クリス「私とまゆりのどっちかが死ぬはずだった?」 岡部「そうだ」

2012-08-03 (金) 19:17  シュタインズゲートSS   0コメント  
1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:31:26.57 ID:cnWC87SD0

岡部「そうして俺は、最終的に自分自身を騙してお前を助けた」

クリス「信じられない……」

岡部「無理もない…………だが事実だ……」

クリス「……ちょ、ちょっと待って……整理させて……」

岡部「あぁ」

クリス「……つまり、岡部は過去にタイムリープマシンを完成させて、まゆりと私を助けたって……そういうこと?」

岡部「限りなく簡潔に言えばそういうことになる。」

クリス「うん…………。……で、そのアトラクターフィールド……?」

岡部「あぁ、世界線収束範囲だ。……その世界線で起きる事柄は、大小の差はあるが確実に起こる。」

クリス「……で、その世界線で起きる事は、未来から観測された事柄……」



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2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:32:05.81 ID:SiwvGK/N0

脳内再生余裕



4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:32:28.54 ID:cnWC87SD0

岡部「……そうだ。未来から観測された事柄は、たとえタイムトラベルを利用したとしても必ず起こる。」

クリス「……確定された私たちの死を、回避するための世界線がこの、シュタインズゲート……ってわけなの……?」

岡部「そうだ。このシュタインズゲートだけが、少なくとも2025年までは、完全に何が起こるか決まっていない世界なのだ。」

クリス「……待って、そこのところがよくわからない。もっと詳しく教えて。そもそもどうして私の死は観測されているのに、回避できたの?」

岡部「………少し長い話になるんだが……まず7月に俺が中鉢博士の会見に……」


そうして俺は、全てをクリスに打ち明けた。
クリスはやはり理解度がずば抜けていて、俺ですらあいまいにしか理解していないことを
きちんと言語化し概念付けた。


さて、そろそろ説明しておかないといけないだろう。
何故俺が、いきなりクリスに過去の事を打ち明けたのか。
それには深刻な原因があった。


まゆりが死んだのだ。



5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:35:24.78 ID:cnWC87SD0

数日前のことだ。
いつものように、ラボに集まってダラダラ過ごし、解散する。
夜遅かったこともあり、まゆりを家まで送る事にした俺は、まゆりと一緒にまゆり家を目指した。


まゆりの家の前まで送り届け、家に帰ろうとする俺をまゆりが引き止める。


まゆり「オカリンオカリン。中であったかい物でも飲んでいかない?」

岡部「うーん、こんな時間にお邪魔しても悪いだろ。俺は帰るよ」

まゆり「えー、誰もオカリンを邪魔なんて思わないのです……」

岡部「また明日。じゃあな。まゆり」

まゆりに手を振りつつ、踵を返し、駅に向かう。

まゆり「うん。またね!オカリ……」

数歩進んだところで、後ろを振り返ると、まゆりが倒れていた。



6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:39:05.10 ID:cnWC87SD0

転んだのか?
と、思ったが身動ぎ一つしないのを見て、俺はすぐに駆け寄った。

岡部「ま、まゆり!まゆり!どうした!?」

まゆりの肩と腰に手を当て、呼びかけてみるが、全く反応しない。

それどころか、呼吸する様子さえ感じられない。

これはまずい。

そう察知した俺は、即座にまゆり家のインターフォンを押し、救急車を呼んでもらった。

まゆりの両親もあわてて表に出てき、俺は急いで事情を説明した。

そうして、ご両親と共に救急車を待つ事5分弱。

ようやく、サイレンと共に救急車が到着した。

中から、救急救命士と思われる作業着を着た2人が出てき、まゆりの横にかけつける。

俺は後ろからまゆりの容態を説明すると、二人はまゆりをタンカに乗せ、救急車へと運んだ。

付き添いにまゆりのお父さんが乗り、俺とお母さんはまゆり家に待機した。



7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:40:01.82 ID:cnWC87SD0

そうして連絡を待つ事30分。

ようやく受け入れ先の病院住所を聞く事ができ、俺たちはタクシーで直ぐに病院に向かった。


待っていたのは絶望だった。

病室のベッド上に横たわるまゆり。

その横で涙を浮かべるお父さん。

そして隣で佇む医者。

俺は即座に理解した。

あぁ、まゆりが死んだ。と



呆然と突っ立ったままの俺に、医者が声をかけてきた。

曰く、死因は不明。

曰く、手の施しようがなかった。

曰く、曰く、曰く。


俺の頭には、何一つとして入ってこなかった。



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:41:22.18 ID:cnWC87SD0

あらゆる疑問でパンク状態の
支離滅裂、混沌の極みの俺の頭の中に
あるひとつの思考が浮かぶ。

【俺は、この死に方を知っている】



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:43:34.94 ID:cnWC87SD0

あの死に方は間違いなく、アトラクターフィールドの収束によるものだった。
前触れもなく、原因不明の死など、それ以外にありえない。


だが、今居るこの世界線【シュタインズゲート】では、
SERNも居なければ、世界大戦も起こらない。
もっと言ってしまえば、タイムマシンが【絶対に】開発されない世界なのだ。

だから未来を観測する者は存在しないし、
故に、アトラクターフィールドの収束は起こりえない。
なのにまゆりは死んだ。
これは一体どういうことなんだ。


もしかしたら、何かの弾みでタイムマシンが開発され、
何かの弾みで未来が観測され、その結果、まゆりの死が確定されたのかもしれない。
そう考えたが、ありえないという結論に達した。



10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:45:04.59 ID:cnWC87SD0

まず、この世界線上の未来において、少なくとも、2025年までにタイムマシンが開発されていないのは明白だ。
なぜなら鈴羽がこの時代にタイムトラベルしてこなかったからだ。


鈴羽の存在は一種の指標と言っていい。
SERNが統治する世界にしろ、第三次世界大戦が起こる世界にしろ、
どっちみちタイムマシンは必ず開発され
鈴羽が必ずそれに乗って、未来から分岐線である2010年にやってくる。
これは決まっている流れであって、故にその鈴羽が来ないと言う事は
未来において、少なくともタイムマシン絡みの大災害は起こらないと言う事だ。

タイムマシンが開発されていないということは、未来を観測する者はおらず、その結果アトラクターフィールドの収束は起こり得ない。


なのにまゆりは死んだ。
アトラクターフィールドの収束によって。
誰もまゆりの死なんて観測していないのに。
未来など決まっていないのに。



11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:46:31.58 ID:cnWC87SD0

考えても考えてもわからなかった。
それでも考え続けて、やがて日が落ちた頃。
俺は、決心した。

まゆりを救うために、もう一度。タイムマシンを作ってみよう。


あれほど二度とは、つくらないと誓ったのに、わずか数ヶ月で反故にするなんて
運命のいたずらとしか思えない。

(いや、運命なんて言葉はシュタインズゲートでは存在しないのだったな。)

そう苦笑した瞬間にあるひとつの考えが浮かんだ。
水泡のように突然浮かんだそれを必死で否定しようとした。

だが否定しようとすればするほど、その仮説はピタリと疑問に嵌まり
これ以上ないくらいの解に思えた。

【ここはシュタインズゲートではない?】



12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:47:54.65 ID:cnWC87SD0

一人で考えるのは非効率的だ。
俺がようやくそう考えたのは、まゆりの死を知らせてからすっかり消沈してしまったクリスを見てからだ。

一人で考えるより、クリスに相談して二人で考えたほうが遥かに良い。
なぜなら、今ソファで顔を埋めているそこの助手は
過去未来において、タイムトラベルの権威だからだ。

自分一人で考えるよりも、クリスにすべてをうち明かした方がずっと効率的である。
過去の経験からそれがわかっている俺は、クリスにすべてを話した。



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:49:26.33 ID:cnWC87SD0

事情を説明しはじめて、既に5時間は経過していた。


やがて時刻は深夜に差し迫ったあたりで、
ようやく俺とクリスは対等の位置で議論できるようになった。



クリス「……考えてもさっぱりわからないわ……」

岡部「全く同感だ……」

クリス「岡部……まゆりの死は、本当にアトラクターフィールドによる収束の死だったの?」

岡部「……それは……間違いない……何度も何度も見てきたんだ。あの死に方を……」

クリス「…………ごめん……」



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:50:52.47 ID:cnWC87SD0

そうして、しばらく無言で考えていたクリスが口を開いた。

クリス「……考えられる仮説としては、この世界線の未来でタイムマシンが開発されるってことよ」

岡部「それは俺も考えてた。……だが、タイムマシンが開発される世界の時はかならず鈴羽がこないといけないんだ」

クリス「そこからおかしいのよ」

岡部「……え?」

クリス「別にタイムマシンが開発されたら、鈴羽さんが来ることは確定じゃない」

岡部「……だ、だが今までの世界線では、全て鈴羽が来て居たんだぞ!」

クリス「統計論は、その状況が違えば全く意味を成さないわ。……それに鈴羽さんが、今から1年後に来る可能性も否定はできない」



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:52:54.86 ID:cnWC87SD0

岡部「……い、いや!1年後だと駄目なのだ!…………鈴羽は、2000年と2010年がアトラクターフィールドの分岐点だと言っていた。」

クリス「分岐点……?」

岡部「そうだ。Dメールを作ったこの年が未来の、SERNが支配する世界や、第三次世界大戦が起きる世界への分岐点となっているのだ」

クリス「……………………」

岡部「だから、タイムマシンが開発されていたのならば、鈴羽が今ここに、世界線を変える為に存在してないと駄目なのだ」

クリス「…………いや、ちょっとまって……」

岡部「どうした?」

クリス「岡部っ!さっきのもう一回言って!」

岡部「…………?……だからタイムマシンが開発されたのならば……」

クリス「違う!その前!」



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:55:29.81 ID:cnWC87SD0

岡部「その前……?…………2000年と2010年の分岐点か?」

クリス「それ!……そこがわからないわ」

岡部「……だから2010年にはDメールを開発してしまい……

クリス「2010年はわかるの……DメールをSERNが見つけたり、父が私の論文を使ってロシアに亡命したり、あらゆる世界線への分岐点になってるのは理解できるわ……」

岡部「なら何を……?」

クリス「でもね、2000年が引っかかるの。……人類の未来がかかってるこの2010年と等しい分岐点って……いったい何があった?」

岡部「それは…………鈴羽が言っていたが、2000年問題がどうのこうのって……」

クリス「確かに……2000年にはミレニアムバグがあったわ……」

岡部「それゆえの分岐点だろう……?」

クリス「…………ていうか、そもそも2000年問題って何か知ってる?」

岡部「パソコンのプログラム上の問題だろう……?2000年が1900年に誤認識してしまう……」

クリス「そう。それがミレニアムバグ。……………確かに、発電機関や交通機関なんかは多少影響視されるかもしれない……」



20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 19:58:35.85 ID:cnWC87SD0

岡部「…………」

クリス「……もしかしたら、ミサイルなんかも誤作動で発射されちゃうかもしれない……」

岡部「…………」

クリス「でも、岡部が知ってるとおり、2000年は何も起こらなかったわ。」

岡部「それはこの世界での話だろう?別の世界では起きたかもしれない」

クリス「仮に起きていたとしても、それが人類の存続に関わる何かに影響するほどの物なの?」

岡部「ありえることだろう……?……仮にミサイルが他国に向かって誤射されていたらこれは重大な分岐になるはずだ」

クリス「……限りなく低い確率の元で、他国に向かってミサイルが発射されたとしても、当時の技術ならなんなく撃墜できたはずよ。」

岡部「ミサイルが落ちるかどうかが問題じゃなくて、発射された事自体が問題なんだろう……?……それが引き金で第三次世界大戦も否定できないだろうし……」

クリス「……確かに、その考えから言ったら、2000年が重大な分岐点となっているのは理解できるわ」

岡部「なら何がひっかかるんだ……?」

クリス「別に2000年じゃなくても関係ないって事よ。」



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:00:04.80 ID:cnWC87SD0

岡部「…………?」

クリス「別に、戦争なんて起こそうと思えば簡単に起きるわ。……誰かが核のボタンを押せばいいだけだもの」

岡部「それは……そうだが……」

クリス「わたしは、……アトラクターフィールドの分岐点の重要性は……そういうものじゃないと思ってる……」

岡部「…………どういう意味だ……?」

クリス「何かひとつをした時、そのひとつが次のひとつに繋がって、最終的にあることに繋がる……」

岡部「……………バタフライエフェクト……」

クリス「そう。さっき岡部が言った話。……メタルうーぱを岡部が引き当てて、それをわたしが拾って、お父さんがそれを持ってロシアに飛ぶ」

岡部「その結果、各国のタイムトラベル開発戦が起こり、世界大戦まで起こった……」

クリス「……たった一つで57億人を殺す惨事にまで発展したわ。…………アトラクターフィールドの分岐点の重要性は、これだと思う」

岡部「つまり、連鎖性……ということか……?」



23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:01:40.59 ID:cnWC87SD0

クリス「そう。連鎖が起これば起こるほど、その分岐の数も増えて等比数列的に世界は分岐するわ。だから2010年はとても重要な年なわけ」

岡部「……なら2000年は……?」

クリス「2000年問題も重要なファクターになってるのは疑えないけど、それだけだとどうしても納得がいかない……」

岡部「……何が納得いかないと言うのだ……」

クリス「さっきも言ったでしょう!……1991年の湾岸戦争や、2010年のタイムマシン関連なら納得できる!その影響力が!」

岡部「…………」

クリス「でもミレニアムバグは違う!不確定すぎるのよ!……さっきも言ったように戦争なんてどの世界線でも起き得る事だし、特別2000年だからって何かあるわけじゃない」

岡部「……結局、お前の結論はなんなのだ……?」

クリス「……わたしの結論はこうよ。」



【2000年にはミレニアムバグに隠れたバタフライエフェクトが存在する】



25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:04:44.00 ID:cnWC87SD0

岡部「隠れた……分岐……?」

クリス「そう。……気づかないような、些細な事で……それで居て、人類の存続が関わっているような、何か重要な出来事があったはずなの……」

岡部「それは一体……なんだと言うのだ……?」

クリス「…………わからない…………2000年に何が起きたか覚えてる……?」

岡部「2000年……2000年…………悪いが思い出せない……」

クリス「そうよね……今から10年も昔だもの…………」

岡部「………………」

クリス「……でも、必ず何かがあるはずよ。それこそ世界の分岐点たる何かが……」

岡部「………………」

クリス「……?……何か思い出した……?」

岡部「…………いや、……なんでもないな……」

クリス「岡部。」

岡部「……どうした?」



26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:06:47.90 ID:cnWC87SD0

クリス「例えどんな事であろうと、思い浮かぶことがあったら教えて。……それがバタフライエフェクトになってるかもしれない……」

岡部「……あぁ、わかった。……これからは全てを話す……」

クリス「……うん。…………で、さっきはどうしたの?」



岡部「いや、……2000年というか、ほとんど1999年の話なんだが……」

クリス「うん」

岡部「風邪を引いて、高熱に苦しんでいたんだ。一ヶ月ほど」

クリス「………………」

岡部「……で、2000年になった時に、峠というか……死にそうな感じがしたんだ。……世界がグルグル回るような感じがして」

クリス「………………」

岡部「……その感覚がしばらく続いた後、ふと世界の回転が収まったんだ。……で、気づいたら熱もすっかり退いてた」

クリス「………………」



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:10:04.58 ID:cnWC87SD0

岡部「……それだけなのだが……クリス……?」

クリス「…………ぇっ!?……」

岡部「どうした?何か思案してるようだが……」

クリス「………………」

岡部「………クリス……?」

クリス「…………あ、あのね……」

岡部「ん?」

クリス「これは、…………あくまでも仮説なんだけど……」

岡部「…………もしかして……何かに気づいたのか……?」

クリス「か、仮説よ!仮説!…………仮説なんだけど…………」

岡部「……あ、あぁ……」

クリス「…………岡部さ…………」

岡部「…………?」

クリス「……その時に、死んでない?」



28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:13:33.55 ID:93g74aPQO

なん…だと?



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:20:19.51 ID:cnWC87SD0

岡部「…………順序だてて、説明してもらおうか……?」

クリス「あ、うん……えっと……その………………あぁごめん!頭が追いつかない!」

岡部「クリス……落ち着いてくれ……俺にはお前だけが頼りなのだ……」

クリス「……ま、待って…………今論理立ててるから…………」

岡部「………………」

クリス「………………」


そうして数分が過ぎた。
そこら辺の番組真っ青の引きを残して、このお預けは中々に堪えるものがある。
俺は一刻も早く、さきほどの発言に対する考えを聞かせてほしいのだが。
そうして身悶えていると、ようやく思案が終わったクリスが顔を上げて話始めた。



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:25:54.35 ID:cnWC87SD0

クリス「これはあくまでも仮説の話よ。……前もって言っておくけど。……過信は禁物」

岡部「…………あぁ、わかっている」

クリス「2000年の、当時は10歳?の岡部は風邪を引いた」

岡部「あぁ。」

クリス「その風邪は1ヶ月近くも長引いて、最後の方には死にそうだった」

岡部「…………あぁ」

クリス「で、何故か世界が回るような感覚がして、その少し後に、何故か体調が全快していた」

岡部「……その通りだ」

クリス「この世界がグルグル回るって表現、さっき思ったんだけど、……岡部が話してくれた……リーディング……?」

岡部「リーディングシュタイナーだ」

クリス「そう。………その力が発動した時と似てない……?」



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:29:09.90 ID:cnWC87SD0

岡部「……い、今考えると確かに……似ていなくも………ないな………」

クリス「で、そっから考えたんだけど………………繰り返し言うけど、仮説よ……?」

岡部「……わかっている」

クリス「もしかして、岡部は本来そこで死ぬ予定だったんじゃないのかしら……」

岡部「…………なんだと……?」

クリス「岡部が本来、そこで死ぬ予定だったとすると、全てが合わさるの。」



クリス「何で2000年が、2010年と等しいほど重要な年なのか……それを考えると一つの結論に至ったわ」

岡部「…………なんだ?」

クリス「2010年の【タイムトラベル関連】の分岐点に匹敵するには、2000年の分岐点も【タイムトラベル関連】でないとおかしいって事」



34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:30:58.09 ID:cnWC87SD0

岡部「…………」

クリス「もし岡部が2000年に死んでいたとするとどうなるか考えてみたの」

岡部「……あまり物騒な話ではないな……」

クリス「………仮説よ」



クリス「お父さんが秋葉原で会見をするって事は何も変わらないはず。」

岡部「あぁ、その時点では俺は何も関わっていないからな……」

クリス「問題はその後、岡部の話によると、私がパパにタイムトラベルの論文を見せて、それをパパが盗用しようとして、咎めたわたしが殺された……のよね?」

岡部「…………殺したのは俺だったがな……」

クリス「誰が殺したかは問題じゃないわ……要は、パパがタイムトラベルの論文を持ったままロシアに亡命して、わたしの理論を誰にも邪魔されずにパパの理論として発表するって事が重要なの」

岡部「その通りだ。…………その結果、タイムトラベル開発合戦が起こり、第三次世界大戦が起きる……」



35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:33:26.01 ID:cnWC87SD0

クリス「これが岡部が死んでいた場合の世界よ。……岡部が死んで、私も死んで、第三次世界大戦も起きる…………仮説だけどね」

岡部「…………最悪な世界だな……」

クリス「本当にね。…………でもこの仮説なら、2000年の岡部の死が、2010年の分岐点と同じぐらいの重要性が持つって所は満たすと思う」

岡部「…………確かに。…………実際その後、俺がタイムマシンを開発して、世界大戦が起こらないシュタインズゲートに移行させたからな……」

クリス「でも、岡部は生きている」

岡部「…………あぁ」

クリス「だから私はこう考える。………2000年で岡部が死んでいる世界線……これを仮にA世界と言うわ」

岡部「…………」

クリス「このA世界では、タイムマシン開発合戦が行われ、その結果世界大戦が起きる。…………ここまではほとんど確定……」

岡部「……だろうな……」

クリス「問題はこの後。…………私は、【このA世界でタイムマシンが開発された後、2000年の岡部を助けに行った人物が存在する】…………と考えた」



36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:36:00.88 ID:cnWC87SD0

岡部「………………」

クリス「その結果。…………その謎の人物が岡部を助けた瞬間に世界線は移動して、岡部はその時のリーディングシュタイナーの力を風邪の影響と勘違いしたのよ。」

岡部「……じゃあ勝手に熱が引いたのではなく……」

クリス「詳しくはわからないけど、おそらく…………そんな病気にかかってない世界線に移動したのか、それともその謎の人物が薬やらを処方したのか……いずれにせよ、その時に世界線は入れ替わったのよ」


岡部「…………ま、まてまて!」

クリス「……なに?」

岡部「……お前の仮説はわかった……確かにその理論で言うと2000年の分岐点はミレニアムバグの影響ではないということも理解できる」

クリス「…………」

岡部「しかし、それとまゆりが死ぬことは何も関連がないぞ?」



37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:41:03.98 ID:cnWC87SD0

クリス「…………」

岡部「だから、この話とまゆりの死については何も関連性はない。…………違うか?」

クリス「………………あるのよ」

岡部「………え?……」

クリス「だから言ったでしょ…………ある仮説を元にすると、全ての謎がピタリと嵌まるの……」

岡部「…………ど、どういうことだ……?」

クリス「だからね、……さっきから言っている、その謎の人物が……」

岡部「………………」

クリス「…………まゆりなのよ」



【蜃気楼上のシュタインズゲート】  12章 完



38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:42:55.75 ID:UGEFYEyV0

本格的だな



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:45:16.78 ID:cnWC87SD0

岡部「悪いが、俺の頭では理解できない……」

クリス「……考えてみて、このシュタインズゲートでは、タイムマシンは、少なくとも2025年まで絶対に開発されないわ」

岡部「…………あぁ」

クリス「なのにアトラクターフィールドの収束が起きた。……これが何を意味するか……」

岡部「………………」

クリス「つまり、まだ矛盾が生じているのよ」

岡部「……だ、だが未来は観測できないはず……」

クリス「…………その未来が観測できない世界。シュタインズゲートに到達できたのは誰のおかげ……?」

岡部「そ、それは、この俺だが……」

クリス「そう。岡部のおかげよ。…………ならその岡部は本来2000年には死んでるはずなのに、どうして2010年まで生きてて、世界をシュタインズゲートに移行できたの?」

岡部「…………お前の仮説によるならば…………まゆりが2000年の俺を助けたから…………ということになる」

クリス「そのまゆりは、どうやってタイムトラベルできたの……?」

岡部「………………あ、」



41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:48:42.83 ID:cnWC87SD0

クリス「気づいた?……矛盾が起きるのよ。……岡部を助ける事と、まゆりがタイムトラベルすることは本来並行してはいけないことなの」

岡部「…………もし、俺が死んでいたのなら……」

クリス「……2010年にシュタインズゲートに移行することなく、そのままA世界に到達するわ。……その後まゆりは開発されたタイムマシーンで2000年の岡部を救いに行く」

岡部「…………2000年の俺を助けたら……」

クリス「……岡部は2010年まで生きて、その後シュタインズゲートの扉を開けて、タイムマシンを作らない世界にするわ……」

岡部「…………つまり、……俺を助けたら、……まゆりが俺を助けにこれなくなる……」

クリス「矛盾するって言った意味がわかった……?これは親殺しのパラドックスに酷似してるわ……」



42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:53:03.32 ID:cnWC87SD0

岡部「だ、だが、この通り俺は生きてて、世界をシュタインズゲートに移行させることもできた!……これはすなわち、お前の理論は間違っているということにならないか!?」

クリス「確かに、岡部が本来死んでいた……なんて私の憶測に過ぎないわ………でも、まゆりがアトラクターフィールドの収束によって死んでる以上、何かしらの矛盾の代償を取らされたと考えるしかない」

岡部「そ、それに!この世界線上で、未来永劫タイムマシンが開発されないなんて保証は……どこにも……」

クリス「……さっきと言ってる事が違うけど…………それでも駄目よ。」

岡部「……何故だ!?」

クリス「……この世界線上で、仮にタイムマシンが作られたとしても、まゆりがそれを使って、2000年の岡部を助ける意味がない」

岡部「……ど、どういう意味だ……」

クリス「……この世界線上のまゆりにとって、岡部は2000年に死ぬ存在じゃない。だから助けに行く理由が存在しない」

岡部「………………」



43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:55:29.62 ID:cnWC87SD0

岡部「………………」

クリス「そして、そう考えた結果……まゆりが死んだ理由を説明できるようになる」

岡部「…………な、なんなんだ……」

クリス「岡部が本来2000年に死んでいる」

クリス「そして、まゆりがなんらかの方法を使って、矛盾を生じさせないで岡部を助ける」

クリス「その代償として新たに生じた矛盾によって殺された……そう考えられるの」

岡部「……あ、新たな矛盾……?」

クリス「……えぇ。……一番初めの矛盾。これをクリアしないと岡部は助けられない。……ここまではいいわね?」

岡部「……あぁ……」



44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 20:58:16.87 ID:cnWC87SD0

クリス「現実に岡部は2010年まで生きていて、シュタインズゲートに世界を移行させた。……という事は初めの矛盾はクリアできてるのよ。信じられないけど」

   「問題はその後」

岡部「……後……?」

クリス「……まゆりは何かしらのタイムトラベルトリックを使った……。おそらく……岡部が15年費やした執念の策に匹敵する何かを考えて……」

岡部「……ま、まゆり……」

クリス「どれくらい悩んだのかは知らないけど……、おそらく血のにじむ思いで考え出したのよ……」

岡部「………………」



46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:04:46.09 ID:cnWC87SD0

クリス「でも待っていたのは新たな矛盾だった……」

岡部「……………その結果が……まゆりの突然死……と、そういいたいのか……?」

クリス「そうとしか考えられないわ」





俺とクリスは気づけば一晩議論しあっていた。
そうして、得た結論は

『まゆりは何かしらのトリックを使い、親殺しのパラドックスを回避したが、新たに生じた矛盾によって収束された』
という物だった。

結局、仮説は仮説の域を出ず、
当然のように解決策は生まれなかった。



47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:08:30.67 ID:cnWC87SD0

そうして一週間が過ぎた。

まゆりの葬儀やらなにやらで慌しい一週間で、
だが、それ以上にややこしかったのが、クリスとの議論だった。
タイムマシンをもう一度開発するか、しないか。
ひたすらそのことだけを一週間話し合った。


クリス「……だから!タイムマシンを作るのは時期尚早だって言ってる!」

岡部「ならいつまで待つと言うのだ!明日か!来週か!来月か!2025年まで待機しろとでも言うのか!」

クリス「極端にとるな!今はまだ思考の段階で、無考の行為は身を滅ぼすことになる!」

岡部「現にまゆりが死んでいるんだぞ!」

クリス「だからこそ、慎重にならないといけないでしょ!」

この繰り返しだった。



48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:11:25.24 ID:cnWC87SD0

そもそも、
タイムマシンを開発してから原因を究明しようとする俺に対して、
原因を究明してからタイムマシンを作ろうと言う助手との議論に、妥協点などあるわけもなく。
0か1か。きわめて単純な結果しか存在しなかった。
どちらが諦めるか。ということである。

これに関しては、かなり俺に分が悪かった。



50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:14:26.62 ID:cnWC87SD0

クリス「大体、岡部がタイムマシンを作ってしまったら!せっかくシュタインズゲートに到着したのが無意味になっちゃうのよ!?」

岡部「そもそも、まゆりが死んでる時点でまだ運命の輪の中だ!」

クリス「だからそれは!別の世界の収束によってで、この世界はそれ以外は完全に未知なのよ!?」

岡部「別の世界の収束が起きてる時点で、ここはシュタインズゲートなどではない!!」

クリス「違うわ!まゆりは特例中の特例なのよ!ここは確かにシュタインズゲートよ!」

岡部「誰がそれを保障した!?俺か!?お前か!?神か!?……あぁいいさ神は俺だ!保障してやるよ!この世界に絶対なんて無い!ここはシュタインズゲートではない!」

クリス「なら、タイムマシンを適当に作って!まゆりを助けて!その後は第三次世界大戦でも起こす!?どうなの!?神様!」



51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:20:35.44 ID:cnWC87SD0

そうしてさらに一週間が経った。
俺とクリスはもはや議論もせず、ただただまゆりの死の原因について考えていた。
飯もろくに食べず、風呂にも入らない。
睡眠すら満足に取れていなかった。
俺はそんな助手を見ながら、
俺とスタンスこそ違えど、必死にまゆりを助けようとしているのだと、ようやく気づいた。



そうして十分すぎるほど思考した結果、俺とクリスが行き着く先は、
同じだった。



岡部「クリス……」

クリス「なによ……」

岡部「タイムマシン…………作らないか……?」



53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:27:48.65 ID:cnWC87SD0

クリス「……………………」

岡部「もう…………駄目なんだ…………」

クリス「……………………」

岡部「考えても考えても、わからないんだ……何故まゆりが死ぬのか…………」

クリス「……………………」

岡部「だから、タイムマシンを作って……まゆりを助けに行かないか……?」

クリス「私も……それしかないと……思っていた……」



55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:32:57.79 ID:cnWC87SD0

岡部「……く、クリス……」

クリス「勘違いしないで。……私はこの世界がシュタインズゲートだと信じてる。だから、まゆりを助けた後直ぐにタイムマシンは破壊するわ」

岡部「あぁ、……その点については俺も同感だ…………あんなもの、あるべきじゃない」

クリス「ふふ……」

岡部「…………どうした?」

クリス「そんなものを作ろうとしてるくせに、どの口が……って話よ」

岡部「……そ、それは!まゆりを救うために仕方なくでだな!」

クリス「わかってるわよ。」

岡部「……クリス……」



57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:34:18.24 ID:cnWC87SD0

クリス「岡部、それじゃ始めるわよ……。準備はいい?」

岡部「もちろんだ……」

クリス「もしかしたら……、岡部が回避してくれた戦争をまた引き起こすかもしれない……」

岡部「……あぁ」

クリス「あるいは、SERNにタイムマシンがバレて、二人とも捕らえられるかもしれない……」

岡部「…………」

クリス「タイムマシーンを即破棄したからと言って、タイムマシーンが完成した事実に変わりはない。……危険度は一気に跳ね上がる」

岡部「…………」

クリス「それでも、……まゆりを助けるのね……?」

岡部「……当然だ」

クリス「………………わかった」

クリスはそう言いながら、手を俺の方に出してきた。



58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:37:21.00 ID:cnWC87SD0

どうやら握手のつもりらしい。

二度とクリスと共にタイムトラベル研究はしないだろうなと、考えていた俺だが、
手を握り合った瞬間、不覚にも

『あぁ、やはり俺とお前はこういう運命にあるのだな。』

そう、強く感じた。



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:42:10.17 ID:cnWC87SD0

クリス「……で、どうするの?」

岡部「あぁ、タイムマシンを開発する、と言ったものも……実際のところ、俺が作った事があるのはタイムリープマシーンだけだ」

クリス「まぁそれも私が作ったんですけど……」

岡部「こ、細かいことはどうでもいいのだ」

クリス「じゃあとりあえず、岡部の言うβ世界線で、私たちが作ったタイムリープマシンの概要と、経過をできるだけ詳しく教えて」

岡部「…………あぁわかった。少し長くなるぞ」

クリス「……もう時間の長さなんて忘れたわ。アインシュタインの言ったことが今なら理解できそうよ」

まさか、こんなところで
そのセリフをまた聞けると思っていなかった俺は、
またもや、運命とやらを信じそうになる。



60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:45:25.81 ID:cnWC87SD0

β世界線の説明は、時間がかかった。
クリスは事あるごとに詳しく突っ込んでくるので、話が全く進まず、
質問をしてきては「だからレポートを取れって言っとろーが」
と捨てゼリフをはいていく。

今のお前はそのセリフを言ってないはずだろうが。

そう心の中で何度も反論した。



61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:48:00.71 ID:cnWC87SD0

そうして3時間ほど経った所で、ようやく今後のめどがついた。

【ひとまずタイムリープマシーンを作ろう】


だが、要点をまとめて見ると、ひとまず……などという言葉では括れないほどめんどくさい事がわかった。


①、電話レンジを放電現象が起きるように改造すること(メールは送ってはいけない)。
②、SERNにハッキングを仕掛けること。
③、IBN5100を手に入れること。
④、Dメールを送ってみること。
⑤、エシュロンに捕らえられたDメールを削除すること。
⑥、クリスが脳の記憶をデータ化することに成功すること。
⑦、SERNのLHCにアクセスしてデータを圧縮させること。
⑧、タイムリープすること。



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:51:16.91 ID:cnWC87SD0

クリスが言うには、まず初めに今までの軌跡をたどらないといけないらしく、
限りなく、正確にたどっていけば行くほど、俺が観測した未来に結果は収束していくと言う物だった。

つまり、シュタインズゲートに行き着く際に、鈴羽が2010年にやってきた世界。
俺が観測し得る限り、もっとも高性能だったあのタイムマシンが開発される未来。
その未来をできるだけ再現しなければいけなかった。

だが、ここで新たな問題点が浮上してくる。
あの世界線上の未来では、確かに俺とダルはタイムマシンを作ったらしいが、それは各国が開発合戦を繰り広げた恩恵による所が大きかった。
各国が独自に理論を構築していき、俺とダルがハッキングでその技術を盗用していく。
その結果生まれたのが、あのタイムマシンなのだ。

だが、そのためには中鉢博士がクリスの論文を携えて、ロシアに亡命しなければならない。
そのためには、過去にタイムリープしてメタルうーぱを……と、
結局今までのイタチごっこになってしまうのだった。



64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:53:21.41 ID:cnWC87SD0

これに対するクリスの答えは明瞭としたもので、
「とりあえずタイムリープマシンを作ること。そうすることで、また何か見えてくるはず」
という、要は『そん時はそん時』という精神で、
先ほどまで、無考がどうのこうの言っていたお前はどこに言ったのだと、小一時間たずねたくなった。




こうして、先は見えないながらも、
着実に。そして確かに、
まゆり救出作戦は、開始された。



【不可避のエピローグ】 13章  完



65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:54:28.44 ID:cnWC87SD0

あぁケツが痛いでおじゃる。

書くの疲れたから休憩する。

落ちたらごめんね。



67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 21:59:35.22 ID:pUJOKoH50

お前を見ているぞ



72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:14:10.94 ID:OxiIZ12x0

紅莉栖って書いてくれよ



74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:23:23.40 ID:cnWC87SD0

ぼちぼち書いていきま。

クリスを紅莉栖にしたほうがいい?



75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:24:43.15 ID:si6B/ZHB0

出来るだけ直したほうがいい気がする



76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:28:26.17 ID:cnWC87SD0

二週間が経過して、
俺たちは早速、積んでいた。


電話レンジを改造すること。
ハッキングを仕掛けること。
その二つは、比較的容易だった。
事情を聞いたダルが快く協力してくれたからである。

任せろ!と、
ダルが言った瞬間。
正直、少しほっとした。

ダルという人間を考えた時、協力してくれるだろうとは思ってはいた。
だが、万が一拒まれていたら、その時点で俺と紅莉栖は【積み】なのだ。
バレないでSERNにハッキングする、なんて人間はダル以外にしらない。
そう考えると、ダルという人間は、これ以上無いくらいにキーパーソンなのである



77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:31:44.16 ID:cnWC87SD0

『順調にこなしていけそうだ』
ハッキングまでを完了した俺の、安い算段は
『辛酸を嘗めさせられた』という言葉ではとうてい収まり切らない機械、
IBN5100によってまたもぶち壊された。


まったく、見つからないのだ。




柳林神社を探しても見つからない。
フェイリスの家に聞きに言っても、
コインロッカー、FBもといミスターブラウンの家、
どこを探しても全く、皆目姿が見えないのだ。


だが、こればかりは当たり前のことなのだ。



78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:34:59.47 ID:cnWC87SD0

岡部「一体どこにあると言うのだ……」

紅莉栖「こっちが聞きたいわよ……」

岡部「確かに、前の世界線では、柳林神社に奉納されていたのだ……」

紅莉栖「それって、あれでしょ?鈴羽さんが未来から過去にタイムトラベルして、IBN5100を奉納しておいたんでしょ?」

岡部「あぁ、鈴羽が1975年にタイムトラベルして手に入れててくれたんだ」

紅莉栖「でも、シュタインズゲートの未来じゃ……」

岡部「………………」



79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:39:15.65 ID:cnWC87SD0

そうなのだ。
このシュタインズゲート(仮)は、2025年まで、少なくとも俺たち以外がタイムマシンを作ることは無い世界なのだ。
当然、世界大戦勃発やディストピアが形成される事もなく、
鈴羽が災害回避のために、1975年へIBN5100を求めてタイムトラベルする理由もなければ、手段もない。

結論として、この世界でIBN5100が見つからないのは『当然』なんだ。



ならば、どうすればいい?
IBN5100をあきらめるか。

そもそもIBN5100は、実質的にタイムトラベルにはなんら関係はない。
無くても、マシンそのものは完成する。



80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:43:51.03 ID:cnWC87SD0

だが、そうして作ったリープマシーンは必ずSERNに察知されてしまう。
何故なら、Dメール送った瞬間、SERNのエシュロンによって絶対に傍受されてしまうからだ。
その結果、俺と紅莉栖とダルは間違いなく、SERNに拉致監禁され、ディストピアが形成されてしまうだろう。
そうならないため、エシュロンにハッキングするためのIBN5100が絶対に必要なのだ。


なら
Dメールを送らなければ良いのではないか?
リープマシンを完成させないで、タイムマシンを作ればよいのではないか?

これもNOだ。
仮に、リープマシーンを一回も使わずに、奇跡と言ってもいい確率でタイムマシンを作れたとする。
問題は、そのマシンの完成度だ。



81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:46:41.52 ID:cnWC87SD0

鈴羽によると、あのタイムマシンの大半の技術は、リープマシーンの援用で出来ていると言う。
リープマシンを作った際でも、何百回とDメール実験を繰り返し、その度に改良を重ねてきたのだ。
そのリープマシーンによる実験が一度も行わないまま、作ったタイムマシンが正しく作動するのはどんな天文学的確率になるのだろうか。

それにそもそもの問題として、タイムマシン開発そのものがSERNに暴かれる心配もある。
メールだけでなく電波関連全般を傍受できるSERNだ。可能性は決して低いものではないはずである。
常にその動向を監視してないと駄目なのだ。
過去の俺はそれを怠って、アトラクターフィールドの収束という、手痛い【制約】を受けた。


つまり、結論として、
タイムマシンを作るためには、やはりIBN5100は必須ということだ。



82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:47:51.69 ID:cnWC87SD0

だが、見つからない。
いくら歩き回っても見つからない。
思いつく場所は、全て行って見た。
どう考えてもあるわけがない場所にも行った。
探した。探した。探し回った。
でも、見つからない。
……見つからない。

…………見つからないんだ。



84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:51:37.05 ID:cnWC87SD0

さらに2週間が経った。

依然として見つからない。

紅莉栖とダルは、ネットを駆使して情報を収集していた。
俺は、自らの脚で、少しでも怪しそうな場所を探した。
と言っても、怪しそうな場所なんてもはや存在しないのだが。

もしかしたら、誰か持っていて売ってくれるんじゃないか?
そんな淡い希望もあったが、その程度で見つかるのならとっくにラウンダーによって回収されているはずだし、
事実そうだった。
ネットには噂程度のものしかなく、やっと見つけた有益そうな情報も、IBN5100の隠された機能、などという的外れな物だった。


心が折れそうだった。



85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 22:55:55.50 ID:cnWC87SD0

それからさらに数週間。
もはや秋葉原には探す場所がないと思った俺は、捜索範囲を伸ばしていた。
過去の経験から言って、あるとしたら必ず秋葉原に存在するはず。
と、決めてかかっていたが、もしかしたら別の地域にあるのかもしれない。


だとしたらどこにある?
千代田区にないのなら、中央区だろうか
あるいは新宿区。怪しいところを言えば港区か?
いや、そもそも東京、むしろ日本にあるのだろうか。

秋葉原だけでも、探しきれる範囲でないのに。

考えれば考えるほど絶望感に浸れる。



88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 23:02:15.66 ID:cnWC87SD0

こうなったら最後の手段として、フランスのSERN本拠地まで取りにいってやろうか。

……それも良いかもしれない。
マッドサイエンティストにふさわしいし、なによりこんな無為な時間を過ごさなくてよくなる。
ダルにハッキングを任せて、IBN5100を保管してるところを調べてもらい、後はこっそり進入すればいい。
それで全てがうまくいく。

いや、それよりもSERNの工作員を脅した方が早いんじゃないか?
ミスターブラウンなら、今まで機関が回収したIBN5100のありかを知ってるかもしれないし、
もちろんプロが口を割るわけないが、脅せばなんとかなるかもしれない。



そういえば、奴の娘が居たな
あの娘を人質にIBN5100を要求して、


紅莉栖「岡部!」


岡部「…………あぁ、紅莉栖か……どうした……?情報はあったか?」



89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 23:08:10.09 ID:cnWC87SD0

岡部「…………あぁ、紅莉栖か……どうした……?情報はあったか?」

紅莉栖「どうしたも何もないわよ……、岡部……根詰めすぎじゃない……?」

岡部「何を言ってるんだ……、今せっかくいいアイディアが浮かんだと言うのに」

紅莉栖「ねぇ、少し休んだ方がいいんじゃない……?……今の岡部の顔……ひどい表情よ、」

岡部「………………」

紅莉栖「私、その岡部の顔……見たことある気がするの……」

岡部「…………」

紅莉栖「夢みたいに曖昧なんだけど、岡部が今みたいにすごい思いつめてる光景を見たことがある……」


(……これはおそらく、リーディングシュタイナーが発動しているせいだ。)



90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 23:09:15.21 ID:cnWC87SD0

紅莉栖「まゆりのために、すごく頑張ってて……、でも岡部も倒れそうで……」


(……そういえば、ルカ子、フェイリス、まゆりもリーディングシュタイナーを発動していたな
発動のタイミングは、皆バラバラだったが、何か規則でもあるのだろうか……)





紅莉栖「もう私、岡部のそんな姿見たくない……、お願い。少しでいいから休んで……」


(……フェイリスは確か倉庫の中だったな。追い詰められてる時に発動したんだ……)



紅莉栖「もし、岡部まで倒れたりしたら……わたし……」


(……まゆりが発動したのはいつだったか。………………確か、あれは墓地の前で)



一瞬の閃光のような。
水面に落ちた小石の、波のような。
形容しがたい何かが頭の中を駆け巡った。



92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 23:13:08.52 ID:cnWC87SD0

その一瞬の思波は
木々の揺らめきのように、そよ風のように
頭の奥底から、吹いてきて
ふと、考えるのを止めてしまうような。そんな余韻を残して消えていく。

そして、違和感は
一瞬の静寂を置いて、
暴風のような、激しい何かになって押し寄せた。



岡部「……っ……あっ……!」

まるで警鐘のように、頭の中で声が響く。
頭を抑えて蹲ってしまいそうな痛みも同時に起こる。



93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 23:16:24.52 ID:cnWC87SD0

自分の身に何が起こっているのかさっぱりわからない。
考えることもできない。
ただただ、頭の中で何かが響いている。


『……いだせ。』



94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 23:17:21.19 ID:cnWC87SD0

遠くで誰かの声がする。
だが、それよりも遥かに大きな声でかき消されて全く聞こえない。
頭の中にスピーカーを入れた様に、内側から聞こえるその声は、
初めは小さかったのに、次第に大きく、強くなっていった。

そして、ついにその声は知覚できるほどになった。


『思い出せ。』



97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 23:19:36.75 ID:cnWC87SD0

そして同時に、紅莉栖の声も聞こえた。
「まゆりが……」

その単語を聴いた瞬間、頭の中の声はいっそう激しくなった。
直後、自分が何か忘れていることに
そして思い出さなければいけない、何かがある事に気づいた。

そう知覚した瞬間。

今までの記憶がフラッシュバックしてきた。



98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 23:22:33.58 ID:cnWC87SD0

まゆりに関する全てが駆け巡る。
そのほとんどがあの三週間の出来事だった。
まゆりの死。それが形を変えていろいろよみがえる。


何十、何百とあるそのシーンを全て片隅においやり、奥底に埋もれたその記憶を探ろうとする。
奥へ、一歩奥へ、そして行き止まりに近いような場所に、

ひとつ『異質』なそれがあった。



100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 23:26:38.00 ID:cnWC87SD0

俺はそれに手を伸ばす。
あと少しで、届きそうな位置にある。
それに手を伸ばす。
何か、忘れてはいけないことを。忘れてしまった俺が、思い出すために。
手を伸ばす。その周りとは明らかに異質なそれを掴むため。
めいいっぱい伸ばす。



101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/30(月) 23:27:49.13 ID:cnWC87SD0

ここで、思い出さなかったら、たぶん二度と思い出す事はできない。
それは絶対に嫌だ。

俺はもう後悔なんてしたくないんだ。

今!この時!この瞬間!全てをかけてでも思い出してやる!



107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:00:39.53 ID:xHTQYg3o0

あと数センチ。
渾身の力を振り絞って、手を伸ばす。

もう少し。

もう少しで手が届く。

踏ん張れ。全力でそれを掴め。

まゆりのため、そして、今働いてるラボメンたちのために。

思い出すんだ。



109:猿食らっちゃったでおじゃるよ。ID:QqaffL1eOありがと:2012/07/31(火) 00:01:42.57 ID:+Rao7WEM0

そして、指がそれに触れた瞬間。

風が

駆け抜けた。






力強い旋風のような。だけど荒々しさは全くない。

一瞬のうちに夜の嵐から、春の高原に移ったみたいに。

頭の中の景色が、色を変えた。






記憶はよみがえった。



112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:06:56.25 ID:+Rao7WEM0

岡部「…………………………」

紅莉栖「ちょ、ちょっと……、岡部、大丈夫……?」

岡部「………………」

紅莉栖「岡部ったら!」

岡部「…………見つけた……」

紅莉栖「…………え?」

岡部「……ダル、紅莉栖……出かけるぞ」

ダル「ほぇ?」

紅莉栖「……どういうこと?」

岡部「IBN5100を見つけた」



113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:09:03.39 ID:+Rao7WEM0

紅莉栖「……っ!?」

ダル「まじで!?」

岡部「紅莉栖は人数分の手袋、ダルはスコップとシャベルを用意してくれ」

ダル「オーキドーキ!さすがオカリン!」

紅莉栖「ちょ、ちょっと岡部!事情を説明してよ!」

岡部「事情を説明するよりも、現場に来てもらったほうが早い」

紅莉栖「現場?、現場って……?」

岡部「…………墓地だ」





【土蝉のメッセージコード】 13章 前半 完



117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:15:16.86 ID:+Rao7WEM0

椎名まゆりの祖母 墓地


紅莉栖「……さて、いい加減説明してもらうわよ」

ダル「オカリン、墓地にシャベルなんてもってきて何をする気?墓荒らしはマジで勘弁なのだぜ……」

岡部「…………6年前に、まゆりの祖母が亡くなって、まゆりがしばらく失声症の様な状態になっていた事は話したな……」

紅莉栖「え、えぇ……でもそれが?」

岡部「まゆりは祖母が亡くなってから、毎日、本当に毎日ここに来てたんだ」

ダル「…………」

岡部「俺も毎日まゆりを見てた。ちょうどこの立ち位置、視線は少し違うが」

紅莉栖「…………」

岡部「俺があの頃を思い出すと、浮かんでくる光景はいつもこれだ。この立ち位置から、この視点からの光景だ」

紅莉栖「……それで?」



119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:23:39.28 ID:+Rao7WEM0

岡部「そして、それは数ヶ月前の記憶でも同じだ」

紅莉栖「数ヶ月前?、それって世界改変の前の話?」

岡部「あぁ、俺がシュタインズゲートに到達しようと四苦八苦してる時のことだ。その時も、まゆりはここに来ていた」

  「そして、俺はその様子をまたここから見ていた。」

  「いつもと変わらない光景だった。6年前から見続けてきた光景だ。」

  「俺はさっき、その懐かしい光景をひたすら思い浮かべていたんだ」

  「すると一つおかしな記憶があった」

  「現在の年と同じ背格好のまゆりが、墓場に居る光景だ」

紅莉栖「……?それの何がおかしいの?」

岡部「最初は俺も気づかなかった。違和感も何も感じなかった。ただまゆりが墓場に居る光景だからな」

ダル「…………?」

岡部「だが、おかしいんだ。その記憶は。」

紅莉栖「……どういうこと?」



120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:26:22.91 ID:+Rao7WEM0

岡部は、コメカミに手を当てつつ、先ほどまで立っていた墓場側面から移動する。反対側へ。

岡部「その記憶では、まゆりはこちら側から写っていた。ちょうど先ほどの立ち位置から真逆のこちら側だ」

紅莉栖「…………」

岡部「おかしいんだ。そんな事絶対にありえない」

紅莉栖「……ど、どうして?」

岡部「入り口から墓をまたぐ位置にある、こちらから『俺がまゆりを眺める』事はありえない」

紅莉栖「………意味がわからない」

岡部「要するにだ。俺はこちらからまゆりを眺めた事は一度も無い。ただの一度もだ。」

ダル「で、でも、一回ぐらいは有ったんじゃない?オカリンの記憶違いでさ」

岡部「いや、絶対にありえない。」



122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:34:01.09 ID:+Rao7WEM0

紅莉栖「どうしてなの?」

岡部「俺がまゆりより先にこの墓地に来た事がないからだ。俺は必ずまゆりよりも遅れてここに来る。当然だ。まゆりを探しにここに来ているのだから」

紅莉栖「……なるほどね。……要するにまゆりが居る光景って事は、まゆりを探しに来た記憶ってことで」

岡部「そうだ。……探しているなら、そしてまゆりが祈っている光景が見えるという事は、まゆりの後ろを通って、まゆりに気づかれる事なく、こちら側から眺めているはずが無いのだ」

紅莉栖「……、確かにその光景がおかしい事は理解できたわ。…………でもそれが?」

岡部「さっき、この光景の違和感差に気づいた時、ふと疑問が思い浮かんだんだ。」

ダル「…………」

岡部「この光景は俺の記録には無い。だが俺の記憶にはある。それは一体何故だ」

紅莉栖「夢でも見ていたとか……?」

岡部「あそこまで鮮明な記憶は夢ではないと断言できる。」

紅莉栖「……ならいったい」

岡部「結論は一つだ。あれは俺の記憶じゃない」



125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:40:32.74 ID:+Rao7WEM0

紅莉栖「……は?………ならなんだって言う………………、………………リーディングシュタイナー?」

岡部「……あぁ、間違いない。この記憶はリーディングシュタイナーによって得た物だ。」

紅莉栖「ちょ、ちょっと待ってよ。それはいくらなんでも結論が早急すぎじゃない?」

岡部「確かに無茶苦茶に聞こえるかもしれん。……だが、なんと言えばいいのか……。一度そうだと思ったら、認識できてしまったのだ」

紅莉栖「……?、リーディングシュタイナーの力を……ってこと?」

岡部「あぁ、今なら断言できる。……この光景はリーディングシュタイナーによって得た記憶だ」

ダル「それよりさ、オカリン。このシャベルとかは何のためにもってきたん?」

岡部「……この記憶は、俺に『思い出せ』と言って来た」

ダル「……ほぇ?」



127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:45:19.39 ID:+Rao7WEM0

ダル「……ほぇ?」

岡部「希望にただ縋っただけのように見えるが、俺には、この記憶こそが、この現状を打破する鍵になると確信している」

紅莉栖「……現状……?…………IBN5100のこと?」

岡部「……あぁそうだ」

紅莉栖「……って事はまさか……」

岡部「あぁ。今から墓の周辺を掘り返す」

ダル「ちょちょちょ!待った待った!オカリン!それって犯罪じゃね!?」

岡部「犯罪だろうが、なんだろうが、もう俺にはこの第六感を信じる以外無い」

ダル「ていうか!記憶がおかしいからって墓地を掘り返す事に何もつながらない件について!」

岡部「……俺は確信してる」

ダル「なにが?」

岡部「俺の中にある、なんというか、本能みたいな物が、ここを探れと言ってるんだ……」

ダル「……これで、本当にIBN5100が埋まってたらご都合主義すぎるだろ……jk」

岡部「……今は、そのご都合主義こそ、望んでやまない物だがな……」



131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:52:02.72 ID:+Rao7WEM0

紅莉栖「……岡部……。本当に自信があるのね?」

岡部「……この予想が外れてたら……、俺にはもう手がない」

紅莉栖「……本当に……、その記憶は岡部のものじゃないのね……?」

岡部「その答えは、…………ここにある」

紅莉栖「…………わかったわ。掘りましょ」

ダル「……オカリン……夜うなされたら添い寝を希望するのだぜ……」

岡部「……余計うなされるだろ……」





そうして墓を掘り返す事にした岡部一行。

「どこから掘り返すか?」という題に、全員一致でまず墓裏から、となった。



132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:56:54.47 ID:CzmNXuJn0

前もこのスレ建ててなかった?



134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 00:57:44.65 ID:ZLsF57M70

>>132
おまえタイムリープしてきたのか?



135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:01:12.69 ID:CzmNXuJn0

どうやら俺のリーディングシュタイナーが発動してしまったらしいな・・・



133:>>132 覚えてる人が居たとは……:2012/07/31(火) 00:57:35.40 ID:+Rao7WEM0

ダル「それじゃ、いくぜよ……」

岡部「……うむ……」

ザクザク、と小気味良い音を立てて、シャベルが土をすくって行く。
橋田が豪快に土を掘り、横で岡部がスコップで細部を調べる。
そうして作業していく事3分。


ある程度、穴も深くなったところでダルが言った。


ダル「……あれ?シャベルの先に何か当たったかも」

岡部「っ!?本当か!?ダル!」

ダル「う、うん!もうちょい掘り返してみるお!」


慎重に作業すること2分。

ついに地面深くから、箱のような物の上部が見えた。


ご都合主義万歳だ。

俺は、心の中でそう思った。



136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:04:40.44 ID:+Rao7WEM0

紅莉栖「……信じがたいけど……、本当に出てきたわね……」

岡部「あぁ……、だが……この大きさは……」



見えてきた箱上部の大きさは、大体A4タイプの紙よりちょっとだけ大きい物だった。




岡部「……そんな……、まさか……」

大体箱中部まで見えてきたところで、岡部はたまらずスコップ片手に手で掘り返そうと躍起になった。

そうして出した箱は、腐敗しにくそうな銀色のものだった。

だが、その大きさは到底IBN5100が入るようなものではなく、

またその重さも、IBN5100のそれとは決定的に違っていた。

墓の前に箱を置き、一同はそれを呆然と見下ろす。



137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:09:54.08 ID:+Rao7WEM0

ダル「……オカリン、開くよ」

岡部「……あぁ」

ガコッという重苦しい音と共に蓋が外された。

そして、中にあったのは、

果たして白い紙だった。

一枚ではない。その量はゆうに100枚はあるようだった。


岡部「…………これは……?」

岡部はそれらの半分を手にとって眺めてみる。

限りなく茶色に近いそれらの紙は、歴史を感じさせる。



138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:12:06.64 ID:+Rao7WEM0

そして、そこに記されていたのは、数字と、アルファベット、そして記号だ。

英語の様な、しかしちゃんとした文章ではない。

なんだこれは。

岡部はそれらを眺めて、思案に耽る。

「……ん?これってプログラミング言語じゃない?」

ダルの声が聞こえた。



139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:13:06.51 ID:+Rao7WEM0

紅莉栖「プログラミング言語?」

ダルは、残された半分の紙のうち数枚を手に取り言う。

ダル「うん。これってプログラム言語の構文規則と意味規則について書いた紙じゃね?」

どの言語かはさっぱりだけどさ。


そう言い閉めるダルの言葉は、岡部の耳に届かない。

紅莉栖の言葉も全く聞こえない。

いや、誰の、どんな言葉も今の岡部には届かない。




岡部「………………」

紅莉栖「……?岡部?」

岡部「………ついに見つけた」



143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:18:50.60 ID:+Rao7WEM0

紅莉栖「……え?」

ダル「……ん?」

岡部「……IBN5100だ…………」


紅莉栖「ちょ、ちょっと……岡部?」

ダル「き、気持ちはわかるけどさ……、IBN5100は無かったっしょ……」

岡部「違う!今、たった今見つけたのだ!お前が見つけたのだ!」

ダル「……オカリン……」

岡部「そんな目で俺を見るな!これだ!これがIBN5100だと言ってるんだ!」

左手に持った紙束を右手でパンパンと叩いて見せる。

その顔は笑みを隠し切れず、また興奮も滲み出ていた。



145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:22:03.73 ID:+Rao7WEM0

紅莉栖「……どういう事?」

岡部「こ、これは!このファイルは!IBN5100の機能の規則書だ!」

紅莉栖「IBN5100の機能って……、あの独自のプログラムを解析するって言う?」

岡部「そうだ!そのユニ-クな言語は、IBN5100でしか解析できないが、これがあれば違う!」

ダル「……って事は、これってIBN5100で使われてる言語について書かれてるってこと?」

岡部「あぁ!それしか考えられん!」

紅莉栖「……橋田。本当にその紙で、IBN5100の言語がわかるの?」

ダル「……た、確かに、ちゃんとした規則について書かれた物があれば、それを使ってデコードソフトを作れるけど……」

紅莉栖「……本当にIBN5100なの……?」

岡部「絶対だ!ここに来てIBN5100以外なぞ有り得ん!」

紅莉栖「信じられない…………」

岡部「だが事実だ!やはり俺の力は正しかった!」



147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:26:25.02 ID:+Rao7WEM0

紅莉栖「……じゃあついに見つけたのね……」

岡部「あぁ、ついに、俺たちの計画の一歩目が始まった!ようやくスタートできるんだ!」

手を空に伸ばし、高らかに宣言する岡部の右ポケットが揺れる。

携帯の着信バイヴだった。

開くと、一通のメールが着信していた。



148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:27:22.05 ID:+Rao7WEM0

差出人:sg-epk@jtk93.x29.jp

件名:なし

本文:ラジ館屋上



149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:28:47.48 ID:+Rao7WEM0

岡部は確信した。

これは、この書類は、間違いなくIBN5100の物だ、と。


この場面。このタイミングで、このメールが送られてくる事の意味。

おそらくは、俺の望む人物が、俺の望む物を持って、そこに居る。

岡部はそう胸に秘め、足を進めた。






【土蝉のメッセージコード】 13章 後半 完



150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:29:37.30 ID:0+Ga9n8y0

期待してる



153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:36:46.69 ID:+Rao7WEM0

疲れたわ。

ちょい休憩する。


てか伸びねぇなw



154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:37:27.08 ID:ZP7RbRGD0

>>153
みてます



179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 02:27:00.44 ID:CF07Y5Gi0

>>153
見てるお
邪魔するのが怖かっただけだお



155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:38:37.54 ID:PNreq9oOO

面白い



156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:39:25.42 ID:beXJma+v0

雑談勿体ない



158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:42:38.50 ID:+Rao7WEM0

>>156
どうせ1000まではいかんと思うし、スレが落ちる心配するより保守がてらにダベっててくれよw

たぶんこの勢いなら300までには終わると思う



320:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 06:28:30.07 ID:qxk1jPWoO

>>158
そうして何百のSSスレが潰されてきたのだろう



157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:42:13.50 ID:13StOAyp0

見入る
雑談で無駄にレス消費するのが勿体無い



162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:57:25.84 ID:Ou9/Jdix0

これは練りこんでるな
期待



164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 01:59:40.65 ID:TS3u6qcU0

読むのに集中してた!
がんばってくれ



165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/31(火) 02:00:43.24 ID:lcXTjoCpO

追いついたぜ 続きが気になるぜ



次→クリス「私とまゆりのどっちかが死ぬはずだった?」 岡部「そうだ」【後編】

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