1:
名無しさん@おーぷん 2018/09/30(日)21:58:09
ID:jSP
【三】君だけの推し忍を見つけよう【下】
2:
名無しさん@おーぷん 2018/09/30(日)21:58:48
ID:jSP
ニンジャスレイヤーX部より
アナザーワン・アウェイクニング
3:
名無しさん@おーぷん 2018/09/30(日)21:59:34
ID:jSP
タングステン・ボンボリの青白い光。スモッグの向こうに浮かぶ無数の煙突のシルエット。死んだマグロのような目で行き来する末端サラリマンと、単調なリズムで鳴るシリンダー音。これが夜のネオフクオカ臨海コンビナートのおおよそすべてだ。
ネオフクオカは治安劣悪の無法地帯キューシューにあって経済的発展を成し遂げている数少ないコロニーの一つだが、それは同時に日本的暗黒社会の病を受け入れるということに他ならない。シリンダー音とともに、夜は非人間的に淡々と更けていく。
重箱一杯のコケシバルブを運んでいた末端サラリマンの一人は、自分の背後を何かがさっと横切ったように感じた。そちらに視線を向けるが、相変わらず煙突が彼を見下ろしているだけだ。彼は鼻を鳴らしてから仕事に戻った。
4:
名無しさん@おーぷん 2018/09/30(日)22:00:22
ID:jSP
彼の背後を駆け抜けた人影はそのままクラシマ・クラフトワークス社の施設を通り過ぎ、ビリケン・ガスの精製プラントに入ったが、思いがけずコンクリートの壁に直面して足を止めた。行き止まりだ。
引き返そうとして振り返ったところで、後を追って来た三人と対面する。
「ドーモ、はじめまして」中央の追っ手が慇懃にアイサツする。「クリアゴーストです」銀色の装束を纏ったニンジャである。「メタルハンドです」「ブレインノックです」左右もニンジャだ。
5:
名無しさん@おーぷん 2018/09/30(日)22:01:17
ID:jSP
「…ドーモ、クリアゴースト=サン、メタルハンド=サン、ブレインノック=サン」それに応じる逃走者もまた、ニンジャである。装束は血のように赤黒く、マフラーめいたボロ布に顔を半ば埋めている。
「ミラ・ツヅリです」声は高く、体もごく小さい。少女である。一つにまとめた長髪の先が、超自然的な力でチリチリと燃えていた。
「悪く思うなよ」クリアゴーストが告げる。「俺たちも生きていかねばならんのだ」次の瞬間輪郭が溶け、彼の姿は闇の中に消えた。メタルハンドが動く!「イヤーッ!」ミラめがけスリケンを投擲!
6:
名無しさん@おーぷん 2018/09/30(日)22:02:02
ID:jSP
「イヤーッ!」ミラはそれを容易く摘みとり投げ返す!「イヤーッ!」メタルハンドの胸のサイバネ部位に刻まれた「磁」の文字が輝き、スリケンが引き寄せられて固着する!「俺のマグネ・ジツに金属は無意味だ!」
さらに一気に間合いを詰めて殴りかかる!「マグネ・ツキ!イヤーッ!」「イヤーッ!」ミラはこれを側転回避!メタルハンドの拳は虚しく壁に突き刺さり、ミラはそのまま壁を蹴ってガス精製タンク側面の空中通路に退避する。しかし!「イヤーッ!」「グワーッ!?」彼女を突然頭痛が襲う。
脳みそをかき回されるかのような激痛をこらえ、辺りを見回す……原因はすぐに見つかった。いつのまにか向かいの空中通路に移動したブレインノックが、こめかみに手を当ててこちらを睨みつけている。その鼻からタラリと赤いものが垂れるのが見えた。ニューロン攻撃系のジツだ!
7:
名無しさん@おーぷん 2018/09/30(日)22:02:50
ID:jSP
「ヌウーン!」メタルハンドが拳を引き抜く。コンクリ壁内部の鉄筋が拘束具のごとく纏わりついたその右手をミラのほうへ向け、「マグネ・スリケン!イヤーッ!」磁力で鉄筋の塊を発射した!
「イヤーッ!」ミラは跳躍し、この恐るべき飛び道具を回避した。さらに空中でぐっと体を捻る。その背中と腕に縄めいて筋肉が浮かび上がり、その全力を右手のスリケンに込め、ブレインノックめがけ投げ放つ!「イイイ……ヤアアーッ!」チャドー奥義、ツヨイ・スリケンだ!
「な、グワーッ!?」ブレインノックはかわしきれず、赤黒く燃えるスリケンに頭蓋骨を砕かれた!「アバーッ!」昏倒し悶絶!「イヤーッ!」ミラは続けざま近くの空中通路にフックロープを投げ、振り子軌道でメタルハンドめがけ突っ込む!
8:
名無しさん@おーぷん 2018/09/30(日)22:03:35
ID:jSP
「マグネ・キネシス!イヤーッ!」メタルハンドはジツの更なる力を解放、あたりに散らばる雑多な金属製品をキネシスのごとく操りミラめがけ発射した!「ヌウーッ!」ミラは体を縮めてその弾幕を潜り抜ける!?を金属片が切り裂くが、赤黒の炎が傷をかりそめに焼き塞ぐ!
「イイイヤアアアーッ!」「グッワーッ!?」重力加速を乗せた飛び蹴りがメタルハンドの鳩尾に突き刺さった!サイバネニンジャの体は吹き飛ばされてガス精製タンクにめり込む!
「お、おのれ」「イヤーッ!」蹴りの反動で再跳躍したミラが、もがくメタルハンドめがけ無慈悲な追撃スリケンを投擲!「グワアーッ!」額が砕けて脳漿が吹き出す!「サヨナラ!」メタルハンドはしめやかに爆発四散!
9:
名無しさん@おーぷん 2018/09/30(日)22:04:22
ID:jSP
ミラは体操選手のごとくクルクルと回転してから三点着地し、「イヤーッ!」振り返りざまチョップ突きを繰り出した!「グワーッ!?」チョップが虚空に埋まり、苦悶の声とともに血が吹き出す!ショート光が走って装束のステルス機能が解け、右胸を貫かれたクリアゴーストが姿を現した!
「ゴボッ、イ、イヤーッ!」アンブッシュに失敗したクリアゴーストは血を吐きつつもヤバレカバレに?みかかる!「イヤーッ!」ミラは容赦のないアッパーでその顎を打ち上げる!「グワーッ!」クリアゴーストは引き剥がされ仰向けに突き倒された!
「サヨナラ!」上の空中通路でブレインノックが爆発四散した。穴の空いた精製タンクからビリケン・ガスが漏れ出し、倒れたクリアゴーストと、それを見下ろすミラの視界を曇らせていく。
10:
名無しさん@おーぷん 2018/09/30(日)22:06:14
ID:jSP
「ゴボッ、オミゴト……しかしこれで終わりではない、カブナカマ・カルテルはお前を……」「ハイクを詠め」「……シ、シノビニンジャ/アンブッシュに失敗したら/実際負け」「イヤーッ!」ミラはクリアゴーストの頭を踏み抜いて破壊した。「サヨナラ!」クリアゴースト爆発四散!
その拍子にクリアゴーストの懐からUNIX端末が飛び、カラカラとコンクリートの地面に転がった。「……」ミラは目ざとくそれを見とめ、拾い上げる。今更のように?の傷から血が垂れた。
ビリケン・ガス漏洩の警報がけたたましく鳴り響き、ランプが点滅する。赤黒のニンジャ少女は無感動な顔でそれを見上げたあと、立ち込めるガスの向こうへ歩いていく……
しかし、おお、見よ!その背中では、クリアゴーストが絶望的な反撃の中で取り付けたごく小さな発信機がランプを点滅させていた……!>to be continued…
12:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:38:38
ID:oDF
数日後、ネオフクオカ旧市街。俯き加減の人々が行き交う上から、しとしとと重金属酸性雨が降り続く。
『アイ、アイ、アイのvpm重点』空にボンヤリと浮かぶマグロツェッペリン側面のTVモニターの中で、カラフルな衣装で着飾ったアイドルが歌っている。『からまったケーブル振り解いて今すぐ会いに行きたいの』愛を歌う歌声も、疲れ切ったこの町には虚しく響く。
その街角、「実際安い」の文字を輝かせるベコ・ストアのネオン看板の下に、特徴に乏しい車が停まっていた。
13:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:41:27
ID:oDF
「『カゴシマ民族主義者の爆弾テロ』、『サセボで武装企業闘争』、『臨海コンビナートでビリケン・ガス漏洩』……」その車内で、マカド・ケンジは助手席のシートに身を埋めたまま新聞の見出しを読み上げる。「物騒なもんだな。政権交代が必要なんじゃないのか」
「デスネー」運転席でハンドルにもたれている女は彼の部下、エノ・クロコだ。「ネオフクオカのニンジャ殺しとかいう話もありますし」「あれは都市伝説だろ」「でもセンパイ、きっと諸悪の根源はカブナカマですよ。カブナカマ・カルテル」
「カブナカマか」ケンジは苦々しい顔でおうむ返しする。カブナカマ・カルテルといえば、オムラモータースとU&Qトコシエ社を中心とする企業連合である。
14:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:42:42
ID:oDF
「あいつらもつい最近まではカタナハントの睨みがきいてたんだがな。何をハッチャキしてんのか」カタナハント・ユニオンとは、キューシュー経済を裏から牛耳る巨大暗黒ニンジャ組織のことだ。
「まあ元々、ネオフクオカから一歩出れば無法地帯ですし。キューシュー全体で見ればあんまり変わってないデスネー」クロコはにやにや笑う。だからよ、その一歩分の縄張りくらいは平和であってほしいだろ」ケンジはそう答えて新聞をダッシュボードの上に放り出す。
窓越しに、少し先の路傍にモーターカゴが止まるのが見えた。「来たな」「来ましたね」車中の二人は短く言葉を交わしてからカゴに注目する。
何人かのヤクザが降車し、道沿いのビルに姿を消す。うち一人は訳ありげなアタッシュケースをぶら下げていた。
15:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:44:10
ID:oDF
デスファルコン・ヤクザクランの首領カイザキは、部下ヤクザが持ち帰ったアタッシュケースを広げるのをごく落ち着き払った表情で眺めていた。中から出てくるのは、不釣り合いに小さいデータディスクが一つきりである。
カイザキは何本も指をケジメした手でディスクを受け取り表裏を眺める。(このちっぽけなディスクに俺のクランの命運がかかっているのか……)深いシワの畳まれた顔には隠しきれない緊張が伺える。
「重畳ですな、カイザキ=サン」横に立っていた白スーツ姿の男が声をかける。「このデータはあなたの人脈がなくば手に入らなかった。内容を確認次第、私どもはあなたのクランを手厚い保護下におくことを約束します」
16:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:45:13
ID:oDF
そう言って笑う口元はメンポに隠されている。そう、彼はニンジャ……カブナカマ・カルテルのニンジャ、シューゲイザーだ。
デスファルコン・ヤクザクランは長らくカタナハント・ユニオンの傘下にあった。しかしその支配は厳しく、カイザキは自分の死後独立を保っていくことは難しいだろうと感じていた。
父祖から受け継いだクランを潰すわけにはいかないと考え、一念発起してカブナカマに下ろうと決めたのだ。「さあ、データをこちらへ」シューゲイザーが手を出す。
首領に対する無遠慮な振る舞いにデスファルコンのヤクザたちが眉をひそめたが、立場上逆らうことはできない。カイザキはむっつりした表情でディスクを渡す。シューゲイザーは自分のウェアラブルUNIXにそれを通そうと、
17:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:47:04
ID:oDF
「「イヤーッ!」」扉を蹴破って二つの人影が事務所にエントリーした!「アッコラー!?」「シャッコラー!」ヤクザたちはとっさにチャカやドス・ダガーを取り出し戦闘態勢!
「ナンオラー!?マッポか!?」グレーターヤクザがロングドス・ソードを抜き放ち威嚇!
「ドーモ、デスファルコン・ヤクザクランのみなさん……」闖入者の一人が奥ゆかしくアイサツする。白地にグリッド線じみたグリーンのラインが入った装束のニンジャだ。
「カタナハント・ユニオンのアークスパークです」そう言ってオジギする、メンポの奥のその顔は……おお、彼はマカド・ケンジではないか!
「ドーモ、同じくシャドウフリーズです」続けてアイサツするもう一人は、墨のように黒いニンジャ装束を纏ったエノ・クロコだ。二人の正体は暗黒ニンジャ組織カタナハント・ユニオンの構成員だったのだ!
18:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:48:28
ID:oDF
「アイエエエニンジャ!?」「ニンジャナンデ!?」レッサーヤクザが何人か急性NRSを発症し恐慌するが、「カツ!」カイザキが声を上げると正気を取り戻し、各々の武器を構え直した。古強者のヤクザの統率力だ。
「ドーモ、カタナハントの皆さん。カイザキ・トオジです……このタイミングで来るってことは」カイザキも内心少なからず動揺していたが、おくびにも出さずに闖入者たちを睨みつける。「俺たちの考えはお見通しで、泳がされてたってわけか」
「そうだ。お偉いさんはそのデータが欲しいらしくてな」アークスパークが答える。「それを渡せばお咎めなしで傘下に戻してやってもいいらしいぞ」「信用できんな。ヤクザをいつまでも鎖に繋いでおけると思うなよ」
「カブナカマは鎖ではないと?」アークスパークは内情を見通した様子でシューゲイザーのほうを見る。「カタナハントにゲコクジョしたところでより大きな檻、より長い鎖からは逃れられんぞ」
19:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:49:51
ID:oDF
「ほざけ……のこのことやって来たウカツを知るがいい。サルファー!ホプリテス!」「「イヤーッ!」」首領の声に応え、二人のニンジャがヤクザたちの中から飛び出す。黄色い装束のサルファーと、トーガめいた装束のホプリテスである。
「やれるか」アークスパークはシャドウフリーズにささやく。「もちろんです」彼女は自信を滲ませた声で答えた。「殺せッ!」カイザキが首を掻っ切る仕草とともに号令し、「「イヤーッ!」」ヤクザニンジャが二人に襲いかかった!
アークスパークと対決するのはサルファーだ。「イヤーッ!」「イヤーッ!」チョップが交錯!「イヤーッ!」サルファーの前蹴り!「イヤーッ!」アークスパークはそれをかわして地獄突きを繰り出す!
「イヤーッ!」逸らされ、ボディーブローが飛んでくる!「イヤーッ!」アークスパークは円を描くように手を動かしてこれをいなし、ばね仕掛けのようにスピーディな裏拳でサルファーの顔面を攻撃!「グワーッ!」たたらを踏むサルファー!
「イヤーッ!」アークスパークの追撃ポン・パンチ!「グワーッ!」黄色のニンジャはボディに痛打を受けて吹き飛ぶ!
20:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:51:00
ID:oDF
アークスパークはさっと振り向き、シャドウフリーズと戦闘中のホプリテスの背中めがけスリケンを投擲!「イヤーッ!」「グワーッ!?」
思いがけない援護射撃を受けて堅牢な古代ローマカラテの構えが崩れたところへ、「イヤーッ!」シャドウフリーズの飛び蹴り!「グワーッ!」包囲ヤクザを巻き添えに倒れこむホプリテス!
「やれるって言ったんですけど」「信用することと連携をするしないは別の話だ」アークスパークとシャドウフリーズは各々の相手に視線を向けつつ、背中合わせに言葉を交わす。
「また一つインストラクションが増えてしまったな」「まったく、調子いいんですからセンパイは」
21:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:52:01
ID:oDF
「ハアーッ……カトン・ジツ!」起き上がったサルファーが両手に青い炎を生み出した。「イヤーッ!」そしてアークスパークめがけ左手の炎を投擲!カトン・ファイアーボールだ!
「イヤーッ!」アークスパークは帯電スリケンを投げてこれを相殺!「「イヤーッ!」」背後でシャドウフリーズとホプリテスが再びカラテに突入する一方、サルファーが右手に青い炎を纏ってアークスパークに急接近する!
「イヤーッ!」水平チョップ!「イヤーッ!」アークスパークはブリッジ回避!殺意に満ちた炎の軌跡が彼の腹の数センチ上を通過!
22:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:53:13
ID:oDF
「イヤーッ!」アークスパークは起き上がりざまショートフックで反撃!「イヤーッ!」しかし引き戻した右手でガードされ、そこに燃える青い炎が拳を焼く!「グワーッ!?」思いがけないカウンターに苦悶するアークスパーク!
「イヤーッ!」その隙を突くサルファーの左ストレート!「グワーッ!」「イヤーッ!」右ストレート!「グワーッ!」「イヤーッ!」左ストレート!「グワーッ!」「イ、グワーッ!?」
右……いや、おお、見よ!サルファーの影にクナイ・ダートが突き刺さり、それに縫いとめられたが如くサルファーの動きが止まる!シャドウフリーズのシャドウピン・ジツだ!
23:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:54:21
ID:oDF
「イ、イヤーッ!」アークスパークはその隙を突いてサルファーの頭を掴み、壁に叩きつけた!「グワーッ!」さらにデン・ジツを発動、高圧電流を流し込む!「イヤーッ!」
「アバッ!?アババババーッ!」サルファーの目や耳から白い蒸気が上がり、ポンと音を立てて眼球が破裂する。アークスパークが手を離すとサルファーの体は力なく崩折れ、「サヨナラ!」バッタリ倒れ込んで爆発四散した。
「シャドウフリーズ=サン、今のは……」アークスパークが振り向くと、「たしかに連携は重要みたいですね」部下はそう言ってにやりと笑った。その背後でクナイ・ダートに急所を貫かれていたホプリテスが倒れ込み、爆発四散した。「サヨナラ!」
24:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:55:43
ID:oDF
「まだやるか、カイザキ=サン」アークスパークはメンポから垂れた血を拭いながらも、努めて冷たい声で言い放つ。「今度はヤクザどもをけしかけてみるか?かわいい部下が無駄に死ぬだけだぞ」
彼の凄みに、包囲ヤクザがじりじりと後退する。「その必要はありません」その緊張を破って答えたのはカイザキではなく、他のヤクザでもなく、シューゲイザーであった。
「ビジネスパートナーを相手にこう大暴れされては、ただ見ているわけにもいかない。私がお相手しましょう」彼はいつのまにかスーツを脱ぎ捨て、ニンジャ装束姿となっていた。
25:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:57:00
ID:oDF
「カブナカマ・ニンジャだな」「ご明察……ドーモ、はじめまして。カブナカマ・カルテルのシューゲイザーです」「ドーモはじめまして、シューゲイザー=サン。カタナハント・ユニオンのアークスパークです」「同じくシャドウフリーズです」
殺意をみなぎらせつつもあらためてアイサツする三人のニンジャたち。アイサツは神聖不可侵の行為であり、いついかなる時も私情をさし挟むことは許されないのだ。古事記にも書かれている。
「センセイヨロシク・オネガイシマスってか?時代劇の悪役かお前らは」「はは、なるほど言えている。しかし時代劇と違うのは」シューゲイザーがゆらりとカラテを構える。「お前たちは流浪のショーグンではなく、勝つ保証はないということだ」
26:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:57:42
ID:oDF
(こいつは……)アークスパークはカラテを構えつつ、明確な危機感を覚えた。構えを見ればわかる、シューゲイザーは明らかに自分より強「イヤーッ!」「ンアーッ!」シャドウフリーズが目にも留まらぬ速さの蹴りを受けて吹き飛んだ!
「何!?」アークスパークはシューゲイザーの一瞬での接近に内心仰天しつつも果敢に右チョップで攻撃!「イヤーッ!」「イヤーッ!」シューゲイザーは容易くいなす!「イヤーッ!」アークスパークの右裏拳!「イヤーッ!」逸らすシューゲイザー!
「イヤーッ!」アークスパークは渾身の左スマッシュを放つが、「イヤーッ!」「グワーッ!?」次の瞬間投げ飛ばされて地面に叩きつけられていた!力量差は歴然!
27:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:58:46
ID:oDF
「死ね!」シューゲイザーは続けざまストンピング・カイシャクを加えようとしたが、横合いからクナイ・ダートが飛来した。「チッ!」先ほどのシャドウピン・ジツを見ていたシューゲイザーは憎々しげに舌打ちしつつこれを側転回避する。
クナイの主シャドウフリーズはアークスパークに駆け寄り、シューゲイザーにカラテ警戒しつつささやいた。「ヤバイですセンパイ、あいつ私より強いです」「言わなくてもわかる。俺よりも強い」「絶望的ですね」「言わなくてもわかる」
「でもでも、センパイ」シャドウフリーズの表情にはいまだ挑戦的な笑みがあった。「『私たち』よりは、弱いですよね?」「……そうだな」アークスパークはそれに応じてにやりと笑い、立ち上がる。「試してみるか……奥の手を!」
28:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)17:59:46
ID:oDF
二人は揃って腕をぐるりと回し、斜め上に伸ばす妙なポーズをとった。シューゲイザーは怪訝な顔をした。「何を……」
二人は叫ぶ!「「ゴイツ・ガッタイジツ!」」閃光が走り、ヤクザたちが眩しさに目を覆う中、電流と影の流れが混ざり合う!
「グワーッ……!?」シューゲイザーは目を細めつつも、アークスパークとシャドウフリーズの輪郭が重なるのをニンジャ視力で捉えていた……光芒が収まり、そこに立っているのは一人。
29:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)18:01:04
ID:oDF
「あらためまして、ドーモ、シューゲイザー=サン」右半身は白地にグリーンのラインが入ったデザインで、左半身は墨のように黒い、いびつな出で立ちのニンジャがアイサツする。「シャドウスパークです」
「……ド、ドーモ、シャドウスパーク=サン。シューゲイザーです」シューゲイザーは未知のジツに動揺しつつもアイサツを返す。
「妙なジツを……だがいくら小細工を弄しようと、俺のカラテには届かんぞ」シャドウスパークはすっとそちらを指差し、両性的な不思議な響きの声で言う。「試してみろ」
30:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)18:01:57
ID:oDF
「ほざけ!」シューゲイザーは一気に間合いを詰め、ケリ・キックで攻撃!「イヤーッ!」
「イヤーッ!」しかしシャドウスパークは先ほどまでの二人とは別次元の動きでそれをいなし、シューゲイザーの胸にショートフックを打ち込んだ!「イヤーッ!」「グワーッ……!?」
思わず後ずさるシューゲイザー。シャドウスパークは体の動きを確かめるようにニ、三度ステップを踏んだあと、両手で手招きしてシューゲイザーを挑発した。「コシャク……イヤーッ!」激昂したシューゲイザーが突撃!
31:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)18:03:02
ID:oDF
左ジャブ!「イヤーッ!」いなす!「イヤーッ!」右ストレート!「イヤーッ!」いなす!「イヤーッ!」左ミドルキック!「イヤーッ!」受け止め、右アッパー!「グワーッ!」「イヤーッ!」続けて左ストレート!「グワーッ!」
「イ、イヤーッ!」シューゲイザーは牽制のチョップ突きを放ちつつ後退しようとしたが、突如その左足首が強固に拘束される!「バカな!?」彼の足元から生えた影の手が、その足首をガッチリと掴んでいた!シャドウフリーズ由来のジツだ!
「イヤーッ!」その隙を逃さずシャドウスパークがチョップ突きを放つ!「イ、イヤーッ!」シューゲイザーは左腕でガードを試みたが、「グワーッ!?」その腕が感電し激痛と痺れが襲う!アークスパーク由来のデン・ジツで帯電した突きだったのだ!
32:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)18:05:33
ID:oDF
「おのれ!イヤーッ!」それでもシューゲイザーは右拳でシャドウスパークを迎撃する!「イヤーッ!」帯電した左腕でガード!「グワーッ!」右手も感電!
「おのれ!おのれーッ!イヤーッ!」シューゲイザはなおも闘志衰えず、右スピンキックで反撃を試みる!「ナムサン……!」シャドウスパークはこれを左腕で遮り、右手を手刀の形で振りかぶった!
「イヤーッ!」水平首狩りチョップ!「グッワアーッ!」切断されたシューゲイザーの首が活力バリキドリンクのCMめいて飛び、爆発四散!「サヨナラ!」
33:
名無しさん@おーぷん 2018/10/01(月)18:10:35
ID:oDF
残された首から下は崩れおれて倒れた。シャドウスパークはザンシンを解き、顔面蒼白のヤクザたちを見回して言う。「さて、反逆の企み、どう責任をとる」
ヤクザたちの視線がカイザキに集まる。すると老ヤクザは手近なドス・ダガーを抜き、躊躇なく自分の腹を深々と切り裂いた。ハラキリだ。
「門のために生き/門のために死ぬ/我が命デスファルコンと共にあり」「オ、オミゴト……ゴメン!イヤーッ!」グレーターヤクザが涙にくれながらもカイシャクを加え、カイザキの首がヤクザテーブルの上に転がった。
首無し死体を二つ作って、アークスパークたちの任務は終わった。>to be continued…
34:
名無しさん@おーぷん 2018/10/06(土)02:05:37 ID:Al8
よく再現出来てる
元スレ
http://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1538312289/
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