ほむら「幸せになりたい」【中編】

2011-07-06 (水) 19:17  まどか☆マギカSS   0コメント  
前→ほむら「幸せになりたい」



126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:12:18.24 ID:YSdw+2iGo
第六回いきます



127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:12:53.81 ID:YSdw+2iGo

翌朝。
案の定、三人は随分と体調が悪そうだった。

「まったく、二日酔いになる魔法少女なんて聞いたことがないよ」

「あ、頭ガンガンする……」

「うるせえ言うな、余計痛む……」

「こんなはずじゃ……」

「みんな、大丈夫? 立てる?」

「ムリ~……」

「二日酔いでサボりだなんて、大した不良ね」

「くっそ、好き勝手言いやがって……あいたたたたたた」

「ごめんなさい、夕方までには治すから……うっぷ」



128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:14:36.54 ID:YSdw+2iGo

へろへろの足取りで洗面所に駆け込んでいく。
いつもの凛々しい姿はどこへやら。
仕方がない、彼女たちが復帰するまでは私一人でどうにかするしかないだろう。

幸い魔物については、ある程度の法則が見えている。
二種類が存在して、魔獣が魔女を吸収したものと、魔女が魔獣を吸収したもの。
後者は特に危険だが、これは統計における魔女の出現とほぼ一致している。
ほぼ時間場所を把握出来る分、逆にその対処は容易い面もあった。
そして前者は完全にランダム。
主にこれを警戒して街のパトロールを行っているが、力量としてはまだ対処しやすい部類に入る。

今日出現する予定の魔女はいない。
おそらく、なんとかなるだろう。

「行きましょう、まどか」

「うん、ほむらちゃん」

今の彼女には、一つ芯が通っている。
その表情にも憂いはなかった。
顔をこちらに向けて、一言。

「いつか聞かせてね、昔のわたしのこと」

「ええ、必ず」



129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:15:24.21 ID:YSdw+2iGo

足音が遠くなっていくのを確認する。
痛む頭ではそれも一苦労だ。

「あっつつ……行ったかしらね」

「クッソなんであいつらだけ……」

「うー杏子、水とって…………」

「自分で取れバカ……」

「それが君の願いなら、僕は喜んで取ってあげるけれど」

「撃つわよ?」

「やだなあマミ、冗談に決まってるじゃないか」

何でもない会話を楽しみながら、頭痛が治まるのを待ちたいところだけど。
私の耳に残る会話がそれを許さない。
何とか思考を整え、口を開く。

「……ところで、話があるの」

「昨晩の話か」

「あたしは、半分も理解できなかったけど」



130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:16:30.23 ID:YSdw+2iGo

どうやらみんな聞いていたらしい。
話が早くて助かる。
あの会話はそのまま流すには、あまりに重過ぎるものを抱いていた。

「暁美さんは、明らかに何かを隠している」

「そうさな。 まあ当初から何もかも色々と怪しかったけど」

「でも、まどかへのあの態度は」

「僕には異様とも見えたね。 あの執着振り、よほどの事情があるんじゃないかな」

「……そんなことを言いたいんじゃないよ、あたしは」

「分かってるわよ。 あの子は悪い子じゃないわ」

「隠し事もヘッタクソだしな、悪事働けるタイプじゃないことだけはよく分かる」

「おいおい聞いていきましょう。
 あの子も、きっと何か事情があるのよ」

そこまで話したところで、また頭痛が再燃した。
ああ、これは夕方までの復帰はダメかもしれない。
いや人の命が懸かっているのだから、そんなことは言ってられないのだが。

「キュゥべえー…………これなんとかならないかしら」

「…………もう試して失敗していることを期待して聞くけど、魔法で一発じゃないのかい」


ああ。
そんな方法があった。


インチキだー!という悲痛な叫びが一つ、部屋に響く。



131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:17:30.78 ID:YSdw+2iGo

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結局その日は、昼から彼女たちと合流した。
なにやら苦笑いを浮かべていたのは、美樹さやかだけ来なかったことと関係しているのだろうか。
置いてきちゃった☆とは巴マミの弁だが、それでいいのか世帯主。
今はこうしてパトロールを一段落させ、まどかを家まで送り届けたところだった。

「思うのだけれど、夜彼女を一人にしても大丈夫なのかしら」

「できることなら傍に居た方がいいけど、深夜ならあまり問題はない。
 魔獣は人の感情を吸って発現するから、皆が寝静まるような時間には現れにくい」

「相変わらず詳しいね」

「……嘘はついていない」

「わーってるよ。 ただ、不思議なだけだ」

不思議、それはきっと仕方ない感情。
こんなに怪しさ満点の人間もそうはいないだろう。
ああ、人間ではないか。
思わず自嘲がこぼれる。
だが、そんな自嘲にいつまでも浸らせてくれるほど、私を取り巻く現実は甘くない。



「ちょっとあなたに、質問したいことがあるのよ。
 ……ごめんなさい、昨日の会話が聞こえてしまって」

「全部話せとは言わねぇけどさ、やっぱ話せるところだけでも話してくれない?」

「……僕も興味がある。 強要はしないけどね」



132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:20:10.19 ID:YSdw+2iGo

「――――ッ」

まさか聞かれていたとは思わず、一気に思考が停止してしまう。
うまい弁明を思いついてくれないものか、頑張って頭を動かそうと試みるけれど。


空回りする頭は一切の答えを与えてくれない。
ハプニング耐性はつけておけと散々自分に言い聞かせているのに、学習する様子は微塵もない。
結局、収拾の付かなくなった混乱は、彼女たちに収めてもらう羽目になる。


「落ち着いて、私たちはあなたを疑うつもりはないから」

「あの泣き方は演技じゃできないもんな、お前が悪者だとかそういうこと言いたいんじゃないから」


……そんな言い方をしなくてもいいじゃないか。
ともかく、出してくれた助け舟には、ありがたく掴まるとする。

キュゥべえに秘密が伝わることのデメリットも少し考えたが、どちらにせよ何も出来ないだろう。
彼女たちには既に強く釘を刺してあるし、無害化は完了しているに等しい。
どちらにせよいつか話さなければならないことであった以上、機会があるのはありがたいことだ。

「……わかった、出来るだけ話す。
 もう夜も遅いけれど、今から行ってもいいかしら」

「ええ、もちろん」

外は暗い。
闇に呑まれそうになる恐怖は、押し殺す。



133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:21:08.31 ID:YSdw+2iGo

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「ただいま、パパ」

「おかえり、まどか」

ほむらちゃんたちに送られ、家に帰り着く。
本来ならここは安心するところなのだけれど。
わたしにとってこの帰宅は、魔物と同じくらいには問題だった。

つまるところ。
中学生がしばしばこんな時間に帰ってくることは、親にとって立派な問題足りうるということ。

「今日も遅かったね」

「うん、ちょっと、先輩にお呼ばれしちゃって」

「そうか」

優しい口調が逆につらい。
心配をかけているのが、心苦しい。
何も言えないことも。

そんなわたしの悩みを、知ってか知らずか。
子を心配する親の当然の努めとして、パパはわたしに疑問を投げ掛ける。



134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:22:02.45 ID:YSdw+2iGo


「確認したいことがあるんだけど、いいかな」

「……うん」

「最近まどかは、目に見えて帰りが遅くなったけれど」

「うん」

「悪いことをしているわけでは、ないんだよね」

「してない、してないよ」

「夜道は危ないけれど、一人で歩いたりは」

「先輩たちがいっしょに」


そこまではいい。
だけど、パパはわたしの答えを噛み締めるように、深々と考え込む。
そして。

「そう、じゃあ最後に一つ」



「パパやママには話せないことかい」



135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:22:43.99 ID:YSdw+2iGo


わたしは黙り込んでしまう。
話せるものなら話したいけれど。
何から話していいのか分からないし、何より信じてもらえるとも思えない。
結局、沈黙が回答となってしまった。

「…………分かった」

「パパ、ごめんなさい、心配かけて。
でも、わたし、」

「まどか。 お願いがあるんだ」

せめて何か、と口を無理矢理に開いたわたしに。
珍しくパパが、はっきりとした口調で割り込んでくる。


「今度そのお友達を、うちに連れてきてくれないかな?
晩御飯を作って待っているから」


「……、え?」


「まどかはいい子に育ったからね、おかしなことはしないと信じているよ。
ただ、どんな子と仲良くしているのか、見てみたいんだ」

パパは、やっぱりパパだった。
きっとパパにとってそれは当たり前なのだけど。
今のわたしにはとても、ありがたかった。

「……うん。 みんな、きっと喜ぶよ」



136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:23:54.46 ID:YSdw+2iGo

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「暁美さんはミルクを入れるのだっけ」

「いえ、構わないわ」

話せる限り話すと約束し、また巴家を訪れたのはいいけれど。
なんとなく、お茶にでもしようか、という空気が流れて。
こうしてくつろいでしまっている。

「いつも思うんだけどさ、マミはいつの間にお菓子類を買ってくるんだよ」

「美味しいお茶菓子は紅茶に欠かせないでしょ、外に出たら大体買うわよ」

「まあありがてー話だけどさ。 むぐ」

「こら、ちゃんとフォーク使いなさい」

「えー」

「……二人とも、そろそろいいかしら」

さすがに痺れを切らした。
こうやってお茶を楽しみたいという気持ちはあるけれど。
今は、伝えるべきことを伝えないと。

「ごめんなさいね、つい」

「ほへふっへからへひひ?」

「早く飲み込みなさい」

「……ふふ」

きっと信じてくれる。
そう私も信じるから。
緊張は、うまい感じにほぐれていた。

「まだ全ては伝えられない。 けれど、私に話せる限りのことを、あなたたちに」



137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:25:47.34 ID:YSdw+2iGo

だけど、結局何を話していいのか分からなくなって。
結局説明は一点、端的に済ませた。

「なるほど、時間遡行とはね」

「大したもんじゃん、まるで神サマだわ」

「こちらが私本来の能力で、おそらく時間停止はその副産物」

「それは確かに、私たちやキュゥべえが知らないことを知っていても、おかしくないけれど……」

「まぁ、奇行の数々にも説明つくな」

奇行って。
痴態とか言われなかっただけ、まだマシか。
これ以上は言葉を重ねる意味もない。
ただ視線を送るのみ。
どうか信じてと。




二人の眼もまた、真っ直ぐに私を見据える。
その心は何を思うのか。
永遠とも取れそうな無言の後に、巴マミが口を開く。



138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:26:40.57 ID:YSdw+2iGo


「一つ聞かせて?」

「時を遡ってまで、あなたは何を望んでいるの」



それはきっと、わたしの存在意義そのもの。
答えは私の中にある。
とてもとても汚いエゴとして。
自覚はあるけど、今更撤回しようなんて思わない。
この汚さを抱えて、私は生きていく。



「幸せを」

「大切な人と共に在る、幸せな日常を」



私の幸せは、必ずしもあなたたちの幸せとは一致しないだろう。
だけどそれでもいい。
私はただ私のために、あなたたちを救うと決めたのだから。



「そうか」

答えたのは杏子。

「ならいい。 誰かのためなんて言ったら、今ごろあたしはあんたをぶん殴ってたよ」



「……その上でお願いがある」

どうか。

「力を貸して」



139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:27:59.15 ID:YSdw+2iGo


「いいわ」

先に口を開いたのは、巴マミ。
引き締めていた表情をゆるりとほどいて。

「お友達の幸せを、応援しない訳にはいかないからね」


そして、


「正直な奴は嫌いじゃない」

打ち震える私に、追い討ちのように。
不敵な笑みを浮かべながら、佐倉杏子が言葉を発する。

「いいさ、協力するよ」




「――――ありがとう」

あなたたちの命、私が預かる。
死なせはしない。
もう二度と。



140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/17(金) 22:28:57.23 ID:YSdw+2iGo
ここまでです。
次は明日行けると思います。



144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 08:24:59.44 ID:gSLNyJEDO
乙、QBが静かすぎて怖い



145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 16:03:44.50 ID:3mgvtOK5o
乙乙
こみ上げてくるものがあるな…

物語上は問題ないけど、どうにもさやかがいるのかいないのかがちょっとわかりづらい気がする
たまに杏子との区別がつきにくい




146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:16:42.34 ID:44fTVSAC0
確かにちょっとわかりにくかったww
マミさん家からはもう帰ってたってことでいいんだよな?>さやか




147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:24:44.06 ID:XBY08Lq5o
そうですね、ここ描写足りなかったです…反省
さやかは適当な所で家に帰りました
それでは第七回、行きます



148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:26:02.60 ID:XBY08Lq5o
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授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
その音はいつもと変わらないはずなのに、懐かしくもあり疎ましくもあり。
私の視界にいたはずのほむらと杏子は、まどかを連れていつの間にか姿も見えない。

「帰ろ、仁美」

「そうですね。 今日もまどかさんはお忙しいのでしょうし……」

あれから数日、あたしは放課後を仁美と過ごすようになっていた。
稽古やら習い事やらで忙しい身だから、すぐに一人になってしまうのだけれど。
まどかやほむらたちに、余計な負担は掛けたくないし。
何よりこの世界の有り様を知ってしまって、彼女を一人にするのは、ただただ怖かった。

「忙しいのは仁美も同じじゃん? よくやるよねー」

「でも今日はお休みなんです」

「あれ、珍しい」

「ですから、今日はさやかさんにお付き合いしましょうかと」

「くー嬉しいこと言ってくれるじゃん、それじゃあ気合入れて遊びに行かないとね!」

今となっては、この子だけが平穏な世界の住人だったから。
その申し出は掛け値なしに嬉しいもの。
断る理由などなかった。

「はい、たまにはいいですよね」

「うんうん、たまには気晴らしできないと息詰まっちゃうよ。
 でどこに行きたいのかな?
 ショッピングだろうとカラオケだろうとさやかちゃんにお任せあれー」

「基本はお任せします、ただひとつだけ行きたい所がありまして」

「うんうん」

「上条恭介さんの、お見舞いに」



149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:26:58.00 ID:XBY08Lq5o
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「よーっす恭介、来たよ」

「……お邪魔しますわ」

「さやか。 っと、それに……えっと、志波さん?」

「はい」

結局その申し出を聞いて、そのままあたしたちは病院を訪れた。
少し遊んでからでも、と仁美は言っていたけれど、どうにもそういう気分になれず。
ひとまず必死に平静を装う。
どうしてあたしはこんなにも困惑しているのか。

「CDまた買ってきたよ、こっち置いておくね」

「うん、いつもありがとう」

特にいつもと変わらないやり取りなのに、
どこか居心地が悪い。

「前からお見舞いに参りたいと思っていたのですけれど、なかなか時間が取れなくて」

「そんなに、気にしなくてもいいのに」

「仁美は真面目だからねぇ。 恭介もちょっとはありがたいとか思いなよー」

「ふふ、そうだね」

「もう、そんなことないですわ」



150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:27:40.75 ID:XBY08Lq5o

表面は繕うけど。
笑いながら話している二人を見ているのが。
辛い。

「仁美さんは、確か僕のクラスの委員長をしているのだっけ」

「不束者ですが、勤めさせていただいてますわ」

「もう随分と顔を出せていないけれど、最近何かあったりしたのかな?」

「ええ、一度に二人も転入生さんがいらっしゃって………………」


辛くて。
手っ取り早い手段に、訴えてしまう。


「あーごめん! あたしちょっと野暮用できたから、いったん出てくるね!」


返事も聞かず駆け出す。
音を立ててドアを閉めると、看護士さんに怒られた。



151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:28:25.37 ID:XBY08Lq5o

「何やってんのかなあ、あたし」

この逃避に何の意味もないことは、重々理解している。
理解しているけれど、飛び出した手前すぐに戻るわけにもいかないし。
ただあてもなく、病院の敷地の中を歩き回る。

仁美はいい子だ。
いつも真面目に努力していて、誰かの力になろうと一生懸命だ。

「それなのに」

そんな仁美に。
いなくなってしまえなんて、そんなことを思うなんて。

あたしはどれほど汚い。
どれほど醜い。
何でこんなことを思ってしまうのか。
唯一残された、普通の友人なのに。

「なんでだろう?」

頭が重い。
ぐるぐるぐるぐると、思考が絡まり、とめどなく巡る。
どこか視界もぼやけてきてしまい、いっそこのまま倒れてしまおうかとすら思う。
ここは病院だしちょうどいいか。



152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:29:21.64 ID:XBY08Lq5o


だけど。
その歪みはあたしのせいではなくて。


「…………何これ、あのグリーフなんたらって奴……!?」

黒い靄の中に、それ以上に黒い結晶が突き刺さっている。
すぐに駆け寄って、それが確かにいつか見た形状と一致していることを確認する。
たしかこれが孵ると、あの魔女だか、魔物だかが、この周辺に現れて、人々を襲い出すのだったか。
そんな。
だって。
ここには恭介が居て、仁美が居て。
こんな所で孵ったら、あたしの大切な人たちが。

何か出来ないのかと思うけれど。
あたしにその力はない。
その先にある恐怖に怯え、身を引いてしまったあたしには。

せめて連絡しよう。
まどかに連絡すれば、きっとほむらや杏子、マミさんがそこにいる。
そう思って携帯を取り出し、猛烈な勢いで番号をプッシュするけれど、

「――――――――」

何も音は返らない。
まさかと画面を見てみれば、無情にも映し出される”圏外”の二文字。
ふと周りを見渡してみれば、そこに広がる風景は明らかに異常。



153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:30:27.40 ID:XBY08Lq5o

「あ、あ」

後悔ばかりが胸を占める。
あたしは何故契約しなかった。
戦うための力があれば、今頃は全力で駆け出していただろう。
だけど現実には、恐怖が体を縛って震えるばかり。
立っていることも出来ず、ただうずくまるばかり。

この状況を打開する力は、あたしにはない。
それが出来るのは、命を賭して戦う彼女たちだけ。


「……助けてよ………………」


どこまでも身勝手な言葉が漏れる。


でも、その声を聞き付けたように、彼女たちは現れる。


空間が裂ける。


「行きましょう。 ここの魔女が動き出したら被害は…………!?」

「さやか、ちゃん……!?」

「おいお前、何でこんなところに!?」

「……巻き込まれたわね。 危機一髪だったのかしら」


涙が零れるのは、もうどうしようもなかった。



154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:32:05.02 ID:XBY08Lq5o

「ごめんね、面倒かけて」

「気をつけてどうにかなるもんじゃなし、別にいいよ」

「前から思ってたんだけど、何であんたそんなにあたしに世話焼いてくれるの?」

「答えにくいこと聞くんじゃねーっての」

「えー、いいじゃん気になるんだってば」

「…………あたしにもわかんねーよ。 ただ、なんか知らないけど口が動くんだよ」

「何それ」

「知るかっての」

みんなは助けに来たのでなく、全く偶然に現れたらしい。
腰が抜けて立てなくなってしまったため、こうして杏子におぶわれている。
ちょうどいいし、いつか聞こうとして聞けなかった質問を片っ端からぶつけてみる。

「……いっつも、こんなのと戦ってるの」

「ああ」

「怖くないの」

「別に」

「凄いね」

「言ったでしょ、それしか選択肢ないんだよ」

「……そう」

「死ぬまで戦って、死んで、それでオシマイ」

「…………」



155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:33:09.65 ID:XBY08Lq5o

ほむらの言っていたことが本当なら、魔法少女にとっての終着点は死ですらない。
魔女になって、殺されて、グリーフシードに戻って、また孵化して、を繰り返すのではないだろうか。
あまりにも。
こうして喋っていられる彼女を見ているのが、辛かった。

「………着いたわ。 みんな、気をつけて」

「ええ、大丈夫よ」

「問題ねえ」

ほむらの肩から降り、まどかと一緒に小さく固まる。
そういえば、まどかと一緒にいるのもずいぶんと久し振りのような気がする。
こうして何度も魔女との戦いに伴ってきたのだろうか、不思議と落ち着いた素振りをしていた。

「まどか、落ち着いてるね」

「ほむらちゃんたちのこと、信じてるから」

そんな親友の強さが、とても羨ましい。
自分とは比較にならないくらい命の危険に晒されて、それでもなおこの子はこの子のまま。
そんな強さが、自分にあれば。
静かに目を伏せ、また違う強さを持つ少女達に目を向ける。
魔女が孵ろうとしていた。



156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:33:57.90 ID:XBY08Lq5o
**********************************************
[お菓子の魔女 シャルロッテ]
  お菓子の魔女。
  その性質は執着。
  欲しいものは、全部。絶対に諦めない。
  お菓子を無限に生み出せるが、大好物のチーズだけは自分で作ることが出来ない。

魔女シャルロッテ。
高い再生能力と機動力を持つ手強い魔女。
過去のループでは、何度も巴マミがその歯牙にかけられた。

今回は、三人で挑むことが出来る代わりに、魔獣を吸収してさらにその力を増しているだろう。
一人で戦わせるよりはよほど良い状況だが、油断はできない。

「集中攻撃で一気に潰す。 再生する暇を与えないのが一番」

「時間停止中にぶっとばせれば話も早いんだけどな」

「あなた以外の人が動くためには、手を繋いでいる必要があるのよね」

「片手で火力を確保できるかしら」

「……厳しいな」

「片手で大砲を扱うのは、少々無理があるかしらね……」

さすがにそう、話は上手く進まない。
いつものシャルロッテなら私の手榴弾程度でも撃破できるけれど、漂う力場がその楽観を否定する。
正攻法で行くしかなかった。



157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:35:04.22 ID:XBY08Lq5o

「なら、時間停止は補助に使う。 私は牽制と緊急回避のため遊撃に徹する。
 急に視界が変わっても、驚かずその場の状況に上手く対処して欲しい」

「……ええ。 よく心に留めておくわ」

「まずは隙を作り出す。
 巨体で動きも素早く、あまり楽には行かないけれど、一度深手を負わせれば一気に畳み掛けられる」

「了解、その役は私が適任かしらね」

「ただし気を付けて。 一瞬の油断が命取りになることだけは忘れないで」

「おい、そろそろ来るよ」

交わすべき言葉は交わした、あとは全力を尽くすのみ。
グリーフシードが砕け、シャルロッテが具現する。
そのぬいぐるみのような姿は、冬虫夏草のように表面から生える魔獣によって台無しにされていた。
思わず目を覆いたくなるが、これは敵。情けを掛けている暇はない。

「準備はいい? 行くわよ」

返答を目で確認すると、構えた銃から散弾を放ち、その姿を強かに打つ。
打って、



158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:36:05.39 ID:XBY08Lq5o
「っ」

刹那に距離は詰まる。
幾度も見てきたそれより遥かに、速く、迅く、鋭く。
反応が間に合ったのは全くの奇跡だった。

左右の手を取り時間を停止させる。
左の手を取る巴マミは、また同じタイミングでマスケット銃を乱射し、
右の手を取る佐倉杏子は、槍を器用に片手で袈裟切りに振り下ろしていた。

あまりに巨大なシャルロッテの第二形態。
もはや、魔獣の痕跡はどこにもなく、ただその力だけを増大させていた。
口を大きく開き、斜めに裂かれ、風穴をそこかしこに作りながら静止するその姿は、まさに魔物。
素直に言って、恐怖があった。

「…………間に合って、よかった」

「何よ、これ……」

「一筋縄じゃいかねーな。 気引き締めろ」

二人の手を掴んだまま、後ろへ飛ぶ。
余裕はない。
これだけの力を想定していなかった以上、すぐに行動を修正しなければ、死に繋がる。

「マミは下がれ。 あたしが引き付ける」

「サポートは私が、場合によって前にも出るわ」

「…………ええ、適材適所ね」

彼女の火力でも、この図体を一撃で吹き飛ばすのは難しい。
それでも私や杏子では、なおさら難しいのは明らかだったし、頼るほかはない。
それまで奴の注意を引きつけなければならない、その負担はとても大きいが。

「大丈夫」

「任せな」

そう告げ、時間停止を解除する。
巴マミの浮かべる憂いの表情は、すぐに消えた。



159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:37:03.43 ID:XBY08Lq5o

その勢いはまさに怒涛。
伸縮により速度を得るシャルロッテは、しかし溜めを要さずにトップスピードへ乗る。
いかに杏子が機動性に優れていても、手に余っていた。

「ったく……うっとおしいってーのッ!!」

再び杏子の方向転換に追いつき、突撃を敢行するシャルロッテへ槍の絨毯が降り注ぐ。
けれども、貫いたその端から穴が埋まっていき、ダメージになっている気配もない。
結局彼女はまた、地を蹴り回避行動に従事する。

巴マミもまたその役割を果たすのに苦労していた。
魔力を銃に収束させると、その力に反応したシャルロッテが食いついてきてしまうために。
十分な火力を蓄えられないまま、発射し、無駄撃ちとなるということを何度か繰り返している。

決定的に危ない局面もあった。
杏子がシャルロッテの胴を絡ませるように動き回り、その企みが成功したと思った瞬間、
頭部が別の部分から湧き出て襲い掛かってきたのだ。
時間停止のために事なきを得たが、いずれまたそれと同等の危機を迎えるだろう。
打開策を打たなければ。



160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:38:05.41 ID:XBY08Lq5o

(…………佐倉さん、手伝ってくれるかしら)

(…………仕方ねえな)

(作戦があるのかしら)

(ええ、ひとまず成功の目処もあるわ)

(ならお願いしたい。 私のすべきことは)

(合図をしたら、マミの手を取って時間を止めてくれ)

(了解)


意思を交わしているのも、戦いの最中。
あまり意識を割き過ぎる訳にもいかない。
やるべきことをやるのみと、杏子の合図を待つ。



161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:39:02.29 ID:XBY08Lq5o

すると、視界の隅に。

巨大な砲身を生み出してシャルロッテを狙う巴マミと。

なおも旺盛に襲い掛かる当のシャルロッテ。

その光景は。

雷撃のごとく脳内に信号が走る。

時を止めろ。

彼女を助けろ。

幸いにして、私の方がまだ近い。

間に合う。

壁を蹴り天井を蹴り、彼女の元に辿り着き、それを実行に、

(まだだ!)

移そうとした私の身体は、佐倉杏子によって制される。
そして、目の前で。


ぐしゃりと。
巴マミの身体が噛み砕かれた。



162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:40:30.27 ID:XBY08Lq5o

「あ、あ」

信じられない光景に、全ての動きを止める私。
ただ眼が伝える刺激的なオブジェを、私の脳は唯々諾々と画像に変換する。
理解はできない。
したくもない。
そうして硬直する私に、声が飛んだ。


「幻覚だ、止めろ!」


大砲と巴マミの身体が、リボンへ戻り光と解ける。
その光は、困惑しながら口を開いたシャルロッテの中へと潜り込み、魔方陣を形成していく。
事ここに至ってようやく、なすべきことを思い出した。
右手に暖かさを感じ、役割を果たすため、時を止める。
気がつけば、彼女は私の真横に居て、新たに呼び出したマスケット銃を構えていた。

「ちょっと時間がかかるけれど、これなら片手でも問題ないわね」

ああ。
本当に。

「……心臓に悪いから、事前に言って欲しい」

「ごめんなさい、その通りね」

魔方陣は拡大していく。
シャルロッテの中へ中へと侵食を広げながら。
そして光がすべて幾何学模様として文様を刻み、彼女が宣告を終えるのを待って、停止を解除した。

「さようなら」

砲が放たれ、魔方陣は起動する。
かつて魔女シャルロッテだった魔物は、内部から一切の肉片に至るまで粉々に弾け跳び、霧散し。
落下したグリーフシードが、戦いの終わりを教えてくれた。

「よし、ヘマはねーな」

「あなたに会わせる顔がなくなっちゃうじゃない」

「……そうならなくて、何よりだったわ」



163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:42:04.17 ID:XBY08Lq5o

何とか目の前の状況を理解しようとする私に、さらに追い討ちのように。

「あー…………ダメだ」

「――――ちょっと、杏子!?」

見た感じ怪我もないし、ソウルジェムの濁りもさほどない。
だけれども、彼女はゆるゆると倒れこんでしまう。
慌てて駆け寄ったけれど、私に応急処置の心得はない。
というかそれ以前に、魔法少女が倒れ込む理由がさっぱり分からない。
結界も解け、遠くに居た二人もこちらに走ってくる。
そんな私たちを、巴マミが制した。

「大丈夫よ、そう心配しなくてもいいわ」

「……腹減っただけだから」

「……え?」

「ちょっと、心配して損したじゃんか」

「……色々事情あってな、使いこなせないんだよ。
 だから多分、な」

「私と二人で魔獣を相手取ってた時、止むを得ずこの力に頼ることが多くて。
 大体しっかり食べれば元に戻るから、あまり問題はないわ」

「食欲キャラだとは思ってたけど、安直すぎない?」

「うっせーバーカ」

「二人とも、ケンカしないで……」



164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:42:46.31 ID:XBY08Lq5o
軽快に言葉を交わす皆から目を離し、ふと目線を上にやる。
そこにあるのは、いつも通りの空。
思ったより時間が経過していたのか、茜色がわずかに混じり始めていた。

そして感じる。
思わず手を握りしめてしまうほどの、達成感を。
戦いを終えて、巴マミの命はそこにあった。
それと同時に、先ほどの幻覚が脳裏に蘇る。
いや幻覚ではない。それはきっと、私がかつて起こしてしまった悲劇の光景。

「っ…………!」

「あらあら、ちょっと、どうしたの」

気がつけば、五体満足の巴マミを固く抱きしめていた。
腕に返される抵抗が、彼女の現存を強く主張する。
漏らす言葉はもう、意味を成していなかった。

「あなたが、あなたが…………!」

「……幻覚、コイツにもかかっちまったみたいでな」

「心配かけてごめんなさい。 大丈夫よ、大丈夫だから」

ぼろぼろ、ぽろぽろと涙を流す。
でもこれは嬉し涙だからと頭の中で言い訳をするけれど、それを聞く人は居ない。
全員が私を生温い眼で見ていることに気がつくのは、しばらく時間が経ってからだった。



165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:44:25.90 ID:XBY08Lq5o


「それにしても、みんな、無事でよかった……」

「ほんとだよ、ほら立てる?」

「ん、サンキュ」

まどかの声を皮切りに、沈黙が少しずつ破られていく。
その中に欠けた声は、ない。

「美樹さん、出来るだけグリーフシードには近付かないようにね。
 もし見つけても、私たちに連絡したらすぐに逃げなさい」

「……はい、分かりました」

「ほんとだよ、さやかちゃんを見つけたとき、わたし、わたし」

「ごめんね、心配かけちゃったね」

正直なところ私も、心臓が凍る思いだったから。
キュゥべえがこちらにいたことで、ひとまず危険はないと認識していたけれど、
彼女は魔法少女候補生である前に、一人の少女なのだから。
そうやって彼女たちとの会話に浸っていたいけれど、



166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:45:49.22 ID:XBY08Lq5o

「……そろそろ、行こうよ。
 魔女は倒したけどさ、魔獣とか魔物はまた出るかもしれないんだろ?」

「そうね、まだ日は暮れていないし」

「じゃ、あたしは帰るとするかな。 みんな、助けてくれて、本当にありがとね」

「あ、ちょっと、ちょっと待って!」

「ん、どしたのさ」

まどかは去ろうとする美樹さやかを呼び止めて、
何故か私たちに視線を向ける。

「私たちにも関係のあることかしら」

「はい、パトロールが終わってからのことなんですけど」

そこで彼女は一度言葉を切るけど。
その間はどちらかというと、楽しみをじらすように悪戯なもの。
満面の笑みを浮かべながら、告げる。

「今日はみんな、うちに泊まっていって」



167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:48:49.60 ID:XBY08Lq5o
ここまでです。
次も明日に落とせればいいんですが、もしかしたら月曜になるかもしれません。



168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/18(土) 22:55:51.48 ID:44fTVSAC0
おつおつ!
シャル戦が無事に終わって何より
3人いれば大丈夫だろうと思いつつちょっとビクビクしてしまったぜ
しかしさやか方面が不穏な気配




169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 00:40:19.05 ID:V0xwX9ZOo
お疲れ様でした



171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 13:51:09.45 ID:XQlh7nPWo
乙乙
シャルロッテまじこえー!




173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 16:52:09.99 ID:hAzv6ppPo

「ただいま、パパ!」

「おかえり、まどか。
 そしていらっしゃい。 話はまどかから聞いているよ、お嬢さん方」

「お邪魔します」

まどかがもたらした提案は、とても魅力的で、そしてとても怖いものだった。
私たちは彼女を夜遅くまで連れ歩いているわけで。
彼女の両親が、まどかを心配しないわけはなくて。
まどかの家に招かれることはとても嬉しいことだけれど、そこに叱責は当然予想される。
佐倉杏子や美樹さやかは特段気にしている風でもなかったけれど、巴マミは私と同じ考えのようだった。

(どうするつもり?)

(弁明はするけど、細かい所は話せない)

(場合によっては今後、家の周囲に張り付くなんて間抜けなことになりかねないけれど)

(…………それは避けたい)

普通に警察のお世話になってしまう。
あくまで私たちの世間体は中学生であり、深夜に屋根に張り付いたりしたら一発で通報だろう。

(……ともかく、私がまずは話をする。 場合によっては助けて欲しい)

(了解したわ)



174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 16:53:06.41 ID:hAzv6ppPo

「自由に掛けていいよ」

靴を脱ぎ、整え、ダイニングへと向かう。
そこには家庭で作られたとは思えないほど、綺麗に整えられた食卓が用意されていた。
今にも襲い掛かりそうな杏子をそれとなく抑え付けて、指示に従い、言葉を待つ。

「ふう、しかし大勢だね。 まどかにこれだけ友達が出来ていたというのは、とても嬉しいな」

「えへへ」

「あたしはずっと前からの付き合いですけどねー」

「はは、ごめんよ美樹さん。
 残りのお三方は、名前を聞いてもいいかな?」

「暁美ほむらです」

「巴マミと申します」

「佐倉杏子、よろしくね」

「暁美さん、巴さん、佐倉さんだね。
 僕は鹿目知久、まどかの父親だ。
 まどか共々、よろしくお願いするよ。
 さて、色々と話もしたいところだけれど、まずは食べようか。
 冷めてしまうのも勿体無いしね」

いっただっきまーすとのんきな声が響く。
とはいえ、私も一つ肩の荷が降りたところで、お腹を減らしているのも確かだった。
ありがたくいただくとしようか。



175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 16:53:42.89 ID:hAzv6ppPo

「ごちそうさまーっ」

「……よく食べたね、杏子ちゃん」

「杏子、遠慮ってもんはないの……?」

「残す方が失礼だろ」

「ふふ、しっかり食べてくれたようで何よりだよ。
 そろそろお風呂が沸くね。 まどか、美樹さん、先に入ってくるといい」

「……うん、分かった」

「お世話になりますー」

二人は慌しく駆けて行く。
美樹さやかの足の向かう先に迷いがない辺りを見るに、おそらくは慣れているのだろう。
まどかの声は、少し沈んでいたような気がした。

「……」


そうして、

ダイニングには魔法少女と、まどかの父親が残される。

先手を打ったのは私ではなく、巴マミだった。



176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 16:54:11.22 ID:hAzv6ppPo


「お話、ですよね」

「…………これは驚いたな、まさか気付かれているなんて」

「私たちも近々、来なければならないと思っていましたから」

「まーなー。 夜な夜な娘を連れ回されたんじゃ心配も掛けちゃうよね」

「そうだね。 正直、かなり心配したよ」

「……ごめんなさい…………」

分かってはいたものの、面と向かって言われるとやはりつらい。
ただ謝るしかなかった。

「いやいいんだ、まどかから話はある程度聞いたからね」

「話、でしょうか」

「どこまで聞いたのさ?」

「……実はほとんど何も。
 ひとまずこうして会ってみて、君達が悪い子ではなさそうだと分かったし、そんなに問題はないけど。
 できればもう少し詳しく聞きたいというのも、本音ではあるんだ」

「信じてもらえるのなら、ある程度かいつまんで話します」

「お願いしていいかな、さすがに親として何も知らない状態ではいられないんだよ」

魔法少女以外に真実を伝えようとするのは、正直言って初めて。
でも、よく考えてみたら、知る権利なんて誰にでもあるはず。
娘が渦中にある立場の人にとっては尚更だろう。
そんな当たり前のことも考えつけなかった自分に文句を言いながら、説明を始める。
風呂が長引いてくれることを祈ろうか。



177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 16:54:43.27 ID:hAzv6ppPo


そこそこに広い鹿目家のバスルームは、二人でも余るほどだった。
本当に久し振りの、束の間の平穏を楽しむには十分すぎるだろう。

「まどかとこうやってゆっくりできるのも、久し振りだねえ」

「そうだね、本当に」

「ちゃんと守ってもらってる? 怪我はない?」

「大丈夫だよ、みんなすごく気を使ってくれるから」

「そうなんだ」

身体を洗うまどかを見ても、目に見えるような傷はない。
きっとその言葉は事実なのだろう。
彼女たちがその力で、この子をしっかりと守ってくれているのだろう。

「背中を流してやろうー」

「わわ、ちょっと、さやかちゃん!?」

「いーじゃん、最近まどか分が不足してさみしいんだってばー」

「うう、別に嫌なわけじゃないけど、前は隠してよお……」

「あはは、ごめんごめん」



178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 16:55:13.70 ID:hAzv6ppPo

シャワーヘッドを取りながら、まどかの背中に手を当てる。
そこには人肌の温もりが。
人として命を全うする暖かさが。

「…………」

響く水音をBGMにしながら、静かに思いを巡らせる。
命とは、こんなにも脆いものだっただろうか。
日常とは、こんなにも儚いものだっただろうか。

「ねえ、さやかちゃん」

「ん?」

「悩んでるの?」

「…………鋭いなあ」

「わたしに分かることだったら、相談できるようになったら、相談してね」

「ん。 頼りにしてるよ」

そんなことを言いながら、背中を洗い終える。
あたしは先に上がろうか。
考えをまとめるには、風呂場はちょっと不適当だし。
色々と。



179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 16:55:57.05 ID:hAzv6ppPo

「おじさん、お風呂ありがとうございましたー」

「ああ、ちゃんと暖まったかな?
 それじゃ皆さんも、入れ替わりに入ってくるといいよ」

「お、じゃあいただくとするよ」

「そうね、ひとまずこれくらいで大丈夫でしょうか」

「うん、ありがとう」

その言葉を受け、三人でバスルームへ向かう。
ちょっと能力を使いたくなったけれど、それは意思で押し殺した。




「…………さて、君も悩みを抱えてるようだね」

「おじさんといいまどかといい、何で分かるんですか」

「まあ、僕はそれくらいしか取り得がないから」

「十分だと思います……」

「今日は話を聞く側に回ってばかりだが、僕でよければ相談に乗るよ」

「いえ、私の問題なので」

「おや、そうか」

「はい。 ゆっくり考えて結論を出すつもりですから、問題ないです」

「分かった、なら一つだけお願いをしておこう。
 うちの娘のために、君自身を犠牲にするようなことはやめておくれ」

「――――分かりました」



180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 16:56:28.73 ID:hAzv6ppPo

「……………………」

「……………………」

その戦力差は圧倒的だった。
私とまどかは、寝室の隅で手を床に付き項垂れる。

「ほら、さすがにマミさんと比較して落ち込むのはさ」

「さやかちゃんは普通にあるからいいよね!」

「屈辱だわ……」

「まあ、二人とも将来に期待しなさい。
 あと大きければいいってものでもないのよ、肩こるし」

「そーそー、絶対動きにくいだけだっての」

「杏子ちゃんだってちょっとあったじゃん! ちょっとだけどね!」

「おいそこを強調すんじゃねえよ!」

「やっぱりあなたも気にしてるんじゃない」

「うるせーぞほむら!」

わいのわいのとバカ騒ぎに興じる。
今日くらいはいいよねと、自分に言い聞かせながら。
彼女のいる光景は、私にとって、あまりにも大きな価値を持っているのだから。

これが私の夢見る未来。

だからこそこれは夢だ。厳しい現実の中で一晩浸かる幸せな夢。

明日からも、きっと頑張れる。



181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 16:57:21.65 ID:hAzv6ppPo
**********************************************

「………………うっ、え」

酷い夢を見た。
あれほど幸せな気分に浸りながら眠りに就いたというのに、まったく現実は優しくない。
巴マミが噛み砕かれるその光景は幻影に過ぎないのに、私の心を締め付けて潰してしまいそう。

吐き気がする。
時計は深夜の二時を指していた。
こんな時間に家の中を歩き回るのは気が引けるが、この気分の悪さはそう解消しそうもない。
水でも貰いに行こうと、寝室を這って出る。
立ち上がる気力はないが、さすがに廊下や階段を這って移動するわけにもいかないし。
ずるずると足を引きずり、ダイニングに辿り着き、掛けられるのは意外な声。

「あなたも眠れないのかしら」

先客は、あろうことか巴マミだった。
ゆったりした緑色のパジャマに身を包み、静かに紅茶を傾けている。
いつもと変わらないはずのその姿は、どうしてだろう、か弱く映る。

「ええ。 あなたも?」

「どうしてかしらね、すごく嫌な想像が頭に浮かんできて」

「……想像に過ぎないのでしょう」

「そうなんだけれどね。 あの人形が、私自身だったらって考えが、どうしても抜けなくて」



182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 16:58:41.88 ID:hAzv6ppPo

よく見れば、また紅茶の傍にブランデーの小瓶が転がっていた。
まさか勝手に拝借するわけもなし、持ち歩いているのだろうか。
何はともあれ、

「…………没収」

「ケチ」

「だめ」

「いいじゃないの、ちょっとくらい」

「ダメ」

「むー……」

代わりに、彼女の隣にあるイスを引き、そこに座る。
別に彼女のためではない。これは私のためでもある。

「話なら、聞いてあげるから」

「しょうがないわね、それで手を打ってあげる」




夜は更けていく。
大切な人を傍らに感じながら。
乗り越えた危機を、その奇跡を、事細かに伝えながら。





「あいたたたた…………」

「…………お前、またかよ」

結局また彼女は、二日酔いに悩まされたことを付け加えておく。
早く魔力で治せばいいのに、何故かそうしようとしなかったことも。



183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 16:59:33.69 ID:hAzv6ppPo
以上、第八回です。
第九回行きます。



184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:00:35.04 ID:hAzv6ppPo
**********************************************
[ハコの魔女 エリー]
  ハコの魔女。
  その性質は憧憬。
  筋金入りのひきこもり魔女。
  憧れは全てガラスの中に閉じ込める。
  閉じ込められたものはその心までも簡単に見透かされてしまう。


「ああ、その通りだよ。 だけど」

「それでも、叶えたい願いがあるんだろう?」

翌日。
放課後一人で街をぶらついていたあたしが遭遇したのは、一匹の珍獣。
魔法少女としての契約を執り行う存在。

魔法少女と魔女との関連性について質問したら、あっさりと肯定で返されてしまって。
そして間髪を入れず、あたしの悩みを的確に指摘してきた。

「…………まあね」

投げ掛けられた言葉には、ただ同意で返すのみ。
それを言われてしまうと、返す言葉もない。
代わりにこちらも質問で反撃する。

「何で最初に言わないのさ、そういう肝心なことを」

「昔は言っていたよ。
ただ、大体みんな反発するのさ。
契約なんてするか、あるいは、そんなこと知らなければ契約できたのに、とね。
僕としては、奇跡の代価なんてそんなものだと思うんだけどな」

「ふーん」

「もとより、魔女になりうるのは普通の人間も同じだ。
ただ彼らは先に寿命が来るだけで、魔法少女に寿命はなく、それゆえに穢れも溜まりやすい。
それだけの違いなんだけれどね」

キュゥべえは正直、うさんくさい。
何か恣意的にあたしを契約へと導いているような気はする。
でもまどかに手は出していないし、嘘を付いているような気配もない。
結局どうすべきかは、わからずじまい。



185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:01:18.41 ID:hAzv6ppPo

「あれ、仁美?」

ふと上げた視界に、映る碧の髪の毛。
おかしいな、今日は日本舞踏だか茶の湯だかの稽古だと言って別れたはずなのだが。
胸騒ぎがする。
慌てて雑踏を掻き分けてみれば、そこに居たのは、確かに我らが学級委員長だった。

「ちょっと、仁美、どうしたの?」

「…………」

返事はない。
ただ虚ろな目を虚空に向け、機械的に足を前に運ぶだけ。

「仁美ってば」

様子が明らかにおかしい。
動悸が早くなっているのを自覚する。
この状態、確かどこかで。

「……魔女の口づけだ」

「ちょっと、それって」

「魔女に魅了されている。 このままでは、殺されるよ」

見れば首元におぞましい紋様。
この子はわたしのものだと、声高に主張するがごとく。
辺りをよく見渡せば、周囲の人だかりはみな同じ状態だった。

「……冗談じゃないよ」

慌てて携帯を操作するけど、予定調和のように電話は繋がらない。
あたしは結界に囚われていないから、原因はきっと彼女たちの方に。

こうしている間にも、仁美たちは歩を進めてゆく。
マミさんの忠告は守れそうにもなかった。

「僕も行こう、いざという時のためにね」

「はいはい、ありがと!」

いつか決めるべき時が来ると思っていたけれど。
こんなに早く来なくてもいいじゃない。
慌てて地面を蹴り、彼女たちの後を追いかける。
あたしに何か出来る事はないかと考えながら。



186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:02:25.39 ID:hAzv6ppPo
**********************************************

全身を苛むのは、焦燥。
根拠はない。
ただ目の前の魔物が、どこまでも邪魔臭い。

「とっとと眠りやがれ!」

佐倉杏子の投擲した槍が、魔物の正中線を貫く。
そのまま結界ごと消失し、グリーフシードを遺した。

「ほい、一丁上がり」

「お疲れ様、佐倉さん」

「大したことねえよ。 ただこの量、なんか引っかかるね」

「……いつもより、多いよね……」

「逆に言えば、魔物が発生する法則を発見できるチャンスとも見られるんじゃないのかい?」

「なるほど、そういう見方もあるのね」

「検証の余地はある。 今日の魔女を片付けたら考えてみましょう」

「あ、今日は強いのが出る日か」

「まだ時間に余裕はあるのかしら?」

「大丈夫だけれど、出来るだけ早く行きましょう」

何故かは分からないけれど、私の心は体を急かす。
早く行け、早く行けと。
その衝動に身を任せたい。
しかしそれは叶わない。

「…………こうやってまた、魔物が沸くからな」

「さっさと片付けるわよ」

明らかに異様。
ただ今は目の前の状況に専念する。
誰かを見捨てる選択肢は、取りたくないから。



187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:03:03.60 ID:hAzv6ppPo

**********************************************

辿り着いたのは、町外れの倉庫。
集う人々に生気はない。
仁美も同じく。

「いよいよ私たちは、楽園へと旅立てるのですね」

「……何言ってんのよ、ここのどこが楽園なのさ」

「儀式によって作り替えるのです。 ほら、始まりますわよ」

歌うように告げられた言葉と共に、指し示された指。
その先にあったのは、無味乾燥なバケツに満たされた謎の液体に、漂白剤。
それが何を意味しているのかは、いくらあたしでも理解できた。

「密室に塩素ガスか、なるほど分かりやすいね」

冗談じゃない。
背筋を走る寒気に対して、周囲からは歓声と拍手が巻き起こる。
目がイってる。
誰も彼も狂気にまみれ、ただ解放を高らかに叫んでいる。

こんな光景に耐えられる訳がない。
全身を包む嫌な予感に、ただ身を任せた。

手元にある携帯を放り投げる。
今にもバケツへとその中身を零しそうな塩素系漂白剤へ。

日頃の訓練が功を奏し、対象へクリティカルヒット。
視線があたしへ集められるのと同時に、全力で駆けバケツを掴み、窓ガラスをぶち割って放り捨てた。

「んでまあ、こうなるよね」

視線は殺意ないし敵意へと変わる。
さあ、どうしようか。



188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:03:46.65 ID:hAzv6ppPo
**********************************************

「しつこい……!」

本当に今日は異常だった。
焦れば焦るほど魔物への対応は雑になり、結果として余分に時間を割いてしまう。
武器の無駄遣いも時間停止の濫用も出来ない以上、本来なら丁寧に狩らなくてはならないのに。
どんどん悪循環にハマっていく。

「暁美さん、どうかしたの」

「何のこと」

「貴女らしくないわよ、焦りすぎだわ」

「……嫌な予感がする、とても」

戦いの最中、背中合わせに巴マミから疑問を受ける。
そこまで表に出てしまっていたのか。
隠しても仕方ない以上、素直に打ち明けた。

「時間は!?」

「もうない!!」

対岸から、叫ぶ声は杏子。
念話で返す余裕もなく、声を張り上げて答える。
本来なら既に、郊外にある倉庫へ着いていなければならない時間になってしまっていた。
少し考え込むような間の後に、再び返答。

「先に行け! あたしも何か嫌な予感がする!」

「この場は引き受けるわ。 まだ沸きそうだけど、時間さえ掛ければそう危険はないでしょう」

「…………任せる!」

そう言い残し、結界から一人離脱し。
空を駆ける。
能力を最大限に使いながら。

何が私を駆り立てるのかはよく分からないけど。
ただその何かに間に合うことを祈りながら。



189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:04:29.56 ID:hAzv6ppPo

**********************************************

「んで、結局、こうなると」

「覚悟の上だろう?」

「そりゃそうだけどさ」

楽園を奪われた彼女たちは、手当たり次第にあたしを襲ってきた。
殴られ蹴られつつ逃げようとしたけれど、それすら許されず。
なんとか物置に潜り込めたのはいいが、ドアが破られるのも時間の問題だろう。

「いったいなーもう、これ抜いたら多分ヤバいよね」

「お勧めはしないね」

脇腹には見覚えのあるシャーペンが刺さっている。
単に同じ銘柄のものだと信じたい。
そして、あたしの置かれた状況はそれに留まらず。

「おまけに結界かあ、さやかちゃん大ピンチ」

自嘲するような声に、返事はない。
別に期待していた訳ではないから、物置の片隅にある歪みを睨むことに専念する。
痛みも少しは紛れるかな。
すると、今度はあちらから話を始めた。

「このまま待っていれば、暁美ほむら達が助けに来てくれるかもしれないね」

「そうだね、でも来れないかもしれない」

再開された会話にちょっと落ち着く。
やっぱりほんの少し期待していたのかな。
そんな自分の弱さに、ほとほと嫌気が差す。



190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:05:16.57 ID:hAzv6ppPo

脇腹を貫く異物に手をかける。
それだけの動作で、全身に痛みが駆け巡る。


「あたしなりに考えたけどさ、やっぱこの世界おかしいよ」


激痛を押し殺し、握ろうとするけど。
手が血で滑り上手く掴めない。


「なんでみんなが死ななきゃならないのさ」


ようやく取っ手に手がかかる。
力を込める。


「幸せのひとかけらも、あの子たちには与えられないって言うの?」


ずるりずるりと、
血を肉を掻き出しながら抜けていく。


「そんなの、あたしが許さない」


そしてついに詮は抜けて。
血が噴水のように吹き出すけれど、そんなことはどうでもいい。


「君の願いは」


あたしの心は決まっている。
願いは一つ。


「大切な人のために、戦う力を」



191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:06:01.63 ID:hAzv6ppPo

ようやく辿り着いた倉庫に、青い光が満ちていく。
どこまでも鈍い私はようやく気付く。
焦燥感の正体に。

これが何かの間違いであることを祈りながら、ドアを薙ぎ払い。
その衝撃で巻き込まれた人たちが気絶していることを目視で確かめた後、物置へと力ずくで押し入り。
目に入ったものは、青い騎士。

大剣を天高く掲げる美樹さやかが、そこに直立していた。

「遅かったじゃん、ほむら」

「…………………あなた、どうして…………!」

言わなければならないことは山ほどある。
あれだけ警告したのに。
死ぬと分かっていながら。
どうして待っていてくれなかったの。
全てが頭の中で錯綜し、言葉にはならず消えていく。

「……まあ色々言いたいよね、でも後でお願い。 今はこいつどうにかしないと」

彼女がそう言いながら指差す先には、魔物の結界。
確かにそれは正しい。
不条理なものと分かっていながらも、力が中で滾るのを抑えられない。
節約はできなさそうだった。



192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:06:52.36 ID:hAzv6ppPo

**********************************************

「つっ!?」

光線が空間を通過する。
数秒前まで私の頭があった空間を。
反応が数秒遅れていれば、今ごろ首なし人形が完成していただろう。

「おいマミ平気か!」

「マミさん!?」

「大丈夫よ」

二つの声に返事をしながら、光の筋を逆に辿る。
特大の魔獣が生き残っている。
これまで見たどれよりも暗い結界の中には、相応の力の持ち主がいた。

「……大物ね」

「狩り甲斐がある」

彼女は強気に嘯くけれど、そこまで私は楽観出来ない。
ここまでに何体の魔獣を倒したか、もう数えるのは諦めている。
力の消耗も著しかった。
ではあるが、結局のところ。

「やるしかないわね」

「アイツが親玉だろ、これで終わりだ」

体と心を奮い立たせて銃を構える。
しかし、体に満ちる緊張感とは裏腹に、魔獣の動きはまったくない。



193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:07:30.41 ID:hAzv6ppPo


そしてようやく、動く。
魔獣は斜めにその体を滑らせる。
胴の辺りに刻まれた直線に沿って、二つに分かたれた。

轟音と共に上半身が崩れ落ちる。
少し遅れて、下半身もバランスを崩して倒れた。
呆然と立ち尽くす私たちの目に入るのは、

「ヒーロー参上、ってね」

「調子に乗らないで」

「あいたたたごめんごめん!!」

手を固く繋いだ二人。
黒を纏う暁美さんはいつも通り。
青を纏う美樹さんは、何もかもが違う。

片刃の大剣をその手に握り、騎士を連想させる衣装に身を包み。
戦場に立っていた。



194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:08:15.44 ID:hAzv6ppPo

心が燃え上がる。
噴き上がる衝動にただ身を任せ。
言葉を吐く。

「……契約、したんだな」

「うん」

答えに淀みはない。
まるで予想していたように。
ならば次にあたしが取る行動も、わかるだろう。

「質問に答えろ。 場合によっちゃあ」

駆ける。
駆けて槍を突き付ける。
さやかの眼前へ。

「ここで殺す」

そう伝えて尚、表情に揺らぎはない。
槍を挟んで視線が交錯する。



195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:08:49.16 ID:hAzv6ppPo

心は静まっている。
この反応は、ある程度覚悟していたから。
思いを伝える。

「いいよ、聞いて」

「何を願った」

「力を」

「何の為に」

「大切な人たちを、この手で護るために」

そこまで伝えると、ひとまず彼女は沈黙する。
構えられた槍に変化はない。
しばしの空白を開けて、また口火を切る。

「あの坊やは、どうしたんだよ」

「手が治っても、死んじゃったらどうしようもないもの」

というか何で知ってるのさ。
その疑問をぶつけてやりたくなったが、余計な事を言って刺されるのはごめんだ。
今は言うべきことを。

「みんなの当たり前の幸せが奪われるのを、黙って見てなんていられない」

「弱い奴らを守って、聖人気取りか」

「あたしが護りたいのは、まどかや恭介たちだけじゃない」



196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:09:18.79 ID:hAzv6ppPo


視線は怪訝に変わり、
そして驚愕に変わる。


「杏子、あんたたちもだよ」


槍の穂先が揺れる。


「言ってたでしょ、戦って死んでおしまいだって」

「あんたはそれでいいかもしれないけど、あたしにしてみれば冗談じゃないよ」

「あんたがあたしたちを守ってくれるなら、あたしもあんたたちを護りたい」

「それがあたしの幸せ。 あたしの願い」


震えが止まり。
槍は下ろされた。
杏子の口許に浮かぶのは、笑み。

「ふ、あはは」

抑えきれないのか、声が漏れる。
最初こそ小さなものだったけど、次第にその声は大きくなっていって。
杏子が笑い止むまでそれなりの時間が掛かったが、不思議と不快ではなかった。



197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:10:07.68 ID:hAzv6ppPo

ひとしきり笑った彼女は、


全力の刺突を繰り出す。


寸での所で大剣の腹が受け止めたが、頑強なはずの刀身にはヒビが痛々しく刻まれた。


「なにさ、気に入らなかった?」

「いーや気に入ったよ、すごい気に入った」

「にしてはご挨拶じゃん!」

力を込め、押し返す。
追撃は来ず、距離が空いた。

「あたしを守るとか言ったな!」

「言ったともさ!」

「それがどれだけ重いのか、ホントに分かってんのか!?」



198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:10:42.29 ID:hAzv6ppPo

空いた距離は一瞬で消える。
さらに開く。
あたしの横を駆け抜けた風は、受け流したはずの右手に重い衝撃を残していく。

後ろを確認はしない。
ただ振り返り様に、大剣を振るう!

「さあね、知ったこっちゃないよ!」

金属音と共に、全力の剣檄は当たり前のように受け止められる。
大剣と槍、絶対的に有利なはずの鍔迫り合い。
それでも押し込めない。

「なら、叩き込んでやるよ」

「上ー等ォ」

数センチの空間を挟んで、お互いの目を睨みつける。
今度はこちらから。
バックステップで距離を開け、ワンテンポおいて斬りかかった。



199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:11:23.92 ID:hAzv6ppPo

目が付いていかない。
絶え間なく響き渡る金属音だけが、二人の交戦の証として耳を打つ。
わたしには全く理解できなかった。

「……やめて、やめてよ、二人とも!?」

もう敵はいないのに。
それなのに、二人は全力で武器を振るっている。
何が起きてるのかはさっぱり分からないけど、当たれば怪我じゃすまないことくらいは分かる。
だけど、わたしにその争いを止めることはできない。
自身の無力さに打ちひしがれていると、横から声を受けた。

「心配しなくていいわよ」

「二人の顔を見てみるといい」

「……見えないよ」

「……なら、これで」

ほむらちゃんがわたしとマミさんの手を取ると、あたりの雰囲気が一気に変わる。
ちょっとして、空中で二人が静止しているのに気付いた。
その顔は。

「笑ってる……?」

「佐倉さん、あまり気持ちを素直に表現できないからね」

「美樹さやかも、それを分かっているんじゃないかしら」

確かに二人はとても楽しそう。
一歩踏み外せば命の保証もないのに。
相変わらず理解はできないけど、そんな形もあるのかな。



200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:12:36.05 ID:hAzv6ppPo
第十回行きます



201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:13:18.85 ID:hAzv6ppPo

「やりすぎ」

拳骨が二人の頭に振り下ろされる。
双方異存はないようで、ただ下を向き俯いていた。

「いくら熱くなったと言っても、限度くらい弁えなさい。 私の力だって万能じゃないのよ」

「……ごめんなさい」

「……面目ない」

「あんな危険なものを見せられたわたしたちの気分も、考えてね…………?」

「本当よ、しっかり反省なさい。
 ほら終わり、鹿目さん、あとの処置お願いね」

「任せてください」

「ちょっとまどか、目が怖いんだけど」

「……お手柔らかに頼むわ」

まあ、そんな保証はないだろう。
そして案の定、消毒液に対する二人の悲鳴がしばらく響く。
ぼーっと三人の騒ぎを眺めている私に、巴マミが声を掛けてきた。



202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:13:55.59 ID:hAzv6ppPo

「間に合わなかったのね」

「……ええ、でも彼女の願いを聞いた以上、間に合ってもきっと結果は同じだった」

私の願いと彼女の願いは、ほぼ一致していた。
自分が幸せになりたいがために、他人の事情を蔑ろにしてしまっている点まで。
止めるにはそれこそ、殺すほかなかっただろう。
そしてそんな選択肢、今の私に取れようもなかった。

「そうね、彼女がよく考えて決めたなら、私たちが何を言う筋合いでもないかしら」

「そう思う」

視線を三人の方へやる。
一通り手当ては終わったようで、まどかが慣れた手付きで救急箱を片付けていた。
頃合か。

「そろそろいいかしら、話したいことがある」

ただひたすら真剣に、声を発する。
どうしても伝えなければいけないことで、でもなかなかその機を掴めないでいたもの。
その場はきっとこの時。
彼女たちは先の一言で、既に心の準備を終えていた。

「この街にやがて訪れる災厄について」



203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:14:52.71 ID:hAzv6ppPo

「ワルプルギスの夜、か」

「聞いたことはあるけれど、実在していたのね」

「……それ、何?」

「端的に言うと、超弩級の大型魔女」

「その被害の規模はあまりに甚大で、直接見たという話は聞いたことがないわ」

「それって、どういう」

「みんな死んだってことさ」

その言葉に、事情を知らない二人は身を強張らせる。
無理もないだろう。

「魔獣を吸収して、さらにその力を増している可能性もある」

そしてそれは、おそらく確実のもの。
ただでさえ強力なワルプルギスの夜に、魔獣の力が加わったらどうなるのか。
考えたくもなかった。
だからこそ、私はこの言葉を口にする。


「私一人では勝てない。 みんなの力を貸してほしい」


204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:15:27.79 ID:hAzv6ppPo

「勿論よ」

即答したのは、巴マミ。
決意をその目に宿して。

「長らくこの街のお世話になったわ。
 ここが私の居場所、何が相手でも守り通してみせる」



「やってやろうじゃん」

美樹さやかも力強く答える。
戸惑いを残しながらも、彼女の心の赴くままに。

「あたしはこの街が好きで、この街に生きる人たちが好きだから。
 どんなにヤバいのが来たって、逃げるもんか」



「仕方ねーな」

佐倉杏子も後に続く。
表面上は誤魔化しつつも、その熱は隠しきれていない。

「昔のあたしだったら、なんて言ったか分からないけど。
 ここで舞台を降りられるほど、受け取ったものは軽くないからな」



「ありがとう、みんな」

役者は揃った。
あとは台本をブチ壊すだけだ。



205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:16:20.03 ID:hAzv6ppPo

**********************************************

「……わたし、何も出来ないのかな」

部屋でひとり、そう呟く。
今日は色々なことがありすぎて、どうかしてしまいそうだったけど。
わたしの心を占めるのは、無力感。

「これから、大変なことが起こるのに」

さやかちゃんは契約した。
あれだけの危険に晒される恐怖を飲み込んで。
わたしは?
この街が、大災厄なんてものに襲われるのに?

「やあ、お邪魔してもいいかな」

悩む頭に、響くのは声。
窓を開けて、机の上にスペースを作ることで答えとした。
夜の風はまだ少し肌寒い。

「わたしが願えば、この世界も少しはよくなるのかな」

「さて、どうだろう」

その歯切れは、あまりよくない。
不思議な違和感。

「今の僕には判断できないんだ。
魔獣が仮に世界の拒否反応だとするなら、君の契約によっていっそう激化するだろう」

「魔獣を消すことを願ったら?」

「代わりが現れるかもね」

「うう……」

そんなに簡単な話ではないんだろう。
でなければ、これだけの人を巻き込むはずもないか。

「だけど、君に可能性があることは確かだ。
この世界のことを想うのなら、よく考えるといい」

可能性、世界を変える力。
全く実感はないし、ほむらちゃんから固く止められているけれど。
確かに考えることは大切だった。

「ありがと、キュゥべえ」

「感謝されるなんて久し振りだよ」



206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:16:53.76 ID:hAzv6ppPo

今日はここまでにしようか。
開きっ放しだった窓から飛び降り、地面に着地した。

今日は美樹さやかと契約できたけれど、それがこの世界にどのような影響をもたらすのだろう。
はっきり言って、今の世界は僕の理解を超えている。
観測者としての役割は、とても果たせていなかった。

魔獣については相変わらず謎だらけ。
世界の歪みを正しに来ているのなら、この契約というシステムに対応しているのかもしれない。
滅び行くはずの世界を存続させようとしている、僕達インキュベータへの拒否反応として。
感情を持つ生命体が死に絶えれば、確かに世界の運命は既定のものを辿るだろう。

しかし、所詮推定の域は超えない。
彼女たちもそう結論付けた。
それゆえに、僕もどう動けばいいのか分からない。
あれだけの素質を持った子、本来なら契約させない手はないのだけれど。

「……ままならないね、本当に」

夜の闇に消える。
少しでも情報を求めて。



207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:18:04.25 ID:hAzv6ppPo

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教えられた通り、
重みに任せて叩き割る。

「はぁっ!」

肉厚の大剣が魔獣を頭から両断した。
勢いは全て地面に伝え、地割れを起こし数体を呑み込む。
傾いだ胴体目掛け魔力の砲弾が飛来する。
狙い違わず命中し、残党を粉々に吹き飛ばした。

「よし、悪くねぇな」

「もうちょい褒めてくれてもよくない?」

「着地の後油断しすぎなんだよバカ」

「バカってなんだよバカ杏子!」

「んだコラやんのか!?」

「はいはい、そこまで」

マミさんの制止を受け、渋々剣を収める。
こんなやり取りにも少しずつ慣れてきた。
みんなと共闘して魔物を狩る日々にも。

「今日はひとまず、このあたりかしら」

ほむらがそう告げる。
確かに周りを見渡せば、日はとうに暮れていて。
グリーフシードを拾う動作の中にも、夜特有の静けさを感じられた。

「んじゃ、あたしたちはお先に」

「また明日ね、まどか、ほむら、マミさん」



208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:18:53.95 ID:hAzv6ppPo

あの日以来、あたしたちは戦いの特訓をするようになった。
来るワルプルギスの夜のために、そしてその後の生活のために。
この道を選んだ以上、あたしたちはひたすらに戦い続ける他ないから。

「ほら、使ってみろ」

「うん、えーっと…………こう?」

言われたとおり、魔力を自然な流れに乗せて開放する。
あたしを中心に、複雑な幾何学紋様が陣として描かれた。

「こりゃ守護陣だな。 外部からの干渉を拒絶するとか、そんなところか」

「へー、それってバリアみたいなもん?」

「まあそんなもんだろ、納得できるなら名前なんざどうでもいい」

「あ、別に固有の名前があるとかそういうのじゃないんだね」

「だから好きに呼べばいいんじゃない?」

なるほど。
自分のイメージがつきやすいものなら、何でもいいわけだ。

「それじゃあ守護陣をありがたくいただい痛ッ!?」

「……自分で考えな」

「またまた照れちゃっ痛い痛い痛い!?」

槍の柄の方で脇腹をぐりぐりと、結構痛いんだけどそれ。
ここからは実践練習ってことか、それなら受けて立ってやる。

杏子もそのつもりだったらしく、槍を実体化させ臨戦態勢に入る。
そろそろ勝ってやる。負けっぱなしでいられるものか。
大剣を強く握り、駆け出した。



209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:19:24.61 ID:hAzv6ppPo

「はあ、くそ、また……………」

「ベテランなめんじゃねえっての」

負け数にまた一が刻まれていくのを横目で見ながら。
剣を投げ出し、地面に横たわる。
空気も程よく冷え、土の柔らかい感触がどこか心地よかった。

見上げた空には、煌く星たち。
教会跡地の、壊れたステンドグラスや鉄骨たちすらも、その調和に溶け込む。

「綺麗」

「……ああ、そうだな」

手を貸してもらって、上体を起こす。
近くにあった大理石の柱にもたれかかると、熱を奪って火照る身体を冷ましてくれた。

「ここ、元々なんだったのかなあ、教会?」

「ああ、小さくはあったけど教会だったよ」

声色には聞き慣れない感情。
哀愁か、憂鬱か。



210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/19(日) 17:20:06.51 ID:hAzv6ppPo

「知ってるの」

「あたしの家だった」

だから勝手を知っているのか。
訓練場所として迷わずここに来たのも、そういう理由があるのだろうか。
杏子の家、一家心中の舞台となった教会。
なにを考えながら彼女は、今そこに立っているのだろう。

「あの頃もここから見る空は、綺麗だったよ」

「そうなんだ」

二人揃って空を眺める。
溢れ返り降るような星。
あたしたちの営みなんてこの宇宙に比べたら、ちっぽけなものなのだろうか。

手を振り、杏子を呼ぶ。
のろのろと歩いてきた彼女を隣に座らせる。
力を振り絞って、手を握って。

「今でも綺麗でしょ」

「……まあ、そうだな」


ちっぽけだろうとなんだろうと、構わない。
あんたに一つの居場所を与えてやれれば、それでいい。



次→ほむら「幸せになりたい」【後編】

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