1:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/28(日) 22:55:13.00
ID:DeC4qcfW0
「…………それじゃあ、例のプロジェクトも終わったことだし! 今夜はみんなで飲みにでも行くか!?」
「おっ、係長! いいですねえ」「俺、渋谷でうまい焼肉の店知ってますよ!」
「そうは言うがな、お前の言う店は薄汚すぎるんだよ!」「そーそー……ね、あたしオイスターバーとか行きたいです!」
「牡蠣か、いいな! この時期は岩牡蠣がうまいからなあ――」
男「――女ちゃんも、一緒にどう?」
女「……いえ、私は遠慮させていただきます。ちょっと今夜は、用事があって」
男「……そ、っか。ごめんね。それじゃ、また」
女「ええ、また明日。…………」
「女さん来ないの?」「ああ、用事があるらしくて――」「なあんだ、残念だなー」
「ねえねえ男くん、この間の話の続き、聞かせてよ!」「ああ、栃木の話? そういや言いそびれてたな、あれは――」
女「…………………ふー…………………」
2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/28(日) 23:00:12.33
ID:DeC4qcfW0
――――――ツギハ-……シンジュク-……シンジュク-…………
女「………………」
女「…………」
女「…………………………はあ」
プシュー……オオリノオキャクサマハ…………
女「………………」カツカツ
女「……………………」
……ピッ……ピンポーン……………
女「…………」
女「……………」カツカツ
女「……すみません。入場した時、ちょっとうまく行かなかったみたいで」
「――かしこまりました。ええっと……どちらからお乗りになられましたか?」
女「大久保からです。定期の圏内です」
「かしこまりました。……はい、これで問題ありません」
女「すみません、ありがとうございました。……」
女「…………」テクテク
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/28(日) 23:08:36.08
ID:DeC4qcfW0
……ガヤガヤ……デサー……………ウッソォ!?…………ソレハ……
――……メグマレナイ……ドウカ……アルキスマホニ…………
女「………………」テクテク
女「……………………」テクテク
「今夜のお店はお決まりですか!?もしよろしければ――」
女「いえ。……結構です」
女「………………………」テクテク
女「……………………………」テクテク
女「……………………………………」テクテク
女「…………」
女「ここ、か」
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/28(日) 23:24:12.50
ID:DeC4qcfW0
女「…………」
女「…………電話、忘れてた」
女「…………馬鹿だな、私」
女「……はい。はい。……ええっと……120分で」
女「場所は……新宿の、――――ってホテルで」
女「はい。それじゃあ、この……チアキ、って人で」
女「……そうですね……初めてなんですけれど、気をつけておくことって、ありますか」
女「…………わかりました。ありがとうございました、よろしくお願いします。はい、はい……失礼します」
女「……………」テク、テク
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/28(日) 23:29:34.09
ID:DeC4qcfW0
「いらっしゃいませ。お好きなお部屋のパネルをタッチしてください」
女「……」ピッ
「このお部屋でよろしければ――かしこまりました。フロントカウンターまでお越しください」
女「…………」
フロント「はい、いらっしゃいませ。ご宿泊ですか、ご休憩ですか?」
女「ええっと、休憩で」
フロント「かしこまりました。このお時間ですと、12時以降は宿泊となり、延長料金となってしまいますので、お気をつけ下さい」
女「はい、わかりました」
フロント「――お連れの方は、後ほどいらっしゃいますか?」
女「はい」
フロント「それでしたら、扉の方はオートロックとなっております。お気をつけ下さい」
女「わかりました。ありがとうございます」
フロント「ご利用ありがとうございます、ごゆっくりどうぞ」
6:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/28(日) 23:31:38.09
ID:DeC4qcfW0
女「……………………」テクテク
女「…………」ガチャ
女「…………………」
女「……………」ポスッ
女「……何して、待ってよう」
女「…………身体とか、洗っといたほうが、いいのかな」
女「………………」
女「…………こういうところで脱ぐのって、何だか恥ずかしいな」
女「………………………」
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/28(日) 23:33:51.14
ID:DeC4qcfW0
ジャージャー……
女「……いいつでもー、さーがしているよー……どっかにー、きーみーのすがたをー……」
女「むかいのホーム、路地裏の窓、こんなとこにいるはずもないのにー……」
女「……………」
女「…………………」
女「…………」キュッ
女「……」ガチャ
女「…………あと、5分くらいか」
女「本当に、来るのかな」
女「……来るよね。お仕事だもんね」
8:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/28(日) 23:39:22.83
ID:DeC4qcfW0
女「………髪、乾かしといた方がいいかな」
カチッ、ブォーン…………
女「……テレビなんて、見るもんないしな」
女「…………」
女「………………」
女「……」
女「…………」
――――――こん、こん
女「!」
「お待たせしましたー……。――――のチアキです、申し訳ないんですけれども、開けていただけませんかー……?」
女「…………はっ、はい!」
女「…………」ドクン、ドクン
女「……………」ドクン、ドクン、ドクン
女「…………!」ガチャッ
女「――――――え」
9:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/28(日) 23:46:17.85
ID:DeC4qcfW0
女「……あの、もしかして」
女「……あー、ちゃん……?」
風俗嬢「…………さな、ちゃん?」
……バタン
女「……何年ぶり、くらいかな」
風俗嬢「……高校以来、だから。もう、8年くらいにはなるかな」
女「………………」
風俗嬢「そんな、気ぃ使わなくてもいいよ。もっとさ、気楽にさ、ね?」
女「……無茶言わないでよ」
女「……ホームページの写真、モザイクかかってたから、分かんなかったよ」
風俗嬢「ふふふ。これでも結構人気なんだよ? あたし」
10:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/28(日) 23:50:31.22
ID:DeC4qcfW0
風俗嬢「……まさか、さなちゃんに呼ばれるとはねー」
女「……ドア越しに聞いた時、まさかとは思ったけど」
風俗嬢「まさかまさかが罷り通っちゃうんだもんなあ。不思議だよね」
女「…………そう、だね」
女「………………」
風俗嬢「…………ねえ」「……あたしが言うのも、なんかさ、アレだけどさ」
風俗嬢「………………さなちゃん、奥手だよね。昔っから、変わってない」
女「……うん。そうかも、ね」
女「……覚えてる? 琢磨くんのこと」
11:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/28(日) 23:59:05.53
ID:DeC4qcfW0
風俗嬢「覚えてますとも! や、あの時は悪いことしたよ。ごめんね、さなちゃん」
女「いいの。……二人とも、同じ人が好きだって知った時は、驚いたし」
女「あーちゃんのことが、わかんなくなった」
風俗嬢「どんな風に?」
女「全部。いつもニコニコのあーちゃんが、急に怖くなったし」「わざと意地悪なことされてるんじゃないか、って」
女「あーちゃんがたっくんと話してる時、凄く憎らしかったような気もするし」「でもそれがたっくんの幸せなら、それを許すべきだとも思ったし」
女「……そうして、ふっと気付くの。好きな人のために友達を蹴落とそうとする私って、こんなにも汚かったんだって」
女「毎晩、ベッドで泣いてた。もっと私は綺麗だと思ってたのに、って」「人並みに私は綺麗なはずだったのに、って」
女「……だから結局、全部嫌になった。何より、あーちゃんとまた、友達でいたいと思ってたから」
風俗嬢「うー、ありがたいなー、ホント……でも人間って、そんなもんだよねえ」
風俗嬢「嫉妬ってさ、気づくのが一番遅い感情だと思うんだよね。自分が嫉妬してる、って思いたくないから」
12:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/29(月) 00:06:50.26
ID:CyJKOErTO
女「……そんなこと、ないよ。あーちゃんは、私みたいに、汚くなんて」
風俗嬢「やーやー、んなことないって。部活の引退間際だったじゃん? 結局、最後の大会の前にさなちゃん辞めちゃったし」
風俗嬢「多分さなちゃんあの後勉強漬けだったから、知らないと思うけどさ」
風俗嬢「たっくんとあたし、あの後すぐ別れちゃったんだよねえ」
女「……え、っ……?」
風俗嬢「や、取らぬ狸の皮算用って奴? 幻滅しちゃったのよ。イメージ清らかすぎたのね、きっと」
風俗嬢「向こうも同じらしくてさー。もう何から何まで全ッゼン噛み合わないの」
風俗嬢「やあでもあれは向こうにも問題あるって。昼ごはんのお弁当二人分作って持ってくるんだよ!? しかも毎日!」
女「…………羨ましいなー」
風俗嬢「えー!? もっとあたしは適度な距離感が良かったのよ。愛重すぎよ、ホント」
風俗嬢「……そういえば、女ちゃんはどこの大学行ったの?」
女「……一浪して、早稲田の商学部」
風俗嬢「わ、すっごいじゃん! 今はどこで働いてるの?」
女「普通のOLだよ。システム系の仕事やってる」
風俗嬢「かっこいいじゃん!! え、プログラミングとかできるの!?」
女「……ふふ。まあ、少しだけどね」
女「…………あーちゃんは?」
13:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/29(月) 00:17:52.59
ID:CyJKOErTO
女「……あ、っ」
風俗嬢「や、気にしないで気にしないで! あの流れならあたしだって聞いちゃうって」
女「でも……」
風俗嬢「……いいのいいの。」
風俗嬢「なまじっか成績だけは良かったからさ、推薦で立教の観光学部行ったのよ」
風俗嬢「でも、正直あたし優等生ではあったけど、勉強とか嫌いなタイプでさ」
風俗嬢「……単位落としまくりで、大学もサボりがちになって」
風俗嬢「アキバ歩いてたら、悪い男にひっかかったのが運の尽き。そのまま地下アイドルデビューよ」
女「…………」
風俗嬢「大学も留年して、推薦だからそのまま退学になって。怒られたなー、タナTからお叱りの電話まで貰っちゃって」
風俗嬢「でもライブはそこそこ上手くいってて、調子に乗って出したCDシングルもそこそこ売れてさ」
風俗嬢「……それで、おしまい。後はもう鳴かず飛ばず。事務所からも、家からも勘当されちゃった」
風俗嬢「見た目だけは良かったからさ。逆ヒモって奴かな、駄目な男どもの間を渡り歩いて」
風俗嬢「……このままじゃ駄目だって、真人間にならなきゃって。普通の仕事も頑張ろうとしたけど、続かなくて」
風俗嬢「5人目くらいの男だったかな。……避妊しなかったせいで、堕ろせって言われて。金はお前が払えって」
風俗嬢「あんたが払えって言ったら、お腹蹴られたわ。もうやってらんなくなったから、ピル飲んで出てった」
女「…………それ、で」
風俗嬢「そ。男嫌いになっちゃったのかな、気付けばレズビアン専門の風俗嬢よ」
14:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/29(月) 00:36:41.20
ID:CyJKOErTO
風俗嬢「……さて! 話すだけ話したから、今度はさなちゃんに話してもらおっかな?」
女「え、っ……や、そんなこと」
風俗嬢「どーしてまたこんな店を選んだのかなー? ふっふふ、恥ずかしがらなくてもいいんだよ?」
風俗嬢「それともなあに……? 言えないくらい恥ずかしーのかなー? んふふっ……」
女「やあ、んっ……! やっ、ふぁあ、耳舐めないでっ、胸触っちゃっ……」
風俗嬢「やめないって言ったらー? このまま始めてもいいんだよー……?」
女「んう、わかったっ、わかったからあ……話す、話すから、……」
風俗嬢「んふふー。さなちゃんらしからぬ素直さ、よろしー!」
風俗嬢「……でも。これからたっぷり可愛がってあげちゃうのに。先が思いやられるなー……ふふっ」
女「…………っっ……もう。強かなんだからなー……昔から」
風俗嬢「お褒めにあずかり光栄でーす!」
女「……大学から?」風俗嬢「もちろん!」
女「…………面白いことなんて、何もないよ。何も変わらない」
女「大学に入ったら、こんな私も変わるかと思った。変われるかな、って思った」
女「でも、孟母三遷なんて大ウソ。本当に、惰性だった」
女「彼氏は出来たよ。同じサークル。セックスだってした」
女「はっきりとは別れなかったから、今でも一応付き合ってるのかな」
女「……トプ画は、知らない女の人とのツーショットだけどさ」
女「頑張る努力なんて、何もしてこなかった。私は、そういう人間だった」
女「ただ夢を見て、ぼけっと生きてれば、いつか夢は叶うだろうって――ないしは、忘れられるだろうって」
女「……気付いたらもう20半ば。何のために生きてるのか、分からなくなってきた」
女「でも、もちろん死ぬ勇気もない。こうやってズルズルぬるま湯に浸かってるのって、やっぱり気持ちいいから」
女「……今、好きな人がいるんだ。職場の同僚」
風俗嬢「………………」
女「…………たっくんの時と同じ。憎らしいと思うようには、ならなくなったけど」
女「本音を言う勇気はないの。それで、なんとなくイライラしてたの」
風俗嬢「それで何かを変えたくて、あたしのとこに電話したの?」
女「……そう。でも結局、したのは昔話だけ……虫のいい話なんだよね。変わろう変わろうと思ってるくせに」
女「他人にそれを頼ってちゃ、世話はないよ。……自分を変えられるのは、自分だけなんだ」
女「誤解しないでね。気にしなくてもいい。きっとあーちゃんじゃなくても、同じことだったから」
風俗嬢「……ふうん」
風俗嬢「でも、さ」
15:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/29(月) 00:49:04.25
ID:CyJKOErTO
風俗嬢「――――――あたしが言うのも、変な話だけどさ」
風俗嬢「自分を変えられるのは、他の誰かしかいないと思うよ、あたし」
ちゅ、っ
女「…………ん、ふっ……………!!」
風俗嬢「ん、ちゅ、……ちゅっ……ちゅ、ん…………」
風俗嬢「……………ぷ、あ、はっ」
女「…………はーっ、はーっ…………!!」
風俗嬢「……あたしさ、ずっと待ってたのかもしれない」
女「……っ、…………?」
風俗嬢「あたしを変えてくれる人のこと。白馬の王子様?」
風俗嬢「……ま、いいや。だからさ」
風俗嬢「素直になってよ、さなちゃん。ずるいよ、さなちゃんは」
風俗嬢「昔っからだんまりでさ、口数も少なくてさ、幼馴染のはずなのに、本音の一つも言ってくれない」
風俗嬢「あたしはずっと、……や、あたしも大概嘘つきだなあ。ごめんね、さなちゃん」
女「……なに、を、……?」
風俗嬢「……簡単なおはなし。素直になってほしいの、さなちゃんに」
風俗嬢「あたしも素直になるからさ。……結局あたし、一番大きな所から逃げ続けてきたんだ」
風俗嬢「ずっと言うのが怖かった。だから誤魔化してきた。周りの人も、さなちゃんのことも、自分のことだって」
風俗嬢「ある意味、さなちゃん大正解だよ。あたし意地悪してた。好きでもない人のことを好きなフリしてさ、さなちゃんに見せつけてやればさ」
風俗嬢「さなちゃんきっと、男なんて嫌いになると思ってた。――でもそしたら、手が届かなくなるまで離れてっちゃうんだもん」
風俗嬢「信じてくれなくてもいいけどさ。受け入れてくれなくてもいいけどさ。お願い。これだけは言わせてよ」
風俗嬢「大好き。さなちゃん」
16:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/29(月) 00:58:07.58
ID:CyJKOErTO
女「…………結局、宿泊コースになっちゃったね」
風俗嬢「店長に連絡も忘れてた。大目玉だ、あはっ」
女「……ごめんね。料金の倍、払うから」
風俗嬢「もー! そういうところ重いよ、さなちゃんは」
女「……でも。払わないと、私の気が収まらない」
風俗嬢「……もー……しょーがないなー……ん、そうだ」
風俗嬢「ね。お嫁さんごっこ、しよう?」
女「……なにそれ」
女「……なに、私とあーちゃんでやるの? どっちがお嫁さんなのよ、それ」
風俗嬢「どっちだっていいよ。ジェンダーフリーって言うじゃん」
風俗嬢「ほら、結婚指輪みたいにさ。ご祝儀でもいいけど」
風俗嬢「シチュエーションプレイの追加料金ってなら、あたしも受け取れるよ」
女「…………仕方ないなあ。自分からプレイの希望をする風俗嬢が、どこにいるのよ?」
風俗嬢「ここにいますとも! それを受け入れちゃうお客さんだって、ここにいるしさ」
女「はいはい。……それじゃ、ええっと」
風俗嬢「……んー。さなちゃんはあたしに、永遠の愛を誓いますか?」
女「……誓います。あーちゃんは私に、永遠の愛を誓いますか?」
風俗嬢「誓います! ……それじゃあさ」
風俗嬢「誓いのキス、しよっか」
17:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/29(月) 01:08:17.79
ID:CyJKOErTO
風俗嬢「…………それじゃ、またね。楽しかったよ、さなちゃん」
女「……私も、楽しかった。……同じ性別同士でも、あんなに気持ちよくなれるんだね」
風俗嬢「そりゃあたしが百戦錬磨ですもの。あたしが女の初めてで、さなちゃん幸せ者よ?」
風俗嬢「……さなちゃん、眼鏡かけると、かわいいよね」
女「……あーちゃんも、金髪、似合ってるよ」
女「…………それじゃあ、また」
風俗嬢「うん。じゃあね、さなちゃん」
女「――――――待って」
風俗嬢「……駄目だよ、さなちゃん」
18:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/29(月) 01:11:02.37
ID:CyJKOErTO
風俗嬢「さなちゃんはさ、変われたかもしれない」
風俗嬢「でも、あたしはダメなんだ。変われないよ」
風俗嬢「人間は、他の誰かにしか変えてもらえない。でも」
風俗嬢「他の誰かがどうにかしても、どうにもならない人っているんだ」
風俗嬢「――あたし、さなちゃんに、迷惑かけらんないよ。それに、さ」
風俗嬢「さなちゃんの中にいるあたしは、いつまでも」
風俗嬢「お嫁さんごっこの花嫁で、いてほしいから」
女「……………………」
風俗嬢「……じゃあ、本当に」「さようなら、さなちゃん」
女「――――――勝手なんだから、もう、本当に、っ」
女「それなら、せめて――――また、呼ばせてもらうからっ……!」
女「お客さんとしてでも、都合のいい金づるでもいい……あーちゃんが、変わるまで、何度だって……!」
女「何度だって、何度だって、呼ぶからねっ!! いくらだって出すわ、何度だって会うわ――断ったりしたら、許さないから!!」
風俗嬢「…………………」
風俗嬢「……うん。わかった」
風俗嬢「またのご指名を、お待ちしております。お客さま」
END
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