岡部「紅莉栖!」千早「はい?」

2013-05-15 (水) 21:01  シュタインズゲートSS   0コメント  
1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 21:37:26.48 ID:qXRpVtxx0

岡部(β世界線に行けば、まゆりは助かるが紅莉栖が死ぬ)

岡部(α世界線に残れば、紅莉栖は助かるがまゆりが死ぬ)

岡部(どちらかを選ぶなんて、出来るわけないじゃないか)

岡部(…………)

岡部(なんで、こんなことになってしまったんだろうな)

紅莉栖「どちらも救うなんて無理なのよ。だから、まゆりを助けてあげて」

岡部「だがそれではお前が!」

紅莉栖「アンタ、今まで何のために頑張ってきたか分かってるの? まゆりを助けるためでしょーが」

岡部「それは分かっている! だがそのためにお前を犠牲になど出来るはずがないだろう!」

紅莉栖「じゃあまゆりが死んでもいいって言うわけ?」

岡部「そんなことは言っていない!」

紅莉栖「言ってるじゃない!」


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3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 21:40:23.96 ID:qXRpVtxx0

紅莉栖「そもそもDメールを送ったりしなければ、私はとっくに死んでいるのよ」

紅莉栖「でも岡部のおかげで死なずにすんで、ラボに誘われて……」

紅莉栖「悪くなかったわ、この二週間。岡部にはすごく感謝してる」

岡部「紅莉栖……」

紅莉栖「私はもう十分幸せだから。だから、まゆりを助けてあげなさい」

岡部「……それしか、ないのか」

紅莉栖「えぇ。まゆりを助ける方法は、それしかないのよ」

岡部「クソッ……なんで俺は、電話レンジ(仮)やタイムマシンなんか作ってしまったんだ!」

紅莉栖「ちょっと……電話レンジがなかったら、私は7月28日に死んで終わりだったんだけど?」

岡部「そ、そうだったな。すまない」

紅莉栖「ていうか作ったのはアンタじゃなくて私と橋田だし」

岡部「細けぇことは(ry」



5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 21:45:06.59 ID:qXRpVtxx0

岡部(十分幸せ? そんなわけないだろ!)

岡部(紅莉栖はまだ18歳。もっともっと、これから先にいくらでも楽しいことがあるだろうに)

岡部(タイムマシンなど作らなければよかった……)

岡部(って過去を悔やんでも何にもならないだろう)

岡部(考えろ、考えるんだ岡部倫太郎! 何か……何か抜け道があるはずだ!)

岡部(…………)

岡部(ん……待てよ?)



6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 21:48:14.54 ID:qXRpVtxx0

岡部「紅莉栖が科学者じゃなかったらどうなってたんだろうな」

紅莉栖「私が科学者じゃなかったら? いきなり何を言い出すのよ岡部ってば」

岡部「もしかしたら、SERNのタイムマシン研究は完成しないのではないだろうか……と思ってたな」

紅莉栖「はぁ? いや……待てよ」

紅莉栖「えっと、私って未来ではタイムマシンの母って呼ばれてたんだっけ?」

岡部「そうだ……どうやら、気づいたようだな」

紅莉栖「Dメールが察知されたから、SERNによるディストピアが作られた……岡部はそう思っていた」

紅莉栖「でもDメールが直接的な問題なのではなく、Dメールによって変化した世界線で、私が生き残っているという事が問題」

紅莉栖「私がSERNに拉致され、研究に協力させられたせいで……タイムマシンが完成し、ディストピアとなってしまった。そう言いたいわけ?」

岡部「その通りだ。もし実際にそうだとしたら、紅莉栖が死ぬことなくα世界線から抜け出せるかもしれん」

紅莉栖「そこで、私が科学者じゃなかったら……ということね」

岡部「そうだ。だがもしうまく行ったとしても、今のお前とはまったくの別人になってしまうだろう」

紅莉栖「そうね。私にとっての研究は、人生そのものと言っても過言じゃないし」

岡部「それでも俺は、お前に生きていて欲しいんだ……紅莉栖」

紅莉栖「…………」



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 21:53:15.43 ID:qXRpVtxx0

紅莉栖「分かったわ。その可能性に、かけてみましょう」

岡部「すまない、紅莉栖」

紅莉栖「何で謝るのよ。死なずに済むかもしれないっていうのに」

紅莉栖「それに……科学者じゃない私っていうのも、ちょっと面白いかもね」

岡部「そうだな。例えば……この鳳凰院凶真の第二の弟子になる、とかよさそうだ」

紅莉栖「お断りします。もっと女の子ウケしそうなもの考えなさいよね、まったく」

岡部「ふむ、女の子ウケするものか……では、アイドルなんてどうだ?」

紅莉栖「はぁ?」

岡部「前にカラオケ行った時、紅莉栖の歌は素晴らしかったしな」

岡部「特にあれだ。約束のパラダイムとかいう曲はなんというか、紅莉栖によく似合っていたぞ」

紅莉栖「そ、そう?」

岡部「あぁ。もし紅莉栖がアイドルになったら、俺は全力で応援するぞ!」

紅莉栖「もう、おだてないでよね!」

岡部「おだててなどいないさ。さては褒められて恥ずかしいのだろう?」

紅莉栖「そ、そんなんじゃないんだからな!」



10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 21:58:43.81 ID:qXRpVtxx0

岡部「というわけで幼い頃の助手にアイドルを目指すというメールを送るか」

紅莉栖「おい、勝手に話をすすめるな」

岡部「ダメだったか? 紅莉栖のアイドル姿は楽しみなんだがな、わりと本気で」

紅莉栖「次にふざけたこと言ったら、開頭して海馬に電極ぶっ刺してやるから」

岡部「おぉ、こわいこわい……で、どんなメールを送るんだ。あと一つ気になることがあってだな……紅莉栖は、何歳からケータイを持っているんだ?」

紅莉栖「物心ついた時には持ってたわね。ま、時間の設定は私がやるから気にしないで」

岡部「物心ついた時には持ってたとか……さすがセレブセブンティーンッ!」

紅莉栖「セレセブ言うな! うーん、メールの内容はどうしようかな……」



12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:04:54.60 ID:qXRpVtxx0

数時間後――

岡部(結構な時間が経ってるな。まぁ無理も無いんだが、もう夜だ。ホテルに返した方がいいかもしれん)

岡部「なぁ、そろそろ……」

紅莉栖「決めた!」

岡部「っとと……決まったのか」

紅莉栖「それじゃ、岡部のケータイ貸して。Dメール送るから」

岡部「内容は?」

紅莉栖「秘密」

岡部「待て待て待て。どんな人間になるか分からなければ、変動後の世界線で紅莉栖の生存を確かめづらいではないか」

紅莉栖「大丈夫だって。今時、ググれば何でも出てくるでしょ」

岡部「それはお前が目指すものによるだろう」

紅莉栖「大丈夫。名前でググればヒットするたぐいのものだから。まぁ名前が売れてればの話だけどね」

紅莉栖「それじゃ、タイマーをセットするわ」



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:08:09.70 ID:qXRpVtxx0

岡部「今からやるのか? ならばまゆりやダルも呼ばねば……」

紅莉栖「それは駄目」

岡部「なぜだ。今の紅莉栖がみんなに会えるのは、もうこれが最後なのかもしれないんだぞ」

紅莉栖「会ったら、決意が鈍っちゃうかもしれないでしょ」

紅莉栖「それに……成功したとしたら、この世界線はなかったことになる」

岡部「それはそうだが……」

紅莉栖「岡部。目、閉じて」

岡部「? なぜだ」

紅莉栖「いいから、早く閉じて」

岡部「……いいだろう」



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:12:02.50 ID:qXRpVtxx0

岡部(な、なんだ? 紅莉栖は一体何をするつも……っ!?)

岡部(唇に柔らかいものが触れてる。ま、まさか紅莉栖の唇!?)

紅莉栖「……ぷはぁ」

岡部「なっ、ななななにをするんだいきなり……っ!」

紅莉栖「より強烈な感情と共に海馬に記銘されたエピソード記憶は、忘却されにくいのよ」

紅莉栖「童貞な岡部にとってはこれがファーストキスであって、ファーストキスについて精緻化リハーサルがされるはずで……」

岡部「残念だったな。ファーストキスではないぞ」

紅莉栖「なっ、何ですって! おのれ、HENTAI童貞のくせに……!」

岡部「誰がHENTAI童貞だ……ともかくファーストキスではないから、すぐに忘れてしまうかも知れない」

紅莉栖「え……」

岡部「だから、もう一度だ」

紅莉栖「ちょ、顔が近……あんっ!」



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:15:08.20 ID:qXRpVtxx0

岡部「……ふぅ」

紅莉栖「はぁ、はぁ……舌まで入れるなんて、やっぱりHENTAIじゃない」

岡部「顔が真っ赤で可愛いぞ、紅莉栖」

紅莉栖「くっ、覚えてなさいよ……」

岡部「あぁ、絶対に忘れない。ずっと覚えている」

紅莉栖「……ありがと」



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:20:43.76 ID:qXRpVtxx0

岡部「放電現象、始まったぞ!」

紅莉栖「分かった。それじゃ……メール、送るわよ」

岡部「あぁ……」

紅莉栖「送信」

岡部(目の前の光景が歪み、崩れ去っていく)

岡部(そして何もかもがなくなったと思えば、次の瞬間にはまばゆい閃光)

岡部(その眩しさも徐々に薄れ、目の前にあるのは……いつものラボの風景だった)



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:25:40.62 ID:/2PXK9FJ0

さらばHENTAI科学者紅莉栖



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:26:07.99 ID:qXRpVtxx0

岡部「リーディング・シュタイナー……」

岡部「紅莉栖はどうなったんだろうか……ググってみよう」

岡部「牧瀬紅莉栖……っと」カチッ

岡部「どうやら科学者である牧瀬紅莉栖はいないみたいだな」

岡部「しかし、今の紅莉栖がどうなってるかが分かりそうなものが見当たらない」

岡部「まさか、消えたりしてないよな……?」

岡部「ってまだこちらの世界線に来たばかりだろう。早合点しすぎだ!」

岡部「しかしどうやって調べればいいのだろう……興信所にでも相談に行ってみるか?」

ダル「オカリン、少し静かにしてくれよ。今いい所なんだからさ」

岡部「いい所……ってなんだこれは」



25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:30:50.22 ID:qXRpVtxx0

ダル「ちーちゃんのライブDVDだお」

岡部「ちーちゃん?」

ダル「今微妙にブームになってる、765プロの如月千早ちゃんだお」

岡部「待てよ? この声は……紅莉栖っ!?」

ダル「なんだ、オカリン詳しいじゃん! 下の名前はクリスっていう噂があるのだぜ」

ダル「まさかオカリンがドルオタだったとはねぇ……」

岡部「ダルよ、紅莉栖……ではなく如月千早に一目会いたいんだが、どうすればいいんだ?」

ダル「んーっと……次のライブは秋にやるはずだお」

岡部「秋か……」

ダル「ま、気長に待とうぜ」

岡部「そうだな」

岡部(声が紅莉栖そのまんまである上に、本名が紅莉栖という噂……そして何より、こんなアイドルは元の世界で聞いたことがない)

岡部(間違いないとは思うが、念のために一度会ってみたい所だな)

岡部(とりあえず今日は、ダルと一緒にライブDVDを鑑賞するとしよう)



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:35:27.67 ID:qXRpVtxx0



千早『蒼い鳥……自由と孤独、ふたつの翼で』

千早『あの天空(そら)へ、私は飛ぶ。はるかな夢へと』

千早『この翼、もがれては……生きて行けない私だから――』

ダル「やっぱ蒼い鳥はいいっすなー」

岡部「うっ、ううっ……」

ダル「オカリンマジ泣きっすか。ま、気持ちは分かるけど」

ダル「今までは超マイナーだった765プロだけど、最近人気が出てきてるっていう」

ダル「このライブDVDはちーちゃん初めてのソロライブなのだぜ」

ダル「でも急に忙しくなったせいで、765プロは人手不足らしい。今までは弱小事務所だったからなぁ」



28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:37:00.85 ID:N7h8laJq0

胸部装甲の厚さが微妙に異なる設計
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31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:39:22.55 ID:qXRpVtxx0

岡部(蒼い鳥……もし幸せ、近くにあっても)

岡部(あの空へ、私は飛ぶ。未来を信じて)

岡部(あなたを、忘れない……でも、昨日には帰れない――)

岡部(この歌、まるで紅莉栖そのものを歌ってるかのような歌じゃないか!)

岡部(これも、運命石の扉の選択なのか?)



32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:43:49.96 ID:qXRpVtxx0

数時間後――

ダル「んじゃ、そろそろ帰るお。乙」

岡部「待ってくれダル!」

ダル「何?」

岡部「頼む、そのDVDを貸してくれ!」

ダル「顔が必死すぎだろ……ま、いいけどさ。はい」

岡部「ありがとう! さすが我が右腕(マイフェイバリットライトアーム)にしてスーパーハカーッ!」

ダル「はいはい、それ長すぎだから。あとハカーじゃなくてハッカーでよろ」

ダル「あ、もし別の曲や聞きたくなったら、PCの中に入ってるからー」

ダル「あと765プロが全員でやってるライブの動画とかもあるから」

岡部「おぉ……何から何まですまんな」

岡部(よし、まずは765プロ全員のライブDVDを見るぞ!)



36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:49:17.39 ID:qXRpVtxx0

三日後――

ダル「なぁまゆ氏、オカリンヤバくね?」

まゆり「うん……そろそろ、止めた方がいいかも。三日も休まずに聞き続けるなんて……」

ダル「さすがオカリン! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ! そこにシビれる! あこがれるゥ!」

まゆり「オカリン。ねぇ、オカリン……? そろそろ、お家に帰って休んだほうがいいと思うのです」

ダル「まゆ氏に同意。顔色がかなりヤバいぞ。ほら、ヘッドホン取るぞ」

岡部「あ、待て! 今スタ→トスタ→を……クソッ、ギターソロカモンを聞きそこねたではないか!」

岡部「いや、聞こえる……聞こえるぞ! 今、紅莉栖がギターソロカモンって言ったのがばっちり聞こえたぞ!」

ダル「オカリン、あなた疲れてるのよ……」



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:54:59.19 ID:qXRpVtxx0

岡部(ラボから追い出されてしまった……)

岡部(フッ、だがこれぐらいで俺と紅莉栖の絆を引き裂けると思うなよ?

岡部(クックックッ……自分の金でCDやDVDを買えばいいだけの話ではないか!)

岡部(さて、財布をチェックするとしよう……)

岡部(…………)

岡部(72円しかないぞ……これでは100円レンタルすら利用できん!)



45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 22:58:35.20 ID:qXRpVtxx0

岡部「ん? 電話……ダルか。ふん、無視してくれる! さっきヘッドホンを無理やり外したことへの復讐だ」

岡部(……電話?)

岡部(そうだ、電話があるではないか! 紅莉栖の生存を確認する方法!)

岡部(紅莉栖の携帯番号が変わってなければいいが……頼むぞ)ピッポッパ

岡部「…………」

千早『あの、どちら様ですか?』

岡部「その声は……紅莉栖!」

千早『な、なぜ私の本名を!? あなたは一体……』

岡部「よかった、本当によかった……!」

千早『ちょっと、聞いてますか?』

岡部「す、すまない。牧瀬紅莉栖が生きているという事を確認できて……つい取り乱してしまった」

岡部「愛してるぞクリスティーナッ!」

千早『ひぃっ! あなた、ストーカーか何かですか? もう絶対に電話しないでください!』ガチャ

岡部「…………」

岡部「やってしまったあああああああああああっ!」



46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:03:05.94 ID:qXRpVtxx0

岡部「あっちからしたら俺のことなんて知るわけないじゃないか」

岡部「なのに、俺はなぜ告白などしてしまったのだ」

岡部「ダメ元で、もう一度かけてみるか……」

『この電話はお客様のご要望によりおつなぎできません』

岡部「着信拒否されてる……もうおしまいだ」

岡部「もう、自宅に戻って寝るとしよ……うっ!?」

岡部「な、なんだ? 身体に力が、入らない……」

岡部(そうか。三日三晩何も食わずに過ごしてたから、腹が減って……)

岡部(こ、このままでは餓死しそうだ)

フェイリス「あれ、キョーマ?」

岡部「フェイリス!」

フェイリス「どうしたのニャ、キョーマ! 顔が真っ青ニャ!」

岡部「は、腹が減って死にそうなんだ……」

フェイリス「仕方ないニャあ……メイクイーンで何か食べさせてあげるニャ」

岡部「す、すまん……」



47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:04:31.68 ID:2dqfgPBD0

フェイリスマジ女神
資料集で忘れられちゃうフェイリスマジ女神



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:09:12.48 ID:qXRpVtxx0

――メイクイーン+ニャン2

岡部「ふぅ……生き返った! 助かったぞフェイリス」

フェイリス「どういたしましてニャ。でもキョーマ……72円しか持ってないっていうのはちょっとどうかと思うニャ」

岡部「まったくだ……。次のバイト代が入ったら、すぐに返すよ」

フェイリス「ひとつ聞きたいことがあるんだけど、いいかニャ?」

岡部「いいぞ。なんせフェイリスは命の恩人だからな」

フェイリス「ニャッニャッニャッ……汝の命の代償として、その身に起きた悲劇の結末(カタストロフィ)を我に教えるがいいニャ」

岡部「なっ、なんだと!? キサマ、それを知ってどうする……?」

フェイリス「決まっているニャ。世界を、世界を再結合(リユニオン)するのニャ!」

岡部「な、何ということだ! クッ、まんまとはめられてしまったぞ……」



52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:14:17.74 ID:qXRpVtxx0

フェイリス「まぁそれは置いておいて……キョーマ、何か悩みがあるニャ?」

岡部「い、いや……俺の悩みである空腹はおさまったぞ」

フェイリス「フェイリスの前で、隠し事が出来るとでも思ってるのかニャ?」

岡部「クッ、チェシャ猫の微笑(チェシャー・ブレイク)……相手の心のすべてを見通す能力(ちから)!」

フェイリス「その通りニャ♪」

岡部「実はだな、牧瀬……ではなく、如月千早という人物に出会いたいのだ」

フェイリス「キョーマの口からアイドルの名前が出るとは意外だニャ」

フェイリス「何で会いたいのかニャ?」

岡部「それは……」

岡部(何で、だろう?)



56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:18:27.56 ID:qXRpVtxx0

岡部(この世界において、俺と紅莉栖にはなんら接点がない)

岡部(先ほどの電話で相手にはかなり嫌われてしまっただろう)

岡部(それに、如月千早イコール牧瀬紅莉栖というのは確認がとれた)

岡部(もう、紅莉栖と会う理由なんてないんじゃ……)

岡部(…………)

岡部(でも、それでも……)

岡部「会いたいから、っていうのは理由にならないか?」

フェイリス「ニャニャッ!?」

岡部「会った後のことは、それから考える」

岡部「今は会いたいっていう気持ちが先行してて……何をしたいかなんて分からない」



57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:22:27.67 ID:qXRpVtxx0

フェイリス「キョーマがそんな情熱的な台詞を口にするとは……驚きニャ」

岡部「自分でも柄じゃないと思ってるさ」

フェイリス「バイトが終わったら電話するから、それまで適当に時間潰しててくれるかニャ?」

岡部「電話……? 一体どういうことだ」

フェイリス「どこで機関の連中が聞いてるか分からないニャ……チヒャーのことは軍事機密なのニャ」

岡部(チヒャー? 千早のことか? フェイリスは何かしらの情報を持っているということか)

岡部「分かった。フェイリスに無限の感謝を」



58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:24:28.19 ID:qXRpVtxx0

数時間後――

岡部「電話……フェイリスか!」

フェイリス『おまたせしたニャ、キョーマ。今から言う住所の場所に来て欲しいニャ』

岡部「……分かった」

岡部(フェイリスの自宅だな)



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:25:30.12 ID:/2PXK9FJ0

感動的だわ



60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:27:54.83 ID:R6QIM8cQ0

だが無意味だ



61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:28:23.96 ID:qXRpVtxx0

フェイリス「じゃーん、ここがフェイリスのお家だニャ!」

岡部「あぁ」

フェイリス「あれ?」

岡部(いかん! もう少し派手なリアクションを取らねば!)

岡部「な、なんて豪華な家なんだー!(棒)」

フェイリス「じーっ……キョーマ、全然驚いてないニャ」

岡部「何を言っているのだ! おどきだぞー」

フェイリス「もしかしてキョーマ、フェイリスの家を知っていたのかニャ?」

岡部「…………」

フェイリス「じーっ」

岡部「すまん、その通りだ……」



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:32:26.09 ID:qXRpVtxx0

フェイリス「ダルニャンですら知らないというのに。ま、まさかキョーマはフェイリスのことを愛し……」

岡部「それはない」

フェイリス「ニャッ! 言い切るなんてひどいニャ!」

フェイリス「チヒャーの情報教えてあげようと思ったのに……やめちゃおうかニャ」

岡部「な、なんだと!? それは困る! 何でもするから、機嫌を治してくれ……」

フェイリス「はぁ……キョーマは本当にチヒャーに会いたくてしょうがないんだニャ」

岡部「あぁ」

フェイリス「ねぇキョーマ……何で、チヒャーの本名を知っているのかニャ?」

岡部「それは……ってちょっと待て。そんな事を聞くということは、フェイリスも如月千早の本名を知ってることか?」

フェイリス「ニャニャッ、そこに気づくとは……さすがキョーマだニャ」

フェイリス「実はフェイリスのパパとチヒャーのパパは、お知り合いなんだニャ」

岡部「なるほどな」

岡部(フェイリスの父親は秋葉原の地主……芸能界とつながりがあってもおかしくはない)



66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:36:45.08 ID:qXRpVtxx0

フェイリス「それで、なんでキョーマはチヒャーの本名を?」

岡部「言わなければ、駄目なのか?」

フェイリス「ダメニャ」

岡部(フェイリスに嘘は通用しない……話すしかないか。フェイリスなら秘密も守ってくれるだろう)

岡部「分かった。すべてを話そう……」



67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:39:44.19 ID:qXRpVtxx0

フェイリス「……そんなこと、が」

岡部「あぁ。お前なら俺が嘘をついてないことが分かるだろう」

フェイリス「この世界線では、マユシィは死なずに済むのかニャ?」

岡部「まだ分からない。明後日になってみなくては……」

フェイリス「明後日になってもマユシィが生き残っていれば、世界線の収束を突破できたということになるのかニャ?」

岡部「そうだ。今までは明日には死んでしまっていたからな」

フェイリス「分かったニャ。フェイリスの方でも注意して見ておくニャ」

岡部「頼む」



69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:43:39.78 ID:qXRpVtxx0

フェイリス「チヒャーについての情報は……明日メール送ればいいかニャ? 正直、キョーマの話で頭がパンクしそうなのニャ」

岡部「分かった。それじゃ、頼んだぞ」

フェイリス「バイバイニャー」

フェイリス「…………」

フェイリス「まさか、こんな重い話になるニャんて……」

フェイリス「ごめんね、千早」



70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:46:35.96 ID:qXRpVtxx0

次の日――コミマ会場

岡部「さすがコミマ、とんでもない人の数だ。酔いそう……」

ダル「ダメだなぁオカリン。この程度余裕だろ常考」

岡部「キサマのような猛者とは違うのだ」

まゆり「まゆしぃはオカリンがコミマに来てくれて、とっても嬉しいのです♪」

岡部「そうなのか?」

まゆり「うん♪ オカリンはどこか行きたいサークルでもあるの?」

岡部「そういうわけではないが……」

ダル「目的もないのに来たん? ものぐさなオカリンがねぇ……珍しい」

岡部(まゆりの傍にいてやりたいなんて、さすがに言えないな)

まゆり「予定がないなら、まゆしぃと一緒にコスプレしようよー」



71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:49:26.38 ID:qXRpVtxx0

ダル「あ、それ面白そう」

岡部「なっ、何を言っているのだまゆり、そしてダルよ!」

岡部「この狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真は人目についてはならんのだ!」

まゆり「えぇー、まゆしぃは鳳凰院何とかさんじゃなくて、オカリンにお願いしてるんだよぉ」

岡部「だから俺はオカリンなどではなく鳳凰院……」

まゆり「オカリン」

岡部「俺は……」

まゆり「お願い、オカリン」

岡部「…………」

岡部「今日だけだからな!」

まゆり「ありがと、オカリン♪」

ダル「これは尻に敷かれるな……」



72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:51:16.86 ID:/2PXK9FJ0

まゆりはこの先生きのこれるのか!



73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:53:31.97 ID:qXRpVtxx0

数時間後――

岡部「ようやく地獄から解放された! もう二度とコスプレなんてしないからな!」

まゆり「えぇー。執事服のオカリン、大人気だったのに!」

ダル「次回はダンボールにGUNDAMって書いたコスプレキボンヌ」

岡部「意味が分からん!」

まゆり「ダルくん……まゆしぃの目が黒い内は、オカリンにそんなコスプレさせないよ?」

ダル「すんませんっした!」

岡部(一瞬、まゆりの目がヤバイ感じになったぞ……怖すぎる)



76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/07(水) 23:57:44.67 ID:qXRpVtxx0

ダル「あ、僕は今日知り合いのサークルさんと飲み会行くから。それじゃ、乙ー」

まゆり「お疲れ様ー」

岡部「お疲れー」

まゆり「それじゃ、帰ろっか」

岡部「なぁまゆり」

まゆり「んー?」

岡部「まゆりは今から用事とかあるのか?」

まゆり「特にないかなー」

岡部「それじゃ……今日はラボに泊まっていかないか?」

まゆり「え?」



78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:00:58.05 ID:IL7gvhYS0

岡部「あっ、そのだな……別に変な意味ではなく」

まゆり「分かってるよ。オカリンは、まゆしぃのことが心配なんだね?」

岡部「ふ……まゆりは何でもお見通しなんだな」

まゆり「今日のオカリン、ずーっとまゆしぃの事見てたからねぇ」

岡部「そんなに見てたのか」

まゆり「うん。それじゃ、お言葉に甘えて……今日はラボにお泊りしようかな」

岡部「すまないな」



79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:04:12.92 ID:IL7gvhYS0

――ラボ

まゆり「オカリンと二人っきりのお泊まり会かぁ、なんだかドキドキしちゃうかも」

岡部「ドッ、ドキドキ!?」

まゆり「あはは、顔真っ赤だよオカリン。一体どんなこと考えてたのかなー?」

岡部「お、俺は別にやらしいことなど考えていない!」

まゆり「まゆしぃはいやらしいこと、なんて一言も言ってないよ?」

岡部「ぐぬぬ……まゆりよ、今日は随分と反抗的ではないか」

まゆり「そんなことないよー? そろそろ、寝よっか?」

岡部「そうだな、今日は疲れただろう。おやすみ……」



82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:07:43.10 ID:IL7gvhYS0

まゆり「オカリンは寝ないの?」

岡部「まゆりの寝顔を見てから寝るさ」

まゆり「えぇ、まゆしぃの寝顔見るの? 何だか恥ずかしいなぁ」

岡部「写真でも撮っておくかな」

まゆり「オカリーン? そんなことしちゃダメなのですっ」

岡部「冗談さ、冗談」

まゆり「もう……それじゃ、おやすみなさい」



84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:10:20.52 ID:IL7gvhYS0

岡部(8月18日、午前0時……まゆりは死ななかった)

岡部(俺は、世界線の収束に打ち勝つことができたのか)

岡部(まゆりも紅莉栖も死なずに済んだ)

岡部(……少し、疲れたな)

岡部(長い間、ずっと気を張り続けてきたからだろう)

岡部(だがそれも、ようやく終わりだ)

岡部(そろそろ、眠りにつくとしよう)





岡部「ふわぁ……よく寝た」

岡部「あれ、まゆり……?」

岡部「まゆり!? おい、どこだまゆり!」

岡部(ま、まさか誰かに連れ去られた!?)

岡部(そんな、そんなことって……!)

岡部「クソッ! 今から追えば間に合うかもしれん……」ガチャ



85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:13:46.99 ID:IL7gvhYS0

岡部「あいてっ!」

まゆり「きゃっ!」

岡部「ま、まゆり……一体どこに行ってたんだ!」

まゆり「オ、オカリン……ごめんね、どうしてもお腹が減っちゃったの」

まゆり「オカリンぐっすり眠ってたから、寝かせてあげたほうがいいかと思って」

まゆり「オカリンも起きたらお腹減ってるかなって……」

岡部「まったく、心配したんだぞ」

まゆり「本当にごめんね。まゆしぃが起きてから4時間ぐらい待ってたんだけど……どうにもお腹が空いちゃって」

岡部「まゆりが起きてから4時間だと……? 一体今は……なっ、10時半!?」

まゆり「どうしたのオカリン?」

岡部(昨日来たメールには、今日フェイリスの家に来るように書いてあった)

岡部(指定された時間は13時。大丈夫だ、遅刻の心配はない……)

岡部「少し考え事をな。しかし腹が減った……まゆりが買ってきてくれた物を食べるとしよう」

まゆり「そうだねぇ。まゆしぃもお腹ペコペコなのです」



89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:17:48.94 ID:IL7gvhYS0

岡部「食った食った……」

まゆり「お腹いっぱいだねぇ」

岡部「あぁ。なぁまゆり……俺は今から出かけねばならんのだが、まゆりはどうする?」

まゆり「うーん、コミマの戦利品を確認したりしたいし、家に帰ろうかなって」

岡部「そうか。では駅まで送っていこう」

まゆり「え、でも時間は大丈夫なの?」

岡部「大丈夫だ、問題ない……行くぞ」



91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:20:21.13 ID:IL7gvhYS0

まゆり「オカリン、手を握ってくれるのは嬉しいんだけれど……ちょっと痛いのです」

岡部「あ……す、すまんな。つい力を入れてしまった」

まゆり「そんなに強く握らなくても、まゆしぃはどこにも行かないのです」

岡部「あぁ、どこにも行かせやしないさ」

岡部(運命の日は超えたのだ。理不尽な理由でまゆりが死ぬことは、もうない)

岡部(やれやれ。俺は本当に心配性だな……)

まゆり「オカリンと手を握って歩くなんて、なんだか久しぶりな気がするなぁ」

岡部「フ、フハッハハ……こ、この鳳凰院凶真と握手できることを光栄に思うがいいぞ!」

まゆり「んー? 何だかオカリン、顔赤いよ?」

岡部「な、なにを言っている! いや、これは"機関"の攻撃を受けているのだ! そうに違いない!」

まゆり「えへへ……変なオカリンだねぇ」



94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:24:09.44 ID:IL7gvhYS0

まゆり「それじゃ、また明日ね」

岡部「あぁ、ラボでな」

まゆり「ばいばーい」

岡部「おう」

岡部(さて、フェイリスの家に向かうとしよう)



95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:27:52.50 ID:IL7gvhYS0

フェイリス「待ってたニャ、キョーマ」

岡部「早速で悪いが、如月千早についての情報を教えてくれないか?」

フェイリス「うーん……フェイリスに聞くより、本人に聞いた方がいいんじゃないかニャ?」

岡部「本人? ま、まさか……!」

フェイリス「そのまさかニャ。入っていいよ、チヒャー」

千早「えぇ」ガチャ

岡部「紅莉栖!」

千早「はい?」

千早「って、あの……その名前で呼ばないで頂けませんか?」

岡部「な、なぜだ?」

千早「色々とあるんです」

岡部「そう言うのなら了承しよう」

千早「では改めまして自己紹介を。如月千早です、よろしくお願いいたします」

岡部「鳳凰院……じゃなくて、岡部倫太郎だ」

フェイリス「それじゃ、フェイリスはちょっと出かけてくるニャ。ごゆっくりー」



98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:31:42.76 ID:IL7gvhYS0

岡部「以前はいきなり電話をかけたりしてすまなかったな」

千早「別に、気にしてませんから」

岡部「なぜ電話番号を知っているのか、とかは聞かないのか?」

千早「聞いたら答えてくれるんですか?」

岡部「そ、それは……答えられない」

千早「…………」

岡部「…………」

千早「あの、なんで黙ってるんですか。何か用があるのでは?」

岡部「そ、そうなんだが、何を話せばいいのか頭がこんがらがってきてな……」

千早「はぁ……もう帰ってもいいですか?」



99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:31:59.93 ID:fdcNOGLB0

るみぽ



100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:34:09.93 ID:xDVVoLkh0

>>99
ニャッ!



104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:36:14.98 ID:IL7gvhYS0

岡部「待ってくれ!」ピリリリリ

千早「あ、電話……ちょっと失礼します」

千早「どうしました、音無さん?」

岡部(音無? あぁ、音無小鳥か……765プロの事務員で、趣味は妄想だったか?)

岡部(そして以前はアイドルだったな。ラボのPCに歌が入ってたが、かなり上手だった)

千早「え、社長が!? はい、分かりました。すぐに病院に向かいます!」ピッ

岡部「どうした!?」

千早「すみません、急用ができました! 今日はこれで……」

岡部「待て」ピポパ

岡部「あ、すみません……タクシーを一台お願いします」ピッ

千早「岡部さん……?」

岡部「急ぎの用なんだろう。タクシーを使おう」

千早「は、はい!」



106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:40:01.30 ID:IL7gvhYS0

――タクシー内

岡部「一体何があったんだ?」

千早「関係者でない人にはお話できません」

岡部「それもそうか……あぁっ!」

千早「どうかしましたか?」

岡部「所持金が72円だということを失念していた!」

千早「72円!?」

岡部「こ、これは……タクシータダ乗りでタイーホ!?」

千早「あの、私が出しますから。そもそも私の用事なんですし」

岡部「す、すまない……」



108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:41:44.47 ID:BCuAucdL0

女に金出させるなんて・・・



109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:41:57.76 ID:IL7gvhYS0

――病室

千早「社長!」

千早「大丈夫ですか、しっかりしてください社長! 目を、目を開けてください……」

小鳥「千早ちゃん……社長は疲労で倒れただけよ?」

千早「え?」

小鳥「もう、最後まで聞く前に電話を切っちゃうんだから……慌てん坊さんね」

千早「なんだ、よかった……」

岡部(しっかりしてるようで抜けた所もある、やはり生まれ変わっても紅莉栖は紅莉栖か)

高木「心配をかけてしまったな、すまない如月君」

千早「いつ頃に退院できるんですか?」

高木「三日ほどかかるそうだ。私はもう大丈夫だと言ってるんだがね」



112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:46:14.18 ID:IL7gvhYS0

高木「ところで如月君、そこの彼は一体何者だね? まさか、彼氏では……」

千早「違います! この人は……秋葉、じゃなくてフェイリスの知り合いです」

高木「おぉ、フェイリス君の……なるほどね」

高木「それにしても何といい面構えだ。ティンときた!」

千早「しゃ、社長? まさか……」

高木「君の名前は?」

岡部「鳳凰院……ではなく、岡部倫太郎です」

高木「岡部君、アイドルのプロデューサーに興味はないかね?」

岡部「はいぃっ!?」

小鳥「あちゃー、社長の悪い癖が……」

千早「ピンときたらすぐ勧誘。本当に強引ですよね……まぁ、私もそれに乗せられてしまったんですが」



115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:49:57.72 ID:IL7gvhYS0

岡部「お、俺は一介の大学生に過ぎない男ですよ?」

高木「なに、今は夏休みだろう。大学生なら休みも長いはずだ」

岡部「そういう問題じゃ……俺、プロデューサーなんてやったことありませんし、知識などもありませんよ」

高木「大丈夫だ、懇切丁寧に教えてあげよう。夏休みの間やってみて、適正があるようなら正式採用ということでどうかね?」

高木「人助けと思って、ここはひとつ……頼まれてはくれないだろうか」

岡部(俺にそんな大層な仕事が勤まるとは思えない)

岡部(それに、正式採用となったら大学に通うのは無理になるだろう)

岡部(せっかく入ったというのに、ろくに研究もせずに退学するのか?)

岡部(だが、これはチャンスだ。プロデューサーという立場なら、紅莉栖……じゃなくて千早の近くにいることができる)

岡部(自分の夢を取るか、好きな人の傍にいるか……。またもや二者択一とは、皮肉なものだな)



120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:54:35.02 ID:IL7gvhYS0

高木「今すぐに返事をしてくれとは言わない。悩む時間も必要だろう」

岡部(いや、ここで決断出来なかったら……いつまでたっても出来ない気がする)

岡部(…………)

岡部「分かりました、全力を尽くさせていただきます」

高木「君ならそう言ってくれると思ったよ! 頼むぞ、岡部君!」

岡部「はい!」



123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 00:58:32.94 ID:IL7gvhYS0

――765プロ

小鳥「……というわけで彼がプロデューサーになったの。見習いとして」

岡部「岡部倫太郎です。若輩者ですがよろしくお願いいたしましゅ!」

亜美「あ、今噛んだ!」

真美「噛んだ噛んだー」

律子「こら、静かになさい」

美希「この人がプロデューサー? なんだか不安なの……あふぅ」

真「そう? 結構カッコイイと思うけどなぁ」

雪歩「ま、真ちゃんの方がカッコイイよ……?」ボソッ

真「雪歩、今なにか言った? 声が小さくてよく聞こえなかったんだけど」

雪歩「な、何でもないですぅ」



126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:03:12.65 ID:IL7gvhYS0

真美「ミキミキの言う通り、ちょっと不安かもー」

春香「でも、社長が選んだぐらいの人なんだし……きっと大丈夫だよ!」

貴音「春香の言う通りです。高木殿が見込んだ程のお方。期待しております、岡部殿」

響「でも変なことしたらだめだぞー。いくら自分が完璧だからってね」

伊織「完璧? それはこの伊織ちゃんの事でしょ!」

響「なんだとー! プロデューサー、自分と伊織……どっちが完璧だと思う!?」

伊織「もちろん私に決まってるわよねぇ?」

岡部「え、えっと……その」

岡部(……どうしてこうなった! あの時の俺に言ってやりたい)

岡部迂闊なことをするなと、軽率なことをするなと、頼まれごとを安易に引き受けるなと……もっと注意を払えと!)



127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:06:17.06 ID:IL7gvhYS0

春香「ふたりとも、プロデューサーさん困ってるよ」

響「あ……」

伊織「何よ……こんなことぐらいで困ってちゃ、プロデューサーなんて出来ないわよ?」

律子「伊織、そこまでにしておきなさい。ていうかアンタのプロデューサーは私でしょう」

伊織「分かってるわよ。こんな素人同然の奴にプロデュースされるなんてゴメンなんだから」

律子「すみません岡部さん。今言われたことは、あまり気にしないでくださいね」

岡部「は、はい……」

律子「では私たち竜宮小町は、そろそろ営業の方に行ってきますので」

律子「何かあったら、この番号までどうぞ。私のケータイです」

岡部「ありがとうございます、秋月さん」



131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:11:02.19 ID:IL7gvhYS0

律子「そんな、秋月さんだなんて。名前を呼び捨てでオッケーです」

律子「私たち、同年代じゃないですか。誕生日が早いから、私のほうが一つ歳上ですけど」

岡部「あぁ……そうだった。それは改めてよろしく、律子……さん」

律子「さんはつけなくていいですってば」

岡部「律子さんには何だか、自然にさんをつけるオーラがあるんですよね」

あずさ「それ、よく分かります~。私も律子さんって呼んじゃうんですよ~」

あずさ「あ、私は三浦あずさと申します。よろしくお願いしますね」



132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:16:15.84 ID:IL7gvhYS0

岡部「よろしくお願いします。あずささん、でよろしいでしょうか」

あずさ「えぇ」ボヨヨン

岡部(こ、これがバストB91、少し見るだけでユッサユッサと!)

岡部(ダメだ、見てはいけない! これは"機関"による精神攻撃なのだっ!)

亜美「あー、あずさお姉ちゃんのおっぱい見てるー!」

真美「んっふっふー。スケベですなー」

岡部「ス、スタイルのよさはアイドルの強みであろう! なにもやましい理由で見ていたわけではない!」

亜美「真美、この兄ちゃんおっぱい見たことは否定してないよー」

真美「これはなかなかの強者ですなー」

あずさ「あらあら、プロデューサーさんったらエッチですね~」

律子「何やってるんですか亜美にあずささん。置いてきますよ」

あずさ「ごめんなさぁい」

亜美「んじゃ、行ってくるねー。あ、亜美の名前は双海亜美! よろしこー!」

岡部「よろしく。元気がいい子だな」

岡部(なんとか乗り切った……ナイス律子さん)



133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:20:14.14 ID:IL7gvhYS0

春香「元気なら私も負けてませんよ!」

真「ボクだって!」

響「自分もだぞー!」

やよい「うっうー! 私もですー」

岡部「うんうん、アイドルは元気が一番だな」

雪歩「はぅ……ごめんなさい」

岡部「な、なぜ謝る! 去年のライブでは輝いていたではないか!」

雪歩「見に来てくれたんですか?」

岡部「いや、DVDだ。765プロのライブDVDはすべて見ているぞ」

千早「そうなんですか。少し見直しましたよ」

岡部(紅莉栖……じゃなくて千早目当てに見ていたということは黙っておこう)



136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:25:19.28 ID:IL7gvhYS0

岡部(なんだかんだあって全員の自己紹介が終わった。そしてその少し後に雑誌の記者が来た……ってこ、こいつは!)

萌郁「本日はよろしくお願いいたします。あ、私……こういう者です」

岡部(そう言って目の前に居る萌郁は名刺を俺の方に差し出してきた)

岡部「桐生萌郁……」

萌郁「読めるんですか、嬉しいですね。苗字はともかく、名前は読めない方が多いんですよ」

岡部(えらく流暢に喋るな、この世界線の萌郁は……まるで今までとは別人だ)

萌郁「それにしてもプロデューサーさん、随分とお若いんですね」

岡部「何せ見習いなものでして。よろしくお願いいたします」



138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:29:31.70 ID:IL7gvhYS0

萌郁「……なるほど、765プロのみなさんは本当に仲がいいんですね」

春香「はい! 昨日も千早ちゃんと真と一緒に買い物に行ったんです」

春香「その時に真の買った服がすっごく可愛くて……。あ、あとそれから……」

岡部(…………)

春香「そういえば、先週やよいと一緒にですね……」

岡部(何だか話がずれていってないか?)

千早「春香、話が横道にそれ過ぎよ」

春香「あ! やだ、私ったら……ごめんなさい!」

萌郁「いえ……仲が良いという感じが、よく伝わって来ましたよ」

萌郁「これはいい記事がかけそうです」

岡部(紅莉……千早はしっかりしてるな。春香と相性がいいんだろうか?)



143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:34:30.20 ID:IL7gvhYS0

岡部(あれからいくつから萌郁の質問に答えて、インタビューは終了した)

萌郁「本日はありがとうございました」

岡部「こちらこそありがとうございました」

岡部「……ふぅ」

春香「プロデューサーさん、すごく汗かいてますよ。タオルどうぞ」

岡部「ありがとう春香。まったく気づかなかった……春香は周りをよく見てるんだな」

春香「えへへー、それほどでもっ」

岡部「あと千早、さっきはフォローしてくれて助かった」

千早「本来ならプロデューサーの役目のような気がしますけどね」

岡部「すまなかった。次からは気をつける」



145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:37:39.49 ID:IL7gvhYS0

貴音「ただいま戻りました」

響「ふぅ……今日も疲れたさー」

真美「たっだいまー!」

岡部「おかえり……っておわっ! 帰っていきなりタックルか!」

真美「んっふっふー、油断大敵だよ兄ちゃん!」

岡部「この鳳凰院凶真が油断などするとでも……? クククッ、キサマは我の掌の上で踊らされていただけなのだよ!」

春香「へ?」

千早「はぁ?」

貴音「め、面妖な……」

響「プロデューサー、なに言ってるんだ?」

真美「兄ちゃんノリノリですなー」

岡部(やってしまったぁああああああっ!)



148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:41:51.58 ID:IL7gvhYS0

岡部「ま、待ってくれ。これはだな……」

春香「真美に合わせてあげたんですよね? さすがはプロデューサーさんです!」

響「へぇ……プロデューサー、やるじゃん!」

千早「うーん、私にはそうは見えなかったんだけど」

貴音「私も千早と同じ意見です。非常に言い慣れているように見えました」

岡部(こ、こうなったらやけだ!)

岡部「フッ、バレてしまってはしかたない……」

岡部「岡部倫太郎は世を忍ぶ仮の姿……」

岡部「そしてその正体は……狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だッ! フゥーハハハッ!」

春香「…………」

千早「…………」

響「…………」

亜美「…………」

貴音「…………」

岡部(さらば765プロ……短い間だったが、いい経験になった)



152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:48:19.72 ID:IL7gvhYS0

千早「あははっ……あっははははっ!」

春香「だ、だめだよ千早ちゃん、笑っちゃ……あはっ、あははっ!」

響「そういう春香だって笑って……ぷっ、あーはっはっはっ!」

貴音「ふふっ……真、面妖ですね」

真美「兄ちゃん最高すぎるよー、お笑い芸人になれるって!」

岡部(何が何だか分からない……が、どうやらクビにならずに済みそうだ)



153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:52:31.06 ID:IL7gvhYS0

岡部「ふっ、ここまでだな……流星の双子(シューティングスターシスターズ)よ!」

亜美「くぅっ……何て強さなんだ!」

真美「これが狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真……でも、真美たちは負けるわけにはいかないんだかんねっ!」

亜美「こうなったら最後の手段だ! 出番だよ、ゆきぴょん!」

雪歩「え、えっと……その……」

真美「頑張れ、頑張るんだゆきぴょん!」

雪歩「穴掘って埋まってろですぅ!」

岡部「ぐわぁあああっ!」バタリ

亜美「決まったー、ゆきぴょんのドリルアーム!」

小鳥「こうして地球の平和は守られたのであった。まて、次回!」



157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 01:55:29.95 ID:IL7gvhYS0

伊織「何なのよアレ……」

あずさ「仲がよくていいわねぇ」

律子「それにしても岡部君があんなに変わり者だったなんて……みんなとも打ち解けてるみたいだし、いいかな」

亜美「今度は亜美&真美&ゆきぴょん VS いおりん&鳳凰院凶真でやろーよー」

伊織「はぁ? 何で私がそんなことを……」

岡部「フッ、恐れをなしたか? 閃光のデコ(シャイニング・フォアヘッド)よ」

伊織「ちょっと、変な名前つけないでよ」

岡部「そうか? そのおでこは伊織のチャーミングポイントのひとつであろう? いい名前だと思うが……」

伊織「チャーミングポイント? へぇ、よく分かってるじゃない。だからと言ってそのごっこ遊びには参加しないけどね」

岡部「怖いのか?」

伊織「はぁ?」



161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:00:57.08 ID:IL7gvhYS0

岡部「この聖戦(ジ・ハード)には、それなりの演技力が求められる」

伊織「聖戦ってなによ……ていうか、たかが遊びじゃない」

岡部「そうだ。だが、たかが遊びすらできないようでは……アイドルとしての器がしてれているな」

伊織「なっ!」

岡部「まぁ無理にとは言わないさ。台本もなく、アドリブオンリィで進むから難易度も高いしな」

伊織「じょ、上等だわ。やってやろうじゃないの!」



164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:06:26.66 ID:IL7gvhYS0

岡部「流星の双子よ……今日は貴様らを倒すべく強力な怪人を用意しているのだ! いでよ閃光のデコ!」

亜美「そんなっ! 凶真一人ですら手ごわかったのに!」

伊織「味わうがいいわ……まぶしいおでこ(フォアヘッドフラッシュ)!」

真美「ま、前が見えないー!」

伊織「今よ、あいつらを片付けておしまい! 我が下僕!」

岡部「なっ!? だ、誰が下僕だ!」

伊織「アンタのことに決まってるでしょ」

岡部「怪人のくせに言ってくれるではないか」

亜美「仲間割れしてる……今がチャンスだよ、真美!」

真美「オッケー! ダブルシューティングスターキーック!」

岡部「ぐわああああっ!」

伊織「覚えてなさいよーっ!」



165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:07:29.32 ID:EMm/LeYz0

いおりんは煽り耐性低いなー



166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:10:12.44 ID:hK9RbNdz0

怪人wwww
どっちがwwww



171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:16:37.55 ID:8uCrmspe0

流星の双子とは
まさかのDTB



169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:12:25.73 ID:IL7gvhYS0

伊織「どう? 伊織ちゃんの演技は」

岡部「完璧だっ! 素晴らしい……と言いたいが、なぜ俺が下僕なのだ!」

伊織「なに文句言ってるのよ。下僕って言われた時に、顔真っ赤にしてたくせに」

岡部「そ、そそそそんなはずがあるまい!」

伊織「アンタって本当に分かりやすいのね……」

亜美「下僕って言われて喜ぶなんて、変態ですなー」

響「プロデューサー、変態だったのか! 見損なったぞー!」

真「下僕って言われると男の人は嬉しいんだ……」

千早「それはごく一部の人だけだと思うわ。しっかりしなさい真」



172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:17:55.60 ID:IL7gvhYS0

春香「それじゃ、お疲れ様でした!」

千早「お疲れ様です」

岡部「お疲れ。気をつけて帰ってくれ」

岡部「さて、みんなも帰ったことだし……よろしくお願いします音無さん」

小鳥「小鳥さんや小鳥ちゃんでもいいですよ?」

岡部「いえ、さすがに目上の人にそれは……」

小鳥「ですよねー。それじゃ、事務の作業を始めるとしましょうか」

岡部「ご指導のほど、よろしくお願いいたします」



175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:22:16.71 ID:IL7gvhYS0

小鳥「はい、今日はこれでおしまいです」

岡部「……疲れた」

小鳥「コーヒーでも淹れましょうか? あ、岡部君はコーヒー飲めます?」

岡部「はい。ブラックで」

小鳥「お、しぶいですねぇ。クッキー、食べます?」

岡部「はい。脳が糖分を必要としている……っ!」



177:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:28:10.00 ID:IL7gvhYS0

岡部「ふぅ……クッキーを食べたら何だかお腹が減って来ました」

小鳥「カップ麺もありますよー。食べますか?」

岡部「アイドル事務所にカップ麺、ですか」

小鳥「あら、イメージ崩れちゃいました? アイドルだって人の子なんですよー」

岡部「いえ、そうではなく……健康面で見てよくないのではないかと思いまして」

小鳥「うーん、それはそうなんですけど……一人、ラーメンが大好きな子がいまして」

岡部「そうか。四条貴音……」

小鳥「アイドルのプロフィールは完全に叩きこんであるみたいですね。さすがです」

岡部(ラボのPCで音楽を聞きながら情報収集してただけです、ごめんなさい)



179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:35:05.46 ID:IL7gvhYS0

――萌郁の部屋

萌郁「お仕事、疲れた……」

萌郁「アイドルの子たちと話してる間、すごく緊張した。変な風に、思われなかったかな?」

萌郁「なんで、記者なんて……やってるんだろ。お話するの苦手なのに」

萌郁「はぁ……やめたい、かも。でもやめたら死んじゃう、よね」

萌郁「ケバブも……食べれない。それは、嫌」

萌郁「そういえば、今日あった765のプロデューサーさん……どこかで、あったような?」

萌郁「…………」

萌郁「……気のせい、ね」



182:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:40:49.67 ID:IL7gvhYS0

数日後――

岡部「今日は876プロのアイドルとの打ち合わせだったな。真が期間限定でユニット組むんだったか?」

真「はい。どんな子なんだろ、楽しみだなぁ」

岡部「相手の情報はまったくなし。親しい関係の事務所とは言え、新人と組むとはなぁ」

真「……と、何だかんだ言ってる間につきましたよ」

岡部「よし、行くとするか」

真「はいっ!」



184:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:45:51.62 ID:IL7gvhYS0

石川「あなたが765の新しいプロデューサーね。初めまして、876プロ社長の石川です」

岡部「岡部倫太郎です。本日はよろしくお願いいたします」

石川「涼、るか。入っていらっしゃい」

涼「初めまして秋月涼です。よろしくお願いしますっ」

るか「は、初めま……お、岡部さん!?」

岡部「るか子!?」

石川「あら、お知り合い? ……岡部君、ちょっとこっちいらっしゃい。すぐ済むから」

岡部「は、はい」




石川「岡部君、るかのこと……どこまで知ってるの?」

岡部「神社の巫女だとか、だが男だってこととか……ですね」

石川「巫女の方はともかく、男っていう事は他言無用よ。他のアイドルにも誰にもよ……いいわね?」

岡部「わ、分かりました」



188:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:49:06.51 ID:jeCwnI4l0

アイドル衣装がとても似合う。



191:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:51:31.96 ID:hK9RbNdz0

真も可愛いな……だが男だ



192:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:51:37.15 ID:IL7gvhYS0

真「どうしたんですか、プロデューサー」

岡部「なに、ちょっとした話だ。それじゃ、打ち合わせに行こうか」

るか子「あの、岡部さん……」

岡部「男だということは他言無用だと聞いた。心配するな」ボソッ

真「そういえば、るかとプロデューサーはお知り合いなんですか?」

岡部「まぁな」

真「へぇ。プロデューサーのこと、聞いちゃおうかな」

岡部「へ、変なことは聞くなよ?」

真「変なことってなんですか……趣味とか、普段のプロデューサーはどんな感じか聞こうと思っただけですよ」

るか「普段の鳳凰院さんは……」

岡部「るか子よ、今は岡部と呼んでくれ」

るか「あ、すみません岡部さん」



194:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 02:59:04.32 ID:IL7gvhYS0

岡部「涼は律子のいとこだったな」

涼「はい。律子姉ちゃんは765プロに入れようとしたんですけど、いろいろありまして……あはは」

岡部(しかし涼はなかなかいい体格をしているな。女にしてはかなりの図体)

岡部(まさかるか子同様男の娘だったり……なわけないか。考え過ぎだ)

岡部(ん? るか子の胸にボヨヨンが!?)

岡部(パッド、パッドだ……わかってはいるんだ。だが一瞬、女であるるか子の姿が頭をよぎった……)

真「ちょっとプロデューサー……るかの胸、見過ぎですよ」

るか「はぅ……」

岡部「おっとすまん。つい、な……」

真「つい、で胸見ないでくださいよ……まったく、乙女心が分かってないなぁ」

岡部(確かにるか子はどこをどう見ても女の子に見える、だが男だ)

岡部(女よりも女らしい、だが男だ)

岡部(アイドル衣装が似合っている、だが男だ! ていうかこの衣装、勃ったらヤバイだろ!)



197:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 03:06:27.48 ID:IL7gvhYS0

涼「真さんってカッコイイですよね。いいなぁ」

るか「はい。羨ましいです……」

真「え? 涼もるかもは可愛らしいじゃないか。ボクは二人のほうが羨ましいよ」

岡部「真も可愛いと思うが」

真「え? おだてないでくださいよプロデューサー。ってそれより、打ち合わせ始めましょうよ」

岡部「こうやって話をするのも打ち合わせのひとつさ」

るか「さ、さすが岡部さんです!」

岡部「それじゃ、そろそろ歌やダンスなどを見ていくか。レッスン場、行くぞ」

真・涼・るか「はい!!」



200:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 03:12:46.35 ID:IL7gvhYS0

数時間後――

岡部「みんな、お疲れ様だ。自分がこなすべき課題は分かったか?」

真「はい。頑張りますっ!」

涼「真さんのダンス、すごいなぁ……僕も頑張らないと」

るか「はぁ、はぁ……」

岡部「る、るか子よ……大丈夫なのか?」

岡部(なんだかものすごくエロい)

るか「は、はい……」

真「ちょっと飛ばしすぎたかな。ごめんね」

るか「いえ。ボク、もっと体力つけないと」

真「ボク、毎朝ジョギングしてるんだけど……二人もどうかな?」

涼「あ、いいですね。るかちゃんはどうする?」

るか「ボクもやってみます。足手まといには……なりたくないですから」



203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 03:17:56.12 ID:IL7gvhYS0

るか「あ、岡部さん……」

岡部「どうした?」

るか「この後、少しお時間ありますか?」

岡部「ちょっと待ってろ。えーっと……大丈夫だな」

るか「神社の方に来ていただきたいんですけれど……」

岡部「分かった」

真「それじゃ、ボクは先に事務所に戻ってますねー。ごゆっくり」



205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 03:23:47.77 ID:IL7gvhYS0

――柳林神社

岡部「さて、ここでなら何の気兼ねもなく話ができるな」

るか「はい……。岡部さんが765プロのプロデューサーだなんて、驚きました」

岡部「最近なったばかりだがな。俺もるか子がアイドルをやっているだなんて驚きだよ」

るか「え? ボクがアイドルをやっているのは……岡部さんが後押ししてくれたからじゃないですか」

岡部(なに!? この世界線の俺はなんという事をやっているのだ!)

岡部「あぁ、そうだったな……すまん、最近疲れていて頭がうまく働かないのだ」

るか「大学、やめたんですか?」

岡部「いや、今はまだ……だがおそらく、やめるだろうな」

るか「そうですか。はぁ……岡部さんにプロデュースされたかった、な」

岡部「すまんな、るか子よ」

るか「いえ……むしろこの方がよかったのかもしれません」

岡部「え?」



209:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 03:29:37.91 ID:IL7gvhYS0

るか「いつまでも岡部さんに甘えているわけにもいきませんから……それに、新しい友だちもできたし」

岡部「涼のことか」

るか「涼ちゃんだけじゃなくて、愛ちゃんや絵理ちゃん」

岡部「その二人も876プロのアイドルか?」

るか「はい。愛ちゃんはすごく元気な子で、絵理ちゃんはちょっと不思議な子です」

岡部「そうか。るか子、何だかうれしそうだな」

るか「はい。アイドルのお仕事はとても大変ですけど、楽しいです」

岡部「楽しむってのは大事な事だな、うん」



210:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 03:33:42.17 ID:IL7gvhYS0

岡部「すまん、そろそろ事務所に戻らないと」

るか「いえ……今日はありがとうございました。また、会えますか?」

岡部「あぁ、もちろんだ。改めてよろしく、るか子」

るか「よろしくお願いします、岡部さん」



213:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 03:39:37.53 ID:IL7gvhYS0

岡部「ただいま帰りました」

小鳥「おかえりなさい、プロデューサーさん」

伊織「ちゃんと仕事できたのかしら?」

岡部「あぁ、バッチリさ」

伊織「ふーん……ま、これからも頑張りなさいよ」

岡部「もちろんさ、伊織。さて、次は春香と千早、雪歩のグラビア撮影だったな」

雪歩「よ、よろしくお願いしますぅ」

春香「プロデューサーをイチコロにしちゃいますよ、イチコロ!」

岡部(春香って結構胸だかいよな……生水着か、ゴクリ)

千早「……不潔」



214:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 03:45:08.54 ID:IL7gvhYS0

――撮影所

カメラマン「いいよー春香ちゃん! ぐっとくるねぇ、その表情!」

春香「ありがとうございまーす!」

カメラマン「雪歩ちゃんの恥ずかしがってる表情もグッド!」

雪歩「は、はわわ……」

カメラマン「千早ちゃん、ちょっと表情固いよ。リラックスリラックス」

千早「す、すみません……」

カメラマン「うーん、少し休憩しようか」



217:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 03:51:09.31 ID:IL7gvhYS0

岡部「どうしたんだ紅莉……じゃなくて千早。調子でも悪いのか?」

千早「撮影は、あまり好きではないので」

岡部「歌を聞いてもらうためにアイドルをやっているから、か」

千早「はい」

岡部「だが千早の写真を見て興味を持ち、歌を聞いてくれる人がいるかもしれないだろ?」

岡部「一人でも多くの人に歌を聞いてもらいたいなら、様々な分野に挑戦するべきだと思う」

千早「そう、ですよね。でも……私の水着姿なんて見ても、誰も喜ばないんじゃ」

岡部「そんなことあるものか! 少なくとも俺はうれしいぞ!」

岡部「俺が喜ぶということは、他にも喜ぶ奴が必ずいるはずだ!」

千早「プロデューサー、本当に喜んでるんですか?」

岡部「俺の顔をよく見てみろ。真っ赤だろ……千早の水着姿にドキドキして真っ赤になってるんだよ」

千早「なっ……! よ、よくそんな恥ずかしい台詞が言えますね」

岡部「フゥーハハハッ! こ、この鳳凰院凶真にとってはこの程度、造作も無いわ!」

千早「困ったときの鳳凰院凶真さんですか。やれやれ……」

千早「もう少し、頑張ってみます……撮影」



218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 03:58:10.28 ID:IL7gvhYS0

カメラマン「お疲れーっした!」

岡部「お疲れ様です」

カメラマン「いやー、休憩の後の千早ちゃんはよかった! 何話してたかしらないけど、やるねぇプロデューサー君」

カメラマン「最近プロデューサーになったばかりなんだっけ? 期待してるよ」

岡部「ありがとうございます」

岡部(休憩後の紅莉……千早は本当にすごかったな。これならファンも増えるに違いない)



219:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 04:03:50.41 ID:IL7gvhYS0

――女子更衣室

春香「千早ちゃーんっ!」

千早「きゃっ! 春香ったら、いきなり抱きつかないでよ」

春香「いきなりじゃなければいいのかなー?」

雪歩「二人がそういう関係だなんて……お邪魔しましたぁ!」

千早「ストップ萩原さん。春香も変なこと言わないで」

春香「だって今日の千早ちゃん、すごく可愛いんだもん。あ、もちろんいつも可愛いんだけどね?」



221:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 04:08:38.97 ID:IL7gvhYS0

岡部「戻りましたー」

小鳥「おかえりなさいプロデューサーさん。あら、春香ちゃんと雪歩ちゃんは?」

岡部「途中で別れたんですよ。事務所よると遠回りになってしまうので。もう外は暗いですし」

岡部「紅……千早、外はかなり暗いし……一緒に帰るか?」

千早「……ご心配なく。一人で大丈夫ですから」

岡部(うーん……少しは心を開いてくれたかと思ったが、気のせいだったか?)

岡部(いや、万が一があってからでは遅い。多少強引にいくか)

岡部「小鳥さんはどう思います? こんなに遅くに、女の子を一人で返すことについて」

小鳥「あまりよくないですねー。今日は他のみんなはもう帰っちゃってますし」

岡部「そうですよね」

千早「なら音無さん、一緒に帰っていただけますか?」

岡部(そう来るか……どう出る、音無さん)

小鳥「ごめんなさい、まだ書類整理があって。かなり時間かかりそうなのよ」

岡部(ナイス! さすが2X歳……亀の甲より年の功!)

千早「……そうですか。分かりました、行きましょうプロデューサー」



224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 04:13:13.23 ID:IL7gvhYS0

岡部「なぁ紅莉……じゃなくて千早」

千早「なんでしょう」

岡部「俺、千早に何か悪いことしただろうか?」

千早「いきなり何です、藪から棒に」

岡部「一緒に帰るのが、すごく嫌そうだから……さっきかなり否定されたし」

千早「…………」

千早「暗い夜道を男性と歩くことに対して、否定的になるのは別に普通では?」

岡部「それはそうだが、一応プロデューサーなんだし」

千早「プロデューサーだからって必要以上の干渉は避けていただきませんか」

岡部「え……?」



227:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 04:19:27.73 ID:IL7gvhYS0

岡部「仕事を円滑にすすめるためには、親しくなった方がいいと思うのだが」

千早「仕事中だけ仲良くすればいいじゃないですか」

岡部「それは変な話だな。千早は事務所のみんなとよくプライベートをすごすのだろう」

岡部「ならば俺ともそうするのが自然だよ」

千早「そ、それとこれとは話が別です」

岡部「なんでさ」

千早「えっと……プロデューサーは男の人じゃないですか」

千早「だから一緒にいるところを雑誌に取り上げられたりでもしたら……まずいですよね」

岡部(それを言われると返す言葉がなくなってしまうな。あまり踏み込むべきではないのか?)

岡部「あぁ……確かにそうだな。すまん」



234:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 04:40:20.88 ID:hK9RbNdz0

機関の攻撃か・・・・・・くっ、奴らの好きにさせておくわけには



238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 04:53:22.20 ID:dOna32GG0

くそっ…
これも”機関”の妨害工作か…



237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 04:50:21.45 ID:IL7gvhYS0

数カ月後――

岡部(俺は正式に765プロのプロデューサーとなり、大学をやめた)

岡部(765プロのみんなは、なかなか人気のアイドルになっている)

岡部(みんなとの仲もかなりいい。紅……千早だけには、距離をとられているようだが)

岡部(まぁ、近くにいられるだけでいいさ)



240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 04:55:23.19 ID:IL7gvhYS0

――ラボ

まゆり「あ、オカリンだー! 何だかとっても久しぶりな気がするのです」

岡部「あぁ。最近仕事が忙しくてな……すまん」

ダル「これだからプロデューサー兼リア充は困る。マジ爆発しろよ!」

岡部「前に千早のサインもらってきてやったのは誰だったかな?」

ダル「すんません、マジ感謝してます」

まゆり「最近765プロがどんどん有名になってきてるよね。オカリンはすごいなぁ」

岡部「俺なんかちっともすごくない。すごいのはアイドルたちだよ」

まゆり「でもまゆしぃはちょっとだけ寂しいかな……オカリンがどこか遠くに行っちゃいそうで」

岡部「はは、俺がまゆりの傍を離れるわけないだろ」

まゆり「……そう、だよね。まゆしぃはオカリンの人質だもんね」

ダル(すっごく居づらい雰囲気なんですけど。なんなの? 馬鹿なの? 死ぬの?)



242:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 04:59:17.18 ID:IL7gvhYS0

一ヶ月後――

ダル「オカリンが来たの、もう一ヶ月も前なんだな」

まゆり「うん……ダルくん、無理してラボにこなくていいんだよ?」

ダル「こんなところに女の子一人だけ置いておくなんてできないっす」

ダル「それに、ここはメイクイーンに近いから結構便利なんだお」

まゆり「ありがと、ダルくん。ちょっとお出かけしてくるね」

ダル「いてらー」



243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 05:04:27.07 ID:IL7gvhYS0

まゆり(オカリンはお仕事で忙しいから仕方ないよね)

まゆり(人気アイドルのプロデューサーなんだもん)

「君ィ」

まゆり(もう、まゆしぃのことなんて忘れちゃってるのかなぁ……)

まゆり(そうだよね。765プロのみんなってすごく可愛いもん。まゆしぃなんかと比べちゃいけないぐらい)

「そこにいる君ィ!」

まゆり「えっ、もしかしてまゆしぃのことですか?」

「そう、そうだよ。君……ネットアイドルのELIEだろう?」

まゆり「それ、誰ですか?」

「む? あ、間違えた! 声が似てて、つい……今のは聞かなかったことにしてもらおう!」

「君は椎名まゆり……だな?」」

まゆり「えっ?」

「自己紹介が遅れたね。私は961プロ社長、黒井崇男だ」



245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 05:05:47.99 ID:dOna32GG0

黒井社長キタ――(゚∀゚)――!!



246:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 05:10:40.84 ID:IL7gvhYS0

黒井「君はアイドルの才能がある。アイドル、やってみないか?」

まゆり「うーんと……まゆしぃは、そういうのに興味ないのです」

黒井「本当かね? 君の大切な人間である岡部倫太郎……彼はそのアイドルに夢中だろう」

黒井「765プロの連中よりもすごいアイドルになれば、彼も君にメロメロになるはずだ」

まゆり「そんな誘いにはのりません」

黒井「ふぅ、強情だな。ならばいい事を教えてあげよう」

黒井「岡部倫太郎は765プロのアイドル、如月千早にお熱なのだよ」

黒井「その証拠がこれだ」

岡部『俺、千早と親しくなったな』

千早『大好きです、プロデューサー』

岡部『あぁ、俺もだよ』

まゆり「……っ!?」



248:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 05:17:41.51 ID:IL7gvhYS0

黒井(偶然外を歩いてる所を見つけた時に録音したものを加工しただけだがな)

黒井(如月千早の方はドラマの音声からも拝借している)

黒井(じっくり聞くとバレそうだが、一度ぐらいなら問題ない。心も弱っているだろうしな)

まゆり「そんな、オカリン……まゆしぃの事ほったらかしして、何で?」

まゆり「まゆしぃ、オカリンに何か嫌なことしちゃったのかな。ごめんね、ごめんね……」

黒井「岡部はお前をほったらかして、別の女といちゃついてたのだよ」

黒井「君はこのままでいいのか? 指を加えて見てるだけで?」

まゆり「まゆしぃは、まゆしぃは……」



249:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 05:24:01.80 ID:IL7gvhYS0



まゆり『かけがえのないこの世界には、たった一人のあなたがいる』

まゆり『手を伸ばしたら届きそうだよ。この大空に想い飛ばして、笑顔で――』

岡部「な……まゆり!?」

律子「岡部君のお知り合いですか?」

岡部「まゆりは……俺の、幼馴染なんです」

高木「黒井め、一体どういうつもりだ?」



250:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 05:30:25.83 ID:IL7gvhYS0

岡部「そうだ、ダルに電話を!」ピポパ

ダル『オカリン?』

岡部「あぁ、俺だ。実はまゆりが……」

ダル『知ってる、アイドルになったんだろ』

岡部「最近、まゆりに何か変わった様子はなかったか?」

ダル『それ本気で言ってるん?』

岡部「こんな時に冗談は言わん」

ダル『まゆ氏、オカリンが全然ラボにこなくて、すっげぇ寂しがってたぞ』

ダル『忙しいのはわかるけどさ、ちょっと顔を出すぐらい出来ただろ……?』

岡部「そ、それは……」

ダル『直接あうのが無理でも、メールや電話ぐらいしてやれたんじゃないのか』

岡部「だがまゆりからはメールも電話も来なかったぞ……」



251:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 05:36:48.74 ID:IL7gvhYS0

ダル『僕もまゆ氏に、オカリンにメールや電話連絡しようぜって言ったよ』

ダル『でもそうしたらまゆ氏……オカリンの重荷にはなりたくないから、それはできないって言ったんだよ』

岡部「まゆり……なんで俺は、そんなことに気づかなかったんだ」

ダル『まぁ今更悔やんでも仕方ないし、前向きに考えたら?』

ダル『別にアイドルになったっていいじゃない、ってさ』

岡部「そうだよな……別に、死んだとかいうわけでもないんだ」

ダル『なぜそこで死んだ、ってのがでるんだよ。オカリンの発想ぶっ飛び過ぎ』

ダル『ま……それはともかく、一度話し合っておいたほうがいいと思うぜ。それじゃ』



253:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 05:46:19.78 ID:IL7gvhYS0

岡部「まゆりに電話してみよう」ピポパ

『お客様のおかけになった電話番号は電波が入っていないか……』

岡部「だめだ、つながらない。メールを送っておこう……」

律子「心配ですね、その子……」



258:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 06:08:30.81 ID:IL7gvhYS0

数日後――

岡部(あれからまったくまゆりから連絡がない)

岡部(何かあったのだろうか……心配だ)

やよい「プロデューサー、大丈夫ですか?」

岡部「やよい? あ、あぁ……大丈夫だよ」

岡部(いかんな、プロデューサーがアイドルに心配されるとは)

やよい「プロデューサー……今日の夜、お暇ですか?」

岡部「ん? あぁ、大丈夫だぞ」

やよい「よかったー。よければ家でご飯食べて行ってくださーい!」

岡部(やよいの家って確か、かなり貧乏だよな……夕飯に人を呼んだりしたら、ただでさえ少ない飯が減ってしまうのでは?)

岡部(いや、それなら俺が食材を買っていけばいいだけか)

岡部「そうだな、じゃあお言葉に甘えるとしよう」



262:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 06:20:59.83 ID:IL7gvhYS0

やよい「こんなにたくさん買ってもらっちゃって……すみません、プロデューサー」

岡部「気にしないでくれ。家族多いんだろう?」

やよい「そうなんですよー。お父さんお母さん、長介にかすみ、浩太郎に浩司、そしてこうぞう!」

岡部「やよいを含めて8人か。すごいな……大変だろう、一番上だと」

やよい「確かに大変ですけど……にぎやかで楽しいですよーっ!」



264:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 06:25:27.52 ID:IL7gvhYS0

やよい「ただいまー!」

岡部「お邪魔します」

かすみ「お帰り、お姉ちゃん」

長介「ねーちゃんお帰り……ん? 彼氏!?」

やよい「違うよ。私のプロデューサーの岡部さん」

岡部「こんにちは」

浩太郎「あー、ねーちゃんカレシ連れてきてるー!」

浩司「かれしー?」

岡部(本当ににぎやかだな……)



265:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 06:30:59.77 ID:IL7gvhYS0

数時間後――

岡部「やよい、今日はごちそうさまな」

やよい「お粗末さまでしたー。どうでした、プロデューサー?」

岡部「すごく楽しかったよ。大勢での食事はいいものだな」

ダル『まゆ氏、オカリンが全然ラボにこなくて、すっげぇ寂しがってたぞ』

岡部(…………)

やよい「プロデューサー、私バカだから難しいことはよく分からないです」

やよい「でもプロデューサーが、何かで苦しんでるっていうことは分かります」

やよい「だから苦しい時は、誰かに頼って欲しいかなって……」



267:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 06:32:54.95 ID:70oiE7X80

やよいは良い子だなあ



268:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 06:38:23.03 ID:IL7gvhYS0

やよい「頼られてばかりじゃ、そのうち疲れちゃいますよね。私にも、そういう時がありました」

やよい「お姉ちゃんだから頑張らないといけないって思って、無理をしすぎて倒れちゃったんです」

やよい「その時に妹や弟に言われたんです。もっと自分たちを頼って欲しいって」

岡部「…………」

岡部「やよいは、ちっともバカなんじゃないな。俺よりずっと頭がいい」

岡部(俺はそう言いながら、やよいの頭の上に手をのせて優しく撫でた)

やよい「えへへー。プロデューサーに頭なでられると、なんだか嬉しいですー」

岡部(よし……まずはダルと律子さんに相談しよう)



269:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 06:43:19.66 ID:IL7gvhYS0

ダル『どうしたオカリン?』

岡部「961プロとまゆりについて調べられるだけ調べてくれ! 頼む!」

ダル『ったく、頼むのが遅いぜオカリン。とっくに調べ始めてるから』

岡部「すまん……何か分かったら教えてくれ」

ダル『おk把握』

岡部「次は律子さんだ」ピポパ

律子『どうしました、岡部君』

岡部「夜遅くにすみません。961プロに関する資料って……」

律子『961プロですか? それなら事務所に大量にありますよ。なんせウチとはライバルみたいなものですからね』

律子『あと社長が、まゆりちゃんのことを調べるために、、今日もいろいろなところに連絡してましたよ』

岡部「そうだったんですか……ありがとうございます!」

律子『いえいえ。あまり、一人で抱え込んじゃだめですよ?』

岡部「さっきやよいにも言われました」

律子『やよいが……あの子、しっかりしてますからねぇ』



272:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 06:50:07.01 ID:IL7gvhYS0

次の日――

岡部「社長、いろいろと手を尽くしてくださってありがとうございました!」

高木「いやいや、これは私の責任でもあるからね。黒井との関係はいい加減、何とかしなければ」

伊織「プロデューサー、はい」

岡部「伊織、これは一体?」

伊織「新堂に961プロについて調べてもらっておいたのよ。よかったら使いなさい」

岡部「ありがとう、恩に着るよ伊織」

伊織「ふん、いつか返してもらうからね」



273:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 06:58:00.20 ID:IL7gvhYS0

岡部(よし、みんなが集めてくれた情報をまとめた結果、いくつかの事が分かった)

岡部(まずは、まゆりは現在961プロの社員寮で生活してること)

岡部(961プロの社員寮は、セキュリティが非常に堅いらしい。防犯システムに加えて警備員がいるそうだ)

岡部(次、まゆりが元々持っていたケータイは没収され、別のものを黒井から渡されていること)

岡部(これでは連絡が出来るわけないな)

岡部(その次、まゆりは黒井と居て嫌がる様子はない……何故だ?)

岡部(そしてまゆりが外出するときは、ボディガードが付き添っている。徹底しすぎだろう……)

岡部(次。黒井社長は765プロと共演する仕事は完全に拒否している)

岡部(単に嫌っているだけではないだろう。たとえば、俺とまゆりを接触させたくないとか……?)

岡部(……必要な情報をまとめるとこんな感じだな)



277:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 07:08:04.95 ID:IL7gvhYS0

律子「これはどう考えても、まゆりさんを岡部君と接触させたくないってことでしょうね」

真「よーし、社員寮に乗り込みましょう!」

雪歩「えぇっ、危ないよ真ちゃん……」

律子「危ないとか以前に犯罪だから。警備員は倒せても、防犯システムはどうしようもないでしょ」

岡部「防犯システムなら何とか出来るかも」

律子「えぇ!?」

岡部「あ、やっぱ無理か……ネットワーク経由のものならともかく、そうではなかった」

岡部「いくらスーパーハカーといえども、スタンドアローンで動いてるセキュリティを潰すのは厳しい」



279:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 07:17:07.93 ID:IL7gvhYS0

響「それなら、外出中を狙えばいいんじゃない? 警備員だけなら真が何とかしてくれるさー」

律子「アイドルが街中で暴力沙汰なんて起こせるわけないでしょーが!」

亜美「そうだ、ならスナイパーを雇うとか!」

律子「もっとダメだから! というかさすがに非現実的よ……」

岡部「日本では発砲事件なんて三面記事ものだからな。アメリカならともかく、日本では無理」

律子「そこ、まじめに解説するところじゃありませんから」



280:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 07:24:28.16 ID:IL7gvhYS0

春香「外がダメでもテレビ局内とかならどうでしょう?」

真「確かに……局内にまでボディガード連れてくるのは難しい」

雪歩「でも用もないのに局内に入るなんてできないんじゃ……」

亜美「んじゃ、亜美たちも仕事入れればいいっしょ」

岡部「だがそれを黒井社長に事前に知られたらまずいな」

高木「ならば事前に知られなければいい、というわけだ。それぐらいは私がなんとかするよ」

高木「音無君、961プロの次の収録について調べてくれ」

小鳥「はい……あ、次の収録はスルーしたほうがいいかもしれません。961プロとつながりの強い局ですから」

小鳥「でも、これを逃すとだいぶ先になってしまいますね」

高木「ぬぅ、私では厳しいか……」

伊織「なら、水瀬財閥の名前を使いなさい。それならなんとかなるでしょ」

高木「しかし水瀬君……親の力は絶対に借りたくないのではないのかね」

伊織「そうよ。でも、そんな事言ってられる状況じゃないわ」

伊織「下僕が困ってる時に助けてあげるのも……ご主人様の役目だし? これで貸し二つだからね」

岡部「あぁ……本当にありがとう、伊織」



283:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 07:31:42.63 ID:IL7gvhYS0

数日後――

ダル『発信機の取り付けには成功した。超小型だからそうそう気付かないはず』

岡部「ご苦労だダル。よし……それではこれよりまゆり奪還作戦(オペレーション・ゲットバッカーズ)を開始する」

真「作戦名、長いですね……」

岡部「我々が収録するスタジオからまゆりが収録するスタジオに行くためのルートは2つ」

岡部「故に部隊を二つに分ける。αチームは俺、響、貴音。βチームは真、やよい、真美だ」

岡部「αチームが目標を発見した場合、俺がまゆりに話しかける。二人は周辺の警戒を」

岡部「βチームが見つけた場合、真美が俺と通話中にしてあるケータイをスピーカーモードにしてまゆりに接触」

岡部「なお真美のケータイは我々が出演する番組が終了次第、常に俺と通話中にしておく」

岡部「間違って切らないように。電話代は当然俺が持つ。何か質問は?」

岡部「……ないようだな。それでは作戦を開始する……諸君らの健闘を祈る」



285:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 07:40:19.23 ID:IL7gvhYS0

岡部(しかし取れた番組が関西フレンドパークとは……かなり体力を使ってしまうな)

岡部(できるだけ体力の高い五人を選んだつもりだが……頼むぞ)

司会「おぉっと貴音ちゃんがジャンプ! すごい、揺れてますねぇ」

司会「得点は右手30点、左手20点……合計50点! これは幸先いいですねー」

貴音「む、手が壁から離れませんね……面妖な!」



287:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 07:48:24.30 ID:IL7gvhYS0

司会「おぉっと……早い、早いぞ! ネズミを現れた瞬間にパンチしている! さすが真王子!」

司会「やよいちゃんも頑張っているぞー!」

真「無理しないでね、やよい」

やよい「このぐらい平気ですー!」

司会「おっとここで中ボスネズミが二匹登場だ! 殴る、ひたすら殴る!」

司会「ふたりとも汗だくですね。実にいい……おっと、やよいちゃんが先に中ボスを撃破!」

司会「これは予想外ですね……。あ、真君ムキになって強く殴らないで下さいねー」

真「はっ! 危ない危ない……」



289:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 07:54:16.50 ID:IL7gvhYS0

数時間後――

岡部(よし、収録が終わった)

岡部「みんな、行くぞ!」

貴音「はぁ、はぁ……この番組の収録はかなり体力を使いますね」

やよい「うっうー……でもまだ、大丈夫ですー」

真「ネズミパンチはしんどかったですけどね、割と本気で」

真美「真美は楽なものが多かったから大丈夫だよ」

響「連絡役が倒れたらまずいしなー」



291:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 08:01:07.76 ID:IL7gvhYS0

貴音「橋田殿、発信機の動きはどうなっておりますか?」

ダル『お姫ちんktkr! まゆ氏はまだ収録中かと思われ。さっき全然動いてないっす』

貴音「全然動いていない……?」

ダル『え、僕なにか変なこと言いました?』

貴音「プロデューサー、椎名まゆりは今日何の番組にでているのですか?」

岡部「あっちも俺達同様身体を動かす系統の番組だ」

貴音「……これは、まずいかもしれません」

真美『兄ちゃん! まゆりお姉ちゃん見つけた!』

岡部「なんだと!? すぐにそちらに向かう!」



293:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 08:08:15.39 ID:IL7gvhYS0

真美「まゆりお姉ちゃん!」

まゆり「はい? ……あなた達は、765プロの」

真美「スピーカーモードオン!」

岡部『まゆり、聞こえるか? まゆり!』

まゆり「聞こえてるよオカリン」

岡部『心配してたんだぞ……一体何があったんだ?』

まゆり「オカリン……ラボに来る時間はないのに、如月さんといちゃつく時間はあるんだね」

まゆり「でも許してあげる……すぐに分かるよ。まゆしぃと如月さん、どちらが優れたアイドルなのかね」

岡部『いちゃつく? 何の話だ!』

まゆり「この期に及んで言い訳するの? そっか、オカリンは疲れてるから仕方ないよね」

まゆり「すぐに目を覚まさせてあげるから、待っててね。今日はもう、バイバイ」

岡部『待ってくれ!』

真美「ちょ、まゆりお姉ちゃん早すぎっしょ!」

やよい「あっという間に見えなくなっちゃいました……」

真「真美、それ貸して! うぉおおおおおおっ!」



295:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 08:13:47.21 ID:IL7gvhYS0

真「追いついたぞ!」ガシッ

まゆり「離してくれないかな? まゆしぃは事務所に戻らないといけないのです」

岡部『はぁっ、はぁっ……!』

真「プロデューサーが来るまで、絶対に離さないよ」

まゆり「それぐらいの力じゃ、止められないよ?」

真「くっ……なんて力だ」

まゆり「961プロの過酷なレッスンに耐えてきたまゆしぃには、その程度の力じゃ通用しないのです」

真「だ、だめだ……もう力が」

岡部『ぐわぁああああっ!』ドンガラガッシャーン

響『プロデューサーが階段から落ちた!?』

貴音『しっかりしてください、プロデューサー!』

まゆり「オカリン!?」



298:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 08:18:50.59 ID:IL7gvhYS0

岡部『これぐらい、この鳳凰院凶真にとってはかすり傷同然だ。銃弾や刃物に比べたら大したことない』

貴音『何を言っているのですか。すぐに病院に行かなければ……』

岡部『それはできんな。早くまゆりを追いかけないと』

まゆり「なんで? オカリンは如月さんのことが大好きなんでしょ? なんでまゆしぃのためにそこまでするの?」

岡部『千早が大好きなのは否定せんがな、まゆりのことも大好きだからだよ』



302:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 08:27:53.76 ID:IL7gvhYS0

岡部「それに……お前は大事な人質だからな」

まゆり「オカリン……」

岡部「ごめんな、全然ラボに行ってやれなくて。メールや電話もしてやらなくて」

岡部「お前の気持ちに気づいてやれなくて、ごめん」

まゆり「オカリン、オカリン……!」

岡部「おい! 抱きしめるのは構わんが力を入れすぎだ! 痛い、痛ぃいいいっ!」

まゆり「あ、ごめんね……」



305:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 08:30:03.13 ID:IL7gvhYS0

岡部「あとな、一つだけ訂正しておくと……俺は千早とイチャイチャなどしていない」

まゆり「え?」

岡部「千早は何だか、俺に距離をおいてるようでな……何か嫌われるようなことをしてしまったんだろうか」

まゆり「でも黒井社長と初めて出会った時に、二人がいちゃいちゃしてる音声を……」

貴音「黒井殿なら、音声の加工ぐらいはやりかねないですね」

まゆり「…………」

岡部「まゆり、気持ちは分かるが落ち着け」

まゆり「ちょっと事務所に行ってくるね」

岡部「落ち着け、まずは冷静になろう……な?」

まゆり「ごめんね。オカリンの頼みでも……それはちょっと聞けないかな」



307:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 08:34:21.86 ID:IL7gvhYS0

――765プロ

黒井「こ、この度は……765プロのみなさんに多大な迷惑をおかけして申し訳……えぇい、なぜ私が765プロなどに謝罪せねばならん!」

まゆり「…………」ギロッ

黒井「申し訳ございませんでしたぁっ!」

黒井「お、覚えてろよ高木、そして765プロの諸君! さらばだっ!」ピュー

小鳥「ものすごい勢いで逃げて行きましたね……」

高木「これで少しは懲りただろう、たぶん」

高木「色々迷惑をかけてしまったね、申し訳なかった椎名君」

高木「ところで君は、これからどうするつもりかね? よければ我が765プロに……」

まゆり「うーん、まゆしぃにはラボでのんびりオカリンを待つのがお似合いだと思うのです」

高木「そうか。実に惜しいが……分かったよ」



309:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 08:36:51.13 ID:IL7gvhYS0

まゆり「あなたが如月千早ちゃん?」

千早「はい、そうですけれど」

まゆり「…………」

千早「あの、何か……?」

まゆり「どこかで会ったことないかな? 声に聞き覚えがあるんだけれど……」

千早「ごめんなさい、覚えがないわ」

まゆり「そっか。まゆしぃの勘違いかな、ごめんね」

千早「いえ、お気になさらず」

千早(椎名まゆり……)

千早(プロデューサーは、彼女を救うために世界を何度もやり直したのね)



370:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 14:34:52.16 ID:IL7gvhYS0

数日後――

小鳥「プロデューサーさん、前に取材が来た雑誌、買って来ましたよー」

岡部「お、これは萌郁の……」

美希「プロデューサー、前から気になってたんだけれどさ、何でその桐生って言う記者のことを名前で呼んでるの?」

雪歩「確かに……私も気になってましたぁ」

岡部「な、なんとなくさ。そう、なんとなく……」

美希「むー、怪しいの……もしかして、カノジョ?」

岡部「それはないな。断じてないっ!」

美希「言い切ったの……ちょっと可哀想かも」

岡部(以前の世界線で命を狙われた間柄です、とか言えるわけないだろ)



374:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 14:39:23.73 ID:IL7gvhYS0

岡部「お、雪歩のことがかなり大きく取り扱われてるな」

雪歩「あ……本当だ。うれしいなぁ」

美希「ふーん。ミキ、この人の書く文章キライじゃないかも」

岡部(この世界線での萌郁は人とも上手に接することができているし……幸せ、なのだろうか?)

岡部「それじゃ、そろそろ帰るとしよう。途中まで一緒に行くか?」

美希「一緒に行くの-!」

岡部「美希、そういう風に抱きついたりするのはアウトだからな?」

雪歩「そうだよぉ。美希ちゃんずるいよ……」

岡部「へ?」

雪歩「な、何でもないですぅ!」



376:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 14:46:14.57 ID:IL7gvhYS0

岡部(途中で二人と別れてラボに向かったが、今日は誰も来ていなかった)

岡部(連絡してから来るべきだったな。ま、一人でくつろぐのも悪くはない)

岡部(ラボには765プロに関するものが大量に置いてある。ちょっと高いオーディオセットも買ってしまった)

岡部(さて、一人でのんびりライブのBDでも見るとしよう……最近でた竜宮小町のライブの奴にするか)

伊織・亜美・あずさ『キミが触れたから七彩ボタン』

伊織『全てを花咲かせたよ』

伊織・亜美・あずさ『どんなカナシミも洗い流す強さ、キミがボクにくれた――』



378:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 14:52:57.16 ID:IL7gvhYS0

岡部(ライブBDも堪能したし、そろそろ帰るか)

ブラウン「お? 岡部じゃねーか」

岡部「ミスターブラウン!」

ブラウン「最近お前の765プロ……だったか? 大人気らしいじゃねぇか」

岡部「えぇ、おかげ様で」

ブラウン「そこでだ! このブラウン管工房とタイアップでもしてみねぇか?」

岡部(え?)

ブラウン「何鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてんだよ」

岡部(そういえば、この世界にはラウンダーいないんだよな)

岡部(こんな場末のブラウン管工房だけで食っていけるのか?)

ブラウン「何だかものすごく失礼な事を考えてる、ってのは分かるぜ」



379:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 14:58:06.16 ID:IL7gvhYS0

岡部「とりあえず社長に相談しておきますね……それでは」

ブラウン「あ、ちょっと待て。やっぱ今のナシだ」

岡部「どうしたんです」

ブラウン「そんな金がないという事に気づいたぜ……」

岡部(ですよねー)



383:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 15:06:52.31 ID:IL7gvhYS0

岡部「そこの角をまがって……あいてっ!」ドーン

「きゃっ……!」

岡部「すみません、大丈夫ですか……ってあなたは!」

萌郁「あ、岡部君……」

岡部「萌郁さんじゃないですか」

岡部(本人の前ではさんをつけているが、ものすごい違和感)

萌郁「あの、その……ご、ごめんなさい!」

岡部(やっぱり萌郁はビクビクしてるな……ってあれ?)

萌郁「あ……えっと、これは……と、とにかくごめんなさい!」

岡部「落ち着いて下さい」

萌郁「で、でも……ケバブが岡部君のかばんに」

岡部「落ち着けと言っているだろう萌郁」

萌郁「萌、郁……?」

岡部「ってケバブ? のわあぁああああっ!」



384:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 15:08:45.84 ID:MiC+pJC+i

あのケバブ旨いんだよなぁ
食いたくなってきた



385:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 15:12:11.39 ID:IL7gvhYS0

岡部「まぁこれぐらい洗えばなんとかなりますよ」

萌郁「岡部君、さっき萌郁って……」

岡部「あ……すみません呼び捨てにしちゃって」

萌郁「ううん、その方がいい……かも。今仕事中でもないし、敬語も使わない方が……」

岡部「そう言うなら、そうさせてもらうが」

萌郁「近くに私の家あるから、寄っていかない?」

岡部「はい?」

萌郁「かばん汚しちゃったし、お詫びしないと」

岡部(お詫び? まさかアレか、アレなのか?)

萌郁「何だかやらしいこと考えてる……」

岡部「やだなぁ、そんなわけないだろ? ははは……」



387:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 15:18:44.70 ID:IL7gvhYS0

――萌郁の部屋

岡部「……カップ麺だ」

萌郁「カップ麺、苦手?」

岡部「いや、好物だ。いただきます」

萌郁「岡部君、気にならないの? いつもとは喋り方が違う、とか」

岡部「色々事情があるのだろう、聞かないさ。仕事の時にはちゃんとしているし、問題ない」

岡部(というか今までずっとそんな感じだったから、全然違和感ないんだよな……)

萌郁「私、人と話すのがすごく苦手……なの」

萌郁「仕事中はなんとか頑張ってるけど、いつ失敗するかって考えると、すごく……怖い」



388:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 15:18:46.35 ID:DAS/9fXo0

オカリンのハーレムが広がりんぐ



389:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 15:25:20.46 ID:IL7gvhYS0

岡部「それは萌郁だけじゃない、誰だってそう思うことはある」

岡部「俺だってそうだ。特にプロデューサー始めたばかりのころなんて、毎日ビックンビクン怯えてた」

萌郁「岡部君が……? こんなにしっかりしてるのに」

岡部「お前だって仕事中はしっかりしてるじゃないか」

萌郁「でも、仕事でもしょっちゅう怒られるし、私……やっぱり向いてないんじゃないかって」

岡部「今日萌郁が書いた記事を読んだんだがな、ウチのアイドルは喜んでたぞ」

岡部「もちろん俺もいい記事だと思った。だから、もっと自身を持っていいんじゃないか?」

岡部「それに俺だってよく怒られているぞ。主に閃光のデコ(シャイニング・フォアヘッド)からな」

萌郁「閃光の、デコ……? 閃光の……閃光の指圧師(シャイニング・フィンガー)?」

岡部「!」

岡部(まさかリーディング・シュタイナーか? いや、驚くことではあるまい。α世界線において紅莉栖もリーディング・シュタイナーに目覚めた時があった)

萌郁「なんだろ、今の言葉……よく分からないけど、何だか懐かしい」



392:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 15:32:11.18 ID:IL7gvhYS0

萌郁「ねぇ岡部君……私達、765プロで会うよりずっと前に、どこかで出会ったことない?」

岡部「……いや、ないな」

萌郁「そう、だよね……ごめんね、変なこと言って」

岡部「いや、謝ることじゃないさ。さて……そろそろお暇するとしよう」

岡部「じゃあな」

萌郁「岡部君! また……会える?」

岡部「そりゃ会えるだろう。また記事を書いてもらいたいしな」

萌郁「そうじゃなくて、その……プライベートでも」

岡部「あぁ。構わないさ……最近立て込んでるから、なかなか時間が作れないけどな」



396:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 15:37:51.16 ID:IL7gvhYS0

次の日――

岡部「千早の奴遅いな……もうすぐドラマの撮影に行く時間なのに」

岡部「電話やメールも反応がない」

美希「千早さん、まだ寝てたりして。ミキも眠いの……あふぅ」

春香「さすがに千早ちゃんがまだ寝てるなんて思えないけど……」

千早「ごめんなさい、遅くなりました!」

岡部「千早! 連絡ぐらいは……っておい、どうした!?」

美希「千早さん、顔真っ赤なの」

春香「おでこ、すっごく熱い……」

岡部(おでことおでこで熱を測る……なんてことはなく、普通に手をおでこにあてていた)

千早「大丈夫、ちょっとだけ熱があるぐらいだから」

春香「ちょっとだけ、じゃないよ千早ちゃん! 今日はもう休んだほうが……」

千早「それはできないわ」



398:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 15:44:15.02 ID:IL7gvhYS0

千早「エキストラとかなら誰かが代わりなればいいかもしれないけど、名前がついた役をやるのよ。代役なんて出来ないわ」

千早「私一人の都合で撮影のスケジュールを遅らせるなんて、もってのほかだし」

岡部「分かった、行くぞ」

春香「プロデューサーさん!?」

岡部「本人がこう言ってるんだ、やらせるしかないだろう。幸いにも千早は明日オフだし、じっくり休んでもらう」

岡部「明日は一日自宅で休養しろ、守れるか千早?」

千早「もちろんです」



401:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 15:50:09.72 ID:IL7gvhYS0

監督「カット! 千早ちゃん、調子がよくないのは分かるけど、やるって言ったからにはしっかりしてくれないか?」

千早「申し訳ございません監督!」

監督「とりあえず少し休憩してて。先に他のシーン撮るから」

千早「分かりました……」

岡部「はい、水」

千早「どうも。ごくごく……ぷはぁっ」

岡部「タオルも」

千早「ありがとうございます」



403:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/08(木) 15:56:10.82 ID:IL7gvhYS0

岡部「しっかり身体を休めておけよ。いつ呼ばれるか分からないからな」

千早「はい……」

千早「今朝、プロデューサーは私を止めると思いました」

岡部「なぜだ?」

千早「プロデューサーってよく言えば優しいですけど、悪く言えば甘いですから」

岡部「……止めて欲しかったか?」

千早「まさか。止めたりしたら反発して、這ってでも行くつもりでした」

岡部「俺は千早を信じているからな。千早がやるというなら、それを手伝うだけだよ」

千早「プロデューサー……」

監督「千早ちゃーん。そろそろさっきのシーン撮り直すから、準備しといてね!」

千早「は、はいっ!」




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