垣根「まずはそのふざけた常識をぶち殺す」

2011-06-26 (日) 23:51  禁書目録SS   0コメント  
前作→上条「その幻想に」垣根「常識は通用しねえ」

3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 18:33:38.46 ID:47eK3JOX0
「はぁっ、はぁっ」

 とある路地裏。その男は必死に走っていた。
 額には大粒の汗。その顔に余裕は無い。

「はぁっ、はぁっ………ふう」

 路地裏から抜け、その顔に安堵の表情が表われる。

大丈夫だ。目標はもうすぐそこだ――――――

 そう思って走るスピードを緩める。

「よし、ここまでくれば……」


垣根「何を安心してやがる?」



5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 18:37:22.71 ID:47eK3JOX0
「な」

 垣根帝督の姿を目の当たりにし、その顔が驚愕に染まる。

 だがそれも一瞬、すぐさま全速力で走りだす。

ここまで来たのだ。ここで追い付かれる訳には――――


 だがその男の願いもむなしく。

 垣根は男の頭上を飛翔し、目の前に降り立った。


垣根「悪いな」


垣根「俺の勝ちだ」



6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 18:42:34.31 ID:47eK3JOX0
「………ちゅーことで、」


土御門「ゴチになるぜよ、カミやん!」
青ピ/垣根「「いえぇぇぇーーーーーーい!!」」

上条「はぁ………不幸だ」

 上条当麻と垣根帝督は、とあるファミリ―レストランにいた。
 そこには土御門元春と青髪ピアスの姿もある。

 実はこの四人で『一番最後に着いたものが全員分奢る』(垣根はハンデ付き)
という賭けをしていた訳だが、結果は見ての通りである。

青ピ「しっかし、途中で二度もコケるなんて、ホンマにカミやんは運があらへんなぁ」

上条「どうしてあんなところにボールが落っこちているんでせうかね……トホホ」



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 18:50:08.03 ID:47eK3JOX0
垣根「いやーワリィな上条。まあハンデもやったんだ、怨むなよ」

 垣根は慰めるように完全に意気消沈している上条の肩を叩いた。
 しかしそれでも上条はうなだれきって暗い表情のままである。

上条「………負けた俺が悪いけどさ」

上条「何も垣根は俺みたいな貧乏人から搾取しなくてもいいんでないでせうか……?」

垣根「まあ確かに金はあるわな」

垣根「だけどよ」


垣根「この前、あのシスターがレストランで食いまくった分支払ってやったのは誰だっけな」

上条「う」

垣根「この間もケーキの詰め合わせを差し入れてやった気もするんだが」
垣根「たまには俺がおごられてもいいんじゃねえかと思うんだが?」

青ピ「まあ大人しゅう諦めや、カミやん」

 青ピの一言もあり、完全にノックアウトされた上条は、結局こう呟くしかなかったのだった。

上条「……不幸だ」



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 18:55:53.46 ID:47eK3JOX0
――数日前――

垣根「補修だ?」

上条「ああ、これがまた大変なんですよまったく」

 朝食を食べながら上条が愚痴をこぼす。
 
 ちなみにこの朝食は垣根が作ったものである。
 
 インデックスが垣根の部屋に遊びに来た時に、飯を作ってあげた結果、

インデックス『これから朝ごはん作ってくれたらうれしいんだよ!』
 
 と、半ば強制的にやらされるようになり、日課となっているのだ。

 いやいや言いながらも結局毎日やっている姿を見ると、さながら主夫のようだと思ってしまう上条であった。



10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 19:01:02.12 ID:47eK3JOX0
垣根「そりゃめんどくさいこったな」

インデックス「まったくとうまはだらしがないんだよ!いつもいつも――――」

上条「あーあーわかったわかったわかりましたから!」


 インデックスがご飯をかきこみながら説教を始めるが、上条はそれを意に介さず受け流す。
 
 インデックスはまだ何か言いたげであったが、ほおを膨らませるのみでそれ以上は追及しなかった。

垣根「補修、ねえ…………」

 そういうと垣根はすこし黙りこみ、なにやら考え始める。



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 19:07:42.43 ID:47eK3JOX0
 そして顔をあげ、

垣根「よし決めた、俺もつれてけ」

 と言うのだった。

上条「はぇ?」

 予想外の言葉に驚き垣根の方を向く。
だが垣根の顔を見た限り、冗談で言った訳ではなさそうだ。

垣根「学校が始まるのは九月からだがよ、先にどんなとこか見といたほうがいいだろ?」

 垣根が上条の学校に編入することは既に決まってはいたが、今は夏休み。
垣根は未だに学校すら見てはいなかった。
 
 今のうちにどんな様子か位は知っておきたいと思ったのだ。

垣根「それにお前がいた方がなにかと便利だしな」


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 19:11:38.11 ID:47eK3JOX0
上条「まあ一理あるな………」

インデックス「ちょちょちょっと!私はどうなるのかな?!」

 一人きりにされてはたまらないとインデックスが猛反発する。が、

垣根「まあ帰りにでもお土産買ってきてやっから大人しく待ってろ。ケーキとかいいだろ?」

インデックス「ほんとに?!流石ていとくはとうまとちがうんだよ!大人しく待ってるんだよ!」

上条「これが財力の差か………」

 すっかり餌付けされているインデックスなのだった。



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 19:16:30.21 ID:47eK3JOX0
垣根「………で」

小萌「紹介するのです。夏休み明けから編入する予定の垣根ちゃんなのです!」

垣根「(どうしてこうなった………)」

青ピ「なんやぁ、男かいな。まあよろしゅうたのむで」

土御門「………そうだにゃー。よろしく頼むぜい」

垣根「……ああ、よろしく頼む」

 学校に入り次第小萌先生に捕まった垣根は、折角だからということで一緒に補修を受ける事になったのだった。
 
 一度は断った垣根であるが、小萌先生の泣き落としにはかなわなかったのである。

垣根「(め、めんどくせぇ……)」



20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 19:21:02.36 ID:47eK3JOX0
小萌「ちなみに垣根ちゃんはなんと序列第二位!『未元物質』を操る能力者なのですよー!」

小萌「いろいろアドバイスをもらうといいかもしれないのですよ」

上条「へぇ………ぅえぇ!?!?第二位?!」

垣根「………知らなかったのかよオイ」

 いや、俺だって今知らされた訳だが。
 お前と俺はどういう仲だったのか本気で疑問だよ。

 と心の中で思いつつも、もちろん口にはださない垣根であった。

垣根「(そんでなんだよ『未元物質』って。誰か教えろ、今すぐにだ)」

 こっちの疑問は、すんでの所まで出かかっていたが。



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 19:27:43.42 ID:47eK3JOX0
青ピ「しかも中々なイケメンやん。カミやん一人でも持てあましとんのに……」

上条「俺は関係ないだろ」

土御門「はあ……これだから天然は……」

上条「土御門までっ?!」

小萌「はいはいそこまでにしやがれですよー。垣根ちゃんは上条ちゃんの知り合いだそうですから仲好くしてくださいねー」

小萌「じゃあ上条ちゃん、教科書見せてあげてくださいなのです」

上条「はい、わかりました……ほら垣根」

垣根「ああ………ったく」

 そう言って垣根が上条の横に座る。
 どうやら逃げられそうにないらしい。やれやれだ。
 
小萌「それじゃ補修をはじめるのですよー。
 垣根ちゃんの前で情けないとこ見せないようにするのですよ野郎どもー」



土御門「…………」



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 19:33:38.40 ID:47eK3JOX0
垣根「ふう………」

 補修が終わり今は昼休み。

 授業を受け気付いた事だが、どうやら『記憶』こそ無けれど『知識』は残っているらしい。

 能力の方も、これからの学校生活も問題なさそうだ、と少し安心する。

垣根「あとは設備とか見て回りゃいいか……」

 そう思い学校内を歩き回ろうとしたその時、
 
 一人の男が垣根に近づいてきた。

垣根「お前は確か………」

 いかついサングラスに、金髪に、アロハシャツ。

土御門「土御門、だぜい」

 先ほどまで一緒にいた少年、土御門元春。
 


24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 19:38:58.49 ID:47eK3JOX0
垣根「ああそうだったな。で、どうした?」

土御門「いやー。大したことじゃないんだがねい」

 土御門が思わせぶりな態度をとりながら、垣根の方を横目で見る。

土御門「垣根はどうしてここに編入しようとおもったんだにゃー?」

垣根「何故って言われてもな………」

 まさか魔術だのなんだの言った所で話にはなるまい。
 
 さて、どう話すべきか。考えてくるべきだったな。
 
 などと思うがもはやどうしようもない。

垣根「……実は、家庭の事情でな。仕方なかったんだよ」

 とりあえず話をぼかすことにした。
 
 おそらく、そんなに追求してくることもあるまい。



26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 19:44:49.80 ID:47eK3JOX0
 そう思った垣根だったが、その思惑は外れる事になる。

土御門「ふうん。家庭の事情、にゃー………」



土御門「………一体どんな事情なのか教えてもらいたいとこだな、『第二位』さんよ?」


 そう土御門が言った途端、雰囲気がガラリと変わった。

 サングラス越しの目線はとても鋭く、およそ友好的なものではない。

 まあ、なんとなく心当たりはあるのだが。

(冥土帰し「編入なら『以前の知り合い』に会って困ることもなさそうだし、ね」)

垣根「(………なるほど、そういうことかよ)」

 心の中で悪態をつく。どうやら『以前の俺』はなかなか問題のあるやつだったようだ。



28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 19:51:27.26 ID:47eK3JOX0
垣根「(こりゃあ少し探りをいれる必要があるみてぇだな……)」

垣根「さて、なんの話だ?」

土御門「とぼけるなよ。何の目的もなくここに編入した訳じゃないんだろう?」

垣根「例えそうだとして、お前に教える義理はねぇな」

土御門「ふうん、教えられないって訳か」

 互いの目線が交差し、無言の時間が続く。
 
 一触即発の空気が依然変わることなく流れてゆく。



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 19:56:42.70 ID:47eK3JOX0
土御門「お前は――――――― 上条「おーい土御門、垣根ーーーーーーー」

 土御門が話しかけるのとそれは同時だった。 

 上条が手を振り垣根達に近づいてくる。話を聞かれてはいないようである。

垣根「(まったく、タイミングが良いんだか悪いんだか)」

上条「何やってんだお前ら?」

垣根「……この学校についていろいろ聞いてたんだよ。わからないことばっかだからな」

土御門「そうなんだにゃー。俺ってば優しい奴なんだぜい?」

垣根「それより何の用だ?」

上条「ああそうそう、せっかくだから一緒に昼飯食おうぜ。
 垣根も、みんなで食った方が仲良くなれるだろうし」



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 20:02:46.05 ID:47eK3JOX0
垣根「ああそうだな。お言葉に甘えさせてもらうとするかね」

 ちらりと土御門の方を見る。

 だが流石というべきか、特に動じた様子は無い。

上条「じゃあ先に行ってるぞ。青ピもいるから」

 上条がそう言って去っていく。

 その姿が完全に見えなくなると同時に、土御門が口を開いた。

土御門「……まあいい。今のところはカミやんに免じてこれ以上は追及しない」

土御門「だがもしカミやんが目的だとしたら、ただでは済まさないぞ」


垣根「どーも、御忠告痛みいるぜ」



32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 20:08:20.92 ID:47eK3JOX0
土御門「………さて、」

 そういうと、先ほどまでの殺気が嘘のように無くなり、和やかな雰囲気になった。
 
土御門「カミやん達も待たせてる事だし早く行こうぜい、カッキ―☆」

垣根「オイマテ、誰がカッキ―だコラ」

 垣根が思わず突っ込みをいれるが、土御門は悪びれる様子もない。
 
 なんだこの身変わりの速さは。
 そうとう猫かぶってやがるなコイツは。

土御門「垣根だからカッキ―なんだぜい。ていとくんのほうがいいかにゃー?」

垣根「やめろ、今すぐだ」

土御門「あっはっはっは。じゃあ先に言ってるぜい、カッキ―☆」

垣根「キメタ、オマエ、ブチコロス」

土御門「にゃはははは~~~~~~~」



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 20:15:09.46 ID:47eK3JOX0
 時と場所は戻り。
 あれから数日経ったものの土御門が何らかのアクションを起こすことは無かった。
こちらから何かしない限りは何もしないという事だろうか。

 まあ深く考えたところであまり意味は無いのかもしれない。

 ゆえに、垣根からアプローチをかけるようなこともしなかった。

上条「ちょっとトイレ行ってくる」

垣根「ああ、わかった」

土御門「じゃあ俺もついてくかにゃー」

青ピ「じゃあ僕も行くわ。カッキ―留守番頼むで」タタッ

垣根「だ・か・ら誰がカッキ―だ。ったく」



34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 20:23:25.28 ID:47eK3JOX0
あの後、あの青ピアスにまでカッキ―呼ばわりされるとはな。

思わず悪態をつく。

どう考えてもそんなキャラじゃねえだろが。なに考えてんだあの野郎共は。

垣根「………やれやれだ」

そう考えながら一つ、大きく溜息を吐きだした。



「………ふふっ」



36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 20:33:48.05 ID:47eK3JOX0
垣根「あ?」

 後ろからの突然の笑い声に思わず振り向く。

「ああごめんなさい。とても仲がよさそうに見えたからつい」

 そこにいたのは一人の少女。
 
 年は中高生位だろうか、ドレスがとても特徴的である。

「楽しそうね?貴方達」

垣根「はあ?」

「あの三人とはお友達?」

垣根「まあ……そうだが」

「そう………よかった、ふふっ」



37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 20:38:15.78 ID:47eK3JOX0
 そう言って少女が微笑む。

 ただ、その笑顔は年相応のものでなく妖艶な雰囲気を醸し出していた。

 
 怪訝に思いながら少女の方を見つめる。

垣根「 (なんだこのガキは………)」

「変な顔しないでよ、別に変な考えがあって話しかけた訳じゃないのよ?」

垣根「あっそ。てっきりナンパかなんかかと思ったぜ」



38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 20:43:49.73 ID:47eK3JOX0
「あら、じゃあ私と少し付き合ってくれる?」

 そう言って少女がいたずらそうな笑みを浮かべる。

 だが垣根はそれを軽くあしらう。

垣根「悪いがガキには興味ねえよ。もっと女らしくなってから出直してこい」

「それは残念ね。少し自信あったのに」

垣根「だいたいなんだそのドレスはよ。もっと見た目と年にあった格好でもしたらどうだ?」

「………ふふっ」

垣根「……なんだ?ケンカ売ってんのか」

「ああごめんなさい。前にも他の人から同じことを言われた事があって、それで思い出し笑い」



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 20:48:35.25 ID:47eK3JOX0
「………やっぱり、忘れてしまったみたいね」ボソッ

 少女が何かを呟く。だが、垣根の耳には届かない。


 突然少女は席を立ち、垣根に背を向けて歩き出した。

「突然話しかけて悪かったわ。それじゃ失礼するわね」

垣根「数年後に出直してきな。少しくらい遊んでやるよ」

「そうさせてもらえるとうれしいわ」

 その少女が店を出たのと、三人が席に戻ってきたのはほぼ同じ位であった。



41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 20:55:48.36 ID:47eK3JOX0
―――――――――――

土御門「あー腹いっぱいだぜい」

青ピ「カミやんは太っ腹やなあ」

上条「ワタクシの財布はもうやせ細っているんですけどね………」

 思わぬ出費に、財布を見つめる上条の顔が暗くなる。
 
 こっそり中身をのぞいた垣根でさえ、あまりの哀れさに少々悲しくなってしまった程だ。
 
 …今度なんか奢ってやろう。そう思う垣根なのであった。

上条「これからどう生活すれば………」

 そういって上条が顔をあげる

 
 と、その表情が急変した。

上条「………ん?」

垣根「どうした?」



42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:00:26.91 ID:47eK3JOX0
 上条の視線をたどる。

 そこにいたのは一人の少女とガラの悪い男たち。

チンピラA「へっへっへ、姉ちゃんちょっと付き合ってくれよ」

チンピラB「よくみりゃ常盤台のお嬢様じゃねえか。こりゃ上玉だぜ」

チンピラC「カカカカキクキカコココココカケケケケケ!!!」

少女「……………」

 はっきり言えば、少女がチンピラに絡まれていたのだった。


青ピ「カミやん?もしかして………」

上条「ああ」



43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:01:52.40 ID:qsDHB0umO
一方さん何モブやってはるんですか



44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:06:41.43 ID:47eK3JOX0
 上条の引き締まった表情を眺め、垣根は内心溜息を吐く。
 
 
 上条と行動を共にしてわかった事。それは『不幸』であることと『お人よし』であることだ。
 
 トラブルに巻き込まれ、巻き込まれに行き、そして自分が被害を受ける。
 
 やめりゃいのに、と思ったことも何度もあった。

 実際本人に言ったこともあったが、

上条「上条さんの性分ですからね。こればっかしは」

 と笑顔すら見せていた事を思うと、もはや病気の類だろう。

 名づけるならそう、『ヒーロー病』とでも言おうか。



45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:12:23.77 ID:47eK3JOX0
垣根「(ま、それがこいつの良い所でもある、か)」

土御門「まあそれでこそカミやんなんだぜい。俺は手伝わないけどにゃー」

垣根「がんばれ上条。応援くらいはしてやる」

上条「お前らはそんなに薄情な奴だったんでせうか?!?!」

青ピ「だって怖いやん?」

 三人の返答に呆れるあまり、上条が一瞬間の抜けた顔になる。
 
 だがそれもすぐ、さっきまでのキリッとした顔に戻り、

上条「ああわかったよ!俺一人でなんとかしてやる!!」

 そう言って上条は少女の方に近づき、その手をとった。

上条「悪い、待たせたな。行こうぜ」

 そしてそのまま手をひっぱり、その場を抜け出そうと試みる。



47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:16:32.87 ID:47eK3JOX0
 だが、

チンピラA「ああん?なんだてめーは」

チンピラB「俺らはこれからお楽しみの時間なんだよ。すっこんでろ」

チンピラC「カカカカカケケコククキキキ!!」

 そんな簡単に諦めるチンピラ達ではなく、上条をにらみすえる。

 そして拳をならしながら、上条の目の前に立ちふさがった。

上条「あのー前をどいてもらえませんでしょうかね?」

チンピラA「や・だ」

 思わず溜息を吐いた。

 また不幸な事になりそうだ。



48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:21:53.70 ID:47eK3JOX0
垣根「頑張れー上条―」

土御門「ファイトだカミやんー」

上条「見てねえでテメエらも助けろ!」

青ピ「だって痛いのいややし?」

垣根「めんどくさいし?」

 三人の返答に上条ががっくりと肩を落とす。

 だめだコイツら。なんとかしないと。
 いや、この場をなんとかしないと。

チンピラA「わかってるねー君ら」

チンピラB「そーそー。そこのエセホスト君達みて―に大人しく――――――




垣根「――――――おい。テメェ今なんつったよ」



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:26:37.01 ID:47eK3JOX0
チンピラ達「どうもすびばぜんでしだーーーーーーーーーー!!!」

 チンピラ達が立ち去るのにそう時間はかからなかった。
 
 何が起こったか。

 それを描写こそしないが、一生のトラウマになったであろうことは確かである。

青ピ「いやー………カッキ―もなかなかエグイ事するわぁ……」

上条「見てるこっちがかわいそうになってきた位だからな……」

垣根「俺を怒らせた罰だ。まだ足りねえ位だっての」

 垣根はそういいながら少女の方を向いた。

 見たところ少女は特に怖がっている様子でもなく、むしろ冷静にこちらをじっと見ている。
あまり心配はなさそうだ。

垣根「で、大丈夫か?」

少女「………ええ、大丈夫です。とミサカは返事をします」



50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:30:28.29 ID:HJ/a/sU3O
やっと今回の相手が分かったわ、ヘタ錬と■■は本当報われないなww



52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:34:01.64 ID:47eK3JOX0
上条「ん?ミサカ?」

 上条が思わず少女の顔を見つめる。

 新ためてよく見ると、とある知り合いの少女に瓜二つだ。

 異なる点は、頭に謎のゴーグルをつけている点くらいか。

上条「………もしかして美琴の親戚か?」

ミサカ「美琴?……ああ、それが御坂美琴お姉様をさすならそういうことにもなります、とミサカは答えます」

垣根「なんだ?知り合いか?」

青ピ「なに、知り合いなん?ホンマカミやんはフラグたてすぎやーーーー!!」

上条「そんなんじゃねえっての!」

土御門「流石カミやんだぜい。死ねばいいのに」

上条「だーかーらー……て土御門さんそれは酷すぎません?!」


ミサカ「………もうよろしいでしょうか、とミサカは確認をとります」



53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:38:08.89 ID:47eK3JOX0
上条「へ?あ、ああ」

ミサカ「それではお世話になりました、とミサカはお礼をしつつ立ち去ります」

 そういうと少女は、頭を軽く下げ、
何事もなかったかのようにその場を立ち去っていった。

青ピ「なんかミステリアスな子やったなあ」

上条「そうだな………」

土御門「ま、とにかくそろそろ帰ろうぜい?結構遅くなっちまってるしにゃー」

上条「げ!インデックス忘れてた!じゃあまた!」

垣根「……やれやれ、俺も帰るとするか」

青ピ「そやね、それじゃまた今度やね」

土御門「お疲れ様だにゃー」



55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:43:06.86 ID:47eK3JOX0
~~~~~~~~~~~~~

インデックス「………で、私に何か言う事はないのかな?」

上条「えーっと、その………すまん」

インデックス「お腹が減って死にそうだったんだよ!?ほんとに死にそうだったんだよ?!」

上条「わかったわかった!今すぐ飯にするか……ら……」

 そういって炊飯器のふたをあけたが、中身はからのままだった。

 そして今頃、今朝スイッチを入れ忘れていたことに気が付いたのだった。

上条「………不幸だ」

 どうやら大殺界にでもはいったようだ。
 誰か助けてくれ。

 そう、上条は強く願うのであった。



56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:47:55.29 ID:47eK3JOX0
インデックス「ふんふんふふ~~~ん♪」

垣根「浮かれてるとこけるぞ?」

 あの後すぐにご飯の用意を始めたのだが、インデックスが
『もう我慢できないんだよ!』とあまりにうるさいので、
垣根がコンビニへ連れ出す事にしたのだった。

垣根「………これは貸し1だな」

 こればっかしは不幸というより自業自得だな、
などと思いながらコンビニへ歩いていく。

 インデックスは先ほどまでとはうってかわって上機嫌であり、スキップすら始めていた。

インデックス「なににしようかな~♪なにがいいかな~♪」

垣根「ったく、食いすぎると飯の方が食えなくなるぜ?」

インデックス「ふふん、私を舐めないでもらいたいんだよ!」

垣根「自慢するとこじゃねえだろ」



57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 21:53:25.83 ID:47eK3JOX0
インデックス「わぁ………」

 コンビニに入り、インデックスが喜びの声をあげる。
 
 周りをきょろきょろ見回し、そして満面の笑みで垣根の方に向きなおった。

インデックス「何を買っても大丈夫なんだね?!」

垣根「ああ構わねえよ、だから―――――――」

インデックス「あれもいいしこれもいいし………ああでもあっちも!」

垣根「前しっかり見ねえと―――――――」

ドンッ

インデックス「あうっ?!」

垣根「だから言ったろが」

インデックス「ううっ……」



「……なンなンですかァ?このガキは?」



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:01:30.32 ID:47eK3JOX0
 その男は中性的な顔立ちで、どちらかというと目つきは悪く、髪も肌も白かった。
 
 体つきはあまりいいほうではなく、むしろひょろひょろと言うべきか。

 その風貌のせいか、一種の独特な空気を持っているような感を受ける。

垣根「――――――――っ?」

 それとは別に、何か特別な雰囲気がしたような気がした。
 
 懐かしいような、なにか殺伐としたような。

垣根「(………気のせいか?)」

 男がけだるげそうにインデックスをにらむ。
 
 どちらかというと、ぶつかられたことよりも関わられたこと自体がめんどくさいようであった。

垣根「あー悪いな、年頃のガキなもんで。ほらテメェも謝れ」

インデックス「ご、ごめんなさいなんだよ………」

「ったく。次からは気をつけろよォ?」



60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:04:36.61 ID:La5bBt150
やさしいアクセラさん



61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:07:39.68 ID:47eK3JOX0
 そういってインデックスを通り過ぎてレジへと向かう。

 男が横切る際に、インデックスがふとその男のかごを覗き、思わず声をあげた。
 
インデックス「わあ………スゴイ量の缶コーヒーなんだよ」

「あァ?………好きなんだよ、ワリィか?」

 意外にも男が返答をした事に垣根が驚く。

 そして、

垣根「いや、全く悪くないな。むしろ良い」

垣根「俺も緑茶や紅茶なんかよりコーヒー派だ。ブラックなら尚よしだな」

 意外に趣味があう事にも驚いた。



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:11:29.75 ID:47eK3JOX0
「………ほォ」

 突如挟まれた垣根の一言に対し、男が先ほどと一変して興味を示す。
 

垣根「思うんだがな。飲み物にしろ食べ物にしろ素材の味ってのが大切なんだよな。
  周りのヤツラはそれがわかってねぇんだこれが」

 垣根が思わず熱弁をふるう。
 
 目の前の男はそれに対してなかなか共感しているようで、口調を強くし相槌を打つ。

「なかなか話の分かるやつじゃねェか、いいねいいねェ!」

垣根「お前もそう思うか?奇遇だな」

「ひっさしぶりに話のあうヤツとあったわ。オメェ、名前は――――――――」



64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:16:10.89 ID:47eK3JOX0
―――――――prrrrr!


男が何かを言いきる前に、男の携帯が鳴った。

携帯を取り出し、表示を見たところで――――――男の顔が歪む。

「……ったく、話してる時間もナシってかァ?」

垣根「なんだ?呼び出しか?」

「ンなとこだ。ロクでもねえ、な」

そういうと男はさっさと会計を済ませ、

「じゃあな。縁があったらまた会っかもなァ」

そう言い残してコンビニを出て行った。



66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:20:49.73 ID:47eK3JOX0
垣根「なかなか面白い奴だったな」

 そう言ってインデックスの方を見る。

 だが、

インデックス「…………」

垣根「……インデックス?」

 その表情は心なしか曇っている。

 一体どうしたのか。腹が減って元気でもなくなったのだろうか。

垣根「どうした?」

インデックス「へ?あ、いや、なんでもないだよ。なんでもないんだけど……」



67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:25:30.29 ID:47eK3JOX0
 すこし口ごもりして躊躇した後、インデックスがぽつぽつと話し始める。

インデックス「……さっきの男の人。ケータイを見たときに、昔のていとくみたいな表情してたんだよ」

垣根「昔の、俺?」

 垣根が思わず反応する。

 昔の俺?あれが?

インデックス「うん。その――――――自分を殺しているような、なんていうか」

垣根「………ふうん。昔の俺………か。あれがねぇ」

インデックス「まあ気のせいだったかもしれないんだけど」

垣根「……まあそんなに気にしてもしょうがねえだろ。忘れろ忘れろ」



68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:29:47.97 ID:47eK3JOX0
インデックス「だけど………」

垣根「ほら、もう飯の時間だ。帰るぞ?」

インデックス「うん………ってまだ何も買ってないんだよ!」

垣根「時間かけたお前が悪い。ほら帰るぞ」

 面倒な事になる前にインデックスを抱きかかえ、店から退出する。

 背中の方でなにやら五月蠅いような気がするが恐らく気のせいだろう。

 そう思いたい。

インデックス「ううーーーーー!!ていとくのばか!まぬけ!すかぽんたん!」

垣根「はいはい良い子は帰りましょうねっと」


インデックス「………ばかーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」



71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:36:35.88 ID:47eK3JOX0
―――――――――――

 その数分後。
 とある実験場にその男女はいた。

 女の方は無機質な表情をしているのに対し、男の方は愉快そうな表情を浮かべていた。

 無論、これが楽しいものであるはずがないのだが。

「………第10029次実験まであと1分です。とミサカは確認します」

「それにしてもオメェらもよく飽きねェよなァ?脳波リンクしてるってこたァ俺と同じで10028回実験やってンのと同じだろォ?」

「…………」

「どうせ毎回無残に殺されるだけだってのによォ!!カカッ!!無駄にもほどがあらァな!!」

「…………」



72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:39:19.71 ID:47eK3JOX0
 男の問いかけに対し女はこれといった反応を示さず、ただただ男の方を見つめている。
 
 だが男の方はそれでも女へと問い続ける。

 何か、返答を求めるように。

「そこンとこどう思う訳よ、オメェらは?なンか考えたりしねェの?なあ?」

「………あと30秒を切りました、とミサカは報告します」


「………やれやれ、ほンとに会話にならねェな、テメェらはよォ」

 そういうと男の方からいままでの表情が消える。
 
 そのただでさえ悪い目つきはさらに鋭くなり、女の方を見据える。
 
 それはまるで、兎狩りの猟師のように。


「いいぜ、何度でもあの世まで送り迎えしてやンよ」

「………時間になりました。それでは第10029次実験を開始します」



73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:42:16.68 ID:47eK3JOX0
 翌日、垣根は一人で街をぶらついていた。

 上条はまた補修で家にいないし、インデックスはインデックスでお友達
(名前は忘れたが、影の薄そうな奴)と遊んでいたため、暇だったのである。

垣根「さて、どうするかね………ん?」

 前を見ると道端にしゃがみこんでいる少女が一人。

垣根「あれは………このまえ上条が助けようとした……」

 なにかをしているようにも見えるが、ここからでは影となってはっきり見えない。

 一体何をしているのか。少しばかり興味がわいた。

垣根「よう。お前この前のやつだよな?」

 そう声をかけると少女は立ち上がり垣根の方に向き直る。

ミサカ「おや、あなたはこの間の、とミサカはちょっとした偶然に驚きます」



75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:45:32.60 ID:47eK3JOX0
ミサカ「この前は助けていただきありがとうございました、と続けてミサカはお礼を言います」

垣根「別に大したことじゃねーよ。礼を言うなら上条に………って何やってんだ?」

ミサカ「暇だったのでアリを数えていました、とミサカはありのままを伝えます。これでちょうど1000匹目ですね」

垣根「…………ああそう。楽しそうだな」

 なにやってんだこいつは、と垣根は顔を若干ひきつらせながら少女を見る
 
 だが、少女は特に気にしていないようである。

ミサカ「目標ノルマは10031匹です、とミサカは意気込みます」フフン

垣根「聞いてねぇ、ってなんでそんな中途半端な数なんだよ」

ミサカ「ミサカと関係のある数字ですので、とミサカは言います」

垣根「よく分からねえが………」

ミサカ「そう言うあなたは何を?とミサカは尋ねます」

垣根「こっちも暇なんだよ。偶然見かけたから話しかけただけだ」

ミサカ「………代わりますか?」垣根「誰がやるか」



77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:50:22.96 ID:47eK3JOX0
 垣根が頭をかく。

 どうも厄介なやつとからんでしまったような気がしないでもない。
 
 どうする?さっさと立ち去るか?


 まあもう関わってしまったのだ。
ここまでいったらやけくそだ。いけるとこまでいっちまえ。

垣根「暇ならちょっと付き合ってくれよ。お茶でもどうだ?」

ミサカ「………それは俗に言うナンパというものですか?とミサカは問いかけます」

垣根「ガキには興味ねえんだが……そう思ってもらっても構わねえよ、そんなことしてるよか有意義だろ?」

ミサカ「……しかし、ミサカには残り9031匹のノルマが……」
垣根「気にいってるのかよ?!てか俺の誘いよりアリ数える方が上かよ!」

ミサカ「まあそこまでおっしゃるなら、とミサカは誘いを受けます」

垣根「………なんか納得いかねえ」



78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:54:13.93 ID:47eK3JOX0
―――ファミレス―――

ミサカ「ほう………むう………」

 ファミレスに入りかれこれ30分が経とうとしているが、いまだ垣根達が頼んだものはドリンクバーのみであった。

 少女はメニューをずっと手から離さず、目を輝かせながら何度もページをめくり続ける。
 
 まるで珍しい物を眺めているかのようだ。

垣根「そんな悩むもんでもねえだろ」

ミサカ「いえ、ミサカがファミレスというものに入ったのはこれが初めてでして、とミサカは打ち明けます」

垣根「珍しいやつだな。家族で来たりとかはしねぇの?」

ミサカ「家族………ですか?とミサカは少し困惑気味に返します」

垣根「………なんか悪い事聞いたか?」

ミサカ「いえ、ミサカにはお姉さまがいるのですがあまり会わないもので、とミサカは正直に言います」

垣根「お姉さま、か。そういやこの前上条が言ってたな。確か御坂美琴、だっけか?」



81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 22:59:04.09 ID:47eK3JOX0
ミサカ「ええ、あの御坂美琴お姉さまです、とミサカは答えます」

垣根「あの、って……そいつはそんなに有名なやつなのか?」

 こういう時に記憶がないのは不便だな。
 そう思わざるを得ない。

ミサカ「学園都市第三位の『超電磁砲』。その名はお聞きした事があるのでは?とミサカは尋ねます」

垣根「第三位………ね」

 そう言えば俺は『第二位』だったらしいな。
と言う事は、以前の俺なら知っていたのかもしれない。
 
 そんなことを思いながらコップのジュースを飲み干す。

垣根「そろそろ注文するが決まったかよ」

ミサカ「そうですね、それではこのお子様ランチというものを一つで、とミサカは注文を言います」

垣根「ネタか?ネタでやってんのかテメエは?」

82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:02:10.12 ID:aQvxBVDx0
垣根「ネタじゃねぇおれのちんこは本気だ、おまえもしゃぶっててわかるだろう?」

上条「あぁ…」

レイフォン「うわっ!ありえね!」



84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:04:10.88 ID:47eK3JOX0
 食事も終わり、ファミレスから出て歩き出す。
 
 もちろん目的など無く、特にしたいことも無い。

垣根「これからどうする。どっか行きたいトコでもあるか?」

ミサカ「公園はどうですか?すこし休みたい気分ですので、とミサカは要望を述べます」

垣根「ああわかった」

 そう言って公園へと足を向けようとし―――――――――
 
 すぐそこに、見知った顔がいる事に気がついた。

垣根「…………上条?」

上条「…垣根?なんでここに――――――――」



85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:08:47.10 ID:47eK3JOX0
ミサカ「………お姉さま」

上条「へ!?………あ、あれ?この前の……?」

ミサカ「妹です、とミサカは間髪いれずに答えました」

 上条は何を驚いているんだ?と垣根がふと思い、

 上条の横に、自分の隣にいる少女とまったくそっくりな少女がいる事に気付いた。

 異なる点と言えば、自分の隣にいる少女が冷静というか感情の無いような顔をしているのに対し、
あっちの少女がまるで何かに怒っているかのような表情を浮かべている位だろうか。

垣根「………ああ。これが御坂美琴、か」

美琴「あんた!一体どうしてこんなところでぶらぶらしてるのよ!」

 少女が怒号に近い声をあげる。
 だが、隣の少女はそれにも表情を変えずに対応する。



87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:12:29.95 ID:47eK3JOX0
ミサカ「どうしてかと問われれば………」

ミサカ「こちらの方にナンパされましたもので、とミサカは正直に言います」

垣根「言い方に語弊があんだよ、間違っちゃいねえんだがよ」

 御坂美琴はおろか上条からも怪訝な目で見られた。

 こっちみんな。


美琴「あんたこの前の………あの時はどうも」

 やはり知り合いだったのか。うかつなことを言わなくて正解だったようだ。
別に記憶喪失であることを話してもいいのだが、その経緯について聞かれたらちっと面倒だ。



88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:15:38.78 ID:47eK3JOX0
 しかし、一体なにをそんなに怒っているのだろうか。
 俺が妹さんにちょっかいだしてると思われたからか?だとしたらどう弁解するべきか……

 などと考えている間に、御坂美琴のほうから垣根のほうに向かってきて―――――――――――


 垣根をスルーし、ミサカの手を取った。

美琴「……ちょっと悪いけど、この子預かっていくわよ。いいわね?」

垣根「は?あ、ああ別にかまわねえが……」

ミサカ「しかし、デートとやらの続きはいいのですか?とミサカは………」

美琴「いいから!ちょっとこっち来なさい!」

 そう言うと御坂美琴はミサカの手を引っ張り、そのままその場を後にした。

上条「………複雑な家庭なんだな」
垣根「……そうみてぇだな」



91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:21:35.47 ID:47eK3JOX0
上条「………それにしても、垣根が美琴の妹とまた会ってたなんてな。びっくりした」

 両手一杯の缶ジュースを運びながら、上条が垣根に質問する。
 
 質問を受けた垣根の両手もまた、上条と同じく缶ジュースでいっぱいである。

垣根「偶然見かけてな。ちょっと………」

上条「ちょっと?」

垣根「ちょっとお茶でも、と」

上条「………」ジーッ

垣根「おい、そんな目で見んなコラ」

上条「垣根さんは幻想殺しじゃなくて女殺しですもんねー。ナンパなんかお茶の子さいさいなんでしょうねー」

垣根「別にお前はいーだろ。大食いシスターにあの第三位もいるんだからよ」

上条「上条さんの好みは年上なのですよ……それに美琴とはそんなんじゃないって」

垣根「ああそうかい、そりゃようござんした」



94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:25:08.80 ID:47eK3JOX0
上条「あのなぁ………」

 上条が何かを言いかけたその時、テニスボールが風に吹かれ上条の目の前へ転がってきた。
 
 無論、話に夢中な上条が気付く訳もなく、

上条「うわっ!!!ちょ……!!ちょっとまてぇぇぇぇ!!!!」

ガッシャーン!!

上条「俺が……何したって……言うんだ……」

 倒れる上条を見ながら、垣根が笑い半分憐れみ半分で手を差し伸べ、上条を起こす。

垣根「あー……どんまい。ホント不幸な奴だな、テメエはよ」


 そう言って垣根がジュースを拾おうとし――――――


「……必要ならば手を貸しますが、とミサカは溜息混じりに提案します」

 さっきまで一緒にいた顔が目の前に現れた。



95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:30:08.95 ID:47eK3JOX0
上条「あれ?お前…………妹のほうか?美琴の」

「ええそうです、とミサカは妹であることを認めます」

垣根「さっきコワーイお姉サマにつれてかれてなかったか?もう終わったのか?」

「………ミサカはあちらから来ただけですが、と指差します」

 そう言って少女が今通ったのであろう道を指差す。

上条「ふーん………」

「このジュースはどこまで運べばよいのでしょうか?とミサカは尋ねます」

上条「へ?」



96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:33:58.77 ID:47eK3JOX0
 突然の質問に驚くが、上条がすぐに両手を横にふる。

上条「ああ、いいっていいって!垣根もいるし、2人で運べるから」

垣根「まあ、上条の言うとおりだ。2人もいれば十分だっての」

 上条と垣根がそう言うものの、
 
ミサカ「はやくしなさい」

 と言われてしまった。

 どうしようかと頭を悩ませる。

上条「………どうする?」

垣根「……こりゃ、どうしようも―――――――」



―――――――ザワッ………



97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:36:48.62 ID:47eK3JOX0
垣根「…………」

上条「?どうした、垣根?」

 上条がふと、垣根の表情が硬くなった事に気付く。

 なにかあったのだろうか。

 そう思って声をかけるが反応がない。

垣根「……ちょっとこれ持ってってくれねえか?」

「え?あ、はいわかりましたとミサカは快諾します」

上条「おい、どうしたんだ?」

垣根「ちょっと忘れもんに気がついてな、取り行ってくる」

上条「忘れ物?なら俺も探しの手伝うけど――――――」

垣根「場所はわかってるから一人でいいさ。それにその缶ジュースをなんとかしろ」

垣根「それじゃ頼んだ」



99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:40:28.61 ID:47eK3JOX0
 そう言って寮とは反対の方向へと歩き出す。

 当然、忘れものなどない。

垣根「………さて、ここならいいか」

垣根「いい加減出てきたらどうだ?いつまで付け回すつもりだ」

 そして、誰もいないはずの方向へ声をかけた。

「あら、やっぱりばれた?」


 そこから一人の少女が姿を現す。
 それは、上条達といたファミレスであったドレスの少女。


垣根「バレバレだっての。ったく、人をこそこそつけ回しやがって」



100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:44:05.07 ID:47eK3JOX0
垣根「何の用だ?ただのストーカーじゃねえんだろ?」

垣根「しかもさっきはあからさまに気配だしやがって。なにがばれた?だ」

 少女をにらみつけながら垣根が問い詰める。
 
 後をつけ回されていたのだから、それは愉快なものではないだろう。

 だが少女のほうはあっけらかんとしていて、はたから見れば悪意は感じ取れない。

「『心理定規』」

垣根「あ?」

いきなりそう少女が言ったので、少々気をとられる。

心理定規「私の通称よ。まあ能力の名前ってだけなんだけどね。やっぱり覚えてないのかしら?」

垣根「……さて、記憶にないな」


そう言うと、少女は少し悲しそうな顔をしながら、「そう」とだけ呟き、垣根に近づいていく。



101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:45:24.69 ID:9PorR9Bf0
心理定規…切なすぎる…



102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/22(火) 23:47:37.04 ID:47eK3JOX0
心理定規「私は、学園都市の暗部組織の一つである『スクール』って言う組織に属してるの。
 いわゆる裏のお仕事……手早く言ってしまえば人殺しとかそういう事をしてたんだけれど」



心理定規「あなたはそれのリーダーだったのよ。そう言ってもまだ思い出さないかしら?」


垣根「――――――――――はっ?」


 唐突に話された自分の過去。
 それがホントかどうかはわからないが、思わずのけぞる。

 暗部?人殺し?『スクール』のリーダー?
 なんだそりゃあ、どういうことだ。

 俺は、そういう世界の人間だったのか?

 頭が混乱する。呼吸がわずかだが乱れる。



107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 00:03:44.38 ID:NB1oCC2T0
垣根「(『昔の知り合い』、ね……だいたい予想はついてたとはいえ………・ロクでもないもんだった訳だ)」

 めまいがする。だが、気取られぬよう体面だけは取り繕う。

垣根「………最近物忘れが激しくてな。まだボケる年頃じゃねえとは思うんだが」

垣根「で、その『スクール』とやらのリーダーで人殺しの垣根帝督サマに一体何の用だ?話は結論から言え」




心理定規「『垣根帝督を連れ戻せ』」



113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 00:11:04.01 ID:NB1oCC2T0
心理定規「私が言われたのはこれだけよ。個人的な用事を言えば、あなたの様子を見にきたんだけど」

垣根「……で、その『垣根帝督』を力づくで連れ戻しに来たって訳か。……はっ、おもしれえ事言うじゃねえか」

そう言うと心理定規はスッと垣根から離れ、背を向けて話し出す。

心理定規「私の力じゃあなたをどうこう出来ないわよ。だからこうしてつけ回してるだけだったって訳」

心理定規「それに、あなたを見つけられただけでもびっくりしてるんだから。全然情報がまわってこないんだもの」

垣根「(………まさか、あのカエルのじーさんの仕業か?)」

 ふとあの特徴的な顔が頭に浮かんだ。
 もちろん、ただの推測でしかない。

心理定規「あなたが自分の意思で戻ってきてくれるなら別にいいのだけど……」

垣根「お断りだ。他を当たれ」



115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 00:14:19.00 ID:NB1oCC2T0
心理定規「まあそういうことで、一言だけ言わせてもらいにきたのよ」

 もったいつけるかのように一息置いた後で、くるっとこちらに向き直す。

 そして、



心理定規「あなたには元の世界が似合っているわ」


 そんなことを言うのだった。

心理定規「私はそう思うの。言いたかったのはそれだけ」

心理定規「まあまた会う事にはなると思うけど」

心理定規「それじゃあね、『リーダー』さん?」

 そう言うと、呆気にとられている垣根をそのままに、心理定規はその場を軽やかに立ち去って行った。



116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 00:18:05.39 ID:NB1oCC2T0
~~~~~~~~~~~~~~~~

 寮にもどった後、いろいろ質問をしてくる上条やインデックスを無視して部屋へと帰り、そのままベッドへと寝転んだ。

 そしていろいろと考える。

 記憶を無くす前の『俺』の事。
 暗部組織にいたであろう自分の事。

 そして、今の自分の状況を。


 心理定規とやらが言った事が本当かは分からない。

 だがもし、それが本当なら。

 かつて『そういう事』をしていたであろう自分が、今こうしてのうのうと生きている。

 それは、はたして良い事なのだろうか?



119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 00:23:14.65 ID:NB1oCC2T0
垣根「………知るか、俺には関係ねえ」

 いろいろと残るモヤモヤを抱えたまま、垣根は眠りに落ちた。


 ――――――――その日、夢を見た。

 目の前には上条、その横には土御門と青ピアス。

 笑っている。とても楽しそうに。

 近づこうとして―――――――透明な仕切りのような物にぶつかる。

 ―――――――――邪魔だ、どけよ。

 そう言いながら仕切りを叩く。そして、気付いた。

 自分の手が、血にまみれている事に。


 ………最後に、なぜかコンビニで会った白髪の男が背後からやってきた。

 俺と同じように、血にまみれながら。


 なんつー夢だ。
 そう思いながら目が覚めた。



121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 00:27:45.53 ID:NB1oCC2T0
 翌日、垣根はまたあてどもなく街をぶらついていた。

 上条はまた補修だ、さすがにこの前の二の舞は踏みたくないので、ついていく事はしなかった。

 それに、今は一人でいたい。

 意外とセンチなんだな、俺もよ。


 などとバカみたいな事を考えていると、また目の前に知った少女が座り込んでいた。

垣根「よう、またアリでも数えてんのかテメェは」

ミサカ「いえ。今日は数えられる側ですので、とミサカは答えます」

垣根「はあ?」

ミサカ「いえ、気にしないでください、とミサカはフォローをいれます。時間を潰しているのですよ」



123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 00:30:48.73 ID:NB1oCC2T0
垣根「ってことは今は暇な訳だ」

ミサカ「今日は午後から大事な用事があるのですが……」

垣根「そんなつれねえこというなよ。ちょっと気分転換がしてえんだよ」

垣根「それにこの前の続きがまだだろ?少しくらいいいじゃねえか」

 何故俺はこんなにもこだわっているんだ?
と少しばかりの疑問を抱きながら、垣根がミサカに話しかける。


 するとどうも観念したのか、ミサカもスッと立ち上がり

ミサカ「それでは、せっかくですから、とミサカは誘いに乗ります」

 と言って、垣根の後について行った。



124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 00:34:52.60 ID:NB1oCC2T0
ミサカ「ほう………むう………」

 結局、前と同じファミレスにはいった。

 どうも前と同じ光景を見ているような気がする。

垣根「また悩んでんのかよ。さっさと決めちまえばいいだろ」

ミサカ「いえ、ここにくるのも最後になるかもしれませんので、とミサカは答えます」

垣根「?どういうこった?引っ越しかなんかか?」

ミサカ「遠いところに行く、という意味ではあってますね、とミサカは答えます」

 なるほど、午後の予定ってのはそれ関連のことか。
しかし、引越しなら御坂美琴も引っ越すのか?

 まあ俺には関係ない、か。
と、垣根は考えることを放棄した。

垣根「で、そろそろ注文するが決まったかよ」

ミサカ「そうですね、それではお子様ランチを一つで、とミサカは注文を言います」

垣根「ネタか?ネタなんだなテメエは?」



126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 00:40:46.41 ID:NB1oCC2T0
 その後、2人で様々な店を廻り歩くことにした。

 セブンスミスト、ゲームセンター、アイスクリーム屋からカフェまで。

 
 はっきりと言おう。

 その時の垣根は、素直に楽しいと思っていた。

垣根「(………心理定規とやらが見たら、なんて言うんだろうな)」

 少しだけ、チクリと胸を刺す痛みがした。

 だがそれはあまり考えないことにした。

 今そんなことを考えても仕方あるまい。

 今はただ、素直に楽しむだけだ―――――――――――――



129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 00:45:18.41 ID:NB1oCC2T0
~~~~~~~~~~~~~~

ミサカ「本屋、ですか?」

垣根「ちょっと買っときたいもんがあってな、外で待っててくれるか?」

 そういって垣根が店へと入っていった。

 その姿を見送るミサカの顔は、今までどおりの無表情だ。

 だが、

ミサカ「………なんでしょうか、この気持ちは。とミサカは疑問に思います」


 それが『楽しさ』であることなど、知る由もないのだろう。


 このままこんな時間を過ごすのも、悪いことでは―――――――――



130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 00:48:00.26 ID:NB1oCC2T0


――――――――――――――――ゾ ク リ


ミサカ「――――――――――はっ!!!」

 だが現実はそう甘くはない。

 背後からの気配。
それは、振り向く必要もない。


――――――――――なぜなら、もう一万回は味わったであろうものだから。


「……あまりに遅えからよ。迎えに来てやったぜェ?感謝しろよな」

 まさに、死神の息吹。

「―――――――それじゃ、始めるとすンぜ」

 地獄の始まり。



135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:01:11.47 ID:NB1oCC2T0
垣根「ったく、なんであんな分かりづらい場所にあんだよ」

 ぶつぶつ文句を言いながら店を出る。

 少し待たせてしまったようだ。

垣根「ワリぃな、遅く―――――」

 だが、店を出た先にミサカはいなかった。

 あたりを見渡すもその姿は確認できない。

垣根「………もしかして帰っちまったか?用事あるって言ってたしな…」

 やれやれ、と呟きながら寮に帰ろうとし―――――――――――――


 ふと、あるものが目についた。



136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:04:59.52 ID:NB1oCC2T0
垣根「………」

 狭い路地。

 いつもなら気にもしないそれから、一種懐かしいような雰囲気を感じ取る。

 何かはわからない。だが。


 少なくともそこに、なにかがある。

垣根「良い予感はまったくしねえがな…」

 そう言いつつ垣根の足は路地へと向かっていく。
 
 それは怖いもの見たさなのか、それとも何か別のものか。

 垣根自身にも分からない。

 ただ、何故だろうか。行くべきなのだという確固たる意志のみ存在していた。



138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:09:57.67 ID:NB1oCC2T0
 路地を進む。

 その度に頭の中に危険信号が流れる。

 頭では覚えていないが、体が覚えているのだろうか。

 それを無視し、先へと進む。


 ―――――――この先だ。この先に、なにかがある。


 一度立ち止まり、息を吸う。

 そしてゆっくり吐き出して―――――――――

 
 一気に駈け出した。



139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:14:07.12 ID:NB1oCC2T0
垣根「………ウソだろ、おい」


 そこにはいたのは、


 肩から大量の血を流すミサカの姿。


 先ほどまで共に行動していた少女の、血まみれの姿だった。



141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:17:27.73 ID:NB1oCC2T0
 現実から乖離したような空間。

 目の前の光景が信じられない。

 しかしその一方で、自分でも驚くほど落ち着いている事に気がつく。

 ミサカの手をとり、脈を測る。


 ―――――まだ生きてる。

 思った以上に傷は酷くない。早く病院に―――――



「………こういう場合、実験ってのはどうなっちまうンだろうなァ」



142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:20:19.92 ID:NAoi+QHbO
第二接触早いな



143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:22:28.76 ID:NB1oCC2T0
 声のした方へゆっくりと振り向く。

 そこに現れたのは、垣根が以前コンビニで出会った男。

 ―――――――――――学園都市最強、一方通行だった。

 当然、垣根はそんなことを知る由もないのだが。


垣根「人のデートを邪魔するのは、趣味が良いとはいえねえな」

一方「………あン時の」

垣根「しっかし、ナンパする女も同じなんてな」

垣根「テメエと俺は似てるのかもな。同じ悪趣味なんて笑えねぇがよ」

 軽口をたたくその一方で、背中に白い翼を形成し戦闘態勢に入る。

 記憶を失ってから『未元物質』を使用するのは初めてだが、どうやら問題はなさそうだ。

 記憶はなけれど、体がこの感覚を覚えている。

一方「そういうオメェこそなンだその悪趣味な翼はよォ。メルヘンからようこそ、ってか?」

垣根「うっせぇ。この形状にしかならないみてえなんだよあんまり触れんな」



146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:28:24.50 ID:NB1oCC2T0
 そう軽口を言いあっていたが、それはやがて無くなった。

 無言のまま、互いを値踏みしあう。

 そして、

一方「恨みはねえンだがよ。ちっとばかし運が悪かったな」

垣根「そういうセリフは相手を見てから言うこったな」

 互いに前口上は言いあげた。準備はOKだ。

垣根「それじゃ始めさせてもらうぜ――――――――クソモヤシ」



 そういって垣根が背中の翼を振るう。

 だがそれは一方通行には当たらず、足元や壁を砕き、あたりを包みこむ。

 あたり一面が煙と白い羽で覆われた。



147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:34:11.26 ID:NB1oCC2T0
一方「なンなンですかこれはァ?目くらましってヤツですかァ?!」

 周りの風を操り一気に吹き飛ばす。

 すぐに視界はあけた。だが、

一方「………あァ?」

 そこに垣根とミサカの姿はなかった。

 代わりに残る、道なりに続く赤い血痕。

一方「………カカカカケケケケコケコキキケケケクキキカカカッ!!!面白ェ、面白ェよ、オメェ!!」


一方「そンなら鬼ごっこ開始と行きますかァ?!クソメルヘンちゃンよォ!!」



149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:40:16.79 ID:NB1oCC2T0
~~~~~~~~~

ミサカ「……一体何を?とミサカは―――――――」

目を覚ましたミサカが垣根に尋ねる。

だが、垣根はそれに構う余裕も無く、必死に走っていた。

垣根「うるせぇ!とにかく黙ってろ!」

 ミサカを背負い、ただただ一心不乱に走る。

この狭い路地の上、相手の能力は不明。おまけに手負いが一人。

ここは逃げるが勝ちだ。

やつをまいて逃げきる事さえ出来れば―――――――――――



151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:46:31.44 ID:NB1oCC2T0
一方「おいおい、愛の逃避行ってやつですかァ?今時そんなン流行らねェっての!」

 だが一方通行は平然と迫ってきた。

 常人ではありえぬスピードで、まるですべるように垣根たちを追いかける――――――!

垣根「ちっ!もう来やがったか!!」

 手当たり次第に周りの物を壊し、進路をふさごうとする。

 だが、 その差は広がるどころか目に見えて縮まっていく。

 もはや時間の問題でしかない。

垣根「くそっ!なんなんだあの野郎は!」

一方「ほらほらァ!早くしないとコワーイ鬼に捕まっちまうぜェ?!」



157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 01:57:31.29 ID:NB1oCC2T0
垣根「なら―――――――!!」

 人目を気にする余裕は無しだ。

 今はとにかく、ここを脱出するのが先決―――――!

 再度翼を展開し、


 一気に空へと羽ばたいた。


――――――――――ファサッ………

ミサカ「空を、飛んで――――――――――」

垣根「……これじゃほんとにメルヘンだな。似合わねえっての」

 狭い路地ではあったものの、なんとか翼を展開することができた。

 これでいける。

垣根「バーカバーカ!クソモヤシ!」

一方「ぶっ殺すぞオイコラ」

精神的余裕からか、思わず垣根の口が軽くなる。



158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 02:00:57.78 ID:NB1oCC2T0
 だが、その余裕はすぐに消えることとなった。

垣根「………な?!」


 さっきまで地面にいたあの男が、

 いまや、目の前に浮いているのだ。


一方「俺にはこういう事も出来ンだよ。残念だったなクソメルヘン」

垣根「……なんでもありかテメエは。全身チート野郎かっての」

一方「まあそれで60点ってとこだなァ。もう追いかけっこはこれでいいか?」



160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 02:07:45.04 ID:NB1oCC2T0
垣根「………やるしかねえってか」
 
 逃げるのは無駄だと悟り、近くにあった建物の屋上へ着陸する。

 ただし、翼は展開したまま、男から目は逸らさない。


一方「ああ、鬼ごっこはもう終わりの時間だぜェ?」

垣根「そうかい、なら今度はチャンバラといこうぜ」

垣根「ルールも反則も無しだがな」

 互いに戦闘態勢に入る。
 
 相手の能力は不明、敵数も不明。足手まとい一人。

 いいさ、いいハンデだ。


 翼を振るい、目の前の相手に叩きつける―――――――!!!


ミサカ「ダメです!!とミサカは―――――――!」



161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 02:12:31.41 ID:NB1oCC2T0
 ――――――――――――パァン!



一方「……あァ?」

垣根「……なんだ?」

 垣根の翼が一方通行に触れるまさにその瞬間、背後で発砲音が鳴り響いた。

 その場にいた全員が思わず銃声のした方を向く。

 そこにいたのは、

「少々話をする時間をいただけませんか?とミサカは断りをいれます」

 ミサカにそっくりな少女『達』

 ミサカと御坂美琴の比ではない。それらは、まさにそっくりだった。



163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 02:18:41.50 ID:NB1oCC2T0
垣根「なんだ……これは?」

 思わず声が出る。

 だが少女達は垣根のほうに興味は無いらしく、一方通行に対し何かを語りかけている。

「研究所のほうから『本10031回実験を延期する』との決定が下りました。とミサカは報告します」


一方「はァ?どういう事だよ。ンなめンどくせえ事………」

「これ以上続けて目撃者を増やしてしまえば実験に支障がでます」

「ここは退いて仕切りなおすのが得策ではありませんか、とミサカは提案します」



164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 02:24:14.88 ID:NB1oCC2T0
 そう言われた一方通行が顔を歪ませながら溜息を吐く。

 一方通行が何かをその少女に言おうとし、

 結局、止めた。

一方「………ちっ。実験の日程が長引くのは面倒なンだがなァ」

 結局諦めたのか、一方通行は少女達に背を向けとぼとぼと歩きだす。

 そして最後に振り向き、

一方「命拾いしたな、クソメルヘン」

 そう言い残して屋上から飛び降りていった。



166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 02:32:35.15 ID:NB1oCC2T0
垣根「………そのまま墜落しろ、クソモヤシめ」

 姿が見えなくなったのを確認してから、垣根が思わず毒を吐く。

 情けないが、これ位は言ってやりたくなった。

垣根「……とりあえず、だ」

 だが、今問題なのはそれじゃない。

 そんなことよりも問題なのは――――――


ミサカ「………」

垣根「状況の説明をしちゃもらえねえか?何が何だかさっぱりだ」

ミサカ「………」



167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 02:38:52.61 ID:NB1oCC2T0
 垣根がミサカに尋ねる。だが、ミサカは話そうとしない。

垣根「お前らは何者だ?一体、何が起こってる?」

 再度、今度は語調を強めて問いかける。


 すると、観念したのか、徐々に口を開き始めた。



ミサカ「………私たちは、学園都市第三位である御坂美琴お姉さまから
 量産型軍用モデルとして作られた体細胞クローン、『妹達』です。
 とミサカはいやいや説明します」



169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 02:46:46.40 ID:NB1oCC2T0
ミサカ「事情が分かっていなかったとはいえ、先ほどは巻き込んでしまい申し訳ありませんでした。とミサカは謝罪します」

ミサカ「それでは失礼します」
 
 垣根に一礼したのち、ミサカ達が建物を後にしていく。

ミサカ「……デートのお誘いはうれしかったですが、もう機会はなさそうですね、とミサカは言い残します」

 最後にそう言った時の、いつもの無表情な顔が、

 その時だけ、悲しそうに見えたのは、気のせいだったのだろうか。


 垣根には、わからなかった。



171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 02:52:53.67 ID:NB1oCC2T0
~~~~~~~~~~~~~~~

 あの後、垣根は寮に戻らず、近くのインターネットカフェへと入った。

 調べる事はさっきの事だ。

『御坂美琴』

『クローン』

『実験』


 だが、そこで得られた情報は噂の域を出たものでなく、

 要するに、無駄な情報しかないということだった。


 それでも、なにか有益な情報はないかと調べ周り―――――――――

 
 ふと、客観的にみた自分があわれに思えた。



172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 02:58:41.60 ID:NB1oCC2T0
垣根「俺は何をしてるんだろうな」

 思わず言葉が口からこぼれ出る。


 もしあのクソモヤシとかちあえば、文字通り命を賭けた戦いになるのは間違いない。

 何故わざわざそんな事をしに行く?ついこの間あった女の為に?

 なんともバカな話だ。そんなことをするやつは普通居やしない。

 そんな事をするのは、根っからの善人か、聖人か、ただのバカだ。


 そして俺は――――――――悪党だった男なのだ。



173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 03:04:26.03 ID:NB1oCC2T0
 だいたい、あの女は生きる事を望んでいる訳ではないのだ。

 軍用クローンとして生まれ、実験で死ぬ事に何の疑問も抱いてはいないのだろう。

 そもそも、あいつらは生きる意義すらもってはいないのかもしれない。


 それなら、何をわざわざ助ける必要がある?

 余計な事に首を突っ込む必要はあるのか?

 お前は、余計な事をしなくていいんじゃないのか?



―――――――――――全て、無駄なだけじゃないのか?



174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 03:10:40.09 ID:NB1oCC2T0
――――――――――それでも、


 ふいに浮かぶ友人の顔。

 ツンツン頭の、不幸少年。

 ヒーロー気取りの、大バカ野郎。


 あいつなら、どうするか。

 んなもん、決まっている。

垣根「…………俺も毒されてきたってわけか。やれやれ」

 パソコンの電源を切り、店を出る。

 行く先は、常盤台中学の寮。

垣根「(おそらく御坂美琴はこの件について何か知っている。なら、直接聞きに行くのが早い)」

 素直に話をしてくれるとは思わない。
 だが、結果は行動からしか生まれない。

 歩みを早め、垣根はバスの停留所へと向かった。



203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 11:25:22.61 ID:NB1oCC2T0
………ふと歩くのをやめる。

無論、何かを忘れたわけでは、ない。

垣根「…………今度は何の用だ」


いつぞやのように、誰もいないはずの方向へ話しかける。


「あら、やっぱり気付いちゃうんだ」



205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 11:31:33.15 ID:NB1oCC2T0
 そこにいたのはドレスの少女―――――――心理定規だった。

 相変わらず年に合わないドレスと雰囲気を纏い、妖艶な笑みを浮かべている。

垣根「…………?」
 
 気のせいだろうか。

 目の前の少女が、僅かに悲しそうな表情を浮かべたような気がしたのだ。

 再度見直すが、そのようなことは見られない。

 ……俺の勘違いだったのか。

心理定規「やっぱり、行くのね。そんな気はしてたのだけれど」

 どうやらこちらの動きはお見通しらしく、そんな言葉を投げかけられる。

垣根「……残念だが、テメエと話してる暇は無え」



206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 11:37:40.61 ID:NB1oCC2T0
 そう言って垣根が歩き出す

 だが、心理定規が垣根の目の前に立ちふさがった。

垣根「……俺は急いでんだ。そこをどけ」

 垣根が冷たく突き放す。

 だが心理定規はいたずらに微笑むのみで、そこから動こうとしない。

心理定規「やだって言ったら?」

垣根「舐めてんのか?痛い目見たくなかったらそこをどけ」

心理定規「あなたには出来ないわ。絶対にね」



207:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 11:44:32.59 ID:NB1oCC2T0
垣根「やらないと思うか?」

 ゆっくりと歩み寄る。

 脅す気はない。ただの本気だ。

心理定規「やらないわよ。私にはわかるわ」

 心理定規まであと一歩の距離まで迫る。

 もう、手を伸ばせば届く距離だ。

垣根「最後にもう一回だけ言ってやる。怪我する前にそこをどけ」

心理定規「いやよ」


208:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 11:52:08.27 ID:NB1oCC2T0
 最後通牒を発する。

 だが、心理定規はそれでも動こうとしない。



心理定規「覚えてるかしら?前会った時に、一つだけ言わせて欲しいっていった言葉」

 心理定規が垣根へ語りかける。

 それは、愛する恋人に語りかけるように。

 わが子を思う母親のように。

心理定規「言ったわよね。あなたには元の世界が似合ってるって」





心理定規「――――――――そう。この平和な世界が」



210:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 11:59:30.85 ID:NB1oCC2T0
垣根「…………は?」


 何を言ってんだこいつは。訳がわからない。

 垣根が呆気にとられる。

 一体こいつは、何を――――――――――


心理定規「あなたは優しい人」

心理定規「今だって、昔のあなたを知って動揺してるんでしょ?」

心理定規「あなたに裏の世界は似合わないわ」

 悲しそうな微笑を浮かべながら心理定規が語りかける。

 目を見ても、それが本心か虚言かはわからない。

 こいつは俺に何を言おうとしている?

 この女は、俺の敵か?

――――――それとも味方か?



211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 12:07:07.09 ID:NB1oCC2T0
垣根「……何が言いたい。お前に何がわかる?」

 強がりを見せるが、それに対し心理定規はかすかに笑っただけだった。

心理定規「分かるわよ。だって私は心のエキスパートだから」


心理定規「自分を殺して、それで裏の世界で生きてきた。自分を騙して、自分に騙されて」

心理定規「それが、理由は分からないけど、あなたは表の世界に戻れた。この平和な世界に」

心理定規「もしあなたが一方通行と戦うというなら、どんな結果にしろあなたはまた裏の世界に戻る事になるわ。必ずね」

心理定規「私は、そうなってほしくないの」



212:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 12:16:30.87 ID:NB1oCC2T0
垣根「………矛盾してるな。ならなぜ俺に接触した?なにもしなきゃいいだけだろ」

 いまだに心理定規の目的が理解できない。

 俺を連れ戻したいのか、連れ戻したくないのか。

 俺を、どうしたいのか。

心理定規「そうね………お節介、てところかしら」

心理定規「あなたに私達側には戻って来てほしくない。でも、あなたの手助けをしたいって気持ちもあるのよ」

心理定規「だから――――――――選んで頂戴」

心理定規「引き返して表の世界で暮らすか――――――――」



心理定規「私を殺していくか、ね」



204:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 11:26:04.23 ID:P2akYUGV0
定規…



215:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 12:24:31.09 ID:NB1oCC2T0
垣根「………意味がわからねえよ。なんでテメェを殺す必要がある?」

 無茶苦茶だ。意味がない。

 そう垣根は思ったが、目の前にいる心理定規を見る限り、本気で言っていることは間違いない。

 ますます心理定規の考えていくことが分からなくなっていく。

心理定規「きっかけ、ってとこかしら」

心理定規「あなたは優しい人だから。裏の世界には向かない人だから」

心理定規「だからこうしてきっかけをあげるのよ。――――――心を完全に殺すきっかけを、ね」

心理定規「さて、どうするのかしら?あなたはどっちを選ぶの?」

心理定規「表にとどまるか、それとも覚悟を決めて裏に堕ちるか」



216:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 12:31:38.66 ID:NB1oCC2T0
 ―――――――――ここにきて垣根は、なんとなくわかった気がした。

 こいつの考えが。こいつの思いが。


 こいつは――――――――


 自分を、俺に殺させたいのだ。


 俺が甘さを捨てる為に。

 俺が、裏で生き抜く為に。


 こいつとしては、俺に表で生きて欲しいのだろう。

 だから、力づくで俺を引き戻すような事はしなかった。

 だが、それとは別に分かっているのだ。
 俺が、いずれ裏の世界へいってしまうのだという事を。



218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 12:39:17.48 ID:NB1oCC2T0
 俺はそのうち、心理定規以外の暗部の人間にも発見されるのだろう。

 学園都市第一位の人間と戦えば、それはなおさらだ。

 そうなれば、否応なしに裏の世界へ引きずりこまれる。

 だから、決別させたいのだろう。

 心理定規を殺すことで。

 俺の中にある『優しさ』とやらと。


 だから今、こうして俺の前に立ちふさがったのではないか。

 
 俺が行くことを、分かっていながら。

垣根「………そんなもの、決まってんだろ」



220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 12:47:03.68 ID:NB1oCC2T0
 ああ、そうだな

 どちらにせよ。ついさっき、覚悟は決まったばかりだ

 答えは、決まっている―――――――――



 垣根が背中の翼を広げ、心理定規を包み込む。

心理定規「………そう、そうだと思ったわ」


 そして―――――――――その翼をはためかせた。



 

 ――――――――――――さようなら。



221:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 12:54:15.04 ID:NB1oCC2T0


………5秒、10秒、



 ――――――――――生きてる?

 そんな筈は無い。

 確かに、私と『垣根帝督』の『距離』は離したはず。

 帝督が、私を殺さない訳がないはずなのに。

 一体、何が―――――――――――?


 心理定規が、恐る恐る目を開けた。



222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 12:59:43.31 ID:NB1oCC2T0

心理定規「―――――――――へ?」

 目の前に広がるビル群。

 街の人たちはもう見えないほどになっている。


 そして後ろには―――――――――――


垣根「空の旅はいかがでしょうか、ってな」

 垣根帝督が、そこにはいた。

垣根「誰が殺してやるかよ。バーカ」

 大きなおせっかいだ、そう垣根が呟く。



223:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 13:04:51.44 ID:NB1oCC2T0
心理定規「へ?………あ、え?一体―――――?」

 心理定規が混乱した頭で言葉を紡ぎだそうとする。

 だが、思ったように言葉が出ない。

垣根「うっせえんだよ。テメエの言い分なんざ知るか」


垣根「覚悟?裏の世界?――――――――はっ!バカにしてんのかテメエは」



225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 13:09:30.71 ID:NB1oCC2T0
垣根「んなもん、とっくに出来た」

垣根「こうやって、過去も今も背負って生きる覚悟がな」

垣根「誰が表でのんびりしてやるか。だれが裏に堕ちてやるか」

垣根「俺は俺のしたいようにする。俺の助けたいように助ける。俺の生きたいように生きる」

垣根「それでどうなろうと、知ったこっちゃねえ。全部乗り越えるだけだ」

垣根「ただ、それだけだろうが」


226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 13:11:14.29 ID:E623QnAd0
帝督△



228: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 13:15:01.88 ID:KEaViU0A0
かっこよすぎだろ



229:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 13:15:59.53 ID:NB1oCC2T0
 心理定規が思わず呆然とする。

 なんとも自由な人だ。なんとも自分勝手な人だ。


 …だが、すぐに笑みがこぼれた。

心理定規「………相変わらずあなたはカッコつけで見栄っ張りでメルヘンチックよね」

垣根「……前二つはまだいい、メルヘンだけはやめろ。最近になって自覚してきちまってんだよ」


心理定規「でも、自分に正直になった事は成長したってことかしら」

 いつもの笑みを取り戻し、垣根へと語りかける。

 その顔に、先ほどの悲しさは一切ない。

心理定規「もう私がサポートする必要もないみたいね」

垣根「誰がサポートしたよ。ただのおせっかいだろうが」

心理定規「まあそうともいうわね」



230:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/03/23(水) 13:20:30.57 ID:NB1oCC2T0
 私がこの人を助けるつもりだったのに。

 助けているつもりだったのに。



 知らないところで、随分と成長してしまったようね―――――――

 心理定規は、そう思ったのだった。


心理定規「ああそうそう、これはあくまで一人言なんだけれど」

心理定規「御坂美琴さん。今、○○学区の橋のところにいるらしいわね。もしかしたら一方通行の所に行くつもりなんじゃないかしら」

心理定規「あくまで、一人言だけど」



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