幼女「とうもろこし、いる?」【中編】

2010-12-08 (水) 01:12  オリジナルSS 幼女   0コメント  
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モンスターペアレント―ムチャをねじ込む親たち


前→幼女「とうもろこし、いる?」

267 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 14:26:04.54 ID:MSADbkGP0
男「──へぇ、それで女の子とライバルになったのか?」

幼女「うん!」

男「こんな年齢から三角関係……なのか?」

幼女「ちがうよ、らいばるだよ」

男「うーん……、そうだな。ライバルだな」



268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 14:27:43.23 ID:MSADbkGP0
幼女「うん、ふぉれでね。ふぉれでね」

男「口にもの入れたまま喋るんじゃない、しっかり噛んでからにしなさい」

幼女「……」コクコク

幼女「……」モグモグ

幼女「……」ゴックン

幼女「おいしい!」

男「そうかい」



269 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 14:28:39.67 ID:MSADbkGP0
男「よし、お昼ご飯食べ終わったら買い物に行こう」

幼女「わー! おでかけー!」

男「隣町に新しく出来たっていうショッピングモールに行こうとおもう」

幼女「ゆうえんち?」 

男「ショッピングモールだよ、人がたくさん居て色んなものが売ってて広くて大きい建物だ」

幼女「う~~~~、たのしみ!」

男「はは、そうかい」



273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 14:29:58.26 ID:MSADbkGP0
パタン

男「よし、乗ったな?」

幼女「うん」

男「シートベルトは?」

幼女「つけたよ」

男「よし」

幼女「しゅっぱーつ!」

ブロロロロロロロロロ……



274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 14:31:37.02 ID:MSADbkGP0
幼女「くるまはやーい」

男「そうだな、自転車よりは速いかな」

幼女「ろけっととどっちがはやいの?」

男「う~ん、そりゃロケットの方が速いなぁ」

幼女「う~~~~」

男「空とんでるからな、相手は」

幼女「おじさんも空とべる?」

男「どうだろう」



275 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 14:33:28.69 ID:MSADbkGP0
幼女「あ、止まっちゃった」

男「赤信号だからな」

幼女「う~~~~」

男「歩いてる時も赤は止まれだろ?」

幼女「?」

男「車も同じさ」

幼女「おんなじなの??」

男「交通ルールってやつさ、守らないと皆が困るからね」

幼女「そっか、わかった!」



276 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 14:35:07.61 ID:MSADbkGP0
男「よし、着いたな」

幼女「うんっ」

男「じゃー、何から買おうか」

幼女「なにをかうのー?」

男「晩御飯の食材と、日用品と。あと好きなもの何でも1個買ってあげよう」

幼女「ほんとっ?!」

男「あぁ、本当さ」

幼女「やったぁ!」



277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 14:36:46.35 ID:MSADbkGP0
幼女「わぁ……ひろーい」

男「そうだね、広いなあ」

幼女「おうちより広いね」

男「はは、家の100倍はあるかもな」

幼女「あ! きらきらがある!」

男「きらきら?」


○○宝石店


男「なん……だと……」



279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 14:39:10.84 ID:MSADbkGP0
幼女『おじさん、これ欲しい!』

男『お、決まったか』

幼女『うんっ』

男『どれどれ』

幼女『あのね、なんでもひとつかってくれるんだよね』

男『ああ、約束だからね』

幼女『じゃあ、これっ!』

男『なになに……、真珠のネックレス?』


価格35万円


男『なん……だと……』



281 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 15:00:13.40 ID:MSADbkGP0
ナン……

ダト……


幼女「おじさん」

男「なん……だと……」

幼女「おじさーん?」

男「はっ?!」

幼女「おじさんどうしたのー?」

男「あ、あぁ、なんでもないよ」

幼女「おいていくよー?」

男「あぁ、すまない。もうきらきらは良いのかい?」



282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 15:02:07.16 ID:MSADbkGP0
幼女「うんっ、あたしこれあるもん!」

キラッ

男「貝のネックレスか」

幼女「うん」

男「似合ってるぞ」

幼女「えへへ、おじさんとおそろい」

男「そうだな、おそろいだな」



283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 15:05:48.03 ID:MSADbkGP0
男「それじゃあ食材を買おうか」

幼女「ごっはん、ごっはん♪」

男「好きなもん作ってやるぞ、何が良い?」

幼女「う~~~」

男「なんでもいいぞ?」

幼女「とうもころし!」

男「とうもろこしだろ?」

幼女「う~~~~~」

男「ははっ」



284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 15:09:16.74 ID:MSADbkGP0
男「じゃあトウモロコシと、あと何だ?」

幼女「たこさんういんなー」

男「トウモロコシとウインナー……、パスタでいいか?」

幼女「あのね」

男「ん?」

幼女「おじさんのりょうり、何でも好き! だからパスタも好き!」



285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 15:14:57.30 ID:MSADbkGP0
ワイワイ

ガヤガヤ


──ザリッ

『ターゲットを目視で確認しやした』

──、了解ですの。

『これから手はず通りに事を進めますぜ』

──、やっておしまい。

『はぁ……、しかしいいんですかい? あんな小さな子を……』

──、お灸を据えてやりますの! 天罰ですのよ! その為のお金は支払ってますの!

『はいはい、わかりましたぜ』



288 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 15:25:59.11 ID:MSADbkGP0
『ん』

──、どうしたましたの?

『ターゲットに接近する人物を確認しやした』

──、誰ですの?

『さあ? 資料にはなかった顔ですぜ』

──、むきーーーー! ここにきて邪魔者ですの?!

『どうしやす? 中止にしやすか?』

──、中止なんてありえないですの!

『はぁ……了解、切りますぜ』

──ザリッ



289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 15:30:08.92 ID:MSADbkGP0
先生「あれ?」

男「あ、どうも」

幼女「わー、せんせー」

男「こんにちは、先生もお買い物ですか?」

先生「こんにちは、偶然ですね。そちらも?」

幼女「とうもころしと、たこさんういんなーだよ!」

先生「そう、良かったわねぇ」

幼女「うんっ」



290 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 15:32:32.03 ID:MSADbkGP0
男「今日はいつもとなんだか印象が違いますね先生」

先生「あはは、いつも幼稚園ではジャージですもんね」

男「そのスカート、とってもお似合いですよ」

先生「あ……ありがとうございます」

男「それでは、また明日」


先生「あ! あのっ!」

男「はい?」

先生「よ、よければ一緒に回りませんか?」



291 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 15:37:14.53 ID:MSADbkGP0
男「ええ、いいですよ。せっかくですからね」

先生「や、やった」

男「?」

幼女「……」じー

男「じゃあ行きましょうか」

先生「はいっ」



292 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 15:39:53.54 ID:MSADbkGP0
男「これと、これと。あと、これ……か」

先生「たくさん買われるんですね?」

男「ええ、大型店だとディスカウントされてますからね。このトイレットペーパーなんか地元のスーパーより150円も安いんですよ」

先生「そ、そうなんですか」

男「先生のカゴは随分インスタントが多いみたいですね?」

先生「え、あ、はい。あの、私……あんまり料理が得意じゃなくて、ついついこういうのに頼ってしまうんですよね」

男「それじゃあ栄養も偏るでしょう」

先生「そうなんですよ~」



295 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 16:04:32.90 ID:MSADbkGP0


男『よろしければ今度の日曜日、うちでご飯をご馳走しますよ』

先生『えぇ?! いいんですか?』

男『あの子がいつもお世話になっている御礼です』

先生『そんな……私は何も……』

男『いいえ、この際だから申し上げます』

先生『は、はい? なんですか?』

男『先生、ずっと一目見た時からあなたの事が好きでした。結婚を前提にお付き合いください』

先生『は……はい……喜んで……』



296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 16:06:29.32 ID:MSADbkGP0
先生「そんな……でも……あぁ……」

男「先生?」

先生「ひゃっ!?」

男「どうしたんですか? 何か考え事でも?」

先生「な、なんでも! なんでもないです!」

男「そうですか?」

先生「ええ、なんでも! はい!」



294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 16:00:09.35 ID:yRw3lzqQ0
あ、先生は俺の嫁だった



297 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 16:09:27.29 ID:MSADbkGP0
男「……好き……な……ありますか?」

先生「好きっ?!」

男「何か好きな食べ物はありますか?」

先生「あ、……食べ物、ですか」

男「えぇ」

先生「肉じゃがとか、ビーフシチューとか」

男「おぉ、家庭的ですね」

先生「……を、作ってみたいです」

男「なるほど」



298 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 16:15:03.48 ID:MSADbkGP0
男「料理もやってみると意外と楽しいものですよ」

先生「そうでしょうか、私……不器用だから……」

男「始めてみると、新しい自分が見つかったりするかもしれませんよ」

先生「新しい……自分、ですか」

男「私もあの子を預かってから色々と始めてみましたが、料理も一通りは作れるようになりましたよ」

先生「すごいですね……子育てされてるんですもんね」

男「いや私なんてまだまだ。むしろあの子から教えられる事の方が多いくらいですよ」



301 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 16:33:26.31 ID:MSADbkGP0
先生「……あの」

男「?」

先生「こうしてると、その、夫婦、みたい……ですよね」

男「……しまった」

先生「え、どうしたんですか?」

男「あの子が居ない」

先生「へ?」



302 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 16:36:02.48 ID:kVF/MPtCO
なっなんだってー!



304 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 16:43:16.60 ID:MSADbkGP0
先生「どうしよう……、あの、私ったら会話に夢中になってて……ああ、ごめんなさい!」

男「落ち着いてください、子供の足です。そんなに遠くに行ったとは思えない」

先生「そ、そうですね」

男「先生はこの事を警備員に伝えてください、私はあの子を探してきます」

先生「は、はいっ」



317 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 18:53:48.22 ID:MSADbkGP0
ワイワイ

ガヤガヤ


便利屋「で」

幼女「次はあそこあそこ!」

便利屋「なんであっしはお嬢ちゃんのお守りなんぞやってんでしょうね」

幼女「次は二階~!」

便利屋「へいへい、ちょいと待つっすよ」

幼女「はやくはやく~」

便利屋「っていうか、ターゲットが向こうからこっちに来るなんて。あっし今日まだ何もしてないっすよ……ラッキーというか幸運というか」

幼女「おいていくよ~」

便利屋「あ~もう、ちょっと待つっすよ~」



319 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 18:55:17.81 ID:MSADbkGP0
便利屋「はぁ……、いつまでこんな便利屋なんて仕事をやってるんすかね……あっしは」

幼女「るんるん♪」

便利屋「お得意さんからの依頼だから引き受けちまったけど……」

幼女「るーんるん♪」

便利屋「よく考えたらこれ誘拐なんじゃ……」

幼女「るんるーん♪」

便利屋「はぁ……正直もうこんな仕事辞めて実家に帰りたいですぜ……」

幼女「次あっち~」

便利屋「あ、こらこら。一人で行っちゃだめっすよ~、迷子になるっすよ~」



320 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 18:56:44.86 ID:MSADbkGP0
幼女「次はここ!」

便利屋「へいへい」


幼女「次はあっち~!」

便利屋「ふえ~い」


幼女「えっとね、次は──」

便利屋「屋上の遊園地がそんなに楽しいんすかねぇ」



321 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 18:58:18.12 ID:MSADbkGP0
幼女「つぎは~あっちに行きたい!」

便利屋「お嬢ちゃん、ちょっと休憩しやせんかい?」

幼女「う~~~~」

便利屋「アイスでも買ってきやすから」

幼女「わー! ありがと!」

便利屋「はぁ……子供は暢気でいいっすねぇ。ほら、あそこのベンチに座るっすよ」



322 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 18:59:28.60 ID:MSADbkGP0
便利屋「ほい、買ってきたっすよ」

幼女「お兄さんありがと!」

便利屋「お安い御用っすよ」

幼女「ねーえ?」

便利屋「何ですかい?」

幼女「お兄さん、だーれ?」

便利屋「あっしですかい?」

幼女「うんっ」

便利屋「お嬢ちゃんのおじさんのお友達……っすよ」

幼女「おじさんの?」

便利屋「えぇ、そうっすね」



323 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 19:03:53.40 ID:MSADbkGP0
幼女「じゃあ、お兄さんもとうもろこし食べにくる?」

便利屋「トウモロコシ?」

幼女「うんっ、ばんごはん」

便利屋「トウモロコシ、……か」

幼女「?」

便利屋「いや、なんでもねぇです」



324 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 19:06:11.49 ID:MSADbkGP0
幼女「あのね、とうもろこしってとってもおいしいんだよ!」

便利屋「知ってやすぜ」

幼女「たいようのあじがするの」

便利屋「っ」



325 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 19:07:04.26 ID:MSADbkGP0
────────
────
──


『いいかぁ、よく聞け息子よ。農家ってのは太陽の味を作ってんだよ』

『太陽の味?』

『おうよ、お天道さんがくれたものを父ちゃん達がこうやって形にしてるのさ』

『ふ~ん』

『見ろ、この玉蜀黍。太陽の色してんだろ?』

『ただの黄色じゃん』

『かっかっか、お前にゃまだわからんか』

『むー、なんだよ』



326 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 19:08:32.40 ID:MSADbkGP0

便利屋「……太陽の味、……か」




幼女「とうもころしきらい?」

便利屋「とうもろこし、ですぜ」

幼女「すき?」

便利屋「あっしの実家は農家ですぜ、玉蜀黍なんか毎日食ってやした」

幼女「えぇ~! いいなぁ」

便利屋「本場の玉蜀黍をしらないとはお嬢ちゃん、モグリですぜ」

幼女「もぐら?」



328 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 19:12:15.99 ID:MSADbkGP0
幼女「じゃあこんど、お兄さんの作ったとうもころし食べさせてね!」

便利屋「……っ」

幼女「どうしたの?」

便利屋「いや……、なんでも無いですぜ」

幼女「どこかいたいの?」

便利屋「心が……少し」

幼女「あのね」

便利屋「?」

幼女「なきたいときは、ないてもいいんだよ?」

便利屋「……はは」

幼女「いいんだよ」

便利屋「……お嬢ちゃんの方が大人っすね」

幼女「こどもだよ?」



329 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 19:19:15.74 ID:MSADbkGP0
────────
────
──


『子供なんかじゃねぇよ!』

『なんだと! 父ちゃんに向かってその口の利き方はなんだ!』

『うるせえ! なんでわかってくれねぇんだよ! もう……もう、こんな家かえらねぇよ!』

『……今何て言ったっ?!』

『もう出てくって言ったんだよ!』

『……お前はまだ子供だ、……アテはあるのか? ちゃんと食べていけるのか?』

『今更父親面すんじゃねーよ!』



330 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 19:22:47.65 ID:MSADbkGP0


便利屋「お嬢ちゃん、よく聞いてほしいっす」

幼女「なあに?」

便利屋「あっしは、お嬢ちゃんに嘘をついてやした。あっしは本当はおじさんの友達なんかじゃないんですよ」

幼女「えぇっ、そうなの?」

便利屋「本当は……悪の組織に雇われてる悪い人間なんですよ」

幼女「あくのそしき?」

便利屋「だから……、騙しててごめんなさいっす」



332 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 19:27:48.51 ID:MSADbkGP0
────────
────
──

『お前……俺を騙してた……のか?』

『はっ、ひっかかるお前の方が悪いんだろうが』

『ちょっと待ってくれよ、お前を信じて家まで飛び出してきたのによ!』

『そんなの知ったこっちゃねぇよ。金さえ貰えれば俺はそれでいいの、じゃ』

『まっ……待てよ! 待ってくれ!』

『ははは、あばよ~』

『そん……な……』



333 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 19:29:06.39 ID:MSADbkGP0

『くそ……あいつ……畜生っ……』

『何が儲かる話だ! 何が……くそ!』

『あれだけ親父に啖呵きって……家出までして、これからどうすりゃいいんだ……』

『金も全部もっていかれちまったし……』

ゴソゴソ

『ん? カバンの奥のほうに……なんだこの箱?』

カパ

『封筒と、なんだこりゃ、トウモロコシ?』

『ん? 封筒の裏に何か書いてるな』



少ないけれど、もっていきなさい。

それと、おなかがすいたらたべなさい。


父より。



334 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 19:29:59.76 ID:A5MbJTbm0
ブワッ



335 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 19:36:36.03 ID:8XuTAM2o0
いい話しすぎてワロタ



340 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:02:11.92 ID:420RharHO
こんなかわいい幼女がいたら生きているのが楽しすぎてつらいだろうな



342 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:20:44.31 ID:bl7rw4zS0
農家頑張るわ俺



343 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:22:23.48 ID:MSADbkGP0
モグモグ

『あぁ……』

モグモグ

『しょっぺぇなあ』

モグモグ

『……』

モグモグ

『太陽の、あじ……か』



344 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:28:57.77 ID:MSADbkGP0


便利屋「……あっしは、本当に……っ。……大バカ野郎なんすよ」



便利屋「ごめん。ごめんな、お嬢ちゃん」

幼女「お兄さんはわるくないよ?」

便利屋「いや、事実こうやってお嬢ちゃんを──」

幼女「お兄さん、一緒にあそんでくれたもん」

便利屋「そういう手口なんすよ」

幼女「アイスもくれたし」

便利屋「大人は金持ちなんすよ」

幼女「それに!」

便利屋「……それに?」

幼女「とうもころし好きなひとに悪いひとは居ないんだよ」

便利屋「──っ」



345 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:29:54.29 ID:MSADbkGP0
幼女「お兄さん、ちゃんとごめんなさいしたから」

便利屋「……え?」

幼女「あたし、今日はお兄さんと遊んだだけ」

便利屋「お嬢、ちゃん?」

幼女「お兄さんも、今日はあたしと遊んでただけ」

便利屋「お嬢ちゃん……」

幼女「あくのそしきなんかにまけないで」

便利屋「あぁ……、合点承知ですぜ」

幼女「それじゃ、あたしおじさんのところに戻るね」トコトコ



346 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:30:50.81 ID:MSADbkGP0
便利屋「お嬢ちゃん!」

幼女「うん?」

便利屋「あっしは……もう一度、最初から頑張ってみるっすよ!」

幼女「うんっ」

便利屋「あっしの作ったとうもろこし、食べてくれっす」

幼女「わかった!」

便利屋「達者で!」

幼女「ばいば~い」



347 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:37:23.96 ID:MSADbkGP0

男「……はぁ……。あの子、一体どこに行ってしまったんだ……」

男「私さえもっとしっかりしていれば……」

男「……だから、文章も書けなくなってしまったんだろうな……」

男「いや、今は弱音を吐いている場合じゃない」

男「まだ探していないところがあるはずだ」



349 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:41:31.84 ID:MSADbkGP0
先生「あのっ!」

男「あ、先生」

先生「警備員の人にも協力してもらいましたが、1階と2階には居ませんでした」

男「となると、3.4.5階ですか」

先生「それと、あと屋上ですね」

男「屋上?」

先生「えぇ、子供があそべる、ちょっとした遊園地みたいなのがあるらしいですよ」

男「遊園地?」



350 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:42:18.62 ID:MSADbkGP0
男『隣町に新しく出来たっていうショッピングモールに行こうとおもう』

幼女『ゆうえんち?』

男『ショッピングモールだよ、人がたくさん居て色んなものが売ってて広くて大きい建物だ』

幼女『う~~~~、たのしみ!』


男「まさか……」

先生「あ、っと。どこ行くんですかっ?」

男「屋上です! たぶんそこにっ」 



351 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:51:47.83 ID:MSADbkGP0
先生「……居ませんね」

男「くっそ! 私は……、私は一体何をやっているんだ……」

先生「諦めないでください!」

男「っ」

先生「私達が諦めて、どうするんですか」

男「……」

先生「大丈夫です、きっと」

男「えぇ、すみません。ちょっと頭に血が昇っていました」



352 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:53:16.99 ID:MSADbkGP0
先生「きっと、きっと……お腹がすいたらもどってきますっ」

男「どういう理論ですか、それ──」


ピンポンパンポーン

「迷子センターです。白のワンピースに、貝のネックレスをした4歳の女の子を預かっております」

「繰り返します、迷子センターです──」

「──、2階の管理事務局までお越しください」

ピンポンパンポン


先生「ね?」



353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 20:57:04.46 ID:MSADbkGP0
男「すみません、さっきの放送の子。私の家族かもしれないのですが」

「はい、お名前を教えていただいてもよろしいですか?」

幼女「あ、おじさん!」

トコトコ

幼女「わ~、おじさんだ~!」

男「まったく……、急に居なくなるから、びっくりしたぞ」

幼女「ごめんなさい」

男「こわかったか?」

幼女「ううん、こわくなかったよ!」

男「そうか、よかった……本当に、よかった」



354 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 21:01:43.32 ID:MSADbkGP0
「しっかりしたお子さんですね。泣きもせず自分から’迷子です’って尋ねてきましたよ」

男「そうなのか?」

幼女「うんっ」

男「はは、こいつは参ったな」

「これからはちゃんと見ていてくださいね」

男「はい、ご迷惑をおかけしました」

「いえいえ」



356 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 21:08:50.25 ID:MSADbkGP0
幼女「あ、せんせ~」

先生「良かった、ちゃんと見つかったんですね」

男「えぇ、本当に色々協力していただいてありがとうございました」

先生「そんな、頭を上げてください。私は何も……」

男「いえ、感謝してもしきれないくらいです」

先生「いえいえ、それじゃあ私はこれで……」

男「一度きちんと御礼をさせてください」

先生「え?」



357 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 21:09:31.59 ID:MSADbkGP0
男「次の休みの日にでも、私でよければご飯でもご馳走させてください」

先生「……」

男「先生?」

先生「へ?」

男「どうでしょうか?」

先生「え? あぁ、もう全然、全然オッケーです!」

男「でしたらまた詳しい事は後でご連絡致しますね」

先生「はひっ!」



359 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 21:11:09.34 ID:w00nqtfD0
先生かわいいよ先生



360 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 21:12:20.31 ID:MSADbkGP0
幼女「せんせ~、何かヘンだったね?」

男「そうか?」

幼女「む~~~~」

男「さあ、帰って晩御飯を食べようか」

幼女「とうもろこし!」

男「パスタな」

幼女「とうもころし!」

男「とうもろこし、な。ん? ちょっと待ちなさい、口の周りに何かついてるぞ」

幼女「えっと、これはね。ア」

男「あ?」

幼女「あ~~、なんでもなーい」



361 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 21:16:09.53 ID:MSADbkGP0
ワイワイ

ガヤガヤ


男の子「んだよお前、迷子になったのか?」

女の子「えぇ? そうなの?」

幼女「うんっ」

女の子「だいじょうぶだったの? ヘンな人に連れていかれたりしなかった?」

幼女「ヘーキだよ!」

男の子「だっせーな、俺だったら絶対迷子なんかになんねーし!」

女の子「わたしだったら……、どうなるんだろう」

男の子「お前だったらぴーぴー泣いてそうだな!」



363 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 21:18:20.04 ID:MSADbkGP0
女の子「なっ、なんですって!」

男の子「ひえっ?」

ポーン

幼女「あ、ボールが」

男の子「やべっ、また雷ジジイの畑に……」

女の子「ふん、ジゴウジトクよ」

男の子「く……」


「こらー、誰っすかー。あっしの畑にボール蹴りいれたのはー、ダメっすよー」


三人「ご、ごめんなさーい」



369 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 21:34:47.50 ID:MSADbkGP0
保護者『失敗! 失敗ですの! あんな子供如きに諭されてどうするんですの! 連れ去って近くの公園に放置する契約でしたの!』

『奥さん、あっしはお金よりももっと大切な事を教えてもらいましたぜ』

保護者『むきーーーーーーーー! 何を生意気な! 世の中金、金、金ですの!』

『貰った金は返すっす、そんなに金が好きならもっていきやがれ』

保護者『べ・ん・り・や・ふ・ぜ・い・がぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!』

『あっしはもう店をたたみますぜ、仕事なら他を当たってくれ』

保護者『むきーーーーーーーー!』

保護者『おさまらない! このままでは腹の虫がおさまりませんの!』

保護者『このままでは終わりませんの!』



383 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 23:04:20.55 ID:MSADbkGP0
◇ ◇ ◇ ◇



キュキュ


ゴクゴクゴク


男の子「……、ぷはー! 生き返るぜ!」

女の子「もう、水道水がぶ飲みなんてはしたないわね」

男の子「こまけぇことはいいんだよ!」

女の子「まったく……おおざっぱなんだから。そう思わない?」

幼女「うん、おおざっぱ」

女の子「ほら、2対1よ?」

男の子「ぐ……」



384 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 23:07:14.07 ID:MSADbkGP0
男の子「2対1がなんだ、すーてきふりでも突破しなきゃゴールはうばえないだぜ!」

女の子「数的不利なんて難しい言葉よくしってるわね、意味わかってんの?」

男の子「もっちろん!」

女の子「どうだか、怪しいもんね」

男の子「あ、カアちゃんだ! おーーーーーーーーーーーーーーい!」

「かえるわよー」

男の子「じゃあな二人とも! まった明日~」

幼女「ばいばい」

女の子「またあしたね」

男の子「じゃあな~!」



385 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 23:14:39.45 ID:MSADbkGP0
女の子「それじゃあ次は何してあそぼっか?」

幼女「んーとね」

女の子「あやとりする?」

幼女「うんっ」

女の子「じゃあ取ってくるね」

幼女「あ、おじさんだ!」

男「おーい、迎えにきたぞ」

幼女「おじさーん!」

男「今日も楽しかったか?」

幼女「うんっ、あのねっ、今日はね──」

男「そうかそうか、帰ったら詳しく聞かせてくれ」

幼女「うんっ! それじゃああたし、帰るねっ」

女の子「あっ、うん……ばいばい」

幼女「ばいば~い!」



386 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 23:23:21.21 ID:MSADbkGP0
保護者「あーーーーーーーーーーーーーら?」

男「?」

保護者「ごきげんあそばせ」

男「保護者さん、こんにちは」

保護者「男性が毎日こんな時間に送り迎えって大変じゃあーーりませんの?」

男「いえ、私は自由業ですので時間の融通はきくんですよ」

保護者「まっ、まままままままま。定職には就かれてませんの?」

男「えぇまあ」

保護者「そのお年で定職に就かれてない……不憫、不憫ですの。わたくし、涙がほろりほろりとこぼれてしまいますの」

男「はぁ……」

保護者「知り合いの会社を紹介してあげてもいいですの。ちょーっと1年くらい遠い海での仕事ですの、オーッホッホ」

男「せっかくのお話ですが謹んでお断り致します」

保護者「まっ、人の厚意を無下にするなんて……ひどい人ですの」



388 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 23:28:09.25 ID:MSADbkGP0
男「私は今の生活に満足していますから」

保護者「後で後悔しても遅いですのよ」

男「えぇ、ありがとうございます」

保護者「……ふん」


女の子「……」

幼女「おじさんたち、むつかしいおはなししてるね」

女の子「ごめんね」

幼女「え?」

女の子「おかあさん、……ああいう人だから」

保護者「帰りますのよ!」

女の子「はい」

幼女「ばいばい」

女の子「ばいば──」

保護者「ほら! さっさと行きますの!」



390 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 23:39:33.47 ID:MSADbkGP0
男「私達も帰ろうか」

幼女「あのね、おじさん」

男「なんだ?」

幼女「あたしのおかあさんって、どんなひと?」

男「……ん」

幼女「おとうさんは?」

男「……」

幼女「どこに居るの?」

男「お前の両親は」

幼女「うん」



391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 23:41:15.32 ID:MSADbkGP0
男「……すまん、今は話せない」

幼女「む~~~」

男「すまない……」

幼女「それじゃあ」

男「ん?」

幼女「さんたさんに聞いてみるね」

男「あ……あぁ、そうだな」



393 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 23:46:56.08 ID:MSADbkGP0

幼女「おやすみなさーい」


スヤスヤ

スヤスヤ


パタン


Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr......


男「姉さん?」

『よー、元気してるか弟よ』



395 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 23:52:52.30 ID:MSADbkGP0

男「元気さ、相変わらずだよ」

『相変わらず暗い声してるなー!』

男「姉さんに似て暗い声してるよ」

『あっそ』

男「そっちはどう?」

『さっむい、昨日から雪ふってる』

男「こっちはまだ暑いよ」

『日本の夏は世界で一番蒸し暑いわ、誇って良いわよ』

男「あんまり誇らしげに思えないんだけど」



397 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /27(月) 23:57:26.42 ID:MSADbkGP0
男「それで、今日はどうしたのさ。声がいつにも増して弾んでる気がするけど」

『捜査に進展があったの』

男「へぇ」

『これであの人の冤罪を証明できるかもしれない』

男「……姉さん」

『なによ』

男「その台詞、聞いたの5回目だよ」



398 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 00:00:58.27 ID:6NeKsvfc0
『捜査にはね、現場100回っていう言葉があるの』

男「うん」

『まだ5回目よ』

男「……101回になったら?」

『そんなの決まってるわ』

男「?」

『102回目になるだけよ』

男「いつになるんだよ、それまで」

『いつまでもよ』



399 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 00:03:56.40 ID:6NeKsvfc0
男「今日、あの子に言われたよ」

『何て?』

男「お母さんはどんな人かって」

『……そう』

男「なぁ姉さん、そろそろ帰ってこいよ、一回でいいから会ってやれよ」

『だめ、まだだめ。もう少し』

男「あの子の子供時代は一回しか無いんだぞ」

『わかってる』

男「わかってない」

『わかってるわ』

男「わかってないよ……」

『……そうね、ごめん』



401 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 00:14:24.24 ID:6NeKsvfc0
男「姉さんにとって大事なものは何か、もう一度かんがえなよ」

『……』

男「旦那さんの事、諦めろって言ってるんじゃないよ。ただ、自分の娘と顔を合わせるくらい……」

『怖いの』

男「怖い、ね」

『あの事件の後、あたしは夫を選んだ。……この手は二つあるのにね』

男「あの子は姉さんを待ってる」

『あたしがあの子の立場だったら母親の事、きっと憎んでると思う』

男「姉さん」

『自分を捨てて外国で旦那の冤罪を証明する事が生き甲斐のバカな女、それがあたしよ』

男「あんまり自分の子供を見くびらない方が良い」

『──っ』

男「あの子は、姉さんが思ってるよりずっと強いよ」



402 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 00:17:10.15 ID:6NeKsvfc0
『はっ、だったらなおさらよ』

男「……姉さん」

『……もう切るわね』

男「クリスマス、あの子が楽しみにしてる」

『クリスマス?』

男「サンタさんがモンブランを持ってきてくれるってな」

『そう』

男「姉さん」

『切るわよ』

男「姉さん!」


プツッ

ツーツー……ツーツー……



418 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2010/09/28(火) 02:18:02.86 ID:dEbzPf3N0
こっち夏で向こう雪、オーストラリア付近かと思ったらアメリカ…?
こまけー事はいいかw




404 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 00:32:12.58 ID:6NeKsvfc0

男「アメリカ合衆国と日本か」

男「絶望的な距離だな……物理的にも精神的にも」

男「いっそのこと、こちらから乗り込むか?」

男「いや、……それじゃあ意味がないんだよな」

男「姉さんが、ちゃんとあの子を受け入れる事ができなきゃいけないんだ」


男「その時が来たら……」


男「その時が来たら、私は喜べばいいんだろうか?」

男「はっ、何を」

男「そんなの喜ばしいに決まってる」


男「……喜ばしいに、決まってる」



406 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 00:36:20.95 ID:6NeKsvfc0
チュン……

チュンチュン


幼女「おじさーん、朝だよー!」

男「ん……、あぁ、おはよう」

幼女「おはよー!」

男「随分はやいな」

幼女「えへへ、早起きしちゃった」

男「偉いな、早起きは三文の得と言うからね」

幼女「さーもん?」



408 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 00:42:18.54 ID:6NeKsvfc0
男「……プ」

幼女「?」

男「……ク、あはははは」

幼女「おじさん?」

男「いや、すまない。……ははは、さーもん、そうか。サーモンか」

幼女「おじさんがおかしいー」

男「はぁ笑った、ありがとう。暗い気持ちも吹き飛んだよ」

幼女「う~~~~」

男「ん?」

幼女「おじさんばっかりわらってずるい!」

男「あはは」

幼女「う~~~~、またわらった~!」



410 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 00:58:38.37 ID:6NeKsvfc0
男「よーし、それじゃ着替えて朝ごはんだ」

幼女「うんっ」

男「今日のお弁当は気合を入れて作ってあげるよ」

幼女「えーっ、なになに?」

男「そうだな、トウモロコシとタコさんウインナーと、あとそれから──」

幼女「やったぁ!」



450 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 15:11:32.67 ID:6NeKsvfc0
幼女「う~~~~~」

「わん!」

幼女「わんわん!」

「う~~~~~~」

幼女「う~~~~」

「わん! わん!」

幼女「わん!」

「う~~~~」



男「どっちが犬だ」



452 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 15:19:09.05 ID:6NeKsvfc0
「わん! わん!」

幼女「このこ、どうしたの?」

男「お隣さんが旅行に行くみたいでな、預かってきたんだ」

幼女「へぇ~」

男「こわいか?」

幼女「ううん」

男「実を言うとな」

幼女「うん?」

男「私は……その、すこし」

幼女「どうしたの、おじさん?」

男「犬が、怖いんだ……」

「わん!」

男「……」ビクッ



453 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 15:20:53.87 ID:D+lOTTgoP
おじさん可愛い



460 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 15:42:16.04 ID:V5lr16+h0
わんわんお!



454 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 15:23:02.35 ID:6NeKsvfc0
幼女「こわくないよー?」

男「そ、そうか?」

幼女「あたまなでなでしてあげると喜ぶよ?」

男「頭……噛まれないか?」

幼女「だいじょうぶ、ほら」

「くぅ~ん……」

幼女「ね?」

男「む……」

幼女「ほらほら」

男「……ぐっ」

「わん!」

男「ひっ?」



455 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 15:25:05.76 ID:6NeKsvfc0
幼女「……」

男「……」

幼女「……おじさん」

男「あー……ゴホゴホ。おかしいな、風邪か? すこしうがいをしてこよう」

スタスタ

幼女「おじさん、君がこわいんだって」

「わん!」

幼女「こんなにかわいいのにねー」

「わんわん!」



456 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 15:26:14.91 ID:6NeKsvfc0
幼女「お名前はなんていうの?」

「わん!」

幼女「んー?」

「わん! わん!」

幼女「あ! ワンちゃんね?」

「わん!」

幼女「よろしくね、ワンちゃん」



457 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 15:31:45.18 ID:6NeKsvfc0
男「エサは……、貰ったドッグフードでいいんだよな」

男「お手、伏せ、おかわり、待て……」

男「ちょっと難易度高すぎやしませんか?」


幼女「おじさーーん」

男「ん? なんだ?」

幼女「ワンちゃん、おなかすいたみたい?」

「くぅ~ん……」


男「そ、そうか」



458 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 15:34:12.14 ID:6NeKsvfc0
男「このお皿に盛って……と」

「わん!」

男「う……さすがにゴールデンレトリバー、……でかいな」

幼女「よかったね、ごはんだよー?」

「わん! わん!」



459 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 15:37:01.54 ID:6NeKsvfc0
幼女「さあお食べ~」

男「ちょ、ちょっと待て」

幼女「なーに?」

男「なんでもこの’大型犬の育て方’という本によるとだな……」

幼女「おて」

「わん!」

幼女「ふせ」

「くぅ~ん……」

幼女「おて」

「わん!」

幼女「まて」

「くぅ~ん……」

幼女「よくできました~、たべていいよ」

「わん!」

男「なん……だと……」



461 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 15:43:44.04 ID:6NeKsvfc0
幼女「つぎはどうするの?」

男「え~とな、ちょっと待て」

幼女「わくわく♪」

男「ええっと、なになに? ’一日一度は適度な散歩に連れていくべし’?」

幼女「わ~、おさんぽ!」

「わん!」

幼女「わ、すっごくよろこんでるよワンちゃん」

男「尻尾がふりふりだな」

幼女「散歩に行けるのがうれしいんだねっ」



463 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 16:02:44.42 ID:6NeKsvfc0
男「次は散歩か……幸い晴れてるし。となると問題は……首輪にこの紐を引っ掛けないといけないのか」

「わん!」

男「……」

「わん?」

男「……お、おとなしくしててくれよ……」

「くぅ~ん?」

男「よし……良い子だ、そのまま、そのまま……」

「わん!」

男「ひえっ?!」

幼女「も~、おじさんこわがりなんだから」

男「不甲斐ない……」



464 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 16:04:36.52 ID:6NeKsvfc0
幼女「ほ~ら、散歩いこうね~」

ヒョイ

カチ

「わん!」

男「この手際の良さ……私よりデキる……」


男「いかんいかん……気を取り直して。それじゃあ近くの公園でも回っていこうか」

幼女「うんっ」

男「こうして見ると同じくらいの身長だなあ」

幼女「背中に乗れそう?」

男「はは、まさかそんな事──」

「わん!」

幼女「わーい」

男「──ちょっとパワフルすぎるんじゃないかあの犬……」



465 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 16:05:58.60 ID:6NeKsvfc0
幼女「おじさんおじさん」

男「ん?」

幼女「なんだかもっと遊んで欲しそうだよ?」

「わん!」

男「ええっと? ’ボールやフリスビーで遊んであげてください’って書いてあるな」

幼女「ぼーる?」

男「あぁ、たしかお隣さんから預かっていたものが……」

ガサゴソ

男「あった、これか」

幼女「これをどうするの?」

男「投げるらしい」

幼女「投げてどうするの?」

男「とってきてくれるみたいだぞ?」

幼女「え~! かしこい!」



466 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 16:07:07.93 ID:6NeKsvfc0
男「よし、まず私が手本を見せてやろう」

「わん!」

男「いくぞ」

「わん! わん!」


ポーン

テンテンテン……

コロコロコロコロ……


「くぅ~ん?」


男「なぜだ……なぜ動かん……」



467 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 16:10:31.52 ID:6NeKsvfc0
幼女「おじさん」

男「うん?」

幼女「つぎあたしが投げてみるね」

男「あ……ああ、そうだね」

幼女「ワンちゃん投げるよ~」

「わん!」

幼女「えいっ」

ポーン

「わんっ」

パクッ

幼女「きゃ! すご~い!」

テクテクテク

幼女「ちゃんと持ってかえってきて、えらいねぇ」

「わん! わん!」



469 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 16:21:12.16 ID:6NeKsvfc0
男「はは、すごいな。子供は」

男「なんでも吸収して、素直で」

男「それに引き換え、私ときたら……」


「くぅ~ん?」

男「ん?」

「くぅ~ん」

男「なんだ? ひょっとして心配してくれているのか?」

「わん!」

男「……」ビクッ

幼女「お~じ~さんっ。こわくない、こわくないよ?」

男「あ、あぁ……」



471 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 16:26:39.09 ID:6NeKsvfc0
────────
────
──


姉『こわくない、こわくないってば』

『でもさっきこいつ、俺の事噛んだもん!』

姉『ちょっとじゃれてただけじゃない、大げさな』

『血! 血がでたよ!』

姉『あー、はいはい。青い血じゃなくて良かったねえ』

わん!

『ひえぇ?!』

姉『おー、じゃれてるじゃれてる』

『姉ちゃん助けて!』

姉『はっはっは~! あんたこいつに相当気に入られたねぇ』

『嫌だっ、こわいよ』

姉『だから怖くないって』



472 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 16:29:43.34 ID:6NeKsvfc0
『う~~~~』

姉『よかったねぇ、一日遊んでもらえて』

『……もう犬なんか大っ嫌いだ!』

姉『あらそう』

『きらいきらいっ、大っ嫌い! 噛んでくるし、のしかかってくるし、吠えるし怖いし』

わん!

『ひあっ?!』

姉『あっはははははは、あんた面白すぎ!』



477 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 16:36:28.84 ID:6NeKsvfc0
姉『あのね』

『なんだよ』

姉『こっちが怖い怖いって思ってたら向こうもそう思っちゃうの』

『だから何だよ』

姉『まず心を開かないとね、人間関係も一緒なのよ?』

『むつかしい話はわかんねーよ』

姉『そうね、おこちゃまにはちょーーーっと早かったかなーーー?』

『バカにすんな!』



男「心を、開く……ね」



478 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 16:40:05.49 ID:6NeKsvfc0
幼女「おじさーーーん」

男「ん? どうした?」

幼女「そろそろかえろっ」

男「あぁ、そうだな。日も暮れてきたからね」

「わん!」

幼女「えへへ、いっぱい遊んだね?」

「わん! わん!」

幼女「わわっ、くすぐったいよう」

「くぅ~ん」

幼女「も~」

男「はは、すっかり仲良しだな」

幼女「うんっ!」



481 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 17:06:02.91 ID:6NeKsvfc0
幼女「ただいまっ」

「わん!」

男「さて、晩御飯つくるか」

幼女「今日はなに~?」

男「今日は肉じゃがだ」

幼女「わ~い!」

男「すぐ作るからリビングで待っててくれ」

幼女「うんっ」

「わん!」

幼女「いこっ、ワンちゃん!」

「わん!」



483 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 17:08:42.43 ID:6NeKsvfc0
幼女「その前にワンちゃんもご飯だべようねっ」

男「ちょっといいか?」

幼女「うん?」

男「あの、その」

幼女「どうしたの?」

男「わ、私にやらせてくれないか?」

幼女「うんっ!」

男「ありがとう」

幼女「おじさん、がんばって!」

男「あぁ、やってみるよ」



484 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 17:11:13.98 ID:6NeKsvfc0
「わん!」

男「だいじょうぶ……こわくない、こわくない」

「くぅ~ん?」

男「お、おぉお、お手」

「わん」

男「ふ、せ」

「わんっ」

男「おかわり」

「わん!」

男「ま、待て」

「くぅ~ん……」

男「よしっ、食べていいぞ」

「わん!」



485 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 17:13:33.19 ID:6NeKsvfc0
幼女「わ~、食べてる食べてる」

男「上手くいった……」

幼女「ねえおじさん」

男「うん?」

幼女「こわくなかったでしょ?」

男「あぁ……そうだな」

幼女「ねっ!」



男「よーし、じゃあもう一回だ!」

「わん!」

幼女「うんっ」

「わん! わん!」



486 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 17:16:52.80 ID:6NeKsvfc0
幼女「たくさん食べてるねっ」

「わん!」

男「……なんだ、こんなに簡単な事だったんじゃないか」

「わん!」

幼女「そうだよ? かんたんかんたん♪」

男「……最初の一回を踏み出す勇気が、私には足りなかったのかもな」

幼女「ゆーきゆーき」

男「はは」

幼女「わたしもおなかすいた~」

男「おっと、ごめんごめん。もう出来てるよ」

幼女「わーい」



488 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 17:19:20.37 ID:6NeKsvfc0
幼女「いただきますっ」

「わん!」

男「ゆっくり噛んでたべなさい」

幼女「……」コクコク

幼女「……」モグモグ

幼女「……」ゴックン

幼女「おいしいっ!」

「わん!」



489 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 17:24:03.11 ID:6NeKsvfc0




「すみませんね、旅行中この子を預かってもらっちゃって」

男「いえいえ、お役に立てて光栄ですよ」

「今度お菓子でもお作りしますね」

幼女「わ~い、おかしおかし♪」

「ほら~、ポチ。かえるわよ」

「わん!」

「あら? ポチったらちょっとおデブちゃんになったかしら~? 明日からダイエットしましょうね~」

「くぅ~ん……」




男「ポチよ……すまん……、ついつい食べさせすぎてしまった……」

幼女「またおいで~」

「わん!」



506 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 20:07:26.19 ID:6NeKsvfc0
ワイワイ

ガヤガヤ


先生「ごっめんね、みんな。このプリント、ほんとは先週渡すはずだったんだけど……先生ちょっと忘れてて」

男の子「しっかりしろよー!」

先生「ごめんごめん、おうちの人に渡してね」

幼女「はーい」



507 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 20:10:46.54 ID:6NeKsvfc0
先生「それから、最近物騒な事件が増えてるらしいわ。みんなも気をつけてね」

「事件?」

「ほらコナソくん、さっさと帰るでやんす」

女の子「事件ってなーに?」

先生「えーっと」

幼女「?」

先生「なんだっけ……」

男の子「ほんっと、先生しっかりしろよー」

先生「とにかくっ、みなさん無事でいてください!」

「はーい」

先生「それじゃあ今日は終わります、さようなら」

「せんせー、さようならー! みなさん、さようならー!」



508 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 20:14:07.85 ID:6NeKsvfc0
保護者「迎えに来ましたの」

女の子「おかあさん」

保護者「かえりますのよ」

女の子「あのね、えっと。さっき先生が」

保護者「なんですの? わたくしは忙しいんですの、さっさと帰りますのよ」

女の子「あ……うん」

保護者「ほら、さっさと車に乗りますのっ」



509 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 20:16:50.09 ID:6NeKsvfc0
女の子「おかあさん、おやすみ」

保護者「まったくあの人ったら今日も帰ってこないんですのっ!」

女の子「おかあさん」

保護者「まったく何を考えて……、ん? どうしましたの?」

女の子「おやすみなさい」

保護者「ん? もうこんな時間ですの?」

パタン

女の子「……はぁ」



510 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 20:18:21.25 ID:6NeKsvfc0
保護者「まったく、……あの人の事だけでも忙しいのに」

保護者「あのクソ生意気な若造を思い出すだけで虫唾が走りますの」

保護者「何かないですの?」

保護者「あのクソ生意気な青二才に一泡拭かせる方法は無いですの?」

保護者「……やはり私が直々に」

保護者「いや、それじゃあバレバレですの」

保護者「かといってまた誰かに任せて失敗したら……」



511 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 20:20:48.60 ID:6NeKsvfc0
ピラ

保護者「ん? このプリントは……学費の納付のお知らせですの?」

保護者「げ、明日までじゃありませんの!」

保護者「まったく、もっと早く知らせて欲しいですの。仕方ない、明日の帰りにでも銀行に……」

保護者「!」

保護者「良い事を思いつきましたの」

保護者「この方法ならわたくしがその場に居てもなんら不思議ではありませんの」

保護者「あの男の吠え面をリアルタイムで拝むことができますの!」



514 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 20:27:56.20 ID:6NeKsvfc0

保護者「ふっふーん♪」

保護者「そうと決まればさっそく準備ですの!」

保護者「必要なものは、覆面とあとモデルガンもあればリアリティが増しますの」

保護者「ちょっとびっくりさせてあげますの」

保護者「あの青二才の恐怖に怯える面が思い浮かびますの、きひひっ」



470 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 16:23:12.28 ID:W38iIZkg0
保護者さん可愛い



516 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 20:39:53.80 ID:6NeKsvfc0
幼女「おじさん、これ。先生が渡してって」

男「ん? なんだ?」

『お食事のお誘い、待ってます』

男「うげ、忘れてた」

幼女「なんて書いてるのー?」

男「先生、怒ってたか?」

幼女「ううん、ご機嫌だったよ?」

男「そっか……、後で電話するか」

幼女「あとこれ渡してって言われたの」

男「ん? 学費の納入か、明日にでも銀行いくか」

幼女「ぎんこー?」

男「ああ、帰りに寄ってもいいかい?」

幼女「いいよー!」



519 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:09:35.87 ID:6NeKsvfc0
ワイワイ

ガヤガヤ


保護者「あら?」

男「どうも」

保護者「あなたも学費の納付に?」

男「えぇ、まぁ」

保護者「奇遇ですの、わたくしもですのよ」

男「そうですか」



521 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:17:32.35 ID:6NeKsvfc0
「3番でお待ちのお客様──」

保護者「そういえば今日は比較的空いてますのね」

男「そうなんですか?」

保護者「えぇ」

男「こんなもんじゃないんですか? 銀行って」

保護者「おかしいですの」

男「なにがです?」

保護者「他の親御さん達も納付のプリントを貰ってるはずですの、なぜこんなに少ないんですの?」

男「先生が渡すのを忘れてたって聞いてますけど」

保護者「まぁ、そうですの? まったく、若い先生はこれだから困りますのね」

男「はぁ……」



522 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:19:43.69 ID:6NeKsvfc0
「4番でお待ちのお客様──」

男「そういえばお子さんはどうしたんですか?」

保護者「車で待たせてますの、振込みが終わったらすぐ帰りますの」

男「そうですか」

保護者「あなたこそ連れ子ちゃんはどこに居ますの?」

男「退屈だって言うんで横の公園で遊ばせてますよ」

保護者「あらそうですの?」

男「ええ」



525 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:29:46.26 ID:6NeKsvfc0
「5番でお待ちのお客様──」

保護者「あなた、作家先生って聞きましたの」

男「ええまあ」

保護者「どんな本を書かれてますの? 参考までに教えて欲しいですの」

男「どんな……と言われましても」

保護者「まっ。まさか人様には言えない様な恥ずかしいものですの? ああいやですの」

男「よければ贈呈しましょうか?」

保護者「いりませんの、興味がありませんの」

男「そうですか」



526 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:33:26.16 ID:6NeKsvfc0
ザワザワ

ザワザワ

保護者「それより──」

男「なんだか騒がしいですね」

保護者「そうですの?」

男「なんでしょうか?」




「全員静かにしろ!」



528 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:37:28.51 ID:6NeKsvfc0
銀行員「ひっ?!」

「こいつが何だか分かるよな。おねーさんよお、風穴を開けられたくなかったら大人しく言う事を聞いてもらおうか」

銀行員「け……拳銃っ?」

「このバッグに有り金全部入れろ、全部な」

銀行員「ひっ」

「はやくしろ!」



530 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:42:51.57 ID:6NeKsvfc0
「あー、人質のみなさん。誠に残念なお知らせだがよ、今からこの銀行は俺たちが占拠した」

「大人しくしてろよ、騒いだり暴れたりしたら手が滑ってコイツの引き金を引いちまうからよ」

「俺も本当はそんな事したかないが、不幸な事故が起こらないとも限らないからな……へっへ」

「まだ五体満足で居たいだろ? そうだろ? ケガはしたくないもんな、わかったら一箇所に固まれ」


保護者「ちょっと! どういう事ですの! 話とちが──」

「あぁ?! なんだこのババア!」

ドガッ!

保護者「きゃっ?」

男「……女性に暴行を加えるのは感心しませんね」

「なんだお前! この銃が見えないのか! 大人しくしてないと──」

男「わかりました、大人しくします」

「……っち、わかればいいんだよ。はやくあっちに行けっ」

男「保護者さん、大丈夫ですか?」

保護者「え……えぇ、大丈夫ですの……でもあなた」

男「これくらいなんでもないです、平気ですよ」



531 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:45:55.12 ID:6NeKsvfc0
「おい! まだか!」

銀行員「ひっ」

「はやくしてくれよ、俺は急いでるんだよ。わかるか? 早くしないと車に乗ったこわーいおじさん達が俺を追っ掛けにきちまうからよ、へっへ」

銀行員「あの……でも……」

「口ごたえしてる暇があったらとっとと手を動かしやがれ!」

銀行員「ひぃ」



533 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:49:59.22 ID:6NeKsvfc0
保護者「ご、強盗ですの……ほ、本物、本物の」

男「静かにしていましょう、彼らを刺激するのはあまり得策ではないです」

保護者「……彼ら? 犯人は一人ですのよ?」

男「最初に’この銀行は俺たちが占拠した’って言ってたじゃないですか。少なくともあと1人は実行犯がどこかに潜んでいるはずです」

保護者「そんな……」

男「とにかく今は静かに──」


「はやくしろっていってんだろうが!」


保護者「ひっ」ビクン

男「……」



534 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:53:13.71 ID:8emOrcSq0
男かっこいいなあ



535 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:53:35.72 ID:6NeKsvfc0

ザワ

ザワ


「ねーねー、なんか騒がしくない?」

「見て見て、パトカーがいっぱいきてるよ」

「事件とか?」

「まさか銀行強盗だったりして」


幼女「……ぎんこー?」


「やだー、こっわーい」

「ちょっと聞いた? 拳銃もって立てこもりだって!」


幼女「……おじさん?」



537 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 22:00:02.42 ID:6NeKsvfc0
「はい、ここから立ち入らないでください」

「危険ですので、みなさんは下がってください~」



警部「……状況は?」

「従業員、客を合わせて少なくとも15人以上が内部に取り残されたままです」

警部「犯人の人数は? 要求は?」

「確認されているのは1名、要求などは現在届いておりません」

警部「……ふむ」

「いかがいたしましょう、警部」

警部「何か要求があった場合は最大限譲歩しつつ人名の救出が最優先だ」

「はっ」

警部「隙があればいつでも制圧できる準備を整えておけ、いいな」



539 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 22:06:06.79 ID:6NeKsvfc0



「あーあーあーあー、まったく。ねーちゃんがトロトロしてるから車に乗ったこわーいおじさん達が到着しちゃってくれやがったじゃねえの」




銀行員「そんな……、私は何もっ」

「お前、通報しやがったな?」

銀行員「ひっ?」

「死ぬか?」

銀行「……いや……いや……」

「はっは、嫌だよな。そうだよな、よーし、それじゃあ今から言う番号に電話をかけろ」



540 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 22:11:37.43 ID:6NeKsvfc0
男(あの男、……巧妙だな)

男(もう一人犯人がいる事をちらつかせて私達を動かせないように仕向けた)

男(潜んでいるとしたらこの、人質の中に紛れ込んでいるのだろう)

男(……、もし騒いだり暴れたりした場合、最悪射殺……)


男(だが、あの言葉が嘘だったら?)

男(実行犯は一人だとすれば、上手く隙をつければ……)

男(いや、……何をバカな、危険が大きすぎる)

男(くそ、打つ手がないな)



542 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 22:21:00.40 ID:6NeKsvfc0
『よーーーーーーう、俺が誰だかわかってるよな?』

警部「あぁ、だいたいな」

『だったら話は早い、早速逃走経路を用意してもらおうか』

警部「そんな要求がのめると思っているのか?」

『あらー? そんな事言っていいのかな? こっちには人質が居るんだよ? 俺と違って善良な一般市民がよ、へっへ』

警部「く……」

『15分後にまた連絡する』



544 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 22:27:32.85 ID:6NeKsvfc0
「ち、話のわからねぇおっさんだぜ」


子供「えっ……えっ、びえぇぇぇぇぇぇ~~~ん!」

母親「こらっ、静かにしてなさい」

子供「えぇぇぇぇ~~~ん!!」

母親「お願いだから静かにしてちょうだいっ」


「あー? なんか騒がしいなあ」


母親「……」

「お前が親か」

母親「……はい」

「黙らせろ」

母親「……、はい……」



545 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 22:31:43.34 ID:6NeKsvfc0
男「ちょっと待ってくれ」

「なんだぁ?!」

男「子供に手を出すなんて最低だぞ」

「あんだと?!」


ザワザワ

ヒソヒソ

ソウヨネ

「お前ら黙れっ!」

ザワザワ



546 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 22:33:35.35 ID:6NeKsvfc0
男「まだこんなに小さいんだ。お腹が空いたら泣く、お漏らしをしたら泣く、当たり前だろ」

「うるせえ、黙れっ!」

男「その子に手を出して見ろ、私が許さないぞ」

「く、……言わせておけば! 撃てるんだぞ、お前なんか簡単に──!」

男「撃てるものなら撃ってみろ、本当に撃てるのならな」

「なめやがって……!」


犯人B「待て、熱くなるな」



547 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 22:37:41.48 ID:6NeKsvfc0
犯人B「無駄弾を撃つんじゃない」

犯人A「でもよっ」

犯人B「黙れ」

犯人A「……っち」


犯人B「おいお前」

男「はい?」

犯人B「お前の首に俺が当ててるモノ、何かわかるな?」

男「……」

犯人B「こいつはただの包丁だが、昨日俺が丹精込めて磨いたものでね。さて、どんな切れ味なのか試してみたい気分だ」

男「そいつで料理を作れば最高に美味しいんだろうな」

犯人B「まだディナーの一品にはなりたくないだろ? 大人しく座っていろ」

男「……わかった」



548 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 22:45:26.31 ID:6NeKsvfc0
犯人B「そろそろ時間だな、もう一度電話をかける」


警部「……俺だ」

『やあ』

警部「……さっきの声と違うな」

『そこは今気にしなくても良い』

警部「……なんだ」

『要求は聞き入れられましたか? 警部さん』

警部「いま上と相談中だ」

『随分と悠長なんですね、あまりに遅いとあらぬ行動を取ってしまうかもしれませんよ?』

警部「まて! はやまるな!」

『なーんてね、冗談ですよ』

警部「……く」

『5分後、水と食料を寄越してください。正面玄関前に警部さん、あなたが一人で置きに来るんだ。こちらは私が受け取りにいきましょう、もちろん、妙な真似をすれば……わかってますね?』



549 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 22:49:22.43 ID:6NeKsvfc0
犯人A「ほらよ、水だ。飲ませろ」

母親「……」

犯人A「……っち」



男「すみません」

犯人A「またお前か! なんだ!」

男「その子、随分と苦しそうにしてると思いませんか?」

犯人A「あぁ?!」

男「頬も随分赤い、熱があるみたいだ」

犯人A「だから何だって言うんだよ!」



551 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 22:51:35.75 ID:6NeKsvfc0
男「人質なら私が請け負う、だから女性と子供達を開放してほしい」

犯人A「お前、何を勝手な事を──」

犯人B「まて」

犯人A「でもよ、こいつ生意気だぜ?」

犯人B「確かにこれだけの人数を俺ら二人で見るのはあまり現実的じゃない、こいつの言うとおり人質は少ないほうが良い」

犯人A「……っち」

男「どうなんだ」

犯人B「いいだろう、その通りにしよう」

男「ありがたい」

犯人B「ただし──」



552 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:00:40.37 ID:6NeKsvfc0



「ちょ、ちょっと。だめですよ、入ったら!」



幼女「おじさん、おじさんが中に!」

「警察に任せて、下がっててください」

幼女「いやっ、離してっ! 助けにいくの!」

警部「どうした?」

「いや、この子が……」

警部「ん~? お嬢さん、どうしたのかな?」

幼女「おじさんが、中にいるの」

警部「おじさん?」

幼女「あたしのおじさん!」



553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:01:39.25 ID:6NeKsvfc0
警部「そうか、君のおじさんは必ず私達が助けるからね」

幼女「う~~~~~」

警部「市民を守るのが警察の仕事だ、任せてくれ。お嬢さん」

幼女「む~~~~~」

警部「約束しよう、必ず助け出してみせる」

幼女「……わかった、よ」

警部「誰か、この子を頼む」



「警部、犯人から連絡です」

警部「わかった」



554 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:03:17.80 ID:6NeKsvfc0
『よーーーーーーーーーう、俺だ。逃げ道作ってくれた?』

警部「今、調整中だ」

『調整中ね、言葉をコロコロ変えちゃって役者だねえ? そんなに自分の首が大事?』

警部「何を……」

『良い知らせをくれてやる』

警部「何だね?」

『いまから女と子供を解放する』



556 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:10:01.95 ID:6NeKsvfc0
保護者「……どうしてあたくしだけ……」

男「すみませんね、てっきり私以外は解放してくれると思ってたんですが」

保護者「……いえ」

男「幸い水も食料も届いています、じっくり助けを待つことにしましょう」

保護者「あの」

男「はい?」

保護者「どうして、あなたはそんなに平然としてますの?」

男「昔ね」

保護者「?」

男「ちょっと……色々ありまして」

保護者「何ですの?」

男「姉が──」



犯人A「よーーーーーーーーーう、楽しくお話してるところ悪いな。どうやら警察はお前ら救う気は無いらしいぜ?」



558 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:16:01.00 ID:W38iIZkg0
吊り橋効果…



529 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 21:40:54.87 ID:SSHycv5yO
ですのですのうるせえ黒子ババア
ジャッジメントすんぞバババババ(*・ω・)つつつ




563 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:23:24.84 ID:sviB+N/p0
        /ヽ  ,. . .-‐…‐- . .
        {_/)'⌒ヽ: : : : : : : : : 〉`: 、
        {>:´∧;;;;;/. : : : : : : : : : : : : :ヽ
      /: : : /;;;;;;Y: : : : : : : : : : : : : : : : : : .___
.   /: : : :/丁⌒: : :∧ : : /: /` }: : : : : :ハ;;;;;;}
   /: : : :/: : :{: : 八: :{:>x/| /   |:i : : :}: : : };;;∧    保護者ですの!
.  /: : :/} : : :八Y⌒jY´んハ从  从-‐ノ: : :/Y: : :.
 /: : / /: :/: : : V(.  弋ツ    心Yイ : ∧ノ: : ハ
 !: : :!//i: : : : : 个i ''''     , {ツ /彡く: ハ: : : :i
 }: : :ヽ  / : : : i: :´{入   _     /: : : ∧: i i: : : |
〃. : : : ∨: : : :/l: :/⌒ヽ、  `  イ: : : :/ }: リ: : :ノ
: : :/\: : V : /ノ:/     VT爪_八: : : { 彡. : イ{
: :( /: \:} /: :/{     rv\j  { >‐=ミー=彡ヘ: ヽ
`)' ){: (  ): : :{八   /ヘJ ̄ ̄ {_/ /   \j: : 八: :}
 (  ー=ミ  彡'  ト、 / / 〔o〕     `トしヘ. _ \{ j ノ
   r=彡' ー=ァ |\{.      . -‐、‐=ァ′  ヽ  \(
   `フ   (   |   \_/  x个彳)   ∧   \
             ヽ   | _/  ∨ {\  /、ヽ     ヽ
            ヽ  ー-ヘ.    ∨j   ヽ{__>  . _}
            〉    \   \
               /       \   \
           /           \   \
            〈               j\   \
          / ー--==ニニ=く  \




557 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:13:14.45 ID:6NeKsvfc0
保護者「なっ? そんな事ありませんのよ!」

犯人A「せっかく人質を一部解放してやったのによ、俺らの要求に応える気は無し」

保護者「それはっ」

犯人A「お前らの命なんざ、結局あいつらには関係ねーって事だ」

保護者「そんな……そんなはず……」

犯人A「へっへ、お前も哀れだよなぁ」

保護者「……く」

犯人A「おっと、あんまり動かないこった。こいつが火を噴くぜ?」

保護者「……」



560 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:17:15.96 ID:6NeKsvfc0
男「それくらいにしないか」

犯人A「あぁ?!」

男「あまり人をからかうもんじゃない」

犯人A「ったくよ! お前、ほんっとに生意気だよなあ! 居たぜ、俺の知り合いにもお前みたいなやつがよ! あーもう思い出しただけでも反吐がでそうな程良い人ぶったヤツがな!」

男「それは良い、その人とぜひ知り合いになりたいものだな」

犯人A「残念ながらお前はここでお終いだけどな」

犯人B「やめろ、バカ」

犯人A「……っち」

犯人B「つまらない事で熱くなるな、目的を忘れるな」

犯人A「わーったよ」



565 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:25:31.87 ID:6NeKsvfc0
ザワ

ザワ


先生「……ハァ……ハァ」

幼女「あ、先生」

先生「……ハァ……、無事?」

幼女「あたしは、外で遊んでたから……でもおじさんがまだ中に居るの」

先生「そんなっ、さっきニュースで人質は解放されたって」

幼女「おじさんが……がんばってるみたいなの」

先生「え?」

幼女「おじさんが、みんなを助けたんだって。けーぶさんが言ってた」

先生「そうなの?」

幼女「だから、あたしも、がんばっておじさんを待つの」

先生「……そう、でもこのままだと風邪をひいてしまうわ」



566 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:28:34.03 ID:6NeKsvfc0
幼女「へーき」

先生「でも」

幼女「へーき」

先生「……じゃあ先生もここで待つわ」

幼女「せんせ?」

先生「無事くらい祈らせてもらってもバチは当たらないでしょ?」

幼女「うんっ」

先生「お願い……無事で居てっ」



567 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:32:15.52 ID:6NeKsvfc0
女の子「おかあさん……遅いなあ」

女の子「でも車から出ちゃいけないって言われてるし……」

女の子「もうかなり経つよね」

女の子「……ちょっと、ちょっとだけなら良いよね?」

女の子「出ちゃえ」

パタン

女の子「うぅ、さむいなぁ」

女の子「はぁ……おかあさん、なにやってんだろ」



569 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /28(火) 23:35:12.99 ID:6NeKsvfc0
ザワ

ザワ

女の子「なんだろこの人だかり……」

女の子「う~ん、背伸びしても見えないや」

女の子「すみません、とおして……」

女の子「ぷは」

女の子「やっと出た」

女の子「あれ、……あそこに居るのって」

幼女「……」

先生「……」

女の子「二人してなにやってるんだろ? おーい」



575 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 00:02:10.59 ID:itsA5ADt0
先生「────というわけなの」

女の子「え?」

先生「あなたのお母さんは、あの中よ」

女の子「そん……な……」

先生「辛いでしょうけれど、今は待つしか……」

女の子「……うそ、うそだ……」

女の子「おかあさん、さっきまで、そばにいたのに」

女の子「ねえ、なんで?」

女の子「なんで?」

女の子「わたしがおかあさんの言う事守らなかったから?」

女の子「わたし……わた……たしがっ」



576 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 00:03:15.33 ID:6NeKsvfc0
幼女「大丈夫だよ」

女の子「おかあさん、ほんとはね、ほんとは、いい人なんだよっ」

幼女「大丈夫」

女の子「本当はずっと怖がりで、いつも誰かにかまって欲しくて、寂しがりやさんなのっ」

幼女「うん」

女の子「ちょっと……お父さんとケンカしちゃって……最近はずっと大変で……でもっ、でもっ」

幼女「うん、わかるよ。大丈夫」

女の子「わたしが、わたしが……うぅ……」

幼女「大丈夫だよ、おじさんが何とかしてくれるよ」

女の子「うぅ”……う~、うえぇぇええええ~~~ん、おかあさあああああん」

幼女「よしよし、こわくない。こわくないよ」



577 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 00:08:37.90 ID:itsA5ADt0



幼女「おじさん、……大丈夫だよね?」



保護者「ちょっと、大丈夫ですの?」

犯人A「るっせぇ! ほっとけ! こんなのかすり傷だ! 畜生、バリケード張るのも一苦労だぜ」

保護者「いいから見せますの!」

犯人A「……なんでもねぇっていってんだろ」

保護者「確か絆創膏が……ありましたの、これを張っておきますのよ」

犯人A「……っち」

保護者「ふん、大人しく言う事を聞きますの」



578 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 00:10:21.59 ID:KnOOk1kh0
保護者さん可愛い



579 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 00:12:38.31 ID:itsA5ADt0
男「おい、これはこっちで良いのか?」

犯人B「ああ」

男「よ……っしょっと」

犯人A「……良いのかよ」

男「何がだ?」

犯人A「俺らはお前らを人質に取ってるんだぜ? なんつーか、そのよ、なんで協力的なんだ?」

男「これから共同生活が始まるわけだしな、仲が悪くてはお互い損しかしないだろ?」

犯人A「……」

男「そういう事だよ」



580 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 00:20:08.90 ID:itsA5ADt0
保護者「そういう事ですの」

犯人A「……っち」

保護者「わかったらさっさと絆創膏を張りますのよ」

犯人A「あーもう、わかった。わーったよ!」


犯人B「……」

男「なあ」

犯人B「なんだ?」

男「あんた、子供がいるのか?」

犯人B「……なぜそんな事を聞く?」

男「子供が泣いた時、水を要求してたから。優しい人だと思ったよ」

犯人B「はっ、強盗に優しいもクソもないだろう」

男「ははは、そりゃそうだ。言えてる」

犯人B「……ガキが、一人」

男「そうか、元気で?」

犯人B「さあな、別れた嫁についていったよ。もう10年以上会ってない」



581 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 00:24:24.20 ID:itsA5ADt0
男「10年か、そしたらもうかなり大きくなってるんじゃないか?」

犯人B「もう……見てもわかんねえよ」

男「実は私も今、子育て真っ最中なんだが」

犯人B「お前が……?」

男「なかなかどうして、手間がかかるものだな。子供というのは」

犯人B「そりゃそうだ、腹が減ったら泣くし、小便を漏らしただけで泣く。夜はうるさくてかないやしねぇ」

男「まったくだ」

犯人B「まぁ……悪くはなかったがよ」

男「そうだろ? そういうもんだよな」

犯人B「ふ」

男「会いたいとは思わないのか?」

犯人B「思ったさ」

男「なら」

犯人B「今更こんな親父に会ってどうする、わざわざ失望させてやることはないさ」



582 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 00:28:44.50 ID:itsA5ADt0
男「そうかい」

犯人B「……時間だ、電話をする」




犯人A「どわっ」

保護者「もう! 何をやってますの! 殺人的に不器用ですの!」

犯人A「さっきからうるせぇんだよ! 何様のつもりだよ!」

保護者「いいから貸しますの!」

犯人A「あ、ちょ」

保護者「こんなもの、こうすれば」

犯人A「……この女……瞬間接着剤、鍵穴にぶちこみやがった」

保護者「何を言ってますの、あなたがあまりに下手糞だから代わりにやっただけですの!」



583 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 00:31:41.38 ID:itsA5ADt0
ザワ

ザワ


警部「内部の様子はどうだ?」

「人影が動いているのが確認できますが、それ以外は……遮蔽物が邪魔をしています」

警部「くそ! あまり長引くと人質にも悪影響が出る……」

「警部、どうされますか?」

警部「ぐ……、上からは待てと言われている……」

「ですが!」

警部「わかっている! このまま長引けば長引くほど我々は不利だ……」

「だったら」

警部「軽率な行動に出て人命が失われたらどうする!」

「っ」

警部「耐えるんだ、機会を待て」

「はっ」



584 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 00:38:27.93 ID:itsA5ADt0



保護者(……これでいいんですのね?)



男『ちょっといいですか?』

保護者『なんですの?』

男『し、あまり声を大きくしないで聞いてください。犯人達に聞かれたくない』

保護者『……はい』

男『リマ症候群という言葉に聞き覚えは?』

保護者『ありませんの』

男『なら、今から極力犯人側に協力的な態度をとってください』

保護者『なっ』



585 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 00:41:34.70 ID:itsA5ADt0
保護者『そんな事……危険ですの』

男『大丈夫、彼らも罪を大きくはしたくない様ですし。我々を傷つける事は考えにくい、大切な人質ですからね』

保護者『でも……そんな事をしてどうなりますの?』

男『少なくとも、このまま膠着しているよりはマシな程度です』

保護者『そんなっ』

男『でも。そこからなにか糸口をつかんでみせます、必ず』

保護者『……わかりましたの』

男『生きて帰りましょう』

保護者『当たり前、ですの』



636 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 13:12:23.79 ID:itsA5ADt0
TV『さて、続きまして昨日からお伝えしているニュースですが……○○市の銀行に強盗二人が立てこもる事件が発生しています』

TV『現場からお伝えします、そちらの様子はどうですか?』


『はい、現場です。時折中で人影が動いているのがこちらからは確認できますが、警察側と犯人側で膠着状態が続いております』

『冬空の下、現場には緊張と疲労の色が見て取れます』

『情報によりますとまだ人質二名が中に取り残されたままという事で、安否が心配されます』

『事件発生から36時間、一向に解決の糸口が見出せないまま、事態は平行線を辿っております。現場からは以上です』


TV『ありがとうございました。捕らわれている二名は子供を近くの幼稚園に通わせている親という事で、子供達も相当心配されているのではないでしょうか』

TV『なお、この実行犯は先月のショッピングモールへの強盗事件、先々月のATM襲撃事件と同一犯かと目されており────』

TV『────続きまして専門家の方の意見を聞いてみましょう』


プチン



637 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 13:13:59.74 ID:itsA5ADt0
──フッ


男「ん……? 電気が」

犯人A「消えた?」

男「停電か?」

犯人A「ブレーカーを見てくる、妙なマネはするなよ」

男「わかったよ、懐中電灯をもらってもいいかな?」

犯人A「あぁ、ほら。つかえ、お前も」

ポイ

保護者「わ、わ。いきなり投げるなんて危ないじゃないですの!」

犯人A「ったく、うるさい人質だぜ」

保護者「ふん」



638 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 13:14:41.35 ID:itsA5ADt0
カチ

カチカチ

カチ


男「ん? ちょっと壊れてるのかな?」


カチ

カチ


男「あ、ついた」

保護者「わたくしのと交換しますの?」

男「いや、いいですよ」

保護者「ああはやく明るくなって欲しいですの」

男「大丈夫ですよ」

保護者「……」

男「きっとね」



640 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 13:20:49.15 ID:itsA5ADt0
ゴト

保護者「ひっ」

男「大丈夫、怖くないですよ」

保護者「はぁ……、なんだかどっと疲れましたの」

男「ちょうど外も暗いですし、少し睡眠を取られては?」

保護者「あなたが起きているのにわたくしだけ眠るわけにはいきませんの」

男「そうですか」

保護者「そうですのよ」



641 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 13:23:50.38 ID:itsA5ADt0
保護者「それにしても、ただでさえこんな状況で停電とか……勘弁願いたいですのよ」

男「大丈夫ですか? お手洗いとか」

保護者「……」

男「あまり我慢なさらない方が……」

保護者「……そうですのね」

男「なあ」

犯人B「なんだ?」

男「女性がお手洗いに行きたいそうだ」

犯人B「……好きにしろ」

男「わかった。ほら、立てますか?」

保護者「ありがとう、ですの」



643 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 13:37:00.20 ID:itsA5ADt0
保護者「大丈夫、一人で行けますのよ。懐中電灯もあることですし」

男「わかりました、お気をつけて」



犯人B「……」

男「エアコンも切れたみたいで、少し寒いですね」

犯人B「……あぁ」

男「ついてませんね、停電なんて。向こうの仕業ですか?」

犯人B「これが計画的な停電なら警察がこの隙に突入してるだろ、そうじゃないってことはどっかに落雷でも落ちたか」

男「あるいはケーブルが焼ききれたか」

犯人B「……どっちにしろ、状況は変わらんさ」

男「そうですか」



644 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 13:42:17.05 ID:itsA5ADt0
犯人B「お前も……子供が居るんだったな」

男「そうですね」

犯人B「すまないな」

男「何を?」

犯人B「……いや、あの時間お前がここに居なければ、巻き込む事もなかったと思ってな」

男「あの子は、強い」

犯人B「?」

男「子供ってのは、大人が思うよりも、もっとずっと強いものですよ」

犯人B「あ? ……あぁ、そうだな」

男「きっと今も私の無事を祈ってくれていると思いますよ」

犯人B「はっ、それはそれは」

男「あなたのお子さんも、……同じ気持ちなんじゃないでしょうか?」



645 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 13:45:51.00 ID:itsA5ADt0
犯人B「さあな」

男「……」

犯人B「もう顔も思い出せないんだ、何を考えているかなんてわからねえよ」

男「どんなお子さんだったんですか?」

犯人B「……そうだな、子供のくせにやけに強気で、よく転んで、よく泣いて、よく喋る……どこにでもいる子供だな」

男「特別ですよ」

犯人B「あん?」

男「あなたにとっては、ね」

犯人B「……」



646 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 13:50:52.69 ID:itsA5ADt0


ドン!



犯人A「いてっ?」

保護者「いったたたたたた。もう! どこを見てますの!」

犯人A「あぁ?! お前こそ何勝手にほっつき歩いてんだよ!」

保護者「お手洗いですの、許可はいただいてますのよ」

犯人A「……っち」

保護者「停電、直りそうですの?」

犯人A「ちょろいもんだぜ、これをこうして、こうして……」

保護者「随分慣れた手つきですのね」

犯人A「昔、仕事でな」

保護者「まぁ! 昔から強盗を?」

犯人A「バカ、ちげーよ。ちゃんと給料もらって働いてたさ」

保護者「そんな真面目な人がどうしてこんな事を?」



647 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 14:00:32.93 ID:itsA5ADt0
犯人A「……」

保護者「わたくしで良ければ聞きますのよ」

犯人A「……友人を一人、だましたんだよ。俺は」

保護者「ご友人を?」

犯人A「儲け話──、まぁ。金がすぐ手に入るから協力してくれっていったらホイホイ付いてきやがってよ」

保護者「まぁ」

犯人A「その時俺はギャンブルで作った借金でヤキが回っててな、どうしても金が欲しかったんだよ」

保護者「お金……」

犯人A「まったくバカなヤツだ。今思い出しても笑えるくらいにな」

保護者「でも、素敵なご友人ですのね」

犯人A「……バカだよ、あいつは最後の瞬間まで自分が騙されてるなんてこれっぽっちも思っちゃいなかった」

保護者「それは、あなたを信じていたからでは無いですの?」



648 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 14:01:43.27 ID:itsA5ADt0
犯人A「……信じていた、か」

保護者「そうですのよ、世の中そんな人はあまり居ないですのよ?」

犯人A「……」

保護者「それだけあなたとその人の間に絆があったんじゃありませんの?」

犯人A「……ずっと、後悔してるんだ」

保護者「?」

犯人A「どれだけ悪い事をしたかわかってる、これが成功したら海外でやり直すつもりなんだ。時期がきたらちゃんと償いだってする」

保護者「それなら……」

犯人A「ただ」

保護者「?」

犯人A「俺はあいつになんて顔して会えばいいか、わからねえんだ……」



650 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 14:11:32.10 ID:itsA5ADt0
「お嬢ちゃーーーーーん!」

幼女「あ、お兄さん!」

「ハァ……ハァ……テレビで見やしたよ!」

幼女「すごい汗、大丈夫?」

「いやもう、居ても立ってもいられなくなって走ってきたんすよ。お嬢ちゃんこそ、ずっとここに?」

幼女「……うん」


先生「あの、どちら様で?」

「おっと、申し遅れやした」

「あっしは、幼稚園のお隣で農家をやっとるもんでさあ。以後お見知りおきを」

先生「あ、雷さんのところの?」

「へいそうです、いつも父がお世話になってます」

先生「いえ、いつも新鮮な野菜を届けてくださってありがとうございます」

畑の兄さん「へへっ、お役に立てて光栄ですぜ」



651 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 14:23:21.26 ID:itsA5ADt0
キキーー

バタン


畑の兄さん「父ちゃん!」

「バカ息子が一人で先に突っ走りよってからに! 老人に運転させよって!」

畑の兄さん「で、でもよ」

「なにをボサっと突っ立っとるんじゃ?」

畑の兄さん「え?」

「さっさと手伝うんじゃ、新鮮な野菜のカレーを作って皆さんに体力をつけてもらうぞい」

畑の兄さん「合点承知だ!」



652 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 14:28:56.58 ID:itsA5ADt0
先生「あの、私も手伝います」

幼女「あたしも!」

女の子「わたしも!」

畑の兄さん「よーし、全員協力してやるっすよー!」


「おー!」



653 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 14:34:21.43 ID:itsA5ADt0
幼女「けーぶさん、これたべて」

警部「ん? カレーかい?」

幼女「みんなでつくったの」

警部「ありがとう、いただくよ」



「警部っ、中の様子がっ」

警部「……ん? 電気が消えたな」

「どうします?」

警部「待て、なんだ……? 光が……?」



654 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 14:40:28.42 ID:itsA5ADt0
--・・
-・
--・

--・・
・・
--・-・


警部「……」


--・・
-・
--・

--・・
・・
--・-・


警部「メッセージだ……人質は二人とも無事だっ」

幼女「おじさん!」

女の子「おかあさん!」



657 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 14:48:44.69 ID:itsA5ADt0
男(さて……、私にできる限りの事はした)

男(子供を上手に使って人質を解放して、犯人のもう一人を炙り出した)

男(犯人側からある程度の信頼を得る事もできた、少なくともトイレに行くくらいの自由を勝ち取った)

男(電気を落としてこちらの意思も外に伝えた)

男(だが……まだ向こうには拳銃がある)

男(……くそ)

男(あと一手で良い、突入の機会を作りさえすれば……)

男(……何か、何かないのか……?)



660 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 15:01:39.19 ID:itsA5ADt0
パ


保護者「あ、電気が付きましたの」

男「ほんとですね」

犯人A「ちょろいもんよ」

犯人B「……」

保護者「おなか空きましたの……」

犯人A「あいつら、何か美味そうなモン食ってやがるな」

保護者「この香り……カレーですの?」

犯人A「ったく、暢気なもんだぜ」



661 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 15:07:51.01 ID:itsA5ADt0
犯人B「そういやあいつも……カレーが好きだったな……」

保護者「ま、そうですの?」

犯人B「嫁が入院してた時な、俺が作ったカレーをうめえうめえって食いやがるんだよ」

男「当たり前ですよ」

犯人B「あん?」

男「あなたが丹精込めて作ったカレーが不味いわけありません」

犯人B「……」

男「子供は意外と、そういうところに敏感なんですよ」

犯人B「そうか……、そうだったのか……」



663 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 15:28:07.47 ID:itsA5ADt0



チクタク

チクタク




男「なあ」

犯人B「……なんだ?」

男「今からでも自首しないか?」

犯人A「ばっ! 何言ってんだてめぇ!」

男「これ以上罪を重くする事はない、今ならまだ。やり直せる」



664 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 15:30:24.78 ID:itsA5ADt0



チクタク

チクタク


先生「はい、これ食べて元気だしてくださいね」

畑の兄さん「まだまだあるっすよー」





665 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 15:31:49.70 ID:itsA5ADt0




チクタク

チクタク


警部「中の合図でいつでも突入できるようにしておけ」

「はっ」





666 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 15:32:42.03 ID:itsA5ADt0




チクタク

チクタク


幼女「おじさん……」

女の子「おかあさん……」




667 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 15:36:43.55 ID:itsA5ADt0



チクタク

チクタク



男「どうなんだ」

犯人B「……」

男「なあ?」

犯人B「そうだな……、もう疲れた……か……」

犯人A「ちょ、待てよ。お前! それでいいのかよ!」

犯人B「……」

男「お前はどうするんだ?」

犯人A「決まってるだろ! お前らがそのつもりならこの銃で……」



669 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 15:40:08.85 ID:itsA5ADt0
チクタク

チクタク



犯人A「あれ? 銃が無い、どこに──」

保護者「お探しのものはこれですの?」

犯人A「なっ」

保護者「形勢逆転ですの!」

犯人B「……俺達の負けだ、もう……ここまで、だ」

犯人A「ばか……な」

保護者「大人しくしてもらいますのよ!」

男「さあ、外に電話をかけてもらおうか」



「突入! 突入だ!」



670 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 15:44:01.74 ID:itsA5ADt0
「ほら、暴れるな」

「大人しくしろ!」

犯人A「いってぇ! いてえよ! 暴れねえから押さえつけるの辞めろって!」

「静かにしろ!」

「ほら、さっさと歩け!」



犯人B「……ありがとう」

男「はい?」

犯人B「俺たちは、本当は……誰かに引導を渡して欲しかっただけなのかもしれない」

男「まだやり直せますよ、きっと」

犯人B「そうだろうか」

男「諦めちゃだめです」



671 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 15:46:49.34 ID:itsA5ADt0
男「保護者さん! すごいじゃないですか、一体いつの間に奪っていたんですか?」

保護者「ふふ、敵を欺くにはまず味方からですの」

男「いやぁ、もうダメかと思いましたよ」

保護者「これで一件落着、ですのよ」

男「ですね」

保護者「帰りますの、わたくし、少し疲れてしまいましたの」

フラッ

男「あ、」

ガシ

保護者「かたじけませんの」

男「いえ」



672 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 16:00:19.14 ID:itsA5ADt0
保護者「これで、生きて帰れますのね」

男「そうですね」

保護者「……今回はあなたに助けられましたの、だから借り一つという事にしておきますの」

男「は?」

保護者「あたくし、借りたものはキチンと返す主義ですのよ」

男「はは、そうですか」

保護者「ま、まぁ。これから特別に仲良くして差し上げてもよろしくってですの」

男「はい。これからもあの子共々、よろしくおねがいしますよ」



673 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 16:05:34.47 ID:itsA5ADt0



畑の兄さん「いやー、良かった。良かったっすねぇ」

先生「無事に解決してくれて、本当に……」

畑の兄さん「あっしはもう、ハラハラドキドキで……」

先生「私も……」

畑の兄さん「ところで犯人ってどんな人なんっすかね」

先生「さ、さあ?」

畑の兄さん「ちょっと見にいくっすよ」

先生「あ、ちょ」



674 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 16:06:19.84 ID:itsA5ADt0


犯人A「──お前っ」

畑の兄さん「……」

犯人A「……」

畑の兄さん「……久しぶりっすね」

犯人A「……」

畑の兄さん「面会! 絶対いきやすよ!」

犯人A「……」

畑の兄さん「元気してるっすよ!」

犯人A「……っち」

畑の兄さん「わかってるんすか!」

犯人A「ったく、いつまで経ってもとんだお人好し野郎だぜ……」

「さあ、歩け」

犯人A「あーもう、わかった。わかったってば」



677 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 16:08:41.11 ID:itsA5ADt0



先生「……あのひと」

犯人B「……」

先生「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」

犯人B「なんだ?」

先生「あ……あのっ」

犯人B「……」

先生「……」

「ほら、行くぞ。とっとと歩け」

犯人B「……あぁ」

先生「……」




バタン

犯人B「……そうか……、知らない間に……大きくなったんだな……」



678 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 16:14:36.09 ID:itsA5ADt0


幼女「おじさん! おじさん!」

男「ただいま」

幼女「おかえり!」

男「すまないな、随分待たせた」

幼女「あのね、あのね!」ギュ

男「うん?」

幼女「あたし、ずっと。信じて待ってたよ! ずっと! おじさんなら大丈夫って!」

男「あぁ……」

幼女「おじさん! おじさん! おじさんが……ぶじ……ぶ……ふえぇぇぇぇぇ~~ん」



679 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 16:20:35.85 ID:itsA5ADt0
男「よしよし、怖かったかい?」

幼女「ごわ”ぐな”い”……」

男「ほら、私は大丈夫」

幼女「おじさん……おじさん、ずっと、ずっとあたしのそばに居て……」

男「……」

幼女「ずっと……離れないで……」



先生「ずっと泣かなかったんですよ、この子」

男「先生」

先生「おじさんを待つんだって、ずっと。むしろ女の子を気遣ってさえいました」

男「……そうですか」

先生「でも、安心して溢れてきちゃったみたいですね」



680 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 16:21:55.23 ID:itsA5ADt0
先生「私も……ずっと不安だったんですよ」

男「先生」

先生「怪我はないですか?」

男「えぇ、おかげさまで」

先生「痛いところは?」

男「ずっと座っていたからお尻が少し痛むくらいですね、ははは」

先生「もう!」

男「すみません、ご心配をおかけしました」

先生「心配くらいさせてください」

男「……はい」



682 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 16:27:13.61 ID:itsA5ADt0


女の子「おかあさん!」

保護者「あら」

女の子「おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん!!」

保護者「はいはい、おかあさんですのよ」

女の子「うぅぅぅぅうううう~~~~~~」

保護者「不安にさせてごめんなさいですの」

女の子「おかあさん……」

保護者「わたくし、あなたに謝らないといけない事がありますの」

女の子「え?」



685 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 16:36:12.79 ID:itsA5ADt0
保護者「振り返るとわたくしの自分勝手であなたに随分辛く当たってしまった事が沢山ありますの」

女の子「そんな……良いよ、そんな事」

保護者「いいえ、わたくし、間違ってましたの。今回の事で色々気づかされましたの」

女の子「おかあさん」

保護者「あの人を見習って、わたくしも今日からがんばりますの……だから、ついてきてくれますの?」

女の子「そんなの……」

保護者「?」

女の子「そんなの、当たり前だよっ! わたしのおかあさんはおかあさんだけなんだからっ!」



686 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 16:38:02.83 ID:itsA5ADt0


「お前……」

保護者「あなた……どうして……」

「よかった……無事で……、心配したんだぞ……」

保護者「仕事で東京だったのでは……」

「お前の命より大切なものが他にあるか!」

保護者「ふふ……、うれしい事を言ってくれますの」

「すまない、今までつまらない意地ばかり張ってしまって……」

保護者「わたくし達、今まですれ違ってばかりで……もっと話し合うべきでしたのね」



688 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 17:00:27.11 ID:itsA5ADt0



警部「それでは後日、色々とお話をお伺い致しますので──」

男「ええ、わかりました」

警部「あの」

男「?」

警部「新人の頃、あなたの姉上には色々とお世話になっておりました」

男「あぁ、そうですか」

警部「今は、お元気で?」

男「……えぇ、まぁ。向こうで元気にしてますよ」

警部「そうですか、それは良かった。よろしくお伝えください」

男「わかりました」

警部「それでは、失礼致します」

男「お疲れ様でした、警部さん」



694 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 17:24:46.19 ID:itsA5ADt0
保護者「大団円ですのよ」

男「さ、我々も帰りましょう」

保護者「ですのね」

幼女「かえろっ、おじさん」

保護者「かえりますのよ、二人とも」



「あの~……、お取り込み中すみません。ちょっといいですか?」



695 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09 /29(水) 17:26:09.73 ID:itsA5ADt0
保護者「ん? 誰ですのあなた?」

「えぇ、すみません奥さん。あの男性をちょっと脅かす仕事を請け負ってたんですが……」

保護者「……」

「ちょっと寝坊しちゃいまして、へへっ」

保護者「……ナンノ事デスノ? 誰デスノ、アナタ」

「えぇっ、そりゃないですよ」

警部「む。あやしい人物だな」

「ちょ……やべっ、にげろっ」

警部「あいつを追えっ!」

「ひえぇぇえぇええ~~~~!!!!」



704 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2010/09/29(水) 18:44:20.79 ID:UBCQHOUP0
狭い世界すなあ



691 :以下、名無しにかわりまして VIPがお送りします:2010/09/29(水) 17:13:01.82 ID:sWUmMtBI0
泣けるぜ





次→幼女「とうもろこし、いる?」【後編】



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