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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/11/01(日) 19:56:53.71
ID:eKWbNwFOO
「やぁ、キョン」
過ごしやすい秋の休日は惰眠を貪るのに最適な環境であるが、そんな日に限って来客が訪れるのがこの世の常であり、その日、寝ぼけ眼を擦りながら呼鈴に応じて玄関の扉を開けた俺は、清々しい秋晴れを背景に佇む友の姿に違和感を覚えた。
「なんだ、佐々木か」
「なんだとは随分なご挨拶だね」
「気持ちよく寝ているところを起こされたら誰だって文句のひとつくらい口にするさ」
「やれやれ。どうせそんなことだろうとは思っていたが、顔ぐらい洗ってから出迎えて欲しかったものだよ。あと、その寝癖もね」
いつものように男みたいな口調で俺に接する佐々木であったが、その装いは近頃めっきり涼しくなってきた気候に合わせて、柔らかなアイボリーの色合いの少し丈の長いワンピースの上に、茶色いカシミヤのカーディガンを羽織っていて、なんだか大人びて見えた。
「とりあえず、上がれよ」
「おっと。その前に、今日の僕を見て何か思うところはないかい? よく観察したまえ」
立ち話もなんだから家に上がるように促すと待ったがかかった。たしかに違和感はあった。
大人びた私服は常日頃の落ち着いた佐々木のイメージとマッチしている。では、なんだ。
「うーむ……さっぱりわからん」
「まったく、君は本当に女泣かせだね」
そう言う佐々木であったがさほど傷ついた様子が見受けられなかったので別に聞き流しても良かったのだが、一応、こう返しておく。
「前髪上げて丸見えのおでこが、見ていてとても寒そうだ。風邪を引いちまうぜ?」
すると佐々木は上げた前髪の髪留めを弄りつつ、くつくつと喉の奥を鳴らして嬉しそうに笑った。やれやれ。嬉しそうでなによりだ。