1:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:27:59.19
ID:CRlIFFJDo
王国暦214年――
突如、魔界から人間界に、魔王が現れた。
魔王はその無尽蔵ともいえる魔力から、大魔法を次々繰り出し、人間界侵略を開始した。
2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:29:56.78
ID:CRlIFFJDo
「裂けよ、大地!」
魔王がこう叫ぶと、巨大な地響きとともに大地が激しく揺れ動く。
世界各地で地割れが発生し、大勢の人々が地の底に呑み込まれていった。
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:31:48.68
ID:CRlIFFJDo
「轟け、雷鳴!」
魔王の命を受け、たちまち闇よりも黒い雷雲が集まる。
雷雲からはおびただしい数の雷が落とされ、地上の生物を無差別に打ち砕いた。
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:33:42.79
ID:CRlIFFJDo
「燃え盛れ、火炎!」
膨大な熱量を誇る火炎が、村や町にばら撒かれる。
人や建物が無慈悲に焼き尽くされていく様は、まさに地獄絵図というべき光景であった。
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:36:00.04
ID:CRlIFFJDo
もちろん、人類とて手をこまねいているわけではなかった。
魔王を打倒すべく特別に鍛え上げられた戦士――「勇者」が、
国の全面的なバックアップを受けて、魔王に決戦を挑んだのである。
勇者の力は人の域を大きく超えており、誰もが彼ならば必ず……と勇者の勝利を期待した。
6:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:38:31.85
ID:CRlIFFJDo
ところが、いかに勇者といえど、災害の集合体といっていい力を誇る魔王に対しては、
あまりにも無力であった。
「フハハハ……裂けよ大地! 轟け雷鳴! 燃え盛れ火炎!」
揺れる大地に翻弄され、落雷に打たれ、攻撃は灼熱の炎によって阻まれる。
勝負にすらならない。
「強すぎる……!」
人間側の見積はあまりにも甘すぎたのである。
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:41:39.65
ID:CRlIFFJDo
打つ手がなくなりうなだれる勇者に、魔王があざけりの笑みを浮かべる。
「勇者とやら、無駄な抵抗もどうやらここまでのようだな」
「ぐっ……!」
「冥土の土産に、とっておきの魔法を見せてやろう」
「今まで以上の魔法があるというのか……!」
「出でよ!」
魔王の号令とともに、空に雷が走り、巨大な魔法陣が浮かび上がる。
「これは……召喚魔法!?」
8:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:45:37.42
ID:CRlIFFJDo
魔法陣から降臨したのは、魔王そっくりな魔族であった。
いや、正確には魔王よりも背は低く、頭髪は薄く、顔にしわがあり、服装も地味である。
そしてなにより、内包している魔力は魔王を遥かにしのぐ。
さらなる敵の登場に、勇者は愕然とする。
「こんな奴が控えていたなんて……! 世界は終わりだ……!」
「フハハハハ……絶望しろ、人間ども! 人間は今日、地上から消滅するのだ!」
次の瞬間、新たに召喚された魔族はこう叫んだ。
「バッカモーン!!!」
9:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:47:26.27
ID:CRlIFFJDo
「どこに行ったのかと探しておったら、こんなとこで悪さをしておったのか!」
魔族の拳骨が、魔王の頭に落とされる。
「ぐげっ!」
「このっ! このっ!」
召喚された魔族によって、魔王が一方的に打ちのめされる。
「お、俺はあんたにすごいとこ見せたくて……喜んで欲しくて……」
「こんなことして、わしが喜ぶと思ったか! このたわけが!」
勇者は二人のやり取りを、ただ呆然と眺めるしかなかった。
10:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:49:57.10
ID:CRlIFFJDo
魔族が勇者に頭を下げる。
「うちのバカ息子が、本当に申し訳ないことをした。
このバカが壊した物や傷つけた人々はすぐ元通りにしますゆえ、どうか許して下され」
「はあ……」
「それっ!」
魔族が手を振ると、魔王によって滅ぼされた建物や自然はたちまち元に戻り、
怪我人は回復し、命を奪われた人々も蘇った。
「大量の死者を現世に戻したから、天界も混乱しておるだろう。
後で菓子折りでも持って、神の奴にも謝りに行かねばならんな……」
11:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:52:17.09
ID:CRlIFFJDo
全てを魔王侵略前の状態に戻した魔族は、魔王の首根っこを乱暴に掴んだ。
「さあ、来い! 二度と異世界に悪さできんよう、性根を叩き直してやる!」
「ご、ごめんなさい、お父さん! 許してぇ!」
「数千年はお仕置きするからな! 覚悟しておけ!」
「ひええええっ……!」
魔王の悲痛な叫び声が消えたかと思うと、二人の姿は人間界から影も形もなくなっていた。
13:
◆mcxM92m71w 2017/02/14(火) 00:55:09.39
ID:CRlIFFJDo
かくして、経緯はともかく平和は戻った――
魔王がいなくなった影響か、久しぶりに澄み切った青空を眺めながら、勇者はこう呟いた。
「地震よりも雷よりも火事よりも恐ろしいのは、親父だったか……」
― END ―
12:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 00:52:27.63 ID:wleecTeTo
なるほどやられた
14:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/14(火) 01:10:29.42 ID:/LxhRKfBo
良いオチだ
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1486999678/
- 関連記事
-
Amazonの新着おすすめ
おすすめサイトの最新記事