ダンテ「学園都市か」【MISSION 41】

2012-10-20 (土) 23:30  禁書目録SS   0コメント  
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まとめ→ダンテ「学園都市か」 まとめ





921:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:33:30.16 ID:WT+Pqukgo

―――

魔塔ふもとの決戦が終決、天魔入り乱れる戦火を免れたにもかかわらず、
人間界を覆う不穏な空気は晴れなかった。

御坂「……どうなってんの?終ったんじゃないの?」

理解が追いつかなくとも、誰しもが本能的に悪寒を覚えていた。
今この瞬間が『全て』の最後にして最大の転換点であり、
最も危険で困難な局面でもある、と。

アニェーゼ「……土御門によると『まだ』、だそうですね」


御坂「それで……当麻は?」

静まり返る地下本陣にて、
御坂は同時に個人的な悪寒をも覚えていた。
このこびりつく不穏な気配に、
上条当麻が大きく関係している気がしてならなかったのだ。

アニェーゼ「ネロさんと一緒に上に行ったと」

御坂「何しに?」

アニェーゼ「土御門が言うには、義務を果しにと。それ以上はわからないと」



922:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:34:30.50 ID:WT+Pqukgo

御坂「……」

アニェーゼ、厳密には土御門の言葉で悪寒は確信に変わった。

やはり上条は今、事態の核に深く首を突っ込んでいるのだと。
ただしアニェーゼ、土御門からはそれ以上具体的な情報は引き出せなかった。
打ち止めがいるベッドの足元、
そこに座り込んでいる一方通行も小さく顔を振るだけ。

一方「あの野郎にも……『個人的』にケリをつけなきゃなンねェコトがあるンだろ……」

そうなのかもしれない、いやそうなのだろう。
だがその程度で御坂美琴が納得するわけがなかった。

ましてや先ほど『あんな事』を彼が言っていたのだから、
気になって仕方が無かったのだ。


アレイスターに向けて『俺のせいだ』、と。


アレイスターの忌まわしい所業に自身も関わっていたと考えているのか。
そう暗に悟った御坂の中では今、様々な考えと想いが渦を巻いていた。

これが誰か別の言葉だったらここまで気は乱れなかったであろう。

だがこの言葉を口にしたのは、
想い人であると同時に救世主である上条当麻だ。

彼への信頼、それを根幹から揺るがしたのは他ならぬ上条当麻の言霊なのだ。



924:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:35:38.09 ID:WT+Pqukgo

御坂は鋭く踵を返すと、壁際に足早に歩き進み。
そして抱えていた大砲の先で軽く床を叩くと。

御坂「……アンタは知ってるんでしょ?当麻が何をしてるのか」

座り込み俯いているアレイスターへと問うた。
一度目は低く静かに。
二度目は銃口で強く床を叩き。


御坂「知ってるんでしょ?!」

声を張り上げて。

この怒号に、廊下で結標を看ていた黒子が飛び込んできたも、
当のアレイスターは特に反応もしなかった。
顔を上げもしない。

御坂「アイツが言ってた罪って何のことなのよ?!」

そんな態度に苛立ちを隠せず、御坂は更に強行的に出た。


御坂「一体何なのよ?!アイツとアンタが抱いた『幻想』って!!」


髪をつかみ上げ、
壁際に後頭部を打ち付けては自らを見上げさせて。


御坂「言え!!答えろぉぉぉッ!!」



925:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:38:11.88 ID:WT+Pqukgo

一方「レールガン……そィつは……」

弱々しくも背後から聞えてくる声、
だが続けられたであろう彼の言葉を押しのけて御坂は叫んだ。

御坂「アクセラレータ!コイツを生かした理由は?!」

一方「……上条を元に戻すためだ」


御坂「それについてはもう完了してるわよね?!他には?!」


返答は沈黙。
御坂はそれを『無し』と受け取った。

問いの意図がわかっていたであろう一方通行、
彼がそのまま何も言ってこなかったとう点こそ、
アレイスターの身を引き継ぐ権利は自らにあると判断するに充分な材料だった。

黒子「お、お姉様……!」

呼びかける他どう声をかけて良いのか。
そう困惑している黒子をよそに、
御坂は今にも魔弾を放ちかねない殺気でアレイスターに命令した。

御坂「立て!外に出ろ!!」



926:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:40:11.92 ID:WT+Pqukgo

乱暴すぎるというのはわかっていた。

いや、恐らく自ら認識していた以上に、
今の己は鬼のような怒気を放っていたのだろう。

黒子の目に怯えが滲んでいたのも、目を合わせなくとも把握できた。
初春も佐天も、一言も言えずにただ硬直しているのも。

だが御坂にはどうにも抑えられなかった。

アレイスターそのものへの怒りもある。
もちろん理性が自制しているも、この両手で直接絞め殺したい、
それどころか電撃による拷問で殺害したいというほどの憎悪だってある。

そして今はそれに加え、上条当麻についての感情も噴き上がっていたのだ。


今一度、上条当麻という人物の真の姿がどうしても知りたかった。
己が今ここに立っているきっかけであり理由である彼の真実を。


彼が本当はどこからやって来て、
過去に何をして、今は何をするつもりで、そしてどこへ行き何になろうとしているのかが。


御坂「立てッ!!進め―――」


そうした衝動に駆られ、声で鞭打ちアレイスターを立たせたとき。
御坂は思いがけぬものを目にして一瞬言葉を失った。

廃人同然に見えるアレイスター=クロウリー。
立ち上がり方も重病人のように覚束ないものだったのに、


拍子で袖から覗いた『拳』だけは―――しっかりと握り締められていたのだ。

それも結構な時間、力いっぱい握られ続けていたのだろう、
血の流れが滞って不気味な色になり、指の間からは血が滲んでいた。



927:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:41:19.97 ID:WT+Pqukgo

そして誰よりもそこに驚いていたのは、実はアレイスター自身だった。


アレイスター「……」

何がこの拳を握らせているのかわからなかったのだ。
怒りや憎しみ、悲しみといったものを含め、
竜王に全てをへし折られた今は、人間的な感情は朽ちてしまっているのに


『あの男』に何かを植えつけられでもしたのか。

ダンテの後姿を目にした瞬間にこの拳を握らせ、
今の今まで固めている源は一体何なのだろうか。


御坂「い、行け!進め!」


だが、もはや自立的な思考力は停止してしまっている以上、
探ることが出来なかったし、そもそも探ろうという気力すらなかった。

アレイスターは謎をぼんやりと放置したまま、
背を強く押されるままに従い進んでいった。

廊下を抜け、大砲を突きつけられたままエレベーターに乗り込み、
そしてまた長い通路を抜けて、破壊された入り口をくぐって闇空の下へ。



928:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:42:51.52 ID:WT+Pqukgo

外には白銀の魔獣、ベオウルフが巨体を横たえていた。

御坂「進め」

崩れた入り口から離れ10mほど、
ちょうど施設と魔獣の中間あたりか、アレイスターはそこまで歩き進むと、
御坂の足音が止まったのを聞いて、ゆっくりと振り向いた。

彼女はこちらへと大砲を向けていた。

その様子は互いの立ち位置からも、処刑直前の風景に見えただろう。
このまま刑が執行されようが、アレイスターは構わなかった。
これまでの行いからも彼女の手で殺されるのは当然であり、
もはや生きる理由も無いからだ。


―――そのはずなのだが。

アレイスター「……」

なぜか拳は握られたままだった。
まだこの世界と別れるわけにはいかないと、死の境にしがみついているように。


刑はすぐには執行されなかった。
御坂の目的を考えればそれも当然か。

そんな彼女の表情は、
怒気と切羽詰った興味が入り混じった実に奇妙なものだった。

だがアレイスターはすぐに悟った。
己はそれ以上に奇妙な面持ちになりつつあることを。

この拳を握らせる不可解な衝動が、今ここで急に肥大してきているために。



929:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:44:32.24 ID:WT+Pqukgo

数秒間、言葉が交わされることは無く。

ようやく口を開いたのはアレイスターだった。
御坂が問い直す前に自らだ。

しかも自立的な思考ができず、
外部からの刺激には相応の反応しかできなかったのに、
この時は聞かれた以上のことを。

いいや、問われたから答えたのではない。
この拳を握らせている不思議な衝動に促されて、
アレイスターは自分から語り始めたのだ。


一体何のために。


アレイスター自身がそれに気付いたのはしばらく後のことであるが、
理由は御坂に聞かせるためではなかった。

単純に『過去』の全てを『思い出す』ことが目的だった。
何を思い、何を感じ、ここまで歩んできたのかを。


ではなぜその必要があったのか、そして何が―――『誰』がそうさせたのか。


それもまた、アレイスターはこのすぐ後に知ることになる。



930:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:47:00.09 ID:WT+Pqukgo

やはり憎悪よりも上条当麻の真実への探究心が勝ったのだろう、
そのようにしてアレイスターが自ら語りを始めるそぶりを見せると、
御坂は嘘のように大人しくなった。

銃口を向けていたのは変わらなかったが。

アレイスターは足で軽く地を叩いては魔術を起動、
そんな彼女の前の虚空に、ある光の映像を二つ出現させた。

ただ視覚情報だけではなく、相手の意識内にあらゆる情報を流し込む魔術的な画面だ。

うち一つに映っているのは『過去』の上条当麻。

御坂「……これは……」


アレイスター「……上条当麻は学園都市、いや、今あるこの人間界の始まりだ」


そしてもう一つは。


アレイスター「彼は―――英雄になりきれなかった英雄であり―――』


『今』の上条当麻の姿。

上条当麻は虚空の果て、
創造と具現の力によってお膳立された舞台にネロと並び立っていた。
黄昏の光に包まれた石畳の世界。
かつての竜王の玉座の領域と瓜二つの地。

そして彼らの正面15m程のところに悠然と立つ、
純粋無垢な悪意と混沌の権化―――竜王フィアンマ。


『彼は大いなる流れに弄ばれ――――――「未来」に成り損ねた「幻想」だ』


『……当麻は今……何をしようとしてるの……?』



『今度こそ―――「未来」を成そうとしているのだよ。「君たち」の「未来」を』



931:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:48:37.49 ID:WT+Pqukgo

竜王『―――やれやれ、困ったものだな。かの兄弟は』


片手はポケットに手を突っ込んだまま、
もう片手で髪をかきあげながらため息を漏らす竜王。

竜王『あそこまでして俺様と戦いたくないとは』

ネロ「そりゃあな。誰だってお前の薄汚い血で剣を濡らしたくはないさ。肥溜めに突っ込んだほうがまだマシだぜ」

そんな嘲り混じりの軽口に、ネロも同じ調子で応じた。
レッドクイーンを石畳に叩き刺してはイクシードを噴かし、
業火とともに殺気を放ちながら。

竜王『そこまで言うか。さすがの俺様でも傷心ものだよ』


上条「フィアンマ。決着をつけようぜ」

ただその空気もすぐに変わった。
ネロの隣にいた上条がそう声を放つと、竜王の態度は一変。

竜王『決着だと?お前ごときが笑わせる』

ちっと舌を鳴らすと、
あからさまに蔑みと苛立ちの色を浮べはき捨てた。


竜王『勘違いするなよ。お前は脇役以下、舞台装置ですらない。
    ただ殺されるためにここに戻ってきただけの―――「カス」に過ぎない』



932:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:52:26.61 ID:WT+Pqukgo

上条「そうか。じゃあ『これ』もお前にとっては別にどうってこともないんだな」

だがそんな手厳しい言葉もなんのその。
上条は余裕たっぷりに笑い返すと、ここであるとっておきのものをここで披露した。

禁書『―――補填完了、稼動状態良好、いけるよ!』

遥か太古の記憶を掘り起こし、
それでも修復できない損傷部はインデックスのサポートで補完して。


―――右手に持つ銃の先から、金色の光剣を出現させた。


竜王『―――……』


竜王を倒す、ただそれだけのために、天の力と技術の粋を集めて造られた―――『ミカエルの聖剣』である。


それもアレイスターが魔術で実体化させたのとは違う『オリジナル』だ。


ただしオリジナルだからとはいえ、作用は保障できなかった。
この聖剣とは『鍵』のようなものであり、
遥か昔、当時の竜王という『鍵穴』合わせて正確に調整されたものだからだ。

ゆえに当時とは状態が違う今の竜王、
『顎』がなく、だが三神の力を有す彼に同じく効果があるかどうかは確証が無い。


竜王『……ふん、今更そのようなガラクタを持ち出すとはな』


上条「―――なんなら試してみようぜ。ほら、黙って刺されろよ。アレイスターの時みてえによ」


だがそれでも『オリジナル』であることは変わりなく。
その点を竜王フィアンマも強く警戒していたようだった。

証拠に、彼は一層怒りを滲ませて睨んでくるのみ。

竜王『……』

アレイスターの時のように勝気のまま、
自らの身で進んで確認するなんてことは決してしなかった。



933:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:54:17.08 ID:WT+Pqukgo

上条「どうした?もしかして―――ビビッてんのか?」


竜王『……本気でこの俺様を倒す気か?倒せると思っているのか?お前ごときが?』

黄昏色の光を炎のように揺らがせての声。
竜王は今や怒りを隠そうともしていなかった。

ただし追い詰められているのではない、
目障りな小虫に嫌悪するかのような尊大な怒りだ。

ネロ「そうとも」

そして応えたのはネロ。

ネロ「俺と上条でお前を倒す。そうしねえとあちこちから怒られちまうんでな」

明らかに逆撫でさせるつもりの薄ら笑いを浮べて。
瞬間、ついに竜王は耐えかねたのか、
足で石畳を打ち鳴らしては右手を横に伸ばして。


竜王『良いだろう!俺様はお前達を殺し―――かの兄弟をここに引き摺りだしてやろうじゃないか!』


怒気を放ちながら、上条と同じくある『剣』を出現させた。
創造、具現、そしてスパーダの欠片である破壊、
この三つを持ち合わせている彼だからこそ現出可能なある『魔剣』を。

ネロ「……」


右手に現れたのは、ネロが破壊したはずの刃―――魔剣スパーダだった。



934:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 00:57:36.20 ID:WT+Pqukgo

上条「……!」

かの圧倒的な力はもはや形容できるものではない。
究極の破壊、その名を体現する至上最凶にして最強の『刃』。

だがどれだけ圧倒的であろうと、
『究極の破壊』の冠は今や過去のもの。

ネロによって破壊されてしまった、という事実が刻まれている。

ゆえにどれだけ形を忠実に、どれだけ本物の破壊の力を注ぎ込もうが、
竜王の手にある魔剣は決して『オリジナル』にはなり得ない。


スパーダ一族の宿命を紡ぐことは出来ない、所詮は『贋物』なのだ。


竜王『残念なことにこれは、創造と具現で維持しているだけで完全体―――いや、「本物」ですらない』


その点については竜王自身も即座に言及した。


竜王『だからな、スパーダの孫にしてバージルの子、ネロよ―――』


そしてこれこそが本題、
自らが『最悪の敵』の座に返り咲く唯一の手段こそ、
魔剣スパーダの究極性をもう一度示すことであるということも。



竜王『―――返してもらおうか。お前がこの魔剣から奪った「因果」を』



ここでネロの刃を討ち砕くことによって。



935:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 01:00:00.53 ID:WT+Pqukgo

そのような三神の力を携えての殺害宣告、
どれだけ超越的で絶対的な言霊であろうか。

究極の座、本来の『役』から蹴落とされたとはいえ、
スパーダの一族三人で戦うはずであったほどの相手、
竜王の圧倒的な力は間違いなく本物である。

だが今さら、ネロと上条が怖気づくことはなかった。
ダンテの選択によりすでに賽は投げられてのだ。

あとはただ前へと邁進するのみである。


上条『―――絶対に負けやしねえ。絶対にだ』


上条は全身から白銀の光を放っては魔の力を解き放ち、
自らへと誓約たる言霊を打ちつけた。


ネロ「ああ―――親父とダンテは必ずやり遂げる。そして『俺たち』もだ」


そしてこの上なく頼もしい最強の人間、
真っ直ぐ前方を見据えたままのネロの声も受け。


禁書『―――うん。大丈夫、必ず勝てるんだよ!』


次いで意識内に響いた最愛の少女の声にも支えられて、
少年は聖剣を振るっては構え直し。


上条「―――OK、始めようぜ!!」


開幕を告げる声を放った。
こちらを『舞台装置ですらないカス』だと断じた竜王へと――――――『主役』の一人として。

―――



936:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 01:00:40.60 ID:WT+Pqukgo

今日はここまでです。
次は金曜に。



938:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県):2012/05/09(水) 03:25:31.99 ID:PfqdjqB6o





939:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/05/09(水) 17:15:38.87 ID:R4miLIXDo

お疲れ様です。わかっちゃいるが竜王とネロさんに並び立つミカ条さん・・・大丈夫なのか・・・?
筋書き補正は否定したから都合の良いことは起きない。下手こいたら二人の余波でぶっ飛ぶレベルなのに。
だからこそ期待してしまうなぁ。英雄に並び立つ英雄なのか。



941:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/10(木) 22:54:18.23 ID:gXz3xWQqo

楽しみにしてる。乙!



942:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:00:26.06 ID:YYV6AaJco

―――

正真正銘の殺意を纏い、その身を魔人化させて、
二人の魔剣士は突き進み。

光の尾を引きながらついに激突する。

重なり合い、
渦となって周囲に噴き荒れる紅と蒼の閃光。

彩の源たる片方は閻魔刀、
だがもう片方はリベリオンでは無かった。

極なる刀を受け止めたのは疾風の魔剣、ルドラである。


ただし受け止めたとはいえ、
その状態を維持できていたのはごく一瞬だけであった。

ダンテが百本の刃を支配する一方、
バージルはたった一本の刃に全霊を注ぎ、その上に時の腕輪の力。

今や閻魔刀は、リベリオンですら互角には押し合えぬほどであり、
兄弟剣以外の刃がまともに抗することが不可能なのは当然。

おびただしい量の火花を撒きちらしながら、
閻魔刀は獰猛に―――ルドラの刀身にめり込んでいった。



943:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:01:49.21 ID:YYV6AaJco

もはや『受け止めた』とするよりも、『犠牲にした』と形容するべきだろう。
ダンテの使い方からもそれが正しかった。


ダンテ『―――Hah!!』

閻魔刀にルドラを『捧げた』隙に、
彼は右手のリベリオンを頭上から叩き込んだ。

狙うはもちろんバージルの脳天、彼の命―――。


とはいえそう易々と相手の命は奪えやしない。

あらゆる面が拮抗している上に、彼らが良く似た兄弟であることがよりいっそう、
両者にとって短期決戦を困難にしているのだ。

性格の差からか表面的な戦い方は違えど、
父に叩き込まれた根幹の戦闘理論と、受け継いだ『戦闘システム』は完全に同一。

ゆえに反射的な対応どころか。
どう分析し、どう攻めどう防ぐかといった考えすらももはや『共有状態』に等しい。

そのため両者間では奇襲攻撃は通じやしない、
意表をつくことは不可能。

互いにとってもっとも戦い易くも、
一方でもっとも決着をつけ難い相手でもあるのだ。



944:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:05:21.44 ID:YYV6AaJco

ここには虚を突こうなどという読み合いは一切存在しない。

超越的な力が行使されていようとも、
戦いの内容自体はごくごくシンプルなもの。

真正面からただ激突するのみ、
手数に手数を重ね合い、ついていけなくなった側が敗者となるだけだ。


刹那。

バージルは、ルドラと交差させていた閻魔刀を瞬時に逆手に持ち直し。

柄をくんっと上へと押し出し、
完璧なタイミングで、鍔に近い根元でリベリオンを防いだ。

切っ先でルドラを受けたままというまさに離れ業。
だが両者にとってはその程度の技能などごく当たり前のもの。

戦いの中におけるただの一接触に過ぎず、
特に意識も止められぬまま加速する闘争に流されていく。


刃が火花散らした瞬間。
三本もの剣の隙間を抜けていくのは、バージルが左手に持つ鞘による突き。

だが切っ先が弟の喉を捕えることはなかった。
衝突したのは左足、ダンテが即座にギルガメスで蹴り弾いたのだ。



945:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:06:51.33 ID:YYV6AaJco

この二人は本当に良く似ていた。
戦いの中の一手一手の呼吸すらも完全に同一。

鞘とギルガメスの激突で生じた衝撃、
それを自らの戦いのリズムに加えたこと、そのタイミングすらも。

閃光を引きながら、鏡合わせのように同時に大きく一歩分、
互いに後方にとび退いては『仕切りなおし』。


生じるのはほんの僅かな極限の一瞬、
彼らの領域でなければ認識できない一間。

三本の魔剣の激突を解消したのも束の間、互いに次の攻勢へと動く。


ダンテ『―――っ』

左手にあった疾風の魔剣は、
もはや『剣』の体を成してはいなかった。
三分の一近くが削り落とされ、刃のほとんどが消え去っていたのだ。

これが『今までの閻魔刀』が相手だったら、
どれだけ損傷しようがダンテの力が健在ならば修復可能、
そもそもここまで損傷すらしない。

しかし兄の刃は今や別物、これまで通りの使い方を許してはくれないのである。



946:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:08:30.33 ID:YYV6AaJco

その瞬間、どれだけ心を失おうとも、
それでもダンテであるがゆえに僅かに躊躇いの心が生じたのだろう。

彼自身が自覚しなくとも、この魔剣が意識内で声を発したのだ。


ルドラ『―――手を止めるなスパーダの息子よ!!我に情けはいらぬ!!』


ダンテは次なる一手へと動いた。
少なくとも『外面的』には迷いの欠片もない動きで。

そして同じように踏み込んでるバージルへと、
彼が薙ぎ振るって来る閻魔刀へと再び―――ルドラを『捧げる』。

二度目の激突には、もはやこの魔剣は耐えられなかった。

衝突の鮮やかな閃光に混じらせ、
最期の雄たけびにも聞える爆風を巻き上げて。


ルドラ『これぞ究極の武よ!!これぞ我が栄光の―――!!』


今度こそ刀身を斬り飛ばされて、声は断絶。
二度と言霊が響いてくることはなかった。



947:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:10:58.21 ID:YYV6AaJco

―――これが『使い潰す』ということ。


砕け散っていく刃、舞いちる破片。

それら煌きの中で想うことはあっても、
心そのものを封じてダンテは冷酷に徹し、淡々と身を動かしていく。

ルドラを切断した事で僅かに減速された閻魔刀、
その刃を紙一重で避け、入れ違いに放つリベリオンの突き。


『『―――Yeah!!』』

だが、そのとき発された掛け声はダンテのものだけではなかった。
またもや巧みな刀捌きでこの二撃目をも防いだ、
バージルの声も重なっていたのである。

彼は振りぬいた刀をそのままの形で引き戻し、
唾の部分でリベリオンの進路を僅かに変えたのだ。


そのようにしてダンテの刃がやり過ごされたことで、
図らずとも二人は体ごと激突することとなった。

ただし図らずともとはいえ、両者とも完璧に対応していた。
これまた予め段取りが決められていたかのように完璧に。

次には、同じタイミングで繰り出された二人の膝蹴りが交差していた。



948:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:13:30.48 ID:YYV6AaJco

魔人化された強固な外殻がぶつかりあい、
鈍い激突音と共に纏う光が飛び散っていく。

さなか、砕けていくルドラの柄を放っては突き出されるダンテの左手。


アグニ『―――弟よ!!我も続かん!!』

そこへ自ら飛び込んできた次なる『生贄』を手に、
ダンテは更なる狂気と闘争の深みへと自ら沈んでいった。


使うのは単純に剣』だけではない、
双方ともモノは違えど、強力な飛び道具も有していた。


猛烈な剣撃の応酬のかたわら、
幻影剣を次々と出現させては、
振り抜く刃の合い間に相手へと放っていくバージル。

対するダンテはそれらを手足からの魔弾で迎撃し、
さらに肩に出現したルシフェルから光剣を繰り出しては応戦。


至近距離からの次元斬のきらめきが空間を走り、
真紅の斬劇が影の水面を薙ぎさいていく。
周りでは幻影剣と魔弾、ルシフェルの光剣が次々と衝突して炸裂。

そんな光景は傍から見れば、壮麗の極みたる光の祭典であっただろう。
表面的に見ただけならば、だ。



949:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:16:26.97 ID:YYV6AaJco

二人の総力をもっての砲撃戦と剣撃戦。

凄まじい戦いは、ここ煉獄のみならず、
無限の広さと頑強度を誇るとされる魔界をも大きく震わせていく。

余波の力があちこちで渦を巻いては、紅と蒼の閃光が迸り。
影の海を穿ち、闇の空を切り裂いていく。



その戦火を更に燃え滾らせるべく、
ダンテは多種多様な魔具と力を惜しむことなく注ぎ込んだ。

いや、惜しむことも許されなければ、
彼らの身を案じることも許されなかった。


バージル『―――Die!!』


頭上からの渾身の斬り下ろし――――――兜割り。

力の残像を引いて天から襲い掛かってくる、爆発的に加速された刃。

その殺意の塊を、
左手にもっていた『斧状』の魔具で撃ち流しつつ、横へと飛び退くダンテ。

しかし兄は手を休める一瞬の間すら与えてはくれない。
着地した瞬間、バージルから繰り出されるは一気に突進しながらのもう一斬り。

殺し合いの場には不釣合いなくらいに、
涼やかで耳触りの良い音色を引いて。

神速の閻魔刀は、ダンテの左手にあった斧を捕らえた。


立て続けの二撃を受けた斧はここで粉砕。
力の爆散と共に魂の断末魔を轟かせ、これまでの列柱に続き朽ち果てていく―――



950:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:18:42.47 ID:YYV6AaJco

この時点でアグニとルドラを含め、
捧げられた大悪魔の数は両手で数えられなくなっていた。



次々とダンテの使い魔たちを屠っていくバージル。
その姿はまさに史上最強のデビルハンターにして無敵の救世主。

また相手が魔具か真の姿かの違いはあれど、
この極限の戦いっぷりは、かつて魔帝の軍団を相手にしたスパーダと同じ。

加減も無ければ慈悲も与えやしない。
敵意が僅かにでもあると見れば、徹底的に殲滅する鬼神である。


ダンテ『―――Ha!!』

『斧』の犠牲で閻魔刀を身に受けはしなかったも、
衝撃で後方へと50mほど押し弾かれるダンテ。
そんな彼へとすかさず追うように放たれて来たのは。

バージル『―――Take this!!』

雨あられというほどの幻影剣、それも360度全方位からだ。

魔弾やルシフェルで迎撃するのは間に合わない、
そう反射的に判断したダンテの左手へ次に現れたのは、
紫電を纏う巨大な鎌だった。



951:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:20:38.15 ID:YYV6AaJco

ダンテ『―――Time to rock! Baby!!』

次なる魔具を手に取るや、
すかさず鎌をギターの形へと変じさせ、
リベリオンを叩き付けるようにして弦をかき鳴らし。


凄まじい電撃の嵐を奏で、周囲の幻影剣ごと焼き砕いていく。


バージル『―――This may be fun!!』


だが―――次いで放たれてきていた『次元斬の嵐』を退けることは出来なかった。


一度納刀し構えなおしたバージルからの、
神速の抜刀による次元斬の連撃。

しかも線状ではない、
深く沈むような音を発しては、
次元斬の『塊』が空間を根こそぎもぎ取っていく。

それに桁違いの威力に加え、時の腕輪の効力持ち。
僅かに触れでもしたら一気に深手を負ってしまうほどのもの―――



952:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:22:38.34 ID:YYV6AaJco

こればかりは紫電の幕でも防ぐことは不可能―――
遮るにはこのギターそのものを盾にするしかなかった。


ダンテはまたもや、
『外面的』には迷いのない動きでこの魔具を捧げた。


次の瞬間、盾とされては究極の次元斬の直撃を受け。
砕かれていく紫電の魔具。


ネヴァン『―――ダン……テ―――』


弦が弾け切れると同時に消失していく、
絶頂と至福と無念が入り混じる彼女の言霊。


―――耳を傾けてはならない。

トリッシュが見た彼女の姿を思い出してはならない。
トリッシュが聞いた彼女の声を思い出してはならない。

魔帝の役たる存在が、『道具』の喪失程度に意識を煩わせてはならないのだ。

徹しろ。
冷酷にして残虐な魔界の皇帝に徹しろ。

ダンテは徹した。
悪魔に徹した。

踏み切ると同時に、足先から魔弾を放って更に加速させ、
この次元斬の嵐の間をすり抜けて行き。

接触が避けられない瞬間には、朽ちていくネヴァンを最期まで盾として『使い捨てた』。



953:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:25:00.54 ID:YYV6AaJco

彼女の最期の調である稲妻の嵐、
そして次元斬のきらめきの中、ダンテは一気に水面を駆けては距離を詰めていき。


ダンテ『―――Yeeeeahhh―――HA!!』


最大速のままの突き攻撃、
全力を載せたリベリオンの切っ先をバージルの喉もとへ。

対しバージルからは、
これまで次元斬を放ってきたのと同じ動作による一振り。


バージル『―――Huuuhhhh!!』

そして再び兄弟剣は激突した。

ここ煉獄すらをも砕かくかという光の爆轟。

この時一点に集束した力は、さすがに時の腕輪の効力があろうとも、
閻魔刀の側も完全に押さえ込むのは困難であった。

壮烈な衝突の爆発の中、両者とも刃を大きく弾かれてしまった。



954:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:27:08.69 ID:YYV6AaJco

だがそれで体制を崩すなんてことはおろか、
僅かなラグすらも両者に生じはしない。
弾かれたリベリオンと入れ違いにダンテから繰り出されるは、
ギルガメスが火花を散らす、左足による蹴り上げ。

同じくしてバージルから振るわれたのは鞘。

両閃光の嵐を切り裂き、
それらがついに標的を捉え互いに一撃を与える。


ギルガメスがバージルの顎に激突し、同時にダンテの喉にも食い込む鞘―――


そして直後―――両者の口から迸る鮮血。


両方とも、確かに一撃で致命傷を与える決定打ではない。

だがそうではないというだけで、
叩き込まれた殺意と力が圧倒的であるのは変わりなく、
二人の命は確実に削りとられていくのだ。

しかしそれほどの一撃を受けながらも、
互いに後ろに仰け反るどころか、苦悶の一声すらも漏らさず、
その場に押し留まっては更なる攻勢へと身を投じる。


刃を切り返し、至近距離からの幻影剣と魔弾、力に力の応酬を加速。

閃光を引く刃、生贄となり砕けていく魔具。
身から飛び散る朱色の滴が、互いの光と衝撃と混じりあって散っていく―――



955:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:28:35.96 ID:YYV6AaJco

ダンテ『―――』

ダンテにとってはまだまだ足りなかった。
この戦いには更なる力と闘争が必要だ、と。

世界の流れを書き換えるには、
もっと強く、もっと凶悪に、もっと苛烈に。
この戦いを他に比する例がない、屈指の決戦にしなければならないのだ。


そしてそのために彼はより―――『力』を求めた。


正義を貫くために力を解き放つバージルとは真逆、対を成して、
闘争と殺戮をただ遂行するがために。

己の中にある『悪魔』から、
『悪魔であるスパーダ』から受け継いだ『破壊』から、
魂を売っては力を引き出してゆく―――


激突の中、次第にダンテの放つ輝きに変化が生じつつあった。
色合いが透き通った『真紅』から―――濁った『赤黒い』ものへと。


それが物語っていた事実は一つ。
『半人半魔』から『真魔』への変貌である。

―――



956:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 22:29:33.49 ID:YYV6AaJco

今日はここまでです。
次は月曜に。



957:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/05/11(金) 23:05:54.73 ID:ac4g9ywHo





962:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/05/12(土) 09:50:45.73 ID:JV3lkfhAO

なんてこったネヴァンまで逝ったのか……乙



963:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/05/12(土) 17:35:19.98 ID:y4KmiyrMo

お疲れ様です。準備と休息編でアイゼン様が言ってたスパーダ流カチコミ法がこんな形で再現されるなんて・・・



964:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県):2012/05/12(土) 17:44:56.92 ID:tndMEi7S0

これゲームだとプレイヤーはダンテとバージル、どっちを操作すんの?



965:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/05/12(土) 18:04:27.88 ID:bEyvVIND0

>>964
1Pがバージル2Pがダンテ



977:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 22:41:17.41 ID:f2pJ33CAo

―――

兄弟の殺し合いの傍ら、もう一つの決戦も幕が開いていた。

開戦の号令となったのは、二つの刃の衝突音だ。
レッドクイーンと贋物のスパーダ、
現在と過去の最強が再び火花を散らすこととなった。

ネロ「Ha!!」

互いに地を蹴り真正面からの斬りこみ。
突進、衝突、そして光を迸らせての鍔迫り合い。

竜王『―――くっ―――ははは!!』

右方と呼ばれていた人間の姿、華奢で中性的な優男の肉体であっても、
竜王の身から迸るはそんな印象など欠片も抱かせない圧倒的な力だ。

ネロ「楽しいか?!カマ野郎!!」

竜王『期待通りではないが悪くはない!!』

そのようにして力の爆発の中、
二人は互いに刃を弾き合い、歯をむき出しにして笑いあった。
もちろん和やかなものではない、むせ返るほどの殺意を滾らせて。

加えてネロは見透かした色も滲ませて、
二撃目を振るいながらこう続けた。


ネロ「そうかい。俺は少し期待外れだな」

二度目の激突、再度生じる力の爆発。
だが今回は金属音と光の奔流だけではない、きらめく『欠片』も飛び散っていた。


ネロ「これじゃ―――アリウスと『同じ』だぜ」


レッドクイーンによって抉られたスパーダの刀身から。



978:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 22:42:55.05 ID:f2pJ33CAo

レッドクイーンは魔剣スパーダを一度、完膚なきまでに破壊したのだ。

その事実からも、この二つの刃が互角にぶつかりあうことは無い。
魔剣スパーダが互角に、もしくはそれ以上にレッドクイーンに対することができるのならば、
そもそもこのような状況にすらなっていない。


竜王『くはは―――心配するな!』

しかし刃の劣勢を前にしても、
竜王は軽く笑い返した。


竜王『アリウスは―――コレはできなかっただろう?』


再度互いに刃弾く中、
左手に『もう一本』の――――――魔剣スパーダを出現させて。

これこそアリウスと竜王の最大の違い。
具現と破壊に加え絶大な創造の力。

三神の力を有すことで可能となる、途方もない戦い方だ。

無尽蔵の力を与えてくれる破壊と繋がったことで、
魔剣スパーダを『量産』できるのである。



979:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 22:44:24.98 ID:f2pJ33CAo

しかも単に攻撃力を上乗せするだけではない。

竜王の右手にあった最初の一本、その欠けた刃が見る間に元通りになっていく。
これもまた創造の真価である。

単体ではレッドクイーンが負けることはない。
一方で、この魔剣スパーダ『たち』も破壊されることはないのだ。
創造の加護によって不滅の存在となっているのである。


ネロ「なるほど―――」

弾き合い20mほどの距離まで互いに押し下がる両者。
竜王フィアンマは両手の魔剣を振りひろげ、さらに絶なる創造の力を披露した。


竜王『父祖に刃向けた者よ!!』


造り出された魔剣は両手の二本どころではなかった。


竜王『―――その父祖の名に埋もれて滅ぶがいい!!』


スパーダ一族との決戦の際、
かつて魔帝が光の大剣を浮べていたのと同じように―――さら10本ものスパーダが、彼の頭上に出現したのである。



980:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 22:48:17.52 ID:f2pJ33CAo

ネロ「ハッこいつはまた……!」

かの魔剣スパーダが並ぶ光景には、
ついネロも声を漏らしてしまった。

もちろん壮麗さへの感嘆ではない、辟易とした嫌気に参ってだ。

そんな呆れ笑いを漏らした孫へと向け、
父祖の名を冠する刃が襲いかかっていく。

まずは『赤黒い稲妻』を引いて飛来してくるスパーダが二本。


ネロ「―――きっとジイサンもびっくりだぜ!!」


ネロは横ではなく前に飛び込む形でそれらを回避した。

猛烈な速度で踏み切ったネロ、その動きに修正が追いつかずに、
コートを掠るも肉を切ることは叶わぬ刃たち。

そんな『後方』の石畳に突き刺さっていくスパーダを背に、
彼は竜王へと突進。

ネロ「Take this!! fuckin' FAG!!」

爆炎吐くレッドクイーンを薙ぎ振るった。



981:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 22:50:47.27 ID:f2pJ33CAo

その一撃は、交差させた二本のスパーダで防がれてしまうが、
ネロはその刃たちをもまとめて破断するべく、腕力に任せて一気に押し振るう。

しかし竜王を体ごと押し弾くことは可能であっても、
スパーダ『たち』は破壊しきれなかった。

またしてもレッドクイーンが刃を抉ったも、
切れ込みは刀身の半分にも達し得ず。
渾身の一振りでも、二本まとめて斬り砕くことはさすがにできなかったのだ。

しかもこの瞬間に与えたダメージすらも、瞬く間に造り直されて消失。

ネロ「Hum...!」

再生は本当に一瞬だった。
レッドクイーンと離れた直後には、
スパーダたちは『新品』同様の姿に戻っていたのである。


それを見ては、またもや声を漏らさずにいられなかったネロ。

そんな彼へと嘲笑を向けながら、
彼の腕力を利用して飛びのく竜王、
入れ違いに飛来してくるのはまたしてもスパーダ『たち』。

しかも今度は四本、竜王の頭上からの二本に加え、
後方に刺さっていた二本もネロの背へと飛来―――



982:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 22:52:08.42 ID:f2pJ33CAo

魔剣スパーダ。

いくら『量産型』とはいえ、またネロに因果を奪われていたとはいえ、
その力自体は紛れもなく『スパーダ』のもの。

ネロ「―――」

飛来してくる刃の速度には、この時ばかりは彼にとってさえも、
身を逸らす猶予はなく、
レッドクイーンを盾にするしかなかった。

ただし完全に防戦一方、余裕がなかった、というわけではない。
むしろこれを利用して更なる攻勢へと繋げていく。

すかさずレッドクイーンを前面に掲げ、前からの二本を弾くネロ。
同時に半身捻り、左手を後方に突き出して。

背後からの二本を、左手と連動するデビルブリンガーで『一掴み』にした。

巨手の人差し指と中指の間、
薬指と小指の間にそれぞれ一本ずつ、
まるで小さなナイフを挟み込むようにしてだ。


ネロ「こいつは返品するぜ!!」

そうして前方からの二本の衝撃も利用して、
彼は身を一回転させては―――勢い殺さずに二本のスパーダ投げ返した。



983:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 22:53:23.48 ID:f2pJ33CAo

竜王『―――』

元の速度にさらにネロの力も上乗せされた二撃。
これには竜王の対応も遅れ、
一本は弾いたも続く二本によって胸を貫かれてしまった。

しかし彼は平然、いいや、しっかりと苦悶の表情を浮かべ、
口からも鮮血を吐きはしたが。


薄ら笑いをも浮べていた。


ネロ「―――……チッ」


竜王『悪いな―――今の俺様に死の概念は存在しない』


竜王がそう笑い吐いて。

再びネロに突進してきた頃には、
胸を貫いていたスパーダは消えて頭上にまた出現。
体に空いた大穴も完全に消え失せていた。

そしてもちろん外面的なものだけではなく、魂や力の損傷もである。



984:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 22:54:36.72 ID:f2pJ33CAo

竜王『―――だがお前は違う!!ネロよ!!』

そして再び激突するスパーダとレッドクイーン。

飛び散る閃光とともにやはりスパーダの欠片が散るも、
瞬時に造り直し。
完全にへし折られても続けて量産可能。

その上、竜王自身が今や―――いくらでも復元可能。
つまり事実上の『不死』。


竜王『己が宿命が見えるか!!先に待ち構えている「死」を!!』


ネロ「―――Ha!!」


竜王にとって、ネロとは殺害が可能な存在だ。

これだけスパーダを量産してしまえば、
攻撃力の総量は彼を殺すには充分すぎるほどである。

いいや、単に殺すだけならば一本の攻撃力でも充分である。
魔剣スパーダ、その一撃をまともに受けては、
今のネロであろうがタダでは済まないからだ。



985:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 22:55:44.35 ID:f2pJ33CAo

しかしネロの側は違った。

負けるかどうかはともかく、創造を打ち破る術を有していない以上、
ネロ単身で勝つことは絶対に不可能だった。
魔剣スパーダをへし折りどれだけ『最強』となろうとも、だ。

時の腕輪を有したバージルという、
勝利条件が破棄されてしまったのだから、『彼だけ』では勝利をつかめない。
この決戦の地は、そもそもは結集したスパーダ一族のために『デザイン』されていたのだから。

だがここにいるのは『彼だけ』ではない。
筋書きにはないイレギュラーな勝利条件も、この決戦の地に紛れ込んでいたのだ。


―――とは言え、レッドクイーンとスパーダが接触して以降、
ここまで『彼』は戦闘には参加していなかった。


竜王『―――ところで上条当麻!!』


ネロと刃を激突させる中、竜王は思い出したように叫んだ。


竜王『―――あれだけの口を叩いておきながらお前は観戦か?!』


開戦早々、ネロが竜王に向かったのとは反対に、
はるか後方に飛び退いていた上条当麻へ向けて。



986:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 22:58:22.85 ID:f2pJ33CAo

上条『―――……』

上条当麻は、衝突する二人から300mほど離れた場所に下がっていた。
理由はもちろん、噴き荒れる絶大な力を避けるためにだ。

いくら戦う気に満ちてここに来たとはいえ、
まともに近接戦を行えば一瞬で屠られてしまうことはわかっている。
それは覆りようのない現実だ。

ただしだからと、ただ観戦してネロに全て任せるつもりでも無い。
今、彼なりに戦闘に加わる準備を急ピッチで進めているところだった。

禁書『―――もう少し!!』

インデックスによる『調整』と『改修』の傍ら、
ベオウルフからの支援も受けながら、身の敏捷性に力を注いでいく上条当麻。

今の竜王に爪や打撃が通るわけがないのは試すまでもない。
通常の力による攻撃力はもとから放棄し、力は全て回避に専念させているのだ。


そのようにして竜王の愚弄にも耳を貸さずに、黙々と準備を完了させて。
ついに上条当麻も戦いに参じるべく動き出した。

禁書『いいよ!!』

意識内に響いた彼女の声を合図に、
彼は銃を―――輝く『聖剣』が伸びている銃口を遠くの竜王へとむけ。


上条『よし―――派手に行こうぜ!!』


その聖剣を―――『射出』させた。



987:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:00:47.38 ID:f2pJ33CAo

竜王『―――ッ』

金色の光剣が放たれた瞬間、竜王の顔色が豹変した。

いかにも楽しげだった余裕は影を潜め、
変わらず薄ら笑いを浮べてはいるも、表情はぎこちなく硬直。

そしてこれほどにまで乗り気だったネロとの斬り合いを中断してまで、
竜王は聖剣の回避を優先させた。


10m以上も後方に跳躍し、
充分すぎる間合いと時間をもってやり過ごしていく。

彼がこの金色の光剣に並々ならぬ警戒を抱いているのは、
この一行動のみでも誰の目にも明らかであろう。


単純な攻撃力自体は、竜王にとっては塵に等しい。
だが問題はそこではなかった。
少し前まで上条とは同一体だったこともあり、彼にはわかっていたのである。

射出され上条の身を離れていてもなお、
ミカエルの聖剣としての作用は失っていない、と。


例えわずかに接触しただけでも、
程度の差があれ精神錯乱の影響は免れないだろう、と。

そして創造、破壊、具現といった強大な力を稼動させている今、
僅かな精神の異常でさえも致命的―――制御を誤り、強大な力で自滅しかねないであろうことも。



988:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:02:31.12 ID:f2pJ33CAo

上条を嘲笑った途端に一転。
竜王は強烈なお返しを受けてしまうこととなった。

一本回避しただけで安心するのは早い。
続けて二本目どころか、雨あられと連射されてきたのだから。


竜王『はっ!全く目障りなカスだ!!』

次々と放たれてくる聖剣に思わず悪態。
同時に彼の背から伸びるのは『翼』、黄昏色の鱗におおわれた竜の羽。

そして羽ばたくと放出されるのは無数の赤い光矢、
魔帝が使っていたものと同じ『弾幕』だ。

しかしそれらの照準は寸前に狂わされてしまう。


竜王『―――消え失―――ッ!!』


ネロが親切に待ってくれはしなかったからだ。

瞬間、竜王の頭部が根こそぎ木っ端にされ、その身が人形のごとく吹っ飛んだ。
ネロが放ったブルーローズの魔弾に加え、
連動する巨大な光の大砲による砲撃によって。



989:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:04:22.75 ID:f2pJ33CAo

直前に放たれかけていた光矢の弾幕は、
竜王の身がもんどりうったために大半が付近に着弾、派手に一帯を穿った。

しかし残る三分の一が進路修正を成功させ、上条の方へと。

上条『―――ッ!』

魔帝の光矢、上条にとっては一発でも貰えば致命傷もの。
固めた拳と爪でも防御することは困難、わずかな接触すら許されない。
回避に徹しなければならない。

だが三分の一の数とはいえ、
空の一面を覆うには充分すぎる量、それに速度も猛烈だった。

俊敏性に力を注いであるとはいえ、己の力量だけでは回避しきれない。
そう即座に判断した上条は、たんっと軽く跳ぶと。


上条『―――スフィンクス!』

すると呼びかけた彼の股下に―――魔女の魔方陣が浮かび、『白虎』が姿を現した。


上条『―――頼むぜ!俺の眼になってくれ!!』


大きな背にまたがり首筋をかるく叩く上条、
そこへ白虎は一唸りを返すと、すぐさま踏みきっては回避行動に移った。


インデックスとベオウルフの契約により、更なる強化を受けているスフィンクス。

たくましき四肢は、歩のたびに石畳を割り疾駆、
体は見事な捌きをみせて、この猛烈な弾幕を突破。

上条『いけ!!』

そしてその背から、上条当麻は聖剣の砲撃を続けていく―――



990:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:07:40.06 ID:f2pJ33CAo

竜王『―――チッ!!』

頭部の欠損など一切問題にはならなかったも、
再生した彼の顔色は優れなかった。

いくら予期せぬ事柄も愉悦になるとはいえ、
眼中にもなかった『小物』に調子を狂わされたのでは、苛立ちの方が勝るものだ。

ましてやネロとの対決というとっておきの一戦に水を注されれば尚更だ。


そんな竜王の『素直』な表情変化を、
当然ネロは見逃しはしなかった。

再び刃を激突させ、最強の人間は挑発的に言葉を投げかけていく。
瞳には、不気味な洞察の光をきらめかせて。

ネロ「―――どうした?!何か困り事でもあんのか?!」

竜王『心配しなくていい!些細なことだ!』

ネロ「その割にはやけにビビッてるな!」

竜王『―――俺様ではなく己が身を心配したらどうだ?!』



991:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:10:04.26 ID:f2pJ33CAo

剣劇は一進一退だった。

10本以上もの魔剣スパーダによる、物量に任せて押しこもうとする竜王。
両手の魔剣を叩き振るっては、
浮遊する魔剣をネロの隙を狙って次々と放ちこんでいく。

一方ネロは、見事な剣技と体捌きでそれらを退けていった。

刃の量は負けてはいるも、鋭さ・強度は確実に勝っているのだ。
魔剣スパーダの刃を抉り飛ばし、
デビルブリンガーで牽制しては強烈な一撃を見舞う。

と、そのように一見互角のように見えてはいるも、
両者の間にはある大きなアドバンテージがあった。

ネロは限りある魂である一方、竜王は事実上不死であるという点である。

ただしそんな竜王の優位性も、今や徐々に翳りが生じつつあった。

竜王『―――』

斬り合うかたわら、羽から赤い光矢を放ち続けてはいるも。
ネロに意識を向けなければならないために、
いまだにあの目障りな『小物』を捉えることはできぬまま。


そのような刃の応酬の中、決定的な瞬間が訪れる。


とある回避し損ねた聖剣。

この金色の刃が身に刺さることを免れるには、
竜王は左手の魔剣スパーダで弾かざるを得なかった。



992:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:11:29.69 ID:f2pJ33CAo

刃を振るい、聖剣を一瞬にして砕き散らしていく竜王。


魔剣スパーダにとっては、この程度の刃など塵に過ぎない。
傷一つ、汚れ一つ生じはしなかった。

しかし。
何も生じはしなかったも、既に『生じていたもの』には大きな変化があった。
いいや、むしろ『変化が止まった』のである。

ばきり、と光が弾けた直後。

レッドクイーンによって抉られていた刃の損傷、その再生が停止した。

竜王『―――』

その現象が何を示していたのかは明白。
竜王にとっては、こうして実際に触れなくともすでに予想はついていた。


創造の機能不全だ。

この一本へと向けていた意識に、幻想殺し―――ミカエルの聖剣の作用で障害が起こり、
正常な制御が損なわれてしまったのだ。

やはりアレイスターが魔術で構築したものとは違っていた。
オリジナルの聖剣は確かな作用を有していたのである。



993:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:14:53.27 ID:f2pJ33CAo

ネロ「へえ―――」

そしてもちろん、
そうした竜王の事情はネロの目から隠すことも不可能だった。

小さくつぶやいては不敵にほくそ笑む最強の人間。
瞳の中にある洞察の光がひときわ不気味にきらめく。


ネロ「―――なるほどねえ」

彼はそうわざとらしく声を漏らしながら、
すかさずレッドクイーンを振るい、
創造の加護をなくした魔剣スパーダを―――完全に叩き斬った。


砕け、宙を舞う魔剣スパーダの切っ先。


この一連の光景で、ネロと竜王の思考は同じ結論に到達する。


竜王の身に聖剣を刺す、
それがネロの最重要目的となり、
竜王にとってはなんとしてでも防がねばならないということだ。


竜王『―――』

そして彼が成すべき具体的な手段は、上条当麻の早急なる排除―――

そのようにして、彼の中で優先順位が覆ってしまった。
頂点にいたネロは一つ下がり、順位の中にいもしなかった上条が頂点に。

これは単に順位の逆転というだけではない、ある大きな意味を含んでいた。

筋書きの意志に反するとはいえ、
上条当麻をこの決戦の中心に据えざるを得なくなったのである。


つまりは、上条当麻という『主役』の存在を認めてしまうということだ。



994:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:17:24.70 ID:f2pJ33CAo

だが竜王には、そうした流れへの影響を懸念している余地はなかった。

影響を僅かなものに留めるに、また自らの勝利のためにも、
ここからは何よりも上条の排除に専念しなければならない。

確かに意識がそれたことで、ネロの猛撃に晒されることになろうも、
創造が存続する限りいくらでも再生できるのだ。

いくら最強の人間の攻撃といえど、この身を滅ぼすことは出来ない。


竜王『―――ははっ!!お前には恐れ入るよ上条当麻!!人を苛立たせる点に関しては超一流だ!!』


竜王は怒気と嘲笑を混じらせた声を吐き出しては、
上条の方へと振り向きざまに。

振りかぶった右手のスパーダを叩き下ろし、赤黒い斬撃を放出。


直後、その絶大なる光刃が一帯ごと―――上条とスフィンクスを消し飛―――ばすはずだったのだが、


上条『―――ッうおッ!!』

彼らは僅かな差で死を免れることができた。

斬撃の狙いが逸れてしまったのだ。
竜王が斬撃を放ったと同時に、
ネロのデビルブリンガーが彼の背を殴り飛ばしたために。



995:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:18:05.98 ID:f2pJ33CAo

次スレ立ててきます。



999:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:21:52.92 ID:f2pJ33CAo

                                            __          , - 、      _,、_
                                         └一 、 ̄L__,、   〈  }r─‐冖'ィ^´
                                             L.r‐- 、_  ` ̄` `ア^  {フ }
       , -─- 、                                         , -=マ      、_ |
.       /.::/ ̄`ヽ.:ヽ.                                     //^}::::}      \`´        _
     l:::::}    _ 、::.、             __                    //   ,'.::,' . : :      ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    ̄>
     l:::/  // ',:::',        _  /.::::}     _                _/.:/    /.::/. : : :                   /
     |/   /.::/.   ',:::',         /.} //}::/      /.::} /}      _, - '7.:/  . ://  /  . :             {
          /.::/     ',:::}        し' {:レ'/      /.:://.:::,′__ _, - '´  /.:/ . : : : :´ _  {  :/. : _            ノ
.         /.::/     }::レ'^V^l /| _ |::/      /.:,:〃..:/ /.::}´__ ,ィ  /.:/. : : : : : /.:::::} 」 /}  { \         /
       _/.::/       ノ.:{::::ソ.:::レ',::レ'::}_ノ:{__,   /.:/.::/}::{_/.〃::レ'.::レ'.::{_ {::: {___/:/^}::レ'::レ'.:::L,  }   、     , -‐′
   __/.:::::`'ー─‐::"´_.:::〔/,イ:::/ `^}:::/{::::ノ _//{:/ .L:ィ::/L.ィ/}::7 : 、:::::::::::::::/  l_/L/}::71 j    ',  /
  ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ ` ̄ `´   `´ `´  ̄/ ̄´   ア⌒´   /:/   ` ̄ ̄´     }  /:/ } {    } /
    デ ビ ル   メ イ   ク ラ イ/      _/     /:/           ノ /:/ | \_  レ'′
                        /    _/        〈:/              `¨〈:/   ` ̄¨´
                         ̄ ̄

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                  z‐、                、___「_T__、
                | |  z‐、        、_、 | | __「T__、__「T_、 ハ.  r z __、     __
                | | //.  、┐      .〃  | |.ノィ_i、>.ノィ_iミ、//._| |__ミ>     /ヘヽー、\
                ゝ '/    '=} .==^ 〃⌒ヘ | |┌r‐イィーrヘ  /^>.__| | ー┬r^ //  } }   ヽヽ
               //       , ィ |¬=、 (Ξソ | |||―| |―| | /ィ | }/| | }ヽ || { {  /./   } }
              { (     _ 〃 } レノ ).}  ̄  | |└|┬| |‐rムヽ. | |〃 | | しL||  、ーノ    / /
               ヽ、二二二-' ヽ=ヘ.)∠- '     _ノノ _ノノ ヽニニ^) |_|   |_|  ヽ丿   . ̄  ∠- '
                  ┌――――――‐┐     __     、_____ 、  r‐r、  ___、
                  |::_「 T_、_「 T__、::|   ――| |―「 T 、| |      |. Γ //^ヽ)    | |
                  |::::/ └、::/   丶、|  ̄二二| |二|._」 ̄ | |―――| |/ ‐i┬^  ̄ ̄| |
                  |:〃:|._」Y〃:|._」ヽ「::| _二二|._」二二_、| |___| |   | | 、 ‐┬i┴ヘ
                  |::::::::――――^:::::::|   r‐r――‐r:ヘ  | |      | |  ̄| | ̄ }ヽ| ヘノ>
                  |::::ー―┬┬z―^ ::|   |__|ニニニニ]__|.   |._」―――|._」 }ヽ| |/> 'ー'||<
                  |:::_ノ^>_」 「ヽ`ヽ::::|                        ー'| ヒ__.ノZ||、\
                  |::ー::´::ヽ.ノ::::::ー′|  イ  ン  デ  ッ  ク  ス  「二-へヘ_ノ  Y^



1000:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:22:20.83 ID:f2pJ33CAo

               レ'〃〃.:.:.::::::::::.:イ:.:.ヽ
              レ'〃〃.:.:.::::::::::::..:!.::.:.ハ
               レ'//.:.:::::::::::::::::::.:.!.:.:.ハハ
                  l.:.:.:.:::::::::::::::::::::.:.:ノ.:.:.j:ハ:.:',
              j.:.:.:::::::::::::::::::::..く.:.:.:.ノノ∧.:'.
              ノ.:r<.:.:.´ ̄`ヽ.:`ヽ、ノノ.:.i :|
            /::/   `ヽ.:.:.:.:.:.:.\.:.:.\.:.|l:|
             |.:.|      \.:.:.:.:.:.\.:. |.:|i:|
             |.:.|,.へ、_    ,. -=< ム./^V
            Nミ ゝェ式>=く ィrェ式ソ'´i:! i1:!
            リぃ`ー一' i   `ー一'  i:!ノノ:!              >>1000
             i:ハ   、_..       /リ_ノ.:li
             {j ハ  _ .._ _ ,    /.:.:V.:.!:!!
             {jハ:.ヘ  ー ' . , イ.:.:.:.:.V:.!:!、
             {jハ!.:.:.\ __ / !.:.:.:.:.:V.:.!:.\
             {jハ!: : :/:.ヽ    /: : : : ,ハ.:.:.!::::::.\
             {jハ!: :/: : : :\  ,'. : : : /: : V{、::::::::::>=
             {jハ!:/: : : : : : :\| : : :/: : : : Vト、 '´: .:.:.:.:.:.:
           _∠/〃L: : : : : : : : : : : /. : : : : : :\\.:.:.:.:.:.:.:.
       ,.. ィ´.:.:.:/〃: /´: : ̄: : ̄:  ̄: : : : : : : : : : :ヽ`ヽ.:.:.:./
      /.:.:.:/.:.:.:./〃: /: : : :,.  ´  ̄ ̄ ``ヽ、: : : : : : :.\ \.       and BAYONETTA



1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:19:17.11 ID:f2pJ33CAo

デビルメイクライ(+ベヨネッタ)」シリーズと「とある魔術の禁書目録」のクロスです。

○大まかな流れ

本編 対魔帝編

外伝 対アリウス&ロリルシア編

上条覚醒編

上条修業編

勃発・瓦解編

準備と休息編

デュマーリ島編

学園都市編(デュマーリ島編の裏パート)

創世と終焉編(三章構成)←今ここの第三章(スレ建て時)

ラストエピローグ




2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:23:55.42 ID:f2pJ33CAo

だがその程度で竜王の関心を逸らすことは不可能だった。

竜王『―――はッ!!』

ネロに殴り飛ばされたも、
竜王は彼ではなく再び上条の方へと向きなおし、
猛然と突進してきたのである。


上条『―――スフィンクス!』


上条にとっては距離を詰められては一貫の終わり。
すかさず白虎を促しては距離を開けようするも、
やはり余りにも力の差が有りすぎた。

本気で向かう竜王にとってはもはや、
スフィンクスの全力疾走ですらも止まっているに等しいものだ。


羽から光矢をこれでもかと放ち、向かってくる聖剣は迎撃し、竜王は一気に爆進。


スフィンクスがようやく一歩目を踏み出した頃には、
彼は上条達の頭上に到着していた。


そして彼らが認識する暇もなく――――魔剣スパーダの狂刃が振り下ろされた。



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:25:52.77 ID:f2pJ33CAo

上条達が破壊の刃に気づいたのは、脇の石畳が大きく穿たれた後だった。

ネロの再びの牽制によって、
竜王の攻撃はまたもや外れたのだ。


竜王を追いネロも爆進し、
間一髪のところで振り下ろされかけたスパーダを魔弾で弾いたのである。

そしてそのままの勢いでネロは体当たり。
ぶつかり合っては落下、石畳の瓦礫と爆轟の中で再び刃を散らすこととなった。

ネロ「撃ちまくれ上条!!」

竜王『チッ!!』

しかしもちろん竜王の意識は、
こうしている中も聖剣を放ってくる上条当麻へ。

魔剣が壊れようが身にダメージを受けようが、
上条を優先すべく追おうとする竜王。

そんな彼を執拗に妨害するネロ。

竜王が地を踏み切った瞬間、
逃がすかとばかりにデビルブリンガーで掴み落とし、レッドクイーンを叩き込む。

その一撃が複数のスパーダで防がれては、
数にモノを言わせて逆に押し弾かれ、再び逃れられそうになろうとも、
魔弾とデビルブリンガーを駆使してまた引き倒し―――

―――互いに身を顧みない壮絶な攻防を繰り広げていく。



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:28:35.76 ID:f2pJ33CAo

無論、上条当麻もその外にいられるわけではない。

名実共に『主役』の座に立った以上、
格段に弱いからと手加減されるわけもない。

上条『―――ッ!!』

わずかな差で目の前に果てしない溝を穿っていく、
魔剣スパーダの極なる斬撃。

飛び散る閃光と石畳の破片、そのなかを駆けていく彼らへと、
次いで襲いかかってくるは空を覆いつくすかという光矢の雨。

スフィンクスの高速機動でなんとか回避しても、
至近弾による衝撃が二人を着実に蝕んでいく。

直撃はしなくとも、
この空間を満たす力の嵐には無傷ではいられなかった。

目に見えて消耗していく二人。

スフィンクスの速度が低下し始め、
回避行動が鈍りはじめてはより至近距離の光矢の炸裂を許し、
さらなる余波を浴びるという悪循環。

そして揺らぎかけているとはいえ、
不死の身という竜王の優位性もいまだ効力が強く、
ネロの猛攻をもってしても徐々に上条へと接近。

突進してくるもデビルブリンガーによって引き倒される竜王、
それでも明らかに肉薄しつつあった。



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:30:04.28 ID:f2pJ33CAo

破片と光の雨の中、
疾走するスフィンクスの背から上条は銃撃を続けはするも、
命中しているのかは全くわからなかった。

彼らの存在を覚える方向へと連射するも、
実際のところ、竜王とネロの動きに全く意識がついていかないのである。

だがこれだけははっきりとわかっていた。


竜王『―――上条当麻ッ!!』

上条『―――ッ!』

爆轟の中に混じる声が近づいてきていることは。

圧倒的な力の奔流と共に、
おぞましい殺気がすぐ傍にまで迫りつつある。
衝撃が重なるたびにより近く、より濃厚に。


―――彼がそう悟った時には、実際に状況はもう数段『先』に展開していた。

竜王の方が格段に行動速度が速いのだから当然のこと、
『その時』はすぐに訪れた。


瞬間―――これまででもっとも近い『至近弾』が上条達を襲った。

上条『ッがッ!!』

目の前を塞ぐようにして、まるで巨壁のように迸る赤黒い閃光。
魔剣スパーダの超大な斬撃。

あまりの近さに上条達の身も倒されてしまう。
ただし幸いなのは、またしてもネロの妨害によって、
この一撃が狙いを外したという事だ。

だだし今回ばかりは『それだけ』では済まなかった。


次いで竜王が降り立ったのは―――上条達の目の前だったのだから。



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:31:13.91 ID:f2pJ33CAo

存在を認識するや、
スフィンクスもとろも横倒しになったままであっても上条は即座に発砲、
至近距離から聖剣を放つも。

竜王が素早く―――いや、彼にとっては特に急いだ動作でもなかったであろう、
右手にある魔剣スパーダを盾にしたことで、聖剣は全て防がれてしまう。

上条『―――くそ―――』

どれだけ連射しようが無駄だった。
いくら創造の加護を剥がそうとも、
魔弾そのものの威力では、スパーダの刃に傷一つつきやしなかった。

次にはどうなるか、上条は全てを察知していた。
直後には竜王の左手のスパーダで斬り殺されるのだと。
恐らくこちらが認識する暇もなく、死んだことすら気付かない速度で。


だがこの時―――そんな死を前にしていながら、上条は小さく笑った。


実は『もう一つ』の結果をも察知し、
そして今―――流れはそちらに傾こうとしているのを確信したからだ。

その最大の理由は竜王の背後、迫るネロだ。



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:32:28.00 ID:f2pJ33CAo

このとき本来ならば竜王は、
ネロの接近などこれまで通り気にしなかったであろう。
レッドクイーンに断ち切られてでも上条を殺したはずだ。

だが今度ばかりはそうではなかった。

一足遅れに『ある悪寒』を察知した竜王、
上条殺害を中断してまで振り返った彼の眼に映ったのは。


ネロ「―――『コイツ』がそんなにおっかねえのか?!」


ネロの姿とその左手に握られいている金色の光剣―――ミカエルの聖剣だった。


これまで放たれたうちの一本を掴んでいたのである。
竜王の意識が上条当麻に集中しているのを逆手にとった行動だ。


竜王は、そのまま振り返りざまに斬り弾こうとするも。
生憎、彼の右手のスパーダは直前に創造の加護を失っており、
ここまでのダメージを修復できぬまま。

先に振り下ろされたレッドクイーンによってあっけなく破断され。

そうして防護策を失った竜王の眉間を―――


ネロ「―――そらよ!!プレゼントだ!!」


―――聖剣が貫いた。



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:34:51.88 ID:f2pJ33CAo

直後、業火に焼かれる罪人のごとき咆哮が響いた。

まさに炎のように『像』がぶれる竜王、制御がくずれ、荒れ狂う力の渦。
過去の竜人たる姿と、現在のフィアンマの姿が交互に明滅を繰り返していく。

上条『―――ッ!』

そうした竜王の反応に、
上条は早くも身の内から湧く勝利の喜びを覚えていた。

なにせ効いたのだ。
ミカエルの聖剣が明らかに作用していたのである。

竜王の精神を一気に乱し、力の制御が困難な状況に叩き落したのである。


ネロ「はッ!お気に召したようで結構!!さっさと死ね!!」


悶え苦しむ竜王へと、容赦なくレッドクイーンの追い討ちを叩き込むネロ。
スパーダごと切断される左腕―――しかし再生はなされない。


竜王『―――おッおおおお!!』


苦痛の叫びがより色濃くなり、
ついに竜王の魂も死から逃れられない領域へ―――そのはずだったのだが。

上条が覚えていた勝利の喜びは、
次の瞬間にまたすぐに消失してしまう。


禁書『だめ―――足りない!』

スフィンクスの目から見ていたインデックスが告げたからだ。


禁書『―――――――――これじゃ干渉が弱くて!!精神を破壊しきれないんだよ!!』


ミカエルの聖剣、その作用が不完全であると。



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:36:19.33 ID:f2pJ33CAo

上条『なっ……?!』

その意識内の声に、思わず上条は認識を疑いそうになった。
だが彼女の言霊には偽りなどはなく、
自身の認識も残念なことに正常。

彼自身も一足遅れに、目の前の現象から認めざるを得なかった。


竜王の左腕が再生を始めたからだ。
それだけじゃない、
力の混乱も徐々に収まりつつあるのだ。

確かに正常時のように、
フィルムをつなぎ合わせたかのように一瞬では再生しない。

だがそれでも、
ネロによる続けざまの損傷を上まわるには充分な速度で、
竜王の状態が復元されてつつあったのだ。

ネロ「―――Sit!!」

刃振りながらも悪態を付くネロ、

上条もまさに同じ気持ちだった。
勝利を確信した直後にそれがなかった事になるなんて、最悪以外の何ものでもない。



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:37:54.85 ID:f2pJ33CAo

上条『―――くそっ―――』

今のままでは一時的に、
それも半端に機能不全に陥れるだけで、
決定的打にはなりえないのは明らか。

打開策、もしくは戦法の改良策を見出さねばならない―――

―――このような時こそ頼りになるのがインデックスである。

特にこの聖剣といった、複雑な機構には彼女の洞察と技能が真価を発揮するのだ。
かつてのアンブラの主席書記官の冠は伊達ではない。

そうしてこの時もまた、彼女はすばやく分析を完了しては、
的確に問題点と打開策を提示してくれた。


ただしその内容については―――二人にとってはとても安易に成せるような代物ではなかったが。


禁書『効力不足の原因は、所持者から離れたことによる処理の停止、それを解決するには―――』


続いた彼女の声は少しひきつり、
僅かながらに震えていた。


禁書『所持者が「直接」刺して―――ミカエルの聖剣の効果を完遂させること』


聖剣の効果を完遂させること、
つまりは過去と『同じ』―――ミカエルが竜王を滅ぼしたのと『同一のやり方』でなければならないということだ。


具体的には彼女の言葉通り、聖剣を右手にしたまま突き刺し、処理を行い作用を完遂させるのだ。

そして当然の事ながら結果も『同じ』になる。
竜王の精神が完全に崩壊し、
一方で聖剣の所持者も―――竜王と融合して――――――『道連れ』になる、と。



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:39:19.41 ID:f2pJ33CAo

上条当麻、その名の少年は狂った正義の戦士であり、
目的のためならば己が身をも犠牲にしようとするいわば『善の狂信者』。


ゆえに本来ならば―――必要とあれば己の犠牲は迷わなかった。


だがこの時は違っていた。
上条は即断できなかった。


これによって犠牲になる存在が、上条だけではなかったからだ。


ミカエルの聖剣、その作用を完遂すると、
この身の内にある『全て』が道連れに飲み込まれるのだ。


上条当麻の魂はもちろん―――――――――『ここ』に『いる』インデックスの思念までもが。


上条『――――――』


その瞬間、まるで時が止まってしまったような感覚だった。


聖剣の稼動維持にはンデックスの力が必要。
しかし事を成してしまったら、魂が同化状態にある彼女も運命を共にしてしまう―――



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:40:47.79 ID:f2pJ33CAo

これは上条当麻という少年の根幹を揺るがす『選択』だった。


――――――『アイツ』を殺そうとする『世界』なんざ―――全部―――ぶっ壊す――――――


力を求めた理由にして、
昔からこの瞬間までの戦う理由、その基盤には常にインデックスの存在があった。

突き詰めれば、今や彼女を守り愛することこそ彼の存在理由としてもいい。


だがそんな彼に、この最終手段は示していたのだ。


―――インデックスも死ぬ、と。


これまで覚えたことのない驚愕と衝撃、
恐怖と絶望に襲われる中、上条当麻は認識した。


これぞ筋書き、宿命に抗うということの本当の意味―――『選択』であると。


全てにおける主役の座に立ったことにより、
彼の手中にも筋書きの存在を左右できる『究極の選択』が生じたのである、と。

そう、ネロやバージル、そしてダンテに突きつけられたのと『同じ』。
その者がその者であるがゆえに決して成せぬ形によって。


上条当麻にはこう提示されていた。


『最愛の者を道連れにしてまで―――筋書きに抗うのか』、と。



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:42:26.78 ID:f2pJ33CAo

それはごくごく僅かな時間ではあったも、
上条当麻には永遠にも思えた間だった。

ネロ「―――離れろ上条!!」

状態を修復しつつある竜王と刃を散らすネロ。
しかし目の前で圧倒的な力が振るわれようと、
上条当麻は動かなかった。

ネロの声すらも聞えていなかった。

意識は全て内に向き、これまでにない速度で巡っていく。



インデックスは死なせない。
絶対に、何があってもだ、そのためにここまで戦ってきたと言っても良い。

だがそうしてしまったら。
ここで彼女の命を優先すれば―――別の多くのものが犠牲になる。


これまでの『全て』が水の泡となり、真の意味を喪失してしまう。


古から続いてきた天魔人の関係、
天界の前世の家族達、人間界の人々、学園都市の仲間たち、

そしてネロ、バージル、ダンテの戦いと選択も。


多くの命が注がれた―――アレイスターの戦いも。


これら全てが無駄になってしまう―――


上条『―――』


――――――インデックスの戦いすらもだ。



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:46:33.90 ID:f2pJ33CAo

インデックスの戦い、
過去と向き合い、そして受け入れた彼女の戦いも。

それだけじゃない。
ここまでの彼女との日々も、彼女と交差した想いも、
その全てが真の意味を失う。


二人の想いが重なったのは単に―――『筋書きにそうあっただけ』なのだから、と。


この愛情は―――与えられたものでしかない、と。


上条『―――……』

そこまで抉ってしまうと、
もやは上条とインデックスだけの関係に留まらなかった。
この世界の全ての人間の繋がりが、
かつてミカエルを魅了し、スパーダの心すらをも惹き付けた『人間の愛』が、


それら存在の全てが、
ここで筋書きに屈してしまうと―――『造られたもの』と決定付けられてしまう―――







―――そこに気付いた瞬間、上条とインデックスの意志は決定した。



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:48:20.45 ID:f2pJ33CAo

決断は早かった。
これは賢明だったのかもしれない。
時間をかければかけるほど、このような苦悩は深みにはまってしまうもの。


ネロやバージル、ダンテと同じく―――二人は即断した。


禁書『……とうま―――』

意識ないに響く、穏やかで優しく。
まるで子守唄のような声。

上条『ああ―――』

上条も頷き、そして立ち上がった。


禁書『―――いこう』


筋書きに突きつけるために。
これまでの全てを価値あるものにするために。

スパーダが見た愛も、天界の家族達が知った愛も、
人間界にある全ての愛も。


この胸の中にある愛も。


筋書きを潰すことで―――全て『真のもの』、『自分だけ』のものであると。



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:49:21.28 ID:f2pJ33CAo

ネロ「何してる?!離れ―――」

ネロの声を押しのけるようにして立ち上がった上条当麻。
その足は前に向いていた。

体も、顔も、そして盲目の瞳も。


その彼の姿を見て、ネロは完全に悟ってしまう。
具体的な部分はわからぬとも、彼が今何を行おうとしているかは。

ネロ「――――――上―――!!」

目の前で自己犠牲を敢行されると、
理由がどうであれまずは止めたくなるのが正義の心。

清き愛を知るネロもまたこの時、身を呈してまで上条を止めなければ、
という衝動に駆られてしまう。

しかし彼は動けなかった。
もう一つのこともわかってしまったからだ。


これが上条当麻の―――究極の選択であるのということが。


飛び出した上条を、ネロは止めなかった。
むしろ竜王の刃を弾き、デビルブリンガーでその体を押さえつけて―――


ネロ「――――――やれ!!」


そしてついに、上条の体が竜王に激突する形で。

かつてミカエルが行ったように。
彼の右手から延びた光刃が―――竜王フィアンマの胸に深く沈んでいった。



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:50:49.56 ID:f2pJ33CAo

瞬間、ひときわ大きく爆発する竜王の咆哮と力。
姿がより激しく明滅し、
あまりの壮絶さに思わずネロも身を引いてしまうほど。


猛烈な閃光の嵐の中、上条は的確に処理を行っていった。

インデックスとの共同作業によって、
竜王の滅亡、そして『己達の死』を組み上げていく。


上条『―――』


『生』への願望はあった。

二人で生きる未来は、もちろん夢見ていた。

意識の繋がりだけじゃない、
肌の暖かさが伝わる傍に寄り添い、共に過ごし、この世界の向かう先を見届け。

そしていつか子をもうけ、人並みに家庭を築き、子の成長を見守り。
一人前に成長した子が羽ばたいていく、そんな日を迎えることも。

だがそう心から願ったゆえに、何よりもそう願わせる愛を信じているがゆえに。
二人はそれらが叶わぬこととなろうとも―――前に進む。


禁書『―――大丈夫』


とはいえ、たった一つだけであるが夢は叶いそうだった。


禁書『何があっても私たちは―――』


上条『―――そうだ。一緒さ。どこまでも』


もう離ればなれになることは二度とないのだから―――



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:52:39.87 ID:f2pJ33CAo

だがいつまで経っても―――二人の意識が融合する時は訪れなかった。


『死』はやってこなかった。


上条『―――……ッ?!』


ミカエルの聖剣、その処理が全て終ってもだ。
二人は生きていたのだのである。

だがこのとき二人に降りかかったのは、死を免れたという『幸運』ではない。
むしろその『逆』であった。


二人どころか、目の前の竜王すらも―――そのままだったのだから。


禁書『そ、そんな……―――!』


ここまできても聖剣の機能は―――不完全だったのである。

選択をしたのにその決断が反映されない。
突然のしっぺ返し、この痛烈かつ鮮烈な返答には、上条もインデックスも絶句してしまった。

全て完璧だったはず。
上条もインデックスも、互いに己の成すべき作業は正確にこなした。
ありとあらゆる情報をもとに、『現在の竜王』用に完璧に調整したはずなのに。


原因は、決して二人の作業ミスではなかった。



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:55:01.81 ID:f2pJ33CAo

何が足らなかったのか。

知らない情報の欠落を、
事前に知ることが出来ればそれはもう『知らない情報』ではない。

知らないからこそ欠落に気付くことができず、
また実際に稼動させてからでなければわからないのである。

特にテストなど望めないこのような一発勝負の場ではそうだ。

ただ一度動かせば、欠落部分は実に簡単にわかるものでもある。
この時も二人は特に精査分析する必要はなかった。


少し前のアレイスターによる失敗の原因は、
竜王への認識が不完全であったことだ。

具体的に何が欠落しているかは別として、
実は上条達も彼とおなじ失敗を犯してしまっていた。

認識が不完全だったのだ。

では何の認識が欠けていたのか。


竜王『――――――は……はっははははは!!』

アレイスターとは違い、人間性は完璧に有している。
また現在の竜王の状態も、上条が同一体であったために誰よりも理解している。


竜王『そうだ!そうだとも上条当麻!』


だがたった一つだけ、彼には大きく欠けていた要素があった。


竜王『お前は俺様が―――――――――「視えてはいない」のだからな!!』


―――それは『視覚』である。



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:57:34.84 ID:f2pJ33CAo

視覚の欠如はいくら他の四感と力で補えるとはいえ、
視覚そのものが存在しないことには変わりない。

上条にはそれが決定的に欠けていたのだ。


今この瞬間、嘲りの声を吐く竜王の顔が笑っているのも、
その笑みにどんな感情が含まれているのかもわかる。


しかしその『笑顔』だけは―――『映像』だけは、上条の中には存在しなかった。


ゆえに上条の竜王の認識は―――『不完全』。


それは言い換えればこうも形容できた。
『ミカエルとして』、つまりは聖剣の所持者としても不完全である、と。

当然のことながら、当時のミカエルは盲目ではなかったのだから。

そして筋書きの視点からはこうも言えただろう。
『選択肢』を手にすることは可能でも、選択の『決定権』を有するには役者不足である、と。


上条『―――ッ……!』

こればかりはどうしようもなかった。

聖剣所持者としての認識が必要なのだから、スフィンクスの目でも代用は不可能。
無論、ここにインデックス本人を連れて来ても無意味。
上条当麻の『本物の目』で見なければならないのだ。


そしてそのようなことは事実上―――二人がどうにかできることではなかった。



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/16(水) 23:59:10.77 ID:f2pJ33CAo

言葉も思考も失いかけてしまう上条当麻。

そんな彼とは対照的に、
今だ創造の機能不全に悶えながらも、竜王はこれでもかというくらいの笑みを浮べて。

竜王『―――そういえばだ、このような時に言うべき言葉があるじゃないか』

上条の胸倉をつかみ、引き寄せながらこう告げた。
いや、『言い返した』。

少し前に、『殺される』際に上条から受けた言葉を。



竜王『―――「不幸」、だとな!!はははは!!』



そして竜王は笑い続けた。
直後、飛び込んできたネロによってすかさず腕を斬り落とされ、
上条を手放してしまっても尚。


竜王『言っただろう!ここではお前は何も出来ない「カス」だと!!いや、たった一つだけある!!』

ネロの脇を抜けさせる形で、
吹っ飛んでいく上条の腹に―――赤き光矢を一本―――叩き込んで。


ネロ「―――上条ォォッ!!」



竜王『――――――犬死することだ!無様にな!』




―――



22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/17(木) 00:02:03.11 ID:s5xbKUquo

今日はここまでです。
次は土曜の予定ですが、今回のように約二回分をまとめて投下するかもしれませんので、
一日二日遅れるかもしれません。



23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県):2012/05/17(木) 00:02:36.16 ID:uzh8fs45o

乙乙乙



24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/05/17(木) 00:06:59.50 ID:CEhDEL9fo

oh・・・



26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/05/17(木) 00:13:11.78 ID:kyiKAJho0

主人公補正を上回る猛攻にはゴールドぶちゃいくの力を持ってしても勝てるかどうか…
次回も超場決戦は続くな



27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/17(木) 00:42:00.63 ID:YiEFy2dDO

『二人の共同作業』という言葉で、二人でケーキ入刀ならぬ竜王入刀してる絵が思い浮かんだ



28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県):2012/05/17(木) 00:47:07.95 ID:1MqljLroo

またいいところで切るな

>>27
わろたw



29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽):2012/05/17(木) 01:06:12.91 ID:+MyCYwIAO

乙乙乙

>>27
ヒデェ絵面だ



31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/05/17(木) 10:37:32.00 ID:XVKsfwwAo

お疲れ様です。最強の魔剣のバーゲンセールだな・・・



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/17(木) 21:23:33.44 ID:meB4NLrH0

マーシレス「俺たちの」
ヴェンデッタ「出番のようだな」



33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/05/17(木) 21:46:19.15 ID:17p/pqLXo

座ってろ



34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/05/17(木) 23:40:34.15 ID:v8MG44uQ0

プログラムミス共はお帰りください



35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/18(金) 21:25:59.33 ID:dBRqjLRV0

HD版のなら大丈夫さ。



次→ダンテ「学園都市か」【MISSION 42】

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