1:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 00:26:19.71
ID:FsG6kgHho
― 豪邸 ―
主人「やれやれ、やはりコーヒーを飲まないと目覚めがよろしくない」
主人「メイド君、コーヒーをいれてくれたまえ」
主人「とびっきり濃いヤツをね」
メイド「かしこまりました、ご主人様」
2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 00:30:19.86
ID:FsG6kgHho
私のご主人様のもとへは、しょっちゅうお客が訪れます。
紳士「それでは、よろしく頼むよ」
主人「分かりました。ただちに手配しましょう」
それも、ひと目で“大物”と分かる人ばかり……。
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 00:34:32.48
ID:FsG6kgHho
なぜなら、ご主人様のお仕事は――
主人「やれやれ……近頃はしょっちゅう任務が舞い込むな」
主人「…………」ピッピッピッ
主人「全メンバーに告ぐ。30分以内に集合せよ」
政府公認の“正義の殺し屋”だから。
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 00:38:00.27
ID:FsG6kgHho
といっても、ご主人様が手を下すことはなく、
主人「今回の任務について説明する」
狙撃手「はいっ!」
ナイフ使い「はいっ!」
ガンマン「はいっ!」
ガスマスク「はいっ!」シュコー…
実行するのは部下の方々で、ご主人様は指揮をとる立場にあります。
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 00:42:46.52
ID:FsG6kgHho
主人「――というわけだ」
主人「このグループを放っておけば、国家の機密情報を盗まれるおそれがある」
主人「24時間以内に――殺(や)れ」
狙撃手「了解!」
ナイフ使い「了解!」
ガンマン「了解!」
ガスマスク「了解!」シュコー…
四人はいずれも、世界トップクラスの殺人術の使い手なのです。
6:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 00:46:25.30
ID:FsG6kgHho
ですが、私に対しては四人とも、とても優しく――
狙撃手「キミのハートを狙撃したいねぇ、うんうん」
メイド「もう……からかわないで下さいっ!」
ナイフ使い「ほら、リンゴの皮むき、すげぇだろ?」スルスル…
メイド「わぁっ、私よりずっとお上手です!」
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 00:49:52.85
ID:FsG6kgHho
ガンマン「一発撃ってみるかね? なにごとも経験ってやつさ」チャッ
メイド「いえいえっ! 私は結構ですっ!」
ガスマスク「あ、これ、こないだの任務でフランス行った時のお土産」シュコー…
メイド「ありがとうございます!」
とても殺しのプロフェッショナルだなんて思えませんけど。
8:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 00:53:44.46
ID:FsG6kgHho
一度、興味本位で、ついこんな質問をしてしまったことがあります。
狙撃手「え? “使われる立場”なことに不満を感じたことはないのかって?」
メイド「ええ、あなたがたってみんな“凄腕”なんですよね? なのに……」
狙撃手「そりゃあね、大したことない奴に使われるのはゴメンだよ」
狙撃手「ただし、大したことある奴に使われるのなら、話は別さ」
狙撃手「おそらくオレたち四人がかりでも、キミのご主人様には勝てないだろうからね」
この答えにはびっくりしてしまいました。
ご主人様はとってもすごい人なのです。
9:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 00:55:54.67
ID:FsG6kgHho
そして、ご主人様は国の平和を守るため、忙しい毎日を送ってらっしゃるのです。
主人「ああ、ヤツはこの国の裁判にかけることは不可能だ」
主人「ならば、手は一つしかない」
主人「殺れ」
10:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 00:59:49.05
ID:FsG6kgHho
主人「うむ……あの新興宗教団体を放っておくのは危険すぎる」
主人「今のうちに、指導者を消し、芽を摘んでおくべきだろう」
主人「殺れ」
主人「この男は名士になりすましているが、実は某国のスパイだ」
主人「かといって表立って糾弾することは難しい。つまり、我々の出番ということだ」
主人「殺れ」
主人「この外国人に国外に逃亡されると、非常に厄介なことになる」
主人「なんとしても、我が国を出る前に――」
主人「殺れ」
11:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 01:04:18.92
ID:FsG6kgHho
ご主人様の指令『殺れ』が飛ぶたび――
狙撃手「標的確認」ズキューン…
ナイフ使い「標的確認」シュバッ
ガンマン「標的確認」パシュッ
ガスマスク「標的確認」ブシュゥゥゥゥゥ…
狙撃手さんたちは、世界各地に飛び、“仕事”をこなすのです。
12:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 01:07:21.32
ID:FsG6kgHho
ですが、ある日のこと――
主人「ふぅ、やれやれ……」
メイド「いかがなされましたか? ご主人様」
主人「いや……ふと、自分の仕事について考えていたんだ」
13:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 01:10:58.67
ID:FsG6kgHho
主人「政府公認の“正義の殺し屋”などと、うそぶいてはいるが」
主人「結局のところ、やってることは人殺しだ」
主人「昔は自らの手を血に染め……今は信頼のおける部下にそれをやらせている」
主人「もちろん、間違ってることをしてるなどとは、微塵も思っていないが――」
主人「それでも時折、自分はなんのためにこの仕事をしているのか、と」
主人「深く考え込んでしまうことがあるのだよ」
メイド「ご主人様……」
14:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 01:14:27.85
ID:FsG6kgHho
メイド「私は無知ですし……立場上、ご主人様のお仕事を、肯定も否定もできません」
メイド「ですが、一つだけいえることがあります」
主人「?」
メイド「私はご主人様のご命令があれば、いつだってコーヒーをいれます!」
メイド「とびっきり! 濃いヤツを!」
主人「…………」
主人「ぷっ……ハッハッハッハッハッハ!」
メイド「え、え、え……?」
15:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 01:18:37.02
ID:FsG6kgHho
主人「ふふふ、すまない。しかし、こんな笑い方をしたのは本当に久しぶりだよ」
主人「ありがとう……君を使用人にして本当によかった」
主人「私が“素の自分”でいられるのは、君といる時だけだ……」
メイド「ご、ご主人様……」ドキン…
カサ…
16:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 01:23:52.74
ID:FsG6kgHho
主人「――ん?」
メイド「あっ、あれは! 申し訳ありません! どこかから入り込んで――」
カサカサ…
17:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 01:27:41.42
ID:FsG6kgHho
主人「うわぁぁぁぁぁっ!!!」
メイド「!?」ビクッ
主人「殺れぇぇぇっ! 殺れぇぇぇぇぇっ! お願いぃぃぃぃぃっ!」
主人「あぁぁぁ……私は“G”がどうしてもダメなんだぁぁぁぁぁっ!」
主人「気を張ってない時に突然出てくると、怖くてたまらないんだぁぁぁっ!」
メイド「了解ですっ!」
メイド「てやっ!」バシッ
18:
◆HGWNVH9sqE 2015/09/22(火) 01:30:22.47
ID:FsG6kgHho
メイド「もう大丈夫ですよ、ご主人様!」
主人「あ、ありがとう……。やれやれ、私としたことが取り乱してしまった……」
私、とんだ大失敗をしてしまいました。害虫対策はもっと徹底しないといけませんね。
だけどおかげで、ご主人様の意外な一面を見ることができました。
~おわり~
21:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 08:11:07.05 ID:MNfHcBMAO
面白い!部下達も良いキャラしてる
もっと色んなエピソードがありそうだよね?
19:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/22(火) 02:15:42.70 ID:gsVOLVEbo
おつ
第二話はよ
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