は幾度となく帝国の残党を倒していったが、
彼ら一つ一つの集団は、精々30~70人程度の徒党だった。

無論100人、200人を越す大所帯のところもあるにはあったが、
それくらいの大群となると事前に情報が入るので、さほど問題は無い。


(*゚∀゚)(だけど今回は……。少なく見積もっても300はいる。実際には400近い?)


今現在、帝国の残党は全部で1200人であるという情報がある。
つまりこの場には、全体の約1/3が集まっていた事になる。

これは、今回のつーとフサギコ達の兵数とほぼ同数だった。




69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:14:38.33 ID:rsNApiHmO
(;*゚∀゚)(くっ……。まさかこれほどの人数の軍が今まで存在を知られていなかったなんて……)


身に起きたイレギュラーな事態に目を伏せるつー。
だが何らかの気配を感じ取り、すぐさま顔を上げる。


(*゚∀゚)「!」


その直後、彼女が乗っていた馬が甲高い悲鳴を上げた。
見ると、馬の左前足に一本の矢が刺さっていた。


(*゚∀゚)「チッ!」


暴れる馬から振り下ろされるように地面に落ちたつーは、
しかししっかりと受け身を取り、近くの物陰に隠れた。

物陰からそっと顔を出し、弓が来た方向を確認する。
そこには、こちらへ向かってくる十人余りの帝国兵がいた。


(*゚∀゚)「フン、ただ数にモノを言わせて真っ直ぐ突っ込んでくるだけで
     アタシを仕留められると思うなよ……!」


つーは弓を手に持ち、矢の数を触って確かめ、その場を離れた。




70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:16:33.16 ID:rsNApiHmO
.


(*゚∀゚)「ったく、キリ無いね」


つーは素早い動きと、その小柄な体を利用した死角からの攻撃で、
次々と帝国兵を仕留めていった。

辺りに他の敵兵はいないか注意深く目を凝らす。


(*゚∀゚)「……む」


いた。しかもアレは……。

思うところがあったつーは、その敵兵の眼前へと躍り出た。




71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:18:16.41 ID:rsNApiHmO
そこにいたのは全身を重厚な鎧で包んだ大柄の帝国兵。
手には球状の頭部に複数の棘がついているメイス―――『モーニングスター』を所持していた。

お互いの距離が五メートル程の所まで来たところで、つーは足を止めた。
敵兵はつーの姿を見つけた時点で足を止め、注意深く彼女を見ていた。

しばし無言で対面する。
その場だけ温度が下がったような感覚をつーは受けていた。


(*゚∀゚)「やあ。アンタが大将かい?」


沈黙を破り、つーが話しかける。
その内容はフランクだが、声質は重く、低い。


「いかにも。貴君の鎧の装飾……。そちらも現場の最高司令官とお見受けする」


その敵兵―――声の低さからいって男だろう―――は、騎士らしい、堅い物言いで返答する。




72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:20:28.32 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「まあね。……さて、色々言いたい事はあるが、まどろっこしいのは抜きにしよう」


つーは兜の奥側から、獣のような鋭い眼光を光らせる。


(*゚∀゚)「降伏する気は無いか?」


降伏勧告。
それを聞いた男は。


「笑止。我を止められると思っているのか。
 貴君の身長、声の高さから、どうやら貴君―――いや、貴女は女であろう。
 女の身でありながら、我を殺せると思い上がるか?」


つーを蔑むように言った。




73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:22:43.41 ID:rsNApiHmO
しかしつーは呆れたように首を振る。


(*゚∀゚)「おいおい、そうじゃないだろう。例えここでアンタが、
     アタシやアタシの部隊を全滅させたとしても、次は国の本軍が来る。
     兵力差は象と蟻どころじゃないよ。アンタ達に勝ち目なんて万に一つもない。
     アンタだって判っているだろう?」


それを聞いた男は無言になる。
理解したか、とつーが内心で胸をなで下ろす。

が、男の口から出たのは、


「それがどうした? 勝てぬ戦いだから、剣を収めよと?
 そんな事が許される筈がない。我が体は皇帝陛下の物であり、
 我が魂は帝国の物であるのだ。退ける訳が無いのだよ」


拒絶。
男は最後まで戦う意志を見せていた。




75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:24:17.32 ID:rsNApiHmO
(#*゚∀゚)「馬鹿がっ……! 皇帝は死んだ! 帝国も間もなく消滅する! それでも戦うのか!?」

「陛下がお亡くなりになってもその思想は我らが兵に宿っている。
 それに、帝国は消えない。我らが戦う限り、帝国は消えないのだ」

(#*゚∀゚)「そんな形の無いモノに自分の命を懸けるというのか!?」

「……もう良いだろう。所詮は女。我らが崇高な意志など理解できぬのも当然」


男はモーニングスターを高く振り上げる。
夕日で紅く染まった彼は、さながら鬼のようだった。


「ならば貴女はここで倒れ、我が帝国の礎となるがよい!」


地を蹴り、男が襲いかかる。
重い鎧を着ているとは思えない程の俊敏さだ。


(*゚∀゚)「チィッ、これだから堅物は苦手なんだ。相手の言葉に耳を貸しやしない!」


つーは悪態を付きながら横に回り、懐の剣を抜いた。




77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:26:38.96 ID:rsNApiHmO
モーニングスターの風を砕く音が鳴り響く。
直撃すれば鎧など意味を持たずに体ごと破壊されるだろう。


(*゚∀゚)「チッ、ブンブン振り回しちゃって、危ないだろっ!!」


つーは持ち前の素早い動きを生かして、相手の攻撃の僅かな隙間をつき、
モーニングスターを持つ右腕へと剣を飛ばす。
だがその斬撃は厚い甲冑に阻まれる。
男はそんな攻撃など全く意に介せずに、続けて武器を振り回した。


(*゚∀゚)「ハッ、衝撃を与えてその危なっかしいモノを落としてやろうと思ったのに。
     なんて分厚い鎧と馬鹿げた筋肉してるんだよ」

「貴女の速さには目を見張るものがあるが……。
 そんな武器では我に傷一つ負わせる事は出来ぬぞ!」




78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:29:01.97 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「それはどうかねぇ?」


つーは先程と同じ様に間隙を縫って剣を走らせる。
すると―――


「ぬううっ!!?」


男の驚愕の声。
彼の右肘から鎧の繋ぎ目を通って、決して少なくない量の血が流れていた。


(*゚∀゚)「傷、負っちゃったねえ?」

「貴様、何を……!」

(*゚∀゚)「この剣、特注品でさ」


つーは剣の切っ先を男に見せるように突き立てる。


(*゚∀゚)「先端部分の厚みを限りなく薄くしてあるんだ。硬度を最低限保たせてね。
     そのお陰で鎧の僅かな隙間にも入り込む事が出来る」


つーは切っ先を向けたまま近寄り、相手の目の前まで来る。




79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:31:12.72 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「さあ、どうする? まだ降伏の申し込みは受け付けるよ?」


男はじっと黙って、彼女を正面から見ていたが、やがて口を開いた。


「無論、断る」


その言葉と同時に、横薙ぎのモーニングスターが彼女の体を狙う。


(;*゚∀゚)「うわっ!!」


間一髪で身を引いてそれを躱す。つーの鎧、横一直線に傷跡が浮かび上がった。


(;*゚∀゚)「そんな……。肘に傷を負って何故武器を振れる!? そう浅くない傷のハズだよ!」

「鍛え方が違う!!」


男は左腕を後ろに回す。
するとその手には、右手に持っているモーニングスターと全く同じモノが握られていた。




81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:33:13.43 ID:rsNApiHmO
(;*゚∀゚)「も、もう一つあったの?」

「これで、仕留める!!」


二本の獲物を掲げて男が襲い来る。
先程まで僅かにあった攻撃後の隙が、完全に無くなった。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


雄叫びと共に武器を振り回し続けるその姿は、さながら竜巻のようだ。


(;*゚∀゚)「クソおっ!!」


振り回しながら前へ、前へ出てくる男の攻撃を間一髪で躱し続けるつー。
その顔に、先程まであった余裕は無い。




82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:34:59.59 ID:rsNApiHmO
(;*゚∀゚)「なんで! なんでだ! なんで判ってくれない!?
      なんで無駄に命を散らそうとする!?」

「それが誇りというものだからだ!
 先人達が造り上げてきたモノを、我らが壊す訳にはいかないっ!」

(;*゚∀゚)「先人だぁ!? フザケるな! そんな昔の人間に縛られて、それでいいのか!
      アンタは今! 生きているんだろうが!」

「違う! 俺は国によって生かされている!
 その恩に報いるためにも俺は命を賭して国を護らねばならない!」

(;*゚∀゚)「違わないっ! アンタにだって家族や友人、愛する人がいるはずだ!
      その人達の為に明日を生きるべきなんじゃないのか!!」

「そんな俺の勝手な都合で国を滅ぼしてたまるか!」

(;*゚∀゚)「その国が無くなると言っているんだ!」

「無くならない!! 俺が無くさせないんだ!!!」

(;*゚∀゚)「こっの……」



(#*゚∀゚)「わからずやがああああああああああああああああああ!!!!!」


男の右手のモーニングスターがつーの顔に襲いかかると同時に、
つーは男の顔目掛けて剣を突き刺そうとする。




83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:36:58.89 ID:rsNApiHmO
.









つーの兜が、宙を舞った。









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84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:39:13.78 ID:rsNApiHmO
ガシャン、と、兜が地面に落ちる。

それと同時に男の二本のモーニングスターが地に置かれ、次いで男が両膝を着いた。

つーの剣が、男の兜の隙間を縫って、彼の左目に突き刺さっていた。

つーは兜を吹き飛ばされただけで、本人には大した傷は無いようだった。



決着が、着いた。




「……我の……、負けか……」

(*゚∀゚)「…………」


つーは男を見つめている。
彼女の紅い髪が風で揺れる。




86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:41:09.28 ID:rsNApiHmO
「……その紅髪……、そうか……、貴女が『紅豹』であったか……。
 ふ、ふふ……。あ、あの名高い『紅豹』が……、まさかこんな小さな女だったとは……」

(*゚∀゚)「……止めろよ、その名前。恥ずかしいんだから」

「ふ、ふふふ……」

(*゚∀゚)「…………」

「……なあ、『紅豹』よ……。我を、どう思う……」

(*゚∀゚)「大馬鹿野郎」

「ふ……、だろうな……。だが……、我に……、悔いはない……」

(*゚∀゚)「…………」

「これで……、我も陛下の元へ行ける……。
 主よ……、我を導いてくれ……。そ、そして……、帝国の……、永久なる繁栄、を……」


そこで、男は倒れた。
もう口を開く事はなかった。


(*゚∀゚)「大馬鹿野郎」


つーはボソリと、男に向かって呟いた。




88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:43:20.24 ID:rsNApiHmO
「隊長! 無事でしたか!」


一人の兵がつーの元に駆けつけた。男はあの時の見張りの兵だった。


(*゚∀゚)「ああ、無事だよ」

「あ、安心しました。敵陣に一人で突っ込むとか自殺行為ですよ。
 いくら隊長が強いっていっても」

(*゚∀゚)「ああ、悪いね」

「……隊長、指示を。味方の生き残りを捜しますか?」

(*゚∀゚)「……いや、敵兵の残りを捕まえるのを第一にしろ」

「……判りました。全軍に伝えます」


男はつーの元を去った。

つーはしばらくその場に佇んでいたが、やがて、どこへ向かうでもなしに歩き始めた。




89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:45:16.87 ID:rsNApiHmO
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つーがあの時、味方を捜すのではなく、敵を捕らえるように見張りの男に言ったのは、
恐らく味方は全滅しているだろうと思ったからである。





そう。

今、つーの目の前で倒れている男のように。




ミ,, Д 彡



(*゚∀゚)「…………」


男―――フサギコは既に事切れていた。
喉の辺りから血を流し、家の壁に寄りかかって倒れていた。




90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:48:42.94 ID:rsNApiHmO
つーが周りを見渡すと、子供が一人、死んでいた。
小さな、五、六歳くらいの男の子だった。

その男の子の近くに、小振りのナイフが落ちていた。
その刃は血で塗れていた。

つーは推測した。
多分、フサギコはこの子供に殺されたのだ。



フサギコは子供をここの村に住むものだと思ったのだろう。
そして、助けようとして近付いた。
しかし実際は、あの子供は帝国の子供だった。

帝国の兵は残り少なかった。
だから、あんな何も判らないような子供まで戦場に駆り立てられたのだろう。



『金獅子』と呼ばれ、恐れられた屈強な兵士は、訓練も受けてないであろう子供に殺されたのだ。




91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:50:21.92 ID:rsNApiHmO
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あの日から数日後。
つーは墓地の片隅にある一つの墓の前に立っていた。
その墓標に刻まれている名前はフサギコ。彼の墓だ。

つーはあの時、フサギコから預かった小鉢を持っていた。


(*゚∀゚)「本当なら、この花をアンタの墓に捧げるのがいいんだろうけどね。
     ま、もうちょっと待ちなよ」


小鉢に盛られた土の上には、小さな芽が一つ出ていた。




92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:52:59.54 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「なあ、フサギコ」


つーは墓前に語りかける。


(*゚∀゚)「やっぱアンタ保父さん向いてないよ。だってアンタ、子供叱れないだろ?」


つーは意地悪そうな顔で墓を見ている。


(*゚∀゚)「悪いことをした子供はちゃんと叱ってやらなきゃ。そうだろ?」


コンコン、と軽く墓を叩く。
「ちゃんと判っているのか?」と、確認するかのように。


(*゚∀゚)「まあいいさ」


つーは墓に背を向け、歩き出す。


(*゚∀゚)「もうそんなんじゃ子供を育てるなんて事は出来ないだろう。
     だからアタシがアタシなりの方法でアンタの夢を引き継いでやるさ」


墓地の出口に向かうつーは、彼の墓から彼女が見えるように、右腕を上げた。




94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:55:02.30 ID:rsNApiHmO
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(*゚∀゚)「だってアタシは、アンタの友人だからね」





それから一年後。

Z.A 192年。

実に七十七年も続いたこの戦争は、幕を閉じた。




95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 01:57:57.33 ID:rsNApiHmO
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Z.A 207年。

あの『七十七年戦争』が終わってから十五年。

VIP・シベリア連合国の城下町の片隅に、一軒の店があった。

その店の名前は『赤猫』。
色とりどりの花が咲き誇る、フラワーショップだ。


(*゚∀゚)「うーい、ギコー。これを運んでねー」


そこにはつーの姿があった。
彼女はこの店を経営していた。


(,,゚Д゚)「うーっす。どこに運ぶんスか?」


青年の名前はギコ。
このショップの唯一の店員だ。




96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 02:00:50.70 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「あの三丁目の肉屋の向かい側にある孤児院だよ」

(,,゚Д゚)「あー、あそこ……。ってアレ? あそこから注文来てましたっけ?」

(*゚∀゚)「うんにゃ。来てないよん」

(,,゚Д゚)「……いやいや、じゃあ何で持って行くんですか」

(*゚∀゚)「いーんだよ。あそこの院長にはタダであげるって言ってあるから」

(;゚Д゚)「はあ!? タダで!? 何考えてるんスか!?」

(*゚∀゚)「だいじょぶだいじょぶ。元々この店だって趣味でやってる訳だし」

(;゚Д゚)「お、俺の給料は……?」

(*゚∀゚)「歩合制」

(#゚Д゚)「やってられるか―――!!!」

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ!」


ギコの怒鳴り声とつーの笑い声が店中に広がる。
これが、この店のいつもの光景であった。




97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 02:03:27.95 ID:rsNApiHmO
(,,゚Д゚)「まったく……。しかし何でタダなんスか? いくら趣味っていっても……」

(*゚∀゚)「それはね、アタシも子供が好きだからさ」

(,,゚Д゚)「『アタシも』? 俺はそこまで子供好きって訳じゃ無いスよ。別に嫌いでもないけど」

(*゚∀゚)「別にアンタの事言った訳じゃないよ♪」

(,,゚Д゚)「はぁ、ワケ判んないっス……。それと、送るこの花って……」

(*゚∀゚)「『ジニア』。別名『百日草』とも言うね」

(,,゚Д゚)「そう、そのジニア。そのジニアなんスけど……」


ギコは改めて店の中を見渡す。


(,,゚Д゚)「今更なんスけど、なんでこの店の花、半分以上がジニアなんスか?」


店内には様々な色のジニアがこれでもかと場所を占拠している。
他の花は申し訳程度に数種類あるだけだ。




98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 02:05:26.19 ID:rsNApiHmO
(*゚∀゚)「ふふん。今更だけど、よくぞ聞いてくれました。
     この花は我が友との友情の証なのだよ!
     アタシがこの店を開いているのはその為だと言ってもいいね!」

(,,゚Д゚)「はあ、友人さんの……」

(*゚∀゚)「だからギコ。アンタはアタシとその友人との架け橋となるべく、キリキリと働きなさい。
     さあ配達に行った行った!」

(;゚Д゚)「うわ! ちょっ! 押さないで店長! 行く! 行くっスから!」


つーからニコニコ顔で押されたギコは渋々花を荷台に載せて二輪車に跨る。
年代物のエンジンが不規則な音を立て、黒い排気ガスを撒き散らしながら、
ギコは街の坂道を下っていった。




99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 02:07:27.15 ID:rsNApiHmO
(,,゚Д゚)「はぁー。ウチの店長はホント変人だよなぁー」


ギコは二輪車を運転しながら、つーに振り回される日々に疲れの声を上げた。


(,,゚Д゚)「確か店長って昔、そこそこ名の知れた兵士で、
     前の大戦でも活躍したって話だよなぁ……」


ふと、ギコは以前つーから聞いた話を思い出した。


【(*゚∀゚)「ああ、『赤猫』の名前の由来?
      実はさー、アタシは戦時中『紅豹』って言われてたんだけどさ、恥ずかしい事に。
      んで、今はもう戦争もない平和な世の中な訳じゃん?
      だから豹の牙とか爪とかはもう必要ない訳じゃん。
      だから猫。赤猫。アンダスタン?」】

(,,゚Д゚)「って事を言っていたなー。でもそこまでの兵士が何で今、
     フラワーショップとかやってんだ?」


やっぱり、さっきの話に出ていた店長の友人さんが理由なのかな、とギコは考える。

一体、店長と友人の間に昔何があったのだろうか―――?
気になってきたギコは、配達から帰ったら聞いてみようと思った。




100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 02:08:59.01 ID:rsNApiHmO
(,,゚Д゚)「おっとと。考え事をしてたら通り過ぎるところだった」


ギコは慌てて急ブレーキを踏み、何時の間にか到着していた孤児院の敷地に入っていった。


二輪車から降り、積み荷を下ろす際に、ギコはふと思った。


そう言えば、ジニアの花言葉は何だっただろうか。


確か、そう。


ジニアの花言葉は―――




101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 02:10:58.80 ID:rsNApiHmO
.









―――『別れた友への思い』。








(*゚∀゚)は花を育てるようです   おしまい




103 : ◆Uxfj98URO6 :2010/09 /06(月) 02:12:58.18 ID:rsNApiHmO
以上で投下終了です

遅くまでご苦労様でしたー




104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 02:14:48.44 ID:jUsMlGoq0
おつ
予定調和な話なんだけどなんか引き込まれた



105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /06(月) 02:20:58.59 ID:Lw0v5RjL0

きれいにまとまってて読みやすかった


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