2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 06:35:50.91
ID:XQIErafB0
良く晴れた日に
私と阿良々木がキャッチボールをしている
なぜだ?
もし誰かいたとしても
聞いてもだれも答えてくれないだろうし
聞ける人なんていないし
自分しか知らないことを自分も知らなかったら
どうしたらいいのだろう
暦「早く投げてくれないか」
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 06:36:43.42
ID:XQIErafB0
私はボールの縫い目を見つめていた
遠くで子供達の声が聞こえる
あの子達はキャッチボールをしたことがあるだろうか?
私は少なくとも記憶のなかには無い
子供なら絵日記の宿題のように思い出せるだろう
というか書いた記憶がない。絵日記
昔書いたら嘘しかかけなかっただろうな
暦「老倉ぁ」
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 06:37:16.85
ID:XQIErafB0
もちろん私は無視をしていたい
だか、ボールをぶつけてやりたい気持ちもある。あいつに
・・・結構遠いなあいつは
どのくらい力を込めればどこまで届くかわからない
何回も失敗した
力んだボールはいくつも地面を叩いた
あいつがバッターだったらデッドボールを投げて
目の前から消し去ってやるのに
ぶつけてやるからとっとと前に進め
こうなると、いつも思う
根拠の無い自信が、いつも自信になっていると
暦「おーい」
足を踏み出し
少し前を思い出す
それ以上は無理だから
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 11:20:42.31
ID:XQIErafB0
今日は
どうしよう
なにもしたくない
瞬きすることで精一杯だ
バイトにまた落ちたからなのか
未だに友人がいないからなのか
それとも日曜日にこんな遅くまで寝てしまったからだろうか
やること1個もないからなのか
違う、全部違う
阿良々木の家にいるからだ
なぜ私なんかがこの家にいるのかは阿良々木にでも聞いてほしい
ともかくもいる
どこにも行くところはない
ゴロゴロしている
6:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 11:26:43.31
ID:XQIErafB0
もう一度、目を閉じて1人ならば嬉しい
1人だ。嬉しい
目を閉じる前から実はそうなのだけれど
いまこの家には誰もいないはずで
自分の家ではない家で留守番(自主的にだが)をすることは
結構きついものがある
下手に動くことはできない
いや動いていいんだけれど、無理だ
何かに触ったら怒られそうだし
盗みを働いているみたいに思われたら
・・・いや思われないのだろう
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 11:34:31.58
ID:XQIErafB0
例えば私が居間でテレビをみていて
だれかが帰ってきたら・・・つらい
昼間から何やっているんだろうって
・・・これは思われるかな
可哀相な子と思われるているだろうと
勝手に意識して動けなくなる
よくあることだ
それなら勉強だ、勉強。それならまだ普通に見える
うん。そうなんだ勉強って。ずっと前から思いついてる
それを私が実行しないのは
勉強道具を阿良々木の部屋に置いてきたからだ
資格の参考書を置いてきてしまった
8:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 11:41:22.18
ID:XQIErafB0
いきたくない
すごくいきたくない
でも仕方が無い。私の人生はそんなものだ
よくあることだ
行こう。それで
阿良々木の部屋に入っているときに
誰かに見られたら窓から飛び降りよう
裸足でもいい
9:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 11:49:46.28
ID:XQIErafB0
私がこの部屋に勝手に入ったことは
誰にも気付かれたくないし、自分の記憶からも消し去りたい
どうしたら部屋の物にまったく影響を与えずに
物を持ち出せるか、エントロピーはそのままにしたい
だからこの後の私の行動は無かったことにしたい
10:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 12:05:07.98
ID:XQIErafB0
私は
グローブを見つけた
野球の
ただバットもボールもない
この後の私は
懐かしい匂いを嗅いでみる
感触を確かめる
噛んでみる
顔を覆ってみる
などを行い
その暗い視界の中で
なにをしたいのだ
阿良々木「老倉?」
窓から足を出した時点で腕を掴まれて
視界は更に暗くなっていく
11:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 13:37:49.35
ID:XQIErafB0
ねえ、阿良々木。私に勉強を教えてなんて
違う。グローブで顔を覆う理由にならない
理由なんてあるか
暦「なあ老倉?どうしたんだ?」
どうもこうもない
暦「グローブ?なんでだ?ピッチャーか?」
暦も大分混乱しているようだ。私のほうが混乱しているが
私は人に可哀相とか心配されることが
一番嫌いだ
これが間違っていることは分かっている
12:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 16:04:23.85
ID:XQIErafB0
暦「なあ喋ってくれよ」
暦「サインか?サインがいるのか?」
落ち着け阿良々木
まあ、阿良々木から見たら部屋に入ってきた
居候がグローブをかぶっていて
そいつが一言も喋らなかったら怖いだろうな
育「阿良々木」
暦「なっ何だ?」
育「・・・ボールはないの?」
今日始めて出た言葉だ
これも間違っていることは分かっている
落ち着け、大丈夫と自分に言い聞かせる
全部間違ってるから大丈夫だよと
13:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 20:00:22.79
ID:XQIErafB0
駅前のスポーツショップにいる
そう、順調に間違っている
育「どのボールがいい?」
暦「そうだなあ」
育「これは?」
暦「それは硬式だから。痛いな」
痛いのはいやだ
育「高い」
暦「いや、どんなのが欲しいんだよ?」
育「いや・・・」
14:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 20:08:07.85
ID:XQIErafB0
何も要らないのだけれど
ここに欲しい物はないって言ったらもっと訳が分からなくなる
私がすごく良いボールを求めている人にみたいになってしまう
こんな羽目に・・・阿良々木が
育「何でボールがないの?」
暦「いっぱいあるだろ?」
育「違う」
なんで阿良々木はグローブは持っているのにボールは持っていないんだよ
と聞いてみたくなって、すぐにやめた
暦「そりゃあ・・・僕のボールはどこかにいったんだよ」
伝わって欲しくない意図は伝わり易く、そうでないときは全く伝わらない
15:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 20:17:33.81
ID:XQIErafB0
育「大変ね」
暦「大変じゃないけどさ」
暦「昔、失くしたからな」
育「そうなんだ」
もういいよ
昔から私達は友人がいたことなんて、ほぼ無いのだから
私はボールのコーナーから遠ざかって、もう帰りたい
帰って勉強でもしようよと言えたらいいのに
育「グローブも色々な種類があるんだ」
暦「ポジションによって違うんだよ」
育「ポジション」
キャッチャーとかピッチャーとかそういうやつか
阿良々木の家で見たグローブはどれだった?
16:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 20:26:14.47
ID:XQIErafB0
暦「別にキャッチボールするだけなら安いやつでいいんじゃないか?」
育「キャッチボール?」
暦「・・・老倉はしたことあるか?」
育「何を?」
暦「キャッチボールをだよ」
育「・・・阿良々木は誰とキャッチボールをしていた?」
本当にどうでもいいことで私と阿良々木は哀しい気持ちを
引き出しあってどうすんだと思って虚しくなる
そして思い余って
グローブとボールを買ってしまった
お金無いのに
17:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 20:39:43.17
ID:XQIErafB0
暦「いいグローブだと僕は思うよ」
育「ああ・・・そう」
訳の分からないフォローをしてくるのだから
育「どんな風に?」
暦「ええっと」
答えられるのか?答えられないだろう
暦「いっいい球が投げれそうだ」
育「いい球?良い球って私やったことないって」
暦「えっ僕は野球に興味があるのかと思ってたのだけれど」
育「別に」
駄目だ
18:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 21:32:13.92
ID:XQIErafB0
暦「それなら何でグローブ買ったんだ?」
だから駄目なんだ
育「・・・」
暦「えっと・・・それじゃあ帰るか?」
私がグローブを買った理由をお前が知る必要は無いもの
育「阿良々木」
暦「なんだ?」
育「お前は私に色々買わせて使わせてもくれないのか?」
暦「えっ?急になんだ」
育「悪いのか?」
暦「買ったばかりのグローブってすごく固いんだぞ?」
育「それが?」
19:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 21:40:16.21
ID:XQIErafB0
こういったやり取りがあり、私と阿良々木は広場に向かった
軟式用というボールを買ったが
始めて握ったボールは思ったより重くも軽くもなかった
意外とうまく投げれるのではないかと想像する
20:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 21:46:19.73
ID:XQIErafB0
育「ボールは?」
暦「ボール?」
育「どう持つ?」
暦「ええっとこうだ」
育「ありがとう」
暦「あっああ」
育「投げるから、下がってくれない?」
21:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 21:54:12.09
ID:XQIErafB0
どんなに力を込めたかはわからないが
阿良々木のグローブにボールは入らなかった
阿良々木を越えて逸れる
育「初めてやったんだよ」
暦「知っているって」
阿良々木がボールを追いかける
私も少し追いかけてみて
後ろ姿に・・・罪悪感を感じるな
育「ジャンプすれば」
暦「とれねーよ」
22:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 22:15:29.30
ID:XQIErafB0
わざとではないのだけれど
暦「力が入りすぎじゃないのか?」
育「ああそう」
次はワンバウンドして、これも受け取られることは無かった
また阿良々木が走る
キャッチボールってこんな感じなのかな
23:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 22:29:52.06
ID:XQIErafB0
暦「そんな顔するなって」
暦「大丈夫だ老倉。きっとうまくいくさ」
うるさいって
阿良々木の顔を目掛けて投げた球はグローブに入ったようだ
やったぁー!
育「やったぁー・・・」
思ったより大きい声を出したつもりが
想像以上に小さい
24:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 22:42:35.79
ID:XQIErafB0
暦「すごいじゃないか老倉」
うるさいって
暦「もう一回投げようぜ」
育「そう?」
阿良々木がさっきから返してくる球を
受け取ることはできる
ゆっくりの下手投げだから
放物線を描いて帰ってくる
私はずっと渾身の上投げだ
25:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 22:50:00.83
ID:XQIErafB0
暦「老倉の球って自然とカーブになるんだな」
育「才能があるってこと?」
暦「クセがあるってことだ」
育「そう」
育「直したほうがいい?」
暦「いいだろう」
どっちの意味だろう?
兎に角、阿良々木は
真直ぐ投げる投げ方を教えてくれないんだ
26:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 23:42:03.83
ID:XQIErafB0
暦「そろそろ休憩にしないか?」
育「いいけど」
暦「水を買ってくるからさ」
育「買ってくれば」
暦「おう」
小さくなる後ろ姿にボールを投げたくなったが
我慢だ。当たらないから
もっと上手くなったらやってみよう
阿良々木のグローブに目を落とす
改めて感触を確かめている
27:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/20(月) 08:20:50.17
ID:A7ChSccy0
暦「ほら」
育「いいって」
頼んだ訳じゃあないのに私の分まで買ってくるな
だったら私も買いに行ったよ
暦「いや、こんなに飲めねーよ」
育「いくら?」
暦「いいって」
阿良々木は勝手にグローブにペットボトルを入れる
冷たさが解らない
暦「やっぱり買ったばかりのグローブって使いにくいだろ?」
育「いや別に」
暦「僕のグローブ使っていいぜ」
育「なんで?」
阿良々木は私のグローブは着けて、私は阿良々木のグローブを着けたままになった
28:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/20(月) 08:44:52.65
ID:A7ChSccy0
暦「魔球投げてくれよ」
育「魔球?」
暦「魔球って知らないか?消える魔球とかさ」
育「阿良々木は投げれるの?」
暦「何回か練習したことはある」
なんでそんなことするんだ阿良々木
29:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/20(月) 08:55:33.32
ID:A7ChSccy0
育「・・・阿良々木」
暦「ん?うわ!」
隙を突いて適当に握って投げたボールは
草むらに消えた
ずっと見ていたのに
そこに無いのはなぜだ
消えた魔球と言いたくてやめた
暦「どこ行った?」
育「そこらへんだと思うけど」
2人で草むらを見ている
30:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/20(月) 09:16:09.56
ID:A7ChSccy0
暦「悪かったよ」
育「何で!?」
悪かったのは私だろ
暦「いや無茶言ったからさ」
育「だったら最初から言うなよ」
暦「そうだな、悪かった」
育「阿良々木は昔、野球をやっていたの?」
暦「いや、でも練習はしていたな」
暦「ボールをひたすら壁当てしててさ」
育「壁当て?」
暦「壁にボールを当てて返ってきたボールを取るだけだ」
育「何が楽しいの?」
暦「楽しくなかったな・・・あった」
32:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/20(月) 21:33:43.91
ID:A7ChSccy0
ボールが見つかって良かった
公園というか広場には人がある程度いて
私は色々なことを考えた
阿良々木が楽しくなかったと言ったことと
私の全てがうまくいった場合の可能性を想像する
もっとうまく話せていたらとか
昔からこんなことをしていたらどうだっただろうとか
そもそも最初の一言からちゃんと話せていたら
これからはどうだろうか等を
33:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/20(月) 21:43:41.47
ID:A7ChSccy0
どうして間違えはすぐ分かるのに
合っているとはすぐ思えないのか
とりあえずグローブが音をたてる
声は大きくしないと届かない距離になっている
疲れるな
育「野球って何人でやるものなの?」
暦「1チーム9人だけどな」
育「無理だね」
暦「無理だな」
暦「そんなに知り合いいないからな」
育「私のほうがもっといない」
大きな声でそんなことを張り合っても仕方ないけれど
それに、私は私達がそんなでもかまいはしない
34:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/20(月) 23:16:08.96
ID:A7ChSccy0
暦「サイン決めようぜ、僕が出すからさ」
育「何言ってるの?」
暦「サインってあれだよ、ストレートとかカーブとかフォークを投げるサインだ」
暦「キャッチャーが出す球種を決めるサイン」
育「いや、やらないし」
暦「おっおう」
育「・・・阿良々木はキャッチャーがやりたかったんだ?」
暦「そんな訳じゃあない」
そんな訳じゃなかったらなんなのだ
嫌がらせに私は阿良々木が投げる前にグーとかパーとかやってみる
35:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/22(水) 23:31:00.07
ID:t9MO6BMo0
その表情に私と阿良々木はもっと距離をとる
もっと聞こえないはずだ
育「私は1人でいるよ」
育「1人でちゃんとする」
育「それでもちゃんとするし、約束する。前にも言った?」
育「募金とか、献血とかボランティアとかもやって」
育「困っている人を助けたり」
育「目付きが悪い人だとか、変な人が来たって思われても構わない」
育「笑えばいいよ。気にしない」
育「嘘じゃない」
育「そんなことができてもどうだって話で」
育「わかる?阿良々木」
育「もうグローブは噛んだりしない」
聞こえていない
わからなくていい
私が言ったことは全て間違っていると思っていい
遠くの阿良々木の表情が嫌いだ
36:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/23(木) 00:19:47.18
ID:LaAw+2oN0
暦「今日はありが
言い終える前に投げる
今日、何度もやったが今度も
思い切り力を込めたボールは取れないくらい高く
もちろん取られなくて
阿良々木を走らせる
暦「なにやってんだ老倉」
37:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/23(木) 21:44:36.82
ID:LaAw+2oN0
育「阿良々木が下手なんじゃない?」
無理を言って
駆け寄らないから追いつかない
育「阿良々木とキャッチボールなんて考えられない」
育「どんなに昔から今を想像したって同じ」
育「ずっと前から知っていたことを分かっていたら」
育「ずっと前からグローブを持ってたことは知っていたけどね」
育「全然使ってなかった」
育「なんで嫌なんだろう」
育「お前が1人でも私が1人でもどうでもいいのに」
38:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/23(木) 21:45:43.94
ID:LaAw+2oN0
遠くで阿良々木の口が動いた
暦「もしかして僕のために今日は付き合ってくれたのか?」
育「えっ?なに?」
きこえたい
なら死んでしまえ
私達は互いに言ったことは聞こえない
今度はお弁当でも作って
・・・今度はないだろうな
阿良々木が近づいてきたら
39:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/23(木) 21:55:55.24
ID:LaAw+2oN0
育「さっき何か言った?」
暦「ああ・・・いや」
育「阿良々木もちゃんと投げない?」
暦「いいのか?」
育「ピッチャーやりたかったんでしょ?」
暦「何で?」
育「グローブがね」
暦「・・・大丈夫だよ僕は。老倉、疲れただろ?今日はもう少し投げたら家に帰ろう」
暦「また、いつか今度やろうぜ」
40:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/23(木) 22:06:02.82
ID:LaAw+2oN0
わかるまでに
わかることがあるだろう
わからないことがわかるまでの時間が
どれくらい重要かな
間違えもずっと繰り返せるものだと思っていた
繰り返し続けていけるものなどなにもないとわかるまでは
残ったグローブはずっと持っていることになるだろう
使わないだろうけど
昔を思い出すには恰好のものだ
それがどんな思い出であれ
41:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/23(木) 22:11:33.26
ID:LaAw+2oN0
阿良々木が持っていたピッチャー用のグローブで
阿良々木のサインを待つ
阿良々木がサインを出す
全くわからない
目が悪くなったな
めがねでも買おう
それでも頷いてやる
阿良々木も頷いた
どんなサインをだしているのか
どんなサインを受け取ったのか
互いにわからないだろうに
もう手も疲れて
これで最後にしようと思う
これが最後にしようと思う
もうこの世のどこにも親と遊んだ記憶がないくらいの私だ
42:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/23(木) 22:21:35.41
ID:LaAw+2oN0
魔球を投げてやる。お前が望むなら
私が子供のうちにボールを投げる
色々な記憶が現れては消える
それが取捨選択さえできないのなら
思い出はグシャグシャになりながら
子供の内の思いは放り投げてしまって
できるのなら
子供の内の思いは誰かに預けておくのがいい
思い切り投げたボールは少し曲がりながら
軽い音を立ててグローブに収まる
変化の最高点での変化量は0だ
そんなことを一瞬思い、同時に
良い球を投げられるのだなと
私は思った
43:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/23(木) 22:22:10.22
ID:LaAw+2oN0
これで終りです。ありがとうございました。
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1489872916/
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