1:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 03:13:01.59
ID:9T/ncerH0
提督「初月、そろそろ昼飯にするか」
初月「ひる……めし……? そうか。船ならぬこの身は生物を殺し、口にすることでのみ維持できるのだな。罪深いことだ」
提督「なに急に艦船擬人化みたいなこと言ってるんだ。昨日、おれのおごりでステーキを3枚も食っただろうが」
初月「たまには着任当初の純朴キャラを押し出そうと思って」
提督「すっかりスレてしまったな、初月も」
初月「で、今日はどこに連れていってくれるんだ。寿司か天ぷらか」
提督「うるさい。今日はラーメン屋だ。自分で払え」
2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 03:14:57.06
ID:9T/ncerH0
○ラーメンのふぶき
吹雪「いらっしゃいませー……うわ」
提督「やあ、退役してラーメン屋をはじめた吹雪。繁盛してるか」
初月「なんだか嫌そうな顔をしているようだが。何かあったのか」
吹雪「い、いえべつにー。ご注文をどうぞー」
初月「ふぶきラーメン大盛り全部のせをひとつ」
提督「おごらないからな」
初月「けち提督め」
提督「いやしんぼ艦娘」
初月「なんだとあほ司令」
提督「たかり駆逐艦が何か言ってるな」
吹雪(またはじまった……)
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 03:17:10.36
ID:9T/ncerH0
吹雪「おまたせしましたー」
○ふぶきラーメン・全部のせ 1300円
(本体800円、大盛り100円、トッピング400円)
さっぱり魚介系の透明なしょうゆスープ。
麺は細めのストレートタイプ。量は400グラム。
チャーシュー5枚に味付け卵と温泉卵がひとつずつ、海苔が3枚。
トッピングのネギと香味油は別添え。
初月「いただきます」ツルツル
初月「ふむ、スープを変えたな」
吹雪「わ、わかりますか」
初月「もちろんだ。かつお節とまぐろ節の比率が7:3から6:4になっている」
吹雪「そ、そのとおりです」
初月「そして醤油ダレにエビの殻を加えているな。この香りは甘エビか。素揚げにしたものを煮立つ直前に入れて、そのまま冷ました後に取り除いている」ツルツル
吹雪「……はあ。相変わらずすごいね……。麺を一口すすっただけでそこまで……」
初月「二口すすったらもうひとつわかったぞ。チャーシューのハチミツも変えたか。産地は東北かな」
吹雪「えー……スープに浮かべただけのチャーシューまで……。なんでわかっちゃうんだろう」
提督「気にするな吹雪、こいつはちょっとおかしいんだ」
初月「うるさい。印象としてはわずかな変化だが、味のランクが1つ上がっている。さすがだな、吹雪」ツルツル
吹雪「はあ、どうも……」
初月「だからこそだ。吹雪」ズイッ
吹雪「は、はい?」
初月「その才能をぜひ、味噌トンコツこってり背脂系に活かさないか。きっと今よりずっとお客さんも入る」
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 03:21:33.24
ID:9T/ncerH0
吹雪「(ほらきた)……そのー、私は今のラーメンで満足してるから」
初月「吹雪……。確かにこれはハイレベルなラーメンだが、やはり時代はトンコツ、そして味噌なんだよ」
提督「お前が好きなだけだろ」
初月「違う! この前出たラーメンムックのランキング、その第四位にもちゃんとこの組み合わせが入っている」
提督「おれも読んだ。第一位は魚介しょうゆだったぞ」
初月「それは……集計期間のアレとか、そういうのだ……きっと……」
吹雪(私のラーメンを一番理解してくれるのは初月ちゃんなのに、どうしてこうも好みが合わないんだろう)
初月「大体、そういうお前はなぜ、つけ麺を食べているんだ。ラーメン屋に入ると必ずつけ麺を頼んでいるのはなぜだ」
提督「好きなんだよ、つけ麺が」
○ふぶきつけ麺・特盛 950円
(本体750円、特盛200円)
つけスープはラーメンのものをベースに、甘みと酸味が加わっている。
麺はラーメンと同じで冷たいもの。量は700グラム。
チャーシュー1枚と海苔が1枚。
ネギと香味油は別添え。
初月「ラーメン屋なのだからラーメンを食べるべきだ」
提督「おれはつけ麺がいい。麺をじっくり味わえるからな」
初月「ラーメンの本質はスープだ。麺は重要でも本題ではないぞ」
提督「そんなことはない。ラーメンは麺料理なんだから、麺こそがラーメンだ」
初月「しかしつけ麺の味を決めているのもスープだろう」
提督「だからといって、ラーメンを頼んでスープだけ飲んで帰るやつはいない」
初月「それは極論だ」
提督「だとしても事実だ。スープを残すやつは多いけどな」
初月「ぐぬぬぬ」
吹雪(よそでやってほしい)
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 03:25:08.51
ID:9T/ncerH0
提督「吹雪も気にすることはないぞ。初月は自分の好みを主張してるだけだ」
吹雪「えっ。ええ、まあ。もうぜんぜん気にしてませんけど」
初月「何を言う。吹雪、僕を信じてくれ。とんこつ味噌はこれからのラーメンのスタンダードだ」
提督「とんこつと言えば魚介と醤油の組み合わせじゃないか」
初月「それはもはや過去の話だ! というか、つけ麺こそとんこつだろう!」
提督「確かにそういう風潮はあったが、今はつけ麺のスープにも多様性が……」
吹雪(早く帰ってくれないかなあ)
ガラガラ
叢雲「吹雪ー、司令官と初月が来てるって?」
吹雪「えっ、叢雲ちゃんに……初雪ちゃん!? なんでそれを……」
初雪「白雪に……聞いた……」
厨房の白雪「さきほどメールしました」ヒョイ
吹雪「何やってるの……」
白雪「たまにはみんなで集まるのもいいかと思いまして。この時間はひまですし」
初月「おお、むらふもに、はふゆひくぁ」ギリギリ
提督「ひさしうりらな。げんきにひへはは」グイー
叢雲「まあね。で、なんで二人は頬をひっぱりあっているの」
初雪「聞くまでもない……どうせラーメンでもめてる……」
初月「この味オンチ提督があまりにもラーメンをわかっていないだけだ。二人からも何かいってやれ。具体的には味噌トンコツこってり背脂系こそ至高だと」
提督「具体的すぎるだろ」
叢雲「私、カレーラーメンが好きなのよねー。吹雪、こんどメニューに入れない? 裏メニューでいいからさ」
吹雪「やりません」
初雪「私は……ボンゴレが好き……吹雪、スパゲッティ……」
吹雪「やりません」
初月「では味噌ト……」
白雪「やりません」
初月「むう……」
6:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 03:27:28.02
ID:9T/ncerH0
提督「久しぶりに二人に会ったんだ。せっかくだからおごるよ」
叢雲「あら、うれしい。ありがとね」
初雪「らっきー……。遠慮なく……おごられる……」
初月「さすが提督、太っ腹ですね! ごちそうさまです!」
提督「お前は自分で払え」
初月「くそ。ケチめ」
吹雪(二人とも、これを期待して来たんだろうなあ……司令官もわかってるんだろうけど)
………………
吹雪「おまたせしましたー」
○ふぶきラーメン・950円
(本体750円、特盛200円)
麺の量は300グラム。
チャーシュー2枚に味付け卵半分、海苔が1枚。
ネギは別添え。
○ふぶき餃子・250円
4つセットの焼き餃子。豚肉。
皮は自家製。
叢雲「吹雪の作る餃子もおいしいのよね」
初月「うん。焼売もいけるんだが……」
提督「こっちみんな、しっしっ」
○ふぶき塩ラーメン・850円
魚介系の透明な塩スープ。
麺以下トッピングはふぶきラーメンと同じ。
初雪「吹雪の塩……好き。あさりが浮かんでいると……なおよかった……」
吹雪「うーん、それならできるかも……」
白雪「今度試作してみましょうか」
提督「トンコツ味噌は試作しないぞ、初月」
初月「じゃあトン……何も言わないうちに全部先回りされた」
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 03:31:31.03
ID:9T/ncerH0
叢雲「最近の鎮守府はどう?」
提督「暇だな。深海棲艦はあの決戦以来出てこないし。おかげでこうしてのんびり食事もできる」
初月「優秀な秘書艦がついているおかげでもある。感謝するといい」
提督「ほう、ならばそろそろごくつぶしを優秀な秘書艦と交替するか」
初月「提督、自分をごくつぶしだなどと卑下するものではないぞ。おっとこれは事実だったか」
提督「交替はがらくた防空駆逐艦を解体する仕事を終わらせてからだな」
初月「やってみろ。解体資源を食わせてやる」
叢雲「全然変わってないみたいね。よくわかった」
初雪「ところで初月って……私とキャラがかぶっている……気がする…。クールだし…名前も似てるし……」
初月「なるほど! 確かに! 僕はクールだ」
吹雪「それはないよ」
白雪「ないですね」
叢雲「ハッ」
提督「客観性を獲得できていないな。自我が未熟な証拠だ」
初雪「そうかなあ……」
初月「言われたい放題だ。呑まなければやっていられない。吹雪、酒を出してくれ」
吹雪「うちはアルコールはやってないので。ラーメン食べ終わったなら帰ってくださーい」
初月「名前の通りの冷たい女になったな、吹雪……」
提督「吹雪の言う通りだ。帰るぞ、初月。昼休みをだいぶ超過している」
初月「なに、それはいけないな。仕方ない、帰るか」ダッ
提督「払え」ガシッ
8:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 03:33:19.61
ID:9T/ncerH0
吹雪「ありがとうございましたー」
提督「それじゃ、また来るよ。ごちそうさま」
初月「方針転換をしたくなったら連絡をしてくれ。いつでも僕が専属フードプロデューサーになる」
吹雪「ハハハ……」
叢雲「またね。今度、みんなでゆっくり会いましょ」
初雪「いい店……知ってるから……」
白雪「その時は、他の姉妹も呼んでおきます」
提督「ああ、いずれな。でもさすがに全員には奢らないからな」
白雪「では姉妹を呼ぶのはやめておきます」
提督「おーい」
初雪「冗談……あんまり奢られると……初月みたいになるから……」
吹雪「あー」
白雪「なるほど」
叢雲「それは避けたいわねー」
初月「どういう意味だ、それは」
提督「そのまんまの意味だろ。ほら、いくぞ」
初月「まて、提督。おぼえていろよお前ら」
叢雲「ザコっぽい捨て台詞ね……」
吹雪「またのご来店おまちしてまーす」
9:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 03:35:59.11
ID:9T/ncerH0
提督「吹雪たちは元気だったな」
初月「ああ。安心した」
提督「さて、明日は……」
初月「瑞鶴の店へ行こう。久しぶりに会いたい」
提督「あいつらはすき焼き屋をやってるからだろ」
初月「そうだったっけー、忘れちゃったなー」
提督「俺のサイフの背中と腹がひっつくからダメだ。……明日は初月に用意してもらおうかな」
初月「えー。麦飯と缶詰でいいなら」
提督「こんだけ贅沢なものを食わせてやってるのにそれかよ。たまにはまともに料理をしろ」
初月「食べるのと作るのは別だぞ、提督よ。それくらいわかれ、大人だろ」
提督「なるほど。そういや俺のサイフとお前のサイフも別だよな。明日は瑞鶴の店にしよう」
初月「あー、急に料理がしたくなってきた。自慢の手料理を提督に振舞ってあげることにしよう。泣いて喜べ」
提督「ほんとスレたよな、お前」
初月「ふん、ひねくれた提督の下で働くと苦労するんだ」
提督「そうかもな。感謝してるよ」
初月「………………や、やめろ」
提督「何照れてんだ、バカだなー」
初月「うるさい」
提督「ばーかばーか」
初月「うるさいうるさい。……ん。お前もちょっと顔赤くないか」
提督「そんなわけないだろ、ばーか」ダッ
初月「子供か! まて!」ダッ
おわり
11:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 04:18:24.72 ID:JkJKSbvEo
乙です
キャラクター同士の絡みがほっこりして好き
是非この続きも読んでみたい
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1591726381/
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