男「誰もいないな」女「そうだね」

2015-10-02 (金) 00:07  オリジナルSS 男女   0コメント  
1: ◆ddlClgI6fA 2015/09/15(火) 23:24:04.40 ID:U0Rkg4Zm0

男「じゃあさ」

女「しません」

男「もう二人っきりなんだから」

女「そうね、確かに私とあなた二人しかいないね」

男「だからさ」

女「お断りします」





2: ◆ddlClgI6fA 2015/09/15(火) 23:32:38.31 ID:U0Rkg4Zm0

女「ちょっと! 何出してるの?」

男「見てわかるだろう、ゴムだよ」

女「えいっ」ポイッ

男「何するんだ!」

女「あなたが変なことする前に捨ててやったのよ」

男「はあ……手ごわいな……」

女「ため息つきたいのはこっちよ。気をつけないと何するかわかったものじゃないわ……」




3: ◆ddlClgI6fA 2015/09/16(水) 01:08:51.05 ID:ijf/BL1v0

スタスタ

男「女さん、歩くなら車に乗らない?」

女「車の何でするって? 冗談じゃないわ」

男「何もしないよ」

女「じゃあどうしてさっきのゴムを拾ってきてるの?」

男「えっと、これは……。じゃあさ、マッチ持ってるからさ蝋燭つけて」

女「私、そういうの一番嫌い」

男「じゃあさ、カラオケ入らない?」

女「まともに歌えないでしょ」

男「あの空間がいいんじゃないか」

女「どうしてあなたはそういう事しか考えられないのかな……」

男「くそっ……今日も密室作戦は失敗か……」




5: ◆ddlClgI6fA 2015/09/17(木) 00:38:28.93 ID:+8SlbGCV0

男「ここでしよう」

女「は? ここって道路の真ん中で?」

男「どうせ誰も見てないし」

女「昨日は密室がいいとか言ってたじゃない」

男「場所なんてどこでもいいんだよ。レッツゴートゥーヘブン!!」

女「い、いやーっ!!」
ボコバキ

男「いてて……酷いな……」

女「道路のど真ん中なんてあなたおかしいんじゃない?」

男「むしろおかしいのは君だよ」

女「あなたが毎日毎日迫ってくるからおかしくなりそうよ」




7: ◆ddlClgI6fA 2015/09/17(木) 01:04:11.13 ID:+8SlbGCV0

ザバーン

男「海だー」

女「海だね」

男「誰もいないね」

女「海でもしないよ」

男「どうせ誰も来ないよ」

女「嫌なものは嫌」

スタスタ
子犬「くーん」

女「あれ、迷い犬かな?」

子犬「くーんくーん」

女「よしよしどこから来たの?」

ヨロヨロ

子犬「くーん」
スリスリ

男「かなり弱ってるな。きっと何も食べていないんだろう」

女「何か食べさせないと」

男「よし、二人プラス一匹でしよう」

女「空気読め!」

男「どうせ助からないんだ。せめて最へぶっ」

女「そういう所が最低って言ってるの」

子犬「くーん」

女「もう大丈夫だからね。おいしい物食べさせてあげるから」




8: ◆ddlClgI6fA 2015/09/17(木) 20:35:14.34 ID:+8SlbGCV0

男「よし、ご飯にするか海に入るか、それとも」

女「よしよし、いっぱい食べていいよ」

子犬「くーん」
モグモグ

男「無視か」

女「よしよしいい子だね」

男「この子はオスなのかメスなのか」

女「メスみたいね……」

子犬「くーん」
ペロペロ

男「おい、くすぐっていな」

女「あなた気に入られたね」

男「おうおう、どうした?」

子犬「くーんくーん」

男「わかんねーよ」

女「これでもする?」

男「今日はやめとくよ」




9: ◆ddlClgI6fA 2015/09/17(木) 20:56:07.13 ID:+8SlbGCV0

子犬「くーん」

男「そういやこいつ、どこから来たんだ?」

女「首輪してるね」

男「じゃあ飼い犬だったんだな」

女「そうみたいね。飼い主探そう」

男「見つかるわけないって。よし、じゃあ三人で」

女「ふざけないで。飼い主に怒られるよ」

男「飼い主なんて見つからないって。誰が怒るんだよ」

女「飼い主よ」

男「だいたいどうやって探すのさ」

女「ポスターでも貼ったら誰か見るかも」

男「誰が見るんだよそんなもの」

女「あなた、本当に考え方が暗いね」

男「そうでなきゃ毎日迫らないよ」

女「理解に苦しむわ」

男「それはこっちの台詞だよ」




10: ◆ddlClgI6fA 2015/09/17(木) 23:17:17.38 ID:+8SlbGCV0

女「うう……グスッ……子犬ちゃん……」

男「病気だったんだ。わかっていただろう」

女「でも……」

男「ちゃんとお墓まで作って弔ってあげた。十分だろう」

女「助けられなかった……」

男「俺たちじゃ無理だったんだよ」

女「わかってるよ。でも……」

男「できることは全部やった」

女「だからって……」

男「もう諦めろ!」

ビクッ
女「っ!」

男「これが運命なんだよ」

女「……」

男「さあ、忘れさせてあげるよ」

女「……最低。でも、いいよ。ちょっと怖いし、痛いのは嫌だけど……」

男「大丈夫、痛くしないから」




11: ◆ddlClgI6fA 2015/09/19(土) 00:10:52.86 ID:gQQuQg720

女「ちゃんとゴムはあるのね」

男「それじゃあ……」

女「やっぱりダメッ!」

男「えっ」

女「こんなことで自棄になっちゃうのはやっぱりダメだわ」

男「急にどうした?」

女「これで自棄起こすんじゃあ、子犬ちゃんを見つけなかった方が良かったみたいだから……」

男「……」

女「だから、ごめんやっぱり無理……。できないよ」

男「そうか……」




13: ◆ddlClgI6fA 2015/09/25(金) 00:39:50.69 ID:fGgEH6IB0

女「あ、リスだ」

男「森にリスぐらいいるだろ」

女「私、野生のリス初めて見た」

男「これ、レッドリストに載ってた種類じゃないか?」

女「そうなんだ」

男「向こうにもいる。絶滅危惧種だったのに随分と増えたな……」

女「そうね。森林開発もなくなったからね……。あ、オスがメスに求愛してる」

男「そろそろ、しようか」

女「待って、私は絶対しない」

男「どうして頑なに嫌がるんだ?」

女「嫌だからよ。したいなら一人ですればいいじゃない!」

男「一人が嫌だから……言ってるんだ」




14: ◆ddlClgI6fA 2015/09/25(金) 01:30:30.71 ID:fGgEH6IB0

女「そんな理由で私に迫らないで。他の相手でも探してよ」

男「他には誰もいないよ」

女「もしかしたら」

男「もう俺たち以外、この世界には誰もいないんだよ!」

女「……わかってる。でも、最後まで諦めたくないの」

男「でも、もう無駄なんだ」

女「だからって、心中なんてごめんよ。ゴムバンドだろうと、密室で練炭だろうと、道の真ん中でも、海でも、森でも!」

男「それで、何になる? もう希望なんてないんだ」

女「だから心中なんて馬鹿げてる」

男「馬鹿げてるのはお前だ。早く一緒に楽になろう。……一人にだけは……なりたくない」

女「なら、子孫でも増やす?」

男「え……?」

女「誰もいないね」

男「そうだな」

女「じゃあ」






15: ◆ddlClgI6fA 2015/09/25(金) 01:38:43.20 ID:fGgEH6IB0

初SSでしたが、どうにか完結できました。
読んでくださった方はいるのかわかりませんが、いましたらありがとうございます。




18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/25(金) 17:40:21.56 ID:4iRaPt/30

なるほどね乙



17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/25(金) 03:11:20.53 ID:LKNe5+YS0


ゴートゥーヘヴンってまんまの意味だったのか
やられたわ




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