一方通行「悪ィ悪ィ打ち止め、そう怒るなよ」

2011-03-25 (金) 12:17  禁書目録SS   24コメント  
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/03/21(月) 03:38:57.36 ID:nJc58NUz0
その時。
がさり、という物音が一方通行の耳に入った。
ウイルスコードを上書き修正しながら目を向けると、運転席のドアに挟まれて気絶していたはずの天井亜雄が、いつの間にか一方通行の側まで近付いていた。

それだけならば、何の問題もない。
だが、彼の手には黒光りする拳銃が向けられていた。


「邪魔を……す、るな」



血走った目で、天井亜雄が呻き声をあげる。
残りコード数は23891。
まだ手は放せない。断片的に残ったコードが誤作動を起こせば、打ち止めの頭が破壊される恐れも考えられる。

モニタの警告文はもう数えられるほどしか残っていなかったが、一方通行にはそれが打ち止めの状態を示しているように見えた。
一つでも警告文が存在してはいけないのだ。


互いの距離は四メートル弱。外そうと思っても外せる距離ではない。


「く……っ!?」


今の一方通行は打ち止めの脳内の信号を操るために全力を注いでいるので、『反射』に力は割けない。
そんな事をすれば電子顕微鏡クラスの、精密な電気信号のやり取りに狂いが生じる。
それは打ち止めの脳を焼き切る事を意味していた。

残りコード数は7001。
警告ウィンドウはわずか9つ。
作業はまだ終わらない。ジリジリと時間が緩く速度を落とす。
天井は恐らく一方通行が何をしているのか、それを理解していない。
だが、天井からすれば、絶対に死なれては困る打ち止めを、一方通行なんて化け物に触れられるだけで気が狂いそうになるのだろう。


「邪魔を、するな」


天井亜雄の口から泡が飛ぶ。その目が赤く血走る。
一方通行に銃を向ける事がどれだけ無謀な事かも分からなくなっているようだった。
だが、今の一方通行は『反射』に力を割けない。この状態では、どうする事もできない。

あのチャチな鉛弾一発当たれば、それだけで彼は死ぬ。
打ち止めから手を放せ、と生存本能が告げる。『反射』を取り戻せと絶叫する。
確かにそうすれば彼は助かる。
拳銃どころか核兵器が降ってきたって傷一つつかないだろう。

だけど、それでも彼は打ち止めから手を放せなかった。
それだけは素直に、彼という少年の勇気を称賛してやるべきだ。




例え、手を放せなかった彼が、そのまま無意識に『反射』を展開させていたとしても。




545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/03/21(月) 03:40:17.02 ID:nJc58NUz0



残るコード数は、わずか102。
警告ウィンドウはたった1つ。


「邪、ば、を……ごァああ!!」


絶叫する天井亜雄の震える手が、握られた拳銃が、その銃口が、一方通行を睨みつける。
避ける術などない。
彼はただ、引き金にかかる指の動きを呆然と眺めている事しかできない。

乾いた銃声。
それが耳に入る前に、ハンマーで殴り飛ばすような衝撃が一方通行の眉間に襲いかかった。
頭に受けた衝撃で、背が大きく後ろに仰け反る。
首の辺りで嫌な音が聞こえた。彼の足が、衝撃に耐えきれずに宙に浮いた。

それでも、彼は手を放さない。
絶対に、放さない。


はずだった。


衝撃など空想だった。
自分を襲うはずの銃弾は逆再生されたように天井亜雄へと引き戻し、そのまま彼の腹を穿った。
ジワリと広がる真っ赤な液体が、一方通行に自分の行いを明確に自覚させる。

―――――……なンだ、コレは。

放さなかったはずの手は確かに少女の額の真上にそのまま翳されてはいたが、
繊細で精密な作業自体は想定外の行動パターンが加わった事により
真っ直ぐに敷かれていた演算ルートから軌道を逸らし、結果に御動作を生じさせていた。

ガタガタと震えだす打ち止め。
口からは涎が滴り、獣の様な甲高い叫声だけが一方通行の脳を刺激する。


「……あ、ァ……あァ……ッ!!」



反射、してしまったのか。
一方通行から声にならない悲鳴が零れた。
絶対に、手だけは放してはならないと思った。打ち止めという少女を護るために、この手だけは放してはならないと、そう思った。

結果、自分はその手こそ放さなかったものの、
普段から自衛のために無意識の内に展開させていた『反射』を、『死』を目前に何時の間にやら発動させてしまっていた。
そして、コードの削除から軌道の外れた演算はそれ自体が害意と化し、小さな少女の脳を蹂躙している。

今ならまだ、間に合うかもしれない。
生体電気を弄るだけのチカラが、自分にはあった。もしかしたら破壊してしまった脳細胞を修復する事ができるかもしれない。


一方通行が再び打ち止めの額に向かって手を伸ばした。
しかし、絶望は更に加速する。



546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/03/21(月) 03:41:13.94 ID:nJc58NUz0



ビィイイイイ――――――――……

打ち止めの頭に装着された電極へと繋がるノートパソコンが、奇妙な音を発した。
騒音の隣で打ち止めが意味を成さない雄叫びをあげながらバタバタと足を上下して暴れ続ける。

一方通行は恐る恐る画面を除いた。嫌な予感しかしない。

そもそも、自分は何のためにウィルスコードを削除していた?
何のために、打ち止めから手を放してはならないと思った?

第一位の頭脳を持ってしなくても、答えは単純明快だった。


「あ……ァ……」


BC稼働率、脳細胞の稼働率が数値を急激に上昇させていくのが分かる。
だから、手を放してはいけなかったのに。
『反射』をしてはいけなかったのに。

ウィルスコードが、遂に起動を始めたのだ。

いくら一方通行でも、一度ミサカネットワークがウィルスに感染してしまってはどうにかする手立てはない。
このままでは、世界中に散らばる妹達が一斉に暴走を開始する。
それが示唆するのは、すなわち『世界の終り』。


「くそったれがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


認めてくれたのに。
『絶対』になんてならなくても、『最強』ですらなくても。
たった一人の少女だけが、認めてくれたのに。

彼はきっと、その時抱いた何かを失いたくはなかった。
そして、失いたくはないと感じる自分がいる事に、彼は心のどこかで歓喜していた。
何かが、変わろうとしていた。
何かを、変えられるかもしれないと、思う事ができた。
それなのに、

一方通行には、選択肢が残されていない。


(考えが甘すぎたンだ。今さら―――――――)


何かを願った所で、結局何も叶わない。
何かを必死にかき集めた所で、結局全ては掌からこぼれ落ちていく。


(―――――誰かを救えば、もう一度やり直す事ができるかもしンねェだなンて)


残されたのは、まだウィルスは完全にネットワークには流出していないかもしれないという希望を胸に、
打ち止めを『処分』するという選択肢のみ。



そして、一方通行は





547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/03/21(月) 03:43:33.87 ID:nJc58NUz0



一方通行の生活する学生寮を訪れた芳川桔梗は、小さく息を吐いた。
彼の自室は長らくスキルアウトから襲撃を受けていない。恐るべき第一位が、常に自宅にいついているためだ。
『彼ら』は芳川が持ち込んだ食料と嗜好品のみで生活している故に、外に出る事が決してない。
芳川が何も運ばなければ必然的に『彼ら』は外出せざるを得ないが、恐らく『彼ら』は餓死してでも外へ出向く事はないだろう。

一方通行は、外を極端に恐れている。
正確には、外へと『彼女』を連れ立った際に『彼女』に害が及ぶ事を。
より正確には、害が及んだ『彼女』を護れないかもしれないという未来を。

ジャラジャラという鎖の音が鳴り響き、チャイムを鳴らした芳川を出迎えるようにドアが開かれた。
目の前に立つのは相変わらず独特なデザインのシャツを着込んだ一方通行と、そして


「わざわざ運んでもらってすまねェな芳川―――――……ほらオマエも礼くらい言え、打ち止め」


ジャラリ、金属音と共に引かれた鎖によって少女の首が引き摺られる。
幼い彼女の細い首を飾る太い首輪に絞めつけられたのか、あー、と少女から非難の声があがった。
奇跡的に生き残りはしたものの、言語機能も計算機能も完全に破壊された少女からはまともな声があがる事はない。


「悪ィ悪ィ打ち止め、そう怒るなよ」


子供特有の柔らかそうな頭を、一方通行の長い指が撫でつける。
あーうーと続く言葉に、そう催促するなよ、と一方通行から笑みが漏れた。


『実験』の都合上彼とはそれなりに長い付き合いを交わしてきた芳川ではあるが、
一方通行のこんなにも幸せそうな笑みなどこれまでにみたことがなかった。
それどころか普通に笑っているところも、思春期の少年らしく強い感情を示したところも見た事がない。


「………ねえ一方通行、まだ、そんな生活を続けるのかしら………?」


怖々と尋ねたのは果たしてこれで何度目だろうか。
少なくとも、数える事を放棄するほどには彼を説得したはずだ。
だが返って来る答えはいつだって同じ。
少女の脳が壊れた時に、少年の脳も同じように、きっと壊れてしまったのだ。


「だって、これなら安心だろォが。――――――――もう絶対に、この手を放したりはしねェ。絶対にだ」


そして一方通行は、ただ護るための道を歩む。



それがどれだけ間違っていたとしても



548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越):2011/03/21(月) 03:49:28.47 ID:r63afRWAO
<◎><◎>
超乙



549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/21(月) 10:49:46.02 ID:n66NpaXa0
>>547
う、うわあああGJ!!超GJ!!!
ヤンデレ一方通行の破壊力すごい…ゴクリ
流行んないかな…打ち止め視点とか読みたくなっちった



551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/21(月) 14:43:20.08 ID:hxhm5KWDO
もももっと書いてくださいお願いします





570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/03/21(月) 19:26:47.42 ID:nJc58NUz0



「美味いか、打ち止め」


幼い少女に手ずから食事を与える少年の姿は、傍目から見れば面倒見の良い兄のそれだ。
但し、表情が光悦に彩られていなければ。

男女間に沸き起こる絶頂の瞬間を想像した様な快感と幸福感に溢れた慈愛の瞳で、一方通行は打ち止めの口元へと食事を運び続ける。
冷凍食品や外食しか食べなかったような少年が料理を覚えたのは、学生寮と見るにはそれなりに広い、
しかし彼らが暮らす世界の全てと見るにはあまりに狭い一室に二人で暮らし始めてからか。

芳川桔梗は回想する。
何故こんな事になってしまったのか。何故、こんな結末になってしまったのか。
芳川は―――――……






「一生を使ってでも、俺が打ち止めの面倒をみる」


そう一方通行が申し出た時、芳川桔梗は思わず涙しそうになった。
『実験』によって自分達研究者が再度に渡って壊してしまった少年が、長く苦しい紆余曲折を経て遂に『護る』という道を得る事ができたのだ。

確かに最初こそ失敗してしまった。
彼は護ると決めた少女を護りぬく事ができなかったが、
絶対的な『死』と相対し生態本能的に自己保身に走ってしまった事を一体誰が責められようか。

これから頑張っていけば良い。
これから彼女を護れるように、ひたすらに努めていけば良い。
そんな彼らを後方から助けるのが自分の償いだ。芳川桔梗はそう信じていた。


彼らの『世界』を、訪れるまでは。




571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/03/21(月) 19:27:42.49 ID:nJc58NUz0




「―――――余剰演算補助が作動していない?」


少女の主治医となったカエル顔の医者の言葉に、芳川桔梗は首を傾げた。
ウイルスコードのミサカネットワークへの流出を防ぐために一方通行の手で処分された打ち止めは、
冥土帰しの治療の下、奇跡的に一命を取り留めた。

しかしその脳には決定的な障害が残り、頭蓋骨破損に伴う脳の損傷によって一切の言語機能、演算能力を失ってしまった。
それを補佐するのが残り一万体の妹達下位個体によるチョーカー型デバイスシステムである。
ネットワークで繋がれた一万人の余剰演算領域を打ち止めへと明け渡す事で、少女は現在、日常生活に支障ない自由を手にしている。

だが、システムが構築されて一週間余り経って冥土帰しから見せられたのは、
前述通り正常に作動した痕跡のないミサカネットワークの余剰演算領域データであった。



デバイスに何か不具合が生じたのだろうか。否、それならば一方通行が直ぐにでも駆け込んでくるだろう。
ならば一体何があったのか。
芳川の頭を悪寒が過ぎる。もしかしたら、二人に何かあったのかもしれない。

一方通行は確かに『最強』だ。だが無能力者に敗北したという前例がある。
何より今の彼には打ち止めがいる。心からの存在は、時に最悪の枷や弱点にも成り得るのだ。

打ち止めを無傷で護りたいと思うあまり無茶をしたのかもしれない。
打ち止めを人質に、何処かの研究機関で悪夢の様な実験に付き合わされているのかもしれない。

焦って病院を飛び出すと、芳川は駐車場に止めてあった自身の愛車に飛び込んだ。
急がねば。
『絶対能力者進化実験』の再興といった最悪の状況を考えた彼女が、押し入る様にして彼らが暮らす学生寮のエントランスを潜る。



三階、311号室。
漸く辿り着いた芳川は何度もチャイムを鳴らしながら必死の形相で金属製のドアを叩いた。


「二人ともいるんでしょう、無事なんでしょう!?お願いだから開けて、出てきて姿を見せて!!」


静寂に包まれた時間が酷くもどかしい。
恐らくはまだ到着して一分も経っていないというのに。強く打ちつけた拳からは血が滲み、叫んだ声は既に枯れていた。
それほどまでに、芳川桔梗は焦っていた。



キイ、という音がして、やがて扉が開かれた。
「悪ィ、打ち止めに飯作ってたモンだから」続く言葉に芳川は安堵の息を零す。

良かった。二人とも無事だったのだ。
「……いいえ、そう待った訳でもないから」あれほどまでに焦っていた自分が何だか急に恥ずかしくなって、思わず俯いてしまう。
大人としての精一杯の虚勢を張った芳川が言葉と共に彼らの無事な姿を見ようと顔をあげると




「ほら、芳川が来てる――――――……ちゃンと挨拶できるよな、打ち止め」




そこに在ったのは何処までも真っ白な少年と、
その手に握った鎖に繋がれ、濁った目をした幼い少女の姿だった。



572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/03/21(月) 19:28:26.15 ID:nJc58NUz0



チョーカー型の電極は一週間の間に極太の首輪へと摩り替っていた。
少年の右手から伸びる銀色の鎖は丁度人間が犬を連れるのに用いるくらいの長さで、
電極なしには歩行障害を残す打ち止めは、常に四つん這いで一方通行の足元へ縋るように腕を絡ませていた。


見るからに異常な光景だった。


よくよく考えてみれば最初からおかしかったのだ。
あんなに強くドアを叩かれ、大声で叫ばれ、チャイムだって何度も鳴らされ、普通の人間が気付かぬはずがない。
どれだけ一方通行が熱心に食事を用意していたところで、警戒して何らかのアクションを起こすはずだ。



端的に言えば、芳川桔梗は一方通行に間違えて殺されても不思議ではなかった。
芳川のフリをして自分や打ち止めを狙いに来た敵衆かもしれない。
そう判断した一方通行が自宅前で騒ぐ芳川を殺したとしても、別に何ともおかしくはなかった。
一方通行とは、芳川の知る一方通行とは悲しい事にそういう少年だ。

だが実際には一方通行は無防備に姿を晒し、自分だけならいざ知らず打ち止めまでもを安全な部屋の奥から連れて来た。
リードと四足歩行という異様な姿にさせ。


「――――キミは、……一体、何をしているの………?」


辛うじて芳川が尋ねられたのはそれだけだった。
声が掠れ体からは妙な汗が沸々と湧き、それを支える両足が覚束なくフラつく。


「だって、これなら安心だろォが。いつだって俺の手が届く、ずっとコイツを護れるぜ?」


何を馬鹿な事を言っていると聞かんばかりに、さも仰る意味が分かりませんという表情をした一方通行に芳川が戦慄する。
一方通行は分かっていない。
自分の行動の異常さを、まるで理解していない。

元々これまでに送ってきた生活の所為で倫理観の薄い少年ではあったが、少なくとも常識はあった。
良心だって、打ち止めという少女を通じてこれから学びとろうとしていた。
なのに、なのに一体どうしてこうなった?


「………最終信号を解放なさい………、一方通行………」


恐怖に凍りついた思考で、だがそれでも彼らを見守る大人として芳川は一方通行を説得する。
例え怒りにまかせて彼が自分を殺したとしても、彼がそれで間違いに気付いてくれれば構わない。


しかし、言葉は既に届かない。


「………駄目だ。駄目、だ……この手を放したら、今度こそコイツを失っちまう……だから駄目だ、駄目なンだよ………」


フルフルと首を振って否定するその姿は、まるで聞き分けのない子供だった。
買ってもらえない玩具を売場へと戻す事を拒む様に、一方通行は自分の足へと縋り付く打ち止めの手を強く握って放さない。


「………絶対に、駄目、なンだよォ………」


もう、見ていられなかった。




573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/03/21(月) 19:30:48.14 ID:nJc58NUz0



一方通行を説得するのには骨がいったが、最終的には
「最終信号にはウイルスコードの後遺症が残らないよう定期検診を受ける必要があるの。
 いくら医療知識があったとしても医療に関して絶対的な自信がある訳ではないでしょう、キミは」という言葉で納得してもらった。

診察室まで打ち止めと共に乗り込もうする彼を関係者以外が入れば彼女の治療に支障が起きると説明し、
冥土帰しが勤める病院に保護されている妹達に監視を頼んでいる間、芳川桔梗は電極を装着させた打ち止めの下を訪れた。


「あなたも辛いかもしれないけど、教えてちょうだい最終信号。
一体あなた達の間に何があったの?あなた達は、どうしてああなってしまったというの?」


一体彼らの下に何があったのか。
まともに話せる人間がいるとすれば、言語機能を補助させた彼女くらいのものだろう。


「……………ミサカが悪いの、って、ミサカはミサカは呟いてみる………」


当初は一方通行を庇っているのかと思った。
だが、続いた言葉に芳川桔梗は目を瞠る。


「遊びに行きたくて、勝手にお家を抜け出したの………それで変なお兄さん達に連れてかれちゃって、でもあの人が助けに来てくれて………
 凄く嬉しかった。人から与えられた安い命だけど、親身になって助けてもらえるだけの価値があるんだって、言葉だけじゃなく実感できたから………
 
 心の底から嬉しかったの。ミサカを迎えに来てくれたあの人は、凛としていて、とっても格好良かったの………
 だから、だからね………―――――――――」







「――――― 一方通行、終わったわよ」


診察室を出た芳川桔梗は、綺麗に元通りにした打ち止めを一方通行へと引き渡した。
余程心配だったのだろう。
顔面蒼白で駆け寄った一方通行は芳川から鎖のリードを受け取ると、泣き崩れる様に打ち止めを抱き締めた。


『もう一度会いたいなって、思っちゃったの。
 ずっと護ってもらえたら良いのに、ずっと一緒にいられたら良いのに、って。だから……―――――

 教えてあげたの。放っておくとミサカ、また勝手にどっか行っちゃうよ?危ない目にあっちゃうよ?って。
 目を見開いたあの人に、恐かったら手足縛って檻の中にでも入れておけば良いんだよって、そう言ったの。
 どうせ電極さえ奪っちゃえば、ミサカの意思なんか毛ほども関係ないんだから、って』


芳川桔梗は回想する。
『最強』と恐れられた、泣き方すら知らなかったであろう少年と。
人の手によって生み出された、誰からも手を差し伸べられた事のなかった少女と。


「――――――……もう絶対に、この手を放したりはしねェ。絶対にだ」


『ミサカが悪いの。ずっとミサカの隣に立って、護り続けてくれるあの人を ≪仕組んでしまった≫ んだから、
 ってミサカはミサカは邪魔しないでよ、と牽制しながら満面の笑みでヨシカワの干渉を拒んでみたり』




何故こんな事になってしまったのか。何故、こんな結末になってしまったのか。
芳川桔梗は回想し、そして


「これも一つの幸福の形なら、アリなのかもしれないわね」


唯一全てを知った上で、今日も今日とて甘くしかない自分を享受する。
私は優しくなんてない。
ただの甘い、一介の馬鹿な女なのだから。



574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/03/21(月) 19:31:34.67 ID:nJc58NUz0
どうしてこうなったはこっちの台詞だよ。なぜ最終的にヤンデレ一方さん×ヤンデレ打ち止めの怒濤コンボになったし。

も、もう>>549が打ち止め目線もみたいなんて言うからだからねっ!
んじゃ、ご読了ありがとウサギ!


575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海):2011/03/21(月) 19:34:27.14 ID:GU0mp3MAO
おつおつ
共依存通行止めが美味しすぎてやばい



578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2011/03/21(月) 20:16:14.76 ID:Rn8NwLDOo
文章が上手いのはわかるけど評価も共感もできない。
反吐がでるってのが正直な感想。



579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/21(月) 20:29:30.59 ID:WiuxDy3ho
>>578
読まなきゃいいのに…
俺は苦手なジャンルっぽかったから読めなかった



582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2011/03/21(月) 20:58:21.54 ID:Rn8NwLDOo
ごめん、出された物は食べる質なんだ。
それに対してなんらかの感動が得られたなら返答すべきだとも思うし。
もう書くな読ますななんて思わないし、そういう否定じゃないんだ。
自分はこういう人としての芯を崩すようなキチガイ話には上で書いたような感想が出るよって言いたかった。



583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/03/21(月) 21:05:21.25 ID:nJc58NUz0
>>582
いや、俺としてはそういう意見も有難い。
続きものだからってまともな注意勧告をしなかった俺が全面的に悪いし、
それこそ十人十色人によってボーダーラインは違うんだから、次から投下するときはどのレベルまでOKか、どういった注意が必要か、
否定的な意見や指導的意見があってこそ初めて分かるものだと思うからな。


584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2011/03/21(月) 21:07:27.01 ID:LbSrdiXvo
欝SSに>>578ってのは、ある意味褒め言葉だと思う。
>>582でも言ってるけど、「書くな、読めない」って言ってる訳じゃないし。



577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2011/03/21(月) 19:46:07.00 ID:LbSrdiXvo
好物過ぎて震えるぜ、乙




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禁書目録SS   コメント:24   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
5180. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/25(金) 13:00 ▼このコメントに返信する
大好物すぎてよだれが
5183. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/25(金) 13:19 ▼このコメントに返信する
続き書いてくれ...
5185. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/25(金) 13:49 ▼このコメントに返信する
えっ・・・嘘・・続きないの・・・?
5189. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/25(金) 14:58 ▼このコメントに返信する
続き書いてくれないかな……
5193. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/25(金) 15:57 ▼このコメントに返信する
さっきまで:キレイな一通さんとかwwwwwwテンション上がってきたwwwww

今:え…?
5194. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/25(金) 16:16 ▼このコメントに返信する
いやいや、素晴らしかったと思う。
勿論賛否あるだろうけど、それあってこその作品といえる
5196. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/25(金) 16:31 ▼このコメントに返信する
単に一方さんが病んだのかと思ったら、共依存になる様に打ち止めに病まされていたとは…
これは新機軸だわ…
5198. 名前 : 名無し@SS好き◆IY7bLZJE 投稿日 : 2011/03/25(金) 17:23 ▼このコメントに返信する
>「………駄目だ。駄目、だ……この手を放したら、今度こそコイツを失っちまう……だから駄目だ、駄目なンだよ………」
何かこんな感じのエロゲかギャルゲが合った気がするけど思い出せない
5199. 名前 : 名無しさん@ニュース2ちゃん◆- 投稿日 : 2011/03/25(金) 17:24 ▼このコメントに返信する
もっと。早く、もっと
5202. 名前 :  ◆eqP7eH0Y 投稿日 : 2011/03/25(金) 21:11 ▼このコメントに返信する
なんという俺得
5204. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/25(金) 21:24 ▼このコメントに返信する
>>No.5198

ICOの「この人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから」かな。

この狂気はいいな。
5207. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/25(金) 22:17 ▼このコメントに返信する
いいねいいねェ!
最高だねェ!
5209. 名前 : 名無し@SS好き◆VBuD5iCI 投稿日 : 2011/03/25(金) 22:41 ▼このコメントに返信する
打ち止めをダルマにしてしまえばずっと傍に居てもらえるよとか思った俺はもう駄目かもしれない


ちょっと一方さんに血流操作してもらってくる
5212. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/25(金) 23:14 ▼このコメントに返信する
通行止めはハッピーエンドが1番!だが・・・
有りだよ・・・全然有りだよ。
胸が痛むのに最後まで読んじまった
5218. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/26(土) 01:06 ▼このコメントに返信する
これはこれでハッピーエンドだと思う俺はもうヤバイ
5222. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/26(土) 02:18 ▼このコメントに返信する
本人達が幸せならアリだよなぁ……
ホント、片方が死んだらもう片方生きていけないんだろうな
てか、この状態なら番外さんすら殺しそうだ一方通行
5284. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/27(日) 23:24 ▼このコメントに返信する
沙耶の歌か・・・
5295. 名前 : 名無し@SS好き◆NsMuPDLA 投稿日 : 2011/03/28(月) 02:52 ▼このコメントに返信する
>>沙耶の歌か・・・
それもあるけど、戯言シリーズのいーちゃんと玖渚友にも通じると思う。
5297. 名前 : くぁws◆- 投稿日 : 2011/03/28(月) 03:17 ▼このコメントに返信する
沙耶の唄ってノベルもあんのか
5427. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/03/30(水) 23:12 ▼このコメントに返信する
こういう話は苦手だけど文学?よくわかんないけどそういう作品としてとして評価するんなら素晴らしいと思う

心理描写とかすっごい自然だし

才能を感じるww
5510. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/04/02(土) 15:24 ▼このコメントに返信する
たまには心を痛める話もいいもんだ
9500. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/07/18(月) 03:21 ▼このコメントに返信する

これはこれで・・・ありだな
45626. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2015/05/12(火) 20:13 ▼このコメントに返信する
六兆年と一夜物語に重ねて見えた
なんか・・・(泣)
45854. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2015/07/07(火) 20:37 ▼このコメントに返信する
何が出されたものは食べる質だよ。招かれてもないパーティに勝手に参加して食い散らかした挙句文句つけてるだけじゃねーか
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