( ^ω^)は十回死ぬようです

2010-05-29 (土) 07:52  ( ^ω^)(´・ω・`)('A`)   0コメント  
1 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:40:49.88 ID:irIHG3qL0
夢――、だ。

なぜなら僕は何も無い空間に、それこそヘリウムガスが詰まった風船のようにぷかぷかと浮いているのだから。

「ここは、どこだお……?」

(*゚ー゚)「どこでも、ないところよ」

「あなたは……誰だお……」

(*゚ー゚)「そんな事、どうだっていいわ」

声が綺麗な人だ、その姿は霞んでいて見えないが、そこにいる事だけはわかる。

(*゚ー゚)「これから私は、あなたを殺すわ」

「……はい?」


この発言は想定の範囲外だ。

(*゚ー゚)「これからあなたを十回殺すので、一回生き延びて。 それがあなたの勝利条件」

勝利条件って、僕は誰と戦うんだ。
その言葉を最後に彼女の声は聞こえなくなり、僕は漂い続ける空間へと戻った。
あぁ、心地いい。目が覚めたらきっとパンツの中は白い洪水だ。

それが、地獄の一日の始まりだった。




( ^ω^)は十回死ぬようです。



2 名前:VIP皇帝 :2006/12/12(火) 00:41:32.58 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)「やっぱ夢だったお」

目が覚めると、そこは普段から変わらぬ自分の部屋だった。
ヲタグッズ、ポスター、フィギュア、抱き枕に腐女子御用達のBLノベルまである。

( ^ω^)「今日も健やかな目覚めだお、月曜じゃなければもっと良かったお」

とはいえ、別に内藤ホライゾン、仲間内からはブーンと呼ばれる彼はひきこもりではない。
むしろ気の合う仲間達と会う事の出来る学校が楽しみですらあった、勉強しに行っているわけではないのが悲しいところだが。
手早く荷物をまとめ(学校で読むラノベと漫画)、制服に着替え(しわだらけ)、朝食を食べる為に1階へと降りる。

( ^ω^)「おはようだおー」

ξ゚⊿゚)ξ「五月蝿い黙れ耳が腐る」

晴れやかなブーンとは対象的に、物凄く不機嫌そうな顔をしているのは一つ下の妹、ツンである。
言葉遣いが酷いのはいつものことなので、ブーンは特に気にせず席につく。

J( 'ー`)し「おはよう、ご飯できてるからちゃっちゃと喰ってとっとと行ってきなさい」

( ^ω^)「目玉焼きの目玉が無いお」

J( 'ー`)し「ごめん、食べた」

( ^ω^)「おまwww」


3 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:42:23.63 ID:irIHG3qL0
J( 'ー`)し「ああ、カーチャン今日はタッキーのコンサート行かなきゃいけないから夕食はピザでもとって食べてなさいな」

しかたなくブーンはバターの塗られた食パンと目玉の無い目玉焼きを口に運ぶ。

ξ゚⊿゚)ξ「これってただの焼きなのかしら……」

( ^ω^)「知らないお……」

数分後、なんだかんだで綺麗になった皿を流し台に運び、家を出るまで数分前、といった時間になった。

ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうだアニキ」

( ^ω^)「お?」

ξ゚⊿゚)ξ「悪いんだけどさ、これ返しておいてくれない?」

そう言ってツンが取り出したのは一冊の本だった。


4 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:42:53.25 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)「そう、そのまま飲み込んで……僕のエクスカr」

帯を読み上げるブーン。
かいしんのいちげき!

ξ゚⊿゚)ξ「口に出すな」

( 。ω。)「おま……ここは……僕のレヴァンティンが折れ……」

ブリッジしながら悶えるブーンを横目に、ツンは玄関に向かう。

ξ゚⊿゚)ξ「んじゃよろしくねー、いってきまーす」

扉が閉まる音がする、ツンは出て行ったのだろう。

( ^ω^)「ちょ、図書館経由だと遠回りになるのに……」

ブーンのかよう高校と、ツンのかよう中学は距離にして同じ様なものだが、位置が正反対だった。
そして図書館は高校寄りにあり、ツンは普段からそこを利用している。

( ^ω^)「まあしょうがないお、一肌脱いでやるお」

へし折れたレヴァンティンを内股で擦りながら、ブーンも家を出た。


5 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:43:44.09 ID:irIHG3qL0
…………。

痛い、痛い、痛い、痛い。
背骨は間違いなく折れている、でなければ、燃え盛る炎の中、セルフフェラの体勢なんかできるわけがない。

('A`)「ブーン!! ブーン!! おいふざけんなよ!! おい!!」

目の前で友人が泣いている。
なんだ、僕って結構幸せ者じゃないか、泣いてくれる奴がいるなんて。
でもそこに居ると危ない、ガソリンに引火した炎はまだ広がり続けてるんだから。

(  ω )「……………………ぁ」

声が出た、奇跡だ。
伝えなくては、自分の今を。

(  ω )「ド……ク……僕……は……」

('A`)「喋るな! 今救急車呼んだから! 糞ッ、こんな事のために携帯買ったんじゃねえぞ!」

ドクオは屈みこんで、物理的に不可能な形でそこに倒れている僕の手を握っていた。


6 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:44:00.03 ID:irIHG3qL0
(  ω )「死……で……また……」

('A`)「喋るなって! 死ぬな! お前が死んだら俺はまた引きこもるぞ! 次はお前が家に来てくれたって家にいれてやらねえぞ!」

(  ω )「聞い……て……、次……」

('A`)「え?」

その声の真剣さが、死に怯えている物ではない、希望を持ったものであると、ドクオは無意識に感じ取ったのだろうか。
握った手の力が抜ける、それでもその声ははっきり届いた。
荒唐無稽で、言い出せなかった話を、彼は信じてくれるだろうか。
ただ、伝えたい言葉を、言う。


「次の僕を 助けてくれお」



…………。


7 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:44:28.71 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)「やっぱ夢だったお」

目が覚めると、そこは普段から変わらぬ自分の部屋だった。
ヲタグッズ、ポスター、フィギュア、抱き枕に腐女子御用達のBLノベルまである。

( ^ω^)「今日も健やかな目覚めだお、月曜じゃなければもっと良かったお」

とはいえ、別に内藤ホライゾン、仲間内からはブーンと呼ばれる彼はひきこもりではない。
むしろ気の合う仲間達と会う事の出来る学校が楽しみですらあった、勉強しに行っているわけではないのが悲しいところだが。
手早く荷物をまとめ(学校で読むラノベと漫画)、制服に着替え(しわだらけ)、朝食を食べる為に1階へと降りる。

( ^ω^)「おはようだおー」

ξ゚⊿゚)ξ「五月蝿い黙れ耳が腐る」

晴れやかなブーンとは対象的に、物凄く不機嫌そうな顔をしているのは一つ下の妹、ツンである。
言葉遣いが酷いのはいつものことなので、ブーンは特に気にせず席につく。

J( 'ー`)し「おはよう、ご飯できてるからちゃっちゃと喰ってとっとと行ってきなさい」

( ^ω^)「目玉焼きの目玉が無いお」

J( 'ー`)し「ごめん、食べた」

( ^ω^)「おまwww」


8 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:44:42.15 ID:irIHG3qL0
J( 'ー`)し「ああ、カーチャン今日はタッキーのコンサート行かなきゃいけないから夕食はピザでもとって食べてなさいな」

しかたなくブーンはバターの塗られた食パンと目玉の無い目玉焼きを口に運ぶ。

ξ゚⊿゚)ξ「これってただの焼きなのかしら……」

( ^ω^)「知らないお……」

数分後、なんだかんだで綺麗になった皿を流し台に運び、家を出るまで数分前、といった時間になった。

ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうだアニキ」

( ^ω^)「お?」

ξ゚⊿゚)ξ「悪いんだけどさ、これ返しておいてくれない?」

そう言ってツンが取り出したのは一冊の本だった。

( ^ω^)「……あれ?」

なんだこれ、前にもこんな事あったような。


10 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:45:09.59 ID:irIHG3qL0
ξ ⊿ )ξ「どうしたのよ、早く受け取ってよ」

イライラしはじめたツン、しかしブーンはそれどころではなかった。

( ^ω^)「……あ、あ、あああ!!!!」

ξ゚⊿゚)ξ「っ! 何よ! びっくりするじゃない!」

( ^ω^)「思い出した! 思い出したお!」

そう、彼は思い出した。
自分の一回目の死を。


………………。


11 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:45:27.64 ID:irIHG3qL0
('A`)「よう」

( ^ω^)「おいすー」

二人が毎日落ち合うのは、この町の中心部、大十字路とも呼ばれる巨大な交差点だった。

('A`)「いや、今日はいい朝だな」

( ^ω^)「まったくだお」

二人が友人関係になったのはかれこれ半年前、入試の丁度半年前という、この年齢の人間にとっては将来を左右する大事な時だった。
その時何があったのか、それは今の二人にとってはどうでも良いことだ。
今、このときがとても愉しい、かけがえの無い友人であるという事実だけがそこにある。

( ^ω^)「朝からいい夢を見たお、美人のねえちゃんと話したお」

('A`)「お、奇遇だな、俺もだ」

( ^ω^)「マジかお」

('A`)「ああ、十人の美女が俺のそそり立つグングニルを舌で……、フヒヒ」

(;^ω^)「さすがの僕でもそれには引くわ」

何はともあれ、二人は学校までの道を悠々と歩いていく。


12 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:45:40.32 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)「そういえばお」

('A`)「あん?」

ブーンは今朝の夢をドクオに話した。
うろ覚えだが、一番肝心な部分だけを縮めて言う。
するとドクオはけらけらと笑って答えた。

('A`)「そりゃあれだ、お前、生まれ変わっても彼女できないってこった」

( ^ω^)「ちょwww夢でそんな事言われたくないおwww」

('A`)「夢ってのは深層心理が沸いて出てくるもんだからな、つまりお前も自分自身で自覚してるってこった」

( ^ω^)「なんてこったい」

そんなくだらない会話をしながら、学校へ辿り着く。
この時間が、何よりの平穏で、楽しみだった。

…………。


13 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:46:15.69 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)「今日も一日愉しかったお」

('、`*川「そう言う事は小テストで0点取るというマントルが逆流したかのような危機的現状をどうにかしてからいいましょうね」

ブーンの げんざいち
→しょくいんいつ

('、`*川「あなたはいい子なんだけどね……、なんというか、ベクトルを少しでもいいから勉強の方に向けてくれないかしら」

( ^ω^)「だが断る」

('、`*川「…………」

担任のペニサス伊藤は、生徒からも人気のある教師だった。
科学の教師である彼女は難しい言葉を多用する事もあるが、ブーンも嫌いではない。
唯一の欠点は、怒らせると怖いと言う事だが。

彼女の背後から、影がゆらりと立ち上る。

( ^ω^)「ちょwww死亡フラグwww」

('、`*川「WRYYYYYYYYYYY!!!!」



しばらくおまちください。


14 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:46:38.83 ID:irIHG3qL0
( )ω()「前がみえねぇ」

('、`*川「今日はこの程度にしておいてあげるわ、あとこれ」

ぱらり、と手渡されたのは一枚のプリントだった。

( ^ω^)「お、なんですかお?」

('、`*川「それ、クーさんに届けてくれる?」

クー、というのはクラスメイトのことだった。
ただ、彼女の顔を知っているのはブーンだけだろう。
なぜなら彼女は現在進行形で引きこもりだからだ。

( ^ω^)「げ」

('、`*川「あら? いつもは『わかったおー』とか言って届けてくれるのに」

( ^ω^)「いや、なんでもないですお」

ツンから頼まれた本を返す図書館と、クーの家は微妙に距離が遠いのだ。


15 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:47:24.05 ID:irIHG3qL0
('、`*川「ならお願いね、じゃあさようなら」

( ^ω^)「また明日だおー」

職員室を出ると、ドクオがカバンを頭の上に載せながらバランスを取って待っていた。

('A`)「終わったか」

( ^ω^)「終わったお、頼まれ事もされたお」

受け取って、まだカバンにしまっていないプリントを見せると、ドクオも『ああ』と納得したようだ。

('A`)「しかしお前も災難だなぁ、あの変わり者と係わり合いになるなんてよ」

( ^ω^)「半分はお前の所為だお」

クーと言う生徒はあらゆる意味で特殊だった。
引きこもり、と言ってもいじめられている訳でもない、何かされているわけでもない。
中学時代の彼女は最低最悪の魔女とさえ呼ばれ続けていたそうだ。
そんな彼女にブーンがプリントを届けているのは、ひとえにドクオの存在の所為である。


16 名前:猪(やせ) :2006/12/12(火) 00:47:27.50 ID:BuB8OZTc0
これはwktk


17 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:48:05.48 ID:irIHG3qL0
ドクオも中学時代は引きこもりだった、それを厚生させたのはブーンである、という事は前述されていたが、それに目をつけた存在がいた。
勿論、ペニサスである。

昔の噂を聞きつけたペニサスは、ブーンに協力を要請した。

「君ならなんとかできるわ!」「無理ですお」「届けてくれたら私の権限で週一学食を奢るわ!」「まかせてほしいお」

という物凄いやり取りの末だが。

( ^ω^)「そんなわけで今日は滅茶苦茶遠回りになるお」

('A`)「あー、じゃあ先に帰るわ」

校門まで一緒にあるき、やがて二人は別れる。

( ^ω^)「また明日だおー」

('A`)「うーっす」


18 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:48:29.51 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)「先に本を返してしまうかお……」

図書館が閉まるのは五時なので、そっちを優先すべきと判断したブーンは、その方向へと歩きだした。

(´・ω・`)「…………」

( ^ω^)「ひかるかっぜっをおいこしたらー♪」

歌いながら歩くブーンの後ろに、その存在は居た。

図書館は大通りの向こうにある、信号を渡れば直ぐだ。
車の流れが速いので、中々青に切り替わらないのが傷だが、しかしブーンは気にしない。

( ^ω^)「あるーはーれたひーのことー」

(´・ω・`)「……危ないよ」

……ん?

(´・ω・`)「君、死相が出てる」

( ^ω^)「……僕のことかお?」


19 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:48:52.86 ID:irIHG3qL0
後ろから聞こえた声に振り向くと、ブーンと同じ学校の制服を着た少年が、立っていた。
身長はブーンより低いが、ネクタイが蒼い、上級生だ。

(´・ω・`)「僕のことはショボンでいい、内藤君」

( ^ω^)「……なんで僕の名前を知ってるんだお」

一歩後ずさる、この人間、何か不味い。

(´・ω・`)「そりゃ二日に一回、ペニサス先生に無駄無駄ラッシュされてる人だからね、君」

(;^ω^)「ありゃ」

警戒したのが馬鹿みたいだった。
だが、聞き逃せない言葉があった。

( ^ω^)「でも、死相ってどういう意味だお」

(´・ω・`)「文字通りだよ、むしろ僕は聞きたい。何で君――――」


「生きてるの?」



20 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:49:26.52 ID:irIHG3qL0
そういうと、ショボンはブーンをじっと見つめた。

( ^ω^)「な、なんだお、それ」

(´・ω・`)「うん、落ち着いて聞いて欲しい」

信号が青になった、だが、わたる余裕などない。
ショボンが言葉を紡ぎだす。

(´・ω・`)「死相が見える、って言ったけどね、空気なんだよ」

( ^ω^)「空気?」

(´・ω・`)「うん、僕はなんとなくだけど、その人が持つ空気ってのが見えるんだ」

電波か、創○か、宗教か?
そんなブーンの疑問に答えることなく、ショボンは続ける。

(´・ω・`)「例えば君は周りの人を明るく出来る人間だ、周囲を柔らかくできる人間、うん、コールドリーディングと言い換えても構わないんだけどね」


21 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:49:41.91 ID:irIHG3qL0
それは聞いた事がある。
単純に言うならば観察力だけでその人の特徴や性格、その他色々なものを捉える技術だ。
主に占いや詐欺、インチキな超能力に使われる。
逆に、事前の情報をあたかもその場で言い当てたかのように振舞う事をホットリーディングと言うが、それはどうでもいい。

信号が、点滅し始めた。

会話する二人の横を、急いで横断歩道を渡ろうとする学生が通り過ぎる。

(´・ω・`)「ただ、君は今それ以上に纏ってる空気が違う。 死にそうな人っていうのは僕にとってなんとなくわかるんだけど……」

( ^ω^)「だけど?」

(´・ω・`)「君は」




「五回ぐらい死んでもおつりが来そうな空気を持っているよ」




22 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:50:40.48 ID:irIHG3qL0
その瞬間。

トラックが。

会話する二人を。

いや。

一人。

『ブーンだけを飲み込むような形で』、あるいは『ショボンの目の前を通り過ぎるように』、突っ込んできた。

ブレーキは間に合わず、ブーンを横殴りに吹っ飛ばす。
体がねじれて倒れこむ、トラックの運転手は勢いよく外にでて叫んでいた。

信号を渡ろうとしていた学生をよけたトラックが、そのままこっちへ来た、と言う事、らしい。
だがそれを考えるだけの思考力は、それを認識するだけの余裕は、もうブーンには無い。

その情景を見て、ショボンは悲しそうに、どこか納得したように、呟いた。

(´・ω・`)「だから言ったのに。『死相』が出てるって」

その声は、もう届かない。

:一回目の死亡・事故死。 
:実行犯・トラックの親父。
:死亡時刻・四時二十三分。
:( ^ω^)は十回死ぬようです――続く。


24 名前:猪(やせ) :2006/12/12(火) 00:52:32.18 ID:BuB8OZTc0
期待age

25 名前:猪(黄色) :2006/12/12(火) 00:52:34.73 ID:cltbFqOaO
意外と良スレ

27 名前:初夢(犯人だった) :2006/12/12(火) 00:55:34.80 ID:irIHG3qL0
稚拙な文章ですが、wktkしてくださった人が居てくれて何よりです。
本日以降、暇が出来次第投下予定なので、付き合ってくだされば幸いです。



29 名前:初夢(猿の夢) :2006/12/12(火) 00:56:26.91 ID:HR0od6WZ0
じゃあ飯でも食ってくるか

33 名前:猪(2ch中) :2006/12/12(火) 00:59:22.89 ID:CpXuVf5CO
wktkが止まらない

35 名前:保母さんと初詣 :2006/12/12(火) 01:08:25.32 ID:F7zaNmCpO
これは期待すごく期待

37 名前:猪(大人) :2006/12/12(火) 01:11:43.77 ID:FQ7L1SvzO
これはいいwwwwwww

42 名前:お年玉(がっぽり) :2006/12/12(火) 02:02:19.53 ID:Pf11Z4ui0
これはいい
しかし場面展開が唐突過ぎるのが難点

とりあえず期待

43 名前:看護士と初詣 :2006/12/12(火) 02:08:05.55 ID:16zM3wXW0
これはいいものだーー=!!!!!!!!!

55 名前:猪(ギャンブラー) :2006/12/12(火) 11:31:24.27 ID:F7zaNmCpO
ぬうう・・・
まだか!続きはまだなのか!?

59 名前:お年玉(がっぽり) :2006/12/12(火) 12:48:51.79 ID:y9NUFQqcO
ループもの大好きなオレがwktk保守

でも1回目の死亡って>>5-6の背骨が折れた…じゃないの?
少なくともその記憶を持ってるんだから
トラック轢死は1回目の死亡じゃないのでは?


60 名前:寿老人(じゅろうじん) :2006/12/12(火) 12:50:59.73 ID:xcpkjvZ60
>>59
それオモタ

61 名前:黒豆(千粒) :2006/12/12(火) 13:04:39.33 ID:o80LH5hu0
最初のが二回目より後の「死」なんじゃね?

導入というか、インパクト+あらすじ説明だから、いいんジャマイカ?



63 名前:1 :2006/12/12(火) 13:54:15.47 ID:mU2ZFz0o0
まさか保守していただけるとは思いもよらず。
ありがとうございました、少し長めかつ混乱模様になりますが、第二話を投下させていただきます。


64 名前:1 :2006/12/12(火) 13:56:26.69 ID:mU2ZFz0o0
………………。

川 ゚ -゚)「君は、不注意すぎるな」

( ^ω^)「お?」

ある日、何時も通りブーンがクーと言う名の女生徒、引きこもりの問題児にプリントを届けに言った時、言われた台詞だった。

川 ゚ -゚)「誰かを信じると言う事に疑いを持たない、誰かを疑うと言う事を信じられない、そんな人間だ」

それは駄目な事なのだろうか。
僕が聞くと、彼女は笑ってこう言った。

川 ゚ -゚)「何を言ってる、それはとても」

幸せな事だ、と彼女は言った。

………………。


65 名前:1 :2006/12/12(火) 13:57:12.64 ID:mU2ZFz0o0
■( ^ω^)は十回死ぬようです。
■二回目の朝・開始

ξ゚⊿゚)ξ「あ、アニキ?」

( ^ω^)「今日は返せないお」

ξ゚⊿゚)ξ「ハァ?」

( ^ω^)「ごめん! 先に行くお!」

カバンをひっつかみ、ブーンは玄関へと走った。

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと! 片付けぐらいしていきなさいよ!」

声が聞こえたが無視をする。
気を配る余裕など無い、ひたすらに直進する。

( ^ω^)「なんだおこれ……、スタンド攻撃でも受けてるのかお……」

だがバイツァ・ダストを仕掛けられる覚えなど、ブーンには一切ない。


67 名前:1 :2006/12/12(火) 13:57:39.20 ID:mU2ZFz0o0
とりあえず歩きながら考える。
ツンから本を受け取らないのは正解だ、とは思う。
本を返しに行ったらトラックに轢き潰されてしまう。
時間をずらせば、とかそういう考えも捨てたほうがいい、あの位置に行く事自体が危険だ。
ブーンはそう判断した。

そしてもう一つ。
あの言葉を思い出す。

(*゚ー゚)「十回殺すから――」

十回、認めたくは無いが、一回死んでいるので、残り九回。
今、自分は九回死んでしまう危険性があると言う事か。

('A`)「よう」

( ^ω^)「――あ」

気がついたらいつもの、ドクオと待ち合わせる交差点にきていたらしい。


69 名前:1 :2006/12/12(火) 13:58:11.72 ID:mU2ZFz0o0
('A`)「どうしたよ、何か滅茶苦茶暗い顔してるじゃねーか」

( ^ω^)「な、なんでもないお」

こんな荒唐無稽な話、信じてもらえる訳がない。

('A`)「……まあいいけどよ。 それより聞けよ、今日すげぇ夢みてさ」

夢。
そうだ、もしかしたらあの出来事が全部夢だったのかもしれない。
そう思い、ブーンは聞いた。

( ^ω^)「美女に囲まれてグングニルしゃぶられる夢かお?」

('A`)「…………なんで知ってんの」

( ^ω^)「……なんとなくだお」


70 名前:1 :2006/12/12(火) 13:58:55.93 ID:mU2ZFz0o0
……これで夢説もアウトだ。
『死ぬ前』に起きた出来事は全て、今起こっている。
つまり『死んだら』『その日の最初からやり直し』なのだ。
もっと切り詰めていうならば『あの夢を見た日』から、だろうか。
確認しようがないし、確認したくもないが。

どっちにしても、異常な状況だ。

(  ω )「どうすればいいんだお……っ」

学校に辿り着いたところで、当然授業は耳に入らない。
小テストはやはり、0点だった。


71 名前:1 :2006/12/12(火) 13:59:27.18 ID:mU2ZFz0o0
……………。

('、`*川「あなたはいい子なんだけどね……、なんというか、ベクトルを少しでもいいから勉強の方に向けてくれないかしら」

この台詞も聞いた。
ただ、同じ台詞でも、それがとっても無意味なものに聞こえて。

(  ω )「……勉強したら」

('、`*川「ん?」

(  ω )「勉強して頭が良くなって、ちゃんとした大学に行けば死ななくてすみますかお」

('、`*川「……何を言ってるの、あなたは」

こつん、とデコピンをされた。
普段の荒々しい無駄無駄ラッシュとは違い、やけに可愛らしい一撃だった。
ただそれだけで後頭部から床に倒れこんでしまう破壊力を秘めているのはなんというか間違っている。


73 名前:1 :2006/12/12(火) 14:01:04.07 ID:mU2ZFz0o0
( ^ω^)「こ、これで死ぬかと思ったお……っ!」

:二回目の死亡・デコピンによる後頭部強打
:実行犯・ペニサス伊藤
洒落にならねぇ……。

('、`*川「そう簡単に人間は死なないわ。 いい大学にいけば暮らしが楽になるのは間違いないけども」

でも先生。

僕はもう一回。

死んでるんです。

そのブーンの様子を、ペニサスは不思議そうに見ていたが、やがて溜息を吐いた。
自分の机から、あるものを取り出し、それをブーンに手渡す。


74 名前:1 :2006/12/12(火) 14:01:21.04 ID:mU2ZFz0o0
それは一枚のプリントだった。

('、`*川「それ――――」

( ^ω^)「っ!!」

ブーンはひったくるように、ペニサスの手からプリントを取り上げた。

( ^ω^)「そうだお! こいつがいたお!」

('、`*川「え、何? 何事?」

( ^ω^)「不肖このブーン、クーにプリントを届けてきますお!」

そうだ、こいつが居た。
クーが引きこもりで不登校なのは偏に彼女の性質に問題があるからだ。
『変わったことの大好きな』『最低最悪の魔女』。
繋がっていないメビウスの輪とすら称される彼女なら、この戯言を信じてくれるかもしれない。
いや、信じてくれないところでアドバイスの一つや二つ、くれるかもしれない。


75 名前:1 :2006/12/12(火) 14:02:40.41 ID:mU2ZFz0o0
去っていくブーンの後姿を眺めながら、ペニサスは『不思議な子ねぇ』、と呟いた。

ブーンがダッシュで職員室を出ると、そこにはカバンを頭に載せてバランスを取っているドクオがいた。

('A`)「よう、大丈夫かy」

( ^ω^)「ちょっと用事が出来たから先に帰ってて欲しいお!」

ドクオの発言を綺麗に無視し、ブーンは階段へと走り出した。

('A`)「……なんだアイツ」

ドクオは溜息をつく。朝から様子がおかしいと思ったら、これだ。
一日中心配して、ずっと待っていた自分が馬鹿みたいだ。
だが。

('A`)「まあいいか。暗いアイツは見てたくねえや」

ドクオもゆっくりと昇降口に向かって歩きだす。
それが、このドクオとブーンの、最後だった。

…………。


76 名前:1 :2006/12/12(火) 14:03:26.24 ID:mU2ZFz0o0
図書館とは違う方向、クーの家を目指しブーンは走る。

⊂二二二( ^ω^)二⊃ 「空も飛べるはずだおー!」

飛べませんが。
飛べませんがしかし、車に最善の注意を払い、通行人にも注意し、横断歩道は二十歩離れた位置から信号を待つ。
十分程度の時間を消費し、やがて、クーの住むマンションが見えてくる。

( ^ω^)「目標を補足したおっ!」

カーブを曲がり、その入り口が視認できた瞬間。

(´・ω・`)「……やあ」

そいつはそこに居た。
上級生の証、蒼いネクタイをした、そいつが。


77 名前:1 :2006/12/12(火) 14:03:40.51 ID:mU2ZFz0o0
( ^ω^)「……シ、ショボ……」

(´・ω・`)「あれ、自己紹介したっけ。 顔を合わせた記憶はないんだけどな」

( ^ω^)「いや……その……」

何でこいつがここにいる。
こいつは図書館の前の交差点にいる筈なのに。

(´・ω・`)「まあいいや、知ってるなら話は早いからね」

( ^ω^)「話……?」

(´・ω・`)「うん、君を探してた」

探していた。
……何で?
動きを先読みして此処にいた?
僕が此処に来る事を予想していた?

『どうやって僕が此処にくると言う事を知った?』


79 名前:1 :2006/12/12(火) 14:03:58.60 ID:mU2ZFz0o0
(´・ω・`)「こんな事言っても信じてもらえないかもしれないけど――」

(;^ω^)「け、結構ですお!」

脇を通り過ぎてマンションの玄関口へと向かう。
勿論、いきなり現れた車が自分をふっ飛ばさないとも限らないので、なるたけ慎重に、だ。

(´・ω・`)「…………ああ」

彼の目には『死相』が見えた。
四回死んでもおつりがくるような、濃厚な死の気配が。
また僕は救えなかった、と、その呟きが聞こえる訳もない。


…………。


80 名前:1 :2006/12/12(火) 14:04:44.06 ID:mU2ZFz0o0
オートロックというシステムは、外側から鍵を使ってあけるか、内部の住人からあけてもらうかのどちらかで入る事ができる。
当然のことながらブーンは鍵を持っていないので、クーの住んでいる部屋、902号室のボタンを押してコールした。

( ^ω^)「内藤だお、プリントを届けに来たお」

『……はいりたまえ』

入れることは出来るけど取り出すことのできない、一方通行の郵便受けの横、オートロックの扉が開く。

( ^ω^)「……あれ」

事情を話して入れてもらうつもりだったのに、クーは扉を開ける操作をしたようだ。

『いちいち呼んだと言う事は、何か話があるのだろう。普段なら郵便受けに入れてはい終わり、なのだから』

……言われてみればそうなのかも、しれない。


ブーンは「助かるお」とだけいい、扉をこえた。
エレベーターを一瞬見たが、しかし昨今、死亡事故が報告される時代だ。
素直に階段を登って、そして辿り着く。
クーの住む部屋へ。


81 名前:1 :2006/12/12(火) 14:05:07.84 ID:mU2ZFz0o0
(  ω )「ぜひっ ぜひっ ぜひっ」

体力の無い彼にとって九階までの強行軍は非常に重労働だったらしい。
息も絶え絶え、屍の如く這う様に扉の前まで歩き、インターホンを押そうとした所で。


まるで狙い済ましたかの様に、扉が開いた。


川 ゚ -゚)「……で、何の用件かな?」

( ^ω^)「……僕の、命に関してだお」

川 ゚ -゚)「それは、なによりだ」


82 名前:1 :2006/12/12(火) 14:05:36.04 ID:mU2ZFz0o0
クーの身長は、ショボンよりもさらに一回り小さい。
長い黒髪にカーディガン、チェックのロングスカートと、露出は少なめだが、美しさだけが際立つ服装だった。
何時もと変わらぬ無表情、だがやけに愉しそうだった。

川 ゚ -゚)「かけたまえ、紅茶でいいかな?」

( ^ω^)「お構いなくお」

リビングに通されたブーンは高そうな椅子に座る。
本当に、なんでこんな奴が引きこもりで、一人暮らしで、不登校なんてやってるのだろう。
カチャカチャとキッチンから音がし、やがて、盆に、高そうなティーセットと、おいしそうなクッキーをのせたクーが現れた。
テーブルにそれが置かれ、クーも席に着く。
時間は四時を回っていた。

川 ゚ ー゚)「さて、聞かせてもらおうか?」


83 名前:1 :2006/12/12(火) 14:05:47.79 ID:mU2ZFz0o0
にやり、と笑うその笑顔に、ブーンはかすかな期待と、恐怖を抱いた。

川 ゚ -゚)「ずいぶんと物騒な切り出し方だったしな」

( ^ω^)「……信じてもらえないかも知れないけど、いいかお」

川 ゚ -゚)「ああ」

そしてブーンは語りだす。
夢を見てから起きて、自分がやってきた事。
本を預かり、プリントを預かり、ショボンと出会い、そして。

自分が一度、死んだ事を。


84 名前:1 :2006/12/12(火) 14:06:13.55 ID:mU2ZFz0o0
…………。

川 ゚ -゚)「……成る程な」

( ^ω^)「信じてもらえないかお?」

静かに話を聞き終えたクーは、ゆっくりと顔を上げ、不安げに聞くブーンと視線を交えて、しかし黙っていた。

( ^ω^)「…………」

川 ゚ -゚)「…………」

そのまま数分見つめあい、やがてベランダの方向から小さなゴシカァン、という音が聞こえた。
そして、それが沈黙を切り開いた。

川 ゚ -゚)「……五分五分だな」

( ^ω^)「お?」

この切り返し方は予想してなかった、肩透かしを食らった気分だ。


86 名前:1 :2006/12/12(火) 14:06:39.54 ID:mU2ZFz0o0
川 ゚ -゚)「今のところ、私がその話を疑う理由は無い。 君は人を騙して喜ぶような人間ではないしな」

( ^ω^)「そう思ってくれるのかお?」

川 ゚ -゚)「君はそういう空気を持っているからな」

それは、ショボンにも言われた事だ。

川 ゚ -゚)「まあ、否定する理由も幾つかあるな」

( ^ω^)「……なんだお?」

川 ゚ -゚)「一つ、それが君の夢である可能性」

( ^ω^)「でもそれは……」

ドクオの夢を言い当てた事で、その疑問は払拭されたはずだ。
同じ日をループしている、という結論にそれで達したのだから。


87 名前:1 :2006/12/12(火) 14:07:06.40 ID:mU2ZFz0o0
川 ゚ -゚)「例えば君が予知夢能力に目覚めて、夢から目覚める為には夢の中で死なないといけない、という仮説はどうだろうか」

( ^ω^)「さすがにねーよww」

川 ゚ -゚)「本当にそういいきれるかね?」

( ^ω^)「う……」

断言しきれない、と言うわけではない。
実際現在、少なくとも主観的には、異常事態のど真ん中に居るのだから。
外から、サイレンの音が聞こえてきた。
ブーンは黙っていた、クーは『まあ』、と前置きした上で言う。

川 ゚ -゚)「この仮説は後一回君が死んで、二回分の死の記憶を持ち越す事ができれば消滅する訳だが」

( ^ω^)「死にたくねーお!」

川 ゚ -゚)「冗談だ」

本日二度目の洒落にならねぇ……。


88 名前:1 :2006/12/12(火) 14:07:22.28 ID:mU2ZFz0o0
川 ゚ -゚)「まあそれは今のところ、立証できない仮説だから置いておくとして、私としてはこっちの方が気になるな」

( ^ω^)「え?」

川 ゚ -゚)「君は今日、『一度目の死を体験してこの日を迎えた』、と言う意味での『今日』だが……起きた直後は記憶が無かったのだろう?」

( ^ω^)「そうだお。 ツンから本を渡された時に思い出したんだお」

デジャヴ、前にもこんな事あったな、という感覚。
それを鍛冶屋で+3したみたいな、あの感じ。

川 ゚ -゚)「ならば、君が死んだのが『一回目じゃない』と言う可能性も、あるわけだ」

( ^ω^)「……!」


89 名前:1 :2006/12/12(火) 14:08:10.36 ID:mU2ZFz0o0
そうだ、言われてみれば、その可能性は確かにある。
死んだ『前日』の記憶しか持ち越せない、というのなら。
もしくはトラックにひかれる一回目の『死』の時は前の『死』を思い出していないだけだとしたら。
サイレンの音は次第に大きくなっていった。
その音と反比例していくように、二人は黙り込んでしまった。

川 ゚ -゚)「……食べたまえ、自信作なんだぞ?」

重くなった空気を和ませる為か、クーがクッキーの皿を寄せてくる。

( ^ω^)「い、いただくお」

パリ、といい音がした。
ココアパウダーの風味が微かにする、市販品の味ではない。

( ^ω^)「お、うまいお」

川 ゚ -゚)「遠慮せずに食べていいぞ」

そういわれて本当に遠慮する事を、ブーンはやめた。


90 名前:2Get!! :2006/12/12(火) 14:08:18.81 ID:IxVrpCS80
支援
wktk

91 名前:1 :2006/12/12(火) 14:08:41.05 ID:mU2ZFz0o0
( ^ω^)「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」

五分程度で、皿に乗っていたクッキーは全て消滅した。
途中で飲んだ紅茶もおいしかった、午後の紅茶はもう飲めないと思うぐらいに。
いや、飲むけど。

川 ;゚ -゚)「なんというか、よく食うな君は」

(;^ω^)「いや、昼飯もあんま喉通らなかったし……」

川 ゚ -゚)「クッキーを食べるにしては不可解な音だったが……まあいいか」

皿を退けて、クーは続ける。

川 ゚ -゚)「なんにせよ、今の君に必要なのは前提条件を把握する事だよ」

( ^ω^)「前提条件……」

川 ゚ -゚)「うむ、現時点で確定しているのは『君は誰かに殺されている』『君は十回やり直す事が出来る』『死んだら夢を見た日の朝に戻る』、そして――――」


『十回目の死を迎えた時、君は本当に死ぬ』




92 名前:1 :2006/12/12(火) 14:09:09.54 ID:mU2ZFz0o0
川 ゚ -゚)「と言う事だろう、夢の中の『彼女』の言葉と現在の情報だけならそうなる」

外が騒がしい。
さっきから聞こえてきたサイレンの音はとうとうマンションの目の前を通り過ぎているようだ。

川 ゚ -゚)「そして君の勝利条件は『死なない』、だ」

( ^ω^)「…………」

言われてみればあたりまえだ。
『彼女』は『勝利条件』と言った。
つまりこれは、闘いなのだ。

意図せぬところで起きた、誰かと自分との戦い。

川 ゚ -゚)「問題はいつまで生きていれば君の勝利になるのか、という問題だが」

( ^ω^)「そういえばそれもあったお」

今日一日だけ、というのは楽観的な考え方だろう。
何時まで、何所まで。

川 ゚ -゚)「……五月蝿いな」

クーは立ち上がり、ベランダの方へと歩き出す。
ブーンもなんとなくそれについていった。


93 名前:1 :2006/12/12(火) 14:09:33.80 ID:mU2ZFz0o0
( ^ω^)「あ、あ、あああ!!!」

川 ゚ -゚)「……なんと」

九階という高さからは、ある程度、街を見渡す事ができる。
そしてブーンは、見た。

( ^ω^)「あれは、あれは!」

川 ゚ -゚)「図書館……の前、か?」

ブーンの視力は普通だ、眼鏡をかける必要は無いが突出して良いわけでもない。
だがしかし、彼の目に映っている光景は、遠目からでも理解できる。

『図書館の前の交差点に、炎が広がっていた』

( ^ω^)「前の僕が死んだ場所だお!」

川 ゚ -゚)「……成る程」


94 名前:1 :2006/12/12(火) 14:10:23.12 ID:mU2ZFz0o0
( ^ω^)「な、何が成る程なんだお?」

混乱しているブーンとは対照的に、落ち着いた様子のクー。

川 ゚ -゚)「いや、なんでもない。 なぁブーン」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「私は昔、君に言った事があったな。君は不注意すぎる、と」

( ^ω^)「言われた記憶があるお」

その時は、学校が始まってから一ヶ月程度の事だったか。

川 ゚ -゚)「例えば、だ。 君は今、あらゆる死の危険性に直面してると言える」

( ^ω^)「…………?」


95 名前:1 :2006/12/12(火) 14:10:33.41 ID:mU2ZFz0o0

それは普段と変わらない口調、普段と変わらない物腰、普段と変わらない表情のクーから紡ぎだされる普段と変わらないクーの声。

川 ゚ -゚)「全て物事に警戒し、全ての人間を警戒するべき事態だ。 そんな中で私を頼って来てくれたのは嬉しく思う」

( ^ω^)「いや、そういわれると照れるお」

川 ゚ -゚)「だから不注意だ、君は」


「なんで君は私なんかを信用したんだね?」


ドン、と。

身を乗り出して火事の情景を眺めていたブーンの体は、そのままベランダの外へ押し出された。

( ^ω^)「……え?」


96 名前:1 :2006/12/12(火) 14:10:47.10 ID:mU2ZFz0o0
何で?

訳がわからない。

クーが僕を。

突き落とし――――!


川 ゚ -゚)「この記憶が持ち越されるなら、次の『今日』以降、私には近づかない方がいい」


「そんな不思議な事を言われたら、試してみたくなるじゃないか」


なんで彼女が『最低最悪』などと呼ばれているか、ブーンは知らなかった。
それは偏に、彼女という、クーという人格は、『興味のある事はなんでもする』し『その手段を選ばない』からだと言う事を。
何を試したかったのか、ブーンにはわからない。
何を知りたかったのか、ブーンにはわからない。
引力にしたがって、ブーンの体は落下していく。
頭頂部と地面が接触して意識が途切れるまで、数秒もかからなかった。

:二回目の死亡・転落死。
:実行犯・クー。
:死亡時刻・四時三十五分


97 名前:1 :2006/12/12(火) 14:10:59.99 ID:mU2ZFz0o0
…………。

「あなたは酷い人ね」

声が聞こえる。
部屋の隅だ、クーはその方向に見向きもせずに、ティーセットと皿を片付け始める。

「彼はあなたを頼ってきたのに」

川 ゚ -゚)「それは嬉しく思ってるよ」

「ならなんで『彼女』に協力してあげるの?」

川 ゚ -゚)「ほう、ブーンの対戦相手は女性だったのか、知らなかったよ」

「……うかつな事を言わせてくれないのね。あなたは」

キッチンへと向かうクー、少女の声は続く。

川 ゚ -゚)「……私なりの考えあっての事だよ」

「それって、何かしら?」

クーは言う。

川 ゚ -゚)「彼には生きていて欲しいから、な」

:( ^ω^)は十回死ぬようです・続く。


98 名前:2Get!!! :2006/12/12(火) 14:12:21.63 ID:IxVrpCS80
想定外の展開


99 名前:1 :2006/12/12(火) 14:14:35.39 ID:mU2ZFz0o0
何がなんだかわからない展開ですが、三話以降で伏線を回収していく予定です。
次回の投下は早くて明日の12時過ぎになると思います、保守されてなければ新しくスレを建てさせていただきます。

中途半端な時間にお付き合いありがとうございました。


100 名前:2Get!! :2006/12/12(火) 14:16:28.78 ID:IxVrpCS80
GJ!
楽しみに待ってる

116 名前:猪(浴衣姿) :2006/12/12(火) 17:23:54.30 ID:I9dX66+e0
ゴシカァンが気になる

117 名前:初夢(二日酔い) :2006/12/12(火) 17:39:19.11 ID:mL8IQ7Fg0
何か全然話し違うけどタイムリープ思い出した

乙です

162 名前:猪(おもらし君) :2006/12/13(水) 06:00:41.33 ID:lHpCmVsD0
これは面白い

でも思いっきりパイツァダストパクってんのね

166 名前:猪(ドラム) :2006/12/13(水) 06:30:29.44 ID:kTDuC76QO
トゥルーコーリングのなんかカオス版みたいね

174 名前:お年玉(すずめの涙) :2006/12/13(水) 10:13:28.32 ID:eT3KZGlJO
wktkほしゅ
よく考えたらバイツァダストもループ物か
やっぱJOJOは最高だわ

176 名前:神所謂ゴッド :2006/12/13(水) 12:03:35.04 ID:eXUapwzZ0
もうすぐくるかな、wktkしながら昼飯食うお


190 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:13:43.34 ID:P7q7rzg+0
…………。

僕は君を助けたいんだ。

ずっと見てきたから。

わかってて何も出来ないのは。

もう嫌だから。

次の君の今日の僕にはきっとこの思いはないけれど。

きっと、助けてあげられるから。

だから、あきらめないでくれ。

君の死相は、僕が払う。

…………。


191 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:13:58.36 ID:P7q7rzg+0
■( ^ω^)は十回死ぬようです。
■三日目の朝・開始

( ^ω^)「……お、朝かお」

目が覚めると、そこは普段から変わらぬ自分の部屋だった。
ヲタグッズ、ポスター、フィギュア、抱き枕に腐女子御用達のBLノベルまである。

( ^ω^)「……なんか体が重いお」

なんだか深い倦怠感がある、溶かした鉛が体の先端に溜まっているようだ。
のろのろと荷物をまとめ(学校で読むラノベと漫画)、制服に着替え(しわだらけ)、朝食を食べる為に1階へと降りる。

( ^ω^)「…………」

ξ゚⊿゚)ξ「な、なによ、人の顔見たら挨拶ぐらいしなさいよ……」

( ^ω^)「おはようだお……」

ξ゚⊿゚)ξ「暗いわね……、死人みたいな顔してるじゃない」


192 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:14:13.32 ID:P7q7rzg+0
今日は鏡を見ていないが、物事をはっきり言うタイプのツンがそう言っているなら(特に彼女は、ブーンには容赦が無い)そうなのだろう。
夏休みが終わり、宿題が終わっていない時のような倦怠感は身体を犯している、

J( 'ー`)し「おはよう、ご飯できてるからちゃっちゃと喰ってとっとと行ってきなさい」

( ^ω^)「…………」

バターの塗られたトーストと、黄身の無い目玉焼きが皿の上にのっていた。

ξ゚⊿゚)ξ「お母さん、目玉焼きの目玉は?」

J( 'ー`)し「食べた」

ξ゚⊿゚)ξ「おまwww」


193 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:14:25.77 ID:P7q7rzg+0
J( 'ー`)し「ああ、カーチャン今日はタッキーのコンサート行かなきゃいけないから夕食はピザでもとって食べてなさいな」

ξ゚⊿゚)ξ「趣味悪いわねぇ……」

J( #'ー`)し「アンタの今日の弁当は逆日の丸だ」

ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさいすいませんでした」

( ^ω^)「…………」

なんだか妙な違和感がある。
いつも通りの日常なのに何故か『こんな事ありえない』というぼんやりとした感覚が。

ξ゚⊿゚)ξ「……あんた本当にどうしたのよ、全然減って無いじゃない」

二口程度しかかじられていないトーストと、手のつけられていない焼きを見て、ツンはさすがに不安になったようだ。

ξ゚⊿゚)ξ「顔洗ってきたら? さっぱりするかもよ?」

( ^ω^)「……そうするお」

ツンの言うとおりにしようと、ブーンは素直に立ち上がった。
よたよたと歩く足取りがやけに危なっかしい。

ξ゚⊿゚)ξ「本当に、気をつけてよね――?」


194 名前:ぬこと初詣 :2006/12/13(水) 13:14:33.33 ID:j3qhCsZiO
ktkrwwwwktkwwwwktkwww


195 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:14:43.33 ID:P7q7rzg+0
水が冷たい。
水道水の飛沫は、確かに狂った体の調子を整える事には役立つようだ。

( ^ω^)「……酷い顔色だお」

ぬれた自分の顔を鏡で見ると、それはまるで使用後のマイケルジャクソンのようにやせこけた顔をした自分が居た。
それでも数回、冷たい水で顔を濡らしていると、心持、なんとなく体が軽くなったような気がする。

( ^ω^)「よし、気合いれなおすお」

パン、と自分の顔を叩く。
幾分かマシになった自らの姿を確認し、頷いた。

( ^ω^)「お?」

ブーンが洗顔を終えてリビングに戻ると、ツンの姿と自分の分の朝食が見当たらなかった。

( ^ω^)「僕のご飯はどこだお?」

J( 'ー`)し「私が食べた」

( ^ω^)「ちょwww、微妙に予想外www」

お前かよ。


196 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:15:04.05 ID:P7q7rzg+0

J( 'ー`)し「ほれ、とっとと学校行ってこい」

椅子に立てかけておいたカバンを投げ渡され、そのまま玄関まで押し出されるように歩く。

( ^ω^)「ツンはどうしたお」

J( 'ー`)し「先に行ったわよ」

ああそうそう、と歩き出そうとするブーンに後ろから声をかける。

J( 'ー`)し「ピザの代金は冷蔵庫の中だから」

( ^ω^)「何故中に……」

その疑問が解消される事は、まぁ、無かった。

…………。


197 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:15:15.10 ID:P7q7rzg+0
('A`)「……どうした、お前」

( ^ω^)「どうって……」

('A`)「今にも三途の川を渡りかねない顔をしてんぞ」

普段通り、何時もの待ち合わせの場所について早々、ドクオにそんな事を言われてしまった。

( ^ω^)「……顔洗って気合入れなおしたはずなんだけどお」

('A`)「むしろ早退したほうがいいんじゃねえのか? 伊藤にゃ俺が言っておくぜ?」

( ^ω^)「いやいや、真面目な僕は学業をおろそかにする訳には行きませんお」

('A`)「嘘くせぇ」

なんだかんだで何時もの調子が戻ってきた。
こういうとき、親友の存在はありがたい。
そんな事を思いながら、学校への道程を歩く。


198 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:15:25.62 ID:P7q7rzg+0
('A`)「ああ、そういや俺今日すげぇ夢みたぜ」

( ^ω^)「僕もだお、美人さんとあったお」

('A`)「の割りには暗い顔してたじゃねえか」

( ^ω^)「原因不明だお」

今はもう朝ほどだるくないし、やる気もある。
……腹は減っているが。

('A`)「俺みたいに十人の美女にグングニルを慰めてくれる夢を見れたらよかったのにな」

( ^ω^)「さすがの僕でもそれは引くわ」



…………。


199 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:15:39.55 ID:P7q7rzg+0
('A`)「ぁー、何で学食のカレーってルーがそのまんま入ってるんだろうな」

( ^ω^)「手抜きだお」

午前中の授業が終わり(当然の如く真面目に勉強している訳がない)、昼休みになっていた。
学食はそれなりににぎわっていて、人はそれなりに多かった。
ドクオの目の前にはカレーが、ブーンの目の前には

('A`)「つーかお前よく食うな……」

( ^ω^)「色々あって朝食抜きだから腹減ったんだお」

('A`)「だからって三杯目だろそれ……、しかもすうどん」

( ^ω^)「いや、ほんとすんません、金ないんです」

ずるずると具の無いうどん。それををすするブーン。
ドクオの食事速度も遅い方で、カレーは1/4程度に減っていたが、しかしその食事速度は以上だった。

( ^ω^)「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」

('A`)「その喰い方は止めろ」


200 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:15:56.74 ID:P7q7rzg+0
そうして食事を続ける二人の前に、『そいつ』は現れた。

(´・ω・`)「……やあ」

( ^ω^)「お?」

後ろからかけられた声に、ブーンは振り向いた。
小柄だが、ネクタイは蒼い。
自分たちより上級生である事を一目で悟ったブーンとドクオは敬語調になる。

( ^ω^)「どうかしましたかお?」

('A`)「うるさかったっすかね」

……あくまで調なので正しい敬語が使えるわけではないが。

(´・ω・`)「いや、席が埋まってるから相席させてもらいたいんだけど……いいかな」

( ^ω^)「お、かまいませんお」

周囲を見回してみると、満席と言うほどでも無いが、学食内にもある程度のグループわけがあり、そのラインの席は空席にしなければならないという暗黙のルールがあった。
それにしたって他学年の生徒が同じ席に着くのは珍しい事だが、特に断る理由もなかった。


201 名前:2Get!! :2006/12/13(水) 13:15:57.88 ID:eXUapwzZ0
キタキタキター


203 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:16:12.32 ID:P7q7rzg+0
(´・ω・`)「じゃあ失礼するよ」

そう言ってブーンの隣に座る上級生。
彼は手に持っていたビニール袋からサンドイッチとコーヒー牛乳を取り出した。

('A`)「…………」

校内で食事が許されている場所は、学食と教室だけだ。
わざわざ学食に来てこのメニューを食べると言う事は、恐らく彼は教室に居難いんだろうなぁと、ドクオはなんとなく察した。

('A`)「大変っすね」

(´・ω・`)「まあね」

タマゴサンドの封を開けながら、彼は自己紹介を始める。

(´・ω・`)「二年V組のショボンだ、よろしく」

( ^ω^)「一年I組の内藤ですお。ブーンと呼んでくださいお」

('A`)「同じクラスのドクオっす」

(´・ω・`)「成る程……、覚えたよ」


204 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:16:40.05 ID:P7q7rzg+0
コーヒー牛乳のパックを開けて、ストローを突き刺す。
その一連の動作がやけに小奇麗なので、ブーンは思わず見ほれてしまった。
まるで王子様のようだ、恋する少女のその瞳でじっと彼の横顔を見つめ――――

(;^ω^)(ってそんな訳NEEEEEE!! こんなフラグはごめんだお!!)

この流れはありえない。

(´・ω・`)「……どうかしたかい?」

( ^ω^)「決してどうにもこうにもなんにもありませんお」

(´・ω・`)「やらないか?」

( ^ω^)「遠慮しますお」


205 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:16:59.63 ID:P7q7rzg+0
残念だ、と呟いてサンドイッチの咀嚼を始める。
それから休み時間が終わるまで、他愛ない話が進んだ。

('A`)「だからですね、俺は中学校の卒業式の日、渡部さんに告白をですね」

( ^ω^)「そして『あれれ~? 貴方誰ぇ~?』って言われたんだお」

('A`)「…………」

(´・ω・`)「なんというか、影薄いんだね、君」

('A`)「うっるせぇぇぇぇ!」

号泣するドクオを横目で見ながら、ブーンは五杯目のすうどんを啜る。

『……モケェェェェェ』

(´・ω・`)「お」

予鈴が鳴った。

('A`)「やべぇ……、小テストの勉強してねぇ」

( ^ω^)「完全に忘れてたお」

(´・ω・`)「なんてやつらだ」


206 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:17:10.51 ID:P7q7rzg+0
ショボンは食事のゴミをビニール袋に詰め込み、席を立った。

(´・ω・`)「今日はありがとう、また会おう」

片手を挙げて去るその姿は、それなりに様になっていた。

( ^ω^)「こちらこそだおー」

('A`)「次が何時だかはわからないけどな」

ドクオが対抗してかっこいいポーズ(と自分では思っているらしい)を決めながら渋く言った。

( ^ω^)「ダサいお」

('A`)「鬼かテメェ」

だから二人は気がつかなかった。
去り際に彼が呟いた台詞を。


「直ぐにまた会う事になると思うけど、ね」



…………。


207 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:17:24.16 ID:P7q7rzg+0
('、`*川「あなたはいい子なんだけどね……、なんというか、ベクトルを少しでもいいから勉強の方に向けてくれないかしら」

( ^ω^)「精一杯の努力はしましたお」

放課後、職員室に呼び出されたブーンは担任教師・ペニサス伊藤から叱責を受けていた。
内容は本日の小テストの点数についてだ。

('、`*川「10点中0点は不味いでしょう……、何を努力したの」

( ^ω^)「おなかいっぱいでも眠らぬよう体を引き締めてですね」

('、`*川「……テメーは俺を怒らせた」

( ^ω^)「ちょwww努力だけは認めてwww」



しばらくお待ちください。




208 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:17:40.85 ID:P7q7rzg+0
( )ω()「前がみえねぇ」

('、`*川「今日はこの程度にしておいてあげるわ、あとこれ」

ぼこぼこになったブーンを横目に、ペニサスが自分の机から一枚のプリントを取り出した。

('、`*川「これ、クーさんに届けてくれるかしら」

( ^ω^)「お、わかりましたお」

プリントを受け取り、床に置いておいたカバンを拾う。

('、`*川「はぁ、今日はこれぐらいで許してあげるわ。じっくり反省しなさいね」

( ^ω^)「前向きに善処しますお」

言葉だけだけど。
言葉だけだけど、本気で心配してくれている事はわかるので、気が向いたら、がんばろうと少しだけ。



209 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:17:59.41 ID:P7q7rzg+0
('、`*川「じゃあ気をつけて、さようなら」

( ^ω^)「さよならですおー」

職員室を出ると、カバンを頭に載せてバランスを取っているドクオが居た。

('A`)「お、終わったか」

( ^ω^)「一人だけ4点取りやがって……」

('A`)「いや、そりゃお前、なぁ」

恨みの視線に目をそらすドクオ。

('A`)「お、ナニソレ」

( ^ω^)「プリントだお、頼まれ事だお」

('A`)「……ああ」

それでドクオは何の事だか察したようだ。

('A`)「お前も災難だなぁ」

( ^ω^)「半分はお前の所為だお」


210 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:18:14.40 ID:P7q7rzg+0
そういいながらプリントを、カバンの、ラノベを入れているスペース(本が傷つかないように加工してある)に折りたたみいれようとしたところで――。

( ^ω^)「あれ?」

奥になにか、見当たらない本があった。

('A`)「ん、どした」

( ^ω^)「これは……」

図書館の本、と一目でわかるように加工されている、一冊のBLノベルだった。

('A`)「そう、そのまま飲み込んで……僕のエクスカリバー……」

( ^ω^)「口に出すなお」

帯の文をそのまま読み上げるドクオを制しつつ、本からはみ出ている紙を抜き取る。


211 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:18:26.67 ID:P7q7rzg+0
('A`)「それ妹さんの?」

( ^ω^)「らしいお」

ξ゚⊿゚)ξ『ごっめーん、これ返しておいて☆』

とだけ丸っこい文字で書かれていた。

( ^ω^)「僕が顔洗ってる間に入れやがったなあの野郎……」

カバンの奥にあったので気がつかなかったのだろう。

( ^ω^)「まあもののついでだし、返してやるかお」

('A`)「シスコンめ」

( ^ω^)「ありえないお」

本とプリントを改めてしまいなおし、ようやくその場を動く。

( ^ω^)「しかしお前が4点を取れた事がいまだに信じられんお」

('A`)「そりゃお前、カンニングだよカンニング」


212 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:18:42.48 ID:P7q7rzg+0
( ^ω^)「……まじかお」

('A`)「いやぁ、仕込み鉛筆を持ってきててよかったぜ」

( ^ω^)「…………」

('A`)「……あ、引いた?」

( ^ω^)「……ご愁傷様だお」

('A`)「………………っ!」

恐る恐る、その言葉の意味を察し、気配を感じたドクオは、ゆっくりと振り返る。

('、`*川「……………………」

( A )「…………」

( ^ω^)「じゃ、僕用事があるので帰るお!」

振り返ってダッシュで昇降口へと走るブーン。


213 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:19:02.65 ID:P7q7rzg+0
('A`)「……ま、待っ」

ドクオはそれを追いかけようとするが、がっちりと首元をつかまれる。

('、`*川「何時までも職員室の前でくっちゃべってるから注意しにきたら……ねぇ?」

('A`)「あ、あ、あ、あ」

('、`*川「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」

その悲鳴はかなり長く響き渡ったという。

…………。


214 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:19:17.18 ID:P7q7rzg+0
先に本を返すために、図書館へと向かう事にした。
閉館時間が五時なので、まあ念のために。

( ^ω^)「お?」

(´・ω・`)「……やぁ」

昇降口を抜けて、大通りへ出る近道を通っていると、そこにはショボンが居た。

まるで待ち構えていたかの様に。

( ^ω^)「ショボン先輩、何してるんだお」

(´・ω・`)「下校中さ、君は?」


215 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:19:32.19 ID:P7q7rzg+0
( ^ω^)「図書館に本を返しにい……」

しまった。

(´・ω・`)「本か」

この人に。

(´・ω・`)「どんな本?」

これを見せたらっ……!

( ^ω^)「いやいやいやいやいやいや妹が返して来てくれって! 本当ですお!」

(´・ω・`)「……わかった、そう言う事にしておこう」



216 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:19:48.34 ID:P7q7rzg+0
あまり深くつっこんでくる様子もないので、心の中だけで溜息を吐く。

( ^ω^)(僕の後ろの穴が拡張するところだったお)

(´・ω・`)「僕も本を借りに行こうと思ってたんだ、一緒に行こうか」

( ^ω^)「構いませんお」

こんな偶然もあるものだなぁ、とブーンは思った。
そんなわけがないのに。


217 名前:犬と初詣 :2006/12/13(水) 13:20:51.17 ID:eczvvpL40
ブーン記憶無いのか?

219 名前:2Get!! :2006/12/13(水) 13:21:26.54 ID:eXUapwzZ0
>>217
記憶があるときとないときがあるのかなとオモテタ



218 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:21:00.22 ID:P7q7rzg+0
横断歩道の向こうに立派な建物が見えた。
VIP市の誇る市営図書館だが、三階建てでそれなりの冊数がそろえられている。

横断歩道の切り替わりは遅いが、交通量が多いので仕方ない。
二人で並んで待っていると、やがて信号が青になる。

( ^ω^)「あれ、ショボン先輩?」

一歩踏み出して渡ろうとするが、しかしショボンはついてこない。

(´・ω・`)「……ねぇ、ブーン君」

( ^ω^)「なんですかお?」

やけに重々しい口調に、ブーンは嫌な気配を感じた。

(´・ω・`)「変なこと言うようだけど、聞いてくれるかな」

( ^ω^)「……どうしましたお」

(´・ω・`)「君に――――」


『死相が見えるよ』


220 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:21:34.90 ID:P7q7rzg+0
あれ、こんな事。

前にも。あったような。

色んな部分が違うけど。

何か僕は。

やっちゃいけない事を。

やっているような――っ!。


221 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:21:53.82 ID:P7q7rzg+0
二人は立ち止まったまま動かない。

( ^ω^)「……ど、どういう意味ですかお……」

(´・ω・`)「文字通りの意味なんだけど……、困ったな、どう説明していいか」

頭をかくショボンを見ながら、脳内が危険信号を発している。

此処から逃げろ。

今すぐ逃げろ。

じゃないとお前は――――。

(´・ω・`)「うん、僕はなんとなくだけど、その人が持つ空気ってのが見えるんだ」


222 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:22:44.55 ID:P7q7rzg+0
電波か、創○か、宗教か?
この先輩はこんな人だったのか?

違う、そんな危機感じゃない。

もっともっと危ない何かが。

信号が、点滅し始める。

そんなブーンの疑問に答えることなく、ショボンは続ける。

(´・ω・`)「例えば君は周りの人を明るく出来る人間だ、周囲を柔らかくできる人間、うん、コールドリーディングと言い換えても構わないんだけどね」

――――――。

信号が、点滅し始めた。

会話する二人の横を、急いで横断歩道を渡ろうとする学生が通り過ぎる。


223 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:23:02.64 ID:P7q7rzg+0

(´・ω・`)「ただ、君は今それ以上に纏ってる空気が違う。 死にそうな人っていうのは僕にとってなんとなくわかるんだけど……」

( ^ω^)「…………ぁ」

思い、出した。

次に、来る。

……来るっ!

( ^ω^)「う、お、おおおおおおお!!!」

とっさの行動だった。

語り続けるショボンの手を引いて、後ろに下がった。

その位置に居ると、死――――


224 名前:2Get!! :2006/12/13(水) 13:23:07.86 ID:eXUapwzZ0
ブーンの謎を知ってるっぽい二人が気になる
ショボーンが初回に回数について言ってたのも気になる



225 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:23:18.42 ID:P7q7rzg+0
グシャァ、と、酷い音がした。


二人がついさっきまで居た場所、否、ブーンがついさっきまで居た場所を、横断歩道を渡ろうとしていた学生をよけたトラックが、通過した。

通過して、そのまま、信号機の柱に命中した。

( ^ω^)「あ、あ、あああ……」

彼は思い出していた、自分の一回目の死を。
同じ様に彼と話し、そして轢き潰された自分を。

彼は思い出していた、自分の二回目の死を。
彼女に相談に行き、そして突き通された自分を。

(´・ω・`)「これは……、一体……、君は……っ」

その疑問に答えられるものは、今はまだいない。

…………。


226 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:24:22.08 ID:P7q7rzg+0
川 ゚ -゚)「これが私とお前の終焉、か」

「そうなるわね」

クーは遠くの方で起こった事故を眺めていた。
自分の、九階のベランダから。

川 ゚ -゚)「長いようで、短かったな」

「……ええ」

川 ゚ -゚)「まあ、後は彼が私を助けてくれる事を期待しよう」

「……諦めがいいのね」

声が聞こえてくる。

川 ゚ -゚)「なに、自分の責任だ」

ゆっくりと、足をベランダの外へと放り出す。

川 ゚ -゚)「では、またな」

「ええ、また」

その日の四時三十五分、一人の女子学生がマンションから飛び降り自殺したという目撃情報が、警察署へと届いた。

:( ^ω^)は十回死ぬようです・続く。


227 名前:2Get!! :2006/12/13(水) 13:24:38.80 ID:eXUapwzZ0
突き通された=突き落とされた?

230 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:26:11.94 ID:P7q7rzg+0
>>227
すいません、誤字でしたorz

229 名前:1 ◆E9cmLlSr.Y :2006/12/13(水) 13:25:44.95 ID:P7q7rzg+0
と言う事で余計混乱状態の三話を投下させていただきました。

四話は明日の午後以降に投下予定です、よろしければお付き合いくださいませ。


231 名前:2Get!! :2006/12/13(水) 13:26:17.45 ID:eXUapwzZ0
今日はここまでなのか
しかしショボーンに惚れそうだwww

232 名前:牧師と初詣 :2006/12/13(水) 13:27:07.92 ID:O6xbdzmo0
超究極完全にwktk

234 名前:猪(右利き) :2006/12/13(水) 13:29:07.86 ID:/Ew0xvvV0
ブーン系でここまで描写が頭に浮かぶ文章を見たのは久しぶりだ

236 名前:初夢(見るの忘れた) :2006/12/13(水) 13:36:45.02 ID:seAmE0fb0

♪  ∧,_∧  ♪
   ( ´・ω・) ))
 (( ( つ ヽ、
   〉 とノ )))
  (__ノ^(_)
wktkが止まらないっ!

   ∧_,∧ ♪
  (( (・ω・` )
♪  / ⊂ ) )) ♪
  ((( ヽつ 〈
   (_)^ヽ__)


237 名前:猪(青詐欺) :2006/12/13(水) 13:39:31.47 ID:MFKeiPpQO
ここまででわかるのは、
・死んだ時点でその日の朝に戻る。同時にその日の死までの記憶は一時リセットされる。
・死の記憶が残るのは一回分限りではない?
(ラスト9回目の時点ではそこまでの8回分も覚えているかも?)
・何らかのきっかけが発生しない限り、その先に起きた事を思い出すことはない?

あたりかな?


240 名前:初夢(見るの忘れた) :2006/12/13(水) 13:42:03.35 ID:seAmE0fb0
>>237あと、記憶はなくても体は死ぬことを覚えている。かな

242 名前:ぬこと初詣 :2006/12/13(水) 13:45:43.52 ID:j3qhCsZiO
あと、
( ^ω^)の行動によって、一日が多少変化する。
じゃね?


245 名前:2Get!! :2006/12/13(水) 13:54:18.26 ID:eXUapwzZ0
一日目のショボーンのセリフ「五回ぐらい死んでもおつりが来そうな(略)」
二日目は四回になってる。
てことは、三日目で既に記憶がない八回目である可能性もありそうだ。

246 名前:初夢(見るの忘れた) :2006/12/13(水) 13:56:41.71 ID:seAmE0fb0
>>245おつりが来そうな
だから、それ以上死ねるとも読めるぞ


248 名前:おせち(5,000 円) :2006/12/13(水) 13:59:12.48 ID:U5TF4vnPO
いい加減 予想はよそう

250 名前:黒豆(六粒) :2006/12/13(水) 14:17:45.93 ID:JwoPGBl30
ちょっと支離滅裂がすぎるな


262 名前:猪(赤詐欺) :2006/12/13(水) 16:36:00.94 ID:Z3hxwU26O
(´・ω・`)やらないか

263 名前:年賀状(♂だらけ) :2006/12/13(水) 16:55:47.80 ID:eXUapwzZ0
( ^ω^)遠慮しますお

264 名前:猪(24才) :2006/12/13(水) 16:58:00.19 ID:WCUI2iJX0
('A`)お、俺でよければ

265 名前:猪(青詐欺) :2006/12/13(水) 17:01:45.40 ID:Z3hxwU26O
>>263
(´・ω・`)…君は、死相が(ry


>>264
(´・ω・`)ウホッ…いい男…


(`・ω・´)とりあえずそこで四つん這いになってもらおうか


267 名前:猪(36才) :2006/12/13(水) 17:16:07.79 ID:WCUI2iJX0
>>265
   ( 'A `)        「や、優しくして下さい」
     (⊃⌒*⌒⊂)
      /__ノωヽ__)


315 名前:VIP皇帝 :2006/12/14(木) 02:41:15.94 ID:5C7MkopW0
死んだ次の朝に体調が悪くなるあたり3Daysぽいなw

316 名前:猪(甘党) :2006/12/14(木) 03:22:31.27 ID:SBf39vubO
てか先読みできそうだから困る作者の腕の見せ所かな
ワクタカ


5 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:45:56 ID:irIHG3qL0
…………。

「お前は何時からそこに居たんだ」

「あなたが生まれたときからずっとよ」

「何でそんな場所にいるんだ」

「あなたをずっと見ているためよ」

「何で私を見ているんだ」

「あなたをいつか、消す為に」

…………。


7 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:47:36 ID:irIHG3qL0
■( ^ω^)は十回死ぬようです。
■三日目の放課後・開始

( ^ω^)「……はぁ、はぁ、はぁ」

(´・ω・`)「……なんてことだ」

悲惨な光景だった。
信号機の柱にぶつかったトラックから漏れ出したガソリンはそのまま炎上をはじめ、辺り一面を赤い炎で焼いていた。

( ^ω^)(これがクーの家から見た光景だったんだお……)

間一髪、瞬き一回分でも行動が遅れていたら今頃ブーンは次の『今日』を迎える事になっていただろう。

( ^ω^)(僕が死んだ場所で……同じ事が起こる……の、か?)

一番最初に死んだ日を一回目と仮定した場合でも、三回連続で同じ現象が起こっている事になる。

即ち。

( ^ω^)(これはもう偶然なんかじゃないお……)


9 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:48:47 ID:irIHG3qL0
図書館前のトラック事故は『必ず起こる』のだ。
それこそ漫画みたいな話だ、洒落にならない事がまた増えてしまった。
そしてもう一つ、わかった事がある。

( ^ω^)(僕の記憶は、前の『今日』と同じ事が起こると蘇る……?)

二回目の『今日』はツンから本を渡された時。
三回目の『今日』はショボンとこの場所で会話をした時。

( ^ω^)(……でもこれも、一度死んでしまったら思い出せないんだお)

(´・ω・`)「とりあえずここを離れようか」

思考するために飛んでいた意識が、ショボンの声により引き戻される。
遠くからサイレンの音が聞こえてくる、誰かが消防署へと通報したのだろう。
辺りには野次馬も集まり始めていて、そしてこの場所も既に炎に包まれている。

(´・ω・`)「姿勢を低くして歩くんだよ」

言われたとおりに四つんばいになりながら、その場を離れる。
しかしブーンの中にはショボンと言う存在に対して、不信感が募っていた。


11 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:49:09 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)(この人は不可解だお)

そう。
一回目の時も。

二回目の時も。

そして今回も。

ブーンの前に『不自然に現れるショボンと言う存在はあまりに不可解』なのだ。


13 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:50:07 ID:irIHG3qL0
ブーンの前に『不自然に現れるショボンと言う存在はあまりに不可解』なのだ。

「あの、大丈夫ですか? 救急車とか……」

一部始終を見ていたのだろう、野次馬の一人が話しかけてきた。

( ^ω^)「あ、問題ありませんお」

(´・ω・`)「僕もだ、少しすりむいただけだね」

そういうと、安心したのか、野次馬は燃え上がるトラックの方へと視線を移した。
トラックの運転手は助かるまい、炎は火元のトラックを完璧に焼き尽くしている。

(´・ω・`)「……しかし、まいったな」

( ^ω^)「…………」

(´・ω・`)「このままここに居たら警察の事情聴取とか喰らいそうだし……、落ち着ける場所に移動しようか」

( ^ω^)「……僕も賛成ですお」

警戒し続けるしかない、今のブーンにできることは、それだけだった。

…………。

15 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:51:46 ID:irIHG3qL0

(  ゚Д゚) 「事故だぁ?」

「はい、トラックが信号機につっこんで、ガソリンがもれて辺りが焼けてるそうです」

(  ゚Д゚) 「おいおいおいおい、マジかよ」

ブーンたちが住むVIP市の警察署、ギコはそこに所属する刑事の一人だった。
民間人からの通報だ。交通事故の一報を受けて、彼は立ち上がる。

(  ゚Д゚) 「……何人かそっちまわせ、俺も直ぐにい」

空気が、普段の落ち着いたものから緊張感のある物へと瞬時に変貌する。
直ぐに行く、と言おうとしたところで、さらに他の警察官が叫んだ。


16 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:53:33 ID:irIHG3qL0
『死体です! 死体が見付かりました!』

(  ゚Д゚) 「あぁん!? おいおいおいおいなんて日だ! 事件が二つ! 大忙しじゃねえか!」

『場所はVIP市のニュー速マンションです! 若い女性が一人、頭から血を流して倒れていたそうです! 自殺だか突き落とされたのかはわかりませんが ――』

(  ゚Д゚) 「ちぃっ、マジか、おいおいおいおい」

現場でもないのに混乱は早くも最高潮へと上り詰めていく。

(  ゚Д゚) 「しかたねぇ、俺は」

( ゚∀゚)「事故現場には俺が行く、お前はそっちの方に行け」

「俺は」、の続きは実は考えていなかったギコの肩に、無骨な手がのせられた。
声と感触に気がつき、振り向くと、サラリーマンのようなスーツをきた、程よくいい男だった。


17 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:54:18 ID:irIHG3qL0
(  ゚Д゚) 「ジョルジュ! テメェ何時帰ってきやがった!」

( ゚∀゚)「たった今だ馬鹿野郎、痴漢詐欺なんかよりよっぽど大きな事件だぜ、燃える燃える」

(  ゚Д゚) 「っち、不謹慎な野郎だ」

ジョルジュ、ギコと同じくこの街の警察署に所属する刑事。
ギコとは長年の付き合いであり、親友であり、そして。

(  ゚Д゚) 「……そっちは任せた」

( ゚∀゚)「おめーもな」

最高の相棒だった。
この二人の存在が、一人の少年を救う鍵になることは、今はまだ誰も知らなかった。


18 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:54:37 ID:irIHG3qL0
二人はファミリーレストランに居た。
人はそれなりに多いが、特に込んでいるという訳でもない。

ショボンはコーヒー、ブーンはドリンクバーからメロンソーダ。

机の上に置いて、二人は向かいあっていた。

(´・ω・`)「……まずはお礼を言っておこうか」

( ^ω^)「お?」

(´・ω・`)「君が助けてくれたから、僕はこうしてここにいる」

( ^ω^)「いや、それは……」

助けなくても、多分死んだのはブーンだけだったろう。
体が反射的に動いていただけだ、ショボンから見れば助けた形になるのだろうが。


19 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:55:20 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)(ん?)

今の思考の中に、何かひっかかりを感じた。

なんだろう、この違和感は。

(´・ω・`)「……それは、なんだい?」

( ^ω^)「あ、いやいやいや、どういたしましてお」

……どうも考え込むと上の空になってしまうらしい。
隙を見せてはいけない相手だというのに。


20 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:56:35 ID:irIHG3qL0
(´・ω・`)「……じゃあ、本題に入ろうか」

( ^ω^)「……はいお」

メロンソーダを手に取りずるずると啜る。

(´・ω・`)「聞きたい事もあるけどまずは僕から、いいかな?」

( ^ω^)「お願いしますお」

ショボンもコーヒーを手に取り、一口飲んだ。

(´・ω・`)「信じてもらえないかも知れないけど、聞いてくれ」

21 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:57:53 ID:irIHG3qL0
ほう、と息を吐いて、その視線をブーンと交わるように固定した。

(´・ω・`)「僕は死相という物が見える。 っていうのは言ったよね」

( ^ω^)「聞きましたお」

(´・ω・`)「正確に言うとね、死にそうな人の周りに黒い靄みたいなものがまとわりついてみえるんだ」

( ^ω^)「靄……」

(´・ω・`)「うん、実際、それがある人は直ぐに死んでしまう。沢山、見てきた」

ショボンの顔は、歪んでいた。
それは悲しみと悔しさと、そして憤りが混ざった表情の変化。


22 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:58:21 ID:irIHG3qL0
(´・ω・`)「だから僕は君を学校で見たとき、驚いたんだ」

( ^ω^)「僕……ですかお?」

(´・ω・`)「うん、だって君は……、僕が見てきた今までの誰よりも」


『深い死相を持っていたから』


23 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:59:02 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)「…………」

(´・ω・`)「普通の人が靄なら君にはまるで死が絡みついているようだった、黒い縄で縛られているみたいに」

きっと今もショボンの瞳には、それが映っているのだろう。

(´・ω・`)「そして死相を持っている人っていうのは、皆自覚があるんだ」

( ^ω^)「自覚……?」

(´・ω・`)「うん、自分が死ぬかもしれない、っていう自覚が」

( ^ω^)「……そうなんですかお」

(´・ω・`)「恐怖に怯えている人もいる、覚悟を決めて死を受け入れようとしている人もいる、だけど時々君みたいな人がいるんだ」


24 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 21:59:38 ID:irIHG3qL0
ショボンはブーンを見つめた。
縋るような、泣き出しそうな、怒り出しそうな、そして、決意を秘めた瞳で。

(´・ω・`)「自分が死ぬなんて微塵も思っていないで、笑って、今日を生きている人間が」

三回目の『今日』のブーンには死の記憶がなかった。
一回目の『今日』のブーンは自分が死ぬということすらわからなかった。

(´・ω・`)「だから食堂で君を見かけた時、思ったんだ」


「助けたいって」


25 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:00:13 ID:irIHG3qL0
(´・ω・`)「ずっと見てきた、人の死を見てきた、助けようとした事もあったけど全部無駄だった」

ブーンにはそれが彼の叫びに聞こえた。
だから何も言わない、メロンソーダは既に炭酸が抜け始めていた。

(´・ω・`)「だから、今度こそは……、自分の手で助けてあげたいと思ったんだ」

信じてくれるかい? とショボンは最後に聞いた。

ブーンは答える。

( ^ω^)「……ありがとう、ございますお」



…………。


26 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:01:14 ID:irIHG3qL0
(  ゚Д゚) 「綺麗な嬢ちゃんだなぁ」

周囲に『立ち入り禁止』のテープが張られている、その空間。
少女の死体がそこにあり、それを調べるための警察官たちが貼った物だった。
現場に到着したギコは、先に現場検証を行っていた調査員から詳しい事情を聞く。

「ガイシャは十六歳の高校生、名前はクー、一人暮らしのようです」

(  ゚Д゚) 「あぁん? おいおいおいおいこれで高校生かよ、世も末だな」

それはあんまり関係ない。

(  ゚Д゚) 「自殺か? 他殺か?」

「自殺の説が濃厚ですが……わかりませんね、靴は履いてませんが、室内から突き落とされたのなら……」

(  ゚Д゚) 「徹底的に洗え、手ぇ抜いたら根性焼きだ」

ギコは言い放ち、死体の顔をのぞき見る。
他の捜査員たちも、口には出さないが、大半が同じ疑問を抱いていたはずだ。

(  ゚Д゚) 「しかしなんでこいつ、こんなにも満足そうな表情をしてるんだ……?」

…………。


27 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:01:50 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)「……今度は僕が話しますお、信じてくれるかどうかわかりませんがお」

(´・ω・`)「……聞くよ」

ショボンはコーヒーを口に運ぶ。
その様子を眺めながら、ブーンはメロンソーダを置いた。

( ^ω^)「僕は今『殺されている最中』なんですお」

(´・ω・`)「それはまた……物騒だね」

( ^ω^)「ショボン先輩の言う死相っていうのも、多分それに関連している事だと思いますお」

そしてブーンは語る。

自分が今、『十回の死の中にいる』事。

ついさっき、『今まで過ごしてきた『今日』の記憶を取り戻した』事を。

そして既に、記憶にある限りでは二回、『死んでしまっている』事を


28 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:03:44 ID:irIHG3qL0
(´・ω・`)「……あんな事態を見た後、ていうか、体験した後ならね。自分の事もあるし」

( ^ω^)「…………だからって……なんですかお」

あえて何も言わず、ショボンの発言の、気になったところを聞いてみる。

(´・ω・`)「さっきのトラック……、命中したら間違いなく死んでたよね」

( ^ω^)「ですお、実際僕は一回死んでますお」

(´・ω・`)「でも君は今生きている、つまり一回死を回避した、と言い換えてもいいわけだよね」

( ^ω^)「……確かにそうですお」

(´・ω・`)「でも君の死相はまったく変化がない」


29 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:04:07 ID:irIHG3qL0
……それは、どういう意味で?
ブーンが口に出す前に、ショボンはその疑問に答える。

(´・ω・`)「普通は『死』を回避できたならその死相は消える、君の場合はせめて薄くなってもいいはずなんだけど……」

( ^ω^)「それはつまり、僕は……」

(´・ω・`)「たった今、死んでもおかしくない」

空気が冷たくなった。
自覚していた事だが、しかし口に出して言われると、恐怖が先立ってくる。
そしてそれと同時に蘇る言葉が、一つ。

『君は今、あらゆる死の危険性に直面してると言える』

『全て物事に警戒し、全ての人間を警戒するべき事態だ』

二回目の『今日』で、自分自身を殺したか弱く強い少女の台詞。


30 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:05:16 ID:irIHG3qL0
そうだ。

僕はショボンという人間を。

信じてもいいのだろうか。

さっきの言葉だけを信じるなら、二回目の『今日』、あの場所にショボンと言う存在が居た説明は、つかないのだ。

だけど彼の言葉はすべてが真実で、訴えかけているような響きが確かにあった。

( ^ω^)「…………ショボン先輩」

(´・ω・`)「なんだい?」

コーヒーは空になった様で、ことりとテーブルにカップを置く。
その仕草は、やけに様になっていた。
学食で見たときと同じように、綺麗だった。


31 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:06:13 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)「僕はどうすれば……いいと思いますお」

(´・ω・`)「それは……」

( ^ω^)「どうすれば自分が助かるのか、僕にはわからないですお」

(´・ω・`)「…………」

( ^ω^)「信頼してた友人に殺されて、何を信じて良いか僕にはわからないですお」

ショボンは何も言わず、ブーンを見つめていた。

( ^ω^)「もしかしたら『今日』が最後かもしれないと思うと、今でも怖くて振るえあがりますお……」

もしも全ての死を回避できたとして。

例えば心臓が止まったり。

例えば空から隕石が落ちてきたり。

絶対に逃げられない死が襲ってくるかもしれない。


32 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:06:29 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)「僕は、一体……」

(´・ω・`)「……あれ? ちょっと待ってくれ、ブーン君」

( ^ω^)「へ?」

叫びだしそうなぐらいに、心のどこかが爆発しそうになったその瞬間、ショボンが流れを断ち切った。

(´・ω・`)「一つ確認なんだけどね、気になった事がある」

それは物凄い『ひらめいた!』という顔だった。
頭の上に電球が浮かんでいてもおかしくない顔。
ただそれは正の方向ではなく、まるで。

(´・ω・`)「君が一回目『死んだ』時、トラックの運転手さんはどうだった?」

気がついてはいけない事を気がついてしまったような。


33 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:07:01 ID:irIHG3qL0

( ^ω^)「どうって……」

その時にはもう意識がほとんど途切れていたが、しかし自分を突き飛ばした存在から人が出てきて、叫んでいた事をなんとなく覚えている。

(´・ω・`)「でも、君が言う三回目の『今日』では、あのトラックの運転手は……」

( ^ω^)「……死んでます、お」

その場にいたから良くわかる。
炎に包まれて、そこから出てくることがなかった。

(´・ω・`)「これは仮説なんだけどね……、聞いて欲しい。 その場所で同じ様に君を殺すための現象が起こるんだとしたら」

そうだとしたら。


34 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:08:25 ID:irIHG3qL0
(´・ω・`)「君が一度死んで、だからこそ助かった。だけどトラックがあの場所で事故を起こす事はもう決まっている」

それは、考えたくも無い。
自分だけが逃げることを、許してくれない真実。

(´・ω・`)「そしてそれと誰かの『死』がセットになっているとしたら」


「君が死なない代わりに、誰かが死ぬんじゃないのか?」


36 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:09:03 ID:irIHG3qL0
( ^ω^)「そんな……まさか」

そんなはずがない、そうあってほしい。
しかし、その考えがあっているとしたらなら――

( ^ω^)「クーは……」

(´・ω・`)「ん?」

( ^ω^)「僕はあのマンションから突き落とされて『死んだ』んだおっ!」

立ち上がる。
周りの人間が何事かと視線をこちらに向けるが、気がつかない。

( ^ω^)「僕の代わりに誰か死ぬって言うならあの場所で! 誰かが落ちて死ぬとしたら! それは!」

カラン、と、喫茶店のドアが開いた。


466 名前:黒豆(七粒) :2006/12/14(木) 22:15:57.67 ID:V36vh+emO
こういう展開は好きだ


39 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:10:37 ID:irIHG3qL0
そこには一人の男が居た。

サラリーマン風のスーツに、しかし鋭い眼光と、物腰。

その男はブーンを見ると、胸元から一枚の紙を取り出した。
この立ち位置からは見えないが、それの質感は写真のようだった。

ゆっくりと近づいてくる。

カツ、カツ、カツ、と、かかとの音を鳴らしながら。

「すげぇな俺たち所轄は。エリート共にゃ負けない情報力だ。」

その男はにやりと笑って、言った。

( ゚∀゚)「警察だ、話を聞きたい」

あまりのその唐突な登場に、二人はまだ現状を把握できなかった。

( ゚∀゚)「拒否権は無しだ、泣こうが喚こうが、ちぃっと顔借りる事になるぜ?」

:( ^ω^)は十回死ぬようです、続く。


41 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:11:53 ID:irIHG3qL0
ということで、三日目が妙に長いですが、本日の投下は終了です。

>>36の『喫茶店の扉~』は『ファミレスの扉~』の誤字です、失礼致しました。
明日中に次の投下を行いたいと思いますが、時刻は未定です。

お付き合いいただき、ありがとうございました。


あとがき

469 名前:おみくじ(犬吉) :2006/12/14(木) 22:17:49.44 ID:P2yErIzf0
乙!


44 :名無しさん:2006/12/14(木) 22:12:46
1おつかれー
wktkがとまらねぇwwwwwwwwwwwww
しかし読んでてなぜかひぐらしを連想したのも事実だwwwwwwww



47 :1 ◆E9cmLlSr.Y:2006/12/14(木) 22:16:05 ID:irIHG3qL0
>>44
ひぐらし、歌月十夜、君と居た未来の為に、など本スレで取り上げられているものが根源にあったりします。
使い古されているテーマではありますが、自分なりにアレンジしていけたらと思います。
一度漫画にしようとして挫折したものではありますがorz
期待せずにお待ちください。



次スレ→( ^ω^)は十回死ぬようです その2


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