1 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:02:40.91 ID:AhEbEhUAQ
捨てられた
人間に
一番信じてた人間に
「大好きだ」って言ってくれたあいつの目には、私はもう映ってない
2 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:03:53.93 ID:AhEbEhUAO
私とあいつが出会ったのは、私がまだ卵から生まれる前。
殻を破って出た時のあいつの嬉しそうな顔は今でも覚えている
親の顔は知らない。
それでも、あいつがいたから幸せだった4 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:06:29.19 ID:AhEbEhUAO
朝起きたら私があいつを起こして、一緒に散歩に行く
お昼はあいつがパソコンを触る時間
あいつがパソコンを触っている時は近寄っちゃダメらしく、私はお昼寝をする。
夜は一緒にお風呂に入り、一緒に寝る
そんな生活をしていた
そんな生活が楽しかった6 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:10:17.91 ID:AhEbEhUAO
ある日
私はレベルが19になったと同時に、エーフィに進化した
これからもっともっと強くなるよ。
そう言おうとして振り向いた
「あーぁ、進化してもうた。ちょっと目ぇ離したらこれや」
「20レベなったらトレーナーに売る予定やったのに、進化したらあかんやん」
残念そうに言うマサキ
何でそんなこと言うの?
私は商品として愛されていたから?
何で、そんな冷たい顔してるの?
愛されてすらいなかったのか。7 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:14:11.67 ID:AhEbEhUAO
「おいで」
そう言われてついて行くと、すぐ近くの育て屋でマサキは立ち止まった
マサキは私を育て屋に預けると、家に帰っていった
一度も振り返ることなく
私はこれからただ卵を産むだけの存在になるんだ。
目の前が真っ暗になった気がした。8 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:18:10.17 ID:AhEbEhUAO
「お前も進化したのか」
話し掛けてきたのは、ブラッキーだった
「あなたもマサキの…?」
「そうだよ」
この人も私と同じ
大好きだったマサキに預けられた、卵を作るだけの存在9 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:22:04.57 ID:AhEbEhUAO
だんだんと涙がこみあげてくる
目からあふれそうになるのを必死で堪えた
それを察したのか、ブラッキーは何も言わずに私の頭を優しくなでてくれた
それが嬉しくて、今の現実を認めたくなくて、悔しくて、悔しくて、声を押し殺して泣いた。
ブラッキーの手は、暖かくて心地よかった10 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:26:04.62 ID:AhEbEhUAO
しばらくして泣き止んだあと、私たちは行為をして卵を産んだ
明日になればあいつが笑顔で受け取りにくるだろう
悔しいけど、私にはどうすることも出来ない
それから何回か私たちは卵を作った
ブラッキーはいつも行為が終わると、少し悲しそうな表情で頭をなでてくれる
私にはそれが嬉しくもあり、悲しくもあった11 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:30:20.73 ID:AhEbEhUAO
数日後
「エーフィ」
マサキが来た
しかし、卵を取りに来る時と様子が違う
「はい、今日から自由やで。ほなな」
私を育て屋の外に出すと、あいつはそう言って帰っていった
あぁ、そう。
ついに捨てられたんだ
涙は出ない
あいつに流す涙などない。12 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:34:09.45 ID:AhEbEhUAO
育て屋を振り返る
柵の向こうで私を見つめるブラッキー
「ブラッキー…」
目の前にいるのに、すごく遠くにいるような気がする
「エーフィ…」
そんな悲しい顔しないで
そんな悲しい声で呼ばないで
ここを離れたくなくなってしまうから、
涙があふれそうになるから。15 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:38:50.67 ID:AhEbEhUAO
「これからどうするんだ…?」
私にもわからない
「これから離れ離れになるのか?」
…言わないで。
「エーフィ…!」
ブラッキーの目が潤んでいる
いつのまにか、私たちは惹かれあっていたようだ
互いに近づき、柵の間からおでこと おでこをくっつける。
ゆっくりと離れて、今度は唇を重ねた
初めてのキスは、少ししょっぱかった。16 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:42:05.71 ID:AhEbEhUAO
「いけ。」
うつむいたまま声を震わせて言うブラッキー
泣いてる。
私のために涙を流してくれている
「いけ!」
私は走った
前なんか涙でほとんど見えてない
それでも走った。
人間なんか大嫌い
自分のことしか考えてない、人間なんか。17 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:46:05.76 ID:AhEbEhUAO
どれだけ走っただろう
いつのまにか知らない町に来ていた
夕日が眩しいくらいに輝いている
これからどうしよう
生まれた時から人間と一緒に育った私は、野生の生活を知らない
少し疲れた。
休憩しようと思い、近くの木の下に移動する18 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:50:02.89 ID:AhEbEhUAO
お腹が鳴った
ご飯と寝る所を探さなければ。
「お?誰だ?」
振り向くとラッタがいた
ラッタ「か、かわいい…」
「おーい、ラッタ!」
短パンの男の子がラッタを追い掛けてくる21 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:54:09.44 ID:AhEbEhUAO
この人達にどこでご飯が手に入るか聞いてみよう
エーフィ「あの…」
ラッタ「あの、今夜一緒にご飯食べませんか!?」
思ってもみなかった言葉
こんないい話、のるしかない
ラッタは短パン少年に私のことを話し、一緒に少年の家に向かった23 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/02(土) 23:58:17.85 ID:AhEbEhUAO
ラッタ・少年「ごちそうさまでした!」
ご飯はとてもおいしかった
「エ、エーフィ!今日、と、泊まっていきなよ!」
顔を赤らめて言うラッタ
…なるほど、私の体が目当てか
「いいの?ありがとう」
野宿は嫌だったし、ご飯を食べさせてもらったのでそれくらいは仕方ない25 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:02:14.12 ID:Ff67HVNJO
少年が寝静まった頃
ラッタは必死に私の上で腰を振っている
気持ち良さそうに吐息を漏らすラッタに対して、私は何も感じなかった
ただ、少しブラッキーのことを思い出した
疲れ果てたのか、満足したラッタは私の隣に倒れこみ、そのまま眠りについた
窓から月の明かりが差している
『エーフィ』
ふと思い出す、私を呼ぶブラッキーの声。
もう寝よう。
布団に潜り込んだ26 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:06:15.92 ID:Ff67HVNJO
翌朝
少年とラッタはまだ眠っている
私は家を出た
何日も世話になったら、少年に捕まえられてしまうかもしれない
それだけは絶対に嫌。
ラッタのおかげでご飯と夜の凌ぎ方はわかった
本当は嫌だけど仕方ない。
人間に捕まるよりはマシだ。
今まで人間に利用されてきた。
その分、今度は私が利用する
ポケモンと一緒に暮らすトレーナーを。30 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:11:08.05 ID:Ff67HVNJO
トレーナーとポケモンを見つける
ポケモンをじっと見つめ、視線に気付いた相手を誘うふりをする
それで向こうから声をかけてくれば、ご飯と宿ゲット。
私はただ股を開けばいいだけ
雄って、バカばっかり。
いや、そう思っている私の方が馬鹿か。
体を売って生きている馬鹿なポケモンなんて、私だけ。32 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:13:58.69 ID:Ff67HVNJO
宿探しも慣れた
最近は行為中の演技も出来るようになった。
前方には買い物帰りのピカチュウと少年
今日はあのピカチュウを狙おう
いつもの作戦にでる
視線に気付いたピカチュウに誘うふりをする
すると、ピカチュウは少年と何やら話をはじめた33 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:18:01.92 ID:Ff67HVNJO
ピカチュウと少年が近づいてきた
少年も一緒だと、夜のことが言いにくい
まあいい。
ご飯さえOKがでればあとはなんとかなるだろう
「お前さん、野生か?」
ピカチュウが話し掛けてきた
「野生のエーフィなんて珍しいな…」
続ける少年36 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:22:05.25 ID:Ff67HVNJO
「腹減ってないか?飯作ってやるよ」
人間に誘われるのは初めてだ
少し戸惑う
「遠慮はいらねぇぜ。レッドの飯はうまいぞ」
少年はレッドというらしい
ご飯が食べれるなら、何でもいい
私はレッドとピカチュウについていった37 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:26:03.46 ID:Ff67HVNJO
近くのポケモンセンターについた
ポケモンセンターはトレーナーの宿にもなっている
レッドは山盛りのご飯を作って、私とピカチュウの前に並べた
レッド・ピカチュウ「いただきまーす!」
二人はすごい勢いで山を崩していく38 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:30:04.60 ID:Ff67HVNJO
「食わねぇのか?」
いたずらな笑顔で私のご飯を一口食べるピカチュウ
それにつられて私も一口食べてみた
…とてもおいしい。
今まで食べたご飯の中で一番おいしかった39 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:34:11.59 ID:Ff67HVNJO
ご飯のあとにレッドはきのみジュースを作ってくれた
それを飲んで落ち着く私とピカチュウ
「お前、捨てられたのか?」
レッドから突然の質問
何も言葉が出てこない
「今日俺にやろうとしてたみたいに、ポケモンに体を売って生活してたのか?」
全てバレていたようだ。41 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:38:09.72 ID:Ff67HVNJO
悲しそうな顔をするレッド
何で人間のレッドがそんな顔をするの?
ふと、私の頭を優しくなでるピカチュウ
「俺は何もしねぇよ。安心しろ」
ピカチュウの手は暖かくて、ブラッキーの手とよく似ていた
「今日は俺たちと一緒に泊まっていけ。」
レッドの優しい声44 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:42:15.45 ID:Ff67HVNJO
捨てられてから一度も流さなかった涙が、二人の優しさに耐えきれなかった
レッドは私を きつく、優しく抱き締めてくれた
レッドの腕の中で、大声をあげて泣いた。
あんなに大嫌いだった人間の腕の中で。45 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:46:06.36 ID:Ff67HVNJO
泣きながら私は今までのことを全て二人に話した
マサキとの生活のこと、捨てられたこと、捨てられてからの生活のこと、ブラッキーのこと。
うんうん、と頷きながら二人は最後まで聞いてくれた
話し終える頃には泣き止み、私も落ち着いていた
「レッド」
「あぁ。」
何かを確認する二人46 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:50:10.17 ID:Ff67HVNJO
「エーフィ、明日マサキの所に行こう」
ドクン、と心臓が動く
「ブラッキーと一緒に暮らしたいか?」
呼吸が乱れる
何度も頷いた
「よし。俺にまかせろ」
レッドはニッと笑ってみせた
「じゃあ明日に備えて就寝!おやすみ!」
電気を消して、私たちは布団に入った47 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:54:05.96 ID:Ff67HVNJO
次の日
私はレッド達と一緒にマサキの家の前にいた
呼び鈴を鳴らすレッド
「はいはーい」
のんきなマサキの声
「あれっ、レッドやん。どうした……」
マサキと目が合う48 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 00:58:24.10 ID:Ff67HVNJO
「…なんや?」
戸惑うマサキ
「イーブイを売って商売してたのか」
レッドの声が怒ってる
「何のことや?」
「とぼけんじゃねぇよ」
険悪な空気が流れる49 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 01:02:12.08 ID:Ff67HVNJO
「このエーフィが何よりの証拠だ」
マサキは悔しそうに舌打ちをした
「ポケモンを使っての商売は禁止されてるよな?」
「コイキング売ってたおっさんが捕まったの知ってるだろ?」
「…頼む。このことは黙っといてくれへんか」
この通り!と頭を下げる
「条件がある」
なんや?と少し嬉しそうに聞くマサキ
「育て屋のブラッキーを譲ってくれ」53 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 01:07:08.09 ID:Ff67HVNJO
「それでええんか?」
驚くマサキ
「あぁ」
レッドが言うと、マサキはレッドが来たらブラッキーを譲るように育て屋に電話した
「またこんなことがあったら、その時は警察に連絡するからな」
念を押して、私たちは育て屋に向かった
もうすぐブラッキーに会える
心臓が鳴り止まない54 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 01:10:08.23 ID:Ff67HVNJO
育て屋に着き、レッドはブラッキーを抱えて出てきた
「エーフィ!」
ブラッキーは駆け寄ってきた
中でレッドに話を聞いたようだ
「これから二人で大丈夫か?」
心配そうなピカチュウ
「大丈夫です」
答えるブラッキー55 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 01:14:34.16 ID:Ff67HVNJO
「じゃあな。元気でな」
レッドは私たちを野生に返し、ピカチュウとどこかに歩いていった
エーフィ・ブラッキー「ありがとうー!!」
声をそろえて叫んだ
人間は嫌い
でも、レッドは好き。
私に初めて優しさをくれたから
「行こう。」
どこか人間のいない森で暮らそう
レッド達と逆方向に、私たちは歩きだした。
おわり58 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 01:16:13.94 ID:Ff67HVNJO
短かったけど見てくれた人ありがとう
支援嬉しかったありがとう
エロ期待してた人たちすまんかった。
エーフィは俺の嫁
また書いたときは見てくれるかな?59 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 01:17:29.04 ID:QOKq77cP0
乙!
>>58
もちろん
61 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 01:19:35.15 ID:o1tyJ6bi0
よかった。またかいてくれ
62 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/03(日) 01:25:35.19 ID:DcigzwZ4O
>>58
その後を期待してるよ
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